本発明のウォータージャケットスペーサー及び本発明の内燃機関について、図1〜図12を参照して説明する。図1〜図4は、本発明のウォータージャケットスペーサーが設置されるシリンダブロックの形態例を示すものであり、図1及び図4は、本発明のウォータージャケットスペーサーが設置されるシリンダブロックを示す模式的な平面図であり、図2は、図1のx−x線断面図であり、図3は、図1に示すシリンダブロックの斜視図である。図5は、本発明のウォータージャケットスペーサーの形態例を示す模式的な斜視図である。図6は、図5中のウォータージャケットスペーサー36aを上から見た図である。図7は、図5中のウォータージャケットスペーサー36aを横から見た図であり、内側から見た図である。図8は、図5中のウォータージャケットスペーサー36aを横から見た図であり、背面側から見た図である。図9は、本発明のウォータージャケットスペーサーの形態例を示す模式的な斜視図である。図10は、図9中のウォータージャケットスペーサー136aを上から見た図である。図11は、図9中のウォータージャケットスペーサー136aを横から見た図であり、内側から見た図である。図12は、図9中のウォータージャケットスペーサー136aを横から見た図であり、背面側から見た図である。
図1〜図3に示すように、シリンダボア壁の保温具が設置される車両搭載用内燃機関のオープンデッキ型のシリンダブロック11には、ピストンが上下するためのボア12、及び冷却水を流すための溝状冷却水流路14が形成されている。そして、ボア12と溝状冷却水流路14とを区切る壁が、シリンダボア壁13である。また、シリンダブロック11には、溝状冷却水流路11へ冷却水を供給するための冷却水供給口15及び冷却水を溝状冷却水流路11から排出するための冷却水排出口16が形成されている。
このシリンダブロック11には、2つ以上のボア12が直列に並ぶように形成されている。そのため、ボア12には、1つのボアに隣り合っている端ボア12a1、12a2と、2つのボアに挟まれている中間ボア12b1、12b2とがある(なお、シリンダブロックのボアの数が2つの場合は、端ボアのみである。)。直列に並んだボアのうち、端ボア12a1、12a2は両端のボアであり、また、中間ボア12b1、12b2は、一端の端ボア12a1と他端の端ボア12a2の間にあるボアである。端ボア12a1と中間ボア12b1の間の壁、中間ボア12b1と中間ボア12b2の間の壁、中間ボア12b2と端ボア12a2の間の壁(ボア間壁191)は、2つのボアに挟まれる部分なので、2つのシリンダボアから熱が伝わるため、他の壁に比べ壁温が高くなる。そのため、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17では、ボア間壁191の近傍が、温度が最も高くなるので、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17のうち、各シリンダボアのボア壁の境界192及びその近傍の温度が最も高くなる。
また、本発明では、溝状冷却水流路14の壁面のうち、シリンダボア13側の壁面を、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17と記載し、溝状冷却水流路14の壁面のうち、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17とは反対側の壁面を壁面18と記載する。
また、本発明において、片側半分とは、シリンダブロックをシリンダボアが並んでいる方向で垂直に二分割したときの片側の半分を指す。よって、本発明において、全シリンダボアのボア壁のうちの片側半分のボア壁とは、全シリンダボア壁をシリンダボアが並んでいる方向で垂直に二分割したときの片側の半分のボア壁を指す。例えば、図4では、シリンダボアが並んでいる方向がZ−Z方向であり、このZ−Z線で垂直に二分割したときの片側半分のボア壁のそれぞれが、全シリンダボアのボア壁のうちの片側半分のボア壁である。つまり、図4では、Z−Z線より20a側のボア壁が、全シリンダボアのボア壁のうちの一方の片側半分のボア壁21aであり、Z−Z線より20b側のボア壁が、全シリンダボアのボア壁のうちの他方の片側半分のボア壁21bである。また、全シリンダボア壁のうちの片側とは、片側半分のボア壁21a又は片側半分のボア壁21bのいずれかを指す。また、本発明において、溝状冷却水流路のうちの片側半分の溝状冷却水流路とは、全溝状冷却水流路をシリンダボアが並んでいる方向で垂直に二分割したときの片側の半分の溝状冷却水流路を指す。図4では、Z−Z線より20a側の溝状冷却水流路が、全溝状冷却水流路のうちの一方の片側半分の溝状冷却水流路14aであり、Z−Z線より20b側の溝状冷却水流路が、全溝状冷却水流路のうちの他方の片側半分の溝状冷却水流路14bである。
また、本発明において、各シリンダボアのボア壁とは、1つ1つのシリンダボアに対応する各ボア壁部分を指し、図4では、両矢印22a1で示す範囲が、シリンダボア12a1のボア壁23a1であり、両矢印22b1で示す範囲が、シリンダボア12b1のボア壁23b1であり、両矢印22b2で示す範囲が、シリンダボア12b2のボア壁23b2であり、両矢印22a2で示す範囲が、シリンダボア12a2のボア壁23a2であり、両矢印22b3で示す範囲が、シリンダボア12b1のボア壁23b3であり、両矢印22b4で示す範囲が、シリンダボア12b2のボア壁23b4である。つまり、シリンダボア12a1のボア壁23a1、シリンダボア12b1のボア壁23b1、シリンダボア12b2のボア壁23b2、シリンダボア12a2のボア壁23a2、シリンダボア12b1のボア壁23b3及びシリンダボア12b2のボア壁23b4が、それぞれ、各シリンダボアのボア壁である。
図5に示すウォータージャケットスペーサー36aは、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーの形態例であり、図4中、一方の片側半分の溝状冷却水流路14a(20a側)に設置されるウォータージャケットスペーサーである。ウォータージャケットスペーサー36aは、冷却水が供給される位置のウォータージャケットスペーサーの各ボア部に、傾斜壁に加え、冷却水当たり面及び冷却水流れ抑制壁が形成されている形態例である。
ウォータージャケットスペーサー36aは、上から見たときに、4つの円弧が連続する形状に成形されており、ウォータージャケットスペーサー36aの形状は、溝状冷却水流路14の片側半分に沿う形状である。ウォータージャケットスペーサー36aは、合成樹脂の射出成形体である。つまり、ウォータージャケットスペーサー36aは合成樹脂で形成されている。
ウォータージャケットスペーサー36aの形状は、上から見たときに、4つの円弧が繋がった形状であり、各シリンダボア側のウォータージャケットスペーサー36aの各部分が、各ボア部である。つまり、ウォータージャケットスペーサー36aの円弧状の部分のそれぞれが、ウォータージャケットスペーサーの各ボア部である。ウォータージャケットスペーサー36aでは、上から見た時に円弧状の、一端の端ボア12a1側の各ボア部361と、中間ボア12b1側の各ボア部362aと、中間ボア12b2側の各ボア部362bと、他端の端ボア12a2側の各ボア部362cと、が繋がっている。
ウォータージャケットスペーサー36aの各ボア部には、傾斜壁30が形成されている各ボア部361と、傾斜壁30が形成されていない各ボア部362とがある。なお、冷却水53は、ウォータージャケットスペーサー36aに対して、図6中の矢印で示す方向に供給される。
各ボア部361は、冷却水が溝状冷却水流路内に供給される位置にある各ボア部である。図4に示すシリンダブロック11の場合だと、冷却水供給口15が形成されている位置は、シリンダボア12a1側且つ片側20a側の溝状冷却水流路なので、シリンダボア12a1側の各ボア部361が、冷却水が溝状冷却水流路内に供給される位置にある各ボア部である。
各ボア部361には、背面側に、冷却水当たり面29と、冷却水流れ抑制壁24と、傾斜壁30とが形成されている。冷却水当たり面29は、シリンダブロックの外から供給される冷却水が最初に当たる面である。冷却水流れ抑制壁24は、冷却水当たり面29に当たった冷却水が、冷却水流れ方向とは反対方向52に流れず且つ傾斜壁30に向かって流れるようにする壁である。そのため、冷却水流れ抑制壁24は、冷却水当たり面29の冷却水が流れて行く側とは反対側部分を囲むように形成されている。つまり、冷却水当たり面29の冷却水が流れて行く側とは反対側部分の上側と横側と下側に、壁が形成されている。傾斜壁30は、冷却水当たり面29に当たった後、冷却水流れ方向51に流れ出した冷却水が、冷却水通過口25に向かって流れるように、冷却水の当たり面29から冷却水通過口25に向かう冷却水の流れを作る傾斜壁である。そのため、傾斜壁30は、冷却水当たり面29の近傍を始点として、冷却水の当たり面29の近傍から上り傾斜で延びている。
ウォータージャケットスペーサーのボア間部54の上部には、冷却水通過口25が形成されている。冷却水通過口25は、ウォータージャケットスペーサー36aの背面側の冷却水が、ウォータージャケットスペーサー36aの内側に通り抜ける通過口である。そして、冷却水通過口25の近傍には、誘導壁26が形成されている。誘導壁26は、冷却水の当たり面29から冷却水通過口25に向かって流れてくる冷却水が、冷却水通過口25に流れ込むように、冷却水を誘導するための壁である。誘導壁26には、冷却水通過口25の上側に上側壁261と冷却水流れ方向側の横側に横側壁262とがあるので、冷却水通過口25の斜め下から流れてくる冷却水を、上側壁261と横側壁262とが堰き止めるため、冷却水は、冷却水通過口25に流れ込む。また、誘導壁26の横側壁262の下端には、横側壁262の下端に向かって上り傾斜の呼び込み壁263が繋がっている。呼び込み壁263は、冷却水通過口25より少し下を通過する冷却水を、冷却水通過口25に集める役割を果たす。なお、図5に示す形態例では、誘導壁26aの呼び込み壁は、傾斜壁30aと繋がっている。
ウォータージャケットスペーサー36aのうち、隣り合う各ボア部が繋がる部位が、ウォータージャケットスペーサーの各ボア部の境界48である。そして、ウォータージャケットスペーサー36aのうち、各ボア部の境界48及びその近傍の部分は、溝状冷却水流路側の壁面のうち、ボア間壁191の横側に相当する壁面に対向する部分である。本発明では、ウォータージャケットスペーサーのうち、ウォータージャケットスペーサーの各ボア部の境界及びその近傍の部分、すなわち、溝状冷却水流路側の壁面のうち、ボア間壁の横側に相当する壁面と対向する部分を、ウォータージャケットスペーサーのボア間部と呼ぶ。
ウォータージャケットスペーサー36aの内側には、縦リブ34が、各ウォータージャケットスペーサーの各ボア部毎に形成されている。なお、本発明において、ウォータージャケットスペーサーの内側には、縦リブが形成されていても、形成されていなくてもよく、縦リブの形成、形成位置、形成する数は必要に応じて適宜選択される。
図9に示すウォータージャケットスペーサー136aは、本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーの形態例であり、図4中、一方の片側半分の溝状冷却水流路14b(20b側)に設置されるウォータージャケットスペーサーである。ウォータージャケットスペーサー136aは、ウォータージャケットスペーサーの各ボア部のいずれにも、傾斜壁は形成されていない形態である。
ウォータージャケットスペーサー136aは、上から見たときに、4つの円弧が連続する形状に成形されており、ウォータージャケットスペーサー136aの形状は、溝状冷却水流路14の片側半分14bに沿う形状である。ウォータージャケットスペーサー136aは、合成樹脂の射出成形体である。つまり、ウォータージャケットスペーサー136aは合成樹脂で形成されている。
ウォータージャケットスペーサー136aの形状は、上から見たときに、4つの円弧が繋がった形状である。ウォータージャケットスペーサー136aでは、上から見た時に円弧状の、一端の端ボア12a1側の各ボア部363dと、中間ボア12b1側の各ボア部363cと、中間ボア12b2側の各ボア部363bと、他端の端ボア12a2側の各ボア部363aと、が繋がっている。
ウォータージャケットスペーサー136aは、溝状冷却水流路内に流れ込んできた冷却水が、勢いよく流れる側の片側半分の溝状冷却水流路ではなく、片側半分の溝状冷却水流路を流れて、流れが緩やかになった冷却水が流れる側の片側半分(図4の形態例だと、片側半分14b)の溝状冷却水流路に設置される。そのため、ウォータージャケットスペーサー136aのいずれの各ボア部にも、傾斜壁は形成されていない。
ウォータージャケットスペーサー136aでは、ボア間部54の上部に、冷却水通過口25が形成されている。冷却水通過口25は、ウォータージャケットスペーサー136aの背面側の冷却水が、ウォータージャケットスペーサー136aの内側に通り抜ける通過口である。そして、冷却水通過口25の近傍には、誘導壁126が形成されている。誘導壁126は、ウォータージャケットスペーサー136aの背面側を流れ、冷却水通過口25に向かって流れてくる冷却水が、冷却水通過口25に流れ込むように、冷却水を誘導するための壁である。誘導壁126には、冷却水通過口25の上側に上側壁261と冷却水流れ方向側の横側に横側壁262とがあるので、冷却水通過口25の斜め下から流れてくる冷却水を、上側壁261と横側壁262とが堰き止めるため、冷却水は、冷却水通過口25に流れ込む。また、誘導壁126の横側壁262の下端には、横側壁262の下端に向かって上り傾斜の呼び込み壁263が繋がっている。呼び込み壁263は、冷却水通過口25より下を通過する冷却水を、冷却水通過口25に集める役割を果たす。
ウォータージャケットスペーサー136aの内側には、縦リブ34が、各ウォータージャケットスペーサーの各ボア部毎に形成されている。
ウォータージャケットスペーサー36a及びウォータージャケットスペーサー136aは、例えば、図1に示すシリンダブロック11の溝状冷却水流路14に設置される。図13に示すように、ウォータージャケットスペーサー36a及びウォータージャケットスペーサー136aを、シリンダブロック11の溝状冷却水流路14に挿入して、図14に示すように、ウォータージャケットスペーサー36a及びウォータージャケットスペーサー136aを、溝状冷却水流路14に設置する。このようにして、ウォータージャケットスペーサー36aは、一方の片側半分の溝状冷却水流路14aに、ウォータージャケットスペーサー136aは、他方の片側半分の溝状冷却水流路14bに設置される。
ウォータージャケットスペーサー36a及びウォータージャケットスペーサー136aが図1に示すシリンダロック11の溝状冷却水流路14に設置されている状態で、溝状冷却水流路14に冷却水が供給されたときの冷却水の流れを図15〜図19を参照して説明する。図15は、シリンダブロック11の冷却水供給口15から冷却水53が供給され、冷却水排出口16より排出されているときの、溝状冷却水流路を流れる冷却水53の流れ方向を示す図であり、シリンダブロック11を上から見た図である。なお、図15では、説明の都合上、ウォータージャケットスペーサー36aの冷却水流れ抑制壁24の輪郭のみを二点鎖線で示し、ウォータージャケットスペーサー36aのその他の部分及びウォータージャケットスペーサー136aの記載を省略した。図15に示すように、冷却水供給口15の近傍にある冷却水流れ抑制壁24の存在により、冷却水供給口15から供給された冷却水53は、先ず、一方の片側半分の溝状冷却水流路14aを冷却水供給口15側の端から反対側の端に向かって流れ、次いで、一方の片側半分の溝状冷却水流路14aの冷却水供給口15とは反対側の端まで流れると、他方の片側半分の溝状冷却水流路14bに回り込み、他方の片側半分の溝状冷却水流路14bを、冷却水排出口16に向かって流れ、次いで、冷却水排出口16より排出される。
図16に示すように、冷却水供給口15から供給される冷却水53は、先ず、ウォータージャケットスペーサー36aの各ボア部361の背面側の冷却水当たり面29に当たる。そして、冷却水当たり面29の冷却水流れ方向側とは反対側には、冷却水流れ抑制壁24が形成されており、冷却水当たり面29のうちの、冷却水流れ方向側とは反対側の半分程度の部分を囲むように、冷却水流れ抑制壁24が形成されているので、冷却水当たり面29に当たった冷却水53は、冷却水流れ方向とは反対方向52に流れずに、冷却水流れ方向51に、傾斜壁30に向かって流れ出す。次いで、図17に示すように、冷却水当たり面29の冷却水流れ方向の先には、冷却水当たり面29の近傍から上り傾斜で延びる傾斜壁30が形成されているので、傾斜壁30に向かって流れ出した冷却水53は、この傾斜壁30により流れが変えられて、ウォータージャケットスペーサーのボア間部54の上部に形成されている冷却水通過口25に向かって流れる。つまり、傾斜壁30により、ボア間部54の上部に形成されている冷却水通過口25に向かって流れる冷却水の流れが作られる。図17に示す形態例のウォータージャケットスペーサー36aには、ボア間部54の上部3箇所に、冷却水通過口25a、25b、25cが形成されており、傾斜壁30aと傾斜壁30bの2つが、冷却水通過口25aに向かう冷却水流れと、冷却水通過口25bに向かう冷却水流れと、冷却水通過口25cに向かう冷却水流れとを作る。次いで、図18に示すように、冷却水通過口25の近傍には、冷却水通過口25に向かって流れてきた冷却水53が冷却水通過口25に流れ込むように誘導する誘導壁26が形成されているので、冷却水通過口25に向かって流れてきた冷却水53は、誘導壁26よって、冷却水通過口25に流れ込み、ウォータージャケットスペーサー36aの外側から内側へと流れていく。冷却水通過口25は、ウォータージャケットスペーサーのボア間部54の上部に形成されているので、冷却水通過口25の先には、各シリンダボアのボア壁の境界192及びその近傍の上部がある。そして、冷却水当たり面29から冷却水通過口25に向かって流れてくる冷却水53は、温度が低く、また、各シリンダボアのボア壁の境界192及びその近傍の上部は、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面のうち、最も温度が高くなる部分である。そのため、ウォータージャケットスペーサー36aによれば、冷却水当たり面29から冷却水通過口25に向かって流れてくる冷却水53、すなわち、温度が低い冷却水を、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面のうち、最も温度が高くなる部分に当てることができるので、冷却効率が高くなる。
溝状冷却水流路内に流れ込んできた冷却水が、勢いよく流れる側とは反対側の片側半分の溝状冷却水流路(図15では、片側半分の溝状冷却水流路14b)では、冷却水はゆっくりと流れている。通常、シリンダブロックには、各シリンダボアのボア壁の境界の上部からシリンダヘッドのボア間壁に抜けるドリルパスと呼ばれる冷却水の通過孔が設けられているので、ウォータージャケットスペーサー136aの背面側の溝状冷却水流路には、各シリンダボアのボア壁の境界の上部、つまり、ボア間部54の上部に形成されている冷却水通過口25f、25g、25hに向かって、緩やかな冷却水の流れが生じている。そして、図19に示すように、呼び込み壁263f、263g、263hにより、冷却水通過口25gの下側を流れる冷却水53は、冷却水通過口25f、25g、25hに向かってくる冷却水53と共に、冷却水通過口25f、25g、25hの方に集められ、誘導壁126a、126b、126cによって、冷却水通過口25f、25g、25hに流れ込む。そのため、ウォータージャケットスペーサー136aによれば、背面側を流れる冷却水を集めて、ドリルパスの入り口に流れ込ませることができるので、冷却効率が高くなる。
また、本発明の他の形態例のウォータージャケットスペーサーについて説明する。図20は、本発明のウォータージャケットスペーサーの他の形態例を示す模式的な斜視図である。図21は、図20中のウォータージャケットスペーサー36bを上から見た図である。図22は、図20中のウォータージャケットスペーサー36bを横から見た図であり、冷却水通過口が形成されている側から見た図である。図23は、図20中のウォータージャケットスペーサー36bを横から見た図であり、冷却水通過口が形成されていない側から見た図である。
図20に示すウォータージャケットスペーサー36bは、本発明の他の形態例のウォータージャケットスペーサーであり、図28中、溝状冷却水流路14の周方向の全部に設置されるウォータージャケットスペーサーである。ウォータージャケットスペーサー36bは、冷却水が供給される位置のウォータージャケットスペーサーの各ボア部に、傾斜壁は形成されているが、冷却水当たり面及び冷却水流れ抑制壁は形成されていない形態例である。
ウォータージャケットスペーサー36bは、上から見たときに、シリンダボア壁を一周囲む形状に成形されており、ウォータージャケットスペーサー36bの形状は、溝状冷却水流路14の全周に沿う形状である。ウォータージャケットスペーサー36bは、合成樹脂の射出成形体である。つまり、ウォータージャケットスペーサー36bは合成樹脂で形成されている。
ウォータージャケットスペーサー36bの形状は、上から見たときに、6つの円弧が繋がった形状であり、各シリンダボア側のウォータージャケットスペーサー36bの各部分が、各ボア部である。つまり、ウォータージャケットスペーサー36bの円弧状の部分のそれぞれが、ウォータージャケットスペーサーの各ボア部である。ウォータージャケットスペーサー36bでは、上から見た時に円弧状の、一端の端ボア側の各ボア部561と、中間ボア側の各ボア部562aと、中間ボア側の各ボア部562bと、他端の端ボア側の各ボア部562cと、中間ボア側の各ボア部562dと、中間ボア側の各ボア部562eと、が順に繋がっている。
ウォータージャケットスペーサーの各ボア部には、傾斜壁50が形成されている各ボア部561と、傾斜壁50が形成されていない各ボア部562とがある。
各ボア部561は、冷却水が溝状冷却水流路内に供給される位置にある各ボア部である。図28に示すシリンダブロック31の場合だと、冷却水供給口35が形成されている位置に、各ボア部561がある。
各ボア部561には、背面側に、傾斜壁50が形成されている。傾斜壁50は、冷却水供給口35から供給された冷却水が、冷却水通過口45に向かって流れるように、冷却水が流れ込んでくる位置近傍から冷却水通過口45に向かう冷却水の流れを作る傾斜壁である。そのため、傾斜壁50は、冷却水供給口から供給された冷却水の多くが、ウォータージャケットスペーサーと溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面とは反対側の壁面との間に流れ込む位置近傍を始点として、上り傾斜で延びている。
ウォータージャケットスペーサーのボア間部54の上部には、冷却水通過口45が形成されている。冷却水通過口45は、ウォータージャケットスペーサー36bの背面側の冷却水が、ウォータージャケットスペーサー36bの内側に通り抜ける通過口である。そして、冷却水通過口45の近傍には、誘導壁46が形成されている。誘導壁46は、冷却水が流れ込んでくる位置から冷却水通過口45に向かって流れてくる冷却水が、冷却水通過口45に流れ込むように、冷却水を誘導するための壁である。誘導壁46には、冷却水通過口45の上側に上側壁461と冷却水流れ方向側の横側に横側壁462とがあるので、冷却水通過口45の斜め下から流れてくる冷却水を、上側壁461と横側壁462とが堰き止めるため、冷却水は、冷却水通過口45に流れ込む。また、誘導壁46の横側壁462の下端には、横側壁462の下端に向かって上り傾斜の呼び込み壁463が繋がっている。呼び込み壁463は、冷却水通過口45より少し下を通過する冷却水を、冷却水通過口45に集める役割を果たす。なお、図20に示す形態例では、誘導壁46aの呼び込み壁は、傾斜壁50aと繋がっている。
ウォータージャケットスペーサー36bの内側には、縦リブ55が、各ウォータージャケットスペーサーの各ボア部毎に形成されている。また、ウォータージャケットスペーサー36bの各ボア部のうち、各ボア部561には、冷却水流れ変更部材66が形成されている。冷却水流れ変更部材66は、溝状冷却水流路を流れてきた冷却水の流れを止め、冷却水の流れを上向きに変える部材である。なお、流れの向きを上向きに変えた冷却水は、シリンダブロックの上に設置されているシリンダヘッドの冷却水流路に流れ込む。
ウォータージャケットスペーサー36bは、例えば、図28に示すシリンダブロック31の溝状冷却水流路14に設置される。
ウォータージャケットスペーサー36bが図28に示すシリンダロック31の溝状冷却水流路14に設置されている状態で、溝状冷却水流路14に冷却水が供給されたときの冷却水の流れを図25〜図28を参照して説明する。図28は、シリンダブロック31の冷却水供給口35から冷却水53が供給され、シリンダブロック31の上に設置されているシリンダヘッドの冷却水流路に排出されているときの、溝状冷却水流路を流れる冷却水53の流れ方向を示す図であり、シリンダブロック31を上から見た図である。なお、図28では、説明の都合上、ウォータージャケットスペーサー36bの冷却水流れ変更部材66の輪郭のみを二点鎖線で示し、ウォータージャケットスペーサー36bのその他の部分の記載を省略した。図28に示すように、シリンダブロック31の構造は、冷却水供給口31から供給される冷却水が、溝状冷却水流路14内に設置されているウォータージャケットスペーサーの背面に強く当たらずに、ウォータージャケットスペーサーと溝状冷却水流路のシリンダブロック側の壁面とは反対側の壁面との間を通って、一方の片側半分の溝状冷却水流路14aに流れていく構造である。そして、一方の片側半分の溝状冷却水流路14aの一端側に流れ込んだ冷却水は、先ず、一方の片側半分の溝状冷却水流路14aの一端側から反対側の端に向かって流れ、次いで、一方の片側半分の溝状冷却水流路14aの冷却水が流れ込む側の端とは反対側の端まで流れると、他方の片側半分の溝状冷却水流路14bに回り込み、他方の片側半分の溝状冷却水流路14bを、冷却水供給口35の方に向かって流れる。他方の片側半分の溝状冷却水流路14bにおける冷却水の流れ方向で、冷却水供給口35の手前には、冷却水流れ変更部材66があるので、冷却水は、冷却水流れ変更部材66の位置で流れを上向きに変え、シリンダヘッドの冷却水流路へと排出される。
図28に示すシリンダブロック31の冷却水供給口35から供給された冷却水53は、先ず、ウォータージャケットスペーサー36bの各ボア部561と溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面とは反対側の壁面との間を通って、一方の片側半分の溝状冷却水流路14aに流れ込む。次いで、一方の片側半分の溝状冷却水流路14aの冷却水が流れ込む側には、ウォータージャケットスペーサー36bの各ボア部561があり、図25に示すように、各ボア部561の背面側には、一方の片側半分の溝状冷却水流路14aの入り口近傍に位置する部分65を始点として、上り傾斜の傾斜壁50が形成されているので、冷却水53は、この傾斜壁50により流れが変えられて、ウォータージャケットスペーサーのボア間部54の上部に形成されている冷却水通過口45に向かって流れる。つまり、傾斜壁50により、ボア間部54の上部に形成されている冷却水通過口45に向かって流れる冷却水の流れが作られる。図20に示す形態例のウォータージャケットスペーサー36bには、ボア間部54の上部3箇所に、冷却水通過口45a、45b、45cが形成されており、傾斜壁50aと傾斜壁50bと傾斜壁50cの3つが、冷却水通過口45aに向かう冷却水流れと、冷却水通過口45bに向かう冷却水流れと、冷却水通過口45cに向かう冷却水流れとを作る。次いで、冷却水通過口45の近傍には、冷却水通過口45に向かって流れてきた冷却水53が冷却水通過口45に流れ込むように誘導する誘導壁46が形成されているので、冷却水通過口45に向かって流れてきた冷却水53は、誘導壁46よって、冷却水通過口45に流れ込み、ウォータージャケットスペーサー36bの外側から内側へと流れていく。冷却水通過口45は、ウォータージャケットスペーサーのボア間部54の上部に形成されているので、冷却水通過口45の先には、各シリンダボアのボア壁の境界192及びその近傍の上部がある。そして、一方の片側半分の溝状冷却水流路14aの各ボア部561の背面側に流れ込んでくる冷却水53は、温度が低く、また、各シリンダボアのボア壁の境界192及びその近傍の上部は、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面のうち、最も温度が高くなる部分である。そのため、ウォータージャケットスペーサー36bによれば、一方の片側半分の溝状冷却水流路14aの各ボア部561の背面側に流れ込んでくる冷却水53、すなわち、温度が低い冷却水を、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面のうち、最も温度が高くなる部分に当てることができるので、冷却効率が高くなる。
また、一方の片側半分の溝状冷却水流路14aの各ボア部561、各ボア部562a、各ボア部562bの背面側の冷却水のうち、冷却水通過口45に流れ込まなかった冷却水は、各ボア部562cの背面側を流れて、他方の片側半分の溝状冷却水流路14bに流れ、図26に示すように、各ボア部562dの背面側、各ボア部562eの背面側と流れていき、冷却水流れ変更部材66が形成されている位置まで流れていく。図27に示すように、冷却水流れ変更部材66まで流れてきた冷却水53は、冷却水流れ変更壁661に当たり、流れ方向を上向きに変えて流れ、シリンダブロック31の上に設置されているシリンダヘッドの冷却水流路へと流れていく。なお、冷却水流れ変更部材66には、冷却水53を冷却水流れ変更壁661に向かって流れ込ませ且つ冷却水が冷却水流れ変更壁661と溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面とは反対側の壁面との隙間を通り抜け難くするために、冷却水流れ変更壁661の横側且つ流れ方向の手前に張り出す囲い壁662が形成されている。
また、冷却水流れ変更部材66の冷却水流れ変更壁661は、冷却水供給口35から溝状冷却水流路14に供給された冷却水が、各ボア部562eに向かって流れるのを防ぐ役割も果たす。
本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーは、シリンダボアを有する内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路に設置され、周方向に見たときに、溝状冷却水流路の周方向全部又は周方向の一部に設置されるウォータージャケットスペーサーであり、
ボア間部上部の少なくとも一箇所に、該ウォータージャケットスペーサーの背面側の冷却水が内側に通り抜けるための冷却水通過口が形成されており、
該冷却水通過口近傍に、該冷却水通過口に冷却水が流れ込むように冷却水を誘導する誘導壁を有し、
該溝状冷却水流路に冷却水が供給される位置の背面側に、上り傾斜で延び、該冷却水通過口に向かう冷却水の流れを作る傾斜壁を有すること、
を特徴とするウォータージャケットスペーサーである。
本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーは、内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路に設置される。本発明のウォータージャケットスペーサーが設置されるシリンダブロックは、シリンダボアが直列に2つ以上並んで形成されているオープンデッキ型のシリンダブロックである。シリンダブロックが、シリンダボアが直列に2つ並んで形成されているオープンデッキ型のシリンダブロックの場合、シリンダブロックは、2つの端ボアからなるシリンダボアを有している。また、シリンダブロックが、シリンダボアが直列に3つ以上並んで形成されているオープンデッキ型のシリンダブロックの場合、シリンダブロックは、2つの端ボアと1つ以上の中間ボアとからなるシリンダボアを有している。なお、本発明では、直列に並んだシリンダボアのうち、両端のボアを端ボアと呼び、両側が他のシリンダボアで挟まれているボアを中間ボアと呼ぶ。
本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーが設置されるのは、溝状冷却水流路である。内燃機関の多くでは、シリンダボアの溝状冷却水流路の中下部に相当する位置が、ピストンの速さが速くなる位置なので、この溝状冷却水流路の中下部にスペーサーを設置することが好ましい。図2では、溝状冷却水流路14の最上部9と最下部8の中間近傍の位置10を、点線で示しているが、この中間近傍の位置10から下側の溝状冷却水流路14の部分を、溝状冷却水流路の中下部と呼ぶ。なお、溝状冷却水流路の中下部とは、溝状冷却水流路の最上部と最下部の丁度中間の位置から下の部分という意味ではなく、最上部と最下部の中間位置の近傍から下の部分という意味である。また、内燃機関の構造によっては、ピストンの速さが速くなる位置が、シリンダボアの溝状冷却水流路の下部に当たる位置である場合もあり、その場合は、溝状冷却水流路の下部にスペーサーを設置することが好ましい。よって、溝状冷却水流路の最下部からどの位置までを本発明のウォータージャケットスペーサーの設置位置とするか、つまり、ウォータージャケットスペーサーの上端の位置を溝状冷却水流路の上下方向のどの位置にするかは、適宜選択される。
本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーは、周方向に見たときの溝状冷却水流路の周方向全部又は周方向の一部に設置される。本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーとしては、例えば、図5に示す形態例のように、全溝状冷却水流路のうち片側半分に設置されるウォータージャケットスペーサーや、全溝状冷却水流路の全部に設置されるウォータージャケットスペーサーが挙げられる。また、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーとしては、例えば、全溝状冷却水流路のうち一方の片側半分とそれに続く他方の片側半分の一部に設置されるウォータージャケットスペーサーが挙げられる。なお、本発明において、片側半分とは、溝状冷却水流路の周方向の片側半分との意味である。
本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーは、上から見たときに、複数の円弧が繋がった形状であり、本発明のウォータージャケットスペーサーを設置する溝状冷却水流路に沿う形状を有する。そして、各シリンダボア側の本発明のウォータージャケットスペーサーの各部分が、ウォータージャケットスペーサーの各ボア部である。つまり、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーの円弧状の部分のそれぞれが、各ボア部である。
本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーは、例えば、合成樹脂の射出成形体である。つまり、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーは、例えば合成樹脂で形成されている。本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーを形成する合成樹脂としては、内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路内に設置されるウォータージャケットスペーサーに用いることができる程度に耐熱性及び耐LLC(ロングライフクーラント)性を有する合成樹脂であれば、特に制限されない。
。
ウォータージャケットスペーサーの各ボア部には、背面側に傾斜壁が形成されている各ボア部と、傾斜壁が形成されていない各ボア部とがある。
背面側に傾斜壁が形成されている各ボア部は、冷却水が溝状冷却水流路内に供給される位置にある各ボア部である。そして、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーには、冷却水が供給される位置のウォータージャケットスペーサーの各ボア部に、傾斜壁に加え、冷却水当たり面及び冷却水流れ抑制壁が形成されている形態(以下、本発明の第一(A)の形態のウォータージャケットスペーサーとも記載する。)と、冷却水が供給される位置のウォータージャケットスペーサーの各ボア部に、傾斜壁は形成されているが、冷却水当たり面及び冷却水流れ抑制壁は形成されていない形態(以下、本発明の第一(B)の形態のウォータージャケットスペーサーとも記載する。)と、がある。
本発明の第一(A)の形態のウォータージャケットスペーサーは、冷却水供給口から溝状冷却水流路内に流れ込んできた冷却水が、ウォータージャケットスペーサーに当たる位置において、冷却水が溝状冷却水流路内に流れ込む方向に対するウォータージャケットスペーサーの背面側の傾きが比較的大きくなるシリンダブロックに設置されるウォータージャケットスペーサーである。そして、本発明の第一(A)の形態のウォータージャケットスペーサーが設置されるシリンダブロックでは、冷却水供給口から溝状冷却水流路内に流れ込んでくる冷却水は、ウォータージャケットスペーサーの背面側の冷却水当たり面に強く当たり、その後、冷却水流れ抑制壁の存在により、冷却水流れ抑制壁が形成されている方向とは反対側に流れる。
本発明の第一(A)の形態のウォータージャケットスペーサーでは、背面側に傾斜壁が形成されている各ボア部の、冷却水供給口から供給される冷却水が最初に当たる位置に、冷却水当たり面が形成されており、且つ、その冷却水当たり面の、冷却水が流れて行く側とは反対側の部分を囲むように、冷却水流れ抑制壁が形成されている。
本発明の第一(A)の形態のウォータージャケットスペーサーに係る冷却水当たり面は、シリンダブロックの外から供給される冷却水が最初に当たる面である。図1に示す形態例では、図1に示す位置に、冷却水供給口15があるが、内燃機関の種類により、冷却水供給口の位置は変わる。そのため、冷却水当たり面が形成される位置は、本発明のウォータージャケットスペーサーが設置されるシリンダブロックの冷却水供給口の形成位置合わせて、適宜選択される。
本発明の第一(A)の形態のウォータージャケットスペーサーに係る冷却水流れ抑制壁は、冷却水当たり面に当たった冷却水が、冷却水流れ方向とは反対方向に流れず且つ傾斜壁に向かって流れるようにする壁である。そのため、冷却水流れ抑制壁は、冷却水当たり面の冷却水が流れて行く側とは反対側の部分を囲むように形成されている。つまり、冷却水当たり面の冷却水が流れて行く側とは反対側部分の上側と横側と下側に、壁が形成されている。図5に示す形態例では、冷却水の当たり面の冷却水が流れていく側とは反対側の横側の全てに、冷却水流れ抑制壁の横側部241が、冷却水の当たり面の下側の全てに冷却水流れ抑制壁の下側部242が、冷却水の当たり面の上側の半分程度に冷却水流れ抑制壁の上側部243が形成されているが、これに制限されず、冷却水当たり面の冷却水が流れていく側とは反対側の部分が、冷却水流れ抑制壁により囲まれる程度は、本発明の効果を奏する範囲で、適宜選択される。また、図5に示す形態例は、冷却水流れ抑制壁は、横から見たときに、各壁部分は全て直線状の形状であるが、これに制限されない。例えば、図30に示す形態例では、冷却水当たり面29bの冷却水が流れていく側とは反対側に、横から見たときに略C字状の曲線状の冷却水流れ抑制壁24bが形成されている。
冷却水流れ抑制壁は、溝状冷却水流路内に供給された冷却水が、冷却水供給口の近傍にある冷却水排出口に、直ぐに流れ込んでしまうのを防止する部位でもある。
本発明の第一(A)の形態のウォータージャケットスペーサーにおいて、傾斜壁は、冷却水当たり面に当たった後、冷却水流れ方向に流れ出した冷却水が、冷却水通過口に向かって流れるように、冷却水の当たり面から冷却水通過口に向かう冷却水の流れを作る壁である。傾斜壁は、冷却水当たり面の近傍を始点として、冷却水の当たり面の近傍から上り傾斜で延びている。傾斜壁の数は、ウォータージャケットスペーサーに形成される冷却水通過口の数に応じて、適宜選択される。傾斜壁の傾斜角度は、ウォータージャケットスペーサーに形成される冷却水通過口の位置により、適宜選択される。傾斜壁の終点は、本発明の効果を奏する範囲で、適宜選択される。図5に示す形態例では、傾斜壁30a、30bは、ボア間部の近傍まで延びており、傾斜壁30aは、誘導壁26aの下端と繋がっている。傾斜壁は、誘導壁に繋がっていても、繋がっていなくてもよい。なお、本発明において、上り傾斜とは、冷却水が流れる方向に進むに従って位置が高くなることを指す。
本発明の第一(B)の形態のウォータージャケットスペーサーは、冷却水供給口から供給された冷却水の一部がウォータージャケットスペーサーに当たるシリンダブロックであり、冷却水供給口から供給された冷却水の一部がウォータージャケットスペーサーに当たる位置において、冷却水が溝状冷却水流路内に流れ込む方向に対するウォータージャケットスペーサーの背面側の傾きが比較的小さくなるシリンダブロックに設置されるウォータージャケットスペーサーである。そして、本発明の第一(B)の形態のウォータージャケットスペーサーが設置されるシリンダブロックでは、冷却水供給口から供給された冷却水の一部がウォータージャケットスペーサーの背面側に当たるものの、強く当たらず、且つ、冷却水供給口から供給された冷却水の多くが、ウォータージャケットスペーサーと溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面とは反対側の壁面との間を通り抜けるように流れる。
本発明の第一(B)の形態のウォータージャケットスペーサーに係る傾斜壁は、冷却水供給口から流れ込んでくる冷却水がウォータージャケットスペーサーに最初に当たる位置近傍を始点として、上り傾斜で延びている。図28に示す形態例では、図28に示す位置に、冷却水供給口35があるが、内燃機関の種類により、冷却水供給口の位置は変わる。そのため、傾斜壁の始点の位置は、本発明のウォータージャケットスペーサーが設置されるシリンダブロックの冷却水供給口の形成位置合わせて、適宜選択される。
そして、本発明の第一(B)の形態のウォータージャケットスペーサーにおいて、傾斜壁は、冷却水供給口から流れ込んでくる冷却水が、冷却水通過口に向かって流れるように、ウォータージャケットスペーサーに冷却水が最初に当たる位置近傍から冷却水通過口に向かう冷却水の流れを作る壁である。傾斜壁は、冷却水供給口から流れ込んでくる冷却水がウォータージャケットスペーサーに最初に当たる位置近傍を始点として、上り傾斜で延びている。傾斜壁の数は、ウォータージャケットスペーサーに形成される冷却水通過口の数に応じて、適宜選択される。傾斜壁の傾斜角度は、ウォータージャケットスペーサーに形成される冷却水通過口の位置により、適宜選択される。傾斜壁の終点は、本発明の効果を奏する範囲で、適宜選択される。図20に示す形態例では、傾斜壁50a、50b、50cは、ボア間部の近傍まで延びており、傾斜壁50aは、誘導壁46aの下端と繋がっている。傾斜壁は、誘導壁に繋がっていても、繋がっていなくてもよい。
本発明の第一(A)の形態及び第一(B)の形態のウォータージャケットスペーサーには、ボア間部の上部に、冷却水通過口が形成されている。冷却水通過口は、ウォータージャケットスペーサーの背面側の冷却水が、ウォータージャケットスペーサーの内側に通り抜ける通過口である。そして、冷却水通過口の近傍には、誘導壁が形成されている。誘導壁は、冷却水の当たり面から冷却水通過口に向かって流れてくる冷却水が、冷却水通過口に流れ込むように、冷却水を誘導するための壁である。冷却水通過口には、斜め下から冷却水が向かってくるので、図29(A)に示す誘導壁26dように、冷却水通過口の冷却水流れ方向側の横側に誘導壁があれば、冷却水通過口に向かって流れてくる冷却水を、冷却水通過口の冷却水流れ方向側の横側にある誘導壁で、堰き止めることができるので、冷却水を、冷却水通過口25に流れ込ませることができる。よって、誘導壁は、少なくとも、冷却水流れ方向側の横側に壁を有していればよい。また、誘導壁としては、図29(B)に示す誘導壁26eように、冷却水通過口の上側に誘導壁上側部261eと冷却水流れ方向側の横側に誘導壁横側部262eとを有する形態例が挙げられる。冷却水は、冷却水通過口に向かって、斜め下から流れてくるので、冷却水通過口の流れ方向の横側にある誘導壁横側部に加え、冷却水通過口の上側に、誘導壁上側部があることにより、冷却水を、冷却水通過口に流れ込ませる効果が高まる。ここで、冷却水通過口の横側に加えて上側にも誘導壁を形成させることは、冷却水の圧力損失が大きくなることに繋がるため、本発明のウォータージャケットスペーサーにおいて、誘導壁を、冷却水通過口の流れ方向側の横側のみに形成させるか、あるいは、誘導壁を、冷却水通過口の流れ方向側の横側及び上側に形成させるかは、適宜選択される。つまり、圧力損失を増大させないことに重きを置く場合には、冷却水通過口の流れ方向側の横側のみに誘導壁を形成させ、また、圧力損失の増大よりも冷却効率に重きを置く場合には、冷却水通過口の流れ方向側の横側及び上側に誘導壁を形成させる。また、冷却水当たり面から冷却水通過口に向かって流れてくる冷却水には、冷却水通過口より少し下方を流れるものもある。そこで、図29(C)に示すように、冷却水通過口の冷却水流れ方向側の横側の誘導壁横部262の壁の下端に向かって上り傾斜で延びる呼び込み壁263があると、冷却水通過口より少し下方を流れ通過する冷却水を、冷却水通過口25に集めることができる。よって、誘導壁が、冷却水通過口の冷却水流れ方向側の誘導壁横部の下端に向かって上り傾斜の呼び込み部を有することが、冷却水通過口に流れ込む冷却水の量を多くすることができる点で、好ましい。呼び込み壁は、誘導壁の下端に繋がっていてもよいし、誘導壁の下端近傍まで延びているのであれば、誘導壁の下端に繋がっていなくてもよく、誘導壁の下端に繋がっていることが好ましい。なお、呼び込み部の有無は、スペーサーの使用目的等に応じて、適宜選択される。
本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーが、シリンダロックの溝状冷却水流路に設置されている状態で、溝状冷却水流路に冷却水が供給されると、冷却水が溝状冷却水流路内に供給される位置にある各ボア部の背面側に形成されている傾斜壁と、各ボア間部の上部に形成されている冷却水通過口と、冷却水通過口の近傍に形成されている誘導壁により、溝状冷却水流路に供給された冷却水が、冷却水通過口に向かって流れ、冷却水通過口に流れ込み、更に、冷却水通過口を通り抜けて、各シリンダボアのボア壁の境界及びその近傍の上部に当たる。冷却水供給口からウォータージャケットスペーサーの背面側を流れ、冷却水通過口に向かって流れてくる冷却水は、温度が低く、また、各シリンダボアのボア壁の境界及びその近傍の上部は、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面のうち、最も温度が高くなる部分であるので、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーによれば、冷却水供給口から冷却水通過口に向かって流れてくる温度が低い冷却水を、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面のうち、最も温度が高くなる部分に当てることができるので、冷却効率が高くなる。特に、ドリルパスと呼ばれるボア間壁内に形成される冷却水の通過孔が形成されている場合には、ドリルパスの開口が、各シリンダボアのボア壁の境界及びその近傍の上部にあるので、この場合には、温度の低い冷却水が、各シリンダボア壁のボア壁の境界及びその近傍の上部に当たることにより、この部分を冷却するばかりでなく、冷却水が効率よくドリルパス内に流れるため、ボア間壁を温度の低い冷却水で直接冷却することができる。そのため、冷却効率が高くなる。
本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーは、シリンダボアを有する内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路に設置され、周方向に見たときに、溝状冷却水流路の周方向全部又は周方向の一部に設置されるウォータージャケットスペーサーであり、
ボア間部上部の少なくとも一箇所に、該ウォータージャケットスペーサーの背面側の冷却水が内側に通り抜けるための冷却水通過口が形成されており、
該冷却水通過口近傍に、該冷却水通過口に冷却水が流れ込むように冷却水を誘導する誘導壁と、該誘導壁に向かって上り傾斜で延びる呼び込み壁と、を有すること、
を特徴とするウォータージャケットスペーサーである。
本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーは、内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路に設置される。本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーが設置されるシリンダブロックは、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーが設置されるシリンダブロックと同様に、シリンダボアが直列に2つ以上並んで形成されているオープンデッキ型のシリンダブロックである。
本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーが設置される位置は、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーと同様に、スペーサーが設置される内燃機関の構造が、シリンダボアの溝状冷却水流路の中下部に相当する位置が、ピストンの速さが速くなる位置である場合、溝状冷却水流路の中下部にスペーサーを設置することが好ましく、また、スペーサーが設置される内燃機関の構造が、ピストンの速さが速くなる位置が、シリンダボアの溝状冷却水流路の下部に当たる位置である場合、溝状冷却水流路の下部にスペーサーを設置することが好ましい。
本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーは、周方向に見たときの溝状冷却水流路の周方向全部又は周方向の一部に設置される。本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーとしては、例えば、全溝状冷却水流路の全部に設置されるウォータージャケットスペーサーや、全溝状冷却水流路のうち片側半分に設置されるウォータージャケットスペーサーが挙げられる。また、本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーとしては、例えば、全溝状冷却水流路のうち一方の片側半分とそれに続く他方の片側半分の一部に設置されるウォータージャケットスペーサーが挙げられる。
本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーは、上から見たときに、複数の円弧が繋がった形状であり、本発明のウォータージャケットスペーサーを設置する溝状冷却水流路に沿う形状を有する。
本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーは、例えば、合成樹脂の射出成形体である。つまり、本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーは、例えば合成樹脂で形成されている。本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーを形成する合成樹脂としては、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーと同様に、内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路内に設置されるウォータージャケットスペーサーに用いることができる程度に耐熱性及び耐LLC(ロングライフクーラント)性を有する合成樹脂であれば、特に制限されない。
。
本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーの各ボア部のいずれにも、傾斜壁は形成されていない。
本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーには、ボア間部の上部に、冷却水通過口が形成されている。冷却水通過口は、ウォータージャケットスペーサーの背面側の冷却水が、ウォータージャケットスペーサーの内側に通り抜ける通過口である。冷却水通過口の近傍には、冷却水通過口に向かって流れてくる冷却水が、冷却水通過口に流れ込むように、冷却水を誘導するための誘導壁が形成されている。本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーでは、誘導壁は、冷却水通過口の上側に形成されている上部壁と、冷却水通過口の冷却水の流れ方向の横側に形成されている横側壁と、を有する。本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーは、溝状冷却水流路内に流れ込んできた冷却水が、勢いよく流れる側とは反対側の片側半分の溝状冷却水流路に設置される。そのため、本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーの背面側では、冷却水はゆっくりと流れている。そして、シリンダブロックには、各シリンダボアのボア壁の境界の上部からシリンダヘッドのボア間壁に抜けるドリルパスと呼ばれる冷却水の通過孔が設けられている場合には、本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーの背面側の溝状冷却水流路には、各シリンダボアのボア壁の境界の上部、つまり、ボア間部の上部に形成されている冷却水通過口に向かって、緩やかな冷却水の流れが生じている。そして、本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーでは、誘導壁の横側壁に向かって上り傾斜で、誘導壁の横側壁に向かって延びる呼び込み壁が形成されている。呼び込み壁により、冷却水通過口の下側を流れる冷却水は、冷却水通過口に向かってくる冷却水と共に、冷却水通過口の方に集められ、誘導壁によって、冷却水通過口に流れ込む。そのため、本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーによれば、背面側を流れる冷却水を集めて、ドリルパスの入り口に流れ込ませることができるので、冷却効率が高くなる。呼び込み壁は、誘導壁の下端に繋がっていてもよいし、誘導壁の下端近傍まで延びているのであれば、誘導壁の下端に繋がっていなくてもよく、誘導壁の下端に繋がっていることが好ましい。
なお、図13及び図14に示す形態例では、シリンダブロックの溝状冷却水流路の一方の片側半分に本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーが設置され、且つ、他方の片側半分に本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーが設置されているが、これに限定されず、シリンダブロックの溝状冷却水流路に、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーのみが設置されていてもよいし、あるいは、溝状冷却水流路に、本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーのみが設置されていてもよいし、あるいは、溝状冷却水流路の一方の片側半分に本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーが設置され、且つ、他方の片側半分に本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーが設置されていてもよいし、あるいは、溝状冷却水流路の一方の片側半分に本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーが設置され、且つ、他方の片側半分には本発明のウォータージャケットスペーサー以外のウォータージャケットスペーサー又はシリンダボア壁の保温具が設置されていてもよいし、あるいは、溝状冷却水流路の一方の片側半分に本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーが設置され、且つ、他方の片側半分には本発明のウォータージャケットスペーサー以外のウォータージャケットスペーサー又はシリンダボア壁の保温具が設置されていてもよいし、あるいは、後述する本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサー及び本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーを組み合わせた形態のウォータージャケットスペーサーが設置されていてもよい。
本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサー及び本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーとしては、周方向に見たときに、溝状冷却水流路の全周に沿う形状であり、且つ、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーと本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーとの組み合わせのウォータージャケットスペーサーが挙げられる。図31〜図34に示す形態例のウォータージャケットスペーサー36cは、溝状冷却水流路の全周に沿う形状であり、且つ、冷却水が溝状冷却水流路内に供給される位置にある各ボア部561に傾斜壁が形成されており、冷却水の流れが強い方の片側半分の溝状冷却水流路に設置されるボア間部の上部には、冷却水通過口45a、45b、45c及び誘導壁46a、46b、46cが形成されており、必要に応じて設けられる呼び込み壁463が形成されており、且つ、冷却水の流れが強い方とは反対側の片側半分の溝状冷却水流路に設置されるボア間部の上部には、冷却水通過口46d、46e、46f、冷却水通過口の上側の上側壁と冷却水通過口の流れ方向の横側の横側壁とを有する誘導壁、及び呼び込み壁が形成されている。また、冷却水の流れが強い方とは反対側の片側半分の溝状冷却水流路の冷却水供給口の手前には、冷却水流れ変更部材66が形成されている。
本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサー及び本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーを組み合わせた形態としては、つまり、溝状冷却水流路の全周に沿う形状であり、一方の片側半分に本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーの特徴を有し、且つ、他方の片側半分に本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーの特徴を有するウォータージャケットスペーサーは、シリンダボアを有する内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路に設置され、周方向に見たときに、溝状冷却水流路の周方向全部に設置されるウォータージャケットスペーサーであり、
冷却水が溝状冷却水流路内に供給される位置に傾斜壁が形成されており、
冷却水の流れが強い方の片側半分の溝状冷却水流路に設置されるボア間部の上部の少なくとも一箇所に、該ウォータージャケットスペーサーの背面側の冷却水が内側に通り抜けるための冷却水通過口と、該冷却水通過口の近傍に、該冷却水通過口に冷却水が流れ込むように冷却水を誘導する誘導壁(少なくとも、冷却水の流れ方向の横側の横側壁を有し、必要に応じて、上側の上側壁を有する。)と、が形成されており、必要に応じて、更に、該誘導壁に向かって上り傾斜で延びる呼び込み壁が形成されており、
冷却水の流れが強い方とは反対側の片側半分の溝状冷却水流路に設置されるボア間部の上部の少なくとも一箇所に、該ウォータージャケットスペーサーの背面側の冷却水が内側に通り抜けるための冷却水通過口と、該冷却水通過口の近傍に、該冷却水通過口に冷却水が流れ込むように冷却水を誘導する誘導壁(上側の上側壁と、冷却水の流れ方向の横側の横側壁と、を有する。)と、該誘導壁に向かって上り傾斜で延びる呼び込み壁と、が形成されていること、
を特徴とするウォータージャケットスペーサーである。呼び込み壁は、誘導壁の下端に繋がっていてもよいし、誘導壁の下端近傍まで延びているのであれば、誘導壁の下端に繋がっていなくてもよく、誘導壁の下端に繋がっていることが好ましい。
本発明の第一の形態及び第二の形態のウォータージャケットスペーサーは、ウォータージャケットスペーサーの背面側の上部に、冷却水の流れ方向に平行に延びる横リブを有することができる。本発明の第一の形態及び第二の形態のウォータージャケットスペーサーが、背面側の上部に、冷却水の流れ方向に平行に延びる横リブを有することにより、溝状冷却水流路の上部を流れる冷却水が、中下部に下がってくるのを防ぐことができる。背面側の上部に形成される冷却水の流れ方向に平行に延びる横リブの上下方向の形成位置、冷却水の流れ方向の形成位置及び長さ等は、適宜選択される。
本発明の第一の形態及び第二の形態のウォータージャケットスペーサーは、ウォータージャケットスペーサーの上方へのずれを防止するために各ボア部に形成されるシリンダヘッド当接部や、その他の部位や部材を有することもできる。
本発明の内燃機関は、シリンダブロックの溝状冷却水流路の全部又は一部に、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサー、本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサー又は本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサーと本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーとを組み合わせた形態のウォータージャケットスペーサーが、少なくとも1つ設置されていることを特徴とする内燃機関である。
本発明の内燃機関は、シリンダブロックの溝状冷却水流路の一方の片側半分に、第一の形態のウォータージャケットスペーサーが設置されており、且つ、シリンダブロックの溝状冷却水流路の他方の片側半分に、第二の形態のウォータージャケットスペーサーが設置されていることを特徴とする内燃機関。
本発明の内燃機関には、シリンダブロックの溝状冷却水流路の全部又は一部に、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサー又は本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーが設置されており、本発明の第一の形態のウォータージャケットスペーサー又は本発明の第二の形態のウォータージャケットスペーサーが設置されていない溝状冷却水流路に、本発明のウォータージャケットスペーサー以外のウォータージャケットスペーサー又はシリンダボア壁の保温具が設置されていてもよい。
本発明の自動車は、本発明の内燃機関を有することを特徴とする自動車である。