JP6939835B2 - 浸炭部材 - Google Patents

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Description

本発明は、建産機や自動車の分野で用いられる、優れた回転曲げ疲労特性、ねじり疲労特性および衝撃疲労特性を有する浸炭部材に関するものである。本発明の浸炭部品が適用可能な部品としては、建産機分野では、例えば、走行減速機のギア(プラネタリーギアおよびサンギア等の歯車)、大型減速機のギア、油圧ポンプのバルブプレート、ボールねじのナット、サイクロン減速機の曲線板およびピン、並びに、直動軸受けのブロック等が挙げられ、同様に、自動車分野では、各種軸受、エンジンのピストンピン、カムシャフトおよびタイミングギア、変速機の歯車類(ミッシングギア、リングギア、サンギアおよびプラネリタギア等)、並びに、駆動系のデフベベルギア、トリポート、インナおよびボール等が挙げられる。また、建産機や自動車分野以外では、電気機器分野の風力発電機用の軸受や減速ギア等である。
近年、自動車等に用いられる歯車やシャフト等は、省エネルギー化による車体重量の軽量化に伴って、サイズの小型化が要求される一方、エンジンの高出力化に伴って負荷は増大している。そこで、歯車やシャフトには、優れた耐疲労性を付与するための浸炭処理が施されている。
一般的に、歯車の耐久性は、歯の耐衝撃破壊、歯元の曲げ疲労破壊ならびに歯面の面圧疲労破壊によって決定される。衝撃的な応力がかかる部分、例えば自動車のデファレンシャル等で使用される歯車では、高い衝撃荷重により破壊が早期に起こる場合があるため、衝撃特性の向上が種々検討されている。
例えば、特許文献1には、浸炭層の靭性を向上するためにMoを添加し、浸炭層の粒界強度を低下させるMn、Cr、Pを少なくすること、Mo/(10Si+100P+Mn+Cr)により求まる値の下限を規定することおよび、浸炭硬化層深さの範囲を規定することにより、衝撃特性を向上させることが提案されている。
特許文献2には、焼入れの冷却速度範囲を成分組成に応じた適正範囲に制御することにより、歯車の内部をマルテンサイトとベイナイトの混合組織として靭性を向上させることが、提案されている。
特許文献3は、特許文献2と同様に、ミクロ組織を規定する技術である。すなわち、特許文献3には、ミクロ組織をマルテンサイトと内部の靭性を向上させるトルースタイトとの混合組織とし、MnとCrの添加量の範囲を規定し、Mo添加量を規制してトルースタイトの量を制限することにより、内部硬度の低下を抑える方法が提案されている。
さらに、特許文献4には、特許文献3に記載の成分組成に、Moを添加した、鋼が提案されている。
特許文献5には、成分組成においてMn、CrおよびMoの複合添加量を制限して鋼材の硬さを抑え、冷間鍛造性を損なうこと無く衝撃特性を向上させた傘歯車用鋼材が提案されている。
特許文献6には、歯車用鋼の衝撃疲労強度を向上させるために、低いP量の下でBを添加することによって、粒界を強化し、粒界酸化層深さ、内部硬さおよび有効硬化層深さを適切にバランスさせることが提案されている。
特公平7−100840号公報 特許3094856号公報 特許第3329177号公報 特許第3733504号公報 特許第3319684号公報 特許第4938475号広報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、衝撃特性を向上出来たとしても、高価な合金元素であるMoを多量に添加させるか、Moを多く入れない場合には浸炭時間を大幅に延長させることが必要であり、製品コストまたは製造コストの大幅な増加を招いてしまう。
特許文献2に記載の方法では、ミクロ組織中にベイナイト組織を含むことから、靭性を向上させて衝撃値を高めることは可能である。しかし、内部にベイナイト組織が含まれると、内部硬さは低下するために歯車が衝撃で変形しやすくなり、衝撃力が繰り返されると破損することが懸念される。
特許文献3に記載の方法では、MnとCrの複合添加量を指定し、Mo添加量を規制するため、表層付近で発生する粒界酸化が多くなり、MnおよびCrの酸化物が形成されて焼入れ性が低下し、表層に不完全焼入れ層が形成される。そのため、内部硬度が確保出来たとしても表層の硬さ低下による表層からの破壊が発生しやすくなり、結果的に衝撃疲労を含むすべての疲労強度が低下してしまう。
特許文献4に記載の方法では、Moを添加してもトルースタイトにより歯車内部の硬度低下が発生するため、衝撃特性が向上したとしても内部起因の曲げ疲労などの疲労強度が低下する。
特許文献5に記載の方法は、歯車を熱間鍛造で整形する場合に硬度が低くなり、衝撃以外の疲労強度が低下してしまう。
一方、特許文献6に記載の手法によって、疲労強度、中でも衝撃疲労強度を高めることが可能になる。ここで、歯車以外の浸炭部材の典型であるシャフトについて、その耐久性は、主にねじりに起因する疲労破壊によって決まる。特に、シャフトには、一般に潤滑を目的とする、油が循環するための孔が設けられている。この油孔は空洞であることから応力が集中しやすく、この油孔からねじりに起因する疲労破壊が発生しやすいために、衝撃疲労強度以外に、ねじり疲労強度も高める必要がある。このねじり疲労強度については、特許文献6に何ら触れられていない。
そこで、本発明は、歯車やシャフトなどの浸炭部材に、優れた耐衝撃疲労特性に加えて優れた耐ねじり疲労特性を与えるための方途について提案することを目的とする。
本発明者等は上記課題を解決するため、従来用いられている生産コストの低い浸炭工法によっても、優れた耐衝撃疲労特性が得られる成分組成について鋭意検討を行った。
その結果、繰返される衝撃応力に対して衝撃力による変形を起こさないことが必要であり、そのためには適切な硬度分布と、それに影響を及ぼす、浸炭熱処理時に主に旧オ−ステナイト粒界に沿って生成する、Si、Mnなどを主体とした酸化物の表面からの深さ、すなわち粒界酸化層深さおよび内部硬さと、を適切な範囲に制御する必要のあることを知見し、この知見に基づいて以下の指針を得た。
i)耐衝撃疲労特性の向上には旧オーステナイト粒界の強化が最も重要であり、Pを低減して旧オーステナイト粒界の脆化を抑制する。
ii)さらに、鋼中にBを固溶させて旧オーステナイト粒界に優先的に偏析させ、Pの粒界偏析を抑制する。
iii)固溶Bを鋼中に存在させるには、Bとの結合力の強いNをTiまたはAlで結合させるが、Tiを用いた場合に溶製時に析出するTiNは比較的大きく、鋭利で硬質な介在物のため、疲労の起点となり易く、面疲労強度および曲げ疲労強度が低下する。
iv)Alを添加してB、Nとの平衡関係を利用してNを固定した場合、BN、AlNが鋼中に析出する。AlNは微細なため、結晶粒は微細化し、衝撃疲労強度が向上する。また、AlNは微細なために疲労の起点にはならず、Ti添加よりも疲労強度の向上が図られる。
v)衝撃疲労強度には粒界酸化層深さと内部硬さおよび浸炭硬度分布(硬化層深さ)のバランスが大切であり、最適な範囲が存在する。
vi)また、シャフトを想定したときの、浸炭部材のねじり疲労強度の向上には、圧縮残留応力を付与することが有効であり、圧縮残留応力を粒界酸化層深さ、内部硬さおよび硬化層深さとバランスさせることが肝要になる。
vii)疲労強度の向上には、浸炭硬化深さを深くしつつ、圧縮残留応力を大きくし、不完全焼入れ層を減らすことが有効である。
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
1.C:0.16質量%以上0.35質量%以下、
Si:0.01質量%以上0.15質量%以下、
Mn:0.50質量%以上1.2質量%以下
P:0.015質量%以下、
S:0.03質量%以下、
Cu:0.30質量%以下、
Cr:1.2質量%未満、
Mo:0.20質量%以上0.70質量%以下、
Al:0.055質量%以上0.100質量%以下、
B:0.0004質量%以上0.0040質量%以下および
N:0.0070質量%未満
を、次式(1)に従うI値が0.028 以上となる範囲にて含有し、残部はFe及び不可避不純物の成分組成を有し、外周部に浸炭層を有する浸炭部材であって、
次式(2)に従うA値が105以上270以下かつ次式(3)に従うB値が900以上かつ次式(4)に従うC値が550以上である浸炭部材。
I=14/27×Al+14/10.8×B−N ・・・・ (1)
但し、上式(1)におけるAl、BおよびNは各元素の含有量(質量%)
A=E/2×H−D/2 ・・・・ (2)
B=40E−10D+R ・・・・ (3)
C=40E−25F+R ・・・・ (4)
但し、上式(2)(3)および(4)において
E:有効硬化深さ(mm)
H:内部硬さ(HV)
D:粒界酸化深さ(μm)
R:圧縮残留応力(MPa)
F:不完全焼入れ層深さ(μm)
2.前記成分組成は、更に、
Ni:2.0質量%以下、
Ti:0.050質量%未満、
Nb:0.050質量%以下および
V:0.200質量%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する前記1に記載の浸炭部材。
3.前記成分組成は、更に、
Ca:0.0050質量%以下および
Mg:0.0020質量%以下
の1種または2種を含有する前記1または2に記載の浸炭部材。
4.前記成分組成は、更に、
Sb:0.030質量%以下
を含有する前記1から3のいずれかに記載の浸炭部材。
本発明によれば、耐衝撃疲労特性および耐ねじり疲労特性に共に優れる浸炭部材を提供することができる。従って、自動車や建機に用いられる部材の耐火性を高めることができ、産業上極めて有用である。
A値と衝撃疲労強度との関係を示すグラフである。 B値とねじり疲労強度との関係を示すグラフである。 C値とねじり疲労強度との関係を示すグラフである。 浸炭焼入れ、焼戻し処理の条件を示す図である。 落錘型衝撃疲労試験の試験片形状を示す図である。 ねじり疲労試験の試験片形状を示す図である。
以下に、本発明の成分組成における各元素量の限定理由について述べる。以下の説明において、成分組成に関する%表示は、特に断らない限り質量%を意味する。
C:0.16%以上0.35%以下
Cは、浸炭処理後の焼入れにより浸炭材中心部の硬度を高めるのに有効であり、そのためには、0.16%以上のCを必要とする。一方、含有量が0.35%を超えると、前記中心部の靭性が低下するため、C量は0.35%以下とする。好ましくは、0.16%以上0.30%以下の範囲である。
Si:0.01%以上0.15%以下
Siは、脱酸剤として、少なくとも0.01%の添加が必要である。しかしながら、Siは浸炭層の表面側で優先的に酸化し、粒界酸化を促進する元素である。さらに、フェライトを固溶強化し加工性を劣化させるため、上限を0.15%とする。好ましくは0.02%以上0.14%以下である。更に好ましくは0.03%以上0.12%以下である。
Mn:0.50%以上1.2%以下
Mnは、焼入れ性を高める元素であり、焼入れ性を確保するためには0.50%以上の含有量とする。なお、1.2%を超えると、ミクロ偏析の悪化、MnS生成増による疲労特性低下が起きるため1.2%を上限とする。
P:0.015%以下
Pは、結晶粒界に偏析し、靭性を低下させるため、0.015%以下に抑制する。Pの混入は低いほど望ましいが、必要以上に低減することは、製造コストの上昇につながるため、0.002%以上とすることが好ましい。
S:0.03%以下
Sは、硫化物系介在物として存在し、被削性の向上に有効な元素であり、そのためには0.003%以上で含有させることが好ましい。しかしながら、過剰な添加は疲労強度の低下を招くため、上限を0.03%とした。
Cu:0.30%以下(0質量%を含む)
Cuは、原料としてスクラップを使用した場合に混入する元素であるが、熱間圧延や熱間鍛造等の熱間加工性を低下させ、歯車やシャフト等の形状に加工する場合に疵などの欠陥の生成を助長する元素である。そのため、その含有量は0.30%以下とする。なお、Cuは0%であってもよい。
Cr:1.2%未満
Crは、焼入れ性向上元素であるとともに、焼戻し軟化抵抗を高める元素であり、そのためには0.1%以上で含有させることが好ましい。しかし、Crの含有量が1.2%以上になると、軟化抵抗を高める効果は飽和する一方で、焼入れ性が高くなりすぎて浸炭部材内部の靭性が劣化し、衝撃疲労強度が低くなるばかりでなく曲げ疲労強度も低下する。よって、Crの含有量は1.2%未満にする。好ましくは、1.0%未満、更に好ましくは0.9%未満である。
Mo:0.20%以上0.70%以下
Moは、焼入れ性を向上させるのに有効な元素であり、焼入れ性を確保するために0.20%以上の含有とする。一方、Moは高価な元素である上に、0.70%を超えて含有させても前記効果は飽和するため、上限を0.70%とする。好ましくは、0.22%以上0.65%以下である。
Al:0.055%以上0.100%以下
Alは、NとBとの平衡において固溶Bを確保するために必要な元素である。その添加量が0.055%未満ではその効果が得られず、0.100%を超えて添加すると溶製時において鋳造異常等の虞があるため、0.055%以上0.100%以下とする。好ましくは、0.055%以上0.090%以下である。
B:0.0004%以上0.0040%以下
Bは、鋼中に固溶して粒界偏析し焼入れ性を向上させ、低Si化による焼入れ性の低下を補う。また、Pの粒界偏析を妨げ、粒界強度を向上させて疲労特性を改善する効果を有する。そのために、B量は0.0004%以上とする。なお、0.0040%を超えると、その効果が飽和するため、0.0040%以下とする。
N:0.0070%未満
Nは、Bと結合してBNを生成することから、上記した固溶Bを確保するためにはNは少ないほど良いが、次に示すAl、NおよびBの平衡関係において、Nが0.0070%未満であれば固溶Bの確保は可能となるため、0.0070%未満とする。好ましくは、0.0065%以下である。
さらに、上記した成分のうち、Al、NおよびBは、次式(1)に従うI値が0.028以上となる範囲で含有する必要がある。
I=14/27×Al+14/10.8×B−N ・・・・ (1)
但し、上式(1)におけるAl、BおよびNは各元素の含有量(質量%)
このI値は、衝撃疲労強度やねじり疲労強度を向上させる固溶Bの確保のためにAl、BおよびNのバランスを決める指標である。I値が0.028未満の場合は、鋼中に固溶するBの確保が出来なくなるため、Iは0.028以上とする。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避不純物である。ここで、不可避不純物としての酸素の含有量は、コストが許す範囲内で出来るだけ低いほうが望ましい。
以上が本発明の基本成分組成であるが、更に特性を向上させる場合、Ni、Ti、NbおよびVのいずれか1種または2種以上を、以下に説明する含有量の範囲内で含有することができる。
Ni:2.0%以下
Niは、靭性を劣化させずに、強度を高められる元素として非常に有用であり、そのためには0.1%以上添加することが好ましい。しかし、Niは高価であり2.0%を超えると前記効果は飽和することから、上限を2.0%とする。
Ti:0.050%未満
Tiは、Nと最も結合しやすいことから、固溶Bを確保するには有効な元素であり、そのためには0.003%以上添加することが好ましい。しかし、Tiは過剰に添加されると硬くて鋭利な形状の粗大なTiNが多く形成され、曲げ疲労や衝撃疲労の破壊の起点となり、強度を低下させる。その影響は0.050%以上の添加で顕著になる。よって、Tiを添加する場合は、0.050%未満とする。好ましくは、0.035%未満である。
Nb:0.050%以下
Nbは、結晶粒を微細化させて粒界を強化して疲労強度を向上させる効果を有する。そのためには0.003%以上添加することが好ましい。この効果は0.050%で飽和することから、Nbを添加する場合は0.050%以下とする。好ましくは、0.035%未満である。
V:0.200%以下
Vは、浸炭後の内部強度を上昇させて全体の疲労強度を向上させる効果を有し、そのためには0.030%以上添加することが好ましい。一方、0.200%を超えると前記効果は飽和する。従って、Vを添加する場合は、0.200%以下とする。
さらに、本発明は、硫化物の形態を制御し、被削性や冷間鍛造性を高めるために上記成分に、更にCaおよびMgから選ばれる1種または2種を添加することができる。
Ca:0.0050%以下
Mg:0.0020%以下
CaおよびMgは、Sと結合して硫化物を形成し、被削性や冷間鍛造性を高めるのに寄与する元素である。その効果を発揮するためにはそれぞれ0.0005%以上および0.0002%以上であることが好ましい。一方で、過剰に添加すると生成した介在物により材料特性へ悪影響を与えるため、上限をそれぞれ0.0050%および0.0020%とすることが好ましい。
さらにまた、本発明では、Sb:0.030%以下で添加することができる。すなわち、Sbは、一部が鋼材表面や粒界に微量に偏析することにより、例えば浸炭時の粒界酸化の抑制効果がある。その効果を得るためには0.002%以上で添加することが好ましい。ただし、0.030%を超えて添加してもその効果が飽和するため、上限を0.0030%とすることが好ましい。さらに、好ましくは、0.013%以上0.025%以下である。
以上の成分組成を有する鋼素材(例えばビレット)に熱間圧延を施した後、予備成形、次いで機械加工を行って歯車やシャフトの形状とした後、浸炭焼入れ処理を施し、更にショットピーニングあるいは、さらに研磨加工を施して浸炭部材とする。この浸炭部材は、次式(2)に従うA値が105以上270以下、次式(3)に従うB値が900以上、かつ次式(4)に従うC値が550以上であることが肝要である。
A=E/2×H−D/2 ・・・・ (2)
B=40E−10D+R ・・・・ (3)
C=40E−25F+R ・・・・ (4)
但し、上式(2)(3)および(4)において
E:有効硬化深さ(mm)
H:内部硬さ(HV)
D:粒界酸化深さ(μm)
R:圧縮残留応力(MPa)
F:不完全焼入れ層深さ(μm)
まず、A値は、とりわけ歯車に要求される、優れた耐衝撃疲労特性を付与するための指標になり、105以上270以下とする。また、B値およびC値は、とりわけシャフトに要求される、高い耐ねじり疲労特性を付与するための指標になり、それぞれ900以上および550以上とする。以下に、これら指標において適切な範囲を導くに到った実験結果について、詳しく説明する。
表1のNo.1〜3に示す成分組成を有する丸棒鋼(32mmφ)から衝撃疲労試験用の試験片を、後述の実施例と同様に作製し、種々の条件での浸炭焼入れ・焼戻しを行うことによって、粒界酸化層深さ、内部硬さ、有効硬化層深さおよび不完全焼入れ層深さの異なる、種々の衝撃疲労試験片を作製し、試験片毎に、後述の実施例における測定方法に従って衝撃エネルギーを測定し、該衝撃エネルギーにて衝撃疲労強度を評価した。この衝撃疲労強度の評価結果を、表2に示す。
ここで、粒界酸化層深さとは、浸炭熱処理時に主に旧オ−ステナイト粒界に沿って生成する、Si、Mnなどを主体とした酸化物の部材表面からの生成深さであり、20μm以下とすることが好ましい。内部硬さとは、浸炭層の表面から5mmの位置の硬さであり、420HV以上を確保することが好ましい。有効硬化層深さとは、ビッカース硬さHV550以上となる部位の部材表面からの深さであり、0.53mm 以上を確保することが好ましい。不完全焼入れ層とは、浸炭部材の表層においてマルテンサイト変態が起きずに、低硬度の組織となった領域であり、浸炭異常層と言うこともできる領域である。この不完全焼入れ層の部材表面からの深さを不完全焼入れ層深さという。この不完全焼入れ層深さは、25μm以下であることが望ましい。
なお、粒界酸化層深さ、内部硬さ、有効硬化層深さおよび不完全焼入れ層深さは、後述の実施例における測定方法に従って測定することができる。
Figure 0006939835
Figure 0006939835
表2に示す衝撃疲労強度の評価結果において、衝撃疲労強度(衝撃エネルギー)が2.5N・m以上となる、優れた耐衝撃疲労特性を示す試験片について解析したところ、衝撃疲労試験結果は、有効硬化層深さE(mm)、内部硬さH(HV)および粒界酸化層深さD(μm)に関する関係式(E/2×H−D/2)にて整理できることを見出すに到った。さらに、この関係式で求められるA値と衝撃疲労強度との関係を整理して図1に示すように、A値が105以上270以下であれば、衝撃疲労強度が2.5N・m以上の優れた耐衝撃疲労特性が得られることが判明した。尚、A値を算出する際のE、HおよびDには、上記したそれぞれの単位系における数値自体を用いる。
同様に、No.1〜3に示す成分組成を有する丸棒鋼(32mmφ)からねじり疲労試験用の試験片を、後述の実施例と同様に作製し、種々の条件での浸炭焼入れ、焼戻しを行ったのち、種々の条件でのショットピーニング処理を行うことによって、粒界酸化層深さ、有効硬化層深さ、不完全焼入れ層深さおよび残留圧縮応力の異なる、種々のねじり疲労試験片を作製し、試験片毎に、表面の残留圧縮応力をX線にて測定するとともに、後述の実施例における測定方法に従って105回の時間強度(トルク)を測定し、該時間強度にてねじり疲労強度を評価した。このねじり疲労強度の評価結果を、表2に併記する。
ここで、残留圧縮応力とは、外力を除去したあとでも物体内に残る応力のことである。なお、残留圧縮応力は、後述の実施例における測定方法に従って測定することができる。
表2に示すねじり疲労強度の評価結果において、ねじり疲労強度が735N・m以上となる、優れたねじり疲労特性を示す試験片について解析したところ、有効硬化層深さE(mm)、粒界酸化層深さD(μm)および残留圧縮応力R(MPa)に関する関係式(40E−10D+R)にて整理できることを見出すに到った。さらに、この関係式で求められるB値とねじり疲労強度との関係を整理して図2に示すように、B値が900以上であれば、ねじり疲労強度が735N・m以上の優れた耐ねじり疲労特性が得られることが判明した。一方、B値の上限は特に限定する必要はない。
尚、B値を算出する際のE、DおよびRには、上記したそれぞれの単位系における数値自体を用いる。
更に、有効硬化層深さE(mm)、不完全焼入れ層深さF(μm)および残留圧縮応力R(MPa)に関する関係式(40E−25F+R)にて整理できることも見出した。この関係式で求められるC値とねじり疲労強度との関係を図3に示すように、C値が550以上であれば、ねじり疲労強度が735N・m以上の優れた耐ねじり疲労特性が得られることが判明した。一方、B値の上限は特に限定する必要はない。
尚、B値を算出する際のE、FおよびRには、上記したそれぞれの単位系における数値自体を用いる。
本発明に係る鋼部材(たとえば、歯車またはシャフト)を作製するには、常法により溶解鋳造して、上記した成分組成のビレットとし、このビレットに熱間圧延を施した後、歯車およびシャフト等の形状とするための予備成形を行う。予備成形としては、熱間鍛造が挙げられる。この予備成形後に機械加工、あるいは予備成形後に鍛造してから機械加工を行って、歯車およびシャフト等の形状とした後、浸炭焼入れ、焼戻し処理を施す。ここでの浸炭焼入れ、焼戻し処理の条件を適宜選択することによって、有効硬化層深さE、内部硬さHおよび粒界酸化層深さDを上記したA値を満足する範囲に調整する。ここで、不完全焼入れ層深さFはA値に関係しないが、後述のC値を満足させるために調整しておく。なお、浸炭焼入れ、焼戻し処理は、浸炭温度900〜1050℃、焼入れ温度800〜900℃とし、焼戻し温度は120〜250℃の範囲とすることが好ましく、これらの範囲内で処理条件を適宜選択する。
さらに、鋼部材の疲労強度を向上させるべき部位、例えば、鋼部材が歯車の場合は少なくとも歯面およびシャフトの場合は少なくとも油孔近傍にショットピーニング処理を施す。ここでのショットピーニング処理の条件を適宜選択することによって、上記部位の残留圧縮応力Rを上記したB値およびC値を満足する範囲に調整する。さらに(必要に応じて)研磨加工を施して最終製品とする。
ここで、ショットピーニング処理は、各種手法があるが、鋼部材の表層に大きな圧縮残留応力を導入でき、かつ表面粗さを極力大きくしない方法を用いることが好ましい。たとえば、2段ショットピーニング法を用いる場合は、1段目にショット粒硬さ約650〜800HVで0.5〜1.0mmφをカバレージ200%以上で主として残留応力を与え、続く2段目をシ
ョット粒硬さ約650〜800HVで0.1mmφ未満をカバレージ200%以上で行い、表面粗さを
整えることが好ましく、これらの範囲内で処理条件を適宜選択する。
表3に示す化学成分を有する鋼を溶製し供試鋼とした。表中、No.A〜Lは、本発明範囲内の成分組成の適合鋼であり、No.M〜AEは本発明範囲外の比較鋼である。
溶製された上記の適合鋼および比較鋼のインゴットを熱間圧延により直径32mmの丸棒鋼に調製し、得られた丸棒鋼に対し焼準処理を実施した。
焼準処理後の丸棒鋼から直径20mmの丸棒、衝撃疲労試験片、孔付ねじり疲労試験片を採取した。丸棒および各疲労試験片に対して、図4に示す条件に従って浸炭焼入れ、焼戻し処理を施し、次いでショットピーニング処理を前述の条件に従って施した後、表面硬さ、内部硬さ、有効硬化層深さ、圧縮残留応力を調査した。その後、後述する衝撃疲労試験およびねじり疲労試験を実施した。以下に、それぞれの調査内容について詳細に説明する。
Figure 0006939835
[粒界酸化層深さ、有効硬化層深さ、内部硬さ、不完全焼入れ層深さ、圧縮残留応力]
上記した直径20mmの丸棒(適合鋼および比較鋼)において、ショットピーニング処理後に、X線にて「圧縮残留応力」を測定した。次に、該丸棒を切断し、浸炭表層を1000倍で5視野観察し、酸化物の深さが最大となる「粒界酸化層深さ」を光学顕微鏡にて測定した。また、丸棒の断面の硬度分布を測定し、ビッカース硬さで550HVの得られる深さを調査し「有効硬化層深さ」とした。さらに、丸棒の表面より5mm深さ位置の硬さをビッカース硬度計にて測定し、この値を「内部硬さ」とした。さらにまた、サンプル(丸棒)をナイタールで腐食し、表面の黒色部を不完全焼入れ層とし、400倍で5視野観察し、表面からの深さが最大となる厚みを「不完全焼入れ層深さ」とした。
[耐衝撃疲労特性]
直径32mmの丸棒鋼から、図5に示す試験片を作製し、図4に示す条件の浸炭焼入れ、焼き戻し処理を施した後、落錘型衝撃疲労試験機により、繰返し数200回で破壊する衝撃エネルギーを調査した。
[耐ねじり疲労特性]
直径32mm径の丸棒鋼から、図6に示す試験片を作製し、得られた試験片の全数(適合鋼、比較鋼)に図4に示す条件の浸炭焼入れ、焼戻し処理および上記した条件のショットピーニング処理を行い、その後、ねじり疲労試験機を使用して2Hzおよびsin波の条件にて負荷トルクを変化させて3本以上実施し、トルク寿命線図から105回の時間強度(トルク)を求めた。
表4に上記の各調査の結果を示す。本発明に従う鋼部材は有効硬化層深さが0.53mm以上、粒界酸化深さが17μm以下、不完全焼入れ層深さが20μm以下および内部硬さは420HV以上であり、衝撃疲労強度は2.7N・m以上、ねじり疲労強度741N・m以上が得られ、No.13〜33の比較例より優れていた。
Figure 0006939835

Claims (4)

  1. C:0.16質量%以上0.35質量%以下、
    Si:0.01質量%以上0.15質量%以下、
    Mn:0.50質量%以上1.2質量%以下
    P:0.015質量%以下、
    S:0.03質量%以下、
    Cu:0.30質量%以下、
    Cr:1.2質量%未満、
    Mo:0.20質量%以上0.70質量%以下、
    Al:0.055質量%以上0.100質量%以下、
    B:0.0004質量%以上0.0040質量%以下および
    N:0.0070質量%未満
    を、次式(1)に従うI値が0.028 以上となる範囲にて含有し、残部はFe及び不可避不純物の成分組成を有し、外周部に浸炭層を有する浸炭部材であって、
    次式(2)に従うA値が105以上270以下かつ次式(3)に従うB値が900以上かつ次式(4)に従うC値が550以上である浸炭部材。
    I=14/27×Al+14/10.8×B−N ・・・・ (1)
    但し、上式(1)におけるAl、BおよびNは各元素の含有量(質量%)
    A=E/2×H−D/2 ・・・・ (2)
    B=40E−10D+R ・・・・ (3)
    C=40E−25F+R ・・・・ (4)
    但し、上式(2)(3)および(4)において
    E:有効硬化深さ(mm)
    H:内部硬さ(HV)
    D:粒界酸化深さ(μm)
    R:圧縮残留応力(MPa)
    F:不完全焼入れ層深さ(μm)
  2. 前記成分組成は、更に、
    Ni:2.0質量%以下、
    Ti:0.050質量%未満、
    Nb:0.050質量%以下および
    V:0.030質量%以上0.200質量%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する請求項1に記載の浸炭部材。
  3. 前記成分組成は、更に、
    Ca:0.0050質量%以下および
    Mg:0.0020質量%以下
    の1種または2種を含有する請求項1または2に記載の浸炭部材。
  4. 前記成分組成は、更に、
    Sb:0.030質量%以下
    を含有する請求項1から3のいずれかに記載の浸炭部材。
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