以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る加工システムの構成例を模式的に示すブロック図である。本実施形態に係る加工システム2は、例えば、半導体やセラミック等の材料でなる板状の被加工物11(図2等参照)を加工する際に使用され、図1に示すように、各種の情報を管理するためのサーバ4を備えている。
サーバ4は、情報処理を行う制御部(判断手段)6と、情報をデータとして記憶する記憶部8と、通信を行う通信部(データ出力手段)10とを含む。このサーバ4には、被加工物11を切削加工する切削装置12、被加工物11をレーザー加工するレーザー加工装置14、被加工物11を研削加工(又は研磨加工)する研削装置16、被加工物11にテープ13(図2等参照)を貼り付けるテープ貼り装置18等の加工装置が接続される。
図1に示すように、例えば、切削装置12には、切削装置12を構成する各機能要素(機能手段)に関わる振動、電流、電圧、荷重、速度、トルク、圧力、温度、流量や、撮像した画像の変化、被加工物11の厚さ等を検出して信号を出力する1個又は2個以上の検出ユニット(検出手段)20が設けられている。
各検出ユニット20から出力された信号に含まれる情報(以下、検出情報)は、例えば、通信部10及び制御部6を通じて記憶部8内の第1記憶部(データ蓄積手段)8aにデータとして蓄積される。このデータは、例えば、被加工物11の品質管理、機能要素の管理、連続稼働の管理、故障の原因調査、操作ミスの検証等に利用される。
また、後述するように、各検出ユニット20から出力された信号に含まれる情報(検出情報)の一部又は全部は、切削装置12の位置測定ユニット(XY位置検出手段)22又は高さ測定ユニット(Z位置検出手段)24の測定結果に対応するデータとして第1記憶部8aに蓄積されることがある。
なお、図1では、説明の便宜上、切削装置12が備える検出ユニット20、位置測定ユニット22、高さ測定ユニット24のみを例示しているが、これらの一部又は全部は、レーザー加工装置14、研削装置16、テープ貼り装置18等の加工装置にも設けられている。また、サーバ4に接続される加工装置の種類、数等に制限はない。
さらに、サーバ4には、切削装置12、レーザー加工装置14、研削装置16、テープ貼り装置18等の加工装置で加工された被加工物11の品質等を測定する品質測定装置(測定手段)26が接続されている。この品質測定装置26は、例えば、被加工物11の欠け(チッピング)、被加工物11に付着した異物(コンタミ)、被加工物11の厚さばらつき、被加工物11に形成されるカーフ(切り口)の状態(深さ等)等で表される被加工物11の品質を測定する。
測定によって得られた品質に関する情報(以下、品質情報)は、例えば、通信部10及び制御部6を通じて第1記憶部8aにデータとして蓄積される。この品質情報を、上述した検出情報に照らし合わせて解析すれば、切削装置12等の加工装置で発生する加工不良、装置不良等の問題と各検出ユニット20の検出結果との相関を特定できる。よって、例えば、各検出ユニット20で検出される振動、電流、電圧、荷重、速度、トルク、圧力、温度、流量等の適正な範囲を示す閾値等を決定し、これらの変化をリアルタイムに監視することで、問題の予防や解決が可能になる。
また、サーバ4には、パーソナルコンピュータに代表される操作用の端末28が接続されている。例えば、検出情報に対応するデータや品質情報に対応するデータを通信部10から端末28に出力することで、オペレータは、端末28上で検出情報や品質情報を解析し、適正な範囲を示す閾値等の条件を決定できる。なお、決定された条件は、例えば、通信部10及び制御部6を通じて、記憶部8に記憶される。
なお、記憶部8内の第2記憶部(正常データ記憶手段)8bには、各機能要素の正常時に検出ユニット20から出力される信号に含まれる情報を、正常データとして記憶させることができる。制御部6は、例えば、加工処理の際に第1記憶部8aに蓄積されるデータの持つ情報を、上述のように決定される条件や正常データの持つ情報等と比較して、問題の予防や解決に必要な処理又は指示を行う。
次に、上述した切削装置12、レーザー加工装置14及び研削装置16の詳細について説明する。図2は、切削装置12の構成例を模式的に示す斜視図である。図2に示すように、切削装置12は、各構成要素を支持する基台32を備えている。基台32の上面には、X軸移動機構(送り手段、機能手段)34が設けられている。
X軸移動機構34は、X軸方向(切削装置12の加工送り方向)に平行な一対のX軸ガイドレール36を備えており、X軸ガイドレール36には、X軸移動テーブル38がスライド可能に取り付けられている。X軸移動テーブル38の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール36に平行なX軸ボールネジ40が螺合されている。
X軸ボールネジ40の一端部には、X軸パルスモータ42が連結されている。X軸パルスモータ42でX軸ボールネジ40を回転させることで、X軸移動テーブル38は、X軸ガイドレール36に沿ってX軸方向に移動する。このX軸移動機構34には、X軸移動テーブル38のX軸方向の位置を測定するX軸測定ユニット(不図示)が設けられている。
X軸移動テーブル38の表面側(上面側)には、テーブルベース44が設けられている。テーブルベース44の上部には、被加工物11を吸引、保持するチャックテーブル(保持手段、機能手段)46が配置されている。チャックテーブル46の周囲には、被加工物11を支持する環状のフレーム15を四方から固定する4個のクランプ46bが設置されている。
被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体でなる円形のウェーハであり、その表面側は、中央のデバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域とに分けられている。デバイス領域は、格子状に配列された分割予定ライン(ストリート)でさらに複数の領域に区画されており、各領域には、IC、LSI等のデバイスが形成されている。
被加工物11の裏面側には、被加工物11より大径のテープ13が貼り付けられている。テープ13の外周部分は、環状のフレーム15に固定されている。すなわち、被加工物11は、テープ13を介してフレーム15に支持されている。なお、本実施形態では、シリコン等の半導体でなる円形のウェーハを被加工物11としているが、被加工物11の材質、形状等に制限はない。例えば、セラミック、樹脂、金属等の材料でなる任意の形状の基板を被加工物11として用いることもできる。
チャックテーブル46は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向(鉛直方向、高さ方向)に平行な回転軸の周りに回転する。また、上述したX軸移動機構34でX軸移動テーブル38をX軸方向に移動させれば、チャックテーブル46はX軸方向に加工送りされる。なお、チャックテーブル46のX軸方向の位置は、X軸測定ユニットで測定できる。
チャックテーブル46の上面は、被加工物11を保持する保持面46aとなっている。この保持面46aは、X軸方向及びY軸方向に対して概ね平行に形成されており、チャックテーブル46やテーブルベース44の内部に形成された流路(不図示)等を通じて吸引源(不図示)に接続されている。なお、この吸引源の負圧は、テーブルベース44に対してチャックテーブル46を固定する際にも利用される。
チャックテーブル46と近接する位置には、被加工物11をチャックテーブル46へと搬送する搬送ユニット(不図示)が設けられている。また、チャックテーブル46の周囲には、切削加工時に使用された純水等の切削液(廃液)を一時的に貯留するウォーターケース48が設けられている。ウォーターケース48内に貯留された廃液は、ドレーン(不図示)等を通じて切削装置12の外部に排出される。
基台32の上面には、X軸移動機構34を跨ぐ門型の支持構造50が配置されている。支持構造50の表面上部には、2組の切削ユニット移動機構(送り手段、機能手段)52が設けられている。
各切削ユニット移動機構52は、支持構造50の表面に配置されY軸方向(切削装置12の割り出し送り方向)に平行な一対のY軸ガイドレール54を共通に備えている。Y軸ガイドレール54には、各切削ユニット移動機構52を構成するY軸移動プレート56がスライド可能に取り付けられている。
各Y軸移動プレート56の裏面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール54に平行なY軸ボールネジ58がそれぞれ螺合されている。各Y軸ボールネジ58の一端部には、Y軸パルスモータ60が連結されている。Y軸パルスモータ60でY軸ボールネジ58を回転させれば、Y軸移動プレート56は、Y軸ガイドレール54に沿ってY軸方向に移動する。
各Y軸移動プレート56の表面には、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール62が設けられている。Z軸ガイドレール62には、Z軸移動プレート64がスライド可能に取り付けられている。
各Z軸移動プレート64の裏面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール62に平行なZ軸ボールネジ66がそれぞれ螺合されている。各Z軸ボールネジ66の一端部には、Z軸パルスモータ68が連結されている。Z軸パルスモータ68でZ軸ボールネジ66を回転させれば、Z軸移動プレート64は、Z軸ガイドレール62に沿ってZ軸方向に移動する。
各切削ユニット移動機構52には、Y軸移動プレート56のY軸方向の位置を測定するY軸測定ユニット(不図示)が設けられている。このY軸測定ユニットは、X軸測定ユニットと共に、上述した位置測定ユニット22として機能する。また、各切削ユニット移動機構52には、Z軸移動プレート64のZ軸方向の位置を測定するZ軸測定ユニット(不図示)が設けられている。このZ軸測定ユニットは、上述した高さ測定ユニット24として機能する。
各Z軸移動プレート64の下部には、切削ユニット(切削手段、加工手段、機能手段)70が設けられている。この切削ユニット70は、純水等の切削液を供給するノズルを備えている。また、切削ユニット70と隣接する位置には、被加工物11を撮像するカメラ72が設置されている。このカメラ72は、上述した検出ユニット20の一つであり、例えば、被加工物11を撮像して、切削加工の経過に伴う画像の変化等を検出する。
各切削ユニット移動機構52でY軸移動プレート56をY軸方向に移動させれば、切削ユニット70及びカメラ72は、X軸方向に垂直なY軸方向に割り出し送りされる。また、各切削ユニット移動機構52でZ軸移動プレート64をZ軸方向に移動させれば、切削ユニット70及びカメラ72は、昇降する。なお、切削ユニット70のY軸方向の位置は、Y軸測定ユニットで測定でき、切削ユニット70のZ軸方向の位置は、Z軸測定ユニットで測定できる。
図3は、切削ユニット70の構造を模式的に示す分解斜視図であり、図4は、切削ユニット70の断面等を模式的に示す図である。なお、図3及び図4では、切削ユニット70の構成要素の一部を省略している。
切削ユニット70は、Z軸移動プレート64の下部に固定された筒状のスピンドルハウジング74を備えている。スピンドルハウジング74の内部には、Y軸方向に平行な回転軸を構成するスピンドル76が収容されている。スピンドル76の一端部は、スピンドルハウジング74から外部に突出している。
また、スピンドル76の他端側には、スピンドル76を回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。回転駆動源には、電流を検出する電流検出ユニットが設けられている。この電流検出ユニットは、上述した検出ユニット20の一つであり、例えば、回転駆動源を構成するモータの電流を検出する。
スピンドルハウジング74の一端部には、円盤状のカバーユニット78が固定されている。カバーユニット78の中央には、開口78aが形成されており、この開口78aには、スピンドル76の一端部が通される。
また、カバーユニット78の外周の一部には、係止部78bが設けられている。スピンドル76の一端部を開口78aに通し、係止部78bの開口78cを通じてスピンドルハウジング74のネジ穴74aにネジ80(図4)を締め込めば、カバーユニット78をスピンドルハウジング74に固定できる。
スピンドル76の一端部には、フランジ部材82が装着される。フランジ部材82は、円盤状のフランジ部84と、フランジ部84の表裏面中央からそれぞれ突き出た第1ボス部86及び第2ボス部88とを含む。フランジ部材82の中央には、第1ボス部86、フランジ部84及び第2ボス部88を貫通する開口82aが形成されている。
フランジ部材82の開口82aには、裏面側(スピンドルハウジング74側)からスピンドル76の一端部が嵌め込まれる。この状態で、開口82a内にワッシャー90を配置し、当該ワッシャー90を通じて固定用のボルト92をスピンドル76のボルト穴76aに締め込めば、フランジ部材82はスピンドル76に固定される。
フランジ部84の外周側の表面は、切削ブレード94の裏面に接する接触面84aとなる。この接触面84aは、Y軸方向(スピンドル76の軸心方向)から見て円環状に形成されている。
第1ボス部86は円筒状に形成されており、その先端側の外周面86aには、ネジ山が設けられている。切削ブレード94の中央には、円形の開口94aが形成されている。この開口94aに第1ボス部86を通すことで、切削ブレード94は、フランジ部材82に装着される。
切削ブレード94は、いわゆるハブブレードであり、円盤状の支持基台96の外周に、被加工物11を切削加工する円環状の切り刃98が固定されている。切り刃98は、例えば、金属や樹脂等のボンド材(結合材)に、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒を混合して所定の厚みに形成される。なお、切削ブレード94として、切り刃のみで構成されたワッシャーブレードを用いてもよい。
この切削ブレード94をフランジ部材82に装着した状態で、切削ブレード94の表面側には、円環状のプレート部材100が配置される。プレート部材100の中央部には、円形の開口100aが形成されており、当該開口100aの内壁面には、第1ボス部86の外周面86aに形成されたネジ山に対応するネジ溝が設けられている。
プレート部材100の外周側の裏面は、切削ブレード94の表面に接する接触面100b(図4)となる。接触面100bは、フランジ部材82の接触面84aに対応する位置に設けられている。このプレート部材100の開口100aに、第1ボス部86の先端を締め込むことで、切削ブレード94は、フランジ部材82とプレート部材100とで挟持される。
このように構成された切削ユニット70には、図4に示すように、切削ブレード94等の振動を検出するための振動検出ユニット(振動検出手段)102が設けられている。振動検出ユニット102は、上述した検出ユニット20の一つであり、フランジ部材82の内部に固定された超音波振動子104を含む。
超音波振動子104は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zi,Ti)O3)、リチウムナイオベート(LiNbO3)、リチウムタンタレート(LiTaO3)等の材料で形成されており、切削ブレード94等の振動を電圧(信号)に変換する。
この超音波振動子104は、所定の周波数の振動に対して共振するように構成されている。そのため、超音波振動子104の共振周波数に応じて、振動検出ユニット102で検出できる振動の周波数が決まる。よって、超音波振動子104の共振周波数が異なる複数のフランジ部材82を選択的に用いることで、切削ブレード94や被加工物11の種類(材質、大きさ、重量等)、発生頻度の高い異常の態様等に合わせて振動検出ユニット102を最適化できる。
例えば、超音波振動子104の共振周波数が50kHz〜100kHz、100kHz〜300kHz、300kHz〜500kHzである3種類のフランジ部材82を用意して選択的に使用することで、50kHz〜500kHzの周波数範囲の振動を適切に検出できる。
フランジ部材82を交換することなく広い周波数範囲の振動を検出できるように、共振周波数の異なる複数の超音波振動子104を1個のフランジ部材82に設けても良い。例えば、共振周波数が50kHz〜100kHz、100kHz〜300kHz、300kHz〜500kHzである3種類の超音波振動子104を1個のフランジ部材82に設ければ、フランジ部材82を交換することなく50kHz〜500kHzの周波数範囲の振動を検出できる。
なお、超音波振動子104は、スピンドル76の軸心に関して対称に配置されることが好ましい。これにより、切削ブレード94の振動を高精度に検出できる。また、超音波振動子104の数、配置、形状等は、図3及び図4に示す態様に限定されない。例えば、フランジ部材82が備える超音波振動子104は1個でも構わない。
超音波振動子104で生成された電圧は、非接触型の伝送路106を介して伝送する。この伝送路106は、超音波振動子104に接続された第1インダクタ108と、第1インダクタ108に対して所定の間隔で対向する第2インダクタ110とを含む。第1インダクタ108及び第2インダクタ110は、代表的には、導線を同心円状に巻いた円環状のコイルであり、それぞれ、フランジ部材82の裏面側(カバーユニット78側)及びカバーユニット78の表面側(フランジ部材82側)に固定されている。
上述のように、第1インダクタ108と第2インダクタ110とは対向しており、電磁結合されている。そのため、超音波振動子104で生成された電圧は、第1インダクタ108と第2インダクタ110との相互誘導によって、第2インダクタ110側に伝送される。第2インダクタ110には、切削装置12の制御ユニット112が接続されている。
この制御ユニット112は、例えば、第2インダクタ110から伝送される電圧を送信用の信号に変換してサーバ4へと送る。サーバ4の制御部6は、例えば、制御ユニット112から送られた信号(電圧の時間変化に相当する信号)をフーリエ変換(高速フーリエ変換)して第1記憶部8aに蓄積する。なお、このフーリエ変換は、制御ユニット112で行われても良い。
このように構成された切削装置12で被加工物11を切削加工する際には、例えば、切削ブレード94を高速に回転させつつ、チャックテーブル46上の被加工物11に接触可能な高さまで下降させ、この状態で、チャックテーブル46をX軸方向に加工送りさせる。これにより、切削ブレード94を切り込ませ、X軸方向に沿って被加工物11を切削加工できる。なお、切削加工後の被加工物11は、隣接する洗浄ユニット(不図示)で洗浄される。
図5は、レーザー加工装置14の構成例を模式的に示す斜視図である。図5に示すように、レーザー加工装置14は、各構成要素を支持する基台122を備えている。基台122の端部には、Z軸方向(鉛直方向、高さ方向)に伸びる壁状の支持構造124が設けられている。支持構造124から離れた基台122の角部には、上方に突き出た突出部122aが設けられている。
突出部122aの内部には空間が形成されており、この空間には、昇降可能なカセットエレベータ126が設置されている。カセットエレベータ126の上面には、複数の被加工物11を収容可能なカセット128が載せられる。
突出部122aと隣接する位置には、被加工物11を仮置きするための仮置き機構130が設けられている。仮置き機構130は、Y軸方向(レーザー加工装置14の割り出し送り方向)に平行な状態を維持しながら接近、離隔される一対のガイドレール130a,130bを含む。
各ガイドレール130a,130bは、被加工物11を支持する支持面と、支持面に垂直な側面とを備え、搬送ユニット132によってカセット128から引き出された被加工物11(環状のフレーム15)をX軸方向(レーザー加工装置14の加工送り方向)に挟み込んで所定の位置に合わせる。
基台122の中央には、チャックテーブル移動機構(送り手段、機能手段)134が設けられている。チャックテーブル移動機構134は、基台122の上面に配置されY軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール136を備えている。Y軸ガイドレール136には、Y軸移動テーブル138がスライド可能に取り付けられている。
Y軸移動テーブル138の裏面側(下面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール136に平行なY軸ボールネジ140が螺合されている。Y軸ボールネジ140の一端部には、Y軸パルスモータ142が連結されている。Y軸パルスモータ142でY軸ボールネジ140を回転させれば、Y軸移動テーブル138は、Y軸ガイドレール136に沿ってY軸方向に移動する。
Y軸移動テーブル138の表面(上面)には、X軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール144が設けられている。X軸ガイドレール144には、X軸移動テーブル146がスライド可能に取り付けられている。
X軸移動テーブル146の裏面側(下面側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール144に平行なX軸ボールネジ148が螺合されている。X軸ボールネジ148の一端部には、X軸パルスモータ(不図示)が連結されている。X軸パルスモータでX軸ボールネジ148を回転させれば、X軸移動テーブル146は、X軸ガイドレール144に沿ってX軸方向に移動する。
チャックテーブル移動機構134には、Y軸移動テーブル138のY軸方向の位置とX軸移動テーブル146のX軸方向の位置とを測定するXY軸測定ユニット(不図示)が設けられている。このXY軸測定ユニットは、レーザー加工装置14の位置測定ユニット(XY位置検出手段)として機能する。
X軸移動テーブル146の表面側(上面側)には、テーブルベース150が設けられている。テーブルベース150の上部には、被加工物11を吸引、保持するチャックテーブル(保持手段、機能手段)152が配置されている。チャックテーブル152の周囲には、被加工物11を支持する環状のフレーム15を四方から固定する4個のクランプ154が設置されている。
チャックテーブル152は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向(鉛直方向、高さ方向)に平行な回転軸の周りに回転する。上述したチャックテーブル移動機構134でX軸移動テーブル146をX軸方向に移動させれば、チャックテーブル152はX軸方向に加工送りされる。また、チャックテーブル移動機構134でY軸移動テーブル138をY軸方向に移動させれば、チャックテーブル152はY軸方向に割り出し送りされる。なお、チャックテーブル152のX軸方向の位置とY軸方向の位置とは、XY軸測定ユニットで測定できる。
チャックテーブル152の上面は、被加工物11を保持する保持面152aとなっている。この保持面152aは、X軸方向及びY軸方向に対して概ね平行に形成されており、チャックテーブル152やテーブルベース150の内部に形成された流路(不図示)等を通じて吸引源(不図示)に接続されている。なお、この吸引源の負圧は、テーブルベース150に対してチャックテーブル152を固定する際にも利用される。
支持構造124には、表面から突出する支持アーム124aが設けられており、この支持アーム124aの先端部には、下方に向けてレーザー光線を照射するレーザー加工ユニット(加工手段、機能手段)156が配置されている。
また、レーザー加工ユニット156と隣接する位置には、被加工物11を撮像するカメラ(検出手段)158が設置されている。なお、このカメラ158は、レーザー加工装置14が備える検出ユニットの一つであり、例えば、被加工物11を撮像して、レーザー加工の経過に伴う画像の変化等を検出する。
レーザー加工ユニット156は、レーザー発振器(不図示)で発振されるレーザー光線を、チャックテーブル152に保持された被加工物11に照射する。例えば、レーザー加工ユニット156でレーザー光線を照射しながら、チャックテーブル152をX軸方向に加工送りさせることで、被加工物11をX軸方向に沿ってレーザー加工できる。
加工後の被加工物11は、例えば、搬送ユニット132によってチャックテーブル152から洗浄ユニット160へと搬送される。洗浄ユニット160は、筒状の洗浄空間内で被加工物11を吸引、保持するスピンナテーブル162を備えている。スピンナテーブル162の下部には、スピンナテーブル162を所定の速さで回転させる回転駆動源(不図示)が連結されている。
スピンナテーブル162の上方には、被加工物11に向けて洗浄用流体(代表的には、水とエアーとを混合した二流体)を噴射する噴射ノズル164が配置されている。被加工物11を保持したスピンナテーブル162を回転させて、噴射ノズル164から洗浄用流体を噴射することで、被加工物11を洗浄できる。洗浄ユニット160で洗浄された被加工物11は、例えば、搬送ユニット132で仮置き機構130に載せられ、カセット128へと収容される。
図6は、研削装置16の構成例を模式的に示す斜視図である。図6に示すように、研削装置16は、各構成要素を支持する基台172を備えている。基台172の上面には、開口172aが形成されており、この開口172a内には、被加工物11を搬送する搬送ユニット174が設けられている。また、開口172aに近接する基台172の端部には、複数の被加工物11を収容可能なカセット176a,176bが載せられている。
開口172aに対してカセット176aと反対側の位置には、アライメント機構178が設けられている。このアライメント機構178は、例えば、カセット176aから搬送ユニット174で搬出された被加工物11の中心の位置を検出する。
アライメント機構178と隣接する位置には、被加工物11を吸引、保持して旋回する搬入ユニット180が配置されている。この搬入ユニット180は、被加工物11の上面全体を吸引する吸引パッドを備え、アライメント機構178で中心の位置が検出された被加工物11を開口172aとは反対の方向に搬送する。
アライメント機構178及び搬入ユニット180に対して開口172aと反対側の位置には、Z軸方向(研削装置16の加工送り方向、鉛直方向、高さ方向)に平行な回転軸の周りに回転するターンテーブル182が設けられている。ターンテーブル182の上面には、被加工物11を吸引、保持する3個のチャックテーブル(保持手段、機能手段)184が配置されている。なお、ターンテーブル182に配置されるチャックテーブル184の数に制限はない。
各チャックテーブル184は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、Z軸方向に平行な回転軸の周りに回転する。各チャックテーブル184の上面は、被加工物11を保持する保持面184aとなっている。この保持面184aは、チャックテーブル184の内部に形成された流路(不図示)等を通じて吸引源(不図示)に接続されている。搬入ユニット180で搬入された被加工物11は、保持面184aに作用する吸引源の負圧でチャックテーブル184に保持される。
ターンテーブル182に近接する基台172の端部には、鉛直方向に伸びる2本の支持構造186が設けられている。各支持構造186の表面側には、研削ユニット移動機構(送り手段、機能手段)188が設けられている。
各研削ユニット移動機構188は、支持構造186の表面に配置されZ軸方向(加工送り方向)に平行な一対のZ軸ガイドレール190を備えている。Z軸ガイドレール190には、各研削ユニット移動機構188を構成するZ軸移動プレート192がスライド可能に取り付けられている。
各Z軸移動プレート192の裏面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール190に平行なZ軸ボールネジ194がそれぞれ螺合されている。各Z軸ボールネジ194の一端部には、Z軸パルスモータ196が連結されている。Z軸パルスモータ196でZ軸ボールネジ194を回転させれば、Z軸移動プレート192は、Z軸ガイドレール190に沿ってZ軸方向に移動する。
各Z軸移動プレート192の表面には、研削ユニット(加工手段、機能手段)198が設けられている。各研削ユニット198は、固定具200を介してZ軸移動プレート192に固定されたスピンドルハウジング202を備えている。各スピンドルハウジング202には、回転軸を構成するスピンドル204が収容されている。
各スピンドル204の下端部は、スピンドルハウジング202から外部に突出している。このスピンドル204の下端部には、研削ホイール206が装着されている。各研削ホイール206は、アルミニウム、ステンレス等の金属材料で形成された円盤状のホイール基台と、ホイール基台の下面において環状に配列された複数の砥石とを含む。
また、スピンドル204の上端側には、スピンドル204を回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。回転駆動源には、電流を検出する電流検出ユニットが設けられている。この電流検出ユニットは、研削装置16が備える検出ユニットの一つであり、例えば、回転駆動源を構成するモータの電流を検出する。
被加工物11がチャックテーブル184に保持されると、ターンテーブル182は回転し、被加工物11を研削ユニット198の下方に移動させる。その後、チャックテーブル184及び研削ホイール206を相互に回転させた状態で研削ユニット198を下降させ、研削ホイール206が備える砥石を被加工物11の上面に接触させることで、被加工物11を研削加工できる。
搬入ユニット180と隣接する位置には、研削加工後の被加工物11を吸引保持して旋回する搬出ユニット208が設けられている。搬出ユニット208と開口172aとの間には、搬出ユニット208で搬出された研削加工後の被加工物11を洗浄する洗浄ユニット210が配置されている。洗浄ユニット210で洗浄された被加工物11は、搬送ユニット174で搬送され、例えば、カセット176bに収容される。
次に、上述した加工システム2の使用方法の一例を説明する。図7は、被加工物11が切削加工される様子を模式的に示す平面図である。図7に示すように、本実施形態に係る切削装置12は、2組の切削ユニット(切削手段、加工手段、機能手段)70a,70bを備えており、被加工物11を切削加工する際には、各切削ユニット70a,70bが互いに干渉しないように割り出し送りされる。
具体的には、例えば、被加工物11は、一方の切削ユニット70aによって分割予定ライン(ストリート)L1,L2,L3,L4,L5,L6,L7の順に切削加工される。同時に、被加工物11は、別の切削ユニット70bによって分割予定ライン(ストリート)L14,L13,L12,L8,L9,L10,L11の順に切削加工される。ただし、切削加工の順序は、切削ユニット70a,70bが互いに干渉しない範囲で任意に変更できる。
本実施形態に係る切削装置12では、このような手順で実施される切削加工の際に、スピンドル76に連結された回転駆動源の電流を電流検出ユニットで検出することができる。電流検出ユニットから出力された信号に含まれる電流の情報は、例えば、通信部10及び制御部6を通じて記憶部8内の第1記憶部8aにデータとして蓄積される。
図8(A)は、電流検出ユニットで検出された電流の時間変化を示すグラフであり、図8(B)は、図8(A)の領域Aを拡大したグラフである。電流検出ユニットで回転駆動源の電流を検出する際には、同時に、位置測定ユニット22で加工点の位置(X軸方向及びY軸方向に平行なXY平面内での座標)を測定しておくと良い。
これにより、図8(A)及び図8(B)に示すように、当該電流の情報を、位置測定ユニット22の測定結果及び時間に対応するデータとして第1記憶部8aに蓄積できる。なお、電流の情報をデータとして蓄積する際には、情報として不要な期間(例えば、図8(B)に示す切削加工を実施していない期間t1等)を除去して第1記憶部8aに蓄積しても良い。
その後、制御部6は、第1記憶部8aに蓄積されたデータと、あらかじめ記憶部8に記憶させておいた条件(適正な範囲を示す閾値等)とを比較する。または、第1記憶部8aに蓄積されたデータと、あらかじめ第2記憶部8bに記憶させておいた正常データとを比較する。なお、記憶部8に記憶させる条件は、上述のように、各検出ユニット20から出力された信号に含まれる情報(検出情報)と、品質測定装置26によって得られた品質に関する情報(品質情報)と、を照らし合わせて解析することで決定できる。
比較の結果、第1記憶部8aに蓄積されたデータが適正な範囲から外れている場合や、正常データと一致しない場合等には、制御部6は、加工不良や装置不良等の問題があると判断して、この問題の予防や解決に必要な処理又は指示を行う。スピンドル76に連結された回転駆動源を流れる電流の値は、被加工物11の欠け(チッピング)や切削ブレード94の目詰まり等の問題に相関がある。そのため、制御部6は、比較結果及び判断結果に応じて、切削加工の停止や切削ブレード94のドレッシング等の処理又は指示を行う。
また、本実施形態に係る切削装置12では、この切削加工の際に、振動検出ユニット102で切削ブレード94等の振動を検出することもできる。図9(A)は、振動検出ユニット102から出力される信号(電圧の時間変化)の例を示すグラフであり、図9(B)は、フーリエ変換後の信号の例を示すグラフである。なお、図9(A)では、縦軸が電圧を、横軸が時間を示し、図9(B)では、縦軸が振幅を、横軸が周波数を示している。
このように、振動検出ユニット102から出力される信号(電圧の時間変化)をフーリエ変換することで、図9(B)に示すように、切削ブレード94の振動を主要な周波数成分に分けて解析できる。フーリエ変換後の信号が持つ情報(被加工物11を切削加工した際の振動の周波数成分に関する情報)は、第1記憶部8aにデータとして蓄積される。ただし、振動検出ユニット102から出力される信号が持つ情報をそのまま(フーリエ変換せずに)データとして蓄積することもできる。
なお、振動検出ユニット102で切削ブレード94の振動を検出する場合にも、同時に、位置測定ユニット22で加工点の位置(X軸方向及びY軸方向に平行なXY平面内での座標)を測定しておくと良い。これにより、切削ブレード94の振動の情報を、位置測定ユニット22の測定結果及び時間に対応するデータとして第1記憶部8aに蓄積できる。
第2記憶部8bには、適正な切削ブレード94で被加工物11を切削加工した際(適正時)の振動の周波数成分に関する情報が、正常データとしてあらかじめ記憶されている。制御部6は、この正常データを、第1記憶部8aに蓄積されたデータと比較する。図10は、適正時の周波数成分及び不適正時の周波数成分の例を示すグラフである。図10では、縦軸が振幅を、横軸が周波数をそれぞれ示している。また、図10では、適正時の周波数成分を実線で示し、不適正時の周波数成分を破線で示している。
図10に示すように、不適正時には、適正時に見られない高周波数側の振動モード(周波数成分)が存在する。このように、第1記憶部8aに蓄積されたデータと、あらかじめ第2記憶部8bに記憶させておいた正常データとが一致しない場合には、制御部6は、加工不良や装置不良等の問題があると判断して、この問題の予防や解決に必要な処理又は指示を行う。
切削ブレード94の振動の周波数は、被加工物11の欠け(チッピング)や、誤った切削ブレード94の装着(不適正な切削ブレード94の装着)、切削ブレード94の欠け、目詰まり、摩耗等の問題に相関がある。そのため、制御部6は、比較結果及び判断結果に応じて、切削加工の停止や切削ブレード94のドレッシング、切削ブレード94の交換等の処理又は指示を行う。
図11は、切削ブレード94の振動から推定される被加工物11の欠けの大きさと、実際の欠けの大きさとの関係を示すグラフである。図11では、縦軸が欠けの大きさを、横軸がサンプル番号を、白丸印が推定された欠けを、黒丸印が実際の欠けをそれぞれ示している。
図11から、切削ブレード94の振動に基づいて実際の欠けの大きさを適切に推定できるのが分かる。なお、推定された欠けの大きさが第1閾値B1を超える場合には、制御部6は、加工不良や装置不良等の問題があると判断し、加工条件の変更、切削ブレード94のドレッシング、プリカット等の処理又は指示を行う。第2閾値B2は、許容される欠けの大きさの最大値である。
なお、この振動検出ユニット102を利用して、切削ブレードの切り込み原点の位置(Z軸方向の位置)を自動で認識させることもできる。この場合には、切削ブレード94を高速に回転させつつ徐々に下降させ、チャックテーブル46の外周部に接触させる。そして、接触時の振動を振動検出ユニット102で検出し、同時に、高さ測定ユニット24で切削ブレード94(切削ユニット70)の高さ(Z軸方向の位置)を測定する。
振動検出ユニット102で検出された振動の情報は、高さ測定ユニット24で測定される高さに対応した接触データとして第1記憶部8aに蓄積される。制御部6は、この接触データに基づいて、切削ブレード94がチャックテーブル46の外周部に接触した際の切削ブレード94(切削ユニット70)の高さを、切削ブレード94の切り込み原点の位置と判断する。このようにして認識される切り込み原点の位置は、被加工物11の切削加工時等に用いられる。
表1に、振動検出ユニット102で検出可能な状態、現象等の例を示す。
以上のように、本実施形態に係る加工システム2は、チャックテーブル(保持手段)46、切削ユニット(加工手段)70、X軸移動機構(送り手段)34等の機能要素(機能手段)に設けられ、機能要素の状態等を判断するために必要な振動、電流、荷重等を検出する検出ユニット(検出手段)20と、検出ユニット20から出力された信号に含まれる情報をデータとして蓄積する第1記憶部(データ蓄積手段)18aと、を備えるので、蓄積されたデータを利用して、加工不良や装置不良等の問題の発生を予防できると共に、突発的な問題の発生にも対応できる。
また、本実施形態に係る加工システム2では、チャックテーブル46の保持面46aに平行なXY平面内でチャックテーブル46又は切削ユニット70の位置を検出する位置測定ユニット(XY位置検出手段)22を備えるので、検出ユニット20から出力された信号に含まれる情報を位置測定ユニット22で測定した位置に対応するデータとして蓄積できる。これにより、加工不良等の問題が生じた位置を特定し易くなる。
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、加工システム2の使用方法の一例として、切削装置12で被加工物11を切削加工する場合について説明しているが、レーザー加工装置14、研削装置16、テープ貼り装置18等の加工装置でも、様々な検出ユニット(検出手段)を利用して問題に備えることができる。
また、各加工装置で利用される検出ユニットに制限はなく、任意の検出ユニットを追加、省略できる。加工装置で利用できる検出ユニットと主な検出対象の例を表2に示す。
また、各検出ユニットで検出可能な状態、現象等の例を表3に示す。
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。