以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。まず、本実施形態に係る樹脂積層金属板の構成について説明する。
<1.樹脂積層金属板の構成>
(1−1.全体構成)
本実施形態に係る樹脂積層金属板は、金属板と、金属板の少なくとも片面上に積層された接着剤層と、接着剤層上に積層された樹脂フィルムと、を備え、接着剤層は、接着剤の硬化物を含む。ここで、接着剤は、下記(イ)〜(ホ)の成分を含み、100℃〜140℃で加熱した際のゲル分率が10〜55%であり、100〜140℃で加熱後、40℃で5日間保持もしくは230℃で30秒間加熱した後のゲル分率が70%以上となる。
(イ)Tgが30〜80℃であるポリエステル樹脂A
(ロ)Tgが−30〜20℃であるポリエステル樹脂B
(ハ)解離温度が100〜120℃であるブロックイソシアネートC1
(ニ)解離温度が140〜160℃であるブロックイソシアネートC2
(ホ)ポリイソシアネート化合物D
(1−2.金属板)
金属板の種類は特に制限されず、広く公知の金属板を使用できる。金属板の例としては、鋼板、ステンレス板、Al板、Cu板、真鍮板、Ti板、クロム板、ニッケル板、亜鉛板、マグネシウム板などが挙げられる。
ここで、鋼板の例としては、ブリキ板、薄錫めっき鋼板、電解クロム酸処理鋼板(ティンフリー鋼板)、ニッケルめっき鋼板等の缶用鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛−鉄合金めっき鋼板、溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板、溶融アルミニウム−シリコン合金めっき鋼板、溶融鉛−錫合金めっき鋼板等の溶融めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−ニッケルめっき鋼板、電気亜鉛−鉄合金めっき鋼板、電気亜鉛−クロム合金めっき鋼板等の電気めっき鋼板、冷延鋼板等が挙げられる。鋼板への被覆は片面又は両面の何れに行ってもよい。
鋼板の表面には、接着剤層との密着性強化や防錆性向上等を目的とした各種化成処理を施してもよい。化成処理の具体例としては、電解クロメート処理、りん酸クロメート処理、6価クロムを含有する塗布クロメート処理、コバルト、モリブデン系複合メッキ処理、各種無機皮膜(例えば、バナジウム、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、リン含有無機皮膜)を被覆する処理、各種有機皮膜(例えば、ポリアクリル酸樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などを含有する有機皮膜)を被覆する処理、シランカップリング剤等を被覆する処理等が挙げられる。
(1−3.樹脂フィルム)
樹脂フィルムの種類も特に制限されず、従来の樹脂積層金属板に使用される樹脂フィルムであれば本実施形態の樹脂フィルムとして使用可能である。樹脂フィルムには、上述したように、各種の意匠(例えば、色、柄、エンボス等)が施されていてもよい。意匠を施した樹脂フィルムの例としては、単色意匠フィルム、柄物意匠フィルム等が挙げられる。単色意匠フィルムは、顔料による着色が施された意匠フィルムである。単色意匠フィルムの表面にはエンボス加工が施される場合が多い。このようなエンボス加工により光反射が抑制される。また、柄物意匠フィルムは、顔料による着色及び柄の印刷が施された意匠フィルムである。柄物意匠フィルムの表面には、柄を保護するための透明保護フィルムがさらに積層されていてもよい。また、柄物意匠フィルムは、顔料による着色が施された着色フィルムと、柄が印刷された透明保護フィルムとを圧着することによって作製される場合がある。この場合、透明保護フィルムの柄印刷面が着色フィルム側に向けられる。
樹脂フィルムを構成する樹脂は、特に制限されない。すなわち、従来の樹脂積層金属板に適用される樹脂であれば、本実施形態の樹脂にも適用可能である。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びフッ素系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ユリア樹脂、及びエポキシ樹脂等が挙げられる。樹脂フィルムは、上述した樹脂のうち、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びフッ素系樹脂のうちいずれか1種以上で構成されることが好ましい。これらの樹脂で構成された樹脂フィルムは、印刷の濡れ性、エンボス加工性に優れるので、高度な意匠を付与しやすい。また、金属板の加工に対する追随性にも優れる。以下、好ましい樹脂の例について詳細に説明する。
塩化ビニル樹脂は、塩素を含むモノマーユニットを含有する樹脂である。塩化ビニル樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリテン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体などの塩素含有樹脂、およびそれら相互のブレンド品あるいはそれらと他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリリレート共重合体、ポリエステルなどとのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体などが挙げられる。
さらに、塩化ビニル樹脂を主成分とした樹脂フィルムを作製する場合、樹脂フィルムには、耐衝撃性、耐候性などを改善する目的で塩素を含有しないジエン系樹脂、MBS(メチルメタクリレートブタジエンスチレン共重合体)、MBA(メチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体)などのアクリル系インパクトモディファイヤー、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの塩素を含有しない樹脂を添加してもよい。なお、本実施形態において、樹脂フィルムの「主成分」とは、樹脂フィルムに樹脂フィルムの総質量に対して50質量%以上の質量比で含まれている材料を意味する。これらの添加剤の添加量は、樹脂フィルムの総質量に対して50質量%未満であることが好ましい。添加剤の添加量が50質量%以上となる場合、塩化ビニル樹脂の特性が発現しにくくなる場合がある。また、これらの添加剤の添加量は、樹脂フィルムの総質量に対して3質量%以上であることが好ましい。3質量%未満では、樹脂積層金属板に衝撃力を加えた場合、フィルムが破壊する場合がある。
また、塩化ビニル樹脂を主成分とした樹脂フィルムを作製する場合、樹脂フィルムには、樹脂フィルムの可とう性、柔軟性を付与する目的で公知の可塑剤を添加してもよい。添加剤の例としては、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレートなどのフタレート系可塑剤、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペートなどのアジペート系可塑剤、トリクレジルホスフェートなどのホスフェート系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン系可塑剤、トリメリテート系可塑剤、ピロメリテート系可塑剤、ビフェニルテトラカルボキシレート系可塑剤、エポキシ系可塑剤などがあげられる。可塑剤の添加量は、意匠フィルムの総質量に対して30質量%以下であることが好ましい。可塑剤の添加量が30質量%より大きい場合、樹脂積層金属板を長時間使用した際に大量の可塑剤が表面に移動する場合がある。この場合、表面にタックを生じるなど意匠性、表面機能が低下する場合がある。また、可塑剤の添加量は、樹脂フィルムの総質量に対して3質量%以上であることが好ましい。3質量%未満ではフィルムが硬く、樹脂積層金属板を加工するとフィルムが追従しないで、亀裂を生じる場合がある。
また、塩化ビニル樹脂を主成分とした樹脂フィルムを作製する場合、樹脂フィルムには、熱安定性、耐候性、隠蔽性、耐衝撃性を向上する目的で、ステアリン酸バリウムなどの有機酸アルカリ土類金属塩、ステアリン酸亜鉛などの有機酸亜鉛、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのヒンダードアミン化合物、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤を添加してもよい。これらの添加剤の添加量は、意匠フィルムの総質量に対して0.01〜10質量%であることが好ましい。添加量が0.01質量%未満となる場合、添加剤の機能が十分に発現できない場合がある。一方、添加量が10質量%より大きい場合、着色や焼けが発生する場合がある。
また、塩化ビニル樹脂を主成分とした樹脂フィルムを作製する場合、樹脂フィルムには、樹脂フィルムに隠蔽性を付与する目的で、ルチル型二酸化チタン、炭酸カルシウムなどの顔料を添加してもよい。顔料の添加量は、樹脂フィルムの総質量に対して1〜30質量%であることが好ましい。添加量が1質量%未満となる場合、隠蔽性が不十分となる場合がある。添加量が30質量%より大きい場合、樹脂フィルムがもろくなり、製膜が困難になる場合がある。製膜性、隠蔽の安定性からは、顔料の添加量は5〜20質量%であることがより好ましい。
塩化ビニル樹脂を主成分とした樹脂フィルムを作製する場合、樹脂フィルムには、上記以外の添加剤として、ジフェニルチオ尿素、ジフェニル尿素、アニリノジチオトリアジン、メラミン、安息香酸、ケイヒ酸、p−第三ブチル安息香酸、ゼオライトなどの安定剤を添加してもよい。樹脂フィルムには、必要に応じて、架橋剤、発泡剤、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤等の添加剤を添加してもよい。これらの添加量は、樹脂フィルムの総質量に対して0.1〜5質量%であることが好ましい。添加量が0.1質量%となる場合、添加剤の機能が十分に発現しない場合がある。添加量が5質量%より大きい場合、樹脂フィルムの機械強度などの特性が低下する場合がある。
ポリエステル樹脂の例としては、ジオール化合物残基及びジカルボン酸化合物残基からなるポリエステル樹脂、あるいはこれらの一部もしくはすべてをヒドロキシルカルボン酸化合物残基で置換したポリエステル樹脂等を挙げることができる。より具体的な例としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET−I、PBT−I、PET−G、PCT−G、PAr(ポリアリレート)、これらを主成分とする共重合体樹脂、及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
ここで、PET−Iは、PETのジカルボン酸残基の一部をイソフタル酸残基に変更したものである。PBT−Iは、PBTのジカルボン酸残基の一部をイソフタル酸残基に変更したものである。PET−GはPETのジオール残基の一部を1、4−シクロヘキサンジメタノール(1、4−CHDM)残基に置き換えたものであり、ジオール残基中の1、4−CHDM残基のモル比がジオール残基の全モル数に対して20%以上50%未満となっている。PCT−Gは、PETのジオール残基の一部を1、4−CHDM残基に置き換えたものであり、ジオール残基中の1、4−CHDM残基のモル比がジオール残基の全モル数に対して50%以上80%以下となっている。
アクリル樹脂は、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを主成分とする樹脂である。アクリル酸エステルの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。メタクリル酸エステルの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。アクリル樹脂を主成分とした意匠フィルムを作製する場合、意匠フィルムには、意匠フィルムの加工性等を向上させる目的でMBS、MBAなどのアクリル系インパクトモディファイヤーを添加してもよい。
ポリオレフィン樹脂の例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレンープロピレン共重合体樹脂等が挙げられる。
フッ素系樹脂の例としては、PVF(ポリフッ化ビニル)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ポリテトラフルオロエチレン)、PFEP(六フッ化エチレンプロピレン)等のようなフッ素骨格を有する樹脂の他、フッ素含有モノマーとオレフィンとの共重合体、フッ素含有モノマーと塩素含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。フッ素含有モノマーとオレフィンとの共重合体としては、ETFE(テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体)等が挙げられる。フッ素含有モノマーと塩素含有モノマーとの共重合体の例としては、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ECTFE(エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体)等が挙げられる。
なお、上記で列挙した樹脂のうち、特に好ましい樹脂は、塩化ビニル樹脂、PET、PBT、PET−G、PET−I、PBT−I、PVF、PVDF、メタクリル酸メチルを主成分とするアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、及びポリプロピレン樹脂である。これらの樹脂を主成分とする意匠フィルムは、これらの樹脂で構成された意匠フィルムは、印刷の濡れ性、エンボス加工性に特に優れ、生産性にも優れる。
樹脂フィルムの軟化温度は特に制限されないが、接着剤層に接する部分の軟化温度は150℃未満であることが好ましい。ここで、軟化温度は熱機械分析装置(Thermal Mechanical Analysis)により測定される。具体的には、試料を2℃/分で加熱しつつ、試料に直径1mmの円柱針を荷重500mNで押し込む。そして、試料への円柱針の侵入深さが以下の数式(1)を満たした時の温度を軟化温度とする。なお、試料への円柱針の侵入深さは、JIS−K−7196に準拠して測定される。
ti/t200=0.8 (1)
数式(1)において、tiは侵入深さ、t200は試料温度が200℃となるときの侵入深さである。したがって、数式(1)の左辺は軟化度を示す。
具体的にこの効果を示すと、前意匠付与方法の場合、接着剤層に接する部分(以下、「接着剤層接触部分」とも称する)の軟化温度が150℃未満とすると、樹脂積層金属板作製時における加熱によるエンボス模様の変化、色落ちを抑えつつ、樹脂フィルムと接着剤層との密着力を向上させることができる。すなわち、接着剤層接触部分は、180℃以下の温度まで加熱された場合であっても、十分に軟化するので、接着剤層との密着力をより向上させることができる。
言い換えれば、接着剤層接触部分は、十分なアンカー効果をより一層発現することができる。また、樹脂フィルムの加熱温度が180℃以下となるので、意匠の劣化が抑えられる。より好ましくは、接着剤層接触部位の軟化温度が150℃未満で、エンボス加工部分の軟化温度が150℃以上となる前意匠フィルムを金属板に積層することが望ましい。接着剤層接触部分の軟化温度近傍の温度を有する接着剤層に樹脂フィルムを積層してもアンカー効果が発現でき、かつエンボス加工部分は積層時の加熱では軟化しない。この結果、積層時のエンボス形状変化を防止しやすい。
一方、後意匠付与方法の場合は、高度な写像鮮明度がある高級意匠を要求される場合が多いので、平滑性に優れる2軸延伸フィルムを積層することが好ましい。より好ましくは、前意匠付与方法と同様な理由により、接着剤層接触部分、被印刷層の軟化温度が各々150℃未満、150℃以上からなる2軸延伸フィルムを金属板に積層することが望ましい。これにより、密着力と被印刷面の平滑性を確保しやすい。なお、被印刷面の平滑性を確保するには、接着剤層の平坦性を確保することも重要であり、後述するように本実施形態に係る接着剤層を使用することにより、接着剤層の平坦性が実現される。
ここで、軟化温度が150℃未満となる樹脂の例としては、上述したPETの無延伸フィルム、PBT−I、PET−G、メタクリル酸メチルを主成分とするアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。したがって、これらの樹脂で接着剤層接触部分を形成すればよい。
樹脂フィルムの厚さは特に制限されない。ただし、本実施形態の効果を有効に利用するという観点からは、樹脂フィルムの厚さは5〜400μmであることが好ましく、5〜150μmであることがより好ましい。
<3.接着剤>
本実施形態に係る接着剤層は、以下の構成を有する接着剤が硬化したものである。接着剤は、下記(イ)〜(ホ)の成分を必須成分として含む。
(イ)Tgが30〜80℃であるポリエステル樹脂A
(ロ)Tgが−30〜20℃であるポリエステル樹脂B
(ハ)解離温度が100〜120℃であるブロックイソシアネートC1
(ニ)解離温度が140〜160℃であるブロックイソシアネートC2
(ホ)ポリイソシアネート化合物D
このように、本実施形態では、接着剤のマトリックス樹脂をポリエステル樹脂A、Bで構成する。本実施形態では、接着剤にポリイソシアネート化合物Dを添加することにより、接着剤塗布直後に適正な粘度を付与でき、流れ、垂れを防止して作業性を確保できる。さらに、ポリエステル樹脂A、Bのガラス転移温度が低いので、180℃以下の低温で加熱積層しても、接着剤層を十分に軟化できる。また、接着剤層の硬化反応が十分に進行すれば、適度な強度を確保できるマトリックス樹脂となる。
さらに、接着剤にブロックイソシアネートC1、C2のように低温、高温で解離する2成分の硬化剤を添加することで、樹脂フィルムの積層時には一部の硬化剤のみ(具体的には、ブロックイソシアネートC1)を反応させ、残り(具体的には、ブロックイソシアネートC2)を解離のみで留めることができる。この結果、樹脂フィルムの積層時に金属板と積層樹脂(すなわち樹脂フィルム)間にせん断応力が発生しても、これらがズレない程度のせん断強度を接着剤に付与できる。さらに、樹脂フィルムの積層時にブロックイソシアネートC2がマトリックス樹脂の柔軟性を損なうことがないので、接着剤のアンカー効果を十分に発現して強固な密着力を確保できる。かつ、接着剤中の溶媒が蒸発する際に発生する接着剤層表面の凹凸を積層時の加圧で平準化できる。
さらに、樹脂積層直後に未反応で残留した硬化剤、すなわちブロックイソシアネートC2から解離したイソシアネートが、冷却工程、養生、もしくは後意匠を付与する工程での加熱により、接着剤を硬化できる。この結果、実使用時には接着剤層の強度を確保し、接着剤層が凝集破壊することなく、強固な密着力を発現できる。これらの効果により、前意匠の場合、エンボス形状の変化や色落ちなどの意匠劣化を防止し、かつ、積層樹脂と金属板間の強固な密着力を発現できる。さらに後意匠の場合でも、被印刷面の平滑性を確保しつつ、積層樹脂と金属板間の強固な密着力を発現できる。以下、詳細を説明する。
(イ)により、接着剤樹脂の強度、より具体的には、硬化後の接着剤層の強度を高め、(ロ)により低温で接着剤樹脂を軟化させ、(ハ)により樹脂フィルムとの化学的な親和力を増加させ、(ホ)により積層工程での接着剤の粘度と強度を適正に制御し、接着剤層のタックによるロールへの付着が防止できる。さらに、(二)により積層前後での硬化反応率を適正に制御して樹脂フィルム積層時の接着剤層の柔軟性、積層後の高い強度(具体的には、硬化後の高い強度)を発現し、密着力を確保できる。この結果、金属板/樹脂フィルム間で強固な密着力、高度な意匠を維持、発現し、かつ、目標の製造歩留まりで製造できる樹脂積層金属板を得ることができる。
本実施形態に係る接着剤を構成するポリエステルAのガラス転移温度(Tg)は、30〜80℃でなければならない。ガラス転移温度(Tg)が30℃を下回ると接着剤硬化後の凝集力が低下し、接着剤層の強度が発現できない。反対にガラス転移温度が80℃を上回ると樹脂フィルムの積層時(すなわち、ラミネート時)に接着剤が溶融軟化し難くなり、接着剤層と樹脂フィルム及び金属板との密着性が低下する。なお、ガラス転移温度は、ASTM D 3418−82に準拠して示差走査熱量測定器(DSC)などで測定し、特定することができる。ポリエステルAの分子量は特に制限しないが、数平均分子量3000〜30000、質量平均分子量50000〜200000の両平均分子量条件を満たすものが好ましい。両平均分子量を下回ると接着剤層強度が不十分で密着力性が低下する傾向が見られ、反対に両平均分子量を上回ると塗工時の粘度が高すぎ、塗工適性が低下する傾向がある。
一方、ポリエステル樹脂BのTgは、−30〜20℃でなければならない。ガラス転移温度(Tg)が−30℃を下回ると、接着剤の塗工直後(すなわち、加熱前)の粘性が不足し、金属板上から接着剤が流失してしまう可能性がある。また、接着剤が気泡を巻き込んでしまう可能性もある。反対にガラス転移温度が20℃を上回ると樹脂フィルムの積層時(すなわち、ラミネート時)に接着剤が溶融軟化し難くなり、接着剤層と樹脂フィルム及び金属板との密着性が低下する。すなわち、ラミネート性が低下する傾向がある。ポリエステル樹脂Bのガラス転移温度は、好ましくは、−20〜0℃である。この場合、ブロッキングをさらに防止し、かつ、安定的に低温で接着剤層を軟化できる。ポリエステル樹脂Bの分子量は特に制限しないが、数平均分子量5000〜40000、質量平均分子量5000〜200000が好ましい。両平均分子量を下回ると柔軟性の低下による加工性の低下傾向が見られ、反対に両平均分子量を上回ると塗工適性が低下する傾向となる。
具体的にポリエステル樹脂A、Bを例示すると、両樹脂ともに多塩基酸残基と多価アルコール残基からなるポリエステ樹脂をあげることができる。多塩基酸残基として、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、などの1種以上の二塩基酸残基、及び、これらの酸の低級アルキルエステル化物残基が主として用いられ、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸の残基などが併用される。
多価アルコール残基としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのニ価アルコールの残基が主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールの残基を併用することができる。これらの多価アルコール残基は単独で、又は2種以上を混合して使用することが出来る。
ポリエステル樹脂Aを市販品から例示すると、例えば、東洋紡(株)社製のバイロン(VYLON)103、同200、同220、同226、同240、同245、同270、同280、同290、同296、同600、同660、同885、バイロン(VYLON)GK250、同360、同640、同780、同810、ユニチカ(株)社製エリーテル(ELITEL)UE−3500、同3200、同9200、同3201、同3203、同3600、同9600、同3660、同3210、同3215、同3216、同3620、同3240、同3250、同3370、同3380、同3350、同3300、東亞合成(株)社製アロンメルト(Aronmelt)PES−360、同316、SKケミカル社製スカイボン(SKYBON)ES−100、同110、同120、同160、同250、同403、同410、同420、同450、同460M、同600、同660、同710、同750、同850、同900M、同901、同910、同955などが挙げられる。
ポリエステル樹脂Bを市販品から例示すると、例えば、東洋紡(株)社製のバイロン(VYLON)300、同500、同516、同550、同560、同630、同650、同670、バイロン(VYLON)GK130、同140、同150、同180、同190、同330、同590、同680、同890、バイロン(VYLON)BX−1001、ユニチカ(株)社製エリーテル(ELITEL)UE−3220、同3223、同3230、同3231、同3400、東亞合成(株)社製アロンメルト(Aronmelt)PES−310、同320、同340、同345、同380、同390、SKケミカル社製スカイボン(SKYBON)ES−215、同220、同300、同320、同350、同360、同360M、同365、同500、同510、同601、同906などが挙げられる。
本実施形態に係る接着剤は、ブロックイソシアネートとして、解離温度が100〜120℃であるブロックイソシアネートC1、及び解離温度が140〜160℃であるブロックイソシアネートC2を含む。すなわち、本実施形態に係る接着剤は、解離温度が互いに異なるブロックイソシアネートを含有すること、即ち各解離温度範囲から選択される少なくとも1種以上のブロックイソシアネートを含有する事を必須とする。なお、解離温度とは、ブロック剤がイソシアネート基から脱離する温度である。具体的には、ブロックイソシアネートを窒素雰囲気下で一定温度加熱し、ブロック剤が解離してイソシアネート基が出現し始めた温度として定義できる。特定法を例示すれば、ブロックイソシアネートを加熱しながら、赤外分光光度計(FT−IR)やレーザーラマン分光計などにより分光光度を逐次測定し、イソシアネート基に由来する吸収ピークの発現し始めた温度などを解離温度と認知できる。また解離するブロック剤の構造が明確な場合は、熱天秤や分解ガスクロマトグラフィーを使用して、質量変化及び解離した成分組成の温度変化からも解離温度を特定することが可能である。
一般的に熱硬化型接着剤はポリエステル樹脂などのベース樹脂(主剤)とイソシアネート樹脂などの硬化性樹脂(硬化剤)を十分に反応させることで皮膜が架橋し、強固な接着性や耐久性を保持するに至る。一方、基材である金属板に樹脂フィルムがラミネートされる際には接着剤が熱により適度に溶融・軟化していないと接着剤が基材に均一に付着せず接着面にムラが生じる。その一方で、接着剤は、加熱により、ある程度硬化する必要もある。接着剤の硬化が不足し、接着剤が軟化しすぎた場合にはラミネート時に接着剤の流動性が高くなり、泡などを巻き込み易くなるからである。
更に接着剤が急激に硬化した場合、皮膜に増大な内部応力が生じることから基材との密着不良を引き起こす原因となる。よって、ラミネート時の加熱では溶融・軟化すると並行して内部応力が溜まらぬ程度に適度に硬化し、その後の冷却工程及び養生時に更に反応を進め、最終的に十分に反応させた強度に優れる接着剤が理想となる。
すなわち、本実施形態では、金属板の加熱温度(言い換えれば、樹脂フィルムを積層する際の積層温度)で解離するブロックイソシアネートC2のみでなく、積層温度よりも低温で解離するブロックイソシアネートC1を接着剤に混合する。これにより、樹脂フィルム積層直前の接着剤の柔軟性を確保しながらも金属板/積層樹脂(すなわち、樹脂フィルム)間のズレが生じない程度のせん断強度を発現することができる。すなわち、樹脂フィルムの積層時には、ブロックイソシアネートC1からブロック剤が解離し、主剤であるポリエステル樹脂A、Bとイソシアネートとの架橋反応が進行する。ただし、樹脂フィルムの積層時には、ブロックイソシアネートC2からブロック剤が解離するのみで、イソシアネートはポリエステル樹脂A、Bとはほとんど反応しない。ブロックイソシアネートC2から解離したイソシアネートは、その後の冷却工程あるいは養生時にポリエステル樹脂A、Bと反応する。後意匠付与方法では、意匠の付与時の加熱工程によってイソシアネートがポリエステル樹脂A、Bと反応する場合がある。
したがって、樹脂フィルムの積層時には接着剤は低温でも十分に軟化されているので、低温で樹脂フィルムを積層しても接着剤/積層樹脂(すなわち、樹脂フィルム)界面の密着力を確保できる。この結果、前意匠付与方法では、樹脂フィルムの積層時に樹脂フィルム元来の意匠を維持することができる。さらに、樹脂フィルムの積層後は、積層温度でブロックイソシアネートC2から解離したイソシアネートと主剤ポリエステル樹脂A、Bとの間の硬化反応が進行し、接着剤層の強度を確保できる。加えて、後意匠付与方法では、高度な意匠を発現するために、樹脂積層金属板の表面がなるべく平滑であることが求められる。しかしながら、接着剤中の溶媒を乾燥する工程で、接着剤層の表面に凹凸が発生するため、樹脂積層後にこれが樹脂表面にも現れ、写像鮮明度が劣化する場合があった。この点、本実施形態では、金属板に塗布した接着剤を加熱乾燥してもブロックイソシアネートC1のみの硬化反応しか進行していない。このため、接着剤が柔軟なため積層加圧によって凹凸を平準化でき、高度な平滑性を達成する。この結果、積層樹脂(すなわち、樹脂フィルム)表面が平滑化して、より高度な写像鮮明度を発現することができる。さらに、樹脂積層金属板の表面がなるべく平滑であることが求められることから、積層樹脂(すなわち、樹脂フィルム)には2軸延伸フィルムが用いられることが多い。加えて、後意匠方法では意匠付与時(例えば、エンボス加工、印刷焼付け時等)に樹脂積層金属板が加熱される場合が多い。このような加熱をしても意匠性を保持するためには、2軸延伸フィルムの収縮を抑制する必要がある。この点、本実施形態では、樹脂フィルムの積層後にブロックイソシアネートC2による硬化を十分に進行させることにより接着剤層の強度を十分に確保して、樹脂フィルムの熱収縮を抑制することができる。また、仮に未反応のイソシアネートが残留していたとしても、意匠付与時の加熱によってこれらのイソシアネートが反応し、接着剤が十分に硬化する。
具体的には、ポリエステル樹脂A、Bを十分軟化させる温度まで金属板を加熱することは最低限必要なので、ブロックイソシアネートC1の解離温度の範囲を、100〜120℃にする。これにより、金属板の加熱温度でのブロックイソシアネートC1とポリエステル樹脂A、B間の硬化反応を確実に進行させ、接着剤層の流れを防止する。さらに、樹脂フィルムに付与された意匠を変化させない温度でもブロックイソシアネートC2の解離反応が十分に進行するために、ブロックイソシアネートC2の解離温度の範囲を140〜160℃にする。
前記した解離温度の異なるブロックシソシアネートが想定した温度条件で効果を発現しているかを確認する手段として、皮膜のゲル分率を測定して架橋度を推定する方法がある。この方法は、一定の加熱条件で処理した皮膜を沸騰させた溶剤中に一定時間浸漬させることで、未架橋の皮膜成分が溶解して溶剤中に抽出されることから、浸漬前後の皮膜の質量差を測定することにより皮膜の架橋度の推定ができる(JIS K6796)。
本実施形態に係る接着剤は前記手法を用いて皮膜のゲル分率を測定した場合、100℃〜140℃で加熱した際のゲル分率が10〜55%、100〜140℃で加熱後、40℃5日間保持もしくは230℃で30秒間加熱後のゲル分率が70%以上となり、これは前記した解離温度の異なるブロックイソシアネートが効果を発現していることを確認できるものである。
尚、前記ブロックイソシアネートC1、C2としては、前記した解離温度の範囲であれば一般的なものでよく、1モルのトリメチロールプロパンに3モルの有機ジイソシアネートを付加して得られるアダクト、3モルの有機ジイソシアネートに1モルの水を反応させて得られるビュレット、または3モルの有機ジイソシアネートの重合で得られるイソシアヌレート等の結合形態を有する多官能の有機ポリイソシアネートを使用し、又、ポリイソシアネートとポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールまたは必要によりこれらと低分子ポリオールを反応させて得られるポリウレタンポリイソシアネート化合物を使用する。これらの例として、芳香族ポリイソシアネートとしては、2,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート若しくはその化合物)、4,4‘−トルイジンジイソシアネート、4,4’ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(2,2,4−または2,4,4−)、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,3−または1,4−)、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(−2,4−または−2,6−)、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化するブロック剤としては、フェノール、クレゾール(o,m,p)、キシレノール、などのフェノール類、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、などのアルコール類、アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム、アセトアルドキシム、ホルムアルドキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン類、ε―カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム類などのブロック剤を挙げることができる。この市販品としては、日本ポリウレタン(株)社製コロネートAP−M、同MS−50、同2503、同2507、同2513、同2515、住化バイエルウレタン社製デスモジュールBL1100、同1265MPA/X、BL3272、同BL3575、同BL3475、同BL3370、同BL4265、同BL5375、同PL350、同PL340、同VPLS2253、同VPLS2257、同VPLS2078/2、スミジュールBL3175、旭化成ケミカルズ社製デュラネートMF−K60B、同SBN−70D、同MF−B60B、同17B−60P、同TPA−B80E、同E402−B80B、三井化学社製タケネートB−830、同B−815N、同B−820NSU、同B−842N、同B−846N、同B870N、同B874N、同B882Nなどが挙げられる。
また、ポリイソシアネート化合物Dも同様に前記した成分のものでよく、この市販品としては、住化バイエルウレタン社製、デスモジュール N75MPA/X、同デスモジュール N3200、同スミジュール N3300、同スミジュール N3390、同デスモジュール N3400、同デスモジュール N3600、同デスモジュール N3790、同デスモジュール N3800、同デスモジュール N3900、同デスモジュール XP2580、同デスモジュール XP2840、同スミジュール HT、同デスモジュール Z4470BA、同デスモジュール XP2565、同デスモジュール XP2838、同デスモジュール L75 ( C )、同デスモジュール UL75XP、同デスモジュール IL1351BA、同デスモジュール IL1451BA、同デスモジュール E14、同デスモジュール E15、同デスモジュールEXP2605、同スミジュール E21−1、同スミジュール E21−2、同SBUイソシアネート 0620、同SBUイソシアネート M393、同デスモジュール E22、同デスモジュール E23、同デスモジュール E29、同デスモジュール RE、同デスモジュール RFE、旭化成ケミカルズ社製デュラネート24A−100、同デュラネート22A−75PX、同デュラネートTPA−100、同デュラネートTHA−100、同デュラネートP−301−75E、同デュラネート21S−75E、同デュラネート18H−70B、同デュラネートMFA−75X、同デュラネートE402−90T、同デュラネートE405−80T、同デュラネートTSE−100、同デュラネートTSA−100、同デュラネートTSS−100、同デュラネートD−101、同デュラネートD−201、三井化学社製タケネートD−101A同タケネートD−102、同タケネートD−103、同タケネートD−103H、同タケネートD−103M2、同タケネートD−104、同MT−オレスターP−20、同MT−オレスターP49−75S、同MT−オレスターP51−70、同MT−オレスターP53−70S、同MT−オレスターP56−70SS、同タケネートD−204、同タケネートD−204EA、同タケネートD−212、同タケネートD−212L、同タケネートD−212M6、同タケネートD−215、同タケネートD−217、同タケネートD−218、同タケネートD−219、同タケネートD−262、同タケネートD−268、同タケネートD−251A、同MT−オレスターP3300、同タケネートD−110N、同タケネートD−120N、同タケネートD−127N、同タケネートD−140N、同タケネートD−160N、同タケネートD−165N、同タケネートD−170N、同タケネートD−170HN、同タケネートD−172N、同タケネートD−177N、同タケネートD−178N、同MT−オレスターNP1200、同タケネートWD−220、同タケネートWD−240、同タケネートWD−250、同タケネートWD−720、同タケネートWD−723、同タケネートWD−725、同タケネートWD−726、同タケネートWD−730などが挙げられる。
本実施形態に係る接着剤が上述した作用を発現するためには、ポリエステル樹脂Bの質量比は、ポリエステル樹脂A100質量部(固形分換算、以下同じ)に対して、30〜150質量部である必要がある。ポリエステル樹脂Bの質量比は、好ましくは70〜110質量部である。ポリエステル樹脂Bの質量比が30質量部より低いと接着剤のTgが高すぎ、ラミネート性が低下する傾向がある。また、ポリエステル樹脂Bの質量比が150質量部を超えるとTgが低すぎることから、加熱時に接着剤が軟化しすぎてしまい、泡などを巻き込みやすい傾向がある。また、ブロックイソシアネートC1、C2の質量比は、ポリエステル樹脂A100質量部に対して、合計で1〜50質量部である必要がある。ブロックイソシアネートC1、C2の質量比は、好ましくは、合計で5〜20質量部である。ブロックイソシアネートC1、C2の質量比の合計が1質量部より低いと接着剤の架橋度が低く、凝集力が低い傾向がある。反対にブロックイソシアネートC1、C2の質量比が合計で50質量部を超えると未反応の官能基が空気中の水分と反応し、剛直な構造を取ることから加工性が低下する傾向がある。ポリイソシアネート化合物Dの質量比は、ポリエステル樹脂A100質量部に対して、30〜80質量部である必要がある。ポリイソシアネート化合物Dの質量比は、好ましくは45〜65質量部である。ポリイソシアネート化合物(D)の質量比が30質量部より低いとポリエステル樹脂との架橋反応(すなわち、ウレタン化反応)が不十分となり、ラミネート時の基材追従性に劣る。反対に80質量部を超えると前記同様、空気中の水分と余分に反応してしまい、脆弱な皮膜になる懸念がある。
本実施形態に係る接着剤は、更にエポキシ樹脂Eを加えれば塗膜の密着性を向上させる事が出来る。エポキシ樹脂Eの質量比は、ポリエステル樹脂A100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは25〜35質量部である。エポキシ樹脂Eの質量比が10質量部より低いと基材との密着強度が得られない場合があり、反対にエポキシ樹脂Eの質量比が50質量部を超えると皮膜の柔軟性に欠け、加工性が劣る場合がある。
エポキシ樹脂Eとしては、一般的に市販されているエピ−ビス型、ノボラック型、β−メチルエピクロ型、環状オキシラン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、ポリグリコールエーテル型、グリコールエーテル型、エポキシ化脂肪酸エステル型、多価カルボン酸エステル型、アミノグリシジル型、レゾルシン型等の各種エポキシ樹脂が挙げられる。
前記エポキシ樹脂Eの市販品としては、BPAタイプのものは、エピコート(EPIKOAT)1001、エピコート(EPIKOAT)1004、EPICLON N−865、EPICLON N−870等の変性ノボラック型エポキシ樹脂等があげられ、より好ましくはビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂(C−1)の例として、DIC(株)社製のEPICLON N−730、EPICLON N−740、EPICLON N−770等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、EPICLON N−660、EPICLON N−665、EPICLON N−670、EPICLON N−673、EPICLON N−680、EPICLON N−690、EPICLON N−695、旭化成エポキシ(株)社製のAER ECN−1273、同社製AER ECN−1299等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。さらにビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂であれば、特に、居住衛生面や食品用途で、未反応ビスフェノールAが溶出しないことから好ましい。なお、前記ビスフェノールAを含まないエポキシ樹脂とは、ビスフェノールA骨格由来の構造を含まないエポキシ樹脂を意味する。
金属板との密着力を改善する目的で、本実施形態に係る接着剤には、シランカップリング剤Fを更に加えても良い。シランカップリング剤Fの質量比は、ポリエステル樹脂A100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜15質量部である。シランカップリング剤Fの質量比が1質量部より低いと本来の効果が低く、基材密着性の向上は見込まれず、反対にシランカップリング剤Fの質量比が30質量部を超えると未反応のシランカップリング剤Fが基材/接着剤界面に多量に存在することとなるので、密着不良を引き起こす可能性がある。
シランカップリング剤Fの具体例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン;ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ヘキサメチルジシラザン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることが出来る。
また、接着剤の耐水性を向上する目的で、ポリカーボネートジオールGを添加することもできる。ポリカーボネートジオールGを接着剤に添加することで、浸水しやすいもしくは多湿の環境で樹脂積層金属板を使用しても、樹脂/金属板間の強固な密着力を保持しやすくなる。この場合、ポリカーボネートジオールGの数平均分子量は500〜3000が好ましく、より好ましくは数平均分子量800〜2000であり、水酸基価としては20〜200が好ましく、より好ましくは50〜150である。数平均分子量が500を下回ると耐水性の向上が不十分となる傾向にあり、数平均分子量が3000を上回ると他樹脂との相溶性が低下する傾向にある。また、水酸基価が20以下であると反応性が低くなり、耐水性の向上が低い傾向にあり、水酸基価が200以上であると反応過多となり、加工性が低下する傾向にある。ポリカーボネートジオールGの質量比は、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、1〜30質量部含有するのが好ましく、より好ましくは5〜20質量部である。ポリカーボネートジオールGの質量比が1質量部より低いと本来の効果が低く、耐水性の向上は見込まれず、反対にポリカーボネートジオールGの質量比が30質量部を超えると硬化阻害を引き起こし、接着剤の凝集力が低くなる傾向がある。この市販品としては(株)ダイセル社のプラクセルCD205PL、同CD210、同CD220、同CD220PL、旭化成ケミカルズ(株)社のデュラノールT6002、T6001、T5652、T5651、T5651J、T5651E、G4672、T4671、T4692、T4691などが挙げられる。
本実施形態に係る接着剤には、着色することを目的に有機顔料又は無機顔料を添加することができる。この成分としては例えば、クロム酸塩(黄鉛、クロムバーミリオン)フエロシアン化物(紺青)、硫化物(カドミウムエロー、カドミウムレッド)、酸化物(酸化チタン、ベンガラ、鉄黒)硫酸塩(硫酸バリウム、硫酸鉛)、珪酸塩(群青、珪酸カルシウム)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)燐酸塩(コバルトバイオレット)金属粉末(アルミニウム粉末、ブロンズ)炭素(カーボンブラック)の如き無機顔料、アゾ系(ベンジジンイエロー、ハンザエロー、バルカンオレンジ、パーマネントレッドF5R、カーミン6B、レーキレッドC、クロモフタールレッド、クロモフタールエロー)、フタロシアニリン系(フタロシアニンブルー、フタロシアニリングリーン)、建染染料系(インダスレンブルー、チオインジゴボルドー)染付レーキ系(エオシンレーキ、キノリンエロー、ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ)、キナクドリン系(シンカシアレッド、シンカシアバイオレット)ジオキジシン系(PVファストバイオレットBL)等如き有機顔料を挙げることができ、これらを単独あるいは混合して用いてよい。これらの顔料は、塗膜を着色し意匠性を付与することを可能とし、求められるデザインに対し、任意の有機顔料、無機顔料を添加することができる。
なかでも酸化チタンなどの白色顔料は鋼鈑特有のくすんだ外観色を隠蔽する目的で好適に使用することができる。ラミネート鋼鈑に隠蔽性を付与する手段として一般的には酸化チタンなどを練り込んだ厚みのあるプラスチックフィルムを使用するが、接着剤に酸化チタンなどを含有させることで隠蔽性を発現させ、プラスチックフィルムの薄膜化を可能とし、場合によっては透明フィルムを使用出来ることから大幅なコストダウンに繋がる。
本実施形態に使用可能な酸化チタンとしては硫酸法で製造された粒径が0.1〜0.4μmの範囲であり、表面処理剤としてシリカもしくはアルミナ処理されたものが好適に使用される。また、配合量としては接着剤の性能を損なわない範囲であれば特に制限されるものでは無いが、ポリエステル樹脂A〜ポリイソシアネート化合物D成分の合計を100質量部とした場合に、酸化チタンとして30〜200質量部が好ましく、より好ましくは、50〜100質量部の範囲である。酸化チタンとして塩素法で製造されたものは硫酸法で製造されたものよりも一般的にモース硬度が大きく、印刷時にドクターブレードを摩耗させ易いことから作業性を低下させる傾向がある。酸化チタンの粒子径は0.1μmを下回ると隠蔽性が劣り、0.4μmを超えると練肉阻害を引き起こす傾向がある。
本実施形態に係る接着剤は、溶剤に溶解された状態で金属板に積層されてもよい。溶剤は、金属板の加熱工程によって揮発する。本実施形態に使用できる溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらのうち通常はメチルエチルケトン、酢酸エチルや、これらの混合物を使用するのが好ましい。
本実施形態に係る接着剤には、必要に応じて、滑剤、消泡剤、レベリング剤、顔料等を添加することが可能である。また、硬化補助剤として、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、イソシアネート樹脂、ポリアミド樹脂等の他の硬化剤を併用しても良い。これらの添加剤は、接着剤の加熱温度、ラミネート条件等に応じて選択される。
本実施形態に係る接着剤層は、上述した接着剤が硬化したものである。接着剤は、上述したように、樹脂フィルムを金属板に積層する際には十分に難化しており、樹脂フィルムを金属板に積層した後に十分に硬化する。接着剤の硬化物は、ポリエステル樹脂がイソシアネート残基により架橋された構造を有する。
<2.樹脂積層金属板の製造方法>
次に、樹脂積層金属板の製造方法について説明する。本実施形態に係る樹脂積層金属板の製造方法は、金属板と樹脂フィルムとを180℃以下に加熱された接着剤を介して積層する方法であればどのような方法であってもよい。ここで、金属板、樹脂フィルム、及び接着剤は上述したものである。より具体的には、金属板に上記の接着剤を塗布した後、金属板を所定温度に加熱する。そして、この加熱した金属板の接着剤層塗布面上に樹脂フィルムを加圧積層したのち、室温まで冷却する方法がある。また、樹脂フィルムに上記の接着剤を塗布したのち、樹脂フィルムを加熱する。そして、加熱した樹脂フィルムの接着剤塗布面を金属板表面に加圧積層した後、冷却する方法などがある。これらの方法によれば、工業的に経済合理性をもって安定に本実施形態に係る樹脂積層金属板を製造できる。そしてこのときの加熱温度を180℃以下にすることにより、より安定して意匠性と強固な密着力を有する樹脂積層金属板を製造することができる。いずれの工程でも、金属板の加熱温度は180℃以下であることが必要であり、160℃以下が望ましい。金属板を180℃超まで加熱すると、樹脂表面まで加熱融解し、エンボス模様が変化、顔料が昇華して色褪せするなど、意匠が劣化する場合がある。また、樹脂フィルムの接着剤層接触部位の軟化温度以上まで加熱することが望ましい。軟化温度以上まで加熱することにより、積層樹脂と接着剤層とのアンカー効果が増大して、より強固な密着力を発現できる場合が多い。この場合、樹脂フィルムの接着剤層接触部位の軟化温度を150℃未満にすることにより、積層樹脂と接着剤層とのアンカー効果がより発現しやすくなり、より強固な密着を得やすくなる。但し、接着剤と接する層の軟化温度が180℃超である場合は、意匠、密着のどちらを優先するかにより選択することが望ましい。
また、本実施形態では、上述した組成を有する接着剤を使用するので、樹脂フィルムの積層時には接着剤を十分に軟化させることができる。これにより、樹脂フィルムと金属板とを十分なアンカー効果により密着させることができる。また、圧着により樹脂フィルムの表面の凹凸が平準化される。さらに、樹脂フィルム積層後の冷却工程、養生によって接着剤が十分に硬化するので、後意匠付与方法においてより高度な意匠を発現、維持することができる。
上記の接着剤を金属板もしくは樹脂フィルムに塗布する方法には、公知の方法を広く応用できる。具体的には、ロールコーター法、バーコーター法、スプレー塗布法、ディップ法、フィルム状の接着剤を積層する方法等によって各接着層を形成してもよい。中でも生産性からロールコーター法が好ましい。
以下、本実施形態に係る樹脂積層金属板及びその製造方法を実施例にて具体的に説明する。以下の実施例中「部」及び「%」は、「質量部」、「質量%」を各々表わす。
<1.接着剤の作製>
接着剤を構成する材料として、以下に列挙する材料を準備した。
(1)ポリエステル樹脂(A−1)
バイロンGK360、東洋紡(株)製、ガラス転移温度56℃、30%溶液(メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の混合溶液(体積比、以下同じ)で溶解)
(2)ポリエステル樹脂(A−2)
バイロンGK140、東洋紡(株)製、ガラス転移温度20℃、30%溶液(メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の混合溶液で溶解)
(3)ポリエステル樹脂(A−3)
エリーテルUE−3690、ユニチカ(株)製、ガラス転移温度90℃、30%溶液(メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の混合溶液で溶解)
したがって、ポリエステル樹脂A−1は本実施形態の要件を満たすが、ポリエステル樹脂A−2、A−3は本実施形態の要件を満たさない。
(4)ポリエステル樹脂(B−1)
バイロン550、東洋紡(株)製、ガラス転移温度−15℃、30%溶液(メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の混合溶液で溶解)
(5)ポリエステル樹脂(B−2)
エリーテルUE−3410、ユニチカ(株)製、ガラス転移温度−32℃、30%溶液(メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の混合溶液で溶解)
(6)ポリエステル樹脂(B−3)
バイロンGK103、東洋紡(株)製、ガラス転移温度47℃、30%溶液(メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の混合溶液で溶解)
したがって、ポリエステル樹脂B−1は本実施形態の要件を満たすが、ポリエステル樹脂B−2、B−3は本実施形態の要件を満たさない。
(7)ブロックイソシアネート(C1−1)=BL3475BA/SN(解離温度100℃)、住化コベストロウレタン(株)社製
(8)ブロックイソシアネート(C2−1)=スミジュールBL3175(解離温度140℃)、住化コベストロウレタン(株)社製
(9)ブロックイソシアネート(C1−2)=デュラネートMF−B60X(解離温度120℃)、旭化成ケミカルズ(株)社製
(10)ブロックイソシアネート(C2−2)=デスモジュールBL3272MPA(解離温度160℃)、住化コベストロウレタン(株)社製
(11)ブロックイソシアネート(X−1)=MF−K60B(解離温度90℃)、旭化成ケミカルズ(株)社製
(12)ブロックイソシアネート(X−2)=デスモジュールVPLS2078/2(解離温度170℃)、住化コベストロウレタン(株)社製
したがって、ブロックイソシアネートX−1、X−2は本実施形態の要件を満たさない。
(13)ポリイソシアネート化合物(D)=バーノックDN980(HDIイソシアヌレート型)、DIC(株)製
(14)エポキシ樹脂(E)
エピクロンN−660、DIC(株)製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、50%メチルエチルケトン溶液
(15)シランカップリング剤(F)=KBM−403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製
(16)ポリカーボネート樹脂(G)=プラクセルCD210、ダイセル化学(株)製数平均分子量1000、水酸基価約110
次いで、表1〜3に示した割合(表中の数字は固形分の質量部を示す)で上記の原料を電子天秤にて計量、混合後、分散攪拌機を用いて25℃の温度下、3000rpmの回転数で1分間攪拌した。これにより、実施例1〜28、比較例1〜12の接着剤を作製した。なお、表1〜3には加熱方法、加熱温度、下記の評価結果についても記載している。
<2.樹脂積層金属板の作製>
(2−1.金属板の準備)
金属板として、0.45mm厚さの2種類の亜鉛系金鋼板(新日鉄住金製スーパーダイマー(K08)(以下、「SD鋼板」とも称する)、GI鋼板(Z18))、Al板(A5052、1.2mm厚)、0.3mm厚チタン箔(新日鉄住金製JISH4600規格品)を用意した。そして、これらの金属板にアルカリ脱脂処理を施した後、クロメート液を塗布し、約45mg/m2のクロメート膜を金属板表面に形成した。
(2−2.樹脂フィルムの作製)
2層Tダイスを使用して、白色顔料入り(20質量%)PET層(白色PET層)およびPET系アロイ層(PET(ユニチカ製SP1344)/VLDPE(超低密度ポリエチレン)(ダウ製DFDA−1137)/相溶化剤(住友化学製ボンドファスト7L)=87/10/3(体積比))からなる単色フィルムを得た。フィルムの厚さは100μmで、白色PET層が90μm(上層)、PET系アロイ層が10μm(下層:接着剤層と接する層)とした。当該フィルムを白色PETフィルムと称す。
同様に、上層を白色PBT層(白色顔料入り(20質量%)PBT層)、下層をPBT(透明)層とした100μmフィルム(以下、白色PBTフィルムと称す)を準備した。さらに、白色顔料を加えたPETアロイ層を上層とし、白色PET層を下層としたフィルムを作製した(以下、白色PETアロイフィルムと称す)。これらのフィルムの上層表面には、深度20μmのストライプ状のエンボス模様を施し、平坦部は鏡面仕上げとした。また、この他に、70μmの透明2軸延伸PETフィルム(BO−PETフィルム、ユニチカ製:S−75、両面コロナ処理)、および白色塩ビフィルム(オカモト(株)社製、100μm厚)も準備した。白色塩ビフィルムの片側表面には、白色PETフィルムと同一のエンボス模様を付与した。PET系アロイ層、PBT層、BO−PET、白色塩ビフィルムの軟化温度は各々、135℃、220℃、260℃、140℃であった。
(2−3.樹脂積層金属板の作製)
以下の作製方法A、Bの何れかによって樹脂積層金属板を作製した。使用した接着剤の組成、金属板の種類、及び樹脂フィルムの種類は表1〜3に示される。
(2−3−1.作製方法A)
まず、接着剤を金属板に乾燥膜厚10μmになるようにバーコーターにて塗布し、ドライヤーで乾燥し、接着剤塗布金属板を作製した。ついで、接着剤塗布金属板を加熱したのち、フィルムを積層、加圧した。加熱温度(積層温度)は表1〜3に示される。除荷後、室温まで水冷して樹脂積層金属板を得た。なお、白色PET、白色塩ビフィルムに関してはエンボス面と逆面が金属板側になるように積層した。
(2−3−2.作製方法B)
まず、接着剤を樹脂フィルムに乾燥膜厚10μmになるようにバーコーターにて塗布し、ドライヤーで乾燥し、接着剤塗布フィルムを作製した。ついで、接着剤塗布フィルムを加熱したのち、接着剤塗布金属板上に積層、加圧した。加熱温度(積層温度)は表1〜3に示される。除荷後、室温まで水冷して樹脂積層金属板を得た。
<3.接着剤のゲル分率の測定>
接着剤塗布金属板に対して、以下のa〜cのいずれかの工程を行った。
a.接着剤塗布金属板を140℃/30秒で処理した。
b.接着剤塗布金属板を140℃/30秒で処理した後、養生処理を想定した加熱条件として40℃/5日間で処理した。
c.接着剤塗布金属板を140℃/30秒で処理した後、後意匠付与工程を想定した加熱条件として230℃/30秒で処理した。
ついで、a〜cの工程を行った接着剤塗布金属板をキシレンに浸漬させ、リフラックスして非ゲル化成分を抽出除去した。そして、下記に示す式にてゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(抽出後の塗布接着剤質量)÷(抽出前の塗布接着剤質量)×100
(1)
<4.評価項目1:接着剤のラミネート適性>
樹脂積層金属板の表面を目視観察して、フィルム皺・邑の発生の有無を評価した。さらに、樹脂積層金属板のフィルム剥離試験(後述する初期密着強度試験)後の剥離面を観察して、積層工程での接着剤層への気泡の混入の有無を評価した。評価基準は次の4段階で、○以上が合格レベルである。評価結果を表1〜3にまとめて示す。なお、表中の各評価項目の「/」は、何らかの理由(例えば、樹脂フィルムをラミネートできなかった、評価対象の樹脂フィルムにそもそもエンボスが付けられない等)により評価不能であることを示す。
◎:気泡、皺、ムラなどが無く非常に良好である。
○:気泡、皺、ムラなどが僅かに見られるが、大部分が良好である。
△:気泡、皺、ムラなどが比較的多く見られる。
×:気泡、皺、ムラなどが大部分の多くに見られる。
なお、比較例6では、ブロックイソシアネートC1が接着剤に含まれないため、金属板/積層樹脂(すなわち、樹脂フィルム)界面でズレが発生した。
<5.評価項目2:樹脂積層金属板の意匠性の評価>
樹脂フィルム並びに樹脂積層金属板の表面のエンボス深さを3次元粗さ計(東京精密社製NX001−2)により測定した(各々、Ra1、Ra2)。樹脂積層金属板のエンボス戻り率を以下の式より算出し、エンボス健全性を評価した。
エンボス戻り率χ: χ={1−Ra2/Ra1}×100 (2)
◎:エンボス戻り率 5%以下 ○:10%以下、△:15%以下、×:15%超
さらに、樹脂フィルム並びに樹脂積層鋼板の表面鏡面部の反射率(入射角60°)を光沢計(Minolta製GM60Pulus)で測定した(各々、Re1、Re2)。そして、樹脂積層鋼板の意匠を以下の基準で評価した。
光沢変化率y: y={1−Re2/Re1}×100 (3)
◎:光沢変化率 5%以下 ○:10%以下、△:15%以下、×:15%超
また、樹脂フィルムおよび樹脂積層金属板表面の鏡面部に写る像の鮮明性(写像鮮明度:PGD値)をPGD計(日本色彩研究所製)にて測定した。そして、積層前後の写像鮮明度の変化ΔPにより、写像以下のように評価した。白色フィルム積層金属板では○以上が商品許容レベル、BO−PETフィルム積層金属板では◎でなければ、後意匠の印刷に悪影響を及ぼす。
ΔP=(樹脂フィルムのPGD値)−(樹脂積層金属板のPGD値) (4)
◎:光沢変化率 0、 ○:0.1、△:0.2−0.3、×:0.4超
<6.評価項目3:積層樹脂/金属板間の初期密着強度>
2.5cm幅にカットした樹脂積層金属板のテストピースから、引張り試験機で把持できる程度まで樹脂層を剥離させ、剥離速度30mm/minで180°の角度でピール試験をした。このときのピール強度値で、金属板と積層樹脂層との初期密着強度を以下のように評価した。○以上が合格レベルである。
◎:46N/2.5cm以上
○:40〜45N/2.5cm
△:20〜39N/2.5cm
×:20N/2.5cm未満
<7.評価項目4:積層樹脂層/金属板間の耐久密着力>
風呂場などの多湿で樹脂積層金属板を使用した場合を想定し、樹脂積層金属板を沸騰水中に2時間浸漬した。沸騰水浸漬により、水分子のフィルムや接着剤の透過が加速するため、積層樹脂と金属板間の密着力の耐久性を評価できる。浸漬した樹脂積層金属板に付着した水をろ紙で拭き取った後、カッターナイフで積層フィルムに5mm幅の#型切込みを入れた。ここで、切り込みの深さは金属板に達する程度の深さとした。ついで、エリクセン試験機(DKSH社製、エリクセン試験機)を用いて#型切込み部分を8mm張り出した。ここで、張り出し部分の中心(トップ部)を#型切込み部分の中心に一致させた。ついで、#型切込み部分をピンセットで強制剥離し、剥離の程度を以下の基準で評価した。
◎◎:評点5(フィルムが凝集破壊して殆ど剥離なし)
◎:評点4(トップ部のみ剥離)
○:評点3(トップ部の全体および側面部の1/3未満が剥離。なお、カッターで切れ目をいれたときに切れ目が開く場合も○としたが、開きがない方が密着力は強)
×:評点2(トップ部の全体および側面部の全体が剥離)
××:評点1(トップ部の全体、側面加工部の全体、及び#型切込み部分の周囲が剥離)
そして、同様の試験を5回繰り返した。なお、試験毎に評価のバラ付きがある場合、評価の上限、下限を表に記載した。
尚、本実施例におけるGPCによる数平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0質量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲−80〜450℃、昇温温度10℃/分の条件で走査を実施することで行った。
また、ブロック剤がイソシアネート基から脱離する解離温度は、ブロックイソシアネート化合物の50質量%メチルエチルケトン溶液を、塩化臭素板に薄く塗り、窒素雰囲気下20℃で5時間以上乾燥させた後、加熱炉により窒素雰囲気下で20℃から、10℃間隔で5分間一定温度加熱し、逐次、赤外分光光度計(FT−IR)によりリアルタイムに測定し、各々のイソシアネート基に由来する吸収ピークの発現が開始された温度をブロックイソシアネート化合物のブロック解離温度とした。
表1〜3から明らかな通り、実施例に係る樹脂積層金属板では、いずれの評価項目でも良好な結果が得られたのに対し、比較例に係る樹脂積層金属板では、全ての評価項目で低い評価が得られた。比較例1では、ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度が低すぎて、接着剤層が凝集破壊した。また、比較例2では、ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度が高すぎて、樹脂フィルムの積層時に接着剤層が十分に軟化しなかった。このため、樹脂フィルムと金属板とを十分に密着させることができなかった。また、比較例3では、ポリエステル樹脂Bのガラス転移点が低すぎて、樹脂フィルムの積層時に気泡の巻き込みが発生した。また、比較例4では、ポリエステル樹脂Bのガラス転移点が高すぎて、樹脂フィルムの積層時に接着剤層が十分に軟化しなかった。比較例5では、接着剤にブロックイソシアネートC2が含まれないため、樹脂フィルムの積層時に接着剤層が硬化してしまった。このため、樹脂フィルムと金属板とを十分に密着させることができなかった。比較例6では、ブロックイソシアネートC1が接着剤に含まれないため、金属板/積層樹脂(すなわち、樹脂フィルム)界面でズレが発生した。比較例7、9では、ブロックイソシアネートX−1の解離温度が低すぎて、樹脂フィルムの積層時に接着剤層が硬化してしまった。このため、樹脂フィルムと金属板とを十分に密着させることができなかった。比較例8では、ブロックイソシアネートX−2の解離温度が高すぎて、接着剤層が十分に硬化しなかった。このため、接着剤層が凝集破壊した。比較例10では、ブロックイソシアネートC1、C2の質量比が合計で50質量部を超えているので、樹脂フィルムの積層時に接着剤層が硬化してしまった。このため、樹脂フィルムと金属板とを十分に密着させることができなかった。比較例11では、ポリイソシアネート化合物Dの質量比が80質量部を超えているので、接着剤層が脆弱になり、凝集破壊した。比較例12では、接着剤にブロックイソシアネートC2が含まれないため、樹脂フィルムの積層時に接着剤層が硬化してしまった。このため、樹脂フィルムと金属板とを十分に密着させることができなかった。これにより、本実施形態に係る樹脂積層金属板は、金属板/樹脂フィルム間で強固な密着力を発現し、樹脂フィルムの高度な意匠を維持、発現できることが明らかとなった。なお、積層温度の違いを確認するために、実施例1の積層温度を200℃にした他は実施例1と同様の試験を行った。この結果、エンボス形状の評価項目が△、他の評価項目が/となった。したがって、加熱温度が180℃を超える場合、本実施形態に係る樹脂積層金属板が得られないこともわかった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。