(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1実施形態に係る電子機器100の概略的な外観斜視図である。電子機器100は、装着部110と、基部111と、基部111に取り付けられた固定部112及び測定部120と、を備える。
本実施形態において、基部111は、略長方形の平板形状に構成されている。本明細書では、図1に示すように、平板形状の基部111の短辺方向をx軸方向、平板形状の基部111の長辺方向をy軸方向、平板形状の基部111の直交方向をz軸方向として、以下説明する。また、電子機器100の一部は、本明細書で説明するように可動に構成されているが、本明細書において電子機器100に関する方向を説明する場合には、特に言及されない限り、図1に示す状態におけるx、y及びz軸方向を示すこととする。また、本明細書において、z軸正方向を上、z軸負方向を下といい、x軸正方向を、電子機器100の正面という。
電子機器100は、被検者が装着部110を用いて電子機器100を装着した状態で、被検者の生体情報を測定する。電子機器100が測定する生体情報は、測定部120で測定可能な被検者の脈波である。本実施形態において、電子機器100は、一例として、被検者の手首に装着して、脈波を取得するとして、以下説明を行う。
図2は、図1の電子機器100を被検者が装着した状態を示す概略図である。被検者は、装着部110と、基部111と、測定部120とによって形成される空間に手首を通し、手首を装着部110で固定することにより、図2に示すように電子機器100を装着できる。図1及び図2に示す例では、被検者は、x軸方向に沿って、x軸正方向に向かって、装着部110と、基部111と、測定部120とによって形成される空間に手首を通して電子機器100を装着する。被検者は、例えば、後述する測定部120の脈あて部132が、尺骨動脈又は橈骨動脈が存在する位置に接触するように、電子機器100を装着する。電子機器100は、被検者の手首において、尺骨動脈又は橈骨動脈を流れる血液の脈波を測定する。
測定部120は、本体部121と、外装部122と、センサ部130とを備える。センサ部130は、本体部121に取り付けられている。測定部120は、結合部123を介して、基部111に取り付けられている。
結合部123は、基部111に対して、基部111の表面に沿って回転可能な態様で、基部111に取り付けられていてよい。すなわち、図1に示す例では、結合部123は、矢印Aで示すように、基部111に対してxy平面上で回転可能な態様で、基部111に取り付けられていてよい。この場合、結合部123を介して基部111に取り付けられている測定部120の全体が、基部111に対してxy平面上で回転可能となる。
外装部122は、結合部123を通る軸S1上において、結合部123と連結されている。軸S1は、x軸方向に延びる軸である。このようにして外装部122が結合部123に連結されることにより、外装部122は、結合部123に対し、基部111が延在するxy平面に交差する平面に沿って変位可能である。すなわち、外装部122は、基部111が延在するxy平面に、軸S1を中心として所定の角度傾斜することができる。例えば、外装部122は、yz平面などxy平面に対して所定の傾きを持った面上に乗った状態で変位することができる。本実施形態では、外装部122は、図1の矢印Bで示すように、軸S1を中心に、xy平面に直交するyz平面上で回転可能な態様で、結合部123に連結されることができる。
外装部122は、電子機器100の装着状態において被検者の手首に接触する接触面122aを有する。外装部122は、接触面122a側に、開口部125を有していてよい。外装部122は、本体部121の少なくとも一部を覆うように構成されていてよい。
外装部122は、内側の空間内に、z軸方向に延びる軸部124を備えてよい。本体部121は、軸部124を通すための穴を有し、当該穴に軸部124が通された状態で、本体部121が外装部122の内側の空間に取り付けられている。すなわち、本体部121は、図1の矢印Cで示すように、外装部122に対して、軸部124を中心にxy平面上で回転可能な態様で、外装部122に取り付けられている。つまり、本体部121は、外装部122に対して、基部111の表面であるxy平面に沿って回転可能な態様で、外装部122に取り付けられている。また、本体部121は、図1の矢印Dで示すように、軸部124に沿って、すなわちz軸方向に沿って、外装部122に対して、上下方向に変位可能な態様で、外装部122に取り付けられている。
センサ部130は、本体部121に取り付けられている。ここで、図3を参照して、センサ部130の詳細について説明する。図3は、電子機器100の正面視における外装部122及びセンサ部130を示す概略図である。図3において、センサ部130のうち、正面視で外装部122と重なる部分については、破線で表現されている。
センサ部130は、第1のアーム134と、第2のアーム135とを備える。第2のアーム135は、本体部121に固定される。第2のアーム135の下側の一端135aは、第1のアーム134の一端134aと接続されている。第1のアーム134は、図3の矢印Eで示すように、一端134aを軸として、他端134b側がyz平面上で回転可能な態様で、第2のアーム135と接続されている。
第1のアーム134の他端134b側は、弾性体140を介して第2のアーム135の上側の他端135b側に接続されている。第1のアーム134は、弾性体140が押圧されていない状態において、第1のアーム134の他端134bが外装部122の開口部125から接触面122a側に突出した状態で、第2のアーム135に支持される。弾性体140は、例えばばねである。但し、弾性体140は、ばねに限られず、他の任意の弾性体、例えば樹脂又はスポンジ等とすることができる。
第1のアーム134の他端134bには、脈あて部132が結合されている。脈あて部132は、電子機器100の装着状態において、被検者の血液の脈波の測定対象となる被検部位に接触させる部分である。本実施形態では、脈あて部132は、例えば尺骨動脈又は橈骨動脈が存在する位置に接触する。脈あて部132は、被検者の脈拍による体表面の変化を吸収しにくい素材により構成されていてよい。脈あて部132は、被検者が接触状態において痛みを感じにくい素材により構成されていてよい。例えば、脈あて部132は、内部にビーズを詰めた布製の袋等により構成されていてよい。脈あて部132は、例えば第1のアーム134に着脱可能に構成されていてよい。例えば、被検者は、複数の大きさ及び/又は形状の脈あて部132のうち、自身の手首の大きさ及び/又は形状に合わせて、1つの脈あて部132を第1のアーム134に装着してもよい。これにより、被検者は、自身の手首の大きさ及び/又は形状に合わせた脈あて部132を使用できる。
センサ部130は、第1のアーム134の変位を検出する角速度センサ131を備える。角速度センサ131は第1のアーム134の角度変位を検出できればよい。センサ部130が備えるセンサは、角速度センサ131に限らず、例えば加速度センサ、角度センサ、その他のモーションセンサとしてもよいし、これら複数のセンサを備えていてもよい。
図2に示すように、本実施形態では、電子機器100の装着状態において、脈あて部132は、被検者の右手の親指側の動脈である橈骨動脈上の皮膚に接触している。第2のアーム135と第1のアーム134との間に配置される弾性体140の弾性力により、第1のアーム134の他端134b側に配置された脈あて部132は、被検者の橈骨動脈上の皮膚に接触している。第1のアーム134は、被検者の橈骨動脈の動き、すなわち脈動に応じて変位する。角速度センサ131は、第1のアーム134の変位を検出することにより、脈波を取得する。脈波とは、血液の流入によって生じる血管の容積時間変化を体表面から波形としてとらえたものである。
図3に示すように、第1のアーム134は、弾性体140が押圧されていない状態において、開口部125から他端134bが突出した状態である。被検者に電子機器100を装着した際、第1のアーム134に結合された脈あて部132は、被検者の橈骨動脈上の皮膚に接触する。脈動に応じて弾性体140が伸縮し、脈あて部132が変位する。弾性体140は、脈動を妨げず、かつ脈動に応じて伸縮するように、適度な弾性率を有するものが用いられる。図1に示す開口部125の開口幅Wは、血管径、つまり本実施形態では橈骨動脈径より十分大きい幅を有する。外装部122に開口部125を設けることにより、電子機器100の装着状態において、外装部122の接触面122aは橈骨動脈を圧迫しない。そのため、電子機器100はノイズの少ない脈波の取得が可能となり、測定の精度が向上する。
図1に示すように、固定部112は、基部111に固定されている。固定部112は、装着部110を固定するための固定機構を備えていてよい。固定部112は、電子機器100が脈波の測定を行うために用いられる各種機能部を内部に備えていてよい。例えば、固定部112は、後述する制御部、電源部、記憶部、通信部、報知部、及びこれらを動作させる回路、接続するケーブル等を備えていてよい。
装着部110は、被検者が手首を電子機器100に固定するために用いられる機構である。図1に示す例では、装着部110は、細長い帯状のバンドである。図1に示す例では、装着部110は、一端110aが測定部120の上端に結合され、基部111の内部を通って、他端110bがy軸正方向側に位置するように、配置されている。被検者は、例えば、右手首を、装着部110と、基部111と、測定部120とによって形成される空間に通し、脈あて部132が右手首の橈骨動脈上の皮膚に接触するように調整しながら、左手で装着部110の他端110bをy軸正方向に引く。被検者は、右手首が電子機器100に固定される程度に他端110bを引き、その状態で装着部110を固定部112の固定機構により固定する。このようにして、被検者は、片手(本実施形態では左手)で電子機器100を装着できる。また、装着部110を用いて手首を電子機器100に固定することにより、電子機器100の装着状態を安定させることができる。これにより、測定中に手首と電子機器100との位置関係が変化しにくくなるため、安定して脈波を測定することが可能となり、測定の精度が向上する。
次に、電子機器100の装着時における、電子機器100の可動部の動きについて説明する。
被検者は、電子機器100を装着するとき、上述のように、x軸方向に沿って、装着部110と、基部111と、測定部120とによって形成される空間に手首を通す。このとき、測定部120は、基部111に対して、図1の矢印Aの方向に回転可能に構成されている。したがって、被検者は、測定部120を、図1の矢印Aで示す方向に回転させて手首を通すことができる。このように測定部120が回転可能に構成されていることにより、被検者は、自身と電子機器100との位置関係に応じて、測定部120の方向を適宜変えながら、手首を通すことができる。このようにして、電子機器100によれば、被検者が電子機器100を装着しやすくなる。
被検者は、装着部110と、基部111と、測定部120とによって形成される空間に手首を通したあと、脈あて部132を手首の橈骨動脈上の皮膚に接触させる。ここで、本体部121が、図1の矢印Dの方向に変位可能に構成されていることから、本体部121に結合されたセンサ部130の第1のアーム134も、図4に示すように、z軸方向である矢印Dの方向に変位可能である。そのため、被検者は、脈あて部132が橈骨動脈上の皮膚に接触するように、自身の手首の大きさ及び太さ等に合わせて、第1のアーム134を矢印Dの方向に変位させることができる。被検者は、変位させた位置で、本体部121を固定することができる。このようにして、電子機器100によれば、センサ部130の位置を、測定に適した位置に調整しやすくなる。そのため、電子機器100によれば、測定の精度が向上する。なお、図1に示す例では、本体部121がz軸方向に沿って変位可能であると説明したが、本体部121は、必ずしもz軸方向に沿って変位可能に構成されていなくてもよい。本体部121は、例えば手首の大きさ及び太さ等に合わせて位置を調整可能に構成されていればよい。例えば、本体部121は、基部111の表面であるxy平面に交差する方向に沿って変位可能に構成されていてよい。
ここで、脈あて部132は、橈骨動脈上の皮膚において、皮膚表面に対して直交する方向に接触していると、第1のアーム134に対して伝達される脈動が大きくなる。すなわち、脈あて部132の変位方向(図3の矢印Eで示す方向)が、皮膚表面に対して直交する方向である場合、第1のアーム134に対して伝達される脈動が大きくなり、脈動の取得精度が向上し得る。本実施形態に係る電子機器100において、本体部121及び本体部121に結合されたセンサ部130は、図1の矢印Cで示すように、外装部122に対して、軸部124を中心に回転可能に構成されている。これにより、被検者は、脈あて部132の変位方向が皮膚表面に対して直交する方向となるように、センサ部130の方向を調整することができる。すなわち、電子機器100は、センサ部130の方向を、脈あて部132の変位方向が皮膚表面に対して直交する方向となるように調整可能である。このようにして、電子機器100によれば、被検者の手首の形状に応じて、センサ部130の方向を調整することができる。これにより、第1のアーム134に対して、被検者の脈動の変化がより伝達されやすくなる。そのため、電子機器100によれば測定の精度が向上する。
被検者は、図5(A)に示すように脈あて部132を手首の橈骨動脈上の皮膚に接触させたあと、手首を電子機器100に固定するために、装着部110の他端110bを引く。ここで、外装部122が図1の矢印Bの方向に回転可能に構成されていることから、被検者が装着部110を引くと、外装部122は軸S1を中心として回転し、外装部122の上端側がy軸負方向に変位する。すなわち、外装部122は、図5(B)に示すように、上端側がy軸負方向に変位する。第1のアーム134は、弾性体140を介して第2のアーム135に接続されているため、外装部122の上端側がy軸負方向に変位することにより、弾性体140の弾性力により、脈あて部132が橈骨動脈側に付勢される。これにより、脈あて部132は、より確実に脈動の変化をとらえやすくなる。そのため、電子機器100によれば測定の精度が向上する。
外装部122の回転方向(矢印Bで示す方向)と、第1のアーム134の回転方向(矢印Eで示す方向)とは、略平行であってよい。外装部122の回転方向と第1のアーム134の回転方向とが平行に近いほど、外装部122の上端側をy軸負方向に変位させたときに、弾性体140の弾性力が効率的に第1のアーム134にかかる。なお、外装部122の回転方向と第1のアーム134の回転方向が略平行な範囲は、外装部122の上端側がy軸負方向に変位したときに、弾性体140の弾性力が第1のアーム134にかけられる範囲を含む。
ここで、図5(A)及び図5(B)に示す外装部122の正面側の面122bは、上下方向に長い略長方形状である。面122bは、y軸負方向側の辺上の上端側に、切り欠き122cを有する。切り欠き122cにより、図5(B)に示すように外装部122の上端側がy軸負方向に変位しても、面122bは橈骨動脈上の皮膚に接触しにくい。そのため、橈骨動脈の脈動が、面122bに接触して妨げられることを防止しやすくなる。
さらに、図5(B)に示すように外装部122の上端側がy軸負方向に変位したとき、切り欠き122cにおける下方側の端部122dが、手首の橈骨動脈とは異なる位置で接触する。端部122dが手首に接触することにより、外装部122は当該接触位置以上にy軸負方向に変位しなくなる。そのため、端部122dにより、外装部122が所定位置以上に変位することを防止することができる。仮に、外装部122が所定位置以上にy軸負方向に変位すると、弾性体140の弾性力により、第1のアーム134が橈骨動脈側に強く付勢される。これにより、橈骨動脈の脈動が妨げられやすくなる。本実施形態に係る電子機器100では、外装部122が端部122dを有することにより、第1のアーム134から橈骨動脈に過度な圧力がかかることを防止できる結果、橈骨動脈の脈動が妨げられにくくなる。このように、端部122dは、外装部122の変位可能な範囲を制限するストッパとして機能する。
本実施形態において、第1のアーム134の回転軸S2は、図5(A)及び図5(B)に示すように面122bのy軸負方向側の端部から離間した位置に配置されていてよい。回転軸S2が面122bのy軸負方向側の端部の近辺に配置されている場合、第1のアーム134が被検者の手首に接触することにより、橈骨動脈の脈動による変化を正確にとらえられなくなる場合がある。回転軸S2が面122bのy軸負方向側の端部から離間した位置に配置されることにより、手首に第1のアーム134が接触する可能性を低減することができる。これにより、第1のアーム134は、より正確に脈動の変化をとらえやすくなる。
被検者は、装着部110の他端110bを引き、その状態で装着部110を固定部112の固定機構により固定することにより、手首に電子機器100を装着する。このように手首に装着された状態で、電子機器100は、第1のアーム134が脈動の変化に合わせて矢印Eで示す方向に変化することにより、被検者の脈波を測定する。
図6は、電子機器100の概略構成を示す機能ブロック図である。電子機器100は、センサ部130と、制御部143と、電源部144と、記憶部145と、通信部146と、報知部147とを備える。本実施形態では、制御部143、電源部144、記憶部145、通信部146及び報知部147は、例えば固定部112の内部に含まれる。
センサ部130は、角速度センサ131を含み、被検部位から脈動を検出して脈波を取得する。
制御部143は、電子機器100の各機能ブロックをはじめとして、電子機器100の全体を制御及び管理するプロセッサである。また、制御部143は、取得された脈波から、脈波の伝播現象に基づく指標を算出するプロセッサである。制御部143は、制御手順を規定したプログラム及び脈波の伝播現象に基づく指標を算出するプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成され、かかるプログラムは、例えば記憶部145等の記憶媒体に格納される。また、制御部143は、算出した指標に基づいて、被検者の糖代謝又は脂質代謝等に関する状態を推定する。制御部143は、報知部147へのデータの報知を行ったりする。
電源部144は、例えばリチウムイオン電池並びにその充電及び放電のための制御回路等を備え、電子機器100全体に電力を供給する。
記憶部145は、プログラム及びデータを記憶する。記憶部145は、半導体記憶媒体、及び磁気記憶媒体等の任意の非一過的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。記憶部145は、複数の種類の記憶媒体を含んでよい。記憶部145は、メモリカード、光ディスク、又は光磁気ディスク等の可搬の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組み合わせを含んでよい。記憶部145は、RAM(Random Access Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでよい。記憶部145は、各種情報や電子機器100を動作させるためのプログラム等を記憶するとともに、ワークメモリとしても機能する。記憶部145は、例えばセンサ部130により取得された脈波の測定結果を記憶してもよい。
通信部146は、外部装置と有線通信又は無線通信を行うことにより、各種データの送受信を行う。通信部146は、例えば、健康状態を管理するために被検者の生体情報を記憶する外部装置と通信を行い、電子機器100が測定した脈波の測定結果や、電子機器100が推定した健康状態を、当該外部装置に送信する。
報知部147は、音、振動、及び画像等で情報を報知する。報知部147は、スピーカ、振動子、及び液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)、又は無機ELディスプレイ(IELD:Inorganic Electro-Luminescence Display)等の表示デバイスを備えていてもよい。本実施形態において、報知部147は、例えば、被検者の糖代謝又は脂質代謝の状態を報知する。
図7は、電子機器100を用いて手首で取得された脈波の一例を示す図である。図7は、角速度センサ131を脈動の検知手段として用いた場合のものである。図7は、角速度センサ131で取得された角速度を時間積分したものであり、横軸は時間、縦軸は角度を表す。取得された脈波は、例えば被検者の体動が原因のノイズを含む場合があるので、DC(Direct Current)成分を除去するフィルタによる補正を行い、脈動成分のみを抽出してもよい。
取得された脈波から、脈波に基づく指標を算出する方法を、図7を用いて説明する。脈波の伝播は、心臓から押し出された血液による拍動が、動脈の壁や血液を伝わる現象である。心臓から押し出された血液による拍動は、前進波として手足の末梢まで届き、その一部は血管の分岐部、血管径の変化部等で反射され反射波として戻ってくる。脈波に基づく指標は、例えば、前進波の脈波伝播速度PWV(Pulse Wave Velocity)、脈波の反射波の大きさPR、脈波の前進波と反射波との時間差Δt、脈波の前進波と反射波との大きさの比で表されるAI(Augmentation Index)等である。
図7に示す脈波は、利用者のn回分の脈拍であり、nは1以上の整数である。脈波は、心臓からの血液の駆出により生じた前進波と、血管分岐や血管径の変化部から生じた反射波とが重なりあった合成波である。図7において、脈拍毎の前進波による脈波のピークの大きさをPFn、脈拍毎の反射波による脈波のピークの大きさをPRn、脈拍毎の脈波の最小値をPSnで示す。また、図7において、脈拍のピークの間隔をTPRで示す。
脈波に基づく指標とは、脈波から得られる情報を定量化したものである。例えば、脈波に基づく指標の一つであるPWVは、上腕と足首等、2点の被検部位で測定された脈波の伝播時間差と2点間の距離とに基づいて算出される。具体的には、PWVは、動脈の2点における脈波(例えば上腕と足首)を同期させて取得し、2点の距離の差(L)を2点の脈波の時間差(PTT)で除して算出される。例えば、脈波に基づく指標の一つである反射波の大きさPRは、反射波による脈波のピークの大きさPRnを算出してもよいし、n回分を平均化したPRaveを算出してもよい。例えば、脈波に基づく指標の一つである脈波の前進波と反射波との時間差Δtは、所定の脈拍における時間差Δtnを算出してもよいし、n回分の時間差を平均化したΔtaveを算出してもよい。例えば、脈波に基づく指標の一つであるAIは、反射波の大きさを前進波の大きさで除したものであり、AIn=(PRn−PSn)/(PFn−PSn)で表わされる。AInは脈拍毎のAIである。AIは、例えば、脈波の測定を数秒間行い、脈拍毎のAIn(n=1〜nの整数)の平均値AIaveを算出し、脈波に基づく指標としてもよい。
脈波伝播速度PWV、反射波の大きさPR、前進波と反射波との時間差Δt、及びAIは、血管壁の硬さに依存して変化するため、動脈硬化の状態の推定に用いることができる。例えば、血管壁が硬いと、脈波伝播速度PWVは大きくなる。例えば、血管壁が硬いと、反射波の大きさPRは大きくなる。例えば、血管壁が硬いと、前進波と反射波との時間差Δtは小さくなる。例えば、血管壁が硬いと、AIは大きくなる。さらに、電子機器100は、これらの脈波に基づく指標を用いて、動脈硬化の状態を推定できると共に、血液の流動性(粘性)を推定することができる。特に、電子機器100は、同一被検者の同一被検部位、及び動脈硬化の状態がほぼ変化しない期間(例えば数日間内)において取得された脈波に基づく指標の変化から、血液の流動性の変化を推定することができる。ここで血液の流動性とは、血液の流れやすさを示し、例えば、血液の流動性が低いと、脈波伝播速度PWVは小さくなる。例えば、血液の流動性が低いと、反射波の大きさPRは小さくなる。例えば、血液の流動性が低いと、前進波と反射波との時間差Δtは大きくなる。例えば、血液の流動性が低いと、AIは小さくなる。
本実施形態では、脈波に基づく指標の一例として、電子機器100が、脈波伝播速度PWV、反射波の大きさPR、前進波と反射波との時間差Δt、及びAIを算出する例を示したが、脈波に基づく指標はこれに限ることはない。例えば、電子機器100は、脈波に基づく指標として、後方収縮期血圧を用いてもよい。
図8は、算出されたAIの時間変動を示す図である。本実施の形態では、脈波は、角速度センサ131を備えた電子機器100を用いて約5秒間取得された。制御部143は、取得された脈波から脈拍毎のAIを算出し、さらにこれらの平均値AIaveを算出した。本実施の形態では、電子機器100は、食事前及び食事後の複数のタイミングで脈波を取得し、取得された脈波に基づく指標の一例としてAIの平均値(以降AIとする)を算出した。図8の横軸は、食事後の最初の測定時間を0として、時間の経過を示す。図8の縦軸は、その時間に取得された脈波から算出されたAIを示す。被検者は安静の状態で、脈波は橈骨動脈上で取得された。
電子機器100は、食事前、食事直後、及び食事後30分毎に脈波を取得し、それぞれの脈波に基づいて複数のAIを算出した。食事前に取得された脈波から算出されたAIは約0.8であった。食事前に比較して、食事直後のAIは小さくなり、食事後約1時間でAIは最小の極値となった。食事後3時間で測定を終了するまで、AIは徐々に大きくなった。
電子機器100は、算出されたAIの変化から、血液の流動性の変化を推定することができる。例えば血液中の赤血球、白血球、血小板が団子状に固まる、又は粘着力が大きくなると、血液の流動性は低くなる。例えば、血液中の血漿の含水率が小さくなると、血液の流動性は低くなる。これらの血液の流動性の変化は、例えば、後述する糖脂質状態や、熱中症、脱水症、低体温等の被検者の健康状態によって変化する。被検者の健康状態が重篤化する前に、被検者は、本実施の形態の電子機器100を用いて、自らの血液の流動性の変化を知ることができる。図8に示す食事前後のAIの変化から、食事後に血液の流動性は低くなり、食事後約1時間で最も血液の流動性は低くなり、その後徐々に血液の流動性が高くなったことが推定できる。電子機器100は、血液の流動性が低い状態を「どろどろ」、血液の流動性が高い状態を「さらさら」と表現して報知してもよい。例えば、電子機器100は、「どろどろ」「さらさら」の判定を、被検者の実年齢におけるAIの平均値を基準にして行ってもよい。電子機器100は、算出されたAIが平均値より大きければ「さらさら」、算出されたAIが平均値より小さければ「どろどろ」と判定してもよい。電子機器100は、例えば、「どろどろ」「さらさら」の判定は、食事前のAIを基準にして判定してもよい。電子機器100は、食事後のAIを食事前のAIと比較して「どろどろ」度合いを推定してもよい。電子機器100は、例えば、食事前のAIすなわち空腹時のAIとして、被検者の血管年齢(血管の硬さ)の指標として用いることができる。電子機器100は、例えば、被検者の食事前のAIすなわち空腹時のAIを基準として、算出されたAIの変化量を算出すれば、被検者の血管年齢(血管の硬さ)による推定誤差を少なくすることができるので、血液の流動性の変化をより精度よく推定することができる。
図9は、算出されたAIと血糖値の測定結果を示す図である。脈波の取得方法及びAIの算出方法は、図8に示した実施の形態と同じである。図9の右縦軸は血中の血糖値を示し、左縦軸は算出されたAIを示す。図9の実線は、取得された脈波から算出されたAIを示し、点線は測定された血糖値を示す。血糖値は、脈波取得直後に測定された。血糖値は、テルモ社製の血糖測定器「メディセーフフィット」を用いて測定された。食事前の血糖値と比べて、食事直後の血糖値は約20mg/dl上昇している。食事後約1時間で血糖値は最大の極値となった。その後、測定を終了するまで、血糖値は徐々に小さくなり、食事後約3時間でほぼ食事前の血糖値と同じになった。
図9に示す通り、食前食後の血糖値は、脈波から算出されたAIと負の相関がある。食後は血糖値が上昇し、インスリンが分泌される。インスリンの分泌による血管拡張作用と、血糖値上昇による浸透圧の増加により血流量が増加する。これらの結果、血管が拡張する。血管が拡張することによりAIが低下する。また、血糖値が高くなると、血液中の糖により赤血球及び血小板が団子状に固まり、又は粘着力が強くなり、その結果血液の流動性は低くなることがある。血液の流動性が低くなると、脈波伝播速度PWVは小さくなることがある。脈波伝播速度PWVが小さくなると、前進波と反射波との時間差Δtは大きくなることがある。前進波と反射波との時間差Δtが大きくなると、前進波の大きさPFに対して反射波の大きさPRは小さくなることがある。前進波の大きさPFに対して反射波の大きさPRが小さくなると、AIは小さくなることがある。食事後数時間内(本実施の形態では3時間)のAIは、血糖値と相関があることから、AIの変動により、被検者の血糖値の変動を推定することができる。また、あらかじめ被検者の血糖値を測定し、AIとの相関を取得しておけば、電子機器100は、算出されたAIから被検者の血糖値を推定することができる。
食事後に最初に検出されるAIの最小極値であるAIPの発生時間に基づいて、電子機器100は被検者の糖代謝の状態を推定できる。電子機器100は、糖代謝の状態として、例えば血糖値を推定する。糖代謝の状態の推定例として、例えば食事後に最初に検出されるAIの最小極値AIPが所定時間以上(例えば食後約1.5時間以上)経ってから検出される場合、電子機器100は、被検者が糖代謝異常(糖尿病患者)であると推定できる。
食事前のAIであるAIBと、食事後に最初に検出されるAIの最小極値であるAIPとの差(AIB−AIP)に基づいて、電子機器100は被検者の糖代謝の状態を推定できる。糖代謝の状態の推定例として、例えば(AIB−AIP)が所定数値以上(例えば0.5以上)の場合、被検者は糖代謝異常(食後高血糖患者)であると推定できる。
図10は、算出されたAIと血糖値との関係を示す図である。算出されたAIと血糖値とは、血糖値の変動が大きい食事後1時間以内に取得されたものである。図10のデータは、同一被検者における異なる複数の食事後のデータを含む。図10に示す通り、算出されたAIと血糖値とは負の相関を示した。算出されたAIと血糖値との相関係数は0.9以上であり、非常に高い相関を示した。例えば、図10に示すような算出されたAIと血糖値との相関を、あらかじめ被検者毎に取得しておけば、電子機器100は、算出されたAIから被検者の血糖値を推定することもできる。
図11は、算出されたAIと中性脂肪値の測定結果を示す図である。脈波の取得方法及びAIの算出方法は、図8に示した実施形態と同じである。図11の右縦軸は血中の中性脂肪値を示し、左縦軸はAIを示す。図11の実線は、取得された脈波から算出されたAIを示し、点線は測定された中性脂肪値を示す。中性脂肪値は、脈波取得直後に測定した。中性脂肪値は、テクノメディカ社製の脂質測定装置「ポケットリピッド」を用いて測定された。食事前の中性脂肪値と比較して、食事後の中性脂肪値の最大極値は約30mg/dl上昇している。食事後約2時間後に中性脂肪は最大の極値となった。その後、測定を終了するまで、中性脂肪値は徐々に小さくなり、食事後約3.5時間でほぼ食事前の中性脂肪値と同じになった。
これに対し、算出されたAIの最小極値は、食事後約30分で第1の最小極値AIP1が検出され、食事後約2時間で第2の最小極値AIP2が検出された。食事後約30分で検出された第1の最小極値AIP1は、前述した食後の血糖値の影響によるものであると推定できる。食事後約2時間で検出された第2の最小極値AIP2は、食事後約2時間で検出された中性脂肪の最大極値とその発生時間がほぼ一致している。このことから、食事から所定時間以降に検出される第2の最小極値AIP2は中性脂肪の影響によるものであると推定できる。食前食後の中性脂肪値は、血糖値と同様に、脈波から算出されたAIと負の相関があることがわかった。特に食事から所定時間以降(本実施の形態では約1.5時間以降)に検出されるAIの最小極値AIP2は、中性脂肪値と相関があることから、AIの変動により、被検者の中性脂肪値の変動を推定することができる。また、あらかじめ被検者の中性脂肪値を測定し、AIとの相関を取得しておけば、電子機器100は、算出されたAIから被検者の中性脂肪値を推定することができる。
食事後所定時間以降に検出される第2の最小極値AIP2の発生時間に基づいて、電子機器100は被検者の脂質代謝の状態を推定できる。電子機器100は、脂質代謝の状態として、例えば脂質値を推定する。脂質代謝の状態の推定例として、例えば第2の最小極値AIP2が食事後所定時間以上(例えば4時間以上)経ってから検出される場合、電子機器100は、被検者が脂質代謝異常(高脂血症患者)であると推定できる。
食事前のAIであるAIBと、食事後所定時間以降に検出される第2の最小極値AIP2との差(AIB−AIP2)に基づいて、電子機器100は被検者の脂質代謝の状態を推定できる。脂質代謝異常の推定例として、例えば(AIB−AIP2)が0.5以上の場合、電子機器100は、被検者が脂質代謝異常(食後高脂血症患者)であると推定できる。
また、図9乃至図11で示した測定結果から、本実施の形態の電子機器100は、食事後に最も早く検出される第1の最小極値AIP1及びその発生時間に基づいて、被検者の糖代謝の状態を推定することができる。さらに、本実施の形態の電子機器100は、第1の最小極値AIP1の後で所定時間以降に検出される第2の最小極値AIP2及びその発生時間に基づいて、被検者の脂質代謝の状態を推定することができる。
本実施形態では脂質代謝の推定例として中性脂肪の場合を説明したが、脂質代謝の推定は中性脂肪に限られない。電子機器100が推定する脂質値は、例えば総コレステロール、善玉(HDL:High Density Lipoprotein)コレステロール及び悪玉(LDL:Low Density Lipoprotein)コレステロール等を含む。これらの脂質値も、上述の中性脂肪の場合と同様の傾向を示す。
図12は、AIに基づいて血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態を推定する手順を示すフロー図である。図12を用いて、実施の形態に係る電子機器100による血液の流動性、並びに糖代謝及び脂質代謝の状態の推定の流れを説明する。
図12に示すように、電子機器100は、初期設定として、被検者のAI基準値を取得する(ステップS101)。AI基準値は、被検者の年齢から推定される平均的なAIを用いてもよいし、事前に取得された被検者の空腹時のAIを用いてもよい。また、電子機器100は、ステップS102〜S108において食前と判断されたAIをAI基準値としてもよいし、脈波測定直前に算出されたAIをAI基準値としてもよい。この場合、電子機器100は、ステップS102〜S108より後にステップS101を実行する。
続いて、電子機器100は、脈波を取得する(ステップS102)。例えば電子機器100は、所定の測定時間(例えば、5秒間)に取得された脈波について、所定の振幅以上が得られたか否かを判定する。取得された脈波について、所定の振幅以上が得られたら、ステップS103に進む。所定の振幅以上が得られなかったら、ステップS102を繰り返す(これらのステップは図示せず)。ステップS102において、例えば電子機器100は、所定の振幅以上の脈波を検出すると、自動で脈波を取得する。
電子機器100は、ステップS102で取得された脈波から、脈波に基づく指標としてAIを算出し記憶部145に記憶する(ステップS103)。電子機器100は、所定の脈拍数(例えば、3拍分)毎のAIn(n=1〜nの整数)から平均値AIaveを算出して、これをAIとしてもよい。あるいは、電子機器100は、特定の脈拍におけるAIを算出してもよい。
AIは、例えば脈拍数PR、脈圧(PF−PS)、体温、被検出部の温度等によって補正を行い算出してもよい。脈拍とAI及び脈圧とAIは共に負の相関があり、温度とAIとは正の相関があることが知られている。補正を行う際は、例えばステップS103において、電子機器100はAIに加え脈拍、脈圧を算出する。例えば、電子機器100は、センサ部130に温度センサを搭載し、ステップS102における脈波の取得の際に、被検出部の温度を取得してもよい。事前に作成された補正式に、取得された脈拍、脈圧、温度等を代入することにより、AIは補正される。
続いて、電子機器100は、ステップS101で取得されたAI基準値とステップS103で算出されたAIとを比較して、被検者の血液の流動性を推定する(ステップS104)。算出されたAIがAI基準値より大きい場合(YESの場合)、血液の流動性は高いと推定され、電子機器100は例えば血液の流動性が高いことをと報知する(ステップS105)。算出されたAIがAI基準値より大きくない場合(NOの場合)、血液の流動性は低いと推定され、電子機器100は例えば血液の流動性が低いことを報知する(ステップS106)。
続いて、電子機器100は、糖代謝及び脂質代謝の状態を推定するか否かを被検者に確認する(ステップS107)。ステップS107で糖代謝及び脂質代謝を推定しない場合(NOの場合)、電子機器100は処理を終了する。ステップS107で糖代謝及び脂質代謝を推定する場合(YESの場合)、電子機器100は、算出されたAIが食前、食後いずれかに取得されたものかを確認する(ステップS108)。食後ではない(食前)場合(NOの場合)、ステップS102に戻り、次の脈波を取得する。食後の場合(YESの場合)、電子機器100は、算出されたAIに対応する脈波の取得時間を記憶する(ステップS109)。続いて脈波を取得する場合(ステップS110のNOの場合)、ステップS102に戻り、次の脈波を取得する。脈波測定を終了する場合(ステップS110のYESの場合)ステップS111以降に進み、電子機器100は被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態の推定を行う。
続いて、電子機器100は、ステップS104で算出された複数のAIから、最小極値とその時間を抽出する(ステップS111)。例えば、図11の実線で示すようなAIが算出された場合、電子機器100は、食事後約30分の第1の最小極値AIP1、及び食事後約2時間の第2の最小極値AIP2を抽出する。
続いて、電子機器100は、第1の最小極値AIP1とその時間から、被検者の糖代謝の状態を推定する(ステップS112)。さらに、電子機器100は、第2の最小極値AIP2とその時間から、被検者の脂質代謝の状態を推定する(ステップS113)。被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態の推定例は、前述の図11と同様であるので省略する。
続いて、電子機器100は、ステップS112及びステップS113の推定結果を報知し(ステップS114)、図12に示す処理を終了する。報知部147は、例えば「糖代謝は正常です」、「糖代謝異常が疑われます」、「脂質代謝は正常です」、「脂質代謝異常が疑われます」等の報知を行う。また、報知部147は「病院で受診しましょう」、「食生活を見直しましょう」等のアドバイスを報知してもよい。そして、電子機器100は、図12に示す処理を終了する。
本実施形態において、電子機器100は、脈波に基づく指標から被検者の血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態を推定できる。このため、電子機器100は、非侵襲かつ短時間で被検者の血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態を推定できる。
本実施形態において、電子機器100は、脈波に基づく指標の極値とその時間から、糖代謝の状態の推定と、脂質代謝の状態の推定とを行うことができる。このため、電子機器100は、非侵襲かつ短時間で被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定できる。
本実施形態において、電子機器100は、例えば、食事前(空腹時)の脈波に基づく指標を基準にして、被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定できる。このため、短期的に変化しない血管径や血管の硬さ等を考慮せずに、被検者の血液の流動性及び糖代謝及び脂質代謝の状態を正確に推定できる。
本実施形態において、電子機器100は、脈波に基づく指標と血糖値、脂質値とのキャリブレーションを取っておけば、被検者の血糖値、脂質値を非侵襲かつ短時間に推定することができる。
図13は、第1実施形態に係るシステムの概略構成を示す模式図である。図13に示したシステムは、電子機器100と、サーバ151と、携帯端末150と、通信ネットワークを含んで構成される。図13に示したように、電子機器100で算出された脈波に基づく指標は、通信ネットワークを通じてサーバ151に送信され、被検者の個人情報としてサーバ151に保存される。サーバ151では、被検者の過去の取得情報や、様々なデータベースと比較することにより、被検者の血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態を推定する。サーバ151はさらに被検者に最適なアドバイスを作成する。サーバ151は、被検者が所有する携帯端末150に推定結果及びアドバイスを返信する。携帯端末150は受信した推定結果及びアドバイスを携帯端末150の表示部から報知する、というシステムを構築することができる。電子機器100の通信機能を利用することで、サーバ151には複数の利用者からの情報を収集することができるため、さらに推定の精度が上がる。また、携帯端末150を報知手段として用いるため、電子機器100は報知部147が不要となり、さらに小型化される。また、被検者の血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態の推定をサーバ151で行うために、電子機器100の制御部143の演算負担を軽減できる。また、被検者の過去の取得情報をサーバ151で保存できるために、電子機器100の記憶部145の負担を軽減できる。そのため、電子機器100はさらに小型化、簡略化が可能となる。また、演算の処理速度も向上する。
本実施形態に係るシステムはサーバ151を介して、電子機器100と携帯端末150とを通信ネットワークで接続した構成を示したが、本発明に係るシステムはこれに限定されるものではない。サーバ151を用いずに、電子機器100と携帯端末150を直接通信ネットワークで接続して構成してもよい。
本開示を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施例に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。
例えば、上述の実施形態においては、センサ部130に角速度センサ131を備える場合について説明したが、電子機器100の形態はこれに限ることはない。センサ部130は、発光部と受光部を含む光学脈波センサを備えていてもよいし、圧力センサを備えていてもよい。また、電子機器100の装着は手首に限らない。首、足首、太もも、耳等、動脈上にセンサ部130が配置されていればよい。
例えば、上述の実施形態においては、脈波に基づく指標の第1の極値及び第2の極値とこれらの時間とに基づいて、被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定したが、電子機器100が実行する処理はこれに限ることはない。一方の極値しか表れない場合、極値が表れない場合もあり、電子機器100は、算出された脈波に基づく指標の時間変動の全体傾向(例えば積分値、フーリエ変換等)に基づいて、被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定してもよい。また、電子機器100は、脈波に基づく指標の極値を抽出するのではなく、脈波に基づく指標が所定の値以下になった時間範囲に基づいて、被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定してもよい。
例えば、上述の実施形態においては、食事前後の血液の流動性を推定する場合について説明したが、電子機器100が実行する処理はこれに限ることはない。電子機器100は、運動前後及び運動中の血液の流動性を推定してもよいし、入浴前後及び入浴中の血液の流動性を推定してもよい。
上述の実施形態において、第1のアーム134の固有振動数は、取得する脈波の振動数と近くするようにしてもよい。例えば、取得する脈波の振動数が0.5〜2Hz(脈拍30〜120)の場合、第1のアーム134は0.5〜2Hzの範囲のいずれかの固有振動数を有するようにしてもよい。第1のアーム134の固有振動数は、第1のアーム134の長さ、重量、弾性体140の弾性率又はばね定数等を変化させることによって、最適化することができる。第1のアーム134の固有振動数を最適化することによって、電子機器100は、より高精度の測定が可能になる。
上述の実施形態において、電子機器100が脈波を測定すると説明したが、脈波は必ずしも電子機器100により測定されなくてもよい。例えば、電子機器100は、コンピュータ又は携帯電話機等の情報処理装置と有線又は無線で接続され、角速度センサ131で取得された角速度の情報を情報処理装置に送信してもよい。この場合、情報処理装置が、角速度の情報に基づいて脈波を測定してもよい。情報処理装置は、糖代謝及び脂質代謝の推定処理等を実行してもよい。各種情報処理を電子機器100に接続された情報処理装置が実行する場合、電子機器100は、制御部143、記憶部145、報知部147等を備えていなくてもよい。また、電子機器100が有線により情報処理装置に接続されている場合、電子機器100は、電源部144を有さず、情報処理装置から電力が供給されてもよい。
電子機器100は、上述の実施形態で説明した全ての可動部を備えていなくてもよい。電子機器100は、上述の実施形態で説明した可動部のうち、一部のみを備えていてもよい。例えば、測定部120は、基部111に対して回転可能に構成されていなくてもよい。例えば、本体部121は、外装部122に対して、上下方向に変位可能に構成されていなくてもよい。例えば、本体部121は、外装部122に対して、回転可能に構成されていなくてもよい。
上述の実施形態では、被検者が装着部110の他端110bを引くことにより、外装部122の上端側がy軸負方向に変位すると説明した。しかしながら、外装部122は、他の機構により、上端側が変位するように構成されていてもよい。例えば、固定部112の上端側に、y軸負方向に押圧可能な機構が取り付けられており、当該機構により、外装部122の上端側をy軸負方向に押し込むように構成されていてもよい。このような機構として、例えばボールねじを用いることができる。
図1に示す例では、外装部122の回転軸となる軸S1が、正面視において、外装部122のy軸負方向側に配置されているが、軸S1の配置は、これに限られない。軸S1は、例えば第1のアーム134における回転変位の外周端である他端134bと、軸S2とを結ぶ直線L1の近傍に配置されてもよい。例えば、軸S1は、図14に示すように、他端134bと、軸S2とを結ぶ直線L1上に配置されてもよい。図14に示す例では、他端134bから軸S2まで第1のアーム134が延在しているため、軸S1は、第1のアーム134が延在する直線L1上に配置される。軸S1が、直線L1上に配置されている場合、軸S2を回転軸とする脈あて部132の変位方向L2が、軸S1を回転軸とした場合の脈あて部132の変位方向と一致する。そのため、軸S1を回転軸として外装部122を回転させた場合、脈あて部132が接触する手首上の位置が変化しにくくなる。脈あて部132が接触する手首上の位置は、軸S1が、第1のアーム134が延在する直線L1に近いほど、外装部122の回転によっても変化しにくくなる。そのため、軸S1が直線L1に近いほど、被検者が手首に電子機器100を固定するために外装部122を回転させたときに、脈あて部132の手首への接触状態の変化が小さくなる。従って、軸S1が直線L1に近いほど、脈あて部132を所望の位置に接触させた状態で、電子機器100を手首に装着させやすくなる。
また、上記実施形態では、端部122dがストッパとして機能すると説明した。しかし、本開示では、ストッパとして機能する部分は端部122dに限定されるものではない。たとえば、図15に示されるように、本体部121にストッパ部136を設けてもよい。このストッパ部136は、第1のアーム134の脈あて部132の下部にあるとしてもよい。この場合、本体部121の上下移動に連動してストッパ部136が移動するので、手首の細い人に対してもストッパとして機能できる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図面を参照して説明する。
第2実施形態に係る電子機器は、上述した第1実施形態に係る電子機器100において、センサ部130の構造を変更したものである。以下、第2実施形態に係る電子機器について説明するが、上述した第1実施形態に係る電子機器100と同一又は類似となる説明は、適宜、簡略化又は省略する。
図16は、第2実施形態に係る電子機器の正面視における外装部及びセンサ部を示す概略図である。図16に示すように、第2実施形態に係る電子機器200は、上述した第1実施形態に係る電子機器100(図3参照)において、センサ部130をセンサ部230に変更したものである。第2実施形態に係る電子機器200において、センサ部230以外の構成は、上述した第1実施形態に係る電子機器100と同様にしてよい。
図16に示すように、第2実施形態に係る電子機器200のセンサ部230において、第1のアーム134は、第2のアーム135に接続されている。より詳細には、第1のアーム134の一端134aは、第2のアーム135の下側の一端135aと接続されている。第1のアーム134は、図16の矢印Eで示すように、一端134aを軸として(回転軸S2)、他端134b側が回転可能な態様で、第2のアーム135に接続されている。
また、第1のアーム134の他端134b側は、弾性体140を介して第2のアーム135の上側の他端135b側に接続されている。弾性体140は、例えば、ばね、樹脂、又はスポンジ等のような任意の弾性体としてよい。センサ部130において、第1のアーム134は、弾性体140の弾性によって、被検者の被検部位側に付勢される。
図16に示すように、第2実施形態に係る電子機器200のセンサ部230において、第1のアーム134は、弾性部材240と、センサ231とを備えている。また、図16に示すように、第1のアーム134は、脈あて部132を備えてもよい。
図16に示すように、弾性部材240は、第1のアーム134において、弾性体140が設置された面と反対側の面に配置される。すなわち、弾性部材240と、弾性体140とは、第1のアーム134において、互いに反対側の面に配置されてよい。
弾性部材240は、例えば、ばね、樹脂、又はスポンジ等のような、適度な弾性を有する任意の弾性体を含んで構成してよい。弾性部材240は、例えば、所定の弾性を有する所定の厚さのシリコンシートを形成したものとしてもよい。弾性部材240については、さらに後述する。弾性部材240と第1のアーム134とは、接着剤又は両面テープなどで接着してよい。ここで、弾性部材240と第1のアーム134との接着は、弾性部材240の変形に与える影響が少なくなるようにしてよい。すなわち、弾性部材240と第1のアーム134とを接着したとしても、弾性部材240は適度に変形することができるように構成してよい。
図16に示すように、弾性部材240において、弾性部材240と第1のアーム134との接着面とは反対側の面に、センサ231が配置される。第2実施形態に係る電子機器200のセンサ部130は、センサ231と第1のアーム134との間に、弾性部材240を備える。すなわち、弾性部材240は、センサ231と第1のアーム134との間に介在する。第2実施形態において、センサ231は、被検者の被検部位における脈動を、直接的又は間接的に検出することができる。センサ231と弾性部材240とは、接着剤又は両面テープなどで接着してよい。ここで、センサ231と弾性部材240との接着は、弾性部材240の変形に与える影響が少なくなるようにしてよい。すなわち、センサ231と弾性部材240とを接着したとしても、弾性部材240は適度に変形することができるように構成してよい。
センサ231は、例えば、加速度センサとしてもよいし、ジャイロセンサのようなセンサとしてもよい。センサ231については、さらに後述する。また、センサ231は、第1実施形態に係るセンサ部130における角速度センサ131としてもよい。センサ231は、被検者の脈波に基づく脈あて部132の変位を検出してもよい。
図16に示すように、センサ231において、センサ231と弾性部材240との接着面とは反対側の面に、脈あて部132が配置される。センサ231と脈あて部132とは、接着剤又は両面テープなどで接着して結合してよい。脈あて部132は、電子機器200による測定時において、被検者の血液の脈波の測定対象となる被検部位に接触させる部分である。本実施形態でも、脈あて部132は、例えば尺骨動脈又は橈骨動脈が存在する位置に接触する。脈あて部132は、第1実施形態に係る電子機器100における脈あて部132と同様に構成してよい。
このように、第2実施形態に係るセンサ部230は、アーム134と、センサ231と、弾性部材240と、を備える。アーム134は、被検者の被検部位側に付勢される。センサ231は、被検者の被検部位における脈動を検出する。弾性部材240は、センサ231とアーム134との間に介在する。図16に示すセンサ部230の構成は例示であり、適宜、変形又は変更してもよい。例えば、センサ231の少なくとも一部は、弾性部材240及び脈あて部132の少なくとも一方に埋め込まれるように構成してもよい。また、簡略化した構成においては、脈あて部132を省略してもよい。
図17は、図16に示した電子機器200を被検者が装着した状態を部分的に示す概略図である。図17は、第2実施形態に係る電子機器200のうち、主としてセンサ部230の一部分のみを示してある。
図17に示すように、本実施形態では、電子機器200の装着状態において、脈あて部132は、被検者の被検部位、すなわち被検者の右手の親指側の動脈である橈骨動脈上の皮膚に接触している。第2のアーム135と第1のアーム134との間に配置される弾性体140の弾性力により、第1のアーム134(の他端134b側)は、被検者の被検部位側に付勢される。また、第1のアーム134に弾性部材240(及びセンサ231)を介して配置された脈あて部132は、被検者の橈骨動脈上の皮膚に接触している。脈あて部132は、被検者の橈骨動脈の動き、すなわち脈動に応じて変位する。このため、脈あて部132に結合されたセンサ231も、被検者の橈骨動脈の動きすなわち脈動に応じて変位する。
本実施形態において、脈あて部132に結合されたセンサ231は、弾性部材240を介して第1のアーム134に結合されている。このため、センサ231は、弾性部材240の柔軟性によって、ある程度自由な可動域を与えられる。また、弾性部材240の柔軟性によって、センサ231の動きは妨げられにくくなる。さらに、弾性部材240は、適度な弾性を有することにより、被検者の被検部位における脈動に追従して変形する。したがって、本実施形態に係る電子機器200において、センサ231は、被検者の被検部位における脈動を敏感に検出することができる。このように、本実施形態では、弾性部材240は、被検者の被検部位における脈動に応じて変形可能であるようにしてよい。また、弾性部材240は、センサ231が被検者の被検部位における脈動を検出可能な程度に弾性変形するようにしてもよい。
本実施形態において、センサ231は、例えば、ジャイロセンサ(ジャイロスコープ)のような、物体の角度(傾き)、角速度、及び角加速度の少なくともいずれかを、複数の軸について検出するセンサとしてもよい。この場合、センサ231は、被検者の被検部位における脈動に基づく複雑な動きを、複数の軸についてのそれぞれのパラメータとして検出することができる。また、センサ231は、3軸のジャイロセンサと3軸の加速度センサとを組み合わせた6軸センサとしてもよい。
例えば、図17に示すように、センサ231は、α軸、β軸、及びγ軸の3軸のそれぞれを中心とする回転運動を検出してよい。α軸は、例えば、被検者の橈骨動脈にほぼ直交する方向に沿う軸としてよい。また、β軸は、例えば、被検者の橈骨動脈にほぼ平行な方向に沿う軸としてよい。また、γ軸は、例えば、α軸及びβ軸の双方にほぼ直交する方向に沿う軸としてよい。
このように、本実施形態では、センサ231は、被検者の被検部位における脈動を、所定の軸を中心とする回転運動の一部として検出してもよい。また、センサ231は、被検者の被検部位における脈動を、少なくとも2軸の回転運動として検出してもよく、3軸の回転運動として検出してもよい。本開示において、「回転運動」とは、必ずしも円の軌道上を1周以上変位するような運動でなくてもよい。例えば、本開示において、回転運動とは、例えば円の軌道上における1周に満たない部分的な変位(例えば弧に沿うような変位)としてもよい。
図18は、図17に示したα軸、β軸、及びγ軸の3軸のそれぞれを中心とする回転運動を、センサ231によって検出した結果の例を示すグラフである。図18は、図17に示したようなセンサ231によって、3軸のそれぞれを中心とする回転運動を検出した結果に基づく信号強度の時間変化を示している。図18において、横軸は経過時間を示し、縦軸はセンサ231によって検出された信号の強度を示している。
図17に示したα軸を中心とするセンサ231の回転運動に基づく信号強度の時間変化は、図18において太い実線により示してある。また、図17に示したβ軸を中心とするセンサ231の回転運動に基づく信号強度の時間変化は、図18において一点鎖線により示してある。また、図17に示したγ軸を中心とするセンサ231の回転運動に基づく信号強度の時間変化は、図18において破線により示してある。図18に示す例において、α軸及びβ軸を中心とするセンサ231の回転運動に基づく信号強度の時間変化は、それぞれ、被検者の脈波に基づく顕著なピークを有している。
図18に示すように、本実施形態に係る電子機器200は、例えば3軸のそれぞれを中心とする回転運動を、センサ231によって検出することができる。したがって、本実施形態に係る電子機器200は、センサ231によって検出された複数の結果を合算するなどして合成することにより、被検者の脈波の検出感度を高めることができる。このような合算などの演算は、例えば制御部143によって行ってもよい。この場合、制御部143は、センサ231が検出した脈動に基づく脈波の指標を算出してよい。
例えば、図18に示した例においては、α軸及びβ軸を中心とするセンサ231の回転運動に基づく信号強度の時間変化は、それぞれ被検者の脈波に基づく顕著なピークを有している。このため、制御部143は、例えばα軸、β軸、及びγ軸についての検出結果をそれぞれ合算することにより、被検者の脈波の検出精度を高めることができる。したがって、本実施形態に係る電子機器200によれば、被検者が脈波を測定する際の有用性を向上することができる。
このように、本実施形態に係る電子機器200は、センサ231が検出した脈動に基づく脈波の指標を算出する制御部143をさらに備えてもよい。この場合、制御部143は、センサ231が少なくとも2軸の回転運動(例えば3軸の回転運動)として検出した結果を合成(例えば合算)してもよい。本実施形態に係る電子機器200によれば、複数の方向の脈波信号を検出することができる。このため、本実施形態に係る電子機器200によれば、複数の軸についての検出結果を合成することで、1つの軸についての検出結果に比べて、信号強度が高まる。したがって、本実施形態に係る電子機器200によれば、SN比の良好な信号を検出することができ、検出感度を高めることができ、安定した測定が可能となる。
また、図18に示したγ軸についての検出結果において、被検者の脈波に基づくピークは、他のα軸又はβ軸についての検出結果に比べて顕著に現れていない。γ軸についての検出結果のように信号レベルが低い検出結果を、他の軸についての検出結果に合算すると、SN比が低下することもあり得る。また、信号レベルが低い検出結果は、ほとんどがノイズ成分と見なせる場合もある。このような場合、信号レベルが低い検出結果は、良好な脈波成分を含んでいないこともある。そこで、本実施形態において、制御部143は、複数の軸についての検出結果のうち、検出結果が所定の閾値に満たない軸がある場合、その軸の検出結果を合算しなくてもよい。
例えば、図18に示した例の場合と同様に、ある被検者の脈動を、α軸、β軸、及びγ軸のそれぞれを中心とする回転運動として、センサ231によって検出した場合を想定する。この結果として、図19(A)に示すように、α軸についての検出結果におけるピーク値は、所定の閾値を超えているものとする。また、図19(B)に示すように、β軸についての検出結果におけるピーク値も、所定の閾値を超えているものとする。また、図19(C)に示すように、γ軸についての検出結果におけるピーク値も、所定の閾値を超えているものとする。このような場合、制御部143は、α軸についての検出結果、β軸についての検出結果、及びγ軸についての検出結果の全てを合算したものを、センサ231が検出した脈動に基づく脈波の指標として算出してもよい。
一方、例えば、ある被検者の脈動を検出した結果として、図20(A)に示すように、α軸についての検出結果におけるピーク値は、所定の閾値を超えているものとする。また、図20(B)に示すように、β軸についての検出結果におけるピーク値も、所定の閾値を超えているものとする。しかしながら、図20(C)に示すように、γ軸についての検出結果におけるピーク値は、所定の閾値を超えていないものとする。このような場合、制御部143は、α軸についての検出結果及びβ軸についての検出結果のみを合算したものを、センサ231が検出した脈動に基づく脈波の指標として算出してもよい。
このような処理を行う場合、制御部143は、各軸についての検出結果を合算に含むか否かの基準となる閾値は、それぞれの軸について別個に設定してもよいし、それぞれの軸について同じものを決定してもよい。いずれの場合も、各軸についての検出結果において、被検者の脈動がそれぞれ適切に検出されるような閾値を、適宜設定してよい。
このように、本実施形態に係る電子機器200において、制御部143は、センサ231が少なくとも2軸の回転運動として検出した結果のうち、所定の閾値以上の成分を有するもののみを合成してもよい。このため、本実施形態に係る電子機器200によれば、検出結果のSN比の低下を抑制することができる。したがって、本実施形態に係る電子機器200によれば、被検者が脈波を測定する際の有用性を向上することができる。
また、上述のように、複数の軸についての検出結果を合算する際に、それぞれの軸についての検出結果を単にこのまま合算すると、不都合が生じることも想定される。これは、被検者の脈動の向きと、センサ231との位置関係によって、センサ231による検出される結果の極性が整合しないことに起因すると想定される。例えば、センサ231を用いて被検者の右手の脈動を検出した場合と、左手の脈動を検出した場合とで、ある軸についての検出結果の極性が逆転することも想定される。
例えば、被検者の脈動を検出した場合、ある軸についての検出結果において、図21(A)に示すように、ほぼ周期的に上向きのピークが検出されるとする。しかしながら、同時に、他の軸についての検出結果において、図21(B)に示すように、逆に、ほぼ周期的に下向きのピークが検出されることも想定される。このように、複数の軸についての検出結果において極性が逆転する場合、このまま単に合算すると、ピークが打ち消し合って良好な結果が得られないことも想定される。
そこで、本実施形態において、制御部143は、複数の軸についての検出結果において極性が逆転する場合、少なくとも1つの軸についての検出結果の極性を反転させてから、他の軸についての検出結果と合算してもよい。
例えば、制御部143は、図21(A)及び図21(B)に示すように2つの軸についての検出結果において極性が逆転する場合、一方の軸についての検出結果の極性を他方の軸に合わせて反転させてよい。この場合、制御部143は、例えば、図21(B)に示す検出結果の極性を、図21(A)に示す検出結果の極性に合わせて反転させてよい。
図22(A)は、図21(A)に示した検出結果と同じであり、被検者の脈動を検出した場合、ある軸についての検出結果において、ほぼ周期的に上向きのピークが検出された状態を示している。一方、図22(B)は、図21(B)に示した検出結果の極性を反転させた状態を示している。図22(A)及び図22(B)に示す検出結果は、それぞれ極性が揃っており、どちらも、ほぼ周期的に同じタイミングで上向きのピークが検出されている。制御部143は、このような処理を実行してから、複数の軸についての検出結果を合算することにより、被検者の脈波の検出精度を高めることができる。
このように、本実施形態に係る電子機器200において、制御部143は、センサ231が少なくとも2軸の回転運動として検出した結果を、それぞれの極性が揃うようにしてから合成してもよい。本実施形態に係る電子機器200によれば、被検者の脈波の検出精度を高めることができる。したがって、本実施形態に係る電子機器200によれば、被検者が脈波を測定する際の有用性を向上することができる。
上述のように、少なくとも1つの軸についての検出結果の極性を反転させることにより、複数の軸についての検出結果の極性を揃える処理を行う場合、それぞれの検出結果における極性の向きを判定する必要がある。このような極性の向きの判定は、種々の手法で行うことができる。例えば、制御部143は、各軸についての検出結果のピークが信号強度の正方向側に向いているか、又は負方向側に向いているかを判定してもよい。また、例えば制御部143は、各軸についての検出結果のピークが、信号の平均値よりも大きいか小さいかを判定してもよい。また、少なくとも1つの軸についての検出結果の極性を反転させる際には、制御部143は、極性を反転させる検出結果にマイナス1を乗算してもよい。
さらに、制御部143は、上述のように検出結果の極性を適宜反転させた後、当該検出結果の全体に所定値を加減してから、他の軸についての検出結果に合算してもよい。ここで、検出結果の全体に所定値を加減するとは、例えば、図22(B)に示すグラフの全体を、縦軸方向(信号の正方向又は負方向)に移動させることに相当する。また、制御部143は、複数の軸についての検出結果を合算する前に、それぞれの軸についての検出結果に適宜重み付けなどをしたり、それぞれの軸についての検出結果を適宜補正したりしてもよい。
(第2実施形態の変形例)
次に、第2実施形態の変形例について説明する。
上述したように、第2実施形態に係る電子機器200は、第1実施形態に係る電子機器100において、センサ部130をセンサ部230に変更したものである。第2実施形態に係る電子機器200において、センサ部230の構成を維持すれば、それ以外の機能部及び/又は部材は、適宜、任意の構成としてもよい。以下、このような実施例について、いくつか説明する。
図23及び図24は、第2実施形態の変形例に係る電子機器の概略的な外観斜視図である。図23及び図24に示すように、第2実施形態の変形例に係る電子機器300において、センサ部230は、上述した第2実施形態に係る電子機器200と同様に構成してよい。
図23及び図24は、電子機器300を、それぞれ異なる視点から見た場合の概略的な外観を示す。電子機器300は、外装部310と、測定部320とを備える。
電子機器300は、被検者が被検部位を測定部320に接触させた状態で、被検者の生体情報を測定する。電子機器300が測定する生体情報は、測定部320で測定可能な被検者の脈波である。本変形例において、電子機器300は、一例として、被検者の手首を測定部320に接触させて、脈波を取得するとして、以下説明を行う。
測定部320は、生体情報の測定に用いられる。外装部310は、測定部320の少なくとも一部を外界から覆う。外装部310は、測定部320の覆っている部分を保護することができる。被検者は、電子機器300を用いて生体情報を測定する場合、一方の手で外装部310を保持することにより、電子機器300を支持する。
外装部310は、カバー部311と、2つの側面部312a及び312bと、背面部313と、底面部314と、を備える。外装部310において、2つの側面部312a及び312bと、背面部313とは、生体情報を測定する場合に被検者が保持する保持面を構成する。
図25は、電子機器300を用いて被検者が生体情報を測定する様子を示す概略図である。生体情報を測定する場合、被検者は、カバー部311及び底面部314を、例えば机等の台に接触させるようにして、電子機器300を台上に載置する。カバー部311及び/又は底面部314の、台と接触する位置の少なくとも一部には、例えばゴム等の滑り止めが設けられていてよい。滑り止めが設けられることで、電子機器300を安定して台上に載置しやすくなる。
被検者は、電子機器300を台上に載置した状態において、カバー部311に手首を載せ、手首を測定部320側に押し当てる。被検者は、例えば、後述する測定部320の脈あて部132が、尺骨動脈又は橈骨動脈が存在する位置に接触するように、手首を測定部320に押し当てる。このとき、被検者は、手首を押し当てていない側の手で、保持面を支持し、当該手首の側に押し当てることにより、脈あて部332と手首との接触状態を維持できる。電子機器300は、被検者の手首において、尺骨動脈又は橈骨動脈を流れる血液の脈波を測定する。
図23及び図24を参照すると、本変形例において、背面部313は、略長方形の平板形状に構成されている。本明細書では、図23及び図24に示すように、略長方形の平板形状の背面部313の短辺方向をx軸方向、略長方形の平板形状の背面部313の長辺方向をz軸方向、平板形状の背面部313の直交方向(つまりxz平面の直交方向)をy軸方向として、以下説明する。また、電子機器300の一部は、可動に構成されているが、本明細書において電子機器300に関する方向を説明する場合には、特に言及されない限り、図23及び図24に示す状態におけるx、y及びz軸方向を示すこととする。また、y軸負方向を電子機器300の正面側といい、y軸正方向を電子機器300の背面側という。また、x軸正方向を電子機器300の左側とし、x軸負方向を電子機器300の右側とする。
底面部314は、例えば平板形状に構成されている。電子機器300において、底面部314は、略長方形の背面部313の下方の短辺において、背面部313と直交するように配置されている。背面部313と底面部314とは、互いに固定されていてもよい。底面部314には、保持面に沿った方向、すなわちz軸方向に延びる軸部315が固定されている。
2つの側面部312a及び312bは、平板形状に構成されている。電子機器300において、2つの側面部312a及び312bは、略長方形の背面部313の2つの長辺のそれぞれにおいて背面部313と直交するように配置されている。背面部313と、2つの側面部312a及び312bとは、互いに固定されていてもよい。
本変形例において、外装部310の保持面を構成する側面部312a及び312bと、背面部313とは、上面視において、コの字型に形成されている。保持面は、z軸方向に沿って延在する。
電子機器300において、背面部313により、測定部320の背面側が保護される。また、底面部314により、測定部320の底面側が保護される。また、2つの側面部312a及び312bにより、測定部320の左右の側面側が保護される。
カバー部311は、略長方形の平板形状の部材と、該平板形状の部材の長辺から、該平板形状の部材に直交するように設けられる部材とを含んで構成される。被検者は、図25に一例として示すように、カバー部311において、平板形状の部材に直交するように設けられる部材に手首を載せて、電子機器300による生体情報の測定を実行させる。生体情報の測定時に、カバー部311に手首を載置することにより、被検者は、手首の位置を安定させることができる。その結果、被検者は、測定部320を安定して手首に接触させることができ、生体情報の測定精度が向上しやすくなる。
カバー部311は、一端311a側において、側面部312a及び312bと接続される。一端311aは、図23に示す状態において、背面側の端部をいう。カバー部311は、図23の矢印Aで示すように、カバー部311と側面部312a及び312bそれぞれとの接続部316a及び316bを結ぶ直線(軸)S1を軸として、yz平面上で回転可能な態様で、側面部312a及び312bに接続されている。つまり、カバー部311は、図23に示すように平板形状の部材がxy平面に沿った状態と、軸S1を軸としてyz平面上で回転させることにより平板形状の部材がxz平面に沿った状態との、2つの状態を変位させることができる。図23に示すようにカバー部311の平板形状の部材がxy平面に沿った状態を、以下、電子機器100が開いた状態であるとも表現する。また、カバー部311の平板形状の部材がxz平面に沿った状態を、以下、電子機器300が閉じた状態であるとも表現する。
図26は、電子機器300の不使用時の状態、すなわち電子機器300を用いて生体情報の測定が行われていない場合の状態を示す概略的な外観斜視図である。電子機器300の不使用時において、被検者は、図26に示すように、電子機器300のカバー部311を閉じた状態にすることができる。カバー部311を閉じた状態とすることにより、測定部320の正面側が保護される。また、カバー部311を閉じた状態とすることにより、電子機器300が、開いた状態と比較して小さく折りたたまれた状態となるため、被検者は、電子機器300を、例えばケース又はかばん等に入れて持ち運びやすくなる。
図23及び図24を参照すると、測定部320は、本体部321と、センサ部230とを備える。
本体部321は、左右の両側面側と背面側との3方向の壁面を有する壁面部322を備える。すなわち、壁面部322は、電子機器300を上方向から見た場合にコの字型に構成されている。
本体部321は、壁面部322の背面側に、接続部323を備える。接続部323は、軸部315を通すための軸受を有し、当該軸受に軸部315が通されることにより、測定部320が、軸部315を介して外装部310に取り付けられている。したがって、測定部320は、図23の矢印Bで示すように、保持面である側面部312a及び312bと背面部313とに交差するxy平面上で、軸部315を中心に回転可能な態様で、外装部310に取り付けられている。つまり、測定部320は、外装部310に対して、xy平面に沿って回転可能な態様で、外装部310に取り付けられている。
また、測定部320は、図23及び図24の矢印Cで示すように、軸部315に沿って、すなわちz軸方向に沿って、外装部310に対して、上下方向に変位可能な態様で、外装部310に取り付けられている。本変形例では、軸部315が保持面に沿って構成されていることから、測定部320は、保持面に沿って変位可能である。
センサ部230は、本体部321の壁面部322により形成される、壁面により囲まれた空間に配置される。ここで、図27を参照して、測定部320の詳細について説明する。図27は、センサ部230及び本体部321を示す概略図である。図27は、電子機器300の正面視における中央をyz平面に沿った断面図であり、電子機器300の左側から見た場合の状態を示す図である。ただし、図27において、壁面部322については、背面側のみを図示している。
図27に示すように、本体部321は、壁面部322の背面側に接続部323を備える。接続部323は、軸部315を通すための軸受323aを有する。軸受323aの内部には、板ばね324が設けられている。板ばね324の弾性力により、軸部315に対する測定部320の上下方向の位置が、所定の位置に固定される。
センサ部230は、アーム134を備える。アーム134は、一端333a側において、壁面部322に接続されている。アーム134は、例えば、一端333a側に軸受を有し、当該軸受に、壁面部322の左右の両側面に接続される軸S2が通されることにより、壁面部322に接続される。このようにしてセンサ部230が本体部321の壁面部322に接続されることにより、アーム134は、図27の矢印Dで示すように、軸S2を軸として、他端333b側がyz平面上で回転可能となる。アーム134は、測定部320が回転変位する面に交差する面に沿って変位可能に構成されていればよい。
アーム134は、弾性体340を介して壁面部322の背面側の壁面に接続されている。アーム134は、弾性体340が押圧されていない状態において、他端333bが壁面部322の正面側の端部322aよりも、正面側に突出した状態となるように、壁面部322に接続される。すなわち、弾性体340が押圧されていない状態において、電子機器300の左側から測定部320を見たときに、他端333bが、壁面部322よりも正面側に突出している。
弾性体340は、例えばばねであってよい。但し、弾性体340は、ばねに限られず、他の任意の弾性体、例えば樹脂又はスポンジ等とすることができる。図27に示す例では、弾性体340はねじりコイルばねであり、一端333aと他端333bとの中央付近が、ねじりコイルばねにより、壁面部322と接続されている。
本変形性において、アーム134は、上述の第2実施形態に係る電子機器200の第1のアーム134と同様に構成してよい。
電子機器300は、外装部310又は測定部320の適宜の位置に、電子機器300が脈波の測定を行うために用いられる各種機能部を備えていてよい。例えば、電子機器300は、前述の制御部、電源部、記憶部、通信部、報知部及びこれらを動作させる回路、接続するケーブル等を備えていてよい。
(第2実施形態の他の変形例)
図28は、第2実施形態の他の変形例に係る電子機器の概略的な外観斜視図である。
図28に示すように、第2実施形態の他の変形例に係る電子機器400は、上述した電子機器300の構成を簡略化して、さらに被検者の手首に装着するクリップタイプとしたものである。被検者又は検査者は、電子機器400のクリップ部分を開いた状態にして、被検者の手首の周囲が電子機器400によって挟まれるように位置決めをしてから、適切な位置で電子機器400のクリップ部分を閉じた状態にすることができる。電子機器400のクリップ部分が閉じた状態では、アーム134に備えられる脈あて部132が被検者の被検部位に接触するようにする。ここで、アーム134は、被検者の被検部位側に付勢されるように構成されている。具体的には、アーム134は、例えば板ばねなどによって、軸S2を中心として、被検者の被検部位側に付勢されるように構成してもよい。このように、電子機器400によっても、被検者が脈波を測定する際の有用性を向上することができる。
(第2実施形態のさらに他の変形例)
図29は、第2実施形態の他の変形例に係る電子機器の概略的な外観斜視図である。
図29に示すように、第2実施形態の他の変形例に係る電子機器500は、上述した電子機器300の構成を簡略化して、被検者の手首を載せて脈波の検出を行うようにしたものである。電子機器500の本体部121には、アーム134が変位可能に取り付けられる。ここで、アーム134は、被検者の被検部位側に付勢されるように構成されている。被検者は、電子機器500の適切な位置に、自らの手首を適切な圧力で押しつけることよって、測定を行うことができる。被検者が電子機器500に手首を載せる際には、アーム134に備えられる脈あて部132に、被検者の被検部位が接触するようにする。このように、電子機器500によっても、被検者が脈波を測定する際の有用性を向上することができる。
(第2実施形態のさらに他の変形例)
図30は、第2実施形態の他の変形例に係る電子機器の概略的な示す図である。
図30に示すように、第2実施形態の他の変形例に係る電子機器は、上述した電子機器200又は電子機器300などの構成を簡略化して、センサ部130のみを独立させたものである。図30においては、センサ部130によって被検者の頸動脈の脈波を検出する例を示している。被検者がセンサ部130によって被検部位の脈波を検出する際には、アーム134に備えられる脈あて部132が、被検者の被検部位に接触するようにする。この場合、被検者は、センサ部130の第2のアーム135を自らの手などによって押さえるようにしてよい。被検者が第2のアーム135を被検部位側に押さえることで、アーム134は被検者の被検部位側に付勢される。被検者又は検査者は、被検者の適切な位置にセンサ部130を適切な圧力で押しつけることよって、測定を行うことができる。このように、センサ部130によっても、被検者が脈波を測定する際の有用性を向上することができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る電子機器は、上述した第2実施形態(各変形例も含む)に係る電子機器において、より良好な測定を実現し得るための動作を行う。第3実施形態に係る電子機器は、被検者の生体情報を良好に測定するために、被検者の被検部位においてセンサの位置決めをアシストする。したがって、検査者又は被検者は、被検者の被検部位において、センサを容易に位置決めすることができる。被検者の脈動は、個人差が大きいのみならず、被検者におけるどの部位を被検部位とするかによって、測定結果に相当な差異が生じ得る。このため、被検者の生体情報が良好に測定されるように、被検者の被検部位においてセンサの位置決めが適切にアシストされれば、電子機器の有用性を大幅に向上することができる。以下、このような電子機器について説明する。
第3実施形態に係る電子機器は、例えば図16及び図17、並びに図23乃至図30に示したような電子機器(又はセンサ部)のいずれかと同一又は類似の構成とすることができる。すなわち、第3実施形態に係る電子機器において、例えば図17に示す第2実施形態に係る電子機器と同様に、センサ231が被検者の被検部位に付勢されるように構成してよい。また、センサ231は、例えば図17に示すように、弾性部材240の弾性によって、被検者の被検部位に付勢されてよい。第3実施形態において、センサ231は、第2実施形態と同様に、被検者の被検部位における脈動を検出することができる。
また、第3実施形態に係る電子機器は、例えば図6のブロック図に示した機能部のうち、センサ部130(センサ231)と、制御部143と、報知部147とを備えてよい。第3実施形態において、報知部147は、センサ231の被検部位における位置に関する情報を報知する。センサ231の被検部位における位置に関する情報については、さらに後述する。また、第3実施形態に係る電子機器は、図6のブロック図に示した他の機能部を適宜備えてもよい。その他の観点においては、第3実施形態に係る電子機器は、任意に構成することができる。以下、第1実施形態又は第2実施形態と同様になる説明は、適宜、簡略化又は省略する。
図31は、第3実施形態に係る電子機器のセンサ231を、被検者の右手に付勢させた状態を示す図である。第3実施形態に係る電子機器においては、センサ231が、被検者の被検部位側に付勢された状態で測定を行う。第3実施形態に係る電子機器において、センサ231以外の機能部は、適宜構成してよい。したがって、図31は、第3実施形態に係る電子機器を構成する各機能部のうち、センサ231のみを示し、その他の機能部の図示は省略してある。また、第3実施形態に係る電子機器において、上述した制御部143及び報知部147は、第3実施形態に係る電子機器に内蔵してもよいし、第3実施形態に係る電子機器の外部に設置されるものとしてもよい。制御部143及び報知部147が第3実施形態に係る電子機器の外部に設置される場合、センサ231と、制御部143とは、有線又は無線で接続されるように構成してよい。
図31は、被検者の右手における橈骨動脈の例を、破線によって示している。図31に示すように、第3実施形態に係る電子機器のセンサ231は、例えば被検者の橈骨動脈の位置に対応する部位を被検部位として、被検者の橈骨動脈の脈動を検出することができる。第3実施形態に係る電子機器において、第2実施形態と同様に、センサ231は、弾性部材240の弾性によって被検部位に付勢されてよい。
図32は、図31におけるセンサ231及び被検者の手首を拡大して示す図である。図32は、図31と同様に、第3実施形態に係る電子機器のセンサ231を、被検者の右手首に付勢させた状態を示す図である。図32は、被検者の右手の橈骨動脈を概略的に示している。図32において、被検者の小指側を「下」として示し、被検者の親指側を「上」として示してある。これは、図31及び図32から分かるように、被検者が、右手の掌(及びセンサ231)を自身に向けて、肘から先を水平方向に向けると、被検者の小指側が「下」を向き、被検者の親指側が「上」を向くことによる。図32に示すように、被検者の橈骨動脈において、動脈流(血流)は、左方向から右方向に流れるものとする。
図33は、図32に示したセンサ231及び被検者の手首を、図32とは異なる方向から見た断面図である。図33は、図32に示したセンサ231及び被検者の手首を、図32に示す上(親指側)から下(小指側)を向いて見た断面図である。図33は、被検者の手首の断面において、被検者の橈骨及び橈骨動脈の例を概略的に示している。図33に示すように、第3実施形態に係るセンサ231において、第2実施形態と同様に、被検者の被検部位に当接する部分には、脈あて部132が備えられてもよい。また、第3実施形態に係る電子機器において、第2実施形態と同様に、センサ231は、弾性部材240の弾性によって被検部位に付勢されてよい。図32及び図33において、弾性部材240の図示は省略してある。
第3実施形態に係る電子機器において、弾性部材240は、第2実施形態と同様に、例えば、ばね、樹脂、又はスポンジ等のような、適度な弾性を有する任意の弾性体を含んで構成してよい。弾性部材240は、例えば、所定の弾性を有する所定の厚さのシリコンシートを形成したものとしてもよい。第3実施形態に係る電子機器において、センサ231は、弾性部材240の柔軟性によって、ある程度自由な可動域を与えられる。また、弾性部材240の柔軟性によって、センサ231の動きは妨げられにくくなる。さらに、弾性部材240は、適度な弾性を有することにより、被検者の被検部位における脈動に追従して変形する。したがって、第3実施形態に係る電子機器において、センサ231は、被検者の被検部位における脈動を敏感に検出することができる。このように、第3実施形態に係る電子機器おいて、弾性部材240は、被検者の被検部位における脈動に応じて変形可能であるようにしてよい。また、弾性部材240は、センサ231が被検者の被検部位における脈動を検出可能な程度に弾性変形してもよい。
第3実施形態に係る電子機器のセンサ231は、第2実施形態と同様に、例えば、加速度センサとしてもよいし、ジャイロセンサのようなセンサとしてもよい。以下、第3実施形態に係る電子機器のセンサ231はジャイロセンサとする場合について説明する。このように、第3実施形態に係る電子機器のセンサ231は、被検者の被検部位における脈動を、所定の軸を中心とする回転運動の一部として検出してもよい。より詳細には、センサ231は、被検者の被検部位における脈動を、少なくとも2軸の回転運動として検出してもよいし、例えば3軸の回転運動として検出してもよい。例えば、図32及び図33に示すように、センサ231は、α軸、β軸、及びγ軸の3軸の回転運動として、被検者の被検部位における脈動を検出してもよい。
被検者の橈骨動脈が血流により脈動する場合、橈骨動脈の一部は脈動により僅かに膨張して他の部分よりも太くなる。また、このように膨張した部分は、橈骨動脈に沿って血流とともに移動する。例えば図33に示す橈骨動脈において、脈動により僅かに膨張した部分は、図に示す血流の方向に移動する。図33に示す橈骨動脈において脈動により僅かに膨張した部分がセンサ231の位置(被検部位)に到来すると、センサ231は、図33に示すα軸を中心とした時計回りの僅かな回転運動を検出する。その後、橈骨動脈において脈動により僅かに膨張した部分がセンサ231の位置(被検部位)を通過すると、センサ231は、弾性部材240の弾性によって、α軸を中心とした反時計回りの僅かな回転運動を検出する。このようにして、第3実施形態に係る電子機器は、被検者の被検部位における脈動を、α軸を中心とした回転運動(の一部)として検出することができる。
図32及び図33に示すように、センサ231が回転運動を検出するβ軸は、被検者の橈骨動脈における血流の方向とほぼ平行な軸としてよい。また、図32に示すように、センサ231が回転運動を検出するγ軸は、被検者の被検部位の面に垂直な方向の軸としてもよい。図32及び図33に示すように、センサ231が回転運動を検出するα軸、β軸、及びγ軸の3軸は、それぞれ互いに直交する向きとしてよい。図32及び図33に示すセンサ231は、γ軸方向から見てほぼ正方形の形状としてある。しかしながら、第3実施形態において、センサ231のγ軸方向から見た形状は、円形、楕円形、長方形、ひし形、又は平行四辺形など、各種の形状としてよい。
次に、第3実施形態におけるセンサ231と、動脈との位置関係について説明する。
図34(A)は、第3実施形態におけるセンサ231と、被検者の橈骨動脈との位置関係について説明する図である。図34(A)に示す例において、センサ231の中心部分(γ軸がセンサ231を貫く点)は、被検者の橈骨動脈よりも上(親指側)にずれて位置している。このような場合、橈骨動脈において脈動により僅かに膨張した部分がセンサ231の位置(被検部位)に到達して通過すると、図34(B)に示すような検出信号が得られる。図34(B)は、センサ231が、被検者の被検部位における脈動を、α軸、β軸、及びγ軸の3軸の回転運動として検出した信号の強度の時間変化を、各軸別に示したグラフである。
図34(A)に示す配置において、橈骨動脈において脈動により僅かに膨張した部分が、被検部位に到達して通過したとする。この場合、上述のように、センサ231は、図33に示すα軸を中心として、時計回りの僅かな回転運動を検出してから反時計回りの僅かな回転運動を検出する。したがって、センサ231のα軸を中心とした回転運動の信号には、図34(B)の上段に示すようなピークが検出される。
また、この場合、センサ231は、図34(A)に示すβ軸を中心として、センサ231の橈骨動脈に重なる部分が僅かに持ち上げられるような回転運動を検出する。それから、センサ231は、図34(A)に示すβ軸を中心として、弾性部材240の弾性によって元に戻るような回転運動を検出する。したがって、センサ231のβ軸を中心とした回転運動の信号には、図34(B)の中段に示すようなピークが検出される。
また、この場合、橈骨動脈において脈動により僅かに膨張した部分が被検部位に到達すると、センサ231の端部が血流の方向に僅かに押される。このため、センサ231は、図34(A)に示すγ軸を中心とした時計回りの僅かな回転運動を検出する。その後、橈骨動脈において脈動により僅かに膨張した部分が被検部位を通過すると、センサ231は、γ軸を中心として、弾性部材240の弾性によって元に戻るような反時計回りの僅かな回転運動を検出する。したがって、センサ231のγ軸を中心とした回転運動の信号には、図34(B)の下段に示すようなピークが検出される。このように、センサ231の中心部分(γ軸がセンサ231を貫く点)が橈骨動脈の位置からずれていると、γ軸を中心とした回転運動の信号には、例えば図34(B)の下段に示すようなピークが検出される。
次に、図35(A)に示す例において、センサ231の中心部分(γ軸がセンサ231を貫く点)は、被検者の橈骨動脈上に位置している。すなわち、図35(A)に示す例において、センサ231の中心部分(γ軸がセンサ231を貫く点)の位置は、被検者の橈骨動脈の上(親指側)にも下(小指側)にもずれていない。このような場合、橈骨動脈において脈動により僅かに膨張した部分がセンサ231の位置(被検部位)に到達して通過すると、図35(B)に示すような検出信号が得られる。図35(B)も、図34(B)と同様に、センサ231が、被検者の被検部位における脈動を、α軸、β軸、及びγ軸の3軸の回転運動として検出した信号の強度の時間変化を、各軸別に示したグラフである。
図35(A)に示す配置において、橈骨動脈において脈動により僅かに膨張した部分が、被検部位に到達して通過したとする。この場合、上述のように、センサ231は、図33に示すα軸を中心として、時計回りの僅かな回転運動を検出してから反時計回りの僅かな回転運動を検出する。したがって、センサ231のα軸を中心とした回転運動の信号には、図35(B)の上段に示すようなピークが検出される。
また、この場合、センサ231は、図35(A)に示すβ軸を中心として、センサ231の橈骨動脈に重なる部分が僅かに持ち上げられるような回転運動を検出する。それから、センサ231は、図35(A)に示すβ軸を中心として、弾性部材240の弾性によって元に戻るような回転運動を検出する。したがって、センサ231のβ軸を中心とした回転運動の信号には、図35(B)の中段に示すようなピークが検出される。
一方、この場合、図35(A)に示すように、センサ231の中心部分(γ軸がセンサ231を貫く点)は、橈骨動脈における脈動(血流)の方向を示す線上に位置する。この場合、橈骨動脈において脈動により僅かに膨張した部分が被検部位に到達しても、センサ231は、γ軸を中心とした時計回りの僅かな回転運動も、γ軸を中心とした反時計回りの僅かな回転運動も検出しない。したがって、センサ231のγ軸を中心とした回転運動の信号には、図35(B)の下段に示すように、目立つピークが検出されない。このように、センサ231の中心部分(γ軸がセンサ231を貫く点)が橈骨動脈の位置からずれていない場合、γ軸を中心とした回転運動の信号には、例えば図35(B)の下段に示すようにピークが検出されない。
次に、図36(A)に示す例において、センサ231の中心部分(γ軸がセンサ231を貫く点)は、被検者の橈骨動脈よりもした(小指側)にずれて位置している。このような場合、橈骨動脈において脈動により僅かに膨張した部分がセンサ231の位置(被検部位)に到達して通過すると、図36(B)に示すような検出信号が得られる。図36(B)も、図34(B)と同様に、センサ231が、被検者の被検部位における脈動を、α軸、β軸、及びγ軸の3軸の回転運動として検出した信号の強度の時間変化を、各軸別に示したグラフである。
図36(A)に示す配置において、橈骨動脈において脈動により僅かに膨張した部分が、被検部位に到達して通過したとする。この場合、上述のように、センサ231は、図33に示すα軸を中心として、時計回りの僅かな回転運動を検出してから反時計回りの僅かな回転運動を検出する。したがって、センサ231のα軸を中心とした回転運動の信号には、図36(B)の上段に示すようなピークが検出される。
また、この場合、センサ231は、図36(A)に示すβ軸を中心として、センサ231の橈骨動脈に重なる部分が僅かに持ち上げられるような回転運動を検出する。それから、センサ231は、図36(A)に示すβ軸を中心として、弾性部材240の弾性によって元に戻るような回転運動を検出する。したがって、センサ231のβ軸を中心とした回転運動の信号には、図36(B)の中段に示すようなピークが検出される。図36(A)に示すβ軸を中心とした回転運動は、図34(A)に示したβ軸を中心とした回転運動とは逆の回転方向になる。したがって、図36(B)の中段に示すピークは、図34(B)の中段に示したピークとは正負逆になっている。
また、この場合、橈骨動脈において脈動により僅かに膨張した部分が被検部位に到達すると、センサ231の端部が血流の方向に僅かに押される。このため、センサ231は、図36(A)に示すγ軸を中心とした反時計回りの僅かな回転運動を検出する。その後、橈骨動脈において脈動により僅かに膨張した部分が被検部位を通過すると、センサ231は、γ軸を中心として、弾性部材240の弾性によって元に戻るような時計回りの僅かな回転運動を検出する。したがって、センサ231のγ軸を中心とした回転運動の信号には、図36(B)の下段に示すようなピークが検出される。このように、センサ231の中心部分(γ軸がセンサ231を貫く点)が橈骨動脈の位置からずれていると、γ軸を中心とした回転運動の信号には、例えば図36(B)の下段に示すようなピークが検出される。図36(A)に示すγ軸を中心とした回転運動は、図34(A)に示したγ軸を中心とした回転運動とは逆の回転方向になる。したがって、図36(B)の下段に示すピークは、図34(B)の下段に示したピークとは正負逆になっている。
以上説明したように、センサ231の中心部分(γ軸がセンサ231を貫く点)が橈骨動脈の位置からずれていない場合、すなわちセンサ231が被検部位において適正な位置にある場合、γ軸を中心とした回転運動の信号にはピークが検出されない。一方、センサ231の中心部分(γ軸がセンサ231を貫く点)が橈骨動脈の位置からずれている場合、すなわちセンサ231が被検部位において適正な位置にない場合、γ軸を中心とした回転運動の信号にはピークが検出される。したがって、第3実施形態に係る電子機器において、制御部143は、γ軸を中心とした回転運動の信号に所定のピークが検出されるか否かに基づいて、センサ231が被検部位において適正な位置にあるか否かを判定することができる。
例えば、図34(B)に示すように、γ軸の信号が正方向の所定の閾値Thを超えるピークを有する場合、制御部143は、センサ231が橈骨動脈に対して上(親指側)にあると判定できる。また、図36(B)に示すように、γ軸の信号が負方向の所定の閾値−Thを下回る負方向のピークを有する場合、制御部143は、センサ231が橈骨動脈に対して下(小指側)にあると判定できる。一方、図35(B)に示すように、γ軸の信号が正方向の所定の閾値Thを超えるピークを有さず、負方向の所定の閾値−Thを下回る負方向のピークも有さない場合、制御部143は、センサ231が適正な位置にあると判定できる。
図34(B)乃至図36(B)に示す閾値Th,−Thは、絶対値が同じ正負の値としてもよいし、絶対値が異なる正負の値としてもよい。また、閾値Th,−Thは、例えば被検者の性別及び/又は年代別に応じて一般的な代表値を予め実験などによって設定してもよい。また、閾値Th,−Thは、例えば被検者ごとに個人的な身体の特性を考慮して定めてもよい。被検者の被検部位において脈動の位置とセンサ231の位置がずれておらず、センサ231によって被験者の脈動が適切に検出されるような位置関係に基づいて、閾値Th,−Thを適宜設定してよい。また、閾値Th,−Thの正負についても、被検者の被検部位において脈動の位置とセンサ231の位置がずれている場合に検出されるγ軸方向のピークの正負方向に基づいて、適宜設定してよい。
第3実施形態に係る電子機器1において、制御部143は、上述のようにセンサ231の被検部位における位置を判定した結果に基づいて、所定の情報を報知部147から報知してもよい。例えば、報知部147は、被検者の被検部位において脈動の位置とセンサ231の位置がずれているか否かを、音声、表示、及び/又は触感などによって、被検者及び/又は検査者などに報知してもよい。また、報知部147は、被検者の被検部位において脈動の位置とセンサ231の位置がずれている場合、適正な測定をし得る位置を、音声、表示、及び/又は触感などによって、被検者及び/又は検査者などに報知してもよい。例えば、図34(A)に示す位置関係が判定された場合、報知部147は、「センサを下(小指側)にずらして下さい」という音声ガイダンス又は表示などを報知してもよい。また、図36(A)に示す位置関係が判定された場合、報知部147は、「センサを上(親指側)にずらして下さい」という音声ガイダンス又は表示などを報知してもよい。一方、図35(A)に示す位置関係が判定された場合、報知部147は、「センサの位置は適切です」という音声ガイダンス又は表示などを報知してもよい。
さらに、例えば、図34(A)に示す位置関係が判定された場合、報知部147は、センサを下(小指側)にずらすべき旨を触感で報知するために、例えば電子機器の筐体において下(小指側)のいずれかの箇所に振動を発生させてもよい。また、例えば、図36(A)に示す位置関係が判定された場合、報知部147は、センサを上(親指側)にずらすべき旨を触感で報知するために、例えば電子機器の筐体において上(親指側)のいずれかの箇所に振動を発生させてもよい。一方、図35(A)に示す位置関係が判定された場合、報知部147は、例えば電子機器の筐体において下(小指側)及び上(親指側)の両方の箇所に振動を発生させてもよいし、両方の箇所とも振動を発生させないようにしてもよい。
このように、第3実施形態に係る電子機器において、制御部143は、センサ231によって検出される被験者の被検部位における脈動に基づいて、センサ231の被検部位における位置に関する情報を報知するように報知部147を制御する。ここで、制御部143は、センサ231によって検出される被検部位における脈動に基づいて、センサ231の前記被検部位における位置を判定してもよい。また、制御部143は、センサ231の被検部位における位置に関する情報を、被検者の視覚、聴覚、及び触覚の少なくともいずれかを刺激することにより報知してもよい。
また、第3実施形態に係る電子機器において、制御部143は、所定の軸を中心とする回転運動の一部として検出された被検部位における脈動に基づいて、センサ231の被検部位における位置を判定してもよい。ここで、所定の軸とは、例えばγ軸のように、被検部位の面に垂直な方向の軸としてもよい。また、制御部143は、所定の軸を中心とする回転運動の一部として検出された被検部位における脈動に基づく信号が所定の範囲内である場合、センサ231の被検部位における位置が適正であると判定してもよい。この場合、制御部143は、センサ231の被検部位における位置が適正である旨の情報を報知部147が報知するように制御してよい。
一方、制御部143は、所定の軸を中心とする回転運動の一部として検出された被検部位における脈動に基づく信号が所定の範囲外である場合、センサ231の被検部位における位置が適正でないと判定してもよい。この場合、制御部143は、センサ231の被検部位における位置が適正でない旨の情報を報知部147が報知するように制御してよい。
また、この場合、制御部143は、センサ231の被検部位における位置が適正になるようなガイダンスの情報を報知部147が報知するように制御してもよい。
図37は、第3実施形態に係る電子機器の動作の手順を示すフローである。以下、第3実施形態に係る電子機器の動作について説明する。
図37に示す動作は、第3実施形態に係る電子機器によって被験者の生体情報を測定する前に、センサ231を被検者の被検部位において適切に位置決めを行う際に開始してよい。
図37に示す動作が開始すると、センサ231は、図32及び図33に示したようなγ軸を中心とする回転運動に基づく信号を検出する(ステップS1)。
ステップS1においてγ軸の信号が検出されたら、制御部143は、当該信号が正方向の閾値Thを超えるか否か判定する(ステップS2)。例えば、図34(B)に示す例において、γ軸の信号は正方向の閾値Thを超えている。一方、図35(B)及び図36(B)に示す例において、γ軸の信号は正方向の閾値Thを超えていない。
ステップS2においてγ軸の信号が正方向の閾値Thを超える場合、制御部143は、センサ231を下(小指側)にずらすべき旨の情報を報知部147が報知するように制御する(ステップS3)。
一方、ステップS2においてγ軸の信号が正方向の閾値Thを超えない場合、制御部143は、γ軸の信号が負方向の閾値−Thを下回るか否か判定する(ステップS4)。例えば、図35(B)に示す例において、γ軸の信号は負方向の閾値−Thを下回っていない。一方、図36(B)に示す例において、γ軸の信号は負方向の閾値−Thを下回っている。
ステップS4においてγ軸の信号が負方向の閾値−Thを下回る場合、制御部143は、センサ231を上(親指側)にずらすべき旨の情報を報知部147が報知するように制御する(ステップS5)。
一方、ステップS4においてγ軸の信号が負方向の閾値−Thを下回らない場合、制御部143は、センサ231が適切な位置である旨の情報を報知部147が報知するように制御する(ステップS6)。
第3実施形態に係る電子機器によれば、被検者の生体情報を良好に測定するために、被検者の被検部位においてセンサの位置決めをアシストすることができる。よって、第3実施形態に係る電子機器によれば、検査者又は被検者は、被検者の被検部位において、センサを容易に位置決めすることができる。したがって、第3実施形態に係る電子機器によれば、より良好な測定を実現し得るのみならず、電子機器の有用性を大幅に向上することができる。