以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下に説明する実施形態では、内燃機関であるエンジンを唯一の駆動源とする車両の自動運転装置に適用した場合を例に挙げて本発明を説明しているが、本発明は、エンジンと電動機とを車両の駆動源とする電動車両、例えばハイブリッド自動車(乗用車)、ハイブリッドトラックなどの貨物自動車、ハイブリッドバスなどの乗り合い自動車などの運転支援装置にも適用することができる。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態における運転支援装置の構成を示す図である。なお図1の破線矢印は信号の流れを示している。
車両には、車両を駆動するエンジン1と、車両を制動させるブレーキ2と、エンジン1が発生した駆動力を無段階で変速する変速機3と、変速機3と駆動輪4の間で動力を伝達するクラッチ5と、エンジン1の燃焼状態を制御してエンジン1が発生させる動力を変化させるエンジン制御装置6と、ブレーキ2の油圧を制御してブレーキ2が発生させる制動力を変化させるブレーキ制御装置7と、変速機3の回転数を制御して変速比を変化させ、またクラッチ5の動力伝達を制御する変速機制御装置8と、車両前方の物体を検知する前方認識センサ9(カメラ、レーダ等)と、車両の速度を検出する車速センサ10と、エンジン制御装置6およびブレーキ制御装置7および変速機制御装置8へ動作を指令する加減速制御装置11と、自車の位置を検出するGPSセンサ12と、自車進路上を走行する前方車両の走行情報および自車と前方車両の周辺の道路情報(自車と前方車両の間の平均速度等の情報)を取得する通信部13(無線、光ビーコン方式等のレシーバ)と、を備えている。
エンジン1が燃料を燃焼させることにより発生させた動力は、変速機3に伝えられ、この変速機3内部のベルト式の変速機構により変速された後に、クラッチ5および差動機構14を介して左右の駆動輪4に伝えられ、車両を駆動する駆動力となる。駆動輪4の近傍には車両の制動力を発生させるブレーキ2が設けられている。ブレーキ2には油圧倍力装置が備えられており、この油圧倍力装置が発生する油圧操作力で駆動輪4を押さえつけ、摩擦力を発生させる。これにより運動エネルギーを熱エネルギーに変換し、車両を制動させることができる。
図1において、加減速制御装置11はCPU(Central Processing Unit)やメモリなどから構成され、制御プログラムを実行して、エンジン制御装置6と、ブレーキ制御装置7と、変速機制御装置8と、への指令値を演算する。これにより、車両の加減速を制御することができる。
図1において、エンジン制御装置6はCPUやメモリなどから構成され、制御プログラムを実行してエンジン1の燃料供給量や空気供給量を演算する。これにより、エンジン1が発生する制駆動力を制御することができる。
図1において、ブレーキ制御装置7はCPUやメモリなどから構成され、制御プログラムを実行してブレーキ2の油圧を演算する。これにより、ブレーキ2が生じる制動力を制御することができる。
図1において、変速機制御装置8はCPUやメモリなどから構成され、制御プログラムを実行して変速機3とクラッチ5の油圧を演算する。これにより、変速機3の変速比およびクラッチ5の動力伝達を制御することができる。
図1に示すように、加減速制御装置11には、車両前方の物体を検知する前方認識センサ9、車両の速度を検出する車速センサ10、自車の位置を検出するGPSセンサ12、自車進路上を走行する前方車両の走行情報および自車と前方車両の周辺の道路情報を取得する通信部13、などが接続されている。
前方認識センサ9は、車両前方を走行する先行車の相対距離(車間距離)、相対速度、位置および速度等の先行車検出情報を検出し、先行車検出信号(先行車検出情報を示す信号)として出力することができる。
通信部13は、自車進路上を走行する前方車両から、公衆回線とサーバを経由した通信で走行情報を取得することができる。これにより自車と前方車両の距離に依らず走行情報を取得することができる。走行情報には前方車両の位置情報と速度情報が含まれる。またGPSセンサ12が検出した自車の位置情報や、前方車両の走行情報に含まれる位置情報に基づいて、自車および前方車両の周辺の道路情報を取得することができる。道路情報には自車と前方車両の間の交通状況すなわち区間平均速度が含まれている。
加減速制御装置11は、前方認識センサ9の先行車検出信号と、車速センサ10の速度信号(自車の速度を示す信号)と、を用いて演算し、エンジン制御装置6と、ブレーキ制御装置7と、変速機制御装置8とへ制駆動力を指令する。前方認識センサ9が検出した先行車との車間距離が縮まった場合には減速するように指令する。前方認識センサ9が検出した先行車と車間距離が離れた場合や、先行車がいなくなった場合には所定速度まで加速するように指令する。これにより、先行車へ接近しすぎることなく、周囲車両に合わせて走行制御することができる。また通信部13から取得した走行情報に基づいて、前方車両の減速を検出し、前方車両の減速が自車まで伝播し得ると判断した場合には、前方認識センサ9が先行車の減速を検出する前であっても、自車の減速を開始することで、燃費や乗心地を向上させることができる。
図2は第1の実施の形態における運転支援装置の構成を示すブロック図である。運転支援装置には、加減速制御装置11、エンジン制御装置6、ブレーキ制御装置7、変速機制御装置8、エンジン1、ブレーキ2、変速機3、クラッチ5、が設けられている。以下では、図2を用いて第1の実施の形態における運転支援装置の演算の流れを説明する。
加減速制御装置11は、前方認識センサ9が出力する先行車検出信号と、車速センサ10が出力する速度信号(車速信号)と、GPSセンサ12が出力する位置信号(自車の位置を示す信号)と、通信部13が出力する前方車両の走行情報信号(前方車両の位置及び速度等の走行情報を示す信号)と、通信部13が出力する道路情報信号(道路情報を示す信号)と、に基づいて、エンジン1が発生するトルクの目標値を示す目標トルク信号と、エンジン1の回転数の目標値を示す目標回転数信号と、ブレーキ2が発生する制動力の目標値を示す目標制動力信号を演算する。これにより車両の加減速を制御することができる。
エンジン制御装置6は、加減速制御装置11が出力する目標トルク信号に基づいて、エンジン1への燃料・空気の供給量を指令する燃料・空気供給量信号を演算する。これによりエンジン1が発生するトルクを制御することができる。
変速機制御装置8は、加減速制御装置11が出力する目標回転数信号に基づいて、変速機3へ供給する油圧を指令する変速機油圧信号と、クラッチ5へ供給する油圧を指令するクラッチ油圧信号とを演算する。これにより変速機3の変速比すなわちエンジン1の回転数と、クラッチ5の動力伝達状態を制御することができる。
ブレーキ制御装置7は、加減速制御装置11が出力する目標制動力信号に基づいて、ブレーキ2へ供給する油圧を指令するブレーキ油圧信号を演算する。これによりブレーキ2が発生する制動力を制御することができる。
図3は第1の実施の形態における加減速制御装置11の構成を示すブロック図である。図4は第1の実施の形態における加減速制御装置11の動作を示すフローチャートである。以下では、図3、図4を用いて第1の実施の形態の加減速制御動作を説明する。加減速制御装置11のCPUは、マイクロコンピュータのソフトウェア形態により図3に示す加減速制御ブロックを構成し、車両のイグニッションキースイッチ(不図示)がオンしている間、図4に示す動作(加減速制御プログラム)を繰り返し実行する。
加減速制御装置11には、先行車速度制御部21、伝播可能判定部22、前方車両速度制御部23、制御内容決定部26、目標エンジン回転数演算部27、目標エンジントルク演算部28、目標ブレーキ制動力演算部29、が設けられている。各部の動作は以下に説明する。
ステップS001で、先行車速度制御部21は、前方認識センサ9から入力される先行車検出信号と、車速センサ10から入力される速度信号(車速信号)と、から先行車目標加速度信号を演算する。先行車目標加速度は先行車への追従走行を実現するための加速度である。先行車に接近した場合には負の目標加速度を出力することによって減速して、車間距離を広げるように走行する。先行車から離れた場合には、正の目標加速度を出力することによって加速して、車間距離を詰めるように走行する。自車の速度が設定値を越えた場合には目標加速度を低下させて、速度が設定値を越えないように走行する。
ステップS002で伝播可能判定部22は、前方認識センサ9から入力される先行車検出情報と、GPSセンサ12から入力される位置信号と、通信部13から入力される前方車両の走行情報信号と、通信部13から入力される道路情報信号と、から伝播可能判定信号(前方車両の減速が自車まで伝播可能か否かを示す信号)を演算する。
換言すれば、伝播可能判定部22は、自車の2台以上前の車両を示す前方車両(第1の前方車両)の減速が自車まで伝播可能か否かを判定する。これにより、前方車両の減速が自車まで伝播し得るかを判定することができる。
図5は第1の実施の形態における伝播可能判定部22の構成を示すブロック図である。図6は第1の実施の形態における伝播可能判定部22の動作を示すフローチャートである。以下では、図5、図6を用いて第1の実施の形態の伝播可能判定部22およびS002の動作を説明する。
ステップS101において、車間時間履歴記憶部31は、GPSセンサ12から入力される位置信号が示す自車の位置と、通信部13から入力される前方車両の走行情報信号が示す前方車両の位置と、通信部13から入力される前方車両の走行情報信号が示す前方車両の速度と、から自車と前方車両の車間時間を演算し、履歴を記憶する。車間時間は自車と前方車両の距離を前方車両の速度で除した値である。
ステップS102において、ステップS101で記憶した車間時間の履歴が所定値以上拡大したか否かを判定する。拡大していないと判定された場合にはステップS102に進む。拡大したと判定された場合にはステップS112に進み、先行車被伝播可能判定部32で先行車が伝播可能と判定されているか、もしくは自車被伝播可能判定部33で自車が伝播可能と判定されていた場合には、伝播可能との判定を解除する。これにより、伝播が可能でない前方車両が減速時に自車が減速して燃費や乗心地が悪化することを防ぐことができる。
なお、車間時間に代えて、伝播可能判定部22は、第1のタイミングの後の第2のタイミングにおける自車から前方車両(第1の前方車両)までの距離が、第1のタイミングにおける自車から前方車両までの距離よりも大きくなった場合、前方車両の減速が自車まで伝播可能との判定を解除してもよい。
ステップS103において、前方車両減速検出部34は、通信部13から入力される前方車両の走行情報に含まれる速度情報から、前方車両の減速を検出する。速度情報の変化率が負で所定値よりも小さい場合に減速したと判断する。ステップS103において前方車両の減速を検出した場合にはステップS104に進む。ステップS103において前方車両の減速を検出しなかった場合にはステップS105に進む。
ステップS104において、減速伝播範囲決定部35は、ステップS103で前方車両の走行情報に含まれる位置情報と、通信部13から入力される道路情報と、前方車両減速検出部34の検出結果、から前方車両の減速伝播範囲を定める。減速伝播範囲は、前方車両の減速が伝播可能であった場合に、自車と前方車両の間を走行する各車両が減速する位置と時間の範囲である。
ステップS105において、先行車被伝播可能判定部32は、先行車が減速せずにステップS104で定めた減速伝播範囲を通過したか否かを判定する。ステップS105において、否と判定された場合にはステップS106へ進む。ステップS105において、先行車が減速せずに減速伝播範囲を通過したと判定された場合にはステップS112に進み、先行車もしくは自車が伝播可能と判定されていた場合には、伝播可能との判定を解除する。
換言すれば、伝播可能判定部22は、前方車両(第1の前方車両)が減速しても(ステップS103:YES)、自車の1台前の車両を示す先行車が減速伝播範囲において減速しない場合(ステップS105:YES)、前方車両の減速が自車まで伝播可能との判定を解除する(ステップS112)。これにより、伝播が可能でない前方車両が減速時に自車が減速して燃費や乗心地が悪化することを防ぐことができる。
ステップS106において、先行車被伝播可能判定部32は、ステップS104で定めた減速伝播範囲で先行車の減速を検出した場合には、ステップS107に進み、前方車両の減速が先行車まで伝播可能であると判定する。ステップS104で定めた減速伝播範囲で先行車の減速を検出しなかった場合には、ステップS108へ進む。
ステップS108において、前方車両の減速が先行車まで伝播可能であると判定されていた場合にはステップS109に進み、自車被伝播可能判定部33は、ステップS109において、前方認識センサ9から入力される先行車検出信号が示す車間距離が所定値以下であった場合、ステップS110に進み、前方車両の減速が自車まで伝播可能と判定する。これにより、前方車両の減速が自車まで伝播し得るかを判定することができる。ステップS109で車間距離が所定値以上であった場合にはステップS111に進み、前方車両の減速が自車まで伝播可能との判定を解除する。
このように、伝播可能判定部22は、前方車両(第1の前方車両)の減速が伝播する時間及び位置の範囲を示す減速伝播範囲に基づいて、前方車両の減速が自車まで伝播可能か否かを判定する。詳細には、伝播可能判定部22は、前方車両(第1の前方車両)が減速したことにより(ステップS103:YES)、自車の1台前の車両を示す先行車が減速伝播範囲において減速し(ステップS106:YES)、自車から先行車までの距離が閾値以下である場合(ステップS109:YES)、前方車両の減速が自車まで伝播可能と判定する(ステップS110)。
なお、図21は、前方車両の減速が自車まで伝播可能と判定してから、自車と前方車両の車間時間が拡大し、伝搬可能判定を解除する動作を示す。また、図22は、前方車両の減速が自車まで伝播可能と判定してから、減速伝播範囲において先行車両の減速を検出せず、伝搬可能判定を解除する動作を示す。
図7は本実施の形態における伝播可能判定部22の動作を説明する図であり、位置と時間の関係を示している。
時刻T01において、位置P02で前方車両の減速を検出したため、減速伝播範囲A01を定める。減速伝播速度Vは一般に式(1)で算出できる。
ここで、Q2=減速後の交通量(単位:台数/単位時間)、Q1=減速前の交通量、K2=減速後の交通密度(単位:台数/単位距離)、K1=減速前の交通密度である。
また交通量や交通密度の変化が微小な場合には、減速伝播速度Vは、式(2)で算出できる。
ここで、δQ=交通量の微小変化、δK=交通密度の微小変化である。
車両の走行速度に対する交通量と交通密度の統計的な関係は、道路ごとに一意に定めることができる。また車両の走行速度に対する式(2)右辺の統計的な関係も、道路ごとに一意に定めることができる。道路情報に含まれる平均速度から式(2)を演算し、前方車両の減速を検出した際の、時刻T01と位置P02および式(2)で演算した減速伝播速度から減速伝播範囲A01を定めることができる。
換言すれば、伝播可能判定部22は、自車と前方車両(第1の前方車両)の間の車両の平均速度、前方車両が減速した位置、及び前方車両が減速したタイミングに基づいて、減速伝播範囲A01を算出する。なお、図7の例では、ある位置において前方車両の減速が伝播するタイミングに幅を持たせている。これにより、例えば、交通情報センタ等から提供される道路情報(車両の平均速度等)を用いて減速伝播範囲を決定することができる。
図7に示す通り、車両の走行速度が速くなると減速伝播速度は遅くなる傾向にある。その理由は次の通りである。図7に示す車両の軌跡の傾き(時間/位置)は、車両の走行速度の逆数に相当し、車両の走行速度が高くなると、図7に示す車両の軌跡の傾きは、小さくなる(緩やかになる)。一方、図7の点(P01、T01)と点(P02、T02)を通る直線LNの傾き(時間/位置)は、減速伝播速度の逆数に相当し、車両の走行速度が高くなると、直線LNの傾きの絶対値は大きくなる(急になる)。したがって、車両の走行速度が高くなると、減速伝播速度は遅くなる。
時刻T02において、減速伝播範囲A01の範囲内である位置P01で先行車両の減速を検出したため、前方車両の減速が先行車両を伝播可能と判定する。さらに、先行車と自車の間の車間距離が所定値以下であるため、時刻T02以降で前方車両の減速が自車まで伝播可能と判定する。これにより、前方車両の減速が自車まで伝播し得るかを判定することができる。
図4に戻り、ステップS003で前方車両速度制御部23は、車速センサ10から入力される速度信号(車速信号)と、GPSセンサ12から入力される位置信号と、通信部13から入力される前方車両の走行情報信号と、伝播可能判定部22から入力される伝播可能判定信号と、から前方車両目標加速度信号を演算する。なお、前方車両目標加速度信号は、主として前方車両の速度に応じた自車の目標加速度を示す信号である。その詳細については、図8及び図9を用いて後述する。
換言すれば、前方車両速度制御部23は、前方車両(第1の前方車両)の減速が自車まで伝播可能と判定され、前方車両が減速した場合、自車を減速させる。これにより、前方車両が減速した際に、自車の減速開始を早めて、燃費や乗心地を向上することができる。
図8は第1の実施の形態における前方車両速度制御部23の構成を示すブロック図である。図9は第1の実施の形態における前方車両速度制御部23の動作を示すフローチャートである。以下では、図8、図9を用いて第1の実施の形態の前方車両速度制御部23およびステップS003の動作を説明する。
ステップS201において、切換えブロック101は、伝播可能判定部22から入力される伝播可能判定信号が否であった場合には前方車両目標加速度信号として無効値(例えば、ヌル)を出力する。ステップS201において、伝播可能判定信号が可であった場合にはステップS202に進む。
ステップS202において、車間時間演算部102は、通信部13から入力される前方車両の走行情報信号に含まれる速度信号と、通信部13から入力される前方車両の走行情報信号に含まれる位置信号と、GPSセンサ12から入力される位置信号とから、自車と前方車両との間の車間時間を演算する。車間時間は前方車両と自車の間の距離を前方車両の速度で除することで算出する。
ステップS203において、減速判定部103は、通信部13から入力される前方車両の走行情報信号に含まれる速度情報から減速判定信号(前方車両が減速しているか否かを示す信号)を演算する。速度情報の変化率が負で所定値以下の場合には減速していると判定する。ステップS203において、減速していると判定された場合には、ステップS204に進み、ラッチ部104は前方車両が減速を開始した時の車間時間を記憶する。減速していないと判定された場合にはS206に進む。
ステップ205において、減速判定部103から入力される減速判定信号が、減速ありとの判定を示す場合には、フリップフロップ105は切換えブロック106の出力をエンブレ(エンジンブレーキ)相当の加速度へと切り替える。
ステップS206において、車間時間が前方車両減速を開始時よりも大きくなったと比較部107が判定し、かつステップS207において、自車の速度が前方車両よりも小さくなったと比較部108が判定した場合には、ステップS208において、フリップフロップ105は切換えブロック106の出力を無効値へと切り替える。
なお、車間時間に代えて、前方車両速度制御部23は、前方車両(第1の前方車両)が減速を開始した第1のタイミングの後の第2のタイミングにおける自車から前方車両までの距離が、第1のタイミングにおける自車から前方車両までの距離よりも大きくなり、且つ第2のタイミングにおける自車の速度が前方車両の速度以下となった場合、自車の減速を解除してもよい。
図4に戻り、ステップS003において、前方車両との距離が近い場合には、エンブレ相当の加速度では減速が不足し、前方車両へ接近しすぎてしまう場合がある。したがって、前方車両と自車の間の距離が所定より近い場合には、前方車両への目標加速度としてエンブレ相当よりも小さな値を出力してもよい。これにより、前方車両に対して十分に減速することができるため、乗心地を向上することができる。
またステップS003において、前方車両との距離が遠い場合には、前方車両の減速を検出直後にエンブレ相当の加速度へ切り替えると、減速が過剰となり、前方車両から離れすぎてしまう場合がある。したがって、前方車両と自車の間の距離が所定値より遠い場合には、前方車両への目標加速度をエンブレ相当へ切り替えるタイミングを遅らせてもよい。これにより、前方車両に対する過剰な減速を抑えることができるため、燃費を向上することができる。
なお、前方車両速度制御部23は、前方車両(第1の前方車両)が減速した場合、自車から前方車両までの距離が大きいほど、自車を減速させるタイミングを遅くする又は自車の減速度を小さくしてもよい。自車から前方車両までの距離が大きいほど、前方車両の減速が自車まで到達する時間が遅くなるからである。
図4に示すステップS004からステップS006で制御内容決定部26は、先行車速度制御部21から入力される先行車目標加速度信号と、前方車両速度制御部23から入力される前方車両目標加速度信号と、から後述するパワートレイン制御指令信号を演算する。
ステップS004で、前方車両目標加速度信号が有効値を示す場合には、ステップS005に進み、先行車両目標加速度信号と前方車両目標加速度信号のうち小さい方、すなわち減速度が強い方を車両の駆動力に換算してパワートレイン制御指令信号(車両の駆動力を示す信号)として出力する。
ステップS004で、前方車両目標加速度信号が無効値を示す場合には、ステップS006に進み、先行車両目標加速度信号を、車両の駆動力に換算してパワートレイン制御指令信号として出力する。
ステップS007で、目標エンジントルク演算部28は、制御内容決定部26から入力されるパワートレイン制御指令信号から目標トルク信号を演算する。詳細には、制御内容決定部26から入力されるパワートレイン制御指令信号が示す駆動力と車速信号が示す速度の積をエンジン回転数で除算して、正値へ制限することで、目標トルク信号とする。なお、エンジン回転数は、例えば、クランク角センサから出力される信号に基づいて算出される。
ステップS008で、目標エンジン回転数演算部27は、制御内容決定部26から入力されるパワートレイン制御指令信号から目標回転数信号を演算する。詳細には、制御内容決定部26から入力されるパワートレイン制御指令信号の駆動力と車速を積算して得た、エンジン1の出力に対して、最も効率の良い回転数を目標回転数信号とする。パワートレイン制御指令信号のパワートレイン状態がエンジン停止・クラッチ開放の場合には目標回転数信号をゼロとする。
ステップS009で、目標ブレーキ制動力演算部29は、制御内容決定部26から入力されるパワートレイン制御指令信号から目標制動力信号を演算する。制御内容決定部26から入力されるパワートレイン制御指令信号の駆動力を、負値へ制限することで目標制動力信号とする。
図10は第1の比較例における運転支援装置の動作を説明する図であり、位置と時間の関係を示している。図10は前方車両の減速が先行車まで伝播する場合の例を示している。時刻T11において、先行車の減速を検出したタイミングで自車も減速を開始する。
図11は第2の比較例における前方車両の走行情報を取得できる運転支援装置の動作を説明する図であり、位置と時間の関係を示している。図11は前方車両の減速が先行車まで伝播しない場合の例を示している。時刻T21において、前方車両の減速を検出したタイミングで自車の減速を開始する。前方車両の減速は自車まで伝播しないため、時刻T21における無駄な減速と、時刻T22で先行車へ再度追いつくための再加速が発生し、燃費と乗心地が悪化する。
図12および図13は本実施の形態における前方車両速度制御部23の動作を説明する図であり、位置と時間の関係を示している。
図12は前方車両の減速が先行車まで伝播する場合の例を示している。時刻T31において、前方車両の減速を検出したため、自車の加速度をエンブレ相当に切換えて減速を開始するとともに、前方車両が減速を開始した時点における車間時間L31を記憶する。時刻T32において、車間時間L32が車間時間L31よりも大きくなり、前方車両の速度よりも自車の速度の方が小さくなったため、加速度をエンブレ相当の加速度から先行車へ追従するための加速度へ復帰する。このように自車の減速の開始を早めて、燃費と乗心地を向上することができる。
図13は前方車両の減速が先行車まで伝播しない場合の例を示している。時刻T41において、前方車両の減速を検出するが、前方車両の減速が自車まで伝播しないため、先行車に対する追従走行を継続する。このように不必要な加減速を抑えて、燃費と乗心地を向上することができる。
(第2の実施の形態)
図14は、第2の実施の形態における運転支援装置の構成を示す図である。第2の実施の形態では上述した第1の実施の形態の一部の構成を変更したものである。図1から図13に示す要素と同一の要素に対しては同一の符号を付し、以下では相違点を中心に説明する。
第2の実施の形態における運転支援装置は、路車間通信部201(無線、光ビーコン方式等のレシーバ)を備えており、自車近傍の交通信号の位置情報や現示情報を取得することができる。第2の実施の形態における伝播可能判定部22は、道路情報信号として、路車間通信部201から入力される交通信号の位置情報と現示情報(信号の現時点の色等を示す情報)を用いて伝播可能判定信号を演算する。なお、カーナビ等の地図データベースから交通信号の位置情報を取得してもよい。
図15は、第2の実施の形態における伝播可能判定部22の動作を説明する図であり、位置と時間の関係を示している。
路車間通信部201から入力される交通信号の位置情報と現示情報により、位置P53に設置された信号TS51が、時刻T51から時刻T54までの間で赤色であることを検出する。さらに時刻T52において、信号TS51の近傍である位置P52で前方車両の減速を検出したため、減速伝播範囲A51を定める。減速伝播範囲A51は前方車両より手前、かつ信号TS51から所定距離以内、かつ信号TS51が赤色である時刻T51から時刻T54までの間のうち、前方車両の減速が検出された時刻T52以降の期間である。
換言すれば、伝播可能判定部22は、信号機の位置、前方車両(第1の前方車両)の位置、前方車両が減速したタイミング、及び交通信号が赤から青に変わるタイミングに基づいて、減速伝播範囲A51を算出する。これにより、車両の平均速度ではなく信号機の位置を用いて、減速伝播範囲を決定することができる。
時刻T53において、減速伝播範囲A52の範囲内である位置P51で先行車両の減速を検出したため、前方車両の減速が先行車両を伝播可能と判定する。さらに、先行車と自車の間の車間距離が所定値以下であるため、時刻T53以降で前方車両の減速が自車まで伝播可能と判定する。これにより、前方車両の減速が自車まで伝播し得るかを判定することができる。
(第3の実施の形態)
図16は、第3の実施の形態における運転支援装置の構成を示す図である。第3の実施の形態では上述した第1の実施の形態の一部の構成を変更したものである。図1から図13に示す要素と同一の要素に対しては同一の符号を付し、以下では相違点を中心に説明する。
第3の実施の形態における運転支援装置は、地図情報取得部301を備えており、自車近傍の料金所の位置情報を取得することができる。具体的には、地図情報取得部301は、例えば、カーナビの地図データベースから料金所の位置情報を取得するが、クラウド等から取得してもよい。第3の実施の形態における伝播可能判定部22は、道路情報信号として、地図情報取得部301から入力される料金所の位置情報を用いて伝播可能判定信号を演算する。
図17は、第3の実施の形態における伝播可能判定部22の動作を説明する図であり、位置と時間の関係を示している。
地図情報取得部301から入力される料金所の位置情報により、位置P63に料金所TG61が設けられていることを検出する。さらに時刻T61において、料金所TG61の近傍である位置P61で前方車両の減速を検出したため、減速伝播範囲A61を定める。
減速伝播範囲A61は前方車両より手前、かつ料金所TG61から所定距離以内かつ前方車両の減速を検出した時刻T61から前方車両が料金所TG61を通過する時刻T63までの間とする。
換言すれば、伝播可能判定部22は、料金所の位置、前方車両(第1の前方車両)の位置、前方車両が減速したタイミング、及び前方車両が料金所を通過したタイミングに基づいて、減速伝播範囲A61を算出する。これにより、車両の平均速度ではなく料金所の位置を用いて、減速伝播範囲を決定することができる。
時刻T62において、減速伝播範囲A61の範囲内である位置P62で先行車両の減速を検出したため、前方車両の減速が先行車両を伝播可能と判定する。さらに、先行車と自車の間の車間距離が所定値以下であるため、時刻T62以降で前方車両の減速が自車まで伝播可能と判定する。これにより、前方車両の減速が自車まで伝播し得るかを判定することができる。
(第4の実施の形態)
図18は、第4の実施の形態における運転支援装置の構成を示す図である。第4の実施の形態では上述した第1の実施の形態の一部の構成を変更したものである。図1から図13に示す要素と同一の要素に対しては同一の符号を付し、以下では相違点を中心に説明する。
第4の実施の形態における運転支援装置は、渋滞情報取得部401(無線、光ビーコン方式のレシーバ)を備えており、自車近傍の渋滞情報(渋滞区間等を示す情報)を取得することができる。第4の実施の形態における伝播可能判定部22は、道路情報信号として、渋滞情報取得部401から入力される渋滞情報を用いて伝播可能判定信号を演算する。
図19は、第4の実施の形態における伝播可能判定部22の動作を説明する図であり、位置と時間の関係を示している。
渋滞情報取得部401から入力される渋滞情報により、渋滞区間TJ71で渋滞していることを検出する。さらに時刻T71において、渋滞区間TJ71内の51の位置P72で前方車両の減速を検出したため、減速伝播範囲A71を定める。減速伝播範囲A71は前方車両よりも手前、かつ渋滞区間TJ71の範囲内とする。
伝播可能判定部22は、渋滞区間TJ71、前方車両(第1の前方車両)の位置、前方車両が減速したタイミングに基づいて、減速伝播範囲A71を算出する。これにより、車両の平均速度ではなく渋滞区間を用いて、減速伝播範囲を決定することができる。
時刻T72において、減速伝播範囲A72の範囲内である位置P71で先行車両の減速を検出したため、前方車両の減速が先行車両を伝播可能と判定する。さらに、先行車と自車の間の車間距離が所定値以下であるため、時刻T72以降で前方車両の減速が自車まで伝播可能と判定する。これにより、前方車両の減速が自車まで伝播し得るかを判定することができる。
(第5の実施の形態)
図20は、第5の実施の形態における伝播可能判定部22の動作を説明する図であり、位置と時間の関係を示している。
第5の実施の形態では上述した第1の実施の形態の一部の構成を変更したものである。図1から図13に示す要素と同一の要素に対しては同一の符号を付し、以下では相違点を中心に説明する。
第5の実施の形態における通信部13は、自車進路上を走行する第1の前方車両および第1の前方車両の前方を走行する第2の前方車両から、公衆回線とサーバを経由した通信で走行情報を取得することができる。
第5の実施の形態における前方車両速度制御部23は、時刻T81において、伝播可能と判定した第1の前方車両の減速を検出していなくても、伝播可能と判定した第2の前方車両の減速を検出したため、自車の減速を開始する。
このように、伝播可能判定部22は、第1の前方車両の前の第2の前方車両の減速が自車まで伝播可能か否かを判定する。また、前方車両速度制御部23は、第2の前方車両の減速が自車まで伝播可能と判定され、第2の前方車両が減速した場合、自車を減速させる。これにより燃費と乗心地を向上することができる。
以上説明したように、第1〜第5の実施形態によれば、不必要な加減速を従来よりも抑制することができる。その結果、燃費と乗心地を向上することができる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサ(マイコン)がそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
なお、本発明の実施形態は、以下の態様であってもよい。
(1)自車の進路上を走行する第一前方車両の走行情報を検出する前方車両走行情報検出部と、前記第一前方車両の減速が前記自車まで伝播し得るかを判定する伝播可能判定部と、前記伝播可能判定部が伝播可能と判定した場合において、前記第一前方車両が減速した、との走行情報を前記前方車両走行情報検出部が検出した場合に、前記自車を減速させる前方車両速度制御部と、を備える、ことを特徴とする運転支援装置。
(2)(1)に記載の運転支援装置において、前記自車と前記前方車両の周辺の道路情報を取得する道路情報取得部をさらに備え、前記伝播可能判定部は、自車走行情報と先行車走行情報と第一車両走行情報と道路情報と、に基づいて、前記第一前方車両の減速が前記自車まで伝播可能と判定する、ことを特徴とする運転支援装置。
(3)(2)に記載の運転支援装置において、前記伝播可能判定部は、前記第一車両走行情報に基づいて前記第一前方車両の減速を検出する第一前方車両減速検出部と、前記先行車情報に基づいて前記先行車の減速を検出する先行車減速検出部と、前記道路情報に基づいて前記第一前方車両の減速伝播範囲を決定する減速伝播範囲決定部と、前記先行車減速検出部の検出タイミングが前記減速伝播範囲内のときに、前記第一前方車両の減速が前記先行車まで伝播可能と判定する、先行車被伝播可能判定部と、前記先行車被伝播可能判定部が伝播可能と判定し、かつ前記先行車と前記自車の間の車間距離が所定以内の場合に、前記第一前方車両の減速が前記自車まで伝播可能と判定する自車被伝播可能判定部と、を備えることを特徴とする運転支援装置。
(4)(3)に記載の運転支援装置において、前記道路情報は、前記自車と前記前方車両との間の平均速度の情報であり、前記減速伝播範囲は、前記平均速度から算出される減速伝播の予測範囲である、ことを特徴とする運転支援装置。
(5)(3)に記載の運転支援装置において、前記道路情報は、交通信号の位置と現示の情報であり、前記減速伝播範囲は、前記前方車両よりも前記自車側の範囲、かつ前記交通信号からの距離が所定以内の範囲、かつ前記交通信号の現示が赤色の範囲である、ことを特徴とする運転支援装置。
(6)(3)に記載の運転支援装置において、前記道路情報は、料金所の位置の情報であり、前記減速伝播範囲を、前記前方車両よりも前記自車側の範囲、かつ前記料金所からの距離が所定以内の範囲、かつ前記前方車両が料金所を通過するまでの範囲である、ことを特徴とする運転支援装置。
(7)(3)に記載の運転支援装置において、前記道路情報は、渋滞または混雑区間の情報であり、前記減速伝播範囲を、前記前方車両よりも前記自車側の範囲、かつ前記渋滞区間の範囲である、ことを特徴とする運転支援装置。
(8)(2)乃至(7)に記載の運転支援装置において、前記伝播可能判定部は、前記自車と前記前方車両の距離が所定値以上に拡大した場合に、前記第一前方車両の減速が前記自車まで伝播可能との判定を解除する、ことを特徴とする運転支援装置。
(9)(3)乃至(8)に記載の運転支援装置において、前記伝播可能判定部は、前記判定範囲内検出部は、前記第一前方車両減速検出部が減速を検出後に、前記先行車減速検出部の検出タイミングが前記道路情報に基づいて決定する判定範囲内になかった場合に、前記第一前方車両の減速が前記自車まで伝播可能との判定を解除する、ことを特徴とする運転支援装置。
(10)(2)乃至(9)に記載の運転支援装置において、前記前方車両速度制御部は、前記第一前方車両が減速したとの走行情報を前記通信部が受信した場合に、前記自車と前記第一前方車両の車間時間が前記第一前方車両の減速開始時と同じかもしくは広くなり、かつ前記自車の速度が前記第一前方車両の現在の速度以下となるように前記自車を減速させる、ことを特徴とする運転支援装置。
(11)(2)乃至(10)に記載の運転支援装置において、前記前方車両速度制御部は、前記伝播可能判定部により前記第一前方車両の減速と、前記第一前方車両よりも先に位置する第二前方車両の減速とが、前記自車まで伝播可能と判定した場合において、前記第一前方車両が減速したとの走行情報を前記通信部が受信していない場合においても、前記前方車両速度制御部は、前記第二前方車両が減速したとの走行情報を前記通信部が受信した場合に前記自車を減速させる、ことを特徴とする運転支援装置。
(12)(2)乃至(11)に記載の運転支援装置において、前記前方車両速度制御部は、前記第一前方車両が減速したとの走行情報を前記通信部が受信した場合に、前記第一前方車両が前記自車に対して先にいるほど、前記自車の減速開始タイミングを遅くする、ことを特徴とする運転支援装置。
(13)(2)乃至(12)に記載の運転支援装置において、前記前方車両速度制御部は、前記第一前方車両が減速したとの走行情報を前記通信部が受信した場合に、前記第一前方車両が前記自車に対して先にいるほど、前記自車の減速度を弱くする、ことを特徴とする運転支援装置。
(14)(2)乃至(13)に記載の運転支援装置において、前記前方車両走行情報検出部は公衆回線を経由して前記第一前方車両の走行情報を取得する通信装置である、ことを特徴とする運転支援装置。
上記(1)〜(14)によれば、前方車両の減速が自車まで伝播し得ると判定されたときにのみ自車の減速開始を早めることで、燃費や乗心地を向上できる。