JP6924377B2 - 熱間鍛造用金型及びその製造方法並びに鍛造材の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特開平4−46651号公報(特許文献1)には三次元形状をした型彫り面を有する上金型及び下金型の打撃面を互いに型合わせして構成された、三次元形状に優れたキャビティーを用いて鍛造を行うブレードの製造方法の発明が開示されている。ここに開示されている上金型及び下金型は、一つの金属材料で一体物で構成されている(例えば、特許文献1の図2及び図4参照)。
これに対し、本願出願人による特開2014−208379号公報(特許文献2)では、長尺材用の熱間鍛造用金型であって、前記熱間鍛造用金型は、複数個の熱間鍛造用金型片が長尺材の長手方向に一列に並べられた一体の組立て体である熱間鍛造用金型の提案がある。この提案は製品(熱間鍛造材)の大型化にも適用可能な優れた提案である。この提案によれば、数個の熱間鍛造用金型片はタイロッドにより一体化することが好ましいとしている。
更に、入子型を用いて組み立てる分割金型のような場合では、焼嵌めのように入子型を圧入する金型としたほうが入子型に圧縮応力が加わって金型が割れると言った危険性も低減できる。しかしながら、入子型が四角柱形状の分割金型において、焼嵌めによって入子型を固定する提案は見当たらない。
本発明の目的は、入子型が四角柱形状の熱間鍛造用金型を焼嵌めすることにより、金型の割れを防止して、製品の大型化にも適用可能な熱間鍛造用金型、該金型の製造方法、およびかかる熱間鍛造用金型を用いた鍛造材の製造方法を提供することである。
すなわち本発明は、熱間鍛造用素材を押圧して鍛造材とする熱間鍛造用金型において、
前記熱間鍛造用金型は、少なくとも入子型と前記入子型を収納する母型とを有し、
前記入子型は、前記熱間鍛造用素材を押圧する型彫り面を有するとともに四角柱状の外形を有し、
前記母型は、前記入子型を収納する収納部を備えるとともに四角柱状の外形を有し、
前記入子型は、前記母型に挿入される方向に沿って伸びる角部に面取り形状を有し、
前記入子型と前記母型とは焼嵌めされて一体化された構造を有する熱間鍛造用金型である。
好ましくは、前記入子型が複数個の入子金型片の組立て体である。
更に好ましくは、前記入子金型片の前記型彫り面に、Ni基超耐熱合金の肉盛層を有する構造とする。前記入子金型片の少なくとも一つが、Ni基超耐熱合金製の入子金型片であることも好ましい。
上記の熱間鍛造用金型において、前記型彫り面の縁部分の少なくとも一部に、前記入子型に対して着脱可能な分割部材を備えることが好ましい。
さらに、かかる熱間鍛造用金型において、前記分割部材が、前記入子型よりも高い熱間強度を有することが好ましい。
前記熱間鍛造用金型は、少なくとも入子型と前記入子型を収納する母型とを有し、
前記入子型は、外形が四角柱状であって、前記熱間鍛造用素材を押圧する型彫り面を有し、前記母型に挿入される方向に沿って伸びる角部に面取り形状を有し、
前記母型は、外形が四角柱状であって、前記入子型を収納する収納部を有し、
前記入子型と前記母型とを焼嵌めして一体化する熱間鍛造用金型の製造方法である。
好ましくは、前記入子型が複数個の入子金型片の組立て体である。
また、かかる金型を用いる本発明の鍛造材の製造方法によれば、例えば大型の鍛造材を熱間鍛造で得る場合の金型に係るコストを低減することができる。
図1は、本発明の熱間鍛造用金型を構成する入子型2の模式図であり、上述したように、例えば、棒状の鍛造用素材を熱間鍛造によって長尺のブレードのような形状に成形するものである。そのため、図2に示す熱間鍛造用金型1の全体の外形(母型3の外形)と入子型2の外形は四角柱状である。なお、熱間鍛造用金型1の外周に、例えば、ハードプレートに固定するための鍔部等の若干の凹凸状の加工がなされていても差しつかえないし、図1に示すように、鍔部に相当する別部材の入子型固定枠23を設けていても良い。
本発明の熱間鍛造用金型1においては、少なくとも入子型2と前記入子型2を収納する収納部31を備えた母型3とが必須の構成となる。なお、図2に示すように、入子型2の表面には製品形状に応じた凹状(掘り込み部分)の型彫り面21を有するものである。本発明では前記の掘り込み部分を「型彫り面」として説明する。また、入子型2の外形は四角柱状である。ここで言う「四角柱状」とは例えば直方体の他、四角錐台形状も含むものとする。
本発明では、前記入子型の前記母型に挿入される方向(以下、単に挿入方向という)に沿って伸びる角部24(図1では4カ所に角部24を有する)は面取り形状とする。角部を直線的に面取り加工しても良いし、またはR形状としても良い。この面取り形状の付与は、角部24への過度の応力集中を防止して、入子型の割れを防止するために行う。入子型は、その表面に型彫り面を有し、鍛造用素材を加工する。そのため、鍛造時の鍛造荷重を直接受ける入子型の角部を面取りして角部への応力集中を緩和させる。本発明における面取り形状は、かかる目的のために形成されるものであり、金型加工上の制限等で必然的に形成される角部形状とは異なる。例えば、仮に、挿入方向に垂直な方向に沿って伸びる角部に微小なアール形状があったとしても、本発明における面取り形状は、かかるアール形状よりも大きいものである。面取り形状の大きさは、鍛造荷重の大きさ、入子型の大きさ等に応じて決定すればよい。この場合、面取り部の大きさとは、各辺から一つの面取り部によって除去されている長さをいう。例えば、面取り部の大きさは、R10〜R50にすることができる。なお、これに対応する母型3の隅部にも入子型の角部24の面取り形状に合わせて加工を施すと良い。
また、もし、一部の入子金型片が過度に摩耗を生じた場合でも、当該入子金型片のみを交換したり、補修することも可能である。これにより、経済的にも有利な熱間鍛造用金型とすることができる。
なお、入子金型片の材質は、大きな鍛造荷重が加わる位置以外は、基本的に、例えば、JISで規定されるSKD61、SKT4等の熱間金型用鋼を用いることができるし、例えば、金型を高強度化する場合には、Alloy718等のNi基超耐熱合金、高速度工具鋼を選択することもできる。また、本発明では、それぞれの金型片に加わる負荷の大きさに応じて異なる材質の金型片を組み合わせて熱間鍛造用金型を構成することができる。これらの組み合わせにより、熱間鍛造用金型の寿命を向上させることができる。母型の材質はJISで規定されるSKD61、SKT4等の熱間金型用鋼で十分である。
また、各金型片の長手方向の長さは、熱間鍛造用金型に加わる応力や金型片自体が有する材料強度を勘案して長さを決定するのが良い。特に、数万トン規模の大型熱間鍛造装置に用いられる際には、金型片に加わる応力も大きくなることから、過度に長さが短くなると金型片が破壊するおそれがあることから、最低でも100mm以上の長さとすることが好ましい。
更に、本発明では入子型2を4個以上の入子金型片22で構成すると、一つの入子金型片の重量を小さくすることができる。従来のような一体の金型を大型製品の熱間鍛造に使用しようとすると、どうしても焼入れ時の冷却速度が低下して、靱性を阻害するベイナイトのような金属組織があらわれて靱性が劣化する。これに対し、本発明では、例えば、上述のJISで規定されるSKD61、SKT4等の熱間金型用鋼を金型片として用いた場合であっても、金型片の焼入れの際に冷却速度を速くすることが可能となる。その結果、SKD61、SKT4等の熱間金型用鋼が有する、優れた高温強度と、高靱性を十分に発揮することが可能となり、高強度と高靱性を兼備する金型片とすることができる。そのため、その重量が小さくできるように、4個以上の入子金型片とするのが好ましい。
Ni基超耐熱合金の肉盛層は熱間鍛造時の負荷が大きく加わる箇所に、高強度化可能な材質のものを選定すると、金型片の寿命を高めることが可能となる。また、用いるNi基超耐熱合金の肉盛層は、金型片の材質と比較して熱伝導率の低い材質を選定すると、熱間鍛造中に被鍛造材の温度低下を防止する効果も得られる。
上述した、高寿命化、温度低下防止効果の2つの効果を得るには、例えば、Ni基超耐熱合金製の肉盛層を形成するのが好ましく、中でも特に、質量%でB:0〜0.02%、C:0.01〜0.15%、Mg:0〜0.01%、Al:0.5〜2%、Si:0〜1%、Mn:0〜1%、Ti:1〜3%、Cr:15〜22%、Co:2〜15%、Nb:0〜3%、Mo:3〜7%、Ta:1〜7%、W:3〜7%、且つ、Ta単独またはTa+2Nbの合計で1〜7%を含み、残部はNi及び不純物でなる合金を用いるのが好ましい。
型彫り面を形成した金型で型鍛造を行う場合、欠肉を防ぐとともに、上型と下型による圧下の終盤で加圧力が急激に上昇して過負荷になることを防ぐため、型彫り面の縁を超えて鍛造用素材をはみ出させるための隙間(ばり道)を上型と下型の間に設けるのが一般的である。この場合、型彫り面の縁の部分の金型の摩耗や損傷が特に著しくなり、型彫り面の縁の部分と、その内側の型彫り面の中央寄りの部分とで、摩耗や損傷の程度が大きく異なることになる。これに対して、図5に示す実施形態のように、摩耗等が激しい縁の部分を着脱可能にしておけば、分割部材が摩耗等で使用不能になった場合には、分割部材のみを交換すればよい。したがって、金型の交換作業が大幅に簡略化され、材料ロスも低減される。
図5の分割部材が占める領域を一つの分割部材で構成することもできるが、図5に示すように隣接配置された複数の分割部材片で分割部材を構成すること、すなわち分割部材を複数の分割部材片に分割された状態で配置することで、摩耗等によって交換する部分を必要最小限にすることができる。また、鍛造の際の応力が分散され、分割部材にかかる最大応力が低減されることも期待できる。
図5に示す示す実施形態では、長手方向に沿った長辺側に分割部材が配置されている。型彫り面の全周に渡って分割部材を配置することもできるが、図5に示すように、摩耗等が激しい、少なくとも一部に配置すればよい。
また、分割部材28は、その下部に、型彫り面の彫り込み方向(z方向)に垂直な方向(型彫り面の縁に垂直な方向であって、図6ではy方向である。)に突出した、断面が矩形の凸部を有し、入子型には、かかる凸部と嵌め合わせ可能な凹部が設けられている。かかる凸部および凹部によって、分割部材、入子型、それぞれに凹凸が形成されている。分割部材27の凹凸が入子型の凹凸に嵌合することにより、分割部材28が型彫り面の彫り込み方向(z方向)で拘束される。したがって、鍛造の際に分割部材に上方に向かう強い摩擦力が働いても、分割部材の固定状態を安定に維持することができる。図6に示す凹凸の嵌合による拘束を利用しない構成を用いることもできるが、図6に示す構成を用いることで、ばりだまり部分の位置でのボルト固定に加えて、より型彫り面に近い位置で分割部材を型彫り面の彫り込み方向で拘束するため、よりいっそう強固に補強部材を固定することができる。
入子型を複数の入子型片の組立て体で構成する場合、各入子型片に分割部材を配置することができる。かかる場合、分割部材を配置する入子型片の数は一つでも、二つ以上でもよい。また、一つの入子型片に配置する分割部材の数も、一つでも、二つ以上でもよい。
本発明で言う固溶強化型耐熱合金とは、例えば、JIS−G4901やG4902に示される組成を有する合金のうち、合金元素を固溶させて基地(マトリックス)を強化することが可能な組成を有する合金や、ASTM−A494に記される合金で有ればよい。
典型的な成分範囲を示すと、質量%で、C:0.15%以下、Cr:15〜30%、Co:0〜3%、Mo:0〜30%、W:0〜10%、Nb:0〜4%、Ta:0〜4%、Ti:0〜1%、Al:0〜2%、Fe:0〜20%、Mn:0〜4%を含み、残部はNi及び不純物でなる合金である。
また、組立てた入子型の四隅(母型に挿入される方向に沿って伸びる4つの角部)となる部分に面取り加工を行って、一体物としてタイロッド等の締結部材25により締結して一体化し、入子型2とする(図3)。なお、図3に示すように、入子型を構成する入子型片の形状は鍛造荷重を考慮して、鍛造荷重を受ける鍔部を有したものや、例えばNi基超耐熱合金製の別な金型片27との組立て体を設けても差し支えない。
そして、この母型と入子型とを焼嵌めして一体化して、外形が四角柱状の熱間鍛造用金型とすることができる。
以上、説明する本発明によれば、肉盛溶接も任意の箇所に所望の肉盛層が形成可能で、経済的にも優れ、製品の大型化、高強度化にも適用可能である。
2 入子型
21 型彫り面
22 入子型片
23 入子型固定枠
24 角部
25 締結部材
26 鍔部
27 金型片
28 分割部材
29 ばりだまり
30 ボルト
3 母型
31 収納部
32 隅部
Claims (8)
- 熱間鍛造用素材を押圧して鍛造材とする熱間鍛造用金型において、
前記熱間鍛造用金型は、少なくとも入子型と前記入子型を収納する母型とを有し、
前記入子型は、前記熱間鍛造用素材を押圧する型彫り面を有するとともに四角柱状の外形を有し、
前記母型は、前記入子型を収納する収納部を備えるとともに四角柱状の外形を有し、
前記入子型は、前記母型に挿入される方向に沿って伸びる角部に面取り形状を有し、
前記入子型と前記母型とは焼嵌めされて一体化された構造を有し、
前記型彫り面の縁部分の少なくとも一部に、前記入子型に対して着脱可能な分割部材を備えることを特徴とする熱間鍛造用金型。 - 前記入子型が複数個の入子金型片の組立て体であることを特徴とする請求項1に記載の熱間鍛造用金型。
- 前記入子金型片の前記型彫り面に、Ni基超耐熱合金の肉盛層を有することを特徴とする請求項2に記載の熱間鍛造用金型。
- 前記入子金型片の少なくとも一つが、Ni基超耐熱合金製の入子金型片であることを特徴とする請求項2または3に記載の熱間鍛造用金型。
- 前記分割部材が、前記入子型よりも高い熱間強度を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱間鍛造用金型。
- 熱間鍛造用素材を押圧して鍛造材とする熱間鍛造用金型の製造方法において、
前記熱間鍛造用金型は、少なくとも入子型と前記入子型を収納する母型とを有し、
前記入子型は、外形が四角柱状であって、前記熱間鍛造用素材を押圧する型彫り面を有し、前記母型に挿入される方向に沿って伸びる角部に面取り形状を有し、
前記母型は、外形が四角柱状であって、前記入子型を収納する収納部を有し、
前記型彫り面の縁部分の少なくとも一部に、前記入子型に対して着脱可能な分割部材を備え、
前記入子型と前記母型とを焼嵌めして一体化することを特徴とする熱間鍛造用金型の製造方法。 - 前記入子型が複数個の入子金型片の組立て体であることを特徴とする請求項6に記載の熱間鍛造用金型の製造方法。
- 加熱された熱間鍛造用素材を請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱間鍛造用金型を用いて熱間鍛造し、鍛造材を得る鍛造材の製造方法。
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