JP6948984B2 - センサ素子及びガスセンサ - Google Patents
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これは、センサ出力が検出対象である特定ガス成分の濃度におおむね比例するが、外部の被測定ガスの圧力が変動すると、測定ガス空間と外部との圧力差を解消しようとして測定ガス空間に流入又は流出する被測定ガスが異常拡散する。そして、被測定ガスが外部から測定ガス空間に流入する際の異常拡散によって測定ガス空間内の特定ガス成分の量(濃度)が変化し、オーバーシュートU1が生じると考えられる。
従って、図9に示すように、センサ出力が小さいと、オーバーシュートU2の変動が相対的に目立ってしまい、センサ特性がさらに劣ってしまう。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、被測定ガスの動的圧力変化及び静的圧力変化に伴うセンサの出力変動を低減したセンサ素子及びガスセンサを提供することを目的とする。
そこで、動的圧力変化に対しては、測定室に多孔質体を充填することでこれらの有効体積を低減し、圧力変化時に測定室に急激に出入りするガス量を低減することで、オーバーシュートを低減できる。測定室に多孔質体を充填する理由は、測定室を物理的に小さく形成するのは製造上困難であるためである。
又、静的圧力変化に対しては、外部の被測定ガスが連通路でなるべく律速されずに測定室に導入されるようにすると、センサ出力が上昇する。このため、測定室の体積Vに対し、断面積Scを相対的に大きくする。
このセンサ素子によれば、測定室の有効体積をより低減できる。
センサ素子19のうち、検知部22が形成された先端寄り部位が、セラミックホルダ30より先端に突出している。このように貫通孔32を通されたセンサ素子19は、セラミックホルダ30の後端面側(図示上側)に配置されたシール材(本例では滑石)41を、絶縁材からなるスリーブ43、リングワッシャ45を介して先後方向に圧縮することによって、主体金具11の内側において先後方向に気密を保持して固定されている。
なお、センサ素子19の後端19eを含む後端寄り部位はスリーブ43及び主体金具11より後方に突出しており、その後端寄り部位に形成された各センサパッド部13〜15及びヒータパッド部16,17に、シール材85を通して外部に引き出された各リード線71の先端に設けられた端子金具75が圧接され、電気的に接続されている。また、このセンサパッド部13〜15及びヒータパッド部16,17を含むセンサ素子19の後端寄り部位は、外筒81でカバーされている。以下、さらに詳細に説明する。
このセンサ素子19は、固体電解質(部材)の先端寄り部位に検知部22をなす一対の電極153、155(図2参照)が配置され、これに連なり後端寄り部位には、検知用出力取り出し用のリード線71接続用のセンサパッド部14,15(図2参照)が露出形成されている。
また、本例では、センサ素子19のうち、固体電解質(部材)に積層状に形成されたセラミック材の先端寄り部位内部にヒータ層145(図2参照))が設けられており、後端寄り部位には、ヒータ電圧印加用のリード線71接続用のヒータパッド部16,17(図2参照)が露出形成されている。
なお、これらセンサパッド部13〜15、ヒータパッド部16,17は縦長矩形に形成され、例えばセンサ素子19の後端寄り部位において、図2に示すように帯板の幅広面にセンサパッド部13〜15が3つ横に並び、反対面にヒータパッド部16,17が2つ横に並んでいる。
さらに、センサ素子19の検知部22に、アルミナ又はスピネル等からなる多孔質の保護層23が被覆されている。
一方、主体金具11は、軸線O方向に貫通する内孔18を有している。内孔18の内周面は後端側から先端側に向かって径方向内側に先細るテーパ状の段部11dを有している。
一方、貫通孔32は、セラミックホルダ30の中心に設けられると共に、センサ素子19が略隙間なく通るように、センサ素子19の横断面とほぼ同一の寸法の矩形の開口とされている。
一方、センサ素子19の先端部位は、本形態では、2層構造からなり、共にそれぞれ通気孔(穴)56、67を有する有底円筒状のプロテクタ(保護カバー)51,61で覆われている。このうち内側のプロテクタ51の後端が、主体金具11の円筒部12に外嵌され、溶接されている。なお、通気孔56はプロテクタ51の後端側で周方向において例えば8箇所設けられている。一方プロテクタ51の先端側にも、周方向において例えば4箇所、排出穴53が設けられている。
また、外側のプロテクタ61は、内側のプロテクタ51に外嵌して、同時に円筒部12に溶接されている。外側のプロテクタ61の通気孔67は、先端寄り部位に、周方向において例えば8箇所設けられており、また、プロテクタ61先端の底部中央にも排出孔69が設けられている。
なお、リード線71は外筒81の後端部の内側に配置されたシール材(例えばゴム)85を通されて外部に引き出されており、外筒81の小径筒部83を縮径カシメしてこのシール材85を圧縮することにより、この部位の気密が保持されている。
センサ素子19は厚さ方向(積層方向)に、図2の上方から順に、第1セラミック層180、第2セラミック層160、第3セラミック層170、第4セラミック層150及びヒータ層145を積層してなる。各層145、150〜180は、アルミナ等の絶縁性セラミックからなり、外形寸法(少なくとも幅及び長さ)の等しい矩形板状をなしている。
多孔質層182は外部に露出しており、多孔質層182を介してポンプ電極163と外部との間で酸素の汲み出し及び汲み入れが可能となっている。
固体電解質体162,ポンプ電極163及び対向電極165は、後述する測定室171内の被測定ガス中の酸素の汲み出し及び汲み入れを行う酸素ポンプセル(第2セラミック層)160を構成し、対向電極165は測定室171に臨み、ポンプ電極163は多孔質層182を介して外部に連通している。
そして、測定室171内の酸素濃度に応じ、ポンプ電極163及び対向電極165の間に流れる電流の方向及び大きさがセンサパッド部13、15を介して2本のリード線71から外部装置によって制御され、酸素がポンピングされる。
測定室171は連通路173を介して外部と連通しており、測定室171のすべてに多孔質体が充填されている。
測定室171及び連通路173については後述する。
固体電解質体152,基準ガス側電極153及び被測定ガス側電極155は、被測定ガス中の酸素濃度の検知セル(第4セラミック層)150を構成し、被測定ガス側電極部155Eは測定室171に臨んでいる。一方、基準ガス側電極部153Eは、リード部153L、スルーホールを介して外部に通気する。
そして、基準ガス側電極153及び被測定ガス側電極155の検出信号が、センサパッド部14,15から2本のリード線71を介して外部に出力され、酸素濃度が検出される。
すなわち、測定室171に臨む被測定ガス側電極部155Eが特許請求の範囲の「検知電極」に相当し、固体電解質体152が特許請求の範囲の「固体電解質体」に相当し、基準ガス側電極部153Eが特許請求の範囲の「第1対向電極」に相当する。又、測定室171に臨む対向電極部165Eが特許請求の範囲の「ポンプ電極」に相当し、固体電解質体162が特許請求の範囲の「固体電解質体」に相当し、ポンプ電極部163Eが特許請求の範囲の「第2対向電極」に相当する。
各リード部146Lは、第2層145bに設けられたスルーホールを介してヒータパッド部16,17と電気的に接続されている。そして、2本のリード線71を介してヒータパッド部16,17から発熱体146に通電することで、発熱体146が発熱し、固体電解質体152,162を活性化する。
図4に示すように、測定室171は略直方体状をなし、測定室171の幅方向両端に、測定室171よりも小さく略直方体状の連通路173がそれぞれ接続されている。
ここで、センサ素子19の外面に露出した連通路173から測定室171へ向かう方向Fから見たとき、測定室171の最大断面積Smに対し、(Sm/2)以下の断面積Sxを有する部分が連通路173とされる。
本例では、方向Fから見て測定室171と連通路173の断面積がそれぞれ一定であり、かつ測定室171と連通路173とは断面積が異なるので、測定室171と連通路173とを簡単に区別できる。一方、例えば図5のように、測定室171と連通路173の断面積が連続的に変化している場合、両者の境界が明確ではない。そこで、測定室171の最大断面積Smの半分(Sm/2)である断面積の部位を、測定室171と連通路173との境界とみなすこととする。
図8に示したように、被測定ガスの圧力変化(動的圧力変化)により、センサ出力がオーバーシュートするが、その原因は測定室171に流入又は流出する被測定ガスの異常拡散に伴い、測定室171内の特定ガス成分の量(濃度)nが変化するものである。
ここで、気体の状態方程式によれば、特定ガス成分の量(濃度)nの変化量Δn=PV/RTであるから、測定室171の体積Vを小さくするほど、Δn、ひいてはオーバーシュートを低減できることになる。
但し、測定室171を物理的に小さく形成するのは製造上困難であるので、測定室171に多孔質体を充填することで、測定室171の体積V(有効体積)は、多孔質体の気孔部分のみに低減される。この点からは、多孔質体の気孔率が50%以下であると、測定室171の体積Vをより低減できるので好ましい。
連通路173が密なほど被測定ガスの圧力変動によるセンサ出力の変動(静的圧力変化)の影響が大きくなり、図9に示すように、オーバーシュートの変動が相対的に目立ってセンサ特性が劣る。
そこで、外部の被測定ガスが連通路173でなるべく律速されずに測定室171に導入されるようにする。このため、(i)連通路173を空洞として粗とすることと、(ii)測定室171の体積Vに対し、断面積Scを相対的に大きくすることで、外部の被測定ガスが測定室171に導入され易くなる。
これにより、図6に示すように、被測定ガスの圧力PGの変動前後のセンサ出力T3の差S3が減少し、被測定ガスの圧力変動の影響が小さくなる。又、センサ出力が上昇するので、オーバーシュートU3の変動が相対的に小さくなり、センサ性能が向上する。
なお、体積Vに対し、次元の異なる断面積Scを比較対象とする理由は、オーバーシュートは体積Vに依存し、体積Vを小さくするほどオーバーシュートも低減されるものの、設計上、オーバーシュートがゼロになることはなく、オーバーシュートによってセンサの検知性能が悪化するが、オーバーシュートが及ぼすセンサの検知性能への影響を断面積Scの大小によってある程度制御することができるためである。
以上のようにして、動的圧力変化及び静的圧力変化の影響を共に低減し、被被測定ガスの圧力変化に伴うセンサの出力変動を低減することができる。
例えば測定室及び連通路の形状は上記実施形態に限定されない。また、センサ素子としては、酸素の濃度を測定するものに限定されず、窒素酸化物(NOx)又は炭化水素(HC)等の濃度を測定するものを用いてもよい。
又、例えば測定室及び測定室に連通する別の室(つまり、2室)を有するNOxセンサ等にも本発明を適用可能である。
なお、測定室171に、気孔率45%の多孔質体を充填した。この多孔質体は、アルミナ粒子とチタニア粒子と焼失性カーボンを含むペーストを測定室171に充填して焼成することで形成した。
得られたガスセンサ1において、酸素濃度20%の被測定ガスを用いて出力のオーバーシュートを測定した。
得られた結果を図7に示す。V/Sc≦0.003(m)の場合、検知精度の誤差が基準値を下回り、オーバーシュートによるセンサ検知性能の悪化を抑制できたことがわかる。
なお、図7の「センサ検知精度の誤差(%)」は、図6のオーバーシュートU3からセンサ出力T3を差し引いた値(オーバーシュート分)を、基準値(大気圧下のセンサ出力)で除した値(%)である。
19 センサ素子
150 検知セル(第4セラミック層)
152,162 固体電解質体
153E 第1対向電極
155E 検知電極
160 ポンプセル(第2セラミック層)
163E 第2対向電極
165E ポンプ電極
171 測定室
173 連通路
F 連通路から測定室へ向かう方向
Claims (3)
- 検知電極及び第1対向電極が固体電解質体上に設けられる検知セルと、ポンプ電極及び第2対向電極が固体電解質体上に設けられるポンプセルと、
前記検知セル及び前記ポンプセルの間に形成され、前記検知電極及び前記ポンプ電極が臨む測定室と、
前記測定室と外部とを連通する連通路と、
を有するセンサ素子であって、
前記測定室に多孔質体が充填され、
前記連通路は空洞をなし、
前記連通路から前記測定室へ向かう方向から見たとき、前記測定室の最大断面積Smに対し、(Sm/2)以下の断面積を有する部分が前記連通路とされ、
前記測定室の体積V(m3)と、前記連通路の外面に露出した部位の断面積Sc(m2)との間で、V/Sc≦0.003(m)の関係を満たすことを特徴とするセンサ素子。 - 前記多孔質体の気孔率が50%以下である請求項1記載のセンサ素子。
- 請求項1又は2に記載のセンサ素子を有するガスセンサ。
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