JP6942343B2 - 磁性材料およびその製造方法 - Google Patents
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Description
特に、本発明は、α−(Fe,M)相とM成分(ここでM成分とは、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上の成分を言う。)富化相をナノ分散した磁性材料を用いることによって実現される飽和磁化と低い保磁力よりも更に優れた飽和磁化と保磁力を達成することが可能な新しい磁性材料とその製造方法を提供することを目的とする。
(1) FM成分(ここでFM成分とは、Feを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分である)とM成分(ここでM成分とは、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)を含むbcc構造の結晶を有する第1相と、M成分を含む相であって、その相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量(原子%)が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量(原子%)よりも多い第2相とを含む、軟磁性又は半硬磁性の磁性材料。
(2) 磁性材料が軟磁性である、(1)に記載の磁性材料。
(3) 第1相中のFM成分中のFe量(原子%)とNi及び/又はCo量(原子%)がそれぞれ、そのFM成分を構成する全成分の総和を100原子%として、50.01原子%以上99.999原子%以下と0.001原子%以上49.99原子%以下である、(1)又は(2)に記載の磁性材料。
(4) 第1相が、FM100−xMx(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33.33であり、FMはFeを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分であり、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)の組成式で表される組成を有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の磁性材料。
(5) 磁性材料全体中のFM成分とM成分の含有量(原子%)の総和を100原子%とした場合に、磁性材料中のNi及び/又はCoの含有量(原子%)が、前記M成分の含有量(原子%)以下である、(3)又は(4)に記載の磁性材料。
(6) 第1相が、FM100−x(M100−yTMy)x/100(ここで、x、yは原子百分率で0.001≦x≦33.33、0.001≦y<50であり、FMはFeを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分であり、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上であり、TMはTi、Mnのいずれか1種以上である)の組成式で表される組成を有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の磁性材料。
(7) 第2相が、FM成分とM成分を含むbcc構造の結晶を有し、その相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分含有量(原子%)が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量(原子%)に対して1.5倍以上105倍以下の量、及び/又は2原子%以上100原子%以下の量である、(1)〜(6)のいずれかに記載の磁性材料。
(8) 第2相が、FM成分とM成分を含むbcc構造の結晶を有し、その相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のNi及び/又はCoの含有量(原子%)が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のNi及び/又はCoの含有量(原子%)に対して、10−5倍以上0.909倍未満の量又は1.1倍以上105倍以下の量である、(1)〜(7)のいずれかに記載の磁性材料。
(9) 第2相がM成分を含有する酸化物相を含む、(1)〜(8)のいずれかに記載の磁性材料。
(10) 第2相が、M−フェライト相又はウスタイト相の少なくとも1種を含む、(1)〜(9)のいずれかに記載の磁性材料。
(11) FM成分とM成分を含むbcc構造の結晶を有する相の体積分率が磁性材料全体の5体積%以上である、(1)〜(10)のいずれかに記載の磁性材料。
(12) 磁性材料全体の組成に対して、FM成分が20原子%以上99.998原子%以下、M成分が0.001原子%以上50原子%以下、O成分が0.001原子%以上55原子%以下の範囲の組成を有する、(9)又は(10)に記載の磁性材料。
(13) 第1相若しくは第2相、又は磁性材料全体の平均結晶粒径が1nm以上10μm未満である、(1)〜(12)のいずれかに記載の磁性材料。
(14) 少なくとも第1相が、FM100−xMx(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33.33であり、FMはFeを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分であり、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)の組成式で表されるbcc相を有し、そのbcc相の結晶子サイズが1nm以上100nm以下である、(1)〜(13)のいずれかに記載の磁性材料。
(15) 少なくとも第1相が、FM100−xMx(但し、xは原子百分率で0.001≦x≦1であり、FMはFeを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分であり、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)の組成式で表されるbcc相を有し、そのbcc相の結晶子サイズが1nm以上200nm以下である、(1)〜(13)のいずれかに記載の磁性材料。
(16) 粉体の形態の磁性材料であって、軟磁性の磁性材料の場合には10nm以上5mm以下の平均粉体粒径を有し、半硬磁性の磁性材料の場合には10nm以上10μm以下の平均粉体粒径を有する、(1)〜(15)のいずれかに記載の磁性材料。
(17) 第1相又は第2相の少なくとも1相が隣り合う相と強磁性結合している、(1)〜(16)のいずれかに記載の磁性材料。
(18) 第1相と第2相が、直接、又は金属相若しくは無機物相を介して連続的に結合し、磁性材料全体として塊状を成している状態である、(1)〜(17)のいずれかに記載の磁性材料。
(19) 平均粉体粒径が1nm以上1μm未満のM−フェライト粉体を、水素ガスを含む還元性ガス中で、還元温度400℃以上1500℃以下にて還元することによって(16)に記載の磁性材料を製造する方法。
(20) 平均粉体粒径が1nm以上1μm未満のM−フェライト粉体を、水素ガスを含む還元性ガス中で還元し、不均化反応により第1相と第2相を生成させることによって、(1)〜(17)のいずれかに記載の磁性材料を製造する方法。
(21) (19)又は(20)に記載の製造方法によって製造される磁性材料を焼結することによって、(18)に記載の磁性材料を製造する方法。
(22) (19)に記載の製造方法における還元工程後に、又は(20)に記載の製造方法における還元工程後若しくは生成工程後に、又は(21)に記載の製造方法における焼結工程後に、最低1回の焼鈍を行う、軟磁性又は半硬磁性の磁性材料を製造する方法。
特に、本発明によれば、α−(Fe,M)相とM成分(ここでM成分とは、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上の成分を言う。)富化相をナノ分散した磁性材料を用いることによって実現される飽和磁化と低い保磁力よりも更に優れた飽和磁化と保磁力を達成することが可能な新しい磁性材料とその製造方法を提供することができる。
本発明によれば、飽和磁化が高く、渦電流損失の小さな磁性材料、特に高回転モータなどにも好適に利用される軟磁性材料、さらに耐酸化性の高い、又は磁気飽和抑制能や高周波吸収能などの要求性能に答えられる各種軟磁性材料及び半硬磁性材料を提供することができる。
本発明によれば、フェライトのように粉体材料の形態で使用できるので、焼結などにより容易にバルク化でき、そのため、既存の薄板である金属系軟磁性材料を使用することによる積層などの煩雑な工程やそれによるコスト高などの問題も解決することができる。
本発明で言う「磁性材料」とは、「軟磁性」と称される磁性材料(即ち、「軟磁性材料」)と「半硬磁性」と称される磁性材料(即ち、「半硬磁性材料」)のことである。ここで、「軟磁性材料」とは、保磁力が800A/m(≒10Oe)以下の磁性材料のことで、「半硬磁性材料」とは、保磁力が800A/mを超え40kA/m(≒500Oe)以下の磁性材料のことである。優れた軟磁性材料とするには、低い保磁力と高い飽和磁化或いは透磁率を有し、低鉄損であることが重要である。鉄損の原因には、主にヒステリシス損失と渦電流損失があるが、前者の低減には保磁力をより小さくすることが必要で、後者の低減には材料そのものの電気抵抗率を高くすることや実用に供する成形体全体の電気抵抗を高くすることが重要になる。半硬磁性材料では、用途に応じた適切な保磁力を有し、飽和磁化や残留磁束密度が高いことが要求される。中でも高周波用の軟磁性或いは半硬磁性材料では、大きな渦電流が生じるため、材料が高い電気抵抗率を有すること、また粉体粒子径を小さくすること、或いは板厚を薄板或いは薄帯の厚みとすることが重要になる。
本発明で言う「M−フェライト」とは、マグネタイトFe3O4のFe成分をM成分で置換した材料のことであり、M成分とはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのいずれか1種以上のことであり、M成分は単にMと記載されることがある。また、M成分酸化物とはM成分と酸素Oが結合した物質又は材料のことで、そのうち非磁性(本願では非常に磁性の低い場合も含む)であるものを言う。さらに「TM成分」又は「TM」と記載された場合、それらは、Ti、Mnのうちのいずれか一種以上を言う。
「FM成分」とは、Feを必ず含み、且つNi及び/又はCoがFeの一部を置換することにより含んでなる成分のことを言い、この成分は強磁性の性質を有する。Ni及び/又はCoのFeに対する置換量は、後述するように0.001原子%以上49.99原子%以下であることが好ましい。本発明では、FM成分を主成分とする相の結晶構造がbcc構造であることが大部分で、その結晶構造がα−Feと同等であるため、その場合に限りFM成分を主成分とする相をα−FM相と呼ぶ。この場合、更にFeが主体である場合には、α−Fe相と呼ぶこともある。また、本発明においては「FM−M」など式中又は文章中で単に「FM」と書かれていても、上記定義の「FM成分」を意味する。
また、本発明では、フェライト、フェリヒドライト、ウスタイト、ヘマタイト、オキシ水酸化鉄などと呼ぶ場合、含有されている強磁性成分がFeのみでなく、Feの一部をNi及び/又はCoで置換している場合も含まれる。
「磁性粉体」は、一般に磁性を有する粉体のことであるが、本願では、本発明の磁性材料の粉体を「磁性材料粉体」と呼ぶこともある。つまり、「磁性材料粉体」は「磁性粉体」に含まれる。
なお、本発明では、成分含有量を単に「含有量」と表記することがあるが、これには、原子比や原子百分率(%)で示す場合も含まれる。但し、成分含有量を原子百分率(%)で示す場合には、「含有量(原子%)」と表記することもある。
本発明において、第1相は、FM成分とM成分を含むbcc構造の立方晶(空間群Im3m)を結晶構造とする結晶である。上述のとおり、FM成分は、Feを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分を意味し、M成分は、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上を意味する。
第1相のFM成分に含まれるFeとNi及び/又はCoの各含有量(原子%)は、FM成分を構成する全成分の総和(総含有量)を100原子%とすると、好ましくは、Feが50.01原子%以上99.999原子%以下で、Ni及び/又はCoが0.001原子%以上49.99原子%以下である。
第1相のM成分含有量(原子%)は、その相中に含まれるFM成分とM成分の総和(総含有量)を100原子%とすると、好ましくは0.001原子%以上33.33原子%以下である。この場合、第1相の組成は、組成式を用いると、FM100−xMx(xは原子百分率で0.001≦x≦33.33)と表される。
このbcc構造を有するFM−M組成の第1相は、Feの室温相であるα相と結晶の対称性が同じであるので、本願では、これをα−(FM,M)相とも称する。
M成分にCrを含むとき、特に飽和磁化が大きな軟磁性材料又は半硬磁性材料となる。 M成分としてV、Cr、Moを使用することは、還元処理や焼鈍処理における降温速度に大きく依存せず、本発明のナノ微結晶を容易に製造できる点で有効である。M成分としてZr、Hf、Cr、V、Zn、Ta、Cu、Siを使用すると異方性磁場を低減させるので、本発明の軟磁性材料の成分として好ましい。
M成分としてZr、Hf、V、Nb、Ta、Mo,Wを使用すると、第1相のM成分含有量を100原子%とした時の原子百分率で1原子%以下の添加でも、還元工程での「不適切な粒成長」を抑えることが可能である。
M成分としてCu、Znを使用することは、耐酸化性や成形性を向上させるので好ましい。
さらに、TM成分を共添加すると、上記の効果のみならず、低い保磁力と高い磁化が両立する特異な相乗効果が発現され得る。例えば、第1相がFM100−xMx(xは原子百分率で0.001≦x≦33.33)の組成式を有する場合に、そのM成分がTM成分によって0.01原子%以上50原子%未満の範囲で置換されたとすると、その組成式は、FM100−x(M100−yTMy)x/100(x、yは原子百分率で0.001≦x≦33.33、0.001≦y<50、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのいずれか1種以上、TMはTi,Mnのうち1種以上)で表される。いずれのTM成分においても、第1相のM成分含有量を100原子%としたときの原子百分率で0.001原子%以上の添加が、上記の共添加による効果の観点から好ましく、50原子%未満の添加が、本発明の磁性材料におけるM成分による諸効果の阻害防止という観点から好ましい。
このNiとCoはM成分と同様、Fe成分中で不均化しており、相内におけるこれら成分の含有量は概ね、±4.76%よりも大きい揺らぎが存在することがある。具体的には、10原子%のCo含有量を有する材料を例に挙げると、各相のCo含有量が9.524より小さい相と10.476原子%より大きい相が存在することがあるということである。これは、FM成分とM成分を含むbcc構造の結晶を有する相(本願では「第1相」とも呼ぶ)とは区別される別相を更に含んでおり(この別相を本願では「第2相」とも呼ぶ)、その相(第2相)に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のNi及び/又はCoの含有量(原子%)が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のNi及び/又はCoの含有量(原子%)に対して0.909未満の量であるか、又は1.1倍以上の量であることを意味する。
このように、本発明では、M成分だけでなく、FM成分中に存在するNiやCoが不均化することによって、第1相と第2相の磁気異方性にさらなる差や微細な組成揺らぎを有する構造が生まれ、その組成の揺らぎが多様化したり安定化したりすることにより、低い及び/又は安定な保磁力を有する軟磁性材料となったり、角形比の増した半硬磁性材料とすることができる。
ここでNi量及び/又はCo量とは、特に断わらない限り、それぞれ、それらを含有するFM成分を構成する全成分の総和に対する量(原子比)のこと(即ち、当該FM成分に対する量(原子比)のこと)である。通常、第1相はFe、Ni及び/又はCoから構成されているため、その場合は、その相に含まれるFe、Ni、Coの総和(本願では、総量と称することもある。)に対するそのNiとCoの原子比の値をいう。Ni及び/又はCoの量は「Ni及び/又はCoの量」或いは「Ni/Co量」とも言う。本願では、この原子比の値を原子百分率として表す(即ち、FM成分を構成する全成分の総和を100原子%として表す)場合もある。また、本願では、「Ni及び/又はCoの量」或いは「Ni/Co量」は、Coは含まれずNiのみ含まれている場合は単に「Ni量」、Niは含まれずCoのみ含まれている場合は単に「Co量」とも言う。
なお、「FM成分とM成分の総和に対するNi及び/又はCoの含有量」(本発明では単に「Ni及び/又はCoの含有量」或いは「Ni/Co含有量」とも言う)と言った場合は、Ni及び/又はCoのFeに対する量を計算する上での分母、即ち全体量は、FM成分だけでなくM成分も含まれ、当該FM成分とM成分の総和に対するNi及び/又はCoの量(原子比)を意味することになる。本願では、この原子比の値を原子百分率として表す(即ち、FM成分とM成分の総和を100原子%として表す)場合もある。
本発明では第1相中のNi/Co量は、FM成分を構成する全成分の総和を100原子%とした場合には、0.001原子%以上49.99原子%以下が好ましい。さらに、FM成分とM成分の総和を100原子%とした場合、FM成分含有量は66.67原子%以上99.999原子%以下、M成分含有量は0.001原子%以上33.33原子%以下が好ましい。従って、「FM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のNi及び/又はCoの含有量」(即ち、Ni/Co含有量)の上記好ましい範囲は、第1相中において、上記FM成分含有量のうちの0.001原子%以上49.99原子%以下の範囲ということになる。Ni/Co含有量は、Coは含まれずNiのみ含まれている場合はNi含有量、Niは含まれずCoのみ含まれている場合はCo含有量と言う。
Ni/Co含有量は、磁性材料全体に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合の値が、M成分の含有量より多くなると(即ち、磁性材料全体中のFM成分とM成分の含有量(原子%)の総和を100原子%とした場合に、その磁性材料中のNi/Co含有量(原子%)が、このM成分含有量(原子%)を超えると)、M成分の不均化による相分離を妨げることがあるので合成条件の選択は注意を要する。特にCo量によっては、M成分の不均化による相分離を低減し、保磁力を高く及び/又は不安定にすることがある。また、磁性材料全体に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のNi/Co含有量を0.001原子%未満とすると、低い及び/又は安定な保磁力を有する軟磁性材料とする等の効果が消失するので、安定した磁性材料の製造が難しくなることがある。換言すると、磁性材料全体に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のNi/Co含有量を、0.001原子%以上M成分含有量以下に限定することによって、特異な合成条件とせずとも、本発明の目的を達せられる好ましい組成範囲の磁性材料とすることができる。
第1相中において、Ni量は、その相中のFM成分に対して49.99原子%以下にすることが、磁化の低下を抑制するうえで好ましい。また、Ni量が20原子%以下であると、製造方法や条件によっては、2Tを超える磁化が実現できるのでより好ましい。さらにNi量が12原子%以下であると、飽和磁化が2.1Tを超える磁性材料を製造することもできる。また、0.001原子%以上にすることが、Fe単独の場合と異なり、Ni添加の効果による軟磁性領域での磁気特性の調整を可能にさせる点で好ましい。最も好ましいNi量の範囲は、第1相中のFM成分に対して0.01原子%以上20原子%以下であり、この領域では、製造条件により、様々な保磁力の軟磁性材料を調製することができ、より好ましい電磁気特性を有した磁性材料となる。
第1相中において、Co量は、その相中のFM成分に対して49.99原子%以下にすることが、磁化の低下を抑制するうえで好ましい。製造方法や条件によっては、2.3Tを超える巨大な磁化が実現できる。さらにCo量が、第1相中のFM成分に対して33.33原子%以下であると、2.4Tを超える巨大飽和磁化を有する磁性材料を製造できる。このように、純鉄(飽和磁化2.16T)よりも10%程度も大きな巨大な飽和磁化が得られることがCoを含む本発明の磁性材料の大きな特徴である。
加えて、幅広いCo量域において、純鉄を凌ぐ大きな飽和磁化を示す磁性材料が得られるということも、これまでには無い本材料に固有の特徴である。さらに、Co量を、第1相中のFM成分に対して0.001原子%以上にすることが、Fe単独の場合と異なり、Co添加の効果による軟磁性領域での磁気特性の調整を可能にさせる点で好ましい。特に好ましいCo量の範囲は、第1相中のFM成分に対して0.01原子%以上33.33原子%以下であり、この領域では、製造条件により、様々な保磁力の軟磁性材料を調製することができ、より好ましい電磁気特性を有した磁性材料となる。
なお「不適切な粒成長」とは、本発明の磁性材料のナノ微細組織が崩れ、均質な結晶組織を伴いながら結晶が粒成長することである。一方、本発明で適切とする「粒成長」は、本発明の特徴であるナノ微細構造を維持しながら粉体粒径が大きく成長するか、粉体粒径が大きく成長した後に不均化反応、相分離などにより結晶内にナノ微細構造が現れるか、或いはその両方である場合のいずれかである。特に断らない限り、本発明で単に「粒成長」と言う場合は、不適切でない粒成長のことを言い、概ね適切と言える粒成長を指すものとする。なお、適切な粒成長と不適切な粒成長のいずれの粒成長が起こった場合でも、単位質量当たり、或いは単位体積当たりの磁性材料の表面積が小さくなることから、一般に耐酸化性が向上する傾向にある。
本発明において、第2相は、該相に含まれるFM成分とM成分の総和に対するM成分の含有量が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和に対するM成分の含有量よりも多い相である。換言すると、本発明において、第2相は、該相に含まれるFM成分とM成分の総和に対するM成分の原子百分率が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和に対するM成分の原子百分率よりも大きい相である。第2相としては、立方晶である、α−(FM1−yMy)相(空間群Im3m、第1相と同じ結晶相であるが、第1相よりもM成分含有量が多い相)、SiFe相(空間群P213)、γ−(Fe,M)相(空間群Fm3m、γ−(FM,M)相とも言う)、ウスタイト相(代表的組成は(FM1−zMz)aO相、aは通常0.85から1未満、本明細書では、この相を単に(M,FM)O相、(FM,M)O相と標記する場合もある)、M成分−フェライト相(代表的組成は(FM1−wMw)3O4相)、Cu相(空間群Fm3m)、Nb相(空間群Im3m)、Ta相(空間群Im3m)、β−クリストバライト相(SiO2)、α−FeV相など、六方晶であるラーベス相(代表的組成例はWFe2相、MoFe2相)、α−Hf相(20原子%程度までのOが含まれる場合もある)、ZnO(ウルツ鉱型、空間群P63mc) 、β−トリディマイト(SiO2)など、三方晶系のα−石英(SiO2)など、菱面体晶であるM−ヘマタイト相(代表的組成はFM1−uMuO3相)、Cr2O3相など、正方晶系のβ−クリストバライト相(SiO2)、σ−FeV相、Cr5Si3相、NbO2相など、単斜晶系であるZrO2相、α−トリディマイト(SiO2)など、斜方晶のV2O5相、Ta2O5相など、Zr25Fe75共析点組成相(組成比は有効数字2桁で記載)など、又はそれらの混合物が挙げられる。なお、アモルファス相、共晶点組成相及び共析点組成相(本願では、「アモルファス相など」とも呼ぶ)に関しては、M成分含有量や還元条件によって異なるが、アモルファス相などが存在する際には、前述した既存のナノ結晶−アモルファス相分離型材料のような微結晶が島状となってアモルファスの海に浮かぶような微細構造は取らずに、第1相と分離して島状に存在することが多い。アモルファス相などの含有量は0.001から10体積%の間であって、これよりも多くしないのが、磁化の低下抑制の観点から好ましく、さらに高磁化の磁性材料とするためには、好ましくは5体積%以下とする。アモルファス相などは、不均化反応自体を制御するために、敢えて含有させることもあるが、この場合、0.001体積%超とするのが、この反応制御効果の発揮という観点から好ましい。
ここでいう体積分率とは、磁性材料全体の体積に対して、対象成分が占有する体積の割合のことである。
FM成分もM成分も含まず、TM成分の化合物だけで混在する相は、第1相や第2相に含まれない。しかし、電気抵抗率、耐酸化性、焼結性、及び本発明の半硬磁性材料の電磁特性改善に寄与する場合がある。上記のTM成分の化合物相やFM化合物相などのM成分を含まない相、及び、TM成分の含有量がM成分元素の含有量以上である相を本願では「副相」という。
第2相が第1相と同じ結晶構造を有してもよいが、組成には相互に十分に差があることが望ましく、例えば、第2相中のFM成分とM成分の総和に対する第2相のM成分含有量(原子%)は、第1相中のFM成分とM成分の総和に対する第1相のM成分含有量(原子%)よりも多く、更に、その差が1.5倍以上であること及び/又は第2相中のFeとM成分の総和に対する第2相のM成分含有量が2原子%以上であることが好ましい。
第2相のM成分含有量自体が100原子%を超えることはなく、また、第1相のM成分含有量の下限値が0.001原子%では、第2相のM成分含有量が第1相のM成分含有量の105倍を超えることはない。第2相のM成分含有量は、好ましくは、第1相のM成分含有量の90原子%以下である。第2相が常温で第1相と同じ結晶構造を保ったまま、M成分含有量が90原子%を超えると(従って、第2相のM成分含有量が第1相のM成分含有量の9×104倍を超えると)、本発明の磁性材料全体の熱的安定性が悪くなることがあるためである。
以下に、第2相の特定の仕方について述べる。まず、上述の通り、第1相はα−(FM,M成分)相であり、主に高い飽和磁化を保証する。第2相は、その相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量が第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量よりも多い相である。本発明では、第2相は、磁性材料全体のM成分含有量よりも多いα−(FM,M成分)相でもよく、他の結晶相若しくはアモルファス相、又はそれらの混合相でもよい。いずれであっても、本発明の軟磁性材料においては、保磁力を低く保つ効果があり、半硬磁性材料を含めても、耐酸化性を付与し電気抵抗率を向上させる効果がある。従って、第2相はこれらの効果を有する相であるため、M成分の含有量が第1相よりも高い、先に例示した何れかの相の存在を確認することにより本発明の磁性材料であるとわかる。もし、このような第2相が存在せず、第1相のみで構成されていれば、保磁力などの磁気特性、耐酸化性及び電気伝導率のうち何れかが劣るか、さらに加工性に乏しく、成形工程が煩雑にならざるを得ない磁性材料となる。
本発明の磁性材料において、強磁性として好ましい第2相の代表例としては、第2相中のFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合の第2相のM成分含有量が、第1相中のFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合の第1相よりもM成分含有量が多い、α−(FM,M成分)相が挙げられる。中でも、このM成分含有量が、0.1原子%以上20原子%以下であることが好ましく、2原子%以上15原子%以下であることがさらに好ましく、5原子%以上10原子%以下であることが特に好ましい。
従って、M成分含有量が0原子%超で5原子%よりも少ない第1相とM成分含有量が5原子%以上の第2相を組み合わせることにより、飽和磁化が大きく、保磁力の小さな磁性材料を実現することが好ましい。
不均化により、第1相中のFM成分とM成分の総和に対する第1相のM成分含有量と、第2相中のFM成分とM成分の総和に対する第2相のM成分含有量との間に差が生じていて、空間的にナノスケールの微細なM成分含有量の濃度のゆらぎがあれば、磁気異方性の空間的なゆらぎが生じ、外部磁場が付与されたときに一気に(あたかも共鳴現象が起こったように)磁化反転していくようなメカニズムに含まれる。上記の濃度のゆらぎは第2相が酸化物相である場合だけでなく、α−(FM,M成分)相の場合であっても、同様な保磁力低減の効果がある。
また、例えば酸化物相がM−フェライトとウスタイトの混合物の場合でも、好ましい体積分率の範囲などはM成分酸化物相の場合と同様である。
本願の実施例において、本発明の磁性材料の金属元素の局所的な組成分析は、主にEDX(エネルギー分散型X線分光法)により行われ、磁性材料全体の組成分析はXRF(蛍光X線元素分析法)により行われた。一般に第1相と第2相のM成分含有量は、SEM(走査型電子顕微鏡)、FE−SEM、或いはTEM(透過型電子顕微鏡)などに付属したEDX装置により測定する(本願においては、このEDXを付属したFE−SEMなどをFE−SEM/EDXなどと記載することがある)。装置の分解能にもよるが、第1相と第2相の結晶構造が300nm以下の微細な構造であれば、SEM或いはFE−SEMでは正確な組成分析はできないが、本発明の磁性材料のM成分やFM成分の差のみを検出するためであれば、補助的に利用することができる。例えば、M成分含有量が5原子%以上で、300nm未満の第2相を見出すには、磁性材料中のある1点を観測して、その定量値がM成分含有量として5原子%以上であることを確認すれば、その一点を中心として直径300nmの範囲内に、M成分含有量が5原子%以上の組織或いはその組織の一部が存在することになる。また、逆にM成分含有量が2原子%以下の第1相を見出すためには、磁性材料中のある1点の観測をして、その定量値がM成分含有量として2原子%以下であることを確認すれば、その一点を中心として直径300nmの範囲内に、M成分含有量2原子%以下の組織或いはその組織の一部が存在することになる。
TEMに付属したEDX装置を用いて組成の分析を行うときは、例えば電子ビームを0.2nmに絞ることも可能で、非常に微細な組成分析を行うことが可能である。しかし逆に、ある一定の領域を満遍なく調べ、本発明の材料の全体像を知るためには、例えば6万点などといった大量のデータを扱う必要性が生じる。
即ち、上記の組成分布測定法を適宜選択して、本発明の磁性材料の組成上、構造上の特徴、例えば第1相、第2相の組成や結晶粒径などを特定しなければならない。
本発明における磁性材料全体における各組成は、磁性材料全体の組成に対して、FM成分が20原子%以上99.999原子%以下、M成分が0.001原子%以上50原子%以下、O(酸素)が0原子%以上55原子%以下の範囲とし、これらを同時に満たすものが好ましい。さらに、Kなどのアルカリ金属が0.0001原子%以上5原子%以下で含まれてもよい。Kなどを含めた副相は全体の50体積%を超えないのが望ましい。
本発明のひとつは、保磁力が800A/m以下である軟磁性用途に好適な磁気特性と電気特性、並びに耐酸化性を有する磁性材料であるが、この点について以下に説明する。
ここで、本発明の大きな特徴は、本発明のM成分を用いることにより、例えばM成分がない場合や、TM成分のみである場合に比べ、比透磁率を自由に制御することができ、目的に応じて磁気飽和抑制能(磁気飽和させない磁性材料の機能、或いは特性)を付与できる点にある。比透磁率を上昇させるM成分としては、Zn、Si、Cu、Taが挙げられ、比透磁率を低下させるM成分としては、Zr、Hf、V、Nb、Cr、Mo、Wが挙げられる。双方の性質を持つM成分を適宜混合添加することで、要求性能に合わせた磁性材料が供給される。
10μΩm以上の電気抵抗率を示す本発明の軟磁性材料では、電気抵抗率が増すにつれて飽和磁化が低下する傾向があるので、所望の電磁気特性に合わせて、原材料の組成や還元度合を決定する必要がある。特に1000μΩm未満が、本発明の磁性材料の磁化が高いという特徴を得るのに好ましい。よって、好ましい電気抵抗率の範囲は1.5μΩm以上1000μΩm未満である。
本発明の磁性材料が、軟磁性になるか半硬磁性になるかは、前述のように保磁力の大きさによって分かれるが、特にその微細構造と密接な関係がある。α−(FM,M)相は一見連続相に観察される場合があるが、図1(Fe93.0Ni2.0Cr5.0軟磁性材料のSEM像)のように、多くの異相界面、結晶粒界を含み、また、接触双晶、貫入双晶などの単純双晶や集辺双晶、輪座双晶、多重双晶などの反復双晶を含む双晶、連晶、骸晶(本発明では、異相界面、多結晶粒界だけでなく、これらの様々な晶癖、晶相、連晶組織、転位などにより、結晶が区分されている場合、それらの境界面を総称して「結晶境界」と呼んでいる)などが含まれており、通常よく見られる直線的な結晶粒界と異なって曲線群として結晶境界を呈する場合が多くあって、さらに、そのような組織においては、場所により大きくM成分含有量に差が見られる。以上のような微細構造を有する本発明の磁性材料は、軟磁性材料となる場合が多い。
ランダム異方性モデルで説明される本発明の軟磁性材料では、以下の3条件を充足していることが大切である。
(1)α−(FM,M)相の結晶粒径が小さいこと、
(2)交換相互作用により強磁性結合していること、
(3)ランダムな配向をしていること。
(3)について、特にbcc相のM成分の含有量が10原子%以下である領域では、必ずしも必須ではなく、この場合、保磁力の低下はランダム異方性モデルとは異なる原理で生じている。即ち、第1相と第2相、第1相同志、第2相同志の何れか1種以上の相互作用により、ナノスケールのM成分含有量の濃度のゆらぎに基づく磁気異方性のゆらぎが生じて、磁化反転が促され、保磁力の低減がなされる。このメカニズムによる磁化反転機構は、本発明に特有のものであり、本発明者らが知りうる限り、本発明者らによって初めて見出されたものである。
還元時に粒成長や、強磁性相が連続するように粒子同士が融着していない場合や、粒子同士が分離してしまうような相分離が生じている場合に、本発明の磁性材料の保磁力を軟磁性領域に持っていくためには、その後に焼結などを施して固化、即ち、「第1相と第2相が、直接、或いは金属相若しくは無機物相を介して連続的に結合し、全体として塊状を成している状態」にするのが望ましい。
本発明の軟磁性材料の第1相若しくは第2相の平均結晶粒径、或いは磁性材料全体の平均結晶粒径は、1nm以上10μm未満であることが好ましい。第1相及び第2相の平均結晶粒径が10μm未満である場合、磁性材料全体の平均結晶粒径も10μm未満となる。
本発明の結晶粒径の測定はSEM法、TEM法又は金属顕微鏡法で得た像を用いる。観察した範囲内で、異相界面や結晶粒界だけでなく全ての結晶境界を観察し、それに囲まれた部分の結晶領域の径を結晶粒径とする。結晶境界が見えにくい場合は、ナイタール溶液などを用いた湿式法やドライエッチング法などを用いて結晶境界をエッチングする方がよい。平均結晶粒径は、代表的な部分を選び、最低100個の結晶粒が含まれている領域で計測することを原則とする。これより少なくてもよいが、その場合は、統計的に十分全体を代表する部分が存在していて、その部分を計測していることが求められる。平均結晶粒径は、観測領域を撮影して、その写真平面(対象の撮影面への拡大射影面)上に適当な直角四角形領域を定め、その内部にJeffry法を適用して求める。なお、SEMや金属顕微鏡で観察した場合は、分解能に対して結晶境界幅が小さすぎて観測されないこともあるが、その場合、結晶粒径の計測値は実際の結晶粒径の上限値を与える。具体的には、上限が10μmの結晶粒径測定値を有していればよい。但し、例えばXRD上で明確な回折ピークを持たない、超常磁性が磁気曲線上で確認されるなどの現象から、磁性材料の一部乃至全部が結晶粒径の下限である1nmを切る可能性が示された場合は、TEM観察により実際の結晶粒径を改めて決定しなければならない。また、本発明において結晶境界とは関わらない結晶粒径の測定が必要な場合がある。即ち、M成分含有量の濃度のゆらぎにより、微細に結晶組織が変調している場合などであって、そのような微細構造を有する本発明の磁性材料の結晶粒径は、そのM成分含有量の変調幅を結晶粒径とする。この結晶粒径はTEM−EDX解析などで決定する場合が多いが、その大きさは、次の項で記載する結晶子サイズとほぼ対応している場合が多い。
結晶子とは、結晶物質を構成する顕微鏡的レベルでの小さな単結晶のことであり、多結晶を構成する個々の結晶(いわゆる結晶粒)よりも小さい。
本発明では、不均化反応により相分離が生じ、第1相及び/又は第2相のbcc相のM成分含有量に組成幅が生じる。M成分含有量により、X線の回折線ピーク位置は変化するので、例えばbcc相の(200)における回折線の線幅を求め、これにより結晶子サイズを決定しても誤差が大きくなる。そのため、この方法により得られる結晶子サイズは、M成分を含むbcc相構造の結晶の場合、有意とは認められないこともあり得る。このように、結晶子サイズが有意とは認められない場合もあり得ることから、本願では、上述のようにbcc相の(200)における回折線に基づいて得られた結晶子サイズを「見掛けの結晶子サイズ」と呼ぶ。
他方、FM成分に含まれるNiやCoは、Feと原子半径が近く、不均化の度合いもM成分ほどではなく、組成分布による結晶子サイズの大きさの変化はほとんど見られない。そのため、本発明のように、上記の方法により得られたFM成分からなる結晶(例えば、磁性材料として、少なくとも第1相が、FM100−xMx(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33.33であり、FMはFeを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分であり、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)の組成式で表される組成を有する結晶)の結晶子サイズの値は有意である。また、M成分を含むbcc相構造の結晶の場合でも、本発明のように、bcc相のM成分含有量が0.001原子%以上1原子%以下の場合(例えば、少なくとも第1相が、FM100−xMx(但し、xは原子百分率で0.001≦x≦1であり、FMはFeを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分であり、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)の組成式で表されるbcc相を有する磁性材料の場合)、(200)の回折線のずれがとても小さいので、1nm以上200nm以下の範囲で、有効数字1桁の見掛けの結晶子サイズを測定しても、実質的にその「結晶子サイズ」と同視できる。そのため、このような場合の見掛けの結晶子サイズを本願では、単に「結晶子サイズ」と呼ぶ。
具体的には、本発明におけるbcc相の結晶子サイズは、Kα2回折線の影響を除いた(200)回折線幅とシェラーの式を用い、無次元形状因子を0.9として求めた。
bcc相は、少なくとも第1相が当該相を有する場合(即ち、第1相のみがbcc相を有する場合と、第1相及び第2相の両方がbcc相を有する場合)があるが、その好ましいbcc相の結晶子サイズの範囲は1nm以上200nm以下である。
1nm未満となると、室温で超常磁性となり、磁化や透磁率が極端に小さくなる場合があるので、1nm以上とすることが好ましい。
bcc相の結晶子サイズが200nm以下とすると、保磁力は軟磁性領域に入って極めて小さくなり、各種トランス、モータ等に好適な軟磁性材料となるので好ましい。さらに、50nm以下は、M成分含有量の低い領域であるから2Tを超える高い磁化が得られるだけでなく、低い保磁力も同時に達成でき、非常に好ましい範囲である。
見掛けの結晶子サイズの大きさは、一般的の結晶では、bcc相のM成分含有量が0.001原子%以上1原子%以下の材料(例えば、少なくとも第1相が、FM100−xMx(但し、xは原子百分率で0.001≦x≦1であり、FMはFeを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分であり、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)の組成式で表されるbcc相を有する磁性材料)の結晶子サイズに比べ最大で50%小さめに測定される危険性がある。しかしながら、上述の理由により、本発明((例えば、磁性材料として、少なくとも第1相が、FM100−xMx(ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33.33であり、FMはFeを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分であり、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)の組成式で表される組成のbcc相を有する結晶))では、例えば見掛けの結晶子サイズの大きさを、1nm以上200nm以下の範囲内の1nm以上100nm以下に限定すれば、上記危険性を回避できる。その結果、上記で述べた結晶子サイズと磁気特性の好ましさの関係は維持される。
本発明の軟磁性材料の粉体の大きさは10nm以上5mm以下が好ましい。10nm未満であると、保磁力が十分小さくならず、5mmを超えると、焼結の際に大きな歪みがかかり、固化後の焼鈍処理が無いと保磁力が反って大きくなる。さらに好ましくは100nm以上1mm以下であり、特に好ましくは0.5μm以上500μm以下である。この領域に平均粉体粒径が収まれば、保磁力の低い軟磁性材料となる。また、上記で規定した各平均粉体粒径範囲内で粒径分布が十分広ければ、比較的小さな圧力で容易に高充填が達成され、固化した成形体の体積当たりの磁化が大きくなるため、好ましい。粉体粒径が大きすぎると磁壁の移動が励起される場合があり、本発明の軟磁性材料の製造過程における、不均化反応によって形成される異相により、その磁壁移動が妨げられ、むしろ保磁力が大きくなる場合もある。そのため、本発明の軟磁性材料の成形の際、適切な粉体粒径を有した本発明の磁性材料粉体の表面が酸化された状態であった方がよい場合がある。M成分を含む合金は、酸化により表面に非磁性のM成分酸化物相の不働態膜を形成することがあるため、耐酸化性が極めて優れるだけでなく、保磁力の低減、電気抵抗率の向上などの点でも効果がある。粉体表面の適切な徐酸化、空気中での各工程ハンドリング、還元性雰囲気だけでなく、不活性ガス雰囲気などでの固化処理なども有効である。
本発明の半硬磁性材料の磁性粉体の平均粉体粒径は10nm以上10μm以下の範囲にあるのが好ましい。10nm未満であると成形しづらく、合成樹脂やセラミックに分散して利用する際も分散性が極めて悪いことがある。また10μmを超える平均粉体粒径では、保磁力が軟磁性領域に至るので、本発明の軟磁性材料の範疇に属する。さらに好ましい平均粉体粒径は10nm以上1μm以下で、この範囲であれば、飽和磁化と保磁力双方のバランスが取れた半硬磁性材料となる。
本発明の磁性材料の粉体粒径は、主としてレーザー回折式粒度分布計を用いて体積相当径分布を測定し、その分布曲線より求めたメジアン径によって評価する。又は粉体のSEM法やTEM法で得た写真、又は金属顕微鏡写真を元に代表的な部分を選び、最低100個の直径を計測して求める。これより少なくてもよいが、その場合は、統計的に十分全体を代表する部分が存在していて、その部分を計測していることが求められる。特に500nmを下回る粉体、1mmを超える粉体の粒径を計測するときは、SEMやTEMを用いる方法を優先する。又、N種類(N≦2)の測定法又は測定装置を併用し、合計n回の測定(N≦n)を行った場合、それらの数値Rnは、R/2≦Rn≦2Rの間にある必要があって、その場合、下限と上限の相乗平均であるRを持って平均粉体粒径を決定する。
本発明の磁性材料は、第1相と第2相が、直接、或いは、金属相若しくは無機物相を介して連続的に結合し、全体として塊状を成している状態の磁性材料(本願では、「固形磁性材料」とも称する。)として活用できる。また、前述したように、粉体の中に多くのナノ結晶がすでに結合されている場合には、その粉体を樹脂などの有機化合物、ガラスやセラミックなどの無機化合物、またそれらの複合材料などを配合して成形することもできる。
充填率について、本発明の目的を達成できる限り特に限定はないが、M成分の少ない本発明の磁性材料の場合は、60体積%以上100体積%以下とするのが、耐酸化性、及び電気抵抗率と磁化の高さのバランスの観点から優れているので好ましい。
本発明の磁性材料粉体は、フェライトのように、焼結可能な粉体材料であることが大きな特徴の一つである。0.5mm以上の厚みを持った各種固形磁性材料を容易に製造することができる。さらに1mm以上、そして5mm以上の厚みを持った各種固形磁性材料でも、10cm以下の厚みであれば、焼結などにより、比較的容易に製造可能である。
さらに、本発明の磁性材料の一つの特徴は、電気抵抗率が大きいことである。他の金属系圧延材料や薄帯材料が、結晶粒界、異相や欠陥を含まないような製法で作られるのに対し、本発明の磁性材料粉体は多くの結晶境界や多様な相を含んでおり、それ自体電気抵抗率を上昇させる効果がある。その上、粉体を固化する際には、特に固化前の粉体の表面酸化層(即ち、第1相や第2相の表面に存在するM成分酸化物相、ウスタイト、マグネタイト、M−フェライト、M−ヘマタイト、アモルファスなどの酸素量が高い層、中でもM成分を多く含む酸化物層)及び/又は金属層(即ち、M成分を多く含む金属層)が介在するので、バルク体の電気抵抗率も上昇する。
特に、電気抵抗率を上昇させる表面酸化層の好ましい構成化合物としては、M成分酸化物相、ウスタイト、M−フェライトのうち少なくとも1種が挙げられる。
本発明の磁性材料が上記の特徴を有するのは、本発明が、高磁化であって高周波用途の他の金属系軟磁性材料とは本質的に異なった方法で形成された磁性材料、即ちM−フェライトナノ粉体を還元して、まずナノ微結晶を有する金属粉体を製造し、さらにそれを成形して固形磁性材料とする、ビルドアップ型のバルク磁性材料を主に提供しているからである。
次に本発明の磁性材料の製造方法について記載するが、特にこれらに限定されるものではない。
本発明の磁性材料の製造方法は、
(1)M−フェライトナノ粉体製造工程
(2)還元工程
の両工程を含み、必要に応じて、さらに以下の工程のいずれか1工程以上を含んでもよい。
(3)徐酸化工程
(4)成形工程
(5)焼鈍工程
以下に、それぞれの工程について、具体的に述べる。
本発明の磁性材料の原料であるナノ磁性粉体の好ましい製造工程としては、湿式合成法を用いて全室温で合成する方法を備えるものがある。
公知のフェライト微粉体の製造方法としては、乾式ビーズミル法、乾式ジェットミル法、プラズマジェット法、アーク法、超音波噴霧法、鉄カルボニル気相分解法などがあり、これらの方法を用いても、本発明の磁性材料が構成されれば好ましい製造法である。但し、本発明の本質である、組成が不均化したナノ結晶を得るためには、主として水溶液を用いた湿式法を採用するのが最も工程が簡便で好ましい。
本製造工程は、特許文献3に記載されている「フェライトめっき法」を本発明の磁性材料を製造するために使用するM−フェライトナノ粉体の製造工程に応用したものである。
通常の「フェライトめっき法」は、粉体表面めっきだけでなく、薄膜などにも応用され、また、その反応機構なども既に開示されているが(例えば、阿部正紀、日本応用磁気学会誌、22巻、9号(1998)1225頁(以後、「非特許文献4」と称する。)や国際公開第2003/015109号(以後、「特許文献4」と称する。)を参照)、本製造工程においては、このような「フェライトめっき法」とは異なり、めっきの基材となる粉体表面は利用しない。本製造工程においては、フェライトめっきに利用される原料など(例えば、塩化クロム及び塩化鉄)を100℃以下の溶液中で反応させて、強磁性で結晶性のM−フェライトナノ粉体そのものを直接合成する。本願では、この工程(或いは方法)を「M−フェライトナノ粉体製造工程」(或いは「M−フェライトナノ粉体製造法」)と呼ぶ。
以下に、スピネル構造を有した「M−フェライトナノ粉体製造工程」に関して例示して説明する。
一方、本発明の実施例では、反応液を滴下してM−フェライトナノ粉体製造法における原料を反応場に供給しながら、pH調整剤も同時に滴下して、徐々にpHを酸性から塩基性へ変化させることにより、M成分を着実にFe−フェライト構造中に取り込んでいくように工程を設計している。この工程によれば、M−フェライトナノ粒子を製造する段階で、上述のようなメカニズムでフェライトが生成される際に放出されるH+が、pH調整液の連続的な反応場への投入により中和されていき、次々にM−フェライト粒子の生成や成長が生じる。また、反応初期には、グリーンラストが生じて反応場が緑色になる期間がある(反応場や反応液のpHなどの条件によっては黄色、黄緑色になる期間が前段にある)が、このグリーンラスト中にM成分が混在することが重要であり、これが最終的にフェライトに転化した際、格子内にM成分が取り込まれ、さらにこの後の還元反応において、第1相や第2相の中で、bcc構造を有するα−Fe相にM成分が取り込まれていく。
上記方法で製造したM−フェライトナノ粉体を還元して、本発明の磁性材料を製造する工程である。この還元工程で均質なコバルトフェライトナノ粉体が不均化反応を起こして、本発明の磁性材料は第1相と第2相に分離する。
よって、Cuを除いてM−フェライトを水素ガスで還元した場合に、M−フェライト中のMイオンがM成分金属の価数まで還元される事実は、今までのところ公知ではなく、今回、本発明者が初めて見出したものと考えている。その理由に関して、現時点では、以下のように考えている。
従って、昇温過程の昇温速度や反応炉内の温度分布により結晶相の構成が変化する。
しかし、本発明の磁性材料は、バルクの既存材料とは全く異なった微細構造を有し、常温では平衡状態図に従った組成分布を有してはいないが、還元温度付近で、本発明の磁性材料内にナノ領域に広がる、平衡状態図に沿った均一相が生じていることがあり、その場合には、昇温過程も含めた昇降温の速度制御が、その微細構造にとって重要なことがある。かかる観点から、本発明の還元工程における昇降温速度としては、目的とする電磁気特性やM成分含有量によって最適な条件は異なるが、通常、0.1℃/minから5000℃/minの間で適宜選択することが望ましい。
上述した水素ガスを用いた還元反応において、「不均化」反応を起因とする相分離過程は、M成分の種類と還元工程の条件によって変わる。上述のような不均化相分離は、TM成分とFe成分組成領域で、既に特許文献1及び2にも記載されているが、本発明ではTM成分とは異なるM成分の不均化とともに、FM成分中のNi及び/又はCo成分も不均化することにより、FM成分中にNi及び/又はCo成分が無い場合に比べて、飽和磁化が高く、そして低い及び/又は安定な保磁力を有する軟磁性材料となったり、角形比の増した半硬磁性材料としたりすることができる。
還元速度については、M−フェライト相などのM成分を含む酸化物相では、M成分含有量が高いほど遅くなる傾向もわかっており、一度不均化が生じると還元反応速度が材料内で一律でなくなることもナノ構造を保持するのに好都合に働いていると考えている。
以上の一連の考察は、本発明の磁性材料は融解してしまうと通常その特徴を失うことからも支持される。
上記還元工程後の本発明の磁性材料はナノ金属粒子を含むので、そのまま大気に取り出すと自然発火して燃焼する可能性が考えられる。従って必須の工程ではないが、必要に応じて、還元反応の終了後直ちに徐酸化処理を施すことが好ましい。
徐酸化とは、主に還元後のナノ金属粒子の表面を酸化してウスタイト、マグネタイト、M−フェライト、M成分酸化物相などとして不働態化することにより、内部の磁性材料本体の急激な酸化を抑制することである。本発明の製造方法によると、還元工程までで、第1相、又は、第1相及び第2相中にM成分が金属成分として含まれる。本発明の磁性材料は、このM成分が徐酸化工程により合金表面に析出して不動態膜となるが、M成分を含まないFM磁性材料に比べて格段の耐酸化性を備えることになる。徐酸化は、例えば常温付近〜500℃内で、酸素ガスのような酸素源を含むガス中で行うが、大気より低酸素分圧の不活性ガスを含む混合ガスを使用する場合が多い。500℃を超えると、どのような低酸素分圧ガスを用いても、表面にnm程度の薄い酸化膜を制御して設けることが難しくなる。また、一旦真空に引いた後、反応炉を常温で徐々に開放して酸素濃度を上げていき、急激に大気に触れさせないようにする徐酸化方法もある。
本願では、以上のような操作を含む工程を「徐酸化工程」と称する。この工程を経ると次の工程である成形工程でのハンドリングが非常に簡便になる。
本発明の磁性材料は、第1相と第2相が、直接、或いは金属相若しくは無機物相を介して連続的に結合し、全体として塊状を成している状態である磁性材料(即ち、固形磁性材料)として利用される。本発明の磁性材料粉体は、そのもののみ固化するか、又は金属バインダや、他の磁性材料や、樹脂などを添加して成形するなどして、各種用途に用いる。なお、(2)の工程後、或いは更に(3)の工程後の磁性材料粉体の状態で、すでに第1相と第2相が、直接、或いは、金属相若しくは無機物相を介して連続的に結合されている場合があって、この場合は本成形工程を経ずとも固形磁性材料として機能する。
上記(1)の工程→(2)の工程、(1)の工程→(2)の工程→(3)の工程、(1)の工程→(2)の工程→後述の(5)の工程、(1)の工程→(2)の工程→(3)の工程→後述の(5)の工程で得た磁性材料粉体、又は、以上の工程で得た磁性材料粉体を(4)の工程で成形した磁性材料を再び粉砕した磁性材料粉体、さらに、以上の工程で得た磁性材料粉体を後述の(5)の工程で焼鈍した磁性材料粉体を、高周波用の磁性シートなどの樹脂との複合材料に応用する場合には、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂と混合した後に圧縮成形を行ったり、熱可塑性樹脂と共に混練した後に射出成形を行ったり、さらに押出成形、ロール成形やカレンダ成形などを行ったりすることにより成形する。
本発明の磁性材料は、第1相と第2相を有し、その一方或いは双方の結晶粒径がナノの領域にある場合が典型的である。
例えば、(1)のM−フェライトナノ粉体製造工程後に、含有水分などの揮発成分の除去を目的とした乾燥と同時に安定した還元を行うため、後工程における不適切な粒成長の阻止や格子欠陥を除去するなどの目的で、数nm程度の微細粒子成分を熱処理する、いわゆる予備熱処理(焼鈍)が行われることがある。この場合、大気中、不活性ガス中や真空中で50℃から500℃程度で焼鈍することが好ましい。
また、(2)の還元工程後に、粒成長や還元による体積減少で生じた結晶格子や微結晶の歪みや欠陥を除去することで、本発明の軟磁性材料の保磁力を低減させることができる。この工程の後、粉体状のままで使用する用途、例えば粉体を樹脂やセラミックなどで固めて使用する圧粉磁心などの用途では、この工程後、或いはこの工程後に粉砕工程などを挟んだ後で、適切な条件で焼鈍すると電磁気特性を向上させることができることがある。
また、(3)の徐酸化工程では、焼鈍が、表面酸化により生じた表面、界面、境界付近の歪みや欠陥の除去に役立つことがある。
(4)の成形工程後における焼鈍が、最も効果的で、予備成形や圧縮成形、ホットプレスなど、その後の切削加工及び/又は塑性加工などで生じる結晶格子、微細構造の歪み、欠陥を除去するために積極的にこの工程後に焼鈍工程を実施することがある。この工程では、それよりも前にある工程で、積算された歪や欠陥などを一気に緩和させることも期待できる。さらには、前述した切削加工及び/又は塑性加工後に、(1)〜(4)の工程、(2)〜(4)の工程、(3)及び(4)の工程、さらに(4)の工程での歪などを、或いは積算された歪などをまとめて、焼鈍することもできる。
本発明の評価方法は以下の通りである。
(I) 飽和磁化及び保磁力
磁性粉体を、ポリプロプレン製の円筒ケース(内径2.4mm、粉体層の厚みはほぼ1.5mm)に仕込み、振動試料型磁力計(VSM)を用いて外部磁場が−7.2MA/m以上7.2MA/m以下の領域で磁気曲線のフルループを描かせ、室温の飽和磁化(emu/g)及び保磁力(A/m)の値を得た。飽和和磁化は5NのNi標準試料で補正し、飽和漸近則により求めた。保磁力は低磁場の領域の磁場のずれを、常磁性体のPd及び/又はGd2O3標準試料を用いて補正した。また、保磁力については、ヘルムホルツ型コイルを用いたVSM法によっても測定を行い、上記測定値の妥当性を確認した。この測定において、7.2MA/mまで着磁した後、零磁場までの磁気曲線上に滑らかな段差、変曲点が見られない場合、「1/4メジャーループ上の変曲点」が「無」いと判断した。なお、測定磁場の方向は、磁性粉体の場合には軸方向である。
因みに、以下に示す本実施例においてはいずれも、「1/4メジャーループ上の変曲点」が「無」いことを確認しており、強磁性結合が認められることがわかった。
成形体の磁気特性は、試料サイズ15mm×5mm×1mmの固形磁性材料を微小単板測定冶具が備わった直流磁化測定機(直流BHループトレーサー)を用いて測定した。成形体の磁化測定については、外部磁場150Oeにおける磁化を飽和磁化として、その値をT(テスラ)単位で表した。
(II) 耐酸化性
常温、大気中に60日放置した磁性粉体の飽和磁化σst(emu/g)を上記の方法で測定し、初期の飽和磁化σs0(emu/g)と比較して、その低下率を、
Δσs(%)=100×(σs0−σst)/σs0の式
により評価した。Δσsの絶対値が0に近いほど高い耐酸化性能を有すると判断できる。本発明では、Δσsの絶対値が1%以下の磁性粉体を、期間60日において耐酸化性が良好と評価した。
(III) 電気抵抗率
試料サイズ15mm×5mm×1mmの成形体を四端子法で測定した。ファン・デル・ポー(van der Pauw)法でも測定し、上記測定値の妥当性を確認した。
(IV) Fe含有量、Ni及び/又はCo含有量、酸素含有量、bcc−(FM,M)相体積分率
粉体やバルクの磁性材料におけるFe及びCo含有量は、蛍光X線元素分析法(XRF)により定量した。磁性材料中の第1相や第2相のFe及びM成分含有量は、FE−SEMで観察した像をもとに、それに付属するEDXにより定量した。ある成分のEDX測定値が0.00原子%であったとき、その成分の含有量を0とした。また、bcc−(FM,M)相の体積分率については、XRD法の結果とともに上記FE−SEMを用いた方法を組み合わせて画像解析により定量した。主として、観察された相が、bcc−(FM,M)相と酸化物相のいずれであるかを区別するために、SEM−EDXを用いた酸素特性X線面分布図を使用した。さらに、(I)で測定した飽和磁化の値からも、bcc−(FM,Co)相体積分率の値の妥当性を確認した。
還元工程後の磁性材料の酸素量は、還元後の重量の減少によっても確認した。さらにSEM−EDXによる画像解析を各相の同定に援用した。
K量については、蛍光X線元素分析法により定量した。
(V) 平均粉体粒径
磁性粉体を走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して粉体粒径を決定した。十分全体を代表する部分を選定し、n数は100以上として、有効数字1桁で求めた。
レーザー回折式粒度分布計を併用する場合は、体積相当径分布を測定し、その分布曲線より求めたメジアン径(μm)で評価した。但し、求められたメジアン径が500nm以上1mm未満であるときのみ、その値を採用し、上記顕微鏡を用いる方法で見積もった粉体粒径と有効数字1桁で一致することを確認した。
(VI) 平均結晶粒径
磁性材料を走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、結晶境界で囲まれた部分の大きさを有効数字1桁で求めた。測定領域は十分全体を代表する部分を選定し、n数は100以上とした。結晶粒径は、全体の平均値、第1相及び第2相のみの平均値をそれぞれ別途計測して決定した。
(VII) 結晶子サイズ
X線回折法により測定したbcc相の(200)回折線の線幅に対して、シェラーの式をあてはめ、無次元形状因子を0.9として、結晶子サイズを求めた。
CrCl3・6H2O水溶液(塩化クロム(III)六水和物)、NiCl2・6H2O(塩化ニッケル(II)六水和物)、FeCl2・4H2O(塩化鉄(II)四水和物)の水溶液を別途調製し、これらを混合して25.1mMに調製したCrCl3及びFeCl2の混合水溶液をリアクターに入れて反応場液とした。続いて、大気中にて激しく撹拌しながら、280mMの水酸化カリウム水溶液(pH調整液)を滴下して、系のpHを3.71以上10.88以下の範囲で酸性側からアルカリ性側に徐々に移行して調整し、同時に83.8mMのCrCl3、NiCl2及びFeCl2の混合水溶液(反応液)を滴下して15分間反応させた後、pH調整液と反応液の滴下を中止して、さらに15分間撹拌操作を続けた。その後、遠心分離により固形成分を沈殿させ、精製水に再分散し遠心分離を繰り返すことにより、上澄み溶液のpHを7.83として、最後にアセトン中に沈殿物を分散した後、遠心分離を行った。
各相のNi成分の含有量(図の数値は、各相におけるNi含有量で、各相のFM成分とM成分の総和に対するNiの原子比の値を百分率で表したものである)については、図3(B)に示した。図3(B)に示されるとおり、第1相であるCr含有量3.30原子%である相にはNiが1.29原子%含まれており、第2相であるCr含有量10.69原子%である相にはNiが2.12原子%含まれている。第1相に含まれるNi含有量に対して、第2相に含まれるNi含有量が1.1倍以上105倍以下の量である1.6倍であることがわかった。
更に、図3とは場所を変えた3つの視野で、図3と同様の計測を行った(従って、図3の計測と併せて合計34点の測定点で計測を行った)ところ、各相におけるCr含有量は1.83原子%以上10.69原子%以下と大きく不均化して分布しており、Cr含有量が1.83原子%のα−(FM,Cr)相に対してCr含有量がその相よりも1.5倍以上105倍以下の範囲内の5.8倍である10.69原子%のα−(FM,Cr)相も存在していることを確認した(図示せず)。なお、Cr含有量が1.83原子%である相のNi含有量は0.34原子%であり、第1相に含まれるNi含有量に対して、第2相に含まれるNi含有量が1.1倍以上105倍以下の量である2.6倍であることがわかった。
上記34点で計測した各相全体の結果から、本実施例では、少なくともCr含有量が1.83原子%以上10.69原子%以下の範囲で大きく不均化して分布していると言える。なお、これらの34相のCr含有量の平均値は、3.43原子%となり、上記に示したXRF測定値であるCr含有量の5.0原子%よりも低く、さらに視野を増やしていくと、1.83原子%の1.5倍である2.75原子%よりもCr含有量が高い多くの第2相の存在が確定されるため、全体として更に大きな不均化が起きている可能性が高いことがわかった。
この磁性材料全体の平均結晶粒径は、200nmであった。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
これらの画像解析、X線回折及び酸素含有量などにより、bcc相の体積分率は99体積%と評価された。なお、上記のように第2相を決定することにより、SEM像から第1相及び第2相の結晶粒径を決めることができ、画像解析の結果、それらの値は何れも200nmであった。
従って、実施例1の磁性材料は保磁力が800A/m以下なので、本実施例の磁性材料が軟磁性材料であることも確認された。
この磁性材料全体の平均結晶粒径は、200nmであった。第1相及び第2相の結晶粒径もほぼ全体の平均結晶粒径と同じ大きさであった。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
本実施例の相、組成、粒径及び磁気特性の測定結果については表1に纏めて示した。
Ni成分を添加しない以外は、実施例1と同様にして、Fe−Cr磁性材料を作製した。
本比較例の相、組成、粒径及び磁気特性の測定結果については表1に示した。
NiがFM相中に存在しないと、実施例1に比べ飽和磁化が212.6emu/gと10%近く低くなった。また、実施例1に比べ保磁力が810A/mと高くなり、本比較例の磁性材料は半硬磁性材料であることがわかった。
Ni成分とCr成分を添加しないこと以外は実施例1と同様な方法で、フェライトナノ粉体を作製した。
このフェライトナノ粉体を、還元条件を425℃で1時間(比較例2)、同温度で4時間(比較例3)、450℃で1時間(比較例4)とする以外は、実施例1と同様な方法でFe金属粉体を作製した。測定についても同様な方法で行った。
これら粒径及び磁気特性等の測定結果は表1に示した。
なお、これらの金属粉体は、室温大気中に放置するだけで、磁気特性が一気に低下する性質がある。t=60のときの本比較例3〜5の飽和磁化の変化率Δσs(%)は、5.4、19.0、21.3であった。
なお、実施例1のΔσsは0.0%であった。
実施例1の磁性材料は、耐酸化性に優れることがわかった。
M成分とNi及び/又はCoの含有量が表1に示した量とする以外は、実施例1と同様にして、FM−M成分磁性材料を作製した。なお、実施例2で得られたFe85.1Ni4.3V10.6軟磁性材料のSEM−EDX解析像については、図4に示した。
本実施例の相、組成、粒径及び磁気特性の測定結果については表1に示した。実施例2と5の磁性材料の保磁力は800A/m以下であり、本発明の軟磁性材料であることがわかった。また、実施例3と4の磁性材料の保磁力は、800A/mを超え40kA/m以下であるから、本発明の半硬磁性材料であることがわかった。さらに、実施例3と5の磁性材料の飽和磁化はそれぞれ229.5emu/gと219.4emu/gであり、FM相にCo又はNiが存在することにより、α−Feの磁化218emu/gを超えることを確認した。
表中の「第2相M成分含有量/第1相M成分含有量」とは、「第1相中のFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のその第1相中のM成分含有量に対する第2相中のFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のその第2相中のM成分含有量の比」を意味する。具体的には、磁性粉体の任意の箇所をSEMにより1〜5万倍の倍率で撮影し、その中で約12μm×約9μmより小さい領域を対象として、複数点で、半径150〜200nmのビーム径の電子線を用いたEDX測定を行ったときに、最小のM成分含有量を有する測定点を第1相とし、最大のM成分含有量を有する測定点を第2相として決定した。そして、上記比が1.5倍以上2倍未満の場合を「≧1.5」と表記した。表中に示すとおり、いずれの実施例においても、上記比は1.5倍以上であることを確認した。
さらに、表中の「Ni/Co含有量比」は、「第1相中のFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のその第1相中のNi及び/又はCoの含有量(原子%)に対する、第2相中のFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のその第2相中のNi及び/又はCoの含有量の比」を意味する。具体的には上記最小のM成分含有量を有する測定点のNi/Co含有量(第1相)に対する、上記最大のM成分含有量(原子%)を有する測定点のNi/Co含有量(第2相)の比である。そして、上記比が10−5倍以上0.909倍未満の量である場合は「<0.909」、1.1倍以上105倍以下の量である場合は「≧1.1」と標記した。表中に示すとおり、いずれの実施例においても、上記比は10−5倍以上0.909倍未満の量又は1.1倍以上105倍以下の量であることを確認した。
なお、何れの実施例においても第1相、第2相の平均結晶粒径は全体の平均結晶粒径と一致した。また、75万倍の倍率で上記結晶境界付近の観察を行った結果、これらの結晶境界付近には異相が存在していないことを確認した。
図4(A)は、実施例2について、磁性材料の局所的なV含有量や不均化の存在や度合を知るのに適しているFE−SEM/EDX法によって観察した結果である。但し、この図では撮影倍率を5万倍にして解析した。磁性材料の各相におけるVの含有量(図の数値は、各相におけるV含有量で、各相のVとFMの総和に対するVの原子比の値を百分率で表したものである)は、1.21原子%以上66.92原子%以下と大きく不均化して分布していることがわかった。よって、α−(FM,V)相の領域の中にも、V含有量で区別できる相、例えば、V含有量が1.21原子%のα−(FM,V)相に対してV含有量が、その相よりも1.5倍以上105倍以下である66.92原子%のα−(FM,V)相が存在していること、即ち、α−(FM,V)相に関して、第1相以外に第2相に相当する相も存在していることが、この結果からも明らかになった。図4(A)の各相のNi成分の含有量については、図4(B)に示した。本発明の定義により、第1相であるV含有量1.21原子%である相にはNiが3.95原子%含まれており、第2相であるV含有量66.92原子%である相にはNiが2.47原子%含まれている。第1相に含まれるNi含有量に対して、第2相に含まれるNi含有量が10−5倍以上0.909倍未満の量である0.625倍であることがわかった。
比較例1と同様にして、(Fe0.971Ni0.028Mn0.001)3O4フェライトナノ粉体を作製した。これに、シリカ粉末を混合し、実施例1と同様に還元反応を行うことにより、Fe94.4Si2.8Ni2.7Mn0.1磁性粉体を得た。
この磁性粉体の磁気特性を表1に示した。
[実施例7]
実施例6の磁性材料粉体をタングステンカーバイド製超硬金型に仕込み、大気中、室温、1GPaの条件で冷間圧縮成形を行った。
次いで、この冷間圧縮成形体をアルゴン気流中、300℃まで10℃/minで昇温し、300℃で15分保持した後、300℃から900℃まで10℃/minで昇温した後、直ちに400℃まで75℃/minで降温し、400℃から室温までは40分をかけて放冷することにより、本発明の固形磁性材料を得た。
この固形磁性材料の密度は6.08g/cm3であった。また、この固形磁性材料のM成分、TM成分、FM成分及びO成分を含む磁性材料全体に対する酸素含有量は1.1原子%であった。第1相、第2相、全体の平均結晶粒径は300nmであり、結晶子サイズは50nmであった。また、「第2相M成分含有量/第1相M成分含有量」は1.5以上、「Ni/Co含有量比」は0.909未満であった。直流磁化測定装置で得た飽和磁化及び保磁力は、0.821T、330A/mであり、1/4メジャーループ上に変曲点はなかった。また、本固形磁性材料の電気抵抗率は28μΩmであった。
本実施例により、本発明の固形磁性材料は、その特徴である1.5μΩmより1桁電気抵抗率が高く、さらに既存材料である、例えば純鉄の0.1μΩmや電磁鋼板の0.5μΩmと比べ、2桁程度高い電気抵抗率を有することがわかった。そのため、本発明によれば、渦電流損失などの問題点を解決できることがわかった。
また、上記実施例1〜7と比較例1〜5の結果に鑑みて、上記実施例1〜6の本磁性粉体の電気抵抗率は、既存の一般的な金属系磁性材料よりも高い1.5μΩm以上を有すると推認できることから、本磁性粉体によれば、渦電流損失などの問題点を解決することが可能であることがわかった。
因みに、本実施例における不均化の存在や度合を知るのに適しているFE−SEM/EDX法による観察結果から、上記実施例1〜7の本磁性粉体中の第1相及び第2相は、原料フェライト粉体の主原料相及び副原料相からそれぞれ由来しているものではなく、均質な原料フェライト相が還元反応により、不均化反応を起こして相分離したものであることがわかった。
本発明は、主として動力機器、変圧器や情報通信関連機器に用いられる、トランス、ヘッド、インダクタ、リアクトル、コア(磁芯)、ヨーク、マグネットスイッチ、チョークコイル、ノイズフィルタ、バラストなど、さらに各種アクチュエータ、ボイスコイルモータ、インダクションモータ、リアクタンスモータなどの回転機用モータやリニアモータ、特に中でも、回転数400rpmを超える自動車駆動用モータ及び発電機、工作機、各種発電機、各種ポンプなどの産業機械用モータ、空調機、冷蔵庫、掃除機などの家庭用電気製品向けモータなどの、ロータやステータ等に用いられる軟磁性材料に関する。
さらに、アンテナ、マイクロ波素子、磁歪素子、磁気音響素子など、ホール素子、磁気センサー、電流センサー、回転センサー、電子コンパスなどの磁場を介したセンサー類に用いられる軟磁性材料に関する。
また、単安定や双安定電磁リレーなどの継電器、トルクリミッター、リレースイッチ、電磁弁などの開閉器、ヒステリシスモーターなどの回転機、ブレーキなどの機能を有するステリシスカップリング、磁場や回転速度などを検出するセンサー、磁性タグやスピンバルブ素子などのバイアス、テープレコーダー、VTR、ハードディスクなどの磁気記録媒体や素子等に用いられる半硬磁性材料に関する。
また、高周波用トランスやリアクトルを初め、電磁ノイズ吸収材料、電磁波吸収材料や磁気シールド用材料などの不要な電磁波干渉による障害を抑制する磁性材料、ノイズ除去用インダクタなどのインダクタ素子用材料、RFID(Radio Frequency Identification)タグ用材料やノイズフィルタ用材料等の高周波用の軟磁性や半硬磁性材料に用いられる。
Claims (20)
- FM成分(ここでFM成分とは、Feを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分である)とM成分(ここでM成分とは、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)を含むbcc構造の結晶を有する第1相と、
M成分を含む相であって、その相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量(原子%)が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量(原子%)よりも多い第2相とを含み、
前記第1相が、FM 100−x (M 100−y TM y ) x/100 (ここで、x、yは原子百分率で0.001≦x≦33.33、0.001≦y<50であり、FMはFeを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分であり、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上であり、TMはTi、Mnのいずれか1種以上である)の組成式で表される組成を有する、
軟磁性又は半硬磁性の磁性材料。 - 磁性材料が軟磁性である、請求項1に記載の磁性材料。
- 第1相中のFM成分中のFe量(原子%)とNi及び/又はCo量(原子%)がそれぞれ、そのFM成分を構成する全成分の総和を100原子%として、50.01原子%以上99.999原子%以下と0.001原子%以上49.99原子%以下である、請求項1又は2に記載の磁性材料。
- 磁性材料全体中のFM成分とM成分の含有量(原子%)の総和を100原子%とした場合に、前記磁性材料中のNi及び/又はCoの含有量(原子%)が、前記M成分の含有量(原子%)以下である、請求項1に記載の磁性材料。
- 第2相が、FM成分とM成分を含むbcc構造の結晶を有し、その相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分含有量(原子%)が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のM成分の含有量(原子%)に対して1.5倍以上10 5 倍以下の量、及び/又は2原子%以上100原子%以下の量である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁性材料。
- 第2相が、FM成分とM成分を含むbcc構造の結晶を有し、その相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のNi及び/又はCoの含有量(原子%)が、第1相に含まれるFM成分とM成分の総和を100原子%とした場合のNi及び/又はCoの含有量に対して、10 −5 倍以上0.909倍未満の量又は1.1倍以上10 5 倍以下の量である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の磁性材料。
- 第2相がM成分を含有する酸化物相を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の磁性材料。
- 第2相が、M−フェライト相又はウスタイト相の何れか少なくとも1種を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の磁性材料。
- FM成分とM成分を含むbcc構造の結晶を有する相の体積分率が磁性材料全体の5体積%以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁性材料。
- 磁性材料全体の組成に対して、FM成分が20原子%以上99.998原子%以下、M成分が0.001原子%以上50原子%以下、O成分が0.001原子%以上55原子%以下の範囲の組成を有する、請求項7又は8に記載の磁性材料。
- 第1相若しくは第2相、又は磁性材料全体の平均結晶粒径が1nm以上10μm未満である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の磁性材料。
- 少なくとも第1相が、FM 100−x M x (ここで、xは原子百分率で0.001≦x≦33.33であり、FMはFeを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分であり、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)の組成式で表されるbcc相を有し、そのbcc相の結晶子サイズが1nm以上100nm以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の磁性材料。
- 少なくとも第1相が、FM 100−x M x (但し、xは原子百分率で0.001≦x≦1であり、FMはFeを含み、且つNi及び/又はCoを含む強磁性成分であり、MはZr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Cu、Zn、Siのうちのいずれか一種以上である)の組成式で表されるbcc相を有し、そのbcc相の結晶子サイズが1nm以上200nm以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の磁性材料。
- 粉体の形態の磁性材料であって、軟磁性の磁性材料の場合には10nm以上5mm以下の平均粉体粒径を有し、半硬磁性の磁性材料の場合には10nm以上10μm以下の平均粉体粒径を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の磁性材料。
- 第1相又は第2相の少なくとも1相が隣り合う相と強磁性結合している、請求項1〜14のいずれか一項に記載の磁性材料。
- 第1相と第2相が、直接、又は金属相若しくは無機物相を介して連続的に結合し、磁性材料全体として塊状を成している状態である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の磁性材料。
- 平均粉体粒径が1nm以上1μm未満のM−フェライト粉体を、水素ガスを含む還元性ガス中で、還元温度400℃以上1500℃以下にて還元することによって請求項14に記載の磁性材料を製造する方法。
- 平均粉体粒径が1nm以上1μm未満のM−フェライト粉体を、水素ガスを含む還元性ガス中で還元し、不均化反応により第1相と第2相を生成させることによって、請求項1〜15のいずれか一項に記載の磁性材料を製造する方法。
- 請求項17又は18に記載の製造方法によって製造される磁性材料を焼結することによって、請求項16に記載の磁性材料を製造する方法。
- 請求項17に記載の製造方法における還元工程後に、又は請求項18に記載の製造方法における還元工程後若しくは生成工程後に、又は請求項19に記載の製造方法における焼結工程後に、最低1回の焼鈍を行う、軟磁性又は半硬磁性の磁性材料を製造する方法。
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