(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。実施例1は、ドローンのような無人の移動体との間で無線通信を実行する無線中継システムに関する。移動体は、前述のごとく、通信機能と撮像機能とを備え、無線通信を介して受信した制御信号に含まれた指示にしたがって移動するとともに、移動した位置において撮像した映像が含まれたデータを送信する。このような移動体の作業範囲は制御信号の伝送距離に制限されるので、制御信号には長い伝送距離が求められる。一方、映像の品質はデータの帯域に制限されるので、データには高速の伝送レートが求められる。長い伝送距離を有し、かつ高速の伝送レートを有する無線通信システムの1つがLTE(Long Term Evolution)である。しかしながら、一般的に伝送距離が長くなると伝送レートが遅くなるので、長い伝送距離と高速の伝送レートの両立が困難になる場合もある。
本実施例では、これらを両立するために、制御信号の伝送にLTEのような移動通信システム(以下、「第1無線通信システム」あるいは「第1無線通信ネットワーク」という)を使用する。制御信号の伝送に要求される伝送レートは一般的に遅くてもよいので、伝送距離を長くするために第1無線通信ネットワークが使用される。一方、本実施例では、データの伝送に無線LAN(Local Area Network)(以下、「第2無線通信システム」あるいは「第2無線通信ネットワーク」という)を使用する。しかしながら、第2無線通信ネットワークの伝送距離は第1無線通信ネットワークの伝送距離も短い。そのため、データが伝送されなくなる。そこで、本実施例では、映像を撮像するための移動体(以下、「データ送信元用移動体」という)の他に、データ送信元用移動体からのデータを中継するための移動体(以下、「データ中継用移動体」という)も使用する。つまり、伝送距離が長い第1無線通信ネットワークによる制御信号の伝送と、伝送レートが高速であるが伝送距離の短い第2無線通信ネットワークによるデータの中継とが実行される。
図1は、無線中継システム100の構成を示す。無線中継システム100は、制御装置10、第1ネットワーク12、第1基地局装置14、第2ネットワーク16、第2基地局装置18、データ送信元用移動体20、データ中継用移動体22を含む。無線中継システム100は、例えば、データ送信元用移動体20に対して、災害発生現場まで移動させ、災害発生現場において映像を撮像させ、撮像した映像を送信させる任務を実行する。
制御装置10は、クラウドのサーバに相当するコンピュータである。制御装置10は、1つのコンピュータにより構成されてもよく、複数のコンピュータの組合せにより構成されてもよい。制御装置10は、ユーザから任務の指示を受けつけ、データ送信元用移動体20に任務を実行させ、データ送信元用移動体20からの映像を受信する。これらの処理の詳細は後述する。
第1ネットワーク12は、制御装置10と第1基地局装置14とを接続する。第1基地局装置14は、例えば、LTEなどの第1無線通信ネットワークに含まれる。一方、第2ネットワーク16は、制御装置10と第2基地局装置18とを接続する。第2基地局装置18は、例えば、無線LANなどの第2無線通信ネットワークに含まれる。第2無線通信ネットワークは、第1無線通信ネットワークと比較して、短い伝送距離と高速の伝送レートを有する。このような構成によって、制御装置10は、第1無線通信ネットワークと第2無線通信ネットワークで通信可能である。ここでは、説明を明瞭にするために、第1基地局装置14に接続される第1ネットワーク12と、第2基地局装置18に接続される第2ネットワーク16とを別々に示したが、これらは共通化されてもよい。
データ送信元用移動体20とデータ中継用移動体22は、例えば、ドローンのような無人飛行装置であり、飛行のように移動可能である。データ送信元用移動体20とデータ中継用移動体22は、バッテリに蓄えられた電力によって駆動する。また、データ送信元用移動体20とデータ中継用移動体22は、第1無線通信ネットワークと第2無線通信ネットワークで通信可能である。データ送信元用移動体20とデータ中継用移動体22は、同一の構成を有するが、ここでは、役割の違いに応じた別の機能を説明する。
以下では、このような構成をもとにして、データ送信元用移動体20に対して、災害発生現場まで移動させ、災害発生現場において映像を撮像させ、撮像した映像を送信させる任務のための処理を、(1)移動処理、(2)中継処理の順に説明する。
(1)移動処理
制御装置10の操作部30は、ユーザからの指示を受けつけ可能なインターフェイスである。操作部30は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等に相当する。操作部30は、ユーザから任務に関する指示(以下、「任務指示」という)を受けつける。任務指示は、例えば、災害発生現場の位置情報である。ここでは、任務の内容を、データ送信元用移動体20に対して、災害発生現場まで移動させ、災害発生現場において映像を撮像させ、撮像した映像を送信させることとするが、他の内容である場合、その内容が任務指示に含まれる。操作部30は、任務指示を処理部32に出力する。
処理部32は、操作部30からの任務指示を受けつける。処理部32は、任務指示に含まれた災害発生現場の位置情報を抽出し、災害発生現場の位置情報への移動の指示(以下、「第1移動指示」という)が含まれた第1制御信号を生成する。この第1制御信号の宛先は、データ送信元用移動体20である。処理部32は第1制御信号を第1通信部34に出力する。第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、データ送信元用移動体20に第1制御信号を送信する。ここでは、第1基地局装置14と通信可能である通信エリア(以下、「第1通信エリア」という)に災害発生現場が含まれているとする。なお、第1基地局装置14が複数配置され、データ送信元用移動体20の現在位置から災害発生現場までの間に、複数の第1基地局装置14をまたぐハンドオーバがなされてもよい。
処理部32は、第2基地局装置18の位置情報を記憶しており、第2基地局装置18と災害発生現場との間の距離を計算する。処理部32は、第2基地局装置18の通信エリア端と第2基地局装置18との間の距離よりも、第2基地局装置18と災害発生現場との間の距離の方が長い場合、データ中継用移動体22の使用を決定する。これは、第2基地局装置18と通信可能である通信エリア(以下、「第2通信エリア」という)に災害発生現場が含まれていないことに相当する。
処理部32は、第2通信エリアに含まれた位置でありながら、災害発生現場に存在するデータ送信元用移動体20とのアドホック通信が可能な位置(以下、「中継位置」という)を特定する。例えば、処理部32は、第2基地局装置18の位置と災害発生現場との中間地点を中継位置として特定する。なお、処理部32は、地図情報を保持しており、特定した中継位置に高層ビルなどの障害物が配置されている場合、第2通信エリア内において中継位置を修正してもよい。処理部32は、中継位置への移動の指示(以下、「第2移動指示」という)が含まれた第2制御信号を生成する。この第2制御信号の宛先は、データ中継用移動体22である。処理部32は第2制御信号を第1通信部34に出力する。第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、データ中継用移動体22に第2制御信号を送信する。ここでも、第1通信エリアに中継位置が含まる。
データ送信元用移動体20の第1通信部40は、第1無線通信ネットワークでの通信を実行可能であり、第1基地局装置14からの第1制御信号を受信する。第1通信部40は、第1制御信号を処理部42に出力する。処理部42は、第1制御信号から第1移動指示を抽出するとともに、第1移動指示をもとに災害発生現場の位置情報を特定する。また、測位部44は、GPS(Global Positioning System)受信機を備え、図示しないGPS衛星からの信号を受信することによって、データ送信元用移動体20の現在位置を測位する。測位部44における測位には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。測位部44は、定期的に測位した現在位置を処理部42に出力する。
処理部42は、測位部44から受けつけた現在位置が災害発生現場の位置情報に近づくように、駆動部46の動作を制御する。駆動部46は、例えば、プロペラに接続されたモータを含むとともに操舵機能を含み、処理部42による制御によって動作する。駆動部46の動作によって、データ送信元用移動体20は災害発生現場に向かって移動する。処理部42は、災害発生現場の位置情報から一定の範囲内に現在位置が近づいた場合に、データ送信元用移動体20が災害発生現場に到着したと判定する。処理部42は、到着を判定した場合、到着の報告が含まれた第1応答信号を生成する。第1応答信号の宛先は制御装置10である。
処理部42は、第1応答信号を第1通信部40に出力する。第1通信部40は、第1基地局装置14、第1ネットワーク12経由で制御装置10に第1応答信号を送信する。制御装置10の第1通信部34は、データ送信元用移動体20からの第1応答信号を受信し、第1応答信号を処理部32に出力する。処理部32は、第1通信部34からの第1応答信号を受けつけると、第1応答信号に含まれた到着の報告を確認し、データ送信元用移動体20が災害発生現場に到着したことを認識する。
データ中継用移動体22の第1通信部60、処理部62、測位部64、駆動部66は、データ送信元用移動体20の第1通信部40、処理部42、測位部44、駆動部46と同様の処理を実行する。データ中継用移動体22の第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から第2移動指示を抽出するとともに、第2移動指示をもとに中継位置を特定する。処理部62は、測位部64から受けつけた現在位置が中継位置に近づくように、駆動部66の動作を制御する。駆動部66の動作によって、データ中継用移動体22は中継位置に向かって移動する。
処理部62は、中継位置から一定の範囲内に現在位置が近づいた場合に、データ中継用移動体22が中継位置に到着したと判定する。処理部62は、到着を判定した場合、到着の報告が含まれた第2応答信号を生成する。第2応答信号の宛先は制御装置10である。処理部62は、第2応答信号を第1通信部60に出力する。第1通信部60は、第1基地局装置14、第1ネットワーク12経由で制御装置10に第2応答信号を送信する。制御装置10の第1通信部34は、データ中継用移動体22からの第2応答信号を受信し、第2応答信号を処理部32に出力する。処理部32は、第1通信部34からの第2応答信号を受けつけると、第2応答信号に含まれた到着の報告を確認し、データ中継用移動体22が中継位置に到着したことを認識する。
(2)中継処理
制御装置10の処理部32は、データ送信元用移動体20に対して、撮像の指示、撮像した映像の送信の指示(以下、「送信指示」という)が含まれた第1制御信号を生成する。撮像の指示には、撮像すべき対象の位置情報が含まれてもよく、撮像の指示と送信指示には、撮像および送信を実行すべき期間に関する情報が含まれてもよい。この第1制御信号の宛先は、データ送信元用移動体20である。処理部32は第1制御信号を第1通信部34に出力する。第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、データ送信元用移動体20に第1制御信号を送信する。
制御装置10の処理部32は、データ中継用移動体22に対して、データ送信元用移動体20からの映像の中継の指示(以下、「中継指示」という)が含まれた第2制御信号を生成する。中継指示には、中継を実行すべき期間に関する情報が含まれてもよい。この第2制御信号の宛先は、データ中継用移動体22である。処理部32は第2制御信号を第1通信部34に出力する。第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、データ中継用移動体22に第2制御信号を送信する。
データ送信元用移動体20の第1通信部40は、第1基地局装置14からの第1制御信号を受信する。第1通信部40は、第1制御信号を処理部42に出力する。処理部42は、第1制御信号から撮像の指示と送信指示を抽出する。処理部42は、撮像の指示にしたがって、撮像部50に映像を撮像させる。なお、撮像の指示に、撮像すべき対象の位置情報が含まれている場合、処理部42は、当該位置情報の対象を撮像部50に撮像させる。撮像部50は、例えば、カメラであり、映像を撮像するとともに、映像を処理部42に出力する。処理部42は、撮像部50から映像を受けつけると、映像が含まれたデータを生成する。処理部42は、送信指示にしたがって、データを第2通信部48に送信させる。
第2通信部48は、第2無線通信ネットワークに対応しており、データ中継用移動体22の第2通信部68との間でアドホック通信を実行可能である。アドホック通信については公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。第2通信部48は、処理部42から受けつけたデータを第2通信部68に送信する。つまり、データ送信元用移動体20は、第1無線通信ネットワークにより制御装置10から受信した第1制御信号に応じて移動した位置において、第2無線通信ネットワークによりデータ中継用移動体22にデータを送信する。
データ中継用移動体22の第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から中継指示を抽出するとともに、中継指示にしたがって、データを第2通信部68に中継させる。第2通信部68は、第2無線通信ネットワークに対応しており、データ送信元用移動体20の第2通信部48との間でアドホック通信を実行可能である。第2通信部68は、データ送信元用移動体20の第2通信部48からデータを受信し、データを第2基地局装置18に送信する。つまり、データ中継用移動体22は、第1無線通信ネットワークにより制御装置10から受信した第2制御信号に応じて移動した位置において、第2無線通信ネットワークによりデータ送信元用移動体20からのデータを制御装置10に転送する。
制御装置10の第2通信部36は、第2基地局装置18、第2ネットワーク16を介して、データ中継用移動体22からのデータを受信する。第2通信部36はデータを処理部32に出力する。処理部32は、受けつけたデータから映像を抽出する。処理部32は、映像を再生してもよい。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた通信機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
以上の構成による無線中継システム100の動作を説明する。図2は、無線中継システム100による中継手順を示すシーケンス図である。制御装置10は第1制御信号をデータ送信元用移動体20に送信する(S10)。データ送信元用移動体20は、災害発生現場に移動して(S12)、災害発生現場に到着する(S14)。制御装置10は第2制御信号をデータ中継用移動体22に送信する(S16)。データ中継用移動体22は、中継位置に移動して(S18)、中継位置に到着する(S20)。
データ送信元用移動体20は第1応答信号を制御装置10に送信し(S22)、データ中継用移動体22は第2応答信号を制御装置10に送信する(S24)。制御装置10は、第1制御信号をデータ送信元用移動体20に送信し(S26)、第2制御信号をデータ中継用移動体22に送信する(S28)。データ送信元用移動体20は、映像を撮像し(S30)、データ送信元用移動体20はデータをデータ中継用移動体22に送信し(S32)、データ中継用移動体22はデータを制御装置10に送信する(S34)。制御装置10はデータを取得する(S36)。
本実施例によれば、第1無線通信ネットワークを使用して制御信号と応答信号を伝送するので、制御信号と応答信号の伝送距離を長くできる。また、制御信号と応答信号の伝送距離が長くなるので、データ送信元用移動体、データ中継用移動体の制御を安定的に実行できる。また、第2無線通信ネットワークを使用して、データ送信元用移動体からのデータをデータ中継用移動体に中継させるので、第2無線通信ネットワークを使用する場合であっても伝送距離を長くできる。また、第2無線通信ネットワークを使用して、データ送信元用移動体からのデータをデータ中継用移動体に中継させるので、伝送レートを高速にできる。また、第1無線通信ネットワークと第2無線通信ネットワークとを併用するので、長い伝送距離と高速の伝送レートを両立できる。
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。実施例2は、実施例1と同様に、移動体との間で無線通信を実行する無線中継システムに関する。また、実施例2でも、データ送信元用移動体とデータ中継用移動体に制御装置から制御信号を送信し、データ送信元用移動体からのデータをデータ中継用移動体において中継することによって制御装置が受信する。さらに、制御信号の伝送には第1無線通信ネットワークが使用され、データの中継には第2無線通信ネットワークが使用される。実施例2は、第2無線通信ネットワークにおける伝送レートをさらに高速化することを目的とする。そのため、実施例2では、第2基地局装置、データ送信元用移動体、データ中継用移動体のそれぞれに複数のアンテナが備えられ、アダプティブアレイ、ビームフォーミング、MIMO(Multiple Input Multiple Output)が実行される。以下では、これまでとの差異を中心に説明する。
図3は、無線中継システム100の構成を示す。無線中継システム100は、図1と同様に、制御装置10、第1ネットワーク12、第1基地局装置14、第2ネットワーク16、第2基地局装置18、データ送信元用移動体20、データ中継用移動体22を含む。制御装置10、データ送信元用移動体20、データ中継用移動体22は、図1と同様の構成を有する。一方、第2基地局装置18は複数のアンテナを備え、データ送信元用移動体20は第2無線通信ネットワークのために複数のアンテナを備え、データ中継用移動体22は第2無線通信ネットワークのために複数のアンテナを備える。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
実施例1では、(1)移動処理、(2)中継処理が順に実行されていたが、実施例2では、(1)移動処理、(1’)準備処理、(2)中継処理が順に実行される。つまり、実施例2では、実施例1と比較して(1’)準備処理が追加される。(1)移動処理は実施例1と同一であるので、ここでは説明を省略する。
(1’)準備処理
制御装置10の処理部32は、データ送信元用移動体20に対して、伝送路推定のためのトレーニング信号の送信の指示(以下、「送信指示」という)が含まれた第1制御信号を生成する。この第1制御信号の宛先は、データ送信元用移動体20である。処理部32は第1制御信号を第1通信部34に出力する。第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、データ送信元用移動体20に第1制御信号を送信する。
制御装置10の処理部32は、データ中継用移動体22に対して、伝送路の推定の指示(以下、「推定指示」という)と、送信指示が含まれた第2制御信号を生成する。この第2制御信号の宛先は、データ中継用移動体22である。処理部32は第2制御信号を第1通信部34に出力する。第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、データ中継用移動体22に第2制御信号を送信する。
データ送信元用移動体20の第1通信部40は、第1基地局装置14からの第1制御信号を受信する。第1通信部40は、第1制御信号を処理部42に出力する。処理部42は、第1制御信号から送信指示を抽出する。処理部42は、送信指示にしたがって、トレーニング信号を第2通信部48に送信させる。第2通信部48は、複数のアンテナのそれぞれからトレーニング信号をデータ中継用移動体22に送信する。トレーニング信号は、データ中継用移動体22にとって既知の信号である。
データ中継用移動体22の第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から推定指示と送信指示とを抽出するとともに、推定指示にしたがって、データ送信元用移動体20からのトレーニング信号を第2通信部68に受信させる。第2通信部68は、データ送信元用移動体20からのトレーニング信号を複数のアンテナのそれぞれで受信し、伝送路特性を推定する。伝送路特性の推定には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。第2通信部68は、推定した伝送路特性を処理部62に出力する。処理部62は、第2通信部68から受けつけた伝送路特性が含まれた第2応答信号を生成する。処理部62は、第2応答信号を第1通信部60に出力する。第1通信部60は、第1基地局装置14、第1ネットワーク12経由で制御装置10に第2応答信号を送信する。
また、処理部62は、送信指示にしたがって、トレーニング信号を第2通信部68に送信させる。第2通信部68は、複数のアンテナのそれぞれからトレーニング信号を第2基地局装置18に送信する。トレーニング信号は、第2基地局装置18にとって既知の信号である。第2基地局装置18は、データ中継用移動体22からのトレーニング信号を複数のアンテナのそれぞれで受信し、伝送路特性を推定する。第2基地局装置18は、第2ネットワーク16を介して制御装置10に伝送路特性を送信する。
制御装置10の第1通信部34は、データ中継用移動体22からの第2応答信号を受信し、第2応答信号を処理部32に出力する。処理部32は、第1通信部34からの第2応答信号を受けつけると、第2応答信号に含まれた伝送路特性を抽出する。これは、データ送信元用移動体20からデータ中継用移動体22に向かう伝送路の特性を示す。処理部32は、伝送路特性をもとに、データ送信元用移動体20の複数のアンテナに対する送信ウエイト、データ中継用移動体22の複数のアンテナに対する受信ウエイトの少なくとも1つを導出する。送信ウエイトと受信ウエイトは「ウエイト」と総称される。このようなウエイトは、アダプティブアレイ、ビームフォーミング、MIMOを実行するために使用され、ウエイトの導出には公知の技術が使用される。なお、データ送信元用移動体20のアンテナ数と、データ中継用移動体22のアンテナ数は、処理部32において予め管理されている。処理部32は、送信ウエイトを導出した場合、送信ウエイトが含まれた第1制御信号を生成し、第1制御信号を第1通信部34からデータ送信元用移動体20に送信させる。また、処理部32は、受信ウエイトを導出した場合、受信ウエイトが含まれた第2制御信号を生成し、第2制御信号を第1通信部34からデータ中継用移動体22に送信させる。
制御装置10の第2通信部36は、第2基地局装置18からの伝送路特性を受信し、伝送路特性を処理部32に出力する。処理部32は、第2通信部36からの伝送路特性を受けつける。これは、データ中継用移動体22から第2基地局装置18に向かう伝送路の特性を示す。処理部32は、伝送路特性をもとに、データ中継用移動体22の複数のアンテナに対する送信ウエイト、第2基地局装置18の複数のアンテナに対する受信ウエイトの少なくとも1つを導出する。送信ウエイトと受信ウエイトは前述のごとく「ウエイト」と総称される。なお、第2基地局装置18のアンテナ数は、処理部32において予め管理されている。処理部32は、送信ウエイトを導出した場合、送信ウエイトが含まれた第2制御信号を生成し、第2制御信号を第1通信部34からデータ中継用移動体22に送信させる。処理部32は、受信ウエイトを導出した場合、受信ウエイトを第2通信部36から第2基地局装置18に送信させる。つまり、制御装置10は、データ中継用移動体22に備えられる複数のアンテナを第2無線通信ネットワークによる通信に使用する場合の処理の内容であるウエイトを決定する。また、制御装置10は、決定したウエイトが含まれた第2制御信号を第1無線通信ネットワークによりデータ中継用移動体22に送信する。
送信ウエイトが導出された場合、データ送信元用移動体20の第1通信部40は、第1基地局装置14からの第1制御信号を受信する。第1通信部40は、第1制御信号を処理部42に出力する。処理部42は、第1制御信号から送信ウエイトを抽出する。また、データ中継用移動体22の第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から受信ウエイト、送信ウエイトの少なくとも1つを抽出する。さらに、第2基地局装置18は、第2ネットワーク16を介して制御装置10から受信ウエイトを受信する。
(2)中継処理
これまでと同様に、制御装置10の処理部32は、データ送信元用移動体20に対して、撮像の指示、送信指示が含まれた第1制御信号を生成する。第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、データ送信元用移動体20に第1制御信号を送信する。制御装置10の処理部32は、データ中継用移動体22に対して、中継指示が含まれた第2制御信号を生成する。第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、データ中継用移動体22に第2制御信号を送信する。
データ送信元用移動体20の第1通信部40は、第1基地局装置14からの第1制御信号を受信する。第1通信部40は、第1制御信号を処理部42に出力する。処理部42は、第1制御信号から撮像の指示と送信指示を抽出する。処理部42は、撮像の指示にしたがって、撮像部50に映像を撮像させ、撮像部50から映像を受けつけると、映像が含まれたデータを生成する。その際、処理部42は、送信ウエイトを受けつけていれば、当該送信ウエイトによってデータを重み付け処理する。これは、ビームフォーミングあるいはMIMOを実行することに相当する。処理部42は、送信指示にしたがって、データを第2通信部48に送信させる。その際、データは複数のアンテナから送信される。
データ中継用移動体22の第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から中継指示を抽出するとともに、中継指示にしたがって、データを第2通信部68に中継させる。第2通信部68は、データ送信元用移動体20の第2通信部48からのデータを複数のアンテナで受信し、受信したデータを処理部62に出力する。その際、処理部62は、受信ウエイトを受けつけていれば、当該受信ウエイトによってデータを重み付け処理する。これは、アダプティブアレイあるいはMIMOを実行することに相当する。処理部62は、送信ウエイトを受けつけていれば、当該送信ウエイトによってデータを重み付け処理する。これは、ビームフォーミングあるいはMIMOを実行することに相当する。処理部62は、データを第2通信部68に送信させる。その際、データは複数のアンテナから送信される。
第2基地局装置18は、データ中継用移動体22の第2通信部68からのデータを複数のアンテナで受信する。第2基地局装置18は、受信ウエイトを受けつけていれば、当該受信ウエイトによってデータを重み付け処理する。これは、アダプティブアレイあるいはMIMOを実行することに相当する。制御装置10の第2通信部36は、第2基地局装置18からのデータを受信する。第2通信部36はデータを処理部32に出力する。処理部32は、受けつけたデータから映像を抽出する。処理部32は、映像を再生してもよい。
以上の構成による無線中継システム100の動作を説明する。図4は、無線中継システム100による中継手順を示すシーケンス図である。制御装置10は第1制御信号をデータ送信元用移動体20に送信する(S50)。データ送信元用移動体20は、災害発生現場に移動して(S52)、災害発生現場に到着する(S54)。制御装置10は第2制御信号をデータ中継用移動体22に送信する(S56)。データ中継用移動体22は、中継位置に移動して(S58)、中継位置に到着する(S60)。
データ送信元用移動体20は第1応答信号を制御装置10に送信し(S62)、データ中継用移動体22は第2応答信号を制御装置10に送信する(S64)。制御装置10は、第1制御信号をデータ送信元用移動体20に送信し(S66)、第2制御信号をデータ中継用移動体22に送信する(S68)。データ中継用移動体22は伝送路特性を推定する(S72)。データ中継用移動体22は第2応答信号を制御装置10に送信する(S76)。制御装置10はウエイトを導出する(S78)。制御装置10は、第1制御信号をデータ送信元用移動体20に送信し(S80)、第2制御信号をデータ中継用移動体22に送信する(S82)。データ送信元用移動体20は、映像を撮像し(S84)、データ送信元用移動体20はデータをデータ中継用移動体22に送信し(S86)、データ中継用移動体22はデータを制御装置10に送信する(S88)。制御装置10はデータを取得する(S90)。
本実施例によれば、複数のアンテナを第2無線通信ネットワークによる通信に使用するので、伝送レートをさらに高速化できる。また、複数のアンテナを使用する場合のウエイトを制御装置において導出するので、データ送信元用移動体、データ中継用移動体の処理量の増加を抑制できる。また、データ送信元用移動体、データ中継用移動体の処理量の増加が抑制されるので、データ送信元用移動体、データ中継用移動体のバッテリによる駆動時間を長くできる。
(実施例3)
次に、実施例3を説明する。実施例3は、これまでと同様に、移動体との間で無線通信を実行する無線中継システムに関する。また、実施例3でも、データ送信元用移動体とデータ中継用移動体に制御装置から制御信号を送信し、データ送信元用移動体からのデータをデータ中継用移動体において中継することによって制御装置が受信する。さらに、制御信号の伝送には第1無線通信ネットワークが使用され、データの中継には第2無線通信ネットワークが使用される。実施例3もまた、第2無線通信ネットワークにおける伝送レートをさらに高速化することを目的とする。そのため、実施例3では、データ中継用移動体として複数のデータ中継用移動体を使用し、これらによって協調伝送を実行させる。以下では、これまでとの差異を中心に説明する。
図5は、無線中継システム100の構成を示す。無線中継システム100は、制御装置10、第1ネットワーク12、第1基地局装置14、第2ネットワーク16、第2基地局装置18、データ送信元用移動体20、データ中継用移動体22と総称される第1データ中継用移動体22a、第2データ中継用移動体22bを含む。なお、データ中継用移動体22の数は「3以上」であってもよい。制御装置10、データ送信元用移動体20、各データ中継用移動体22は、図1と同様の構成を有する。一方、第2基地局装置18は複数のアンテナを備え、データ送信元用移動体20は第2無線通信ネットワークのために複数のアンテナを備え、各データ中継用移動体22は第2無線通信ネットワークのために複数のアンテナを備える。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。実施例3では、(1)移動処理、(1’)準備処理、(2)中継処理が順に実行される。
(1)移動処理
処理部32は、第2基地局装置18と通信可能である第2通信エリアに災害発生現場が含まれていない場合、第1データ中継用移動体22a、第2データ中継用移動体22bの使用を決定する。処理部32は、第2通信エリアに含まれた位置でありながら、災害発生現場に存在するデータ送信元用移動体20とのアドホック通信が可能な2つの位置(以下、「第1中継位置」と「第2中継位置」という)を特定する。例えば、処理部32は、第2基地局装置18の位置と災害発生現場との中間地点の近傍において、予め定められた所定距離だけ離れた2地点を第1中継位置と第2中継位置して特定する。処理部32は、第1中継位置への第2移動指示が含まれた第2制御信号を生成し、第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、第1データ中継用移動体22aに第2制御信号を送信する。また、処理部32は、第2中継位置への第2移動指示が含まれた第2制御信号を生成し、第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、第2データ中継用移動体22bに第2制御信号を送信する。
第1データ中継用移動体22aの第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から第2移動指示を抽出するとともに、第2移動指示をもとに第1中継位置を特定する。処理部62は、測位部64から受けつけた現在位置が第1中継位置に近づくように、駆動部66の動作を制御する。駆動部66の動作によって、第1データ中継用移動体22aは第1中継位置に向かって移動する。処理部62は、第1中継位置への到着を判定した場合、到着の報告が含まれた第2応答信号を生成する。第1通信部60は、第1基地局装置14、第1ネットワーク12経由で制御装置10に第2応答信号を送信する。
第2データ中継用移動体22bの第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から第2移動指示を抽出するとともに、第2移動指示をもとに第2中継位置を特定する。処理部62は、測位部64から受けつけた現在位置が第2中継位置に近づくように、駆動部66の動作を制御する。駆動部66の動作によって、第2データ中継用移動体22bは第2中継位置に向かって移動する。処理部62は、第2中継位置への到着を判定した場合、到着の報告が含まれた第2応答信号を生成する。第1通信部60は、第1基地局装置14、第1ネットワーク12経由で制御装置10に第2応答信号を送信する。制御装置10の第1通信部34は、第1データ中継用移動体22aからの第2応答信号を受信するとともに、第2データ中継用移動体22bからの第2応答信号を受信し、それらを処理部32に出力する。処理部32は、第1通信部34からのこれらの第2応答信号を受けつけると、第2応答信号に含まれた到着の報告を確認し、第1データ中継用移動体22aが第1中継位置に到着し、第2データ中継用移動体22bが第2中継位置に到着したことを認識する。
(1’)準備処理
制御装置10の処理部32は、第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bのそれぞれに対して、推定指示と送信指示が含まれた第2制御信号を生成する。処理部32は第2制御信号を第1通信部34に出力する。第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bに第2制御信号を送信する。
第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bの第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から推定指示と送信指示とを抽出する。第2通信部68は、推定指示にしたがって、データ送信元用移動体20からのトレーニング信号を複数のアンテナのそれぞれで受信し、伝送路特性を推定する。第2通信部68は、推定した伝送路特性を処理部62に出力する。処理部62は、第2通信部68から受けつけた伝送路特性が含まれた第2応答信号を生成する。第1通信部60は、第1基地局装置14、第1ネットワーク12経由で制御装置10に第2応答信号を送信する。
また、処理部62は、送信指示にしたがって、トレーニング信号を第2通信部68に送信させる。第2通信部68は、複数のアンテナのそれぞれからトレーニング信号を第2基地局装置18に送信する。第2基地局装置18は、第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bのそれぞれからのトレーニング信号を複数のアンテナのそれぞれで受信し、伝送路特性を推定する。第2基地局装置18は、第2ネットワーク16を介して、伝送路特性を制御装置10に送信する。
制御装置10の第1通信部34は、第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bのそれぞれからの第2応答信号を受信し、第2応答信号を処理部32に出力する。処理部32は、第1通信部34からの第2応答信号を受けつけると、第2応答信号に含まれた伝送路特性を抽出する。これは、データ送信元用移動体20から2つのデータ中継用移動体22に向かう伝送路の特性を示す。処理部32は、伝送路特性をもとに、データ送信元用移動体20の複数のアンテナに対する送信ウエイト、2つのデータ中継用移動体22のそれぞれの複数のアンテナに対する受信ウエイトの少なくとも1つを導出する。このようなウエイトは、第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bによる協調伝送を実行するために使用され、ウエイトの導出には公知の技術が使用される。処理部32は、送信ウエイトを導出した場合、送信ウエイトが含まれた第1制御信号を生成し、第1制御信号を第1通信部34からデータ送信元用移動体20に送信させる。また、処理部32は、受信ウエイトを導出した場合、受信ウエイトが含まれた第2制御信号を生成し、第2制御信号を第1通信部34から2つのデータ中継用移動体22に送信させる。
制御装置10の第2通信部36は、第2基地局装置18からの伝送路特性を受信し、伝送路特性を処理部32に出力する。処理部32は、第2通信部36からの伝送路特性を受けつける。これは、2つのデータ中継用移動体22から第2基地局装置18に向かう伝送路の特性を示す。処理部32は、伝送路特性をもとに、2つのデータ中継用移動体22の複数のアンテナに対する送信ウエイト、第2基地局装置18の複数のアンテナに対する受信ウエイトの少なくとも1つを導出する。処理部32は、送信ウエイトを導出した場合、送信ウエイトが含まれた第2制御信号を生成し、第2制御信号を第1通信部34から第1データ中継用移動体22a、第2データ中継用移動体22bに送信させる。処理部32は、受信ウエイトを導出した場合、受信ウエイトを第2通信部36から第2基地局装置18に送信させる。つまり、制御装置10は、第2無線通信ネットワークによる通信において第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bとに協調伝送を実行させるための処理の内容であるウエイトを決定する。また、制御装置10は、決定したウエイトが含まれた第2制御信号を第1無線通信ネットワークにより第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bとに送信する。
第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bの第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から受信ウエイト、送信ウエイトの少なくとも1つを抽出する。さらに、第2基地局装置18は、第2ネットワーク16を介して制御装置10から受信ウエイトを受信する。
(2)中継処理
これまでと同様に、制御装置10の処理部32は、第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bに対して、中継指示が含まれた第2制御信号を生成する。第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bに第2制御信号を送信する。
第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bの第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から中継指示を抽出する。第2通信部68は、データ送信元用移動体20の第2通信部48からのデータを複数のアンテナで受信し、受信したデータを処理部62に出力する。その際、処理部62は、受信ウエイトを受けつけていれば、当該受信ウエイトによってデータを重み付け処理する。処理部62は、送信ウエイトを受けつけていれば、当該送信ウエイトによってデータを重み付け処理する。処理部62は、データを第2通信部68に送信させる。その際、データは複数のアンテナから送信される。
なお、第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bは、データを送信する際に、送信タイミングを同期させる。送信タイミングは、制御装置10からの第2制御信号によって指定されてもよい。また、送信タイミングは、第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bのうちの一方から他方に対して、第2無線通信ネットワークにおけるアドホック通信によって指定されてもよい。
第2基地局装置18は、第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bの第2通信部68からのデータを複数のアンテナで受信する。第2基地局装置18は、受信ウエイトを受けつけていれば、当該受信ウエイトによってデータを重み付け処理する。制御装置10の第2通信部36は、第2基地局装置18からのデータを受信する。第2通信部36はデータを処理部32に出力する。処理部32は、受けつけたデータから映像を抽出する。処理部32は、映像を再生してもよい。
以上の構成による無線中継システム100の動作を説明する。図6は、無線中継システム100による中継手順を示すシーケンス図である。制御装置10は第1制御信号をデータ送信元用移動体20に送信する(S100)。データ送信元用移動体20は、災害発生現場に移動して到着する(S102)。制御装置10は第2制御信号を第1データ中継用移動体22aに送信する(S104)。第1データ中継用移動体22aは、中継位置に移動して到着する(S106)。制御装置10は第2制御信号を第2データ中継用移動体22bに送信する(S108)。第2データ中継用移動体22bは、中継位置に移動して到着する(S110)。
データ送信元用移動体20は第1応答信号を制御装置10に送信し(S112)、第1データ中継用移動体22aは第2応答信号を制御装置10に送信し(S114)、第2データ中継用移動体22bは第2応答信号を制御装置10に送信する(S116)。制御装置10は、第1制御信号をデータ送信元用移動体20に送信し(S118)、第2制御信号を第1データ中継用移動体22aに送信し(S120)、第2制御信号を第2データ中継用移動体22bに送信する(S122)。第1データ中継用移動体22aは伝送路特性を推定し(S126)、第2データ中継用移動体22bも伝送路特性を推定する(S128)。第1データ中継用移動体22aは第2応答信号を制御装置10に送信し(S132)、第2データ中継用移動体22bは第2応答信号を制御装置10に送信する(S134)。制御装置10はウエイトを導出する(S136)。
制御装置10は、第1制御信号をデータ送信元用移動体20に送信し(S138)、第2制御信号を第1データ中継用移動体22aに送信し(S140)、第2制御信号を第2データ中継用移動体22bに送信する(S142)。データ送信元用移動体20は、映像を撮像し(S144)、データ送信元用移動体20は、データを第1データ中継用移動体22aに送信し(S146)、データを第2データ中継用移動体22bに送信する(S148)。第1データ中継用移動体22aはデータを制御装置10に送信し(S150)、第2データ中継用移動体22bはデータを制御装置10に送信する(S152)。制御装置10はデータを取得する(S154)。
本実施例によれば、第1データ中継用移動体と第2データ中継用移動体とを使用して協調伝送を実行させるので、伝送レートをさらに高速化できる。また、協調伝送を実行させる場合のウエイトを制御装置において導出するので、データ送信元用移動体、複数のデータ中継用移動体の処理量の増加を抑制できる。また、データ送信元用移動体、複数のデータ中継用移動体の処理量の増加が抑制されるので、データ送信元用移動体、複数のデータ中継用移動体のバッテリによる駆動時間を長くできる。
(実施例4)
次に、実施例4を説明する。実施例4は、これまでと同様に、移動体との間で無線通信を実行する無線中継システムに関する。また、実施例4でも、データ送信元用移動体とデータ中継用移動体に制御装置から制御信号を送信し、データ送信元用移動体からのデータをデータ中継用移動体において中継することによって制御装置が受信する。さらに、制御信号の伝送には第1無線通信ネットワークが使用され、データの中継には第2無線通信ネットワークが使用される。実施例4は、第2無線通信ネットワークにおける伝送レートをさらに高速化することを目的とする。そのため、実施例2では、データの受信タイミングとデータの送信タイミングにおいてデータ中継用移動体を移動させる。以下では、これまでとの差異を中心に説明する。
図7は、無線中継システム100の構成を示す。無線中継システム100は、図3と同様に、制御装置10、第1ネットワーク12、第1基地局装置14、第2ネットワーク16、第2基地局装置18、データ送信元用移動体20、データ中継用移動体22を含む。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。実施例4では、(1)移動処理、(1’)準備処理、(2)中継処理が順に実行される。
(1)移動処理
処理部32は、第2基地局装置18と通信可能である第2通信エリアに災害発生現場が含まれていない場合、データ中継用移動体22の使用を決定する。処理部32は、中継位置としてデータ送信元用移動体20に近い中継位置P1と、第2基地局装置18に近い中継位置P2とを特定する。中継位置P1は、第2無線通信ネットワークによりデータ送信元用移動体20からのデータをデータ中継用移動体22が受信する場合の位置であり、第2通信エリアの外において、データ送信元用移動体20から所定距離離れた位置に配置される。ここで、処理距離は、データ送信元用移動体20との通信速度が最大値になるように定められる。
一方、中継位置P2は、第2無線通信ネットワークにより第2基地局装置18にデータをデータ中継用移動体22が送信する場合の位置であり、第2通信エリア内において、第2基地局装置18から所定距離離れた位置に配置される。ここで、処理距離は、第2基地局装置18との通信速度が最大値になるように定められる。処理部32は、中継位置P1と中継位置P2の位置情報と、中継位置P1への第2移動指示が含まれた第2制御信号を生成し、第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、データ中継用移動体22に第2制御信号を送信する。
第1データ中継用移動体22aの第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から第2移動指示を抽出するとともに、第2移動指示をもとに中継位置P1を特定する。処理部62は、測位部64から受けつけた現在位置が中継位置P1に近づくように、駆動部66の動作を制御する。駆動部66の動作によって、データ中継用移動体22は中継位置P1に向かって移動する。処理部62は、中継位置P1への到着を判定した場合、到着の報告が含まれた第2応答信号を生成する。第1通信部60は、第1基地局装置14、第1ネットワーク12経由で制御装置10に第2応答信号を送信する。
制御装置10の第1通信部34は、データ中継用移動体22からの第2応答信号を受信し、第2応答信号を処理部32に出力する。処理部32は、第1通信部34からの第2応答信号を受けつけると、第2応答信号に含まれた到着の報告を確認し、データ中継用移動体22が中継位置P1に到着したことを認識する。
(1’)準備処理
制御装置10の処理部32は、データ中継用移動体22に対して、推定指示と送信指示が含まれた第2制御信号を生成する。処理部32は第2制御信号を第1通信部34に出力する。第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、第1データ中継用移動体22aと第2データ中継用移動体22bに第2制御信号を送信する。
データ中継用移動体22の第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から推定指示と送信指示とを抽出する。第2通信部68は、推定指示にしたがって、中継位置P1において、データ送信元用移動体20からのトレーニング信号を複数のアンテナのそれぞれで受信し、伝送路特性を推定する。第2通信部68は、推定した伝送路特性を処理部62に出力する。処理部62は、第2通信部68から受けつけた伝送路特性が含まれた第2応答信号を生成する。第1通信部60は、第1基地局装置14、第1ネットワーク12経由で制御装置10に第2応答信号を送信する。
これに続いて、処理部62は、測位部64から受けつけた現在位置が中継位置P2に近づくように、駆動部66の動作を制御する。駆動部66の動作によって、データ中継用移動体22は中継位置P2に向かって移動する。処理部62は、中継位置P2への到着を判定した場合、トレーニング信号を第2通信部68に送信させる。第2通信部68は、複数のアンテナのそれぞれからトレーニング信号を第2基地局装置18に送信する。その後、処理部62は、データ中継用移動体22が中継位置P1に近づくように、駆動部66の動作を制御する。第2基地局装置18は、データ中継用移動体22からのトレーニング信号を複数のアンテナのそれぞれで受信し、伝送路特性を推定する。第2基地局装置18は、第2ネットワーク16を介して、伝送路特性を制御装置10に送信する。
制御装置10の第1通信部34は、データ中継用移動体22からの第2応答信号を受信し、第2応答信号を処理部32に出力する。処理部32は、第1通信部34からの第2応答信号を受けつけると、第2応答信号に含まれた伝送路特性を抽出する。これは、データ送信元用移動体20から中継位置P1のデータ中継用移動体22に向かう伝送路の特性を示す。処理部32は、伝送路特性をもとに、データ送信元用移動体20の複数のアンテナに対する送信ウエイト、データ中継用移動体22の複数のアンテナに対する受信ウエイトの少なくとも1つを導出する。処理部32は、送信ウエイトを導出した場合、送信ウエイトが含まれた第1制御信号を生成し、第1制御信号を第1通信部34からデータ送信元用移動体20に送信させる。また、処理部32は、受信ウエイトを導出した場合、受信ウエイトが含まれた第2制御信号を生成し、第2制御信号を第1通信部34からデータ中継用移動体22に送信させる。
制御装置10の第2通信部36は、第2基地局装置18からの伝送路特性を受信し、伝送路特性を処理部32に出力する。処理部32は、第2通信部36からの伝送路特性を受けつける。これは、中継位置P2のデータ中継用移動体22から第2基地局装置18に向かう伝送路の特性を示す。処理部32は、伝送路特性をもとに、データ中継用移動体22の複数のアンテナに対する送信ウエイト、第2基地局装置18の複数のアンテナに対する受信ウエイトの少なくとも1つを導出する。処理部32は、送信ウエイトを導出した場合、送信ウエイトが含まれた第2制御信号を生成し、第2制御信号を第1通信部34からデータ中継用移動体22に送信させる。処理部32は、受信ウエイトを導出した場合、受信ウエイトを第2通信部36から第2基地局装置18に送信させる。
データ中継用移動体22の第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から受信ウエイト、送信ウエイトの少なくとも1つを抽出する。さらに、第2基地局装置18は、第2ネットワーク16を介して制御装置10から受信ウエイトを受信する。
(2)中継処理
制御装置10の処理部32は、データ中継用移動体22に対して、中継指示が含まれた第2制御信号を生成する。第1通信部34は、第1ネットワーク12、第1基地局装置14を介して、データ中継用移動体22に第2制御信号を送信する。
データ中継用移動体22の第1通信部60は、第1基地局装置14からの第2制御信号を受信する。第1通信部60は、第2制御信号を処理部62に出力する。処理部62は、第2制御信号から中継指示を抽出するとともに、中継指示にしたがって、データを第2通信部68に中継させる。第2通信部68は、データ送信元用移動体20の第2通信部48からのデータを中継位置P1において複数のアンテナで受信し、受信したデータを処理部62に出力する。その際、処理部62は、受信ウエイトを受けつけていれば、当該受信ウエイトによってデータを重み付け処理する。
これに続いて、処理部62は、測位部64から受けつけた現在位置が中継位置P2に近づくように、駆動部66の動作を制御する。駆動部66の動作によって、データ中継用移動体22は中継位置P2に向かって移動する。処理部62は、中継位置P2への到着を判定した場合、送信ウエイトを受けつけていれば、当該送信ウエイトによってデータを重み付け処理する。処理部62は、中継位置P2において、データを第2通信部68に送信させる。その際、データは複数のアンテナから送信される。その後、処理部62は、データ中継用移動体22が中継位置P1に近づくように、駆動部66の動作を制御する。つまり、データ中継用移動体22は、データ送信元用移動体20からのデータを中継位置P1において受信し、中継位置P1から中継位置P2に移動し、第2基地局装置18にデータを中継位置P2において送信する。
第2基地局装置18は、中継位置P2のデータ中継用移動体22の第2通信部68からのデータを複数のアンテナで受信する。第2基地局装置18は、受信ウエイトを受けつけていれば、当該受信ウエイトによってデータを重み付け処理する。制御装置10の第2通信部36は、第2基地局装置18からのデータを受信する。第2通信部36はデータを処理部32に出力する。処理部32は、受けつけたデータから映像を抽出する。処理部32は、映像を再生してもよい。
本実施例によれば、データ中継用移動体を中継位置P1に移動させて、データ送信元用移動体からのデータを受信するので、データ中継用移動体とデータ送信元用移動体との伝送距離を短くできる。また、データ中継用移動体とデータ送信元用移動体との伝送距離が短くなるので、伝送レートをさらに高速化できる。また、データ中継用移動体を中継位置P2に移動させて、第2基地局装置18へデータを送信するので、データ中継用移動体と第2基地局装置との伝送距離を短くできる。また、データ中継用移動体と第2基地局装置との伝送距離が短くなるので、伝送レートをさらに高速化できる。また、中継位置P1と中継位置P2との間でデータ中継用移動体を移動させるので、データ送信元用移動体の移動量の増加を抑制できる。また、データ送信元用移動体の移動量の増加が抑制されるので、データ送信元用移動体における撮像時間を長くできる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
実施例2から4において、データ送信元用移動体20、データ中継用移動体22、第2基地局装置18は、第2無線通信ネットワーク用の複数のアンテナを備え、制御装置10の処理部32は、処理の内容として、それらについてのウエイトを導出している。しかしながらこれに限らず例えば、制御装置10の処理部32は、処理の内容として、選択ダイバーシチにおけるアンテナを選択してもよい。また、データ送信元用移動体20、データ中継用移動体22、第2基地局装置18は、第2無線通信ネットワーク用の指向性アンテナを備え、処理部32は、処理の内容として、指向性アンテナを向ける方向を導出してもよい。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
実施例1から4の任意の組合せであってもよい。本変形例によれば、実施例1から4の任意の組合せによる効果を得ることができる。