JP6943787B2 - ラップドvベルト及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、農業機械用ベルト式クラッチなどに用いられるラップドVベルト及びその製造方法に関する。
摩擦伝動により動力を伝達するVベルトには、摩擦伝動面が露出したゴム層であるローエッジ(Raw−Edge)タイプ(ローエッジVベルト)と、摩擦伝動面(V字状側面)が外被布(カバー布)で覆われたラップド(Wrapped)タイプ(ラップドVベルト)とがあり、摩擦伝動面の表面性状(ゴム層と外被布との摩擦係数)の違いから用途に応じて使い分けられている。
通常、外被布(カバー布)としては、内部のゴム層との接着性を確保する目的で、ゴム組成物が付着した布帛(帆布等)が用いられる。例えば、ゴム組成物を溶剤に溶かしたゴム糊をソーキング(浸漬)処理したり、固形状のゴム組成物をフリクション(擦り込み)処理した布帛が用いられる。そのため、外被布のベルト表面に現われる部分にはゴムが付着している。
例えば、農業機械用ベルト式クラッチにはラップドVベルトが使われており、このクラッチの機構に図1及び2を用いて説明する。この機構は、駆動(Dr)プーリと従動(Dn)プーリとの間に掛架したラップドVベルト1に対して、クラッチプーリ(テンションプーリ)2を使用してクラッチ操作を行う機構であり、図1に示すように、クラッチONにてベルトに張力を与えて動力を伝達し、図2に示すように、クラッチOFFにてベルトの張力を緩めて動力の伝達を遮断する機構である。このような機構においては、クラッチON時の衝撃を緩和するため、またクラッチOFF時のクラッチ切れを良くするために、ベルト表面(外被布の表面)のゴム付着量を可能な限り少なくしたラップドVベルトが使われている。また、この種のベルトは、外被布に付着しているゴムが走行時にゴム粉として飛散するのを避ける環境のもとでも使われている。
このようなベルト表面(外被布の表面)のゴム付着量を少なくしたラップドVベルトについて、実用新案登録第3079705号公報(特許文献1)には、カバー帆布の少なくともベルト表面に現れる部分はレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液のみで接着処理したラップドVベルトが開示されている。また、特許第3404104号公報(特許文献2)には、帆布層のベルト両側面のプーリ溝両側面に接触する部分では、帆布の表面のゴムが取り除かれて前記帆布の裏面のみにゴムが付着されたラップドVベルトが開示されている。
しかし、これらのベルトでも、ベルト製造時に、外被布の布目(経糸と緯糸との織り目)などの開口部からベルト表面にゴムがにじみ出てくることがある。
また、本用途では、ベルトを使用(走行)させた場合にも、外被布の摩耗により、外被布の布目などの開口部からのゴムの露出が促進されやすい環境にある。
詳しくは、クラッチプーリONにてベルトに張力を与え、動力伝達を開始する場合、クラッチプーリがベルトに張力を与える瞬間は、伝動機構に強い衝撃が加わり、急激な張力が掛かってベルトが急発進する。そのため、瞬時にベルトとDrプーリの間で強制スリップが発生し、そのスリップにより、プーリとの接触面の摩耗が促進される。その結果、摩耗により外被布の布目などの開口部が拡くと、内部からゴムがゴム粉として露出し、ベルトやプーリの表面に付着していく。
なお、クラッチプーリOFFにてベルトの張力を緩めて動力伝達を遮断する場合、ベルト表面にゴムが付着していると、ゴムの粘着性によりプーリとベルトとの「連れ廻り」が生じ、クラッチ切れが悪くなる。「連れ廻り」とは、クラッチが切れたあとも、Drプーリの回転につられてベルトが廻り、Dnプーリも廻る現象である。特に、前述の強制スリップが連続して起こると、この不具合が顕著に生じる。
実用新案登録第3079705号公報(請求項1) 特許第3404104号公報(請求項1)
従って、本発明の目的は、製造時及び使用時のゴムの滲出を抑制でき、ベルト表面(外被布の表面)のゴム付着量を低減できるラップドVベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、クラッチ切れがスムーズにでき、使用時にゴム粉の飛散がなく、クリーンな環境で走行できるラップドVベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、破損や摩耗、寸法変化を抑制でき、耐久性を向上できるラップドVベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、外被布とベルト本体との間に熱可塑性樹脂層を介在させることにより、製造時及び使用時のゴムの滲出を抑制でき、ベルト表面のゴム付着量を低減できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明のラップドVベルトは、外被布とベルト本体との間に熱可塑性樹脂層が介在している。前記熱可塑性樹脂層は、ポリオレフィンを含んでいてもよい。本発明のラップドVベルトにおいて、前記外被布は織布であり、かつ前記外被布におけるゴム成分の含有割合が、外被布全体に対して15質量%以下であってもよい。最表面の外被布の平均厚みは、熱可塑性樹脂層の平均厚みに対して1〜30倍程度である。前記外被布は、最表面に位置する第1の外被布と、第2の外被布とを含んでいてもよく、前記第1の外被布と前記第2の外被布との間に熱可塑性樹脂層が介在してもよい。
本発明には、外被布と未加硫ベルト本体との間に、熱可塑性樹脂層用成形体を介在させ、この熱可塑性樹脂層用成形体を溶融加熱して熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂層形成工程を含む前記ラップドVベルトの製造方法も含まれる。前記熱可塑性樹脂層用成形体は布帛(特に不織布)であってもよい。本発明の製造方法では、熱可塑性樹脂層用成形体を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度で加熱し、未加硫ベルト本体を加硫するとともに、熱可塑性樹脂層を形成してもよい。
本発明では、外被布とベルト本体との間に熱可塑性樹脂層が介在しているため、製造時及び使用時のゴムの滲出を抑制でき、ベルト表面(外被布の表面)のゴム付着量を低減できる。詳しくは、ベルトの製造時に、外被布の布目などの開口部からベルト表面にゴムがにじみ出てくるのを抑制できる。また、ベルトの使用時に、クラッチ操作においてクラッチプーリがベルトを逆曲げして、急激な張力を与える瞬間に、ベルトとDrプーリの間で強制スリップが発生して、プーリと接触する外被布表面が摩耗しても、内部のゴムがゴム粉として露出するのを抑制できる。
その結果、表面(外被布のベルト表面に現われる部分)のゴム付着量が可能な限り少ないベルトとなるため、ゴムの粘着による「連れ廻り」がなく、クラッチ切れ(クラッチOFFにて動力伝達を遮断する)がスムーズにできる。さらに、使用時(ベルト走行時)にゴム粉の飛散がなく、クリーンな環境での走行が可能である。
さらに、外被布を特定の布帛で構成し、熱可塑性樹脂層をポリオレフィンで構成すると、破損や摩耗、寸法変化を抑制でき、耐久性を向上できる。
図1は、農業機械用ベルト式クラッチにおいて、クラッチがONの状態を示す模式図である。 図2は、農業機械用ベルト式クラッチにおいて、クラッチがOFFの状態を示す模式図である。 図3は、本発明のラップドVベルトの一例の概略断面図である。 図4は、本発明のラップドVベルトの他の例の概略断面図である。 図5は、外被布が1プライであるラップドVベルトにおける外被布と熱可塑性樹脂層用成形体との仮融着を説明するための模式図である。 図6は、外被布が2プライであるラップドVベルトにおける未加硫ベルト本体を外被布及び熱可塑性樹脂層用成形体で被覆した状態を示す模式図である。 図7は、外被布が2プライであるラップドVベルトにおける外被布と熱可塑性樹脂層用成形体との仮融着を説明するための模式図である。 図8は、外被布が2プライであるラップドVベルトにおける未加硫ベルト本体を外被布及び熱可塑性樹脂層用成形体で被覆した状態を示す模式図である。 図9は、実施例及び比較例で得られたラップドVベルトの走行試験を説明するための概略図である。 図10は、実施例で得られたラップドVベルトの概略断面図である。
以下に、必要により添付図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
本発明のラップドVベルトは、外被布とベルト本体との間に熱可塑性樹脂層が直接又は間接的に介在していればよく、熱可塑性樹脂層が介在することを除いて、慣用のラップドVベルトであってもよい。慣用のラップドVベルトは、内周側の圧縮層(圧縮ゴム層)と外周側の伸張層(伸張ゴム層)との間に心線を埋設した無端状でV字状断面のベルト本体と、前記ベルト本体のV字状断面の周囲をベルト周長方向の全長に渡って被覆する外被布(カバー布)とからなり、前記外被布で被覆されたV字状断面の左右の両側面が摩擦伝動面とされたVベルトであってもよい。
図3は、本発明のラップドVベルトの一例の概略断面図である。図3に示すように、ラップドVベルト10は、ベルト外周側の伸張層(伸張ゴム層又は上芯ゴム層)11a、ベルト内周側の圧縮層(圧縮ゴム層又はV芯ゴム層)11c、及び前記伸張層11aと圧縮層11cとの間にベルト長手方向(周長方向)に沿って埋設された芯体11bで形成された無端状のベルト本体11と、このベルト本体の周囲をベルト周方向の全長に亘って被覆している外被布12(織物、編物、不織布など)と、前記ベルト本体11と前記外被布12との間に介在する熱可塑性樹脂層13とで形成されている。この例では、芯体11bは、ベルト幅方向に所定間隔で配列した心線(撚りコード)であり、伸張層11aと圧縮層11cとに接して、両層の間に介在している。ラップドVベルトは、この構造に限定されず、例えば、圧縮層11cと伸張層11aとの間には、芯体11bと伸張層11a又は圧縮層11cとの接着性を向上させるため、接着層を介在させてもよい。芯体11bは、伸張層11aと圧縮層11cとの間に埋設されていればよく、例えば、圧縮層11cに埋設されていてもよく、伸張層11aに接触させつつ圧縮層11cに埋設させてもよい。さらに、芯体11bは、前記接着層に埋設されていてもよく、圧縮層11cと接着層との間又は接着層と伸張層11aとの間に埋設されていてもよい。
この例では、熱可塑性樹脂層により、ベルト本体を構成するゴム層のゴム組成物が外被布の開口部(布目)から滲み出るのをブロックできる。さらに、熱可塑性樹脂層がバインダー機能を有し、外被布とベルト本体との密着力を向上できる。そのため、本発明のラップドVベルトでは、外被布には、ゴム成分を含む慣用の接着成分を用いた接着処理が不要となるため、ベルト表面(外被布表面)のゴム付着量を低減できる。例えば、接着処理を施さない布帛を用いることもできるため、外被布の少なくともベルト表面に現れる部分に接着成分が付着していないラップドVベルトも製造できる。これに対して、慣用のラップドVベルトでは、布帛単体ではベルト本体と充分な接着ができないため、接着成分(ゴム成分や樹脂成分)を含む接着処理剤で処理をした布帛を外被布として用いており、接着処理剤に含まれるゴム成分がベルト表面に露出する。
図4は、本発明のラップドVベルトの他の例の概略断面図である。このラップドVベルト20では、外被布22が2プライ(2層)であり、表面側(外層)の第1の外被布22aと、ベルト本体側(内層)の第2の外被布22bとの間に、熱可塑性樹脂層23が介在しており、ベルト本体は、図3のラップドVベルトと同一である。
この例では、第1の外被布22aが図3における外被布としての機能を有しており、第2の外被布22bは、慣用の外被布と同一であってもよい。そのため、第2の外被布22bは、例えば、ゴム組成物を溶剤に溶かしたゴム糊をソーキング(浸漬)する処理、固形状のゴム組成物をフリクション(擦り込み)する処理などの接着処理を施した布帛であってもよい。すなわち、第2の外被布22bは、少なくとも本体ゴム層との接着性を高めるため、本体ゴム層と接する面には接着処理(ゴム成分の付着)が必要となる。
以下に、ベルトを構成する熱可塑性樹脂層、補強布及びベルト本体並びにベルトの製造方法の詳細を説明する。
[熱可塑性樹脂層]
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂を含んでいる。熱可塑性樹脂は、ベルト本体と外被布とのバインダー機能を発現し易い点から、圧縮層や伸張層などのゴム層を構成するゴム組成物の加硫温度で溶融する熱可塑性樹脂であればよく、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂など)、ポリカーボネート(脂肪族ポリカーボネートなど)、ポリアミド(脂肪族ポリアミドなど)、ポリウレタン(ポリエステル型ポリウレタンなど)などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
熱可塑性樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの結晶性樹脂であってもよく、ポリスチレンなどの非晶性樹脂であってもよいが、脆くなく、耐摩耗性に優れ、クラックを防止できる点から、結晶性樹脂が好ましい。また、汎用性に優れる点から、ポリオレフィン及び/又はポリウレタンが好ましく、ポリオレフィンが特に好ましい。
ポリオレフィンのうち、ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂が好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低、中又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−(4−メチルペンテン−1)共重合体などが挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリエチレン系樹脂のうち、低密度ポリエチレンが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレンと共重合可能なモノマーとの共重合体(プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸共重合体などの二元共重合体;プロピレン−エチレン−ブテン−1などの三元共重合体)などが含まれる。これらのポリプロピレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリプロピレン系樹脂のうち、ポリプロピレンなどのプロピレンの単独重合体などが好ましい。
これらのうち、加硫温度で容易に融解し、かつ適度な耐熱性も有する点などから、ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂が好ましく、容易に溶融してバインダー機能を発現し、ベルトの耐久性を向上できる点から、低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂が特に好ましい。ポリエチレン系樹脂を用いると、溶融流動性に優れるため、外被布に十分に浸透するためか、外被布とゴムとの接着力を向上でき、ベルト走行の安定性に繋がっていると推定できる。
熱可塑性樹脂の融点は、ベルト本体と本体を形成するためのゴム組成物の加硫温度以下であればよく、加硫温度より0〜100℃、好ましくは3〜80℃、さらに好ましくは5〜70℃(特に10〜60℃)低い融点を有する。通常、融点は100〜180℃、好ましくは110〜175℃、さらに好ましくは130〜173℃(特に160〜170℃)程度である。
熱可塑性樹脂層は、必要に応じて、慣用の添加剤、例えば、増強剤、充填剤、金属酸化物、可塑剤、加工剤又は加工助剤、着色剤、カップリング剤、安定剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、熱安定剤など)、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。添加剤の割合は、熱可塑性樹脂層全体に対して10質量%以下(例えば0.1〜5質量%)程度である。すなわち、熱可塑性樹脂層全体に対して熱可塑性樹脂の割合は90質量%以上であってもよく、実質的に熱可塑性樹脂のみで形成されていてもよい。
熱可塑性樹脂層の平均厚みは、例えば0.01〜0.5mm、好ましくは0.02〜0.3mm、さらに好ましくは0.03〜0.25mm(特に0.05〜0.2mm)程度である。熱可塑性樹脂層の厚みが薄すぎると、ゴム成分が滲出する虞があり、厚すぎると、ベルトの機械的特性が低下する虞がある。
熱可塑性樹脂層の原料(熱可塑性樹脂層用成形体)の形態は、特に限定されず、通常、粒子状、シート状、繊維状などである。これらの形態のうち、ベルト生産性を向上できる点から、繊維状が好ましい。繊維状の原料としては、不織布、織布、編布などを利用でき、不織布を好適に利用できる。
熱可塑性樹脂層は、繊維構造を有する布帛を用いて得られる場合、原料由来の繊維構造は、消失してもよく、残存していてもよい。また、熱可塑性樹脂層は、繊維形状が残存した繊維状部と、繊維形状が消失した非繊維状部とが混在した構造であってもよい。熱可塑性樹脂層全体に対する非繊維状部の割合は、通常80%以下であり、バインダー機能に優れる点から、例えば50%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下である。本明細書及び特許請求の範囲において、非繊維状部の割合は、断面積の電子顕微鏡写真に基づいて、断面積における面積割合として算出する。
原料である布帛(特に、不織布)の目付量は10〜50g/m程度の範囲から選択でき、例えば12〜30g/m、好ましくは13〜28g/m、さらに好ましくは15〜25g/m程度である。
布帛(特に、不織布)の平均厚みは、例えば0.01〜0.5mm、好ましくは0.03〜0.3mm、さらに好ましくは0.05〜0.25mm(特に0.14〜0.23mm)程度である。
熱可塑性樹脂層のベルト本体と接触する側の面は、ベルト本体との接着性を向上させるために、接着処理されていてもよい。接着処理としては、例えば、接着性成分[例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物]を有機溶媒(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン等)に溶解させた樹脂系処理液、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)、ゴム組成物を有機溶媒に溶解させたゴム糊などの接着処理剤での表面処理(例えば、コーティング処理など)などが挙げられる。接着処理剤(固形分)の割合は、熱可塑性樹脂層全体に対して30質量%以下(例えば0.01〜10質量%)程度である。熱可塑性樹脂層の原料が不織布などの布帛である場合、接着処理された接着成分は、熱可塑性樹脂層のベルト本体側において、被膜を形成していてもよく、界面で熱可塑性樹脂と混在又は複合化してもよい。
[外被布]
外被布は、慣用の布帛で形成されている。布帛としては、例えば、織布、編布(緯編布、経編布)、不織布などの布材などが挙げられる。これらのうち、平織、綾織、朱子織などの形態で製織した織布、経糸と緯糸との交差角が90°を超え120°以下程度の広角度で製織した織布、編布などが好ましく、一般産業用や農業機械用の伝動ベルトのカバー布として汎用されている織布[経糸と緯糸との交差角が直角である平織布、経糸と緯糸との交差角が90°を超え120°以下程度の広角度である平織布(広角度帆布)]が特に好ましい。さらに、耐久性が要求される用途では、広角度帆布であってもよい。
布帛を構成する繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド系繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維、アラミド繊維など)、ポリアルキレンアリレート系繊維[ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリC2−4アルキレンC8−14アリレート系繊維など]、ビニルアルコール系繊維(ポリビニルアルコール繊維、エチレン−ビニルアルコール共重合体繊維、ビニロン繊維など)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維;セルロース系繊維、羊毛などの天然繊維;炭素繊維などの無機繊維が汎用される。これらの繊維は、単独で使用した単独糸であってもよく、二種以上を組み合わせた混紡糸であってもよい。
これらの繊維のうち、機械的特性及び経済性に優れる点から、セルロース系繊維を含むのが好ましい。セルロース系繊維の割合は、繊維全体に対して50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
セルロース系繊維には、セルロース繊維(植物、動物又はバクテリアなどに由来するセルロース繊維)、セルロース誘導体の繊維が含まれる。セルロース繊維としては、例えば、木材パルプ(針葉樹、広葉樹パルプなど)、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維(綿繊維(コットンリンター)、カポックなど)、ジン皮繊維(麻、コウゾ、ミツマタなど)、葉繊維(マニラ麻、ニュージーランド麻など)などの天然植物由来のセルロース繊維(パルプ繊維);ホヤセルロースなどの動物由来のセルロース繊維;バクテリアセルロース繊維;藻類のセルロースなどが例示できる。セルロース誘導体の繊維としては、例えば、セルロースエステル繊維;再生セルロース繊維(レーヨン、キュプラ、リヨセルなど)などが挙げられる。
布帛を構成する繊維の平均繊度は、例えば5〜30番手、好ましくは10〜25番手、さらに好ましくは10〜20番手程度である。
布帛(原料布帛)の目付量は、例えば100〜500g/m、好ましくは200〜400g/m、さらに好ましくは250〜350g/m程度である。
布帛(原料布帛)が織布の場合、布帛の糸密度(経糸及び緯糸の密度)は、例えば60〜100本/50mm、好ましくは70〜90本/50mm、さらに好ましくは75〜85本/50mm程度である。
外被布は、単層であってもよく、多層(例えば2〜5層、好ましくは2〜4層、さらに好ましくは2〜3層程度)であってもよいが、生産性などの点から、単層(1プライ)又は2層(2プライ)が好ましい。また、耐久性の点からは、多層が好ましく、生産性と耐久性とのバランスに優れる点から、2層が特に好ましい。
本発明のラップドVベルトは、熱可塑性樹脂層を有するため、外被布(特に、単層における外被布、又は多層における最表層の外被布)はベルト本体との接着性を向上させるための接着処理は不要であるが、布帛の種類によっては、接着性成分[例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物]を有機溶媒(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン等)に溶解させた樹脂系処理液や、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)を用いて接着処理してもよい。特に、布帛が広角度帆布である場合、角度を固定するために、RFL液の熱処理物で固着してもよい。
外被布(特に単層における外被布、又は多層における最表層の外被布)は、従来のラップドVベルトの外被布と異なり、ゴム成分の含有量が少なく、例えば、ゴム成分の割合は、外被布全体に対して15質量%以下(例えば1〜10質量%)、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下(例えば0.01〜1質量%)程度である。ゴム成分の含有量が多すぎると、ゴムの滲出が問題となる虞がある。本発明では、外被布のゴム成分の含有量が少ないため、外被布自身からのゴムの滲出も抑制できる。
外被布(特に単層における外被布、又は多層における最表層の外被布)は、後述するベルト本体(圧縮層及び伸張層)の項で例示された添加剤及び/又は短繊維をさらに含んでいてもよい。添加剤及び短繊維の合計割合は、外被布全体に対して10質量%以下(例えば0.1〜5質量%)程度である。すなわち、外被布全体に対して布帛の割合は90質量%以上であってもよく、実質的に布帛のみで形成されていてもよい。
外被布が多層である場合、最表層以外の外被布は、慣用の外被布であってもよい。慣用の外被布は、ベルト本体との接着性を向上させるために、ゴム成分が付着した布帛であってもよい。ゴム成分が付着した外被布は、例えば、ゴム組成物を溶剤に溶かしたゴム糊をソーキング(浸漬)する処理、固形状のゴム組成物をフリクション(擦り込み)する処理などの接着処理を施した布帛であってもよい。特に、最表層以外の外被布は、少なくともベルト本体との接着性を高めるため、ベルト本体と接する面には接着処理して、ゴム成分を付着させるのが特に好ましい。
外被布の平均厚み(多層の場合、各層の平均厚み)は、ベルトの種類などに応じて適宜選択できるが、例えば0.4〜2mm、好ましくは0.5〜1.4mm、さらに好ましくは0.6〜1.2mm程度であってもよい。外被布の厚みが薄すぎると、ゴム放熱性が低下する虞があり、厚すぎると、ベルトの耐屈曲性が低下する虞がある。なお、本明細書及び特許請求の範囲では、外被布の平均厚みは、走査型電子顕微鏡写真(SEM)に基づいて測定でき、任意の5箇所以上の平均値として求める。
外被布の平均厚み(多層の場合は、最表面の第1の外被布の平均厚み)は、熱可塑性樹脂層の平均厚みに対して、例えば1〜30倍、好ましくは2〜20倍、さらに好ましくは3〜15倍(特に5〜10倍)程度である。外被布の平均厚みが小さすぎると、耐摩耗性が低下する虞があり、大きすぎると、ゴム成分が滲出する虞がある。
[ベルト本体]
圧縮層及び伸張層を形成する加硫ゴムとしては、公知のゴム成分及び/又はエラストマーから選択でき、例えば、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴム(水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマーを含む)など)、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。これらの成分は単独又は組み合わせて使用できる。これらのゴム成分のうち、ジエン系ゴム(天然ゴム、クロロプレンゴム、水素化ニトリルゴムなど)、エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMなど)などのエチレン−α−オレフィン系ゴム)などが好ましく、クロロプレンゴムが特に好ましい。
圧縮層又は伸張層全体(又はゴム組成物全量)に対するゴム成分の割合は、例えば20質量%以上(例えば25〜80質量%)、好ましくは30質量%以上(例えば35〜75質量%)、さらに好ましくは40質量%以上(特に45〜70質量%)であってもよい。
圧縮層又は伸張層(又はこれらの層を形成するゴム組成物)は、ゴム成分の種類に応じて選択された加硫剤又は架橋剤[例えば、硫黄系加硫剤(硫黄、塩化硫黄など)、オキシム類(キノンジオキシムなど)、グアニジン類(ジフェニルグアニジンなど)、有機過酸化物(ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイドなど)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化亜鉛など)など]、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤などを含んでいてもよい。加硫剤又は架橋剤の割合は、ゴム成分100質量部に対して1〜20質量部(特に2〜15質量部)程度である。加硫助剤の割合は、ゴム成分100質量部に対して0.01〜10質量部(特に0.1〜5質量部)程度である。加硫促進剤の割合は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜15質量部(特に0.3〜10質量部)程度である。
圧縮層又は伸張層は、さらに各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤(配合剤)としては、公知の添加剤、例えば、補強剤(カーボンブラック、含水シリカなどの酸化ケイ素など)、短繊維(綿やレーヨンなどのセルロース系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維など)、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなど)、可塑剤、軟化剤(パラフィンオイル、ナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィンなど)、老化防止剤(芳香族アミン系老化防止剤、ベンズイミダゾール系老化防止剤など)、接着性改善剤[レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、ヘキサメトキシメチルメラミンなどのメラミン樹脂、これらの共縮合物(レゾルシン−メラミン−ホルムアルデヒド共縮合物など)など]、着色剤、粘着付与剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤などが例示できる。これらの添加剤は単独で又は組み合わせて使用でき、これらの添加剤はゴムの種類や用途、性能などに応じて選択できる。
添加剤の割合は、ゴム成分の種類などに応じて適宜選択できる。例えば、補強剤(カーボンブラックなど)割合は、ゴム100質量部に対して、10質量部以上(例えば20〜150質量部)、好ましくは20質量部以上(例えば25〜120質量部)、さらに好ましくは30質量部以上(例えば35〜100質量部)、特に40質量部以上(例えば50〜80質量部)であってもよい。
圧縮層の厚みは、ベルトの種類などに応じて適宜選択でき、例えば1〜30mm、好ましくは1.5〜25mm、さらに好ましくは2〜20mm程度であってもよい。
伸張層の厚みは、ベルトの種類などに応じて適宜選択できるが、例えば0.5〜10mm、好ましくは0.7〜8mm、さらに好ましくは1〜5mm程度であってもよい。
接着層は、前記の通り、必ずしも必要ではない。接着層(接着ゴム層)は、例えば、前記圧縮層と同様のゴム組成物(クロロプレンゴムなどのゴム成分を含むゴム組成物)で構成できる。接着層のゴム組成物は、さらに接着性改善剤(レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、アミノ樹脂など)を含んでいてもよい。
接着層の厚みは、例えば0.2〜5mm、好ましくは0.3〜3mm、さらに好ましくは0.5〜2mm程度であってもよい。
なお、前記圧縮層、伸張層及び接着層のゴム組成物において、ゴム成分は同系統又は同種のゴムを使用する場合が多い。
芯体としては、特に限定されないが、通常、ベルト幅方向に所定間隔で配列した心線(撚りコード)を使用できる。心線は、特に限定されず、例えば、ポリエステル系繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、ポリアミド系繊維(アラミド繊維など)などの合成繊維、炭素繊維などの無機繊維などを含んでいてもよい。
心線としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。心線の平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば0.5〜3mm、好ましくは0.6〜2mm、さらに好ましくは0.7〜1.5mm程度であってもよい。心線は、ベルトの長手方向に埋設されていてもよく、さらにベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に埋設されていてもよい。
ゴム成分との接着性を改善するため、心線は、必要に応じて、界面活性剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物、イソシアネート化合物などで表面処理(接着処理)してもよい。
[ラップドVベルトの製造方法]
本発明のラップドVベルトは、外被布と未加硫ベルト本体との間に、熱可塑性樹脂層用成形体を介在させ、この熱可塑性樹脂層用成形体を溶融加熱して熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂層形成工程を経て得られ、熱可塑性樹脂層形成工程以外の工程については、ラップドVベルトの慣用の製造方法における工程を利用できる。ラップドVベルトの製造方法としては、例えば、特開平6−137381号公報、WO2015/104778号パンフレットに記載の方法なども利用できる。
未加硫ベルト本体の製造方法は、慣用の方法を利用でき、例えば、圧延処理して得られた未加硫の圧縮層用シートを裁断してマントルにセッティングした後、芯体を巻き付け、巻き付けた芯体の上にさらに未加硫の伸張層用シートを巻き付ける巻付け工程、得られた環状の積層体をマントル上で切断(輪切り)する切断工程、切断した環状積層体を一対のプーリに架け渡し、回転させながらV形状に切削加工するスカイビング工程を経て得ることができる。慣用の方法では、得られた未加硫ベルト本体は、外被布によってラッピング(被覆)し、加硫工程に供されるが、本発明の方法では、熱可塑性樹脂層用成形体を仮融着した外被布でラッピングし、加硫工程に供してもよく、熱可塑性樹脂層用成形体をラッピングした後、外被布でラッピングし、加硫工程に供してもよい。外被布及び熱可塑性樹脂層用成形体でラッピングされた未加硫ベルト本体は、この加硫工程によって、熱可塑性樹脂層用成形体が溶融加熱され、熱可塑性樹脂層が形成される。
具体的には、外被布が単層であり、外被布に熱可塑性樹脂層用成形体(特に、不織布)を仮融着する場合は、例えば、図5に示すように、ラッピング前に、一方の面が接着処理32された熱可塑性樹脂層用成形体31の接着処理されていない他方の面に、外被布33を仮融着し、得られた積層体で未加硫ベルト本体をラッピングし、加硫工程に供してもよい。なお、この例では、熱可塑性樹脂層用成形体は接着処理しているが、接着処理されていない熱可塑性樹脂層用成形体であってもよい。
仮融着のための温度は、熱可塑性樹脂層形成工程において、熱可塑性樹脂層用成形体を溶融加熱して熱可塑性樹脂層を形成する温度よりも低い温度が好ましい。具体的には、仮融着の温度は、熱可塑性樹脂層用成形体を構成する熱可塑性樹脂の融点以下の温度、例えば、融点より0〜50℃、好ましくは3〜40℃、さらに好ましくは5〜30℃低い温度であってもよい。仮融着の温度が高すぎると、生産性が低下する虞がある。
また、外被布が単層であり、外被布に熱可塑性樹脂層用成形体を仮融着しない場合は、例えば、図6に示すように、接着処理32された熱可塑性樹脂層用成形体31で、接着処理面を未加硫ベルト本体34と接触させて、未加硫ベルト本体34をラッピングした後、外被布33で、熱可塑性樹脂用成形体31をラッピングし、加硫工程に供してもよい。
一方、外被布が2層であり、最表層である第1の外被布に熱可塑性樹脂層用成形体を仮融着する場合は、例えば、図7に示すように、ラッピング前に、熱可塑性樹脂層用成形体41の一方の面には、最表層の第1の外被布42を仮融着し、他方の面には、両面を接着処理44した第2の外被布43を仮融着し、得られた積層体で未加硫ベルト本体をラッピングし、加硫工程に供してもよい。なお、この例では、第2の外被布の両面を接着処理しているが、熱可塑性樹脂層用成形体と接触する面は、接着処理しなくてもよい。また、仮融着もいずれか一方の面のみ仮融着してもよい。
また、外被布が2層であり、外被布に熱可塑性樹脂層用成形体を仮融着しない場合は、例えば、図8に示すように、両面が接着処理44された第2の外被布43で、未加硫ベルト本体45をラッピングした後、熱可塑性樹脂層用成形体41で、前記第2の外被布43をラッピングし、さらに第1の外被布42で、前記熱可塑性樹脂層用成形体41をラッピングし、加硫工程に供してもよい。
熱可塑性樹脂層形成工程において、熱可塑性樹脂層用成形体を溶融加熱して熱可塑性樹脂層を形成する方法は、特に限定されないが、生産性などの点から、ベルト本体の加硫工程の加硫温度で熱可塑性樹脂層を形成するのが好ましい。加硫温度は、ゴム成分の種類に応じて選択でき、例えば120〜200℃、好ましくは150〜180℃程度である。
詳しくは、図5〜8で示される態様などにより、熱可塑性樹脂層用成形体及び外被布でラッピングした未加硫状態の未加硫ベルト本体を金型に装着して、加硫成形を行い、加硫されたラップドVベルトが得られる。すなわち、ラップドVベルトの完成とともに、熱可塑性樹脂層も同時に形成され、外被布とベルト本体とが熱可塑性樹脂層を介在して一体化する。例えば、熱可塑性樹脂層用成形体が不織布である場合、加硫(熱処理)において、不織布を構成する熱可塑性繊維が溶融して非繊維状又は部分的な非繊維状になり、冷却により固化する。不織布の熱処理物が、ベルト本体のゴム層と外被布とのバインダーになり外被布とベルト本体とが一体化されるとともに、両者の間に熱可塑性樹脂層として介在したベルトとなる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下に、ゴム組成物の使用原料、ゴム組成物の調製方法、使用した繊維材料、各物性の測定方法又は評価方法などを示す。
[ゴム組成物の使用原料]
クロロプレンゴム:DENKA(株)製「PM−40」
酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製「キョーワマグ30」
ステアリン酸:日油(株)製「ステアリン酸つばき」
老化防止剤:精工化学(株)製「ノンフレックスOD−3」
カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
可塑剤:ADEKA(株)製「RS−700」
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーTT」
酸化亜鉛:正同化学工業(株)製「酸化亜鉛3種」。
[圧縮層、伸張層又は接着層用シート状ゴム組成物]
表1に示す配合Aのゴム組成物をバンバリーミキサーでゴム練りし、この練りゴムをカレンダーロールに通して所定厚みの未加硫圧延ゴムシートとして、圧縮層用シート及び伸張層用シートをそれぞれ作製した。また、表1に示す配合Bのゴム組成物を用い、上記と同様にして、接着層用シートを作製した。
Figure 0006943787
[フリクション用塊状ゴム組成物]
表2に示す配合Cのゴム組成物をバンバリーミキサーでゴム練りし、フリクション用の塊状未加硫ゴム組成物を調製した。
Figure 0006943787
[使用した繊維材料]
心線、外被布及び熱可塑性樹脂層を形成するために使用した繊維材料を表3に示す。
Figure 0006943787
[外被布及び熱可塑性樹脂層の平均厚み]
外被布及び熱可塑性樹脂層の平均厚みは、走査型電子顕微鏡写真(SEM)を用いて、任意の5箇所以上の厚みを測定し、平均して求めた。
[ベルト走行試験]
実施例及び比較例で得られたラップドVベルトを用いて、図9に示すように、直径80mmの駆動(Dr)プーリ、直径160mmの従動(Dn)プーリ、直径60mmのテンション(Ten)プーリを配置した試験機を用い、表4に示す条件でベルトを300時間走行し、各種特性を評価した。この試験では、ベルトはクラッチ操作により、瞬間的に張力を与えられ、張力を与えられたベルトが急発進すると、Drプーリとの間で強制スリップ(プーリは回転しているが、ベルトがプーリの回転に追随できない状態)する。
Figure 0006943787
実施例1
円筒状ドラムの外周面に、圧縮層用シート、接着層用シート、心線、及び伸張層用シートを、順次積層して貼着し、未加硫ゴム層と心線とが積層した筒状の未加硫スリーブを形成した。得られた未加硫スリーブを、円筒状ドラムの外周に配置された状態で、周方向に切断し、環状の未加硫ゴムベルトを形成した。
次に、未加硫ゴムベルトをドラムから取り外し、未加硫ゴムベルトの両側面を所定の角度で切削(スカイブ)し、未加硫ゴムベルトの断面形状を、V字状断面に形成した。図10に示すように、V字状断面の未加硫ゴムベルト51(伸張層51a、心線51b、接着層51c、圧縮層51dからなるベルト)に対して、その周囲を不織布A(熱可塑性樹脂層を形成するための低密度ポリエチレン不織布)53及び織布A(外被布を形成するための綿の織布)52で順次覆うカバー巻き処理を施し、未加硫ベルト成形体を形成した。
得られた未加硫ベルト成形体を、リングモールドの凹溝に挿入した。さらに、リングモールド及び未加硫ベルト成形体の外周面に円筒状のゴムスリーブを嵌め込んだ状態で、それらを加硫缶に収納し、加硫温度160℃で加硫を行い、加硫ベルトを得た。得られた加硫ベルトを、リングモールドから取り外して、B形のラップドVベルト(JIS K6323、断面寸法:幅16.5mm×厚み11.0mm、ベルト長さ44インチ)を得た。外被布の平均厚みは、0.5mmであり、熱可塑性樹脂層の平均厚み0.05mmであった。また、熱可塑性樹脂層における非繊維状部の割合は10%であった。得られたラップドVベルトについて、各層の構成を表5に示し、走行試験の評価結果を表6に示す。
実施例2
外被布を形成するための綿の織布として、織布Aの代わりに織布Bを用いる以外は、実施例1と同様にしてラップドVベルトを得た。得られたラップドVベルトについて、各層の構成を表5に示し、走行試験の評価結果を表6に示す。
実施例3
熱可塑性樹脂層を形成するための不織布として、不織布Aの代わりに不織布Bを用いる以外は、実施例1と同様にしてラップドVベルトを得た。得られたラップドVベルトについて、各層の構成を表5に示し、走行試験の評価結果を表6に示す。
実施例4
熱可塑性樹脂層を形成するための不織布として、不織布Aの代わりに不織布Cを用いる以外は、実施例1と同様にしてラップドVベルトを得た。得られたラップドVベルトについて、各層の構成を表5に示し、走行試験の評価結果を表6に示す。
実施例5
V字状断面の未加硫ゴムベルトに対して、不織布A及び織布Aの代わりに、図7及び8に示すように、フリクション処理した織布A、不織布A及びフリクション処理していない織布Aで順次覆うカバー巻き処理を施す以外は、実施例1と同様にしてラップドVベルトを得た。なお、フリクション処理した織布Aは、織布Aのベルト本体と接触する片面のみに、フリクション用塊状ゴム組成物を、表面速度の異なる2本のロールの間隙に織布と同時に通過させて布目にゴムを擦り込む方法でフリクション処理した。得られたラップドVベルトについて、各層の構成を表5に示し、走行試験の評価結果を表6に示す。
比較例1
織布Aのベルト本体と接触する片面のみに、フリクション用塊状ゴム組成物を、表面速度の異なる2本のロールの間隙に織布と同時に通過させて布目にゴムを擦り込む方法でフリクション処理した。外被布を形成するための織布として、このフリクション処理した織布Aを使用し、かつ不織布Aを使用しない以外は、実施例1と同様にしてラップドVベルトを得た。得られたラップドVベルトについて、各層の構成を表5に示し、走行試験の評価結果を表6に示す。
Figure 0006943787
Figure 0006943787
表6の結果から、滲みによるゴムの露出が多い比較例1のベルトは摩擦係数が大きく特にVプーリと接触する、ベルト側面の摩耗が促進される。一方、実施例1〜5は滲みがなく摩擦係数が極めて小さいのでプーリがベルトを滑るため側面の摩耗が少ない。
以上の理由から、実施例は寸法(幅)変化が微小であり側面の摩耗量も少ない結果であった。側面摩耗量の差異は側面状態に表れている。摩耗の加速によりゴムが露出した比較例は、度々連れ廻りを起している。連れ廻りが起きると、従動側に連結した作業が完全に停止しなくなり不具合や危険を伴う。更に比較例では摩耗時に発する発熱が高く、ゴムが早期に硬化するために圧縮ゴムのクラック(亀裂)が複数発生したが、摩耗の少ない実施例に破損現象(クラック/亀裂)は発生しなかった。クラッチ操作時、ベルトに張力が与えられる瞬時の発音は聞き取りによる官能評価であるが差異が出ている。
本発明のラップドVベルトは、コンプレッサー、発電機、ポンプなどの一般産業用機械やコンバイン、田植え機、草刈り機などの農業機械などに利用でき、テンションプーリを使用してクラッチ操作する農業機械に適している。
1,10…ラップドVベルト
2…クラッチプーリ
11…ベルト本体
12,22…外被布
13,23…熱可塑性樹脂層

Claims (7)

  1. 外被布とベルト本体との間に熱可塑性樹脂層が介在するラップドVベルトであって、
    前記外被布が糸密度60〜100本/50mmの織布であり、
    前記外被布におけるゴム成分の含有割合が、外被布全体に対して15質量%以下であり、かつ
    最表面の外被布の平均厚みが、前記熱可塑性樹脂層の平均厚みに対して1〜30倍であるラップドVベルト
  2. 熱可塑性樹脂層がポリオレフィンを含む請求項1記載のラップドVベルト。
  3. 外被布が、最表面に位置する第1の外被布と、第2の外被布とを含み、前記第1の外被布と前記第2の外被布との間に熱可塑性樹脂層が介在する請求項1又は2記載のラップドVベルト。
  4. 外被布と未加硫ベルト本体との間に、熱可塑性樹脂層用成形体を介在させ、この熱可塑性樹脂層用成形体を溶融加熱して熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂層形成工程を含む請求項1〜のいずれかに記載のラップドVベルトの製造方法。
  5. 熱可塑性樹脂層用成形体が布帛である請求項記載の製造方法。
  6. 布帛が不織布である請求項記載の製造方法。
  7. 熱可塑性樹脂層用成形体を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度で加熱し、未加硫ベルト本体を加硫するとともに、熱可塑性樹脂層を形成する請求項のいずれかに記載の製造方法。
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