JP6952295B2 - ヒト抗hlaモノクローナル抗体の作製方法 - Google Patents

ヒト抗hlaモノクローナル抗体の作製方法 Download PDF

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Description

本発明は、ヒト抗HLAモノクローナル抗体の作製方法、及び該抗体の用途に関する。
ヒトの主要組織適合遺伝子複合体分子であるHLA(ヒト白血球型抗原、Human Leukocyte Antigen)にはクラスI抗原(A、B、C、E、F、G)及びクラスII抗原(DR、DQ、DP)等があり、それぞれの抗原には非常に多くの多型が存在している。個々のヒトが、両親からそれぞれ受け継いだ2種の型を共存した状態で有しており、ヒトによってHLA型が異なっている。造血幹細胞移植等においては、一般的には少なくともA、B及びDRの型が適合していることが重要とされている。
また、HLAの型によって疾患への罹患可能性が異なることがわかってきている。例えば糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症等の疾患と特定のHLAとの関連性が知られており、近年、抗HLA抗体を用いた疾患の診断及び治療の可能性が報告されつつある(例えば特許文献1及び2、非特許文献1)。一例として、抗HLAクラスII抗体によるリンパ系腫瘍の治療が試みられており、2015年の米国血液学会では、著明な治療効果と軽微な副作用であったとの臨床試験(フェーズI)結果が報告されている(非特許文献2)。更に、例えばフローサイトメトリー検査によって、同種造血幹細胞移植後の正常造血の回復や、血液腫瘍の早期再発や微小残存病変を簡便にモニタリングし、治療成績を向上させることが試みられている(非特許文献3)。
従来、抗体、特にモノクローナル抗体は、マウス等の動物に抗原を投与し、得られた抗体産生細胞をミエローマ細胞と融合させたハイブリドーマを用いる方法で作製されている。この方法で作製されるモノクローナル抗体は、本来は非ヒトモノクローナル抗体であるが、ヒトでのin vivoでの使用のために、遺伝子組み換え技術を利用してヒト化抗体、更にはヒト抗体とすることが好適であることが知られている。
米国特許出願公開2014/0227178号 特開2015-180607号
Cancer Science, June 2007, vol.98, no.6, 921-928 2015年米国血液学会, abstract #2740 Watanabe N et al. BBMT 2008, 14 (6): 693-701
上記の通り、抗HLA抗体の有用性が報告されている一方、HLA分子に対するモノクローナル抗体(mAbs)は、その多型のために作製が困難であることが知られている。ヒトHLA遺伝子のトランスジェニックマウスを精製HLA抗原で免疫しても、目的とする抗体を得ることは非常に困難である。従って、ヒトによって異なる各HLA型に対して結合特異性を有する抗HLAモノクローナル抗体を、迅速に、かつ完全ヒト抗体として取得する方法が必要とされていた。
血液内科の臨床現場では、経産女性や輸血経験者の中に抗HLA抗体陽性の患者を診断する機会がある。そのような抗HLA抗体陽性患者では、抗体陽性であることによって症状が発現することはないが、輸血された血小板は抗HLA抗体によってすみやかに破壊され、輸血の効果が得られないことが知られている。これらの知見から、一部の健常者及び輸血・移植経験患者の体内には、抗HLA抗体を産生するリンパ球が存在し、そのリンパ球が産生する抗HLA抗体はHLA抗原を発現する細胞に結合してこれを破壊することがわかっている。
一方、本発明者等のグループは、ヒト末梢血由来細胞から、チップを用いて特定の抗原に対して特異的な抗体産生細胞を短期間で取得する方法を開発している(Nature Medicine, Vol.15, No.9, September 2009, 1088-1092、特許第4148367号)。
上記の知見及び技術に基づいて、本発明者等は、抗HLA抗体陽性患者の末梢血もしくは骨髄中の抗HLA抗体産生細胞から免疫グロブリン遺伝子をクローニングすることにより、臨床検査等に有用な抗HLAモノクローナル抗体を作製することが可能であることを見出した。
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
(1) 特定のHLA型に対する特異性を有するヒト抗HLAモノクローナル抗体を産生する細胞の単離方法であって、以下:
(a) ヒト被験者由来の単核球中の抗HLA抗体の存在を同定するステップ、
(b) 目的の抗HLAモノクローナル抗体を産生可能な細胞を含む単核球を培養するステップ、及び
(c) 培養した単核球から抗体産生細胞を単離するステップ
を含む、上記方法。
(2) 特定のHLA型に対する特異性を有するヒト抗HLAモノクローナル抗体の作製方法であって、
(d) 上記(1)記載の方法に従って得られた抗体産生細胞が産生する抗体をコードする遺伝子をクローニングするステップ、
(e) クローニングされた遺伝子を細胞にin vitroで導入するステップ、及び
(f) 該細胞を培養し、増殖させて抗体を回収するステップ
を含む、上記方法。
(3) 単核球が末梢血又は骨髄由来の細胞から得られる、上記(1)又は(2)記載の方法。
(4) ヒト被験者が妊娠経験のある女性、又は輸血、造血幹細胞移植、若しくは臓器移植経験がある被験者である、上記(1)〜(3)のいずれか記載の方法。
(5) HLA型がHLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DR、HLA-DQ、HLA-DPのいずれかに属する型である、上記(1)〜(4)のいずれか記載の方法。
(6) HLA型がHLA-B61である、請求項(1)〜(5)のいずれか記載の方法。
(7) 上記(2)〜(6)のいずれか記載の方法によって得られる、単離された完全ヒト抗HLAモノクローナル抗体。
(8) ヒトHLA-B61抗原に対して特異的に結合するモノクローナル抗体であって、以下:
(a)配列番号2で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は該塩基配列に対して90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドがコードする重鎖可変領域ポリペプチド、及び
(b)配列番号4で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は該塩基配列に対して90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドがコードする軽鎖可変領域ポリペプチド
を含む、上記モノクローナル抗体。
(9) ヒトHLA-B61抗原に対して特異的に結合するモノクローナル抗体であって、以下:
(a)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は該アミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドである重鎖可変領域ポリペプチド、及び
(b)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は該アミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドである軽鎖可変領域ポリペプチド
を含む、上記モノクローナル抗体。
(10) ヒトHLA-B61抗原に対して特異的に結合するモノクローナル抗体であって、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるCDH1、配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるCDH2、配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるCDH3、配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるCDL1、配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるCDL2、配列番号11で示されるアミノ酸配列からなるCDL3を含む、上記モノクローナル抗体。
(11) 上記(7)〜(10)のいずれか記載のモノクローナル抗体と同じ結合特異性を有する抗HLAモノクローナル抗体。
(12) 上記(7)〜(10)のいずれか記載のモノクローナル抗体を含む、特定のHLA型に対する細胞傷害活性剤。
(13) 再生不良性貧血患者から採取したサンプルを、上記(7)〜(11)のいずれか記載のモノクローナル抗体と接触させて、該サンプル中のHLA-B61分子の発現を検出することを含む、該患者に対する免疫抑制療法の有効性を予測する方法。
本発明により、従来作製が困難であることが知られていたHLA分子に対するモノクローナル抗体の新規な作製方法が提供される。ヒト被験者から取得される単核球を使用するため、得られる抗体は完全ヒト抗体であり、ヒトに投与した場合に副作用の発現の危険性が極めて低いと考えられる。
また、遺伝子組み換えによるモノクローナル抗体の作製においては、遺伝子組み換え時に抗体の部分改変が容易である。例えば、抗HLA抗体を検査試薬として使用する場合、抗体のFc部分がヒト型であるため、ヒト末梢血を用いて検査する場合にはそのFc部分に非特異的な結合が生じ、検査結果に影響が出る危険性がある。しかしながら、Fc部分を例えばマウス型に変換することによって、この非特異的な結合を回避することができ、適切に検査することができる。
更に、免疫抑制療法が奏効しやすいHLA-B61欠失血球が検出される再生不良性貧血症例について、本発明の方法で得られる抗HLA-B61抗体によって診断することが可能になる。
本発明の抗HLA抗体の取得に使用したISAAC(Immunospot Array Assay on a Chip)法の概略を示す。 抗HLA-B61抗体によるHLA-B61抗原の検出結果を示す。A:HLA-B61陽性B-LCL(B-リンパ芽球様細胞系(B-lymphoblastoid cell lines))細胞株のコントロール抗体又は抗HLA-B61抗体との結合を示す。B:HLA-B61陰性B-LCL細胞株のコントロール抗体又は抗HLA-B61抗体との結合を示す。 HLA-B61陰性患者(A)又はHLA-B61陽性患者(B)の末梢血CD3+分画のコントロール抗体又は抗HLA-B61抗体との結合を示す。 HLA抗原(HLA-A24又はHLA-B61)に対する各種抗体又は抗体陽性ドナー血清の結合を示す。 HLA-A24陰性患者(A)又はHLA-A24陽性患者(B)の末梢血CD3+分画のコントロール抗体又は抗HLA-A24抗体との結合を示す。 抗HLA-B61抗体によるHLA依存的な補体依存性細胞傷害活性(CDC)を示す。抗HLA-B61抗体は、補体の存在下においてHLA-B40:02アレルを有するドナー1及び2由来の細胞に対して特異的な細胞傷害活性を示す。一方アイソタイプコントロール抗体(抗インフルエンザウイルス抗体)はいずれのドナーに対しても細胞傷害活性を示さなかった。 抗HLA-B61抗体によるHLA-B61陽性B-LCL細胞株に対する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を示す。アイソタイプコントロール抗体ではほとんどの細胞が生存したままであるが、抗HLA-B61抗体を用いた場合には死細胞の割合が高くなっていることが示される。
[ヒト抗HLAモノクローナル抗体産生細胞の単離方法]
本発明は、特定のHLA型に対する特異性を有するヒト抗HLAモノクローナル抗体を産生する細胞の単離方法を提供する。
本発明の方法は、具体的には、以下:
(a) ヒト被験者由来の単核球中の抗HLA抗体の存在を同定するステップ、
(b) 目的の抗HLAモノクローナル抗体を産生可能な細胞を含む単核球を培養するステップ、及び
(c) 培養した単核球から抗体産生細胞を単離するステップ
を含む。
本発明の方法において、ヒト被験者は、健常者であっても、特定の疾患を有する患者であっても良く、特に限定するものではない。しかしながら、抗HLA抗体を有する可能性が高い被験者として、例えば妊娠経験のある女性、又は輸血、造血幹細胞移植、若しくは臓器移植経験がある被験者が挙げられる。
単核球(mononuclear cells)とは、リンパ球及び単球を包含する細胞群をいい、従って、抗体産生細胞と、それ以外の細胞を含む。ヒト被験者由来の単核球は、被験者由来の末梢血又は骨髄由来の細胞から得ることができる。あるいはまた、被験者由来の脾臓、リンパ節などの他の臓器由来の単核球を利用することもできる(Hum Antibodies Hybridomas. 1: 160-165, 1990)。
単核球の調製は、例えば以下のようにして行うことができる。単核球分離溶液(比重=約1.077)の上に末梢血などを重層し、遠心分離(400xg, 約30分)を行った後、単核球を含む不透明な中間層の0.5cm上までの上層を取り除く。次いで不透明な中間層にリン酸緩衝生理食塩水を加えてゆっくり混合し、遠心分離(250xg, 10分)を行った後に沈降している細胞が単核球である。
本明細書において、「特定のHLA型」とは、特にHLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DR、HLA-DQ、HLA-DPのいずれかに属するHLA型であって、例えばHLA-A2、HLA-A24、HLA-B61、HLA-B62、HLA-DR15、HLA-DR4等のHLA抗原を意図する。従って、「特定のHLA型に対する特異性を有する」とは、例えば特定のHLA抗原に対する特異性を有し、他のHLA抗原に対する特異性を有さないことを意味する。抗原及び抗体の結合における「特異性」については、当分野で一般的に理解される通りである。しかしながら、例えばある抗HLAモノクローナル抗体が、同様のエピトープを有するHLA抗原に対して交差反応することがあり得る。従って、抗HLAモノクローナル抗体は、1種又は複数種のHLA抗原に対して結合し得る。この場合、1種のモノクローナル抗体が結合し得る複数種のHLA抗原は、同じ遺伝子座(例えばHLA-B)の抗原、又は異なる遺伝子座(例えばHLA-A及びHLA-B)の抗原であり得る。例えば、抗HLA-A24モノクローナル抗体が、パブリックエピトープ(public epitope)と呼ばれるBw4を認識する場合があり、この場合、該抗体は一部のHLA-B抗原をも認識し得る。
本発明の方法において対象とするHLA型は、特に限定するものではないが、好適にはHLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DR、HLA-DQ、HLA-DPのいずれかに属する型である。例えば、HLA型はHLA-A24、HLA-B61等である。
本発明の方法は、まず、ヒト被験者由来の単核球中の抗HLA抗体の存在を同定するステップを実施する。
単核球中の抗HLA抗体の存在は、例えば、単核球を含むサンプル、例えば被験者由来の血清、あるいは上記のようにして得られた単核球を、種々のHLA抗原と接触させ、結合の有無を決定することで同定することができる。具体的には、限定するものではないが、抗体産生細胞を含み得る血清を、HLA抗原を固相化したマイクロビーズ(例えばFlowPRA、ONE LAMBDA社)と反応させ、さらに蛍光標識等によって標識された抗ヒト抗体を二次抗体(ONE LAMBDA社)として反応させた後、フローサイトメトリーでビーズの蛍光強度を測定することにより、抗HLA抗体の存在を同定することができる。
本発明の方法は、次いで、目的の抗HLAモノクローナル抗体を産生可能な細胞を含む単核球を培養するステップを実施する。培養は、好適には、サイトカインの存在下で行う。
細胞培養におけるサイトカインの添加は、当分野で一般的に行われているが、本発明の方法において使用されるサイトカインとしては、1種以上のサイトカインを個々に、あるいはカクテルとして用いるものであり、特に限定するものではないが、例えば1〜3x106/mlの単核球に対して、ヒトインターロイキン17(hIL17)(約2 ng/ml)及び/又はヒトインターロイキン21(hIL21)(約100 ng/ml)を含むことが好ましい。好適には、以下の成分:R848(レシキモド、約5μg/ml)、hIL2 (ヒトインターロイキン2、約1000 IU/ml)、CpG2006(約2.5μg/ml)、抗CD40抗体(約5μg/ml)、hIL21(約100 ng/ml)、hIL17(約2 ng/ml)、hIL4(ヒトインターロイキン4、約10 ng/ml)、hBAFF(B細胞活性化因子、B cell activating factor)(約100 ng/ml)の1種以上(濃度はそれぞれ最終濃度)を含み、特に好適にはこれらの成分を全て培養液に添加する。
培養は、特に限定するものではないが、例えば37℃で1〜4週間行うことが好ましい。この段階で、サイトカインの刺激によって単核球を効率的に増殖させることができる。
本発明の方法は、次に、培養した単核球から抗体産生細胞を単離するステップを実施する。
抗体産生細胞を単離する方法としては、マイクロチップを用いた方法(Nature Medicine 2009; 15:1088-92)、フローサイトメトリーを用いた方法(BMC Biology 2012; 10:80)、抗体産生細胞のマーカーであるCD138陽性細胞をビーズやセルソーターで分離後に、96ウェルプレートに細胞を限界稀釈してその培養上清の抗体をELISAなどで検出して抗体産生細胞を検出する方法、HLA抗原発現細胞株を各ウェルに播種し、その細胞が傷害されるのを指標にして抗体産生細胞を同定する方法(国際公開WO2012/046745号)等を適宜利用することができる。
一実施形態として、このステップは、本発明者等のグループが開発したISAAC(Immunospot Array Assay on a Chip)法(Nature Medicine, Vol.15, No.9, September 2009, 1088-1092)に準じて行うことができる。この方法の手順について、図1に模式的に説明する。
具体的には、この方法は、培養後の単核球をマイクロアレイにウェル当たり1個の細胞となるようにアプライして更に培養する。
この方法で使用されるマイクロアレイは、ウェル当たり1個の細胞を保持して培養可能なものであればいずれでも良く、特に限定されるものではないが、例えばバルネバ社から入手できるもの等を好適に使用することができる。好適なマイクロアレイの構成については、例えば特許第4069171号に開示されている。
上記の方法では、図1に示すように、マイクロアレイの表面上に、予め目的の抗体と特異的に結合し得る抗原、あるいは二次抗体をコートする。コートする物質は、後の抗体検出に使用する手段に応じて適宜選択し得る。
マイクロアレイ上での細胞培養は、限定するものではないが、例えば37℃で約3時間とすることができる。
培養後、各ウェル毎に細胞を回収し、抗体産生細胞を同定する。
抗HLA抗体産生細胞の同定は、例えば目的のHLA型の抗原又は二次抗体を添加して結合の有無を測定することによって行うことができる。結合は、例えば蛍光色素等を用いて標識した抗原又は二次抗体を添加して、蛍光の有無を指標として検出することができる。
上記のISAAC法では、例えば図1に示す態様では、マイクロアレイ表面上に予めコートされた抗原と、抗体産生細胞から分泌された抗体とが特異的に結合するため、これに更に蛍光標識した二次抗体を添加することで、目的の抗HLA抗体産生細胞が存在するウェルが同定でき、該細胞を単離することができる。
本発明の方法を実施するために、例えば蛍光顕微鏡(オリンパスBX51WI)、マイクロマニピュレーター(エッペンドルフ、TransferMan(登録商標) NK2)等の装置を利用することができる。
上記の(a)〜(c)のステップを含む方法によって、完全ヒト抗HLAモノクローナル抗体産生細胞を単離することができる。得られた抗体産生細胞は、そのままモノクローナル抗体の作製のために用いることができるが、細胞として、例えば凍結して使用時まで保存することができる。
[ヒト抗HLAモノクローナル抗体の作製方法]
本発明はまた、特定のHLA型に対する特異性を有するヒト抗HLAモノクローナル抗体の作製方法を提供する。具体的には、この方法は、
(d) 上記の方法に従って単離した抗体産生細胞が産生する抗体をコードする遺伝子をクローニングするステップ、
(e) クローニングされた遺伝子を細胞にin vitroで導入するステップ、及び
(f) 該細胞を培養し、増殖させて抗体を回収するステップ
を含む。すなわち、抗HLAモノクローナル抗体は、該抗体をコードするポリヌクレオチドを適切な宿主細胞に導入して発現させ、組換えタンパク質として得ることができる。
本発明の抗体作製方法は、まず、上記の方法に従って得られた抗体産生細胞が産生する抗体をコードする遺伝子をクローニングするステップを実施する。より具体的には、特に限定するものではないが、単離した抗体産生細胞が発現する抗体の遺伝子を、例えば1細胞RT-PCR法によって増幅し、cDNA等のポリヌクレオチドとして得ることができる。尚、増幅して取得するポリヌクレオチドはDNAであってもRNAであっても良い。
本発明の方法は、次いでクローニングされた遺伝子を細胞にin vitroで導入するステップを実施する。
具体的には、上記のステップで得られたcDNA等のポリヌクレオチドを適切な発現ベクター、例えばpcDNA3.4(ライフテクノロジーズ)等に組み込み、HEK293細胞等の宿主細胞に導入する。この場合、抗体の重鎖をコードする遺伝子と軽鎖をコードする遺伝子を別個のベクターに組み込み、細胞に導入することができる。宿主細胞への導入手段は当分野で使用されているものを適宜利用することができる。例えばポリヌクレオチドをシグナル配列、ポリA配列、更にプロモーター配列等の調節配列、選択マーカーと共にウイルスベクター、プラスミドベクター、ファージベクター等のベクターに組み込むことができ、これを適宜大腸菌等の細菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞等の適切な宿主細胞中に導入することができる。宿主細胞としては、哺乳動物細胞株を用いることが特に好ましく、例えばExpi293F細胞(ライフテクノロジーズ)を好適に使用することができる。
本発明の方法は、次に細胞を培養し、増殖させて抗体を回収するステップを実施する。細胞が目的の抗体を産生しているか否かは、ELISAによって確認することができる。
上記の(d)〜(f)のステップを実施することによって、目的のヒト抗HLAモノクローナル抗体を組換えタンパク質として取得することができる。遺伝子のクローニングは、当分野で通常行われる技術であり、当業者であれば、本願明細書の記載及び当分野の技術常識に基づいて、本発明の方法を適宜実施することができる。
[抗HLAモノクローナル抗体]
上記の本発明の方法を使用して、ヒト被験者の単核球中に含まれ得るヒト抗HLAモノクローナル抗体産生細胞を迅速に単離・増殖して、目的の抗HLAモノクローナル抗体を取得することができる。本発明の方法によって得られるモノクローナル抗体は、完全ヒト抗体であるため、ヒトに対する治療目的で使用することが可能である。従って、本発明は、上記の方法によって得られる、単離された完全ヒト抗HLAモノクローナル抗体を提供する。
更に、本発明の方法を適用して、被験者由来の単核球に含まれる抗HLA抗体と同じ結合特異性を有するモノクローナル抗体を、ヒト化抗体あるいはキメラ抗体として作製することもできる。「同じ結合特異性を有する」とは、例えば同じエピトープを認識して結合することを意図し、具体的には同じCDR配列を有するものであり得る。
本明細書において、抗体は、完全抗体であっても、あるいは抗原結合性を有する断片、例えばFab、Fab'、F(ab')2断片、また重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をリンカーで連結した一本鎖(single-chain)抗体断片(scFv断片)等であってもよい。scFv断片におけるリンカーとしては、当分野で通常使用されるものであればいずれでも良く、特に限定するものではないが、例えば5〜25個、好ましくは10〜20個のアミノ酸残基からなるペプチドリンカーが挙げられる。これらの断片、及び抗原結合性に影響しない範囲で当業者に理解され得る誘導体、例えば抗体精製を容易にしたり、安定性を高めたり、あるいはin vivoで使用する場合に毒性を低下させるための修飾が施された誘導体も、本明細書においては、「完全ヒト抗体」以外の文脈においては「抗体」に含めるものとする。
本発明の抗HLAモノクローナル抗体は、同種造血幹細胞移植後の生着の有無、正常造血の回復や、血液腫瘍の早期再発・微小残存病変を簡便にモニタリングするために、in vitroで使用することができる。また、クラスII抗原に対する抗HLAモノクローナル抗体は、B細胞系腫瘍(悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病)の有望な治療薬になり得る。
本発明の具体的な一実施形態は、ヒト抗HLA-B61モノクローナル抗体である。
HLA-B61には、B*40:02、B*40:06、B*40:03のアレルが知られており、HLA-B61陽性の被験者は、一方または双方のHLAが上記のアレルとなっていると考えられる。再生不良性貧血患者において、B*40:02のアレル頻度が高いことが知られている(Blood, 2011, December 15, 118(25) 6601-9)。
一方、本発明者等のグループでは、一部の再生不良性貧血患者ではHLA-B61をコードする遺伝子に変異が生じ、結果としてHLA-B61を発現できなくなっており、このような患者において免疫抑制療法が奏効することを見出している。
従って、抗HLA-B61モノクローナル抗体は、再生不良性貧血患者に対する免疫抑制療法の有効性を予め評価するために使用することができる。この場合、評価はin vitroで実施することができるため、抗HLA-B61モノクローナル抗体は、HLA-B61抗原に対する特異的結合性を有する限り、ヒト抗体であっても、非ヒト抗体、例えばヒト化抗体、キメラ抗体であっても良く、上記した通り、完全抗体に加え、抗原結合性を有する抗体断片、誘導体であっても良い。
ヒトHLA-B61抗原に対して特異的に結合するモノクローナル抗体は、例えば:
(a)配列番号2で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は該塩基配列に対して90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドがコードする重鎖可変領域ポリペプチド、及び
(b)配列番号4で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は該塩基配列に対して90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドがコードする軽鎖可変領域ポリペプチド
を含むものであり得る。
ヒトHLA-B61抗原に対して特異的に結合するモノクローナル抗体はまた:
(a)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は該アミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドである重鎖可変領域ポリペプチド、及び
(b)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は該アミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドである軽鎖可変領域ポリペプチド
を含むものであり得る。
ヒトHLA-B61抗原に対して特異的に結合するモノクローナル抗体は更に、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるCDH1、配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるCDH2、配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるCDH3、配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるCDL1、配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるCDL2、配列番号11で示されるアミノ酸配列からなるCDL3を含むものであり得る。
上記の特定の配列を有するモノクローナル抗体は、上記の本発明の方法を実施して取得することができるが、配列情報に基づいて化学合成・遺伝子組み換え等の当分野で通常用いられている技術を用いて取得することもできる。
上記の具体的に記載した配列は、本発明者等が実際に見出したものであるが、当業者であれば、上記の本発明の方法を用いて、同じか若しくは異なるエピトープに結合する抗HLA-B61モノクローナル抗体を取得することができる。また、合成若しくは遺伝子組み換えによって本発明の抗体を作製する場合には、重鎖及び軽鎖定常領域の配列、あるいはフレームワーク領域の配列は、ヒト抗体で通常見られる配列とすることができる。in vitroでの使用が意図される場合には、これらの配列は非ヒト由来の配列とし、キメラ抗体の形態とすることもできる。更にまた、in vivoでの使用が意図される場合には、毒性の低減、安定性の向上等を目的とした改変を行うことができ、例えばFc領域の配列を考慮することができる。
本発明者等は、取得した本発明のモノクローナル抗体が、HLA型特異的に細胞傷害活性を発揮し得ることを見出した。従って、本発明はまた、上記のヒト抗HLAモノクローナル抗体を含む、特定のHLA型に対する細胞傷害活性剤を提供する。本発明の細胞傷害活性剤は、単独で、又は他の薬剤、例えば抗癌剤、抗炎症剤等と組み合わせて、HLA型に依存して生じ得る疾患の治療のために好適に使用することができる。
本発明は更に、再生不良性貧血患者から採取したサンプルを、上記のいずれか記載のモノクローナル抗体と接触させて、該サンプル中のHLA-B61分子の発現を検出することを含む、該患者に対する免疫抑制療法の有効性を予測する方法を提供する。サンプルとしては、HLA-B61抗原の発現を確認できるものであればいずれでも良く、特に限定するものではないが、例えば末梢血、骨髄細胞等が挙げられる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1 抗HLA-B61抗体陽性ドナーの末梢血を用いた抗HLA-B61モノクローナル抗体の作製]
(方法)
本実施例では、A. Jin等、Nature Medicine 2009, 15: 1088-92に記載の方法に従って抗体産生細胞の単離、並びに抗体の作製を行った。
ドナーから取得した血清を、種々のHLA抗原を固相化したラテックスビーズ(マイクロビーズ (Flow PRA、ONE LAMBDA社))と反応させ、さらに蛍光(fluorescein isothiocyanate:FITC)標識抗ヒト抗体を二次抗体(ONE LAMBDA社)として反応させた後、フローサイトメトリーでビーズの蛍光強度を測定することにより、抗HLA抗体の有無を同定した。
抗HLA-B61抗体が陽性であったドナーの末梢血を、単核球分離溶液(LymphoprepTM、Alere Technologies AS、比重=約1.077)の上に重層し、遠心分離(400xg, 約30分)を行った。遠心分離後、単核球を含む不透明な中間層の0.5cm上のところまで上層をパスツールピペットで注意深く吸い上げ、取り除いた。不透明な中間層をパスツールピペットで新しい遠沈管に移し、リン酸緩衝生理食塩水を加えてゆっくり混合した後、遠心分離(250xg, 10分)を行った。上清を取り除き、沈降している細胞を単核球として分離し、一旦凍結保存した。
凍結保存した単核球を解凍し、1.38x107個の単核球を、以下の組成のサイトカインを添加した10%FCS含有RPMI培地中で37℃で6日間培養した。
Figure 0006952295
培養後、PBSで洗浄し、不要な細胞を除き、目的細胞の頻度をあげるためにCD138マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社製)を添加して4℃で15分間反応させ、8.2x106個の単核球から7.3x105個のCD138陽性単核球を分離した。
CD138陽性単核球を、可溶化したHLA-B61抗原をコートした細胞アレイ(バルネバ社)4枚(図1)に播種した。ここで、各ウェル当たり1個の細胞が充填され、ウェルへの充填率は65%であった。ウェル上の細胞を更に37℃で約3時間、10%FCSを含有するRPMI1640培地中で培養した。
培養後、蛍光標識した抗ヒトIgG抗体(anti-Human IgG-Fc Cy3、ミリポア)を用いて特異的抗体の存在を検出した。一方、オレゴングリーン(CellTraceTM Oregon Green (ライフテクノロジーズ))を用いて細胞を染色した。従って、Cy3及びオレゴングリーンの双方の蛍光が検出されるウェルが、目的の抗HLA-B61抗体を産生している細胞である。
検出できたスポット(ウェル)数は14個で、このうち3個のウェルから細胞を回収することができた。さらに回収した細胞由来の遺伝子から抗HLA-B61抗体遺伝子のクローニングを行ったところ、1個のウェル由来の細胞から目的とする抗HLA-B61抗体遺伝子をクローニングすることができた。
その抗HLA-B61抗体遺伝子をExpi293F細胞(ライフテクノロジーズ)に導入して抗HLA-B61抗体を産生させた。
得られた抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域の塩基配列を解析した結果を以下に示す。下線はCDRをコードする塩基配列箇所をそれぞれ示す。
Figure 0006952295
上記の塩基配列に基づいて得られた抗体の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列、及び各CDRのアミノ酸配列を以下の表2及び配列表に示す。これらの可変領域及びCDR領域の決定は、例えばImMunoGeneTics (IMGT)V-Quest tool (http://www.imgt.org/)を用いて調べることができる(Giudicelli V等, IMGT/V-QUEST, an integrated software program for immunoglobulin and T cell receptor V-J and V-D-J rearrangement analysis. Nucleic Acids Res 2004; 32:W435-40)。
Figure 0006952295
[実施例2 抗HLA-B61モノクローナル抗体を用いたHLA-B61抗原陽性血球とHLA-B61抗原欠失血球の検出]
実施例1で作製した抗HLA-B61モノクローナル抗体(抗HLA-B61mAbs)、及び比較対照のモノクローナル抗体(抗インフルエンザウイルス抗体、富山大学免疫学教室作製)をフルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate, FITC)で標識して、HLA-B61抗原陽性もしくは陰性B-LCL(B-リンパ芽球様細胞系(B-lymphoblastoid cell lines))細胞(健常者ドナー由来)の検出をフローサイトメトリーで行った結果、図2に示すように、コントロール抗体では検出できなかったのに対して、本発明の抗体は明瞭にHLA-B61抗原陽性B-LCLを検出することができた(図2A)。一方、HLA-B61抗原陰性B-LCLを用いた場合には、コントロール抗体と抗HLA-B61抗体とで差異は見られなかった(図2B)。
また、ヒト被験者由来の末梢血を用いてHLA-B61抗原陽性もしくは陰性細胞の検出を試みた結果、フローサイトメトリーで明瞭にHLA-B61抗原陽性Tリンパ球を検出することができた(図3A及びB)。
さらに、HLA-B61抗原(湧永製薬社製)を固定化したプレートを用いて、ELISAを行ったところ、抗HLA-B61陽性血清で陽性反応が認められ、抗HLA-B61モノクローナル抗体では顕著な結合が認められた(図4)。この結合は固定化抗原としてHLA-A24抗原(湧永製薬社製)を用いた場合には認められず、HLA-B61に対する特異的な結合であることが明らかであった。
[実施例3 抗HLA-A24モノクローナル抗体の作製]
実施例1と同様にして、抗HLA-A24抗体陽性ドナーの末梢血から抗HLA-A24モノクローナル抗体を単離し、遺伝子クローニング技術を用いて抗HLA-A24モノクローナル抗体を作製した。得られた抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域の塩基配列を解析した結果を以下に示す。下線は重鎖におけるCDRをコードする塩基配列箇所をそれぞれ示す。
Figure 0006952295
上記の塩基配列に基づいて得られた抗体の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列、及び各CDRのアミノ酸配列を以下の表3及び配列表に示す。
Figure 0006952295
[実施例4 抗HLA-A24モノクローナル抗体を用いたHLA-A24抗原陽性血球とHLA-A24抗原欠失血球の検出]
実施例3で作製した抗HLA-A24モノクローナル抗体、及び比較対照のモノクローナル抗体(抗インフルエンザウイルス抗体、富山大学免疫学教室作製)をフルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate, FITC)で標識して、実施例2と同様にしてヒト被験者由来の末梢血を用いてHLA-A24抗原陽性もしくは陰性細胞の検出を試みた結果、フローサイトメトリーで明瞭にHLA-A24抗原陽性Tリンパ球を検出することができた(図5)。
[実施例5 HLA型特異的補体依存性細胞傷害活性 (CDC: complement-dependent cytotoxicity)]
実施例1で作製した抗HLA-B61モノクローナル抗体の機能を検討した。
それぞれ2x105個のHLA-B61陽性B-LCL細胞(HLAタイプB35:01/40:02もしくはB40:02/40:06)又はHLA-B61陰性B-LCL細胞(HLAタイプ51:01/52:01もしくはB44:03/52:01)に、抗HLA-B61モノクローナル抗体 (10μg/ml)を加えて37℃で20分間インキュベートした。遠心分離(600×g, 5分間)後、補体源として10%ヒト血清(健常者ドナー血清)を含むRPMI中に細胞を加えて、37℃で60分間インキュベートし、7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)を加えて4℃で10分間インキュベートした後にフローサイトメトリーで細胞傷害活性を調べた。
図6に、30分間又は60分間インキュベートした後のHLA-B61陽性又は陰性細胞の生存率を示す。その結果、HLA-B61陽性B-LCL細胞に対しては細胞傷害活性が認められたのに対して、HLA-B61陰性B-LCL細胞に対しては認められず、抗体による細胞傷害活性がHLA型特異的であることが実証された。
[実施例6 HLA型特異的抗体依存性細胞傷害活性(ADCC: antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)]
5x104個のHLA-B61陽性B-LCL細胞(target (T))をRPMI培地に加え、実施例1で作製した抗HLA-B61モノクローナル抗体20μg/ml及びエフェクター細胞(effector (E))としてヒト末梢血単核球(E/T比 40)、更にCFSE(5-(6)-カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル)2.5μMを添加して37℃で2時間反応させた後、7-AADで染色してフローサイトメトリーで細胞傷害活性を調べた。その結果、本発明の抗体では図7Aに示すように明瞭な細胞傷害活性が認められた。なお、陰性対照のアイソタイプモノクローナル抗体では細胞傷害活性は認められなかった(図7B)。
現在、作製困難とされているヒト抗HLAモノクローナル抗体を、ヒト被験者由来の単核球を用いて迅速に作製し、検査・治療等に使用することができる。従来のモノクローナル抗体の作製は、多大な時間と費用を要するものであったが、本発明の方法によれば、約1-2ヶ月間で作製することができる。
本発明の方法で作製した抗体を用い、同種造血幹細胞移植後の正常造血の回復や血液腫瘍の早期再発・微小残存病変を簡便にモニタリングし、治療成績を向上させることが可能になる。日本での同種造血幹細胞移植件数は約3500件/年、世界での同件数は約25000件/年であるため、本発明の利用可能性は非常に大きいと考えられる。また、抗HLA抗体を含む血液製剤を輸血した際にも大部分の症例では大きな副作用が生じないため、安全性の面でも大きな問題がないと考えられる。
また、HLAクラスII抗原は、B細胞系などの一部の血液細胞にのみ発現しているため、本発明の方法で作製することができる抗HLAクラスIIモノクローナル抗体は、B細胞系腫瘍(悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病)の有望な治療薬になり得る。
さらに、免疫抑制療法が奏効しやすいHLA-B61欠失血球が検出される再生不良性貧血症例を本発明の抗HLA-B61モノクローナル抗体を用いて迅速に同定することが可能となり、免疫抑制療法を適切に開始することができる。
本発明の方法はまた、自己免疫疾患で検出される自己抗体のモノクローナル抗体の作製にも応用することができ、自己免疫疾患の病態解明や治療法の開発にそのモノクローナル抗体を使用できる可能性がある。

Claims (11)

  1. 特定のHLA型に対する特異性を有するヒト抗HLAモノクローナル抗体の作製方法であって、以下:
    抗HLA抗体の存在が同定されたヒト被験者由来の単核球を分離し、
    該単核球をマイクロアレイにウェル当たり1個の細胞でアプライして培養し、
    目的のHLA型抗原と特異的に結合する抗体が存在するウェルを同定し、
    該ウェルから目的の抗HLAモノクローナル抗体を産生する細胞を単離し、
    単離された細胞が産生する抗体をコードする遺伝子をクローニングし、
    クローニングされた遺伝子を細胞にin vitroで導入し、そして
    遺伝子が導入された該細胞を培養し、増殖させて抗体を回収する
    ことを含む、上記方法。
  2. 単核球が末梢血、脾臓、リンパ節又は骨髄由来の細胞から得られる、請求項1記載の方法。
  3. ヒト被験者が妊娠経験のある女性、又は輸血、造血幹細胞移植、若しくは臓器移植経験がある被験者である、請求項1又は2記載の方法。
  4. HLA型がHLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DR、HLA-DQ、HLA-DPのいずれかに属する型である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. HLA型がHLA-B61である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. ヒトHLA-B61抗原に対して特異的に結合するモノクローナル抗体であって、以下:
    (a)配列番号2で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は該塩基配列に対して90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドがコードする重鎖可変領域ポリペプチドであって、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるCDR1領域、配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるCDR2領域、及び配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるCDR3領域を含む重鎖可変領域ポリペプチド、及び
    (b)配列番号4で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は該塩基配列に対して90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドがコードする軽鎖可変領域ポリペプチドであって、配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるCDR1領域、配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるCDR2領域、及び配列番号11で示されるアミノ酸配列からなるCDR3領域を含む軽鎖可変領域ポリペプチド
    を含む、上記モノクローナル抗体。
  7. ヒトHLA-B61抗原に対して特異的に結合するモノクローナル抗体であって、以下:
    (a)配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は該アミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるCDR1領域、配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるCDR2領域、及び配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるCDR3領域を含む重鎖可変領域ポリペプチド、及び
    (b)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は該アミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるCDR1領域、配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるCDR2領域、及び配列番号11で示されるアミノ酸配列からなるCDR3領域を含む軽鎖可変領域ポリペプチド
    を含む、上記モノクローナル抗体。
  8. ヒトHLA-B61抗原に対して特異的に結合するモノクローナル抗体であって、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む重鎖、及び配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるCDR1、配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるCDR2、及び配列番号11で示されるアミノ酸配列からなるCDR3を含む軽鎖を含む、上記モノクローナル抗体。
  9. 請求項6〜8のいずれか1項記載のモノクローナル抗体と同じ結合特異性を有する抗HLAモノクローナル抗体。
  10. 請求項6〜9のいずれか1項記載のモノクローナル抗体を含む、特定のHLA型に対する細胞傷害活性剤。
  11. 再生不良性貧血患者から採取したサンプルを、請求項6〜9のいずれか1項記載のモノクローナル抗体と接触させて、該サンプル中のHLA-B61分子の発現を検出すること、又は請求項記載の方法でヒト抗HLAモノクローナル抗体を作製し、該モノクローナル抗体と再生不良性貧血患者から採取したサンプルを接触させて、該サンプル中のHLA-B61分子の発現を検出することを含む、該患者に対する免疫抑制療法の有効性を予測する方法であって、HLA-B61分子の発現が検出されない場合に免疫抑制療法が有効であると予測される、上記方法
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