JP6948003B2 - 難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物に関する。詳しくは、本発明は、耐熱性、柔軟性、難燃性、生産性に優れ、しかも耐油性に優れた難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物に関する。本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、耐熱性、柔軟性、難燃性、生産性及び耐油性に優れ、電線被覆材として好適である。
ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、電気絶縁性に優れ、且つ自消性の難燃特性を持つことから、古くより、電線被覆、チューブ、テープ、建材、自動車部品、家電部品などに広く使用されている。しかしながら、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は塩素を含んでいるため、燃焼時に腐食性ガスである塩化水素ガスを発生し、また、燃焼条件によってはダイオキシン類などの有毒ガスを発生する恐れがある。このため、最近の環境問題への対策の一環として、燃焼時におけるこれら有毒ガス発生の可能性が殆どない、ハロゲンを含有しない材料(以下、ハロゲンを含有しないことを「非ハロゲン」という場合がある。)が使用されるようになっている。
非ハロゲン系の材料としては、ポリプロピレンやポリエチレンに代表されるポリオレフィン系樹脂およびスチレン系樹脂が挙げられる。ところが、ポリオレフィン系樹脂等は難燃性ではないため、用途によっては難燃化する必要がある。その対策としては、ハロゲン系難燃剤を添加する手法が古くより行われてきた。しかしながら、ハロゲン系難燃剤も燃焼時に有毒ガスを発生する可能性があるため、最近では、非ハロゲン系難燃剤として、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムといった金属水酸化物を配合する手法が採られている。
しかしながら、これら水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等を含む難燃性樹脂組成物は、燃焼時のハロゲン系ガスの発生を防止し得るが、要求される難燃性能、例えばUL−94試験V−0レベルを得るためには大量の難燃剤を充填する必要があり、その影響で樹脂組成物の物理特性が劣る、成形加工特性が劣るなどの問題があった。
樹脂組成物に物理特性、成形加工特性、難燃性能を付与するためにハロゲン系難燃剤を少量用いたものが多く提案されている(例えば特許文献1〜8)。
特開2001−220470号公報 特開2001−226539号公報 特開2000−248132号公報 特開平5−303918号公報 特開2011−243446号公報 特開2009−43601号公報 特開2001−279052号公報 特開昭60−170612号公報
自動車部品の電線被覆用途において、エンジンルームなどの高温環境下への難燃性ポリオレフィン材料の適用の要望が高く、耐熱性改良の要望が強い。
本発明者らの知見によれば、例えば、特許文献2および7の樹脂組成物では、150℃以上の高温下での耐熱性は不十分であるなど、従来の技術では、難燃性、耐熱性、柔軟性、生産性に優れ、しかも耐油性に優れた難燃性樹脂組成物は提供されていないのが現状である。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐熱性、柔軟性、難燃性に優れ、しかも耐油性、特に高温下での耐油性および生産性に優れた難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、耐熱性、柔軟性、難燃性、生産性及び耐油性に優れ、電線被覆材として好適な難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定のプロピレン−エチレンブロック共重合体を含むオレフィン系ポリマーと、熱可塑性樹脂、パラフィン系ゴム用軟化剤、架橋剤及び難燃剤を動的架橋して得られるポリオレフィン系樹脂組成物が、耐熱性、柔軟性、難燃性に優れ、しかも高温下での耐油性および生産性にも優れたものとなることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものであり、以下を要旨とする。
[1] 下記成分(A)〜(E)を含む混合物を動的架橋してなる難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
成分(A):融解終了温度が166〜175℃であるプロピレン−エチレンブロック共重合体を含むオレフィン系ポリマー
成分(B):エチレン−α−オレフィン共重合体を含む熱可塑性樹脂
成分(C):パラフィン系ゴム用軟化剤
成分(D):架橋剤
成分(E):難燃剤
[2] 成分(A)中のプロピレン−エチレンブロック共重合体のMFR(230℃、21.2N荷重)が0.05〜2.0g/10分である、[1]に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
[3] 成分(A)がプロピレンランダム共重合体を含む、[1]又は[2]に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
[4] 成分(A)中のプロピレン−エチレンブロック共重合体のゴム中のエチレン含有量が72〜90質量%である、[1]ないし[3]のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
[5] 成分(B)がエチレン単位含有量が50〜75質量%のエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体を含む、[1]ないし[4]のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
[6] 成分(B)が下記成分(B3)を含む、[5]に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
成分(B3):ビニル芳香族化合物に由来する少なくとも2個の重合体ブロックPと、共役ジエン及び/又はイソブチレンに由来する少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、並びに該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体からなる群のうちの少なくとも1つのブロック共重合体
[7] 成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(B)の割合が40〜80質量部である、[1]ないし[6]のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
[8] 成分(D)が有機過酸化物および架橋助剤を含む、[1]ないし[7]のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
[9] 成分(E)が臭素系難燃剤および/またはアンチモン系難燃剤であって、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(E)の割合が30〜80質量部である、[1]ないし[3]のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
[10] [1]ないし[9]のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
[11] 電線被覆材である、[10]に記載の成形体。
本発明によれば、耐熱性、柔軟性、難燃性に優れ、しかも高温下での耐油性および生産性にも優れる難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物および該樹脂組成物を用いた電線被覆材が提供される。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
〔難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物〕
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、下記成分(A)〜(E)を含む混合物(以下、「本発明の混合物」と称す場合がある。)を動的架橋してなる。
成分(A):融解終了温度が166〜175℃であるプロピレン−エチレンブロック共重合体を含むオレフィン系ポリマー
成分(B):エチレン−α−オレフィン共重合体を含む熱可塑性樹脂
成分(C):パラフィン系ゴム用軟化剤
成分(D):架橋剤
成分(E):難燃剤
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、耐熱性、柔軟性、難燃性に優れ、しかも高温下での耐油性および生産性に優れるという効果を奏する。本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物が特定のプロピレン−エチレンブロック共重合体を含むオレフィン系ポリマーを原料とすることにより、耐熱性が良好となると推定される。また、特定の熱可塑性樹脂を用いた場合、その結果としてポリオレフィン樹脂組成物に含まれる芳香族の割合が増えるため、芳香族と非相溶の炭化水素系オイルへの耐油性能が向上する。
[成分(A)]
成分(A)は、融解終了温度が166〜175℃であるプロピレン−エチレンブロック共重合体を含むオレフィン系ポリマーである。
なお、成分(A)に含まれるプロピレン−エチレンブロック共重合体及び後述のプロピレンランダム共重合体の融解終了温度はJIS K7121に従い、以下の方法により測定することができる。即ち、示差走査熱量計(エスエスアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220)を用いて以下の工程(1)〜(3)を順に実施してプロピレンランダム共重合体およびプロピレン−エチレンブロック共重合体の融解挙動を測定する。各工程において横軸に時間、縦軸に融解熱量をプロットして融解曲線を取得し、工程(3)において観測されるピークの補外ピーク終了点(℃)を算出し、融点終了温度とした。
工程(1):試料5mgを室温から100℃/分の速度で40℃から200℃まで昇温し、昇温終了後、3分間保持する。
工程(2):200℃から10℃/分の速度で40℃まで降温し、降温終了後、3分間保持する。
工程(3):40℃から10℃/分の速度で200℃まで昇温する。
成分(A)に含まれるプロピレン−エチレンブロック共重合体の融解終了温度が166℃であることにより、耐熱性が付与される。この観点から、このプロピレン−エチレンブロック共重合体の融解終了温度は、166℃以上、好ましくは170℃以上であり、一方、上限は特に制限されないが、通常175℃以下である。
成分(A)に含まれるプロピレン−エチレンブロック共重合体において、ゴム中のエチレン含有量は、後述の実施例で説明される方法で測定し、好ましくは72〜90質量%であり、より好ましくは75〜85質量%であり、さらに好ましくは80〜85質量%である。ゴム中のエチレン含有量が上記範囲であると、140℃可溶分が多くなる傾向があるため耐熱性に優れるために好ましい。
成分(A)に含まれるプロピレン−エチレンブロック共重合体はまた、後述の方法で測定される140℃可溶分(この値は耐熱性の指標となる。)の値が50質量%以上であることが好ましい。ここで、140℃可溶分が50質量%以上のプロピレン−エチレンブロック共重合体であれば、高温で可溶な部分が少なく、耐熱性に優れる。この観点から、プロピレン−エチレンブロック共重合体の140℃可溶分は55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。一方、140℃可溶分の上限は、通常成形性の観点から95質量%以下である。
成分(A)に含まれるプロピレン−エチレンブロック共重合体は、上述の好適なゴム中エチレン含有量と140℃可溶分の少なくとも一方を満たすことが好ましく、双方を満たすことがより好ましい。
成分(A)に含まれるプロピレン−エチレンブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)は0.05〜2.6g/10分であることが好ましい。プロピレン−エチレンブロック共重合体のMFRが0.05g/10分以上であることにより、成形性が良好となり、また、2.6g/10分以下であることにより、溶融混練時の分散性が良好となる。これらの観点から、プロピレン−エチレンブロック共重合体のMFRは、より好ましくは0.10g/10分以上であり、さらに好ましくは0.50g/10分以上であり、一方、より好ましくは2.6g/10分以下であり、さらに好ましくは2.0g/10分以下である。
なお、成分(A)に含まれるプロピレン−エチレンブロック共重合体、及び後述のプロピレンランダム共重合体のメルトフローレート(230℃、21.2N)は、JIS K7210(1999)に従って、測定温度230℃、測定荷重21.2Nの条件で測定される。
成分(A)のオレフィン系ポリマーは、上記プロピレン−エチレンブロック共重合体に加えて更に、プロピレンランダム共重合体を含むことが好ましい。
プロピレンランダム共重合体は、プロピレン単位とプロピレン以外の構成単位を有する共重合体である。プロピレン以外の構成単位として、具体的には、エチレン単位やプロピレン単位以外のα−オレフィン単位が挙げられる。プロピレンランダム共重合体が含んでいてもよいプロピレン単位以外の構成単位としては、例えば、エチレン単位、1−ブテン単位、1−ペンテン単位、1−ヘキセン単位、1−へプテン単位、1−オクテン単位、1−ノネン単位、1−デセン単位、1−ウンデセン単位、1−ドデセン単位、1−トリデセン単位、1−テトラデセン単位、1−ペンタデセン単位、1−ヘキサデセン単位、1−ヘプタデセン単位、1−オクタデセン単位、1−ノナデセン単位、1−エイコセン単位、3−メチル−1−ブテン単位、3−メチル−1−ペンテン単位、4−メチル−1−ペンテン単位、2−エチル−1−ヘキセン単位、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン単位等が挙げられ、好ましくはエチレン単位、1−ブテン単位である。プロピレンランダム共重合体はこれらの1種のみを含むものであっても、2種以上を含むものであってもよい。
上記プロピレンランダム共重合体において、プロピレン単位の含有量は、好ましくは90〜99質量%であり、より好ましくは93〜98質量%でる。プロピレンランダム共重合体のプロピレン単位の含有量が上記範囲であると、成形性の観点から好ましい。
上記のプロピレンランダム共重合体のメルトフローレート(MFR)は0.05〜100g/10分であることが好ましい。プロピレンランダム共重合体のMFRが0.05g/10分以上であることにより溶融混練時の分散性がよくなり、また、100g/10分以下であることにより機械物性が良好となる。これらの観点から、プロピレンランダム共重合体のMFRは、より好ましくは0.05g/10分以上であり、さらに好ましくは0.5g/10分以上であり、一方、より好ましくは100g/10分以下であり、さらに好ましくは50g/10分以下である。
また、プロピレンランダム共重合体の融解終了温度は、105℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、125℃以上であることが更に好ましい。一方、プロピレンランダム共重合体の融解終了温度は、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましい。プロピレンランダム共重合体の融解終了温度が上記下限値以上であると耐熱性の観点で好ましく、上記上限値以下であると未溶融のブツが出にくく、成形性の観点で好ましい。
成分(A)に含まれるプロピレン−エチレンブロック共重合体及びプロピレンランダム共重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた重合法を挙げることができる。該重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレンランダム共重合体は市販品として入手することもできる。これらに該当する市販品としては、プライムポリマー社のPrim Polypro(登録商標)、住友化学社の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー社のポリプロピレンブロックコポリマー、日本ポリプロ社のノバテック(登録商標)PP、LyondellBasell社のMoplen(登録商標)、ExxonMobil社のExxonMobil PP、Formosa Plastics社のFormolene(登録商標)、Borealis社のBorealis PP、LG Chemical社のSEETEC PP、A.Schulman社のASI POLYPROPYLENE、INEOS Olefins&Polymers社のINEOS PP、Braskem社のBraskem PP、SAMSUNG TOTAL PETROCHEMICALS社のSumsung Total、Sabic社のSabic(登録商標)PP、TOTAL PETROCHEMICALS社のTOTAL PETROCHEMICALS Polypropylene、SK社のYUPLENE(登録商標)等があり、これらの中から適宜選択し、組み合わせて用いることができる。
本発明において、成分(A)中のプロピレン−エチレンブロック共重合体の含有量は40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。一方、プロピレン−エチレンブロック共重合体の含有量は90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることが好ましい。成分(A)中のプロピレン−エチレンブロック共重合体の含有量が上記下限以上であると耐熱性に優り、上記上限以下であると未溶融のブツが出にくく、成形性の観点で好ましい。
本発明において、成分(A)がプロピレンランダム共重合体を含む場合、その含有量は10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。一方、プロピレンランダム共重合体の含有量は60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることが好ましい。成分(A)中のプロピレンランダム共重合体の含有量が上記下限以上であると成形性の観点でよく、上記上限以下である耐熱性に優れる。
また、この場合において、成分(A)中のプロピレン−エチレンブロック共重合体とプロピレンランダム共重合体との質量比([プロピレン−エチレンブロック共重合体の質量]:[プロピレンランダム共重合体の質量])が90:10〜40:60であることが成形性および耐熱性の両立の観点から好ましく、この観点から、80:20〜50:50であることがより好ましい。
なお、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレンランダム共重合体はそれぞれ1種のみを用いてもよく、組成や物性の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、成分(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、プロピレン−エチレンブロック共重合体及びプロピレンランダム共重合体以外のオレフィン系ポリマーを含んでいてもよく、成分(A)が含み得る他のオレフィン系ポリマーとしてはプロピレンホモ重合体の1種又は2種以上が挙げられる。
[成分(B)]
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物に用いる成分(B)は、エチレン−α−オレフィン共重合体(ただし、成分(A)に該当するものを除く。)を含む熱可塑性樹脂であり、成分(B)は更に以下の成分(B3)を含んでいてもよい。
成分(B3):ビニル芳香族化合物に由来する少なくとも2個の重合体ブロックPと、共役ジエン及び/又はイソブチレンに由来する少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、並びに該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体からなる群のうちの少なくとも1つのブロック共重合体
成分(B)は本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物に柔軟性を付与する成分である。
成分(B)に含まれるエチレン−α−オレフィン共重合体は、少なくともエチレン単位とα−オレフィン単位とを含む共重合体であれば特に制限されないが、具体的には下記成分(B1)、成分(B2)が挙げられる。成分(B1)、成分(B2)はいずれかを単独で使用しても、これらを併用してもよいが、好ましいのは成分(B)として、少なくとも成分(B1)を含むものである。
成分(B1):エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体
成分(B2):エチレン−α−オレフィン共重合体
成分(B1)が含有するα−オレフィン単位としては、1−プロピレン単位、1−ブテン単位、2−メチルプロピレン単位、1−ペンテン単位、3−メチル−1−ブテン単位、1−ヘキセン単位、4−メチル−1−ペンテン単位、1−オクテン単位等を例示することができる。成分(B1)に用いられるα−オレフィン単位は好ましくは、1−プロピレン単位、1−ブテン単位、1−ヘキセン単位、1−オクテン単位等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数3〜8のα−オレフィン単位である。成分(B1)におけるα−オレフィンは1種のみがエチレンと共重合したものであっても、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。
成分(B1)が含有する非共役ジエンに基づく単量体単位(非共役ジエン単位)としては、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンのような鎖状非共役ジエン;シクロへキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネンのような環状非共役ジエン等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンである。
成分(B1)のエチレン単位の含有量は、成分(B1)を構成する単量体単位の合計量に対し、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、更に好ましくは60質量%以上であり、一方、好ましくは75質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。エチレン単位の含有量が上記範囲であると適度な柔軟性を与えるため好ましい。
成分(B1)において、α−オレフィン単位の含有量は成分(B1)を構成する単量体単位の合計量に対し、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、一方、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下である。α−オレフィン単位の含有量が上記範囲であると適度な柔軟性を与えるために好ましい。
成分(B1)において、非共役ジエン単位の含有量は、成分(B1)を構成する単量体単位の合計量に対し、好ましくは1質量%以上であり、好ましくは2質量%以上であり、一方、好ましくは10質量%以下であり、好ましくは7質量%以下である。非共役ジエン単位の含有量が上記下限値以上であると難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物の架橋度を高める観点から好ましく、また、上記上限値以下であると成形性の観点から好ましい。
なお、成分(B1)の各構成単位の含有量は赤外分光法により求めることができる。
成分(B1)のムーニー粘度(ML1+4、125℃)は通常、30〜120であり、好ましくは40〜100である。成分(B1)のムーニー粘度(ML1+4、125℃)が上記範囲であると成形性の観点で好ましい。
成分(B1)は、密度が、0.850g/cm以上であることが好ましく、0.860g/cm以上であることがより好ましく、一方、0.900g/cm以下であることが好ましく、0.890g/cm以下であることがより好ましい。成分(B1)の密度が上記下限値以上であると加工性の観点で好ましく、一方、上記上限値以下であると柔軟性の観点で好ましい。
成分(B1)の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体等の錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等が挙げられる。
成分(B1)は市販品を用いることもできる。例えば、JSR社製JSR EPR、EP57C、三井化学社製三井EPT、住友化学社製エスプレン(登録商標)、LANXESS社製Keltan(登録商標)、Dow社製Nordel(登録商標)、ExxonMobil社製Vistalon(登録商標)等から該当品を選択して使用することができる。
成分(B2)が含有することのできるα−オレフィン単位としては、1−プロピレン単位、1−ブテン単位、2−メチルプロピレン単位、1−ペンテン単位、3−メチル−1−ブテン単位、1−ヘキセン単位、4−メチル−1−ペンテン単位、1−オクテン単位等を例示することができる。成分(B2)に用いられるα−オレフィン単位は好ましくは、1−プロピレン単位、1−ブテン単位、1−ヘキセン単位、1−オクテン単位等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数3〜8のα−オレフィン単位である。成分(B2)におけるα−オレフィンは1種のみがエチレンと共重合したものであっても、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。
成分(B2)のエチレン単位の含有量は、エチレン単位の含有量とα−オレフィン単位の含有量との合計量に対し、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、一方、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。成分(B2)のエチレン単位の含有量は、上記範囲において、成分(B2)のブロッキングによる融着防止のためには多い方が好ましく、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を成形したときの低温耐衝撃性の観点では少ない方が好ましい。なお、成分(B2)における各構成単位の含有量は赤外分光法により求めることができる。
成分(B2)として具体的には、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体等を例示することができる。これらの中でも、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体が好ましい。
成分(B2)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は通常、20〜120であり、好ましくは30〜100である。成分(B2)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)が上記範囲であると成形性の観点で好ましい。
成分(B2)は、密度が、0.850g/cm以上であることが好ましく、0.860g/cm以上であることがより好ましく、一方、0.900g/cm以下であることが好ましく、0.890g/cm以下であることがより好ましい。成分(B2)の密度が上記下限値以上であると加工性の観点で好ましく、一方、上記上限値以下であると柔軟性の観点で好ましい。
成分(B2)の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、オレフィン重合用触媒として、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体等の錯体系触媒を用いることができ、重合方法としてはスラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等があげられる。また、成分(B2)は市販品を用いることも可能であり、市販品としては例えばダウ・ケミカル社製Engage(登録商標)シリーズ、三井化学社製タフマー(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
成分(B)において、エチレン−α−オレフィン共重合体として成分(B1)と成分(B2)とを併用する場合、これらの重量比([成分(B1)の重量]:[成分(B2)の重量])が1:9〜9:1であることが押出成形した際のブツを低減する観点から好ましく、この観点から、3:7〜7:3であることがより好ましい。
ただし、本発明においては、成形性の観点から、エチレン−α−オレフィン共重合体としては成分(B1)を用いることが好ましい。
なお、成分(B1)、成分(B2)は、それぞれ1種のみを用いてもよく、組成や物性の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いる成分(B3)は、ビニル芳香族化合物に由来する少なくとも2個の重合体ブロックPと、共役ジエン及び/又はイソブチレンに由来する少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、並びに該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体からなる群のうちの少なくとも1つのブロック共重合体である。本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、成分(B3)を配合することにより、高温での耐油性および成形性向上の効果を得ることができる。
成分(B3)において、ブロックPを構成する単量体のビニル芳香族化合物は特に限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体が好ましい。中でも、スチレンを主体とすることが好ましい。ここで、成分(B3)における「主体とする」とは、50質量%以上であることを意味する。なお、ブロックPには、ビニル芳香族化合物以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
上記ビニル芳香族化合物以外の単量体としては、エチレン、α−オレフィン等が挙げられる。また、ブロックPが、上記ビニル芳香族化合物以外の単量体を原料として含む場合、その含有量は、50質量%未満、好ましくは40質量%以下である。上記ビニル芳香族化合物以外の単量体の含有量がこの範囲であることにより高温での耐油性および成形性向上の効果を得ることができる。
ブロックQを構成する単量体の共役ジエンは特に限定されないが、ブタジエン及び/又はイソプレンを主体とすることが好ましく、より好ましくはブタジエン及びイソプレンである。なお、ブロックQには、共役ジエン以外の単量体が原料として含まれていてもよい。
上記共役ジエン以外の単量体としては、イソブチレン、スチレン等が挙げられる。また、ブロックQが、上記共役ジエン以外の単量体を原料として含む場合、その含有量は、50質量%未満、好ましくは40質量%以下である。上記共役ジエン以外の単量体の含有量がこの範囲であることによりブリードアウトが抑制される傾向がある。
成分(B3)のブロック共重合体は、少なくとも2個の上記重合体ブロックPと少なくとも1個の上記重合体ブロックQとを有するブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体であってもよい。より具体的には、ブロック共重合体のブロックQが有する二重結合を水素添加した水添ブロック共重合体であってもよい。ブロックQの水素添加率は特に限定されないが、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%である。ブロックQを前記範囲で水素添加することにより、得られる変性ポリオレフィン組成物の粘着的性質が低下し、弾性的性質が増加する傾向がある。なお、ブロックPが、原料としてジエン成分を用いた場合についても同様である。また、水素添加率は、13C−NMRにより測定することができる。
なお、ブロックQを構成する単量体の共役ジエンがブタジエンの場合、ミクロ構造中のブタジエンは、1,4−付加構造と1,2−付加構造を取りうるが、特に、ブロックQが水素添加誘導体であり、ブタジエンを主体として構成される場合には、ブロックQのミクロ構造中のブタジエンの1,4−付加構造が10〜100質量%であることが好ましい。
ブロックQを構成する単量体の共役ジエンがイソプレンの場合、ミクロ構造中のイソプレンは、1,2−付加構造、1,4−付加構造及び3,4−付加構造を取りうるが、上記と同様に、特に、ブロックQが水素添加誘導体であり、ブロックQがイソプレンから構成される場合には、ブロックQのミクロ構造中のイソプレンの1,4−付加構造が60〜100質量%であることが好ましい。
また、ブロックQが水素添加誘導体であり、ブロックQを構成する単量体の共役ジエンがブタジエンとイソプレンを含む場合には、ブロックQのミクロ構造中のブタジエン及びイソプレンの1,4−付加構造が、それぞれ、20〜100質量%及び60〜100質量%であることが好ましい。
何れの場合も、1,4−付加構造の比率を前記の範囲とすることにより、得られる変性ポリオレフィン組成物の粘着的性質が低下し、弾性的性質が増加する傾向がある。なお、1,4−付加構造の比率(以下、「1,4−ミクロ構造比」ということがある。)は、13C−NMRにより測定することができる。
本発明における成分(B3)は、重合体ブロックPを少なくとも2個と、重合体ブロックQを少なくとも1個有する構造であれば特に限定されず、直鎖状、分岐状、放射状等の何れであってもよいが、下記式(2)又は(3)で表されるブロック共重合体である場合が好ましい。さらに、下記式(2)又は(3)で表されるブロック共重合体は、水素添加して得られる水添ブロック共重合体であることがより好ましい。下記式(2)又は(3)で表される共重合体が水添ブロック共重合体であると、熱安定性が良好になる。
P−(Q−P)m (2)
(P−Q)n (3)
(式中、Pは重合体ブロックPを、Qは重合体ブロックQをそれぞれ示し、mは1〜5の整数を示し、nは2〜5の整数を示す。)
式(2)又は(3)において、m及びnは、ゴム的高分子体としての秩序−無秩序転移温度を下げる点では大きい方がよいが、製造のしやすさ及びコストの点では小さい方がよい。
成分(B3)が式(2)又は(3)で表される水添ブロック共重合体であり、ブロックQがブタジエンから構成される場合、ブロックQのミクロ構造中のブタジエンの1,4−付加構造が20〜100質量%であることが好ましい。同様に、ブロックQがイソプレンから構成される場合、ブロックQのミクロ構造中のイソプレンの1,4−付加構造が60〜100質量%であることが好ましい。同様に、ブロックQがブタジエン及びイソプレンから構成される場合、ブロックQのミクロ構造中のブタジエン及びイソプレンの1,4−付加構造は、それぞれ20〜100質量%及び60〜100質量%であることが好ましい。いずれの場合も、1,4−ミクロ構造比を前記の範囲とすることにより、得られる変性ポリオレフィン組成物の粘着的性質が低下し、弾性的性質が増加する傾向がある。
ブロック共重合体及び/又は水添ブロック共重合体(以下、「(水添)ブロック共重合体」ということがある。)としては、ゴム弾性に優れることから、式(3)で表される(水添)ブロック共重合体よりも式(2)で表される(水添)ブロック共重合体の方が好ましく、mが3以下である式(2)で表される(水添)ブロック共重合体がより好ましく、mが2以下である式(2)で表される(水添)ブロック共重合体が更に好ましく、mが1である式(2)で表される(水添)ブロック共重合体が最も好ましい。
成分(B3)を構成するブロックPとブロックQとの質量割合は任意であるが、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物の機械的強度及び熱融着強度の点からはブロックPが多い方が好ましく、一方、柔軟性、異形押出成形性、ブリードアウト抑制の点からはブロックPが少ない方が好ましい。
成分(B3)中のブロックPの質量割合は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。
本発明における成分(B3)の製造方法は、上述の構造と物性が得られればどのような方法でもよく、特に限定されない。具体的には、例えば、特公昭40−23798号公報に記載された方法によりリチウム触媒等を用いて不活性溶媒中でブロック重合を行うことによって得ることができる。また、ブロック共重合体の水素添加(水添)は、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特開昭59−133203号公報及び特開昭60―79005号公報等に記載された方法により、不活性溶媒中で水添触媒の存在下で行うことができる。この水添処理では、重合体ブロック中のオレフィン性二重結合の50%以上が水添されていることが好ましく、80%以上が水添されていることがより好ましく、且つ、重合体ブロック中の芳香族不飽和結合の25%以下が水添されていることが好ましい。
成分(B3)は市販品として入手することができる。市販品の例としては、水添型のブロック共重合体としては、TSRC社製「TAIPOLシリーズ」」、クレイトンポリマー社製「KRATON(登録商標)−Gシリーズ」、クラレ社製「セプトン(登録商標)シリーズ」、「ハイブラー(登録商標)シリーズ」、旭化成社製「タフテック(登録商標)シリーズ」「アサプレン(登録商標)シリーズ」等が挙げられる。また、非水添型のブロック共重合体の市販品としては、クレイトンポリマー社製「KRATON(登録商標)−Aシリーズ」、クラレ社製「ハイブラー(登録商標)シリーズ」、旭化成社製「タフプレン(登録商標)シリーズ」等が挙げられる。
成分(B3)は、1種のみを用いてもよく、ブロック組成や物性等の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
成分(B)が成分(B3)を含む場合、成分(B)100質量部中の成分(B3)の含有量は、10〜30質量部、特に15〜25質量部であることが好ましい。成分(B3)の割合が上記下限以上であると成形性の観点で好ましく、上記上限以下であると耐熱性の観点で好ましい。
[成分(A)と成分(B)の含有比]
本発明の混合物は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して成分(B)を40〜80質量部、特に30〜70質量部、とりわけ20〜60質量部含むことが好ましい。即ち、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物の成形性の観点から、成分(B)は上記下限以上であることが好ましく成形性の観点から上記上限以下であることが好ましい。
[成分(C)]
本発明の混合物は、成形性を向上させる観点から下記成分(C)を含有する。
成分(C):パラフィン系ゴム用軟化剤
市販の炭化水素系ゴム用軟化剤としては、鉱物油系軟化剤、合成樹脂系軟化剤等が挙げられるが、他の成分との親和性の観点から鉱物油系軟化剤が好ましい。鉱物油系軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子の50%以上がパラフィン系炭化水素であるものがパラフィン系オイル、全炭素原子の30〜45%がナフテン系炭化水素であるものがナフテン系オイル、全炭素原子の35%以上が芳香族系炭化水素であるものが芳香族系オイルと各々呼ばれている。これらの中で、本発明においては、パラフィン系オイルであるパラフィン系ゴム用軟化剤を用いる。なお、パラフィン系ゴム用軟化剤は1種のみで用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
成分(C)のパラフィン系ゴム用軟化剤の40℃における動粘度は特に限定されないが、好ましくは20cSt以上、より好ましくは50cSt以上であり、また、好ましくは800cSt以下、より好ましくは600cSt以下である。また、炭化水素系ゴム用軟化剤の引火点(COC法)は、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上である。
成分(C)のパラフィン系ゴム用軟化剤は市販品として入手することができる。該当する市販品としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー社製日石ポリブテン(登録商標)HVシリーズ、出光興産社製ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPWシリーズ等が挙げられ、これらの中から該当品を適宜選択して使用することができる。
本発明の混合物中の成分(C)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対し、柔軟性の観点から、好ましくは3質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上であり、更に好ましくは10質量部以上である。また、成分(C)の含有量は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対し、低温耐衝撃性の観点から、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下であり、更に好ましくは30質量部以下である。
[成分(D)]
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は架橋剤の存在下で動的架橋して得られるものである。この動的架橋処理により、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、耐熱性および成形性が良好なものとなる。
この動的架橋処理のために用いる成分(D)の架橋剤は、有機過酸化物および架橋助剤からなり、これらの有機過酸化物および架橋助剤は1種のみで用いることも2種以上を組み合わせて用いることもできる。
架橋剤として用いることのできる有機過酸化物としては、芳香族系有機過酸化物及び脂肪族系有機過酸化物のいずれも使用することが可能である。具体的には、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類;t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類;アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類等が挙げられる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。これらの有機過酸化物は1種類のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋助剤としては、例えば、硫黄、p−キノンジオキシム、p−ジニトロソベンゼン、1,3−ジフェニルグアニジン等の過酸化物用助剤;塩化第一錫・無水物、塩化第一錫・二水和物、塩化第二鉄等のフェノール樹脂用架橋助剤;ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち、特に、ジビニルベンゼンを含むことが、動的架橋の反応の進行性が良好という観点から好ましい。
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物において、成分(D)の有機過酸化物の使用量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対し、架橋反応を十分に進行させる観点から、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上であり、さらに好ましくは0.3質量部以上である。一方、有機過酸化物の使用量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対し、架橋反応を制御する観点から、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは8質量部以下であり、さらに好ましくは6質量部以下であり、特に好ましくは4質量部以下である。
また、成分(D)の架橋助剤としてジビニルベンゼンを用いる場合、その使用量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して0.1〜2質量部、特に0.2〜1質量部であることが、成形性の観点から好ましい。
[成分(E)]
本発明では、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物としての難燃性を得るために成分(E)として難燃剤を用いる。
成分(E)の難燃剤としては特に制限はないが、臭素系難燃剤及び/又はアンチモン系難燃剤が好適である。
臭素系難燃剤としては、芳香族臭素化合物、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリカーボネート、臭素化芳香族ビニル系共重合体、臭素化シアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル等が挙げられ、具体的にはエチレンビス(ペンタブロモベンゼン)、デカブロモジフェニルオキサイド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのオリゴマー、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系ポリカーボネート、ポリジブロモスチレン等のブロム化ポリスチレン、ブロム化架橋ポリスチレン、ポリジブロムフェニレンオキサイド等のブロム化ポリフェニレンオキサイド、デカブロムジフェニルオキサイドビスフェノール縮合物およびハロゲン化リン酸エステル等が挙げられる。臭素系難燃剤中の臭素含有量は60質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上である。臭素含有量が80質量%以上である臭素系難燃剤としてはエチレンビス(ペンタブロモベンゼン)が好ましい。
アンチモン系難燃剤としては三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、無水アンチモン酸ナトリウム等が挙げられるが、中でも三酸化アンチモンが好ましい。
アンチモン系難燃剤、アンチモン系難燃剤はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。臭素系難燃剤の1種又は2種と、アンチモン系難燃剤の1種又は2種以上とを併用してもよい。
成分(E)の難燃剤は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して30〜80質量部用いることが好ましく、40〜70質量部用いることがより好ましい。難燃剤が上記下限よりも少ないと十分な難燃性を得ることができず、上記上限よりも多いと成形性が悪化する傾向である。
[その他の成分]
本発明の混合物には、成分(A)〜(E)以外に本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の成分を配合することができる。
その他の成分としては、例えば、成分(A),(B)以外の熱可塑性樹脂やエラストマー等の樹脂、酸化防止剤、充填材、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤等の各種添加物等を挙げることができる。これらは任意のものを単独又は併用して用いることができる。
成分(A),(B)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリオレフィン樹脂(だだし、成分(A)又は成分(B)に該当するものを除く。)等を挙げることができる。また、成分(A),(B)以外のエラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ポリブタジエン等を挙げることができる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤を用いる場合、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、通常0.01〜3.0質量部の範囲で用いられる。
充填材としては、例えば、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、金属石鹸、二酸化チタン、カーボンブラック等を挙げることができる。充填剤を用いる場合、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して、通常0.1〜50質量部で用いられる。
[難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法]
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、成分(A)〜成分(E)及び必要に応じて用いられるその他の成分等を所定量含有する本発明の混合物を動的架橋して得られるものである。
本発明において「動的架橋」とは成分(D)である架橋剤の存在下で溶融状態又は半溶融状態で混練することを意味する。この動的架橋は、溶融混練によって行うのが好ましく、そのための混合混練装置としては、例えば非開放型バンバリーミキサー、ミキシングロール、ニーダー、二軸押出機等が用いられる。これらの中でも二軸押出機を用いることが好ましい。この二軸押出機を用いた製造方法の好ましい態様としては、複数の原料供給口を有する二軸押出機の原料供給口(ホッパー)に各成分を供給して動的架橋を行うものである。
動的架橋を行う際の温度は、通常80〜300℃、好ましくは100〜250℃である。また、動的熱処理を行う時間は通常0.1〜30分である。
[成形体・用途]
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、通常、ポリオレフィン系樹脂組成物に用いられる成形方法、例えば、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形等の各種成形方法により、成形体とすることができ、これらの中でも射出成形、押出成形が好適である。また、これらの成形を行った後に積層成形、熱成形等の二次加工を行った成形体とすることもできる。特に、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は押出成形性に優れ、成形した際の目ヤニの発生やブツが低減されたものであるため、押出成形、特に異形押出成形に好適である。
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、電線;電線保護管;チューブ;雑貨等の広汎な分野で用いることができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は以上に挙げたものの中でも特に電線被覆材として好適である。
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[原料]
以下の実施例・比較例で使用した原材料は以下の通りである。
[成分(A)]
A1:
プロピレンランダム共重合体;比重:0.90g/cm、MFR(230℃、21.2N荷重):0.8g/10分、融解終了温度:150℃、ゴム中のエチレン含有量:0質量%、日本ポリプロ株式会社製ノバテックPP(登録商標)EG8B
A2:
プロピレン−エチレンブロック共重合体−1;比重:0.90g/cm、MFR(230℃、21.2N荷重):1.5g/10分、融解終了温度:170℃、ゴム中のエチレン含有量:80質量%、140℃可溶分:70質量%、100℃可溶分:30質量%、日本ポリプロ株式会社製ノバテックPP(登録商標)EC7
A3:
プロピレン−エチレンブロック共重合体−2;比重:0.90g/cm、MFR(230℃、21.2N荷重):0.5g/10分、融解終了温度:170℃、ゴム中のエチレン含有量:83質量%、140℃可溶分:77質量%、100℃可溶分:23質量%、日本ポリプロ株式会社製ノバテックPP(登録商標)EC9
A4:
プロピレン−エチレンブロック共重合体−3;比重:0.90g/cm、MFR(230℃、21.2N荷重):2.7g/10分、融解終了温度:165℃、ゴム中のエチレン含有量:91質量%、140℃可溶分:73質量%、100℃可溶分:27質量%、日本ポリプロ株式会社製ノバテックPP(登録商標)BC6
<成分(B)>
B1:
エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体(EPDM−1);ムーニー粘度(ML1+4、125℃):61、エチレン単位含有量:66質量%、エチリデンノルボルネン単位含有量:5.0質量%)、三井化学株式会社製 EP3092PM
エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体
B2:
エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体(EPDM−2);ムーニー粘度(ML1+4、125℃):64、エチレン単位含有量:67質量%、エチリデンノルボルネン単位含有量:4.5質量%)、JSR株式会社製 EP505EC
B3:
スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水添物
(SEBS);比重:0.91g/cm、スチレン単位含有量:33質量%、TSRC社製 TAIPOL SEBS−6151
<成分(C)>
C1:
パラフィン系ゴム用軟化剤;40℃の動粘度:95.5cSt、流動点:−15℃、引火点:272℃)、出光興産株式会社製 ダイアナ プロセスオイルPW90
<架橋剤>
D1:
架橋助剤;ジビニルベンゼン60質量%とエチルビニルベンゼン40質量%の混合物、和光純薬工業社製 ジビニルベンゼン
D2:
有機過酸化物;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物、化薬アクゾ株式会社製 カヤヘキサAD40C
<難燃剤>
E1:
臭素系難燃剤;エチレンビス(ペンタブロモベンゼン)(臭素含有率82質量%)、アルベマール社製 SAYTEX8010
E2:
アンチモン系難燃剤;三酸化アンチモン、日本精鉱社製 PATOX−KN
[評価方法]
以下の実施例・比較例における難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物の評価方法は以下の通りである。
<PP特性>
<融解終了温度>
融解終了温度はJIS K7121に従い、以下の方法により測定した。即ち、示差走査熱量計(エスエスアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220)を用いて以下の工程(1)〜(3)を順に実施してポリプロピレン系樹脂(ここで、ポリプロピレン樹脂とは、表中のA1〜A4成分をさす。)の融解挙動を測定する。各工程において横軸に時間、縦軸に融解熱量をプロットして融解曲線を取得し、工程(3)において観測されるピークの補外ピーク終了点(℃)を算出し、融点終了点とした。
工程(1):試料5mgを室温から100℃/分の速度で40℃から200℃まで昇温し、昇温終了後、3分間保持する。
工程(2):200℃から10℃/分の速度で40℃まで降温し、降温終了後、3分間保持する。
工程(3):40℃から10℃/分の速度で200℃まで昇温する。
<ゴム中のエチレン含有量>
ゴム中のエチレン含有量の測定は以下のようにして行った。測定装置としてクロス分別装置(ダイヤインストルメント製 CFC
T101)を使用した。このクロス分別装置は、試料を溶解温度の差を利用して分別する温度上昇溶離分別(TREF)機構と、分別された区分を更に分子サイズで分別するサイズ排除クロマトグラフ(Size Exclusion Chromatography:SEC)をオンラインで接続した。
まず測定すべきサンプルを溶媒(o−ジクロロベンゼン)を用い3mg/mlとなるように、140℃で溶解し、これを測定装置内のサンプルループ内に注入する。以下の測定は設定条件に従って自動的に行われる。サンプルループ内に保持された試料溶液は、溶解温度の差を利用して分別するTREFカラム(不活性担体であるガラスビーズが充填された内径4mm、長さ150mmの装置付属のステンレス製カラム)に0.4ml注入する。次に該サンプルを1℃/分の速度で140℃から0℃の温度まで冷却し、上記不活性担体にコーティングさせる。この時、高結晶成分(結晶しやすいもの)から低結晶成分(結晶しにくいもの)の順で不活性担体表面にポリマー層が形成される。TREFカラムが0℃で更に30分間保持された後、0℃の温度で溶解している成分2mlが、1ml/分の流速でTREFカラムからSECカラム(昭和電工製 AD806MS 3本)へ注入される。SECで分子サイズの分別が行われている間に、TREFカラムでは次の溶出温度(5℃)に昇温され、その温度に約30分間保持される。SECでの各溶出区分の測定は39分間隔で行われた。溶出温度は下の温度で段階的に昇温される。
0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140℃
該SECカラムで分子サイズによって分別された溶液は、装置付属の赤外線分光光度計でポリマーの濃度に比例する吸光度が測定され(波長3.42μ,メチレンの伸縮振動で検出)、各溶出温度区分のクロマトグラムが得られる。内蔵のデータ処理ソフトを用い、上記測定で得られた各溶出温度区分のクロマトグラムのベースラインを引き、演算処理される。各クロマトグラムの面積が積分され、積分溶出曲線が計算される。また、この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が計算される。ここまでで溶出した部分を全ゴム含有量とした。溶出部分を濃縮し、IR測定を行い、エチレンとプロピレンの割合を算出した。
<140℃可溶分>
前述で得られたTREFの積分溶出曲線から100〜140℃の領域で溶出した割合を140℃可溶分として算出した。
<100℃可溶分>
前述で得られたTREFの積分溶出曲線から0〜100℃の領域で溶出した割合を100℃可溶分として算出した。
<耐油試験>
押出テープ(厚さ1mm)から打ち抜き作成した3号ダンベル片を60℃に調整したオイル(サンオイル社製、IRM902)に168時間浸漬した。その後、付着した油分を拭き取り、23℃、50%RHの環境下に24時間保持した後、JIS
C−3005に準拠して引張強度及び引張伸度の測定を行った。引張速度は200mm/分とした。
オイルに浸漬しない引張試験の値を基準(100%)とし、引張強度、引張伸度の各々についてその保持率を算出し、それぞれ引張強度残率、引張伸度残率とした。引張強度残率、引張伸度残率の何れも、値が高い方が好ましい。
<加熱変形率>
2mm厚みのプレスシートを用い、JIS K6723に準拠して加熱変形率を測定した。
試験条件は設定温度;150℃、加重;2Kgf、加重時間;1時間として、試験実施前のプレスシート厚みと試験実施後の厚みの変化率を測定した。厚みの変化率は小さい方が好ましい。
<A硬度>
2mm厚みのプレスシートを3枚に重ねて、JIS K6253(JIS−A)に準拠してA硬度を測定した。
<難燃性試験>
3mm厚みのプレスシートから得られた試験片(長さ:127mm、幅:12.7mm、厚さ:3mm)を垂直に保ち、下端にバーナの火を10秒間接炎させた後に炎を取り除き、試験片に着火した火が消える時間を測定した。次いで火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間行ない、1回目と同様にして着火した火が消える時間を測定した。更に、落下する火種によって試験片の下に設置した綿が着火するか否かについても評価した。
1回目と2回目の燃焼時間、綿着火の有無の結果から、UL−94V規格に従って燃焼性を評価した。燃焼性能はV−0>V−1>V−2の順に良好である。
<押出テープ外観>
押出テープの外観を観察し、表面が平滑であり、ブツの数の多少とブツの大きさに基づいて以下の3段階で評価した。
◎:優れる
〇:良
×:不良
[実施例1〜3、比較例1、2]
表−1に示す各成分を表−1に示す割合で内容量1.0Lの加圧ニーダーへ挿入し、加圧ニーダーのジャケット設定温度80〜170℃で混練し、せん断による自己発熱で樹脂温度が190℃になった時点で混練を終了した。この動的架橋処理時間は20分である。得られた混練物をさらに表面温度140℃のオープンロールによりシート化した後、ペレタイザーでペレット化して樹脂組成物を作製した。
得られたペレットを用いて表面温度140℃のオープンロールで厚み2〜3mmのシートを成形した後、プレス成形(温度190℃、圧力10MPa)で2mm又は3mm厚みのシートを成形することでプレスシートを得た。プレスシートについて、前述の方法にて、加熱変形率、A硬度、難燃性試験を行った結果を表−1に示す。
また、得られたペレットを20mm単軸押出機を用いて200℃で押出成形し、幅50mm×厚さ1mmの押出テープを得た。押出テープについて、前述の方法にて押出テープ外観、引張試験、耐油試験を行った結果を表−1に示す。
なお、表−1中のPP特性は以下の値を示す。
Figure 0006948003
[評価結果]
表−1に示す通り、実施例1〜3の加熱変形率は8〜19%であり、比較例1〜2の加熱変形率は20〜100%であり、実施例1〜3は比較例1〜2と比較して低い加熱変形率を示した。「加熱変形率」評価において実施例1〜3は耐熱性に優れていることがわかる。さらに、実施例2におけるプロピレン−エチレンブロック共重合体の一部をプロピレンランダム共重合体に置き換えた実施例3は実施例2よりも「耐油試験」において高い引張強度残率および引張伸度残率を示した。このことから高温の耐油性に優れていることがわかる。また、「押出テープ外観」の評価の結果、実施例3は実施例1〜2および比較例1〜2と比較して、表面が最も平滑で、ブツの数が少なく、散見されるブツの大きさも小さかった。よって、実施例3より得られる成形品は外観良好になる可能性が高く、生産性に優れていると考えられる。
また、比較例1において、実施例1〜3と比較してプロピレン−エチレンブロック共重合体またはプロピレンランダム共重合体の融解終了温度は低い。またゴム中のエチレン含有量は低く、100℃可溶分は多い。よって、耐熱性の指標である「加熱変形率」の評価が劣っていることがわかる。
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、電線;電線保護管;チューブ;雑貨等の広汎な分野で用いることができる。本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は以上に挙げたものの中でも特に電線被覆材として好適である。

Claims (11)

  1. 下記成分(A)〜(E)を含む混合物を動的架橋してなる難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
    成分(A):融解終了温度が166〜175℃であるプロピレン−エチレンブロック共重合体を含むオレフィン系ポリマー
    成分(B):エチレン−α−オレフィン共重合体を含む熱可塑性樹脂
    成分(C):パラフィン系ゴム用軟化剤
    成分(D):架橋剤
    成分(E):難燃剤
  2. 成分(A)中のプロピレン−エチレンブロック共重合体のMFR(230℃、21.2N荷重)が0.05〜2.0g/10分である、請求項1に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
  3. 成分(A)がプロピレンランダム共重合体を含む、請求項1又は2に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
  4. 成分(A)中のプロピレン−エチレンブロック共重合体のゴム中のエチレン含有量が72〜90質量%である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
  5. 成分(B)がエチレン単位含有量が50〜75質量%のエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体を含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
  6. 成分(B)が下記成分(B3)を含む、請求項5に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
    成分(B3):ビニル芳香族化合物に由来する少なくとも2個の重合体ブロックPと、共役ジエン及び/又はイソブチレンに由来する少なくとも1個の重合体ブロックQとを有するブロック共重合体、並びに該ブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体からなる群のうちの少なくとも1つのブロック共重合体
  7. 成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(B)の割合が40〜80質量部である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
  8. 成分(D)が有機過酸化物および架橋助剤を含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
  9. 成分(E)が臭素系難燃剤および/またはアンチモン系難燃剤であって、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対する成分(E)の割合が30〜80質量部である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
  11. 電線被覆材である、請求項10に記載の成形体。
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