以下、本発明に係る放射線撮像装置の具体的な実施形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。なお、本発明における放射線には、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども含みうる。
図1〜8を参照して、本発明の実施形態による放射線撮像装置の構成および動作について説明する。図1は、本発明の実施形態における放射線撮像装置210を用いた放射線撮像システム200の構成例を示す図である。放射線撮像システム200は、放射線から変換される光学像を電気的に撮像し、放射線画像を生成するための電気的な信号(放射線画像データ)を得るように構成される。放射線撮像システム200は、例えば、放射線撮像装置210、放射線源230、曝射制御部220およびコンピュータ240を含む。
放射線源230は、曝射制御部220からの曝射指令(放射指令)に従って放射線の放射を開始する。放射線源230から放射された放射線は、不図示の被険体を通って放射線撮像装置210に照射される。放射線源230はまた、曝射制御部220からの停止指令に従って放射線の放射を停止する。
放射線撮像装置210は、撮像パネル212と、撮像パネル212を制御する制御部214とを含む。制御部214は、撮像パネル212から得られる信号に基づいて、放射線源230からの放射線の放射を停止させるための停止信号を発生する。停止信号は、曝射制御部220に供給され、曝射制御部220は、停止信号に応答して、放射線源230に対して停止指令を送る。制御部214は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。
コンピュータ240は、放射線撮像装置210および曝射制御部220を制御する。また、コンピュータ240は、放射線撮像装置210から出力される放射線画像データを受信し、放射線画像データを処理する信号処理部241を含む。信号処理部241は、放射線画像データから放射線画像を生成しうる。
曝射制御部220は、一例として曝射スイッチ(不図示)を有し、ユーザによって曝射スイッチがオンされると、曝射指令を放射線源230に送るほか、放射線の放射の開始を示す開始通知をコンピュータ240に送る。該開始通知を受けたコンピュータ240は、該開始通知に応答して、放射線の放射の開始を放射線撮像装置210の制御部214に通知する。
図2には、撮像パネル212の構成例が示される。撮像パネル212は、画素アレイ112を備える。画素アレイ112は、放射線を検出するための2次元アレイ状に配された変換素子Sをそれぞれ含む複数の画素PIXを備える。また、画素アレイ112は、変換素子Sで生成された信号を出力するための列方向(図2の縦方向)に沿った複数の列信号線Sig1〜Sig4を有する。さらに、撮像パネル212は、画素アレイ112を駆動する駆動回路(行選択回路)114、および、画素アレイ112の列信号線Sigに現れる信号を検出するための読出回路113を備える。図2に示す構成では、記載の簡単化のために、画素アレイ112は、4行×4列の画素PIXで構成されているが、実際には、より多くの画素PIXが配列されうる。一例において、撮像パネル212は、17インチの寸法を有し、約3000行×約3000列の画素PIXを有しうる。
それぞれの画素PIXは、放射線を検出するための変換素子Sと、変換素子Sと列信号線Sig(複数の信号線Sigのうち変換素子Cに対応する信号線Sig)とを接続するスイッチTとを含む。それぞれの変換素子Sは、入射した放射線の量に対応する信号を列信号線Sigに出力する。変換素子Sは、例えば、ガラス基板等の絶縁性基板上に配置されアモルファスシリコンを主材料とするMIS型フォトダイオードであってもよい。また、変換素子Sは、PIN型フォトダイオードであってもよい。本実施形態において、変換素子Sは、放射線をシンチレータで光に変換した後に、光を検出する間接型の素子として構成されうる。間接型の素子において、シンチレータは、複数の画素PIX(複数の変換素子S)によって共有されうる。
スイッチTは、例えば、制御端子(ゲート)と2つの主端子(ソース、ドレイン)とを有する薄膜トランジスタ(TFT)などのトランジスタによって構成されうる。変換素子Sは、2つの主電極を有し、変換素子Sの一方の主電極は、スイッチTの2つの主端子のうちの一方に接続され、変換素子Sの他方の主電極は、共通のバイアス線Bsを介してバイアス電源103に接続されている。バイアス電源103は、バイアス電圧Vsを供給する。第1行に配されるそれぞれの画素PIXのスイッチTの制御端子は、行方向(図2の横方向)に沿って配されたゲート線Vg1に接続される。同様に、第2〜4行に配されるそれぞれの画素PIXのスイッチSWの制御端子は、それぞれゲート線Vg2〜Vg4に接続される。ゲート線Vg1〜Vg4には、駆動回路114によってゲート信号が供給される。
第1列に配されるそれぞれの画素PIXは、スイッチTの変換素子Sと接続されない側の主端子が、第1列の列信号線Sig1に接続さる。同様に、第2〜4列に配されるそれぞれの画素PIXは、スイッチTの変換素子Sと接続されない側の主端子が、それぞれ第2〜4列の列信号線Sig2〜Sig4に接続される。
読出回路113は、1つの列信号線Sigに1つの列増幅部CAが対応するように複数の列増幅部CAを有する。それぞれの列増幅部CAは、積分増幅器105、可変増幅器104、サンプルホールド回路107、バッファ回路106を含みうる。積分増幅器105は、列信号線Sigに現れた信号を増幅する。積分増幅器105は、演算増幅器と、演算増幅器の反転入力端子と出力端子との間に並列に接続された積分容量およびリセットスイッチとを含みうる。演算増幅器の非反転入力端子には、基準電位Vrefが供給される。リセットスイッチをオンさせることによって積分容量がリセットされるとともに、列信号線Sigの電位が基準電位Vrefにリセットされる。リセットスイッチは、制御部214から供給されるリセットパルスRCによって制御されうる。
可変増幅器104は、積分増幅器105から出力された信号を設定された増幅率で増幅する。サンプルホールド回路107は、可変増幅器104から出力された信号をサンプルホールドする。サンプルホールド回路107は、サンプリングスイッチとサンプリング容量とによって構成されうる。バッファ回路106は、サンプルホールド回路107から出力された信号をバッファリング(インピーダンス変換)して出力する。サンプリングスイッチは、制御部214から供給されるサンプリングパルスによって制御されうる。
また、読出回路113は、それぞれの列信号線Sigに対応するように設けられた複数の列増幅部CAからの信号を所定の順序で選択して出力するマルチプレクサ108を含む。マルチプレクサ108は、例えば、シフトレジスタを含む。シフトレジスタは、制御部214から供給されるクロック信号CLKに従ってシフト動作を行い、シフトレジスタによって複数の列増幅部CAからの1つの信号が選択される。読出回路113は、さらに、マルチプレクサ108から出力される信号をバッファリング(インピーダンス変換)するバッファ109、および、バッファ109から出力される信号であるアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器110を含みうる。AD変換器110の出力、即ち、放射線画像データは、コンピュータ240に転送される。
本実施形態において、後述するように、基板の放射線を入射させるための入射面の側と、入射面とは反対の側の裏面と、の両方に、放射線を可視光に変換するシンチレータが、それぞれの面を覆うように配される。また、それぞれの画素PIXに含まれる変換素子Sは、2種類の変換素子Sを含む。図2に示す構成において、変換素子S12、S14、S21、S23、S32、S34、S41、S43は、2つのシンチレータからの光を受光するように配される。以下において、変換素子Sのうち2つのシンチレータからの光を受光するこれらの変換素子を特定する場合、第1の変換素子901と呼ぶ。また、変換素子S11、S13、S22、S24、S31、S33、S42、S44には、一方のシンチレータと当該変換素子Sのそれぞれとの間に遮光層903が配される。これによって、変換素子S11、S13、S22、S24、S31、S33、S42、S44は、一方のシンチレータからの光が遮断され、他方のシンチレータからの光を受光するように配される。これらの変換素子Sを、以下において、変換素子Sのうち片方のシンチレータからの光が遮断されるこれらの変換素子を特定する場合、第2の変換素子902と呼ぶ。遮光層903は、シンチレータで発光した光を遮る層であり、基板の入射面の側または裏面の側を覆うシンチレータの何れか一方と、第2の変換素子902との間を遮光すればよい。このとき、第2の変換素子902において、一方のシンチレータからの光が完全に遮断されなくてもよい。第1の変換素子901よりも一方のシンチレータから受光できる光の量が少なくなるように、基板の入射面の側または裏面の側を覆うシンチレータの何れか一方と、第2の変換素子902との間に遮光層903が配されればよい。
ここでは、基板の入射面の側に配されたシンチレータと第2の変換素子902との間に遮光層903が配されるとする。基板の入射面の側から入射した放射線のうち、エネルギの低い成分は、基板の入射面の側を覆うシンチレータで吸収され、可視光に変換されて、それぞれの画素PIXに入射する。第2の変換素子902は、基板の入射面の側が遮光されているため、基板の入射面の側で発光した光が入射しない。そのため、放射線のエネルギの低い成分から変換された光は、第2の変換素子902に入射しない。一方、第1の変換素子901は、遮光層903が配されないため、放射線のエネルギの低い成分から変換された光が入射する。
また、放射線のうち、基板の入射面の側に配されたシンチレータで吸収されなかったエネルギの高い成分は、基板の裏面の側を覆うシンチレータで吸収され、可視光に変換される。第1の変換素子901および第2の変換素子902において、基板の裏面の側は遮光されていないため、放射線のうちエネルギが高い成分から変換された光は、第1の変換素子901、第2の変換素子902の両方に入射する。
このように、第1の変換素子901において、放射線のうちエネルギの高い成分およびエネルギの低い成分に起因する信号、第2の変換素子902において、放射線のうちエネルギの高い成分に起因する信号が、それぞれ取得できる。つまり、互いに隣接する画素PIXで、異なる放射線エネルギの情報を保持することができる。このように隣接する画素PIXで、異なるエネルギ成分の放射線から取得される情報を保持することによって、後述する方法を用いてエネルギサブトラクションを行うことができる。
図3は、第1の変換素子901を有する画素PIXAと第2の変換素子902を有する画素PIXBおよび画素PIXCとの断面構造の一例が模式的に示される。ここでは、図面の上側から放射線を入射させるとして説明するが、図面の下側から放射線を入射させてもよい。図3(a)において、第1の変換素子901および第2の変換素子902が基板310と基板310の入射面の側に配されたシンチレータ904との間に配される。さらに、図3(a)では、画素PIXBにおいて、遮光層903が、第2の変換素子902とシンチレータ904との間に配される場合を示す。また、図3(b)は、第1の変換素子901および第2の変換素子902が基板310と基板310の入射面の側を覆うシンチレータ904との間に配されることは図3(a)と同じである。一方、図3(b)の構成において、画素PIXCにおいて、遮光層903が、第2の変換素子902と基板310の入射面とは反対の裏面の側に配されたシンチレータ905との間に配される場合を示す。
それぞれの画素PIXの変換素子Sは、シンチレータ904、905で発光した光を透過するガラス基板などの絶縁性を有する基板310の上に配される。それぞれ画素PIXは、基板310の上に、導電層311、絶縁層312、半導体層313、不純物半導体層314および導電層315を、この順番で含む。導電層311は、スイッチTを構成するトランジスタ(例えばTFT)のゲート電極を構成する。絶縁層312は、導電層311を覆うように配置され、半導体層313は、絶縁層312を介して導電層311のうちゲート電極を構成する部分の上に配されている。不純物半導体層314は、スイッチTを構成するトランジスタの2つの主端子(ソース、ドレイン)を構成するように半導体層313の上に配されている。導電層315は、スイッチTを構成するトランジスタの2つの主端子(ソース、ドレイン)にそれぞれ接続された配線パターンを構成している。導電層315の一部は、列信号線Sigを構成し、他の一部は、変換素子SとスイッチTとを接続するための配線パターンを構成する。
それぞれの画素PIXは、さらに、絶縁層312および導電層315を覆う層間絶縁膜316を含む。層間絶縁膜316には、導電層315のうちスイッチTを構成する部分と接続するためのコンタクトプラグ317が設けられている。また、それぞれの画素PIXは、層間絶縁膜316の上に配された変換素子Sを含む。図3に示される例では、変換素子Sは、シンチレータ904、905で放射線から変換された光を電気信号に変換する間接型の変換素子として構成されている。変換素子Sは、層間絶縁膜316の上に積層された導電層318、絶縁層319、半導体層320、不純物半導体層321、導電層322、電極層325を含む。変換素子Sの上には、保護層323および接着層324が配される。シンチレータ904は、接着層324の上に、基板310の入射面の側を覆うように配される。また、シンチレータ905は、基板310の入射面とは反対の裏面の側を覆うように配される。
導電層318は、それぞれ変換素子Sの下部電極を構成する。また、導電層322および電極層325は、それぞれの変換素子Sの上部電極を構成する。導電層318、絶縁層319、半導体層320、不純物半導体層321、および、導電層322は、変換素子SとしてMIS型センサを構成している。例えば、不純物半導体層321は、n型の不純物半導体層で形成される。
シンチレータ904、905は、GOS(酸硫化ガドリニウム)やCsI(ヨウ化セシウム)などの材料を用いて構成されうる。これらの材料は、貼り合わせや印刷、蒸着などによって形成されうる。シンチレータ904とシンチレータ905とは、同じ材料を用いてもよいし、取得する放射線のエネルギに応じて異なる材料を用いてもよい。
本実施形態において、変換素子Sは、MIS型のセンサを用いる例を示しているが、これに限定されることはない。変換素子Sは、例えば、pn型やPIN型のフォトダイオードであってもよい。
次いで、第2の変換素子902に配される、シンチレータ904またはシンチレータ905から入射する光を遮断するための遮光層903の配置について説明する。図3(a)に示す構成において、画素PIXBの第2の変換素子902は、基板310の入射面の側からシンチレータ904に向かって下部電極を構成する導電層318と半導体層320と上部電極を構成する導電層322とをこの順番で含む。この上部電極を構成する導電層322が、遮光層903として機能する。具体的には、導電層322をAl、Mo、Cr、Cuなど、シンチレータ904で発せられる光に対して不透明な材料で形成することによって、導電層322が遮光層903として機能する。つまり、画素PIXBの第2の変換素子902は、第1の変換素子901よりもシンチレータ904から受光できる光の量が少なくなるように、シンチレータ904と第2の変換素子902との間に遮光層903が配される。また、画素PIXBの第2の変換素子902は、画素PIXAの第1の変換素子901と同様に、シンチレータ905からの光を受光するように配される。また、図3(b)に示す構成において、画素PIXCの第2の変換素子902は、基板310の入射面の側からシンチレータ904に向かって下部電極を構成する導電層318と半導体層320と上部電極を構成する導電層322、電極層325とをこの順番で含む。この下部電極を構成する導電層318が、遮光層903として機能する。具体的には、導電層318をAl、Mo、Cr、Cuなど、シンチレータ905で発せられる光に対して不透明な材料で形成することによって、導電層322が遮光層903として機能する。つまり、画素PIXCの第2の変換素子902は、第1の変換素子901よりもシンチレータ905から受光できる光の量が少なくなるように、シンチレータ905と第2の変換素子902との間に遮光層903が配される。また、画素PIXCの第2の変換素子902は、画素PIXAの第1の変換素子901と同様に、シンチレータ904からの光を受光するように配される。
一方、画素PIXAの第1の変換素子901において、導電層318および電極層325には、ITO(酸化インジウムスズ)など、シンチレータ904で発せられる光に対して透明な材料が用いられる。これによって、隣接する画素PIXAと画素PIXBまたは画素PIXCとの間でエネルギ成分の異なる信号を取得することができる。
また、本実施形態において、画素PIXBの導電層322および画素PIXCの導電層318を単層構造とする例を示したが、これに限られることはない。例えば、画素PIXBの導電層322および画素PIXCの導電層318において、透明な材料と不透明な材料とを積層させてもよく、その場合、不透明な材料の面積で遮光量が決定する。また、本実施形態において、画素PIXBの導電層322および画素PIXCの導電層318を遮光層903として機能させたが、遮光層903の配置はこれに限られることはない。例えば、画素PIXBにおいて、保護層323の中にシンチレータ904から入射する光に対し、Al、Mo、Cr、Cuなどを用いた専用の遮光層903を配してもよい。この場合、遮光層903の電位を一定の電位に固定して用いてもよい。
また、図3(b)に示す画素PIXCのように、シンチレータ905からの光を遮断する場合、シンチレータ905からの光を受光する画素PIXAのスイッチTや列信号線Sigの位置を画素PIXCの側に寄せて配してもよい。このような配置にすることによって、画素PIXAにおいて、第1の変換素子901のシンチレータ905に対する開口率を上げることができる。
また、遮光層903は、上述のようにシンチレータ904またはシンチレータ905から第2の変換素子902への光を完全に遮光する必要はない。隣接する画素PIXAと、画素PIXBまたは画素PIXCと、の間で、遮光層903が配される側のシンチレータ904またはシンチレータ905からの受光する量が異なるようにすれば、エネルギサブトラクションは可能である。このような場合、画素PIXAの第1の変換素子901が受光する光に対して何%の光が、画素PIXBまたは画素PIXCの第2の変換素子902に入射するかを事前に調べておき、第1の変換素子901の出力を基準に差分処理をすることによって補正できる。
図3に示されるように、基板310の入射面に対する正射影において、列信号線Sigのそれぞれが、画素PIXの一部と重なるように配される。このような構成は、それぞれの画素PIXの変換素子Sの面積を大きくする点において有利であるが、一方、列信号線Sigと変換素子Sとの間の容量結合が大きくなるという点で不利である。変換素子Sに放射線が入射し、変換素子Sに電荷が蓄積されて下部電極である導電層318の電位が変化すると、列信号線Sigと変換素子Sとの間の容量結合によって列信号線Sigの電位が変化するクロストークが発生してしまう。図4(a)、(b)は、このクロストークへの対応方法を示している。複数の変換素子Sのうち列方向と交差する行方向に並ぶ変換素子Sにおいて、含まれる遮光層903が配される第2の変換素子902を有する画素PIXの数が、行ごとに同じになるように配置する。また、複数の変換素子Sのうち列方向に並ぶ変換素子Sにおいて、含まれる複数の第2の変換素子902を有する画素PIXの数が、列ごとに同じになるように配置する。このように配置することによって、行、列単位でのクロストークによるアーチファクトの発生が抑制できる。
また、放射線撮像装置210が、放射線の照射開始を自動で検知する機能を有していてもよい。この場合、例えば、ゲート線VgをスイッチTがオン/オフするように動作させ、当該変換素子Sからの信号を読み出し、出力信号から放射線照射の有無を判定する。遮光層903を備える第2の変換素子902を有する画素PIXの数が行ごとに異なる場合、行ごとに出力される信号量が変わり、検知精度がばらついてしまう。そのため、図4(a)、(b)に示されるように、複数の変換素子Sのうち列方向と交差する行方向に並ぶ変換素子Sにおいて、含まれる遮光層903が配される第2の変換素子902を有する画素PIXの数が、行ごとに同じになるように配置する。このような配置をすることによって、放射線の照射開始を自動で検知する検知精度が安定する。
また、図4(b)の画素PIXの配置例は、図4(a)の画素PIXの配置例に比べて、第2の変換素子902を有する画素PIXの密度を減らしている。シンチレータ905からの光は、基板310を介して変換素子Sに入射するため、基板310の厚さによって光が拡散し、MTF(Modulation Transfer Function)が低下してしまう。このため、第2の変換素子902を有する画素PIXの密度を減らしても実質的に解像力の低下が起こらない。つまり、第2の変換素子902が、2つのシンチレータのうち基板310を介して対向するシンチレータ905が発する光を受光する場合、第1の変換素子901を備える画素PIXの数よりも、第2の変換素子902を備える画素PIXの数の方が少なくてもよい。
また、シンチレータ905からの基板310を介した光の拡散を抑制しMTFの低下を低減するために、機械研磨や化学研磨によって、基板310の厚さを薄くしてもよい。また、MTFの低下を低減するために、図3に示すように、シンチレータ905と基板310との間に、シンチレータで発せられた光に指向性を付与するルーバー層やマイクロレンズなどの散乱防止層326を設けてもよい。また、MTFの低下を低減するために、コンピュータ240の信号処理部241における画像処理で、鮮鋭化処理によって解像力を上げてもよい。また、シンチレータ904からの光による低エネルギ成分と、シンチレータ905からの光による高エネルギ成分とのMTFを合わせる方法として、解像力を上げる以外にも、解像力の高い方を低い方に合わせてMTFを低下させる。その後、エネルギサブトラクション処理を行ってもよい。
次いで、図5を参照しながら放射線撮像装置210および放射線撮像システム200の動作を説明する。ここでは、図2に示される、それぞれ変換素子Sを備える4行4列の画素PIXを含む撮像パネル212を有する放射線撮像装置210の動作を例に説明する。放射線撮像システム200の動作は、コンピュータ240によって制御される。放射線撮像装置210の動作は、コンピュータ240による制御の下で、制御部214によって制御される。
まず、放射線源230からの放射線の放射、換言すると、放射線撮像装置210への放射線の照射が開始されるまで、制御部214は、駆動回路114および読出回路113に空読みを実施させる。空読みは、駆動回路114が画素アレイ112のそれぞれの行のゲート線Vg1〜Vg4に供給されるゲート信号を順にアクティブレベルに駆動し、変換素子Sに蓄積されているダーク電荷をリセットするものである。ここで、空読みの際、積分増幅器105のリセットスイッチには、アクティブレベルのリセットパルスが供給され、列信号線Sigが基準電位にリセットされる。ダーク電荷とは、変換素子Sに放射線が入射しないにも関わらず発生する電荷である。
制御部214は、例えば、曝射制御部220からコンピュータ240を介して供給される開始通知に基づいて、放射線源230からの放射線の放射の開始を認識することができる。また、図1に示すように、放射線撮像装置210に画素アレイ112のバイアス線Bsまたは列信号線Sigなどを流れる電流を検出する検出回路216が設けられてもよい。制御部214は、検出回路216の出力に基づいて放射線源230からの放射線の照射の開始を認識することができる。
放射線が照射されると、制御部214は、スイッチTを開かれた状態(オフ状態)に制御する。これによって、放射線の照射によって変換素子Sに発生した電荷が蓄積される。放射線の照射が終了まで、制御部214は、この状態で待機する。
次に、制御部214は、駆動回路114および読出回路113に本読みを実行させる。本読みでは、駆動回路114が、画素アレイ112のそれぞれの行のゲート線Vg1〜Vg4に供給されるゲート信号をアクティブレベルに駆動する。そして、読出回路113は、列信号線Sigを介して変換素子Sに蓄積されている電荷を読み出し、マルチプレクサ108、バッファ109およびAD変換器110を通して放射線画像データとしてコンピュータ240に出力する。
次にオフセット画像データの取得について説明する。変換素子Sは、放射線を照射しない状態においても、ダーク電荷が溜まり続ける。このため、制御部214は、放射線を照射せずに放射線画像データを取得する際と同様の動作を行うことによって、オフセット画像データを取得する。放射線画像データからオフセット画像データを引き算することで、ダーク電荷によるオフセット成分が除去できる。
次に、図6を用いて動画を撮像するための駆動について説明する。動画を撮像する場合、高速に読み出すため、同時に複数のゲート線Vgをアクティブレベルに駆動する。このとき、第1の変換素子901を備える画素PIXと第2の変換素子902を有する画素PIXとの信号を1つの列信号配線Sigに出力してしまうと、エネルギ成分を分離できなくなってしまう。そのため、図6に示すように、ゲート線Vg1とゲート線Vg3とに供給されるゲート信号を同時にアクティブレベルにすることによって、第1の変換素子901である変換素子S12と変換素子S32との信号が列信号線Sig2に出力される。同時に、第2の変換素子902である変換素子S11と変換素子S31との信号が列信号線Sig1へ出力される。第1の変換素子901と第2の変換素子902との信号を、それぞれ異なる列信号線Sigに出力することによって、エネルギサブトラクション処理ができる。
次に、本実施形態における画像処理フローについて、図7を用いて説明する。まず、ステップS910において、制御部214は、上述の空読みを行った後、放射線画像データを取得するために、放射線の照射中に変換素子Sで生成される電荷を蓄積するように制御する。次いで、制御部214は、ステップS911において、駆動回路114および読出回路113に本読みを実行させ、放射線画像データを読み出す。このステップS911で、放射線画像データがコンピュータ240に出力される。次いで、制御部214は、ステップS912においてオフセット画像データを取得するための蓄積動作を行い、ステップ913において、オフセット画像データを駆動回路114および読出回路113に読み出させ、コンピュータ240に出力させる。
次いで、コンピュータ240の信号処理部241は、ステップS911で取得した放射線画像データを、ステップS913で取得したオフセット画像データで引き算することによってオフセット補正を行う。信号処理部241は、次に、ステップS915において、オフセット補正後の放射線画像データを、第1の変換素子901から出力される放射線画像データと、第2の変換素子902から出力される放射線画像データに分離する。ここでは、第2の変換素子902は、図3(a)の構成において、図中の上から放射線が入射し、シンチレータ904からの光が遮光され、シンチレータ905からの高エネルギの放射線によって生じる光を受光するものとして説明する。また、第1の変換素子901から出力された放射線画像データを両面画像データ、第2の変換素子902から出力された放射線画像データを片面画像データとそれぞれ表記する。
信号処理部241は、次いで、ステップS916において、被写体が無い状態で撮影したゲイン補正用画像データを用いて、両面画像データのゲイン補正を行う。また、信号処理部241は、ステップS917において、ゲイン補正用画像データを用いて、両面画像データのゲイン補正を行う。
ゲイン補正を行った後、信号処理部241は、ステップS918において、第1の変換素子901を含まない画素PIX、換言すると第2の変換素子902を有する画素PIXの両面画像データの欠落を補うための画素補間を行う。同様に信号処理部241は、ステップS919において、第2の変換素子902を含まない画素PIX、換言すると第1の変換素子901を有する画素PIXの片面画像データの欠落を補うための画素補間を行う。このステップS918、S919での画素補間について、図8を用いて説明する。ここでは、図4(b)に示される、第1の変換素子901を備える画素PIXの方が、第2の変換素子902を備える画素PIXよりも多い場合の配置を例に説明する。
まず、図8(a)を用いて、両面画像データの画素補間について説明する。片面画像データを出力する第2の変換素子902を有する画素Eの両面画像データは、画素Eに隣接する両面画像データを出力する第1の変換素子901を有する画素A、B、C、D、F、G、H、Iの両面画像データを用いて補間する。例えば、信号処理部241は、画素Eに隣接する8画素の両面画像データの平均値を用いて、画素Eの両面画像データを補間してもよい。また例えば、信号処理部241は、画素B、D、F、Hのように、隣接する一部の画素の両面画像データの平均値を用いて、画素Eの両面画像データを補間してもよい。ステップS918において、画素補間を行うことによって、それぞれの画素PIXの放射線の高エネルギ成分および低エネルギ成分によって生成された放射線画像データが生成される。
次に、図8(b)を用いて、片面画像データの画素補間について説明する。両面画像データを出力する第1の変換素子901を有する画素Jの片面画像データは、画素Jに隣接する片面画像データを出力する第2の変換素子902を有する画素K、L、M、Nの片面画像データを用いて補間する。例えば、信号処理部241は、画素Jに隣接する4画素の片面画像データの平均値を用いて、画素Jの片面画像データを補間してもよい。この場合、例えば、画素Jの配される位置から画素Kまでの距離と画素Nまでの距離とは異なる。そのため、距離に応じて、それぞれ画素K、L、M、Nから出力される片面画像データに対して重みづけをして平均化してもよい。ステップS919において、画素補間を行うことによって、それぞれの画素PIXの放射線の高エネルギ成分によって生成された放射線画像データが生成される。
次いで、信号処理部241は、ステップS920において、放射線の低エネルギ成分による放射線画像データを生成する。上述のように、第2の変換素子902の放射線が入射する側に遮光層903を設けた場合、片面画像データは、高エネルギ成分による放射線画像データとなる。また、両面画像データは、高エネルギと低エネルギの両方の成分を有する放射線画像データとなる。このため、画素補間された両面画像データのから画素保管された片面画像データを引き算することによって、低エネルギ成分の放射線画像データを生成することができる。
また、第2の変換素子902の放射線が入射する側と反対側に遮光層903を設けた場合、片面画像データは、低エネルギ成分による放射線画像データとなる。このため、画素補間された両面画像データのから画素保管された片面画像データを引き算することによって、高エネルギ成分の放射線画像データを生成することができる。しかしながら、高エネルギ成分による放射線画像は、放射線の入射する側のシンチレータ904で吸収しきれなかった放射線の成分のため、シンチレータ905からの光量は、シンチレータ904からの光量よりも少ない。そのため、両面画像データから片面画像データを減算して、高エネルギ成分の放射線画像データを生成すると、低エネルギ成分の放射線画像データのノイズが、高エネルギ成分の放射線画像データに乗ってしまう。結果として、高エネルギ成分の放射線画像データのS/N比が低くなってしまう。このため、上述の本実施形態に示すように、第2の変換素子902の放射線が入射する側を遮光し、両面画像データを高エネルギ成分+低エネルギ成分、片面画像データを高エネルギ成分の画像データとする。そして、両面画像データから片面画像データを減算し、低エネルギ画像を生成する方が、S/N比が向上しうる。
信号処理部241は、ステップS922において、エネルギサブトラクション画像の生成を行う。具体的には、信号処理部241ステップS920で取得した第1の変換素子901のそれぞれから出力される信号と第2の変換素子902のそれぞれから出力される信号との差分と、第2の変換素子902のそれぞれから出力される信号と、の差分をとる。これによって、高エネルギ成分の放射線画像データと低エネルギ成分の放射線画像データとの差分であるエネルギサブトラクション画像が生成される。
また、信号処理部241は、ステップS918において第1の変換素子901からそれぞれ出力された両面画像データに基づいて、ステップS920においてエネルギサブトラクションをしない通常の放射線画像を生成してもよい。第1の変換素子901は、放射線の入射する側のシンチレータ904からの光と、放射線が入射する側と反対側のシンチレータ905からの光とを受光する。これによって、一方のシンチレータで発光する光のみを受光する場合よりも、通常の放射線画像において、高いS/N比を得ることができる。
ここで、特許文献1に示されるような、放射線画像の1つの画素データを生成するために、放射線の入射する側のシンチレータの光のみを受光する変換素子と反対側のシンチレータの光のみを受光する変換素子との2つの変換素子を配する放射線撮像装置を考える。この2つの変換素子から出力される2つの信号の差分をとりエネルギサブトラクション画像を生成し、また、2つの信号を加算することによって通常の放射線画像を生成することができる。しかしながら、1つの画素データを生成するために、2つの変換素子が必要となることによって、構造が複雑になり、製造コストが上昇してしまう可能性がある。また、1つ1つの変換素子の大きさが小さくなり、得られる信号のS/N比が低下してしまう可能性がある。また、通常の放射線画像を生成する際、2つの信号を加算する際、それぞれの信号に重畳するノイズも加算されてしまうため、S/N比が低くなる可能性がある。一方、本実施形態において、複数の画素PIXのうち、第2の変換素子902を備える一部の画素PIXにのみ、シンチレータ904またはシンチレータ905からの光を遮断するための遮光層903が配される。つまり、一部の画素PIXに遮光層903を追加するだけでよいため、構造が複雑にならず、製造コストを抑制しつつ、エネルギサブトラクション画像を取得できる放射線撮像装置が実現できる。また、第1の変換素子901は、シンチレータ904およびシンチレータ905から発せられる光を受光するため、入射する放射線に対する感度が向上し、結果として、得られる放射線画像の画質が向上しうる。さらに、通常の放射線画像を生成する際においても、2つのシンチレータ904、905で発光した光を受光することで生成される信号から放射線画像が生成される。このため、特許文献1のような構造と比較して、通常の放射線画像を撮影した際のS/N比が向上する。
また、本実施形態において、1つの撮像パネル212を用いて、被写体に対して1回の放射線照射(ワンショット法)で2つの異なるエネルギ成分の放射線の放射線画像を記録することができる。このため、2つの撮像パネルを用いてエネルギサブトラクション画像を生成する放射線撮像装置と比較して、放射線撮像装置の部品点数が少なくなり製造コストが低減できる。また、放射線撮像装置210の重量を削減することが可能となるため、可搬型のユーザにとって使い勝手のよい放射線撮像装置が実現できる。また、1つの撮像パネルでエネルギサブトラクション画像を生成するため、2つの撮像パネル間での変換素子同士の位置ずれの問題が発生しない放射線撮像装置が実現できる。さらに、エネルギサブトラクション画像だけでなく、通常の放射線画像を生成において、高いS/N比の放射線画像の生成が可能な放射線撮像装置が実現できる。
以上、本発明に係る実施形態を示したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態は適宜変更、組み合わせが可能である。