本発明の実施の形態について、図面を用いて以下、詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書で説明する各図において、膜、層、基板、領域などの各要素の大きさや厚さ等は、個々に説明の明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしも各構成要素はその大きさに限定されず、また各構成要素間での相対的な大きさに限定されない。
なお、本明細書等において、第1、第2などとして付される序数詞は、便宜上用いるものであって工程の順番や積層の順番などを示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
なお、本明細書等で説明する本発明の構成において、同一部分又は同様の機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
なお、本明細書等において、蓄電装置用の正極及び負極の双方を併せて電極とよぶことがあるが、この場合、電極は正極及び負極のうち少なくともいずれか一方を示すものとする。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の正極活物質について説明する。
本発明の一態様の正極活物質は複数の粒子を有する。本発明の一態様の正極活物質が有する粒子の粒径は小さいことが好ましい。また本発明の一態様の正極活物質は粒子同士の接着している面積が少ないことが好ましい。また本発明の一態様の正極活物質は粒子のアスペクト比が高いことが好ましい。また本発明の一態様の正極活物質は扁平な粒子であることが好ましい。本発明の一態様の正極活物質は液相法、より好ましくは水熱法を用いて作製されることが好ましい。
[正極活物質]
粒子状の正極活物質において、粒径をより小さくすることにより、キャリアの移動距離が短くなるため、蓄電装置の出力をより高めることができる。またオリビン型構造を有する正極材料においては一次元方向にキャリアが拡散するため、キャリアの移動方向であるb軸方向の厚さをより薄くすることにより、蓄電装置の出力をより高めることができる。
オリビン型構造を有する正極活物質は、放電によりリチウムが脱離した後の構造変化が小さく、充放電において安定であり、蓄電装置の安全性が高く、信頼性に優れる。
本発明の一態様の正極活物質は例えば、鉄、ニッケル、マンガン、およびコバルトのうちいずれか一以上を有するリチウム含有複合リン酸塩が好ましい。また、本発明の一態様の正極活物質は、オリビン型構造を有することが好ましい。
オリビン型構造を有するリチウム含有複合リン酸塩として例えばLiMPO4(Mは、Fe(II)、Ni(II)、Co(II)、Mn(II)の一以上))が挙げられる。より具体的には例えば、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等が挙げられる。
粒子状の正極活物質は、粒子の集合体を形成する場合がある。集合体において、粒子が接着し、間に電解質が入り込めなくなるとキャリアイオンが該粒子の表面に到達しないため、粒子の反応表面積が低下してしまう。反応表面積の低下は、蓄電装置の出力の低下を招く場合がある。
よって正極活物質は、粒径が小さく、かつ粒子間には電解質が入り込める程度に空間を有することが好ましい。電解液を用いる場合には例えば、粒子間に該電解液が充分に入り込める程度、例えば1nm以上、より好ましくは10nm以上の空間を有することが好ましい。
粒子の比表面積は例えば、表面に窒素等のガスを吸着させて測定することができる。比表面積の測定には例えばBET法、Langmuir法、などを用いることができる。粒子同士が接着し、間にガスが入り込めなくなると、比表面積が小さくなる。本発明の一態様の正極活物質は、比表面積がより大きいことが好ましい。
比表面積が小さい粒子の場合には、粒子の粉砕を行うことにより微粒化し、表面積を増大できる場合がある。ただし、例えば粒子を機械的に粉砕すると粒子に歪みや割れ等のダメージを与える場合があり好ましくない。ここで粒子を機械的に粉砕する場合には例えば、粒子の形状が球状に近づく。また、アスペクト比が小さくなる。
図1(A)に本発明の一態様の正極活物質201の一例を示す。図1(A)は、後述する実施例1において作製された正極活物質201を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いて表面を観察した結果を示す。図1に示す正極活物質201は、リン酸鉄リチウムを有する粒子で構成される。
正極活物質は複数の粒子を有する。また、本発明の一態様の正極活物質は、粒子の集合体を複数有することが好ましい。図1(A)に示す正極活物質201は、集合体202a、集合体202bおよび集合体202cを有する。図1(A)より、集合体の大きさはおよそ0.6μm程度と見積もられる。ここで、粒子の集合体は二次粒子、と呼ばれる場合がある。いずれの集合体においても、10以上の粒子が観測される。ここで集合体は3次元的な形状を有するため、図1(A)において集合体202a、集合体202bおよび集合体202cは、観察される表面部分のみならず、観察されない奥行き方向にも粒子を有する。すなわち集合体は例えば30以上の粒子を有すると考えられる。
本発明の一態様の正極活物質を構成する粒子が集合体を形成することにより、本発明の一態様の正極活物質を有する正極の強度を高めることができる場合がある。一方、粒子の集合体が大きすぎる場合、正極の厚さの均一性が低下する場合がある。また、導電助剤と分散されづらい場合がある。
よって粒子の集合体の径は例えば、30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、0.1μm以上6μm以下がより好ましく0.3μm以上3μm以下がさらに好ましい。
ここで集合体を構成する粒子の間には、電解質が入り込めるような適度な空間が存在することが好ましい。すなわち、正極活物質の表面積が大きいことが好ましい。
図1(B)に集合体の模式図を示す。集合体202aは粒子203a、粒子203b、粒子203c等の複数の粒子を有する。集合体202bは粒子204a、粒子204b等の複数の粒子を有する。集合体202cは粒子205a、粒子205b、粒子205c等の複数の粒子を有する。ここで図1(B)においては図の明瞭化のため、粒子の集合体が有する粒子の一部のみを記載している。
本発明の一態様の正極活物質が有する粒子は、長径は短径の1.5倍以上10倍以下、あるいは2倍以上7倍以下、あるいは2倍以上6倍以下であることが好ましい。
短径に対する長径の比をアスペクト比と呼ぶ場合がある。アスペクト比を高くすることにより、正極が作製しやすくなる場合がある。また、アスペクト比を高くすることにより、正極の強度を高めることができる場合がある。また、粒子がオリビン型構造を有する場合には、短径方向をb軸に概略平行とすることによりリチウムの拡散距離を短くすることができ、蓄電装置の出力を高めることができる。
あるいは、本発明の一態様の正極活物質が有する粒子は、扁平な形状を有する。扁平な形状とは例えば、薄い粒子である。あるいは例えば、最も広い面と、面に概略垂直方向の厚みと、を有し、厚みが薄い粒子である。また、粒子がオリビン型構造を有する場合には、厚み方向をb軸に概略平行とすることによりリチウムの拡散距離を短くすることができ、蓄電装置の出力を高めることができる。
ここで正極活物質がオリビン型構造を有する場合には、短軸はb軸方向に沿うことが好ましい。短軸がb軸に沿うことにより、本発明の一態様の正極活物質を用いた蓄電装置の出力を高めることができる場合がある。
ここで、粒子の長径および短径は、例えば楕円体に近似して求めてもよい。あるいは例えば、直方体に近似し、3軸のうち最も長い辺を長径、最も短い辺を短径とする場合がある。
または、一次粒子の短径および長径はSEMの表面観察を行い、楕円近似を行うことにより見積もってもよい。あるいは例えば、SEMの表面観察において、長方形近似を行い、長辺を長径、短辺を短径とする場合がある。
比表面積は、重量あたりの表面積(単位は例えばm2/g)で表される。粒子の形状を球で近似した場合には以下の数式(1)が成立する。
数式(1)に比表面積Sと粒子の密度dを代入することにより直径2rを求めることができる。例えばリン酸鉄リチウムの場合、密度dを3.55g/cm3とすると、比表面積Sが20m2/gにおいて直径2rは124nmと求まる。
ここで、SEMにより観察される一次粒径の値が比表面積により換算される粒径に比べて顕著に小さい場合には、一次粒子同士が多く接着していることが示唆される。
また、粒径を評価する他の手法として、レーザ回折・散乱法を用いた粒度分布計による測定が挙げられる。ここで粒度分布測定による評価においては、粒子の粒径と、粒子の集合体の径と、の両方が混在した情報が得られる場合がある。例えば粒子の粒径と、粒子の集合体の径と、の平均された情報が得られる場合がある。但し例えばレーザ回折・散乱法の測定下限以下の粒径が存在する場合には、測定下限以下の範囲の情報については得られない。
例えば、レーザ回折・散乱法を用いた粒度分布計による測定において得られる粒径が、比表面積で得られる粒径と比較して顕著に大きな値である場合には、粒度分布計において得られる粒径は、粒子の集合体の径の情報を含むことが示唆される。
本発明の一態様の正極活物質において、一次粒子の短径は好ましくは500nm以下、より好ましくは10nm以上200nm以下、さらに好ましくは20nm以上130nm以下である。
また、本発明の一態様の正極活物質は例えば、比表面積が好ましくは12m2/g以上、より好ましくは15m2/g以上40m2/g以下、さらに好ましくは18m2/g以上40m2/g以下、さらに好ましくは20m2/g以上30m2/g以下である。
また、本発明の一態様の正極活物質は、レーザ回折・散乱法により算出される粒度(粒径)の中央値が、好ましくは10μm以下、より好ましくは0.5μm以上6μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上3μm以下である。
[粒子の配置]
本発明の一態様の正極活物質が有する粒子は例えば、集合体を形成する際に、二以上の粒子において、粒子間の長径がそれぞれ概略平行になるように配置される。ここで図1(B)において例えば、集合体202aが有する粒子203a、粒子203bおよび粒子203cは、粒子間において、それぞれの長径が互いに概略平行であることが示唆される。また、集合体202bが有する粒子204aおよび粒子204bは、粒子間において、それぞれの長径が互いに概略平行であることが示唆される。また、集合体202cが有する粒子205a、粒子205bおよび粒子205cは、長径方向が概略平行であることが示唆される。
このように、本発明の一態様の正極活物質においては、複数の粒子を有し、該粒子同士の長径方向が概略平行、例えば0°以上10°以下に並ぶ場合がある。複数の粒子同士の長径方向が概略平行に並ぶことにより、本発明の一態様の正極活物質を用いて作製する正極の電極密度を高めることができる場合がある。すなわち、蓄電装置のエネルギー密度を高めることができる場合がある。
[正極活物質の作製方法]
本発明の一態様の正極活物質は、液相法、より好ましくは水熱法を用いて作製されることが好ましい。液相法を用いることにより、粒径の小さい粒子を得ることができる。また、液相法を用いることにより、アスペクト比の高い粒子が得られる場合がある。また、水熱法を用いることにより生産性を高めることができる。
本発明の一態様である正極活物質の作製方法について図2を用いて説明する。
ステップS201aにおいて、リチウム化合物を秤量する。また、ステップS201bにおいて、リン化合物を秤量する。
ここで、後述する合成物Aとして得られることが好ましいリチウム含有複合リン酸塩のリチウム、金属M(II)、およびリンの原子数比をx:y:zとする。LiMPO4を得るためには例えばx:y:z=1:1:1とすればよい。
リチウム化合物の代表例としては、塩化リチウム(LiCl)、酢酸リチウム(CH3COOLi)、シュウ酸リチウム((COOLi)2)、炭酸リチウム(Li2CO3)、水酸化リチウム一水和物(LiOH・H2O)等がある。
リン化合物の代表例としては、オルトリン酸(H3PO4)等のリン酸、リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)、リン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)等のリン酸水素アンモニウム等がある。
次に、ステップS201dにおいて、溶媒を秤量する。溶媒として水を用いることが好ましい。また、溶媒として水と他の溶媒との混合液を用いてもよい。例えば、水とアルコールを混合してもよい。ここで、リチウム化合物およびリン化合物、あるいはリチウム化合物とリン化合物との反応生成物は、水に対する溶解度とアルコールに対する溶解度が異なる場合がある。アルコールを用いることにより、形成される粒子の粒径がより小さくなる場合がある。また、水より沸点の低いアルコールを用いることにより、後述するステップS211において、圧力を高めやすい場合がある。
次に、ステップS205において、混合液Aの形成を行う。混合は、大気、不活性ガス、等の雰囲気下で行うことができる。不活性ガスとして例えば窒素を用いればよい。ここでは一例として、大気雰囲気下で、ステップS201dで秤量した溶媒と、ステップS201aで秤量したリチウム化合物と、ステップS201bで秤量したリン化合物と、を混合する。例えば、ステップS201dで秤量した溶媒に、ステップS201aで秤量したリチウム化合物と、ステップS201bで秤量したリン化合物を入れ、混合液Aを形成する。大気雰囲気下で混合液Aの形成を行う場合には、不活性ガスを用いる場合に比べ、雰囲気を制御する装置が不要であり、工程の簡便化、および低コストが可能となる。
混合液Aにおいて、リチウム化合物、リン化合物、および該リチウム化合物と該リン化合物との反応生成物は、溶液に沈殿するが、一部は沈殿せずに溶媒に溶解する、すなわちイオンとして溶媒内に存在する。ここで、混合液AのpHが低いと、該反応生成物等が溶媒に溶解しやすい場合があり、高いと、該反応生成物等が沈殿しやすい場合がある。
なお、ステップS205を経て混合液Aを形成する代わりに、Li3PO4,Li2HPO4,LiH2PO4等、のリンとリチウムを有する化合物を秤量し、溶媒に加えて混合液Aを形成してもよい。
ここで混合液Aが水溶液である場合、混合液AのpHは、混合液Aが有する塩の種類および解離度により決定される。よって、原料として用いるリチウム化合物およびリン化合物により、混合液AのpHは変化する。例えば、リチウム化合物として塩化リチウム、リン化合物としてオルトリン酸を用いる場合には、混合液Aは強酸となる。また例えば、リチウム化合物として水酸化リチウム一水和物を用いる場合には、混合液Aはアルカリ性となりやすい。
次に、ステップS207において、混合液Aと、ステップS205bで秤量した溶液Qとを混合し、混合液Bを形成する。ここで、加える溶液Qの量あるいは濃度を調整することにより、得られる混合液B、および後に得られる混合液CのpHを調整することができる。ステップS207において例えば、混合液AのpHを測定しながら溶液Qを滴下すればよい。溶液Qとしては、混合液AのpHに応じて、アルカリ溶液、または酸溶液を用いる。ここで弱アルカリ性、または弱酸性の溶液を用いることにより、pHの調整がしやすくなる場合がある。例えばアルカリ溶液のpHは、8以上12以下とすればよい。また、酸溶液のpHは、2以上6以下とすればよい。アルカリ溶液として例えば、アンモニア水を用いればよい。後述する混合液Cが酸性または中性となるように、溶液QのpHを決定することが好ましい。
また、ステップS208において、鉄(II)化合物、マンガン(II)化合物、コバルト(II)化合物、及びニッケル(II)化合物(以下、M(II)化合物と示す。)の一以上を秤量する。
鉄(II)化合物の代表例としては、塩化鉄四水和物(FeCl2・4H2O)、硫酸鉄七水和物(FeSO4・7H2O)、酢酸鉄(Fe(CH3COO)2)等がある。
マンガン(II)化合物の代表例としては、塩化マンガン四水和物(MnCl2・4H2O)、硫酸マンガン一水和物(MnSO4・H2O)、酢酸マンガン四水和物(Mn(CH3COO)2・4H2O)等がある。
コバルト(II)化合物の代表例としては、塩化コバルト六水和物(CoCl2・6H2O)、硫酸コバルト七水和物(CoSO4・7H2O)、酢酸コバルト四水和物(Co(CH3COO)2・4H2O)等がある。
ニッケル(II)化合物の代表例としては、塩化ニッケル六水和物(NiCl2・6H2O)、硫酸ニッケル六水和物(NiSO4・6H2O)、酢酸ニッケル四水和物(Ni(CH3COO)2・4H2O)等がある。
次に、ステップS209において、混合液Cの形成を行う。ステップS209は、大気、不活性ガス、等の雰囲気下で行うことができる。不活性ガスとして例えば窒素を用いればよい。ここでは一例として、大気雰囲気下で、ステップS207で形成した混合液Aと、ステップS208で秤量したM(II)化合物とを混合し、混合液Cを形成する。大気雰囲気下でステップS209を行う場合には、ステップS208はステップS209の直前、例えば1時間以内、より好ましくは20分以内、さらに好ましくは10分以内に行うことが好ましい。
ここでステップS209において、溶媒を加えて混合液Cの濃度を調整する。混合液Bと、M(II)化合物との混合物を形成した後、ステップS209bにおいて溶媒を秤量し、ステップS209において、溶媒とを混合物とを混合し、混合液Cを作製する。
次に、ステップS211において、混合液Cをオートクレーブ等の耐熱耐圧容器に入れたのち、温度を100℃以上350℃以下、より好ましくは100℃より大きく200℃未満、圧力を0.11MPa以上100MPa以下、より好ましくは0.11MPa以上2MPa以下とし、0.5時間以上24時間以下、より好ましくは1時間以上10時間以下、さらに好ましくは1時間以上5時間未満、の加熱した後冷却し、耐熱耐圧容器内の溶液を濾過し、水洗して、乾燥させる。その後、溶液を分離する。例えば、ろ過および洗浄を行う。その後、ステップS213で乾燥を行い、合成物Aを得る。
ここで、合成物Aとしてリチウム含有複合リン酸塩、例えばLiMPO4(Mは、Fe(II),Ni(II),Co(II),Mn(II)の一以上)が得られることが好ましい。M(II)化合物の種類によって、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等が適宜得られる。また、本実施の形態により得られるリチウム含有複合リン酸塩は単結晶粒となる場合がある。
合成物Aに対して例えばXRD、あるいは電子回折、等の結晶解析を行うことにより、結晶構造を特定することができる。合成物Aの結晶解析を行うことにより、空間群Pnmaに属する結晶構造が得られる場合がある。ここでオリビン型の結晶構造を有するLiMPO4は例えば、空間群Pnmaに属する。
ここで、混合液CのpHを3以上5以下、ステップS211における最高温度を150℃より大きく300℃未満、より好ましくは160℃以上200℃未満とすることにより、比表面積が大きくアスペクト比が高い、優れた合成物Aが得られる場合があり、好ましい。反応温度を高くすることにより、析出速度に対して溶解の頻度が高められ、粒子の接着が抑制できる場合がある。pHを3以上5以下、最高温度を例えば150℃より大きくすることにより、粒子の接着を抑制できるため好ましい。また、粒子が集合体を形成するため好ましい。また、粒子が集合体を形成する際に、二以上の粒子において、粒子間の長径がそれぞれ概略平行になるように配置されるため好ましい。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の蓄電池について説明する。
本発明の一態様の蓄電池は、正極と、負極と、電解液と、を有する。
正極活物質は例えば、実施の形態1の正極活物質を有することが好ましい。
[負極活物質]
活物質に負極活物質を用いる場合は、例えば合金系材料や炭素系材料等を用いることができる。
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。また、これらの元素を有する化合物を用いてもよい。例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。ここで、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素、および該元素を有する化合物等を合金系材料と呼ぶ場合がある。
本明細書等において、SiOは例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、SiOxと表すこともできる。ここでxは1近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下が好ましい。
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等を用いればよい。
黒鉛としては、人造黒鉛や、天然黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等が挙げられる。ここで人造黒鉛として、球状の形状を有する球状黒鉛を用いることができる。例えば、MCMBは球状の形状を有する場合があり、好ましい。また、MCMBはその表面積を小さくすることが比較的容易であり、好ましい場合がある。天然黒鉛としては例えば、鱗片状黒鉛、球状化天然黒鉛等が挙げられる。
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム−黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に低い電位を示す(0.05V以上0.3V以下 vs.Li/Li+)。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が比較的小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム−黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつLi3−xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示し好ましい。
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムとの合金を作らない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物でも起こる。
[プレドープ]
また、初回の充放電において被膜が形成される場合に不可逆な反応が生じる。例えば正極と負極のいずれかにおける不可逆な反応がより大きい場合には充放電のバランスが崩れ、蓄電池の容量の低下を招く場合がある。対極を用いて充放電を行った後、電極の組み換えを行うことにより容量の低下を抑制できる場合がある。例えば、負極に対して正極を組み合わせて充電、あるいは充放電を行った後、充電、あるいは充放電に用いた正極を取り外し、新たな正極と組み合わせて蓄電池を作製することにより、蓄電池の容量の低下を抑制できる場合がある。該手法をプレドープ、またはプリエージングと呼ぶ場合がある。
正極および負極が有する集電体として、ステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性が高い材料をもちいることができる。また集電体を正極に用いる場合には、正極の電位で溶出しないことが好ましい。また集電体を負極に用いる場合には、リチウム等のキャリアイオンと合金化しないことが好ましい。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。集電体は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
また、正極および負極は導電助剤を有してもよい。導電助剤として例えば、炭素材料、金属材料、又は導電性セラミックス材料等を用いることができる。また、導電助剤として繊維状の材料を用いてもよい。活物質層の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
導電助剤により、電極中に電気伝導のネットワークを形成することができる。導電助剤により、正極活物質どうしの電気伝導の経路を維持することができる。活物質層中に導電助剤を添加することにより、高い電気伝導性を有する活物質層を実現することができる。
導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素繊維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。また、導電助剤として、例えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)、グラファイト(黒鉛)粒子、グラフェン、フラーレンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
また、導電助剤としてグラフェン化合物を用いてもよい。
グラフェン化合物は、高い導電性を有するという優れた電気特性と、高い柔軟性および高い機械的強度を有するという優れた物理特性と、を有する場合がある。また、グラフェン化合物は平面的な形状を有する。グラフェン化合物は、接触抵抗の低い面接触を可能とする。また、薄くても導電性が非常に高い場合があり、少ない量で効率よく活物質層内で導電パスを形成することができる。そのため、グラフェン化合物を導電助剤として用いることにより、活物質と導電助剤との接触面積を増大させることができるため好ましい。また、電気的な抵抗を減少できる場合があるため好ましい。ここでグラフェン化合物として例えば、グラフェンまたはマルチグラフェンまたはreduced Graphene Oxide(以下、RGO)を用いることが特に好ましい。ここで、RGOは例えば、酸化グラフェン(graphene oxide:GO)を還元して得られる化合物を指す。
粒径の小さい活物質、例えば1μm以下の活物質を用いる場合には、活物質の比表面積が大きく、活物質同士を繋ぐ導電パスがより多く必要となる。このような場合には、少ない量でも効率よく導電パスを形成することができるグラフェン化合物を用いることが、特に好ましい。
以下では一例として、活物質層102に、導電助剤としてグラフェン化合物を用いる場合の断面構成例を説明する。
図3(A)に、活物質層102の縦断面図を示す。活物質層102は、粒状の活物質103と、導電助剤としてのグラフェン化合物321と、結着剤(図示せず)と、を含む。ここで、グラフェン化合物321として例えばグラフェンまたはマルチグラフェンを用いればよい。ここで、グラフェン化合物321はシート状の形状を有することが好ましい。また、グラフェン化合物321は、複数のマルチグラフェン、または(および)複数のグラフェンが部分的に重なりシート状となっていてもよい。
活物質層102の縦断面においては、図3(A)に示すように、活物質層102の内部においてシート状のグラフェン化合物321が分散する。図3(A)においてはグラフェン化合物321を模式的に太線で表しているが、実際には炭素分子の単層又は多層の厚みを有する薄膜である。複数のグラフェン化合物321は、複数の粒状の活物質103を包むように、覆うように、あるいは複数の粒状の活物質103の表面上に張り付くように形成されているため、互いに面接触している。
ここで、複数のグラフェン化合物同士が結合することにより、網目状のグラフェン化合物シート(以下グラフェン化合物ネットまたはグラフェンネットと呼ぶ)を形成することができる。活物質をグラフェンネットが被覆する場合に、グラフェンネットは活物質同士を結合するバインダーとしても機能することができる。よって、バインダーの量を少なくすることができる、又は使用しないことができるため、電極体積や電極重量に占める活物質の比率を向上させることができる。すなわち、蓄電装置の容量を増加させることができる。
ここで、グラフェン化合物321として酸化グラフェンを用い、活物質と混合して活物質層102となる層を形成後、還元することが好ましい。グラフェン化合物321の形成に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いることにより、グラフェン化合物321を活物質層102の内部において良好に分散させることができる。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元するため、活物質層102に残留するグラフェン化合物321は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に分散していることで三次元的な導電パスを形成することができる。なお、酸化グラフェンの還元は、例えば熱処理により行ってもよいし、還元剤を用いて行ってもよい。
従って、活物質と点接触するアセチレンブラック等の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン化合物321は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、通常の導電助剤よりも少量で粒状の活物質103とグラフェン化合物321との電気伝導性を向上させることができる。よって、活物質103の活物質層102における比率を増加させることができる。これにより、蓄電装置の放電容量を増加させることができる。
また、正極および負極は結着剤を有してもよい。結着剤として例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレン−スチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。また結着剤として、フッ素ゴムを用いることができる。
また、結着剤としては、例えば水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉などを用いることができる。また、これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用して用いると、さらに好ましい。
または、結着剤としては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好ましい。
結着剤は上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
例えば粘度調整効果の特に優れた材料と、他の材料とを組み合わせて使用してもよい。例えばゴム材料等は接着力や弾性力に優れる反面、溶媒に混合した場合に粘度調整が難しい場合がある。このような場合には例えば、粘度調整効果の特に優れた材料と混合することが好ましい。粘度調整効果の特に優れた材料としては、例えば水溶性高分子を用いるとよい。また、粘度調整効果に特に優れた水溶性高分子としては、前述の多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉を用いることができる。
なお、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩などの塩とすることにより溶解度が上がり、粘度調整剤としての効果を発揮しやすくなる。溶解度が高くなることにより電極のスラリーを作製する際に活物質や他の構成要素との分散性を高めることもできる。本明細書においては、電極のバインダーとして使用するセルロースおよびセルロース誘導体としては、それらの塩も含むものとする。
水溶性高分子は水に溶解することにより粘度を安定化させ、また活物質や、結着剤として組み合わせる他の材料、例えばスチレンブタジエンゴムなどを、水溶液中に安定して分散させることができる。また、官能基を有するために活物質表面に安定に吸着しやすい。また、例えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えば水酸基やカルボキシル基などの官能基を有する材料が多く、官能基を有するために高分子同士が相互作用し、活物質表面を広く覆って存在する場合があるため好ましい。
活物質表面を覆う、または表面に接するバインダーが膜を形成する場合には、不動態膜としての役割を果たして電解液の分解を抑えられる場合があり、好ましい。ここで、不動態膜とは、電子の伝導性のない膜、または電気伝導性の極めて低い膜であり、例えば活物質の表面に不動態膜が形成された場合には、電池反応電位において、電解液の分解を抑制することができる。また、不動態膜は、電気の伝導性を抑えるとともに、リチウムイオンは伝導できるとさらに望ましい。
[電極の作製方法]
負極および正極の作製方法の一例として、スラリーを作製し、該スラリーを塗工することにより電極を作製することができる。電極作製に用いるスラリーの作製方法の一例を述べる。
ここで、スラリーの作製に用いる溶媒は、極性溶媒であることが好ましい。例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)及びジメチルスルホキシド(DMSO)のいずれか一種又は二種以上の混合液を用いることができる。
まず、活物質、導電助剤、および結着剤を混合し、混合物Jを作製する。次に、混合物Jに溶媒を添加し、固練り(高粘度における混練)を行い、混合物Kを作製する。ここで、混合物Kは例えばペースト状であることが好ましい。ここで、後のステップにおいて第2の結着剤を添加する場合には、本ステップにおいて第1の結着剤を添加しなくてもよい場合がある。
次に、混合物Kに溶媒を添加し、混練を行い、混合物Lを作製する。
次に、第2の結着剤を用いる場合には、第2の結着剤を添加し、混合物Mを作製する。この時、溶媒を加えてもよい。また、第2の結着剤を用いない場合には、必要に応じて溶媒を添加し、混合物Nを作製する。
次に、例えば減圧雰囲気で作製した混合物Mまたは混合物Nを混練し、混合物Oを作製する。この時、溶媒を加えてもよい。ここで各ステップの混合および混練の工程において、例えば混練機を用いることができる。
次に、混合物Oの粘度を測定する。その後、必要に応じて溶媒を添加し、粘度の調整を行う。以上の工程により、活物質層を塗工するためのスラリーを得る。
ここで例えば、混合物L乃至混合物Oの粘度がより高いほど、混合物内において、活物質、結着剤、および導電助剤の分散性が優れる(互いによく混じり合う)場合がある。よって、例えば混合物Oの粘度はより高いことが好ましい。一方、混合物Oの粘度が高すぎる場合には、例えば電極の塗工速度が低くなる場合があり、生産性の観点から好ましくない場合がある。
次に、作製したスラリーを用いて、集電体上に活物質層を作製する方法について説明する。
まず、集電体上に、スラリーを塗布する。ここで、スラリーを塗布する前に、集電体上に表面処理を行ってもよい。表面処理としては例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等が挙げられる。ここでアンダーコートとは、集電体上にスラリーを塗布する前に、活物質層と集電体との界面抵抗を低減する目的や、活物質層と集電体との密着性を高める目的で集電体上に形成する膜を指す。なお、アンダーコートは、必ずしも膜状である必要はなく、島状に形成されていてもよい。また、アンダーコートが活物質として容量を発現しても構わない。アンダーコートとしては、例えば炭素材料を用いることができる。炭素材料としては例えば、黒鉛や、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)等のカーボンブラック、カーボンナノチューブなどを用いることができる。
スラリーの塗布には、スロットダイ方式、グラビア、ブレード法、およびそれらを組み合わせた方式等を用いることができる。また、塗布には連続塗工機などを用いてもよい。
次に、スラリーの溶媒を揮発させることにより、活物質層を形成することができる。
スラリーの溶媒の揮発工程は、50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下の温度範囲で行うとよい。
例えば、30℃以上70℃以下、10分以上の条件で大気雰囲気下でホットプレートで加熱処理を行い、その後、例えば、室温以上100℃以下、1時間以上10時間以下の条件で減圧環境下にて加熱処理を行えばよい。
あるいは、乾燥炉等を用いて加熱処理を行ってもよい。乾燥炉を用いる場合は、例えば30℃以上120℃以下の温度で、30秒以上20分以下の加熱処理を行えばよい。
または、温度は段階的に上げてもよい。例えば、60℃以下で10分以下の加熱処理を行った後、65℃以上の温度で更に1分以上の加熱処理を行ってもよい。
このようにして形成された活物質層の厚さは、例えば好ましくは5μm以上300μm以下、より好ましくは10μm以上150μm以下であればよい。また、活物質層102の活物質担持量は、例えば好ましくは2mg/cm2以上50mg/cm2以下であればよい。
活物質層は集電体の両面に形成されていてもよいし、片面のみに形成されていてもよい。または、部分的に両面に活物質層が形成されている領域を有しても構わない。
活物質層から溶媒を揮発させた後、ロールプレス法や平板プレス法等の圧縮方法によりプレスを行ってもよい。プレスを行う際に、熱を加えてもよい。
なお、活物質層に、プレドープを行っても良い。活物質層にプレドープを行う方法は特に限定されないが、例えば、電気化学的に行うことができる。例えば、電池組み立て前に、対極としてリチウム金属を用いて、後述の電解液中において、リチウムを活物質層にプレドープすることができる。あるいは、負極に対して、対極をプレドープ用の正極を準備してプレドープを行い、その後、プレドープ用の正極を取り除いてもよい。プレドープを行うことにより、特に初回の充放電効率の低下を抑制し、蓄電池の容量を高めることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の蓄電装置について説明する。
本発明の一態様の蓄電装置の一例として、リチウムイオン電池等の電気化学反応を用いる二次電池、電気二重層キャパシタ、レドックスキャパシタ等の電気化学キャパシタ、空気電池、燃料電池等が挙げられる。
[薄型蓄電池]
図4に、蓄電装置の一例として、薄型の蓄電池について示す。図4は、薄型の蓄電池の一例を示す。薄型の蓄電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて蓄電池も曲げることもできる。
図4は薄型の蓄電池である蓄電池500の外観図を示す。また、図5(A)および図5(B)は、図4に一点鎖線で示すA1−A2断面およびB1−B2断面を示す。蓄電池500は、正極集電体501および正極活物質層502を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有する負極506と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。また、外装体509内は、電解液508で満たされている。
電解液508の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
また、電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、二次電池の薄型化および軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマーのゲル等がある。
また、電解液の溶媒として、難燃性および難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ又は複数用いることで、蓄電装置の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオンおよびピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、またはパーフルオロアルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、キャリアにリチウムイオンを用いる場合、例えばLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)、LiN(C2F5SO2)2等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
蓄電装置に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。
また、電解液にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert−ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、LiBOBなどの添加剤を添加してもよい。添加剤の濃度は、例えば溶媒全体に対して0.1weight%以上5weight%以下とすればよい。
また、ポリマーを電解液で膨潤させたポリマーゲル電解質を用いてもよい。
ポリマーとしては、例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマーや、PVDF、およびポリアクリロニトリル等、およびそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF−HFPを用いることができる。また、形成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
セパレータ507としては、例えば、紙、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
セパレータ507は袋状に加工し、正極503または負極506のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。例えば、図6(A)に示すように、正極503を挟むようにセパレータ507を2つ折りにし、正極503と重なる領域よりも外側で封止部514により封止することで、正極503をセパレータ507内に確実に担持することができる。そして、図6(B)に示すように、セパレータ507に包まれた正極503と負極506とを交互に積層し、これらを外装体509内に配置することで蓄電池500を形成するとよい。
次に、蓄電池を作製した後のエージングについて説明する。蓄電池を作製した後に、エージングを行うことが好ましい。エージング条件の一例について以下に説明する。まず初めに0.001C以上0.2C以下のレートで充電を行う。温度は例えば室温以上、50℃以下とすればよい。ここで、正極や負極の反応電位が電解液508の電位窓の範囲を超える場合には、蓄電池の充放電により電解液の分解が生じる場合がある。電解液の分解によりガスが発生した場合には、そのガスがセル内にたまると、電解液が電極表面と接しない領域が発生してしまう。つまり電極の実効的な反応面積が減少し、実効的な抵抗が高くなることに相当する。
また、過度に抵抗が高くなると、負極電位が下がることによって、黒鉛へのリチウム挿入が起こると同時に、黒鉛表面へのリチウム析出も生じてしまう。このリチウム析出は容量の低下を招く場合がある。例えば、リチウムが析出した後、表面に被膜等が成長してしまうと、表面に析出したリチウムが再溶出できなくなり、容量に寄与しないリチウムが増えてしまう。また、析出したリチウムが物理的に崩落し、電極との導通を失った場合にも、やはり容量に寄与しないリチウムが生じてしまう。よって、負極電極の電位が充電電圧上昇によりリチウム電位まで到達する前に、ガスを抜くことが好ましい。
また、ガス抜きを行った後に、室温よりも高い温度、好ましくは30℃以上60℃以下、より好ましくは35℃以上50℃以下において、例えば1時間以上100時間以下、充電状態で保持してもよい。初めに行う充電の際に、表面で分解した電解液は黒鉛の表面に被膜を形成する。よって、例えばガス抜き後に室温よりも高い温度で保持することにより、形成された被膜が緻密化する場合もある。
図7には、リード電極に集電体を溶接する例を示す。図7(A)に示すように、セパレータ507に包まれた正極503と、負極506と、を交互に重ねる。次に、正極集電体501を正極リード電極510に、負極集電体504を負極リード電極511に、それぞれ溶接する。正極集電体501を正極リード電極510に溶接する例を図7(B)に示す。正極集電体501は、超音波溶接などを用いて溶接領域512で正極リード電極510に溶接される。また、正極集電体501は、図7(B)に示す湾曲部513を有することにより、蓄電池500の作製後に外から力が加えられて生じる応力を緩和することができ、蓄電池500の信頼性を高めることができる。
図4および図5に示す蓄電池500において、正極リード電極510は正極503が有する正極集電体501と、負極リード電極511は負極506が有する負極集電体504と、それぞれ超音波接合される。また、外部との電気的接触を得る端子の役割を正極集電体501および負極集電体504で兼ねることもできる。その場合は、リード電極を用いずに、正極集電体501および負極集電体504の一部を外装体509から外側に露出するように配置してもよい。
また、図4では正極リード電極510と負極リード電極511は同じ辺に配置されているが、図8に示すように、正極リード電極510と負極リード電極511を異なる辺に配置してもよい。このように、本発明の一態様の蓄電池は、リード電極を自由に配置することができるため、設計自由度が高い。よって、本発明の一態様の蓄電池を用いた製品の設計自由度を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電池を用いた製品の生産性を高めることができる。
蓄電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
また図5では、一例として、向かい合う正極活物質層と負極活物質層の組の数を5組としているが、勿論、活物質層の組は5組に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。活物質層数が多い場合には、より多くの容量を有する蓄電池とすることができる。また、活物質層数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた蓄電池とすることができる。
上記構成において、二次電池の外装体509は、最小の曲率半径が例えば、3mm以上30mm以下、より好ましくは3mm以上10mm以下となるように変形することができる。二次電池の外装体であるフィルムは、1枚または2枚で構成されており、積層構造の二次電池である場合、湾曲させた電池の断面構造は、外装体であるフィルムの2つの曲線で挟まれた構造となる。
面の曲率半径について、図9を用いて説明する。図9(A)において、曲面1700を切断した平面1701において、曲面1700に含まれる曲線1702の一部を円の弧に近似して、その円の半径を曲率半径1703とし、円の中心を曲率中心1704とする。図9(B)に曲面1700の上面図を示す。図9(C)に、平面1701で曲面1700を切断した断面図を示す。曲面を平面で切断するとき、曲面に対する平面の角度や切断位置に応じて、断面に現れる曲線の曲率半径は異なるものとなるが、本明細書等では、最も小さい曲率半径を面の曲率半径とする。
2枚のフィルムを外装体として電極・電解液など1805を挟む二次電池を湾曲させた場合には、二次電池の曲率中心1800に近い側のフィルム1801の曲率半径1802は、曲率中心1800から遠い側のフィルム1803の曲率半径1804よりも小さい(図10(A))。二次電池を湾曲させて断面を円弧状とすると曲率中心1800に近いフィルムの表面には圧縮応力がかかり、曲率中心1800から遠いフィルムの表面には引っ張り応力がかかる(図10(B))。外装体の表面に凹部または凸部で形成される模様を形成すると、このように圧縮応力や引っ張り応力がかかったとしても、ひずみによる影響を許容範囲内に抑えることができる。そのため、二次電池は、曲率中心に近い側の外装体の最小の曲率半径が例えば、3mm以上30mm以下、より好ましくは3mm以上10mm以下となるように変形することができる。
なお、二次電池の断面形状は、単純な円弧状に限定されず、一部が円弧を有する形状にすることができ、例えば図10(C)に示す形状や、波状(図10(D))、S字形状などとすることもできる。二次電池の曲面が複数の曲率中心を有する形状となる場合は、複数の曲率中心それぞれにおける曲率半径の中で、最も曲率半径が小さい曲面において、2枚の外装体の曲率中心に近い方の外装体の最小の曲率半径が例えば、3mm以上30mm以下、より好ましくは3mm以上10mm以下となるように変形することができる。
次に、正極、負極およびセパレータの積層の様々な例を示す。
図13(A)には、正極111及び負極115を6層ずつ積層する例について示す。正極111が有する正極集電体121の片面に正極活物質層122が設けられている。また、負極115が有する負極集電体125の片面に負極活物質層126が設けられている。
また、図13(A)に示す構成では、正極111の正極活物質層122を有さない面同士が接し、負極115の負極活物質層126を有さない面同士が接するように、正極111及び負極115が積層される。このような積層順とすることで、正極111の正極活物質層122を有さない面同士、負極115の負極活物質層126を有さない面同士という、金属同士の接触面をつくることができる。金属同士の接触面は、活物質とセパレータとの接触面と比較して摩擦係数を小さくすることができる。
そのため、二次電池を湾曲したとき、正極111の正極活物質層122を有さない面同士、負極115の負極活物質層126を有さない面同士が滑ることで、湾曲の内径と外径の差により生じる応力を逃がすことができる。ここで湾曲の内径とは例えば、蓄電池500を湾曲させる場合に、蓄電池500の外装体509において、湾曲部の内側に位置する面が有する曲率半径を指す。そのため、蓄電池500の劣化を抑制することができる。また、信頼性の高い蓄電池500とすることができる。
また、図13(B)に、図13(A)と異なる正極111と負極115の積層の例を示す。図13(B)に示す構成では、正極集電体121の両面に正極活物質層122を設けている点において、図13(A)に示す構成と異なる。図13(B)のように正極集電体121の両面に正極活物質層122を設けることで、蓄電池500の単位体積あたりの容量を大きくすることができる。
また、図13(C)に、図13(B)と異なる正極111と負極115の積層の例を示す。図10(C)に示す構成では、負極集電体125の両面に負極活物質層126を設けている点において、図10(B)に示す構成と異なる。図10(C)のように負極集電体125の両面に負極活物質層126を設けることで、蓄電池500の単位体積あたりの容量をさらに大きくすることができる。
また、図13に示す構成では、セパレータ123が正極111を袋状に包む構成であったが、本発明はこれに限られるものではない。ここで、図14(A)に、図13(A)と異なる構成のセパレータ123を有する例を示す。図14(A)に示す構成では、正極活物質層122と負極活物質層126との間にシート状のセパレータ123を1枚ずつ設けている点において、図13(A)に示す構成と異なる。図14(A)に示す構成では、正極111及び負極115を6層ずつ積層しており、セパレータ123を6層設けている。
また、図14(B)に図14(A)とは異なるセパレータ123を設けた例を示す。図14(B)に示す構成では、1枚のセパレータ123が正極活物質層122と負極活物質層126の間に挟まれるように複数回折り返されている点において、図14(A)に示す構成と異なる。また、図14(B)の構成は、図14(A)に示す構成の各層のセパレータ123を延長して層間をつなぎあわせた構成ということもできる。図14(B)に示す構成では、正極111及び負極115を6層ずつ積層しており、セパレータ123を少なくとも5回以上折り返せばよい。また、セパレータ123は、正極活物質層122と負極活物質層126の間に挟まれるように設けるだけでなく、延長して複数の正極111と負極115を一まとめに結束するようにしてもよい。
また図15に示すように正極、負極およびセパレータを積層してもよい。図15(A)は第1の電極組立体130、図15(B)は第2の電極組立体131の断面図である。図15(C)は、図1(A)の一点破線A1−A2における断面図である。なお、図15(C)では図を明瞭にするため、第1の電極組立体130、電極組立体131およびセパレータ123を抜粋して示す。
図15(C)に示すように、蓄電池500は、複数の第1の電極組立体130および複数の電極組立体131を有する。
図15(A)に示すように、第1の電極組立体130では、正極集電体121の両面に正極活物質層122を有する正極111a、セパレータ123、負極集電体125の両面に負極活物質層126を有する負極115a、セパレータ123、正極集電体121の両面に正極活物質層122を有する正極111aがこの順に積層されている。また図15(B)に示すように、第2の電極組立体131では、負極集電体125の両面に負極活物質層126を有する負極115a、セパレータ123、正極集電体121の両面に正極活物質層122を有する正極111a、セパレータ123、負極集電体125の両面に負極活物質層126を有する負極115aがこの順に積層されている。
さらに図15(C)に示すように、複数の第1の電極組立体130および複数の電極組立体131は、捲回したセパレータ123によって覆われている。
[コイン型蓄電池]
次に蓄電装置の一例として、コイン型の蓄電池の一例について、図11を参照して説明する。図11(A)はコイン型(単層偏平型)の蓄電池の外観図であり、図11(B)は、その断面図である。
コイン型の蓄電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。
また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。
正極304は、正極503の記載を参照すればよい。正極活物質層306は、正極活物質層502を参照すればよい。負極307は、負極506を参照すればよい。負極活物質層309は、負極活物質層505の記載を参照すればよい。セパレータ310は、セパレータ507の記載を参照すればよい。電解液は、電解液508の記載を参照すればよい。
なお、コイン型の蓄電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解質に含浸させ、図11(B)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の蓄電池300を製造する。
[円筒型蓄電池]
次に蓄電装置の一例として、円筒型の蓄電池を示す。円筒型の蓄電池について、図12を参照して説明する。円筒型の蓄電池600は、図12(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
図12(B)は、円筒型の蓄電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の蓄電池と同様のものを用いることができる。
正極604は、正極503を参照すればよい。また負極606は、負極506を参照すればよい。また、正極604および負極606は、例えば実施の形態1に示す電極の作製方法を参照することができる。円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
図12に示すような円筒型の蓄電池のように電極を捲回する際には、捲回時に電極に大きな応力が作用する。また、電極の捲回体を筐体に収納した場合に、電極には常に捲回軸の外側に向かう応力が作用する。このように電極に大きな応力が作用したとしても、活物質が劈開してしまうことを防止することができる。
なお、本実施の形態では、蓄電池として、コイン型、円筒型および薄型の蓄電池を示したが、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができる。また、正極、負極、およびセパレータが複数積層された構造、正極、負極、およびセパレータが捲回された構造であってもよい。例えば、他の蓄電池の例を図21乃至図29に示す。
[薄型の蓄電池の構成例]
図16および図17に、薄型の蓄電池の構成例を示す。図16(A)に示す捲回体993は、負極994と、正極995と、セパレータ996と、を有する。
捲回体993は、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重なり合って積層され、該積層シートを捲回したものである。この捲回体993を角型の封止容器などで覆うことにより角型の二次電池が作製される。
なお、負極994、正極995およびセパレータ996からなる積層の積層数は、必要な容量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。負極994はリード電極997およびリード電極998の一方を介して負極集電体(図示せず)に接続され、正極995はリード電極997およびリード電極998の他方を介して正極集電体(図示せず)に接続される。
図16(B)および図16(C)に示す蓄電池990は、外装体となるフィルム981と、凹部を有するフィルム982とを熱圧着などにより貼り合わせて形成される空間に上述した捲回体993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、フィルム981と、凹部を有するフィルム982との内部で電解液に含浸される。
フィルム981と、凹部を有するフィルム982は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。フィルム981および凹部を有するフィルム982の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときにフィルム981と、凹部を有するフィルム982を変形させることができ、可撓性を有する蓄電池を作製することができる。
また、図16(B)および図16(C)では2枚のフィルムを用いる例を示しているが、1枚のフィルムを折り曲げることによって空間を形成し、その空間に上述した捲回体993を収納してもよい。
また蓄電装置の外装体や、封止容器を樹脂材料などにすることによって可撓性を有する蓄電装置を作製することができる。ただし、外装体や、封止容器を樹脂材料にする場合、外部に接続を行う部分は導電材料とする。
例えば、可撓性を有する別の薄型蓄電池の例を図17に示す。図17(A)の捲回体993は、図16(A)に示したものと同一であるため、詳細な説明は省略することとする。
図17(B)および図17(C)に示す蓄電池990は、外装体991の内部に上述した捲回体993を収納したものである。捲回体993は、リード電極997およびリード電極998を有し、外装体991、992の内部で電解液に含浸される。外装体991、992は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。外装体991、992の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときに外装体991、992を変形させることができ、可撓性を有する薄型蓄電池を作製することができる。
本発明の一態様に係る活物質を含む電極を、可撓性を有する薄型蓄電池に用いることにより、薄型蓄電池を繰り返し折り曲げることによって電極に応力が作用したとしても、活物質が劈開してしまうことを防止することができる。
以上により、劈開面の少なくとも一部にグラフェンで覆われた活物質を電極に用いることにより、電池の電圧の低下や、放電容量の低下を抑制することができる。これにより、充放電に伴う電池のサイクル特性を向上させることができる。
[蓄電システムの構造例]
また、蓄電システムの構造例について、図18乃至図20を用いて説明する。ここで蓄電システムとは、例えば、蓄電装置を搭載した機器を指す。
図18(A)および図18(B)は、蓄電システムの外観図を示す図である。蓄電システムは、回路基板900と、蓄電池913と、を有する。蓄電池913には、ラベル910が貼られている。さらに、図18(B)に示すように、蓄電システムは、端子951と、端子952と、アンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、および回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914およびアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
蓄電システムは、アンテナ914およびアンテナ915と、蓄電池913との間に層916を有する。層916は、例えば蓄電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
なお、蓄電システムの構造は、図18に示す構造に限定されない。
例えば、図19(A−1)および図19(A−2)に示すように、図18(A)および図18(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。図19(A−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図19(A−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図18(A)および図18(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図18(A)および図18(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図19(A−1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、図19(A−2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば蓄電池913による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。
上記構造にすることにより、アンテナ914およびアンテナ915の両方のサイズを大きくすることができる。
または、図19(B−1)および図19(B−2)に示すように、図18(A)および図18(B)に示す蓄電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けてもよい。図19(B−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図19(B−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図18(A)および図18(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図18(A)および図18(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
図19(B−1)に示すように、蓄電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914およびアンテナ915が設けられ、図19(B−2)に示すように、蓄電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914およびアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した蓄電システムと他の機器との通信方式としては、NFCなど、蓄電システムと他の機器の間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
又は、図20(A)に示すように、図18(A)および図18(B)に示す蓄電池913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、図18(A)および図18(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図18(A)および図18(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
又は、図20(B)に示すように、図18(A)および図18(B)に示す蓄電池913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、図18(A)および図18(B)に示す蓄電システムと同じ部分については、図18(A)および図18(B)に示す蓄電システムの説明を適宜援用できる。
センサ921としては、例えば、力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むものを用いることができる。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電システムが置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
本実施の形態で示す蓄電池や蓄電システムには、本発明の一態様に係る電極が用いられている。そのため、蓄電池や蓄電システムの容量を大きくすることができる。また、エネルギー密度を高めることができる。また、信頼性を高めることができる。また、寿命を長くすることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)
本実施の形態では、可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例について説明する。
実施の形態2に示す可撓性を有する蓄電池を電子機器に実装する例を図21に示す。フレキシブルな形状を備える蓄電装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
また、フレキシブルな形状を備える蓄電装置を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
図21(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電装置7407を有している。
図21(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電装置7407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電装置7407の状態を図21(C)に示す。蓄電装置7407は薄型の蓄電池である。蓄電装置7407は曲げられた状態で固定されている。なお、蓄電装置7407は集電体7409と電気的に接続されたリード電極7408を有している。例えば、集電体7409は銅箔であり、一部ガリウムと合金化させて、集電体7409と接する活物質層との密着性を向上し、蓄電装置7407が曲げられた状態での信頼性が高い構成となっている。
図21(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び蓄電装置7104を備える。また、図21(E)に曲げられた蓄電装置7104の状態を示す。蓄電装置7104は曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して蓄電装置7104の一部または全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径の値で表したものを曲率半径であり、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または蓄電装置7104の主表面の一部または全部が変化する。蓄電装置7104の主表面における曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。
図21(F)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7205、入出力端子7206などを備える。
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行ってもよい。
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の電極を備える蓄電装置を有している。例えば、図21(E)に示した蓄電装置7104を、筐体7201の内部に湾曲した状態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
携帯情報端末7200はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサや、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
図21(G)は、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部7304を有し、本発明の一態様の蓄電装置を有している。また、表示装置7300は、表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末として機能させることもできる。
表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示状況を変更することができる。
また、表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
本実施の形態では、蓄電装置を搭載することのできる電子機器の一例を示す。
図22(A)および図22(B)に、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示す。図22(A)および図22(B)に示すタブレット型端末9600は、筐体9630a、筐体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表示部9631aと表示部9631bを有する表示部9631、表示モード切り替えスイッチ9626、電源スイッチ9627、省電力モード切り替えスイッチ9625、留め具9629、操作スイッチ9628、を有する。図22(A)は、タブレット型端末9600を開いた状態を示し、図22(B)は、タブレット型端末9600を閉じた状態を示している。
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄電体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐体9630bに渡って設けられている。
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
また、表示モード切り替えスイッチ9626は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9625は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
また、図22(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
図22(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634有する。また、蓄電体9635として、本発明の一態様に係る蓄電体を用いる。
なお、タブレット型端末9600は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630aおよび筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、タブレット型端末9600の耐久性を高めることができる。また、本発明の一態様の蓄電体を用いた蓄電体9635は可撓性を有し、曲げ伸ばしを繰り返しても充放電容量が低下しにくい。よって、信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
また、この他にも図22(A)および図22(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面又は両面に設けることができ、蓄電体9635の充電を効率的に行う構成とすることができる。なお蓄電体9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
また、図22(B)に示す充放電制御回路9634の構成、および動作について図22(C)にブロック図を示し説明する。図22(C)には、太陽電池9633、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図22(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにして蓄電体9635の充電を行う構成とすればよい。
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄電体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
図23に、他の電子機器の例を示す。図23において、表示装置8000は、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置8000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ部8003、蓄電装置8004等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置8004は、筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能となる。
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
図23において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、光源8102、蓄電装置8103等を有する。図23では、蓄電装置8103が、筐体8101及び光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8103を無停電電源として用いることで、照明装置8100の利用が可能となる。
なお、図23では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井8104以外、例えば側壁8105、床8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
図23において、室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室内機8200は、筐体8201、送風口8202、蓄電装置8203等を有する。図23では、蓄電装置8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室外機8204の両方に、蓄電装置8203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に蓄電装置8203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
なお、図23では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
図23において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、蓄電装置8304等を有する。図23では、蓄電装置8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置8304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置8304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
なお、上述した電子機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電子機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電子機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
また、電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、蓄電装置8304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行われる昼間において、蓄電装置8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)
本実施の形態では、車両に蓄電装置を搭載する例を示す。
また、蓄電装置を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
図24において、本発明の一態様を用いた車両を例示する。図24(A)に示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8400は蓄電装置を有する。蓄電装置は電気モーター8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
また、蓄電装置は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、蓄電装置は、自動車8400が有するナビゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
図24(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する蓄電装置にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図24(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された蓄電装置8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された蓄電装置8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
本発明の一態様によれば、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、蓄電装置の特性を向上することができ、よって、蓄電装置自体を小型軽量化することができる。蓄電装置自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した蓄電装置を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
本実施例では、本発明の一態様の正極活物質の作製方法について説明する。
図2に示すフローに基づき、本発明の一態様の正極活物質である試料A1、試料C1および試料C2を作製した。なお以下において3つの試料において同じ条件を用いた場合は、その記載を省く。
ステップS201aにおいて、リチウム化合物としてLiClを6.359g秤量した。ステップS201bにおいて、リン化合物としてH3PO4を3.41ml秤量した。リンに対するリチウムのモル数が3倍となるようにした。ステップS201dにおいて、溶媒として純水を50ml秤量した。
次に、ステップS205において、純水に、LiClとH3PO4を入れ、混合液Aを形成した。ステップS205は、大気雰囲気下で行った。なお、混合液の形成の際に、撹拌子等を用いて攪拌を行いながら、材料等を投入することが好ましい。
次に、ステップS205bにおいて、溶液Qとして、濃度が28重量%のアンモニア水を準備した。
次に、ステップS207において、混合液Aに対して、溶液Qを滴下し、pH測定を行った。所望のpHとなるまで溶液Qの滴下を行い、混合液Bを形成した。ここで、各試料について後述する混合液Cの濃度が表1に示す値となるように、pHを調整した。pH測定にはメトラー・トレド製のセブンゴーデュオpHメータを用いた。
次に、ステップS208において、M(II)化合物としてFeCl2・4H2Oを9.941g秤量した。リンに対する鉄のモル数が1倍となるようにした。また、ステップS209bにおいて、溶媒として水を秤量した。
次に、ステップS209において、pHが異なる数種類の混合液Bのそれぞれに対して、混合液Bと、FeCl2・4H2Oと、純水と、を混合し、混合液Cを形成した。各試料における混合液CのpHを表1に示す。
次に、ステップS211において、ガラス製内筒を有するオートクレーブ装置に混合液Cを入れ密閉し、撹拌を行い、試料A1については180℃で1時間、試料C1および試料C2においては150℃で1時間、それぞれ加熱を行った。加熱中の内筒内の圧力は150℃においておよそ0.4MPa乃至0.5MPa程度、180℃においておよそ0.9MPa乃至1.0MPa程度であった。加熱した後、温度が低下するまで放置し、内筒内の合成物を、ろ過し、水洗した。オートクレーブ装置にはオーエムラボテック社製ミニリアクターMS200−Cを用いた。
次に、減圧雰囲気、60℃で2時間乾燥させ、粉末状のLiFePO4を有する試料A1、試料C1および試料C2を得た。試料A1は灰色の粉体、試料C1は試料A1よりやや濃い灰色の粉体、試料C2はやや緑がかかった灰色の粉体であった。
本実施例では、実施例1で作製した試料A1、試料C1および試料C2の分析結果について述べる。
<SEM観察>
SEMを用いて各試料の観察を行った。試料A1、試料C1および試料C2の観察結果をそれぞれ図25、図26および図27に示す。図25(A)、図26(A)および図27(A)は50、000倍、図25(C)、図26(C)および図27(C)は1、000倍における観察結果である。また図25(B)は図25(A)の点線で囲む領域の、図26(B)は図26(A)の点線で囲む領域の、図27(B)は図27(A)の点線で囲む領域の、拡大図をそれぞれ示す。図25(B)より、試料A1が有する2つの粒子を測定したところ、短径は58nmおよび33nmであった。また図26(B)より試料C1が有する2つの粒子を測定したところ、短径は478nmおよび665nmであった。また図27(B)より試料C2が有する2つの粒子を測定したところ、短径は291nmおよび57nmであった。
以下により詳細に粒子の長径および短径を算出した。
図1(A)は図25(B)に示す試料A1の観察結果において粒子の集合体202a、集合体202bおよび集合体202cを示した図である。また図1(B)には、集合体202a、集合体202bおよび集合体202cが有する粒子を模式図で示す。
図28には図1(B)に示す粒子203a、粒子203bおよび粒子203cが長方形で近似する場合の長径および短径の一例を示す。粒子203aにおいて、長径206aは352nm、短径207aは108nm、長径は短径の3.3倍であった。また、粒子203bにおいて、長径206bは490nm、短径207bは97.9nm、長径は短径の5.0倍であった。また、粒子203cにおいて、長径206cは280nm、短径207cは125nm、長径は短径の2.2倍であった。
試料A1ではアスペクト比が高く、短径の小さい、優れた正極活物質が得られることがわかった。一方、試料C1では短径が400nm以上とやや大きい結果となった。試料C2は短径が100nm以下と小さい条件もみられたが、後述するように比表面積が大きく粒子同士が接着している可能性がある。
<レーザ回折・散乱法による粒度分布測定>
次に各試料について、レーザ回折粒度分布測定装置(SALD−2200形、島津製作所製)を用いて測定した。粒径の算出方式にはレーザ回折・散乱法を用いた。装置の測定範囲は、0.030μmから1000μmであった。図29(A)は試料A1の、図29(B)は試料C1の、試料29(C)は試料C2の粒度分布測定の結果をそれぞれ示す。また各試料について、D50およびD90の結果を表2に示す。ここでD50とは粒度分布測定結果の積算粒子量曲線において、その積算量が50%を占めるときの粒子径、すなわちメジアンである。またD90とは粒度分布が90%となる粒径である。なお、表2において同じ試料名が複数回記載してある場合には、異なる粉体を用いて複数回測定したことを示す。
試料C2ではD50が10μm以上となる場合があり、試料A1および試料C1と比較して大きいことがわかった。
<比表面積測定>
次に、各試料において比表面積の測定を行った。比表面積の測定には自動比表面積・細孔分布測定装置(トライスターII3020(島津製作所社製))を用いた。解析にはBET法を用いた。各試料の比表面積の測定結果を表3に示す。
ここで表3の比表面積を用いて数式(1)にLiFePO4の密度d=3.55g/cm3を代入し、球近似の場合の直径を求めると、試料A1が120nm、試料C1が181nm、試料C2が299nmであった。
作製温度を180℃、混合液CのpHを4.28とした試料A1では、SEMでみられる粒子のサイズに対し、比表面積から得られる粒径も同程度であり、粒子同士の接着が少ない、優れた正極活物質が得られたと考えられる。一方、作製温度を150℃、混合液CのpHを6.5とした試料C2では、SEM観察において短径が100nm以下の粒子もみられたのにも関わらず、比表面積が他の条件と比較して大きく、粒子同士の接着がより多いことが示唆される。また粒度分布の結果より、集合体の径が大きいことが示唆される。また、作製温度を150℃、混合液CのpHを3.92とした試料C1においては比表面積は試料C2よりも大きい結果となった。このことから、pHを酸性寄り(酸性において、より小さいpH)とすることにより、粒子同士の接着が抑制されると考えられる。