以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面に示されている構成には、図示と理解のしやすさの便宜上、サイズ及び縮尺等が実物のそれらから変更されている部分が含まれうる。
[洗浄処理システムの構成]
図1は、洗浄処理システム1の全体構成を示す横断平面図である。
洗浄処理システム1は、ウエハWに洗浄液を供給して洗浄処理を行う複数の洗浄装置2(図1に示す例では2台の洗浄装置2)と、洗浄処理後のウエハWに付着している乾燥防止用の液体(本実施形態ではIPA:イソプロピルアルコール)を、超臨界状態の処理流体(本実施形態ではCO2:二酸化炭素)と接触させて除去する複数の超臨界処理装置3(図1に示す例では6台の超臨界処理装置3)と、を備える。
この洗浄処理システム1では、載置部11にFOUP100が載置され、このFOUP100に格納されたウエハWが、搬入出部12及び受け渡し部13を介して洗浄処理部14及び超臨界処理部15に受け渡される。洗浄処理部14及び超臨界処理部15において、ウエハWは、まず洗浄処理部14に設けられた洗浄装置2に搬入されて洗浄処理を受け、その後、超臨界処理部15に設けられた超臨界処理装置3に搬入されてウエハW上からIPAを除去する乾燥処理を受ける。図1中、符合「121」はFOUP100と受け渡し部13との間でウエハWを搬送する第1の搬送機構を示し、符合「131」は搬入出部12と洗浄処理部14及び超臨界処理部15との間で搬送されるウエハWが一時的に載置されるバッファとしての役割を果たす受け渡し棚を示す。
受け渡し部13の開口部にはウエハ搬送路162が接続されており、ウエハ搬送路162に沿って洗浄処理部14及び超臨界処理部15が設けられている。洗浄処理部14には、当該ウエハ搬送路162を挟んで洗浄装置2が1台ずつ配置されており、合計2台の洗浄装置2が設置されている。一方、超臨界処理部15には、ウエハWからIPAを除去する乾燥処理を行う基板処理装置として機能する超臨界処理装置3が、ウエハ搬送路162を挟んで3台ずつ配置されており、合計6台の超臨界処理装置3が設置されている。ウエハ搬送路162には第2の搬送機構161が配置されており、第2の搬送機構161は、ウエハ搬送路162内を移動可能に設けられている。受け渡し棚131に載置されたウエハWは第2の搬送機構161によって受け取られ、第2の搬送機構161は、ウエハWを洗浄装置2及び超臨界処理装置3に搬入する。なお、洗浄装置2及び超臨界処理装置3の数及び配置態様は特に限定されず、単位時間当たりのウエハWの処理枚数及び各洗浄装置2及び各超臨界処理装置3の処理時間等に応じて、適切な数の洗浄装置2及び超臨界処理装置3が適切な態様で配置される。
洗浄装置2は、例えばスピン洗浄によってウエハWを1枚ずつ洗浄する枚葉式の装置として構成される。この場合、ウエハWを水平に保持した状態で鉛直軸線周りに回転させながら、洗浄用の薬液や薬液を洗い流すためのリンス液をウエハWの処理面に対して適切なタイミングで供給することで、ウエハWの洗浄処理を行うことができる。洗浄装置2で用いられる薬液及びリンス液は特に限定されない。例えば、アルカリ性の薬液であるSC1液(すなわちアンモニアと過酸化水素水の混合液)をウエハWに供給し、ウエハWからパーティクルや有機性の汚染物質を除去することができる。その後、リンス液である脱イオン水(DIW:DeIonized Water)をウエハWに供給し、SC1液をウエハWから洗い流すことができる。さらに、酸性の薬液である希フッ酸水溶液(DHF:Diluted HydroFluoric acid)をウエハWに供給して自然酸化膜を除去し、その後、DIWをウエハWに供給して希フッ酸水溶液をウエハWから洗い流すこともできる。
そして洗浄装置2は、薬液による洗浄処理を終えたら、ウエハWの回転を停止し、乾燥防止用の液体としてIPAをウエハWに供給し、ウエハWの処理面に残存するDIWをIPAと置換する。このとき、ウエハWには十分量のIPAが供給され、半導体のパターンが形成されたウエハWの表面はIPAが液盛りされた状態となり、ウエハWの表面にはIPAの液膜が形成される。ウエハWは、IPAが液盛りされた状態を維持しつつ、第2の搬送機構161によって洗浄装置2から搬出される。
このようにしてウエハWの表面に付与されたIPAは、ウエハWの乾燥を防ぐ役割を果たす。特に、洗浄装置2から超臨界処理装置3へのウエハWの搬送中におけるIPAの蒸発によってウエハWに所謂パターン倒れが生じてしまうことを防ぐため、洗浄装置2は、比較的大きな厚みを有するIPA膜がウエハWの表面に形成されるように、十分な量のIPAをウエハWに付与する。
洗浄装置2から搬出されたウエハWは、第2の搬送機構161によって、IPAが液盛りされた状態で超臨界処理装置3の処理容器内に搬入され、超臨界処理装置3においてIPAの乾燥処理が行われる。
[超臨界処理装置]
以下、超臨界処理装置3で行われる超臨界流体を用いた乾燥処理の詳細について説明する。まず、超臨界処理装置3においてウエハWが搬入される処理容器の構成例を説明し、その後、超臨界処理装置3のシステム全体の構成例を説明する。
図2は、超臨界処理装置3の処理容器301の一例を示す外観斜視図である。
処理容器301は、ウエハWの搬入出用の開口部312が形成された筐体状の容器本体311と、処理対象のウエハWを横向きに保持する保持板316と、この保持板316を支持するとともに、ウエハWを容器本体311内に搬入したとき開口部312を密閉する蓋部材315とを備える。
容器本体311は、例えば直径300mmのウエハWを収容可能な処理空間が内部に形成された容器であり、その壁部には、供給ポート313及び排出ポート314が設けられている。供給ポート313及び排出ポート314は、それぞれ、処理容器301の上流側及び下流側に設けられる処理流体を流通させるための供給ラインに接続されている。なお、図2には1つの供給ポート313及び2つの排出ポート314が図示されているが、供給ポート313及び排出ポート314の数は特に限定されない。
容器本体311内の一方の壁部には供給ポート313に連通する流体供給ヘッダー317が設けられ、容器本体311内の他方の壁部には排出ポート314に連通する流体排出ヘッダー318が設けられている。流体供給ヘッダー317には多数の開孔が設けられ、流体排出ヘッダー318にも多数の開孔が設けられており、流体供給ヘッダー317及び流体排出ヘッダー318は相互に対向するように設置されている。流体供給部として機能する流体供給ヘッダー317は、実質的に水平方向へ向けて処理流体を容器本体311内に供給する。ここでいう水平方向とは、重力が作用する鉛直方向と垂直な方向であって、通常は、保持板316に保持されたウエハWの平坦な表面が延在する方向と平行な方向である。処理容器301内の流体を排出する流体排出部として機能する流体排出ヘッダー318は、容器本体311内の流体を、容器本体311外に導いて排出する。流体排出ヘッダー318を介して容器本体311外に排出される流体には、流体供給ヘッダー317を介して容器本体311内に供給された処理流体の他に、ウエハWの表面から処理流体に溶け込んだIPAが含まれる。このように流体供給ヘッダー317の開孔から容器本体311内に処理流体が供給されることによって、また流体排出ヘッダー318の開孔を介して流体が容器本体311内から排出されることによって、容器本体311内には、ウエハWの表面と略平行に流動する処理流体の層流が形成される。
容器本体311内への処理流体の供給時及び容器本体311からの流体の排出時にウエハWに加えられうる負荷を軽減する観点からは、流体供給ヘッダー317及び流体排出ヘッダー318は複数設けられることが好ましい。後述の図3に示す超臨界処理装置3では、処理流体を供給するための2つの供給ラインが処理容器301に接続されているが、図2では、理解を容易にするため1つの供給ラインに接続される1つの供給ポート313及び1つの流体供給ヘッダー317のみが示されている。
処理容器301は、さらに、不図示の押圧機構を備える。この押圧機構は、処理空間内に供給された超臨界状態の処理流体によってもたらされる内圧に抗して、容器本体311に向けて蓋部材315を押し付け、処理空間を密閉する役割を果たす。また、処理空間内に供給された処理流体が超臨界状態の温度を保てるように、容器本体311の表面に断熱材やテープヒータなどが設けられてもよい。
図3は、超臨界処理装置3のシステム全体の構成例を示す図である。
処理容器301よりも上流側には流体供給タンク51が設けられており、超臨界処理装置3において処理流体を流通させるための供給ラインには、流体供給タンク51から処理流体が供給される。流体供給タンク51と処理容器301との間には、上流側から下流側に向かって、流通オンオフバルブ52a、オリフィス55a、フィルタ57及び流通オンオフバルブ52bが順次設けられる。なお、ここでいう上流側及び下流側の用語は、供給ラインにおける処理流体の流れ方向を基準とする。
流通オンオフバルブ52aは、流体供給タンク51からの処理流体の供給のオン及びオフを調整するバルブであり、開状態では下流側の供給ラインに処理流体を流し、閉状態では下流側の供給ラインに処理流体を流さない。流通オンオフバルブ52aが開状態にある場合、例えば16〜20MPa(メガパスカル)程度の高圧の処理流体が、流体供給タンク51から流通オンオフバルブ52aを介して供給ラインに供給される。オリフィス55aは、流体供給タンク51から供給される処理流体の圧力を調整する役割を果たし、オリフィス55aよりも下流側の供給ラインには、例えば16MPa程度に圧力が調整された処理流体を流通させることができる。フィルタ57は、オリフィス55aから送られてくる処理流体に含まれる異物を取り除き、クリーンな処理流体を下流側に流す。
流通オンオフバルブ52bは、処理容器301への処理流体の供給のオン及びオフを調整するバルブである。流通オンオフバルブ52bから処理容器301に延在する供給ラインは、上述の図2に示す供給ポート313に接続し、流通オンオフバルブ52bからの処理流体は、図2に示す供給ポート313及び流体供給ヘッダー317を介して処理容器301の容器本体311内に供給される。
なお図3に示す超臨界処理装置3では、フィルタ57と流通オンオフバルブ52aとの間において、供給ラインが分岐している。すなわちフィルタ57と流通オンオフバルブ52bとの間の供給ラインからは、流通オンオフバルブ52c及びオリフィス55bを介して処理容器301に接続する供給ライン、流通オンオフバルブ52d及びチェックバルブ58aを介してパージ装置62に接続する供給ライン、及び流通オンオフバルブ52e及びオリフィス55cを介して外部に接続する供給ラインが分岐して延在する。
流通オンオフバルブ52c及びオリフィス55bを介して処理容器301に接続する供給ラインは、処理容器301への処理流体の供給のための補助的な流路である。例えば処理容器301への処理流体の供給開始当初等のように、比較的多量の処理流体を処理容器301に供給する際に流通オンオフバルブ52cが開状態に調整され、オリフィス55bによって圧力が調整された処理流体を処理容器301に供給することができる。
流通オンオフバルブ52d及びチェックバルブ58aを介してパージ装置62に接続する供給ラインは、窒素等の不活性ガスを処理容器301に供給するための流路であり、流体供給タンク51から処理容器301に対する処理流体の供給が停止している間に活用される。例えば処理容器301を不活性ガスで満たして清浄な状態を保つ場合には、流通オンオフバルブ52d及び流通オンオフバルブ52bが開状態に調整され、パージ装置62から供給ラインに送られた不活性ガスはチェックバルブ58a、流通オンオフバルブ52d及び流通オンオフバルブ52bを介して処理容器301に供給される。
流通オンオフバルブ52e及びオリフィス55cを介して外部に接続する供給ラインは、供給ラインから処理流体を排出するための流路である。例えば超臨界処理装置3の電源オフ時において、流通オンオフバルブ52aと流通オンオフバルブ52bとの間の供給ライン内に残存する処理流体を外部に排出する際には、流通オンオフバルブ52eが開状態に調整され、流通オンオフバルブ52aと流通オンオフバルブ52bとの間の供給ラインが外部に連通される。
処理容器301よりも下流側には、流通オンオフバルブ52f、排気調整バルブ59、濃度計測センサ60及び流通オンオフバルブ52gが、上流側から下流側に向かって順次設けられている。
流通オンオフバルブ52fは、処理容器301からの処理流体の排出のオン及びオフを調整するバルブである。処理容器301から処理流体を排出する場合には流通オンオフバルブ52fは開状態に調整され、処理容器301から処理流体を排出しない場合には流通オンオフバルブ52fは閉状態に調整される。なお処理容器301と流通オンオフバルブ52fとの間に延在する供給ラインは、図2に示す排出ポート314に接続されている。処理容器301の容器本体311内の流体は、図2に示す流体排出ヘッダー318及び排出ポート314を介して、流通オンオフバルブ52fに向かって送られる。
排気調整バルブ59は、処理容器301からの流体の排出量を調整するバルブであり、例えば背圧弁によって構成することが可能である。排気調整バルブ59の開度は、処理容器301からの流体の所望の排出量に応じて、制御部4の制御下で適応的に調整される。本実施形態では後述のように、処理容器301内の流体の圧力が予め定められた圧力になるまで、処理容器301から流体が排出される処理が行われる。そのため排気調整バルブ59は、処理容器301内の流体の圧力が予め定められた圧力に達した際に、開状態から閉状態に移行するように開度を調整して処理容器301からの流体の排出を止めることができる。
濃度計測センサ60は、排気調整バルブ59から送られてくる流体に含まれるIPA濃度を計測するセンサである。
流通オンオフバルブ52gは、処理容器301からの流体の外部への排出のオン及びオフを調整するバルブである。流体を外部に排出する場合には流通オンオフバルブ52gは開状態に調整され、流体を排出しない場合には流通オンオフバルブ52gは閉状態に調整される。なお流通オンオフバルブ52gの下流側には、排気調整ニードルバルブ61a及びチェックバルブ58bが設けられている。排気調整ニードルバルブ61aは、流通オンオフバルブ52gを介して送られてくる流体の外部への排出量を調整するバルブであり、排気調整ニードルバルブ61aの開度は流体の所望の排出量に応じて調整される。チェックバルブ58bは、排出される流体の逆流を防ぐ弁であり、流体を確実に外部に排出する役割を果たす。
なお図3に示す超臨界処理装置3では、濃度計測センサ60と流通オンオフバルブ52gとの間において、供給ラインが分岐している。すなわち濃度計測センサ60と流通オンオフバルブ52gとの間の供給ラインからは、流通オンオフバルブ52hを介して外部に接続する供給ライン、流通オンオフバルブ52iを介して外部に接続する供給ライン、及び流通オンオフバルブ52jを介して外部に接続する供給ラインが分岐して延在する。
流通オンオフバルブ52h及び流通オンオフバルブ52iは、流通オンオフバルブ52gと同様に、流体の外部への排出のオン及びオフを調整するバルブである。流通オンオフバルブ52hの下流側には、排気調整ニードルバルブ61b及びチェックバルブ58cが設けられ、流体の排出量の調整及び流体の逆流防止が行われる。流通オンオフバルブ52iの下流側にはチェックバルブ58dが設けられ、流体の逆流が防止されている。流通オンオフバルブ52jも流体の外部への排出のオン及びオフを調整するバルブであり、流通オンオフバルブ52jの下流側にはオリフィス55dが設けられ、流通オンオフバルブ52jからオリフィス55dを介して外部に流体を排出することができる。ただし、図3に示す例では、流通オンオフバルブ52g、流通オンオフバルブ52h及び流通オンオフバルブ52iを介して外部に送られる流体の行き先と、流通オンオフバルブ52jを介して外部に送られる流体の行き先とは異なっている。したがって流体を、例えば流通オンオフバルブ52g、流通オンオフバルブ52h及び流通オンオフバルブ52iを介して図示しない回収装置に送る一方で、流通オンオフバルブ52jを介して大気に放出することも可能である。
処理容器301から流体を排出する場合、流通オンオフバルブ52g、流通オンオフバルブ52h、流通オンオフバルブ52i及び流通オンオフバルブ52jのうちの1以上のバルブが開状態に調整される。特に超臨界処理装置3の電源オフ時には、流通オンオフバルブ52jを開状態に調整して、濃度計測センサ60と流通オンオフバルブ52gとの間の供給ラインに残存する流体を外部に排出するようにしてもよい。
なお、上述の供給ラインの様々な箇所に流体の圧力を検出する圧力センサ及び流体の温度を検出する温度センサが設置される。図3に示す例では、流通オンオフバルブ52aとオリフィス55aとの間に圧力センサ53a及び温度センサ54aが設けられ、オリフィス55aとフィルタ57との間に圧力センサ53b及び温度センサ54bが設けられ、フィルタ57と流通オンオフバルブ52bとの間に圧力センサ53cが設けられ、流通オンオフバルブ52bと処理容器301との間に温度センサ54cが設けられ、オリフィス55bと処理容器301との間に温度センサ54dが設けられている。また処理容器301と流通オンオフバルブ52fとの間に圧力センサ53d及び温度センサ54fが設けられ、濃度計測センサ60と流通オンオフバルブ52gとの間に圧力センサ53e及び温度センサ54gが設けられている。さらに、処理容器301の内部である容器本体311内の流体の温度を検出するための温度センサ54eが設けられている。
また、超臨界処理装置3において処理流体が流れる任意の箇所にヒータHが設けられる。図3には、処理容器301よりも上流側の供給ライン(すなわち流通オンオフバルブ52aとオリフィス55aの間、オリフィス55aとフィルタ57の間、フィルタ57と流通オンオフバルブ52bの間、及び流通オンオフバルブ52bと処理容器301の間)においてヒータHが図示されているが、処理容器301及び処理容器301よりも下流側の供給ラインを含む他の箇所にヒータHが設けられていてもよい。したがって、流体供給タンク51から供給される処理流体が外部に排出されるまでの全流路においてヒータHが設けられてもよい。また特に、処理容器301に供給する処理流体の温度を調整する観点からは、処理容器301よりも上流側を流れる処理流体の温度を調整することができる位置にヒータHが設けられていることが好ましい。
さらに、オリフィス55aとフィルタ57の間には安全バルブ56aが設けられ、処理容器301と流通オンオフバルブ52fとの間には安全バルブ56bが設けられ、濃度計測センサ60と流通オンオフバルブ52gの間には安全バルブ56cが設けられている。これらの安全バルブ56a〜56cは、供給ライン内の圧力が過大になった場合等の異常時において供給ラインを外部に連通し、供給ライン内の流体を緊急的に外部に排出する役割を果たす。
図4は、制御部4の機能構成を示すブロック図である。制御部4は、図3に示す各種要素から計測信号を受信し、また図3に示す各種要素に制御指示信号を送信する。例えば、制御部4は、圧力センサ53a〜53e、温度センサ54a〜54g及び濃度計測センサ60の計測結果を受信する。また制御部4は、流通オンオフバルブ52a〜52j、排気調整バルブ59及び排気調整ニードルバルブ61a〜61bに制御指示信号を送信する。なお制御部4が送受信可能な信号は特に限定されない。例えば、安全バルブ56a〜56cが制御部4からの制御指示信号に基づいて開閉可能な場合には、制御部4は、必要に応じて安全バルブ56a〜56cに制御指示信号を送信する。ただし安全バルブ56a〜56cの開閉駆動方式が信号制御によらない場合には、制御部4は安全バルブ56a〜56cに制御指示信号を送信しない。
[超臨界乾燥処理]
次に、超臨界状態の処理流体を用いたIPAの乾燥メカニズムについて説明する。
図5は、IPAの乾燥メカニズムを説明するための図であり、ウエハWが有する凹部としてのパターンPを簡略的に示した拡大断面図である。
超臨界処理装置3において超臨界状態の処理流体Rが処理容器301の容器本体311内に導入された当初は、図5(a)に示すように、パターンP間にはIPAのみが充填されている。
パターンP間のIPAは、超臨界状態の処理流体Rと接触することで、徐々に処理流体Rに溶解し、図5(b)に示すように徐々に処理流体Rと置き換わる。このとき、パターンP間には、IPA及び処理流体Rの他に、IPAと処理流体Rとが混合した状態の混合流体Mが存在する。
そして、パターンP間でIPAから処理流体Rへの置換が進行するに従って、パターンP間からはIPAが除去され、最終的には図5(c)に示すように、超臨界状態の処理流体RのみによってパターンP間が満たされる。
パターンP間からIPAが除去された後に、容器本体311内の圧力を大気圧まで下げることによって、図5(d)に示すように、処理流体Rは超臨界状態から気体状態に変化し、パターンP間は気体のみによって占められる。このようにしてパターンP間のIPAは除去され、ウエハWの乾燥処理は完了する。
上述の図5(a)〜(d)に示すメカニズムを背景に、本実施形態の超臨界処理装置3は、以下のようにしてIPAの乾燥処理を行う。
すなわち超臨界処理装置3によって行われる基板処理方法は、パターンPに乾燥防止用のIPAが液盛りされたウエハWを処理容器301の容器本体311内に搬入する工程と、流体供給部(すなわち流体供給タンク51、流通オンオフバルブ52a、流通オンオフバルブ52b及び流体供給ヘッダー317)を介して容器本体311内に超臨界状態の処理流体を供給する工程と、容器本体311内において、ウエハWからIPAを除去する乾燥処理を、超臨界状態の処理流体を使って行う工程とを備える。
特に、超臨界状態の処理流体を使ったIPAの乾燥処理(すなわち超臨界乾燥処理)では、パターンP間で気液分離を生じさせない高い圧力が維持されるように、処理容器301の容器本体311に対して処理流体の供給及び排出が行われる。より具体的には、容器本体311内から処理流体を排出することで容器本体311内の圧力を降下させる降圧工程と、容器本体311内へ処理流体を供給することで容器本体311内の圧力を上昇させる昇圧工程とを、交互に複数回繰り返すことで、ウエハWのパターンP間のIPAを徐々に除去する。昇圧工程では、パターンP間が、処理流体及びIPAの2成分系の臨界圧力の最大値よりも高い圧力となるように、容器本体311内に処理流体が供給される。一方、降圧工程では、降圧工程及び昇圧工程が繰り返し行われてパターンP間の混合流体におけるIPA濃度の低減及び処理流体濃度の増大が進行するのに伴って、パターンP間が徐々に低い圧力になるように、容器本体311から流体が排出される。ただし、この降圧工程においても、パターンP間の圧力は、パターンP間の流体が非気体状態を保つ圧力に保持される。
以下に、代表的な乾燥処理例を示す。以下の各乾燥処理例では、処理流体としてCO2が使用されている。
[第1の乾燥処理例]
図6は、第1の乾燥処理例における時間、処理容器301内(すなわち容器本体311内)の圧力、及び処理流体(CO2)の消費量の関係の一例を示す図である。図6に示す曲線Aは、第1の乾燥処理例における時間(横軸;sec(秒))及び処理容器301内の圧力(縦軸;MPa)の関係を表す。図6に示す曲線Bは、第1の乾燥処理例における時間(横軸;sec(秒))及び処理流体(CO2)の消費量(縦軸;kg(キログラム))の関係を表す。
本乾燥処理例では、まず流体導入工程T1が行われ、流体供給タンク51から処理容器301内(すなわち容器本体311内)にCO2が供給される。
この流体導入工程T1において、制御部4は、図3に示す流通オンオフバルブ52a、流通オンオフバルブ52b、流通オンオフバルブ52c及び流通オンオフバルブ52fを開状態とし、流通オンオフバルブ52d及び流通オンオフバルブ52eは閉状態とするように制御を行う。また制御部4は、流通オンオフバルブ52g〜52iを開状態とし、流通オンオフバルブ52jは閉状態とするように制御を行う。また制御部4は、排気調整ニードルバルブ61a〜61bを開状態とするように制御を行う。また制御部4は排気調整バルブ59の開度を調整し、処理容器301内のCO2が超臨界状態を維持できるように、処理容器301内の圧力が所望の圧力(図6に示す例では15MPa)に調整されるようにする。
図6に示す流体導入工程T1において、処理容器301内では、ウエハW上のIPAが超臨界状態のCO2に溶け込み始める。超臨界状態のCO2とウエハW上のIPAが混ざり始めると、CO2及びIPAの混合流体ではIPA及びCO2が局所的に様々な比率となり、CO2の臨界圧力も局所的に様々な値となりうる。一方、流体導入工程T1では、処理容器301内へのCO2の供給圧力がCO2の全ての臨界圧力よりも高い圧力(すなわち臨界圧力の最大値よりも高い圧力)に調整される。そのため、混合流体のIPA及びCO2の比率に関わらず、処理容器301内のCO2は超臨界状態又は液体状態となり、気体状態にはならない。
そして、流体導入工程T1後には流体保持工程T2が行われ、ウエハWのパターンP間の混合流体のIPA濃度及びCO2濃度が所望濃度(例えばIPA濃度が30%以下、CO2濃度が70%以上)になるまで、処理容器301内の圧力が一定に保持される。
この流体保持工程T2では、処理容器301内のCO2が超臨界状態を維持できる程度に処理容器301内の圧力は調整されており、図6に示す例では処理容器301内の圧力が15MPaに保たれている。この流体保持工程T2において、制御部4は、図3に示す流通オンオフバルブ52b及び流通オンオフバルブ52fを閉状態とするように制御を行い、処理容器301内に対するCO2の供給及び排出が停止される。他の各種バルブの開閉状態は、上述の流体導入工程T1における開閉状態と同じである。
そして、流体保持工程T2後には流体供給排出工程T3が行われ、処理容器301内から流体を排出して処理容器301内を降圧する降圧工程と、処理容器301内にCO2を供給して処理容器301内を昇圧する昇圧工程とが繰り返される。
降圧工程では、CO2及びIPAが混合した状態の流体が処理容器301から排出される。一方、昇圧工程では、IPAを含まないフレッシュなCO2が流体供給タンク51から処理容器301に供給される。このように、降圧工程においてIPAを積極的に処理容器301から排出しつつ、昇圧工程においてIPAを含まないCO2を処理容器301内に供給することで、ウエハW上からのIPAの除去が促進される。
流体供給排出工程T3における降圧工程及び昇圧工程の繰り返し回数は特に限定されないが、本例の乾燥処理は、流体供給排出工程T3の開始当初において、少なくとも以下の第1処理工程S1及び第2処理工程S2を有する。制御部4は、流体供給部(すなわち図3に示す流通オンオフバルブ52a〜52b)及び流体排出部(すなわち図3に示す流通オンオフバルブ52f〜52j及び排気調整バルブ59)を制御し、以下の第1処理工程S1及び第2処理工程S2を含む乾燥処理を、超臨界状態のCO2を使って行う。
すなわち、上述の流体保持工程T2の直後に行われる第1処理工程S1では、超臨界状態のCO2の気化が起こらない第1の排出到達圧力Pt1(例えば14MPa)に処理容器301内がなるまで処理容器301内の流体が排出され、その後、第1の排出到達圧力Pt1より高く且つ処理容器301内のCO2の気化が起こらない第1の供給到達圧力Ps1(例えば15MPa)に処理容器301内がなるまで処理容器301内にCO2が供給される。
一方、上述の第1処理工程S1の直後に行われる第2処理工程S2では、第1処理工程S1後に、超臨界状態のCO2の気化が起こらない第2の排出到達圧力Pt2であって第1の排出到達圧力Pt1とは異なる第2の排出到達圧力Pt2(例えば13MPa)に処理容器301内がなるまで処理容器301内の流体が排出され、その後、第2の排出到達圧力Pt2より高く且つ処理容器301内のCO2の気化が起こらない第2の供給到達圧力Ps2(例えば15MPa)に処理容器301内がなるまで処理容器301内にCO2が供給される。
特に本乾燥処理例では、上述の第1処理工程S1の降圧工程における第1の排出到達圧力Pt1が、上述の第2処理工程S2の降圧工程における第2の排出到達圧力Pt2よりも高く設定されている(すなわち「Pt1>Pt2」が満たされる)。
図7は、CO2の濃度、臨界温度及び臨界圧力の関係を示すグラフである。図7の横軸は、CO2の臨界温度(K:ケルビン)及びCO2濃度(%)を示し、図7の縦軸は、CO2の臨界圧力(MPa)を示す。なお図7のCO2濃度は、CO2の混合比を表し、IPAとCO2との混合気体におけるCO2の割合によってCO2濃度が表される。
図7の曲線Cは、CO2濃度、臨界温度及び臨界圧力の関係を示し、CO2の状態が曲線Cよりも上にある場合にはCO2は臨界圧力よりも高い圧力を有し、CO2の状態が曲線Cよりも上にある場合にはCO2は臨界圧力よりも低い圧力を有することを示す。
上述のように本乾燥処理例では、処理容器301からCO2を排出して処理容器301内の圧力を下げる降圧工程と、流体供給タンク51からのCO2を処理容器301(すなわち容器本体311)内に導入して処理容器301内の圧力を上げる昇圧工程とが繰り返し行われることで、ウエハW上のIPAが徐々に除去される。この乾燥処理において、各昇圧工程では、処理容器301に対するCO2の供給圧力が、CO2の臨界圧力の最大値よりも高い圧力に設定される。したがって上述の第1の供給到達圧力Ps1及び第2の供給到達圧力Ps2は、例えば図7の曲線Cによって表される全ての臨界圧力よりも高い圧力(すなわちCO2の臨界圧力の最大値よりも高い圧力(例えば15MPa))に調整される。これにより、処理容器301内におけるCO2の気化を防ぐことができる。
上述のようにCO2及びIPAの混合流体ではCO2及びIPAが局所的に様々な比率で存在し、CO2の臨界圧力も局所的に様々な値となりうる。ただし本実施形態では、処理容器301内へのCO2の供給圧力がCO2の臨界圧力の最大値よりも高い圧力に調整されるため、混合流体のIPA及びCO2の比率に関わらず、パターンP間のCO2は超臨界状態又は液体状態となり、気体状態にはならない。
一方、降圧工程では、パターンP間のCO2が臨界圧力よりも高い圧力を有するように、処理容器301内からCO2の排出が行われる。すなわち各降圧工程における処理容器301内の圧力(排出到達圧力)は、CO2の臨界圧力よりも高い圧力に調整される。一般に、パターンP間のIPAの除去が進むに従って、パターンP間の混合流体におけるIPA濃度は徐々に低くなりCO2濃度は徐々に高くなる傾向がある。その一方で、図7の曲線Cからも明らかなように、CO2の臨界圧力はCO2の濃度に応じて変動し、特にCO2の濃度が概ね60%よりも大きい場合には、CO2の濃度が増大するに従って臨界圧力は徐々に低減する。
また、昇圧工程における処理容器301内の圧力(すなわち供給到達圧力)と降圧工程における処理容器301内の圧力(すなわち排出到達圧力)との差が大きいほど、処理容器301からの流体の排出量が増大する。処理容器301からの流体の排出量が増大するに従って、処理容器301からのIPAの排出量は増大し、その後に行われる昇圧工程で処理容器301内に供給されるCO2の量を増やすことができる。そのため、連続的に行われる降圧工程と昇圧工程との間で処理容器301内の圧力差を大きくするほど、IPAからCO2への置換を効果的に促すことができ、IPAの乾燥処理を短時間で行うことが可能になる。
図6に示す流体供給排出工程T3で繰り返し行われる複数回の降圧工程では、上述のCO2濃度及び臨界圧力の関係に基づいて、パターンP間のCO2が非気体状態を保つ範囲で、パターンP間のCO2の圧力を徐々に下げて、処理容器301からのCO2の排出量を徐々に増大させる。
例えば、図6に示す第1処理工程S1において、パターンP間の混合流体のCO2濃度が70%であるとすると、パターンP間のCO2の臨界圧力は、図8のポイントC70によって示されるように、概ね14MPaよりも低い圧力となる。そのため、第1処理工程S1の降圧工程における第1の排出到達圧力Pt1が、図8のポイントC70によって示される臨界圧力よりも高い圧力(例えば14MPa)に設定される。これにより、第1処理工程S1の降圧工程においてパターンP間のCO2が気化することを防いだ状態で、処理容器301内から流体を排出することができる。
一方、その後に行われる第2処理工程S2において、パターンP間の混合流体のCO2濃度が80%であるとすると、パターンP間のCO2の臨界圧力は、図9のポイントC80によって示されるように、概ね12MPa程度となる。そのため、第2処理工程S2の降圧工程における第2の排出到達圧力Pt2が、図9のポイントC80によって示される臨界圧力よりも高い圧力(例えば13MPa)に設定される。これにより、第2処理工程S2の降圧工程においてパターンP間のCO2が気化することを防いだ状態で、処理容器301内から流体を排出することができる。特に、第2処理工程S2の降圧工程における流体の排出量は、第1処理工程S1の降圧工程における流体の排出量よりも多いため、第2処理工程S2ではより一層効果的にIPAを除去することが可能である。
なお図6に示す例では、各昇圧工程における処理容器301内の圧力は同じ圧力(すなわち15MPa)まで上昇されるが、処理容器301内の圧力は昇圧工程間で必ずしも同じである必要はない。ただし、各昇圧工程における処理容器301内の圧力は、CO2の臨界圧力の最大値よりも高い圧力まで上昇され、処理容器301内のCO2は非気体状態を保つ。
また図6に示す例では、降圧工程における処理容器301内の圧力は徐々に低い圧力になるように徐々に降下されるが、降圧工程における処理容器301内の圧力を必ずしも徐々に低くする必要はない。ただし、IPAを短時間で除去する観点からは、降圧工程における処理容器301内からの流体の排出量が大きいことが好ましく、降圧工程において処理容器301内の圧力を下げるほど、処理容器301内からの流体の排出量は大きくなる。したがって、流体供給排出工程T3の進行とともにパターンP間の混合流体のCO2濃度が徐々に大きくなること、及び図7に示すCO2の臨界温度−臨界圧力の特性を考慮すると、降圧工程における処理容器301内の圧力は徐々に低い圧力になるように徐々に降下されることが好ましい。
なお図6に示す例では、第1処理工程S1の昇圧工程において第1の供給到達圧力Ps1(15MPa)までCO2が処理容器301内に供給されると、パターンP間のIPA濃度は希釈されて、すぐに20%以下になる。そのため、第1処理工程S1の昇圧工程が行われた直後に第2処理工程S2の降圧工程が行われ、処理容器301から流体が排出される。また第1処理工程S1以降の処理工程でも同様にして降圧工程及び昇圧工程が行われ、各降圧工程は直前の昇圧工程が完了した直後に開始され、各昇圧工程は直前の降圧工程が完了した直後に開始される。
なお上述の降圧工程及び昇圧工程は、制御部4が、図3に示す流通オンオフバルブ52b、流通オンオフバルブ52f及び排気調整バルブ59の開閉を制御することで行われる。例えば処理容器301内にCO2を供給して昇圧工程を行う場合には、制御部4の制御下で、流通オンオフバルブ52bが開かれ、流通オンオフバルブ52fが閉じられる。一方、処理容器301内からCO2を排出して降圧工程を行う場合には、制御部4の制御下で、流通オンオフバルブ52bが閉じられ、流通オンオフバルブ52fが開かれる。この降圧工程において、厳密に所望の排出到達圧力まで処理容器301内の流体を排出するために、排気調整バルブ59が制御部4によって制御される。
特に、制御部4は、降圧工程において厳密な制御を行うために、処理容器301と流通オンオフバルブ52fとの間に設けられた圧力センサ53dの計測結果に基づいて、排気調整バルブ59の開度を調整する。すなわち、処理容器301内と連通する供給ライン内の圧力が圧力センサ53dによって計測される。制御部4は、圧力センサ53dの計測値から、処理容器301内を所望の圧力に調整するのに必要な排気調整バルブ59の開度を求めて、その求められた開度を実現するための制御指示信号を排気調整バルブ59に送る。排気調整バルブ59は制御部4からの制御指示信号に基づいて開度を調整し、処理容器301内が所望の圧力に調整される。これにより、処理容器301内の圧力は、精度良く所望の圧力に調整される。
このように制御部4は、上述の降圧工程及び昇圧工程が繰り返し行われる過程で、処理容器301に対するCO2の供給量及び排出量を制御し、パターンP間のCO2が常に臨界圧力よりも高い圧力を持つようにする。これにより、パターンP間のCO2が気化することを防ぐことができ、パターンP間のCO2は流体供給排出工程T3の間は常に非気体状態となる。ウエハWで生じうるパターン倒れは、パターンP間に存在しうる気液界面に起因しており、一般には、パターンP間において気体の処理流体(本例ではCO2)が液体のIPAに接触することによって引き起こされる。本乾燥処理例によれば、流体供給排出工程T3が行われている間は、上述のようにパターンP間のCO2が常に非気体状態であるため、パターン倒れが原理的に生じない。
なお流体供給排出工程T3が行われている間に、パターンP間のCO2の濃度を直接計測することは難しい。そのため、予め行われた実験の結果に基づいて、降圧工程及び昇圧工程を行うタイミングを決めておき、その決められたタイミングに基づいて降圧工程及び昇圧工程が行われてもよい。例えば、第1処理工程S1の降圧工程において第1の排出到達圧力Pt1に処理容器301内がなるまで処理容器301内の流体を排出するタイミング、及び第2処理工程S2の降圧工程において第2の排出到達圧力Pt2に処理容器301内がなるまで処理容器301内の流体を排出するタイミングのうち少なくともいずれか一方は、予め行われた実験の結果に基づいて定めることができる。
また、処理容器301内におけるCO2の温度は処理容器301に設けられた図示しないヒータによって、CO2が超臨界状態を保つことができる温度に調整されることが好ましい。この場合、そのようなヒータは、処理容器301内の流体の温度を計測する温度センサ54eの計測結果に基づいて制御部4により制御され、ヒータの加熱温度が調整されることが好ましい。ただし、処理容器301内の流体の温度は必ずしも制御部4の制御下で調整される必要はない。たとえ処理容器301内のCO2の温度が臨界温度以下になったとしても、処理容器301内のCO2は液体等の非気体状態をとる。そのため、パターンP間の気液界面に起因するパターン倒れは、たとえ処理容器301内のCO2の温度が臨界温度以下になったとしても生じない。ただし、処理容器301内のCO2の温度は、CO2密度に影響を与える因子の1つであるため、IPAからCO2への置換効率を向上させる観点からは、処理容器301内のCO2の温度をヒータ等のデバイスによって積極的に調整することが好ましい。
そして、上述の流体供給排出工程T3によってパターンP間のIPAがCO2に置換され、処理容器301内に残留するIPAが十分に低減した段階(例えば処理容器301内のIPA濃度が0%〜数%に達した段階)で流体排出工程T4が行われ、処理容器301内が大気圧に戻される。これにより、処理容器301内に残留するIPAがウエハW上に再付着することを防ぎつつ、CO2を気化させることができ、図5(d)に示すようにパターンP間には気体のみが存在する。
流体排出工程T4において、制御部4は、図3に示す流通オンオフバルブ52a〜52eを閉状態とし、排気調整バルブ59を開状態とし、流通オンオフバルブ52f〜52iを開状態とし、流通オンオフバルブ52jを閉状態とし、排気調整ニードルバルブ61a〜61bを開状態とするように制御を行う。
上述のようにして流体導入工程T1、流体保持工程T2、流体供給排出工程T3及び流体排出工程T4が行われることによって、ウエハW上からIPAを除去する乾燥処理が完了する。
なお、流体導入工程T1、流体保持工程T2、流体供給排出工程T3及び流体排出工程T4の各工程が行われるタイミング、各工程の持続時間、及び流体供給排出工程T3における降圧工程及び昇圧工程の繰り返し回数、等は、任意の手法によって定められてもよい。制御部4は、例えば濃度計測センサ60によって計測される「処理容器301内から排出される流体に含まれるIPA濃度」に応じて、各工程が行われるタイミング、各工程の持続時間、及び流体供給排出工程T3における降圧工程及び昇圧工程の繰り返し回数等を決めてもよい。また制御部4は、予め行われた実験の結果に基づいて、各工程が行われるタイミング、各工程の持続時間、及び流体供給排出工程T3における降圧工程及び昇圧工程の繰り返し回数等を決めてもよい。
上述の超臨界処理装置3(すなわち基板処理装置)及び基板処理方法によれば、超臨界状態の処理流体を用いて基板から液体を除去する乾燥処理を、処理流体の消費量を抑えつつ短時間で行うことができ、パターン倒れの発生も効果的に防ぐことができる。
本件発明者の実験によれば、従来技術に基づいて、10MPaの超臨界状態のCO2を処理容器301に対して毎分0.5kgで連続的に供給及び排出することでウエハW上のIPAを乾燥する場合には、30分間程度の時間を要し、数十kgのCO2を消費する必要があった。一方、図6に示すような本乾燥処理例に基づいてウエハW上のIPAを除去する場合には、流体供給排出工程T3において「1回の降圧工程及び1回の昇圧工程を有する処理工程」を7回繰り返すことでウエハWを適切に乾燥させることができ、全体の処理時間は約7分間であり、CO2の消費量は約1.7kgであった。このように、本実施形態の基板処理装置及び基板処理方法は、処理時間の短縮化及びCO2(処理流体)の低消費量化を飛躍的に促進することができる。
[第2の乾燥処理例]
図10は、第2の乾燥処理例における時間及び処理容器301内の圧力を示す図である。図10に示す曲線Aは、第2の乾燥処理例における時間(横軸;sec)及び処理容器301内の圧力(縦軸;MPa)の関係を表す。
本乾燥処理例において、上述の第1の乾燥処理例と同一又は類似の内容について、その詳細な説明は省略する。
本乾燥処理例においても、上述の第1の乾燥処理例と同様に、流体導入工程T1、流体保持工程T2、流体供給排出工程T3及び流体排出工程T4が順次行われる。ただし本乾燥処理例の流体供給排出工程T3では、流体保持工程T2の直後に行われる第1処理工程S1の降圧工程における第1の排出到達圧力Pt1は、その後の第2処理工程S2の降圧工程における第2の排出到達圧力Pt2よりも低い。
なお、本乾燥処理の流体供給排出工程T3において、第2処理工程S2の直後に行われる第3処理工程S3の降圧工程及び昇圧工程は以下のようにして行われる。すなわち、第2処理工程S2後に、超臨界状態のCO2の気化が起こらない第3の排出到達圧力Pt3であって第2の排出到達圧力Pt2よりも低い第3の排出到達圧力Pt3に処理容器301内がなるまで処理容器301内の流体が排出される。その後、第3の排出到達圧力Pt3より高く且つ処理容器301内のCO2の気化が起こらない第3の供給到達圧力Ps3に処理容器301内がなるまで処理容器301内にCO2が供給される。
なお第3の供給到達圧力Ps3は、第1の供給到達圧力Ps1及び第2の供給到達圧力Ps2と同じ圧力に設定されており、例えば上述の第1の乾燥処理例と同様に15MPaに設定可能である。
本乾燥処理例では、ランプアップ方式の乾燥処理が行われ、流体供給排出工程T3の降圧工程のうち、最初に行われる第1処理工程S1の降圧工程における排出到達圧力(すなわち第1の排出到達圧力Pt1)が最も低い圧力を示す。すなわち流体供給排出工程T3の降圧工程のうち、第1処理工程S1の降圧工程において最も多量の流体が処理容器301から排出される。これにより、ウエハWのパターンPの上方に形成された膜上のIPAを効率良く除去することが可能である。
図11は、ウエハWのパターンP上に液盛りされたIPAの状態を説明するための断面図である。
超臨界処理装置3に搬入されたウエハWのパターンP上には、厚さD1のIPA膜が形成されている。このIPA膜の厚さD1は、パターンPの厚さD2に比べて非常に大きく、厚さD1は厚さD2の数十倍程度となるのが一般的である。このパターンPの上方のIPA膜の部分も、超臨界処理装置3によって除去される必要があるが、パターンP間のIPAの除去量に比べ、パターンPの上方のIPA膜の除去量は非常に大きくなる。またパターンPの上方のIPA膜の部分が除去された後にしか、パターンP間のIPAを除去することはできない。
したがって流体供給排出工程T3では、まず第1処理工程S1によって、パターンPの上方のIPA膜を可能な限り除去し、第2処理工程S2及びそれ以降の処理工程によって、パターンP間のIPAを除去することが好ましい。そのため本乾燥処理例では、まず第1処理工程S1において、降圧工程で多量の流体が処理容器301から排出されるとともに昇圧工程で多量のCO2が処理容器301に供給され、パターンPの上方のIPA膜が大幅に除去される。
なお、パターンPの上方のIPA膜を除去する際には、パターンP間にはIPAが充填されているため、パターン倒れの懸念はない。ただし、第1処理工程S1においてパターンPの上方のIPA膜だけでなく、パターンP間のIPAの一部も除去される可能性を考慮し、第1処理工程S1の降圧工程における第1の排出到達圧力Pt1は、処理容器301内のCO2の臨界圧力よりも高い圧力に設定される。
第1処理工程S1以外の処理工程における降圧工程及び昇圧工程は、上述の第1の乾燥処理例と同様にして行われる。すなわち、流体供給排出工程T3の各昇圧工程における処理容器301内の圧力は、CO2の臨界圧力の最大値よりも高い圧力であって相互に同じ圧力(すなわち15MPa)まで上昇される。また流体供給排出工程T3の第2処理工程S2及びそれ以降の処理工程における降圧工程では、処理容器301内の圧力は徐々に低い圧力になるように降下される。ただし、各降圧工程におけるパターンP間の圧力は、パターンP間のCO2が非気体状態を保つ圧力に保持される。
以上説明したように本乾燥処理例によれば、ウエハWのパターンPの上方に形成されたIPA膜を効率良く除去することができ、IPAの乾燥処理の処理時間を短縮化することができる。
[第3の乾燥処理例]
図12は、第3の乾燥処理例における時間及び処理容器301内の圧力を示す図である。図12に示す曲線Aは、第3の乾燥処理例における時間(横軸;sec)及び処理容器301内の圧力(縦軸;MPa)の関係を表す。
本乾燥処理例において、上述の第1の乾燥処理例と同一又は類似の内容について、その詳細な説明は省略する。
本乾燥処理例においても、上述の第1の乾燥処理例と同様に、流体導入工程T1、流体保持工程T2、流体供給排出工程T3及び流体排出工程T4が順次行われる。ただし本乾燥処理例の流体供給排出工程T3では、降圧工程と昇圧工程と間に、処理容器301内の圧力をほぼ一定に維持する圧力保持工程が行われる。
各圧力保持工程では、処理容器301内が、直前に行われた降圧工程の排出到達圧力と同じ圧力で保持される。
このような圧力保持工程を行うことで、ウエハW上からのIPAの除去を効率良く行うことができる。
本発明は、上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形が加えられた各種態様も含みうるものであり、本発明によって奏される効果も上述の事項に限定されない。したがって、本発明の技術的思想及び趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲及び明細書に記載される各要素に対して種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
例えば、乾燥処理に用いられる処理流体はCO2以外の流体であってもよく、基板の凹部に液盛りされた乾燥防止用の液体を超臨界状態で除去可能な任意の流体を処理流体として用いることができる。また乾燥防止用の液体もIPAには限定されず、乾燥防止用液体として使用可能な任意の液体を使用することができる。
また上述の実施形態及び変形例では、基板処理装置及び基板処理方法に本発明が適用されているが、本発明の適用対象は特に限定されない。例えば、上述の基板処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムや、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に対しても本発明は適用可能である。