JP6966746B2 - 偽造防止印刷物 - Google Patents
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Description
本発明は、偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等のセキュリティ印刷物の分野において、観察できる画像が入射する光の角度に応じて、異なる画像に変化する偽造防止印刷物に関するものである。
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。そのような複製や偽造を防止する偽造防止技術の一つとして、印刷物に観察角度によって画像が変化するホログラムに代表される光学的なセキュリティ要素を貼付したものが多く存在するようになった。
しかし、ホログラムは、インキを用いた印刷によって形成する従来の偽造防止技術とは異なり、複雑な製造工程と特殊な材料を用いて形成されることから、従来の偽造防止用印刷物と比較すると製造に手間が掛かり、かつ、極めて高価である。このことから、金属インキ、干渉マイカ、酸化フレークマイカ、アルミニウムフレーク、光学的変化フレーク等、特殊な光反射性粉体をインキや塗料に配合し、かつ、特殊な材料同士の重ね合わせや複雑な網点構成を用いることによって、ホログラムと同様な画像変化を実現した、一般的な印刷方法で形成可能な偽造防止用印刷物が出現している。
本出願人は、一般的、かつ、比較的安価な材料及び簡単な印刷手段を使用していながら、特定の観察角度において、印刷物中の特定部位における人の目に認識される情報が、観察角度を変化させることによって、全く別の情報に変化する偽造防止用情報担持体に関する発明を既に出願している(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6参照)。
しかしながら、特許文献1から特許文献4までに記載の技術は、いずれもコート紙を基材として画像を形成した場合には、良好な画像のチェンジ効果を発揮するものの、上質紙のような非コート紙を基材として画像を形成した場合には、画像のチェンジ効果が大きく低下するという問題があった。非コート紙は、コート紙と比べて基材の表面が粗いために、その上に形成される光輝性インキの反射光量が低下することに起因する問題があり、非コート紙を用いた場合には、不可避の問題であった。
特許文献5の技術に関しては、特許文献1から特許文献4までに記載の技術と異なり、下地に印刷する画像と基材の間に生じる輝度の差を利用し、その上に重ねる光輝性画像の反射光量を嵩上げする原理で画像のチェンジ効果を生じさせることから、非コート紙上での効果が高い。しかし、下地に印刷する画像と基材の間に一定以上の輝度差を生じさせるためには、ある程度のインキ膜厚が必要である。このため、非コート紙のうち、コットン紙のような印刷適性が低い紙を基材とした場合には、輝度差が生じ難いため、潜像画像の視認性を高めることが難しいという問題があった。
また、光輝性画像の輝度は高くなるものの、逆に、光輝性画像の反射を抑制する仕組みは有していないため、基材との間に大きな輝度差が生じなかった場合には、明暗のコントラストを強く表現できないという問題があった。そのため、コート紙や、上質紙のような、ある程度の光沢のある基材を用いた場合であっても、印刷画像との間に輝度差が生じ難いため、チェンジ効果が低下するという問題があった。
特許文献6に記載の技術は、特許文献5の技術の問題点を改良した技術であり、下地に印刷する画像と、光輝性材料及び光輝性材料と色相が同じ有色のペアインキを用いて形成した画像を構成し、コットン紙を含めた非コート紙上での優れた画像のチェンジ効果を実現した技術である。しかし、ペアインキで構成したそれぞれの画像は、互いに重なり合わないように位置合わせする必要があり、一定の許容を超えて刷り合わせズレが生じた場合には、潜像画像が可視化されるという問題があった。すなわち、製造に当たっては、高精度な印刷機と熟練のオペレータが必要であるという課題があった。
特許文献1から特許文献6までに記載の技術は、いずれも可視光下での画像のチェンジ効果を有するが、可視光下における効果は、偽造や模倣の対象となり易いという問題が潜在的に存在しており、かつ、印刷物を形成する材料自体は容易に入手できる状況にある。特に、特許文献1から特許文献5に記載の技術において、基材の影響によってチェンジ効果が低下すると、偽造防止効果も低下し、貴重印刷物のユーザーは、類似の効果を奏する印刷物に対して本物か偽物かの差が分からなくなるという問題が生じる。このため、基材の影響を受けることがなく、可視光下でのチェンジ効果に優れ、真偽判別性や偽造防止効果が低下することのない印刷物が望まれていた。また、可視光下でのチェンジ効果に加えて、更に真偽判別機能を高め、偽造防止効果を高めるための印刷物が望まれていた。
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、下地となる基材と等色なインキ、光輝性インキ及び透明なインキの3種類のインキを用いて形成する、拡散反射光下と正反射光下で画像がチェンジする効果を有する印刷物であって、コート紙に形成した場合でも、非コート紙に形成した場合でも、いずれの場合でも画像のチェンジ効果が高く、さらには、偽造に対する耐性も高く、かつ、高度な刷り合わせ精度を要さず、製造が容易でコストパフォーマンスの高い偽造防止印刷物を提供する。
本発明の偽造防止印刷物は、基材に、基材と異なる色彩を有する印刷画像が形成され、 印刷画像は、基材よりも光沢が高く、かつ、基材と等色又は透明なインキによって形成された第二の有意情報を有する第一の画像、光輝性インキにより所定の面積率の範囲で形成された第一の有意情報を有する第二の画像及び透明なインキにより形成された第二の有意情報を有する第三の画像が順に積層されて成り、拡散反射光下で観察した場合には、印刷画像の中に第一の有意情報が視認され、正反射光下で観察した場合には、第一の有意情報が消失して、第二の有意情報が視認されることを特徴とする。
また、本発明の偽造防止印刷物は、第二の画像の最大面積率と最小面積率の差が、15%以上50%以下までの範囲であることを特徴とする。
また、本発明の偽造防止印刷物は、第一の画像と第三の画像が有する第二の有意情報は、ネガポジ反転した関係であることを特徴とする。
また、本発明の偽造防止印刷物は、第一の画像及び/又は第三の画像が、第二の有意情報の輪郭を表す画像を有することを特徴とする。
また、本発明の偽造防止印刷物は、第三の画像が有する第二の有意情報は、面積率が50%より高く100%以下までの範囲で、透明な発光インキにより形成されたことを特徴とする。
また、本発明の偽造防止印刷物は、第三の画像が、第二の有意情報と重ならない位置に、発光インキにより、15%以上50%以下まで範囲の面積率で形成された第三の有意情報を有することを特徴とする。
本発明の偽造防止印刷物は、特許文献1から特許文献6までに記載の技術とは異なり、光輝性インキで形成された第二の画像の反射光を第一の画像によって嵩上げする効果と、第三の画像によって第二の画像の反射光を抑制する効果の両方を有する。そのため、正反射光下において印刷画像から生じる反射光量の最大値と最小値の差が極めて大きい。ゆえに、正反射光下における第一の有意情報の消失効果が高く、かつ、第二の有意情報のコントラストも高いため、従来の技術と比較してチェンジ効果に優れる。
また、本発明の偽造防止印刷物は、特許文献1から特許文献6までに記載の技術とは異なり、主に非コート紙に対して有効である、光輝性インキで形成された第二の画像の反射光を第一の画像によって嵩上げする効果と、主にコート紙に対して有効である、第三の画像によって特定の領域の反射光を抑制する効果の両方を有するために、コート紙、非コート紙の両方に対応可能であって、印刷基材に応じて技術を使い分ける必要がない。
また、特許文献6の技術と異なり、ペアインキによる刷り合わせではなく、透明インキの加刷によって第三の画像を形成するため、位置合わせが必要なく、製造が容易である。
また、透明インキに発光インキを用いることで、拡散反射光下、正反射光下又は励起光を照射した発光条件下で、異なる三つの画像にチェンジさせることも可能であり、真偽判別性に優れ、偽造防止効果も高い。
以上の手法で形成した偽造防止印刷物は、非コート紙、コート紙のいずれの基材を用いたとしても高いチェンジ効果を発揮し、生産性の高い印刷方式であるオフセット印刷で製造可能であることから、コストパフォーマンスに優れ、偽造防止効果に優れる。
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
本発明の偽造防止印刷物(1)は、ユーザーや顧客が重視する効果に応じて、第一から第三までの実施の形態で記載する、いくつかの構成から適宜選択するものであり、特に各画像の構成については、その効果や目的に応じて様々な構成を取り得る。第一の実施の形態では、本発明の偽造防止印刷物(1)の最も基本的な構成について説明するが、各画像の構成は、これに限定されるものではない。
(第一の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の偽造防止印刷物(1)の構成について図面を用いて説明する。図1に、本発明における基本的な構成の偽造防止印刷物(1)を示す。偽造防止印刷物(1)は、基材(2)の上に、基材(2)と異なる色彩を有する印刷画像(3)を有する。図1は、基材(2)の一部に印刷画像(3)が形成された例であるが、基材(2)全体に印刷画像(3)が形成される構成でもよい。印刷画像(3)は、拡散反射光下では第一の有意情報を表し、正反射光下では第二の有意情報を表す。なお、本実施の形態では、第一の有意情報は「鳳凰」のマークであり、第二の有意情報は「桜」のマークの例であるが、これに限定されるものではなく、文字、記号又は他の図柄であっても良く、人物や風景のような多階調画像であってもよい。
本発明の第1の実施の形態の偽造防止印刷物(1)の構成について図面を用いて説明する。図1に、本発明における基本的な構成の偽造防止印刷物(1)を示す。偽造防止印刷物(1)は、基材(2)の上に、基材(2)と異なる色彩を有する印刷画像(3)を有する。図1は、基材(2)の一部に印刷画像(3)が形成された例であるが、基材(2)全体に印刷画像(3)が形成される構成でもよい。印刷画像(3)は、拡散反射光下では第一の有意情報を表し、正反射光下では第二の有意情報を表す。なお、本実施の形態では、第一の有意情報は「鳳凰」のマークであり、第二の有意情報は「桜」のマークの例であるが、これに限定されるものではなく、文字、記号又は他の図柄であっても良く、人物や風景のような多階調画像であってもよい。
印刷画像(3)は、図2に示すように三つの画像が重畳されて成る。三つの画像とは、第一の画像(4)、第二の画像(5)及び第三の画像(6)である。第一の実施の形態においては、第一の画像(4)と第三の画像(6)は、同じ第二の有意情報である「桜」のマークを含み、第一の画像(4)と第三の画像(6)とは、それぞれの画像中の濃淡が反転したネガポジの関係にある。すなわち、第三の画像(6)がポジで表されて成る場合には、第一の画像(4)はネガで表され、第三の画像(6)がネガで表されて成る場合には、第一の画像(4)はポジで表される。ただし、第一の画像(4)と第三の画像(6)がネガポジの関係でない構成もあり、具体例については第二の実施の形態において説明する。
第二の画像(5)は、第一の有意情報である「鳳凰」のマークを表す。「鳳凰」のマークの周囲には、一定の濃度の背景が存在する。第二の画像(5)は、画像全体が所定の面積率の範囲で形成される必要がある。以上が印刷画像(3)の構成の概要であり、以下、印刷画像(3)を構成する各画像の詳細について説明する。
(第一の画像)
続いて、第一の画像(4)について、具体的に説明する。第一の画像(4)は、基材(2)と等色か、又は透明な材料で構成する必要がある。これは、拡散反射光下において第一の画像(4)が表す第二の有意情報を不可視とするために必要となる要件である。図2の第一の画像(4)は、黒色の背景の中に「桜」のマークが見える構成としているが、これは、画像の構成を分かり易く説明するためであり、印刷画像(3)の中に実際に形成される第一の画像(4)は、基材(2)上に形成された段階で不可視である。
続いて、第一の画像(4)について、具体的に説明する。第一の画像(4)は、基材(2)と等色か、又は透明な材料で構成する必要がある。これは、拡散反射光下において第一の画像(4)が表す第二の有意情報を不可視とするために必要となる要件である。図2の第一の画像(4)は、黒色の背景の中に「桜」のマークが見える構成としているが、これは、画像の構成を分かり易く説明するためであり、印刷画像(3)の中に実際に形成される第一の画像(4)は、基材(2)上に形成された段階で不可視である。
第一の画像(4)は、直接基材(2)上に形成される画像であり、上質紙のような微細な繊維の絡み合いによる凹凸が無数にある用紙表面を平滑化する働きを成す。このため、第一の画像(4)は、印刷で形成できる範囲で可能な限り厚い印刷皮膜で形成することが望ましい。また、第一の画像(4)は、基材(2)よりも高い光沢を有することが望まれるため、適用する印刷方式の中で可能な限り反射率の高いインキを選択することが望ましい。基材(2)が一般的な白色の用紙である場合、第一の画像(4)は、白インキで形成することが望ましい。また、白インキのうち、チタン白を顔料に用いた白インキは、基材(2)上で完全に不可視であり、第一の画像(4)に高い光沢を付与することができることから最も望ましい。
第一の画像(4)の中には第二の有意情報が含まれて成り、この第二の有意情報は、面積率の差異によって構成される。なお、本発明において面積率とは、基材(2)の一定の面積の中に、インキを用いて印刷される印刷要素の割合のことである。また、印刷要素とは、印刷画像を構成する最小単位である印刷網点自体か、印刷網点を複数集合させて形成した一塊の画素又は印刷網点を所定方向に隙間なく連続して配置することにより形成した画線のことであり、単独で形成して第一の画像を形成しても良く、組み合わせて第一の画像(4)を形成してもよい。第二の画像(5)及び第三の画像(6)を構成する印刷要素も、これと同様である。
第一の実施の形態においては、第一の画像(4)の中の「桜」のマークの面積率は低く、「桜」を取り囲む背景の面積率は高い構成となっている。なお、第一の実施の形態では、第一の画像(4)中の「桜」のマークを面積率0%、すなわち、ヌキとした構成であり、「桜」を取り囲む背景は、面積率100%とした構成を例に説明するが、第一の画像(4)の中の面積率の高い領域と面積率の低い領域の詳細な構成については、後述する。基本的に、第一の画像(4)の中で面積率が高い領域は、正反射光下で白く見え、第一の画像(4)の中で面積率が低い領域は、正反射光下で暗く見える。
前述のように「桜」のマークの面積率と背景の面積率の関係は、第三の画像(6)における第二の有意情報の「桜」のマークの面積率と背景の面積率の関係を逆転させた関係(ネガポジ反転の関係)であって、第一の画像(4)を設計するに当たっては、まず、正反射光下で出現させる第二の有意情報をネガで(白く)見せるのか、ポジで(暗く)見せるのかを決める必要があり、仮に、第一の実施の形態において、正反射光下で出現させる第二の有意情報を暗く見せたいのであれば、第三の画像(6)の中の「桜」をポジに見えるように「桜」のマークの面積率を高く、背景の面積率を低く設計し、かつ、第一の画像(4)の中の「桜」のマークの面積率を低く、背景の面積率を高く設計する。
第一の画像(4)の面積率の高い領域については、印刷方式にもよるが、面積率で少なくとも50%を超える必要があり、より望ましくは75%を超えることが望ましい。50%より面積率が低いと、基材(2)表面に対して充分な平滑化の効果を与えることができず、正反射光下で出現する第二の有意情報の視認性が低下するため望ましくない。さらに、面積率の高い領域については、ピッキング、ムカレ等の印刷トラブルが発生しないことを条件として、100%に近い面積率で形成することが本発明の効果を高める上では望ましい。
また、面積率が低い領域については、0%で構成することが正反射光下で出現する第二の有意情報の視認性を高める上では望ましい。しかし、その一方で、面積率が低い領域を0%で構成した場合には、第二の画像(5)の反射光を嵩上げする効果が作用しないため、第二の画像(5)の設計によっては正反射光下において第一の有意情報が消失しきらない問題も生じる。そのため、第一の有意情報の消失効果を担保できる範囲で、可能な限り低い面積率に適宜設計することが望ましい。以上のように、第一の画像(4)においては、求める効果に応じて面積率の高い領域及び面積率の低い領域の面積率をそれぞれ調整する必要があり、この具体例は、第二の実施の形態において説明する。以上が、第一の画像(4)の説明である。
続いて、第二の画像(5)について具体的に説明する。第二の画像(5)は、物体色を有し、基材(2)と異なる色彩を有する光輝性インキよって形成する必要がある。光輝性インキとは、光を強く反射する特性を備えた光輝性材料を含んだインキであって、基材(2)と異なる色彩のインキであれば如何なるインキを用いてもよい。オフセットインキとして市販されている光輝性インキとしては、メタリックインキと呼ばれる銀インキ、金インキ等が存在し、着色インキに特殊なパール顔料を配合した二色性パールインキ等を用いてもよい。
前述の光輝性材料は、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末、リン化鉄等、一般的な金属粉顔料であってもよい。また、虹彩色パール顔料、鱗片状顔料等の一般的なパール顔料や、ガラスフレーク顔料、コレステリック液晶顔料等の機能性顔料等を用いてもよい。
第二の画像(5)の構成について説明する。図2に示した第二の画像(5)は、第一の有意情報である「鳳凰」のマークとその周囲を囲む背景から成る。第二の画像(5)は、光輝性インキを用いて、画像全体が所定の面積率の範囲で形成される必要がある。所定の面積率の範囲とは、本発明の効果を発揮するために、第二の画像(5)の中に設定し得る最大面積率と最小面積率の差異の範囲を指す。本発明において第二の画像(5)中の面積率は、0%〜100%の間の面積率を任意に選択することはできず、一定の範囲に制限される。
第二の画像(5)の面積率を特定の範囲に制限する理由は、正反射光下における第二の画像(5)の消失効果を高めるためである。本発明の効果として、正反射光下において第二の画像(5)が光を強く反射することで画像全体が淡く変化し、濃淡が圧縮されることで第一の有意情報が目視上消失する効果を有する。この効果は、所定の面積率の範囲で第二の画像(5)を形成したときのみ生じる。仮に、面積率の制限を設けず、最小面積率0%から最大面積率100%の範囲で第二の画像(5)を形成した場合には、画像の完全な消失効果は生じない。
第二の画像(5)の完全な消失効果を担保可能な最適な最大面積率と最小面積率の面積率の差は、光輝性インキの輝度や基材(2)の表面性等によって変化はあるものの、本発明の偽造防止印刷物(1)を印刷によって形成する場合には、その差を50%以下とすることが望ましい。多くの場合、50%を超えると、面積率の大きな領域の明度が上がり過ぎ、正反射光下において第二の画像(5)の濃淡が圧縮される効果が低下し、画像全体の消失効果が損なわれる。また、最大面積率と最小面積率の面積率の差が小さすぎる場合、拡散反射光下で視認される第一の有意情報を捉えづらくなるため、15%以上の面積率の差を設けることが望ましい。以上のことから、第二の画像(5)の所定の面積率の範囲は、最大面積率と最小面積率の面積率の差を15%以上50%以下とすることが望ましい。
また、同じ面積率の範囲であれば、ハイライトから中間調の低い面積率よりも、中間調からシャドーにかけての高い面積率で第二の画像(5)を設計することが望ましい。これは、第二の画像(5)が正反射した場合の画像全体の明度が相対的に高くなるため、明度を低く抑制する第三の画像(6)との間に強い明暗のコントラストが生じることによって、第二の有意情報の視認性が高まるためである。
なお、本明細書中の実施の形態では、いずれも二値化されたマークと、それを取り囲む背景から成る図柄を第二の画像(5)としているが、画像全体を所定の面積率の範囲で形成するのであれば、人の顔のような多階調画像や、風景写真のようなマークや背景の区切りのない図柄を用いても何ら問題ない。以上が第二の画像(5)の説明である。
続いて、第三の画像(6)について説明する。第三の画像(6)は、正反射光下で出現する第二の有意情報を表して成る。第三の画像(6)は、可視光下で視認可能な第二の画像(5)と異なり、透明なインキで形成されることから、拡散反射光下では目視できない。
また、第三の画像(6)の濃淡と第一の画像(4)の濃淡は、基本的にはネガポジ反転させた関係となるが、これに限定されるわけではない。第一の有意情報の消失効果を高めたい場合には、第一の画像(4)や第三の画像(6)の構成を変えることで対応することができる。これについては第二の実施の形態の中で説明する。
第三の画像(6)は、第二の画像(5)に入射する光を反射又は吸収することで入射光を遮断し、第二の画像(5)が光を反射することを防ぐ働きを成す。このため、第三の画像(6)は光遮断性に優れていることが望ましい。また、第三の画像(6)は、光輝性インキよりも反射率が低いことが望ましく、低いほど第二の有意情報の視認性は高まる。そのため、可能な限りマットであることが望ましい。
第三の画像(6)を印刷によって形成する場合には、一般的な印刷インキのOPニスやメジューム、レジューサー等の名称で販売されている、着色されていないインキを使用すればよい。これらの中でもマットタイプのインキを用いることがより望ましい。
第三の画像(6)は、一定の面積率の制限が必要な第二の画像(5)と異なり、0%から100%までの制約のない面積率の範囲で第二の有意情報を表現できるが、正反射光下で出現する第二の有意情報のコントラストを高くするためには、50%より高い面積率で形成することが望ましい。また、前述した第二の有意情報を形成するインキの特性と、正反射光下で出現する第二の有意情報のコントラストに応じて面積率を調整すればよい。ただし、100%の面積率やそれに近い面積率で第二の画像(5)を形成した場合に、それぞれの画像の構成によっては、第二の画像(5)の消失効果が低下する問題が生じる。この問題への対策についても第二の実施の形態の中で後述する。以上が第三の画像(6)の説明である。
続いて、第一の画像(4)、第二の画像(5)及び第三の画像(6)の積層順序について、図3を用いて説明する。本発明の偽造防止印刷物(1)は、図3に示すように基材(2)に第一の画像(4)を印刷したのち、第二の画像(5)を重畳し、さらに第三の画像(6)を積層することで形成する。これらの三つの画像は大きなズレがなく重なり合えばよい。刷り合わせ精度としては、通常の印刷で要求される程度の刷り合わせ精度で充分であり、いわゆる毛抜き合わせのような高精度な嵌め合わせは必要ない。
以上の構成で作製した偽造防止印刷物(1)の効果について、図4を用いて説明する。光源(7)と偽造防止印刷物(1)と観察者(8)の位置関係が図4(a)にあるような、拡散反射光が支配的な観察角度(偽造防止印刷物(1)に入射する光の入射角度と、観察者(8)と偽造防止印刷物(1)とを結ぶ反射角度が大きく異なる観察角度)で観察した場合には、観察者(8)には、第一の有意情報である「鳳凰」のマークが視認される。拡散反射光下において、第二の有意情報である「桜」のマークは、視認できない。
一方、偽造防止印刷物(1)を、図4(b)に示すような、正反射光が支配的な角度(偽造防止印刷物(1)に入射する光の角度と、観察者(8)と偽造防止印刷物(1)とを結ぶ反射角度が近い値である観察角度)で観察した場合には、第一の有意情報である「鳳凰」のマークが完全に消失し、第二の有意情報である「桜」のマークが視認される。
本発明の二つの画像がチェンジする基本的な原理は、以下のとおりである。図4(a)に示す拡散反射光が支配的な観察角度において、第一の画像(4)は基材(2)と等色であるため不可視であり、第三の画像(6)は透明であるため同様に不可視である。このため、印刷画像(3)の中には、光輝性インキで形成された第二の画像(5)が表す第一の有意情報のみが視認できる。
一方の図4(b)に示すような、正反射光が支配的な観察角度において、印刷画像(3)の中の第二の画像(5)は強く光を反射する。正反射することで画像の明度が上昇するために、拡散反射光下で認識されていた第二の画像(5)中の濃淡差は目視上捉えにくくなる。光輝性インキを用いて所定の面積率の範囲で形成された第二の画像(5)は、第二の画像(5)単体でも正反射光下で第一の有意情報を消失させる効果を有する。それに加えて、その第二の画像(5)の中でも、下層に第一の画像(4)が高い面積率で形成されている領域は、第一の画像(4)によって反射光が嵩上げされ、より強い反射光を生じる。
逆に、第二の画像(5)の上に第三の画像(6)が重ねられた領域は、第二の画像(5)に入射する光が遮断され、反射光が抑制される。正反射光下において、第一の画像(4)による反射光の嵩上げ効果と、第三の画像(6)による反射光の抑制効果の、正反対の効果が同時に第二の画像(5)に対して作用することによって、印刷画像(3)の中に反射光の極めて強いコントラストが生じる。これによって、印刷画像(3)から第一の有意情報が目視上消失するとともに、反射光の強弱によって第二の有意情報が強いコントラストで出現する。以上が、本発明のチェンジ効果が生じ、かつ、従来にない強いコントラストで第二の有意情報が視認できる原理である。
以上のように、本発明においては、第一の画像(4)による反射光の嵩上げ効果に加え、第三の画像(6)による反射光の抑制効果を同時に用いることで、従来技術にはなかった鮮明なチェンジ効果を実現させる。第一の画像(4)、第二の画像(5)及び第三の画像(6)をそれぞれ最適な条件で適切な材料を用いて設計できれば、これまでに記載した本発明の基本的な構成を用いて、従来技術では実現し得なかった極めて高いチェンジ効果を実現することができる。しかし、その一方で、三つの画像の設計が不適切、又は使用するインキの光学特性が充分でない場合、チェンジ効果が低下する場合がある。その場合の対策について第二の実施の形態において説明する。
第一の実施の形態において第三の画像(6)は、透明なインキを用いて形成される構成について説明したが、本発明において第三の画像(6)は、発光材料を含む透明なインキを用いて形成してもよい。この場合、前述したOPニスやメジューム、レジューサー等の材料に、励起光を照射した場合に発光する発光材料を混合したインキを用いることで、励起光を照射した場合に、正反射光下で視認される第二の有意情報が発光して視認でき、発光画像を認証することによる真偽判別機能を追加することができる。発光材料としては、特に励起光として紫外線を照射することで可視領域の光で発光する紫外線励起型の材料が最も入手しやすく、認証具となるブラックライトも広く市販されているため、真偽判別が容易である。これ以外でも、偽造に対する耐性を高めることを目的とすると、紫外線や可視光で励起して赤外領域の光を発する赤外発光材料や、赤外線で励起して可視光を発するアンチストークス系の発光材料を用いてもよい。また、発光の形態は、蛍光発光であっても、燐光発光であっても、蓄光発光であってもよい。
(第二の実施の形態)
第二の実施の形態では、第一の実施の形態の構成においてチェンジ効果が充分でない場合に適用できる構成について説明する。本発明の偽造防止印刷物(1)を第一の実施の形態で説明した構成で形成した場合に発生しやすいのが、図5に示すような、正反射光下で出現する第二の有意情報の明度の低い領域に、第一の有意情報の濃淡が反映される問題である。これは、第一の有意情報の濃淡差が大きすぎるか、又は光輝性インキの性能が想定より低い場合に生じる問題である。
第二の実施の形態では、第一の実施の形態の構成においてチェンジ効果が充分でない場合に適用できる構成について説明する。本発明の偽造防止印刷物(1)を第一の実施の形態で説明した構成で形成した場合に発生しやすいのが、図5に示すような、正反射光下で出現する第二の有意情報の明度の低い領域に、第一の有意情報の濃淡が反映される問題である。これは、第一の有意情報の濃淡差が大きすぎるか、又は光輝性インキの性能が想定より低い場合に生じる問題である。
基本的には、第二の画像(5)を構成する所定の面積率の範囲をより狭く設計するか、輝度の高いインキに変更することで解決できる。しかしながら、顧客やデザイナーが第一の有意情報をより鮮明に見せることを希望している場合や、輝度の高いインキが使用できない場合、第二の画像(5)の面積率を変更することなく、第一の画像(4)と第三の画像(6)の構成を変更することで対処することができる。第二の実施の形態の説明においては、第一の画像(4)と第三の画像(6)の構成に絞って説明するが、特に説明をしない基材(2)や第二の画像(5)の構成については、第一の実施の形態と同様である。
図6に示すのは、図5に示した第一の有意情報の消失効果が充分でない問題が生じた場合に対策として用いる第一の画像(4)の構成の一例である。図5の問題は、第二の画像(5)から生じる反射光が充分な強さに達していないために生じていると考えることができる。そのために、第一の画像(4)における対策としては、第一の画像(4)の面積率を高めることで、第二の画像(5)から生じる反射光をより高く嵩上げすればよい。具体的には、基本的な構成において、第一の画像(4)がヌキとなっている「桜」のマークの領域(面積率0%の領域)に対して、図6(a)、(b)、(c)のように一定の面積率を付与することで、消失効果が不十分な第二の画像(5)の反射光を嵩上げし、第一の有意情報を完全に消失させることができる。
図6(a)に示す第一の画像(4A)は、第一の実施の形態では面積率0%であった「桜」のマーク内部を一定の面積率で塗りつぶした構成であり、図6(b)に示す第一の画像(4B)は、「桜」のマークの輪郭をヌキとして内部に向かってグラデーションを用いて徐々に面積率を高めた構成であり、図6(c)に示す第一の画像(4C)は、「桜」のマークの輪郭のみヌキとして内部を背景と同じ高い面積率で塗りつぶした構成である。図6(a)の第一の画像(4A)は、図5に示した第二の有意情報中に反映された第一の有意情報の濃淡がそれほど高くない場合に有効な構成である。図6(b)の第一の画像(4B)及び図6(c)の第一の画像(4C)は、第二の有意情報中に反映された第一の有意情報の濃淡が高い場合に有効である。ここで示した第一の画像(4A、4B、4C)の構成を用いれば、第二の有意情報中に反映された第一の有意情報の濃淡を消失させる効果をより高めることができる。
また、図7には、図5に示した第一の有意情報の消失効果が充分でない問題が生じた場合に対策として用いる第三の画像(6)の構成の一例を示す。第三の画像(6)によって、入射を遮られている光を一定の割合で透過させることで、抑制されている第二の画像(5)の反射光を高めればよい。
図7(a)に示す第三の画像(6A)は、第一の実施の形態の例で100%の面積率で構成されていた「桜」のマーク内部をより低い面積率とした構成であり、図7(b)に示す第三の画像(6B)は、「桜」のマークの輪郭を最も高い面積率として内部に向かってグラデーションを用いて徐々に面積率を低くした構成であり、図7(c)に示す第三の画像(6C)は、「桜」のマークの輪郭のみを所定の面積率で形成した構成である。図7(a)の第三の画像(6A)は、図5に示した第二の有意情報中に反映された第一の有意情報の濃淡がそれほど高くない場合に有効な構成である。図7(b)の第三の画像(6B)及び図7(c)の第三の画像(6C)は、第二の有意情報中に反映された第一の有意情報の濃淡が高い場合に有効である。ここで示した第三の画像(6A、6B、6C)の構成を用いれば、第二の有意情報中に反映された第一の有意情報の濃淡をより消失させる効果を高めることができる。
図6及び図7において、それぞれ図5に示した問題が生じた場合に、第一の画像(4)と第三の画像(6)において対策と成り得る構成を示した。特に、第三の画像(6)は、入射する光自体を遮断する作用を有することから、反射光を嵩上げする第一の画像(4)を用いて得られる効果と比較して、より高い効果が得られる。そのため、第三の画像(6)における構成は、第三の画像(6)単独で用いた場合でも図5の問題を解決できるだけの効果を有する。しかし、その一方で、これらの構成を用いた場合には、第一の実施の形態において説明した構成を用いた場合と比較して、正反射光下で出現する第二の有意情報のコントラストを相対的に低下させることになる。
特に、図7(b)や図7(c)で示した第三の画像(6B、6C)にグラデーションを設けた構成や、輪郭のみとした構成は効果が高過ぎるために、適切な構成で用いなければ、正反射光下で出現する第二の有意情報の図柄自体にも構成変更の影響が強く反映される場合がある
例えば、図7に示す第三の画像(6B)を用いた場合、その他の画像の構成によっては図8(b)に示すように正反射光下で出現した「桜」のマークの中に、第三の画像(6B)に施したグラデーションが強く反映される場合がある。また、図7に示した輪郭のみで「桜」のマークを表した第三の画像(6C)を用いた場合、同様に図8(c)に示すように正反射光下で出現した「桜」のマークの中の濃淡が失われる場合がある。単に「桜」のマークとして認識できることだけを顧客やユーザーが意図している場面では、図8(b)や図8(c)のような見え方でも問題ないが、それ以外の場面では、本来可能な限りマーク内部の濃度変化を抑えた図8(a)のような見え方が望ましい。
このため、たとえ可能であっても、第三の画像(6)の構成だけを変えて図5の問題を解決するのではなく、第一の画像(4)の構成と組み合わせることで、正反射光下で出現する第二の有意情報のコントラストの低下を最低限に抑えつつ、第二の有意情報中に反映された第一の有意情報の濃淡を可能な限り低くする構成を選択することが望ましい。
図7(b)の構成の第三の画像(6B)を単独で用いて、図5の問題を解決できた場合でも、正反射光下で出現する「桜」のマークの内部に図8(b)のような濃淡が反映されるのであれば、第三の画像(6B)を単独で用いるのではなく、図7(a)の構成の第三の画像(6A)と図6(b)の第一の画像(4B)の構成を組み合わせて用いることで、図5の問題を解決し、かつ、図8(a)のような内部に濃淡が反映されない「桜」のマークとできる可能性が高い。このように、第一の画像(4)や第三の画像(6)に対して、図6や図7で示したそれぞれの構成を単独で用いるだけでなく、組み合わせて用いることで、図5の問題は改善できる。
本発明において、正反射光下で出現する第二の有意情報の視認性は、第一の画像(4)、第二の画像(5)、第三の画像(6)の構成が密接に関わっている。一方の拡散反射光下で視認できる第一の有意情報の視認性に関しては、第二の画像(5)の構成のみで決定されると考えがちであるが、第一の画像(4)と第三の画像(6)の設計を最適化できれば、正反射光下で消失する第一の有意情報の濃淡差がより大きくなるため、第二の画像(5)の面積率の範囲を広げて、濃淡をより大きく設計できる。以上のように、本発明において拡散反射光下で視認される第一の有意情報も、正反射光下で視認される第二の有意情報も、いずれの画像の視認性も、第一の画像(4)、第二の画像(5)及び第三の画像(6)の構成が密接に関わっている。そのため、それぞれの三つの画像をバランス良く設計することで、本発明のチェンジ効果をより高めることができる。以上が第二の実施の形態についての説明である。
(第三の実施の形態)
第三の実施の形態は、第一の実施の形態及び第二の実施の形態と同様に、拡散反射光下と正反射光下における鮮明なチェンジ効果を付与すると同時に、正反射光下で視認できる第二の有意情報とは異なる第三の有意情報が発光画像として視認できる偽造防止印刷物(1)であり、これを真偽判別機能として追加するものである。
第三の実施の形態は、第一の実施の形態及び第二の実施の形態と同様に、拡散反射光下と正反射光下における鮮明なチェンジ効果を付与すると同時に、正反射光下で視認できる第二の有意情報とは異なる第三の有意情報が発光画像として視認できる偽造防止印刷物(1)であり、これを真偽判別機能として追加するものである。
第三の実施の形態において、基材(2)や第一の画像(4)、第二の画像(5)の構成は、第一の実施の形態と同様であるため説明を省略し、第三の画像(6)の構成のみを具体的に説明する。図9は、第三の実施の形態の第三の画像(6)の構成を示す図であり、第三の画像(6)は、第一の実施の形態で説明した「桜」のマークの第二の有意情報(6−1)に加えて、さらに、第二の有意情報(6−1)と重ならない位置に、アルファベットの「OK」を表した隠し文字となる第三の有意情報(6−2)を備える。なお、第三の有意情報(6−2)は、第一の有意情報である「鳳凰」のマークと重なる配置でもよい。
第三の有意情報(6−2)は、正反射光下で視認されることなく、励起光が照射された場合のみ発光画像として視認されるために、透明な発光インキを用いて形成される。ただし、第三の有意情報(6−2)を形成する発光インキは、第一の実施の形態で説明したマットタイプのインキのような光遮断性や低い反射率を有することなく、第二の有意情報(6−1)を形成する透明インキよりも光沢が高い発光インキを用いて形成する。なお、第三の有意情報(6−2)を形成する透明な発光インキの光沢は、通常のUVオフセットインキと同程度の光沢であればよい。また、発光インキの発光特性としては、前述のように、紫外線で励起して可視発光する特性、紫外線や可視光で励起して赤外領域の光を発する特性又は赤外線で励起して可視光を発光する特性のいずれでもよい。
透明インキで形成された第二の有意情報(6−1)は、正反射光下で視認されることから、同じように、第二の画像(5)の上に形成される第三の有意情報(6−2)である「OK」の文字も正反射光下で視認されるのが通例であるが、第三の実施の形態では、第三の有意情報(6−2)を、第二の有意情報(6−1)を形成する透明インキより光沢が高い発光インキを用いて形成することで、正反射光下で第三の有意情報(6−2)を不可視とする構成を実現している。ただし、光沢が高く透明な発光インキによって形成される第三の有意情報(6−2)が、正反射光下で視認されないための特定の面積率の範囲が存在する。
この面積率の範囲は、インキの発光特性によって異なるが、商業用として市販されているオフセット用発光インキのうち、一般に発光強度が高い緑色発光の蛍光インキを例とすると、5%から50%までの範囲で第二の画像(5)の上に形成した画像は、正反射光下では視認できないが、発光条件下では視認できる場合が多い。50%を超える面積率で形成した場合には、正反射光下で画像として視認されることから、避けなければならない。このため、5%から50%までの範囲の面積率で画像を付与した場合、拡散反射光下や正反射光下では視認できないが、励起光を照射した発光条件下のみ視認できる特殊な第三の有意情報(6−2)を形成できる。
図10に第三の実施の形態における効果を示す。拡散反射光下で第一の有意情報が視認され、正反射光下で第二の有意情報(6−1)が視認され、発光インキの励起光を照射することで、正反射光下では視認できなかった第三の有意情報(6−2)である「OK」の発光画像が視認できる。「OK」の文字は、拡散反射光下はもちろん、正反射光下でも視認されず、発光インキの励起光を照射した場合にのみ、発光画像として視認できる。この効果により、拡散反射光下と正反射光下における画像のチェンジ効果によって真偽判別できるだけでなく、発光条件下でも真偽を判別することができ、真偽判別性及び偽造に対する耐性がより高くなる。
以上に説明した第3の実施の形態の偽造防止印刷物(1)において、第二の有意情報(6−1)である「桜」のマークを、第1の実施の形態で説明した発光材料を含む透明なインキを用いて形成してもよい。その際、第三の有意情報(6−2)を形成するインキと同じ発光特性のインキを用いてもよいし、異なる発光特性のインキを用いてもよい。
また、第三の有意情報(6−2)を形成する発光インキを用いて正反射光下で視認できる第二の有意情報(6−1)を形成することもでき、この場合、第二の有意情報(6−1)は、正反射光下で視認できない第三の有意情報(6−2)より高い面積率で形成する。具体的には、第二の有意情報(6−1)は、面積率が50%より高い構成とする。発光インキのみで図9に示す第三の画像(6)を形成した偽造防止印刷物(1)を正反射光下で観察すると、図11(a)に示すように、「桜」のマークである第二の有意情報(6−1)を視認することができる。これは、第二の有意情報(6−1)の面積率を、50%より高い構成とすることで、光輝性インキにより形成された第二の画像(5)の反射を抑える作用により、コントラストが得られるからである。また、発光インキの励起光を照射すると、図11(b)に示すように、第二の有意情報(6−1)と第三の有意情報(6−2)が発光して視認できる。この形態においても、発光インキの励起光を照射した時のみ、第三の有意情報(6−2)が発光画像として視認できることから、同様に真偽判別機能とすることができ、一つの発光インキを用いて第二の有意情報(6−1)も形成できるため、効率的、かつ、低コストの観点から望ましい。
本発明における偽造防止印刷物(1)の印刷方式は、オフセット印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、凹版印刷等、あらゆる印刷方式で形成することが可能である。また、金属インクを用いることが可能であれば、IJPやレーザプリンタ、昇華型プリンタ等、各種デジタル出力機でも形成することができ、この場合には、一枚一枚の出力物の情報を変える、いわゆる可変印刷を実施することができる。
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した偽造防止印刷物(1)の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本発明の実施例1について、第二の実施の形態に説明した偽造防止印刷物(1)を作製した例を説明する。実施例1では、基材(2)として白色の上質紙(しらおい 日本製紙株式会社製)を用いた。
本発明の実施例1について、第二の実施の形態に説明した偽造防止印刷物(1)を作製した例を説明する。実施例1では、基材(2)として白色の上質紙(しらおい 日本製紙株式会社製)を用いた。
第一の画像(4)は、図6(a)に示す構成(4A)で、チタン白を顔料とした白インキ(No.3 UV Lカートン白GW 株式会社T&K TOKA社製)で濃い領域(桜の背景)を網点面積率90%、淡い領域(桜のマーク)を網点面積率50%で形成した。第二の画像(5)は、図2に示す構成で、光輝性インキとして銀インキ(UV No.3 シルバー 株式会社T&K TOKA社製)を用いて、鳳凰のマークを網点面積率85%とし、背景を網点面積率55%で第一の画像(4)の上に印刷した。最後に、透明なインキ(UVマット OPニス AD−BN:T&K)を用いて、第三の画像(6)を図2に示す構成で、「桜」のマークの網点面積率を85%で形成した。いずれもウェットオフセット印刷方式で印刷した。
図4に実施例1の偽造防止印刷物(1)の効果を記す。図4(a)は、観察者が拡散反射光下で実施例1の偽造防止印刷物(1)を観察した場合に観察される画像であり、印刷画像(3)の中には第一の有意情報である鳳凰のマークが視認された。一方、図4(b)に示すように、観察者が正反射光下の特定の観察角度で実施例1の偽造防止印刷物(1)を観察した場合、印刷画像(3)の中から鳳凰のマークは消失し、代わりに第二の有意情報(6−1)である「桜」のマークが視認された。
(実施例2)
実施例2は、実施例1の構成に加え、更に第三の有意情報(6−2)を備える偽造防止印刷物(1)である。実施例2の偽造防止印刷物(1)について、実施例1と異なる構成について説明する。
実施例2は、実施例1の構成に加え、更に第三の有意情報(6−2)を備える偽造防止印刷物(1)である。実施例2の偽造防止印刷物(1)について、実施例1と異なる構成について説明する。
第三の有意情報(6−2)を形成するため、透明な発光インキ(UV 蛍光OPニス Y 株式会社T&K TOKA社製)を用いて、図9に示す「OK」の文字である第三の有意情報(6−2)の網点面積率を15%で印刷した。なお、ウェットオフセット印刷方式で印刷した。
実施例2の偽造防止印刷物(1)を正反射光下で観察した場合、第三の有意情報である「OK」の文字は視認されることはなく、「桜」のマークのみ視認されたが、紫外線を照射した場合には、第三の有意情報(6−2)である「OK」の文字が視認された。以上のように、正反射光下と紫外線を照射した際に、視認できる画像がチェンジする、本発明の優れた効果が確認できた。
(実施例3)
実施例3は、実施例2の構成の第二の有意情報(6−1)を、透明な発光インキ(UV 蛍光OPニス Y 株式会社T&K TOKA社製)を用いて形成した偽造防止印刷物(1)である。実施例3の偽造防止印刷物(1)について、実施例2と異なる構成について説明する。
実施例3は、実施例2の構成の第二の有意情報(6−1)を、透明な発光インキ(UV 蛍光OPニス Y 株式会社T&K TOKA社製)を用いて形成した偽造防止印刷物(1)である。実施例3の偽造防止印刷物(1)について、実施例2と異なる構成について説明する。
第二の有意情報(6−1)を形成するため、透明な発光インキ(UV 蛍光OPニス Y 株式会社T&K TOKA社製)を用いて、図9に示す「桜」のマークである第二の有意情報(6−1)の網点面積率を85%で印刷した。なお、ウェットオフセット印刷方式で印刷した。
実施例2の偽造防止印刷物(1)を正反射光下で観察した場合、「桜」のマークの第二の有意情報が視認できた。また、紫外線を照射した場合には、「桜」のマークの第二の有意情報(6−1)と「OK」の文字の第三の有意情報(6−2)を視認することができた。
1 偽造防止印刷物
2 基材
3 印刷画像
4、4A、4B、4C 第一の画像
5 第二の画像
6、6A、6B、6C 第三の画像
6−1 第二の有意情報
6−2 第三の有意情報
7 光源
8 観察者
10 励起光を発する光源
2 基材
3 印刷画像
4、4A、4B、4C 第一の画像
5 第二の画像
6、6A、6B、6C 第三の画像
6−1 第二の有意情報
6−2 第三の有意情報
7 光源
8 観察者
10 励起光を発する光源
Claims (6)
- 基材に、前記基材と異なる色彩を有する印刷画像が形成され、前記印刷画像は、前記基材よりも光沢が高く、かつ、前記基材と等色又は透明なインキによって形成された第二の有意情報を有する第一の画像、光輝性インキにより所定の面積率の範囲で形成された第一の有意情報を有する第二の画像及び透明なインキにより形成された前記第二の有意情報を有する第三の画像が順に積層されて成り、拡散反射光下で観察した場合には、前記印刷画像の中に前記第一の有意情報が視認され、正反射光下で観察した場合には、前記第一の有意情報が消失して、前記第二の有意情報が視認されることを特徴とする偽造防止印刷物。
- 前記第二の画像の最大面積率と最小面積率の差が、15%以上50%以下までの範囲であることを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
- 前記第一の画像と前記第三の画像が有する前記第二の有意情報は、ネガポジ反転した関係であることを特徴とする請求項1又は2記載の偽造防止印刷物。
- 前記第一の画像及び/又は前記第三の画像が、前記第二の有意情報の輪郭を表す画像を有することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の偽造防止印刷物。
- 前記第三の画像が有する前記第二の有意情報は、面積率が50%より高く100%以下までの範囲で、透明な発光インキにより形成されたことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の偽造防止印刷物。
- 前記第三の画像が、前記第二の有意情報と重ならない位置に、前記発光インキにより、15%以上50%以下までの範囲の面積率で形成された第三の有意情報を有することを特徴とする請求項5記載の偽造防止印刷物。
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