{第1実施形態}
以下、実施形態に基づく医療用のX線CT撮影装置について説明する。図1はX線CT撮影装置10を示す概略図である。
X線CT撮影装置10は、被写体の頭部PのX線CT(Computed Tomography)撮影を行う装置であり、旋回支持部20と、旋回駆動機構30と、撮影領域位置設定部40と、旋回制御部60とを備える。
旋回支持部20は、X線発生器22とX線検出器24とを被写体の頭部Pを挟んで対向するように支持する。X線発生器22は、X線(X線ビーム)を発生させる。X線発生器22により発生されたX線は、規制部によってX線コーンビームに形成されてもよい。X線検出器24は、X線発生器22から出射されたX線を検出する。X線発生器22及びX線検出器24は、間に頭部Pを配設可能な間隔をあけた状態で、旋回支持部20によって支持されている。そして、X線発生器22から照射されたX線は、頭部Pを通って、X線検出器24に入射する。X線検出器24に入射したX線は、単位画素毎にX線の強度に応じた電気信号に変換される。この各電気信号に基づいてX線CT画像等が生成される。
旋回駆動機構30は、旋回機構32を備える。
旋回機構32は、旋回支持部20を、X線発生器22とX線検出器24との間に位置する機構上の旋回軸X1を中心として旋回させる。例えば、旋回機構32は、電気モータを含んでおり、必要に応じて、ギヤ等の加減速機構を含む。旋回機構32は、X線発生器22とX線検出器24との間の位置で、旋回支持部20から突出する軸部33を回転駆動可能に支持している。この軸部33の中心軸が機構上の旋回軸X1となる。そして、旋回機構32の駆動によって、旋回支持部20が機構上の旋回軸X1を中心として旋回する。旋回機構32は、旋回支持部20を、機構上の旋回軸X1を中心として旋回させるものであれば、如何なる構成であってもよい。
ここでは、旋回機構32は、旋回制御部60による制御下、X線CT撮影を行う際に、X線発生器22及びX線検出器24を頭部Pの周りに270゜以下の旋回角度で旋回させることが可能である。例えば、X線CT撮影を行うに際しては、X線発生器22及びX線検出器24を頭部Pの周りに360゜旋回させる場合と、270゜以下(例えば、180゜)で旋回させる場合とがあり得る。X線発生器22及びX線検出器24の旋回角度は、270゜以下(例えば、180゜)の角度で1つに定っている場合の他、270゜以下(例えば、180゜)で定められた角度と、360゜の旋回角度とを利用者の設定により選択できる場合もあり得る。旋回機構32は、X線CT撮影を行う際に、X線発生器22及びX線検出器24を頭部Pの周りに270゜以下(例えば、180゜)で旋回させることができればよい。X線発生器22及びX線検出器24を頭部Pの周りに270゜以下(例えば、180゜)旋回させる場合には、後述するように頭部Pに近いX線検出器24が、頭部Pのうち撮影領域Rから最も遠い側を旋回しないように、旋回範囲を決定することで、X線検出器24と頭部Pとの接触を回避することができる。
旋回駆動機構30は、旋回支持部20を駆動する際、270以下の旋回範囲として、180゜又は180゜にX線ビームの照射の拡がり角度(後述する図15の角度β参照)を加えた角度の旋回範囲でX線発生器22とX線検出器24とを頭部Pの周りに旋回移動させてもよい。これにより、180゜前後のCT撮影によるハーフスキャンを行う際に、頭部P周りを旋回するX線発生器22及びX線検出器24が頭部Pに接触することを抑制できる。
また、旋回機構32は、旋回制御部60の制御下、X線検出器24が頭部Pの周囲のうち、撮影領域Rが頭部P中で偏在する側を通過し、X線発生器22が頭部Pの周囲のうち撮影領域Rが頭部P中で偏在する側とは反対側を通過して、X線CT撮影を行うように、X線発生器22及びX線検出器24を頭部Pの周りに旋回させる。この際、X線検出器24を撮影領域Rに対してX線発生器22よりも近い側に位置させた状態を保つ。
X線検出器24を撮影領域Rに対してX線発生器22よりも近い側に位置させた状態を保った状態とは、それらの旋回中に、旋回軸X1が撮影領域Rの中心Aに一致した状態を保つことを前提とすると、旋回軸X1がX線発生器22よりもX線検出器24に近いことを意味している。
ここで、撮影領域Rの中心に対する頭部Pの表面の最大距離LDを想定する(図1参照)。この最大距離LDは、X線検出器24の旋回範囲に関係無く、頭部Pの周り全体における最大距離LDである。また、撮影領域Rの中心Aに対するX線検出器24の旋回の径qを考える(図1参照)。旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aに一致させた状態で、X線検出器24を旋回させるとすると、旋回の径qは、旋回軸X1とX線検出器24との距離に等しい。つまり、この場合、旋回の径qは、旋回支持部20自体の構成によって一定に定る。旋回の径qは、上記最大距離LDよりも小さい。これにより、X線検出器24をX線発生器22よりも撮影領域Rに近づけることができ、X線CT画像を鮮明にすることができる。
しかしながら、この場合、頭部Pの周りにおけるX線検出器24の旋回範囲によっては、当該X線検出器24が頭部Pに接触してしまう。そこで、そのような旋回を行わせるときに、後述するように、X線検出器24の旋回範囲を調整する。
なお、後の実施形態で説明するように、X線発生器22及びX線検出器24の旋回に同期させて旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aの周りに旋回させる態様もあり得、その場合には、X線発生器22及びX線検出器24が旋回する際の中心となる仮想旋回軸に対するX線検出器24の距離が旋回の径qとなる。つまり、この場合の旋回の径qは、旋回支持部20自体の構成(特に旋回軸X1とX線検出器24との距離)に、X線検出器24の旋回態様(特に、旋回軸X1の旋回の径)に応じて定る。
X線CT撮影領域R(以下、単に撮影領域Rと表記する場合がある)はX線CT撮影の対象となる領域である。頭部Pの前寄りにある一部のように、Z方向から見たときにXY方向の広がりの中で被写体の全域ではなく部分領域である領域を局所領域と称するとする。撮影領域位置設定部40は、頭部Pの歯列弓の一部の領域である局所領域を、X線CT撮影領域Rとしてその位置の設定を受付可能に構成されている。撮影領域Rの位置の設定は、例えば、模式化された歯列弓画像に対してタッチパネル、マウス等のポインティングデバイスを通じて指定すること等によって行うことができる。歯列弓画像は、実際に撮影されたX線画像に基づくものであってもよい。歯列弓画像は、歯列弓を平面視した画像であってもよいし、正面視或は側面視した画像であってもよい。位置の指定は、方向キーを通じてなされてもよい。その他、撮影領域Rの位置の設定は、歯式を1つ又は複数指定或は選択することによってなされてもよい。歯式は、各歯を数字等で区別した式である。歯式は、日本式の歯式であってもよいし、FDI方式(Two-digit system)の歯式であってもよいし、アメリカ式(Universal system)の歯式であってもよい。上記設定は、操作者によってなされる。撮影領域位置設定部40は、受付けられた撮影領域Rの位置設定に基づいて、当該撮影領域Rの位置を旋回制御部60に対して設定する。
歯列弓に対する撮影領域Rの位置設定例としては、歯列弓の一部である一側の臼歯領域、歯列弓の一部である前歯領域である場合が想定される。例えば、撮影領域Rとして歯列弓の一側の臼歯が指定された場合が、頭部Pの左右のいずれかに偏った位置にある歯列弓の一部をCT撮影領域RとしてX線CT撮影を行う場合の例である。図1においては、左側が頭部Pの前側であり、右側が頭部Pの後側であり、撮影領域Rとして歯列弓の一側(左側)の臼歯領域が設定された場合を示している。撮影領域位置設定部は、機構上の旋回軸X1に直交な平面における撮影領域の位置の設定を受付け可能なものであれば、どのようなインターフェースによるものであってもよい。
撮影領域Rは、Z方向から見て、例えば次のような領域とすることが考えられる。例えば、撮影領域Rとして、頭部領域全域、頭部の一部領域である頭部局所撮影領域(頭部局所領域と称しても可)としてもよい。以下、頭部局所撮影領域の例として、歯列弓全域、顎領域全域、歯列弓領域の一部領域である歯列弓局所撮影領域(歯列弓局所領域と称しても可)、顎領域の一部領域である顎局所撮影領域(顎局所領域と称しても可)とすることが考えられる。
旋回制御部60は、旋回機構32を制御する。旋回制御部60は、少なくとも1つのプロセッサを含む。例えば、旋回制御部60は、少なくとも1つのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、記憶部、入出力部等を備えたコンピュータによって構成されている。記憶部は、フラッシュメモリ、あるいは、ハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されており、旋回機構32を制御する際の旋回制御プログラム等を格納している。RAMは、少なくとも1つのプロセッサが所定の処理を行う際の作業領域として供される。入出力部は、旋回機構32及び撮影領域位置設定部40等に接続されている。そして、少なくとも1つのプロセッサが記憶部に記憶された旋回制御プログラムに従って所定の演算処理を行い、設定された撮影領域Rの位置に応じて、旋回機構32を制御する。
図2は旋回制御部60による処理を示すフローチャートである。
すなわち、X線CT撮影を行う際、ステップS1において、撮影領域位置設定部40を通じて撮影領域Rの位置設定がなされる。撮影領域Rの位置設定可能な内容としては、頭部Pの前後軸から右又は左に偏った位置にある歯列弓の一部に対する位置設定を含む。例えば、歯列弓の一部である右臼歯、又は、左臼歯に対する位置設定が可能である。
この後、次ステップS2において、撮影領域位置設定部40で設定された撮影領域Rの位置に応じて旋回範囲が決定される。
旋回範囲は、例えば、X線発生器22及びX線検出器24を頭部Pの周りにおいてどの位置からどの位置まで旋回させるかによって表される。頭部Pの左右のいずれかに偏った位置にある歯列弓の一部を撮影領域RとしてX線CT撮影を行う旨の位置設定がなされると、その位置に応じてX線発生器22及びX線検出器24(つまり旋回支持部20)の旋回範囲を決定する。なお、X線発生器22とX線検出器24とは、旋回軸X1を挟んで対向する位置にあることから、X線発生器22の旋回範囲が決定されると、X線検出器24の旋回範囲も定り、逆に、X線発生器22の旋回範囲が決定されると、X線検出器24の旋回範囲も定る。
ここで、旋回制御部60が旋回駆動機構30を駆動制御して、X線による撮影領域RのX線CT撮影を行う際、X線発生器22とX線検出器24とを頭部Pの周りに270゜以下の旋回範囲で旋回移動させる場合を考える。この場合、X線検出器24をX線発生器22よりも頭部Pに近づけた状態で、それらを旋回させると、より鮮明なX線CT画像を得ることができる。このため、X線検出器24が頭部Pの周囲のうち、撮影領域Rが頭部P中において偏在する側を通過するとよい。逆に、X線発生器22が頭部Pの周囲のうち、撮影領域Rが頭部Pにおいて偏在する側の反対側を通過するとよい。これにより、X線検出器24が旋回移動によって弧のX線検出軌道Orを形成するとよい。
例えば、撮影領域Rが前歯である場合には、撮影領域Rは頭部Pにおいて前側に偏在する。このため、X線検出器24は頭部Pの前側を通過し、X線発生器22は頭部Pの後側を通過するとよい。また、例えば、撮影領域Rが右側の臼歯(あるいは左側の臼歯)である場合には、撮影領域Rは頭部Pにおいて前方右寄り(或は前方左側)に偏在する。このため、X線検出器24は頭部Pの前方右寄り(或は前方左側)を通過し、X線発生器22は頭部Pの後方左寄り(後方右寄り)を通過するとよい。
また、撮影領域位置設定部40で設定された撮影領域Rが頭部Pの正中Mcに対して左右のいずれかに偏った位置にある場合を想定する。ここで、頭部Pの正中Mcとは、頭部Pにおいて左右対称軸を含む線又は平面をいう(図1では正中線Mcを図示)。頭部Pの左右のいずれかに偏った位置にある歯列弓の一部を撮影領域Rとする場合には、頭部Pの周りにおいて撮影領域Rの中心から最も遠い箇所が、当該位置に応じて異なってしまう。
X線検出器24が撮影領域Rに対してX線発生器22よりも近い側に位置した状態を保ちつつ頭部P周りを旋回する場合、X線検出器24が頭部Pの周りにおいて撮影領域Rの中心から最も遠い箇所を旋回しようとすると、X線検出器24が頭部Pに接触してしまう恐れがある。そこで、X線検出軌道Orの弧の中央部OrMが、前記正中Mcに対し、撮影領域Rが偏っている側と同じ側に偏って位置するように、旋回支持部20の旋回範囲を設定する。ここで、X線検出軌道Orの弧の中央部OrMとは、X線検出軌道Orにおける両端の中央である。X線検出軌道Orがなす弧は、同じ曲率部分が連続する円弧である必要は無い。
例えば、撮影領域Rとして左側の臼歯が指定された場合には、撮影領域Rは正中Mcに対し左側に偏っている。このような場合には、X線検出軌道Orの弧の中央部OrMが、正中Mcに対し左側に偏って位置するように、旋回支持部20の旋回範囲を設定する。
これにより、X線検出器24は、上記頭部Pの周りにおいて撮影領域Rの中心から遠い箇所を避けた旋回範囲を、撮影領域Rになるべく近づきつつ旋回することができる。また、撮影領域Rとして左側の臼歯が指定された場合には、頭部Pの周りにおいて撮影領域Rの中心から最も遠い箇所は頭部Pの右側に存在することになる。X線発生器22は撮影領域Rから比較的遠いため、頭部Pの周りにおいて撮影領域Rの中心から遠い箇所の周りを旋回しても当該頭部Pには接触し難い(図1においてX線発生器22の移動軌跡を示す矢印参照)。
また、例えば、撮影領域Rとして右側の臼歯が指定された場合には、撮影領域Rは正中Mcに対し右側に偏っている。このような場合には、X線検出軌道Orの弧の中央部OrMが、正中Mcに対し右側に偏って位置するように、旋回支持部20の旋回範囲を設定する。
これにより、上記と同様に、X線検出器24は、上記頭部Pの周りにおいて撮影領域Rの中心から遠い箇所を避けた旋回範囲を、撮影領域Rになるべく近づきつつ旋回することができる。また、X線発生器22は撮影領域Rから比較的遠いため、頭部Pの周りにおいて撮影領域Rの中心から遠い箇所の周りを旋回しても当該頭部Pには接触し難い。
なお、歯列弓の一部を撮影領域Rとする場合において、撮影領域位置設定部40で設定された撮影領域Rが頭部Pの正中Mcに対して左右のいずれかに偏った位置にあるか否かについては、厳密に判断する必要は無い。例えば、前歯の左寄りの部分、又は、右寄りの部分をX線CT撮影するような場合には、正中Mcに対して左右のいずれかに偏っていないと場合と考えてもよい。例えば、歯列弓の臼歯を撮影する場合が、頭部Pの左右のいずれかに偏った位置にある歯列弓の一部を撮影領域RとしてX線CT撮影を行う場合であるとしてもよい。
撮影領域Rが頭部Pの左右のいずれかに偏っていない場合には、X線検出器24が頭部Pの前半の旋回範囲を旋回するようにするとよい。
上記旋回範囲の決定は、例えば、撮影領域Rの位置(例えば、左側臼歯領域域か右側臼歯領域か等)に対応付けられたパターンとして事前に記憶部に記憶されており、設定される撮影領域Rの位置の大きさに応じて、これに対応付けられた旋回範囲が決定される構成とすることができる。より具体的には、旋回範囲としては、標準的な頭部Pを想定し、当該頭部Pの中心から撮影領域Rの中心Aに向う方向をX線検出器24の旋回範囲の中心として設定すること、或は、撮影領域Rの中心Aから頭部Pの周りのうち最大距離LDとなる部分に向う方向をX線発生器22の旋回範囲の中心として設定すること等が考えられる。
また、設定される撮影領域Rの中心Aの位置に応じて、その都度、頭部Pの中心に対する撮影領域Rの中心Aの角度を演算し、その演算された角度を基準として、X線検出器24の旋回範囲(例えば、中心Aに対する撮影領域Rの中心Aの角度を中心の角度として両方向に同じ角度(例えば、90゜)旋回する範囲)を決定するようにしてもよい。この場合の頭部Pの中心位置としては、例えば、標準的な頭部を想定して予め記憶されたものを用いることができる。
次ステップS3において、旋回制御部60が、旋回駆動機構30を駆動制御してX線による撮影領域RのX線CT撮影を行う間、X線発生器22及びX線検出器24を、頭部Pの周りに270゜以下の旋回範囲で旋回移動させて、かつ、X線検出器24が頭部Pの周囲のうち、撮影領域Rが頭部P中において偏在する側を通過し、X線発生器22が頭部Pの周囲のうち、撮影領域Rが頭部Pにおいて偏在する側の反対側を通過し、X線検出器24が旋回移動によって弧のX線検出軌道Orを形成するようにする。この際、撮影領域位置設定部40で設定された撮影領域Rが頭部Pの正中Mcに対して左右のいずれかに偏った位置にある場合、上記のように、決定された旋回範囲に基づいて、X線発生器22及びX線検出器24が旋回する。つまり、X線検出軌道Orの中央部OrMが、正中Mcに対して、撮影領域Rが偏っている側と同じ側に偏って位置するように、旋回支持部20が旋回する。この際、X線発生器22から照射されたX線が頭部Pを通ってX線検出器24に入射し、X線CT画像を生成するのに用いられるデータが得られる。このデータに基づいて、X線CT画像が生成される。
このように構成されたX線CT撮影装置10によると、撮影領域Rが頭部Pの正中Mcに対して左右のいずれかに偏った位置にある場合、X線検出軌道Orの中央部OrMが、正中Mcに対して、撮影領域Rが偏っている側と同じ側に偏って位置するように、旋回支持部20の旋回範囲を決定するため、X線発生器22及びX線検出器24が頭部Pと接触することを抑制できる。また、上記範囲において、X線検出器24を撮影領域Rになるべく近づけることができるため、なるべく鮮明なX線CT画像を得ることができる。
例えば、X線検出器24が撮影領域Rの中心に対するX線検出器24の旋回の径qが最大距離LDよりも小さい条件で、旋回することで、X線検出器24がなるべく被写体近くを旋回することになり、なるべく鮮明なX線CT画像を得ることができる。
{第2実施形態}
第2実施形態に係るX線CT撮影装置について説明する。
図3はX線CT撮影装置110の全体構成を示す概略図である。ここでは、X線CT撮影装置110は、CT撮影だけでなく、パノラマ撮影、セファロ撮影等も実行可能に構成されている例で説明する。
<全体構成>
X線CT撮影装置110は、撮影本体部120と、X線画像処理装置180とを備える。撮影本体部120は、X線CT撮影等のX線撮影を実行して、投影データを収集する装置である。X線画像処理装置180は、撮影本体部120において収集した投影データを処理して、各種画像を生成する装置である。
撮影本体部120は、旋回支持部124と、旋回駆動機構130とを備える。旋回支持部124は、X線発生器126とX線検出器128とを被写体である頭部Pを挟んで対向するように支持している。旋回支持部124は、X線発生器126とX線検出器128との間の位置に旋回支持部124自身が旋回するための軸心となる機構上の旋回軸X1を備える。旋回駆動機構130は、旋回機構132と、旋回軸移動機構134とを備える。旋回機構132は、旋回支持部124を、X線発生器126とX線検出器128との間の機構上の旋回軸X1を中心として旋回させる機構である。旋回機構132、旋回支持部124、X線発生器126、X線検出器128の機械的関係は次の通りである。すなわち、旋回支持部124が機構上の旋回軸X1の軸周りに旋回することでX線発生器126とX線検出器128が機構上の旋回軸X1を中心として旋回する。旋回軸移動機構134は、機構上の旋回軸X1を当該旋回軸X1に交差する方向に移動させる機構である。旋回軸移動機構134は、省略されてもよい。
好ましくは、機構上の旋回軸X1は、X線発生器126とX線検出器128との中央位置よりもX線検出器128寄りの位置に設けられる。機構上の旋回軸X1をX線発生器126とX線検出器128との中央位置よりもX線検出器128寄りの位置に設ける構成にすることによる効果の例として、X線撮影中の機構上の旋回軸X1の移動量をできるだけコンパクトに抑えながら、拡大率をなるべく小さくし、投影像を鮮明にするためにX線検出器128を撮影領域Rにできるだけ近づけたいという要請に応えられることが挙げられる。
より具体的には、ベース120B上に支柱121が垂直姿勢で支持されている。この支柱121に昇降部122が昇降可能に設けられている。昇降部122は、昇降駆動機構によって昇降駆動される。昇降駆動機構としては、ボールねじ機構及びモータ等を含む移動機構、リニアモータ等のリニアアクチュエータが用いられ、支柱121内に組込まれて昇降部122を昇降駆動する。昇降部122に、水平方向に延びるように水平アーム123が支持されている。この水平アーム123の先端部に旋回駆動機構130が組込まれている。後述する頭部固定装置用アーム141が支柱121から水平アーム123と同じ方向に延びている。この頭部固定装置用アーム141の先端部に頭部固定装置142が設けられ、頭部固定装置142に頭部Pが保持される。図3においては、昇降部122の基端部は支柱121の背後を昇降する。このように、昇降部122の基端部が昇降する側を背面とし、その裏を正面とするとして、図3においては水平アーム123が昇降部122から正面視で支柱121の右に延出している。頭部Pは、頭部固定装置142に図示の右を後方とし、左を前方とする向きに保持される。
ここで、説明の便宜上方向を規定しておく。
XYZ直交座標系は、撮影本体部120が設置される3次元空間において定義される直交座標系である。機構上の旋回軸X1の軸方向と平行な方向がZ軸方向である。本実施形態では、機構上の旋回軸X1の軸方向と平行な方向と、昇降部122の昇降方向とをZ軸方向として一致させている。Z軸方向に直交する方向がY軸方向であり、Z軸方向にもY軸方向にも直交する方向がX軸方向である。頭部固定装置142に固定された頭部Pの前後の方向をY軸方向とし、頭部の左右の方向をX軸方向とする。本願では、Z軸方向をZ方向、Y軸方向をY方向、X軸方向をX方向と呼ぶこともある。
頭部Pからベース120Bに向かう方すなわち下側を−Z側とし、逆に頭部Pからベース120Bより遠ざかっていく方すなわち上側を+Z側とする。頭部Pの前の方を+Y側とし、後の方が−Y側とする。頭部Pの右の方を+X側とし、左の方が−X側とする。図3に各軸方向と、各+、−を図示する。
xyz直交座標系は、機構上の旋回軸X1の軸周りに回転する、X線発生およびX線検出をする撮像系を構成する旋回支持部124において定義される直交座標系である。ここでは、機構上の旋回軸X1の軸方向をz軸方向としており、z軸方向はXYZ直交座標系におけるZ軸方向に一致する。また、X線発生器126とX線検出器128とが対向する方向をy軸方向とし、y軸方向およびz軸方向に直交する方向をx軸方向とする。旋回支持部124が機構上の旋回軸X1を回転軸にして回転することによって、xyz直交座標系がXYZ直交座標系に対してZ軸(=z軸)周りに回転する。本願では、z軸方向をz方向、y軸方向をy方向、x軸方向をx方向と呼ぶこともある。
y軸方向において、X線検出器128側を+y側とし、X線発生器126側を−y側とする。また、x軸方向において、−y側から+y側に向かって右側を+x側とし、左側を−x側とする。さらに、z軸方向において鉛直方向上側を+z側とし、下側を−z側とする。
図4は旋回駆動機構130を示す概略底面図である。図3及び図4に示すように、旋回駆動機構130は、一種のブラケットとしての水平アーム123に支持された旋回軸移動機構134と、当該旋回軸移動機構134によって移動可能に支持された旋回機構132とを備える。
旋回軸移動機構134は、機構上の旋回軸X1を、機構上の旋回軸X1に交差する方向、ここでは、機構上の旋回軸X1に直交する方向に移動させる機構である。ここでは、旋回軸移動機構134は、XYテーブル機構によって構成されていて、機構上の旋回軸X1が接続される旋回機構132を機構上の旋回軸X1に交差する方向に移動させることを通じて機構上の旋回軸X1を機構上の旋回軸X1に交差する方向に移動させている。より具体的には、旋回軸移動機構134は、固定テーブル134Bと、X方向可動支持部135と、X方向駆動部136と、Y方向可動支持部137と、Y方向駆動部138と、可動テーブル139とを備える。
X方向可動支持部135は、間隔をあけた平行状態で固定テーブル134B上に支持されたX方向に延在する一対のリニアガイド135aを備える。また、Y方向可動支持部137は、Y方向に延在する一対のリニアガイド137aを備える。一対のリニアガイド137aは、一対のリニアガイド135aに対して交差する姿勢(ここでは直交する姿勢)で、かつ、間隔をあけた平行状態で、一対のリニアガイド135a上にその延在方向であるX方向に沿って移動可能に支持されている。可動テーブル139は、一対のリニアガイド137a上にその延在方向であるY方向に沿って移動可能に支持されている。そして、Y方向可動支持部137がX方向可動支持部135上をX方向に沿って移動することで、可動テーブル139がX方向に移動できる。また、可動テーブル139がY方向可動支持部137上をY方向に沿って移動することで、可動テーブル139がY方向に移動できる。これらにより、可動テーブル139が機構上の旋回軸X1に対して直交する平面内を自在に移動することができる。
X方向駆動部136は、Y方向可動支持部137をX方向に沿って往復駆動させる機構である。X方向駆動部136としては、例えば、モータ136aによって正逆両方向に回転駆動されるボールねじ136bに、Y方向可動支持部137に固定されたナット部136cを螺合させたボールねじ機構等を用いることができる。
Y方向駆動部138は、可動テーブル139をY方向に沿って往復駆動させる機構である。Y方向駆動部138としては、例えば、モータ138aによって正逆両方向に回転駆動されるボールねじ138bに、可動テーブル139に固定されたナット部138cを螺合させたボールねじ機構等を用いることができる。
旋回機構132は、モータ132aを備えており、上記可動テーブル139に垂下状に支持されている。旋回支持部124の延在方向中間部から上方に突出する軸部124cが旋回機構132によって垂下状態で支持されている。モータ132aの回転運動は、当該軸部124cに伝達され、モータ132aの駆動によって旋回支持部124が軸部124cを中心として旋回される。この軸部124cの中心軸が機構上の旋回軸X1である。旋回軸X1は、旋回支持部124に支持されたX線発生器126とX線検出器128との間に位置している。モータ132aの回転運動は、必要に応じて、ギヤ、プーリー等の伝達機構を介して軸部124cに伝達される。上記軸部124cは、重力方向に沿った鉛直方向に沿って配設されている。従って、機構上の旋回軸X1も鉛直方向に沿って配設されている。
そして、X方向駆動部136及びY方向駆動部138の駆動によって、可動テーブル139に支持された旋回機構132を機構上の旋回軸X1に対して直交する平面に沿って移動させることができる。機構上の旋回軸X1の移動は機械的制約の範囲内で所望の軌道で可能であり、X方向への直線移動、Y方向への直線移動のほか、特に、X方向駆動部136によるX方向の駆動とY方向駆動部138によるY方向の駆動とを組合わせることによって、X方向及びY方向の双方に対して斜めとなる方向への直線移動、曲線移動が可能である。旋回機構132を円状の軌道、円弧状の軌道又はこれらを複数組み合わせた軌道を描くように回転移動させることもできる。
可動テーブル139をX方向に移動させる機構、Y方向に移動させる機構は、上記例に限られず、リニアモータ等のリニアアクチュエータを用いた構成を採用することができる。また、旋回軸移動機構134が上記構成であることは必須ではない。また、旋回軸移動機構は、旋回機構を支持したアームを旋回させ、もって、旋回機構を機構上の旋回軸X1に対して交差する方向において旋回移動させる機構であってもよい。
旋回機構は、旋回支持部に設けられていてもよい。例えば、旋回軸移動機構は、旋回機構を介さずに機構上の旋回軸X1を直接移動させるものでもよい。より具体的な例としては、可動テーブル139に機構上の旋回軸X1に応じたシャフトを回動不能に固定して機構上の旋回軸X1に交差する方向に移動可能に構成し、このシャフトに、旋回支持部124を回動可能に接続する。そして、旋回機構132を旋回支持部124に設けてこの旋回機構132により、上記シャフトに対する回転力を生じさせることで、旋回支持部124がシャフトに対して旋回するように構成してもよい。
図3に示すように、旋回支持部124は、X線発生器126とX線検出器128とが頭部Pを挟んで対向するように支持された部分である。ここでは、旋回支持部124は、長尺状のアーム本体部124aの両端部に垂下支持部124bが設けられた形状、すなわち、下向きに開口するU字形状とされている。アーム本体部124aの延在方向中間部に上方に向けて突出する上記軸部124cが突設され、当該軸部124cが旋回機構132によって垂下状態で支持されている。
一方の垂下支持部124bにX線発生器126が設けられている。X線発生器126は、X線を発生する。例えば、X線発生器126は、X線管を備え、当該X線管から照射されるX線をX線検出器128に向けて出射可能に構成されている。X線発生器126が設けられる側の垂下支持部124bは、X線発生器126を含むX線発生部126aでもある。
ここでは、X線検出器128に対してX線が照射される側に、X線発生器126から発生したX線をX線コーンビームに規制するX線規制部129が設けられる。X線規制部129は、X線規制孔が形成された部材であり、当該X線規制孔の形状及び大きさに応じて、X線発生器126から発生したX線の一部の通過を許容しその通過範囲の外を遮蔽する。これにより、X線検出器128に進むX線ビームの範囲が規制され、X線がX線コーンビームに規制される。このX線規制部129は、X線規制孔を複数種類設けて、X線を規制するX線規制孔を切替えること、或は、X線規制孔を形成する部材を移動させてX線規制孔の開口幅を調整すること等によって、X線発生器126から発生したX線のうち遮蔽される量、すなわち、規制量を調整する。
X線規制部129は、例えば4枚のX線遮蔽部材から構成され、X線発生器126のX線照射口の前面の、当該X線照射口を中心とする+z側、−z側、+x側、−x側にそれぞれ設けられる。+z側の遮蔽部材、−z側の遮蔽部材はそれぞれz方向に変位可能に独立駆動され、+x側の遮蔽部材、−x側の遮蔽部材はそれぞれx方向に変位可能に独立駆動され、その駆動は図示しないX線規制部駆動制御部によって制御される。これらのX線遮蔽部材が囲繞する空間がX線が通過可能な領域であり、X線規制孔である。当該4枚のX線遮蔽部材の変位駆動制御により、所望の形状のX線規制孔が形成される。当該X線が通過可能な領域すなわちX線規制孔は言い換えればX線通過許容部である。規制幅とは、規制がかかった空間の幅の意味で、当該X線通過許容部の幅であり、すなわちX線規制孔の幅である。したがって、規制量を大きくするために規制幅を小さくし、規制量を小さくするために規制幅を大きくするという関係が成立する。
他方の垂下支持部124bにX線検出器128が設けられており、これにより、X線検出器128は、X線発生器126に対して頭部Pを挟んで対向して配設される。X線検出器128は、X線発生器126で発生されたX線を検出する。例えば、X線検出器128は、面状の検出面を有するX線検出器を備え、X線発生器126から照射され、頭部Pを通過したX線(X線コーンビーム)を検出可能に構成されている。このX線検出器128により、X線撮影による投影データを得ることができる。X線検出器128が設けられる側の垂下支持部124bはX線検出器128を含むX線検出部128aでもある。
X線検出器128は実際には外装部に収容されていることが多いので、X線検出器128がX線検出部128aの外装に収容されている場合、頭部Pとの当接の有無に関しては、X線検出器128をX線検出部128aと読み替えて当該当接の有無を考えるとよい。X線発生器126も同様であり、X線発生器126がX線発生部126aの外装に収容されている場合、頭部Pとの当接の有無に関しては、X線発生器126をX線発生部126aと読み替えて当該当接の有無を判断するとよい。
上記X線発生器126とX線検出器128との間には、頭部Pを配設可能な間隔が設けられている。
なお、本実施形態では、X線発生器126及びX線検出器128は、U字形状をなす旋回支持部の両端部に取付けられているが、X線発生部及びX線検出器は、環状部材によって対向状態に支持されていてもよい。かかる環状部材については、その周方向の一部又は環状部材の内部を横切る支持部材に軸部を設けて、旋回可能に支持することができる。また、本実施形態では、X線発生器126及びX線検出器128は、鉛直軸周りに回転可能に支持されているが、鉛直方向に対して斜め方向の軸等の周りに回転可能に支持されていてもよいし、水平軸周りに回転可能に支持されていてもよい。
そして、頭部Pの高さに合せて昇降部122によって旋回支持部124を昇降させることができる。また、旋回駆動機構130により、X線発生器126及びX線検出器128が頭部Pの周りを旋回するように、旋回支持部124を旋回させることができる。
また、支柱121のうち水平アーム123よりも下側の部分に水平方向に延びる頭部固定装置用アーム141が設けられている。水平アーム123と頭部固定装置用アーム141は支柱121側を基端部として同方向に延在する。頭部固定装置用アーム141は、水平アーム123の下側に向けて延在しており、その先端部に頭部固定装置142が設けられている。頭部固定装置142は、上記X線発生器126とX線検出器128との間に位置している。頭部固定装置142は、被写体である頭部Pの顎を載置支持可能なチンレスト142aと、被写体である頭部Pをその両外側から挟んで保持する保持部142bとを含む。そして、頭部Pの顎がチンレスト142a上に支持されると共に、頭部Pが保持部142bによって挟込まれることで、頭部PがX線発生器126とX線検出器128との間の一定位置に保持される。頭部固定装置142を、少なくともチンレスト142a、保持部142bの一方で構成するようにしてもよい。また、前記支柱121から水平アーム123が延びる側とは反対側に水平方向に延びるようにセファロ撮影用頭部固定装置垂下用アーム143が設けられ、このセファロ撮影用頭部固定装置垂下用アーム143にセファロ撮影用頭部固定装置144が吊下げ状態で支持されている。セファロ撮影用頭部固定装置144には、セファロ撮影用のX線検出器128bが組込まれている。
頭部固定装置用アーム141の延在方向中間部には、操作パネル装置158を含む本体制御部150が設けられている。なお、図3において、本体制御部150の操作パネル装置158を、吹出し内に拡大して描いた。
頭部固定装置用アーム141を昇降可能に構成してもよい。例えば、頭部固定装置用アーム141の基端部すなわち頭部固定装置用アーム141の支柱121近傍の部分を適宜の案内部材によって支柱121の長手方向に沿って移動可能とする。この状態で、支柱121の背後で、頭部固定装置用アーム141の基端部を昇降部122に対して昇降可能に連結する。連結は、例えば、頭部固定装置用アーム141の基端部にモータ等の動力源を固定し、このモータの回転軸にねじ軸を連結し、昇降部122にはねじ軸の受け部材(ねじ孔が形成された部材)を固定し、ねじ軸の受け部材にねじ軸を螺合させる構成を採用することができる。このように構成することで、頭部固定装置用アーム141の基端部に固定したモータを回転駆動させることで、昇降部122に対して頭部固定装置用アーム141の基端部、ひいては頭部固定装置用アーム141及び頭部固定装置142の全体を昇降させることができる。
このように構成すると、支柱121に対する昇降部122の上昇と昇降部122に対する頭部固定装置用アーム141の下降を同時に同じ変位量で行うことで、頭部固定装置142及び当該頭部固定装置142に固定した頭部Pの高さを一定に維持しながら頭部Pに対して水平アーム123、旋回支持部124を上昇させることができる。支柱121に対する昇降部122の下降と昇降部122に対する頭部固定装置用アーム141の上昇を同時に同じ変位量で行うことで、頭部固定装置142及び当該頭部固定装置142に固定した頭部Pの高さを一定に維持しながら頭部Pに対して水平アーム123、旋回支持部124を下降させることができる。また、頭部固定装置用アーム141、頭部固定装置142、水平アーム123及び旋回支持部124を同時に上昇又は下降させることもできる。また、水平アーム123及び旋回支持部124の高さを一定に維持した状態で、頭部固定装置用アーム141及び頭部固定装置142を上昇又は下降させてその高さを調整することができる。また、頭部固定装置用アーム141及び頭部固定装置142は、昇降部122の昇降とは無関係な独立した昇降機構によって昇降駆動されてもよい。
X線撮影を行う際には、頭部固定装置142によって被写体である頭部Pを固定した状態で、所望の撮影モードに応じて、旋回支持部124を停止或は回転させた状態でX線撮影を行う。これにより、X線CT撮影画像(単にX線CT画像、CT画像とも呼ぶ)、パノラマ撮影画像(単にパノラマ画像とも呼ぶ)等を生成するのに必要なX線投影画像データを得ることができる。例えば、旋回支持部124を旋回させた状態でX線撮影を行うことで、X線CT撮影画像を生成するのに必要なX線CT撮影投影画像データを得ることができる。X線CT撮影投影画像データは、撮影領域RをX線コーンビームで多方向から照射して得た1方向ごとの投影画像データであり、フレーム画像データの形で収集することができる。また、旋回支持部124を一定範囲回転させた状態でX線撮影を行うことで、パノラマ撮影投影画像データを得て、再構成の画像処理を行うことでパノラマ撮影画像を得ることができる。パノラマ撮影投影画像データは、歯列弓を含む顎領域をz方向に伸延する細隙X線ビームで照射位置を刻々と変更しつつ多方向から照射して得た1方向ごとの投影画像データであり、その1つ1つをフレーム画像データの形で収集することができる。X線CT撮影装置110は、その他、セファロ撮影画像、擬似口内法撮影画像を得るためのX線撮影を行ってもよい。例えば、旋回支持部124を停止させた状態で前記支柱121から水平方向に延びるセファロ撮影用頭部固定装置垂下用アーム143に支持されたセファロ撮影用頭部固定装置144に頭部Pを位置固定させてX線検出器128からX線照射してX線撮影を行うことで、セファロ撮影画像を得ることができる。なお、パノラマ撮影画像の撮影機能、セファロ撮影画像の撮影機能等は省略されることもある。
本体制御部150は、撮影本体部120に対する各指示を受付け可能に構成されると共に、撮影本体部120の各動作を制御可能に構成されている。本体制御部150は、前記支柱121から水平方向に延びる頭部固定装置用アーム141に固定されている。この本体制御部150には、前記本体制御部150からの各種情報を表示すると共に本体制御部150に対する各種指令を受付けるための操作パネル装置158が設けられている。ここでは、操作パネル装置158は、液晶表示パネル等の表示装置(表示部)158aと、表示装置の表示画面上に配設されたタッチパネル等のタッチ検出部158bとを備える。表示画面に対する利用者のタッチ操作をタッチ検出部にて検出することで、本X線CT撮影装置110に対する操作を受付け可能に構成されている。操作パネル装置158の近く等に、押しボタン等が設けられていてもよい。また、表示装置と、利用者の操作を受付ける入力装置とは別々に設けられていてもよい。
撮影本体部120の上記各部は、防X線室146内に収容されている。この防X線室146の壁の外側には、前記本体制御部150にX線照射指示を行うデッドマンスイッチと呼ばれる押しボタンスイッチが設けられている。
X線画像処理装置180は、例えばコンピュータ等で構成された情報処理本体部182を備えており、通信ケーブルによって前記撮影本体部120との間で各種データを送受信可能に接続されている。但し、撮影本体部120とX線画像処理装置180との間で、無線通信でデータの送受が行われてもよい。この情報処理本体部182は、撮影本体部120から送信されたデータに基づいて各種画像処理等を実行することができる。
X線画像処理装置180には、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置で構成される表示部188、および、キーボードやマウス等で構成される操作部189が接続されている。オペレータは、表示部188に表示された文字や画像の上で、マウス等を介したポインタ操作等によって、情報処理本体部182に対して各種指令を与えることができる。なお、表示部188は、タッチパネルで構成されていてもよい。
本X線画像処理装置180の処理の一部又は全部が、本体制御部150によって実行されてもよい。あるいは、本体制御部150の処理の一部又は全部がX線画像処理装置180によって実行されてもよい。
<X線CT撮影装置のブロック図について>
図5はX線CT撮影装置110の電気的構成を示すブロック図である。
撮影本体部120の本体制御部150は、撮影本体部120のX線撮影動作を制御するものであり、少なくとも1つのプロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)151、RAM(Random Access Memory)152、記憶部153、入出力部154a、154b、操作入力部155、画像出力部156等が、バスライン157を介して相互接続されたコンピュータによって構成されている。記憶部153は、フラッシュメモリ、あるいは、ハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されている。記憶部153には、X線撮影に関する諸指示を受付けると共に当該諸指示に従って旋回駆動機構130、X線発生器126、X線規制部129等を制御してX線撮影動作を制御する撮影プログラム153aが格納されている。
また、記憶部153には、頭部Pにおける撮影領域Rの位置が設定された際に、設定された撮影領域Rの位置に応じてX線検出器128の旋回範囲を決定する際に参照される参照テーブル153bが格納されている。参照テーブル153bは、撮影領域Rの位置に、X線検出器128の旋回範囲等を対応付けたテーブルである。
参照テーブル153bは旋回支持部124、X線発生器126、X線検出器128を要素とする撮像系の駆動制御情報を構成する情報の1つである。参照テーブルは、例えば機構上の旋回軸X1の座標情報や、旋回支持部124を機構上の旋回軸X1の軸周りに旋回させる旋回量の情報を含む。機構上の旋回軸X1の座標情報は、機構上の旋回軸X1を滞留させる位置の情報であってもよいし、機構上の旋回軸X1を移動させる軌道の軌道情報であってもよい。
参照テーブル153bにおいては、頭部Pにおける撮影領域Rの位置、標準的(例えば、標準的な成人)な頭部Pの形状、大きさ、機構上の旋回軸X1に対するX線発生器126及びX線検出器128の各距離等を考慮して、X線発生器126及びX線検出器128の旋回時にそれらが頭部Pに接触しないようなX線検出器128の旋回範囲等が、理論的、実験的に決定されている。撮影領域Rの位置に応じた旋回範囲等の例については後述する。RAM152は、CPU151が所定の処理を行う際の作業領域として供される。入出力部154aは、本撮影本体部120の旋回支持部124を旋回させる旋回機構132のモータ、旋回支持部124を移動させる旋回軸移動機構134のモータ、X線発生器126及びX線検出器128、128b、X線規制部129等に接続されており、入出力部154bは、X線画像処理装置180と通信可能に接続されている。また、操作入力部155は、操作パネル装置158のタッチ検出部158bに接続されており、画像出力部156は操作パネル装置158の表示部158aに接続されている。
この本体制御部150では、撮影プログラム153aに記述された手順及びタッチ検出部158bを通じて受付けられた指示等に従って、CPU151が、演算処理を行うことにより、被写体の頭部Pの歯列弓の一部に対する撮影領域Rの位置の設定を受付ける撮影領域位置設定部151a及びX線CT撮影等のX線撮影を行う際に旋回機構132及び旋回軸移動機構134を制御する旋回制御部151bとしての機能を実行する。そして、CPU151が、旋回機構132及び旋回軸移動機構134を制御して、X線発生器126及びX線検出器128を頭部Pの周りに旋回させつつ、頭部Pを通過してX線検出器128、128bで検出されたX線の検出結果を得ることができる。
なお、上記撮影プログラム153a及び参照テーブル153bは、予め記憶部153に格納されているものであるが、CD−ROMあるいはDVD−ROM、外部のフラッシュメモリ等の記録媒体に記録された形態で、あるいは、ネットワークを介した外部サーバからのダウンロードなどにより、既存のX線CT撮影装置又は当該X線CT撮影装置の制御を行う情報処理本体部に提供されることもあり得る。
X線画像処理装置180は、撮影本体部120からの撮影データに基づいてX線の画像データ185bを生成するものであり、情報処理本体部182は、少なくとも1つのプロセッサとしてのCPU183、RAM184、記憶部185、入出力部186、操作入力部189a及び画像出力部188a等が、バスライン182aを介して相互接続されたコンピュータによって構成されている。記憶部185は、フラッシュメモリ、あるいは、ハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されており、情報処理本体部182が、撮影本体部120からの撮影データに基づいてX線の画像データ185bを生成する画像処理プログラム185a及びX線の画像データ185b等を格納している。記憶部185には、X線の画像データ185bと頭部Pの特定情報(患者の特定情報)等を対応付けた管理データが格納されていてもよい。また、X線画像処理装置180が本体制御部150から撮影条件に関するデータ等を受取り、生成したX線の画像データ185bに当該撮影条件に関するデータ等を対応付けて記憶部185に記憶するようにしてもよい。RAM184は、CPU183が所定の処理を行う際の作業領域として供される。入出力部186は、撮影本体部120と接続されており、当該入出力部186を介して撮影本体部120で得られたX線撮影データが入力される。また、操作入力部189aは操作部189に接続されており、画像出力部188aは表示部188に接続されている。
記憶部185には、撮影本体部120からの撮影データを再構成前の投影画像データ185cとして保存してもよい。投影画像データ185cは、全く未加工のロウデータの場合も、再構成用にある程度加工した前処理データの場合もありうる。投影画像データ185cは、例えば前述のフレーム画像データである。上述の頭部Pの特定情報(患者の特定情報)等を対応付けた管理データ等および/または当該撮影条件に関するデータ等を画像データ185b又は投影画像データ185cに対応付けて記憶部185に記憶するようにしてもよい。
情報処理本体部182では、画像処理プログラム185aに従って、CPU183が、演算処理を行うことにより、撮影本体部120で得られたX線撮影データに基づいて所望のX線画像データを生成する画像処理部としての処理を実行する。すなわち、本体制御部150を通じて受付けられた指示に応じて、CT画像、パノラマ撮影画像、セファロ撮影画像等のデータを生成する。記憶部185は、生成されたX線の画像データ185bを記憶する。
なお、上記各部において実現される一部あるいは全部の機能は、専用の論理回路等でハードウェア的に実現されてもよい。また、上記各部において実現される一部あるいは全部の機能は、1つのプロセッサによって統合して処理されてもよいし、複数のプロセッサによって適宜分散して処理されてもよい。
<撮影領域Rの位置の設定及び撮影中の旋回処理について>
旋回制御部151bが撮影プログラム153aに基づいて行う制御について、図6に示すフローチャートを参照して、撮影領域Rの位置の設定及び撮影中の旋回処理を中心に説明する。
CT撮影を行う旨が設定されると、ステップS11において、撮影領域Rの位置の設定操作が受付けられる。
ここで、撮影領域Rの位置の設定操作の受付例について説明する。図7は操作パネル装置158における表示例を示す図である。操作パネル装置158の表示部158aには、撮影モードを選択するための画像として、パノラマ撮影モード選択用のパノラマ選択画像191a(“Pan”の文字参照)、セファロ撮影モード選択用のセファロ選択画像191b(“Ceph”の文字参照)、CT撮影モード選択用のCT選択画像191c(“CT”の文字参照)が表示されている。“Pan”、“Ceph”、“CT”は文字ではあるが、文字として視認可能な形で表示され、その意味で文字形状の画像である。文字の形を取らずに各撮影を象徴的に表す画像としてもよいし、双方を併用してもよい。図示の状態にては、CT撮影モードがCT選択画像191cの使用によって選択されている。表示部158aには、撮影条件を設定するための画像として、撮影領域設定用画像194が表示されている。ここでは、撮影領域設定用画像194は、表示部158aの右側に表示されている。表示部158aには、イラスト画像195が表示されている。ここでは、イラスト画像195は、表示部158aのうちパノラマ選択画像191a、セファロ選択画像191b及びCT選択画像191cの下側に表示されている。このイラスト画像195は、撮影領域Rを示すための画像であり、ここでは、歯列弓がイラスト画像として表示されている。
上記表示部158aには、その表示領域に対するタッチ位置を検出する2次元位置検出部としてのタッチ検出部158bが設けられている。
操作者がパノラマ選択画像191a、セファロ選択画像191b及びCT選択画像191cのいずれかをタッチすると、当該タッチ操作がタッチ検出部158bによって検知される。これにより、本体制御部150において、パノラマ撮影を行うか、セファロ撮影を行うか、或は、X線CT撮影を行うかが受付けられる。
また、操作者が撮影領域設定用画像194をタッチすると、図8に示すように、そのタッチ操作に応じて、撮影領域設定用画像194に対応する複数の撮影領域選択画像194a、194b、194c、194d、194eが表示される。複数の撮影領域選択画像194a、194b、194c、194d、194eは、相互に大きさ(直径、高さ)等が異なる領域を示している。利用者が複数の撮影領域選択画像194a、194b、194c、194d、194eのいずれかに選択的にタッチすることで、撮影領域の設定操作が受付けられる。
図8に示す例では、撮影領域選択画像194a、194bは、直径が40mmである撮影領域Rを選択するための画像である。撮影領域選択画像194aは撮影領域Rの高さが80mmであることを示し、撮影領域選択画像194bは、撮影領域Rの高さが40mmであることを示している。すなわち、各撮影領域選択画像において、直径は上段に、高さは下段に表示され、数字の値はミリメートルの単位で大きさを示す。撮影領域Rの高さに拘らず、撮影領域Rが直径40mmであるということは、歯列弓の一部を領域指定することを示している。従って、撮影領域選択画像194a、194bは、歯列弓の一部を対象としてX線CT撮影を行うことを受付けるための画像であるといえる。
また、撮影領域選択画像194c、194d、194eは、直径が80mmである撮影領域Rを選択するための画像である。また、撮影領域選択画像194c、194d、194eは、それぞれ撮影領域Rの高さが80mm、50mm、40mmであることを示している。撮影領域Rの高さに拘らず、撮影領域Rが直径80mmであるということは、体軸の軸方向から見た歯列弓の全体を領域指定することを示している。従って、撮影領域選択画像194b、194c、194dは、歯列弓の全体を対象としてX線CT撮影を行うことを受付けるための画像であるといえる。
高さが80mmの場合は、例えば上下双方の顎領域を対象とし、高さが50mmの場合は、例えばフランクフルト平面が水平になるように頭部Pを位置付けた場合の上下の一方の顎領域を対象とし、高さが40mmの場合は、例えばカンペル平面が水平になるように頭部Pを位置付けた場合の上下の一方の顎領域を対象とする。
今、撮影領域選択画像194bを選択したとすると、図7において、向って右側の上下についてほぼ中央に示したように、直径40mm、高さ40mmの撮影領域が選択されたことが示されるようになる。
図7に戻って、イラスト画像195には、撮影領域画像195aが重畳されて表示される(直径が80mmの撮影領域Rを選択した場合は撮影領域画像195bが重畳表示される。)。撮影領域画像195a、195bとしては、上記撮影領域設定用画像194を介して設定されたものに応じた大きさの円が表示される。撮影領域画像195aは、歯列弓の一部を対象とする撮影領域Rが選択された場合に表示される画像であり、撮影領域画像195bは、歯列弓全体を対象とする撮影領域Rが選択された場合に表示される画像である。例えば、図7に示す例で、直径40mm、高さ40mmの撮影領域が選択されることによって撮影領域画像195aが表示された場合、操作者がイラスト画像195の所望の位置をタッチすることで、撮影領域画像195aが歯列弓のいずれかの一部を指定する位置に移動する。これにより、歯列弓の任意の位置(例えば、前歯領域、右の臼歯領域、左の臼歯領域)に撮影領域Rを指定することができる。
撮影領域画像195aをポインタ等で指定し、その撮影領域画像195aの指定領域及び周辺領域を拡大表示し、その後、ドラックアンドドロップのように撮影領域画像195aを所望位置まで移動して領域指定できるようにしてもよいし、撮影領域画像195aをポインタ等で指定し、その撮影領域画像195aの指定領域及び周辺領域を拡大表示した上で別途移動キーで撮影領域画像195aを移動するようにしてもよい。画面上、静止した撮影領域画像195aに対してイラスト画像195の方を同様に移動させて領域指定できるようしてもよい。
撮影領域Rの指定が受付けられると、旋回軸移動機構134の駆動によって旋回支持部124が撮影領域Rの中心Aを旋回中心として旋回できる位置に移動され、旋回機構132によって旋回支持部124の旋回軸X1の軸周りの角度が撮影開始に向けて定められる。
歯列弓の一部を対象とする撮影領域Rが選択され、かつ、右の臼歯領域又は左の臼歯領域に撮影領域Rが指定された場合が、頭部Pの左右のいずれかに偏った位置にある歯列弓の一部を撮影領域RとしてX線CT撮影を行う場合である。
上記例では、タッチパネルを利用して撮影モードの指定、撮影領域Rの指定等を行う例で説明したが、物理的に操作を受付けるスイッチ(押ボタン)等を介して各種設定を受付けるようにしてもよい。
このように、ステップS11において、撮影領域位置設定部151aは、操作パネル装置158を通じて頭部Pの歯列弓の一部に対する撮影領域Rの位置の設定操作を受付ける。ここでは、撮影領域位置設定部151aは、操作パネル装置158を通じて、撮影領域選択画像194a、194bのいずれかの選択操作、及び、イラスト画像195に対する撮影領域画像195aを利用した位置設定の受付により、撮影領域Rの位置設定を受付ける。特に、頭部Pの歯列弓Arの一部の領域である局所領域をX線CT撮影の対象とする撮影領域Rの位置の設定を受付ける。
次ステップS12では、設定された撮影領域の位置に応じて旋回範囲を決定する。旋回範囲は、X線検出器128を撮影領域Rの中心A周りにどのような範囲で旋回させるかを示す。かかる旋回範囲は、例えば、X線発生器126とX線検出器128の一方又は双方を撮影領域Rの中心A周りにどの角度からどの角度の範囲で旋回させるか等によって表される。本実施形態においては、上記第1実施形態で説明したように、旋回制御部151bが旋回駆動機構130を駆動制御してX線による撮影領域RのX線CT撮影を行う間、X線発生器126とX線検出器128とを頭部Pの周りに270°以下(ここでは180゜)の旋回範囲で旋回移動させて、かつ、X線検出器128が頭部Pの周囲のうち、撮影領域Rが頭部P中で偏在する側を通過し、X線発生器126が頭部Pの周囲のうち、撮影領域が偏在する側の反対側を通過し、X線CT撮影中、X線検出器128が旋回移動によって弧のX線検出軌道Or(以下の説明では、Orに(left)、(right)、(mid)を付記して、左臼歯用、右臼歯用、前歯用の各軌道として区別する場合がある)を形成する例で説明する。
第1実施形態で説明したように、旋回駆動機構130は、旋回支持部124を駆動する際、270以下の旋回範囲として、180゜又は180゜にX線ビームの照射の拡がり角度(後述する図15の角度β参照)を加えた角度の旋回範囲でX線発生器126とX線検出器128とを頭部Pの周りに旋回移動させてもよい。
なお、X線CT撮影装置110がX線発生器126及びX線検出器128を270゜以下の範囲で旋回させるモードと、X線発生器126及びX線検出器128を360゜以上旋回させるモードとの間で切替え可能な構成も想定でき、この場合については、後の実施形態で説明する。
上記設定された撮影領域の位置に応じた旋回範囲の決定は、例えば、図9に示すような参照テーブルを参照して行うことができる。すなわち、撮影領域の位置に対して旋回範囲を対応付けた参照テーブルが事前に登録されている。旋回範囲としては、例えば、撮影領域Rの中心A周りにおいてX線検出器128が旋回を始める角度と旋回を終了する角度とが定義される。例えば、図10に示すように、撮影領域Rの中心Aから−Y方向を0゜として、X線検出器128が右回りに回転する角度をαとする(角度範囲を範囲ααとして、ααに(left)、(right)、(mid)を付記して、左臼歯用、右臼歯用、前歯用の角度範囲を区別してもよい。)。図9に示す例においては、左臼歯に対して角度範囲αα(left)すなわち角度α(left1)〜α(left2)が対応付けられている。α(left1)はX線検出器128が回転を始める角度であり、α(left2)はX線検出器128が回転を終了する角度である。右臼歯に対して角度範囲αα(right)すなわち角度α(right1)〜α(right2)が対応付けられている。α(right1)はX線検出器128が回転を始める角度であり、α(right2)はX線検出器128が回転を終了する角度である。図9に示す例では、撮影領域の位置を前歯としたときに対しても旋回範囲(角度範囲αα(mid))として角度α(mid1)〜α(mid2)が対応付けられている。角度α(mid1)はX線検出器128が回転を始める角度であり、角度α(mid2)はX線検出器128が回転を終了する角度である。
左臼歯に対応付けられた旋回範囲α(left1)〜α(left2)は、X線検出軌道Or(left)の中央部が正中Mcに対し左側に偏って位置するように設定されている。同様に、右臼歯に対応付けられた旋回範囲α(right1)〜α(right2)は、X線検出軌道Or(right)の中央部が正中Mcに対し右側に偏って位置するように設定されている。
また、前歯に対応付けられた旋回範囲α(mid1)〜α(mid2)は、X線検出軌道Or(mid)の弧の中央部が、正中Mcを含む面上で頭部Pの前側に位置するように設定されている。
上記各旋回範囲は、X線検出器128の旋回範囲を規定しており、これにより、旋回支持部124の旋回範囲を規定しているともいえる。
設定された撮影領域Rに基づいて、撮影領域Rが左臼歯であるか、右臼歯であるか、前歯であるかが判定され、その判定結果に基づいて、対応する旋回範囲が決定される。設定された撮影領域Rに基づく撮影領域Rの位置(左臼歯、右臼歯又は前歯)の判定は、例えば、設定された撮影領域Rの中心Aの座標が予め設定された前歯領域及び臼歯領域のいずれに属するかを判断することで判定することができる。参照テーブルにおける撮影領域は、歯列弓に対してより多数の領域に分割されていてもよい。
次ステップS13では、決定された旋回範囲に基づく旋回制御を行ってCT撮影を行う。旋回制御部151bが旋回駆動機構130を駆動制御してX線による撮影領域RのX線CT撮影を行う間、X線発生器126とX線検出器128とを頭部Pの周りに270°以下の旋回範囲で旋回移動させて、かつ、X線検出器128が頭部Pの周囲のうち、撮影領域Rが頭部P中で偏在する側を通過し、X線発生器126が頭部Pの周囲のうち、偏在する側の反対側を通過し、X線CT撮影中、X線検出器128が旋回移動によって弧のX線検出軌道Orを形成するようにする。
この際、上記したように、撮影領域Rが頭部Pの正中Mcに対して左右のいずれかに偏った位置にある場合には、X線検出軌道Orの弧の中央部OrMが、正中Mcに対し、撮影領域Rが偏っている側と同じ側に偏って位置するように、旋回支持部124の旋回範囲が設定されている。なお、上記X線検出軌道Orは、部分的に撮影領域Rに向けて突出するように接近するようなことがない弧の軌道すなわち撮影領域Rに向けて凹となる部分を有しない弧の軌道である。換言すれば、X線検出軌道Orは、外周側に凸となる曲線が連続する弧の軌道である。
好ましくは、撮影領域Rの中心Aに対する頭部Pの表面の最大距離LDを想定したとき、X線検出器128の撮影領域Rの中心Aに対する旋回の径qが、最大距離LDよりも小さく設定される。すなわち、X線検出器128を撮影領域Rに対してX線発生器126よりも近い側に位置させた状態を保ちつつ、X線発生器126及びX線検出器128を頭部Pの周りに旋回させる。この場合に、X線検出器128の撮影領域Rの中心Aに対する旋回の径qが、最大距離LDよりも小さくなるようにする。
ここでは、撮影領域Rが左臼歯である場合、X線発生器126から発生したX線を頭部Pに照射してX線CT撮影を行う際に、X線検出器128が頭部Pの左側に偏った範囲を旋回するようにする。また、撮影領域Rが右臼歯である場合、X線発生器126から発生したX線を頭部Pに照射してX線CT撮影を行う際に、X線検出器128が頭部Pの右側に偏った範囲を旋回するようにする。また、撮影領域Rが前歯である場合、X線発生器126から発生したX線を頭部Pに照射してX線CT撮影を行う際に、X線検出器128が頭部Pの左右方向中心から左右に均等の角度範囲を旋回するようにする。
これらの旋回動作を、図11及び図12を参照してより具体的に説明する。
この場合、図11に示すように、歯列弓Arの一部を対象とする撮影領域Rが頭部Pの正中Mc上に位置する場合を想定する。つまり、歯列弓Arの一部である前歯領域が撮影領域Rとされた場合である。この場合、頭部Pの表面のうち撮影領域Rから最も離れた部分は、頭部Pの後部である。X線発生器126は、X線検出器128よりも撮影領域Rから離れており、このX線発生器126が頭部Pの後ろ側を旋回する。例えば、X線発生器126及びX線検出器128を180゜旋回させる場合を考えると、上記α(mid1)を90゜、α(mid2)を270゜として、X線検出器128を90゜から270゜のX線検出軌道Orの範囲で180゜旋回させる。この旋回範囲において、X線検出軌道Orの中央部OrMは正中Mcを含む面上において頭部Pよりも前側に位置する。旋回角度は、180°にX線ビームのファン角を加えた旋回角度でもよい。画像処理の観点からは180°にX線ビームのファン角を加えた旋回角度が好適である。この点については、後述するように旋回範囲を頭部Pの左右いずれかに偏らせた場合も同様である。かかる範囲でX線発生器126及びX線検出器128を旋回させても、頭部Pと接触させず旋回させることができる。
一方、頭部Pの前後軸から左右いずれかに偏った位置にある歯列弓Arの一部を撮影領域RとしてX線CT撮影を行う場合を想定する。図11においては、2点鎖線で示す頭部Pにおいて、歯列弓Arのうち左に偏った位置に撮影領域Rが指摘されている。
この場合、撮影領域RはX線発生器126よりもX線検出器128側に近い側に位置しているので、X線検出器128が頭部Pの右側を旋回する際、X線検出器128が頭部Pに接触する恐れがある。
そこで、図12に示すように、X線検出器128が、歯列弓Arの一部が偏っている側(ここでは左側)と同じ側に偏った範囲のX線検出軌道Orを、旋回するようにする。ここでは、平面視で見た場合、X線検出器128は、頭部Pの前部中央から左側に偏った範囲を中心として、270゜以下(ここでは、180゜旋回)の範囲のX線検出軌道Orで旋回する。例えば、α(left1)を40゜、α(left2)を220゜として、X線検出器128を40゜から220゜の範囲で180゜旋回させる。この場合、X線検出軌道Orの中央部OrMは、正中Mcに対して左側に偏ることになる。X線検出器128は頭部の左の後ろ寄りの位置から頭部の前側を通過して頭部の右の前寄りの位置までの軌道を取る。図11に実線で示す頭部Pについて、X線検出器128の軌道の占める範囲は、左右均等であるのに対して、図12に実線で示す頭部Pについて、X線検出器128の軌道の占める範囲は、右が半分未満であり、左が半分を超えている。
X線発生器126は、頭部の右の前寄りの位置から頭部の後側を通過して頭部の左の後ろ寄りの位置までの軌道を取る。すなわち、X線発生器は、X線検出器128とは逆の側に偏った範囲を旋回する。無論、出発位置と終了位置を入れ換えて逆回りとしてもよい。
これにより、X線検出器128が、頭部Pの表面のうち撮影領域Rから遠い右部、及び、右斜め後部の外側を旋回しなくなり、X線検出器128が頭部Pと接触し難くなる。X線発生器126は、頭部Pの表面のうち撮影領域Rから遠い右部、及び、右斜め後部の外側を旋回するが、X線検出器128よりも撮影領域Rから遠く離れているので、頭部Pとは接触し難い。
なお、図12において2点鎖線で示す頭部Pのように、X線検出器128が、歯列弓Arの一部が偏っている側(ここでは左側)と反対側(ここでは右側)に偏った範囲を、旋回すると、X線検出器128は、頭部Pと接触し易くなる。
そこで、図12とは逆に、歯列弓Arの一部が右側に偏っている場合、図13に示すように、X線検出器128が、歯列弓Arの一部が偏っている側(ここでは右側)と同じ側に偏った範囲のX線検出軌道Orを、旋回するようにする。例えば、α(right1)を130゜、α(right2)を310゜として、X線検出器128を130゜から310゜の範囲で180゜旋回させる。この場合、X線検出軌道Orの中央部OrMは正中Mcに対して右側に偏ることになる。これにより、上記と同様に、X線検出器128が、頭部Pの表面のうち撮影領域Rから遠い左部、及び、左斜め後部の外側を旋回しなくなり、X線検出器128が頭部Pと接触し難くなる。
このように、頭部Pの前後軸から偏った位置にある歯列弓Arの一部を撮影領域RとしてX線CT撮影を行う場合に、比較的頭部Pに近いX線検出器128が、歯列弓Arの一部が偏っている側と同じ側に偏った範囲を旋回することで、X線検出器128が頭部Pと接触することを抑制できる。特に、X線検出器128が270゜以下の範囲で旋回する場合に、撮影領域Rの周りでX線検出器128が旋回しない範囲を設けることができる。
以下、X線CT撮影を行う際に、X線検出器128が存在し得る検出器存在域とX線検出器128が存在し得ない安全域からの設定例を説明する。
図32によって、X線CT撮影中のX線検出器128の移動によって形成される検出移動跡ODを説明する。検出移動跡ODは、旋回支持部124が旋回開始位置STから旋回終了位置EDまで移動する際、すなわち、X線検出器128が旋回開始位置STdから旋回終了位置EDdまで移動する際において、当該X線検出器128が描く軌跡である。図32において、検出移動跡ODは、斜線を付した領域で示される。図示の例では、旋回支持部124及びX線検出器128が180゜旋回した場合の検出移動跡ODを示している。この場合、検出移動跡ODは、U字形状に形成されている。このため、X線検出器128の旋回中心の周りを見ると、円弧形状の閉塞領域CAと解放領域OAとが存在することになる。閉塞領域CAがU字形状であるため、閉塞領域CAの内側領域CAIもU字形状である。解放領域OAは、方角的には、閉塞領域CAに対し、X線発生器126の円弧状の移動軌跡の中央部がある方向に位置する。X線検出軌道Orは、内側領域CAIが頭部表面に接しないように上述のとおり設定される。
図33に別の設定例を示す。旋回支持部124の旋回角度すなわちX線検出器128の旋回角度は、180°にX線ビームのファン角faを加えた旋回角度である。ファン角faは、撮影領域Rのx方向の両端がちょうど収まる開度に設定される。図示の例では、図32に示す180°の旋回範囲に対し、旋回開始位置STにおいて旋回の負の方向にfa/2分が加えられ、旋回終了位置EDにおいて旋回の正の方向にfa/2分が加えられている。
図34によってX線検出器128の存在する検出器存在域とX線検出器128が存在しない安全域の説明をする。
X線発生器126とX線検出器128が、ある地点を旋回中心CTRとして旋回する。旋回中心CTRはX線CT撮影時には撮影領域Rの中心Aの位置に置かれる。X線発生器126から発して旋回中心CTRを通過するX線CTBはX線検出器128で受光される。図示の状態でX線検出器128の存在する領域が検出器存在域DTAである。
X線検出器128のうち旋回中心CTRに対向する面である検出対向面128fが形成する面を検出器面128fsとし、検出器面128fsと旋回中心CTRの間にある、X線検出器128が存在しない領域を安全域SFAとする。図34においては、安全域SFAは、斜めのクロスハッチを付した領域である。安全域SFA内で、旋回中心CTRと検出器面128fsとの間の距離DTDは単一ではなく、広がりをもって存在する(個別の距離要素DTDeとしては、例えば図示の距離要素DTDe1や距離要素DTDe2などがある。)。
図35は図33の設定例の検出器存在域と安全域を示す図である。
X線検出器128の旋回移動に伴い、検出移動跡ODと同じ領域が検出器存在域DTAとして形成される。
検出器面128fsはX線検出器128の旋回移動に伴う検出対向面128fの旋回移動に伴いZ方向から見てU字形状に形成される。
安全域SFAは検出器面128fsに囲繞された空間として形成される。
安全域SFA内の旋回中心CTRと頭部表面との間の距離をDHとする。距離DHは単一ではなく、広がりのある範囲をもって存在する(個別の距離要素DHeとしては、例えば図示の距離要素DHe1などがある。)。
距離DTD(全ての距離要素DTDe)と距離DH(全ての距離要素DHe)とについて、DTD>DHとなるように前述の角度αが定められる。
ただし、距離DHと距離DTDとを比較するときは、距離DTDに含まれる距離要素DTDeの測定方向のベクトルと距離DHに含まれる距離要素DHeの測定方向のベクトルを揃えるようにして比較する。
安全域SFAの定め方は必ずしも一義的ではない。例えば、図36のように、検出器存在域DTAによって、検出器存在域DTAの端と端を結んで囲まれた領域を安全域SFAとすることもできる。
すなわち、広い概念では安全域SFAは検出器存在域DTAの範囲外に位置付けされた頭部Pの周辺領域と考えてよく、安全域SFAを検出器存在域DTAで囲繞された領域と考えてもよい。
ただし、安全域SFAは少なくとも図35に示した安全域SFAを含むようなものである。
ある撮影領域Rに対応する旋回範囲を旋回範囲RRとすると、旋回範囲RRより検出器存在域DTAが定まり、頭部Pと撮影領域Rとの位置関係より、頭部Pが安全域SFAと重なり、検出器存在域DTAと重ならない角度αが設定される。
角度αは、例えば、演算の上で頭部Pと頭部Pに対して位置指定した撮影領域Rとに対し、上記の検出器面128fsを撮影領域Rの中心Aの位置においた旋回中心CTRを中心に回転させるシミュレーションを行い、頭部Pの表面が安全域SFA内に収まる範囲を見出すようにして定めることができる。
そして、X線発生器126及びX線検出器128が頭部Pの撮影領域Rの周りを旋回することで、当該撮影領域RのX線CT画像を生成するのに必要なX線投影画像データが得られ、当該データに基づいてX線CT画像が生成される。
270°以下の旋回範囲でX線CT撮影を行う場合に、撮影領域位置設定部151aで設定受付された撮影領域Rの位置に応じて機構上の旋回軸X1の位置を移動させ、機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aの位置に固定してX線CT撮影を行うことが好ましい。すなわち、撮影領域位置設定部151aで撮影領域Rの位置(例えば左側臼歯又は右側臼歯)が設定受付けられると、本装置110のXYZ座標系における撮影領域Rの中心Aの位置が定る。そこで、旋回制御部151bは、旋回軸移動機構134を制御して、機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aに移動させる。そして、機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aの位置に固定してX線CT撮影を行うことができる。
撮影領域Rとして前歯が設定受付された場合にも、同様に、機構上の旋回軸X1の位置を移動させ、機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aの位置に固定してX線CT撮影を行ってもよい。
もっとも、機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aの位置に固定してX線CT撮影を行うことは必須ではなく、機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aの周りに旋回させつつ、X線CT撮影を行ってもよい。
<効果等>
以上のように構成されたX線CT撮影装置110によると、撮影領域Rが頭部Pの正中Mcに対して左右のいずれかに偏った位置にある場合、X線検出軌道Orの中央部OrMが、正中Mcに対して、撮影領域Rが偏っている側と同じ側に偏って位置するように、旋回支持部124の旋回範囲を決定するため、X線発生器126及びX線検出器128が頭部Pと接触することを抑制できる。また、上記範囲において、X線検出器128を撮影領域Rになるべく近づけることができるため、なるべく鮮明なX線CT画像を得ることができる。
また、X線検出軌道Orが撮影領域Rに向けて凹となる部分を有しない弧の軌道であるため、X線検出器128が内外方向にぶれ難くなり、鮮明なX線CT画像を得やすい。
また、撮影領域Rが前歯領域を対象とする場合に、X線検出軌道Orの弧の中央部OrMが、正中Mcを含む面上で頭部Pの前側に位置するように、旋回支持部124の旋回範囲を設定するため、前歯をX線CT撮影する場合にも、X線発生器126及びX線検出器128が頭部Pと接触することを抑制できる。
また、X線検出器128の撮影領域Rの中心Aに対する旋回の径が、最大距離LDよりも小さく設定されているため、X線検出器128をなるべく頭部P近くで旋回させることが可能となり、なるべく鮮明なX線CT画像を得ることができる。
また、旋回駆動機構130は、機構上の旋回軸X1を、機構上の旋回軸X1の軸方向に交差する方向に移動させる旋回軸移動機構134を含むため、機構上の旋回軸X1を一定位置に維持した状態で旋回支持部124を旋回させたり、旋回機構132が旋回支持部124を機構上の旋回軸X1を中心として旋回させるのと同期して、旋回軸移動機構134が機構上の旋回軸X1を移動させて、旋回支持部124に合成運動を行わせることにより、X線発生器126とX線検出器128とを撮影領域Rの中心A周りに旋回させたりすることで、X線発生器126及びX線検出器128の旋回軌道を調整することが可能となる。
ここでは、270°以下の旋回範囲でX線CT撮影を行う場合に、撮影領域位置設定部151aで設定受付された撮影領域Rの位置に応じて機構上の旋回軸X1の位置を移動させ、機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aの位置に固定してX線CT撮影を行う。これにより、X線発生器126及びX線検出器128が安定した軌道で旋回することが可能となり、なるべく鮮明なX線CT画像を得ることができる。
<変形例>
第1及び第2実施形態を前提とする変形例について説明する。
上記第1及び第2実施形態においては、X線発生器126及びX線検出器128の旋回角度が270゜以下であるため、撮影領域Rの近くを通るX線検出器128の旋回範囲を調整することで、X線検出器128と頭部Pとの接触回避を行う構成を提案した。
X線発生器126及びX線検出器128の旋回角度が360゜以上旋回するような場合には、X線検出器128の旋回半径を大きくして、X線検出器128が頭部P周りを1周以上旋回しても、X線検出器128が頭部Pと接触しないようにすることができる。
X線検出器128の回転半径については、旋回機構132が旋回支持部124を機構上の旋回軸X1を中心として旋回させるのと同期して、旋回軸移動機構134が機構上の旋回軸X1を移動させて、旋回支持部124に合成運動を行わせることにより、X線発生器126とX線検出器128とが撮影領域Rの中心A周りに旋回することで、調整することができる。特に、ここでは、上記のようにX線発生器126とX線検出器128とを旋回させる際に、旋回軸移動機構134が機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aを回転中心として回転移動させる。そして、撮影領域Rの中心Aに対するX線発生器の距離、撮影領域Rの中心Aに対するX線検出器128の距離のそれぞれを一定に保つことができる。
上記第2実施形態においては、旋回軸X1は、X線発生器126よりもX線検出器128に近い例を説明した。このため、旋回軸X1を歯列弓Arにおいて部分的に指定された撮影領域Rの中心Aに旋回軸X1を一致させた状態で、X線検出器128を旋回させれば、当該X線検出器128が撮影領域Rの近くを旋回することができる。
この構成を前提として、第1変形例では、歯列弓Arの一部又は全部を対象として、X線発生器126及びX線検出器128を撮影領域Rの周りに360゜以上旋回させる場合において、X線検出器128が頭部Pに接触しないように、旋回半径を大きくする例について説明する。
この場合、図14に示すように、X線検出器128を撮影領域Rからより大きく離すように、機構上の旋回軸X1を、撮影領域Rの中心AからX線検出器128側に離した状態で、撮影領域Rの中心A周りに旋回させるとよい。つまり、撮影領域Rの中心AとX線検出器128との間に機構上の旋回軸X1を位置させた状態で、当該機構上の旋回軸X1を、旋回支持部124と同期して旋回させればよい。この場合、機構上の旋回軸X1は半径rの円軌道CL上を移動し、X線発生器126及びX線検出器128の旋回中心は、撮影領域Rの中心Aと一致した状態に保たれる。旋回軸X1とX線検出器128との距離をE(1)、撮影領域Rの中心に対する機構上の旋回軸X1の回転半径をrとすると、撮影領域Rの中心Aに対するX線検出器128の回転半径qは、E(1)+rとなり、上記第2実施形態で説明したときよりも、大きな径で、X線検出器128を旋回させることができる。なお、旋回軸X1とX線発生器126との距離をE(2)とすると、撮影領域Rの中心Aに対するX線発生器126の回転半径は、E(2)−rとなる。X線発生器126が頭部Pに接触することを回避するため、E(1)+rがE(2)−rよりも小さくなる範囲、すなわち、X線検出器128がX線発生器126よりも撮影領域Rに近づく範囲で、rが設定されるとする。
なお、旋回軸移動機構134による機構上の旋回軸X1の旋回制御については、次のように制御することで実現可能である。機構上の旋回軸X1の座標を、一旦、図14を離れて考える。例えば、撮影領域Rの中心AのXYZ座標系におけるX、Yそれぞれの座標を(X(a)、X(a))とし、旋回機構132による旋回支持部124の旋回角度をθ(+X側にX線発生器126があり、−X側にX線検出器(及び旋回軸X1)がある状態から、これらが右周りに回転する角度とする)とする。X方向駆動部136により機構上の旋回軸X1のX座標が“X(a)−rcosθ”となり、Y方向駆動部138により機構上の旋回軸X1のY座標が“Y(a)+rsinθ”となるように、旋回機構132による旋回制御に同期させて旋回軸移動機構134を制御すればよい。この制御内容は、機構上の旋回軸X1を旋回させる下記の各変形例においても、同様に適用できる。
上記第1変形例では、X線発生器126及びX線検出器128を撮影領域Rの周りに360゜以上旋回させる場合において、X線検出器128が頭部Pに接触しないように、旋回半径を大きくする例について説明したが、この内容は、X線発生器126及びX線検出器128を270゜以下旋回させる場合においても適用可能である。
図15及び図16に示す変形例では、X線発生器126及びX線検出器128を270゜以下(ここでは、180゜)旋回させる場合、及び、それらを360゜旋回させる場合の両方において、機構上の旋回軸X1の位置を撮影領域Rの中心Aから離すように、撮影領域Rの中心Aに対する機構上の旋回軸X1の位置を制御する例を説明する。
図15はX線発生器126及びX線検出器128を270゜以下(ここでは、180゜)旋回させる場合の旋回動作を示す説明図である。図15では撮影領域Rとして歯列弓Arの一部(右臼歯)が設定されているとする。図16はX線発生器126及びX線検出器128を360゜旋回させる場合の旋回動作を示す説明図である。図16では撮影領域Rとして歯列弓Arの一部(前歯)が設定されているとする。撮影領域Rがどの位置に設定されているかに拘らず、X線発生器126及びX線検出器128が360゜旋回する場合には、それらの旋回の径を大きくする動作、制御が実施されるとよい。本変形例では、機構上の旋回軸X1は、X線発生器126とX線検出器128との中央位置にある。このため、機構上の旋回軸X1に対するX線発生器126の距離、及び、同旋回軸X1に対するX線検出器128の距離は同じである。
X線発生器126及びX線検出器128を270゜以下(ここでは、180゜)旋回させる場合、その旋回範囲を調整することで、X線検出器128と頭部Pとの接触を回避する。このため、X線検出器128の旋回の径をなるべく小さくして、X線検出器128を撮影領域Rになるべく近づけるとよい。そこで、図15に示すように、機構上の旋回軸X1を、撮影領域Rの中心Aを中心として半径r(2)で旋回させながら、旋回支持部124を機構上の旋回軸X1を中心として旋回させる。より具体的には、旋回機構132により旋回支持部124を機構上の旋回軸X1を中心として旋回させるのに同期して、旋回軸移動機構134により機構上の旋回軸X1を、撮影領域Rの中心Aを中心として半径r(2)で旋回させる。すなわち、機構上の旋回軸X1は半径r(2)の円軌道CL(2)上を移動する。この場合、X線検出器128を撮影領域Rに近づけるため、機構上の旋回軸X1は撮影領域Rの中心AからX線発生器126側に離れた位置を旋回し、従って、機構上の旋回軸X1は、撮影領域Rの中心AとX線発生器126との間にある。
仮に機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aに一致させてX線発生器126とX線検出器128を旋回させてCT撮影すると、X線検出器128が撮影領域Rから大きく離れる。X線検出器128を撮影領域Rになるべく接近させて撮影したい場合に図15に示すような軌道が好適である。
X線発生器126及びX線検出器128を360゜旋回させる場合、上記と同様の旋回軌道を描くと、X線検出器128は、頭部Pの後部等に当接する可能性がある。
そこで、図16に示す例では、機構上の旋回軸X1を、撮影領域Rの中心Aを中心として半径r(1)で旋回させながら、旋回支持部124を機構上の旋回軸X1を中心として旋回させる。より具体的には、旋回機構132により旋回支持部124を機構上の旋回軸X1を中心として旋回させるのに同期して、旋回軸移動機構134により機構上の旋回軸X1を、撮影領域Rの中心Aを中心として半径r(1)で旋回させる。なお、半径r(1)<半径r(2)とする。機構上の旋回軸X1は半径r(1)の円軌道CL(1)上を移動する。また、機構上の旋回軸X1は撮影領域Rの中心AからX線発生器126側に離れた位置を旋回し、従って、機構上の旋回軸X1は、撮影領域Rの中心AとX線発生器126との間にある。
この場合のX線検出器128の旋回の径は、図15に示す場合よりも大きくなる。ここでは、半径r(2)−半径r(1)分大きくなる。このため、X線検出器128を360゜旋回させても、X線検出器128が頭部Pと接触せずに、頭部Pの周りを旋回することができる。なお、X線発生器126については、X線検出器128よりも撮影領域Rから遠く離れた位置を旋回するので、頭部Pとの接触は回避されている。
このように、X線発生器126及びX線検出器128を270゜以下(ここでは、180゜)旋回させる場合、及び、それらを360゜旋回させる場合の両方において、機構上の旋回軸X1が撮影領域Rの中心Aから離れてもよい。この場合において、X線発生器126とX線検出器128との間における旋回軸X1の位置関係によっては、機構上の旋回軸X1のずれる方向、上記半径r(1)、r(2)の大小関係等が逆となる場合もあり得る。
また、X線発生器126及びX線検出器128を270゜以下(ここでは、180゜)旋回させる場合に、機構上の旋回軸X1を、撮影領域Rの中心Aを中心として半径rで旋回させながら、旋回支持部124を機構上の旋回軸X1を中心として旋回させ、X線発生器126及びX線検出器128を360゜旋回させる場合に、機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aに一致させた状態で、旋回支持部124を旋回させてもよい。例えば、上記変形例のように、機構上の旋回軸X1がX線発生器126とX線検出器128との中央位置又はその近くにある場合等には、X線発生器126及びX線検出器128を360゜旋回させる場合に、機構上の旋回軸X1を、撮影領域Rの中心Aに一致させた状態で、旋回支持部124を旋回させてもよい。
このように、上記旋回機構132が旋回支持部124を機構上の旋回軸X1を中心として旋回させるのと同期して、旋回軸移動機構134機構上の旋回軸X1を移動させて、旋回支持部124に合成運動を行わせることにより、X線発生器126とX線検出器128とが撮影領域の中心A周りに旋回する動作が可能であるため、旋回範囲、撮影領域Rの位置等に応じて、X線発生器126及びX線検出器128の旋回軌道、特に、旋回の径を調整することが可能となる。
この際、旋回軸移動機構134が機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aを回転中心として回転移動させるため、機構上の旋回軸X1を移動させても、X線発生器126及びX線検出器128が円の軌道又は円に近い軌道に沿って移動することができる。
また、X線CT撮影を行う間、撮影領域Rの中心Aに対するX線発生器126の距離、及び、撮影領域Rの中心Aに対するX線検出器128の距離のそれぞれを一定に保つため、拡大率を一定に保ちつつ、X線CT撮影を行うことができる。
{第3実施形態}
第3実施形態に係るX線CT撮影装置について説明する。なお、本実施の形態の説明において、第2実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
図17はX線CT撮影装置210の電気的構成を示すブロック図である。なお、第3実施形態に係るX線CT撮影装置210は、上記第2実施形態で説明したX線CT撮影装置110と同様構成の装置に実装されている。
X線CT撮影装置210が、上記X線CT撮影装置110と異なるのは、旋回範囲設定部251aを備える点、及び、撮影プログラム153aに対応する撮影プログラム253aが旋回範囲設定部251aで設定された旋回範囲に応じて、X線発生器126及びX線検出器128の旋回制御を行う点である。
すなわち、上記旋回範囲設定部251aは、X線CT撮影における旋回支持部124の旋回範囲の設定を受付ける。旋回範囲の設定は、例えば、270゜以下の旋回であるか、360゜以上の旋回であるかといった設定である。
旋回制御部151bに対応する旋回制御部251bは、当該撮影プログラム253aに基づいて、旋回範囲設定部251aで270゜以下の旋回の設定が受付けられると、上記第2実施形態で説明したように、X線発生器126及びX線検出器128の旋回制御を行う。つまり、270゜以下の旋回の設定が受付けられた場合には、X線検出器128の旋回範囲を,撮影領域Rと同じ側に偏らせることで、X線検出器128と頭部Pとの接触を回避する。
一方、旋回範囲設定部251aで、360゜以上の旋回の設定が受付けられると、撮影領域Rの中心Aに対する頭部Pの表面の最大の距離を最大距離とし、撮影領域Rの中心AとX線発生器126との距離と、撮影領域Rの中心AとX線検出器128との距離のうち小さい方の距離を離隔距離としたとき、撮影領域位置設定部151aで歯列弓の一部の領域を撮影領域Rとして設定してX線CT撮影を行い、この際、撮影領域Rの位置に応じて、上記最大距離よりも離隔距離が大きくなるように、撮影領域Rの中心Aに対する機構上の旋回軸X1の位置を変更する。
図18は旋回制御部251bによる処理を示すフローチャートである。
すなわち、X線CT撮影を行う際、ステップS21において、撮影領域の大きさの設定受付がなされる。撮影領域の大きさについては、第2実施形態で説明したのと同様に設定及び受付けることができる。
次ステップS22に進み、撮影領域の大きさが歯列弓の全体を対象とするのか、歯列弓の一部を対象とするのかが判定される。撮影領域の大きさが歯弓列全体を対象とするものであると判定されると、ステップS32に進み、歯弓列全体を対象としてCT撮影をおこなう。この場合のX線検出器128及びX線発生器126の旋回軌道については、歯列弓の一部の前歯を対象としてX線CT撮影を行うのと同様としてもよい。
ステップS22において、撮影領域の大きさが歯弓列の一部を対象とすると判定されると、ステップS23に進む。
ステップS23では、旋回範囲の設定を受付ける。
ここで、旋回範囲の設定の受付例について説明する。図19は第2実施形態で説明した操作パネル装置158における表示例において、旋回範囲の設定受付のための画像を追加した表示例を示している。操作パネル装置158の表示部158aには、旋回範囲設定用画像293が追加して表示されている。ここでは、旋回範囲設定用画像293は、表示部158aの右側であって、撮影領域設定用画像194の下側に表示されている。
操作者が旋回範囲設定用画像293をタッチすると、図20に示すように、旋回範囲設定用画像293に対応する選択画像が表示される。複数の旋回範囲選択画像として、180゜選択画像293a及び360゜選択画像293bが表示される。利用者が180゜選択画像293a及び360゜選択画像293bのいずれかに選択的にタッチすることで、旋回範囲の設定操作が受付けられる。無論、これらに加えて、または180゜選択画像293aに代えて、180°にX線ビームのファン角を加えた旋回角度を選択するための図示しない180°+fa選択画像293cを選択できるようにしてもよい。
上記例では、タッチパネルを利用して旋回範囲の設定を行う例で説明したが、物理的に操作を受付けるスイッチ(押ボタン)等を介して旋回範囲の設定を受付けるようにしてもよい。
ステップS23、S24において、旋回範囲として180゜旋回が受付けられると、ステップS25〜S27の処理を実行する。ステップS25〜S27の処理は、第2実施形態で説明したステップS11〜S13の処理と同様とすることができる。これにより、X線検出器128等を270゜以下(180゜)旋回させてX線CT撮影を行う際に、X線検出器128と頭部Pとの接触を回避することができる。
ステップS23において、旋回範囲として360゜旋回が受付けられると、ステップS28〜S31の処理を実行する。
第2実施形態の変形例において説明したように、X線検出器128を360゜旋回させる場合には、X線検出器128の旋回の径をより大きくするとよい。もっとも、被写体における撮影領域の位置は様々である。被写体における撮影領域の位置に応じて、機構上の旋回軸X1の位置を調整し、もって、被写体周りを旋回するX線発生器126及びX線検出器128の旋回軌道を工夫すれば、被写体周りを旋回するX線発生器126及びX線検出器128が被写体に接触することを抑制しつつ、X線検出器128を撮影領域Rになるべく近づけることができる。ステップS28〜S31では、そのための処理を実行する。
ステップS28において、撮影領域Rの位置の設定操作が受付けられる。撮影領域Rの位置の設定操作の受付は、ステップS11において説明したのと同様に行うことができる。
次ステップS29において、設定された撮影領域の位置に応じて旋回制御内容、規制量を決定する。旋回制御内容は、X線発生器126及びX線検出器128をどのような軌跡で頭部P周りに旋回させるかを示す。かかる旋回制御内容は、X線発生器126及びX線検出器128の少なくとも一方の軌跡、旋回機構132による旋回速度に対する旋回軸移動機構による機構上の旋回軸X1の移動軌跡、旋回機構132による旋回支持部124の旋回の旋回速度に対するX方向駆動部136及びY方向駆動部138による移動座標等によって表される。
旋回制御内容が決ると、X線発生器126とX線検出器128とを撮影領域Rの中心A周りに旋回駆動させる際における、撮影領域Rの中心AとX線発生器126との距離と、撮影領域Rの中心AとX線検出器128との距離とのうちの小さい方の距離を離隔距離Dと想定したとき、当該離隔距離Dが定る。ここでは、旋回支持部124において旋回軸X1はX線検出器128に近い側にあるので、離隔距離Dは、撮影領域Rの中心AとX線検出器128との距離である。なお、頭部Pは頭部固定装置142によって一定位置に保持されていること、及び、上記のように撮影領域が設定されていることから、本装置110における撮影領域Rの位置は既知である。
また、撮影領域Rの中心Aに対するX線発生器126の距離も定るので、X線発生器126から照射されたX線が頭部Pを通ってX線検出器128に入射する際の倍率も定る。X線発生器126とX線検出器128との距離をDA、X線発生器126と撮影領域Rの中心Aに対するX線発生器126の距離をDとすると、倍率mは、m=DA/Dとなる。
また、旋回制御内容が決ると、X線発生器126から発生したX線が撮影領域Rの全体を通るようにするためのX線の最小幅が決るので、X線検出器128により規制すべきX線の規制幅(X線規制孔)の幅も、当該最小幅に合わせるか、少なくとも当該最小幅よりも大きい範囲でかつその周囲に過剰にX線が照射されないようにする範囲で設定することができる。
上記設定された撮影領域の位置に応じた旋回制御内容、規制量の決定は、例えば、図21に示すような参照テーブルを参照して行うことができる。すなわち、撮影領域の位置に対して旋回制御内容、離隔距離D(倍率m)及び規制幅Wを対応付けた参照テーブルが事前に登録されている。図21に示す例では、撮影領域の位置を前歯としたときに対して、X線検出器128を半径q(1)で旋回させること、離隔距離D(1)(倍率m(1))、規制幅W(1)が対応付けられている。X線検出器128を半径q(1)で旋回させることを、旋回軸X1の旋回内容で定義すると、旋回軸X1を半径r(1)で旋回させることと表すことができる。なお、X線検出器128を撮影領域Rから遠ざけるため、旋回軸X1を、撮影領域Rの中心Aに対してX線検出器128側にずらすこととする。また、撮影領域の位置を臼歯としたときに対して、X線検出器128を半径q(2)で旋回させること、離隔距離D(2)(倍率m(2))、規制幅W(2)が対応付けられている。X線検出器128を半径q(2)で旋回させることを、旋回軸X1の旋回内容で定義すると、旋回軸X1を半径r(2)で旋回させることと表すことができる。なお、X線検出器128を撮影領域Rから遠ざけるため、旋回軸X1は、撮影領域Rの中心Aに対してX線検出器128側にずらすこととする。
なお、半径q(1)(r(1))、離隔距離D(1)、倍率m(1)、規制幅W(1)、半径q(2)(r(2))、離隔距離D(2)、倍率m(2)、規制幅W(2)には具体的な数値が規定される。後述するように、撮影領域の位置を前歯としたときには、撮影領域の位置を臼歯としたときよりも、X線検出器128を撮影領域の中心Aに対してより遠くに位置させることになるので、半径q(1)>半径q(2)(半径r(1)<半径r(2))、離隔距離D(1)>離隔距離D(2)、倍率m(1)>倍率m(2)、規制幅W(1)>規制幅W(2)である。
設定された撮影領域Rに基づいて、撮影領域Rが前歯であるか臼歯であるかが判定され、その判定結果に基づいて、対応する旋回制御内容、離隔距離D(倍率m)及び規制幅Wが決定される。設定された撮影領域Rに基づく撮影領域Rの位置(前歯又は臼歯)の判定は、例えば、設定された撮影領域Rの中心Aの座標が予め設定された前歯領域及び臼歯領域のいずれに属するかを判断することで判定することができる。参照テーブルにおける撮影領域は、歯列弓に対してより多数の領域に分割されていてもよい。
ここでは、参照テーブルでは、頭部Pの体格(大きさ)が同じであることを前提として、撮影領域Rの位置に対応する旋回制御内容が規定されているが、異なる大きさの頭部P(例えば、大人の体格用の頭部と子どもの体格用の頭部)のそれぞれに対して、上記と同様に、撮影領域Rの位置に対応する旋回制御内容が規定されていてもよい。この場合、走者者により操作入力された体格に応じて、当該体格に応じた撮影領域Rの位置に対応する旋回制御内容を決定するとよい。
次ステップS30では、決定された規制量である規制幅W(1)、W(2)に応じてX線規制部129を制御し、X線検出器128から撮影領域Rに応じた幅のX線が照射されるようにする。
次ステップS31では、決定された旋回制御内容に基づく旋回制御を行ってCT撮影を行う。すなわち、旋回範囲設定部251aで360゜以上の旋回範囲が設定されていることから、撮影領域Rの中心AとX線発生器126との距離と、撮影領域Rの中心AとX線検出器128との距離とのうちの小さい方の距離を離隔距離Dとしたとき、歯列弓Arの一部の領域を撮影領域Rとして設定してX線CT撮影を行い、この際、設定された撮影領域Rの位置に応じて、撮影領域Rの中心Aに対する頭部Pの表面の最大の距離である最大距離LDよりも離隔距離Dが大きくなるように、撮影領域Rの中心Aに対する機構上の旋回軸X1の位置を変更する。なお、最大距離LDは撮影領域Rの位置によって変る。
この旋回動作を、図22及び図23を参照してより具体的に説明する。
図22に示す例では、撮影領域Rとして歯列弓Arの一部である一側の臼歯領域が指定されている。図23に示す例では、撮影領域Rとして歯列弓Arの一部である前歯領域が指定されている。前歯領域を第1撮影領域R(1)とし、臼歯領域を第2撮影領域R(2)とする。
頭部Pの表面に対する、撮影領域Rの最大距離LDを想定する。前歯領域を第1撮影領域R(1)とした場合、前歯領域は頭部Pの前寄りの位置(前に偏った位置)にある局所領域であるので、頭部Pの後部表面が、第1撮影領域R(1)から最も離れ、第1撮影領域R(1)の中心Aと頭部Pの後部表面との距離が最大距離LD(1)となる(図23参照)。臼歯領域を第2撮影領域R(2)とした場合、臼歯領域は頭部Pの前後方向中央寄りの位置でかつ幅方向一方側寄りの位置にあるので、頭部Pの他方側の側部表面が第2撮影領域R(2)から最も離れ、第2撮影領域R(2)の中心Aと頭部Pの後部表面との距離が最大距離LD(2)となる(図22参照)。頭部Pは前後方向に長い楕円形状に類似する形状を呈することから、通常、前歯を第1撮影領域R(1)とした場合の最大距離LD(1)の方が、臼歯領域を第2撮影領域R(2)とした場合の最大距離LD(2)よりも大きくなる。よって、臼歯領域を第2撮影領域R(2)とした場合よりも、前歯を第1撮影領域R(1)とした場合において、X線発生器126及びX線検出器128のうち撮影領域に近い方のものを、外側で旋回させるとよい。
そこで、臼歯領域を第2撮影領域R(2)としてX線CT撮影を行う場合、図22に示すように、X線検出器128の旋回の半径q(2)とするように、機構上の旋回軸X1を移動させつ、旋回支持部124を旋回させる。この場合の中心AとX線検出器128との間の距離が離隔距離D(2)である。ここでは、機構上の旋回軸X1をX線検出器128側にずらし半径r(2)で旋回させる。
360°旋回のX線CT撮影についても、検出器面、検出器存在域、安全域の考え方を応用できる。360°旋回のX線CT撮影の場合は、検出器面、検出器存在域、安全域がいずれも環状の形状となる。この関係についても、DTD>DHとなるようにずらし半径rを定める。
前歯領域を第1撮影領域R(1)として、上記と同じ軌跡でX線発生器126及びX線検出器128を旋回させると、X線検出器128が頭部Pに接触する恐れがある。仮に同じ軌跡でX線発生器126及びX線検出器128を旋回させた場合の頭部Pを図22に二点鎖線で示す。実線で示す頭部Pについての第2撮影領域R(2)は、二点鎖線で示す頭部Pについては第1撮影領域R(1)である(図22参照)。二点鎖線で示す頭部Pについては、X線検出器128が−Y側に来たときに頭部Pに接触する恐れがあることが見て取れる。
そこで、前歯領域を第1撮影領域R(1)としてX線CT撮影を行う場合、図23に示すように、X線検出器128の旋回の半径を、半径q(1)(q(1)>q(2))とするように、機構上の旋回軸X1を移動させつ、旋回支持部124を旋回させる。この場合の中心AとX線検出器128との間の距離が離隔距離D(1)である。ここでは、機構上の旋回軸X1をX線検出器128側にずらし半径r(1)(r(1)>r(2))で旋回させる。
この場合、X線発生器126は、図22に示す場合よりも小さい半径を描いて旋回する。X線検出器128は、図22に示す場合よりも大きい半径を描いて旋回する。図23に示すX線発生器126の軌道とX線検出器128の軌道の関係は、図22に示すそれらの関係よりも互いに近寄ったものとなる。このため、X線発生器126もX線検出器128も頭部Pと接触せずに、頭部Pの周りを旋回することができる。
そして、X線発生器126及びX線検出器128が頭部Pの撮影領域R(1)、R(2)の周りを旋回することで、当該撮影領域RのX線CT画像を生成するのに必要なX線画像データが得られ、当該データに基づいてX線CT画像が生成される。
上記したように、X線検出器128の旋回の径rは、機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aに一致させること、機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心A周りに旋回させること、旋回軸X1を中心A周りに旋回させる際に、当該旋回軸X1をX線検出器128側にずらすこと、又は、X線発生器126側にずらすこと、それらのずらす量を調整すること等によって調整することができる。X線発生器126とX線検出器128との間における機構上の旋回軸X1の位置等に応じて、機構上の旋回軸X1の位置が調整される。
本実施形態によると、270゜以下の旋回範囲が設定された場合には、X線検出器128のCT撮影領域Rの中心Aに対する旋回の径rが、最大距離LDよりも小さく、かつ、X線検出器128が、撮影領域位置設定部151aで設定された撮影領域Rの位置に応じて、歯列弓Arの一部が偏っている側と同じ側に偏った範囲を旋回するため、X線発生器126及びX線検出器128が頭部Pと接触することを抑制でき、かつ、なるべく鮮明なX線CT画像を得ることができる。
また、360゜以上の旋回範囲が設定された場合には、撮影領域位置設定部151aで設定された撮影領域Rの位置に応じて、最大距離LDよりも離隔距離Dが大きくなるように、撮影領域Rの中心に対する機構上の旋回軸X1の位置を変更することで、被写体である頭部P周りを360゜以上旋回するX線発生器126及びX線検出器128が頭部Pに接触することを抑制できる。
なお、270゜以下の旋回範囲としては、180゜又は180゜にX線ビームの照射の拡がり角度(図15の角度β参照)を加えた角度の旋回範囲を受付けることが好ましい。また、360゜以上の旋回範囲として、360゜の旋回範囲を受付けることが好ましい。これにより、360゜のCT撮影によるフルスキャン、及び、180゜前後のCT撮影によるハーフスキャンを行う際に、頭部P周りを旋回するX線発生器126及びX線検出器128が頭部Pに接触することを抑制できる。
また、上記X線発生器126及びX線検出器128の旋回の径を調整する際、旋回機構132が旋回支持部124を機構上の旋回軸X1を中心として旋回させるのと同期して、旋回軸移動機構134が機構上の旋回軸X1を移動させて、旋回支持部124に合成運動を行わせることにより、X線発生器126とX線検出器128とを撮影領域Rの中心A周りに旋回させる際に、旋回軸移動機構134が機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aを回転中心として回転移動させるため、X線CT撮影を行う際に機構上の旋回軸X1を移動させても、X線発生器126及びX線検出器128をなるべく円に近い軌道に沿って旋回させることができる。
また、X線CT撮影を行う間、撮影領域Rの中心Aに対するX線発生器126の距離、及び、撮影領域Rの中心Aに対するX線検出器128の距離のそれぞれを一定に保つため、拡大率を一定に保ちつつ、X線CT撮影を行うことができる。
<変形例>
X線発生器126及びX線検出器128を撮影領域R周りに旋回させる際に、被写体である頭部Pの体格の大きさに応じて、旋回軸の位置制御を行ってもよい。
下記の変形例では、第3実施形態におけるステップS32の処理に関して、被写体である頭部Pの体格の大きさに応じて、離隔距離Dを調整する例を説明する。
すなわち、X線CT撮影装置210は、被写体である頭部Pの体格の大きさの設定として、第1の体格と、第1の体格よりも小さい第2の体格とを受付可能な被写体体格設定部258を備える(図17参照、以下、体格設定部258と記す)。また、撮影プログラム253aが、被写体の体格設定部258で設定された被写体の体格の大きさに応じて、撮影領域Rの中心Aに対する機構上の旋回軸X1の位置を変更する処理を含む。従って、旋回制御部251bは、当該撮影プログラム253aに基づいて、被写体の体格設定部258で設定された被写体の体格の大きさに応じて、撮影領域Rの中心Aに対する機構上の旋回軸X1の位置を変更する制御を実行する。より具体的には、旋回制御部251bは、被写体の体格設定部258で設定された被写体の体格の大きさに応じて、設定された被写体の体格が前記第1の体格であるときの離隔距離Dが、設定された被写体の体格が第1の体格よりも小さい第2の体格であるときの離隔距離Dよりも大きくなるように、撮影領域Rの中心Aに対する機構上の旋回軸X1の位置を変更する。
図24は旋回制御部251bによる上記処理を示すフローチャートである。
すなわち、歯列旧全体を対象として、X線CT撮影を行う際、ステップS41において、体格の入力設定が受付けられる。
ここで、体格の入力操作の受付例について説明する。図25は第2実施形態で説明した操作パネル装置158における表示例において、体格の入力操作の受付のための画像を追加した表示例を示している。操作パネル装置158の表示部158aには、体格設定用画像393が追加して表示されている。ここでは、体格設定用画像393は、表示部158aの右側であって、撮影領域設定用画像194の上側に表示されている。
操作者が体格設定用画像393をタッチすると、図26に示すように、体格設定用画像393に対応する選択画像が表示される。複数の体格選択画像として、通常サイズ選択画像393a(Mサイズ)及び大サイズ選択画像393b(Lサイズ)が表示される。利用者が通常サイズ選択画像393a及び大サイズ選択画像393bのいずれかに選択的にタッチすることで、被写体である頭部Pの体格の入力操作が受付けられる。
上記例では、タッチパネルを利用して体格の設定を行う例で説明したが、物理的に操作を受付けるスイッチ(押ボタン)等を介して体格の設定を受付けるようにしてもよい。
図24に戻って、ステップS42において、体格設定部258は、操作パネル装置158を通じて頭部Pの体格の入力操作を受付けると、受付けた内容に応じて旋回制御部251bに頭部Pの体格の設定を行う。ここでは、体格設定部258は、操作パネル装置158を通じて、複数の選択候補の体格サイズである通常サイズ選択画像393a及び大サイズ選択画像393bから1つを選択する入力操作の受付により、頭部Pの体格の設定を行う。大サイズ選択画像393bが第1の体格の受付用の画像であり、通常サイズ選択画像393aが第1の体格よりも小さい第2の体格の受付用の画像であり、いずれかが選択されることで、第1の体格及び第2の体格が選択的に設定される。
体格設定部258は、頭部Pの体格を自動的に認識して体格の設定を行ってもよい。頭部Pの体格を自動的に認識する例としては、例えば、被写体である頭部Pを撮像し、その撮像画像から頭部領域を抽出し、その抽出された頭部領域から頭部の大きさを認識して体格を設定すること、頭部を固定する頭部固定装置142に頭部Pを左右又は前後方向から挟んで保持する保持部を設け、その保持部の開度をセンサ等で検出することで、頭部の大きさを認識して体格を設定すること等が考えられる。
次ステップS43において、設定された体格に応じて、旋回制御内容、規制量等が決定される。設定された体格に応じた旋回制御内容、規制量の決定は、例えば、図27に示すような参照テーブルを参照して行うことができる。すなわち、通常の体格P(M)と大きい体格P(L)のそれぞれに対して、旋回制御内容、離隔距離D(倍率m)及び規制幅Wが対応付けられている。
図27に示す例では、通常の体格P(M)に対して、旋回制御内容としてX線検出器128を半径q(M)で旋回させること、離隔距離D(M)(倍率m(M))、規制幅W(M)が対応付けられている。X線検出器128を半径q(M)で旋回させることを、旋回軸X1の旋回内容で定義すると、旋回軸X1を半径r(M)で旋回させることと表すことができる。なお、X線検出器128を撮影領域Rから遠ざけるため、旋回軸X1を、撮影領域Rの中心Aに対してX線検出器128側にずらすこととする。また、大きい体格P(L)に対して、X線検出器128を半径q(L)で旋回させること、離隔距離D(L)(倍率m(L))、規制幅W(L)が対応付けられている。X線検出器128を半径q(L)で旋回させることを、旋回軸X1の旋回内容で定義すると、旋回軸X1を半径r(L)で旋回させることと表すことができる。なお、X線検出器128を撮影領域Rから遠ざけるため、旋回軸X1は、撮影領域Rの中心Aに対してX線検出器128側にずらすこととする。
なお、半径q(M)(r(M))、離隔距離D(M)、倍率m(M)、規制幅W(M)、半径q(L)(r(L))、離隔距離D(L)、倍率m(L)、規制幅W(L)には具体的な数値が規定される。後述するように、大きい体格P(L)であるときには、通常の体格P(M)のときよりも、X線検出器128を撮影領域の中心Aに対してより遠くに位置させることになるので、半径q(M)<半径q(L)(半径r(M)<半径r(L))、離隔距離D(M)<離隔距離D(L)、倍率m(M)<倍率m(L)、規制幅W(M)<規制幅W(L)である。
次ステップS44、S45では、決定された規制量である規制幅W(M)、W(L)に応じてX線規制部129を制御し、X線検出器128から撮影領域Rに応じた幅のX線が照射されるようにする。
この旋回制御に基づく旋回動作を、図28及び図29を参照してより具体的に説明する。図28は体格が比較的小さい第2の体格P(M)であるときの旋回動作を示す説明図であり、図29は体格が比較的大きい第1の体格P(L)であるときの旋回動作を示す説明図である。
体格が比較的小さい第2の体格P(M)である場合、図28に示すように、X線検出器128の旋回の径が径q(M)となるように、旋回支持部124を旋回させる。より具体的には、旋回機構132により旋回支持部124を機構上の旋回軸X1を中心として旋回させるのに同期して、旋回軸移動機構134により機構上の旋回軸X1を、撮影領域Rの中心Aを中心として半径r(M)で旋回させる。なお、機構上の旋回軸X1は、X線検出器128側にずらす。X線発生器126よりもX線検出器128の方が撮影領域Rの中心Aに近いので、離隔距離D(M)は、撮影領域Rの中心AとX線検出器128との距離となる。離隔距離D(M)は、旋回軸X1に対して直交する方向において、撮影領域Rの中心Aと小さい方の第2の体格P(M)を有する頭部P(P2)の表面との最大距離LDよりも大きく設定されている。このため、X線検出器128は、小さい方の第2の体格P(M)を有する頭部P(P2)と接触せずに、頭部P(P2)の周りを旋回することができる。X線発生器126は、X線検出器128よりも撮影領域Rの中心Aよりも遠く離れた位置を旋回するので、X線発生器126も頭部P(P2)と接触せずに、頭部P(P2)の周りを旋回することができる。撮影領域Rに対して設定される、X線発生器126、X線検出器128のX線撮影中の軌道上、X線検出器128よりもX線発生器126の方が撮影中心Aに近い場合は、図示しない離隔距離Dは、撮影領域Rの中心AとX線発生器126との距離となる。
第2の体格P(M)を有する頭部Pにも、第1の体格P(L)を有する頭部Pにもチンレスト142aを共通に用いるため、両方の頭部Pで撮影領域Rは頭部前部で共通の位置になり、第1の体格P(L)を有する頭部Pの後頭部領域の方が、第2の体格P(M)を有する頭部Pよりも−Y側に大きな領域を占める。体格が比較的大きい第1の体格P(L)である場合、上記と同様にX線検出器128が旋回すると、X線検出器128は、第1の体格P(L)を有する頭部Pに当接する可能性がある。
そこで、体格が比較的大きい第1の体格P(L)である場合、図29に示すように、X線検出器128の旋回の径q(L)となるように、旋回支持部124を旋回させる。より具体的には、旋回機構132により旋回支持部124を機構上の旋回軸X1を中心として旋回させるのに同期して、旋回軸移動機構134により機構上の旋回軸X1を、撮影領域Rの中心Aを中心として半径r(L)(r(L)>r(M))で旋回させる。なお、機構上の旋回軸X1は、X線検出器128側にずらす。この場合においても、X線発生器126よりもX線検出器128の方が撮影領域Rの中心Aに近いので、離隔距離D(L)は、撮影領域Rの中心AとX線検出器128との距離D(L)となる。離隔距離D(L)は、旋回軸X1に対して直交する方向において、撮影領域Rの中心Aと大きい方の第1の体格P(L)を有する頭部P(P(L))の表面との最大距離LDよりも大きく設定されている。このため、X線検出器128は、大きい方の第1の体格P(L)を有する頭部P(P(L))と接触せずに、頭部P(P(L))の周りを旋回することができる。X線発生器126は、X線検出器128よりも撮影領域Rの中心Aよりも遠く離れた位置を旋回するので、X線発生器126も頭部P(P(L))と接触せずに、頭部P(P(L))の周りを旋回することができる。撮影領域Rに対して設定される、X線発生器126、X線検出器128のX線撮影中の軌道上、X線検出器128よりもX線発生器126の方が撮影中心Aに近い場合は、図示しない離隔距離Dは、撮影領域Rの中心AとX線発生器126との距離となる。
なお、図28に示すように、体格が比較的小さい第2の体格P(M)と、図29に示すように、体格が比較的大きい第1の体格P(L)である場合とを比較すると、前者よりも後者の方が、撮影領域Rの中心AとX線検出器128との距離が大きい。このため、X線発生器126から照射されたX線が撮影領域Rの全体を通過するようにするためには、第2の体格P(M)のときにおけるX線規制部129によるX線の規制幅W(M)を、第1の体格P(L)のときにおけるX線規制部129によるX線の規制幅W(L)よりも小さく設定するとよい。これにより、撮影領域Rに見合った範囲でX線を照射することができる。つまり、規制幅W(L)、W(M)は、X線発生器126とX線検出器128とを撮影領域Rの中心A周りに旋回駆動させる際における離隔距離D(L)、D(M)に応じて設定されており、当該X線規制部129により、離隔距離D(L)、D(M)に応じてX線発生器126から発生したX線の規制量を調整する。
X線規制部129によるX線の規制幅Wは、x方向の規制幅Wxのみ調整してもよいが、y方向の規制幅Wyも加えて調整してよい。
そして、X線発生器126及びX線検出器128が頭部Pの撮影領域Rの周りを旋回することで、歯列弓全体を対象とする撮影領域RのX線CT画像を生成するのに必要なX線画像データが得られ、当該データに基づいてX線CT画像が生成される。
この変形例によると、体格設定部258で設定された頭部Pの体格の大きさに応じて、頭部Pの体格P(L)が大きいときの離隔距離D(L)が体格P(M)が小さいときの離隔距離D(M)よりも大きくなるように、撮影領域Rの中心Aに対する機構上の旋回軸X1の位置を変更するため、頭部P周りを旋回するX線発生器126及びX線検出器128が頭部Pに接触することを抑制できる。
上記変形例においては、頭部Pの体格P(L)が大きいとき、体格P(M)が小さいときの両方において、機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心A周りに旋回させたが、機構上の旋回軸X1がX線発生器126とX線検出器128との中央に近い位置にある場合等には、図30に示すように、体格が小さい第2の体格P(M)であるときに、機構上の旋回軸X1を撮影領域Rの中心Aの位置に一致させてもよい。この場合、図31に示すように、頭部Pの体格が大きい第1の体格P(L)であるときには、機構上の旋回軸X1をX線検出器128側にずらす方向に、機構上の旋回軸X1の位置を撮影領域Rの中心から離し、撮影領域Rの中心Aに対する機構上の旋回軸X1の位置を変更するとよい。なお、X線検出器128の旋回の径を小さくする場合には、機構上の旋回軸X1をX線発生器126側にずらす方向に、機構上の旋回軸X1の位置を撮影領域Rの中心から離し、撮影領域Rの中心Aに対する機構上の旋回軸X1の位置を変更するとよい。
上記のように体格の大きさに応じて、撮影領域Rの中心Aに対するX線発生器126の距離、及び、撮影領域Rの中心Aに対するX線検出器128の距離のうちの小さい方の離隔距離を最大距離よりも大きくするように、機構上の旋回軸X1の位置を調整する処理は、歯列弓Arの一部を対象としてX線CT撮影を行う処理においても適用できる。歯列弓Arの一部を対象としてX線CT撮影を行う場合において、X線発生器126及びX線検出器128を270゜以下の範囲で旋回させる場合、360゜以上旋回させる場合のいずれにおいても、体格の大きさに応じて、機構上の旋回軸X1の位置を調整する処理を適用可能である。
{変形例}
また、上記各実施形態及び各変形例では、撮影領域Rの全体に対してX線を照射するノーマルスキャンを前提として説明したが、撮影領域の中心からずれた領域で当該撮影領域よりも狭い範囲にX線を照射するオフセットスキャンを行う場合においても、適用することができる。
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。