以下、本発明に係る液体を吐出する装置の一実施形態である画像形成装置100について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)という4色のインクを吐出する記録ヘッド部を備え、記録媒体上にインクからなる画像を形成する画像形成装置を例に挙げる。ただし、本発明を適用できる画像形成装置はこれに限定されない。例えば、グリーン(G)、レッド(R)、ライトシアン(LC)及び/又はその他の色のインクに対応する記録ヘッド部を更に備えるもの、又は、ブラック(K)のインクに対応する記録ヘッド部のみを備えるものなどが挙げられる。なお、以後の説明において、K、C、M、Yの添え字を付与された記号は、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの夫々に対応するものとする。
本実施形態では、記録媒体として、ロール状に巻かれた連続紙(以下「ロール紙Md」という。)を用いるが、本発明に係る画像形成装置が画像を形成することができる記録媒体は、ロール紙に限定されない。すなわち、本発明に係る画像形成装置が画像を形成することができる記録媒体は、カット紙でもよい。また、本発明に係る画像形成装置を用いて画像を形成することができる記録媒体には、普通紙、上質紙、薄紙、厚紙、記録紙及びロール紙、並びに、OHPシート、合成樹脂フィルム、金属薄膜及びその他表面にインク等で画像を形成することができるものを含む。ここで、ロール紙とは、切断可能なミシン目が所定間隔で形成された連続紙(連帳紙、連続帳票)である。また、ロール紙におけるページ(頁)とは、例えば所定間隔のミシン目で挟まれる領域とする。
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、ロール紙Mdを搬入する搬入部10と、搬入されたロール紙Mdを前処理する前処理部20と、前処理されたロール紙Mdを乾燥させる乾燥部30とを有する。また、画像形成装置100は、ロール紙Mdの表面に画像を形成する画像形成部40と、画像が形成されたロール紙Mdを後処理する後処理部50と、後処理されたロール紙Mdを搬出する搬出部60とを有する。また、画像形成装置100は、画像形成装置100の動作を制御する後述の制御部70(図7参照)を有する。
本実施形態に係る画像形成装置100は、搬入部10によってロール紙Mdを搬入し、前処理部20及び乾燥部30によってロール紙Mdの表面を前処理及び乾燥する。また、画像形成装置100は、画像形成部40によって、前処理及び乾燥した後のロール紙Mdの表面に画像を形成する。更に、画像形成装置100は、本実施形態では、後処理部50によって、画像が形成されたロール紙Mdを後処理する。その後、画像形成装置100は、搬出部60によって、ロール紙Mdを巻き取る。
以下に、本発明の実施形態に係る画像形成装置100の各構成を具体的に説明する。
なお、本発明を用いることができる画像形成装置は、画像が形成される記録媒体の種類に応じて、後述する前処理部20等のいずれか一つ又は複数を含まない構成とすることができる。
搬入部10は、記録媒体を前処理部20等に搬送する。搬入部10は、本実施形態では、給紙部11及び複数の搬送ローラ12等で構成される。搬入部10は、搬送ローラ12等を用いて、給紙部11の給紙ロールに巻き付けて保持されたロール紙Mdを搬入し、後述する前処理部20等へプラテン等を用いて搬送する。
前処理部20は、画像が形成される前の記録媒体を処理する。前処理部20は、本実施形態では、搬入部10によって搬入されたロール紙Mdの表面を、前処理液で前処理する。本実施形態の前処理は、ロール紙Md(記録媒体)表面に、インクを凝集させる機能を有する後述の前処理液を均一に塗布する処理である。これにより、画像形成装置100は、インクジェット方式の専用紙又は専用紙以外の記録媒体に画像を形成する場合において、記録媒体に画像を形成する前に、前処理部20を用いてインクを凝集させる機能を有する前処理液を記録媒体表面に付着させることができる。これにより、画像形成装置100は、形成される画像の滲み、濃度、色調及び裏写りなどの品質問題、並びに、耐水性、耐候性及びその他画像堅牢性に関する問題が発生することを低減することができる。したがって、その後形成される画像の品質を向上させることができる。
図2は、前処理部20の一例を示す説明図である。
図2に示すように、前処理部20は、ロールコート法を用い、搬入部10によって前処理部20内へ搬入されたロール紙Mdの表面に、貯留している前処理液20Lを塗布する。具体的には、前処理部20は、まず、攪拌ローラ21及び薄膜化ローラ22によって、前処理液20Lを塗布ローラ23の表面に薄膜状に転移させる。塗布ローラ23は、回転するプラテンローラ24に押し付けられながら回転し、塗布ローラ23とプラテンローラ24との間隙にロール紙Mdを搬送することで、ロール紙Mdの表面に前処理液20Lを塗布する。
前処理部20は、圧力調整装置25を用いて、前処理液20Lを塗布するときのニップ圧(塗布ローラ23とプラテンローラ24とが接触する位置に作用する圧力)を制御する。また、前処理部20は、塗布ローラ23及びプラテンローラ24の回転速度を制御してもよい。これにより、前処理部20は、塗布ローラ23等の回転速度を変えることができ、圧力調整装置25を用いてニップ圧を変えることと併せて、前処理液20Lの塗布量(膜厚、液量、付着量、乾燥付着量など)を、より高精度に制御することができる。したがって、その後の画像形成及び後処理に適した塗布量で、ロール紙Md(記録媒体)の表面に前処理液20Lを塗布することが可能となる。
乾燥部30は、記録媒体を加熱等により乾燥させる。本実施形態の乾燥部30は、図1に示すように、前処理部20によって前処理されたロール紙Mdを乾燥させる前処理用乾燥部31と、後処理部50によって後処理されたロール紙Mdを乾燥させる後処理用乾燥部32とから構成される。本実施形態の前処理用乾燥部31及び後処理用乾燥部32は、いずれもヒートローラ31h,32hを用いて乾燥させる。
前処理用乾燥部31は、ヒートローラ31hを例えば40〜100℃に加熱し、前処理液を塗布されたロール紙Mdの表面をヒートローラ31hに接触等させながら搬送する。これにより、前処理用乾燥部31は、ロール紙Mdの表面に付着する前処理液の水分を蒸発させ、ロール紙Md(の前処理液)を乾燥させることができる。
図3は、前処理用乾燥部31の一例を示す説明図である。
本実施形態の前処理用乾燥部31において、乾燥効果を高めるため、図3に示すように、複数のヒートローラ311〜316を多段に設けることが好ましい。この構成において乾燥強度を弱くする場合は、ヒートローラ温度を低くすればよい。例えば40〜80℃程度とする。また、一部のヒートローラ(例えばヒートローラ311とヒートローラ312のみ)を加熱し、その他のヒートローラは加熱しないようにしてもよい。逆に、乾燥強度を強くする場合は、ヒートローラの使用本数を増やしたり、ヒートローラ温度を高くしたりすればよい。このように、ヒートローラの温度および/または使用本数を変更することで乾燥強度を制御することが可能である。
なお、前処理用乾燥部31は、ヒートローラによって乾燥させる方法に限定されない。例えば、前処理用乾燥部31は、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、温風乾燥及びその他乾燥方法を用いることができる。また、前処理用乾燥部31は、複数の乾燥方法を組み合わせた乾燥方法を用いてもよい。更に、前処理用乾燥部31は、前処理部20が前処理液を塗布する前に、ロール紙Md(記録媒体)を加熱してもよい(プレヒート工程)。
後処理用乾燥部32の構成は、前処理用乾燥部31の構成と同様のため、説明を省略する。
画像形成部40は、記録媒体に画像を形成する。画像形成部40は、本実施形態では、前処理用乾燥部31によって乾燥されたロール紙Md上にインクを吐出することによって、ロール紙Mdの表面に画像を形成するインクジェット記録方式を採用している。
図4(a)は、本実施形態における画像形成部40を構成する4つの記録ヘッド部40K,40C,40M,40Yの一例を示す概略平面図である。
図4(b)は、ブラック(K)の記録ヘッド部40Kを構成する4つのヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のうちの1つを例示した概略平面図である。
図4(a)に示すように、画像形成部40は、フルライン型の記録ヘッド部を用いることができる。本実施形態の画像形成部40では、記録媒体の搬送方向Xmの上流側からブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)に対応する4つの記録ヘッド部40K,40C,40M,40Yが配置されている。
ブラック(K)の記録ヘッド部40Kは、ロール紙Mdの搬送方向Xmと直交する方向に4つのヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4を千鳥状に配置している。これにより、画像形成部40は、ロール紙Md(記録媒体)の画像形成領域(印刷領域)の幅方向(搬送方向と直交する方向)の全域に画像を形成することができる。
図4(b)に示すように、ヘッドユニット40K−1は、ノズル面(後述の図5(a)に示すノズル板43の外表面)に、複数の吐出口であるノズル40nを備える。ここで、複数のノズル40nは、ヘッドユニット40K−1の長手方向に沿って一列に配置され、ノズル列を構成している。なお、ヘッドユニット40K−1は、複数のノズル列を備えてもよい。
図5(a)は、ヘッドユニット40K−1の一部を、液室40fの長手方向に沿って切断したときの概略断面図である。
図5(b)は、ヘッドユニット40K−1の一部を、図5(a)のSC1に示す断面、すなわち、液室40fの長手方向に直交する方向(ノズルの並び方向)に沿って切断したときの概略断面図である。
図5(a)に示すように、ヘッドユニット40K−1は、吐出するインクの流路を形成する流路板41と、流路板41の図中下面(ヘッドユニットの内部方向)に接合された振動板42と、流路板41の図中上面(ヘッドユニットの外部方向)に接合されたノズル板43と、振動板42の周縁部を保持するフレーム部材44とを備える。また、ヘッドユニット40K−1は、振動板42を変形させるための圧力発生部45を有する。
本実施形態のヘッドユニット40K−1は、流路板41と、振動板42と、ノズル板43とを積層することによって、ノズル40nに連通する流路であるノズル連通路40r及び液室40fが形成される。また、ヘッドユニット40K−1は、フレーム部材44を更に積層することによって、液室40fにインクを供給するためのインク流入口40sと、インクを液室40fに供給する共通液室40cと、圧力発生部45を収納する収容部と、共通液室40cにヘッドユニット外部からインクを供給するためのインク供給口40iなどが形成される。
また、ヘッドユニット40K−1は、圧力発生部45を用いて、振動板42を変形(撓み変形)させることができる。これにより、ヘッドユニット40K−1は、液室40fの容積(体積)を変化させ、液室40f内のインクに作用する圧力を変化させることができる。この結果、ヘッドユニット40K−1は、ノズル40nからインクを吐出することができる。
圧力発生部45は、電気機械変換素子を用いることができる。圧力発生部45は、本実施形態では、電気機械変換素子である圧電素子45pと、圧電素子45pを接合固定するベース基板45bと、隣り合う圧電素子45pの間隙に配置された支柱部とを備えている。また、圧力発生部45は、圧電素子45pを駆動回路(駆動IC)に接続するためのFPCケーブル45c等を備えている。
圧電素子45pは、図5(b)に示すように、圧電材料45ppと内部電極45peとを交互に積層した積層型圧電素子(PZT)を用いることができる。内部電極45peは、複数の個別電極45peiと複数の共通電極45pecとからなる。内部電極45peは、本実施形態では、圧電材料45ppの端面に交互に個別電極45pei又は共通電極45pecを接続している。
また、圧電素子45pは、実施形態では、圧電材料45ppの圧電方向として、d33方向を用いる。これにより、圧力発生部45は、圧電素子45pの圧電効果(d33方向の変位)を用いて、液室40f内のインクを加圧又は減圧することができる。なお、圧力発生部45は、圧電素子45pのd31方向の変位を用いて、液室40f内のインクを加圧又は減圧してもよい。また、圧力発生部45は、1つのノズル40nに対して1列の圧電素子を配置してもよい。なお、支柱部は、圧電素子部材(圧電素子45p)を分割することで、圧電素子45pと同時に形成してもよい。すなわち、ヘッドユニット40K−1は、圧電素子に電圧を印加しないことによって、圧電素子部材を支柱部として用いることができる。
以下に、ノズル40nからインクを吐出する動作(引き−押し打ち動作)を具体的に説明する。
ヘッドユニット40K−1は、まず、圧電素子45p(圧力発生部45)に印加される電圧を基準電位から下げ、圧電素子45pをその積層方向に縮小させ、振動板42を撓み変形させる。これにより、液室40fの容積(体積)が拡大(膨張)し、共通液室40cから液室40f内にインクが流入する。次に、ヘッドユニット40K−1は、圧電素子45pに印加される電圧を上げ、圧電素子45pを積層方向に伸長させる。これにより、振動板42をノズル40n方向に変形させ、液室40fの容積(体積)を縮小(収縮)させる。その結果、液室40f内のインクに圧力が付加され、ノズル40nからインクが吐出(噴射)される。その後、圧電素子45pに印加される電圧を基準電位に戻し、振動板42を初期位置に戻す(復元する)。このときの液室40fの膨張によって液室40f内が減圧され、共通液室40c内から液室40f内にインクが充填(補充)される。次いで、ノズル40nのメニスカス面の振動が減衰(安定)した後、次のインクの吐出のための動作に移行し、前記の動作を繰り返す。
ヘッドユニット40K−1の駆動方法は、上述した例(引き−押し打ち)に限定されるものではない。すなわち、記録ヘッド部の駆動方法は、圧電素子45pに印加する電圧(駆動波形)を制御することによって、引き打ち又は押し打ち等を行うことができる。
また、圧力発生部45は、前記の例(圧電素子45p)に限定されるものではない。すなわち、圧力発生部45は、発熱抵抗体を用いて液室40f内のインクを加熱して気泡を発生させる方法(いわゆるサーマル型)のもの(例えば特開昭61−59911号公報参照)を用いてもよい。また、圧力発生部45は、液室40fの壁面に振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させた静電力によって振動板を変形させる方法(いわゆる静電型)のもの(例えば特開平6−71882号公報参照)を用いてもよい。
なお、他のヘッドユニット40K−2,40K−3,40K−4の構成及び動作は、上述のヘッドユニット40K−1と同様であるため、説明を省略する。
また、他の記録ヘッド部40C,40M,40Yの構成及び動作は、ブラック(K)の記録ヘッド部40Kの構成と同様のため、説明を省略する。
以上により、本実施形態の画像形成装置100は、画像形成部40(4つの記録ヘッド部40K,40C,40M,40Y)を用いて、1回の記録媒体(ロール紙Md)の搬送動作で、画像形成領域の全域に白黒又はフルカラーの画像を形成することができる。
また、本実施形態の画像形成装置100では、印刷時とは別の時、例えば印刷前に、メンテナンスの必要性の有無を判断するために、テストパターンを作成する。テストパターンとして、画像形成部40の各色の吐出詰まりを検知するためのテストパターンと、後処理部50の吐出詰まりを検知するためのテストパターンとを作成する。なお、後処理部50の吐出詰まり検知のため、例えば、画像形成部40は、いずれか一色の単色のベタ画像を形成するのが好ましい。
後処理部50は、画像が形成された後の記録媒体を処理する。後処理部50は、本実施形態では、画像形成部40によって画像を形成されたロール紙Mdの表面を、後処理液で後処理する。本実施形態の後処理とは、ロール紙Md(記録媒体)上に後処理液を付与(吐出)する処理である。後処理液は、斑点形状や縞形状等の形状で形成される。これにより、画像が形成された記録媒体は、耐擦過性及び光沢度、並びに、保存安定性(耐水性、耐光性、耐ガス性など)等を向上させることができる。
図6(a)は、画像が形成された記録媒体に後処理液50Lが付与された一例を示す正面図である。
図6(b)は、画像が形成された記録媒体に後処理液50Lが付与された一例を示す記録媒体厚さ方向の断面図である。
後処理部50の後処理開始時において、ロール紙Mdには、前処理液20Lが付与され、画像を形成するインク40Inkが付着した状態である。後処理部50は、後処理として、画像を形成されたロール紙Md上に、後処理液50Lを吐出して付着させる処理を実施する。図6(b)に示すように、後処理液50Lは、少なくとも前処理液20Lよりも少ない面積で記録媒体上に付着する。また、後処理液50Lは、画像を形成するインク40Inkの面積よりも小さい面積で付着する。
後処理液50Lは、少なくとも記録媒体の画像を形成された部分(インク40Inkの付着部分)において、当該部分の面積よりも小さい面積で付着していればよく、画像が形成されていない部分については、付着していても付着していなくてもよい。
また、後処理方法として、ロール紙Mdの画像が形成された部分に後処理液50Lを付着(堆積)させることが好ましい。後処理部50は、記録媒体の種類、浸透性、光沢度及び/若しくは解像度、並びに/又は、前処理部20が塗布した前処理液の付着量(液量)に基づいて、後処理液の吐出量(付着量)及び吐出方法を変えることが更に好ましい。
また、本実施形態の後処理部50は、画像形成部40と同様の記録ヘッド部を利用して、目標とする箇所に、所望の吐出量(所望の斑点形状又は所望の縞形状)で、後処理液を吐出することができる。具体的には、後処理部50は、ロール紙Mdの(1)画像を形成することが可能な範囲の全領域に吐出すること;(2)画像が形成された領域に吐出すること;(3)画像形成部分(ドット吐出部分)の領域のみに吐出すること;等を選択することができる。また、後処理部50は、(4)ロール紙Md(記録媒体)の画像形成部分より広い領域(画像形成部分の外縁に対して、+1ドット又は2ドット以上など)に吐出することを選択することができる。更に、後処理部50は、選択した後処理液を吐出する領域に対して、n%の領域(斑点形状又は縞形状)に後処理液を吐出することができる。ここで、n%は、5〜50%とすることができる。また、n%は、実験又は数値計算等で予め定められる値をすることができる。
また、本実施形態に係る後処理部50は、後処理液50Lを吐出する方法として、(1)印字Dutyに基づいて吐出する、(2)吐出する後処理液50Lの液滴量に基づいて吐出する、などを選択することができる。このとき、後処理部50は、入力された情報(印刷画像データなど)から印字Dutyや後処理液50Lの液滴量を算出し、算出した印字Duty等に基づいて吐出する方法を決定してもよい。これにより、本実施形態の画像形成装置100によれば、記録媒体の全面に後処理液を塗布(吐出)する場合と比較して、後処理部50を用いて、画像が形成された領域の特定の部分のみに後処理液を堆積(吐出)することができる。その結果、後処理に要する時間、特に後処理液の乾燥に要する時間を短縮することができる。また、後処理に要する後処理液の液量を低減することができ、後処理に要するコストを低減することができる。
なお、後処理部50の後処理方法は、特に制限はなく、後処理液の種類に応じて適宜選択してもよい。後処理部50の後処理方法は、装置の小型化及び後処理液の保存安定性の観点から、画像形成部40のインクを吐出する方法と同様の方法を用いることがより好ましい。したがって、後処理部50の構成は、画像形成部40の記録ヘッド部と同様に、ノズル面に複数のノズル40nを備えた液体吐出ヘッドを用いるのが好ましい。
後処理液を吐出させる場合、画像形成部40のインクを吐出する方法で使用されている水溶性有機溶剤(湿潤剤)を適当量含有することが好ましい。また、後処理部50は、後処理液50Lの乾燥後付着量が0.5g/m2〜10g/m2とすることが好ましい。また、後処理液50Lとしては、ロール紙Md(記録媒体)上に透明な保護層を形成し得る成分を含有する処理液を用いることができる。透明な保護層を形成し得る成分を含有する処理液とは、例えば、水分散性樹脂(樹脂)、水溶性有機溶剤(湿潤剤)、浸透剤、界面活性剤、水及び/又は必要に応じてその他の成分を含有してなる処理液である。また、後処理液は、紫外線照射によって高分子化する成分を含む樹脂組成物及び/又は熱可塑性樹脂であっても良い。更に、後処理液は、光沢性・定着性向上のために、熱可塑性樹脂エマルジョンであることが好ましい。これにより、後処理部50は、吐出(付与)する方法に応じて、画像が形成されたロール紙Mdの表面の光沢性を増加させること、又は、ロール紙Mdの表面を樹脂層で保護することができる。
本実施形態のように後処理部50を用いることにより、画像が形成されたロール紙Mdの表面が他の物体(例えばロール紙)と擦れることによって記録媒体上の画像(インク)が剥離(剥奪)することを防止し、すなわち、耐擦過性(耐擦性)を向上することができる。さらに、形成される画像の滲み、濃度、色調、光沢及び裏写りなどの品質問題、並びに、耐水性、耐候性及びその他画像堅牢性に関する問題が発生することを低減することができる。
搬出部60は、画像が形成等された記録媒体を搬出(排出)する。図1に示すように、搬出部60は、保管部61及び複数の搬送ローラ62等で構成される。搬出部60は、搬送ローラ62等を用いて、保管部61の保管ロールに画像が形成されたロール紙Mdを巻き付けて、保管する。なお、ロール紙Mdを保管部61の保管ロールに巻き付けるときに、ロール紙Mdに作用する圧力が大きくなる場合には、ロール紙Mdの裏面に他の画像が転写することを防止するため、巻き取り直前にロール紙Mdを更に乾燥する乾燥部を設けてもよい。
また、本実施形態の画像形成装置100には、画像形成部40及び後処理部50の維持回復を行う維持回復部が設けられている。上述のような液体吐出ヘッドを用いた画像形成部40及び後処理部50を長く利用すると、ノズルにインクや後処理液が詰まるおそれがある。したがって、印刷時以外のとき、例えば印刷前に、維持回復動作(クリーニング・メンテナンス)を行うことが望ましい。
画像形成部40と後処理部50は、図1に示すように、ロール紙Mdの搬送方向に沿ってロール紙Mdの表面と対向するように配置されている。画像形成部40及び後処理部50に対して、ロール紙Mdの搬送方向上流側と下流側に、維持回復部(メンテナンス部)が設けられている。
本実施形態では、維持回復を行う前に、テストパターンを形成し、記録媒体上に印刷されたテストパターンをユーザー、管理者又はサービスマンが目視で確認する。目視確認にて、メンテナンス(クリーニング等)が必要と判断された場合のみ、維持回復部によって維持回復動作を行う。さらに、テストパターンの目視結果に応じて、必要なヘッド部についてのみ、メンテナンスを実行する。
また、本実施形態の画像形成装置100には、画像形成装置100の動作を制御する制御部が設けられている。
本実施形態の制御部は、画像形成装置100の各部に動作を指示し、その動作を制御する。なお、本実施形態に係る画像形成装置100は、印刷システムとして、プロダクションプリンティングを用いてもよい。ここで、プロダクションプリンティングとは、ジョブ管理や印刷データの管理などを効率的に行うことによって、短時間に大量の印刷物(画像形成媒体、印字物)を印刷(画像形成、印字)することができる製造システムである。具体的には、本実施形態に係る画像形成装置100は、ビットマップデータなどの印刷動作を制御するRIP処理と、RIP処理により制御されたビットマップデータなどに基づく印刷処理とを別の装置(部)で実施する。また、本実施形態に係る画像形成装置100(制御部)は、印刷データの作成から印刷物の分配までの管理を行うワークフローのシステムを構築する。すなわち、本実施形態に係る画像形成装置100(制御部)は、処理時間を要するRIP(Raster Image Processor)処理を行う装置と印刷処理を行う装置とを分離することで、印刷の高速化を可能とする。
図7は、画像形成装置100の動作を制御する制御部70の全体構成の一例を示すブロック図である。
本実施形態に係る画像形成装置100の制御部70は、図7に示すように、RIP処理などを行う上位装置(DFE:Digital Front End)71と、印刷処理などを行うプリンタ装置72とから構成される。ここで、上位装置71とプリンタ装置72とは、複数のデータ線70LDと制御線70LCとで接続されている。以下に、本実施形態に係る制御部70の上位装置71及びプリンタ装置72を具体的に説明する。
図8は、制御部70を構成する上位装置71の一例を示すブロック図である。
本実施形態の上位装置71は、ホスト装置から出力される印刷ジョブデータ(ジョブデータ、印刷データ)に基づいて、RIP処理を行う装置である。すなわち、本実施形態の上位装置71は、印刷ジョブデータに基づいて、各色に対応するビットマップデータ(以下「印刷画像データ」という。)を夫々作成する。ここで、印刷画像データは、本実施形態では、後処理部50が吐出する後処理液の吐出に関するデータ(以下「後処理に関する画像データ」という。)を更に含む。
また、本実施形態の上位装置71は、印刷ジョブデータ及びホスト装置の情報などに基づいて、印刷動作を制御するためのデータ(以下「制御情報データ」という。)を作成する。ここで、制御情報データとは、印刷条件(印刷形態、印刷種別、給排紙情報、印刷面順、印刷用紙サイズ、印刷画像データのデータサイズ、解像度、紙種情報、階調、色情報及び印刷を行うページ数の情報など)に関するデータを含む。また、制御情報データは、本実施形態では、後処理部50が吐出する後処理液の吐出に関するデータ(以下「後処理に関する制御データ」という。)を更に含む。また、維持回復の際に目視により検知した情報を、ユーザー、管理者、又はサービスマン等が上位装置71へ入力する。
上位装置71は、図8に示すように、CPU(Central Processing Unit)71a、ROM(Read Only Memory)71b、RAM(Random Access Memory)71c、HDD(Hard Disc Drive)71dを備える。また、上位装置71は、外部I/F71e、制御情報用I/F71f及び画像データ用I/F71gを備える。更に、上位装置71は、CPU71a等を夫々接続するバス71hを備える。すなわち、上位装置71は、バス71hを介して、CPU71a等を相互に送受信可能とする構成である。
CPU71aは、上位装置71全体の動作を制御する。CPU71aは、ROM71b及び/又はHDD71dに格納(記憶)されている制御プログラム等を用いて、上位装置71の動作を制御する。
ROM71b、RAM71c及びHDD71dは、データ等を記憶し、ROM71b及び/又はHDD71dは、CPU71aを制御するための制御プログラムを予め格納され、RAM71cは、CPU71aのワークメモリとして用いられる。
外部I/F71eは、画像形成装置100外部(ホスト装置等)との通信(送受信)を制御する。制御情報用I/F71fは、制御情報データの通信を制御する。画像データ用I/F71gは、印刷画像データの通信を制御する。画像データ用I/F71gは、本実施形態では、印刷画像データの各色に対応した複数のチャネル(後述)を有する。
本実施形態の上位装置71は、ホスト装置から送信された印刷ジョブデータを外部I/F71eで受信し、CPU71aを用いて、HDD71dに格納する。また、上位装置71は、CPU71aを用いて、HDD71dから印刷ジョブデータを読み出す。更に、上位装置71は、CPU71aを用いて、読み出した印刷ジョブデータに基づいて各色(イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びブラック(K))のビットマップデータを生成し、生成した各色のビットマップデータをRAM71cに格納する。ここで、上位装置71(CPU71a)は、RIP処理として、例えばPDL(Page Description Language)をレンダリングして各色のビットマップデータを生成し、RAM71cに書き出すことができる。
次に、上位装置71は、RAM71cに書き出された各色のビットマップデータを圧縮して符号化し、HDD71dに一旦格納する。その後、上位装置71(CPU71a)は、プリンタ装置72で印刷動作が開始される際に、HDD71dから符号化された各色のビットマップデータを読み出し、復号して各色のビットマップデータをRAM71cに夫々書き込む。次いで、上位装置71は、RAM71cから各色のビットマップデータを読み出し、各色の印刷画像データとして、画像データ用I/F71gの各チャネルを介して、プリンタ装置72(後述するプリンタエンジン72E)に出力する。ここで、上位装置71は、画像データ用I/F71gの各チャネルとして、図7に示すデータ線70LD(図9に示すデータ線70LD−Y,70LD−C,70LD−M,70LD−K)を介して、プリンタ装置72に印刷画像データを出力することができる。
また、本実施形態に係る上位装置71は、印刷動作の進行などに応じて、CPU71aを用いて、プリンタ装置72のプリンタコントローラ72Cとの間で、制御情報用I/F71f(制御線70LC)を介して、制御情報データの送受信を行う。更に、本実施形態に係る上位装置71は、後処理部50において後処理が開始される際に、CPU71aを用いて、HDD71dから符号化された後処理に関する画像データを読み出し、前記のビットマップデータと同様に、図9に示すデータ線70LD−Pを介して、プリンタエンジン72Eに出力する。
図9は、プリンタ装置72の一例を示すブロック図である。
本実施形態のプリンタ装置72は、上位装置71から入力された印刷画像データ及び制御情報データに基づいて、記録媒体に画像を形成する動作を制御する装置である。プリンタ装置72は、本実施形態では、プリンタコントローラ72Cとプリンタエンジン72Eとを有する。
プリンタコントローラ72Cは、後述するプリンタエンジン72Eの動作を制御する。プリンタコントローラ72Cは、制御線70LCを介して、上位装置71との間で制御情報データ等の送受信を行う。また、プリンタコントローラ72Cは、制御線72LCを介して、プリンタエンジン72Eと制御情報データ等の送受信を行う。これにより、プリンタコントローラ72Cは、制御情報データに含まれる各種の印刷条件等の印刷情報及び吐出用のテストパターンに関するデータを印刷制御部72Ccのレジスタなどに書き込み、印刷条件を記憶することができる。また、プリンタコントローラ72Cは、制御情報データに基づいてプリンタエンジン72Eを制御し、印刷ジョブデータ(制御情報データ)に従った印刷を実行することができる。
プリンタコントローラ72Cは、図9に示すように、CPU72Cp及び印刷制御部72Ccを有する。また、プリンタコントローラ72Cは、CPU72Cpと印刷制御部72Ccとを互いに送受信可能にバス72Cbで接続している。ここで、バス72Cbは、通信I/Fを介して、制御線70LCに接続されている。CPU72Cpは、ROMに格納されている制御プログラムを用いて、プリンタ装置72全体の動作を制御する。印刷制御部72Ccは、上位装置71から送信された制御情報データに基づいて、プリンタエンジン72Eとの間でコマンドやステータス情報の送受信を行う。これにより、印刷制御部72Ccは、プリンタエンジン72Eの動作を制御することができる。
プリンタエンジン72Eは、上位装置71から入力された印刷画像データ及びプリンタコントローラ72Cから入力された制御情報データに基づいて、記録媒体に画像を形成する動作を制御する装置である。また、プリンタエンジン72Eは、上位装置71から入力された印刷画像データ(後処理に関する画像データ)及びプリンタコントローラ72Cから入力された制御情報データ(後処理に関する制御データ)に基づいて、後処理する動作を制御する装置である。
プリンタエンジン72Eは、図9に示すように、複数のデータ線70LD(70LD−Y,70LD−C,70LD−M,70LD−K,70LD−P)が接続されている。プリンタエンジン72Eは、複数のデータ線70LD−C等を介して、上位装置71から印刷画像データを受信する。これにより、プリンタエンジン72Eは、受信した印刷画像データに基づいて、各色の印刷動作及び後処理液の後処理を実施することができる。
プリンタエンジン72Eは、本実施形態では、複数のデータ管理部72EC,72EM,72EY,72EK,72EPを有する。また、プリンタエンジン72Eは、データ管理部72EC等から印刷画像データ等を入力される画像出力部72Eiと、ロール紙Md(記録媒体)の搬送を制御する搬送制御部72Ecとを有する。更に、プリンタエンジン72Eは、本実施形態では、データ管理部72EPから後処理に関する画像データを入力される後処理液出力部72Epと、乾燥部30(図1)の動作を制御する乾燥制御部72Epbとを有する。また、本実施形態において、プリンタエンジン72Eは、維持回復機構の動作を制御する維持回復制御部などもさらに有する。本実施形態においては、通常の印刷時以外に、維持回復動作で用いるテストパターンを画像データとして含む。
図10は、データ管理部72ECの一例を示すブロック図である。
なお、データ管理部72EC以外の他のデータ管理部72EM,72EY,72EK,72EPの構成は、データ管理部72ECの構成と同様のため、説明を省略する。
データ管理部72ECは、図10に示すように、ロジック回路72EClとメモリ部72ECmとを含む。データ管理部72EC(ロジック回路72ECl)は、データ線70LD−Cを介して、上位装置71に接続されている。また、データ管理部72EC(ロジック回路72ECl)は、制御線72LCを介して、プリンタコントローラ72C(印刷制御部72Cc)に接続されている。
ロジック回路72EClは、本実施形態では、プリンタコントローラ72C(印刷制御部72Cc)から出力された制御信号に基づいて、上位装置71から出力された印刷画像データをメモリ部72ECmに格納する。また、ロジック回路72EClは、プリンタコントローラ72C(印刷制御部72Cc)から出力された制御信号に基づいて、メモリ部72ECmからシアン(C)に対応する印刷画像データIc(図9)を読み出し、画像出力部72Eiに出力する。
なお、後処理に関して、ロジック回路72ECp(データ管理部72EP)の場合は、後処理に関する画像データIp(図11)及び吐出検査用のテストパターンの吐出位置を制御するためのデータを、後処理液出力部72Epに出力する。
メモリ部72ECmは、少なくとも3ページ分の印刷画像データを格納可能な容量とすることができる。3ページ分の印刷画像データとは、例えば上位装置71から転送(受信)中のページに対応する印刷画像データと、画像出力部72Eiに出力中のページに対応する印刷画像データと、次のページに対応する印刷画像データである。
データ管理部72ECは、論理回路などの組み合わせによって構成されるハードウェアのロジック回路を用いてもよい。これにより、データ管理部72ECは、より高速な処理を実現することができる。また、データ管理部72ECは、ロジック回路72EClを用いて、例えばビット列による制御信号に対する論理判定を行い、実行する処理を決定してもよい。
図11は、画像出力部72Eiの一例を示すブロック図である。
なお、後処理液出力部72Epの構成は、画像出力部72Eiの構成と基本的に同様のため、説明を省略する。
画像出力部72Eiは、図11に示すように、出力制御部72Eicを含む。出力制御部72Eicは、各色に対応する印刷画像データを各色に対応する記録ヘッド部40C,40M,40Y,40Kに出力する。これにより、出力制御部72Eicは、印刷画像データに基づいて、記録ヘッド部40C等の動作を制御することができる。
具体的には、出力制御部72Eicは、複数の記録ヘッド部40C,40M,40Y,40Kを個別に制御する。また、出力制御部72Eicは、入力された印刷画像データを用いて、複数の記録ヘッド部40C,40M,40Y,40Kを同時に制御してもよい。更に、出力制御部72Eicは、入力される制御信号に基づいて、記録ヘッド部40C,40M,40Y,40Kを制御してもよい。出力制御部72Eicは、例えばユーザーの操作入力に基づいて、記録ヘッド部40C,40M,40Y,40Kを制御してもよい。
以上により、本実施形態のプリンタ装置72は、データ管理部72EC等及び出力制御部72Eicを用いて、上位装置71から出力される印刷画像データを、複数の記録ヘッド部40C,40M,40Y,40Kに入力する。このとき、プリンタ装置72は、各色の印刷画像データを互いに独立して制御することができる。
また、プリンタ装置72は、印刷画像データの色数(C、M、Y及びK、又は、K色のみなど)又は記録ヘッド部の数に応じて、プリンタエンジン72Eの構成を容易に変更することが可能である。すなわち、必要なデータ管理部72EC等及び記録ヘッド部40C,40M,40Y,40Kのみを搭載することにより、装置の小型化及び低コスト化について有利な効果を有する。本実施形態に係るプリンタ装置72は、例えばK、C、M、Yの4色でフルカラー印刷を行う場合には、プリンタエンジン72Eにデータ管理部72EC等をすべて設けることができる。これにより、プリンタ装置72は、出力制御部72Eicを用いて、データ管理部72EC等の各出力を夫々記録ヘッド部40C,40M,40Y,40Kに接続することができる。
また、プリンタ装置72は、例えばKの1色で印刷を行う場合には、装置コスト優先として、1つのデータ管理部72EK及び記録ヘッド部40Kのみを設けることができる。これにより、プリンタ装置72は、出力制御部72Eicを用いて、データ管理部72EKの出力を記録ヘッド部40Kに接続することができる。
或いは、例えばKの1色で印刷を行う場合には、印刷速度優先として、1つのデータ管理部72EKと4つの記録ヘッド部40C,40M,40Y,40Kとを設けてもよい。これにより、画像形成装置100は、出力制御部72Eicを用いて、データ管理部72EKの出力を4つの記録ヘッド部40C,40M,40Y,40Kに夫々接続することができる。この場合、画像形成装置100は、同一色(K)を複数回、重ねて(重畳して)印刷することができるので、例えば1つの記録ヘッド部で画像を形成する場合と比較して、4倍の高速印刷(画像形成)を実現することができる。
以下、本発明の特徴部分である、インクの交換(入れ替え)に関する構成及び動作について説明する。
図12は、本実施形態におけるヘッドユニット40K−1の全体を、ノズル列に沿って切断したときの断面図である。
図13は、本実施形態におけるヘッドユニット40K−1の全体を、図12の符号A−Aで示す断面に沿って切断したときの断面図である。
なお、上述したとおり、他のヘッドユニット40K−2,40K−3,40K−4の構成及び動作は、上述のヘッドユニット40K−1と同様であるため、説明を省略する。また、他の記録ヘッド部40C,40M,40Yの構成及び動作は、ブラック(K)の記録ヘッド部40Kの構成と同様のため、説明を省略する。また、以下の説明では、交換前のインクと交換後のインクは、互いに混ざり合ってもインクの凝集、固化によるノズル詰まりやインクの変色等の不具合が生じないインクである場合について説明する。
本実施形態において、記録ヘッド部40Kには、4つの液体吐出ユニットであるヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4が搭載されている。そして、各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4には、後述するメインタンクに接続された共通供給流路から各個別供給流路を通じて各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4にインクが供給される。
ヘッドユニット40K−1は、図12及び図13に示すように、液体を吐出する液体吐出ヘッドである記録ヘッド1と、記録ヘッド1に供給するインクを収容するヘッドタンク2とを備えている。
記録ヘッド1は、上述したように、液滴を吐出する複数のノズル40nと、各ノズル40nが連通する液室40fと、各液室40fにインクを供給する共通液室40cと、共通液室40cにインクを供給するインク供給口40iと、共通液室40cからインクを排出するインク排出口40oとを備えている。
ヘッドタンク2は、タンクケース3内に配置され、記録ヘッド1に供給するインクを収容するインク収容部2aと、インク収容部2aからインクを記録ヘッド1のインク供給口40iに供給する供給ポート2bとを備えている。タンクケース3は、一部が開口した部材であり、その開口部には可撓性の弾性変形可能な部材としてのフィルム部材3a(図12中の網掛け部分)を貼り付けて、インクの振動による圧力を吸収してダンパ効果が得られるようになっている。
ヘッドタンク2に収容されたインクは、供給ポート2bから記録ヘッド1の一端部のインク供給口40iを通じて共通液室40cの一端部へ供給され、共通液室40cの他端部に接続されているインク排出口40oから排出流路4へと流れる。そして、記録ヘッド1からのインク吐出に伴ってインクが消費されることにより、ヘッドタンク2からインクが記録ヘッド1に供給されるとともに、後述のメインタンク5からヘッドタンク2へとインクが自然供給される。
図14は、4つのヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4を搭載したブラック(K)の記録ヘッド部40Kのインク供給系を示す説明図である。
なお、他の記録ヘッド部40C,40M,40Yのインク供給系も同様のため、説明を省略する。
本実施形態では、メインタンク5Kに接続された共通供給流路(マニーホールド)6Kから、接続部8K−1,8K−2,8K−3,8K−4を通じ、各個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4を介して、各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4へインクが供給される。本実施形態の個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4は、屈曲性のあるフッ素樹脂やテフロン(登録商標)樹脂からなる可撓性チューブで構成されている。
次に、記録ヘッド部40Kに充填されている交換前のインクを別種類である交換後のインクへ交換する(入れ替える)液体交換動作としてのインク交換動作について、説明する。
まず、記録ヘッド部40Kに接続されている交換前のメインタンク5K’を交換後のインクの入ったメインタンク5Kに交換する。次に、各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズル面に対し、それぞれ個別の吸引キャップを密着させてキャッピングする。
吸引ポンプによって吸引キャップ内の空気を排出させて吸引キャップ内を負圧にすることにより、ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズルから吸引キャップ内へインクを吸い出すことができる。このとき、本実施形態では、吸引キャップごとに、すなわち、ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4ごとに、独立してインクの吸い出しを行うことができる。
インクの吸い出しが進むにつれて、ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4内、個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4内、共通供給流路6K内に充填されていた交換前インクが排出される。そして、これに伴い、交換後のメインタンク5Kから交換後インクが、共通供給流路6K内、個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4内、ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4内へと、順次、引き込まれてくる。その結果、やがて、個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4内、ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4内のすべてが、交換後インクに入れ替わる。
このようにしてインクの入れ替え(交換)が終了したら、その後、各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズル面から吸引キャップをデキャップする。そして、シリコンゴム等の弾性体からなるワイパ部材によりノズル表面をワイピングしてノズル面に垂れたインクを払拭し、ノズル40nのメニスカスを形成させ、インク交換動作が完了する。
ここで、交換前インクと交換後インクとの間で比重が異なる場合、従来は、インクの入れ替え(交換)が終了するまでに、交換後インクが吸引キャップへ吸い出されてしまう量が多く、交換後インクの無駄が多いという問題が生じていた。
図15は、交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が大きい場合(ρ0<ρ1)における従来のインク交換動作の途中の様子を示す説明図である。
本実施形態のように、共通供給流路6Kの接続部8K−1,8K−2,8K−3,8K−4から複数の個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4を介して複数のヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4へインクを供給する構成においては、当該共通供給流路6Kに接続されるヘッドユニットの数に比例して、共通供給流路6K内を流れるインクの量を大きくする必要がある。そのため、共通供給流路6Kの流路抵抗を小さくする必要があり、そのためには共通供給流路の断面積(共通供給流路のインク流れ方向に対して直交する断面の面積)を大きくする必要がある。その結果、共通供給流路内を流れるインクの流速は、各個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4内あるいは各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4内を流れるインクの流速よりも遅いものとなる。
このように共通供給流路6K内を流れるインクの流速が遅いため、交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が大きい場合(ρ0<ρ1)、インク交換動作の途中段階において、共通供給流路6Kの内部では、図15に示すように、交換前インクと交換後インクとがおおよそ上下2層に分離した状態となる。このような状態になると、各個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4の接続部8K−1,8K−2,8K−3,8K−4が共通供給流路6Kの下部(共通供給流路6Kの底面あるいは側壁下方)に存在する場合、比重ρ1の大きな交換後インクL1が優先的に個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4へと引き込まれる。その結果、共通供給流路6K内の交換前インクL0の排出量が減り、インクの入れ替え(交換)が終了するまでに、多くの交換後インクL1が排出されてしまう。また、インク交換動作に要する時間も多くなってしまう。
また、逆に、交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が小さい場合(ρ0>ρ1)でも、比較的多くの交換後インクL1が排出されてしまう事態を招くし、インク交換動作に要する時間も多くなる。すなわち、この場合、比重ρ0の大きな交換前インクL0が優先的に個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4へと引き込まれることになる。しかしながら、この引き込み時には、個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4の接続口が開口している共通供給流路6Kの接続部8K−1,8K−2,8K−3,8K−4付近に存在している比重ρ1の小さな交換後インクL1も、一緒に引き込まれることになる。その結果、インクの入れ替え(交換)が終了するまでには、相当量の交換後インクL1も排出されるし、その分だけインク交換動作に要する時間も多くなってしまう。
図16は、本実施形態の共通供給流路6Kの一例を示す説明図である。
本実施形態においては、図16に示すように、少なくともインク交換動作の際には、共通供給流路6Kがその流路方向(共通供給流路6K内を流れるインクの流れ方向)に傾斜するように設けられる。これにより、複数の個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4が共通供給流路6Kに接続される接続部8K−1,8K−2,8K−3,8K−4に高低差が設けられる。
図17は、交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が大きい場合(ρ0<ρ1)における本実施形態のインク交換動作の流れを示すフローチャートである。
まず、記録ヘッド部40Kに接続されている交換前のメインタンク5K’を交換後のインクの入ったメインタンク5Kに交換する(S1)。次に、各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズル面に対し、それぞれ個別の吸引キャップ46K−1,46K−2,46K−3,46K−4を密着させてキャッピングする(S2)。その後、吸引ポンプによって全吸引キャップ46K−1,46K−2,46K−3,46K−4内を負圧にし、全ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズルからインクの吸い出しを行う(S3)。
インクの吸い出しが進むにつれて、ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4内、個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4内、共通供給流路6K内に充填されていた交換前インクL0が排出されていく。これに伴い、交換後のメインタンク5Kから交換後インクL1が、共通供給流路6Kの流路方向上流側から引き込まれてくる。
このとき、本実施形態では、図16に示すように、共通供給流路6Kがその流路方向下流側に向けて上方から下方へ傾斜している。そのため、共通供給流路6Kの内部では、図16に示すように、メインタンク5Kから供給されてくる比重ρ1の大きな交換後インクL1は共通供給流路6Kの流路方向下流側に寄せられ、比重ρ0の小さな交換前インクL0は、共通供給流路6Kの流路方向上流側に寄せられる。その結果、インクの吸い出しが進むにつれて、共通供給流路6Kの内部は、その流路方向下流端から順次、比重ρ1の大きな交換後インクL1が充填されていく。
本実施形態では、インク吸い出しを開始してから第一規定時間が経過したら(S4のYes)、共通供給流路6Kの流路方向最下流側に接続されている第一ヘッドユニット40K−1のインク吸引を停止させる(S5)。この第一規定時間は、第一ヘッドユニット40K−1が接続されている共通供給流路6Kの接続部8K−1まで比重ρ1の大きな交換後インクL1が充填され、かつ、第一個別供給流路7K−1及び第一ヘッドユニット40K−1内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第一規定時間が経過した時点で第一ヘッドユニット40K−1のインク吸引を停止させることで、第一ヘッドユニット40K−1のインクの入れ替えが終了しているにも関わらず第一ヘッドユニット40K−1から交換後インクL1が無駄に排出されてしまう事態が抑制される。
続いて、本実施形態では、インク吸い出しを開始してから第二規定時間が経過したら(S6のYes)、共通供給流路6Kの流路方向下流側から2番目に接続されている第二ヘッドユニット40K−2のインク吸引を停止させる(S7)。この第二規定時間は、第二ヘッドユニット40K−2が接続されている共通供給流路6Kの接続部8K−2まで比重ρ1の大きな交換後インクL1が充填され、かつ、第二個別供給流路7K−2及び第二ヘッドユニット40K−2内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第二規定時間が経過した時点で第二ヘッドユニット40K−2のインク吸引を停止させることで、第二ヘッドユニット40K−2のインクの入れ替えが終了しているにも関わらず第二ヘッドユニット40K−2から交換後インクL1が無駄に排出されてしまう事態が抑制される。
続いて、本実施形態では、インク吸い出しを開始してから第三規定時間が経過したら(S8のYes)、共通供給流路6Kの流路方向下流側から3番目に接続されている第三ヘッドユニット40K−3のインク吸引を停止させる(S9)。この第三規定時間は、第三ヘッドユニット40K−3が接続されている共通供給流路6Kの接続部8K−3まで比重ρ1の大きな交換後インクL1が充填され、かつ、第三個別供給流路7K−3及び第三ヘッドユニット40K−3内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第三規定時間が経過した時点で第三ヘッドユニット40K−3のインク吸引を停止させることで、第三ヘッドユニット40K−3のインクの入れ替えが終了しているにも関わらず第三ヘッドユニット40K−3から交換後インクL1が無駄に排出されてしまう事態が抑制される。
続いて、本実施形態では、インク吸い出しを開始してから第四規定時間が経過したら(S10のYes)、共通供給流路6Kの流路方向最上流に接続されている第四ヘッドユニット40K−4のインク吸引を停止させる(S11)。この第四規定時間は、共通供給流路6K内の全体に交換後インクL1が充填され、かつ、第四個別供給流路7K−4及び第四ヘッドユニット40K−4内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第四規定時間が経過した時点で第四ヘッドユニット40K−4のインク吸引を停止させることで、インクの入れ替え(交換)を完了することができる。
なお、メインタンク5Kと第四ヘッドユニット40K−4の接続部8K−4との流路長が長い場合、比重ρ0の小さな交換前インクL0は当該接続部8K−4よりもメインタンク5K側(当該接続部8K−4よりも共通供給流路6Kの流路方向上流側)に溜まる場合がある。このような場合には、インク交換動作の途中(終盤ごろ)に、共通供給流路6Kを振動させるなどして共通供給流路6K内のインクを攪拌させると、更に交換後インクL1の無駄な排出を抑制でき、インク交換動作に要する時間も更に少なくできる。
このようにしてインクの入れ替え(交換)が完了したら、その後、各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズル面から吸引キャップをデキャップする(S12)。そして、ワイパ部材によりノズル表面をワイピングしてノズル面に垂れたインクを払拭し(S13)、ノズル40nのメニスカスを形成させ、インク交換動作が完了する。
交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が大きい場合(ρ0<ρ1)における本実施形態のインク交換動作においては、共通供給流路6Kの相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応するヘッドユニット(図16において共通供給流路6Kの流路方向下流側のヘッドユニット)から排出されるインク量よりも、相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応するヘッドユニット(図16において共通供給流路6Kの流路方向上流側のヘッドユニット)から排出されるインク量の方が多くなる。このようなインク交換動作を行うことで、共通供給流路6K内の高い位置に寄せられる交換前インクL0の排出量を、共通供給流路6K内の低い位置に寄せられる交換後インクL1の排出量よりも多くできる。その結果、共通供給流路6K内における交換前インクL0がすべて排出されるまでに、交換後インクL1が排出されてしまう量を少なく抑えることができる。
特に、交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が大きい場合(ρ0<ρ1)における本実施形態では、図16に示すように、共通供給流路6K内の流路方向下流側に向けて、共通供給流路6Kを上方から下方へ傾斜させている。これにより、比重ρ1の大きな交換後インクL1を共通供給流路6Kの流路方向下流側まで効率よく移送することができ、共通供給流路6K内のインク入れ替えを促進することができる。
また、交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が大きい場合(ρ0<ρ1)における本実施形態のインク交換動作では、相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応するヘッドユニット(図16において共通供給流路6Kの流路方向下流側のヘッドユニット)からインクを排出しない状態で、相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応するヘッドユニット(図16において共通供給流路6Kの流路方向上流側のヘッドユニット)からインクを排出する動作を含んでいる。そのため、すでにインクの入れ替えが終了しているヘッドユニットから交換後インクL1が無駄に排出される事態を抑制できる。
図18は、交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が小さい場合(ρ0>ρ1)における本実施形態のインク交換動作の流れを示すフローチャートである。
まず、記録ヘッド部40Kに接続されている交換前のメインタンク5K’を交換後のインクの入ったメインタンク5Kに交換する(S21)。次に、各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズル面に対し、それぞれ個別の吸引キャップ46K−1,46K−2,46K−3,46K−4を密着させてキャッピングする(S22)。その後、吸引ポンプによって全吸引キャップ46K−1,46K−2,46K−3,46K−4内を負圧にし、全ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズルからインクの吸い出しを行う(S23)。
本実施形態では、図16に示すように、共通供給流路6Kがその流路方向下流側に向けて上方から下方へ傾斜している。そのため、共通供給流路6Kの内部では、図16に示す状態とは逆に、メインタンク5Kから供給されてくる比重ρ1の小さな交換後インクL1は共通供給流路6Kの流路方向上流側に寄せられ、比重ρ0の大きな交換前インクL0は、共通供給流路6Kの流路方向下流側に寄せられる。
本実施形態では、インク吸い出しを開始してから第五規定時間が経過したら(S24のYes)、共通供給流路6Kの流路方向最上流側に接続されている第四ヘッドユニット40K−4のインク吸引を停止させる(S25)。この第五規定時間は、第四ヘッドユニット40K−4が接続されている共通供給流路6Kの接続部8K−4まで比重ρ1の小さな交換後インクL1が充填され、かつ、第四個別供給流路7K−4及び第四ヘッドユニット40K−4内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第五規定時間が経過した時点で第四ヘッドユニット40K−4のインク吸引を停止させることで、第四ヘッドユニット40K−4のインクの入れ替えが終了しているにも関わらず第四ヘッドユニット40K−4から交換後インクL1が無駄に排出されてしまう事態が抑制される。
続いて、本実施形態では、インク吸い出しを開始してから第六規定時間が経過したら(S26のYes)、共通供給流路6Kの流路方向上流側から2番目に接続されている第三ヘッドユニット40K−3のインク吸引を停止させる(S27)。この第六規定時間は、第三ヘッドユニット40K−3が接続されている共通供給流路6Kの接続部8K−3まで比重ρ1の小さな交換後インクL1が充填され、かつ、第三個別供給流路7K−3及び第三ヘッドユニット40K−3内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第六規定時間が経過した時点で第三ヘッドユニット40K−3のインク吸引を停止させることで、第三ヘッドユニット40K−3のインクの入れ替えが終了しているにも関わらず第三ヘッドユニット40K−3から交換後インクL1が無駄に排出されてしまう事態が抑制される。
続いて、本実施形態では、インク吸い出しを開始してから第七規定時間が経過したら(S28のYes)、共通供給流路6Kの流路方向上流側から3番目に接続されている第二ヘッドユニット40K−2のインク吸引を停止させる(S29)。この第七規定時間は、第二ヘッドユニット40K−2が接続されている共通供給流路6Kの接続部8K−2まで比重ρ1の小さな交換後インクL1が充填され、かつ、第二個別供給流路7K−2及び第二ヘッドユニット40K−2内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第七規定時間が経過した時点で第二ヘッドユニット40K−2のインク吸引を停止させることで、第二ヘッドユニット40K−2のインクの入れ替えが終了しているにも関わらず第二ヘッドユニット40K−2から交換後インクL1が無駄に排出されてしまう事態が抑制される。
続いて、本実施形態では、インク吸い出しを開始してから第八規定時間が経過したら(S30のYes)、共通供給流路6Kの流路方向最下流に接続されている第一ヘッドユニット40K−1のインク吸引を停止させる(S31)。この第八規定時間は、共通供給流路6K内の全体に交換後インクL1が充填され、かつ、第一個別供給流路7K−1及び第一ヘッドユニット40K−1内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第八規定時間が経過した時点で第一ヘッドユニット40K−1のインク吸引を停止させることで、インクの入れ替え(交換)を完了することができる。
このようにしてインクの入れ替え(交換)が完了したら、その後、各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズル面から吸引キャップをデキャップする(S32)。そして、ワイパ部材によりノズル表面をワイピングしてノズル面に垂れたインクを払拭し(S33)、ノズル40nのメニスカスを形成させ、インク交換動作が完了する。
交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が小さい場合(ρ0>ρ1)における本実施形態のインク交換動作においては、共通供給流路6Kの相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応するヘッドユニット(図16において共通供給流路6Kの流路方向上流側のヘッドユニット)から排出されるインク量よりも、相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応するヘッドユニット(図16において共通供給流路6Kの流路方向下流側のヘッドユニット)から排出されるインク量の方が多くなる。このようなインク交換動作を行うことで、交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が小さい場合(ρ0>ρ1)、共通供給流路6K内の低い位置に寄せられる交換前インクL0の排出量を、共通供給流路6K内の高い位置に寄せられる交換後インクL1の排出量よりも多くできる。その結果、共通供給流路6K内における交換前インクL0がすべて排出されるまでに、交換後インクL1が排出されてしまう量を少なく抑えることができる。
また、交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が小さい場合(ρ0<ρ1)における本実施形態のインク交換動作では、相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応するヘッドユニット(図16において共通供給流路6Kの流路方向上流側のヘッドユニット)からインクを排出しない状態で、相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応するヘッドユニット(図16において共通供給流路6Kの流路方向下流側のヘッドユニット)からインクを排出する動作を含んでいる。そのため、すでにインクの入れ替えが終了しているヘッドユニットから交換後インクL1が無駄に排出される事態を抑制できる。
〔変形例1〕
次に、上述した実施形態におけるインク交換動作及びその構成についての一変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
図19は、本変形例1の共通供給流路6Kの一例を示す説明図である。
本変形例1では、図19に示すように、共通供給流路6Kがその流路方向下流側に向けて下方から上方へ傾斜している。そのため、共通供給流路6Kの内部では、図19に示すように、メインタンク5Kから供給されてくる比重ρ1の小さな交換後インクL1は共通供給流路6Kの流路方向下流側に寄せられ、比重ρ0の大きな交換前インクL0は、共通供給流路6Kの流路方向上流側に寄せられる。その結果、インクの吸い出しが進むにつれて、共通供給流路6Kの内部は、その流路方向上流端から順次、比重ρ0の大きな交換後インクL0が充填されていく。
交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が小さい場合(ρ0>ρ1)における本変形例1のインク交換動作の基本的な流れは、図17に示したフローチャートと同様である。
すなわち、まず、記録ヘッド部40Kに接続されている交換前のメインタンク5K’を交換後のインクの入ったメインタンク5Kに交換する(S1)。次に、各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズル面に対し、それぞれ個別の吸引キャップ46K−1,46K−2,46K−3,46K−4を密着させてキャッピングする(S2)。その後、吸引ポンプによって全吸引キャップ46K−1,46K−2,46K−3,46K−4内を負圧にし、全ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズルからインクの吸い出しを行う(S3)。
そして、インク吸い出しを開始してから第一規定時間が経過したら(S4のYes)、共通供給流路6Kの流路方向最下流側に接続されている第一ヘッドユニット40K−1のインク吸引を停止させる(S5)。この第一規定時間は、第一ヘッドユニット40K−1が接続されている共通供給流路6Kの接続部8K−1まで比重ρ1の小さな交換後インクL1が充填され、かつ、第一個別供給流路7K−1及び第一ヘッドユニット40K−1内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第一規定時間が経過した時点で第一ヘッドユニット40K−1のインク吸引を停止させることで、第一ヘッドユニット40K−1のインクの入れ替えが終了しているにも関わらず第一ヘッドユニット40K−1から交換後インクL1が無駄に排出されてしまう事態が抑制される。
続いて、インク吸い出しを開始してから第二規定時間が経過したら(S6のYes)、共通供給流路6Kの流路方向下流側から2番目に接続されている第二ヘッドユニット40K−2のインク吸引を停止させる(S7)。この第二規定時間は、第二ヘッドユニット40K−2が接続されている共通供給流路6Kの接続部8K−2まで比重ρ1の小さな交換後インクL1が充填され、かつ、第二個別供給流路7K−2及び第二ヘッドユニット40K−2内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第二規定時間が経過した時点で第二ヘッドユニット40K−2のインク吸引を停止させることで、第二ヘッドユニット40K−2のインクの入れ替えが終了しているにも関わらず第二ヘッドユニット40K−2から交換後インクL1が無駄に排出されてしまう事態が抑制される。
続いて、インク吸い出しを開始してから第三規定時間が経過したら(S8のYes)、共通供給流路6Kの流路方向下流側から3番目に接続されている第三ヘッドユニット40K−3のインク吸引を停止させる(S9)。この第三規定時間は、第三ヘッドユニット40K−3が接続されている共通供給流路6Kの接続部8K−3まで比重ρ1の小さな交換後インクL1が充填され、かつ、第三個別供給流路7K−3及び第三ヘッドユニット40K−3内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第三規定時間が経過した時点で第三ヘッドユニット40K−3のインク吸引を停止させることで、第三ヘッドユニット40K−3のインクの入れ替えが終了しているにも関わらず第三ヘッドユニット40K−3から交換後インクL1が無駄に排出されてしまう事態が抑制される。
続いて、インク吸い出しを開始してから第四規定時間が経過したら(S10のYes)、共通供給流路6Kの流路方向最上流に接続されている第四ヘッドユニット40K−4のインク吸引を停止させる(S11)。この第四規定時間は、共通供給流路6K内の全体に交換後インクL1が充填され、かつ、第四個別供給流路7K−4及び第四ヘッドユニット40K−4内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第四規定時間が経過した時点で第四ヘッドユニット40K−4のインク吸引を停止させることで、インクの入れ替え(交換)を完了することができる。
なお、メインタンク5Kと第四ヘッドユニット40K−4の接続部8K−4との流路長が長い場合、比重ρ0の大きな交換前インクL0は当該接続部8K−4よりもメインタンク5K側(当該接続部8K−4よりも共通供給流路6Kの流路方向上流側)に溜まる場合がある。このような場合には、インク交換動作の途中(終盤ごろ)に、共通供給流路6Kを振動させるなどして共通供給流路6K内のインクを攪拌させると、更に交換後インクL1の無駄な排出を抑制でき、インク交換動作に要する時間も更に少なくできる。
このようにしてインクの入れ替え(交換)が完了したら、その後、各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズル面から吸引キャップをデキャップする(S12)。そして、ワイパ部材によりノズル表面をワイピングしてノズル面に垂れたインクを払拭し(S13)、ノズル40nのメニスカスを形成させ、インク交換動作が完了する。
交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が小さい場合(ρ0>ρ1)における本変形例1のインク交換動作においては、共通供給流路6Kの相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応するヘッドユニット(図19において共通供給流路6Kの流路方向下流側のヘッドユニット)から排出されるインク量よりも、相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応するヘッドユニット(図19において共通供給流路6Kの流路方向上流側のヘッドユニット)から排出されるインク量の方が多くなる。このようなインク交換動作を行うことで、交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が小さい場合(ρ0>ρ1)、共通供給流路6K内の低い位置に寄せられる交換前インクL0の排出量を、共通供給流路6K内の高い位置に寄せられる交換後インクL1の排出量よりも多くできる。その結果、共通供給流路6K内における交換前インクL0がすべて排出されるまでに、交換後インクL1が排出されてしまう量を少なく抑えることができる。
特に、本変形例1では、比重ρ0の大きな交換前インクL0から比重ρ1の小さな交換後インクL1へ交換する場合、図19に示すように、共通供給流路6K内の流路方向下流側に向けて、共通供給流路6Kを下方から上方へ傾斜させる。これにより、比重ρ1の小さな交換後インクL1を共通供給流路6Kの流路方向下流側まで効率よく移送することができ、共通供給流路6K内のインク入れ替えを促進することができる。
また、交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が小さい場合(ρ0>ρ1)における本変形例1のインク交換動作では、相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応するヘッドユニット(図19において共通供給流路6Kの流路方向下流側のヘッドユニット)からインクを排出しない状態で、相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応するヘッドユニット(図19において共通供給流路6Kの流路方向上流側のヘッドユニット)からインクを排出する動作を含んでいる。そのため、すでにインクの入れ替えが終了しているヘッドユニットから交換後インクL1が無駄に排出される事態を抑制できる。
〔変形例2〕
次に、上述した実施形態におけるインク交換動作及びその構成についての他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
図20は、本変形例2の共通供給流路6Kの一例を示す説明図である。
本変形例2の共通供給流路6Kは、図20に示すように、共通供給流路6Kの流路方向中央付近が低く、共通供給流路6Kの流路方向両端部に向けて下方から上方へ傾斜している。そのため、共通供給流路6Kの内部では、図20に示すように、メインタンク5Kから供給されてくる比重ρ1の大きな交換後インクL1は共通供給流路6Kの流路方向中央側に寄せられ、比重ρ0の小さな交換前インクL0は、共通供給流路6Kの流路方向両端側に寄せられる。
図21は、交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が大きい場合(ρ0<ρ1)における本変形例2のインク交換動作の流れを示すフローチャートである。
まず、記録ヘッド部40Kに接続されている交換前のメインタンク5K’を交換後のインクの入ったメインタンク5Kに交換する(S41)。次に、各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズル面に対し、それぞれ個別の吸引キャップ46K−1,46K−2,46K−3,46K−4を密着させてキャッピングする(S42)。その後、吸引ポンプによって全吸引キャップ46K−1,46K−2,46K−3,46K−4内を負圧にし、全ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズルからインクの吸い出しを行う(S43)。
本変形例2では、図20に示すように、共通供給流路6Kの両端から中央部に向けて上方から下方へ傾斜している。そのため、共通供給流路6Kの内部では、図20に示すように、メインタンク5Kから供給されてくる比重ρ1の大きな交換後インクL1は共通供給流路6Kの流路方向中央側に寄せられ、比重ρ0の小さな交換前インクL0は、共通供給流路6Kの流路方向両端側に寄せられる。その結果、インクの吸い出しが進むにつれて、共通供給流路6Kの内部は、その流路方向中央から順次、比重ρ1の大きな交換後インクL1が充填されていく。
本変形例2では、インク吸い出しを開始してから第九規定時間が経過したら(S44のYes)、共通供給流路6Kの流路方向中央部に接続されている第二ヘッドユニット40K−2及び第三ヘッドユニット40K−3のインク吸引を停止させる(S45)。この第九規定時間は、これら2つのヘッドユニット40K−2,40K−3が接続されている共通供給流路6Kの接続部8K−2,8K−3まで比重ρ1の大きな交換後インクL1が充填され、かつ、対応する2つの個別供給流路7K−2,7K−3及びヘッドユニット40K−2,40K−3内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第九規定時間が経過した時点でこれら2つのヘッドユニット40K−2,40K−3のインク吸引を停止させることで、これら2つのヘッドユニット40K−2,40K−3のインクの入れ替えが終了しているにも関わらずこれらのヘッドユニット40K−2,40K−3から交換後インクL1が無駄に排出されてしまう事態が抑制される。
続いて、本変形例2では、インク吸い出しを開始してから第十規定時間が経過したら(S46のYes)、共通供給流路6Kの流路方向両端側に接続されている第一ヘッドユニット40K−1及び第四ヘッドユニット40K−4のインク吸引を停止させる(S47)。この第十規定時間は、共通供給流路6K内の全体に交換後インクL1が充填され、かつ、対応する個別供給流路7K−1,7K−4及びヘッドユニット40K−1,40K−4内のインクがすべて交換後インクL1に入れ替わる時間に設定される。このような第十規定時間が経過した時点でこれら2つのヘッドユニット40K−2,40K−3のインク吸引を停止させることで、インクの入れ替え(交換)を完了することができる。
このようにしてインクの入れ替え(交換)が完了したら、その後、各ヘッドユニット40K−1,40K−2,40K−3,40K−4のノズル面から吸引キャップをデキャップする(S48)。そして、ワイパ部材によりノズル表面をワイピングしてノズル面に垂れたインクを払拭し(S49)、ノズル40nのメニスカスを形成させ、インク交換動作が完了する。
なお、本変形例2において、交換前インクL0の比重ρ0よりも交換後インクL1の比重ρ1の方が小さい場合(ρ0>ρ1)におけるインク交換動作については、共通供給流路6Kの流路方向両端側に接続されている第一ヘッドユニット40K−1及び第四ヘッドユニット40K−1のインク吸引を先に停止させ、共通供給流路6Kの流路方向中央部に接続されている第二ヘッドユニット40K−2及び第三ヘッドユニット40K−3のインク吸引を後に停止させるようにすればよい。
また、上述した実施形態や変形例1,2において、複数の個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4間における共通供給流路6Kとの接続部の高低差を調整する調整手段を設けても良い。例えば、共通供給流路6Kの傾斜角度(共通供給流路6Kのインク流れ方向と水平方向とのなす角度)を変更するような調整手段を設ける。なお、本実施形態の個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4は、屈曲性のあるフッ素樹脂やテフロン樹脂からなる可撓性チューブで構成されている。そのため、このような調整手段によって共通供給流路6Kの傾斜角度を変化させる際、共通供給流路6Kに接続されている個別供給流路7K−1,7K−2,7K−3,7K−4が妨げになることはない。
このような調整手段を設けることで、例えば、共通供給流路6Kがその流路方向下流側に向けて上方から下方へ傾斜している図16の例において、交換前インクL0の比重ρ0あるいは交換後インクL1の比重ρ1に応じて、その共通供給流路6Kの傾斜を緩和させたり急にしたりすることができる。これにより、更に交換後インクL1の無駄な排出を抑制でき、インク交換動作に要する時間も更に少なくすることが可能となる。
また、このような調整手段を設けることで、例えば、インク交換動作の際に、共通供給流路6Kがその流路方向下流側に向けて上方から下方へ傾斜している図16の構成と、共通供給流路6Kがその流路方向下流側に向け下方から上方へ傾斜している図19の構成とを、適宜切り替えることができる。その結果、例えば、比重ρ0の小さい交換前インクL0から比重ρ1の大きな交換後インクL1へ交換する場合には(ρ0<ρ1)、図16の構成となるように共通供給流路6Kの傾斜角度を調整し、逆に、比重ρ0の大きな交換前インクL0から比重ρ1の小さな交換後インクL1へ交換する場合には(ρ0>ρ1)、図19の構成となるように共通供給流路6Kの傾斜角度を調整するということができる。これによれば、いずれの交換の場合でも、交換後インクL1を共通供給流路6Kの流路方向下流側まで効率よく移送することができ、共通供給流路6K内のインク入れ替えを促進することができる。
また、このような調整手段を設けることで、例えば、インク交換動作が完了した後、通常のインク供給動作(メインタンクから各ヘッドユニットへのインク供給動作)の際に、共通供給流路6Kの傾斜角度をゼロにする(共通供給流路6Kを水平にする)ということができる。交換後インクが固形分の沈降しやすい液体(例えば磁性体をもつ液体など)である場合、共通供給流路6Kを傾斜させた状態で放置すると、共通供給流路6Kの低い位置に交換後インクの固形分が沈降してしまうので、共通供給流路6Kを水平にすることが好ましい場合がある。
また、交換前後のインクL0,L1の比重ρ0,ρ1がほぼ同じである場合(ρ0=ρ1)、インク交換動作中に共通供給流路6Kの内部でインクの分離は起こりにくい。しかしながら、調整手段を設け、インク交換動作中に共通供給流路6Kを上下(振動)させるように共通供給流路6Kの傾斜角度を変化させて、共通供給流路6K内のインクを攪拌することで、交換後インクL1の無駄な排出を抑制でき、インク交換動作に要する時間も少なくすることが可能となる。
また、上述した実施形態及び変形例1、2においては、互いに比重の異なるインク同士の交換を例に挙げて説明したが、いずれか一方又は両方がインク以外の液体(画像形成装置の画像形成に用いられない液体)であってもよい。例えば、互いに比重の異なる洗浄液からインクへの交換、互いに比重の異なるインクから洗浄液への交換、互いに比重の異なる洗浄液から別の洗浄液への交換などであってもよい。
また、本実施形態では、液体を吐出する装置として、上述したインクジェット記録方式の画像形成装置を例に挙げて説明したが、本発明が適用可能な液体を吐出する装置はこれに限られない。すなわち、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる部、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
前記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。前記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体」は、液体吐出ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
また、「液体吐出ユニット」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である液体吐出ヘッドに、機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
液体吐出ユニットとして、本実施形態のように液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがあるが、そのほか、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものもある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものもある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものもある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
また、上述した実施形態は、液体吐出ヘッド内で液体を循環させて吐出に使用しなかった液体を回収するヘッド(いわゆる循環型ヘッド)にも適用可能である。その場合、個別回収流路を各液体吐出ヘッドに接続し、共通回収流路を各個別回収流路に接続することになる。液体を交換する際は、交換前の液体が回収流路に流れ込むと、交換後の液体と混ざり合ってしまうおそれがある。そのため、循環装置を停止させるなどして、できる限り回収流路に液体が流れ込まないようにすることが望ましい。
また、本明細書中の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、共通供給流路6Kから複数の個別供給流路を通じて複数の液体吐出ユニット(例えばヘッドユニット40−1〜40−4)へ液体(例えばインク)を供給し、各液体吐出ユニットから液体を吐出する装置(例えば画像形成装置100)であって、前記共通供給流路内、前記個別供給流路内及び前記液体吐出ユニット内における比重ρ0の大きな大比重液体(例えば交換前インクL0)を比重ρ1の小さな小比重液体(例えば交換前インクL1)へ交換するとき(ρ0>ρ1)、相対的に高い接続部8−1〜8−4に接続される個別供給流路7−1〜7−4に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量よりも、相対的に低い接続部8−1〜8−4に接続される個別供給流路7−1〜7−4に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量の方が多くなるように、液体交換動作(例えばインク交換動作)を行うことを特徴とするものである。
比重の大きな大比重液体を比重の小さな小比重液体へ交換する場合(ρ0>ρ1)、交換前の大比重液体が液体吐出ユニットから排出されるとともに、交換後の小比重液体が徐々に供給されることで、共通供給流路内の液体が交換前の大比重液体から交換後の小比重液体へと徐々に入れ替わっていく。このとき、共通供給流路内に交換前の大比重液体と交換後の小比重液体へとが混在する状況下であっても、交換後の小比重液体を無駄に排出させずに、交換前の大比重液体を優先的に排出させることが、重要となる。
上述した状況下になると、共通供給流路内では、交換前後の液体間の比重の違いにより、交換後の小比重液体は上方(高い位置)へ寄せられ、交換前の大比重液体は下方(低い位置)へ寄せられた状態になる。そのため、共通供給流路に対して各個別供給流路の接続される接続部に高低差が存在する場合(共通供給流路と複数の個別供給流路との接続部が重力方向における高さの異なる接続部を含んでいる場合)、交換前後の液体の入れ替わりの途中段階から、接続部が相対的に高い個別供給流路には交換後の小比重液体が供給され、交換後の小比重液体が無駄に排出される事態を招く。
本態様によれば、液体交換動作時に各個別供給流路の接続部に高低差が存在するとき、相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量よりも、相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量の方が多くなる。これにより、共通供給流路内の下方(低い位置)に寄せられる交換前の大比重液体の排出量が、共通供給流路内の上方(高い位置)に寄せられる交換後の小比重液体の排出量よりも多くなる。その結果、共通供給流路内における交換前の大比重液体がすべて排出されるまでに、交換後の小比重液体が排出されてしまう量を少なく抑えることができる。よって、交換前の液体と交換後の液体との間で比重が異なる場合でも、交換前の液体から交換後の液体へ入れ替えるまでに交換後の液体が無駄に消費されるのを抑制できる。
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記液体交換動作は、前記相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから液体を排出しない状態で、前記相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから液体を排出する動作を含んでいることを特徴とするものである。
これによれば、すでに液体の入れ替えが終了している液体吐出ユニットから交換後の液体が無駄に排出される事態を抑制でき、交換後の液体の無駄な消費を更に抑制できる。
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、比重ρ0の小さな小比重液体(例えば交換前インクL0)を比重ρ1の大きな大比重液体(例えば交換前インクL1)へ交換するとき(ρ0<ρ1)、前記共通供給流路の相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量よりも、相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量の方が多くなるように、液体交換動作を行うことを特徴とするものである。
比重の小さな小比重液体を比重の大きな大比重液体へ交換する場合(ρ0<ρ1)、共通供給流路内では、交換前後の液体間の比重の違いにより、交換後の大比重液体は下方(低い位置)へ寄せられ、交換前の小比重液体は上方(高い位置)へ寄せられた状態になる。そのため、共通供給流路に対して各個別供給流路の接続される接続部に高低差が存在する場合(共通供給流路と複数の個別供給流路との接続部が重力方向における高さの異なる接続部を含んでいる場合)、交換前後の液体の入れ替わりの途中段階から、接続部が相対的に低い個別供給流路には交換後の大比重液体が供給され、交換後の大比重液体が無駄に排出される事態を招く。
本態様によれば、液体交換動作時に各個別供給流路の接続部に高低差が存在するとき、相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量よりも、相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量の方が多くなる。これにより、共通供給流路内の上方(高い位置)に寄せられる交換前の小比重液体の排出量が、共通供給流路内の下方(低い位置)に寄せられる交換後の大比重液体の排出量よりも多くなる。その結果、共通供給流路内における交換前の小比重液体がすべて排出されるまでに、交換後の大比重液体が排出されてしまう量を少なく抑えることができる。よって、交換前の液体と交換後の液体との間で比重が異なる場合でも、交換前の液体から交換後の液体へ入れ替えるまでに交換後の液体が無駄に消費されるのを抑制できる。
[第4態様]
第4態様は、共通供給流路から複数の個別供給流路を通じて複数の液体吐出ユニットへ液体を供給し、各液体吐出ユニットから液体を吐出する装置であって、前記共通供給流路内、前記個別供給流路内及び前記液体吐出ユニット内における比重の小さな小比重液体を比重の大きな大比重液体へ交換するとき、相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量よりも、相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量の方が多くなるように、液体交換動作を行うことを特徴とするものである。
比重の小さな小比重液体を比重の大きな大比重液体へ交換する場合(ρ0<ρ1)、交換前の小比重液体が液体吐出ユニットから排出されるとともに、交換後の大比重液体が徐々に供給されることで、共通供給流路内の液体が交換前の小比重液体から交換後の大比重液体へと徐々に入れ替わっていく。このとき、共通供給流路内に交換前の小比重液体と交換後の大比重液体へとが混在する状況下であっても、交換後の大比重液体を無駄に排出させずに、交換前の小比重液体を優先的に排出させることが、重要となる。
上述した状況下になると、共通供給流路内では、交換前後の液体間の比重の違いにより、交換後の大比重液体は下方(低い位置)へ寄せられ、交換前の小比重液体は上方(高い位置)へ寄せられた状態になる。そのため、共通供給流路に対して各個別供給流路の接続される接続部に高低差が存在する場合(共通供給流路と複数の個別供給流路との接続部が重力方向における高さの異なる接続部を含んでいる場合)、交換前後の液体の入れ替わりの途中段階から、接続部が相対的に低い個別供給流路には交換後の大比重液体が供給され、交換後の大比重液体が無駄に排出される事態を招く。
本態様によれば、液体交換動作時に各個別供給流路の接続部に高低差が存在するとき、相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量よりも、相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量の方が多くなる。これにより、共通供給流路内の上方(高い位置)に寄せられる交換前の小比重液体の排出量が、共通供給流路内の下方(低い位置)に寄せられる交換後の大比重液体の排出量よりも多くなる。その結果、共通供給流路内における交換前の小比重液体がすべて排出されるまでに、交換後の大比重液体が排出されてしまう量を少なく抑えることができる。よって、交換前の液体と交換後の液体との間で比重が異なる場合でも、交換前の液体から交換後の液体へ入れ替えるまでに交換後の液体が無駄に消費されるのを抑制できる。
[第5態様]
第5態様は、第3又は第4態様において、前記液体交換動作は、前記相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから液体を排出しない状態で、前記相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから液体を排出する動作を含んでいることを特徴とするものである。
これによれば、すでに液体の入れ替えが終了している液体吐出ユニットから交換後の液体が無駄に排出される事態を抑制でき、交換後の液体の無駄な消費を更に抑制できる。
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第5態様のいずれかにおいて、前記接続部の高低差を調整する調整手段を有するものである。
このような調整手段を設けることで、更に交換後の液体の無駄な排出を抑制でき、液体交換動作に要する時間も更に少なくすることが可能となる。
[第7態様]
第7態様は、共通供給流路から複数の個別供給流路を通じて複数の液体吐出ユニットへ液体を供給し、各液体吐出ユニットから液体を吐出する装置の液体交換方法であって、前記共通供給流路内、前記個別供給流路内及び前記液体吐出ユニット内における比重の大きな大比重液体を比重の小さな小比重液体へ交換するとき、相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量よりも、相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量の方を多くすることを特徴とするものである。
比重の大きな大比重液体を比重の小さな小比重液体へ交換する場合(ρ0>ρ1)、交換前の大比重液体が液体吐出ユニットから排出されるとともに、交換後の小比重液体が徐々に供給されることで、共通供給流路内の液体が交換前の大比重液体から交換後の小比重液体へと徐々に入れ替わっていく。このとき、共通供給流路内に交換前の大比重液体と交換後の小比重液体へとが混在する状況下であっても、交換後の小比重液体を無駄に排出させずに、交換前の大比重液体を優先的に排出させることが、重要となる。
上述した状況下になると、共通供給流路内では、交換前後の液体間の比重の違いにより、交換後の小比重液体は上方(高い位置)へ寄せられ、交換前の大比重液体は下方(低い位置)へ寄せられた状態になる。そのため、共通供給流路に対して各個別供給流路の接続される接続部に高低差が存在する場合(共通供給流路と複数の個別供給流路との接続部が重力方向における高さの異なる接続部を含んでいる場合)、交換前後の液体の入れ替わりの途中段階から、接続部が相対的に高い個別供給流路には交換後の小比重液体が供給され、交換後の小比重液体が無駄に排出される事態を招く。
本態様によれば、液体交換動作時に各個別供給流路の接続部に高低差が存在するとき、相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量よりも、相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量の方が多くなる。これにより、共通供給流路内の下方(低い位置)に寄せられる交換前の大比重液体の排出量が、共通供給流路内の上方(高い位置)に寄せられる交換後の小比重液体の排出量よりも多くなる。その結果、共通供給流路内における交換前の大比重液体がすべて排出されるまでに、交換後の小比重液体が排出されてしまう量を少なく抑えることができる。よって、交換前の液体と交換後の液体との間で比重が異なる場合でも、交換前の液体から交換後の液体へ入れ替えるまでに交換後の液体が無駄に消費されるのを抑制できる。
[第8態様]
第8態様は、第7態様において、前記大比重液体を前記小比重液体へ交換するとき、前記共通供給流路内の液体流れ方向下流側に向けて、前記共通供給流路を下方から上方へ傾斜させることを特徴とするものである。
これによれば、比重の小さな交換後の液体(小比重液体)を共通供給流路の流路方向下流側まで効率よく移送することができ、共通供給流路内の液体の入れ替えを促進することができる。
[第9態様]
第9態様は、共通供給流路から複数の個別供給流路を通じて複数の液体吐出ユニットへ液体を供給し、各液体吐出ユニットから液体を吐出する装置の液体を交換する液体交換方法であって、前記共通供給流路内、前記個別供給流路内及び前記液体吐出ユニット内における比重の小さな小比重液体を比重の大きな大比重液体へ交換するとき、相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量よりも、相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量の方を多くすることを特徴とするものである。
比重の小さな小比重液体を比重の大きな大比重液体へ交換する場合(ρ0<ρ1)、交換前の小比重液体が液体吐出ユニットから排出されるとともに、交換後の大比重液体が徐々に供給されることで、共通供給流路内の液体が交換前の小比重液体から交換後の大比重液体へと徐々に入れ替わっていく。このとき、共通供給流路内に交換前の小比重液体と交換後の大比重液体へとが混在する状況下であっても、交換後の大比重液体を無駄に排出させずに、交換前の小比重液体を優先的に排出させることが、重要となる。
上述した状況下になると、共通供給流路内では、交換前後の液体間の比重の違いにより、交換後の大比重液体は下方(低い位置)へ寄せられ、交換前の小比重液体は上方(高い位置)へ寄せられた状態になる。そのため、共通供給流路に対して各個別供給流路の接続される接続部に高低差が存在する場合(共通供給流路と複数の個別供給流路との接続部が重力方向における高さの異なる接続部を含んでいる場合)、交換前後の液体の入れ替わりの途中段階から、接続部が相対的に低い個別供給流路には交換後の大比重液体が供給され、交換後の大比重液体が無駄に排出される事態を招く。
本態様によれば、液体交換動作時に各個別供給流路の接続部に高低差が存在するとき、相対的に低い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量よりも、相対的に高い接続部に接続される個別供給流路に対応する液体吐出ユニットから排出される液体量の方が多くなる。これにより、共通供給流路内の上方(高い位置)に寄せられる交換前の小比重液体の排出量が、共通供給流路内の下方(低い位置)に寄せられる交換後の大比重液体の排出量よりも多くなる。その結果、共通供給流路内における交換前の小比重液体がすべて排出されるまでに、交換後の大比重液体が排出されてしまう量を少なく抑えることができる。よって、交換前の液体と交換後の液体との間で比重が異なる場合でも、交換前の液体から交換後の液体へ入れ替えるまでに交換後の液体が無駄に消費されるのを抑制できる。
[第10態様]
第10態様は、第9態様において、前記小比重液体を前記大比重液体へ交換するとき、前記共通供給流路内の液体流れ方向下流側に向けて、前記共通供給流路を上方から下方へ傾斜させることを特徴とするものである。
これによれば、比重の大きな交換後の液体(大比重液体)を共通供給流路の流路方向下流側まで効率よく移送することができ、共通供給流路内の液体の入れ替えを促進することができる。