JP6961226B2 - 高分子化合物用硬さ調整剤及び光感応性複合材料 - Google Patents

高分子化合物用硬さ調整剤及び光感応性複合材料 Download PDF

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Description

本発明は、高分子化合物の硬さ調整を行う高分子化合物用硬さ調整剤及びその高分子化合物用硬さ調整剤を利用した光感応性複合材料に関する。
被着体同士を一体化する材料において、その材料の硬さを可逆的に変えることにより、粘着モード(軟らかい状態)と接着モード(硬い状態)とを繰り返し実現できれば、非常にその使い勝手が向上する。このような点に着目し、本発明者は、特許文献1に示すように、高分子化合物に対する硬さ調整を行う高分子化合物用硬さ調整剤として、液晶化合物と光応答性化合物(アゾベンゼン)とを含有しているものを既に提案している。
具体的には、その高分子化合物用硬さ調整剤においては、光応答性化合物として、異なる波長の照射光に基づく光異性化により、液晶化合物の相構造を液晶相から等方相へ転移させる第1光異性体と、該液晶化合物の相構造を等方相から液晶相へ転移させる第2光異性体とに変化させるものが用いられており、この光応答性化合物における第1光異性体と第2光異性体とを該光応答性化合物に対する照射光の照射に基づき切り替え選択することにより、液晶化合物が等方相又は液晶相に切り替えられる。
これにより、この高分子化合物用硬さ調整剤を高分子化合物に混合して光感応性複合材料を生成した場合には、液晶化合物の等方相又は液晶相の状態(配向秩序の状態)を光感応性複合材料の硬さ調整に利用できることになり、光感応性複合材料において、粘着モード(軟らかい状態)と接着モード(硬い状態)とを繰り返し再現することができる。
国際公開2016−121651
しかし、上記光感応性複合材料は、その使用に当たって、着色された状態になっている。具体的には、一般的(標準的)な光応答性化合物としてのアゾベンゼンが高分子化合物用硬さ調整剤の一成分として光感応性複合材料に用いられる場合においては、特に視認され易い状況下にある粘着モード(液晶化合物が等方相状態)時に黄色ないしは橙色となり、ユーザは、その光感応性複合材料が着色されることに基づき違和感を受ける傾向にある。
このような原因について調べたところ、光感応性複合材料に違和感ある色が着色されるのは、光応答性化合物における光異性体(分子構造)が可視光領域において光吸収特性(吸収スペクトル)を有するためであると判明した。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、粘着モードと接着モードとを可逆的に実現できる光感応性複合材料についての色の影響力を低減できる高分子化合物用硬さ調整剤を提供することにある。
第2の目的は、上記高分子化合物用硬さ調整剤が用いられる光感応性複合材料を提供することにある。
前記第1の目的を達成するために本発明にあっては、下記(1)〜(5)の構成が採用されている。
(1)液晶化合物と光応答性化合物とを含有していて、高分子化合物に対する混合をもって該高分子化合物に対する硬さ調整を行う高分子化合物用硬さ調整剤であって、
前記光応答性化合物は、該光応答性化合物をスチルベン誘導体とすることにより、異なる波長の照射光に基づく光異性化をもって、前記液晶化合物の相構造を液晶相から等方相へ転移させる第1光異性体と、該液晶化合物の相構造を等方相から液晶相へ転移させる第2光異性体とに変化すると共に、該第1、第2光異性体のうち、少なくとも第1光異性体が、可視光全域に近い範囲から該可視光全域に亘って、透過性を有している構成とされている。
この構成によれば、光応答性化合物は、その光応答性化合物が第1光異性体に光異性化しているときには、可視光下において、第1光異性体の分子構造に基づく透過性により無色透明を示すことになり、このとき、液晶化合物が相構造(等方相)に基づき無色透明となっていることと相まって、当該高分子化合物用硬さ調整剤は無色透明となる。このため、当該高分子化合物用硬さ調整剤を高分子化合物に混合して光感応性複合材料を生成しても、その光感応性複合材料は、無色透明となる。
他方、光応答性化合物が第2光異性体に光異性化しているときには、液晶化合物が、相構造として液晶相となって、白色不透明を示すことから、仮に第2光異性体が着色されたものとなっていても、液晶相の白色不透明に基づき、その第2光異性体が着色されていることに関しての影響力を低下することができ、そのことが光感応性複合材料に反映される。
したがって、接着モードにおいて、液晶化合物における液晶相が白色不透明として視認されることを利用しながら、視認され易い状況下にある粘着モードにおいては、光感応性複合材料についての色の影響力をなくすことができ、光感応性複合材料において、粘着モード及び接着モードのいずれの場合であっても、色の影響力を低減してユーザの違和感を低減できる。
(2)前記(1)の構成の下で、
前記光応答性化合物は、該光応答性化合物をスチルベン誘導体とすることにより、該光応答性化合物における第2光異性体についても、可視光全域に近い範囲から該可視光全域に亘って、透過性を有している、
構成とされている。
この構成によれば、光応答性化合物は、その光応答性化合物が第2光異性体に光異性化しているときには、可視光下において、第2光異性体の分子構造に基づく透過性により無色透明を示すことになり、このとき、光感応性複合材料は、液晶化合物の液晶相に基づく白色不透明以上には着色されない。
このため、光感応性複合材料において、粘着モード及び接着モードのいずれの場合であっても、前記(1)の場合よりも、一層、色の影響力及び色に対する違和感を低減できる。
(3)前記(1)の構成の下で、
前記光応答性化合物は、該光応答性化合物をスチルベン誘導体とすることにより、該光応答性化合物の第1異性体がエネルギ障壁を超すために必要なエネルギを所定の標準値よりも大きくしている構成とされている。
この構成によれば、光応答性化合物が第1光異性体から第2光異性体へ熱異性化することに関し、標準的な光応答性化合物を用いる場合に比して低下させることができ(熱的安定性向上)、光応答性化合物が第1光異性体の状態(液晶化合物が等方相状態)に維持されることを高めて、光感応性複合材料が粘着モードに維持されることを高めることができる。これにより、光感応性複合材料を長期に亘って粘着モードで保管でき、その長期の期間において、いつでも直ちに、光感応性複合材料を、粘着モードをもって使用できる。
(4)前記(3)の構成の下で、
前記所定の標準値が、アゾベンゼンの第1異性体がエネルギ障壁を超すために必要なエネルギとされている構成とされている。
この構成によれば、光応答性化合物が第1光異性体から第2光異性体へ熱異性化することに関し、光応答性化合物として標準的なアゾベンゼンを用いる場合よりも、低下させることができ、熱的安定性を高めることができる。このため、光応答性化合物としてアゾベンゼンを用いる場合に比して、光感応性複合材料を長期に亘って粘着モードで保管でき、その長期の期間において、いつでも直ちに、光感応性複合材料を、粘着モードをもって使用できる。
(5)前記(1)の構成の下で、
前記液晶化合物と前記光応答性化合物とが、液晶性と光応答性とを兼ね備える光応答性化合物をもって構成されている構成とされている。
この構成によれば、液晶性と光応答性とを兼ね備える光応答性化合物を当該硬さ調整剤として用いる場合においても、前記(1)と同様の作用効果を生じさせることができる。
前記第2の目的を達成するために本発明にあっては、下記(6)〜(8)の構成が採用されている。
(6)高分子化合物に硬さ調整剤が混合され、該硬さ調整剤液晶化合物と光応答性化合物とが含有されている複合材料において、
前記光応答性化合物は、該光応答性化合物をスチルベン誘導体とすることにより、異なる波長の照射光に基づく光異性化をもって、前記液晶化合物の相構造を液晶相から等方相へ転移させる第1光異性体と、該液晶化合物の相構造を等方相から液晶相へ転移させる第2光異性体とに変化すると共に、該第1、第2光異性体のうち、少なくとも第1光異性体が、可視光全域に近い範囲から該可視光全域に亘って、透過性を有している構成とされている。
この構成によれば、前記(1)に係る高分子化合物用硬さ調整剤が用いられた光感応性複合材料を提供できる。
(7)前記(6)の構成の下で、
前記光応答性化合物は、該光応答性化合物をスチルベン誘導体とすることにより、該光応答性化合物の第1異性体がエネルギ障壁を超すために必要なエネルギを所定の標準値よりも大きくしている構成とされている。
この構成によれば、前記(3)に係る高分子化合物用硬さ調整剤が用いられた光感応性複合材料を提供できる。
(8)前記(6)又は(7)の構成の下で、
前記液晶化合物と前記光応答性化合物とが、液晶性と光応答性とを兼ね備える光応答性化合物をもって構成されている構成とされている。
この構成によれば、前記(5)に係る高分子化合物用硬さ調整剤が用いられた光感応性複合材料を提供できる。
以上の内容から本発明によれば、粘着モードと接着モードとを可逆的に実現できる光感応性複合材料についての色の影響力を低減できる高分子化合物用硬さ調整剤及び光感応性複合材料を提供できる。
光感応性複合材料PCR-5-40の動的粘弾性測定の結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-5-50の動的粘弾性測定の結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-5-60の動的粘弾性測定の結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-5-60に対して紫外光を照射したときにおける動的粘弾性の時間変化を示す図。 光感応性複合材料PCR-5-70の動的粘弾性測定の結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-6-40の動的粘弾性測定の結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-6-50の動的粘弾性測定の結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-6-60の動的粘弾性測定の結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-5-60のタック性測定結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-5-60の光学特性の測定結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-6-60の光学特性の測定結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-7-60の動的粘弾性測定の結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-7-60に対して紫外光を照射したときにおける動的粘弾性の時間変化を示す図。 光感応性複合材料PCR-7-70の動的粘弾性測定の結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-7-70に対して紫外光を照射したときにおける動的粘弾性の時間変化を示す図。 光感応性複合材料PCR-8-60の動的粘弾性測定の結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-8-60に対して紫外光を照射したときにおける動的粘弾性の時間変化を示す図。 光感応性複合材料PCR-8-70の動的粘弾性測定の結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-8-70に対して紫外光を照射したときにおける動的粘弾性の時間変化を示す図。 光感応性複合材料PCR-8-80の動的粘弾性測定の結果を示す図。 光感応性複合材料PCR-8-80に対して紫外光を照射したときにおける動的粘弾性の時間変化を示す図。
以下、本発明の実施形態について説明する。
1.本実施形態に係る硬さ調整剤は、高分子化合物と共に含有されて光感応性複合材料を構成し、その光感応性複合材料中における高分子化合物に対する硬さ調整を可逆的に行う役割を有している。これにより、光感応性複合材料において、粘着モード(軟らかい状態)と接着モード(硬い状態)とが可逆的に実現される(可逆的な粘接着剤の実現)。
(1)前記高分子化合物は、前記光感応性複合材料の主材料としての役割を有し、前記硬さ調整剤による硬さ調整の対象となる。
(i)高分子化合物としては、一般的な高分子化合物を用いることができる。具体的には、アクリル系ポリマー、メタクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、オレフィン系ポリマー、ビニル系ポリマー等を上記高分子化合物として用いることができ、その重量平均分子量としては、使用する高分子化合物の臨界分子量以上であるものが好ましい。高分子化合物の重量平均分子量が臨界分子量未満では、高分子化合物同士の良好な絡み合いが起きにくくなり、粘着性と接着力とが低下する傾向になるからである。
これらの高分子化合物は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよく、さらには、上記高分子化合物として、化学的に架橋された架橋高分子化合物も使用することができる。
高分子化合物の質量は、光感応性複合材料全体の質量の40%〜90%であることが好ましく、40%〜60%であることがより好ましい。上記「40%」未満では、相分離した硬さ調整剤が光感応性複合材料表面(被着材との界面)ににじみ出てきやすくなり,界面が滑りやすくなって、接着力が低下する(接着モードにしても,滑って剥離する状態)一方、上記「90%」を超えると、後述するように、液晶化合物の作用を利用して良好な粘着状態を得ることが難しくなるからである(ガラス転移温度があまり変化しないこと)。
(ii)高分子化合物としては、結晶性高分子でも非晶性高分子でも用いることができる。しかし、ユーザに与える色の影響力を考慮した場合、可視光下において、白色不透明を示す結晶性高分子よりも、無色透明を示す非晶性高分子を用いた方が好ましい。
(2)前記硬さ調整剤は、前記高分子化合物の硬さを調整するべく、構成成分として液晶化合物と光応答性化合物とを含有している。
(2−1)液晶化合物は、高分子化合物に対する可塑化調整剤としての役割を有している。
(i)上記高分子化合物に対する可塑化調整剤としての役割について具体的に説明する。液晶化合物は、基本的に、高分子化合物に対して相溶状態のときには、その含有量が多くなるほど高分子化合物に対する可塑剤としての機能が高まる現象、特性を示す。このため、このときには、光感応性複合材料のガラス転移温度が低下し(軟らかくなること)、光感応性複合材料は粘着モードに向けて変化する。しかしながら、高分子化合物に対してある濃度以上に液晶化合物が含有されたときには、液晶化合物が高分子化合物に対して相分離することになり、その相分離した液晶化合物は高分子化合物に対して可塑剤として機能しなくなる。このため、光感応性複合材料のガラス転移温度は、それ以上低下しなくなる。
他方、高分子化合物に対して液晶化合物を積極的に相分離状態にすれば、可塑剤としての機能が生じないことになって高分子化合物の特性(硬さが硬い特性)が大きく反映されることになる。
本発明者は、このような高分子化合物に対する液晶化合物の現象、特性に着目し、高分子化合物に対する液晶化合物の相分離には、液晶化合物の配向秩序が関与し、液晶化合物の配向秩序を等温的に崩して無くすことができれば、可塑剤として機能する液晶化合物(正確には分子)が増えると考えるに至り、高分子化合物に対する可塑化調整に、液晶化合物における相構造としての液晶相(配向秩序有り)と等方相(配向秩序無し)との利用を思い付き、その液晶化合物における液晶相と等方相との調整により光感応性複合材料のガラス転移温度の可逆的な調整を行うこととした。これにより、液晶化合物は、高分子化合物に対する可塑化調整剤として機能し、光感応性複合材料において粘着モード(軟らかい状態)と接着モード(硬い状態)とが可逆的に実現される。
(ii)液晶化合物としては、一般的な液晶化合物を1種類または2種類以上使用することができる。具体的には、4-シアノ-4’-n-ペンチルビフェニル、4-シアノ-4’-n-ヘプチルビフェニル、4-シアノ-4’-n-へプチロキシビフェニル等のシアノビフェニル類;コレステリルアセテート、コレステリルベンゾエート等のコレステリルエステル類;4-カルボキシフェニルエチルカーボネート、4-カルボキシフェニル-n-ブチルカーボネート等の炭酸エステル類;安息香酸フェニルエステル、フタル酸ビフェニルエステル等のフェニルエステル類;ベンジリデン-2-ナフチルアミン、4’-n-ブトキシベンジリデン-4-アセチ
ルアニリン等のシッフ塩基類;N,N’-ビスベンジリデンベンジジン、p-ジアニスアルベンジジン等のベンジジン類;4,4’-アゾキシジアニソール、4,4’-ジ-n-ブトキシアゾキシベンゼン等のアゾキシベンゼン類;ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)等の液晶高分子、4-メルカプト-4’-n−ビフェニル、4-シアノ-4’-(ω-メルカプトペンチル)ビフェニル等の液晶分子に構造の似た液晶様分子等を用いることができる。このうち特に、4−シアノ−4’−ペンチルビフェニルを用いることが好ましい。
(iii)液晶化合物の質量は、光感応性複合材料全体の10%〜60%であることが好ましく、40%〜60%であることがより好ましい。光感応性複合材料中の液晶化合物の質量が上記「60%」を超えると、相分離した硬さ調整剤が光感応性複合材料表面(被着材との界面)ににじみ出てきやすくなり,界面が滑りやすくなって、接着力が低下する(接着モードにしても,滑って剥離する状態)一方、光感応性複合材料中の質量が上記「10%」未満のときには、液晶化合物が等方相に転移しても、そのことによって高分子化合物に対する可塑化を高めることができず(光感応性複合材料のガラス転移温度降下にあまり影響を与えないこと)、光感応性複合材料において良好な粘着状態を得ることが難しいからである。
(iv)液晶化合物は、それ自体の色に関し、可視光下において、相構造が液晶相のときには、光の散乱に基づき白色不透明の状態を示し、相構造が等方相のときには、無色透明の状態を示す。
(2−2)光応答性化合物は、照射光に応じた光異性化により、液晶化合物の相構造を等方相と液晶相との間で切り替える役割を有している。
(i)光応答性化合物は、光の吸収により分子構造が変化(光異性化)するものであり、異なる波長の照射光に応じた光異性化により、光応答性化合物は、第1光異性体としてのシス体と、第2光異性体としてのトランス体とに変化する。シス体は、液晶化合物の配向や物性に影響を与える屈曲形状等の分子構造をしており、光応答性化合物と液晶化合物(液晶相)とが共に存在する下で光応答性化合物がシス体に光異性化されたときには、その分子構造に基づき、液晶相(配向秩序有り)の状態が乱されて、液晶化合物の相構造が液晶相から等方相(配向秩序無し)へ導かれる。トランス体は、液晶化合物の配向や物性に影響を与えない棒状等の分子構造をしており、光応答性化合物と液晶化合物(等方相)とが共に存在する下で光応答性化合物がトランス体に光異性化されたときには、その分子構造に基づき液晶化合物の相構造が等方相(配向秩序無し)から液晶相(配向秩序有り)に導かれる。この光応答性化合物の光異性化により、液晶化合物の配向秩序が調整され、液晶化合物は、高分子化合物に対する可塑化調整剤として機能する。
(ii)液晶化合物の質量と光応答性化合物の質量の和に対する光応答性化合物の質量は2%〜100%であることが好ましい。液晶化合物の質量と光応答性化合物の質量の和に対する光応答性化合物の質量が上記「2%」未満であると、光異性化に基づく液晶化合物の等方相(配向秩序無し)によって高分子化合物に対する可塑剤としての機能を高められず、光感応性複合材料のガラス転移温度を低下させ難くなるからである。このため、この場合には、光感応性複合材料の硬さがあまり変化せず、光感応性複合材料において良好な粘着状態を得ることが難しいことになる。
勿論、光応答性化合物が室温で液晶性をも示す光応答性化合物の場合には、その光応答性化合物単体を、液晶化合物と光応答性化合物の混合物に代えて用いることができる。上記「100%」は、この「光応答性化合物」を用いる場合が相当し、この場合には、その「光応答性化合物」のみが硬さ調整剤を構成する。
(iii)光応答性化合物の選択には、光吸収特性が考慮されている。具体的には、可視
光に対して吸収特性を示さず紫外光領域に対して吸収特性を示す光応答性化合物が選択されており、特に波長400nm以上の領域に対して吸収特性を示さず且つ250nm〜400nm未満の領域に光吸収特性を示すものが好ましい。後述するように、光応答性化合物の色について配慮したためである。このため、光応答性化合物に対する光異性化のための照射光としては、トランス体からシス体への光異性化、シス体からトランス体への光異性化のいずれにおいても、波長が異なるものの、エネルギ障壁を超えるべく紫外光領域に属するものが用いられる。具体的には、トランス体からシス体に光異性化するに際しては、300〜380nmの照射光が用いられ、シス体からトランス体に光異性化するに際しては、250〜290nmの照射光が用いられる。
(iv)また、上記光吸収特性に伴い、光応答性化合物は、そのシス体及びトランス体が、可視光全域に近い範囲から可視光全域に亘って、透過性を有するものとなっている。これにより、シス体及びトランス体(光応答性化合物)は、可視光下で無色透明に見えることになり、シス体及びトランス体の色が光感応性複合材料の着色に影響を与えず、ユーザの色に対する違和感を低減できることになる。このようなシス体及びトランス体の色が無色透明の光応答性化合物としては、スチルベン誘導体等を用いることができる。
この場合、光応答性化合物として、少なくともシス体が可視光全域に近い範囲から可視光全域に亘って透過性を有することとし、トランス体についてはそこまで透過性を要求しないものを用いてもよい。トランス体によって転移される液晶化合物の液晶相が光を散乱して白色不透明を示すことから、それを利用して、仮にトランス体が着色されたものになるとしても、その色に対する違和感を低減できるからである。
(v)光応答性化合物としては、シス体からトランス体への熱異性化を低く抑えるものが用いられている。熱的安定性を高めて光応答性化合物がシス体の状態に維持できることを高め、粘着モードの状態を長期に亘って維持できるようにするためである。このため、光応答性化合物としては、シス体がエネルギ障壁を超すためのエネルギ(エネルギ障壁のピーク値とシス体のエネルギ順位との差分)に関し、標準的な光応答性化合物としての無置換アゾベンゼンのものよりも大きいものが用いられている。
具体的に説明すれば、本発明者は、各光応答性化合物においては、その各光応答性化合物におけるπ結合が、シス体とトランス体との間のエネルギ障壁を形成し、そのエネルギ障壁が、シス体からトランス体への熱異性化に関与していると考えており、これに基づき、各光応答性化合物におけるπ結合エネルギの違いにより各光応答性化合物における熱異性化の抑制の優劣を判別できると考えている。このため、その熱異性化抑制の優劣の判別に当たっては、一般的に用いられている無置換アゾベンゼンを標準的な光応答性化合物として設定し、その無置換アゾベンゼンのπ結合(N=N)エネルギ41kcalを、シス体がエネルギ障壁を超すための実質上の標準値(所定の標準値)として捉え、その標準値よりも大きい値を有する光応答性化合物を選ぶこととしている。このような観点から、光応答性化合物として、無置換スチルベン(π結合(C=C)エネルギ74kcal)、スチルベン誘導体等を選択することができる。
2.したがって、このような硬さ調整剤を高分子化合物に混合して生成された光感応性複合材料においては、その光感応性複合材料に紫外光を照射して、光応答性化合物をシス体に光異性化させれば、液晶化合物の相構造が等方相に転移することになり、これにより、液晶化合物の配向秩序を無くして可塑剤として機能する液晶化合物(正確には分子)が増えることになる。これに伴い、光感応性複合材料のガラス転移温度が低くなり、光感応性複合材料は粘着モードとなる。
この場合、高分子化合物として無色透明を示すもの(非晶性高分子化合物)を使用することを前提とすれば、液晶化合物が等方相であることに基づき無色透明を示すと共に、光応答性化合物が可視光全域に近い範囲から可視光全域に亘って透過性を有して無色透明を示すことから、光感応性複合材料は無色透明を示すことになる。このため、特に視認され易い状況下にある粘着モードにおいて、光感応性複合材料についての色の影響力をなくしてユーザの違和感をなくすことができる。
しかもこの場合、光応答性化合物として、シス体からトランス体へ熱異性化することに関し、標準的な光応答性化合物(具体的にはアゾベンゼン)を用いる場合に比して低下させたものが用いられ(熱的安定性向上)、シス体の状態(液晶化合物が等方相状態)に維持することが高められていることから、トランス体への光異性化のための照射光が照射されない限り、光感応性複合材料は、長期に亘って粘着モードで維持、保管される。これにより、長期の期間に亘っていつでも直ちに、光感応性複合材料を粘着モードをもって使用できる。
他方、上記光感応性複合材料に、上記シス体に光異性化するための照射光の波長とは異なる照射光を照射して、光応答性化合物をトランス体に光異性化すれば、液晶化合物の相構造が液晶相に転移することになり、液晶化合物の配向秩序が増えて液晶化合物の可塑剤としての機能が大幅に低下する。このため、光感応性複合材料のガラス転移温度が上昇することになり、光感応性複合材料を接着モードにすることができる。
この場合、光応答性化合物がトランス体に光異性化し、液晶化合物の相構造が液晶相となって、白色不透明を示していることから、仮にトランス体が着色されたものとなっていても、液晶相の白色不透明に基づき、そのトランス体が着色されていることに関しての影響力を低下することができ、そのことが光感応性複合材料に反映される。また、光応答性化合物がスチルベン誘導体であるときのように、トランス体が無色透明であるときには、光感応性複合材料における色は液晶相の白色不透明以上には変化しない。
したがって、光感応性複合材料において、粘着モード及び接着モードのいずれの場合であっても、色の影響力を低減してユーザの違和感を低減できる。
3.実施例1
(実施例1で使用した材料)
実施例1では、下記の材料を使用した。
高分子化合物 :ポリメタクリル酸メチル(Aldrich Chemical社製,18223-0,重量平均分子量は約12万)
液晶化合物 :4-シアノ-4’-ペンチルビフェニル(メルク・ジャパン株式会社製,K-15)
光応答性化合物:4,4’-ジメチルスチルベン(東京化成工業株式会社製,D2708)
光応答性化合物:4-メチルスチルベン(東京化成工業株式会社製,M1492)
(光応答性液晶 4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルの調製)
7 gの4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルと0.292 gの4,4’-ジメチルスチルベンを混合し,60 °Cに加温しながら攪拌することにより,4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを調製した。
(光応答性液晶 4-メチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルの調製)
9 gの4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルと0.35 gの4-メチルスチルベンを混合し,60 °Cに加温しながら攪拌することにより,4-メチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを調製した。
(光感応性複合材料(光感応性樹脂) PCR-5-30の調製)
1.4 gのポリメタクリル酸メチルと0.6 gの4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを10 mLのアセトンに溶解し,40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、90 °Cでアセトンを減圧留去して光感応性複合材料PCR-5-30を調製した。光感応性複合材料PCR-5-30には、ポリメタクリル酸メチルが70質量%、4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルが30質量%含まれている。
(光感応性複合材料 PCR-5-40の調製)
1.2 gのポリメタクリル酸メチルと0.8 gの4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを10 mLのアセトンに溶解し,40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、90 °Cでアセトンを減圧留去して光感応性複合材料PCR-5-40を調製した。光感応性複合材料PCR-5-40には、ポリメタクリル酸メチルが60質量%、4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルが40質量%含まれている。
(光感応性複合材料 PCR-5-50の調製)
1.0 gのポリメタクリル酸メチルと1.0 gの4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを10 mLのアセトンに溶解し,40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、90 °Cでアセトンを減圧留去して光感応性複合材料PCR-5-50を調製した。光感応性複合材料PCR-5-50には、ポリメタクリル酸メチルが50質量%、4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルが50質量%含まれている。
(光感応性複合材料 PCR-5-60の調製)
0.8 gのポリメタクリル酸メチルと1.2 gの4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを10 mLのアセトンに溶解し,40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、90 °Cでアセトンを減圧留去して光感応性複合材料PCR-5-60を調製した。光感応性複合材料PCR-5-60には、ポリメタクリル酸メチルが40質量%、4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルが60質量%含まれている。
(光感応性複合材料 PCR-5-70の調製)
0.6 gのポリメタクリル酸メチルと1.4 gの4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを10 mLのアセトンに溶解し,40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、90 °Cでアセトンを減圧留去して光感応性複合材料PCR-5-70を調製した。光感応性複合材料PCR-5-70には、ポリメタクリル酸メチルが30質量%、4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルが70質量%含まれている。
(光感応性複合材料 PCR-6-40の調製)
1.2 gのポリメタクリル酸メチルと0.8 gの4-メチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを10 mLのアセトンに溶解し,40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、90 °Cでアセトンを減圧留去して光感応性複合材料PCR-6-40を調製した。光感応性複合材料PCR-6-40には、ポリメタクリル酸メチルが60質量%、4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルが40質量%含まれている。
(光感応性複合材料 PCR-6-50の調製)
1.0 gのポリメタクリル酸メチルと1.0 gの4-メチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを10 mLのアセトンに溶解し,40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、90 °Cでアセトンを減圧留去して光感応性複合材料PCR-6-50を調製した。光感応性複合材料PCR-6-50には、ポリメタクリル酸メチルが50質量%、4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルが50質量%含まれている。
(光感応性複合材料 PCR-6-60の調製)
0.8 gのポリメタクリル酸メチルと1.2 gの4-メチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを10 mLのアセトンに溶解し,40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、90 °Cでアセトンを減圧留去して光感応性複合材料PCR-6-60を調製した。光感応性複合材料PCR-6-60には、ポリメタクリル酸メチルが40質量%、4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルが60質量%含まれている。
(光応答性液晶 4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルの相転移温度)
4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを2枚のスライドガラスに挟み,昇温速度5 °C/minで加熱しながらネマチック相−等方相相転移温度を,偏光顕微鏡観察により評価したところ,38 °Cであった。つぎに、4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルに波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルのネマチック相−等方相転移温度転移温度は28 °Cとなり,紫外光照射により4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルの等方相−ネマチック相転移温度が低下することを確認した。
次に,上記の波長365 nmの紫外光を照射した後の4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルに,波長280 nmの紫外光(光強度 100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ,4,4’-ジメチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルのネマチック相−等方相転移温度転移温度は38 °Cに上昇することを確認した。
(光応答性液晶 4-メチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルの相転移温度)
4-メチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルを2枚のスライドガラスに挟み,昇温速度5 °C/minで加熱しながらネマチック相−等方相相転移温度を,偏光顕微鏡観察により評価したところ,35 °Cであった。つぎに、4-メチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルに波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、4-メチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルのネマチック相−等方相転移温度転移温度は29 °Cとなり,紫外光照射により4-メチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルのネマチック相−等方相転移温度が低下することを確認した。
次に,上記の波長365 nmの紫外光を照射した後の4-メチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルに,波長280 nmの紫外光(光強度 100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ,4-メチルスチルベン/4-シアノ-4’-ペンチルビフェニルのネマチック相−等方相転移温度転移温度は35 °Cに上昇することを確認した.
(光感応性複合材料 PCR-5-40の動的粘弾性測定)
図1はPCR-5-40の動的粘弾性測定結果を示している。PCR-5-40を動的粘弾性測定装置(アントンパールジャパン社,MCR302)に設置し、直径12 mmのパラレルプレートを用い、ギャップ2 μm、歪み0.1 %,周波数1.0 Hzの条件で,温度 10 °Cから昇温速度5 °C/minで80 °Cまでの加熱過程における動的粘弾性を評価した。ガラス転移温度は59 °Cであった。つぎに、PCR-5-40に波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、ガラス転移温度が57 °Cとなり,紫外光照射によりPCR-5-40のガラス転移温度が低下することを確認した。
次に,上記の波長365 nmの紫外光を照射した後のPCR-5-40に,波長280 nmの紫外光(光強度 100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ,PCR-5-40のガラス転移温度転移温度は59 °Cに上昇することを確認した.
ここで、図1中、符号の意味は、下記の通りである(以下、他図においても同じ)。
G′initial: 紫外光照射前の貯蔵弾性率
G″initial: 紫外光照射前の損失弾性率
Tanδinitial: G″initialをG′initialで割った値(最大値となる温度がガラス転移温度Tginitialを示す)
G′UV: 紫外光照射後の貯蔵弾性率
G″UV: 紫外光照射後の損失弾性率
tanδUV: G″UVをG′UVで割った値(最大値となる温度がガラス転移温度TgUVを示す)
(光感応性複合材料 PCR-5-50の動的粘弾性測定)
図2はPCR-5-50の動的粘弾性測定結果を示している。PCR-5-50を動的粘弾性測定装置(アントンパールジャパン社,MCR302)に設置し、直径12 mmのパラレルプレートを用い、ギャップ2 μm、歪み0.1 %,周波数1.0 Hzの条件で,温度 10 °Cから昇温速度5 °C/minで80 °Cまでの加熱過程における動的粘弾性を評価した。ガラス転移温度は49 °Cであった。つぎに、PCR-5-50に波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、ガラス転移温度が48 °Cとなり,紫外光照射によりPCR-5-50のガラス転移温度が低下することを確認した。
次に,上記の波長365 nmの紫外光を照射した後のPCR-5-50に,波長280 nmの紫外光(光強度 100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ,PCR-5-50のガラス転移温度転移温度は49 °Cに上昇することを確認した.
(光感応性複合材料 PCR-5-60の動的粘弾性測定)
図3はPCR-5-60の動的粘弾性測定結果を示している。PCR-5-60を動的粘弾性測定装置(アントンパールジャパン社,MCR302)に設置し、直径12 mmのパラレルプレートを用い、ギャップ2 μm、歪み0.1 %,周波数1.0 Hzの条件で,温度 10 °Cから昇温速度5 °C/minで80 °Cまでの加熱過程における動的粘弾性を評価した。ガラス転移温度は43 °Cであった。つぎに、PCR-5-60に波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、ガラス転移温度が32 °Cとなり,紫外光照射によりPCR-5-60のガラス転移温度が低下することを確認した。
次に,上記の波長365 nmの紫外光を照射した後のPCR-5-60に,波長280 nmの紫外光(光強度 100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ,PCR-5-60のガラス転移温度転移温度は43 °Cに上昇することを確認した。
図4は温度34 °CにおいてPCR-5-60に波長365 nmの紫外光を照射したときの動的粘弾性の時間変化を示している.紫外光照射前の貯蔵弾性率G′は3.4×105Paであり,損失弾性率G″は4.3×105 Paであった。ここに紫外光(100 mW/cm2)を約300秒間照射すると,貯蔵弾性率G′が1.2×105 Pa,損失弾性率G″が0.94×105 Paとなり,PCR-5-60は紫外光照射により軟らかくなることを確認した。紫外光照射を止めた後も,これらの弾性率は温度34 °Cにおいて,少なくとも1か月変化することはなく,長期安定性を示した。
次に,上記の波長365 nmの紫外光を照射した後のPCR-5-60に,波長280 nmの紫外光(光強度 100 mW/cm2)を約300秒間照射すると,G′は3.4×105Paであり,損失弾性率G″は4.3×105 Paとなり,PCR-5-60が硬くなることを確認した。
(光感応性複合材料 PCR-5-70の動的粘弾性測定)
図5はPCR-5-70の動的粘弾性測定結果を示している。PCR-5-70を動的粘弾性測定装置(アントンパールジャパン社,MCR302)に設置し、直径12 mmのパラレルプレートを用い、ギャップ2 μm、歪み0.1 %,周波数1.0 Hzの条件で,温度 10 °Cから昇温速度5 °C/minで80 °Cまでの加熱過程における動的粘弾性を評価した。ガラス転移温度は43 °Cであった。つぎに、PCR-5-70に波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、ガラス転移温度が32 °Cとなり,紫外光照射によりPCR-5-
70のガラス転移温度が低下することを確認した。
次に,上記の波長365 nmの紫外光を照射した後のPCR-5-70に,波長280 nmの紫外光(光強度 100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ,PCR-5-70のガラス転移温度転移温度は43 °Cに上昇することを確認した.
(光感応性複合材料 PCR-6-40の動的粘弾性測定)
図6はPCR-6-40の動的粘弾性測定結果を示している。PCR-6-40を動的粘弾性測定装置(アントンパールジャパン社,MCR302)に設置し、直径12 mmのパラレルプレートを用い、ギャップ2 μm、歪み0.1 %,周波数1.0 Hzの条件で,温度 10 °Cから昇温速度5 °C/minで80 °Cまでの加熱過程における動的粘弾性を評価した。ガラス転移温度は66 °Cであった。つぎに、PCR-6-40に波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、ガラス転移温度が64 °Cとなり,紫外光照射によりPCR-6-40のガラス転移温度が低下することを確認した。
次に,上記の波長365 nmの紫外光を照射した後のPCR-6-40に,波長280 nmの紫外光(光強度 100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ,PCR-6-40のガラス転移温度転移温度は66 °Cに上昇することを確認した.
(光感応性複合材料 PCR-6-50の動的粘弾性測定)
図7はPCR-6-50の動的粘弾性測定結果を示している。PCR-6-50を動的粘弾性測定装置(アントンパールジャパン社,MCR302)に設置し、直径12 mmのパラレルプレートを用い、ギャップ2 μm、歪み0.1 %,周波数1.0 Hzの条件で,温度 10 °Cから昇温速度5 °C/minで80 °Cまでの加熱過程における動的粘弾性を評価した。ガラス転移温度は47 °Cであった。つぎに、PCR-6-50に波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、ガラス転移温度が44 °Cとなり,紫外光照射によりPCR-6-50のガラス転移温度が低下することを確認した。
次に,上記の波長365 nmの紫外光を照射した後のPCR-6-50に,波長280 nmの紫外光(光強度 100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ,PCR-6-50のガラス転移温度転移温度は47 °Cに上昇することを確認した。
(光感応性複合材料 PCR-6-60の動的粘弾性測定)
図8はPCR-6-60の動的粘弾性測定結果を示している。PCR-6-60を動的粘弾性測定装置(アントンパールジャパン社,MCR302)に設置し、直径12 mmのパラレルプレートを用い、ギャップ2 μm、歪み0.1 %,周波数1.0 Hzの条件で,温度 10 °Cから昇温速度5 °C/minで80 °Cまでの加熱過程における動的粘弾性を評価した。ガラス転移温度は42 °Cであった。つぎに、PCR-6-60に波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、ガラス転移温度が35 °Cとなり,紫外光照射によりPCR-6-60のガラス転移温度が低下することを確認した。
次に,上記の波長365 nmの紫外光を照射した後のPCR-6-60に,波長280 nmの紫外光(光強度 100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ,PCR-6-60のガラス転移温度転移温度は42 °Cに上昇することを確認した.
(光感応性複合材料 PCR-5-60のタック性測定)
図9はPCR-5-60の粘着剤としての特性であるタック性測定結果の一例を示している。PCR-5-60を動的粘弾性測定装置(アントンパールジャパン社,MCR302)に設置し、波長365 nmの紫外光(光強度 100 mW/cm2)を600秒間照射した後,直径12 mmのパラレルプレートを用い、0.1 mm/sの速度で昇降させ, PCR-5-60への接触と剥離を10回繰り返し,剥離時の垂直抗力を,温度 34 °Cにおいて評価をした。10回の評価の平均値は-0.099 ± 0.0056 N/mm2であり,PCR-5-60は紫外光照射によりタック性を発現し,粘着剤として機能することを確認した.この値は,紫外光照射を止めた後も,温度34 °Cにおいて少なくとも1か月間変化することはなく,長期安定性を示した。また,市販の両面テープ(ニチバン株
式会社製,NWBB-10)を用いた参照実験での10回のタック性評価の平均値は-0.107 ± 0.0056 N/mm2であり,紫外光照射後のPCR-50-60は,市販両面テープと遜色ないタック性を有することを確認した。
(光感応性複合材料 PCR-5-60の光学特性測定)
図10はPCR-5-60の光学特性測定結果を示している。PCR-5-60を用いて作製したフィルム(厚さ約0.2 μm)は,温度31 °Cにおいて白色不透明であった。つぎに、PCR-5-60に波長365 nmの紫外光(光強度300 mW/cm2)を10分間照射したところ,PCR-5-60フィルムは無色透明となった。紫外光照射後のフィルムは,温度31°Cにおいて少なくとも1か月間透明性が変化することはなく,長期安定性を示した。
(光感応性複合材料 PCR-6-60の光学特性測定)
図11はPCR-6-60の光学特性測定結果を示している。PCR-6-60を用いて作製したフィルム(厚さ約1.0 μm)は,温度31 °Cにおいて白色不透明であった。つぎに、PCR-6-60に波長365 nmの紫外光(光強度300 mW/cm2)を10分間照射したところ,PCR-6-60フィルムは無色透明となった。紫外光照射後のフィルムは,温度31°Cにおいて少なくとも1か月間透明性が変化することはなく,長期安定性を示した。
4.実施例2
(実施例2で使用した材料)
実施例2では、下記の材料を使用した。
高分子化合物 :ポリメタクリル酸メチル(Aldrich Chemical社製,18223-0,重量平均分子量は約12万)
液晶化合物 :4-シアノフェニル-4’-ペンチルシクロヘキサン(株式会社LCC製,PCH-5)
液晶化合物 :混合ネマチック液晶(株式会社LCC製,E-7)
光応答性化合物:4-メチルスチルベン(東京化成工業株式会社製,M1492)
光応答性化合物:2-メチルスチルベン(東京化成工業株式会社製,M1491)
光応答性化合物:4,4’-ジメチルトランススチルベン(東京化成工業株式会社製,D2708)
光増感剤 :ベンゾフェノン(和光純薬工業株式会社製)
(光応答性液晶 4MSB/2MSB/BP/PCH-5の調製)
4-シアノフェニル-4’-ペンチルシクロヘキサン(PCH-5)2gに対し、0.3 gの4-メチルスチルベン(4MSB)、0.1 gの2-メチルスチルベン(2MSB)及び0.004 gのベンゾフェノン(BP)を混合し、それを10 mLのアセトンに溶解し、それを40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、70°Cでアセトンを留去することにより、4-メチルスチルベン/2-メチルスチルベン/BP/PCH-5を調製した。
(光応答性液晶 4MSB/DMSB/BP/E7の調製)
混合ネマチック液晶(E-7)1gに対し、0.05 gの4-メチルスチルベン(4MSB)、0.05 gの4,4’-ジメチルトランススチルベン(DMSB)及び0.01 gのベンゾフェノン(BP)を混合し、それを10 mLのアセトンに溶解し、それを40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、70°Cでアセトンを留去することにより、4-メチルスチルベン/4,4’-ジメチルトランススチルベン/BP/E7を調製した。
(光感応性複合材料(光感応性樹脂) PCR-7-60の調製)
0.4gのポリメタクリル酸メチルと0.6 gの光応答性液晶 4MSB/2MSB/BP/PCH-5とを10 mLのアセトンに溶解し、それを40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、70°Cでアセトンを減圧留去することにより、光感応性複合材料PCR-7-60を調製した。光感応性複合材料PCR-
7-60には、ポリメタクリル酸メチルが40質量%、4MSB/2MSB/BP/PCH-5が60質量%含まれている。
(光感応性複合材料(光感応性樹脂) PCR-7-70の調製)
0.3gのポリメタクリル酸メチルと0.7 gの光応答性液晶 4MSB/2MSB/BP/PCH-5とを10 mLのアセトンに溶解し、それを40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、70°Cでアセトンを減圧留去することにより、光感応性複合材料PCR-7-70を調製した。光感応性複合材料PCR-7-70には、ポリメタクリル酸メチルが30質量%、4MSB/2MSB/BP/PCH-5が70質量%含まれている。
(光感応性複合材料(光感応性樹脂) PCR-8-60の調製)
0.4gのポリメタクリル酸メチルと0.6 gの光応答性液晶 4MSB/DMSB/BP/E7とを10 mLのアセトンに溶解し、それを40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、70°Cでアセトンを減圧留去することにより、光感応性複合材料PCR-8-60を調製した。光感応性複合材料PCR-8-60には、ポリメタクリル酸メチルが40質量%、4MSB/DMSB/BP/E7が60質量%含まれている。
(光感応性複合材料(光感応性樹脂) PCR-8-70の調製)
0.3gのポリメタクリル酸メチルと0.6 gの光応答性液晶 4MSB/DMSB/BP/E7とを10 mLのアセトンに溶解し、それを40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、70°Cでアセトンを減圧留去することにより、光感応性複合材料PCR-8-70を調製した。光感応性複合材料PCR-8-70には、ポリメタクリル酸メチルが30質量%、4MSB/DMSB/BP/E7が70質量%含まれている。
(光感応性複合材料(光感応性樹脂) PCR-8-80の調製)
0.2gのポリメタクリル酸メチルと0.8 gの光応答性液晶 4MSB/DMSB/BP/E7とを10 mLのアセトンに溶解し、それを40 °Cで撹拌して均一な溶液とした後、70°Cでアセトンを減圧留去することにより光感応性複合材料PCR-8-80を調製した。光感応性複合材料PCR-8-80には、ポリメタクリル酸メチルが20質量%、4MSB/DMSB/BP/E7が80質量%含まれている。
(光応答性液晶 4MSB/2MSB/BP/PCH-5の相転移温度)
4MSB/2MSB/BP/PCH-5を2枚のスライドガラスに挟み,昇温速度5 °C/minで加熱しながらネマチック相−等方相相転移温度を,偏光顕微鏡観察により評価したところ,38.6 °Cであった。つぎに、4MSB/2MSB/BP/PCH-5に波長365 nmの紫外光(光強度60 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、4MSB/2MSB/BP/PCH-5のネマチック相−等方相転移温度転移温度は23.7 °Cとなり,紫外光照射により4MSB/2MSB/BP/PCH-5の等方相−ネマチック相転移温度が低下することを確認した。
(光応答性液晶 4MSB/DMSB/BP/E7の相転移温度)
4MSB/DMSB/BP/E7を2枚のスライドガラスに挟み,昇温速度5 °C/minで加熱しながらネマチック相−等方相相転移温度を,偏光顕微鏡観察により評価したところ,57.3°Cであった。つぎに、4MSB/DMSB/BP/E7に波長365 nmの紫外光(光強度60 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、4MSB/DMSB/BP/E7のネマチック相−等方相転移温度転移温度は46.7 °Cとなり,紫外光照射により4MSB/DMSB/BP/E7の等方相−ネマチック相転移温度が低下することを確認した。
(光感応性複合材料 PCR-7-60の動的粘弾性測定)
図12はPCR-7-60の動的粘弾性測定結果を示している。PCR-7-60を動的粘弾性測定装置(アントンパールジャパン社,MCR302)に設置し、直径12 mmのパラレルプレートを用い、ギャップ239 μm、歪み0.1 %,周波数1.0 Hzの条件で,温度 25 °Cから昇温速度5°C/minで80 °Cまでの加熱過程における動的粘弾性を評価した。ガラス転移温度は71 °Cであった。つぎに、PCR-7-60に波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、ガラス転移温度が68 °Cとなり,紫外光照射によりPCR-7-60のガラス転移温度が低下することを確認した。
図13は温度70°CにおいてPCR-7-60に波長365 nmの紫外光を照射したときの動的粘弾性の時間変化を示している。紫外光照射前の貯蔵弾性率G′は6.8 × 104 Paであり,損失弾性率G″は4.1 × 104Paであった。ここに紫外光(100 mW/cm2)を約300秒間照射すると,貯蔵弾性率G′が3.8×104 Pa,損失弾性率G″が2.3×104 Paとなり,PCR-7-60は紫外光照射により軟らかくなることを確認した。紫外光照射を止めた後も,これらの弾性率は温度70°Cにおいて,少なくとも1か月変化することはなく,長期安定性を示した。
また、PCR-7-60の色に関しては、紫外光照射前においては、白色不透明であったが、上記紫外光照射により無色透明となり、その無色透明状態についても、少なくとも1か月間、変化することがなかった。
図14はPCR-7-70の動的粘弾性測定結果を示している。PCR-7-70を動的粘弾性測定装置(アントンパールジャパン社,MCR302)に設置し、直径12 mmのパラレルプレートを用い、ギャップ237 μm、歪み0.1 %,周波数1.0 Hzの条件で,温度 25 °Cから昇温速度5 °C/minで80 °Cまでの加熱過程における動的粘弾性を評価した。ガラス転移温度は70 °Cであった。つぎに、PCR-7-70に波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、ガラス転移温度が67 °Cとなり,紫外光照射によりPCR-7-70のガラス転移温度が低下することを確認した。
図15は温度70 °CにおいてPCR-7-70に波長365 nmの紫外光を照射したときの動的粘弾性の時間変化を示している。紫外光照射前の貯蔵弾性率G′は2.3×104 Paであり,損失弾性率G″は1.5×104 Paであった。ここに紫外光(100 mW/cm2)を約300秒間照射すると,貯蔵弾性率G′が1.6×104 Pa,損失弾性率G″が9.1 × 103 Paとなり,PCR-7-70は紫外光照射により軟らかくなることを確認した。紫外光照射を止めた後も,これらの弾性率は温度70 °Cにおいて,少なくとも1か月変化することはなく,長期安定性を示した。
また、PCR-7-70の色に関しては、紫外光照射前においては、白色不透明であったが、上記紫外光照射により無色透明となり、その無色透明状態についても、少なくとも1か月間、変化することがなかった。
(光感応性複合材料 PCR-8-60の動的粘弾性測定)
図16はPCR-8-60の動的粘弾性測定結果を示している。PCR-8-60を動的粘弾性測定装置(アントンパールジャパン社,MCR302)に設置し、直径12 mmのパラレルプレートを用い、ギャップ244 μm、歪み0.1 %,周波数1.0 Hzの条件で,温度 25 °Cから昇温速度5 °C/minで100 °Cまでの加熱過程における動的粘弾性を評価した。ガラス転移温度は63 °Cであった。つぎに、PCR-8-60に波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、ガラス転移温度が54 °Cとなり,紫外光照射によりPCR-8-60のガラス転移温度が低下することを確認した。
図17は温度57 °CにおいてPCR-8-60に波長365 nmの紫外光を照射したときの動的粘弾性の時間変化を示している。紫外光照射前の貯蔵弾性率G′は8.5×104 Paであり,損失弾性率G″は5.7×104 Paであった。ここに紫外光(100 mW/cm2)を約300秒間照射すると,貯蔵弾性率G′が2.5×104 Pa,損失弾性率G″が1.9×104 Paとなり,PCR-8-60は紫外光照射により軟らかくなることを確認した。紫外光照射を止めた後も,これらの弾性率は温度57 °Cにおいて,少なくとも1か月変化することはなく,長期安定性を示した。
また、PCR-8-60の色に関しては、紫外光照射前においては、白色不透明であったが、上記紫外光照射により無色透明となり、その無色透明状態についても、少なくとも1か月間
、変化することがなかった。
(光感応性複合材料 PCR-8-70の動的粘弾性測定)
図18はPCR-8-70の動的粘弾性測定結果を示している。PCR-8-70を動的粘弾性測定装置(アントンパールジャパン社,MCR302)に設置し、直径12 mmのパラレルプレートを用い、ギャップ252 μm、歪み0.1 %,周波数1.0 Hzの条件で,温度 25 °Cから昇温速度5 °C/minで100 °Cまでの加熱過程における動的粘弾性を評価した。ガラス転移温度は63 °Cであった。つぎに、PCR-8-70に波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、ガラス転移温度が50 °Cとなり,紫外光照射によりPCR-8-70のガラス転移温度が低下することを確認した。
図19は温度53 °CにおいてPCR-8-70に波長365 nmの紫外光を照射したときの動的粘弾性の時間変化を示している。紫外光照射前の貯蔵弾性率G′は9.3×104 Paであり,損失弾性率G″は1.1×105 Paであった.ここに紫外光(100 mW/cm2)を約300秒間照射すると,貯蔵弾性率G′が1.5×104 Pa,損失弾性率G″が1.1×104 Paとなり,PCR-8-70は紫外光照射により軟らかくなることを確認した。紫外光照射を止めた後も,これらの弾性率は温度53 °Cにおいて,少なくとも1か月変化することはなく,長期安定性を示した。
また、PCR-8-70の色に関しては、紫外光照射前においては、白色不透明であったが、上記紫外光照射により無色透明となり、その無色透明状態についても、少なくとも1か月間、変化することがなかった。
(光感応性複合材料 PCR-8-80の動的粘弾性測定)
図20はPCR-8-80の動的粘弾性測定結果を示している。PCR-8-80を動的粘弾性測定装置(アントンパールジャパン社,MCR302)に設置し、直径12 mmのパラレルプレートを用い、ギャップ278 μm、歪み0.1 %,周波数1.0 Hzの条件で,温度 35 °Cから昇温速度5 °C/minで80 °Cまでの加熱過程における動的粘弾性を評価した。ガラス転移温度は61 °Cであった。つぎに、PCR-8-80に波長365 nmの紫外光(光強度100 mW/cm2)を照射しながら上記と同様の測定を行ったところ、ガラス転移温度が48 °Cとなり,紫外光照射によりPCR-8-80のガラス転移温度が低下することを確認した。
図21は温度53 °CにおいてPCR-8-80に波長365 nmの紫外光を照射したときの動的粘弾性の時間変化を示している。紫外光照射前の貯蔵弾性率G′は7.7×104 Paであり,損失弾性率G″は8.2×104 Paであった。ここに紫外光(100 mW/cm2)を約300秒間照射すると,貯蔵弾性率G′が2.2×104 Pa,損失弾性率G″が1.5×104 Paとなり,PCR-8-80は紫外光照射により軟らかくなることを確認した。紫外光照射を止めた後も,これらの弾性率は温度53 °Cにおいて,少なくとも1か月変化することはなく,長期安定性を示した。
また、PCR-8-80の色に関しては、紫外光照射前においては、白色不透明であったが、上記紫外光照射により無色透明となり、その無色透明状態についても、少なくとも1か月間、変化することがなかった。
本発明の硬さ調整剤及び光感応性複合材料は、釣り用擬似餌、建築、輸送機械、エレクトロニクス、医療、理容、美容、宇宙などの広範な分野における粘接着や塗装等に関するものに適用できる。

Claims (8)

  1. 液晶化合物と光応答性化合物とを含有していて、高分子化合物に対する混合をもって該高分子化合物に対する硬さ調整を行う高分子化合物用硬さ調整剤であって、
    前記光応答性化合物は、該光応答性化合物をスチルベン誘導体とすることにより、異なる波長の照射光に基づく光異性化をもって、前記液晶化合物の相構造を液晶相から等方相へ転移させる第1光異性体と、該液晶化合物の相構造を等方相から液晶相へ転移させる第2光異性体とに変化すると共に、該第1、第2光異性体のうち、少なくとも第1光異性体が、可視光全域に近い範囲から該可視光全域に亘って、透過性を有している、
    ことを特徴とする高分子化合物用硬さ調整剤。
  2. 請求項1において、
    前記光応答性化合物は、該光応答性化合物をスチルベン誘導体とすることにより、該光応答性化合物における第2光異性体についても、可視光全域に近い範囲から該可視光全域に亘って、透過性を有している、
    ことを特徴とする高分子化合物用硬さ調整剤。
  3. 請求項1において、
    前記光応答性化合物は、該光応答性化合物をスチルベン誘導体とすることにより、該光応答性化合物の第1異性体がエネルギ障壁を超すために必要なエネルギを所定の標準値よりも大きくしている、
    ことを特徴とする高分子化合物用硬さ調整剤。
  4. 請求項3において、
    前記所定の標準値が、アゾベンゼンの第1異性体がエネルギ障壁を超すために必要なエネルギとされている、
    ことを特徴とする高分子化合物用硬さ調整剤。
  5. 請求項1において、
    前記液晶化合物と前記光応答性化合物とが、液晶性と光応答性とを兼ね備える光応答性化合物をもって構成されている、
    ことを特徴とする高分子化合物用硬さ調整剤。
  6. 高分子化合物に硬さ調整剤が混合され、該硬さ調整剤に液晶化合物と光応答性化合物とが含有されている複合材料において、
    前記光応答性化合物は、該光応答性化合物をスチルベン誘導体とすることにより、異なる波長の照射光に基づく光異性化をもって、前記液晶化合物の相構造を液晶相から等方相へ転移させる第1光異性体と、該液晶化合物の相構造を等方相から液晶相へ転移させる第2光異性体とに変化すると共に、該第1、第2光異性体のうち、少なくとも第1光異性体が、可視光全域に近い範囲から該可視光全域に亘って、透過性を有している、
    ことを特徴とする光感応性複合材料。
  7. 請求項6において、
    前記光応答性化合物は、該光応答性化合物をスチルベン誘導体とすることにより、該光応答性化合物の第1異性体がエネルギ障壁を超すために必要なエネルギを所定の標準値よりも大きくしている、
    ことを特徴とする光感応性複合材料。
  8. 請求項6又は7において、
    前記液晶化合物と前記光応答性化合物とが、液晶性と光応答性とを兼ね備える光応答性化合物をもって構成されている、
    ことを特徴とする光感応性複合材料。
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