JP6905191B2 - レンズ及び複眼レンズ - Google Patents

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Description

本発明は、レンズ及び複眼レンズに関する。
第5世代移動通信システム(以下「5G」という。)において、電波の届く範囲が広い基地局(以下「マクロセル基地局」という。)を展開することが検討されている。また、5Gにおいて、人が密集するエリアに対しては、マクロセル基地局だけでなく、電波の届く範囲が狭い基地局(以下「スモールセル基地局」という。)を展開することが検討されている。さらに、5Gにおいて、無線通信機能と各種の計測機能とを有するIoT(Internet of things)デバイスを街中に設置することと、スモール基地局のトラフィックをオフロードすることでスモール基地局の負荷を軽減するため、無線LAN(Local Area Network)アクセスポイントを設置することが検討されている。そのため、5Gにおいては、マイクロセル基地局及びスモールセル基地局だけでなく、多数のIoTデバイス及び無線LANアクセスポイントを設置する必要がある。以下、IoTデバイス、無線LANアクセスポイント等の無線通信に使用される装置をそれぞれ区別しない場合、無線装置という。
図19は、従来のスモールセル基地局の使用例を示す図である。図19のようにビル800が立ち並ぶ通り(例えば、銀座の中央通り)にスモールセル基地局801を設置する場合、スモールセル基地局を設置する場所としては、ビル800の壁面の比較的高所(例えば、地上から20[m])が考えられる。ビル800の壁面の比較的高所にスモールセル基地局801を設置することで、歩道上にいるユーザーに無線通信サービスを提供することが可能になる。しかしながら、スモールセル基地局801や無線装置をビル壁面に多数設置する場合、通りの景観が損なわれる可能性がある。そこで、多くのビル800には比較的高所に看板802が設置されていることに着目し、看板802の看板面の内側(以下「看板内」という。)にスモールセル基地局801又は無線装置を設置することが提案されている。この場合、看板802は電磁波の伝搬を妨げる障害物となる。そのため、看板内にスモールセル基地局801及び無線装置を設置することで、景観を損なうことなく、ビルが立ち並ぶ通りにおける無線通信が可能になる。さらに、看板内にスモールセル基地局801又は無線装置を設置する場合、多くの看板802には電源用ケーブルは既に敷設されているため、新たに電源用ケーブルを敷設する工事が不要である。なお、スモールセル基地局801が受信したデータは、エントランス基地局803に送信され、マイクロ波や、光等で、基地局制御装置に送信される。そしてさらに光回線等により通信事業会社などの集約局804に送信される。
図20は、従来のスモールセル基地局の使用例を示す図である。スモールセル基地局を設置する場所としては、ビルが立ち並ぶ通り以外にも例えば、駅のコンコース、駅周辺の地下街又はデパート等が考えられる。このような場合には、天井、柱、壁等に無線装置を設置することが提案されている。しかしながら、この場合にも、景観を損ねる場合がある。そこで、図20のように、天井900、柱901、壁902等に既に照明機器903が設置されていることに着目し、照明機器903の筐体内部にスモールセル基地局及び無線装置904を設置することが提案されている。照明機器903においてはグローブが電磁波にとっての障害物である。そのため、照明機器903の内側にスモール基地局及び無線装置904を設置することで、景観が損なわれることなく、駅コンコース等での無線通信が可能になる。さらに、照明機器903には電源用管路が既に敷設されているため、新たに電源用管路を敷設する工事が不要である。なお、無線装置904が受信したデータは、ネットワーク接続ポイント905に送信され、イーサネット(登録商標)、光ファイバなどで、ゲートウェー装置906を介して(インターネット/イントラネットなどの)ネットワーク907へ送信される。
この図20に取り上げた無線装置904がIoTデバイスの場合、図20でハッチを施し示す領域(スモールセル基地局における「通信可能範囲」に相当)は、例えば、IoTデバイスが(焦電センサ・赤外線センサあるいは魚眼型の監視カメラなど)人感センサとするならば、屋内・室内・施設内に居たり、移動したりする状況の人を検知する事が可能な範囲を表す。他に、IoTデバイスが赤外線を利用し離れた所から高温な箇所を把握する熱感知センサや炎の光を高感度にキャッチする照度センサとするならば、火災の出火を捉えられることができる検出範囲とも云い換えられる。そして、これらの無線通信の機能を搭載した無線装置904は照明機器903の内側に設置することができる。
このように、5Gを想定した上記の検討によれば、今後、看板や照明機器の内側に無線装置が設置される機会が増えていくと考えられる。
土屋 貴寛、後藤 和人、菅 瑞紀、黄 俊翔、坪井 秀幸、黒崎 聰、 太田 厚、飯塚 正孝、"75GHz 帯伝搬測定によるストリートスモールセル基地局向け無線エントランス環境の実験的評価"、信学技報 IEICE Technical Report RCS2017-74(2017-06)
しかしながら、無線装置を看板や照明機器等の構造物内に設置する場合、無線装置が出力した電磁波の一部が障害物によって反射される。そのため、反射波が生じることによって障害物を透過する電磁波の強度が減少するため、無線装置の通信可能距離が短くなるという問題があった。
上記事情に鑑み、本発明は、通信可能距離が短くなることを抑制することができる技術を提供することを目的としている。
本発明の一態様は、屈折率がnである媒質を伝搬する波長λの電磁波に対する屈折率がnの複数の薄膜が層状に並び、前記複数の薄膜の一部又は全部が凸レンズの形状に略同一の形状を成し、n=(n×n1/2であって、前記複数の薄膜のうちの最も大きな面積を有する薄膜が、前記電磁波を所定の透過率で透過させる障害物が有する面のうち前記電磁波が入射する側の面に接し、前記複数の薄膜の前記面に垂直な方向の厚さが、λ/(4×n)の奇数倍である、レンズである。
本発明の一態様は、屈折率がnである媒質を伝搬する波長λの電磁波に対する屈折率がnの複数の薄膜が層状に並び、前記複数の薄膜の一部又は全部が凸レンズの形状に略同一の形状を成し、前記複数の薄膜のうちの最も大きな面積を有する薄膜が、前記電磁波を所定の透過率で透過させる障害物が有する面のうち前記電磁波が入射する側の面に接するレンズ状部材と、前記電磁波に対する屈折率がnであって、前記障害物が有する面のうち、前記屈折率がnの薄膜が接する面に平行であり、前記屈折率がnの薄膜が接する面の反対側に存在する面に接する薄膜状部材と、を備え、前記レンズ状部材の前記電磁波が入射する側の面に垂直な方向の厚さと、前記障害物の前記電磁波が入射する側の面に垂直な方向の厚さと、前記薄膜状部材の前記電磁波が入射する側の面に垂直な方向の厚さとの合計の厚さが、λ/(4×n)の奇数倍である、レンズである。
本発明の一態様は、上記のレンズであって、前記凸レンズの形状に略同一の形状を成す前記複数の薄膜と前記電磁波を放射する第一のアンテナとの距離dinが、前記第一のアンテナの開口の長さDと、din≧2D2/λである場合において、前記凸レンズの形状に略同一の形状は、前記第一のアンテナと前記電磁波を受信する第二のアンテナとの距離をdallとし、前記凸レンズの形状に略同一の形状を成す前記複数の薄膜の厚さの合計dとした場合に、R=(n−1)d、d=dall−(din+d)を満たす曲率半径Rの球面に接する形状である。
本発明の一態様は、上記のレンズであって、前記凸レンズの形状に略同一の形状を成す前記複数の薄膜と前記電磁波を放射する第一のアンテナとの距離dinが、前記第一のアンテナの開口の長さDと、din<2D/λである場合において、前記凸レンズの形状に略同一の形状は、R=(n−1)dinを満たす曲率半径Rの球面に接する形状である。
本発明の一態様は、上記のレンズを複数備える複眼レンズである。
本発明により、通信可能距離を伸ばすことが可能となる。
従来の無線通信システム7の具体例を示す図。 第一の実施形態の透過部材1の具体的な断面図を示す図。 第一の実施形態の透過部材1を送信アンテナ701側から見た具体的な構成を示す図。 第一の実施形態の透過部材1が送信アンテナ701に対して十分遠方にある場合における、曲率半径R1を説明する図。 第一の実施形態の透過部材1が送信アンテナ701の近傍にある場合における、曲率半径R2を説明する図。 第一の実施形態の透過部材1が反射波を抑制することができる原理を説明する図。 障害物702に接する第一の薄膜11が、曲率半径R1の円に接しない場合の具体例を示す図。 第二の実施形態の透過部材2の具体的な断面図を示す図。 図1の無線通信システム7における第二の実施形態の透過部材2の使用例を示す図。 図9における、透過部材2の曲率半径R2と送信アンテナ701と受信アンテナ703との距離dallとの関係を示すシミュレーション結果の図。 送信アンテナ701と障害物702との水平方向の距離din+dL2と透過部材2の曲率半径R2との関係を示す図。 障害物702に接する第二の薄膜12が、曲率半径R2の円に接しない場合の具体例を示す図。 変形例の透過部材1を正面から見た構成の具体例を示す図。 複数の透過部材1が障害物702に接する場合の透過部材1の具体的な配置を示す図。 図13に示す変形例の透過部材1をYZ面内に複数の配置する場合の透過部材1の具体例な配置を示す図。 障害物702を伝搬する電磁波の経路を示す図。 透過部材1又は2が非近似成立システムにおいて使用される場合の具体的な例を示す図。 障害物702aを伝搬する電磁波の経路を示す図。 従来のスモールセル基地局の使用例を示す図。 従来のスモールセル基地局の使用例を示す図。
(概略)
図1は、従来の無線通信システム7の具体例を示す図である。従来の無線通信システム7は、送信アンテナ701、障害物702及び受信アンテナ703を有する。図1において、直交座標系であるXYZ座標系のX軸は水平方向に平行な軸であり、Y軸は鉛直方向に平行な軸である。
送信アンテナ701は、例えば、スモールセル基地局、IoTデバイス、無線LANアクセスポイント等に備えられる。送信アンテナ701は、開口径がDである。送信アンテナ701は、所定の位置を座標原点として自身の中心点の座標がhである位置に存在する。以下では、このような位置に存在することを、高さhの位置に存在する、と表現する。座標原点は、例えば、地表面であってもよい。
障害物702は、入射した電磁波を所定の透過率で透過させる部材であって、例えば、看板面や、照明機器のグローブである。障害物702の厚さ(すなわち、X軸方向の幅)はdである。障害物702の波長λの電磁波に対する屈折率はnである。
受信アンテナ703は、例えば、エントランス基地局やネットワーク接続ポイントに備えられる。受信アンテナ703は、送信アンテナ701に対して、X軸方向に距離dall離れた場所に存在する。受信アンテナ703は、hよりもY軸正方向にH1だけ離れた高さhの位置に存在する。なお、受信アンテナ703と送信アンテナ701との鉛直方向の距離の差は、受信アンテナ703と送信アンテナ701との水平方向の距離の差よりも十分短い。すなわち、H1は、H1<<dallの関係を満たす。
送信アンテナ701、障害物702及び受信アンテナ703は、X軸方向に、送信アンテナ701、障害物702、受信アンテナ703の順番に配置される。
送信アンテナ701が放射した電磁波の一部は、屈折率がnの外気中を水平方向に対して角度θの方向に伝搬し、障害物702を透過する。障害物702を透過した電磁波は、屈折率nの外気中を水平方向に対して角度θの方向に伝搬し受信アンテナ703に到達する。なお、θは、tan(θ)=H1/dallの関係を満たす。
受信アンテナ703と送信アンテナ701との鉛直方向の距離の差H1は、受信アンテナ703と送信アンテナ701との水平方向の距離の差dallよりも十分短く、H1/dall≒0である。すなわち、θは、θ≒0の関係を満たす。このことは、電磁波の障害物702への入射角度が0degに近いことを意味し、電磁波の障害物702による屈折の屈折角を0と近似できることを意味する。
無線通信システム7において、障害物702内を通過する電磁波が、障害物702内で進む距離はd/cos(θ)である。また、無線通信システム7において、電磁波が障害物702内で進む距離はdに略同一の長さである。以下簡単のため、特にことわりがない限りは、θ≒0であり、無線通信システム7において、電磁波が障害物702内を進む距離はdであるとして説明する。
例えば、屋外のビルが立ち並ぶ通りは、無線通信システム7の使用シーンの一例である。この場合、送信アンテナ701は、例えば、ビル壁の看板の内側に設置されてもよく、この場合、例えば、送信アンテナ701と受信アンテナ703との高低差H1は7mであって、水平距離dallは70mであってもよい。また、例えば、駅のコンコースは、無線通信システム7の使用シーンの一例である。送信アンテナ701は、屋内の壁や柱に設置された照明機器内に設置されてもよい。この場合、例えば送信アンテナ701と受信アンテナ703(NW接続ポイント等)との高低差H1が3mであって、水平距離dallは30mであってもよい。これらの使用シーンにおいては、10≦dall/H1の関係と、θ<5.71degの関係とが満たされる。すなわち、この場合1/cos(θ)は約1.005であって、1に略同一である。
なお、無線通信システム7はこのようなシステムに限られるものではなく、送信アンテナ701、障害物702及び受信アンテナ703が、θ≒0を満たすように送信アンテナ701、障害物702及び受信アンテナ703の順番に配置される無線通信システムであれば、どのような無線通信システムであってもよい。
以下に説明する各実施形態は、図1に示す従来の無線通信システムの障害物702に、所定の条件を満たすように構成された透過部材を配置することにより、通信可能距離が短くなることを抑制する。
以下、実施形態の透過部材を、図面を参照して説明する。
(第一の実施形態)
図2は、第一の実施形態の透過部材1の具体的な断面図を示す図である。透過部材1は、図1の無線通信システム7における障害物702のYZ面に平行な表面のうち、送信アンテナ701側の表面に接する。透過部材1は、入射した電磁波の障害物702の表面における反射を抑制するとともに、その入射した電磁波を受信アンテナ703に集光する。なお、図2のXYZ座標は、図1のXYZ座標と同じである。
透過部材1は、第一の薄膜11−1〜5を備える。第一の薄膜11−1〜5は、厚さがds1であり、後述するように第一の薄膜11−1〜5を積層した合計の厚さはdL1であり、屈折率がnの誘電体の薄膜である。屈折率nは、
=(n×n1/2 ・・・(1)
を満たす。
合計の厚さdL1は、
L1=m×λ/(4×n) ・・・(2)
の関係を満たす。この式(2)において,mは奇数(m=1、3、5、・・・)であり、λは、透過部材1に入射する電磁波の真空中の波長である。第一の薄膜11−1〜5は、それぞれ同じ厚さds1及び屈折率nを有するものの、形状又は大きさが異なる。なお、第一の薄膜11−5は障害物702に接する。第一の薄膜11−5が、障害物702に接する面は、X軸正方向(すなわち、厚さ方向)に垂直な面である。
図3は、第一の実施形態の透過部材1を送信アンテナ701側から見た具体的な構成を示す図である。第一の薄膜11−1〜5は、YZ面において円形であり、第一の薄膜11−1、第一の薄膜11−2、第一の薄膜11−3、第一の薄膜11−4、第一の薄膜11−5の順番に半径が短い。
図2の説明に戻る。第一の薄膜11−1〜5は、第一の薄膜11−1、第一の薄膜11−2、第一の薄膜11−3、第一の薄膜11−4、第一の薄膜11−5の順番に層状に重ねられる。より詳細には、第一の薄膜11−1〜5は、凸レンズ状の形状と略同一の形状を形成するように積層される。そのため、透過部材1は、入射した電磁波を集光する凸レンズとして機能する。なお、透過部材1のX軸方向の厚さdL1は、前述したように第一の薄膜11−1〜5を重ねた(積層した)厚さであって、この図2の例ではdL1=ds1×5の関係を満たす。従って、先の式(2)よりds1=(m/5)×λ/(4×n)となる。ここで、mは奇数である。
第一の薄膜11−1〜5が形成する凸レンズ状の形状の曲率半径は長さR1である。すなわち、第一の薄膜11−1〜5の大きさは、曲率半径R1の円の境界に接するよう調整された大きさである。曲率半径R1は、送信アンテナ701、障害物702及び受信アンテナ703間の距離に基づいて、市販のレンズの曲率半径の長さの算出方法と同様の方法で算出される。
以下、屈折率が式(1)の関係を満たし、厚さが式(2)の関係を満たす薄膜を第一の薄膜11という。
なお、透過部材1は、必ずしも5枚の第一の薄膜11を備える必要はなく、mを奇数として、複数枚の積層した全体の厚さが物質内波長のm/4倍であれば何枚であってもよい。
また、実施形態の透過部材1は、必ずしも同じ厚さの第一の薄膜11によって構成される必要はなく、屈折率が(n×n1/2である複数枚の薄膜によって構成され、透過部材1の厚さ(すなわち、X軸方向の幅であり、図2におけるdL1)が物質内波長の1/4の奇数倍であって、透過部材1の形状が凸レンズに略同一の形状であれば、どのように構成されてもよい。
また、透過部材1は、第一の薄膜11をシールのように張り合わせることで形成されてもよいし、第一の薄膜11同士を接着剤で張り合わせることで形成されてもよい。
図4は、第一の実施形態の透過部材1が送信アンテナ701に対して十分遠方にある場合における、曲率半径R1を説明する図である。
図4において、送信アンテナ701、障害物702及び受信アンテナ703の配置は、図1の無線通信システム7と同様である。
また、図4において、透過部材1は送信アンテナ701に対して十分遠方にある。そのため、送信アンテナ701が放射する電磁波は、透過部材1の入射面において、近似的に平面波である。例えば、送信アンテナ701と透過部材1との間の距離をdinとすると、dinは、din≧2Dλの関係を満たす。
一般に、自身に入射した平面波の電磁波を焦点距離fの焦点に集光する凸レンズの曲率半径の長さrは、外気の屈折率を1とし、自身の屈折率をnとして、r=(n−1)fの関係を満たす。
一方、図4における透過部材1は、送信アンテナ701が放射し、透過部材1に入射する平面波である電磁波を受信アンテナ703に集光する。
そのため、図4において焦点距離がdに略同一である透過部材1の曲率半径R1は、
R1=(n−1)d ・・・(3)
と表される。なお、dは、受信アンテナ703と障害物702の送信アンテナ701側の表面との水平距離である。すなわち、dは、図4においてはdoutとdとの和である。つまり、この図4に示す状況で透過部材1が送信アンテナ701に対して十分遠方にある場合、曲率半径を求める上記の式(3)はR1=(n−1)(dout+d)となる。なお、doutは、受信アンテナ703と、障害物702の受信アンテナ703側の表面との水平距離である。
図5は、第一の実施形態の透過部材1が送信アンテナ701の近傍にある場合における、曲率半径R2を説明する図である。
図5において、送信アンテナ701、障害物702及び受信アンテナ703の配置は、図1の無線通信システム7と同様である。また、図5において、透過部材1は送信アンテナ701の近傍にある。そのため、送信アンテナ701が放射する電磁波は、透過部材1の入射面において、近似的に球面波である。例えば、送信アンテナ701と透過部材1との距離dinは、din<2Dλの関係を満たす。
図5において、送信アンテナ701上の点Pから放射された電磁波は、透過部材1を透過することで平面波となって外気を伝搬し、受信アンテナ703に到達する。
そのため、焦点距離がdinであり、図4における透過部材1の曲率半径R1は、
R1=(n−1)din ・・・(4)
の関係を満たす。
なお、図5において、透過部材1を透過した電磁波は受信アンテナ703上の一点には集光しない。しかしながら、透過部材1を透過した電磁波は、拡散する球面波の電磁波が拡散しない平面波の電磁波に変換され受信アンテナ703によって受信される。以下、この場合についても、集光という。
図6は、第一の実施形態の透過部材1が反射波を抑制することができる原理を説明する図である。
図6において、入射波L1と入射波L2とは同位相で外気を伝搬し透過部材1に入射する電磁波である。入射波L1は、透過部材1と障害物702との境界で反射され、反射波L1として障害物702を伝搬し外気に出射する。入射波L2は、外気と透過部材1との境界で反射され、反射波L2として外気を伝搬する。以下、入射波L1と反射波L1とを区別しない場合、電磁波L1という。また、以下、入射波L2と反射波L2とを区別しない場合、電磁波L2という。
一般に、電磁波は屈折率が異なる物質が接する箇所において反射される。すなわち、屈折率が異なる物質が接する箇所に入射した電磁波によって反射波が生じる。しかしながら、複数箇所で反射された電磁波の反射波の位相差が180度の奇数倍である場合には、反射波同士が互いに打消し合う。そのため、反射波の発生は抑制される。
透過部材1は、複数枚の薄膜を積層した構成であり、その積層した薄膜の全体の厚さが物質内波長(すなわち、λ/n)のm/4(m:奇数)を有する。そのため、透過部材1に入射する電磁波L1は、反射波L1として外部に出射されるまでに、電磁波L2と比較して半波長の奇数倍の距離だけ長く伝搬する。そのため、電磁波L1は伝搬によって180度の奇数倍に略同一な位相だけ余分に電磁波L2よりも位相が進む。
また、透過部材1は、屈折率が(n×n1/2である第一の薄膜11を備える。第一の薄膜11の屈折率が満たすn=(n×n1/2の式は、光学素子の反射防止膜の屈折率を与える式として一般に知られた式である。透過部材1の屈折率がn=(n×n1/2の式を満たすため、電磁波L1が透過部材1から障害物702に入射し反射される時の位相のずれと、電磁波L2が外気から透過部材1に入射し反射される時の位相のずれとは略同一である。
このように透過部材1は、屈折率が(n×n1/2であり、第一の薄膜11を層状に複数枚積層して備え、mを奇数として、全体の厚さが物質内波長のm/4であるため、電磁波L1の反射波L1と電磁波L2の反射波L2とは外気において互いに打消し合う。そのため、透過部材1は、反射波の発生を抑制する。
また、このように構成された透過部材1は、屈折率が(n×n1/2である第一の薄膜11を層状に複数枚積層して、mを奇数として、全体の厚さが物質内波長のm/4であるため、障害物702に入射する電磁波の反射波の発生を抑制するとともに、電磁波を受信アンテナ703に集光し、送信アンテナ701の通信可能距離を伸ばすことができる。特に、IoTデバイスのような小型の無線装置を使う場合には、利得があまり稼げず短い通信距離となるが、このように構成された透過部材1により通信可能距離を伸ばすことができる。
さらに、このように構成された透過部材1は、障害物702の表面に設置されるだけで、送信アンテナ701の通信可能距離を伸ばすことができる。そのため、例えば、利用するアンテナ口径の拡大や弱い信号の増幅に対応するアンプの高利得化などの方法と比較して、実施形態の透過部材1によれば通信可能距離を伸ばすための装置の大型化及び設置コストの増大を抑制しつつ、通信可能距離を伸ばすことができる。
(変形例)
図7は、障害物702に接する第一の薄膜11が、曲率半径R1の円に接しない場合の具体例を示す図である。図7の透過部材1は、図2の透過部材1における第一の薄膜11−1に代えて第一の薄膜11−6を備える。第一の薄膜11−6の屈折率及び厚さは、第一の薄膜11と同じである。第一の薄膜11−6は、第一の薄膜11−4と同じかそれよりも広い面積を有する(後述する図13や図14を参照)。第一の薄膜11−6は、障害物702に接し、曲率半径R1の円に接しない。第一の薄膜11−6は、第一の薄膜11−4と同じかそれよりも広い面積を有し、屈折率及び厚さが第一の薄膜11と同じ薄膜であって、曲率半径R1の円に接しない薄膜であればどのような薄膜であってもよい。例えば、第一の薄膜11−6は、自身が接する障害物702の面の全面を覆う形状であってもよい。この場合には、第一の薄膜11−6を曲率半径R1の円に接する形状に加工する必要がないため、透過部材1の作成を容易にする効果を奏する。また、ユーザーが第一の薄膜11−6を備えた透過部材1を障害物702に取り付ける際には、透過部材1が第一の薄膜11−6を備えるため、ユーザーは障害物702を覆うように透過部材1を取り付ければよい。そのため、このように構成された透過部材1は、ユーザーが透過部材1を障害物702に取り付けることを容易にするという効果を奏する。なお、第一の薄膜11の面積とは、第一の薄膜11のYZ面に平行な面の面積である。
(第二の実施形態)
図8は、第二の実施形態の透過部材2の具体的な断面図を示す図である。透過部材2は、図1の無線通信システム7における障害物702のYZ面に平行な表面に接する。透過部材2は、入射した電磁波の入射面における反射を抑制するとともに、その入射した電磁波を受信アンテナ703に集光させる。なお、図8のXYZ座標は、図1のXYZ座標と同じである。以下、図2〜5と同様のものに対しては、同じ符号を付して説明を省略する。
また、先の図6で説明した2つの反射波L1及びL2に関して、この図8においては、第三の薄膜13の表面での反射波(先のL1が第一の薄膜11−1であった点とは異なる)と、第二の薄膜12−5の表面での反射波(先のL2に相当)になる。
透過部材2は、レンズ状部材21及び第三の薄膜13を備える。レンズ状部材21及び第三の薄膜13は屈折率nを有する。レンズ状部材21は、凸レンズ状の形状であって、障害物702の、送信アンテナ701側の面に接する。一方、第三の薄膜13は、障害物702の他方の面(すなわち、受信アンテナ703側の面)に接する。透過部材2のレンズ状部材21の厚さdL2と第三の薄膜13の厚さds3とは、障害物702の厚さをdとして、dL2+d+ds3=m×λ/(4×n)の関係を満たす厚さである。レンズ状部材21は、第二の薄膜12−1〜5を備える。第二の薄膜12−1〜5は、それぞれ同じ厚さds2及び屈折率nを有するものの、形状又は大きさが異なる。第二の薄膜12−1〜5は、YZ面において円形であり、第二の薄膜12−1、第二の薄膜12−2、第二の薄膜12−3、第二の薄膜12−4、第二の薄膜12−5の順番に半径が短い。第二の薄膜12は、第一の薄膜11と同様に、凸レンズ状の形状と略同一の形状を形成するように積層される。したがって、レンズ状部材21の形状は凸レンズに略同一の形状である。また、第二の薄膜12−1〜5は、第一の薄膜11−1〜5と同様に、曲率半径R2の円に接するように積層される。曲率半径R2は、曲率半径R1と同様の方法によって算出される。
以下、屈折率がnであり、厚さがds2である薄膜を第二の薄膜12という。
なお、透過部材2は、必ずしも5枚の第二の薄膜12を備える必要はなく、第三の薄膜13と障害物702の厚さを全て合せた全体の厚さが、mを奇数として、物質内波長のm/4倍であれば、どのような枚数の第二の薄膜12を備えてもよい。
また、実施形態のレンズ状部材21は、必ずしも同じ厚さの第二の薄膜12によって構成される必要はない。レンズ状部材21は、以下の3つの条件を満たすように構成されればどのように構成されてもよい。第一の条件は、自身の屈折率をnとして、自身の厚さと、屈折率nの障害物702の厚さと、屈折率nの第三の薄膜13の厚さとの合計の厚さが物質内波長の1/4の奇数倍の関係を満たす厚さであることである。第二の条件は、凸レンズに略同一の形状であることである。第三の条件は、屈折率がnの複数枚の薄膜によって構成されることである。
また、透過部材2は、第二の薄膜12をシールのように張り合わせることで形成されてもよいし、第二の薄膜12同士を接着剤で張り合わせることで形成されてもよい。
第三の薄膜13は、障害物702を伝搬する電磁波が障害物702から外気に入射する場合に生じる反射波の発生を抑制する。
第三の薄膜13は、屈折率がnの薄膜であって、障害物702の有する表面のうち第二の薄膜12が接する表面とは反対側の表面に接する。なお、障害物702に接する第三の薄膜13の面は厚さ方向に垂直な面である。第三の薄膜の厚さds3は、dL2+d+ds3がλ/(4×n)の奇数倍となる厚さである。
すなわち、第三の薄膜の厚さds3は、
L2+d+ds3=λ/(4×n)×m(m:奇数) ・・・(5)
の関係を満たす。なお、dL2は、第二の薄膜12−1〜5を重ねた厚さであってdL2=ds2×5の関係を満たす。
第三の薄膜の厚さds3がλ/(4×n)の奇数倍であるため、図6と同様の物理現象によって、障害物702から外気に入射する電磁波の反射波の発生が抑制される。
第三の薄膜13は、自身が接する障害物702の表面の全体を覆ってもよいし、一部を覆ってもよい。
次に、図9〜11によって、第二の実施形態の透過部材2の曲率半径R2と、送信アンテナ701、障害物702及び受信アンテナ703の水平方向の配置との関係を説明する。
図9は、図1の無線通信システム7における第二の実施形態の透過部材2の使用例を示す図である。図9において、透過部材2と送信アンテナ701との距離をdinとして、dinは(din≧2D/λの関係を満たす。そのため、送信アンテナ701が放射した電磁波は、透過部材2の入射面において、近似的に平面波である。透過部材2は、入射した電磁波を受信アンテナ703に集光する。
そのため、図9における透過部材2は、第一の実施形態の図4の説明と同様に、曲率半径R2が、
R2=(n−1)d ・・・(6)
の関係を満たす。前述したようにdは、受信アンテナ703と障害物702の送信アンテナ701側の表面との水平距離である。そのため、図9においては、d=dall−(din+dL2)であり、曲率半径を求める(6)式は、R2=(n−1){dall−(din+dL2)}となる。ここでdallは、送信アンテナ701と受信アンテナ703との水平方向の距離である。
図10は、図9における、透過部材2の曲率半径R2と送信アンテナ701と受信アンテナ703との距離dallとの関係を示すシミュレーション結果の図である。なお、図10のシミュレーションにおいて、図9のdallは10≦dall/H1の関係を満たす。 また、図9において、送信アンテナ701の中心と受信アンテナ703の中心とを結ぶ直線と障害物702の表面とのなす角θ は、θ <5.71degの関係を満たす。
図10は、図9において、n=1.00、n=1.50、n=1.22、din=5cm、dL1=15λ/(4×n)=15×0.4/(4×1.22)≒1.23cmである場合に、周波数が75GHzの電磁波を受信アンテナ703に集光する透過部材2の曲率半径R2とdallとの関係を表す。ここで、din+dL2≒6.7cmが固定値であり、dallが0〜200mの範囲内の値である場合における曲率半径R2を求めて示す。なお、図10は、第二の薄膜12を積層し構成した透過部材2の全体の厚さdL2が45λ/(4×n)=45×0.4/(4×1.22)≒3.7cmとしたシミュレーションの結果である。図10のグラフは、dallが大きいほど曲率半径R2が大きいことを示す。
図11は、送信アンテナ701と障害物702との水平方向の距離din+dL2と透過部材2の曲率半径R2との関係を示す図である。なお、図11のシミュレーションにおいて、図9のdallは10≦dall/H1の関係を満たす。
図11のグラフは、図9において、n=1.00、n=1.50、n=1.22、dall=200mである場合に、周波数が75GHzの電磁波を受信アンテナ703に集光する透過部材2の曲率半径R2とdallとの関係を表す。ここで,dall=200mが固定値であり、din+dL2が0〜40cmの範囲内の値である場合における曲率半径R2のグラフを示す。曲率半径R2はdin+dL2が大きいほど小さい値である。
このように構成された透過部材2は、屈折率が障害物702と同じ屈折率であり、dL2+d+ds3がλ/(4n)の奇数倍の関係を満たす第二の薄膜12−1〜5及び第三の薄膜13を備えるため、障害物702を透過し外気に出力される電磁波の強度を、透過部材2がない場合と比較して増大することができる。また、このように構成された透過部材2は、複数枚の第二の薄膜12を凸レンズ状の形状を形成するように層状に積層して、mを奇数として全体の厚さが物質内波長のm/4とするため、電磁波を受信アンテナ703に集光することができる。また、このように構成された透過部材2は、障害物702と同じ屈折率を有するため、障害物702と同じ素材によって作製可能であり、透過部材の作製を容易にするという効果を奏する。
(変形例)
透過部材2は、必ずしも全ての第二の薄膜12が曲率半径R2の円に接する必要はなく、例えば、障害物702に接する第二の薄膜12が、障害物702の片面の全面を覆う広さであって、曲率半径R2の円に接しなくてもよい。
図12は、障害物702に接する第二の薄膜12が、曲率半径R2の円に接しない場合の具体例を示す図である。図12の透過部材2は、図8の透過部材2における第二の薄膜12−1に代えて第二の薄膜12−6を備える。第二の薄膜12−6の屈折率及び厚さは、第二の薄膜12でと同じである。第二の薄膜12−6は、障害物702に接し、曲率半径R2の円に接しない。第二の薄膜12−6は例えば、障害物702の透過部材2に接する面の全面を覆う形状であってもよい。この場合には、第二の薄膜12−6を曲率半径R2の円に接する形状に加工する必要がないため、透過部材2の作成を容易にする効果を奏する。また、ユーザーにとって、第二の薄膜12−6を備えた透過部材2を障害物702に取り付けることは、第二の薄膜12−1を備えた透過部材2を障害物702に取り付ける場合と異なり、取り付け前に第二の薄膜12を曲率半径R2の円に接する形状に加工する手間が減少する。そのため、このように構成された透過部材1は、ユーザーが透過部材2を取り付けることを容易にするという効果を奏する。
なお、第二の薄膜12−6の形状及び面積は、第二の薄膜12−4と同じかそれよりも広い面積を有し、障害物702の有する表面の一部又は全部を覆う形状及び面積であればどのような形状及び面積であってもよい。
以下、図13〜図15によって、第一の実施形態の透過部材1と、第二の実施形態の透過部材2とに共通の変形例を説明する。ただし、簡単のため、透過部材が透過部材1であるとして説明を行う。なお、図13〜15における、かっこ内の数字は、その符号で表される部材であってもよいことを示す。すなわち、例えば、図13における、1(2)との符号は、透過部材1であってもよいし、2であってもよいことを示す。
図13は、変形例の透過部材1を正面から見た構成の具体例を示す図である。透過部材1の第一の薄膜11は、必ずしも全ての第一の薄膜11がYZ面内で円形でなくてもよく、本図が示すように、YZ面内の形状が四角形や八角形等の非円形であってもよい。
また、図7に示したように、透過部材1の第一の薄膜11の一部は、障害物702を覆う面積を有する第一の薄膜11であってもよい。
変形例の透過部材1は、必ずしも障害物702に一つだけの透過部材1が接しなくてもよく、複数の透過部材1が障害物702に接してもよい。
図14は、複数の透過部材1が障害物702に接する場合の透過部材1の具体的な配置を示す図である。以下、実施形態の透過部材1を複数個備えた部材を第一の集合部材101という。第一の集合部材101において、透過部材1は、互いに外接するように配置されてもよい。この場合、第一の集合部材101における透過部材1の面内密度が高まる。そのため、第一の集合部材101は、障害物702への電磁波の照射面積が透過部材1の面積より広い場合には、透過部材1がひとつの場合よりも高効率に、電磁波を集光する効果を奏する。
図15は、図13に示す変形例の透過部材1をYZ面内に複数の配置する場合の透過部材1の具体例な配置を示す図である。以下、変形例の透過部材1を複数個、備えた部材を第二の集合部材102という。第二の集合部材102において、変形例の透過部材1は、本図が示すように、YZ面内の形状が四角形や八角形等の非円形や円形である薄膜が、障害物702に、互いに接するように複数枚配置されてもよい。
<θ≒0とみなせない場合について>
以下、送信アンテナ701、障害物702及び受信アンテナ703を無線通信システム7と同様の順番で備えるものの、θ≒0とみなせない無線通信システム(以下「非近似成立システム」という。)について説明する。非近似成立システムにおいては、透過部材1又は2は式(3)〜(6)においてそれぞれ、dをd/cos(θ)に置換し、dをd/cos(θ)に置換した以下の式(7)〜(10)を満たす。
R1=(n−1)d/cos(θ)・・・(7)
R1=(n−1)din/cos(θ)・・・(8)
(dL2+d+ds3)/cos(θ)=λ/(4×n)×m・・・(9)
R2=(n−1)d/cos(θ)・・・(10)
なお、非近似成立システムの使用シーンの一例は、例えば、地上から10mの位置のビル壁の看板内に送信アンテナ701が設置され、30m幅の道路を挟んでそのビルと向き合うビルの屋上(地上から20m)に受信アンテナ703が設置された無線通信システムである。この場合、両アンテナ間の水平距離dallが30mで高低差H1が10mなので、10>dall/H1(=3)となり、10≦dall/H1の関係とθ<5.71degの関係とが満たされない。すなわち、θ≒0がみたされない。
以下、非近似成立システムにおける電磁波の屈折を説明する。
図16は、障害物702を伝搬する電磁波の経路を示す図である。図16には、電磁波の経路を顕著にするため、図1における障害物702を拡大して記載してある。
送信アンテナ701が放射した電磁波は、障害物702に入射する。障害物702に入射した電磁波は屈折し、障害物702を伝搬する。障害物702から外気へ伝搬する境界においては,この境界へ入射角θで入射して、外気中に出射角θの方向に伝搬する。
電磁波が障害物702を通過する距離(以下「伝搬経路長」という。)をUとして、Uは、U=d/cos(θ)である。
スネルの法則を考えると、n×sin(θ)=n×sin(θ)であるため、
θ=arcsin(n×sin(θ))/n …(11)
を満たす。
そのため、伝搬経路長Uは
U=d/cos{arcsin(n×sin(θ))/n} …(12)
である。
式(11)及び(12)を用いて、障害物702による電磁波の屈折によって電磁波が到達する受信アンテナ703上の箇所がズレることと、その大きさとを具体的に示す。図16において、dall=30m、H1=10m、d=8mm、n=1.00及びn=1.50の場合を検討する。まず、dall=30m、H1=10mであるため、tan(θ)=H1/dall=10/30≒0.333である。またこの場合、θ=18.43degである。sin(θ)=0.316であるため、式(11)を用いて、
θ=arcsin(n×sin(θ))/n
=arcsin(1.00×0.316)/1.50
=18.43/1.50
=12.29deg
である。
そのため、tan(θ)=0.218であり、d{tan(θ)−tan(θ)}≒8×{0.333−0.218}=0.92mmである。したがって、H1=10mなので、0.92mm/10mは0.0001以下の非常に小さい値である。
このことは、非近似成立システムであっても、条件次第では無線通信システム7と略同一の経路を伝搬する電磁波が存在することを示す。さらに、このことは、非近似成立システムであっても条件次第では、透過部材1又は2は式(3)〜(10)を満たすことを示す。
なお、θ≒0とみなせないものの電磁波の障害物702による屈折を考慮しない場合(すなわち、伝搬経路長をd/cos(θ)とする場合)と、屈折を考慮する場合との伝搬経路長の差は次の通りである。屈折を考慮しない場合の伝搬経路長は、d/cos(θ)=8/0.989=8.09mmである。一方、屈折を考慮する場合の伝搬経路長は、d/cos(θ)=8/0.949=8.19mmである。これらの差(以下「式依存経路長差」という。)は0.24mmである。式依存経路長差は、屈折を考慮する場合の伝搬経路長の3%程度の大きさであり、屈折を考慮する場合の伝搬経路長と比較して小さな値である。また、式依存経路長差は障害物の厚さdと比較しても小さな値である。このことは、透過部材1又は2は、非近似成立システムにおいても条件次第では、式(3)〜(10)の一部又は全部をよい精度で満たすことを意味する。よい精度とは、式(3)〜(10)の一部又は全部を満足する透過部材1又は2は、式(11)及び(12)を満足する透過部材1又は2が集光する位置及び範囲に略同一の位置及び範囲に集光する、ことを意味する。
図17は、透過部材1又は2が非近似成立システムにおいて使用される場合の具体的な例を示す図である。図1と同様の機能をもつものに対しては、同じ符号を付すことで説明を省略する。
図17において、直交座標系であるXYZ座標系のX軸は水平方向に平行な軸であり、Y軸は鉛直方向に平行な軸である。
送信アンテナ701aは、例えば、屋内の天井に設置されたスモールセル基地局、IoTデバイス、無線LANアクセスポイント等である。送信アンテナ701aは、開口径がDである。送信アンテナ701aは、高さh(すなわち、Y座標がh)の位置に存在する。高さhの位置に存在するとは、自身の中心点のY座標がhであることを意味する。送信アンテナ701はY軸負方向であって、鉛直方向に対して角度θの方向に電磁波を放射する。角度θは送信アンテナ701aと受信アンテナ703aとの中心を結ぶ直線が鉛直方向となす角である。
障害物702aは、入射した電磁波を所定の透過率で透過させる部材であって、例えば、天井や、看板面や、照明機器のグローブである。障害物702aは、厚さ(すなわち、Y軸方向の幅)がdである。障害物702aの波長λの電磁波に対する屈折率はnである。
受信アンテナ703aは、例えば、屋内の壁に設置されたエントランス基地局やネットワーク接続ポイントである。受信アンテナ703aは、送信アンテナ701aに対して、X軸方向に距離dall離れた場所に存在する。受信アンテナ703aは、hよりもY軸負方向にH2だけ離れた高さhに存在する。なお、H2は、H2<<dallの関係を満たさない。H2は例えば5mであって、dallは例えば、30mである。そして、この図17での屋内における天井の高さがh4であり,この高さh4には障害物702aも存在する。
送信アンテナ701a、障害物702a及び受信アンテナ703aは、Y軸負方向に、送信アンテナ701a、障害物702a、受信アンテナ703aの順番に配置される。
送信アンテナ701がY軸負方向であって、鉛直方向に対して角度θの方向に放射した電磁波は、障害物702aを透過する。障害物702aを通過した電磁波は、屈折率nの外気中を垂直方向に対して角度θの方向に伝搬し、受信アンテナ703aに到達する。角度θは、例えば、H2が5mであって、dallが30mである場合には、58.99degである。また、この場合、1/cos(θ)は、1.941に略同一である。
図18は、障害物702aを伝搬する電磁波の経路を示す図である。図18には、電磁波の経路を顕著にするため、図17における障害物702aを拡大して記載してある。
送信アンテナ701aが放射した電磁波は、障害物702aに入射する。障害物702aに入射した電磁波は屈折し、障害物702aを伝搬する。障害物702aから外気へ伝搬する境界においては,この境界へ入射角θで入射して、外気中に出射角θの方向に伝搬する。出射した電磁波は受信アンテナ703aに入射する。
図16と同様にして、角度θは、
θ=arcsin(n×sin(θ))/n・・・(13)
を満たす。また、図16と同様にして、dは、
/cosθ = d/cos{arcsin(n×sinθ)/n} ・・・(14)
を満たす。
そのため、図17及び18においては、透過部材1又は2は式(3)〜(6)においてそれぞれ、dをd/cos{arcsin(n×sinθ)/n}に置換し、dをd/cos{arcsin(n×sinθ)/n}に置換した式(7)〜(10)を満たす。
式(13)及び(14)を用いて、障害物702aによる電磁波の屈折によって電磁波が到達する受信アンテナ703a上の箇所がズレることと、その大きさとを具体的に示す。図18において、dall=30m、H2=5m、d=8mm、n=1.00及びn=1.50の場合を検討する。まず、dall=30m、H2=5mであるため、tan(θ)=H2/dall=5/30≒0.166である。またこの場合、θ=9.46degである。sin(θ)=0.164であるため、式(13)を用いて、
θ=arcsin(n×sin(θ))/n
=arcsin(1.00×0.164)/1.50
=9.46/1.50
=6.31deg
である。
そのため、tan(θ)=0.111であり、d{tan(θ)−tan(θ)}≒8×{0.166−0.111}=0.44mmである。したがって、このことは、H2=5mなので、アンテナ間の高低差に比べて、電磁波が集光される位置のズレは非常に小さいことを意味する。
このことは、図16と同様に、非近似成立システムであっても、条件次第では無線通信システム7と略同一の経路を伝搬する電磁波が存在することを示す。
なお、透過部材は、レンズの一例である。なお、外気は媒質の一例である。なお、第三の薄膜13は、薄膜状部材の一例である。なお、第一の集合部材101及び第二の集合部材102は、複眼レンズの一例である。なお、図2における第一の薄膜11−1と、図7における第一の薄膜11−6と、図8における第二の薄膜12−1とは、前記複数の薄膜のうちの最も大きな面積を有する薄膜の一例である。送信アンテナ701は、第一のアンテナの一例である。受信アンテナ703は、第二のアンテナの一例である。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
1…第一の実施形態の透過部材、2…第二の実施形態の透過部材、 11…第一の薄膜、12…第二の薄膜、13…第三の薄膜、21…レンズ状部材、701…送信アンテナ、702…障害物、703…受信アンテナ、101…第一の集合部材、102…第二の集合部材

Claims (5)

  1. 屈折率がnである媒質を伝搬する波長λの電磁波に対する屈折率がnの複数の薄膜が層状に並び、前記複数の薄膜の一部又は全部が凸レンズの形状に略同一の形状を成し、前記複数の薄膜のうちの最も大きな面積を有する薄膜が、前記電磁波に対する屈折率がn であって、前記電磁波を所定の透過率で透過させる障害物が有する面のうち一方の面に接し、
    =(n ×n 1/2 であり、前記複数の薄膜の前記一方の面に垂直な方向の厚さがλ/(4×n)の奇数倍である、
    レンズ。
  2. 屈折率がnである媒質を伝搬する波長λの電磁波に対する屈折率がnの複数の薄膜が層状に並び、前記複数の薄膜の一部又は全部が凸レンズの形状に略同一の形状を成し、前記複数の薄膜のうちの最も大きな面積を有する薄膜が、前記電磁波に対する屈折率がn であって、前記電磁波を所定の透過率で透過させる障害物が有する面のうち一方の面に接するレンズ状部材と、
    前記電磁波に対する屈折率がnであって、前記障害物が有する面のうち、前記レンズ状部材が接する面に平行であり、前記レンズ状部材が接する面の反対側に存在する面に接する薄膜状部材と、
    を備え、
    前記レンズ状部材の前記一方の面に垂直な方向の厚さと、前記障害物の前記一方の面に垂直な方向の厚さと、前記薄膜状部材の前記一方の面に垂直な方向の厚さとの合計の厚さが、
    λ/(4×n)の奇数倍である、
    レンズ。
  3. 記複数の薄膜と、前記障害物の前記一方の面の側に配置され前記電磁波を放射する第一のアンテナとの距離dinが、前記第一のアンテナの開口の長さDとして、din≧2D/λである場合において、前記凸レンズの形状に略同一の形状は、前記第一のアンテナと、前記障害物の前記一方の面の反対側に配置され前記電磁波を受信する第二のアンテナとの距離をdallとし、前記複数の薄膜の厚さの合計とした場合に、R=(n−1)d、d=dall−(din+d)を満たす曲率半径Rの球面に接する形状である、
    請求項に記載のレンズ。
  4. 記複数の薄膜と、前記障害物の前記一方の面の側に配置され前記電磁波を放射する第一のアンテナとの距離dinが、前記第一のアンテナの開口の長さDとして、din<2D/λである場合において、前記凸レンズの形状に略同一の形状は、R=(n−1)dinを満たす曲率半径Rの球面に接する形状である、
    請求項に記載のレンズ。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載のレンズを複数備える、
    複眼レンズ。
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