以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。なお、本発明は、その適用分野がプリンタに限定されるものではなく、複写機、ファクシミリ、複写機能及びFAX機能を有する複合機などにも、本発明の適用が可能である。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を作像する作像手段の一部を構成する電子写真ユニット1Y,1M,1C,1Kを備えている。また、転写ユニット30、光書込ユニット80、定着装置90、給送カセット100、レジストローラ対101なども備えている。
Y,M,C,K用の電子写真ユニット1Y,1M,1C,1Kは、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための電子写真ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、帯電装置6K、現像装置8K等を有している。また、除電装置等も有している。これらの装置を共通の保持体に保持させた状態でプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらの装置を同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成されたものであって、駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。
このプリンタでは、感光体2Kの表面をトナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニット80から発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、Kトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に一次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、一次転写工程(後述する一次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像剤担持体たる現像ロール9Kを収容する現像部12Kと、K現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュー部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュー部材のそれぞれは、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュー部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュー軸線方向の両端部には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュー部材10Kは、螺旋羽根内に保持しているK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュー部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュー部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュー部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュー部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュー部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁にはトナー濃度センサーが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサーとしては、透磁率センサーからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサーは、Kトナー濃度を検知していることになる。
このプリンタは、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するためのY,M,C,Kトナー補給手段を備えている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサーからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサーからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給され、K現像剤のKトナー濃度が所定の範囲内に維持される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュー部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュー部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像の電位よりも絶対値が大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも絶対値が小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる地肌ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び地肌ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像を現像してトナー像にする。
図1において、Y,M,C用の電子写真ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の電子写真ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,2M,2C上にY,M,Cトナー像が形成される。電子写真ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。作像手段の一部を構成する光書込ユニット80は、パーソナルコンピューター等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,2M,2C,2Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,2M,2C,2K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。
なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、ポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
電子写真ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、Y,M,C,K用の一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kなどを有している。また、ベルトクリーニング装置37、二次転写電源45、ニップ形成ユニット38なども有している。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kによって張架されている。そして、駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
Y,M,C,K用の一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、Y,M,C,K用の感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kには、一次転写電源から個別に出力される一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,2M,2C,2K上のY,M,C,Kトナー像と、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kとの間に一次転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の一次転写ニップに進入する。そして、一次転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の一次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,2C,2K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。なお、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30において、中間転写ベルト31の下方には、ニップ形成ユニットが配設されている。このニップ形成ユニット38は、二次転写ニップ裏打ちローラ36、分離ローラ44、テンションローラ43、クリーニングバックアップローラ39、ニップ形成体たる二次転写ベルト41、ベルトクリーナー42、光学センサーユニット40などを具備している。
無端状の二次転写ベルト41は、そのループ内側に配設された二次転写ニップ裏打ちローラ36、分離ローラ44、テンションローラ43、及びクリーニングバックアップローラ39によってテンション張架された状態で、図中時計回り方向に無端移動する。そして、中間転写ベルト31のおもて面(ループ外周面)における周方向の全域のうち、二次転写裏面ローラ33に対する掛け回し箇所に当接して二次転写ニップを形成している。
二次転写ベルト41のループ内に配設された二次転写ニップ裏打ちローラ36は接地されているのに対し、中間転写ベルト31のループ内に配設された二次転写裏面ローラ33には、二次転写電源45から出力される二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写裏面ローラ33と、二次転写ニップ裏打ちローラ36との間に、マイナス極性のトナーを二次転写裏面ローラ33側から二次転写ニップ裏打ちローラ36側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。
転写ユニット30の下方には、記録シートPを複数枚重ねたシート束の状態で収容している給送カセット100が配設されている。この給送カセット100は、シート束の一番上の記録シートPに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給送路に向けて送り出す。
給送路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。給送路で搬送されている記録シートPの先端は、このレジストローラ対101における二つのローラの当接によるレジストニップよりも僅かに上流に配設されたレジストセンサー(後述する507)に検知される。この検知のタイミングから所定時間経過後に記録シートPの搬送が一時停止される。これにより、記録シートPは、自らの先端をレジストニップに突き当てた状態で僅かに撓むことで、スキューが補正される。その後、記録シートPを二次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングでレジストローラ対101が回転駆動して、記録シートPを二次転写ニップに向けて送り出す。
二次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括二次転写されてフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPは、二次転写ニップを通過すると、中間転写ベルト31から曲率分離する。更に、二次転写ベルト41を掛け回している分離ローラ44の曲率によって二次転写ベルト41から曲率分離する。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
二次転写ニップよりもシート搬送方向の下流側には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。二次転写ニップを通過して定着装置90内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録シートPは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
このプリンタは、モノクロ画像を形成する場合に、転写ユニット30におけるY,M,C用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を支持している支持板の姿勢をソレノイド等の駆動によって変化させる。これにより、Y,M,C用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を、感光体2(Y,M,C)から遠ざけて、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2(Y,M,C)から離間させる。このようにして、中間転写ベルト31をブラック用の感光体2Kだけに当接させた状態で、Y,M,C,K用の電子写真ユニット1(Y,M,C,K)のうち、ブラック用の電子写真ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像をブラック用の感光体2K上に形成する。
図3は、二次転写電源45及び電源制御部200の電気回路の要部を、二次転写裏面ローラ33や二次転写ニップ裏打ちローラ36などとともに示すブロック図である。二次転写電源45は、直流電源110、着脱可能に構成された交流電源140などを有している。
直流電源110は、中間転写ベルト31の表面上のトナーに対して二次転写ニップ内でベルト側から記録シート側に向かう静電気力を付与するための直流電圧を出力するための電源である。そして、直流出力制御部111、直流駆動部112、直流電圧用トランス113、直流出力検知部114、出力異常検知部115、電気接続部221などを具備している。
交流電源140は、二次転写ニップ内に交番電界を形成するための交流電圧を出力する電源である。そして、交流出力制御部141、交流駆動部142、交流電圧用トランス143、交流出力検知部144、除去部145、出力異常検知部146、電気接続部242と、電気接続部243などを具備している。
制御手段たる電源制御部200は、二次転写電源からの出力を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを有する制御装置からなる。直流出力制御部111には、電源制御部200から、直流電圧の出力の大きさを制御するDC_PWM信号が入力される。更に、直流出力検知部114によって検知された直流電圧用トランス113の出力値も入力される。そして、直流出力制御部111は、入力されたDC_PWM信号のデューティー比及び直流電圧用トランス113の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、直流電圧用トランス113の出力値をDC_PWM信号で指示された出力値にするように、直流駆動部112を介して直流電圧用トランス113の駆動を制御する。
直流駆動部112は、直流出力制御部111からの制御に従って、直流電圧用トランス113を駆動する。また、直流電圧用トランス113は、直流駆動部112によって駆動され、負極性の直流の高電圧出力を行う。なお、交流電源140が接続されていない場合には、電気接続部221と二次転写裏面ローラ33とがハーネス301によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に直流電圧を出力(印加)する。一方、交流電源140が接続されている場合、電気接続部221と電気接続部242とがハーネス302によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス302を介して交流電源140に直流電圧を出力する。
直流出力検知部114は、直流電圧用トランス113からの直流高電圧の出力値を検知し、直流出力制御部111に出力する。また、直流出力検知部114は、検知した出力値をFB_DC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性が落ちないように、電源制御部200においてDC_PWM信号のデューティーを制御させるためである。本プリンタでは、二次転写電源45の本体に対して交流電源140が着脱可能であるため、交流電源140が接続されている場合と接続されていない場合とで、高電圧出力の出力経路のインピーダンスが変化する。このため、直流電源110が定電圧制御を行って直流電圧を出力した場合、交流電源140の有無に応じて出力経路中のインピーダンスが変化することにより分圧比が変化する。更に、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧が変化してしまうので、交流電源140の有無に応じて転写性が変化してしまう。
そこで、このプリンタでは、直流電源110が定電流制御を行って直流電圧を出力し、交流電源140の有無に応じて出力電圧を変化させるようになっている。これにより、出力経路中のインピーダンスが変化しても、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができ、交流電源140の有無によらず転写性を一定に保つことができる。更に、DC_PWM信号の値を変更せずに交流電源140を着脱することが可能になる。このように本プリンタでは、直流電源110を定電流制御するようになっているが、次のような構成を採用してもよい。即ち、交流電源140の着脱時にDC_PWM信号の値を変更するなどして、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができれば、直流電源110を定電圧制御する構成を採用してもよい。
出力異常検知部115は、直流電源110の出力ライン上に配置されており、電線の地絡等によって出力異常が発生した際には、リークなどの出力異常を示す信号を電源制御部200に出力する。これにより、電源制御部200による直流電源110からの高圧出力を停止するための制御を実施することが可能になる。
交流出力制御部141には、電源制御部200から、交流電圧の出力の大きさを制御するAC_PWM信号や、交流出力検知部144によって検知された交流電圧用トランス143の出力値が入力される。そして、交流出力制御部141は、入力されたAC_PWM信号のデューティー比、及び交流電圧用トランス143の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、交流電圧用トランス143の出力値がAC_PWM信号で指示された出力値となるように、交流駆動部142を介して交流電圧用トランス143の駆動を制御する。
交流駆動部142には、交流電圧の出力周波数を制御するAC_CLK信号が入力される。そして、交流駆動部142は、交流出力制御部141からの制御及びAC_CLK信号に基づいて、交流電圧用トランス143を駆動する。交流駆動部142は、AC_CLK信号に基づいて交流電圧用トランス143を駆動することで、交流電圧用トランス143によって生成される出力波形を、AC_CLK信号で指示された任意の周波数に制御することができる。
交流電圧用トランス143は、交流駆動部142によって駆動されて交流電圧を生成し、生成した交流電圧と直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧とを重畳して重畳電圧を生成する。交流電源140が接続されている場合、即ち、電気接続部243と二次転写裏面ローラ33とがハーネス301で電気的に接続されている場合、交流電圧用トランス143は、生成した重畳電圧を、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に印加する。なお、交流電圧用トランス143は、交流電圧を生成しない場合には、直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧を、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に出力(印加)する。二次転写裏面ローラ33に出力された電圧(重畳電圧又は直流電圧)は、その後、二次転写ニップ裏打ちローラ36を介して直流電源110内に帰還する。
交流出力検知部144は、交流電圧用トランス143の交流電圧の出力値を検知して交流出力制御部141に出力する。また、検出した出力値をFB_AC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性を低下させないように、電源制御部200においてAC_PWM信号のデューティを制御するためである。なお、交流電源140は、定電圧制御を行うものであるが、定電流制御を行うものを用いてもよい。また、交流電圧用トランス143(交流電源140)が生成する交流電圧の波形については、正弦波、矩形波の何れであってもよいが、本プリンタでは、短パルス状矩形波を採用している。交流電圧の波形を短パルス状矩形波にすることで、より画像品質の向上を図ることが可能になるからである。
なお、二次転写電源45は、出力電流値を所定の目標電流値と一致させるように出力電圧値を調整する定電流制御方式で直流電圧を出力する。また、ピークツウピーク値Vppを所定の目標値と一致させるように振幅を調整する定電圧制御方式で交流電圧を出力する。
特許文献1に記載のように、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いて二次転写ニップに交番電界を形成すれば、表面凹凸に富んだ記録シートの表面の凹部にトナーを良好に二次転写し得ることが既に知られている。その原理は、次のようなものであることも知られている。即ち、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いた場合、二次転写ニップ内において、中間転写ベルト上のトナー像を構成するトナーのうち、ごく小数のトナー粒子だけしか、ベルト表面からシート表面凹部内に転移させることができない。重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いても、二次転写ニップ内にトナー像が進入してから、二次転写バイアスの交流成分における始めの一周期が経過するまでの間は、同様にして、ごく少量のトナー粒子だけしかシート表面凹部内に転移させることができない。ところが、次の一周期が経過すると、ベルト表面からシート表面凹部内に転移するトナー粒子の量が少し増加する。具体的には、まず、次の一周期の前半において、シート表面凹部内のトナー粒子がベルト表面に戻る際に、それまでベルト表面に付着したままになっていたトナー粒子にぶつかってそのトナー粒子と他のトナー粒子やベルト表面との付着力を弱める。そして、後半において、前述のようにして付着力を弱めたトナー粒子が、ベルト表面に戻ったトナー粒子とともに、ベルト表面からシート表面凹部内に転移するのである。更に次の一周期でも、同様の現象によってシート表面凹部内に転移するトナー粒子の数が更に増加する。二次転写ニップ内において、トナー粒子がベルト表面とシート表面凹部内とを何度も往復移動する過程で、シート表面凹部内に転移するトナー粒子の数が徐々に増加していく。そして、最終的にトナー像が二次転写ニップを通過する頃には、シート表面凹部内に十分量のトナー粒子が転移しているのである。
図1において、ニップ形成ユニット38の光学センサーユニット40は、四つの反射型光学センサーを具備しており、二次転写ベルト41のおもて面に対して所定の間隙を介してそれら反射型光学センサーを対向させている。それらの反射型光学センサーは、二次転写ベルト41や、二次転写ニップで中間転写ベルト31から二次転写ベルト41に二次転写されたテストトナー像の光学特性を検知する。これにより、二次転写ベルト41上に二次転写されたテストトナー像の位置を検知したり、テストトナー像の画像濃度(単位面積あたりのトナー付着量)を検知したりする。
なお、後述する理由により、このプリンタにおいては、中間転写ベルト31として暗い色調の弾性ベルトからなるものを用いていることにより、中間転写ベルト31上におけるトナー像の光学特性を良好に検知することができない。そこで、テストトナー像を暗い色調の中間転写ベルト31から明るい色調の二次転写ベルト41に二次転写し、二次転写ベルト41上のテストトナー像の光学特性を光学センサーユニット40によって検知するようになっている。
図4は、このプリンタの電気回路の要部を示すブロック図である。同図において、CPU300a、RAM300b、ROM300c、フラッシュメモリー300dなどを具備するメイン制御部300は、ROM300cに記憶しているプログラムに基づいて、プリンタ内の各機器の駆動を制御したり、各種の演算処理をしたりする。このメイン制御部300には、レジストセンサー506、レジストモーター507、Y,M,C,K用の電子写真ユニット1Y,1M,1C,1K、転写ユニット30、書込制御部505、電源制御部200などが接続されている。また、書込制御部505を介して光書込ユニット80が接続されている。また、電源制御部200を介して、環境センサー50、操作表示部501、帯電電源ユニット508、現像電源ユニット503、一次転写電源ユニット504、及び二次転写電源45が接続されている。
レジストモーター507は、レジストローラ対101の駆動源となるモーターである。また、書込制御部505は、外部のパーソナルコンピューターやスキャナーから送られている画像データに基づいて、光書込ユニット80の駆動を制御したり、画像データをメイン制御部300に送ったりする。
環境センサー50は、機内の温度及び湿度を検知して、その検知結果を電源制御部200に送る。電源制御部200は、環境センサー50から送られてくる温度の検知結果、及び湿度の検知結果に基づいて、絶対湿度を算出する。
操作表示部501は、タッチパネルや複数の操作キーからなり、ユーザーによるタッチパネルに対するタッチ操作を受け付けたり、操作キーに対するキー操作を受け付けたり、タッチパネルに画像を表示したりする。
帯電電源ユニット508は、Y,M,C,K用の帯電装置の帯電ローラに印加される帯電バイアスを色ごとに個別に出力するものである。これらの帯電バイアスの出力値は、電源制御部200によって個別に制御される。
現像電源ユニット503は、Y,M,C,K用の現像装置の現像スリーブに印加される現像バイアスを色ごとに個別に出力するものである。これらの現像バイアスの出力値は、電源制御部200によって個別に制御される。
一次転写電源ユニット504は、Y,M,C,K用の一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに印加される一次転写バイアスを色ごとに個別に制御するものである。これらの一次転写バイアスの出力値は、電源制御部200によって個別に制御される。
メイン制御部300は、主電源の投入時や、所定時間経過した後の待機時、所定枚数以上のプリントを出力した後の待機時など、所定のタイミングで、プロセスコントロール処理を実施する。図5は、プロセスコントロールにおける処理フローを示すフローチャートである。
前述の所定のタイミングが到来すると、メイン制御部300は、まず、通紙枚数、印字率、温度、湿度などの環境情報を取得する(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。次に、電子写真ユニット1Y,1M,1C,1Kにおけるそれぞれの現像特性を把握する。具体的には、それぞれの色について、現像ガンマγと現像開始電圧を算出する(S2)。
その算出過程は次の通りである。即ち、まず、感光体2Y,2M,2C,2Kを回転させながらそれぞれを一様に帯電せしめる。この帯電については、帯電バイアスVcとして通常のプリント時における一様な値(例えば−700V)とは異なり、その絶対値を徐々に大きくしていく。光書込ユニット80によるレーザー光の走査によって感光体2Y,2M,2C,2Kに、パッチ状のYテストトナー像,Mテストトナー像、Cテストトナー像、Kテストトナー像用の静電潜像を形成する。それらをY,M,C,K用の現像装置によって現像することで、感光体2Y,2M,2C,2KにYパッチパターン像YPP,Mパッチパターン像MPP,Cパッチパターン像CPP,Kパッチパターン像KPPを形成する。なお、現像のときに、メイン制御部300は、Y,M,C,K用の現像スリーブに印加する現像バイアスVbの絶対値も徐々に大きくしていく。現像バイアスVb、帯電バイアスVcは、何れも負極性の直流電圧からなる。
Y,M,C,K用のパッチパターン像(YPP,MPP,CPP,KPP)は、感光体2Y,2M,2C,2Kから中間転写ベルト31を介して二次転写ベルト41に二次転写される。図6に示されるように、互いに重なり合わずにベルト幅方向に並ぶように二次転写される。具体的には、Yパッチパターン像YPPは、二次転写ベルト41の幅方向における一端部に転写される。また、Mパッチパターン像MPPは、ベルト幅方向において、Yパッチパターン像YPPよりも少し中央側にずれた位置に転写される。また、Kパッチパターン像KPPは、二次転写ベルト41の幅方向における他端部に二次転写される。また、Cパッチパターン像CPPは、ベルト幅方向において、Kパッチパターン像KPPよりも少し中央側にずれた位置に二次転写される。
光学センサーユニット40は、互いにベルト幅方向の異なる位置でベルトの光反射特性を検知するY反射型光学センサー40Y、M反射型光学センサー40M、C反射型光学センサー40C、K反射型光学センサー40Kを有している。これら四つ反射型光学センサーのうち、K反射型光学センサー40Kは、ブラックトナーの付着に起因するベルト表面の光反射特性の変化を検知するように、正反射光だけを検知するものを採用している。これに対し、その他の反射型光学センサーは、Y,M又はCトナーの付着に起因するベルト表面の光反射特性の変化を検知するように、正反射光と拡散反射光との両方を検知するタイプのものである。
Y反射型光学センサー40Yは、二次転写ベルト41の幅方向の一端部に形成されたYパッチパターン像YPPの複数のYテストトナー像におけるトナー付着量を検知する。また、M反射型光学センサー40Mは、二次転写ベルト41におけるYパッチパターン像YPPの隣りに形成されたMパッチパターン像MPPの複数のMテストトナー像におけるトナー付着量を検知する。また、K反射型光学センサー40Kは、二次転写ベルト41の幅方向の他端部に形成されたKパッチパターン像KPPの複数のKテストトナー像におけるトナー付着量を検知する。また、C反射型光学センサー40Cは、二次転写ベルト41におけるKパッチパターン像KPPの隣りに形成されたKパッチパターン像KPPの複数のKテストトナー像におけるトナー付着量を検知する。
メイン制御部300は、光学センサーユニット40の四つの反射型光学センサーから順次送られてくる出力信号に基づいて、各色のテストトナー像の光反射率を演算し、演算結果に基づいてトナー付着量を求めてRAM300bに格納していく。なお、二次転写ベルト41の走行に伴って光学センサーユニット40との対向位置を通過した各色のテストトナー像は、ベルトクリーナー42によって二次転写ベルト41から除去される。
メイン制御部300は、次に、RAM300bに格納した画像濃度データ(トナー付着量)と、別にRAM300bに格納した露光部電位(潜像電位)のデータとから、図7に示される直線近似式(Y=a×Vb+b)を算出する。同図の2次元座標において、x軸は、露光部電位Vlから、そのときに印加した現像バイアスVbを減じた値、すなわち現像ポテンシャル(Vl−Vb)を示している。Y軸は、単位面積当たりのトナー付着量(y)を示す。同図には、テストトナー像の数に対応した数だけ、X−Y平面上にデータがプロットされる。そのプロットされた複数のデータに基づいて、直線近似を施すX−Y平面上の区間を決定する。その後、その区間内で、最小自乗法によって直線近似式(y=a×Vb+b)を得る。このとき直線近似式に基づいて、現像ガンマγと現像開始電圧Vkとが算出される。現像ガンマγは直線近似式の傾きとして算出され(γ=a)、現像開始電圧Vkは直線近似式とX軸との交点として算出される(Vk=−b/a)。こうして、Y,M,C,Kの電子写真ユニット1Y,1C,1M,1Kの現像特性が算出される(S2)。
次に、求められた現像特性に基づいて、帯電電位(地肌部電位)Vdの目標値(目標帯電電位)と、露光部電位Vlの目標値(目標露光部電位)と、現像バイアスVbとが求められる(S3)。具体的には、目標帯電電位や目標露光部電位は、現像ガンマγと、帯電電位Vdや露光部電位Vlとの関係を予め定めたデータテーブルに基づいて求められる。これにより、現像ガンマγに適した目標帯電電位及び目標露光部電位を選択することができる。また、現像バイアスVbは、次のようにして求められる。即ち、現像ガンマγと現像開始電圧Vkとの組み合わせによって最大トナー付着量を得るための現像ポテンシャルを求め、その現像ポテンシャルを得ることができる現像バイアスVbを求める。そして、その現像バイアスVbと地肌ポテンシャルとに基づいて、目標帯電電位が求められる。現像ローラの現像スリーブの表面は、現像バイアスVbとほぼ同じ値になることから、感光体の表面が目標帯電電位に帯電し、適切に露光していれば、狙いの現像ポテンシャルや地肌ポテンシャルを得ることができる。
メイン制御部300は、次に、帯電バイアスVcを決定する。具体的には、目標帯電電位が得られる帯電バイアスVcは、感光体表面層の摩耗量や、環境に影響される帯電ローラの電気抵抗などに応じて変化する。そこで、メイン制御部300は、絶対湿度及び感光体走行距離の組み合わせから、目標帯電電位を得ることが可能な帯電バイアスVcを求めるためのアルゴリズムを記憶している。このアルゴリズムは、予めの実験に基づいて構築されたものである。そして、環境センサー50による温湿度の検知結果、及びRAMに記憶している感光体走行距離の組み合わせにより、目標帯電電位を得ることが可能な帯電バイアスVcを、アルゴリズムを用いて求める。
このようなプロセスコントロール処理を定期的に実施することで、環境変動にかかわらず、長期間に渡って安定した画像濃度で画像を形成することができる。
複数の記録シートPに対して画像を連続的に形成する連続プリントジョブにおいては、長時間に渡ると、現像装置の現像剤中のトナー帯電量(Q/M)が連続プリントジョブにおける平均出力画像面積率に応じて変化してくる。具体的には、平均出力画像面積率が比較的高くなると、単位時間あたりにおけるトナー補給量が比較的多くなって、現像装置内で補給から現像に寄与するまでのトナーの平均滞留時間が比較的短くなる。すると、トナー帯電量(Q/M)が比較的低くなってトナーの磁性キャリアに対する付着力を比較的弱くすることから、現像装置の現像能力が比較的高くなって画像濃度を上昇させる。
一方、平均出力画像面積率が比較的低くなると、単位時間あたりにおけるトナー補給量が比較的少なくなって、現像装置内で補給から現像に寄与するまでのトナーの平均滞留時間が比較的長くなる。すると、トナー帯電量(Q/M)が比較的高くなってトナーの磁性キャリアに対する付着力を比較的強くすることから、現像装置の現像能力が比較的低くなって画像濃度を低下させる。
このような平均出力画像面積率の違いによる画像濃度の変動を抑えるために、メイン制御部300は、連続プリントジョブ中には、Y,M,C,Kの各色について、Vtref(現像剤の目標トナー濃度)を調整するVtref調整処理を実施する。このVtref調整処理においては、所定枚数のプリントを行う毎に、Yテストトナー像,Mテストトナー像,Cテストトナー像,Kテストトナー像を1つずつ形成する。具体的には、二次転写ベルト41の周方向における全域のうち、二次転写ニップで先行する記録シートPに接触する領域と、後続の記録シートPに接触する領域との間の領域であるシート間対応領域に、それらのテストトナー像を形成する。そして、Y,M,C,Kのそれぞれについて、テストトナー像のトナー付着量を光学センサーユニット40で検知した結果に基づいて、所定の画像濃度が得られるようにVtrefを補正する。
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
古くは、中間転写ベルトとして、ポリイミドベルトなどの硬質素材のベルト基体だけからなるものを用いることが一般的であった。ところが、かかる構成では、次のような不具合を引き起こすことが判明した。即ち、例えば630[mm/s]程度の極めて速い線速で中間転写ベルトを無端移動させながら、特殊東海製紙株式会社製の表面凹凸シート(商品名:レザック66)などの凹凸シートにトナー像を二次転写したとする。すると、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを採用しているにもかかわらず、凹凸シートの表面凹部にトナーを良好に二次転写することができず、表面凹凸にならった画像濃度ムラを引き起こしてしまう。つまり、硬質のベルト基体だけからなる中間転写ベルトでは、事業ユーザー向けの超高速までプリント速度を高速化すると、重畳電圧からなる二次転写バイアスによって二次転写ニップに交番電界を形成しても凹凸シートの表面凹部でトナーの転写不良を引き起こす。
一方、本発明者らは、中間転写ベルトとして弾性ベルトからなるものを搭載したプリンタ試験機を用意して、画像を事業ユーザー向けの超高速(プロセス線速=630mm/s)で凹凸シート(レザック66)に二次転写する実験を行った。すると、凹凸シートの表面凹部にトナーを良好に二次転写して、シート表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を有効に抑えることができた。二次転写ニップ内で弾性ベルトからなる中間転写ベルトの弾性層を柔軟に変化させることで、中間転写ベルト表面と凹凸シートの表面凹部との距離を低減したためだと考えられる。この実験結果に鑑みて、実施形態に係るプリンタにおいては、中間転写ベルト31として、弾性ベルトからなるものを用いている。
図8は、実施形態に係るプリンタに搭載された弾性ベルトからなる中間転写ベルト31の横断面を部分的に示す拡大断面図である。中間転写ベルト31は、ある程度の屈曲性を有し且つ剛性の高い材料からなる無端ベルト状の基層(硬質素材のベルト基体)31aと、これのおもて面上に積層された柔軟性に優れた弾性材料からなる弾性層31bとを具備している。弾性層31bには、粒子31cが分散せしめられていて、それらの粒子31cが自らの一部を弾性層31bの表面から突出させた状態で、図9に示されるように、ベルト面方向に密集して並んでいる。それら複数の粒子31cにより、複数の凸がベルト面に形成されている。
基層31aの材料としては、樹脂中に、電気抵抗を調整するための充填材や添加材などからなる電気抵抗調整材を分散させたものを例示することができる。その樹脂としては、難燃性の観点からすると、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂等が好ましい。また、機械強度(高弾性)や耐熱性の観点からすると、特にポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好適である。
樹脂中に分散せしめる電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などを例示することができる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。分散性を向上させるために、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものを用いても良い。
基層31aの前駆体となる塗工液(硬化前の液体の樹脂中に電気抵抗調整材を分散せしめたもの)には、必要に応じて、分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などを添加してもよい。中間転写ベルト31として好適に装備されるシームレスベルトの基層31aに含有される電気抵抗調整材の添加量は、好ましくは表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]となる量とされる。
基層31aの厚みは、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができるが、30μm〜150μmが好ましく、40μm〜120μmがより好ましく、50μm〜80μmが特に好ましい。基層31aの厚みが、30μm未満であると、亀裂によりベルトが裂けやすくなり、150μmを超えると、曲げによってベルトが割れることがある。一方、基層31aの厚みが前述した特に好ましい範囲であると、耐久性の点で有利になる。
ベルト走行安定性を高めるためには、基層31aの層厚ムラをできるだけ少なくすることが好ましい。基層31aの厚みを調整する方法は、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができる。例えば、接触式や渦電流式の膜厚計での計測や膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定する方法が挙げられる。
中間転写ベルト31の弾性層31bは、上述したように、分散せしめられた複数の粒子31cによる複数の凸形状を表面に有している。
弾性層31bを構成する弾性材料の中でも、耐オゾン性、柔軟性、粒子との接着性、難燃性付与、耐環境安定性などの観点から、アクリルゴムが最も好ましい。
架橋剤の配合量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋が十分に行われないため、架橋物の形状維持が困難になる。これに対し、含有量が多すぎると、架橋物が硬くなりすぎて、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれる。
弾性層31bに用いるアクリルゴムには、上述した架橋剤の架橋反応を促進する狙いで、架橋促進剤を配合してもよい。
電気抵抗調整材の添加量については、弾性層31bの抵抗値を、表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]の範囲にするように調整することが好ましい。
弾性層31bの層厚は、200μm〜2mmが好ましく、400μm〜1000μmがより好ましい。層厚が200μmよりも小さいと、記録シートの表面凹凸への追従性や転写圧力の低減効果を低くしてしまうので好ましくない。また、層厚が2mmよりも大きいと、弾性層31bが自重によって撓み易くなって走行性を不安定にしたり、ベルトを張架しているローラへの掛け回しでベルトに亀裂を発生させ易くなったりするので好ましくない。なお、層厚の測定方法としては、断面を走査型顕微鏡(SEM)で観察することによって測定する方法を例示することができる。
弾性層31bの弾性材料に分散せしめる粒子31cとしては、平均粒子径が100μm以下であり、真球状の形状をしており、有機溶剤に不溶であり、且つ3%熱分解温度が200℃以上である樹脂粒子を用いる。粒子31cの樹脂材料に特に制限はないが、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴムなどを例示することができる。これらの樹脂材料からなる粒子の母体表面を異種材料で表面処理してもよい。ゴムからなる球状の母体粒子の表面に硬い樹脂をコートしてもよい。また、母体粒子として、中空のものや、多孔質のものを用いてもよい。
これまで例示した樹脂材料の中でも、滑性、トナーに対しての離型性、耐磨耗性などに優れているという観点から、シリコーン樹脂粒子が最も好ましい。樹脂材料を重合法などによって球状の形状に仕上げた粒子であることが好ましく、真球に近いものほど好ましい。また、粒子31cとしては、体積平均粒径が1.0μm〜5.0μmであり、且つ単分散粒子であるものを用いることが望ましい。単分散粒子は、単一粒子径の粒子ではなく、粒度分布が極めてシャープな粒子である。具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅の粒子である。粒子31cの粒径が1.0μm未満であると、粒子31cによる転写性能の促進効果が十分に得られなくなる。これに対し、粒径が5.0μmよりも大きいと、粒子間の隙間が大きくなってベルト表面粗さを大きくしてしまうことから、トナーを良好に転写できなくなったり、中間転写ベルト31のクリーニング不良を発生させ易くなったりする。更には、樹脂材料からなる粒子31cは一般に絶縁性が高いことから、粒径が大きすぎると粒子31cの電荷により、連続プリント時にこの電荷の蓄積による画像乱れを引き起こし易くなる。
粒子31cとしては、特別に合成したものを用いても良いし、市販品を用いてもよい。粒子31cを弾性層31bに直接塗布して、ならすことにより容易に均一に整列させることができる。このようにすることで、粒子31c同士のベルト厚み方向の重なり合いをほぼなくすことができる。複数の粒子31cの弾性層31bの表面方向における断面の径は、できるだけ均一であることが望ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅にすることが好ましい。このため、粒子31cの粉末として、粒径分布の小さなものを用いることが好ましいが、特定の粒径の粒子31cだけを選択的に弾性層31b表面に塗布することを実現する方法を採用すれば、粒径分布の比較的大きな粉末を用いることも可能である。なお、粒子31cを弾性層31b表面に塗布するタイミングは特に限定されず、弾性層31bの弾性材料の架橋前、架橋後の何れであってもよい。
粒子31cが分散せしめられた弾性層31bの表面方向において、粒子31cが存在している部分と、弾性層31bの表面が露出している部分との投影面積比については、粒子31cが存在している部分の投影面積率を60%以上にすることが望ましい。60%に満たない場合には、トナーと弾性層31bの無垢の表面とを直接接触させる機会を増加させて良好なトナー転写性が得られなくなったり、ベルト表面からのトナークリーニング性を低下させたり、ベルト表面の耐フィルミング性を低下させたりする。なお、中間転写ベルト31として、弾性層31bに粒子31cを分散させていないものを用いることも可能である。
図9に示されるように、中間転写ベルト31の表面において、粒子31c同士の重なり合いは殆ど観測されない。粒子31cの弾性層31b表面における断面の径は、できるだけ均一であることが好ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5)μm以下の分布幅となることが好ましい。このような分布幅を実現するためには、粒径分布の狭い粒子粉末を用いることが好ましいが、特定の粒径の粒子31cを選択的に表面に局在させる方法を採用して弾性層31bを形成すれば、粒径分布の広い粒子粉末を使用してもよい。
記録シートPとして、凹凸シートの表面における複数の凹部にそれぞれトナーを良好に二次転写して、表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を抑えるためには、弾性層31bをある程度の柔軟性(弾性)に優れたものを採用する必要がある。そして、そのような弾性層31bを採用すると、弾性層31bの単体だけでは、張架するとすぐに伸びてしまうことから、実使用に耐えられない。このため、弾性層31bよりも剛性のある基層31aを設け、その基層31aの剛性によってベルト全体の伸びを長期間に渡って抑えることが必須の条件になる。
以上のように、実施形態に係るプリンタでは、基層31aの上に弾性層31bを積層した弾性ベルトからなる中間転写ベルト31を用いる。これにより、ベルト線速(プロセス線速)=630[mm/s]という事業ユーザー向けの超高速で画像を形成しても、凹凸シートの表面凹部内に十分量のトナーを転移させて、凹凸シートの表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を抑えることができた。
以上のような弾性層31bを有する中間転写ベルト31は、その表面の光の反射率が低くて色調が暗いことから、その表面でテストトナー像の光学特性を検知すると検知精度が悪かったり、または光学特性を検知できなかったりする。一方、二次転写ベルト41は、ポリイミド樹脂からなる単層ベルトであり、その表面の光の反射率が高く色調が明るいことから、その表面のテストトナー像の光学特性を良好に検知することができる。
そこで、テスト転写モードでは、テストトナー像を暗い色調の中間転写ベルト31から、明るい色調の二次転写ベルト41に二次転写し、二次転写ベルト41上のテストトナー像の光学特性を光学センサーユニット40によって検知する。これにより、テストトナー像の光学特性を良好に検知することができる。なお、二次転写ベルト41として、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂や、ポリアミドイミド樹脂からなるものを用いてもよい。
図10は、二次転写電源45から出力される重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形の第一例を示すグラフである。同図に示される二次転写バイアスの波形は正弦波になっている。オフセット電圧Voffは、重畳電圧からなる二次転写バイアスの直流成分(直流電圧)の値である。同図におけるオフセット電圧Voffは、その極性がマイナスになっている。二次転写バイアスの波形が図示のような正弦波である場合には、オフセット電圧Voffと、二次転写バイアスの一周期(T)あたりにおける平均電位Vaveとが同じ値になる。よって、同図においては、平均電位Vaveもマイナス極性になっている。
実施形態のプリンタのように、二次転写裏面ローラ(図1の33)の芯金に二次転写バイアスを印加する構成では、二次転写バイアスの極性がトナーの正規帯電極性と同じになったときに、二次転写ニップ内のトナーが転写方向に静電移動する。転写方向は、二次転写ニップ内において、中間転写ベルト31の表面側から二次転写ベルト41の表面側に向かう方向である。一方、二次転写バイアスの極性がトナーの正規帯電極性とは逆極性になったときには、二次転写ニップ内のトナーが転写方向とは逆方向に静電移動する。図示のように、平均電位Vaveをトナーの正規帯電極性と同極であるマイナス極性にすることで、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側とシート表面側との間で往復移動させながら、相対的にはベルト表面側からシート表面側に向けて移動させる。これにより、中間転写ベルト31の表面上のトナー像を、記録シートPの表面上に二次転写することが可能になる。
同図において、転写ピーク値Vtは、二次転写バイアスの一周期(周期T)内で、二次転写ニップ内でトナーを転写方向に向けて最も強い静電気力で静電移動させるピーク値である。また、逆ピーク値Vrは、転写ピーク値Vtではない方のピーク値である。同図に示される二次転写バイアスでは、逆ピーク値Vrが転写ピーク値Vtとは逆極性(プラス極性)になっている。
二次転写バイアスの波形は、同図に示されるような正弦波に限られない。三角波や矩形波の二次転写バイアスを採用してもよい。図11は、重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形の第二例を示すグラフである。同図に示される二次転写バイアスの波形は、矩形波である。図10に示される二次転写バイアスの正弦波や、図11に示される二次転写バイアスの矩形波は、何れも、後述するデューティーが50[%]である。このような特性を有する波形からなる二次転写バイアスでは、何れも、一周期(周期T)あたりにおける平均電位Vaveがオフセット電圧Voffと同じ値になる。つまり、直流成分の値が平均電位Vaveと同じになる。
図12は、図10に示される二次転写バイアスにおけるデューティーを説明するためのグラフである。同図において、中心電位VCは、二次転写バイアスの交流成分(交流電圧)のピークツウピーク値Vppにおける中心の電位である。また、逆ピーク側時間trは、交流成分の一周期(周期T)内において、二次転写バイアスの値が中心電位VCから逆ピーク値Vrに向けて立ち上がり始めた瞬間から、逆ピーク値Vrを経て中心電位VCに戻るまでの時間である。また、転写ピーク側時間tfは、交流成分の一周期(周期T)内において、二次転写バイアスの値が中心電位VCから転写ピーク値Vtに向けて立ち上がり始めた瞬間から、転写ピーク値Vtを経て中心電位VCに戻るまでの時間である。また、デューティーは、周期T内で逆ピーク側時間trが占める割合であり、図示の波形の場合には50[%]である。つまり、図示の波形におけるデューティーは50[%]である。
図13は、図11に示される二次転写バイアスにおけるデューティーを説明するためのグラフである。図示の矩形波においても、周期T内で逆ピーク側時間trが占める割合としてのデューティーは50[%]である。以下、デューティーが50[%]未満であるという特性を低デューティーという。これに対し、デューティーが50[%]を超えるという特性を高デューティーという。
デューティー=50[%]の二次転写バイアスを用いて、二次転写ニップ内でトナーを転写方向に静電移動させるためには、転写ピーク値Vtの絶対値を、逆ピーク値Vrの絶対値よりも大きくする必要がある。そして、転写ピーク値Vtの絶対値が大きくなり過ぎると、二次転写ニップ内において、中間転写ベルト31表面と、凹凸シートのとの間で放電を発生させてしまう。この放電は、トナー粒子を逆帯電させて、そのトナー粒子の二次転写を著しく阻害することから、画像中に多くの白点を発生させてしまい、画質を著しく損ねてしまう。よって、転写ピーク値Vtの絶対値をある程度の値に留める必要がある。
この一方で、逆ピーク値Vrの絶対値を小さくし過ぎると、凹凸シートの表面凹部に十分量のトナーを転写することができなくなる。具体的には、逆ピーク値Vrの絶対値を小さくし過ぎると、二次転写ニップ内でベルト表面から凹凸シートの表面凹部内に一旦転移させたトナー粒子を、ベルト表面に戻すことができなくなる。すると、ベルト表面上で他のトナー粒子やベルト表面に付着しているトナー粒子に対し、表面凹部内から戻したトナー粒子をぶつけてその付着力を弱めることができなくなる。単にトナー粒子を単純に振動させるだけで、その振動に伴って凹凸シートの表面凹部内に転移するトナー粒子の数を増加させることができないので、表面凹部内へのトナー転移量を不足させてしまうのである。
逆ピーク値Vrを大きくする方法の一つとして、交流成分のピークツウピーク値Vppを大きくすることが挙げられる。しかしながら、逆ピーク値Vrの不足を解消するためにピークツウピーク値Vppを大きくすると、同時に転写ピーク値Vtを大きくすることから、放電による白点を引き起こし易くなる。
逆ピーク値Vrを大きくする他の方法として、オフセット電圧Voffを小さくすることが挙げられる。しかしながら、オフセット電圧Voffを小さくすると、それに伴って平均電位Vaveも小さくしてしまうことから、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側からシート表面側に良好に静電移動させることができずに、二次転写不良を引き起こすおそれがある。
そこで、凹凸シートの表面凹部に十分量のトナーを転移させるためには、デューティーを50[%]以下にすることが望ましい。より望ましくは、50[%]未満の低デューティーにするのがよい。デューティーを50[%]よりも大きい高デューティーにすると、放電に起因する白点や、二次転写不良を発生させ易くなるからである。具体的には、デューティーを高デューティーにすると、その分だけ、平均電位Vaveを逆ピーク側にシフトさせてその絶対値を小さくすることから、二次転写不良を引き起こし易くなる。そして、その二次転写不良の発生を回避するために、ピークツウピーク値Vppを大きくして平均電位Vaveの増大を図ると、それに伴って転写ピーク値Vtを大きくすることから、放電に起因する白点を発生させ易くなる。よって、デューティーを50[%]未満の低デューティーに設定することが望ましい。
つまり、記録シートとして、表面平滑性が低平滑性である凹凸シートを用いる場合には、低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを採用することが望ましい。換言すると、低デューティーは、低平滑性に応じた特性である。なお、本明細書において、低平滑性は、和紙の表面平滑性のように、普通紙の表面平滑性よりも劣るものを意味する。また、以下、表面コート紙の表面平滑性のように、普通紙の表面平滑性よりも優れたものを高平滑性という。また、普通紙の表面平滑性と同等のものを中平滑性という。
図14は、デューティーを50[%]よりも小さな35[%]にした二次転写バイアスの波形の一例を示すグラフである。同図に示される二次転写バイアスの逆ピーク値Vrは、図11に示される二次転写バイアスの逆ピーうちVrと同じである。また、図14に示される二次転写バイアスの転写ピーク値Vtは、図11に示される二次転写バイアスの転写ピーク値Vtと同じである。図14に示される二次転写バイアスと、図11に示される二次転写バイアスとで異なる点は、逆ピーク側時間tr及び転写ピーク側時間tfだけである。図11に示される二次転写バイアスでは、逆ピーク側時間trと転写ピーク側時間tfとが同じであるのに対し、図14に示される二次転写バイアスでは、逆ピーク側時間trが転写ピーク側時間tfよりも短くなっている。より詳しくは、図11に示される二次転写バイアスの逆ピーク側時間trが周期Tの50[%]の長さであるのに対し、図14に示される二次転写バイアスの逆ピーク側時間trは周期Tの35[%]である。つまり、図14に示される二次転写バイアスのデューティーは35[%]である。
図11に示されるデューティー=50[%]の二次転写バイアスでは、上述したように、オフセット電圧Voffと平均電位Vaveとが同じ値になっている。これに対し、図14に示されるデューティー=35[%]の二次転写バイアスでは、平均電位Vaveがオフセット電圧Voffよりも大きくなっている。ピークツウピーク値Vppは、図7に示される二次転写バイアスと図14に示される二次転写バイアスとで同じである。即ち、デューティーを50[%]未満にすることで、50[%]にする場合に比べて、ピークツウピーク値Vpp、転写ピーク値Vt、及び逆ピーク値Vrを変化させることなく、平均電位Vaveを大きくすることが可能になる。よって、デューティーを50[%]以上にする場合に比べて、二次転写不良や白点の発生を抑えることができる。
そこで、電源制御部200は、凹凸シートに対してトナー像を二次転写するときには、二次転写バイアスとして、一周期内で極性が反転し、且つ50[%]未満の低デューティーの重畳電圧からなるものを二次転写電源45から出力させるようになっている。かかる構成では、50[%]以上の高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる構成に比べて、二次転写不良や、放電に起因する白点の発生を抑えることができる。
ところで、本発明者らは、低デューティーの二次転写バイアスを用いる条件で、表面平滑性に優れた表面コート紙からなる平滑シート(表面平滑性が高平滑性)にハーフトーン画像を二次転写する実験を行った。すると、二次転写不良による著しい画像濃度不足をハーフトーン画像に引き起こしてしまった。
このような二次転写不良を引き起こしてしまう原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことが判明した。即ち、ハーフトーン画像は、画像部の全てがトナーによって覆われておらず、比較的少数のドット群を構成するトナー付着箇所と、トナーを全く付着させていない空白箇所とが画像部中に混在している。弾性層31bを設けた中間転写ベルト31を用い、且つ記録シートPとして表面平滑性に優れた平滑シートを用いると、二次転写ニップ内で弾性層31bをハーフトーン画像中の少数ドット群を構成している少数ドットトナー塊の形状にならわせて柔軟に変形させる。そして、この変形により、ハーフトーン画像中の少数ドットトナー塊の表面だけでなく、少数ドットトナー塊の側面までも弾性層31bで包み込んでしまう。すると、弾性層31bから少数ドットトナー塊の各トナー粒子に正規帯電極性とは逆極性の電荷を注入させて、トナーの帯電量(Q/M)を低下させたり、トナーを逆帯電させたりする。この結果、トナー像の二次転写不良を引き起こしていることがわかった。なお、記録シートPとして、凹凸シートを用いる場合には、弾性層31bをシート表面の凹凸に応じて不規則な形状に変形させることから、弾性層31bによって少数ドットトナー塊の側面を包んでしまうことが殆どなくなる。このため、凹凸シートの表面凸部上においても、二次転写不良を引き起こすことはない。
図15は、中間転写ベルト31として、実施形態に係るプリンタのものとは異なり、単層構造のものを用いた構成における二次転写ニップ及びその周囲を示す拡大構成図である。中間転写ベルト31として図示のような単層構造のものを用いる場合には、二次転写裏面ローラ33と二次転写ニップ裏打ちローラ36との間において、二次転写電流が次のように流れる。即ち、図中矢印で示されるように、二次転写電流がニップ中心位置(ベルト移動方向の中心位置)に集中して一直線状に流れることから、ニップ入口付近やニップ出口付近では二次転写電流がそれほど流れない。二次転写電流がこのように流れることで、二次転写ニップにおいて、トナーに二次転写電流を作用させている時間が比較的短時間になる。このため、トナーに対して、二次転写電流によって正規極性とは逆極性の電荷を過剰に注入してしまうことが殆どない。
図16は、中間転写ベルト31として、実施形態に係るプリンタと同様に、多層構造の弾性ベルトからなるものを用いる構成における二次転写ニップ及びその周囲構成を示す拡大断面図である。多層構造の弾性ベルトからなる中間転写ベルト31を用いる構成では、二次転写裏面ローラ33と二次転写ニップ裏打ちローラ36との間において、二次転写電流が次のように流れる。即ち、層と層との界面で、二次転写電流がベルト周方向に広がりながら、ベルト厚み方向に流れる。これにより、二次転写電流がニップ中心位置だけでなく、ニップ入口やニップ出口の付近にまで回り込むようになることから、二次転写ニップにおいて、トナーに二次転写電流を作用させる時間が比較的長時間になる。そして、トナーに対して、二次転写電流によって正規極性とは逆極性の電荷を過剰に注入してしまい易くなる。このことによっても、トナーの正規極性の帯電量を大きく低下させたり、トナーを逆帯電させてしまったりして、二次転写性を阻害してしまう。このような阻害と、軟らかい中間転写ベルト31がその表面上のトナー像の凸形状を柔軟に変形して包み込むこととが相乗して、ハーフトーン画像の二次転写不良を引き起こし易くなってしまうと考えられる。
次に、本発明者らは、二次転写バイアスとして、低デューティーのものや、直流電圧だけからなるものに代えて、図17に示される高デューティー(デューティー=80%)のものを用いて、平滑シートに画像を二次転写する実験を行った。平滑シートとしては、王子製紙株式会社製のOKトップコート(128gsm)を用いた(いわゆるコート紙)。27℃/80%の環境下、プロセス線速=630[mm/s]の条件で、平滑シートにブラックハーフトーン画像(2by2)を二次転写したところ、二次転写不良を引き起こすことなく、平滑シートにブラックハーフトーン画像を良好に二次転写することができた。
高デューティーの二次転写バイアスを用いることで、平滑シートに対するハーフトーン画像の二次転写性を向上させることができたのは、次に説明する理由によるものと考えられる。即ち、無端移動する中間転写ベルト31が二次転写ニップ内に進入すると、二次転写バイアスにより、二次転写ニップに進入したベルト箇所に対する充電が始まる。そして、その充電量がある閾値を超えると、ハーフトーン画像中の少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入が始まる。二次転写ニップに進入したベルト箇所に対する充電は、主に転写ピーク側時間tf内で起こることから、この転写ピーク側時間tfが長くなるほど、少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入量が増加する。高デューティーの二次転写バイアスは、低デューティーの二次転写バイアスに比べて、転写ピーク側時間tfが短いことから、少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入量を低減して、二次転写不良の発生を抑えることが可能になると考えられる。
この実験結果から、高デューティーは記録シートの表面平滑性について高平滑性に応じた特性であることが判明した。そこで、電源制御部200は、トナー像を平滑シートに二次転写するときには、高デューティーの二次転写バイアスを二次転写電源45から出力させるようになっている。
なお、本発明者らによって行われた別の実験により、次のようなことも判明した。即ち、図17のように、一周期内で極性を反転させる高デューティーの二次転写バイアスよりも、極性を反転させない高デューティーの二次転写バイアスを用いる方が、平滑シートに対する二次転写性を向上させることができる。
図17に示される二次転写バイアスでは、逆ピーク側時間tr内において、トナーをシート表面側からベルト表面側に逆戻りさせる方向に電界の向きを反転させるように、電圧の極性を転写ピーク側時間tfにおける極性とは逆極性にする。このような二次転写バイアスと、極性反転させない二次転写バイアスとで、デューティーを同じ値にし、且つ、一周期内における二次転写電界の強度積分値(Vave)を同じにして同様の二次転写性を得ようとする。すると、図17の二次転写バイアスにおける転写ピーク値Vtを、極性反転させない二次転写バイアスにおける転写ピーク値Vtよりも大きくする必要がある。これにより、デューティーや平均電位Vaveを同じにしているにもかかわらず、図17の二次転写バイアスの方が、極性反転させない二次転写バイアスよりもハーフトーン画像の少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入量を増加させる。換言すると、極性反転させない二次転写バイアスの方が、図17の二次転写バイアスに比べて転写ピーク値Vtを小さくして少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入量を低減することが可能なので、二次転写性をより向上させることができるのである。
図18は、実施形態に係るプリンタの操作表示部501の電気回路を示すブロック図である。図示のように、操作表示部501は、平滑紙ボタン501aと、凹凸紙ボタン501bと、普通紙ボタン501hとを有している。このプリンタにおいては、ユーザーに対して次のような操作を行ってもらうための説明を、取り扱い説明書に記載している。即ち、給送カセット(図1の100)に対し、記録シートPとして、表面平滑性に優れた平滑シートをセットした場合には、平滑紙ボタン501aを押下する。これに対し、給送カセットに対し、記録シートPとして、和紙などの凹凸シートをセットした場合には、凹凸紙ボタン501bを押下する。また、給送カセットに対し、記録シートPとして普通紙をセットした場合には、普通紙ボタン501hを押下する。つまり、操作表示部501は、次のような情報を取得することが可能な情報取得手段として機能している。即ち、トナー像の二次転写対象となる記録シートPについて、少なくとも、表面平滑性に優れた平滑シートであるのか、あるいは平滑シートや普通紙よりも表面平滑性が劣る凹凸シートであるのかを把握することが可能な情報である。
電源制御部200は、操作表示部501による前記情報の取得結果に基づいて、トナー像を記録シートに二次転写するときの転写モードを、凹凸モードと、平滑モードと、普通モードとで切り替える。具体的には、凹凸紙ボタン501bが押下された場合には、記録シートPにトナー像を転写するシート転写モードとして、低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる凹凸モードを実施する。また、平滑紙ボタン501aが押下された場合には、シート転写モードとして、高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる平滑モードを実施する。また、普通紙ボタン501hが押下された場合には、シート転写モードとして、普通モードを実行する。この普通モードでは、二次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものと、平滑モードと同じものとを、環境に応じて切り替える。
かかる構成では、二次転写ニップ内でトナーに正規帯電極性とは逆極性の電荷を注入することによるハーフトーン画像の転写不良の発生を抑えることができる。
平滑シートにトナー像を転写する平滑モードにおいては、二次転写ニップ内でトナーを中間転写ベルト31表面とシート表面との間で往復移動させる必要がない。そこで、重畳電圧からなる二次転写バイアスの逆ピーク値Vrについては、次の何れかの値を採用することが望ましい。
(a)トナーの正規帯電極性とは逆極性であって、且つ絶対値がトナーをシート表面側からベルト表面側に逆戻りさせない程度に小さな値の逆ピーク値Vr。
(b)トナーの正規帯電極性と同極性の逆ピーク値Vr。
何れの逆ピーク値Vrを採用しても、二次転写ニップ内でトナーをシート表面と中間転写ベルト31の表面との間で往復移動させることはない。
既に述べたように、平滑モードでは、交流電圧の一周期で極性を反転させるものよりも、極性を反転させないものを用いる方が、ハーフトーン画像の二次転写不良をより良好に抑えることができる。そこで、このプリンタでは、平滑モードにおいて、上記(b)の逆ピーク値Vrの重畳電圧を二次転写電源45から出力するようになっている。普通モードで高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる場合も同様である。
参考までに、凹凸モードで用いられる二次転写バイアスの各種数値の例を次の表1に示す。
また、平滑モードで用いられる二次転写バイアスの各種数値の例を次の表2に示す。
このプリンタでは、凹凸モードの二次転写バイアスと、平滑モードの二次転写バイアスとの組み合わせとして、後者のピークツウピーク値Vppをより小さくする組み合わせを採用している。これは次に説明する理由による。即ち、平滑モードでは、二次転写ニップ内でトナーを往復移動させる必要がないことから、転写方向とは逆方向の静電気力を全く発生させない(極性を反転させない)か、あるいは、ごく弱い力であっても、二次転写不良を引き起こすことがない。交流電圧を用いている理由は、転写方向への静電気力を発生させる極性(本例ではマイナス)の電圧を一時的に大きく低くしてトナーへの逆電荷の注入を抑えることにある。このような理由で用いる交流電圧のピークツウピーク値Vpp(重畳電圧のVppと同意)については、転写方向への静電気力を転写に必要な値にする程度の大きさで十分であり、凹凸モードのように大きくする必要はない。にもかかわらず、凹凸モードと同程度に大きなピークツウピーク値Vppにすると、中間転写ベルト31や二次転写ベルト41に不要な交番電気ショックを付与してそれらの劣化を早めてしまう。換言すれば、平滑モードにおけるピークツウピーク値Vppをより低い値にすることで、交番電気ショックによる劣化を抑えることができる。
また、このプリンタでは、凹凸モードの二次転写バイアスと、平滑モードの二次転写バイアスとの組み合わせとして、後者の周波数を前者に比べて高くする組み合わせを採用している。これは次に説明する理由による。即ち、凹凸シートにトナー像を二次転写する凹凸モードにおいては、周波数を高くするほど、転写方向とは逆方向の電界を形成している時間を短くする。そして、高くし過ぎると、その時間を十分に長く確保することができずに、トナーをシート表面の凹部内から中間転写ベルト31の表面に逆戻りさせることができずに、低デューティーの二次転写バイアスを用いていても、凹部への転写不良を引き起こす。一方、平滑シートにトナー像を二次転写する平滑モードにおいては、周波数を低くするほど、転写ピーク値Vtの側で比較的高い電圧を持続してかけている時間が長くなることから、トナーへの逆電荷の注入を起こしやすくなる。高デューティーの二次転写バイアスの周波数を低デューティーよりも高くすることで、次のことが可能になる。即ち、凹凸モードで周波数を高くし過ぎることによるシート表面凹部への転写不良を抑えつつ、平滑モードで周波数を低くし過ぎることによるトナーへの逆電荷の注入に起因するハーフトーン画像の二次転写不良の発生を抑えることができる。
なお、凹凸シートにトナー像を転写する凹凸モードでは、二次転写ニップ内でトナーを複数回に渡ってシート表面と中間転写ベルト31との間で往復移動させることから、画像部の周囲にトナー粒子を飛び散らせる転写チリを発生させ易い。但し、その転写チリによる画質劣化よりも、トナーを往復移動させないことに起因するシート表面凹部への転写不良による画質劣化の方が目立つことから、後者の画質劣化を優先的に抑えるために、トナーを往復移動させる特性の二次転写バイアスを採用している。
上述したプロセスコントロール処理や、連続プリントジョブ中のVtref調整処理では、テストトナー像を中間転写ベルト31から二次転写ベルト41に二次転写するテスト転写モードが実行される。二次転写ベルト41の表面には凹凸が殆どないことから、凹凸シートにトナー像を二次転写するときのような低デューティーで且つ比較的高い値の逆ピーク値Vrの二次転写バイアスを用いる必要がない。にもかかわらず、例えば連続プリントジョブ中に、次のような処理を行ったとする。即ち、凹凸モードで低デューティーの二次転写バイアスを使用してトナー像を凹凸シートに二次転写した直後に、二次転写ベルト41のシート間対応領域にVtref調整処理のためのテストトナー像を同じ低デューティーの二次転写バイアスで二次転写したとする。すると、テストトナー像に転写チリによる画質劣化を発生させて、トナー付着量(画像濃度)の検知精度を低下させてしまう。
そこで、電源制御部200は、二次転写ベルト41にテストトナー像を転写するテスト転写モードでは、操作表示部501によって取得した記録シートの表面平滑性の情報にかかわらず、次に列記する何れかの二次転写バイアスを二次転写電源45から出力させる。
(α)直流電圧だけからなる二次転写バイアス。
(β)平滑モードと同じ二次転写バイアス。
(γ)平滑モードの二次転写バイアスとは異なり、且つ逆ピーク値Vrが凹凸モードの二次転写バイアスの逆ピーク値Vrに比べて転写方向とは逆方向の静電気力をより弱くする値の高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアス。
(α)から(γ)の二次転写バイアスは何れも、凹凸モードと同じ二次転写バイアスを用いる場合に比べて、トナーの往復移動を抑えるか、往復移動を無くすかして、転写チリの発生を抑えることができる。
図19は、上述した基本的な構成を備えるプリンタ試験機における二次転写ベルト41に対するテストトナー像の二次転写率と、二次転写電流と、二次転写バイアスの特性との関係を示すグラフである。このグラフは、弱高湿である27[℃]80[%](絶対湿度20.6[g/m3])の環境に設定された実験室で行われた実験の結果に基づいて作成されたものである。二次転写率は、中間転写ベルト31上に一次転写されたベタ画像からなるテストトナー像のトナーのうち、二次転写ベルト41上に二次転写されたトナーの割合を示すものである。同図において、「(DC)」は、二次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを用いたことを示している。また、「(DC+高DutyAC)」は、二次転写バイアスとして、高デューティーの重畳電圧を用いたことを示している。
弱高湿の環境においては、トナーの帯電量(Q/M)が比較的少なくなることから、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いた場合には、比較的多くの二次転写電流を流すと二次転写不良が起こり易くなる。特に、Yトナー,Mトナー,Cトナー(以下、これらのトナーをまとめてカラートナーという)よりも帯電量が低くなるKトナーにおいて、その種の二次転写不良が顕著に発生し易い。高電流側でのグラフの落ち込みが、Kトナーでは、カラートナーに比べて急峻になっていることがわかる。このように、ハーフトーン画像ではなく、ベタ画像であっても、環境やトナーの帯電量によっては、二次転写不良による画像濃度の低下が発生してしまう。このため、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いてテストトナー像を二次転写ベルト41に二次転写すると、テストトナー像の転写不良を引き起こし易くなる。
一方、二次転写バイアスとして高デューティーの重畳電圧を用いた場合には、二次転写ニップ内におけるトナーに対する過充電を抑制することこから、帯電量の少ないKトナー(ベタ画像)であっても、十分な二次転写率が得られている。
このため、テスト転写モードでは、上記(α)のように直流電圧だけからなる二次転写バイアスを採用するのではなく、上記(β)や上記(γ)のように高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを採用した方が有利であるかのように思われがちである。しかしながら、テストトナー像は、顧客に提供して見て貰うための画像ではなく、どの程度のトナー付着量でトナー像が形成されるのかを調べるための画像である。転写不良が発生しても、その転写不良を反映した二次転写率を予めの実験によって求めておけば、二次転写前のテストトナー像のトナー付着量を正確に求めることが可能である。
電源制御部200は、平滑モードによってトナー像を平滑シートに二次転写した直後にテスト転写モードを実行する場合には、そのテスト転写モードにて、次のような制御を実施する。即ち、平滑モードと同じ二次転写バイアスを二次転写電源45から出力させる。この条件で高平滑性の二次転写ベルト41に二次転写されるテストトナー像は、トナーへの逆電荷の注入による転写不良を殆ど引き起こさないので、予めの実験によって調査しておいた二次転写率を考慮してトナー付着量を求めることは必ずしも必要ではない。また、低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる場合に比べて、転写チリの発生を抑えることができている。直前のシート転写モードと同じ二次転写バイアスを用いることから、二次転写電源45からの出力電圧の特性を不要に切り替えることによる制御の煩雑化を回避することができる。
このプリンタにおいて採用されている、転写モードと、記録シートPの種類と、二次転写バイアスの特性との関係を次の表3に示す。なお、表3において、デューティー[%]、ピークツウピーク値Vpp[kV]、周波数[Hz]の数値は、23[℃]、50[%]=絶対湿度10.3[g/m
3]の中湿環境における例であり、中湿環境でない場合には、数値が異なってくることもある。環境とそれらの数値の関係については、後述する。
表3に示されるように、普通紙にトナー像を二次転写する普通モードにおいては、環境に応じて、二次転写バイアスを直流電圧だけからなるものと、高デューティーの重畳電圧からなるものとで切り替える。以下、絶対湿度が15.5[g/m3]以下の環境を中湿以下の環境という。また、絶対湿度が15.5[g/m3]超から23.8[g/m3]以下の環境を弱高湿の環境という。また、絶対湿度が23.8[g/m3]を超える環境を強高湿の環境という。
中湿以下の環境下で普通モードを実行する場合には、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを採用しても、トナーへの逆電荷の注入による転写不良は発生し難い。そこで、電源制御部200は、中湿以下の環境で普通モードを実行する場合には、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを二次転写電源45から出力させる。これにより、二次転写バイアスとして交流成分を含むものを用いることによる二次転写ベルト41や中間転写ベルト31への電気的負荷を低減することができる。よって、電気的負荷によるベルトの劣化を抑えることができる。
一方、弱高湿の環境や、強高湿の環境では、トナーの帯電量(Q/M)が比較的低くなることから、たとえ普通紙であっても、トナーへの逆電荷の注入による帯電量不足が発生し易くなる。このため、普通モードにおいて、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いると、逆電荷の注入による転写不良を引き起こし易くなる。そこで、電源制御部200は、弱高湿の環境や、強高湿の環境で普通モードを実行する場合には、二次転写バイアスとして、平滑モードと同じものを二次転写電源45から出力させる。
なお、既に述べた通り、このプリンタは、凹凸シートにトナー像を二次転写する凹凸モードでは低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる。また、平滑シートにトナー像を二次転写する平滑モードでは高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる。
電源制御部200は、普通紙にトナー像を転写するシート転写モード(普通モード)の直後に実行するテスト転写モードでは、直前の普通モードと同じ二次転写バイアスを二次転写電源45から出力させる。このとき、環境によっては、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを出力することになり、トナーへの逆電荷の注入によって二次転写ベルト41に対するテストトナー像の転写不良を引き起こすことがある。しかしながら、次に説明する理由により、メイン制御部300は、テストトナー像のトナー付着量を正確に求めることができる。即ち、メイン制御部300は、直流電圧だけからなる二次転写バイアスでテストトナー像を二次転写ベルト41に二次転写したときの二次転写率(予めの実験によって調査された値)を予め記憶している。そして、直流電圧だけからなる二次転写バイアスでテスト転写モードが実行された場合には、その二次転写率と、光学センサーユニット40によるテストトナー像の光学特性の検知結果とに基づいて、テストトナー像のトナー付着量を求める。
直前の普通モードと同じ二次転写バイアスを用いてテスト転写モードを実行することから、モードの切り替わりに応じて二次転写バイアスの特性を切り替えることによる制御内容の煩雑化を抑えることができる。更には、低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる場合に比べて、転写チリによるトナー付着量の検知精度の低下を抑えることもできる。
また、電源制御部200は、平滑シートにトナー像を転写するシート転写モード(平滑モード)の直後に実行するテスト転写モードでは、直前の平滑モードと同じ二次転写バイアスを二次転写電源45から出力させる。平滑モードと同じ二次転写バイアスなので、高平滑性の二次転写ベルト41にテストトナー像を転写しても、トナーへの逆電荷の注入によるテストトナーの転写不良は生じない。直前の平滑モードと同じ二次転写バイアスを用いてテスト転写モードを実行することから、モードの切り替わりに応じて二次転写バイアスの特性を切り替えることによる制御内容の煩雑化を抑えることができる。更には、低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる場合に比べて、転写チリによるトナー付着量の検知精度の低下を抑えることもできる。
電源制御部200は、凹凸シートにトナー像を転写するシート転写モード(凹凸モード)の直後に実行するテスト転写モードでは、直前の凹凸モードとは異なり、平滑モードと同じ二次転写バイアスを二次転写電源45から出力させる。モードの切り替わり時に二次転写バイアスの特性を変化させてしまうが、平滑モードと同じ低デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる場合に比べて、転写チリによるトナー付着量の検知精度の低下を抑えることができる。
なお、テスト転写モードにおいて、平滑モードと同じ重畳電圧からなる二次転写バイアス(上記(β))を出力させることに代えて、上記(γ)の二次転写バイアスを出力させてもよい。
平滑モードやテスト転写モードで高デューティーの重畳バイアスからなる二次転写バイアスを用いる場合には、環境によって二次転写率に差が出てくる。具体的には、高湿になるほど、トナーの帯電量[Q/M]が少なくなって二次転写不良を引き起こし易くなる。
次に示す表4は、本発明者らによって行われた実験の結果に基づいて作成されたものである。K色二次転写率は、その実験において二次転写ベルト41上に二次転写されたKテストトナー像(ベタ画像)の二次転写率を表している。
表4において、実験番号2と実験番号3とに着目すると、両者で異なっている条件は、環境だけであり、実験番号3の方かより高温である分だけ、絶対湿度が高くなっている。両者のK色二次転写率に着目すると、実験番号3の方が約10[%]も低くなっている。これは、実験番号3の方が高湿となっていて、Kトナーの帯電量が低くなっていたことから、逆電荷の注入による二次転写率の低下がより顕著に現れたからである。
実験番号3と実験番号4とに着目すると、両者で異なっているのはデューティーだけであり、実験番号4の方が5[%]だけデューティーが高くなっている。両者のK色二次転写率に着目すると、実験番号4の方が約7[%]も高くなっている。
これらのことから、ディーティーをより高くした方が逆電荷の注入による二次転写率の低下をより抑え得ることがわかる。但し、同じ絶対湿度の条件下では、ディーティーを高くするほど、二次転写ニップにおける転写方向への静電気力を弱めてしまうため、静電気力の不足による二次転写不良を発生させ易くなる。かかる二次転写不良の発生を抑えるためには、デューティーを高くした分だけ、ピークツウピーク値Vppをより大きくして静電気力の弱まりを防止する必要がある。ところが、同じ絶対湿度の条件下では、ピークツウピーク値Vppをより大きくするほど、二次転写ニップ内で放電を発生させ易くなって、放電に起因する白点(画像中の小さな白抜け)を発生させ易くなる。
このように、テストトナー像の二次転写率をできる限り向上させるためには、絶対湿度に応じた最適なデューティーとピークツウピーク値Vppとの組み合わせが存在する。絶対湿度が高くなるほど、二次転写ニップ内で放電が発生し難くなることから、ピークツウピーク値Vppをより大きくしても白点の悪化が起こらなくなる。このため、ピークツウピーク値Vppをより大きくして、ディーティーを高めることで、トナーへの逆電荷の注入によるテストトナー像の二次転写不良を抑えることが可能になる。
そこで、電源制御部200は、環境センサー50から送られてくる温湿度の検知結果に基づいて算出した絶対湿度に基づいて、環境について、中湿以下、弱高湿、及び強高湿のうち、何れに該当するのかを判定する。中湿以下の環境は、23[℃]50[%](絶対湿度10.3[g/m3])を基準にした中程度の湿度やこれよりも低い湿度の環境であり、具体的には、絶対湿度が15.5[g/m3]以下の環境である。また、弱高湿の環境は、27[℃]80[%](絶対湿度20.6[g/m3])を基準にした環境であり、具体的には、絶対湿度が15.5[g/m3]超から23.8[g/m3]以下の環境である。また、強高湿環境は、32[℃]80[%](絶対湿度27.0[g/m3])を基準にした環境であり、具体的には、絶対湿度が23.8[g/m3]を超える環境である。
環境を判定した電源制御部200は、平滑モードやテスト転写モードで高デューティーの重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる場合には、その重畳電圧の特性を次のように変化させる。即ち、中湿以下の環境では、表4の実験番号1と同じ特性の重畳電圧からなる二次転写バイアスを二次転写電源45から出力させる。また、弱高湿環境では、表4の実験番号2と同じ特性の重畳電圧からなる二次転写バイアスを二次転写電源45から出力させる。また、強高湿環境では、表4の実験番号4と同じ特性の重畳電圧からなる二次転写バイアスを二次転写電源45から出力させる。つまり、絶対湿度が高くなるほど、ディーティーを及びピークツウピーク値Vppをそれぞれ高くするのである。
かかる構成では、湿度変化にかかわらず、良好な二次転写率で、トナー像を平滑シートに二次転写したり、テストトナー像を二次転写ベルト41に二次転写したりすることができる。
なお、テストトナー像を形成する処理として、上述したプロセスコントロール処理や、連続プリントジョブ中のVtref調整処理の他に、位置ずれ補正処理が知られている。位置ずれ補正処理は、Y,M,C,Kのトナー像の相対的な位置ずれを補正するための処理である。位置ずれ補正処理では、図20に示される位置ずれ検知用パターンを、ベルト(実施形態では二次転写ベルト41)の幅方向の一端部、中央部、他端部にそれぞれ形成する。それぞれの位置ズレ検知用パターンは、ベルト移動方向に並ぶ複数組(同図では3組)のシェブロンパッチパターンを具備している。1つのシェブロンパッチパターンは、ベルト幅方向に延在する4つの直行パッチ(K直交パッチSPk、M直交パッチSPm、C直交バッチSPc、Y直交パッチSPy)とを具備している。また、ベルト幅方向から45[°]傾いた姿勢で延在する4つの傾斜パッチ(K傾斜パッチTPk、M傾斜パッチTPm、C傾斜パッチTPc、Y傾斜パッチTPy)も具備している。
位置ズレ検知用パターンのテストトナー像たる各パッチは、光学センサー(実施形態では光学センサーユニット40)によって検知される。各パッチの形成タイミングが適切であれば、ベルト移動方向に並ぶ各パッチの検知時間間隔が等しくなるが、不適切であると、検知時間間隔が不均一になる。また、光書込用の光学系にスキューが生じていなければ、3つの位置ズレ検知用パターンの間において、それぞれ同色のパッチが同じタイミングで検知されるが、スキューが生じていると検知タイミングが異なってくる。制御部(例えばメイン制御部300)は、主走査方向(ベルト幅方向と同じ)や副走査方向(ベルト移動方向と同じ)における各パッチの検知時間間隔や検知タイミングのずれを測定する。そして、測定結果に基づいて、作像条件としての光学ミラーの傾きを調整したり、作像条件としての光書込タイミングを補正したりする。このような位置ズレ低減処理により、各色の重ね合わせずれや画像スキューを抑えることができる。
このような位置ずれ補正処理を定期的に実施する場合には、プロセスコントロール処理やVtref調整処理と同様に、テスト転写モード(各パッチを二次転写ベルト41に転写するモード)の二次転写バイアスを制御することが望ましい。この場合、各パッチに発生する転写チリに起因して各パッチの位置の検知誤差を抑えることができる。よって、検知誤差に起因する残留位置ずれ(残留色ずれ)の発生を抑えることができる。
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した各実施例に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、各実施例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
[第一実施例]
第一変形例に係るプリンタは、操作表示部501に、平滑紙ボタン、凹凸紙ボタン、普通紙ボタンを何れも有していない。このため、ユーザーによって記録シートPの表面平滑性の情報が入力される仕様にはなっていない。その代わりに、記録シートの表面平滑性を検知する平滑性検知センサーを備えている。
図21は、第一実施例に係るプリンタの給紙路を示す構成図である。給紙路は、第一案内板509と第二案内板510との間に挟み込んだ記録シートPを、レジストローラ対101のレジストニップに案内するようになっている。第一案内板509には貫通口が設けられており、この貫通口には平滑性検知センサー502が嵌め込まれている。反射型光学センサーからなる平滑性検知センサー502は、発光素子から発した光を給紙路内の記録シートPに向けて照射し、記録シートPの表面で正反射した正反射光を受光素子によって受光する。コート紙等の平滑シートの表面で得られる正反射光量は、和紙等の凹凸シートの表面で得られる正反射光量よりも多くなる。
平滑性検知センサー502は、電源制御部200に電気的に接続されている。電源制御部200は、プリンタの主電源が投入された直後の装置起動時に、平滑性検知センサー502の校正を実施する。具体的には、発光素子を点灯させて発光素子からの光を白色の第二案内板510の表面で反射させる状態で、所定の正反射光量が得られるように発光素子の発光量(供給電圧)を調整する。このときの供給電圧値を記憶回路に記憶しておき、以降、平滑性検知センサー502によって記録シートPの表面における正反射光量を検知するときには、記憶回路に記憶してある供給電圧値と同じ値の電圧を発光素子に供給する。
プリントジョブが開始されると、所定のタイミングで給送カセット100から送り出された記録シートPは、スキュー補正のために、駆動していないレジストローラ対101のレジストニップに突き当てられて搬送が一時停止される。このとき、給紙路内において、平滑性検知センサー502に対向する。この状態で、電源制御部200は、平滑性検知センサー502により、シート表面で得られる正反射光量を検知する。そして、その検知結果に基づいて、記録シートPについて、凹凸シート、普通紙、平滑シートの何れであるのかを判定する。
かかる構成においては、記録シートPについて、凹凸シート、普通紙、平滑シートの何れであるのかをユーザーの操作によらずに自動で判定して、ユーザーの操作性を向上させることができる。また、ユーザーが給送カセット100に種類の異なる記録シートを重ねてセットした場合であっても、種類の違いの自動で判定して、判定結果に応じたシート転写モードを実行することもできる。
図22は、連続プリントジョブ中に記録シートPの種類が凹凸シートから平滑シートに代わった場合における二次転写バイアスの切り替えを説明するための模式図である。同図において、点線で示される矩形枠は、二次転写ベルト41の全域のうち、二次転写ニップで記録シートPに接触するシート対応領域を示している。凹凸シートを使用しているときには、凹凸シートが二次転写ニップに進入しているタイミングでは、凹凸モードが実行される。また、二次転写ベルト41のシート間対応領域が二次転写ニップに進入するタイミングでは、そのシート間対応領域の状態に応じて、二次転写電源45から出力される二次転写バイアスが異なる。具体的には、Vtref調整制御のための各色のテストトナー像(YT,MT,CT,KT)が形成されたシート間対応領域が二次転写ニップに進入するときには、直前の凹凸モードと同じ二次転写電圧が出力される。これに対し、各色のテストトナー像が形成されたシート間対応領域が二次転写ニップに進入するときには、平滑モードと同じ二次転写バイアスが出力される(弱高湿や強高湿での例)。
記録シートPの種類が凹凸シートから平滑シートに変化すると、平滑シートに対応する平滑モードで平滑シートにトナー像が二次転写される。シートの種類が変化した後、変化後の記録シートP(図示の例では平滑シート)に対する二次転写が終了する前に、次の記録シートPがレジストニップに突き当てられてその種類が判定される。このとき、その種類も一つ前の記録シートPの種類と同じだった場合には、画像の形成が一時中断されて、図示のようにプロセスコントロール処理が実施されて、各色のパッチパターン像(YPP,MPP,CPP,KPP)が形成される。
このように第一実施例に係るプリンタでは、記録シートPの種類が変化してから、同じ種類の記録シートPに対するトナー像の二次転写が二回連続する場合には、二回目の二次転写に先立ってプロセスコントロール処理が実施される。一回目に先立ってプロセスコントロール処理を実施しないのは、種類の変化を検知した時点で既に、一回目の二次転写に対応するトナー像を形成しているので、画像形成を中断することができないからである。
プロセスコントロール処理では、変化後のシート種類に応じた二次転写バイアスを出力する条件で実施される。図示の例では、変化後のシート種類が平滑シートであるので、平滑シートに対応する平滑モードと同じ二次転写バイアスを出力する条件で行われる。
プロセスコントロール処理が終了すると、画像の形成が再開される。そして、次に平滑シートが二次転写ニップに進入するタイミングでは、平滑モードが実施される。つまり、直前のプロセスコントロール処理と同じ二次転写バイアスが引き続き出力される。その後、二次転写ベルト41のシート間対応領域が二次転写ニップに進入するタイミングでは、各色のテストトナー像が形成されているか否かにかかわらず、引き続き平滑モードと同じ二次転写バイアスが出力される。
図23は、第一実施例に係るプリンタの電源制御部200によって実施される連続プリントジョブ中の処理フローを示すフローチャートである。この処理フローにおいて、電源制御部200は、まず、記録シートPのレジストニップへの給送が終了するまで待機する(ステップ1でN:以下、ステップをSと記す)。そして、給送が終了すると(S1でY)、平滑性検知センサー502による検知結果に基づいて記録シートPの種類を判定した後(S2)、その種類、及び環境に応じた二次転写バイアスを二次転写電源45から出力させる(S3)。
その後、シート間タイミングが到来するまで待機する(S4でN)。シート間タイミングは、二次転写ベルト41の周方向における全域のうち、二次転写ニップにて、先行する記録シートPに密着する領域と、後続の記録シートPに密着する領域との間のシート間対応領域が二次転写ニップに進入するタイミングである。シート間タイミングが到来すると(S4でY)、そのシート間タイミング内におけるテストトナー像の二次転写の要否を判定する(S5)。換言すると、前述のシート間対応領域にテストトナー像が形成されているか否かを判定する。
テストトナー像の二次転写が不要な場合には(S5でN)、シート転写モードのときと同じ特性の二次転写バイアスの出力を継続して、次のプリントの有無を判定し(S10)、次のプリントがある場合には(S10でY)、処理フローをS1にループさせる。また、次のプリントがない場合には(S10でN)、二次転写バイアスの出力を停止させた後に(S11)、一連の処理フローを終了する。
一方、上記S5において、テストトナー像の二次転写が必要である場合には(S5でY)、直前のシート転写モードについて、低デューティーの二次転写バイアスを用いる凹凸モードであったか否かを判定する(S6)。そして、凹凸モードであった場合(S6でY)には、そのままの二次転写バイアスでは転写チリを悪化させてしまうので、二次転写バイアスの出力を平滑モードと同じ高デューティーのものに切り替える(S7)。これに対し、凹凸モードでなかった場合(S6でN)には、そのまま二次転写バイアスを維持しても、転写チリを悪化させないので、そのままの二次転写バイアスを維持する(S8)。
上記S7や上記S8の工程の後、テストトナー像の二次転写ベルト41への二次転写が完了すると(S9でY)、処理フローを上述したS10に進める。
[第二実施例]
図24は、第二実施例に係るプリンタの操作表示部501の電気回路を示すブロック図である。この操作表示部501は、実施形態のものとは異なり、平滑紙ボタン、凹凸紙ボタン、及び普通紙ボタンを有していない。その代わりに、メニューキー501c、上キー501d、下キー501e、決定キー501f、ディスプレイ501gなどを有している。
ユーザーによってメニューキー501cが押されると、メイン制御部300は、ディスプレイ501gにメニュー画面を表示させる。ユーザーは、上キー501dや下キー501eの操作により、メニュー画面に表示されている複数のメニューのうち、所望のメニューにカーソルを合わせた状態で決定キー501fを押すことで、そのメニューを選択することができる。ユーザーのキー操作により、「シート種入力」メニューが選択されると、メイン制御部300は、ディスプレイ501gにシート銘柄一覧を表示させる。ユーザーは、上キー501dや下キー501eの操作により、銘柄一覧に表示されている複数の銘柄のうち、給送カセット100にセットした記録シートと同じ銘柄を選択することができる。銘柄と、その銘柄の記録シートにおける表面平滑性とは、一対一の関係であるので、銘柄は表面平滑性を示す情報として機能し得る。
電源制御部200は、銘柄と、記録シートPの種類(平滑シート、凹凸シート、普通紙の3種類)とを関連付けたデータテーブルをデータ記憶回路に記憶している。このデータテーブルから、ユーザーによって入力された銘柄に対応する種類を特定し、特定結果を記録シートPの種類として把握する。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、トナー像を担持する像担持体(例えば中間転写ベルト31)と当接体(例えば二次転写ベルト41)との当接による転写ニップ(例えば二次転写ニップ)に挟み込んだ記録シート(例えば記録シートP)にトナー像を転写するための直流及び交流の重畳による重畳電圧を出力する電源(例えば二次転写電源45)と、前記当接体に転写されたテストトナー像の光学特性を検知する光学特性検知手段(例えば光学センサーユニット40)とを備える画像形成装置(例えばプリンタ)において、前記像担持体として、基材に、これよりも弾性に優れた材料からなる弾性層を積層したものを用い、且つ、前記テストトナー像を前記当接体に転写するテスト転写モードのときには、直流電圧及び交流電圧のうち、直流電圧だけを前記電源から出力させる処理を実施する制御手段(例えば電源制御部200)を設けたことを特徴とするものである。
態様Aにおいては、像担持体として、弾性変形可能な弾性層を設けたものを用いることで、弾性層を設けていないものを用いる場合に比べて、記録シートの搬送速度をより高速にした条件で、凹凸シートに対するトナー像の良好な転写を可能にする。これにより、プリント速度の高速化を実現することができる。また、テスト転写モードでテストトナー像を当接体に転写するための電圧として直流電圧だけからなるものを用いることで、転写ニップ内でトナーを像担持体表面と当接体表面との間で往復移動させないようにする。これにより、トナーを往復移動させることに起因する転写チリの発生を回避することで、テストトナー像の光学特性の検知精度低下を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、トナー像を担持する像担持体と当接体との当接による転写ニップに挟み込んだ記録シートにトナー像を転写するための直流及び交流の重畳による重畳電圧を出力する電源と、前記当接体に転写されたテストトナー像の光学特性を検知する光学特性検知手段とを備える画像形成装置において、前記像担持体として、基材に、これよりも弾性に優れた材料からなる弾性層を積層したものを用い、且つ、前記テストトナー像を前記当接体に転写するテスト転写モードのときには、前記重畳電圧の一周期内で前記転写ニップ内のトナーに対して像担持体側から当接体側に向かう転写方向の静電気力を最も強く作用させる転写ピーク値(例えば転写ピーク値Vt)、及びこれとは反対側のピーク値である逆ピーク値(例えば逆ピーク値Vr)のうち、前記逆ピーク値が、前記像担持体上のトナー像を記録シートに転写するシート転写モードの重畳電圧に比べて前記転写方向とは逆方向の静電気力をより弱くする値である重畳電圧を前記電源から出力させる処理を実施する制御手段を設けたことを特徴とするものである。
態様Bにおいては、像担持体として、弾性変形可能な弾性層を設けたものを用いることで、弾性層を設けていないものを用いる場合に比べて、記録シートの搬送速度をより高速にした条件で、凹凸シートに対するトナー像の良好な転写を可能にする。これにより、プリント速度の高速化を実現することができる。また、テスト転写モードでテストトナー像を当接体に転写するための電圧として、逆ピーク値がシート転写モードの重畳電圧の逆ピーク値に比べて逆方向の静電気力をより弱くする値の重畳電圧を用いる。かかる重畳電圧を用いると、シート転写モードに比べて、トナーの往復移動の勢いを低減するか、あるいはトナーの往復移動を殆どなくすことになる。当接体は凹凸シートとは異なって表面凹部を有さないことから、表面凹部へのトナーの転写不良を抑える狙いでトナー往復移動させる必要もない。このため、往復移動の勢いを低減したり、往復移動を殆どなくしたりしても差し障りない。むしろ、それにより、トナーを往復移動させることによって発生する転写チリを抑制するというメリットが生じる。そして、転写チリを抑制することで、テストトナー像の光学特性の検知精度低下を抑えることができる。
[態様C]
態様Cは、態様Aにおいて、前記像担持体上のトナー像を記録シートに転写するシート転写モードにて、所定の基準値に比べて、前記重畳電圧の一周期内で前記転写ニップ内のトナーに対して像担持体側から当接体側に向かう転写方向の静電気力を最も強く作用させる転写ピーク値、及びこれとは反対側のピーク値である逆ピーク値のうち、前記逆ピーク値の側の値になっている時間の一周期内における割合であるデューティーを、50[%]よりも高くするモードと、50[%]よりも低くするモードとで切り替える処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、凹凸シートにトナー像を転写するときに低デューティーの重畳電圧を電源から出力させることで、シート表面の凹部へのトナーの転写不良を抑えることができる。加えて、平滑シートにトナー像を転写するときに高デューティーの重畳電圧を電源から出力させることで、転写ニップ内でトナーに逆電荷を注入することによるハーフトーン画像の転写不良を抑えることもできる。
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいて、前記デューティーを50[%]よりも低くする前記シート転写モードの直後に実施する前記テスト転写モードでは、直流電圧だけを前記電源から出力させる一方で、前記デューティーを50[%]よりも高くする前記シート転写モードの直後に実施する前記テスト転写モードでは、直前の前記シート転写モードと同じ前記重畳電圧を前記電源から出力させる処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、デューティーを50[%]よりも高くするシート転写モードの直後のテスト転写モードにおいて、電源からの出力電圧を不要に切り替えることによる制御の煩雑化を回避することができる。
[態様E]
態様Eは、態様Bにおいて、前記シート転写モードにて、所定の基準値に比べて前記逆ピーク値の側の値になっている時間の一周期内における割合であるデューティーを、50[%]よりも高くするモードと、50[%]よりも低くするモードとで切り替える処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、凹凸シートにトナー像を転写するときに低デューティーの重畳電圧を電源から出力させることで、シート表面の凹部へのトナーの転写不良を抑えることができる。加えて、平滑シートにトナー像を転写するときに高デューティーの重畳電圧を電源から出力させることで、転写ニップ内でトナーに逆電荷を注入することによるハーフトーン画像の転写不良を抑えることもできる。
[態様F]
態様Fは、態様Eにおいて、前記デューティーを50[%]よりも低くする前記シート転写モードの直後に実施する前記テスト転写モードでは、前記逆ピーク値が前記シート転写モードの前記重畳電圧よりも前記逆方向の静電気力をより弱くする値である前記重畳電圧を前記電源から出力させる一方で、前記デューティーを50[%]よりも高くする前記シート転写モードの直後に実施する前記テスト転写モードでは、直前の前記シート転写モードと同じ前記重畳電圧を前記電源から出力させる処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、高デューティーの重畳電圧を電源から出力させるテスト転写モードにおいて、電源からの出力電圧を不要に切り替えることによる制御の煩雑化を回避することができる。
[態様G]
態様Gは、態様C〜Fの何れかにおいて、環境を検知する環境検知手段(例えば環境センサー50)を設け、前記デューティーを50[%]よりも高くする前記シート転写モードの前記重畳電圧について、前記デューティーと、ピークツウピーク値とのうち、少なくとも何れか一方を、前記環境検知手段による検知結果に応じて変化させる処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、デューティー又はピークツウピーク値のうち、少なくとも一方を環境に応じて変化させることで、高湿の環境であっても、ハーフトーン画像の転写不良を有効に抑えることができる。また、高湿の環境でない場合には、デューティーやピークツウピーク値の制約のない環境に適した条件の電圧を用いて、トナー像を良好に転写することができる。
[態様H]
態様Hは、態様D又はFにおいて、環境を検知する環境検知手段を設け、前記テスト転写モードの前記重畳電圧について、前記デューティーと、ピークツウピーク値とのうち、少なくとも何れか一方を、前記環境検知手段による検知結果に応じて変化させる処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成においても、デューティー又はピークツウピーク値のうち、少なくとも一方を環境に応じて変化させることで、高湿の環境であっても、テストトナー像の転写不良を有効に抑えることができる。また、高湿の環境でない場合には、デューティーやピークツウピーク値の制約のない環境に適した条件の電圧を用いて、テストトナー像を良好に転写することができる。
[態様I]
態様Iは、態様C〜Hの何れかにおいて、前記デューティーを50[%]よりも高くする前記シート転写モードの前記重畳電圧のピークツウピーク値を、前記デューティーを50[%]よりも低くする前記シート転写モードの前記重畳電圧のピークツウピーク値よりも小さくする処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、記録シートとして凹凸シートを用いる場合に、像担持体の表面を転写ニップで凹凸シートの表面形状にならわせて弾性変形させることで、凹凸シートの表面凹部と像担持体との密着性を高める。これにより、表面凹部へのトナーの転写不良を抑えることができる。上述したように、事業ユース向けの高速機であっても、凹凸シートの表面凹部にトナーを良好に転写することができる。
[態様J]
態様Jは、態様C〜Iの何れかにおいて、前記デューティーを50[%]よりも高くする前記シート転写モードの前記重畳電圧の周波数を、前記デューティーを50[%]よりも低くする前記シート転写モードの前記重畳電圧の周波数よりも高くする処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、高デューティーモードにおけるピークツウピーク値をより低い値にすることで、高デューティーモードにおける交番電気ショックによる像担持体や当接体の劣化を抑えることができる。また、低デューティーモードでは、逆ピーク値の値が小さすぎることによる凹凸シートの表面凹部への転写不良を抑えることもできる。
[態様K]
態様Kは、態様C〜Jの何れかにおいて、使用される記録シートの表面平滑性の情報を取得する情報取得手段(例えば操作表示部501や平滑性検知センサー502)を設け、前記情報が比較的低い表面平滑性を示すものであった場合には、前記デューティーを50[%]よりも低くする前記シート転写モードを実行する一方で、前記情報が前記比較的低い表面平滑性よりも高い表面平滑性を示すものであった場合には、前記デューティーを50[%]よりも高くする前記シート転写モードを実行する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、情報取得手段によって取得した情報に基づいて記録シートの種類を把握することができる。
[態様L]
態様Lは、態様Kにおいて、記録シートの銘柄の情報を前記表面平滑性の情報として取得するように、前記情報取得手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、ユーザーに記録シートの種類を判断してもらうことなく、銘柄の情報を入力してもらうだけで、記録シートの種類を把握することができる。
[態様M]
態様Mは、態様Kにおいて、使用される記録シートの表面平滑性を検知する平滑性検知手段を前記情報取得手段として用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、記録シートの種類の情報を入力するというユーザーの手間を省きつつ、種類の情報を取得することができる。