JP6946149B2 - 電子写真用ローラ、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置 - Google Patents

電子写真用ローラ、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真用ローラ、プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置に関する。
電子写真方式を採用した電子写真画像形成装置(以下、「電子写真装置」と称する場合がある)は、主に、電子写真感光体(以下、単に「感光体」と称する場合がある)、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置及び定着装置を具備する。帯電装置、現像装置及び転写装置には、ローラ形状及びブレード形状等の部材が好適に用いられる。これらの装置で特に好んで用いられるのが、ローラ形状の部材(以下、「電子写真用ローラ」と称する)である。帯電装置を例に挙げると、電子写真用ローラは、感光体の表面に接触配置又は近接配置され、電圧(直流電圧のみの電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳した電圧)を印加することによって感光体の表面を帯電する役割を担う。
特許文献1は、以下に示す、表面層としての導電性樹脂層を有する帯電部材を開示している。すなわち、この帯電部材は、導電性樹脂層中に開口を有するボウル形状の樹脂粒子を含有しており、該帯電部材の表面にボウル形状の樹脂粒子の開口部及びエッジ部に由来した凹凸形状を有する。そして、該帯電部材は、さらに、このボウル形状の樹脂粒子の底部に亀裂を有しており、この亀裂において、該導電性樹脂層が該帯電部材の表面に通じている。
また、特許文献1には、係る帯電部材によれば、ボウル形状の樹脂粒子のエッジ部が感光体と当接した際に弾性変形することで、当接圧力が緩和され、感光体の不均一な削れを抑制できることが記載されている。
特開2011−237470号公報
本発明者らは、電子写真画像を形成する際のプロセススピードのより一層の高速化に向けて、帯電部材として用いたときに、より優れた帯電性能を発揮し得る電子写真用ローラの開発が必要であることを認識した。
本発明の一態様は、プロセススピードが、より高速化された電子写真画像形成装置において、帯電部材として使用した場合にも、安定した帯電性能を発揮し得る電子写真用ローラの提供に向けたものである。
また、本発明の他の態様は、高品位な電子写真画像の形成に資するプロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
本発明の一態様によれば、導電性の軸芯体と、該軸芯体上の表面層としての導電性樹脂層と、を有する電子写真用ローラであって、
該導電性樹脂層は、バインダーおよび複数個の中実樹脂粒子を含み、
開口を有するボウル形状の樹脂粒子を、該開口が該電子写真用ローラの表面に露出する状態で保持しており、
該電子写真用ローラの表面は、該ボウル形状の樹脂粒子の開口に由来する凹部と、該ボウル形状の樹脂粒子の開口のエッジに由来する凸部とを有し、
該ボウル形状の樹脂粒子の該凹部を形成しているシェルの外壁面に、該中実樹脂粒子の少なくとも2個が接しており、
該ボウル形状の樹脂粒子を該軸芯体の表面に正投影させたときに、該軸芯体の表面に形成される投影円を第1の投影円とし、
該ボウル形状の樹脂粒子の凹部を形成しているシェルの外壁面に接している該中実樹脂粒子を該軸芯体の表面に正投影させたときに該軸芯体の表面に形成される投影円をそれぞれ第2の投影円および第3の投影円としたとき、
該ボウル形状の樹脂粒子と、該ボウル形状の樹脂粒子の凹部を形成しているシェルの外壁面に接している該中実樹脂粒子とは、
該第2の投影円の少なくとも一部が該第1の投影円と重なり、該第3の投影円の少なくとも一部が該第1の投影円と重なり、かつ、
該第2の投影円の重心と該第3の投影円の重心とを通る線分が、該軸芯体の軸方向に平行に延びる、該第1の投影円の重心を通る直線と交点を有するように、位置しており、
該導電性樹脂層の圧縮弾性率をG、該中実樹脂粒子の圧縮弾性率をJとしたとき、下記数式(1)および数式(2)を満たすことを特徴とする電子写真用ローラが提供される。
数式(1)
G<J
数式(2)
0.1MPa≦G≦10MPa 。
また、本発明の他の態様によれば、上記電子写真用ローラを有し、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジが提供される。
さらに、本発明の他の態様によれば、上記電子写真用ローラを具備する電子写真画像形成装置が提供される。
本発明の一態様によれば、プロセススピードが、より高速化された電子写真画像形成装置において、帯電部材として使用した場合にも、安定した帯電性能を発揮し得る電子写真用ローラを得ることができる。
また、本発明の他の態様によれば、高品位な電子写真画像の形成に資するプロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置を得ることができる。
本発明の電子写真用ローラの表面近傍における二つの例の部分断面図である。 本発明に係る、ボウル形状の樹脂粒子及び中実樹脂粒子に対する投影円の二つの例の説明図である。 本発明の電子写真用ローラの二つの例を示す断面概略図である。 本発明に係るボウル形状の樹脂粒子の断面の説明図である。 本発明に係るボウル形状の樹脂粒子の形状における五つの例の立体的な説明図である。 本発明の電子写真用ローラを作製する際に用いることができる、プランジカット方式の研磨機の説明図であり、図6(a)及び(b)はそれぞれ、このプランジカット方式の研磨機の正面図及び側面図である。 本発明の電子写真画像形成装置の一例の説明図である。 本発明のプロセスカートリッジの一例の説明図である。
本発明者らの検討によれば、特許文献1に係る帯電部材は、プロセススピードの速い電子写真画像形成装置に適用した場合に、帯電部材から電子写真感光体に対する異常放電の発生に起因する欠陥を有する電子写真画像が形成されることがあった。
異常放電の発生原因を、本発明者らは、以下の様に推測している。すなわち、特許文献1に係る帯電部材が、電子写真感光体(以降、「感光体」ともいう)と当接したときに、該帯電部材の表面に存在するボウル形状の樹脂粒子の開口に由来するエッジが過度に弾性変形することがある。以降、当該エッジ部の過度な弾性変形を、「撓み」と称する場合がある。当該エッジが撓むと、帯電部材と感光体との間で安定した放電を生じさせるための間隙が確保されなくなり、ニップの上流側における帯電部材からの感光体に対する放電が不足する。その結果、該ニップの下流側で、過剰な放電が生じることになる。かかるニップの上流および下流における放電のバランスが崩れることによって、異常放電が生じているものと考えられる。
そこで、本発明者らは、特許文献1に係る帯電部材の奏する優れた効果を損なうことなく、感光体とのニップにおいても、ボウル形状の樹脂粒子の開口に由来するエッジが撓み難い電子写真用ローラを得ることを目的として検討を重ねた。
その結果、下記の構成を備えた電子写真用ローラが、上記の目的の実現に有効であることを見出した。
(i)導電性の軸芯体と、該軸芯体上の表面層としての導電性樹脂層と、を有する;
(ii)該導電性樹脂層が、バインダーおよび複数個の中実樹脂粒子を含み、開口を有するボウル形状の樹脂粒子を、該開口が該電子写真用ローラの表面に露出する状態で保持している;
(iii)該電子写真用ローラの表面は、該ボウル形状の樹脂粒子の開口に由来する凹部と、該ボウル形状の樹脂粒子の開口のエッジに由来する凸部とを有する;
(iv)該ボウル形状の樹脂粒子の該凹部を形成しているシェルの外壁面に、該中実樹脂粒子の少なくとも2個が接している;
(v)該ボウル形状の樹脂粒子を該軸芯体の表面に正投影させたときに、該軸芯体の表面に形成される投影円を第1の投影円とし、
該ボウル形状の樹脂粒子の凹部を形成しているシェルの外壁面に接している該中実樹脂粒子を該軸芯体の表面に正投影させたときに、該軸芯体の表面に形成される投影円をそれぞれ第2の投影円および第3の投影円としたとき、
該ボウル形状の樹脂粒子と、該ボウル形状の樹脂粒子の凹部を形成しているシェルの外壁面に接している該中実樹脂粒子とが、
該第2の投影円の少なくとも一部が該第1の投影円と重なり、該第3の投影円の少なくとも一部が該第1の投影円と重なり、かつ、
該第2の投影円の重心と該第3の投影円の重心とを通る線分が、該軸芯体の軸方向に平行に延びる、該第1の投影円の重心を通る直線と交点を有するように、位置している;
(vi)該導電性樹脂層の圧縮弾性率をG、該中実樹脂粒子の圧縮弾性率をJとしたとき、下記数式(1)および数式(2)を満たす:
数式(1)
G<J
数式(2)
0.1MPa≦G≦10MPa。
かかる電子写真用ローラは、例えば帯電部材(帯電ローラ)として使用した場合に、感光体とのニップにおいて、ボウル形状の樹脂粒子が撓むことを抑制することができる。その理由は、ボウル形状の樹脂粒子のシェルの外壁面に、少なくとも2個の中実樹脂粒子が、該ボウル形状の樹脂粒子に対して特定の位置関係にあるように接することにより、該ボウル形状の樹脂粒子の開口の由来するエッジ部の撓みが適度に制限されているためであると考えられる。その結果、当該撓みに起因する、ニップの上流側および下流側における帯電量のアンバランスな状態を解消することができ、異常放電の発生を抑制し得るものと考えられる。
なお、本発明に係る電子写真用ローラは、帯電ローラとして用いることができるが、この他にも、現像ローラ及び転写ローラとして用いることもできる。以下、本発明の電子写真用ローラについて、主に、帯電ローラに着目した説明を行うが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
<電子写真用ローラ>
本発明の一態様に係る電子写真用ローラは、導電性の軸芯体と、軸芯体上に配される表面層としての導電性樹脂層とを有する。
図3に、本発明の電子写真用ローラの2つの例を示す断面概略図を示す。本発明の電子写真用ローラは、図3(a)に示すように、導電性の軸芯体12と、導電性樹脂層13とを有する。また、本発明の電子写真用ローラは、図3(b)に示すように、導電性の軸芯体12と、表面層である導電性樹脂層13との間に、他の層(例えば、導電性弾性層14)を有することができる。なお、導電性樹脂層13は、導電性弾性層としての性質も有することができ、本発明の電子写真用ローラは、図3(b)に示すように、導電性弾性層を複数層有する構成であってもよい。
導電性の軸芯体12並びに該軸芯体上に(順次)積層される(各)層(例えば、図3(b)に示す導電性弾性層14及び導電性樹脂層13)は、それぞれ接着剤を介して接着されていてもよい。
この際用いる接着剤は、導電性であることが好ましい。導電性の接着剤としては、電子写真装置の分野で公知のものを適宜用いることができる。上記接着剤は、例えば、バインダー及び導電剤を含むことができる。このバインダーとしては、例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられるが、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系などの公知のものを用いることができる。接着剤に導電性を付与するための導電剤としては、後述する、導電性樹脂層を導電化するために用いることができる導電性微粒子等から適宜選択することができる。これらの導電剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
該電子写真用ローラの形状は、特に限定されない。しかしながら、例えば帯電ローラとして用いる際、帯電ローラの長手方向(図3に示す紙面に対して垂直方向)の中央部における感光体との従動回転性を向上させる観点から、以下の形状であることが好ましい。すなわち、帯電ローラの長手方向の中央部が一番太く、長手方向の両端部にいくほど細くなるクラウン形状であることが好ましい。下記で定義されるクラウン量の好ましい範囲は、30μm以上200μm以下である。クラウン量は、電子写真用ローラの長手方向における中央部の外径D2と、中央部から両端方向へ各90mm離れた位置の外径D1及びD3との差の平均値であり、下記数式(3)にて算出される値である。
数式(3)
クラウン量=D2−(D1+D3)/2
(導電性の軸芯体)
導電性の軸芯体12は、導電性を有し、その上に設けられる導電性樹脂層や他の層を支持する機能を有するものである。軸芯体を構成する材質は特に限定されないが、材質としては、例えば、鉄、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルの如き金属やその合金を挙げることができる。また、軸芯体の形状も特に限定されないが、円筒形状とすることが好ましい。
(導電性樹脂層)
導電性樹脂層13は、電子写真用ローラの表面層として配され、バインダー、ボウル形状の樹脂粒子および(複数個の)中実樹脂粒子を少なくとも含む。導電性樹脂層は、更に他の成分(例えば、導電性微粒子等)を含むことができる。
導電性樹脂層の厚みは、1.0mm以上、5.0mm以下とすることが好ましい。なお、この導電性樹脂層の厚みは、軸芯体(中間層が形成される場合はその中間層)の表面から、導電性樹脂層の表面までの厚みを意味する。導電性樹脂層の厚みを測定する際には、例えば、任意の10点の導電性樹脂層の厚みを測定し、その平均値を導電性樹脂層の厚みとする。測定には、ビデオマイクロや電子顕微鏡等の観察装置を用いることができる。
以下、導電性樹脂層に含有される各成分について詳しく説明する。なお、図1に、本発明の電子写真用ローラの表面近傍、より詳しくは導電性樹脂層の表面近傍における部分断面図の二つの例を示す。
(I)バインダー
導電性樹脂層に含有されるバインダー(図1の符号6)としては、例えば、公知のゴム及び樹脂等を用いることができる。
ゴムとしては、例えば、天然ゴム(例えば、ポリイソプレンゴム)やこれを加硫処理したもの、合成ゴムを挙げることができる。
合成ゴムとしては以下のものが挙げられる。エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプロピレンゴム(IR)、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム及びフッ素ゴム。
樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の如き樹脂が使用できる。中でも、低コストで汎用性の観点から、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂が好ましい。
これらのバインダーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらバインダーの原料である単量体を複数用いて共重合させ、得られた共重合体をバインダーとして用いてもよい。
これらの中でも、導電性樹脂層の圧縮弾性率を制御する観点から、バインダーとして、NBRを用いることが特に好ましい。例えば、NBRのニトリル量、加硫剤としての硫黄の量、並びに、加硫促進剤の種類、組合せ及び量を、適宜調整することで、後述する特定の範囲に、導電性樹脂層の圧縮弾性率を容易に制御することができる。
導電性樹脂層中のバインダーの含有割合は、30質量%以上、70質量%以下が好ましい。
(II)ボウル形状の樹脂粒子
導電性樹脂層は、複数個のボウル形状の樹脂粒子(図1の符号3)を含むことができる。ボウル形状の樹脂粒子3は、シェル4によって画定される丸みのある内壁面を有する樹脂粒子であることができる。
導電性樹脂層に含有されるボウル形状の樹脂粒子3の少なくとも一部は、図1に示すように、開口(開口部)1を有し、この開口が電子写真用ローラの表面に露出する状態でボウル形状の樹脂粒子3は導電性樹脂層(バインダー6)中に保持されている。ボウル形状の樹脂粒子がこのような状態で保持されることにより、ボウル形状の樹脂粒子が、感光体との摺擦によって振動した時に発生する撓みを抑制することができる。
なお、導電性樹脂層に含有されるボウル形状の樹脂粒子のうちの一部がこの状態で導電性樹脂層中に保持されていればよい。すなわち、例えば、導電性樹脂層中に、開口部が形成される前のボウル形状の樹脂粒子(後述する中空形状の樹脂粒子)が含有されていてもよい。つまり、本発明では、導電性樹脂層に含有されている(上記中空形状の樹脂粒子も含む)ボウル形状の樹脂粒子のうちの少なくとも一部が、電子写真用ローラの表面に上記状態で露出していればよい。
また、電子写真用ローラの表面は、図1に示すように、表面に露出しているボウル形状の樹脂粒子の開口1に由来する凹部1aと、表面に露出しているボウル形状の樹脂粒子の開口1のエッジ2に由来する凸部2aとを有する。
開口を有するボウル形状の樹脂粒子は、シェル4から構成され、内部に空洞を有することができる。すなわち、このボウル形状の樹脂粒子の開口1に由来する凹部1aは、この凹部を形成しているシェル4の内壁面から構成されることができる。
なお、ボウル形状の樹脂粒子が開口を表面に露出した状態で導電性樹脂層中に保持され、電子写真用ローラの表面にこの開口に由来する凹部と、この開口のエッジに由来する凸部を有していることは、以下の方法により確認することができる。
すなわち、ビデオマイクロや電子顕微鏡等の観察装置により、電子写真用ローラの表面を観察することで確認できる。
次に、図5(a)〜(e)に、開口1を有するボウル形状の樹脂粒子3の五つの例を示す。ボウル形状の樹脂粒子が有する開口1の形状は特に限定されず、様々な形状とすることができる。例えば、図5(a)及び(b)に示すように、エッジ(開口の縁部分)が平坦な形状であってもよいし、図5(c)〜(e)に示すように、エッジが凹凸を有していてもよい。
しかしながら、この開口を有するボウル形状の樹脂粒子は、以下に示すいくつかの条件を満たす形状を有することが好ましい。
まず、図4に示すように、ボウル形状の樹脂粒子の開口のエッジに由来する凸部の頂点16aと、当該ボウル形状の樹脂粒子のシェルによって画定される凹部の底部16bとの距離16を、以下の範囲にすることが好ましい。すなわち、この距離16が、5μm以上100μm以下であることが好ましく、8μm以上80μm以下であることがより好ましい。以下、当該距離のことを「高低差」と称することがある。この距離16を、5〜100μmの範囲内とすることにより、より確実に当接圧力を緩和させることができる。
なお、上記凸部の頂点16aとは、軸芯体の外表面に対して垂直方向(図4では紙面上下方向)の高さ(厚さ)における、当該凸部の最も高い(厚い)部分(点)を意味する。また、上記凹部の底部16bとは、軸芯体の外表面に対して垂直方向の高さにおける、当該凹部の最も低い部分を意味する。
また、前記距離(高低差)16と、図4に示すボウル形状の樹脂粒子の最大径15との比、すなわち、樹脂粒子の[最大径]/[高低差]は、0.8以上3.0以下であることが好ましい。本範囲内とすることにより、より確実に上述した当接圧力を減少させることができる。
ボウル形状の樹脂粒子の最大径15は、5μm以上150μm以下であることが好ましく、8μm以上120μm以下であることがより好ましい。
また、ボウル形状の樹脂粒子の最大径15と、図5に示す開口部の最小径17の比、即ち、ボウル形状の樹脂粒子の[最大径]/[開口部の最小径]は、1.1以上4.0以下であることが好ましい。この比を本範囲内とすることにより、より確実に上述した当接圧力を減少させることができる。
ボウル形状の樹脂粒子のシェルの厚みは0.1μm以上3μm以下であることが好ましく、0.2μm以上2μm以下であることがより好ましい。シェルの厚みを0.1〜3μmの範囲内とすることによって、エッジをより柔軟に弾性変形させることが可能となり、その結果として、より確実に当接圧力を緩和させることができる。また、上記シェルの厚みは、最大厚みが、最小厚みの3倍以下であることが好ましく、2倍以下であることがより好ましい。
なお、開口を有するボウル形状の樹脂粒子における、上記最大径15、距離16、開口部の最小径17及びシェルの厚みは、以下の方法により特定することができる。
すなわち、導電性樹脂層の任意の点を500μmに亘って、20nmずつ集束イオンビーム(商品名:FB−2000C、日立製作所作製)にて切り出し、その断面画像を撮影する。そして、同じボウル形状の樹脂粒子を撮影した画像を組み合わせ、ボウル形状の樹脂粒子の立体像を算出する。立体像から、図4や図5に示すように、最大径15、距離(高低差)16及び開口部の最小径17を算出する。また、この立体像から、ボウル形状の樹脂粒子の任意の5点において、(シェルの)外径と内径との差を算出し、5点のシェルの厚みを算出する。このような作業を任意のボウル形状の樹脂粒子10個について行う。そして、同様の測定を電子写真用ローラの長手方向(図3では紙面に対して垂直方向)の10箇所について行い、得られた計100個の樹脂粒子の各データの平均値から、上記最大径15、距離16、開口部の最小径17及びシェルの厚みを特定する。
ボウル形状の樹脂粒子の球形近似による平均粒径は、表面凹凸形状の形成の観点から10μm以上が好ましく、圧縮永久ひずみの観点から100μm以下が好ましい。また、このボウル形状の樹脂粒子の球形近似による平均粒径は、ポチ状画像の抑制の観点から30μm以上がより好ましく、トナー汚染の観点から60μm以下がより好ましい。
なお、このボウル形状の樹脂粒子の球形近似による平均粒径は、以下の方法により特定することができる。すなわち、まず、電子写真用ローラの表面からボウル形状の樹脂粒子を任意で10個選択する。そして、これらのボウル形状の樹脂粒子を、軸芯体の表面に正投影した投影部の面に平行な面を切断面として、20nmずつ集束イオンビーム(例えば、商品名:FB−2000C、日立製作所製)にて切り出しながら、断面画像をそれぞれ撮影する。そして、これらの断面画像を基に、球形近似した直径を選択した10個のボウル形状の樹脂粒子に対してそれぞれ算出し、それらの平均値を、ボウル形状の樹脂粒子の球形近似による平均粒径とする。
表面に露出されるボウル形状の樹脂粒子が有する凹凸形状により、電子写真用ローラの表面状態、すなわち、導電性樹脂層の表面状態は、下記のように制御されていることが好ましい。十点平均粗さ(Rzjis)は、5μm以上65μm以下が好ましく、10μm以上50μm以下がより好ましい。
表面の凹凸平均間隔(Sm)は、30μm以上200μm以下が好ましく、40μm以上150μm以下がより好ましい。Rzjisを5〜65μm、Smを30〜200μmの範囲内とすることにより、より確実に当接圧力を減少させることができる。尚、表面の十点平均粗さ(Rzjis)及び表面の凹凸平均間隔(Sm)の測定法については、JIS B 0601−1994における表面粗さの規格に準ずる。
なお、ボウル形状の樹脂粒子の具体的な作製方法については、後述する。
(III)中実樹脂粒子
導電性樹脂層中には複数個の中実樹脂粒子(図1の符号5)が含有される。中実樹脂粒子は、粒子の内部が、樹脂で満たされている粒子である。すなわち、粒子内部に気体を含まないか、もしくは、気体を含んだとしても、極少量、体積換算で0.1%以下である粒子である。
中実樹脂粒子の材質としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。しかしながら、中実樹脂粒子を構成する樹脂は、後述する数式(1)及び(2)を共に満たす観点から、ポリエチレン樹脂及びアクリル樹脂から選ばれる樹脂を含むことが好ましく、これらの樹脂から構成されることが好ましい。これらの樹脂は、中実樹脂粒子としたときの硬さと、バインダー中における分散度合が所望の値になり易く、これらの数式を満たす上で特に有利となる。
導電性樹脂層における中実樹脂粒子の含有割合(含有量)は、導電性樹脂層中の樹脂固形分100質量部に対し、以下の範囲とすることが好ましい。すなわち、導電性樹脂層の形成の観点から1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、ポチ状画像の抑制の観点から4質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
導電性樹脂層に含まれる中実樹脂粒子の球形近似による平均粒径は、ポチ状画像の抑制の観点から1μm以上が好ましく、表面凹凸形状の形成の観点から50μm以下が好ましい。また、この中実樹脂粒子の球形近似による平均粒径は、ポチ状画像のさらなる抑制の観点から10μm以上がより好ましく、トナー汚染の観点から30μm以下がより好ましい。
なお、中実樹脂粒子の球形近似による平均粒径は、ボウル形状の樹脂粒子と同様の方法で確認することができる。
ボウル形状の樹脂粒子と中実樹脂粒子との平均粒径の比(ボウル形状の樹脂粒子の平均粒径:中実樹脂粒子の平均粒径)は、9:1〜1:1(好ましくは5:1〜1:1)とすることが好ましい。これは、中実樹脂粒子が、撓みの原因となる振動をより効率的に緩和し得るためである。
中実樹脂粒子としては、例えば、商品名:XM−220、PM−200(いずれも材質:ポリエチレン樹脂、三井化学(株)製)、商品名:MBX−5、MBX−50(いずれも材質:アクリル樹脂、積水化学(株)製)、商品名:エポスターM05(材質:メラミン樹脂、日本触媒(株)製)を用いることができる。
・圧縮弾性率
本発明では、導電性樹脂層の圧縮弾性率をG、導電性樹脂層に含まれる中実樹脂粒子の(平均の)圧縮弾性率をJとしたとき、下記数式(1)および数式(2)を満たす。
数式(1)
G<J
数式(2)
0.1MPa≦G≦10MPa
各圧縮弾性率がこれらの数式を満たすことにより、電子写真用ローラ表面に存在するボウル形状の樹脂粒子の撓みを抑制することができる。
具体的には、上記Gが0.1MPa未満では、電子写真用ローラにおける撓みの保持力が低減して、異常放電によるポチ状画像の抑制効果が減少する。また、上記Gが10MPaを超えると、異常放電によるポチ状画像の抑制効果の増大よりも、高硬度の中実樹脂粒子による感光体等の当接物への傷及び摩耗を促進する弊害が大きくなる。
また、G>Jとなると、導電性樹脂層中に含有されるバインダーの硬度が増大し、トナー汚染等の弊害が発生する。
従って、上記圧縮弾性率G及びJが、G<J、かつ、0.1MPa≦G≦10MPaを満たすことが必須である。また、これらの圧縮弾性率は、撓み抑制効果の増大の観点から、G<J、かつ、1.0MPa≦G≦10MPaを満たすことがより好ましい。
これらの圧縮弾性率は、ISO14577に基づき、ピコデンターHM500(商品名、株式会社フィッシャー・インストルメント社製)を用いて、押し込み弾性率を測定することで特定することができる。圧子としては、基部が正方形の角錐型ダイヤモンド圧子で、頂点を挟む対面角度が136°である圧子(ビッカース角錐)を用いることができる。
測定は、電子写真用ローラの長手方向の中央部及び両端部(中央部から両端方向へ各90mmの位置)においてそれぞれ行う。具体的には、顕微鏡を用いて、中実樹脂粒子の非存在部を上記中央部及び両端部からそれぞれ任意に10点ずつ選定し、押し込み弾性率を測定し、得られた計30個の測定値の平均値を、導電性樹脂層の圧縮弾性率Gとする。
次に、顕微鏡を用いて、中実樹脂粒子が、電子写真用ローラの表面に露出している部分を上記中央部及び両端部からそれぞれ任意に10点ずつ選定し、押し込み弾性率を測定する。なお、電子写真用ローラの表面に露出している中実樹脂粒子が存在しない場合には、電子写真用ローラの表面をトリミングして中実樹脂粒子を表面に露出させて測定を行う。そして、得られた計30個の測定値の平均値を、中実樹脂粒子の(平均の)圧縮弾性率Jとする。
・ボウル形状の樹脂粒子と中実樹脂粒子との配置
導電性樹脂層に含有されるボウル形状の樹脂粒子と、中実樹脂粒子とは、以下の条件(iv)及び(v)を満たす。
(iv)導電性樹脂層に保持されている1個のボウル形状の樹脂粒子の、凹部を形成しているシェルの外壁面に対して、少なくとも2個、より好ましくは、2.0個以上の中実樹脂粒子が接する。
(v)該ボウル形状の樹脂粒子を該軸芯体の表面に正投影させたときに、該軸芯体の表面に形成される投影円を第1の投影円とし、
該ボウル形状の樹脂粒子の凹部を形成しているシェルの外壁面に接している該中実樹脂粒子のうちの2個を該軸芯体の表面に正投影させたときに該軸芯体の表面に形成される投影円をそれぞれ第2の投影円および第3の投影円としたとき、
該ボウル形状の樹脂粒子と、該ボウル形状の樹脂粒子の凹部を形成しているシェルの外壁面に接している該中実樹脂粒子とは、
該第2の投影円の少なくとも一部が該第1の投影円と重なり、該第3の投影円の少なくとも一部が該第1の投影円と重なり、かつ、
該第2の投影円の重心と該第3の投影円の重心とを通る線分が、該軸芯体の軸方向に平行に延びる、該第1の投影円の重心を通る直線と交点を有するように、位置している。
・条件(iv)
図1に示すように、ボウル形状の樹脂粒子3の凹部1aを形成しているシェル4の外壁面4aには、少なくとも2個の中実樹脂粒子5が接している。
なお、1個のボウル形状の樹脂粒子における外壁面4aに接している中実樹脂粒子は、少なくとも2個であり、より好ましくは、2.0個以上である。なお、たとえば、3個または3個以上の中実樹脂粒子が外壁面4aに接している場合は、それらのうちの少なくとも2個が後述する条件(v)を満たしている。
導電性樹脂層中に含まれる中実樹脂粒子は、その少なくとも一部が条件(iv)を満たす位置に配置されていればよい。従って、他の中実樹脂粒子が、例えば、電子写真用ローラの表面に(例えば、一部が欠けた形態又は添加時の形態で)露出して存在していてもよいし、ボウル形状の樹脂粒子と接触せずに、導電性樹脂層(バインダー)中に包含されていてもよい。また、ボウル形状の樹脂粒子の外壁面に1個の中実樹脂粒子のみが接したものが存在していてもよい。
しかしながら、導電性樹脂層中に含有される中実樹脂粒子のうち、これらの条件を満たす特定の位置に配される中実樹脂粒子の(個数)割合は、ポチ状画像の抑制の観点から、5.0%以上、圧縮永久ひずみの観点から30.0%以下とすることが好ましい。
なお、ボウル形状の樹脂粒子の外壁面に接している中実樹脂粒子の個数の特定方法については、後述する。
・条件(v)
まず、ボウル形状の樹脂粒子及びこの樹脂粒子の外壁面に接する中実樹脂粒子のうちの2個に対応する投影円について説明する。図2に、ボウル形状の樹脂粒子及び中実樹脂粒子に対する投影円の二つの例を示す。
図2に示すように、ボウル形状の樹脂粒子を軸芯体の表面に正投影させたときに軸芯体の表面(外表面)に形成される投影円を第1の投影円7とする。次に、このボウル形状の樹脂粒子の外壁面4aに接している2個の中実樹脂粒子の各々を軸芯体の表面に正投影させたときに軸芯体の表面に形成される投影円の各々を第2の投影円8および第3の投影円9とする。なお、軸芯体の外表面は、図3に示すように実際は曲面であるが、これらの樹脂粒子との相対的なサイズ差から平面とみなすことができる。
そして、得られた3つの投影円が、以下の条件(v−1)及び(v−2)を満たす。
まず、この2個の中実樹脂粒子に対応する第2の投影円8及び第3の投影円9それぞれの少なくとも一部が、第1の投影円7と重なる(条件(v−1))。さらに、第2の投影円の重心8aと第3の投影円の重心9aを通る線分11が、軸芯体の軸方向(例えば、図3に示す紙面に対して垂直方向)に平行な、第1の投影円の重心7aを通る直線10と交点を有する(条件(v−2))。なお、上記条件(v−1)において、第2の投影円及び第3の投影円全体が、第1の投影円に重なってもよいし、それらの一部が第1の投影円に重なってもよい。
このような条件を満たす各投影円の配置として、例えば、第2の投影円の重心8aと第3の投影円の重心9aとが、直線10を挟んだ両側に存在する場合等が挙げられ、具体的には、図2(a)及び(b)に示す配置等が挙げられる。
ボウル形状の樹脂粒子及び中実樹脂粒子が、上記条件(iv)及び(v)を満たす位置に配置されることにより、以下のことが可能となる。すなわち、電子写真用ローラの軸芯体の回転方向に対する振動を中実樹脂粒子が吸収することができ、ボウル形状の樹脂粒子の撓みを抑制することが可能となる。
なお、導電性樹脂層において、ボウル形状の樹脂粒子及び中実樹脂粒子が、上記条件(iv)及び(v)を満たす位置に配置されていることは以下の方法により確認することができる。
すなわち、まず、電子写真用ローラの表面に開口が露出した状態で保持されているボウル形状の樹脂粒子の10個を選択する。そして、当該ボウル形状の樹脂粒子の各々について、周囲の中実樹脂粒子を含めた範囲の断面画像を撮影し、各断面画像に基づき、各ボウル形状の樹脂粒子の外壁面に接する中実樹脂粒子をそれぞれ抽出する。次に、これらの中実樹脂粒子の重心をそれぞれ前記断面画像から求める。当該重心と、前記断面画像から、各ボウル形状の樹脂粒子の外壁面に接する中実樹脂粒子が、上記条件(v)を満たすか判断する。
次いで、当該樹脂粒子の各々に対して、条件(v)を満たす、ボウル形状の樹脂粒子の外壁面に接する中実樹脂粒子の個数を求める。そして、その個数の平均値が2個以上(好ましくは2.0個以上)の場合、導電性樹脂層に含有されるボウル形状の樹脂粒子及び中実樹脂粒子が、これらの条件(iv)及び(v)を満たしていると判断する。
なお、本発明の電子写真用ローラを、後述する一次混練物を用いて作製することで、ボウル形状の樹脂粒子及び中実樹脂粒子を、上記条件(iv)及び(v)を満たす位置に容易に配置させることができる。
(IV)その他の成分
・導電性微粒子
導電性樹脂層は、導電性を発現するために公知の導電性微粒子を含有することができる。導電性微粒子としては、例えば、導電性金属酸化物、金属微粒子及びカーボンブラックが挙げられる。また、これらの導電性微粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
導電性樹脂層中における導電性微粒子の含有量は、バインダー100質量部に対して、導電性付与の観点から、2質量部以上200質量部以下であることが好ましく、導電性の制御の観点から、20質量部以上80質量部以下であることがより好ましい。
また、導電性微粒子の平均粒径は、導電性の制御の観点から、0.01μm以上0.9μm以下が好ましく、0.01μm以上0.5μm以下がより好ましい。
・イオン導電剤及び絶縁性粒子
導電性樹脂層は、前述の材料以外に、イオン導電剤及び絶縁性粒子等を含有することができる。
イオン導電剤としては、例えば、LiClOやNaClOの過塩素酸塩、4級アンモニウム塩が挙げられる。これらのイオン導電剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
絶縁性粒子としては、例えば、以下のものが挙げられる。酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化チタン(二酸化チタン、一酸化チタン等)、酸化鉄、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ドロマイト、タルク、カオリンクレー、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、ウオラストナイト、けいそう土、ガラスビーズ、ベントナイト、モンモリロナイト、中空ガラス球、有機金属化合物及び有機金属塩の粒子等。
導電性樹脂層におけるイオン導電剤及び絶縁性粒子の配合割合は適宜設定することができ、特に限定されない。
(V)導電性樹脂層の体積抵抗率
導電性樹脂層の体積抵抗率は、温度23℃、相対湿度50%の環境において、1×10Ω・cm以上、1×1016Ω・cm以下とすることが好ましい。この範囲内とすることで、放電による感光体上の帯電や、感光体上に現像したトナーの紙上転写を、より効率的に行うことができる。
なお、導電性樹脂層の体積抵抗率は、以下のようにして求めることができる。まず、電子写真用ローラから、導電性樹脂層を、縦5mm、横5mm、厚さ1mmの短冊形に切り出す。なお、上記縦、横及び厚さ方向はそれぞれ、図3に示す、電子写真用ローラの軸方向(紙面に対して垂直方向)、回転方向及び厚み方向(導電性樹脂層表面から軸芯体の中心へ向かう方向)を指す。
そして、得られた短冊形の導電性樹脂層の両面に金属を蒸着して、電極とガード電極とを作製し、測定用サンプルを得る。なお、導電性樹脂層が薄膜で切り出せない場合には、アルミニウム製のシートの上に導電性樹脂層形成用の後述する導電性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜面に金属を蒸着して測定用サンプルを作製する。
次に、得られた測定用サンプルに対して、微小電流計(商品名:ADVANTEST R8340A ULTRA HIGHRESISTANCE METER、(株)アドバンテスト製)を用いて200Vの電圧を印加する。そして、30秒後の電流を測定し、膜厚と電極面積とから計算して体積抵抗率を求める。
なお、導電性樹脂層の体積抵抗率は、導電性樹脂層中に配合させる導電性微粒子及びイオン導電剤等により調整することができる。
(導電性弾性層)
本発明の電子写真用ローラは、導電性の軸芯体と、表面層である導電性樹脂層との間に、導電性弾性層を1層又は複数層、形成してもよい。導電性弾性層は、バインダー、導電剤及び他の成分(絶縁性粒子や可塑剤等の添加剤)を含有することができる。このバインダーとしては、導電性樹脂層において上述したような公知のゴム及び樹脂を適宜使用することができる。また、この導電剤としては、カーボンブラック及び導電性金属酸化物などの公知の導電剤を適宜使用することができる。
なお、導電性弾性層は、上述した導電性樹脂層と同一の組成とすることもでき、すなわち、導電性弾性層中に、後述する中空形状の樹脂粒子や中実樹脂粒子等を有していてもよい。軸芯体と導電性樹脂層との間に配する導電性弾性層の(合計の)厚みは、導電性と接着性の観点から、1.0μm以上10.0μm以下とすることが好ましい。
<電子写真用ローラの製造方法>
本発明の電子写真用ローラは、例えば、以下の工程を有する電子写真用ローラの製造方法により作製することができる。
・導電性の軸芯体上に、バインダー、中空形状の樹脂粒子(開口が形成される前のボウル形状の樹脂粒子)及び(複数個の)中実樹脂粒子を含む予備被覆層を形成する工程(予備被覆層形成工程)。
・前記予備被覆層の表面を研磨することにより、該予備被覆層に含有される中空形状の樹脂粒子の表面の一部を削除し、導電性樹脂層を形成する工程(研磨工程)。
また、上記電子写真用ローラの製造方法は、以下の工程を有することもできる。
・導電性の軸芯体を用意する工程(軸芯体用意工程)。
・導電性樹脂層を表面処理又は加熱処理する工程(処理工程)。
さらに、上記予備被覆層形成工程は、以下に示す、導電性樹脂組成物調製工程と、予備被覆層成形工程とを含むことができる。
・(ボウル形状の樹脂粒子の前々駆体である)熱膨張性マイクロカプセル、(複数個の)中実樹脂粒子及びバインダーを含む導電性樹脂組成物を調製する工程(導電性樹脂組成物調製工程)。
・前記導電性の軸芯体上に、前記導電性樹脂組成物を被覆し、熱を加えることにより、予備被覆層を作製する工程(予備被覆層成形工程)。
また、上記導電性樹脂組成物調製工程は、以下の工程を含むことができる。
・熱膨張性マイクロカプセル、(複数個の)中実樹脂粒子及び第一のバインダーを混練して、一次混練物を調製する工程(一次混練物調製工程)。
・前記一次混練物及び第二のバインダー、並びに、必要に応じて添加剤(例えば、導電剤)を混練して、導電性樹脂組成物(二次混練物)を調製する工程(二次混練物調製工程)。
以下に各工程について、詳しく説明する。
(軸芯体用意工程)
導電性の軸芯体としては、電子写真装置の分野で公知のものを適宜用いることができる。具体的には、円筒形状のステンレス鋼製の軸芯体等を用いることができ、必要に応じて、その表面に導電性接着剤を塗布することもできる。
(予備被覆層形成工程)
導電性樹脂層を作製するに際し、まず、導電性軸芯体上に、バインダー、(ボウル形状の樹脂粒子の前駆体である)中空形状の樹脂粒子、中実樹脂粒子及び必要に応じてその他の成分を含む被覆層(予備被覆層)を作製する。
なお、予備被覆層の厚みとしては、研磨加工性の観点から、2.0mm以上とすることが好ましく、研磨加工性の観点から、6.0mm以下とすることが好ましい。
上記バインダー及び中実樹脂粒子としては、導電性樹脂層の説明において上述したもの適宜用いることができる。その中でも、導電性樹脂層の圧縮弾性率を制御する観点から、バインダーとしてはNBRを用いることが好ましく、中実樹脂粒子としては、ポリエチレン樹脂又はアクリル樹脂を含むものを用いることが好ましい。
上記その他の成分としては、例えば、導電剤(導電性微粒子やイオン導電剤等)、可塑剤、増量材、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤及び発泡剤などを任意に用いることができる。
ここで、上記予備被覆層中に、ボウル形状の樹脂粒子となる、すなわち、ボウル形状の樹脂粒子の前駆体である、中空形状の樹脂粒子を含有させる方法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。すなわち、粒子の内部に内包物質を含み、熱を加えることによりこの内包物質が膨張し、結果的に中空形状の樹脂粒子となる、いわゆる熱膨張性マイクロカプセルを用いる方法である。
具体的には、熱膨張性マイクロカプセル及び中実樹脂粒子をバインダー中に分散させた導電性樹脂組成物を作製し(導電性樹脂組成物調製工程)、この組成物を導電性軸芯体上に被覆し、熱を加えることにより、予備被覆層を作製する(予備被覆層成形工程)。この方法の場合、予備被覆層に使用するバインダーの乾燥、硬化又は架橋時等の熱で、熱膨張性マイクロカプセルの内包物質を膨張させ、中空形状の樹脂粒子を形成することができる。この際、膨張後の中空形状の樹脂粒子の粒子径を制御する方法としては、例えば、未膨張(膨張前)の熱膨張性マイクロカプセルの粒子径を制御する方法を好適に用いることができる。この方法は、熱膨張性マイクロカプセルの構成成分(バインダー及び内包物質等)の配合を一定にし、その粒子径を制御することで、膨張後(中空形状の樹脂粒子)の粒子径を制御することができる。例えば、(膨張前の)熱膨張性マイクロカプセルの体積平均粒径は、1.0μm以上、100μm以下とすることができる。また、中空形状の樹脂粒子の体積平均粒径は、10μm以上、100μm以下とすることが好ましい。
また、熱膨張性マイクロカプセルに配合させるバインダーや内包物質を適宜制御することにより、中空形状の樹脂粒子の粒子径を制御してもよい。このバインダーに関しては、例えば、アクリレート及び/又はメタクリレート系のモノマーを使用し、バインダーのTg(ガラス転移温度)を制御することで、膨張後の粒子径を制御できる。内包物質に関しては、例えば、含有量や沸点を制御することで、膨張後の粒子径を制御できる。
予備被覆層中に中空形状の樹脂粒子を含有させる方法としては、粒子の内部に予め気体が含有されている中空形状の粒子をそのまま含有させる方法も考えられる。しかしながら、本発明では、ボウル形状の樹脂粒子の平均粒径制御の観点から、上記中空形状の樹脂粒子を形成するための手段として、熱膨張性マイクロカプセルを利用する方法を用いることが好ましい。
以下、熱膨張性マイクロカプセルについて説明する。
・熱膨張性マイクロカプセル
熱膨張性マイクロカプセルを用いる場合、このカプセルに配合させるバインダーとして熱可塑性樹脂を用いることが求められる。熱可塑性樹脂としては、例えば、以下のものが挙げられる。
アクリロニトリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル酸樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、メタクリロニトリル樹脂、アクリル酸樹脂、アクリル酸エステル樹脂類、メタクリル酸エステル樹脂類。
この中でも、ガス透過性が低く、高い反発弾性を示すアクリロニトリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂及びメタクリロニトリル樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、これらの熱可塑性樹脂の原料となる単量体を共重合させることにより得られる共重合体を上記カプセルに配合させるバインダーとして用いてもよい。
上記熱膨張性マイクロカプセルは、懸濁重合法、界面重合法、界面沈降法及び液中乾燥法等の公知の製法によって製造することができる。
以下、懸濁重合法を例に挙げて説明する。まず、重合性単量体、上記熱膨張性マイクロカプセルに内包させる物質(内包物質)及び重合開始剤を混合する。そして、得られた混合物を界面活性剤や分散安定剤を含有する水性媒体中に分散させた後、懸濁重合させることにより、熱膨張性マイクロカプセルを作製する。尚、この混合物中に、重合性単量体の官能基と反応する反応性基を有する化合物及び有機フィラー等を添加することもできる。
上記重合性単量体としては、下記のものを例示することができる。
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、塩化ビニリデン、酢酸ビニル;アクリル酸エステル(メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート);メタクリル酸エステル(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート);スチレン系モノマー、アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド、ブタジエン、εカプロラクタム、ポリエーテル、イソシアネート。
これらの重合性単量体は、1種を単独であるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
上記熱可塑性マイクロカプセルの内包物質としては、前記熱可塑性樹脂の軟化点以下の温度でガスになって膨張するものが好ましく、例えば以下のものが挙げられる。
プロパン、プロピレン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンなどの低沸点液体;ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、ノルマルデカン、イソデカンなどの高沸点液体。
内包物質の使用量は、発泡性の観点から、重合性単量体100質量部に対して、1.0質量部以上、30質量部以下が好ましい。
上記重合開始剤としては、重合性単量体に可溶の開始剤が好ましく、例えば、公知のパーオキサイド開始剤(ジクミルパーオキサイド等)及びアゾ開始剤を使用できる。これらのうち、生産性の観点からアゾ開始剤が好ましい。アゾ開始剤の例を以下に挙げる。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル。中でも、コストの観点から2,2’−アゾビスイソブチロニトリルが好ましい。
重合開始剤を用いる場合、生産性の観点から、重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下用いることが好ましい。
上記界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子型分散剤を使用できる。界面活性剤の使用量は、分散性の観点から、重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下が好ましい。
上記分散安定剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。有機微粒子(ポリスチレン微粒子、ポリメタクリル酸メチル微粒子、ポリアクリル酸微粒子及びポリエポキシド微粒子等)、シリカ(コロイダルシリカ等)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、及び、水酸化マグネシウム等。
分散安定剤の使用量は、分散性の観点から、重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下が好ましい。
懸濁重合は、耐圧容器を用い、密閉下で行うことが好ましい。また、上述した重合用の原料を分散機等で懸濁してから、耐圧容器内に移して懸濁重合してもよく、耐圧容器内で懸濁してもよい。重合温度は、生産性の観点から、50℃以上120℃以下が好ましい。重合反応は、大気圧で行ってもよいが、上記内包物質を気化させないようにするため、加圧下(大気圧に0.1〜1MPaを加えた圧力下)で行うことが好ましい。重合反応終了後は、遠心分離や濾過によって、固液分離及び洗浄を行ってもよい。固液分離や洗浄を行う場合、その後、熱膨張マイクロカプセルを構成する樹脂(バインダー)の軟化温度以下にて乾燥や粉砕を行ってもよい。乾燥及び粉砕は、既知の方法により行うことができ、気流乾燥機、順風乾燥機及びナウターミキサーを使用できる。また、乾燥及び粉砕は、粉砕乾燥機によって同時に行うこともできる。界面活性剤及び分散安定剤は、製造後に洗浄濾過を繰り返すことにより除去できる。
以上より、熱膨張性マイクロカプセルを得ることができる。
・導電性樹脂組成物
導電性樹脂組成物は、バインダー(樹脂(ゴム))、熱膨張性マイクロカプセル及び中実樹脂粒子、並びに、他の成分(例えば、導電剤、可塑剤、増量材、滑材等の各種添加剤)を混練機で混練することにより作製することができる。
ここで、本発明では、ボウル形状の樹脂粒子と複数個の中実樹脂粒子とが、導電性樹脂層内において、特定の位置に配置される。この特定の配置を達成するため、以下の手法で導電性樹脂組成物を調製することが好ましい。すなわち、導電性樹脂組成物を調製するに際し、まず、(ボウル形状の樹脂粒子の前々駆体である)熱膨張性マイクロカプセル、中実樹脂粒子及び(第一の)バインダーをあらかじめ混練して、一次混練物(マスターバッチ)を調製する(一次混練物調製工程)。この一次混練物を予め作製することにより、ボウル形状の樹脂粒子の前々駆体である熱膨張性マイクロカプセルに、複数個の中実樹脂粒子を容易に付着させることができる。
そして、この一次混練物を更に、(第二の)バインダーや他の成分(導電剤や加硫剤等の添加剤)と混練させることで、導電性樹脂組成物(二次混練物)を調製する(二次混練物調製工程)。なお、この際、一次混練物と混練させるバインダーや他の成分の少なくとも一部を予め別途混練しておいてもよい。また、上記第一のバインダーと、第二のバインダーとは同一のバインダーを用いてもよいし、異なるバインダーを用いてもよい。
そして、得られた導電性樹脂組成物(より具体的には、熱膨張性マイクロカプセル)を、このカプセルの膨張温度以上(例えば、150℃以上200℃以下)に加熱することにより、熱膨張性マイクロカプセルから中空形状の樹脂粒子を形成することができる。これにより、周囲(外周面)に複数個の中実樹脂粒子が保持(付着)された、ボウル形状の樹脂粒子の前駆体である中空形状の樹脂粒子を得ることができる。
このように、2段階の混練操作によって導電性樹脂組成物を調製することが好ましい。
なお、一次混練物の各成分の配合割合は、熱膨張性マイクロカプセルに中実樹脂粒子を付着させる観点から、以下のようにすることが好ましい。すなわち、バインダーが20質量%以上50質量%以下、熱膨張性マイクロカプセルが20質量%以上40質量%以下、中実樹脂粒子が30質量%以上50質量%以下であることが好ましい。一次混練物には、これらの成分以外に、可塑剤、滑材等を添加してもよい。一次混練の際の混練温度としては、熱膨張性マイクロカプセルの事前膨張防止の観点から、−10℃以上50℃以下が好ましい。
一次混練を行うことにより、熱膨張性マイクロカプセルのシェルの周囲に中実樹脂粒子を付着させることができる理由としては、熱膨張性マイクロカプセルと中実樹脂粒子とを高濃度で混練することができるからである。また、混練による温度の上昇と実測したせん断力(電力量等で代用してもよい。)から分散装置の撹拌速度を調節して強いせん断がかからないように調整することで、複数個の中実樹脂粒子を特定の配置で熱膨張性マイクロカプセルに容易に接触させることができる。
また、導電性樹脂組成物(二次混練物)を調製する際の二次混練の混練温度としては、熱膨張性マイクロカプセルの事前膨張防止の観点から、30℃以上100℃以下が好ましい。
導電性樹脂組成物を作製する際に用いる混練機としては、例えば、リボンブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、バンバリーミキサー及び加圧ニーダーが挙げられる。
また、添加剤として、加硫剤や加硫促進剤を用いる場合、これらの添加剤を導電性樹脂組成物に混練する際には、温度の上昇による樹脂(ゴム)の加硫の進行を防止するために、オープンロール等の開放型混練機を用いた混練を行うことが好ましい。
なお、一次混練と二次混錬とは、同一の混練条件(混練機、混練温度や混練時間等)で行ってもよいし、異なる混練条件で行ってもよい。
・予備被覆層の成形方法
導電性樹脂組成物から予備被覆層を形成する具体的な方法としては、例えば、クロスヘッドを具備する押出成形装置を用いる方法が挙げられる。この方法としては、例えば、接着剤を塗布した導電性の軸芯体を中心軸として、同軸上に円筒状に上記導電性樹脂組成物を被覆して、導電性の軸芯体と当該組成物を一体的に押出して作製する方法が挙げられる。クロスヘッドは、一般に電線や針金の被覆に用いられている装置であり、押出機のシリンダのゴム排出部に取り付けて使用されるものである。
また、導電性樹脂組成物から予備被覆層を形成する具体的な方法としては、例えば、ゴムチューブを形成し、接着剤を塗布した導電性の軸芯体を該チューブに挿入し、接着する方法が挙げられる。また、未加硫のゴムシートを、接着剤が塗布された導電性の軸芯体に被覆し、金型内で加硫を行う方法が挙げられる。
その後、必要に応じて、乾燥、硬化または架橋等を行うことにより、予備被覆層を得ることができる。なお、熱膨張性マイクロカプセルを用いて予備被覆層を形成する際には、後述する研磨工程より前に、少なくとも一度、そのカプセルの膨張温度以上に導電性樹脂組成物を加熱することが求められる。この加熱操作は、例えば、加硫操作と同時に行われてもよいし、軸芯体上に塗布した導電性樹脂組成物の乾燥操作と同時におこなわれてもよい。
(研磨工程)
次に、得られた予備被覆層の表面を研磨することにより、導電性樹脂層を形成する。この研磨工程により、予備被覆層に含有される中空形状の樹脂粒子の表面の一部(開口となる部分)を研磨することにより削除して、中空形状の樹脂粒子の一部を開口させて、ボウル形状の樹脂粒子とする。そして、ボウル形状の樹脂粒子の開口による凹部と、ボウル形状の樹脂粒子の開口のエッジによる凸部を形成する。この研磨工程を経ることにより、表面に露出した開口を有するボウル形状の樹脂粒子と、このボウル形状の樹脂粒子の外壁面に付着した複数個の中実樹脂粒子とを特定の配置に有する導電性樹脂層を得ることができる。
ここで、研磨工程を行うに際し、予備被覆層の厚み等に応じて、予備被覆層表面に中空形状の樹脂粒子が露出し、中空形状の樹脂粒子由来の凸部が形成されている場合と、予備被覆層中に中空形状の樹脂粒子が包含されている場合とが考えられる。研磨工程では、これらの状況に応じて研磨方法を適宜選択することができる。研磨方法としては、例えば、円筒研磨方法やテープ研磨法を使用することができる。しかしながら、特に、予備被覆層中に中空形状の樹脂粒子が包含されているような場合には、材料の研磨性の差を顕著に引き出す必要があるため、より速く研磨する条件が好ましい。この観点から、円筒研磨方法を使用することがより好ましい。円筒研磨機としては、トラバース方式のNC円筒研磨機、ブランジカット方式のNC円筒研磨機が例示できる。しかしながら、円筒研磨法の中でも、電子写真用ローラの長手方向を同時に研磨でき、研磨時間が短縮できるという観点から、ブランジカット方式を使用することが、更に好ましい。
図6に示すブランジカット方式の研磨機の説明図を用いて、具体的な研磨方法を説明する。ここで、図6(a)は、ブランジカット方式の研磨機の正面図であり、図6(b)は、ブランジカット方式の研磨機の側面図である。
まず、両者の軸方向が平行となるように、円筒研磨砥石20と、軸芯体及び予備被覆層を有するローラ(予備被覆ローラ)21とを配置する。次に、予備被覆ローラの露出部分(軸芯体部分)を保持する保持装置22で、予備被覆ローラの両端を保持する。符号23は、予備被覆ローラの回転方向を示し、符号24は、円筒研磨砥石の回転方向を示す。
そして、予備被覆層の外表面に円筒研磨砥石を侵入させ(切込み)、予備被覆層の表面を研削する(侵入工程)。その際、ブランジカット方式の円筒研磨砥石の回転数は、1000rpm以上4000rpm以下が好ましく、2000rpm以上4000rpm以下がより好ましい。また、円筒研磨砥石の予備被覆層への侵入速度は、5mm/min以上30mm/min以下が好ましく、10mm/min以上30mm/min以下がより好ましい。
次に、必要に応じて、円筒研磨砥石を侵入させた(侵入工程)後に、予備被覆層の研磨表面を慣らす操作(慣らし工程)を行ってもよい。具体的には、この操作は、0.1〜0.2mm/minの侵入速度で2秒間以内とすることが好ましい。
さらに、必要に応じて、最終的な切込み終了点において、スパークアウト操作(工程)(侵入速度0mm/minでの研磨操作)を行ってもよく、この操作時間は、3秒間以下であることが好ましい。
なお、研磨工程において、研磨を行う予備被覆ローラの回転数は、50rpm以上500rpm以下に設定することが好ましく、更には、200rpm以上に設定することがより好ましい。
これらの条件を満たす研磨工程を行うことで、予備被覆層の表面に、ボウル形状の樹脂粒子の開口による凹凸を、より容易に形成することができる。
(処理工程)
次に、導電性樹脂層の表面における硬度、電気抵抗及び摩擦係数等の物性を制御する観点から、表面を研磨した導電性樹脂層に対し、その表面に、紫外線や電子線による表面処理や、熱風や赤外線発生装置による加熱処理を行ってもよい。しかしながら、これらの物性を効率よく変化させる観点から、熱風炉による加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理温度は、表面硬度の形成とバインダーの劣化の観点から、160℃以上200℃以下が好ましい。
<電子写真画像形成装置>
電子写真画像形成装置は、本発明の一態様に係る電子写真用ローラを具備している。図7に、該電子写真画像形成装置の一態様の概略図を示す。この電子写真装置は、電子写真感光体、電子写真感光体の帯電装置、露光を行う潜像形成装置、現像装置、転写装置、電子写真感光体上の転写残トナーのクリーニング装置及び定着装置等から構成されている。
電子写真感光体39は、導電性基体上に感光層を有する回転ドラム型である。電子写真感光体39は、矢示の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電装置は、電子写真感光体39に所定の押圧力で当接されることにより接触配置される接触式の帯電ローラ30を有する。帯電ローラ30は、電子写真感光体39の回転に従い回転する従動回転であり、帯電用電源40から所定の直流電圧を印加することにより、電子写真感光体39を所定の電位に帯電する。
電子写真感光体39に静電潜像を形成する潜像形成装置(不図示)は、例えばレーザービームスキャナーなどの露光装置が用いられる。一様に帯電された電子写真感光体39に画像情報に対応した露光光31を照射することにより、静電潜像が形成される。
現像装置は、電子写真感光体39に近接又は接触して配設される現像スリーブ又は現像ローラ32を有する。電子写真感光体39の帯電極性と同極性に静電的処理されたトナー33を反転現像により、静電潜像を現像してトナー像を形成する。
転写装置は、接触式の転写ローラ34を有する。電子写真感光体39からトナー像を普通紙などの転写材35に転写する。転写材35は、搬送部材を有する給紙システム(不図示)により搬送される。
クリーニング装置は、ブレード型のクリーニング部材36、回収容器37を有し、転写した後、電子写真感光体上に残留する転写残トナーを機械的に掻き落とし回収する。ここで、現像装置にて転写残トナーを回収する現像同時クリーニング方式を採用することにより、クリーニング装置を省くことも可能である。
定着部材38は、加熱されたローラ等で構成され、転写されたトナー像を転写材35に定着し、機外に排出する。
本発明の電子写真用ローラは、電子写真装置において、帯電ローラ、現像ローラ及び転写ローラのうちの少なくとも一種として用いることができる。
<プロセスカートリッジ>
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の電子写真用ローラを有し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とする。図8に、本発明のプロセスカートリッジの一例の概略構成図を示す。このプロセスカートリッジは、電子写真感光体39、帯電ローラ30、現像ローラ32及びクリーニング部材36等を一体化し、電子写真装置に着脱可能に構成されている。また、本発明の電子写真用ローラは、プロセスカートリッジにおいて、帯電ローラ及び現像ローラのうちの少なくとも一種として用いることができる。
以下に、具体的な製造例及び実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
<製造例1>
〔カプセル粒子1の作製〕
イオン交換水4000質量部、分散安定剤としてコロイダルシリカ2質量部およびポリビニルピロリドン0.15質量部の水性混合液を調製した。次いで、アクリロニトリル50質量部、メタクリロニトリル45質量部及びメチルメタクリレート5質量部と、イソペンタン12.0質量部と、ジクミルパーオキサイド0.75質量部とからなる油性混合液を調製した。この油性混合液を、前記水性混合液に添加し、更に水酸化ナトリウム0.4質量部を添加することにより、分散液を調製した。
得られた分散液を、ホモジナイザーを用いて3分間攪拌混合し、窒素置換した重合反応容器内へ仕込み、100rpmの攪拌下、60℃で20時間反応させることにより、反応生成物を調製した。得られた反応生成物に対して、濾過と水洗を繰り返した後、80℃で5時間乾燥することでカプセル粒子を作製した。得られたカプセル粒子を音波式分級機により解砕して分級することによって、カプセル粒子(熱膨張性マイクロカプセル)1を得た。カプセル粒子1の以下に示す方法で測定した体積平均粒径は、20.0μmであった。
[カプセル粒子の体積平均粒径の測定]
カプセル粒子の体積平均粒径の測定を、レーザー回折型粒度分布計(商品名:コールターLS−230型粒度分布計、コールター社製)を用いて行った。測定には、水系モジュールを用い、測定溶媒として純水を使用した。純水にて粒度分布計の測定系内を約5分間洗浄し、消泡剤として測定系内に亜硫酸ナトリウムを10mg加えて、バックグラウンドファンクションを実行した。次に純水50ml中に界面活性剤(ステアリン酸ナトリウム水溶液)3滴を加え、更に測定試料(分級処理後のカプセル粒子)を10mg加えた。試料を懸濁した水溶液を超音波分散器で3分間分散処理を行い、被験試料液を調製した。前記測定装置の測定系内にこの被験試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDS(Polarization Intensity Differential Scattering)が45%以上55%以下になるように測定系内の被験試料濃度を調整して測定を行った。得られた体積分布から体積平均粒子径を算出した。
<製造例2>
〔カプセル粒子2の作製〕
イソペンタンの量を6.0質量部、ホモジナイザーの回転数を200rpmに変更した以外は、製造例1と同様の方法で、カプセル粒子2を得た。カプセル粒子2の体積平均粒径は8.0μmであった。
<製造例3>
〔カプセル粒子3の作製〕
イソペンタンの量を15.0質量部、ホモジナイザーの回転数を80rpmに変更した以外は、製造例1と同様の方法で、カプセル粒子3を得た。カプセル粒子3の体積平均粒径は33.5μmであった。
<製造例4>
〔一次混練物1の作製〕
密閉型ミキサー(体積5L)にて下記表1に示す材料を15分間混練し、一次混練物1を得た。仕込み量は、下記材料が下記比率で全量3000gとなるように調整した。ミキサーの回転数は、混練時の材料温度が60℃以下になるように調整した。
Figure 0006946149
<製造例5及び6>
〔一次混練物2及び3の作製〕
配合させるNBR及び中実樹脂粒子の量を変更した以外は製造例4と同様にして、一次混練物2及び3をそれぞれ作製した。具体的には、配合させるNBR及び中実樹脂粒子の量をそれぞれ、製造例5(一次混練物2)では、35質量%及び35質量%に変更し、製造例6(一次混練物3)では、30質量%及び40質量%に変更した。
<製造例7>
〔一次混練物4の作製〕
一次混練物を作製する際の材料を下記表2に示す内容と比率に変えた以外は、製造例4と同様にして一次混練物4を作製した。
Figure 0006946149
<製造例8及び9>
〔一次混練物5及び6の作製〕
配合させるNBR及び中実樹脂粒子の量を変更した以外は製造例7と同様にして、一次混練物5及び6をそれぞれ作製した。具体的には、配合させるNBR及び中実樹脂粒子の量をそれぞれ、製造例8(一次混練物5)では、35質量%及び35質量%に変更し、製造例9(一次混練物6)では、30質量%及び40質量%に変更した。
<製造例10>
〔一次混練物7の作製〕
一次混練物を作製する際の材料を下記表3に示す内容と比率に変えた以外は、製造例4と同様にして一次混練物7を作製した。
Figure 0006946149
<製造例11及び12>
〔一次混練物8及び9の作製〕
配合させるNBR及び中実樹脂粒子の量を変更した以外は製造例10と同様にして、一次混練物8及び9をそれぞれ作製した。具体的には、配合させるNBR及び中実樹脂粒子の量をそれぞれ、製造例11(一次混練物8)では、30質量%及び40質量%に変更し、製造例12(一次混練物9)では、25質量%及び45質量%に変更した。
<製造例13及び14>
〔一次混練物10及び11の作製〕
配合させる中実樹脂粒子の種類を、中実樹脂粒子(商品名:PM−200(材質:ポリエチレン樹脂)、平均粒径10.5μm、三井化学(株))に変更した。それ以外は製造例5及び6とそれぞれ同様にして、一次混練物10(製造例13)及び一次混練物11(製造例14)を作製した。
<製造例15>
〔一次混練物12の作製〕
一次混練物を作製する際の材料を下記表4に示す内容と比率に変えた以外は、製造例4と同様にして一次混練物12を作製した。
Figure 0006946149
<製造例16〜18>
〔一次混練物13〜15の作製〕
配合させる中実樹脂粒子の種類を、中実樹脂粒子(商品名:MBX−5(材質:アクリル樹脂)、平均粒径5.6μm、積水化学(株))に変更した。それ以外は、製造例5、6または15と同様にして、一次混練物13、14及び15(製造例16、17及び18)を作製した。
<製造例19〜21>
〔一次混練物16〜18の作製〕
配合させる中実樹脂粒子の種類を、中実樹脂粒子(商品名:エポスターM05(材質:メラミン樹脂)、平均粒径5.6μm、日本触媒(株))に変更した。それ以外は、製造例5、6及び15とそれぞれ同様にして、一次混練物16、17及び18(製造例16〜19)を作製した。
<製造例22>
〔一次混練物19の作製〕
一次混練物を作製する際の材料を下記表5に示す内容と比率に変えた以外は、製造例4と同様にして一次混練物19を作製した。
Figure 0006946149
[実施例1]
(導電性の軸芯体用意工程)
直径6mm、長さ252.5mmのステンレス鋼製の円筒状基体に、カーボンブラックを10質量%含有させた熱硬化性樹脂(ポリフェノール樹脂)を塗布し、乾燥させたものを、導電性の軸芯体として用意した。
(予備被覆層形成工程)
・導電性樹脂組成物調製工程
以下の表6に示す材料を、50℃に調節した密閉型ミキサーに加えて15分間混練して、A練りゴム組成物を得た。
Figure 0006946149
次いで、下記表7に示す材料を温度25℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練し、B練りゴム組成物(導電性樹脂組成物)を得た。
Figure 0006946149
・予備被覆層成形工程
次に、クロスヘッドを具備する押出成形装置を用いて、上述した導電性の軸芯体の外周面を、上記B練りゴム組成物で、1.0mmの厚さに被覆した。押出後のローラを、熱風炉にて160℃で1時間加熱して、B練りゴム組成物を加硫してゴム層を形成した。
次いで、ゴム層の両端部を切断除去して、ゴム層の軸方向の長さを224.2mmとした。引き続いて、温度160℃で1時間ゴム層を加熱して、厚さが、3.5mmの予備被覆層を有するローラ(以降、「予備被覆ローラ」ともいう)を作製した。なお、これらの加硫操作による熱で、B練りゴム組成物中のカプセル粒子が熱膨張され、中空形状の樹脂粒子が形成された。
(研磨工程)
予備被覆ローラの外周面を、図6に示すブランジカット式の円筒研磨機を用いて研磨した。具体的には、研磨砥粒としてピトリファイド砥石を用い、砥粒は緑色炭化珪素(GC)で粒度は100メッシュとした。予備被覆ローラの回転数を350rpmとし、研磨砥石の回転数を2050rpmとした。侵入(切り込み)速度を20mm/minとし、スパークアウト時間(切り込み0mmでの時間)を0秒と設定して研磨を行った。これにより、予備被覆層に含有される中空形状の樹脂粒子の表面の一部を研削させ、ボウル形状の樹脂粒子の開口が表面に露出した導電性樹脂層を有する導電性ローラを得た。導電性樹脂層の厚みは、1.5mmに調整した。尚、この導電性ローラのクラウン量は120μmであった。
(処理工程)
得られた導電性ローラを、熱風炉中で温度190℃で1時間加熱し、電子写真用ローラ1を得た。電子写真用ローラ1に対して、以下に示す測定及び評価を行った。
(ボウル形状の樹脂粒子の平均粒径及びボウル形状の樹脂粒子に接する中実樹脂粒子の数)
電子写真用ローラ1の表面に露出するボウル形状の樹脂粒子を任意に10個選択した。そして、軸芯体の表面に正投影した投影部の面に平行な面を切断面としてこの10個のボウル形状の樹脂粒子とその周囲の中実樹脂粒子をそれぞれ20nmずつ集束イオンビーム(商品名:FB−2000C、日立製作所社製)にて切り出しながら、断面画像を撮影した。得られた10個のボウル形状の樹脂粒子に対して、各断面画像を基に球形近似した直径をそれぞれ算出し、その平均値をボウル形状の樹脂粒子の球形近似による平均粒径とした。また、得られた各断面画像から、各ボウル形状の樹脂粒子に接している中実樹脂粒子の数を数えた。
その結果、電子写真用ローラ1のボウル形状の樹脂粒子の球形近似による平均粒径は、50.2μmであった。また、ボウル形状の樹脂粒子に接している中実樹脂粒子の数は、2.6個であった。
(ボウル形状の樹脂粒子及び中実樹脂粒子の配置)
電子写真用ローラ1の表面に露出するボウル形状の樹脂粒子を任意に10個選択した。そして、軸芯体の表面に正投影した投影部の面に平行な面を切断面としてこの10個のボウル形状の樹脂粒子とその周囲の中実樹脂粒子をそれぞれ20nmずつ集束イオンビーム(商品名:FB−2000C、日立製作所社製)にて切り出しながら、断面画像を撮影した。各断面画像に基づき、各ボウル形状の樹脂粒子の外壁面に接する中実樹脂粒子をそれぞれ抽出した。次に、これらの中実樹脂粒子の重心をそれぞれ前記断面画像から求めた。この求めた重心と、前記断面画像から、各ボウル形状の樹脂粒子の外壁面に接する中実樹脂粒子が、上記条件(v)を満たすか判断した。そして、この任意の10個のボウル形状の樹脂粒子に対して、上記方法により確認された条件(v)を満たす、ボウル形状の樹脂粒子の外壁面に接する中実樹脂粒子の個数の平均値を求めた。その結果、電子写真用ローラ1の導電性樹脂層に含有される、任意に選択した10個のボウル形状の樹脂粒子において、上記条件(v)を満たす中実樹脂粒子は、2.6個であった。
従って、電子写真用ローラ1の導電性樹脂層に含有されるボウル形状の樹脂粒子及び中実樹脂粒子は、上記条件(iv)及び(v)を満たす位置に配置されていることが分かった。
なお、後述の表8及び表10において、ボウル形状の樹脂粒子と中実樹脂粒子とが、条件(iv)及び(v)を満たしている場合を「Y」、満たしていない場合を「N」と表記した。
(導電性樹脂層及び中実樹脂粒子における圧縮弾性率の測定)
ピコデンターHM500(商品名、株式会社フィッシャー・インストルメント社製)を用いて、電子写真用ローラ1(より具体的には、導電性樹脂層)の圧縮弾性率(押し込み弾性率)を測定した。圧子としては、基部が正方形の角錐型ダイヤモンド圧子で、頂点を挟む対面角度が136°である圧子(ビッカース角錐)を用いた。測定は、電子写真用ローラ1の長手方向の中央部及び両端部(中央部から両端方向へ各90mmの位置)において行った。まず、顕微鏡を用いて、上記中央部及び両端部から、中実樹脂粒子の非存在部を任意にそれぞれ10点ずつ選定し、計30点の圧縮弾性率を測定した。そして、得られた30個の測定値から平均値を算出し、その平均値を導電性樹脂層の圧縮弾性率Gとした。
次に、顕微鏡を用いて、導電性樹脂層表面において、中実樹脂粒子が表面に露出している部分を、上記中央部及び両端部から任意にそれぞれ10点ずつ選定し、計30点の圧縮弾性率を測定した。そして、得られた30個の測定値から平均値を算出し、その平均値を中実樹脂粒子の圧縮弾性率Jとした。なお、導電性樹脂層表面に露出している中実樹脂粒子が存在しない場合には、導電性樹脂層の表面をトレミングして中実樹脂粒子を表面に露出させた。
上記方法より測定された電子写真用ローラ1のGは0.5MPaであり、Jは30MPaであった。
なお、後述の表8及び表10において、上記G及びJが、G<Jの関係を満たす場合を「Y」、満たさない場合を「N」と表記した。
(画像評価)
・異常放電に起因するポチ状画像の発生状況の評価
評価装置としては、図7に示す構成を有する電子写真画像形成装置であるヒューレットパッカード社製、HP Color LaserJet Enterprise CP4525n(商品名)をプロセススピードが370mm/secになるよう高速改造して使用した。プロセスカートリッジは、外径8.5mmの帯電ローラが装着可能で、かつ、片端で2.45N(0.25kgf)、両端で合計4.9N(0.5kgf)で押圧可能なバネに変更した。また、レーザプリンタの改造は、高圧電源の設定、モータのギア、紙搬送を適宜調節して行った。また、現像ブレードの固定位置の変更や、現像ブレードとプロセスカートリッジ容器との間にスペーサを挟むことで、現像ローラ上のトナー担持量が0.50mg/cmとなるよう調節した。
電子写真用ローラ1を帯電ローラとして上記プロセスカートリッジにセットして、温度15℃、相対湿度10%の低温低湿環境に24時間馴染ませた後、画像評価を行った。
20000枚出力後、ハーフトーン画像(電子写真感光体の回転方向に対して垂直な方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)を出力した。そして、得られたハーフトーン画像を目視にて観察し、異常放電に起因するポチ状画像の有無を、下記の基準に基づき評価した。
・評価基準
ランク1:ポチ状画像は認められない。
ランク2:軽微なポチ状画像が認められるのみである。
ランク3:一部に、ポチ状画像が帯電ローラのピッチで認められるが、実用上は問題ない。
ランク4:ポチ状画像が目立ち、画質の低下が認められる。
電子写真用ローラ1の評価結果は、ランク1であった。
[実施例2、3、10〜18]
上記表7に示す一次混練物1を、一次混練物2、3、10〜18にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法で、電子写真用ローラ2、3、10〜18をそれぞれ作製し、実施例1と同様の測定及び評価を行った。なお、電子写真用ローラ2、3、10〜12の画像評価の結果はランク1であり、電子写真用ローラ13〜15の画像評価の結果はランク2であった。また、実施例16〜18の画像評価の結果はランク3であった。
[実施例4〜6]
これらの実施例では、上記表6に示すバインダーの種類をNBR(商品名:N222L、JSR社製)に変更し、硫黄を1.0部から1.2部に変更した。さらに、上記表7に示す一次混練物1を、実施例4では一次混練物4に、実施例5では一次混練物5に、実施例6では一次混練物6にそれぞれ変更した。それら以外は、実施例1と同様の方法で、それぞれ電子写真用ローラ4〜6を作製し、実施例1と同様の測定及び評価を行った。電子写真用ローラ4〜6の画像評価の結果はいずれもランク1であった。
[実施例7〜9]
これらの実施例では、上記表6に示すバインダーの種類をNBR(商品名:N250SL,JSR社製)に変更し、硫黄を1.0部から0.8部に変更した。さらに、上記表7に示す一次混練物1を、実施例7では一次混練物7に、実施例8では一次混練物8に、実施例9では一次混練物9にそれぞれ変更した。それら以外は、実施例1と同様の方法で、それぞれ電子写真用ローラ7〜9を作製し、実施例1と同様の測定及び評価を行った。電子写真用ローラ7〜9の画像評価の結果はいずれもランク1であった。
各実施例に用いた各成分、並びに、得られた電子写真用ローラの測定及び評価結果等を、以下の表8に示す。
Figure 0006946149
[比較例1]
B練りゴム組成物(導電性樹脂組成物)の調製において、以下の点を変更した以外は実施例1と同様の方法で、電子写真用ローラ19を作製した。具体的には、上記表6に示す材料を50℃に調節した密閉型ミキサーにて15分間混練したのち、その混練物に、カプセル粒子1を6.0質量部と、中実樹脂粒子(商品名:XM−220、平均粒径30.2μm、三井化学(株))6.0質量部とを、粉体のまま添加した。さらに、下記表9に示す材料を添加して、これらの材料を、温度25℃に冷却した二本ロール機にて10分間混練し、導電性樹脂組成物を作製した。
Figure 0006946149
得られた電子写真用ローラ19に対して、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果、電子写真用ローラ19の導電性樹脂層に含有されるボウル形状の樹脂粒子の平均粒径は、50.2μmであった。また、ボウル形状の樹脂粒子に接している中実樹脂粒子の数は、0個であった。また、電子写真用ローラ19のGは0.5MPaであり、Jは30MPaであった。
さらに、電子写真用ローラ19の画像評価の結果は、ランク4であった。
[比較例2]
B練りゴム組成物(導電性樹脂組成物)を作製する際に、カプセル粒子1を6.0質量部粉体のまま添加する代わりに、上記一次混練物19を12.0質量部添加した以外は、比較例1と同様の方法で、電子写真用ローラ20を作製した。得られた電子写真用ローラ20に対して、実施例1と同様の測定及び評価を行った。電子写真用ローラ20の画像評価の結果はランク4であった。
[比較例3]
上記表6に示すバインダーの種類をNBR(商品名:N222L、JSR社製)に変更し、硫黄を1.0部から1.7部に変更した。さらに、上記表7に示す一次混練物1を、一次混練物16に変更した。それら以外は、実施例1と同様の方法で、それぞれ電子写真用ローラ21を作製し、実施例1と同様の測定及び評価を行った。電子写真用ローラ21の画像評価の結果はランク4であった。
各比較例に用いた各成分、並びに、得られた電子写真用ローラの測定及び評価結果等を、以下の表10に示す。
Figure 0006946149
1:開口(開口部)
1a:凹部
2:エッジ
2a:凸部
3:ボウル形状の樹脂粒子
4:シェル
4a:外壁面
5:中実樹脂粒子
6:バインダー
7:第1の投影円
7a:第1の投影円の重心
8:第2の投影円
8a:第2の投影円の重心
9:第3の投影円
9a:第3の投影円の重心
10:軸芯体の軸方向に平行な、第1の投影円の重心を通る直線
11:第2の投影円の重心と第3の投影円の重心とを通る線分
12:導電性の軸芯体
13:導電性樹脂層
14:導電性弾性層
30:帯電ローラ
32:現像ローラ
34:転写ローラ

Claims (6)

  1. 導電性の軸芯体と、該軸芯体上の表面層としての導電性樹脂層と、を有する電子写真用ローラであって、
    該導電性樹脂層は、バインダーおよび複数個の中実樹脂粒子を含み、
    開口を有するボウル形状の樹脂粒子を、該開口が該電子写真用ローラの表面に露出する状態で保持しており、
    該電子写真用ローラの表面は、該ボウル形状の樹脂粒子の開口に由来する凹部と、該ボウル形状の樹脂粒子の開口のエッジに由来する凸部とを有し、
    該ボウル形状の樹脂粒子の該凹部を形成しているシェルの外壁面に、該中実樹脂粒子の少なくとも2個が接しており、
    該ボウル形状の樹脂粒子を該軸芯体の表面に正投影させたときに、該軸芯体の表面に形成される投影円を第1の投影円とし、
    該ボウル形状の樹脂粒子の凹部を形成しているシェルの外壁面に接している該中実樹脂粒子を該軸芯体の表面に正投影させたときに該軸芯体の表面に形成される投影円をそれぞれ第2の投影円および第3の投影円としたとき、
    該ボウル形状の樹脂粒子と、該ボウル形状の樹脂粒子の凹部を形成しているシェルの外壁面に接している該中実樹脂粒子とは、
    該第2の投影円の少なくとも一部が該第1の投影円と重なり、該第3の投影円の少なくとも一部が該第1の投影円と重なり、かつ、
    該第2の投影円の重心と該第3の投影円の重心とを通る線分が、該軸芯体の軸方向に平行に延びる、該第1の投影円の重心を通る直線と交点を有するように、位置しており、
    該導電性樹脂層の圧縮弾性率をG、該中実樹脂粒子の圧縮弾性率をJとしたとき、下記数式(1)および数式(2)を満たすことを特徴とする電子写真用ローラ:
    数式(1)
    G<J
    数式(2)
    0.1MPa≦G≦10MPa 。
  2. 前記ボウル形状の樹脂粒子の球形近似による平均粒径が、10μm以上、100μm以下である請求項1に記載の電子写真用ローラ。
  3. 前記中実樹脂粒子の球形近似による平均粒径が、1μm以上、50μm以下である請求項1または2に記載の電子写真用ローラ。
  4. 前記中実樹脂粒子が、ポリエチレン樹脂およびアクリル樹脂から選ばれる樹脂を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真用ローラ。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真用ローラを有し、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真用ローラを具備することを特徴とする電子写真画像形成装置。
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