JP6961294B2 - 薄片状物質の製造方法 - Google Patents
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例えば薄片状物質の一種である、酸化黒鉛を還元して親水性の官能基を脱離させた還元型酸化黒鉛は、その特異な構造や物性と強い疎水性のために潤滑用添加剤、高分子用添加剤等として用いることが期待されている。
また上記遠心加速度は、その下限値は特に限定されないが、例えば2G以上であることが好ましく、5G以上であることがより好ましい。
遠心加速度は一定にしなくても良く、その場合、上記精製工程における遠心加速度の平均値が上記範囲内であれば良いが、中でも、遠心処理時間の80%以上にわたって遠心加速度が上記上限以下(6000G以下、好ましくは4000G以下、より好ましくは3000G以下、さらに好ましくは2000G以下)となるように処理を行うことが好ましく、最大の遠心加速度が上記上限以下となるように処理を行うことがより好ましい。
上記分散媒としては、特に限定されないが、水を含む水性分散媒が好ましい。水性分散媒は、水とともに使用できる有機分散媒を更に含んでいてもよく、該有機分散媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;グリセリン;ポリエチレングリコール;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が好適であり、これらの1種又は2種以上を使用することができる。上記分散媒は、中でも、50質量%以上が水である水性分散媒であることがより好ましく、80質量%以上が水である水性分散媒であることが更に好ましく、水であることが特に好ましい。
上記分散媒の量は適宜設定すればよいが、組成物中の被精製物質100質量%に対して10〜100000質量%であることが好ましい。このような量の分散媒を用いることで、未精製組成物からの分離をより効率的に進めることができる。分散媒の量は、より好ましくは、組成物中の被精製物質100質量%に対して50〜50000質量%であり、更に好ましくは、100〜30000質量%であり、特に好ましくは、300〜20000質量%である。
遠心分離機としては、例えば、遠心沈降分離型の遠心分離機、遠心濾過型の遠心分離機が挙げられる。
なお、上記精製工程を2回以上繰り返しておこなう場合、例えば、先ず未精製組成物である反応液を遠心分離し、その後、被精製物質に分散媒を添加し、振盪等により被精製物質を分散媒中に再分散させたものを未精製組成物として遠心分離し、この再分散と遠心分離の工程を1回以上繰り返すことができる。この場合、反応液を遠心分離する精製工程を精製工程の1回目と数える。
また本発明の薄片状物質の製造方法において、遠心分離を2回以上行う場合には、いずれか1回の遠心分離が上記上限以下(6000G以下、好ましくは4000G以下、より好ましくは3000G以下、さらに好ましくは2000G以下)で実施されるものであれば良いが、遠心分離の繰り返し回数の80%以上が上記上限以下で実施されることが好ましく、全ての遠心分離が上記上限以下で実施されることがより好ましい。
上記精製工程を2回以上繰り返す場合には、それぞれの運転条件(例えば遠心加速度)は同一であっても良く、異なっても良い。
上記精製工程は、例えば空気中、又は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うことができる。また、上記精製工程は、その温度条件・圧力条件は特に限定されず、室温条件下や、より高温条件下、より低温度条件下で行うことができ、また、加圧・常圧・減圧条件下で行うことができるが、例えば室温・常圧条件下で行うことが好ましい。
上記精製工程の後、必要に応じて、更に乾燥工程をおこなって薄片状物質を得ることができる。乾燥工程の条件は適宜設定すればよいが、例えば、40〜150℃の温度条件下で、真空等の減圧条件下で行うことが好ましい。
上記精製工程において、上記の遠心加速度で処理する時間(複数回遠心処理する場合はその合計)は、10秒以上であることが好ましく、20秒以上であることがより好ましく、30秒以上であることが更に好ましい。上記の遠心加速度で処理する時間の上限は、例えば24時間である。
本発明の製造方法により得られる薄片状物質は、比表面積が、例えば200m2/g以上であることが好ましく、300m2/g以上であることがより好ましく、400m2/g以上であることが更に好ましい。また、比表面積の上限値は特に限定されないが、比表面積は、通常2600m2/g以下であり、1000m2/g以下であることが好ましい。
上記比表面積は、実施例に記載のBET法により求められるものである。
上記膨潤度は、例えば50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。
上記膨潤度は、精製工程を2回以上繰り返す場合は、最後の精製工程により得られる薄片状物質の膨潤度を言う。
上記積層体は、原子が平面的に並んだ1層からなる層状化合物が積層されて構成されるものであることが好ましい。上記積層体としては、例えば、2〜100層積層されて構成されるものが挙げられる。
精製工程に供する未精製組成物を予め低い硫酸濃度とし、本発明に係る緩やかな遠心分離を適用して更に硫酸を除去することで、薄片状物質が分散する作用効果がより顕著なものとなる。
該精製度は、通常は10以下であり、8以下であることが好ましい。
上記精製度における遠心分離時の組成物中の含有硫酸濃度は、精製工程を2回以上繰り返す場合は、最後の精製工程における遠心分離時の組成物中の含有硫酸濃度を言う。
一般的にグラフェンとは、sp2結合で結合した炭素原子が平面的に並んだ1層からなるシートをいい、グラフェンシートが多数積層されたものはグラファイトといわれるが、本発明における酸化グラフェンには、炭素原子1層のみからなるシートだけではなく、例えば2層〜100層積層した構造を有するものも含まれる。該酸化グラフェンは、例えば、炭素原子1層のみからなるシートであるか、又は、2層〜20層程度積層した構造を有するものであることが好ましい。
上記酸化黒鉛は、更に、カルボキシル基、水酸基、硫黄含有基等の官能基を有していてもよい。
以下では、上記被精製物質が酸化黒鉛である場合の本発明の薄片状物質の製造方法について更に詳しく説明する。
黒鉛を酸化する工程は、黒鉛が酸化されることになる限り、その方法は特に制限されず、上述したHummers法、Brodie法、Staudenmaier法等のいずれの方法における黒鉛の酸化方法を用いてもよく、後述する実施例に記載の方法のように、Hummers法における酸化方法を採用した、黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程であってもよい。このように、酸化工程が、黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記質量比は、26以上であることがより好ましく、27以上であることが更に好ましく、28以上であることが特に好ましい。また、該質量比は、54以下であることがより好ましく、48以下であることが更に好ましく、42以下であることが特に好ましい。
本発明の製造方法における酸化工程に用いる黒鉛は、1種のみであってもよく、粒子径、形状、比表面積や物性等のいずれかにおいて異なる2種以上のものを用いてもよい。
該全添加量は、100質量%以上であることがより好ましく、150質量%以上であることが更に好ましく、200質量%以上であることが一層好ましく、250質量%以上であることが特に好ましい。また、該全添加量は、450質量%以下であることがより好ましく、400質量%以下であることが更に好ましく、350質量%以下であることが特に好ましい。
上記酸化工程は、例えば空気中、又は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うことができる。また、上記酸化工程は、その圧力条件は特に限定されず、加圧条件下、常圧条件下、減圧条件下で行うことができるが、例えば常圧条件下で行うことが好ましい。
また上記酸化工程の時間は、0.5時間〜120時間とすることが好ましく、1時間〜15時間とすることがより好ましく、2時間〜10時間とすることが更に好ましい。
上記酸化工程は、連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。
また熟成させる時間は、0.1〜24時間であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜5時間である。
上記酸化反応停止工程は、例えば、反応液の温度を5〜60℃に設定し、反応液に水を添加し、次いで還元剤として過酸化水素水を添加して行うことができる。また、反応液を、5〜25℃に設定した、水又は過酸化水素水に添加して行ってもよい。
上記酸化反応停止工程の時間は、例えば0.01〜5時間とすることができる。
酸化黒鉛を加熱する温度は、100℃以上が好ましい。より好ましくは、120℃以上である。また、還元剤を使用するとともに酸化黒鉛を加熱する場合は、酸化黒鉛を加熱する温度は、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。酸化黒鉛の加熱温度に特に上限はないが、通常、2000℃以下で行われる。酸化黒鉛を加熱する時間は、0.1〜100時間が好ましい。より好ましくは、0.2〜50時間である。
酸化黒鉛の加熱は空気中で行ってもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。またその圧力条件は特に限定されず、加圧条件下、常圧条件下、減圧条件下で行うことができる。
本発明の還元型酸化黒鉛の製造方法は、精製工程で得られた酸化黒鉛を還元する工程を含む限り、その他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、上述した酸化反応停止工程等が挙げられる。
上記比表面積は、実施例に記載のBET法により求められるものである。
なお、上記電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池、固体高分子型燃料電池、金属−空気電池等が挙げられる。
上記熱電変換材料が用いられる熱電変換装置としては、例えば、地熱・温泉熱発電機、太陽熱発電機、工場や自動車等の廃熱発電機、体温発電機等の発電機や、該発電機を電源の少なくとも一つとして用いた各種電気製品、電動機、人工衛星等が挙げられる。
耐食性反応器に濃硫酸(試薬特級、和光純薬工業社製)40部と天然黒鉛(Z−5F、鱗片状黒鉛、伊藤黒鉛工業社製)1.00部を加えて混合液とした。混合液の内温が28℃となるよう水浴で温度調整を行いつつ、混合液を撹拌しながら過マンガン酸カリウム(試薬特級、和光純薬工業社製)を15分間隔で混合液中へ20回投入した。過マンガン酸カリウムの一回の投入量は0.15部であり、投入量の合計は3.0部であった。過マンガン酸カリウムの投入終了後、混合液を38℃まで昇温し液温を維持したまま2時間熟成を行った。その後60℃以下の液温を維持したままイオン交換水67部と30%過酸化水素水(試薬特級、和光純薬工業社製)2.8部を投入し反応を停止させた。当該手法により得られた酸化黒鉛含有スラリーを以下から“反応後スラリー”と呼称する。
上記反応後スラリー10部を濾過水洗により精製を行った。その後50℃真空下に於いて一晩乾燥を行うことで酸化黒鉛乾燥粉末を得た。得られた酸化黒鉛乾燥粉末は原料黒鉛に対して重量で1.5部であった。
上記反応後スラリーを遠心分離機(アズワン社製卓上遠心分離機AS185)によって精製した。遠心力(遠心加速度)は500Gに設定した。遠心分離し上澄みを廃棄し、残渣であるウェットケーキを得た。遠心管に、廃棄した上澄み液と同体積の純水を投入し、よく手で振盪させることでウェットケーキ中の酸化黒鉛を再分散させた後に、再度遠心分離を実施した。上記再分散と遠心分離の工程を合計5回実施した。各遠心分離工程中に含まれる硫酸濃度は遠心分離を繰り返した際の希釈倍率から算出した。各遠心分離工程に於けるウェットケーキの膨潤度と精製度は、以下の式で定義した。
精製度=log10(遠心分離時の含有硫酸濃度(質量%)/反応後スラリー中の硫酸濃度(質量%))
遠心力を1000Gとした以外は実施例1と同様の手法で還元型酸化黒鉛乾燥粉末を得た。
遠心力を2000Gとした以外は実施例1と同様の手法で還元型酸化黒鉛乾燥粉末を得た。
遠心力を10000Gとした以外は実施例1と同様の手法で還元型酸化黒鉛乾燥粉末を得た。
Claims (6)
- 薄片状物質を製造する方法であって、
該製造方法は、被精製物質を含む組成物を4000G以下の遠心加速度で遠心分離して精製する工程を含み、
該遠心分離して精製する工程を2回以上繰り返しておこなう場合は、全ての遠心分離して精製する工程を4000G以下の遠心加速度で実施することを特徴とする薄片状物質の製造方法。 - 前記遠心分離して精製する工程は、遠心分離機を用いておこなうことを特徴とする請求項1に記載の薄片状物質の製造方法。
- 前記遠心分離して精製する工程は、2回以上繰り返しておこなうことを特徴とする請求項1又は2に記載の薄片状物質の製造方法。
- 前記被精製物質は、層状化合物の積層体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄片状物質の製造方法。
- 前記被精製物質は、酸化黒鉛であることを特徴とする請求項4に記載の薄片状物質の製造方法。
- 酸化黒鉛が還元された還元型酸化黒鉛を製造する方法であって、
該製造方法は、酸化黒鉛を精製する工程と、
該精製工程で得られた酸化黒鉛を還元して還元型酸化黒鉛を得る工程とを含み、
該精製工程は、酸化黒鉛を含む組成物を4000G以下の遠心加速度で遠心分離する工程を含み、
該遠心分離する工程を2回以上繰り返しておこなう場合は、全ての遠心分離する工程を4000G以下の遠心加速度で実施することを特徴とする還元型酸化黒鉛の製造方法。
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