JP6950281B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、成形品、金属/樹脂複合構造体及び製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、成形品、金属/樹脂複合構造体及び製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、成形品、金属/樹脂複合構造体及びそれらの製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略すことがある)樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下PASと略すことがある)樹脂は、270℃以上の融点も保持可能な、優れた耐熱性を呈しつつ、かつ、機械的強度、耐薬品性、成形加工性、寸法安定性にも優れることが知られている。そこで、一般的には、ポリアリーレンスルフィド樹脂に、充填剤やエラストマー等の添加剤を配合し、これらがポリアリーレンスルフィド樹脂からなるマトリックス中に分散されるよう溶融混練してPAS樹脂組成物とした上で、溶融成形して電気・電子機器部品、自動車部品等として各種成形品に加工される。
ところで、各種部品の軽量化の観点から、金属部材代替品として高耐熱性の樹脂部材が使用されている。しかしながら、機械的強度などの問題から全ての金属部材を樹脂で代替することが難しい場合には、金属部材と該樹脂部材を接合一体化して得られる複合構造体(以下、金属/樹脂複合構造体という)が用いられている。このような金属/樹脂複合構造体として、例えば、金属部材表面を粗化した上で、アンカー効果によりポリアリーレンスルフィド樹脂を用いて接合する方法が知られている。例えば、侵食性水溶液又は浸食性懸濁液と言った薬液処理により表面に数平均内径10〜80nmの凹部を有するアルミニウム合金又はマグネシウム合金、或いは陽極酸化法で処理することにより表面に数平均内径10〜80nmの凹部を有するアルミニウム合金に、ポリフェニレンスルフィドと特定割合の無水マレイン酸変性エチレン系共重合体、グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体、グリシジルエーテル変性エチレン系共重合体及びエチレンアルキルアクリレート系共重合体からなる群から選択される1種以上のポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物を射出成形し、凹部に該樹脂組成物が浸入した状態で固着してなる複合体が知られている(特許文献1参照)。該処理法で形成された金属表面の微細な凹部もその内径が非常に微細であることから、樹脂組成物が浸入しにくく、それゆえ金属部品と樹脂組成物により構成された成形品との密着力が充分とはいえなかった。
しかし、この問題は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は溶融状態から固化(結晶化)する温度(再結晶化温度:Tc2)が高いため、溶融したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を金属部材と接触させた際、該樹脂組成物が金属部材表面の微細凹凸内に流動する前に固化(結晶化)してしまう点に原因があった。このため、より再結晶化温度(Tc2)の低い、ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む樹脂組成物の開発が望まれていた。
そこで、ポリアリーレンスルフィド樹脂の再結晶化温度を低下させることを目的として、パラジクロロベンゼンとメタジクロロベンゼンとを共重合させる方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、該ポリアリーレンスルフィド樹脂は骨格の一部にメタ体を挿入する方法であるため、用いるポリアリーレンスルフィド樹脂そのものの再結晶化温度が低下すると伴に、融点も270℃をはるかに下回る温度まで低下するという性質があった。その結果、それを用いて製造された金属/樹脂複合構造体は、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品との密着性に優れるものの、耐熱性が著しく低下するという性質があった。
特開2007−050630号公報 特開2009−050630号公報
そこで本発明が解決しようとする課題は、金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とが接合してなり、耐熱性および密着力に優れる金属/樹脂複合構造体およびその製造方法を提供することにある。さらに本発明は、金属部品に対する密着性に優れ、かつ、耐熱性にも優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、およびそれを溶融成形してなる、金属部品に対する密着性に優れ、かつ、耐熱性にも優れる成形品、を提供することにある。
本願発明者らは種々の検討を行った結果、ポリアリーレンスルフィド樹脂にポリビニルピロリドン樹脂を配合してなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、金属部材に対して優れた密着力を呈しつつ、かつ、ポリアリーレンスルフィド樹脂が本来有する優れた耐熱性を維持することを見出し、本発明を解決するに至った。
すなわち、本発明は、金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とが接合してなる金属/樹脂複合構造体であって、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、ポリビニルピロリドン(B)とを必須成分として配合してなり、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリビニルピロリドン(B)が0.01〜100質量部の範囲であることを特徴とする金属/樹脂複合構造体、に関する。
加えて本発明は、 金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とが接合してなる金属/樹脂複合構造体に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、ポリビニルピロリドン(B)とを必須成分として配合してなり、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリビニルピロリドン(B)が0.01〜100質量部の範囲であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、に関する。
さらに本発明は、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる成形品、に関する。
また、本発明は、金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とが接合してなる金属/樹脂複合構造体の製造方法であって、
(1)金属部材表面に、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を溶融成形することにより接合する工程、または、(2)金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とを接合する工程、を有すること、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、ポリビニルピロリドン(B)とを必須成分として配合してなり、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリビニルピロリドン(B)が0.01〜100質量部の範囲であることを特徴とする金属/樹脂複合構造体の製造方法、に関する。
また、本発明は、金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とが接合してなる金属/樹脂複合構造体に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)とポリビニルピロリドン(B)とを必須成分として溶融混練する工程を有すること、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリビニルピロリドン(B)が0.01〜100質量部の範囲であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法、に関する。
また、本発明は、金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とが接合してなる金属/樹脂複合構造体に用いる前記成形品の製造方法であって、
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を金型内で成型する工程を有すること、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、ポリビニルピロリドン(B)とを必須成分として配合してなり、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリビニルピロリドン(B)が0.01〜100質量部の範囲であることを特徴とする成形品の製造方法、に関する。
本発明によれば、金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とが接合してなり、耐熱性および密着力に優れる金属/樹脂複合構造体およびその製造方法を提供することにある。さらに本発明は、金属部品に対する密着性に優れ、かつ、耐熱性にも優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、およびそれを溶融成形してなる、金属部品に対する密着性に優れ、かつ、耐熱性にも優れる成形品、を提供することができる。
(金属/樹脂複合構造体)
本発明の金属/樹脂複合構造体は、金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とが接合してなる。
本発明において該成形品と金属部材との接合は、機械的結合の寄与もあるが、主として物理的結合や化学的結合に基づくと考えられる。このため、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物ないしその成形品が流動性をもって金属部材表面と接合することが可能な公知の接合方法を用いることができる。以下、(1)金属部材表面に、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を溶融成形することにより接合する工程(接合方法1という)、および、(2)金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とを接合する工程(接合方法2という)とにわけて説明する。
接合方法1としては、例えば、金属部材を射出成形機の金型にインサートして、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を用いて射出成形する、いわゆる金属インサート成形法が挙げられる。また、金属インサート成形の別の形態として、金属部材層をフィルム状に積層した樹脂製フィルム状物を金型にインサートし、該金属部材層側にポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を溶融成形する、いわゆるフィルムインサート成形であってもよい。金属インサート成形法ないしフィルムインサート成形法における装置ならびに製造方法は、特に制限はなく、市販の装置を使用することもできるし、常法に従って行うこともできる。例えば、射出成形機内で、樹脂温度がポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の融点以上の温度範囲、好ましくは融点以上かつ融点プラス100℃の温度範囲内、さらに好ましくは融点プラス20℃かつ融点プラス50℃の温度範囲内で前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を溶融する工程を経た後、樹脂吐出口よりを金型内に注入して成形すればよい。その際、金型温度も公知の温度範囲でよいが、より低温からの設定が可能であり、例えば、室温(23℃)〜300℃の範囲、好ましくは40〜180℃の範囲に設定することができる。このように本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は通常の成形温度として好ましい120〜180℃の温度範囲に設定することもできる上に、再結晶化温度(Tc2)が低く、低温成形性に優れる特徴も有することから、室温(23℃)以上、好ましくは40℃以上、かつ120℃未満の範囲といった比較的低温条件の金型温度であっても外観性や充填性等の成形性や機械物性、耐薬品性に優れる成形物を得ることができ好ましい。
接合方法2としては、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品を、金属部材に接した上で加熱して接合するか、または加熱してから金属部材に接した上で接合して、冷却する。例えば、熱板溶着法、振動溶着法、超音波溶着法、高周波溶着法、誘導加熱溶着法、回転溶着法、レーザー溶着法、ホットプレス法、ホットエンボス法などの方法が挙げられ、これらの接合方法に用いる装置ならびに製造方法は、市販の装置を使用することもできるし、常法に従って行うこともできる。例えば、熱板溶着法では、金属部材と溶着する成形品面を溶融するため、下記の温度条件となるように熱板等の熱源を用いて溶かし、金属部材と接合した後、冷え固まるまで加圧状態で保持することにより接合すればよい。また、振動溶着、超音波溶着、高周波溶着では、前記成形品を金属部材と接合した後、金属部材と溶着する成形品面を溶融するため、下記の温度条件となるように、振動や、超音波、高周波を成形品または金属部材に伝えて発熱させ、当該発熱により前記成形品を溶かし、冷え固まるまで加圧状態で保持することにより接合すればよい。振動、高周波、超音波の伝え方は、照射または成形品に共振体や加振装置を接触させて、前記成形品を振動させればよく、これにより成形品または金属部材自体を振動により、または、成形品と金属部材との摩擦熱により発熱させればよい。一方、誘導加熱溶着では、前記成形品を金属部材と接合した後、金属部材と溶着する成形品面を溶融するため、下記の温度条件となるように、金属部材を誘導加熱装置により加熱して前記成形品を発熱させて溶かし、冷え固まるまで加圧状態で保持することにより接合すればよい。また、回転溶着では、前記成形品と金属部材とをそれぞれ別々に保持した後、いずれか一方を100〜4,000回転の範囲で高速回転させながら両者を徐々に近づけてゆき、両者が接触したところで、下記の温度条件となるように摩擦熱を生じさせ樹脂を溶かして、その後、冷え固まるまで加圧状態で保持することにより接合すればよい。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品は、フィルム状物であってもよい。ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品がフィルム状物である場合には、フィルム状物の平滑性や表面外観性を維持する観点から、特に下記のホットプレス(熱圧着)法、溶融押出法と呼ばれる接合方法を用いることもでき、さらにフィルム状物がレーザー光線を透過可能な透明材であれば、レーザー溶着法と呼ばれる接合方法を用いることもできる。
すなわち、ホットプレス(熱圧着)法やホットエンボス法は、金属部材に対し、フィルム状のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のフィルムを高温高圧下で熱圧着する方法であり、熱圧着は、加熱ロールによる方法や熱板プレスなどによって行われるが、生産プロセス上の観点から加熱ロールによる方法が好ましい。
また、溶融押出転写法の場合は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を溶融押出機にて溶融しフィルム状に押し出し、その後、賦形ロールに押し当て、金属部材に圧着させながら冷却固化させればよい。また、レーザー溶着法は、前記成形品がレーザー光線を透過できる場合に適用でき、前記成形品を金属部材と接合した後、下記の温度条件となるように、成形品側から金属部材面にレーザー光線を照射して発熱させ、成形品を溶かし、冷え固まるまで加圧状態で保持することにより接合すればよい。
一方、金属部材が金属箔のようなフィルム状物であってもよい。金属部材がフィルム状物である場合、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品を加熱しながら、金属部材を、エンボス加工と箔押しを同時に行い接合する、いわゆるホットエンボス法を用いることもできる。ホットエンボス法を用いれば、3次元形状の、微細なパターンが施された成形品を製造することができ、金属部材による微細なパターンが電気回路である場合には、成形回路部品とすることができる。
なお、本発明においてフィルム状物の用語は、所謂、箔、フィルム、シート、板を総称してこの様に呼ぶものとし、厚さ0.001〜9mmの範囲のものをいうものとする。
上述した接合方法2は、基本的に、該成形品を溶融して金属部材に圧着させる必要があることから、加熱条件は、樹脂温度をポリアリーレンスルフィド樹脂の再結晶化温度(Tc2)以上の温度範囲で適宜調整すればよいが、フィルム状物等、優れた平滑性や外観性を維持しつつ、かつ充分な密着力を発揮する観点からは再結晶化温度(Tc2)以上、かつ、融点未満の温度範囲内で適宜調整することが好ましく、一方、樹脂分解によるガス発生の抑制や樹脂劣化を防ぎつつ、かつ、より優れた密着力を発揮する観点からは、融点以上の温度範囲で適宜調整することが好ましく、さらに融点以上かつ融点プラス100℃の温度範囲内で適宜調整することがより好ましく、さらに融点プラス20℃かつ融点プラス50℃の温度範囲内で適宜調整することが特に好ましい。また、金属部材と、成形品とを圧着する(互いに押し付ける)圧力条件は、接合状態を保持することができれば特に限定されず、例えば、加熱開始から冷却終了までのいずれかの間で、金属部材と、樹脂部材とが互いに押し合う方向に、0.01〔MPa〕以上の範囲、好ましくは0.01〜100〔MPa〕、より好ましくは0.05〜10〔MPa〕の範囲で、十分な密着力を発揮しつつ、かつ少ないバリ量となる範囲で適宜調整すればよい。なお、レーザー溶着法の場合には、溶着前に金属部材と、成形品とを外力で互いに押し付ける必要性は必ずしもなく、溶融時の体積膨張によって接合界面に発生する圧力上昇を利用して接合することができる。
(金属部材)
前記金属部材を構成する金属の種類としては、アルミニウム、銅、マグネシウム、鉄、チタンまたはそれらを含有する合金が挙げられる。より具体的には、鉄や、例えば、ステンレス、鋼材など、鉄を主成分、すなわち20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%の割合として、他に炭素、ケイ素、マンガン、クロム、タングステン、モリブデン、ホスホル、チタン、バナジウム、ニッケル、ジルコニウム、ボロン等を含む合金(以下、鉄合金)や、アルミニウムや、アルミニウムを主成分として、他に銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、ニッケルを含む合金(以下、アルミニウム合金)や、マグネシウムや、マグネシウムを主成分として、他に亜鉛、アルミニウム、ジルコニウムなどを含む合金(以下、マグネシウム合金)や、銅や、銅を主成分として、他に亜鉛、スズ、リン、ニッケル、マグネシウム、ケイ素、クロムを含む合金(以下、銅合金)や、チタンや、チタンを主成分として、他に銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、ニッケルを含む合金(以下、チタン合金)が挙げられる。これらのうち、より好ましくは鉄、鉄合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金が挙げられ、さらに好ましくは鉄合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金が挙げられる。
本発明の金属/樹脂複合構造体を構成する金属部材の表面(以下、単に金属部材表面という)は、微細な凹凸面(以下、単に微細凹凸面という)を有することが好ましい。本発明において、金属部材と成形品との接合は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に必須成分として配合されるポリビニルピロリドン樹脂によると考えられる分子間力ないし化学的な相互作用により、優れた密着力を呈することができるが、さらに、表面粗化処理を施し、金属部材表面に微細凹凸面を設けることで、機械的結合による作用でさらに密着力を強めることができる。
本発明の金属/樹脂複合構造体の金属部材表面に表面粗化処理を施し、微細凹凸面を設けることで、前記微細凹凸面の凹部に、溶融したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が流動性よく進入して固化することによって、金属部材及び該成形品を構成する樹脂部材との界面(以下、単に金属−樹脂界面という)が形成され、金属部材と該樹脂組成物の成形品とが強く接合されうる。
本発明に用いる金属部材は、表面粗化により金属部材料面に微細凹凸面が形成されていることが好ましいが、その凹凸部の間隔は、凸部から隣接する凸部まで(以下、凸部間という)の長さが5nm以上の範囲であることが好ましく、さらに10nm以上の範囲であることがより好ましい。上限値については、流動性が低くても流れ込むことができるため、特に限定されないが、凹凸密度が高いと密着力も向上する傾向にあることから700μm以下の範囲であることが好ましく、さらに500μm以下の範囲であることがより好ましい。凸部間の長さが上記範囲内にあると、本発明に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が微細凹凸面の凹部に密着性よく入り込むことが可能となり、金属−樹脂界面で優れた密着力を発揮することができる。さらに凹凸部の間隔が周期性を有すると、金属−樹脂界面でより優れた密着力を発揮することができるため好ましい。
また、凹凸部の高低差について、50nm以上の範囲であることが好ましく、さらに100nm以上の範囲であることがより好ましい。上限値については高低差があるほど密着強さは向上する傾向であるため、特に限定されないが、凹凸部にボイドを生じないように樹脂を充填させることなどを考慮すると、500μm以下の範囲であることが好ましい。
なお、該凸部間の長さは、金属部材表面の微細凹凸面に対して垂直方向に切断した断面を、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡により撮影した写真をもとに、凸部の頂上部から隣接する凸部の頂上部までの2点間を少なくとも50点を選び出した上で、金属部材表面の微細凹凸面と平行方向の成分の長さを測定し、その数平均値として求めることができる。また凹凸部の高低差は、前記断面を、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡により撮影した写真をもとに、凸部の頂上部から隣接する凹部の底面部までの2点間を少なくとも50点選び出した上で金属部材表面の微細凹凸面と垂直方向の成分の長さを測定し、その数平均値として求めることができる。
また、前記微細凹凸面において凹凸形状は、特に限定されず、後述する表面粗化により前記凸部間の距離よりも小さな孔径を有する凹部として形成されていてもよく、さらに表面粗化を進行させて、丸みをおびた凸部、すなわち、球状、なめらかな端部を有する円柱あるいはイボ状、かりん糖状などの三次元局面を有する突起物として、林立状態で観測される形状でもよい。
表面粗化の方法は特に公知の方法を限定なく用いることができるが、例えば、3種類の方法があげられる。
(1)侵食性水溶液または侵食性懸濁液による浸漬法。金属表面に微細凹凸面が形成された形状とすることが好ましく、さらに、金属表面を多数の凹部が形成された形状とし、かつ、その凹部を数平均内径3μm以下の範囲とすることがより好ましく、同様にその凹部を数平均内径10nm〜3μmの範囲とすることがさらに好ましい。
(2)陽極酸化法。表面に主として金属酸化物層を形成させることにより、その表面層に多数の数平均内径1μm以下の範囲を有する開口部を形成することが好ましく、同様に数平均内径1nm〜1μmの範囲を有する開口部を形成することがより好ましく、さらには同様に数平均内径10〜200nmの範囲を有する開口部を形成することがより好ましい。
(3)機械的切削、例えばダイヤモンド砥粒研削またはブラスト加工によって作成した凹凸有する金型パンチをプレスすることにより金属表面に凹凸を形成する方法や、サンドブラスト、レーザー加工により金属表面に凹凸形状を作成する方法。主として、表面を多数の凹部に加工することが好ましく、凹部の数平均内径またはレーザー加工等の連続形状の凹部を形成させる場合はその幅が1〜1000μmの範囲とすることが好ましく、さらに10〜800μmの範囲とすることがより好ましい。
前記金属部材は、上述した微細凹凸面を形成する前に、上記金属部材を切断、プレス等による塑性加工、打ち抜き加工、切削、研削、放電加工等の除肉加工によって所定の形状に加工することが好ましい。
なお、金属の表面処理がなされた金属部材の表面にはプライマー層を形成させてもよい。プライマー層を構成する材料は特に限定されないが、通常は樹脂成分を含むプライマー樹脂材料からなる。プライマー樹脂材料は特に限定されず、公知のものを用いることができる。具体的には、公知のポリオレフィン系プライマー、エポキシ系プライマー、ウレタン系プライマーなどを挙げることができる。プライマー層の形成方法は特に限定されないが、例えば、上記のプライマー樹脂材料の溶液や、上記のプライマー樹脂材料のエマルションを、上記表面処理を行った金属部材に塗工して形成することができる。溶液とする際に用いる溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルフォスフォルアミド(DMF)などが挙げられる。エマルション用の媒体としては、脂肪族炭化水素媒体や、水などが挙げられる。
また、フィルムインサート成形法の場合には、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品が、金属部材層をフィルム状に積層した樹脂製フィルム状物と、金属部材層を介して、接合してなる構造体が得られる。該樹脂製フィルム状物への金属部材層の形成は、金属箔等のフィルム状物を転写や印刷等により行ってもよいし、メッキ処理により行ってもよい。その際、当該樹脂製フィルム状物としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66(PA6,PA66)などのポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアイドイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂や、ラジカル重合性不飽和基を含有する(メタ)アクリル樹脂を主成分とする活性エネルギー線重合性樹脂組成物の硬化物等の耐熱性を有する樹脂製フィルムが好適に用いられる。中でもPET樹脂製フィルムがコスト、美麗性、透明性に優れるので最も好適に用いられる。なお、金属部材層をフィルム状に積層した樹脂製フィルム状物の製造は、特に制限はなく、市販の装置を使用することもできるし、常法に従って行うこともできる。
(ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品)
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、ポリビニルピロリドン(B)とを必須成分として配合してなり、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリビニルピロリドン(B)が0.01〜100質量部の範囲であることを特徴とする。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を必須成分として含有する。本発明で用いるポリアリーレンスルフィド樹脂は、芳香族環と硫黄原子とが結合した構造を繰り返し単位とする樹脂構造を有するものであり、具体的には、下記一般式(2)
Figure 0006950281
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4の範囲のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基を表す。)で表される構造部位と、必要に応じてさらに下記一般式(2)
Figure 0006950281
で表される3官能性の構造部位と、を繰り返し単位とする樹脂である。式(3)で表される3官能性の構造部位は、他の構造部位との合計モル数に対して0.001〜3モル%の範囲が好ましく、特に0.01〜1モル%の範囲であることが好ましい。
ここで、前記一般式(2)で表される構造部位は、特に該式中のR及びRは、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂の機械的強度の点から水素原子であることが好ましく、その場合、下記式(4)で表されるパラ位で結合するもの、及び下記式(5)で表されるメタ位で結合するものが挙げられる。
Figure 0006950281
これらの中でも、特に繰り返し単位中の芳香族環に対する硫黄原子の結合は前記一般式(4)で表されるパラ位で結合した構造であることが前記ポリアリーレンスルフィド樹脂の耐熱性や結晶性の面で好ましい。
また、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂は、前記一般式(2)や(3)で表される構造部位のみならず、下記の構造式(6)〜(9)
Figure 0006950281
で表される構造部位を、前記一般式(2)と一般式(3)で表される構造部位との合計の30モル%以下で含んでいてもよい。特に本発明では上記一般式(6)〜(9)で表される構造部位は10モル%以下であることが、ポリアリーレンスルフィド樹脂の耐熱性、機械的強度の点から好ましい。前記ポリアリーレンスルフィド樹脂中に、上記一般式(6)〜(9)で表される構造部位を含む場合、それらの結合様式としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体の何れであってもよい。
また、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂は、その分子構造中に、ナフチルスルフィド結合などを有していてもよいが、他の構造部位との合計モル数に対して、3モル%以下が好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂の物性は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されないが、以下の通りである。
(融点(Tm)と再結晶化温度(Tc2))
前記樹脂(A)の融点(Tm)は、耐熱性や機械的強度に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、270℃以上の範囲であることが好ましく、さらに270〜300℃の範囲であることがより好ましい。また、前記樹脂(A)の再結晶化温度(Tc2)は、耐熱性や機械的強度に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、200〜260℃の範囲であることが好ましい。
(溶融粘度)
本発明に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂は、300℃で測定した溶融粘度(V6)が2〜1000〔Pa・s〕の範囲であることが好ましく、さらに流動性および機械的強度のバランスが良好となることから10〜500〔Pa・s〕の範囲がより好ましく、特に60〜200〔Pa・s〕の範囲であることが特に好ましい。但し、本発明において、溶融粘度(V6)は、ポリアリーレンスルフィド樹脂を島津製作所製フローテスター、CFT−500Dを用い、300℃、荷重:1.96×10Pa、L/D=10(mm)/1(mm)にて、6分間保持した後に溶融粘度を測定した値とする。
(非ニュートン指数)
本発明に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の非ニュートン指数は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されないが、0.90〜2.00の範囲であることが好ましい。リニア型ポリアリーレンスルフィド樹脂を用いる場合には、非ニュートン指数が0.90〜1.50の範囲であることが好ましく、さらに0.95〜1.20の範囲であることがより好ましい。このようなポリアリーレンスルフィド樹脂は機械的物性、流動性、耐磨耗性に優れる。ただし、非ニュートン指数(N値)は、キャピログラフを用いて300℃、オリフィス長(L)とオリフィス径(D)の比、L/D=40の条件下で、剪断速度及び剪断応力を測定し、下記式を用いて算出した値である。
Figure 0006950281
[ただし、SRは剪断速度(秒−1)、SSは剪断応力(ダイン/cm)、そしてKは定数を示す。]N値は1に近いほどPPSは線状に近い構造であり、N値が高いほど分岐が進んだ構造であることを示す。
(製造方法)
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば1)硫黄と炭酸ソーダの存在下でジハロゲノ芳香族化合物を、必要ならばポリハロゲノ芳香族化合物ないしその他の共重合成分を加えて、重合させる方法、2)極性溶媒中でスルフィド化剤等の存在下にジハロゲノ芳香族化合物を、必要ならばポリハロゲノ芳香族化合物ないしその他の共重合成分を加えて、重合させる方法、3)p−クロルチオフェノールを、必要ならばその他の共重合成分を加えて、自己縮合させる方法、等が挙げられる。これらの方法のなかでも、2)の方法が汎用的であり好ましい。反応の際に、重合度を調節するためにカルボン酸やスルホン酸のアルカリ金属塩や、水酸化アルカリを添加しても良い。上記2)方法のなかでも、加熱した有機極性溶媒とジハロゲノ芳香族化合物とを含む混合物に含水スルフィド化剤を水が反応混合物から除去され得る速度で導入し、有機極性溶媒中でジハロゲノ芳香族化合物とスルフィド化剤とを、必要に応じてポリハロゲノ芳香族化合物と加え、反応させること、及び反応系内の水分量を該有機極性溶媒1モルに対して0.02〜0.5モルの範囲にコントロールすることによりポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する方法(特開平07−228699号公報参照。)や、固形のアルカリ金属硫化物及び非プロトン性極性有機溶媒の存在下でジハロゲノ芳香族化合物と必要ならばポリハロゲノ芳香族化合物ないしその他の共重合成分を加え、アルカリ金属水硫化物及び有機酸アルカリ金属塩を、硫黄源1モルに対して0.01〜0.9モルの範囲の有機酸アルカリ金属塩および反応系内の水分量を非プロトン性極性有機溶媒1モルに対して0.02モル以下の範囲にコントロールしながら反応させる方法(WO2010/058713号パンフレット参照。)で得られるものが特に好ましい。ジハロゲノ芳香族化合物の具体的な例としては、p−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、o−ジハロベンゼン、2,5−ジハロトルエン、1,4−ジハロナフタレン、1−メトキシ−2,5−ジハロベンゼン、4,4’−ジハロビフェニル、3,5−ジハロ安息香酸、2,4−ジハロ安息香酸、2,5−ジハロニトロベンゼン、2,4−ジハロニトロベンゼン、2,4−ジハロアニソール、p,p’−ジハロジフェニルエーテル、4,4’−ジハロベンゾフェノン、4,4’−ジハロジフェニルスルホン、4,4’−ジハロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジハロジフェニルスルフィド、及び、上記各化合物の芳香環に炭素原子数1〜18の範囲のアルキル基を有する化合物が挙げられ、ポリハロゲノ芳香族化合物としては1,2,3−トリハロベンゼン、1,2,4−トリハロベンゼン、1,3,5−トリハロベンゼン、1,2,3,5−テトラハロベンゼン、1,2,4,5−テトラハロベンゼン、1,4,6−トリハロナフタレンなどが挙げられる。また、上記各化合物中に含まれるハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子であることが望ましい。
重合工程により得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を含む反応混合物の後処理方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、(1)重合反応終了後、先ず反応混合物をそのまま、あるいは酸または塩基を加えた後、減圧下または常圧下で溶媒を留去し、次いで溶媒留去後の固形物を水、反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、更に中和、水洗、濾過および乾燥する方法、或いは、(2)重合反応終了後、反応混合物に水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素などの溶媒(使用した重合溶媒に可溶であり、かつ少なくともポリアリーレンスルフィドに対しては貧溶媒である溶媒)を沈降剤として添加して、ポリアリーレンスルフィドや無機塩等の固体状生成物を沈降させ、これらを濾別、洗浄、乾燥する方法、或いは、(3)重合反応終了後、反応混合物に反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)を加えて撹拌した後、濾過して低分子量重合体を除いた後、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、その後中和、水洗、濾過および乾燥をする方法、(4)重合反応終了後、反応混合物に水を加えて水洗浄、濾過、必要に応じて水洗浄の時に酸を加えて酸処理し、乾燥をする方法、(5)重合反応終了後、反応混合物を濾過し、必要に応じ、反応溶媒で1回または2回以上洗浄し、更に水洗浄、濾過および乾燥する方法、等が挙げられる。
尚、上記(1)〜(5)に例示したような後処理方法において、ポリアリーレンスルフィド樹脂の乾燥は真空中で行なってもよいし、空気中あるいは窒素のような不活性ガス雰囲気中で行なってもよい。
(ポリビニルピロリドン)
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリビニルピロリドン(B)を必須成分として配合してなる。該ポリビニルピロリドンの平均分子量は特に限定されないが、好ましくは質量平均分子量が3,000〜2,000,000の範囲であり、より好ましくは500,000〜1,500,000の範囲であり、さらに好ましくは1,000,000〜1,200,000の範囲である。重合度nは質量平均分子量が上記範囲となる値であれば特に限定されないが、好ましくはnが30〜18,000の範囲であることが好ましく、4,500〜13,500の範囲であることが好ましく、さらに9,000〜108,000の範囲であることが特に好ましい。なお、質量平均分子量はポリビニルピロリドンのテトラヒドロフラン溶液(0.1wt%)を調製し、TSKGelGHxlシリーズ5000、3000、2000、1000カラムおよび示差屈折計(RI)検出器を備えたGPC装置(東ソー株式会社製HLC−8220GPC)を用い、試料溶液注入量50μl、テトラヒドロフランを移動相(1ml/分)とし、40℃で測定した。質量平均分子量は、標準スチレンからなる検量線から算出した。ただし、質量平均分子量の測定値に実質的な影響を及ぼさない範囲で、測定条件を適宜変更することは可能である。
ポリビニルピロリドンは直鎖型のものでも架橋型のものでも差し支えない。ポリビニルピロリドン(B)としては、例えば下記一般式(1)
Figure 0006950281
で表される構造を有するものが好ましく挙げられる。ただし、式(1)中、nは繰り返し単位を表し、好ましくは30〜18,000の範囲である。また、Rは水素原子、炭素原子数1〜6の範囲のアルキル基またはアルコキシ基で、好ましくはメチル基、i−またはn−プロピル基、ブチル基であり、このうち、水素原子が好ましい。
上記ポリビニルピロリドンの製造方法は、公知の方法を用いることができ、本発明の効果を損ねない限り特に限定されるものではないが、例えば、2−ピロリドンとアセチレンと原料として反応させる方法(レッペ法)や、N−ヒドロキシエチルピロリドンの脱水反応による方法の他、好ましくは、N−ヒドロキシエチルピロリドンを気相脱水反応させて得られた、γ−ブチロラクトン含有量が、例えば500ppm以下に低減させたN−ビニルピロリドンを、公知の重合開始剤や塩基性pH調整剤を適宜加えて、ラジカル重合する方法などが挙げられる。
ここで、前記N−ビニルピロリドンは、下記一般式(10)
Figure 0006950281
で示されるピロリジニル基を含有する重合性不飽和モノマーである。ここでRは前記式(1)と同様である。
本発明で用いるポリビニルピロリドンは、前記N−ビニルピロリドンを原料とした単独重合物であることが好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、前記一般式(10)で表されるN−ビニルピロリドン、その他のモノマーを原料とする共重合物であってもよく、その場合、その他のモノマーの使用量は10質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
その他のモノマーとしては、例えば、下記一般式(11)
Figure 0006950281
で示されるピロリジニル基を含有する重合性不飽和モノマーが挙げられる。ここでXは、ラジカル重合可能な二重結合を有する置換基であり、次の一般式(12)〜(17)
Figure 0006950281
(式(12)〜(17)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜6の範囲のアルキル基またはアルコキシ基で、好ましくはメチル基、i−またはn−プロピル基、ブチル基である。)で表される置換基が挙げられる。
本発明で用いるポリビニルピロリドンは、例えば、株式会社日本触媒製「K−90」、同「K−85」、同「K−30」などとして市販のものを用いることができる。
本発明においてポリビニルピロリドン(B)の配合の割合は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜100質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜〜50質量部の範囲であることがより好ましく、1〜30質量部の範囲であることがさらに好ましく、2〜25質量部の範囲であることが最も好ましい。かかる範囲において、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が低い再結晶化温度を呈しつつ、かつ得られた成形品が良好な耐熱性を呈するため好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、必要に応じて周期表第2族または第12族に属する金属を含むリン酸塩(C)を任意成分として配合してもよい。リン酸塩としては、リン酸(オルトリン酸)、亜リン酸、次亜リン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、メタリン酸、酸性メタリン酸、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸、酸性ピロリン酸等の金属塩が挙げられ、当該金属塩の金属元素として、周期表第2族または第12族に属する金属を含むものである。さらに、周期表第2族または第12族に属する金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛が好ましいものとして挙げられる。具体的には、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸亜鉛、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸バリウム、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸バリウム、次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸亜鉛、トリポリリン酸マグネシウム、トリポリリン酸カルシウム、トリポリリン酸バリウム、トリポリリン酸亜鉛、ポリリン酸マグネシウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸バリウム、ポリリン酸亜鉛、メタリン酸マグネシウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸バリウム、メタリン酸亜鉛、酸性メタリン酸マグネシウム、酸性メタリン酸カルシウム、酸性メタリン酸バリウム、酸性メタリン酸亜鉛、ヘキサメタリン酸マグネシウム、ヘキサメタリン酸カルシウム、ヘキサメタリン酸バリウム、ヘキサメタリン酸亜鉛、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸バリウム、ピロリン酸亜鉛、酸性ピロリン酸マグネシウム、酸性ピロリン酸カルシム、酸性ピロリン酸バリウム、酸性ピロリン酸亜鉛などが挙げられ、このうち、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸亜鉛、トリポリリン酸カルシウム、トリポリリン酸亜鉛が好ましいものとして挙げられる。
本発明において前記リン酸塩(C)は任意成分であるが、配合する際の割合は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されず、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜50質量部の範囲であることが好ましく、0.05〜30質量部の範囲であることがより好ましく、0.01〜20質量部の範囲であることがさらに好ましく、0.05〜15質量部の範囲であることが最も好ましい。かかる範囲において、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が低い再結晶化温度を呈し、金属部材との優れた密着力を発揮しつつ、かつ得られた成形品が良好な耐熱性を呈するため好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、必要に応じてシランカップリング剤(D)を任意成分として配合してもよい。シランカップリング剤としては、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、例えば、エポキシ基、イソシアナト基、アミノ基または水酸基を有するシランカップリング剤が好ましいものとして挙げられる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシラン等のイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン等の水酸基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。本発明において該シランカップリング剤(D)は任意成分であるが、配合する際の割合は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されず、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜30質量部の範囲であることが好ましく、さらに0.05〜10質量部の範囲であることがより好ましく、さらに0.1〜5質量部の範囲であることが最も好ましい。かかる範囲において、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が低い再結晶化温度を呈し、金属部材との優れた密着力を発揮しつつ、かつ得られた成形品が良好な耐熱性を呈するため好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物ないしその成形品は、前記リン酸塩およびシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1つを配合することにより、その融点(Tm)として、前記樹脂(A)の融点(Tm)を維持しつつ、一方で、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物ないしその成形品の再結晶化温度(Tc2)として、前記樹脂(A)の再結晶化温度(Tc2)から、さらに低下させることができる。具体的な再結晶化温度(Tc2)の低下の範囲については、成形品の用途や目的に応じて機械的特性等の他の性質との関係も踏まえて、必須成分や任意成分の配合を決める必要があることから、一概に規定することはできないが、好ましいものでは、前記リン酸塩ないしシランカップリング剤を配合させた場合における、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物ないしその成形品の再結晶化温度(Tc2)として、前記樹脂(A)の再結晶化温度(Tc2)から20〜100℃の範囲で低下させることができ、より好ましいものでは30〜80℃の範囲で低下させることができる。すなわち、前記リン酸塩ないしシランカップリング剤を配合させた場合における、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物および成形品は、その融点(Tm)と再結晶化温度(Tc2)との差ΔTを、好ましくは90℃以上、より好ましくは90〜130℃の範囲、さらに好ましくは100〜120℃の範囲とすることもできる。したがって、前記リン酸塩ないしシランカップリング剤を配合させた場合における、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物および成形品の融点(Tm)を、好ましくは270〜300℃の範囲としつつ、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物および成形品の再結晶化温度(Tc2)を好ましくは200℃以下の範囲、より好ましくは120〜200℃の範囲、さらに好ましくは160〜200℃の範囲のものとすることができる。なお、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物ないしその成形品の融点(Tm)が、前記樹脂(A)の融点(Tm)を維持している、とは、実質的に融点が同じであること、好ましくは、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物ないしその成形品のTm(℃)と、必須成分として配合したポリアリーレンスルフィド樹脂(A)のTm(℃)の温度差が10℃以内、さらに好ましくは、5℃以内であることを意味する。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、必要に応じて、さらに充填剤を任意成分として配合しても良い。これら充填剤としては本発明の効果を損なうものでなければ公知慣用の材料を用いることもでき、例えば、繊維状のものや、粒状や板状などの非繊維状のものなど、さまざまな形状の充填剤等が挙げられる。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、シランガラス繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、金属繊維、チタン酸カリウム、炭化珪素、珪酸カルシウム、ワラストナイト等の繊維、天然繊維等の繊維状充填剤が使用でき、またガラスビーズ、ガラスフレーク、硫酸バリウム、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、セリサイト、マイカ、雲母、タルク、アタパルジャイト、フェライト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ、ゼオライト、ミルドファイバー、硫酸カルシウム等の非繊維状充填剤も使用できる。
本発明において充填剤は必須成分ではないが、配合する場合、その配合の割合は本発明の効果を損ねなければ特に限定されるものではなく、また、それぞれの目的に応じて異なり、一概に規定することはできないが、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、1〜600質量部の範囲であることが好ましく、さらに10〜200質量部の範囲であることがより好ましい。かかる範囲において、樹脂組成物が良好な機械強度と成形性を示すため好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、必要に応じて、熱可塑性エラストマーを任意成分として配合してもよい。熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系エラストマー、弗素系エラストマーまたはシリコーン系エラストマーが挙げられ、このうちポリオレフィン系エラストマーが好ましいものとして挙げられる。これらのエラストマーを配合する場合、その配合の割合は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されなく、また、それぞれの目的に応じて異なり、一概に規定することはできないが、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲であることが好ましく、さらに0.1〜5質量部の範囲であることがより好ましい。かかる範囲において、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の耐衝撃性が向上するため好ましい。
前記ポリオレフィン系エラストマーは、例えば、α−オレフィンの単独重合または異なるα−オレフィン同士の共重合により、さらに、官能基を付与する場合には、α−オレフィンと官能基を有するビニル重合性化合物との共重合により得ることができる。α−オレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン及びブテン−1等の炭素原子数2〜8の範囲のものが挙げられる。また、官能基としては、カルボキシ基、式−(CO)O(CO)−で表される酸無水物基、それらのエステル、エポキシ基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、またはオキサゾリン基などが挙げられる。
このような官能基を有するビニル重合性化合物の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル等のα,β−不飽和カルボン酸及びそのアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びその他の炭素原子数4〜10のα,β−不飽和ジカルボン酸及びその誘導体(モノ若しくはジエステル、及びその酸無水物等)、並びにグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、上述したエポキシ基、カルボキシ基、及び、該酸無水物基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するエチレン−プロピレン共重合体及びエチレン−ブテン共重合体が、機械的強度、特に靭性及び耐衝撃性の向上の点から好ましい。
更に、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、上記成分に加えて、さらに用途に応じて、適宜、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂及び前記ポリビニルピロリドンを除く他の合成樹脂、例えばポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアリーレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ四弗化エチレン樹脂、ポリ二弗化エチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等(以下、単に合成樹脂という)を任意成分として配合することができる。本発明において前記合成樹脂は必須成分ではないが、配合する場合、その配合の割合は本発明の効果を損ねなければ特に限定されるものではなく、また、それぞれの目的に応じて異なり、一概に規定することはできないが、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中に配合する樹脂成分(前記ポリアリーレンスルフィド樹脂、前記ポリビニルピロリドン及び合成樹脂の合計)の割合としてポリアリーレンスルフィド樹脂及び前記ポリビニルピロリドンの合計が75.0質量%以上の範囲、好ましくは80〜99.99質量%の範囲となるよう、換言すると、上記の合成樹脂が25.0質量%以下の範囲、好ましくは0.01〜20.0質量%の範囲で、本発明の効果を損なわないよう目的や用途に応じて適宜調整して用いればよい。
また本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、その他にも着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、発泡剤、難燃剤、難燃助剤、防錆剤、およびカップリング剤等の公知慣用の添加剤を必要に応じ、任意成分として配合してもよい。これらの添加剤は必須成分ではないが、配合する場合、その配合の割合は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されなく、また、それぞれの目的に応じて異なり、一概に規定することはできないが、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜1,000質量部の範囲で、本発明の効果を損なわないよう目的や用途に応じて適宜調整して用いればよい。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、前記ポリビニルピロリドン(B)とを必須成分として配合して、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の融点以上で溶融混練する。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の好ましい製造方法は、上述した配合割合となるよう、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、前記ポリビニルピロリドン(B)の各必須成分と、必要に応じて、上記任意成分を、粉末、ペレット、細片など様々な形態でリボンブレンター、ヘンシェルミキサー、Vブレンダーなどに投入してドライブレンドした後、バンバリーミキサー、ミキシングロール、単軸または2軸の押出機およびニーダーなどの公知の溶融混練機に投入し、樹脂温度がポリアリーレンスルフィド樹脂の融点以上となる温度範囲、好ましくは融点+10℃以上となる温度範囲、より好ましくは融点+10℃〜融点+100℃となる温度範囲、さらに好ましくは融点+20〜融点+50℃となる温度範囲で溶融混練する工程を経て製造することができる。溶融混練機への各成分の添加、混合は同時に行ってもよいし、分割して行っても良い。
前記溶融混練機としては分散性や生産性の観点から二軸混練押出機が好ましく、例えば、樹脂成分の吐出量5〜500(kg/hr)の範囲と、スクリュー回転数50〜500(rpm)の範囲とを適宜調整しながら溶融混練することが好ましく、それらの比率(吐出量/スクリュー回転数)が0.02〜5(kg/hr/rpm)の範囲となる条件下に溶融混練することがさらに好ましい。また、前記成分のうち、充填剤や添加剤を添加する場合は、前記二軸混練押出機のサイドフィーダーから該押出機内に投入することが分散性の観点から好ましい。かかるサイドフィーダーの位置は、前記二軸混練押出機のスクリュー全長に対する、該押出機樹脂投入部から該サイドフィーダーまでの距離の比率が、0.1〜0.9の範囲であることが好ましい。中でも0.3〜0.7の範囲であることが特に好ましい。
このように溶融混練して得られる本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、必須成分であるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、前記ポリビニルピロリドン(B)と、必要に応じて加える任意成分およびそれらの由来成分を含む溶融混合物であり、該溶融混練後に、公知の方法でペレット、チップ、顆粒、粉末等の形態に加工してから、必要に応じて100〜150℃の温度で予備乾燥を施して、各種成形に供することが好ましい。
上記製造方法により製造される本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂をマトリックスとし、当該マトリックス中に、必須成分である前記ポリビニルピロリドン(B)と、それらに由来する成分、必要に応じて添加する任意成分が分散したモルフォロジーを形成する。ポリビニルピロリドン中に含まれるピロリドン骨格は、ポリアリーレンスルフィド樹脂骨格との相溶性に優れつつ、かつ、炭素原子と酸素原子の結合部位に形成される電子軌道(2Pz軌道)の存在により、金属部材表面とファンデルワールス力による物理的相互作用や、金属部材表面に形成された官能基との間での分子間力による化学的結合を形成し、金属部材と優れた密着性を発揮するものと考えられる。
また、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、任意成分として前記リン酸塩ないし前記シランカップリング剤を配合する場合には、ポリアリーレンスルフィド樹脂をマトリックスとし、当該マトリックス中に、前記ポリビニルピロリドン(B)と前記リン酸塩(C)ないし前記シランカップリング剤(D)、それらに由来する成分、必要に応じて添加する成分が分散したモルフォロジーを形成する。その結果、当該ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が本来有する優れた耐熱性、耐薬品性等を保持しつつ、かつ、上記の物理的相互作用や化学的結合に加え、さらに、低い再結晶化温度を有する樹脂組成物の性質により金属部材表面の微細凹凸へ侵入しやすくなり、濡れ性がより向上する結果、アンカー効果による機械的結合も発揮し、金属部材との密着性はさらに向上することとなるため好ましい。なお、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、ポリアリーレンスルフィド樹脂が本来有する融点を維持しつつ、かつ、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物ないしその成形品の再結晶化温度(Tc2)を前記樹脂(A)の再結晶化温度(Tc2)から、さらに低下させることができるのは、ピロリドン骨格に起因してポリアリーレンスルフィド樹脂との相溶性に優れる性質を有するポリビニルピロリドンの作用により、溶融混練時にポリアリーレンスルフィド樹脂の結晶化を遅延させた結果、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が低い結晶化温度(Tc2)を呈するため、と考えられる。さらに、任意成分ではあるが前記リン酸塩ないし前記カップリング剤を配合した場合には、ポリアリーレンスルフィド樹脂の分子鎖同士が、分子末端の硫黄原子の前記リン酸塩由来の金属元素とのメルカプチド結合を形成するか、カップリング剤との結合により、分子鎖が延長し、その分子鎖の延長効果により、さらに上記の結晶化を遅延させることができる結果、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物がより低い結晶化温度(Tc2)を呈することができる、と考えられる。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形、コンポジット、シート、パイプなどの押出成形、引抜成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能であるが、特に離形性にも優れるため射出成形用途に適している。射出成形にて成形する場合、各種成形条件は特に限定されず、通常一般的な方法にて成形することができる。例えば、射出成形機内で、樹脂温度がポリアリーレンスルフィド樹脂の融点以上の温度範囲、好ましくは該融点+10℃以上の温度範囲、より好ましくは融点+10℃〜融点+100℃の温度範囲、さらに好ましくは融点+20〜融点+50℃の温度範囲で前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を溶融する工程を経た後、樹脂吐出口よりを金型内に注入して成形すればよい。その際、金型温度も公知の温度範囲、例えば、室温(23℃)〜300℃の範囲、好ましくは40〜180℃の範囲に設定することができる。本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は通常の成形温度として好ましい120〜180℃の温度範囲に設定することもできる上に、上記の通り再結晶化温度(Tc2)が低く、低温成形性に優れる特徴も有することから、40℃以上かつ120℃未満の範囲といった比較的低温条件の金型温度であっても外観性や充填性等の成形性や機械物性、耐薬品性に優れる成形物を得ることができる。
(金属/樹脂複合構造体の用途)
本発明の金属/樹脂複合構造体の主な用途例としては、各種家電製品、携帯電話、及びPC(Personal Computer)等の電子機器の筐体、箱型の電気・電子部品集積モジュール用保護・支持部材・複数の個別半導体またはモジュール、センサ、LEDランプ、コネクタ、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサ、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナ、スピーカ、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モータ、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、端子台、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダ、パラボラアンテナ、コンピュータ関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤ、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザディスク・コンパクトディスク・DVDディスク・ブルーレイディスク等の音声・映像機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライタ部品、ワードプロセッサ部品、あるいは給湯機や風呂の湯量、温度センサなどの水回り機器部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピュータ関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライタ、タイプライタなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクタ、ブラシホルダー、スリップリング、ICレギュレータ、ライトディヤ用ポテンシオメーターベース、リレーブロック、インヒビタースイッチ、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディ、キャブレタースペーサ、排気ガスセンサ、冷却水センサ、油温センサ、ブレーキパットウェアーセンサ、スロットルポジションセンサ、クランクシャフトポジションセンサ、エアーフローメータ、ブレーキパッド摩耗センサ、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダ、ウォーターポンプインペラ、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュータ、スタータースイッチ、イグニッションコイルおよびそのボビン、モーターインシュレータ、モーターロータ、モーターコア、スターターリレ、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクタ、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターロータ、ランプソケット、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルタ、点火装置ケース等の自動車・車両関連部品、その他各種用途にも適用可能である。
(ポリフェニレンスルフィド樹脂の溶融粘度の測定)
参考例で製造したポリフェニレンスルフィド樹脂を島津製作所製フローテスター、CFT−500Dを用い、300℃、荷重:1.96×10Pa、L/D=10(mm)/1(mm)にて、6分間保持した後に測定した。
(PPS樹脂およびPPS樹脂組成物の融点(Tm)、再結晶化温度(Tc2)の測定)
参考例、比較参考例で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂及び実施例、比較例で得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に係る融点(Tm)、再結晶化温度(Tc2)、は、樹脂又は樹脂組成物を350℃にて溶融させた後、急冷させて非晶性フィルムを作製し、このフィルムからおよそ4mgはかりとり、示差走査熱量計(Perkin Elmer社製『DSC8500』)を用いて測定した。
(参考例1)ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS−1)の製造
圧力計、温度計、コンデンサ、デカンター、精留塔を連結した撹拌翼付き150リットルオートクレーブにp−ジクロロベンゼン(以下、「p−DCB」と略記する。)33.222kg(226モル)、NMP2.280kg(23モル)、47.23質量%NaSH水溶液27.300kg(NaSHとして230モル)、及び49.21質量%NaOH水溶液18.533g(NaOHとして228モル)を仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で173℃まで5時間掛けて昇温して、水27.300kgを留出させた後、オートクレーブを密閉した。脱水時に共沸により留出したp−DCBはデカンターで分離して、随時オートクレーブ内に戻した。脱水終了後のオートクレーブ内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がp−DCB中に分散した状態であった。この組成物中のNMP含有量は0.069kg(0.7モル)であったことから、仕込んだNMPの97モル%(22.3モル)がNMPの開環体(4−(メチルアミノ)酪酸)のナトリウム塩(以下、「SMAB」と略記する。)に加水分解されていることが示された。オートクレーブ内のSMAB量は、オートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.097モルであった。仕込んだNaSHとNaOHが全量、無水NaSに変わる場合の理論脱水量は27.921gであることから、オートクレーブ内の残水量621g(34.5モル)の内、401g(22.3モル)はNMPとNaOHとの加水分解反応に消費されて、水としてオートクレーブ内に存在せず、残りの220g(12.2モル)は水、あるいは結晶水の形でオートクレーブ内に残留していることを示していた。オートクレーブ内の水分量はオートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.053モルであった。
上記脱水工程終了後に、内温を160℃に冷却し、NMP47.492kg(479モル)に含む溶液を仕込み、185℃まで昇温した。オートクレーブ内の水分量は、工程2で仕込んだNMP1モル当たり0.025モルであった。ゲージ圧が0.00MPaに到達した時点で、精留塔を連結したバルブを開放し、内温200℃まで1時間掛けて昇温した。この際、精留塔出口温度が110℃以下になる様に冷却とバルブ開度で制御した。留出したp−DCBと水の混合蒸気はコンデンサで凝縮し、デカンターで分離して、p−DCBはオートクレーブへ戻した。留出水量は179g(9.9モル)で、オートクレーブ内水分量は41g(2.3モル)で、脱水後に仕込んだNMP1モル当たり0.005モルで、オートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.010モルであった。オートクレーブ内のSMAB量は脱水時と同じく、オートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.097モルであった。
次いで、内温200℃から230℃まで3時間掛けて昇温し、230℃で1時間撹拌した後、250℃まで昇温し、1時間撹拌した。内温200℃時点のゲージ圧は0.03MPaで、最終ゲージ圧は0.30MPaであった。冷却後、得られたスラリーの内、6.5kgを30リットルの80℃温水に注いで1時間撹拌した後、濾過した。このケーキを再び30リットルの温水で1時間撹拌し、洗浄した後、濾過した。次に、得られたケーキに30リットルの水を加え、酢酸でpHを4.5に調整し、常温で1時間撹拌したのち、濾過した。さらに得られたケーキに30リットルの温水を加え、1時間撹拌したのち、ろ過する操作を2回繰返して、熱風循環乾燥機を用い120℃で一晩乾燥して白色粉末上のPPS樹脂(以下、PPS−1)を得た。得られたポリマーの溶融粘度は98Pa・sであった。また、融点(Tm)は282℃、再結晶化温度(Tc2)は203℃であった。
(参考例2)ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS−2)の製造
圧力計、温度計、コンデンサを連結した撹拌翼および底弁付き150リットルオートクレーブに、45%水硫化ソーダ(47.55質量%NaSH)14.148kg、48%苛性ソーダ(48.7質量%NaOH)9.474kgと、N−メチル−2−ピロリドン38.0kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら209℃まで昇温して、水12.150kgを留出させた(残存する水分量はNaSH1モル当り1.13モル)。その後、オートクレーブを密閉して180℃まで冷却し、パラジクロロベンゼン17.129kg及びN−メチル−2−ピロリドン16.0kgを仕込んだ。液温150℃で窒素ガスを用いてゲージ圧で0.1MPaに加圧して昇温を開始した。液温220℃で4時間撹拌したのち、昇温して260℃になった時点でオートクレーブ上部を散水することで冷却しながら、260℃で3時間反応した。オートクレーブ上部を冷却中、液温が下がらないように一定に保持した。次に降温させると共にオートクレーブ上部の冷却を止めた。反応中の最高圧力は、0.87MPaであった。反応後、冷却し、100℃で底弁を開き、反応スラリーを150リットル平板ろ過機に移送し120℃で加圧ろ過した。得られたケーキに70℃温水50kgを加え撹拌したのち、濾過し、さらに温水25kgを加え濾過した。次に温水25kgを加え、酢酸でpHを4.5に調整し、1時間撹拌し、濾過したのち、温水25kgを加え、濾過した。さらに、温水25kgを加え1時間撹拌し、濾過したのち、温水25kgを加えろ過する操作を2回繰り返した。得られたケーキを熱風循環乾燥機を用いて120℃で15時間乾燥し、PPS−2を得た。得られたポリマーの溶融粘度108Pa・sであった。また、融点(Tm)は278℃、再結晶化温度(Tc2)は240℃であった。
(参考例3)ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS−3)の製造
「次いで、内温200℃から230℃まで3時間掛けて昇温し、230℃で1時間撹拌した後、250℃まで昇温し、1時間撹拌した。」ところを、「次いで、内温200℃から230℃まで3時間掛けて昇温し、230℃で3時間撹拌した後、250℃まで昇温し、1時間撹拌した。」としたこと、「次に、得られたケーキに30リットルの水を加え、酢酸でpHを4.5に調整し、常温で1時間撹拌したのち、濾過した。」ところを「次に、得られたケーキに30リットルの水を加え、炭酸水でpHを6.0に調整し、常温で1時間撹拌したのち、濾過した。」としたことの2点以外は参考例1と同様に行い、PPS−3を得た。得られたポリマーの溶融粘度は171Pa・sであった。また、融点(Tm)は280℃、再結晶化温度(Tc2)は211℃であった。
(参考例4)
パラジクロロベンゼンと同時に1,3,5−トリクロロベンゼン65.3g(NaSH1モルに対して0.3mol%)を添加した以外は参考例2と同様に行い、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS−4)を得た。得られたポリマーは溶融粘度2840Pa・sであった。また、融点(Tm)は284℃、再結晶化温度(Tc2)は230℃であった。
(比較参考例1)
パラジクロロベンゼン17.129kgの変わりに、パラジクロロベンゼンを14.559kg、メタジクロロベンゼンを2.569kg加えた以外は参考例2と同様に行い、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS−C1)を得た。得られたポリマーは溶融粘度10Pa・sであった。また、融点(Tm)は242℃、再結晶化温度(Tc2)は146℃であった。
(実施例1〜9及び比較例1〜5)PPS樹脂組成物の製造
表1〜3に記載する組成成分および配合量(全て質量部)にしたがい、各材料をタンブラーで均一に混合した。その後、株式会社日本製鋼所ベント付き2軸押出機「TEX30α」に前記配合材料を投入し、樹脂成分吐出量25kg/hr、スクリュー回転数250rpm、設定樹脂温度を330℃に設定して溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。ペレットの融点(Tm)および再結晶化温度(Tc2)を求め、表1〜3に示した。
次に、得られたペレットを320℃、40rpm、5分、溶融混練して、混練物を320℃、15MPaで6分かけプレスフィルム化し、たて200mm×よこ200mm×厚み0.1mmのフィルムを得た。フィルムの上に金属箔として、銅箔(福田金属箔粉工業株式会社「CF−T9LK−UN−35」、たて100mm×よこ100mm×厚み35μm、接合面のRz=10.5μm、以下、銅箔1という)、銅箔(福田金属箔粉工業株式会社「CF−T9LK−SV−35」、たて100mm×よこ100mm×厚み35μm、接合面のRz=1.0μm、以下、銅箔2という)またはアルミ箔(三菱アルミニウム株式会社製「三菱ホイル」、たて100mm×よこ100mm×厚み12μm、接合面のRz=1.3μm、以下、アルミ箔という)を乗せ、290℃の熱プレス機にセットし、5〔MPa〕で3分かけ熱圧着させた。得られた接合体を用いて以下の各種評価試験を行った。試験及び評価の結果は、表1〜3に示す。ただし、金属箔の表面粗さRzは、JIS−B0601の準拠した方法で、表面粗さ測定器(小坂研究所製「SE−3500K型」)で測定した。
(測定例2)PPS成形品と金属箔との密着力試験
得られた試験片をクロスカット法(JIS K5400:1990)に準拠した方法で試験した。即ち、実施例、比較例で得られた試験片の金属箔表面に、縦横それぞれ1mm間隔で10等分する切り込みを入れて合計100個の領域を形成した後、これら領域を形成した表面に粘着テープ(ニチバン社製「セロテープ」(登録商標))を用いて密着試験を行った。測定は、粘着テープの引き剥がしが一定となるよう、2kgのローラーで1往復加圧貼付し1時間放置後、テンシロン万能引張試験機(オリエンテック製、RTA100)を用い、同一の温度湿度条件下、300mm/minの速度で180°方向に引っ張った。密着力試験後の剥離マス数と残存マス数をカウントし、残存したマスを表1〜3に示した。
Figure 0006950281
Figure 0006950281
Figure 0006950281
なお、表1〜3中の組成の数値は質量部を示す。以下の表も同じ。
※1 ΔTc2は、各実施例で得られた試験片(PPS樹脂成形品)のTc2(℃)から、各実施例で原料の用いたPPS樹脂のTc2(℃)を差し引いた値。
また、表中の各原料は以下の通り。
ビニルピロリドン系添加材
PVP−1 ポリビニルピロリドン樹脂 株式会社日本触媒製「K−90」(質量平均分子量:1050000〜1200000)
PVP−2 ポリビニルピロリドン樹脂 株式会社日本触媒製「K−85」(質量平均分子量:900000〜1050000)
PVP−3 ポリビニルピロリドン樹脂 株式会社日本触媒製「K−30」(質量平均分子量:80000〜120000)
PVP−4 ポリビニルピロリドン樹脂 第一工業製薬株式会社製「ピッツコールK−17L」(質量平均分子量:9000〜120000)
ポリリン酸亜鉛 キクチカラー株式会社製「ZP−SB」
エポキシシラン 3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン ダウ・コーニング株式会社製「SH−6040」

Claims (15)

  1. 金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とが接合してなる金属/樹脂複合構造体であって、
    前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、ポリビニルピロリドン(B)とを必須成分として配合してなり、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリビニルピロリドン(B)が0.1〜50質量部の範囲であることを特徴とする金属/樹脂複合構造体。
  2. 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、融点(Tm)が270℃以上であり、かつ、再結晶化温度(Tc2)が250℃以下である請求項1に記載の金属/樹脂複合構造体。
  3. 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、さらに周期表第2族または第12族に属する金属を含むリン酸塩(C)、および、シランカップリング剤(D)からなる群から選ばれる少なくとも1つを配合してなり、
    前記リン酸塩(C)は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.001〜50質量部の範囲であり、シランカップリング剤(D)は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.01〜30質量部の範囲である請求項1に記載の金属/樹脂複合構造体。
  4. 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、融点(Tm)と再結晶化温度(Tc2)との差ΔTが90℃以上である請求項3に記載の金属/樹脂複合構造体。
  5. 前記ポリビニルピロリドン(B)が下記一般式(1)
    Figure 0006950281
    (式中、nは繰り返し単位を表し、30〜18,000の範囲である。R1は水素原子、炭素原子数1〜6の範囲のアルキル基またはアルコキシ基である。)で表される構造を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体。
  6. 樹脂部材がフィルム状である請求項1〜5のいずれか一項記載の金属/樹脂複合構造体。
  7. 金属部材がフィルム状である請求項1〜6のいずれか一項記載の金属/樹脂複合構造体。
  8. 金属/樹脂複合構造体が成形回路部品である請求項1〜7のいずれか一項記載の金属/樹脂複合構造体。
  9. 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が溶融混練物である請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属/樹脂複合構造体。
  10. 金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とが接合してなる金属/樹脂複合構造体に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、
    前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、ポリビニルピロリドン(B)とを必須成分として配合してなり、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリビニルピロリドン(B)が0.1〜50質量部の範囲であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  11. 請求項10に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる成形品。
  12. 金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とが接合してなる金属/樹脂複合構造体の製造方法であって、
    (1)金属部材表面に、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を溶融成形することにより接合する工程、または、(2)金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とを接合する工程、を有すること、
    前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、ポリビニルピロリドン(B)とを必須成分として配合してなり、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリビニルピロリドン(B)が0.1〜50質量部の範囲であることを特徴とする金属/樹脂複合構造体の製造方法。
  13. 金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とが接合してなる金属/樹脂複合構造体に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法であって、
    ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)とポリビニルピロリドン(B)とを必須成分として溶融混練する工程を有すること、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリビニルピロリドン(B)が0.1〜50質量部の範囲であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
  14. 金属部材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品とが接合してなる金属/樹脂複合構造体に用いる前記成形品の製造方法であって、
    ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を金型内で成型する工程を有すること、
    前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、ポリビニルピロリドン(B)とを必須成分として配合してなり、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、前記ポリビニルピロリドン(B)が0.1〜50質量部の範囲であることを特徴とする成形品の製造方法。
  15. 金型温度が40〜180℃の範囲である請求項14記載の成形品の製造方法。
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