化粧板
以下、図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る化粧板1について説明する。図1は、化粧板1の平面図であり、図2は、図1中の符号Rで示される領域の拡大図であり、図3は、図2のA−A線断面図であり、図4は、図2のB−B線断面図である。
図1〜図4に示すように、化粧板1は、互いに直交する第1方向X、第2方向Y及び厚さ方向Zを有する。本実施形態では、第1方向Xが化粧板1の長手方向に相当し、第2方向Yが化粧板1の短手方向に相当するが、第1方向Xが化粧板1の短手方向に相当し、第2方向Yが化粧板1の長手方向に相当してもよい。
図1〜図4に示すように、化粧板1は、第1表面S1と、第1表面S1の反対側に位置する第2表面S2とを有する。
図3及び図4に示すように、化粧板1は、支持シート2と、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の一部に形成された第1層3と、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部に形成された第2層4と、第1層3の第1表面S1側の表面S31に形成された第3層5とを備える。
図2〜図4に示すように、第2層4は、第3層5を露出させる開口部40を有し、第2層4の開口部40は、化粧板1の第1表面S1に凹部7を形成している。
図3及び図4に示すように、第3層5の第1表面S1側の表面S51は、粗面である。すなわち、第3層5の第1表面S1側の表面S51には、微小凹凸部が形成されている。凹部7の底面は、第3層5の第1表面S1側の表面S51により形成されているので、凹部7の底面も、粗面である。
図2〜図4に示すように、化粧板1の第1表面S1のうち、凹部7に隣接する領域(第2層4の第1表面S1側の表面S41により形成される領域)は、相対的に凸部となっており、化粧板1の第1表面S1には、凹凸形状が形成されている。化粧板1の第1表面S1のうち、凹部7の底面(第3層5の第1表面S1側の表面S51)により形成される領域は、粗面であるので、入射光に対して拡散反射性を有する低光沢領域となる。したがって、化粧板1の第1表面S1のうち、凹部7に隣接する領域(第2層4の第1表面S1側の表面S41により形成される領域)は相対的に鏡面となり、入射光に対して鏡面反射性を有する高光沢領域となる。これにより、化粧板1は、凹凸形状に基づいて、グロスマット調の意匠感を表現することができる。特に、化粧板1の凹凸形状(即ち、高光沢領域及び低光沢領域)を、後述する装飾層22の絵柄模様と位置同調させることにより、化粧板1は、優れたグロスマット調の意匠感を表現することができる。例えば、装飾層22が木目模様を形成する場合、凹部7を、木目模様中の導管部(即ち、導管の切断面開口部によって形成される線条の溝部)と、両者の平面視での位置が一致するように位置同調させるとともに、凹部7に隣接する領域を、木目模様中の導管部以外の領域と、両者の平面視での位置が一致するように位置同調させることにより、木目模様中の導管部が相対的に凹部の外観を呈し、これにより、化粧板1は、本物の木目模様と同様の表面凹凸形状の意匠感(質感)を表現することができる。
なお、本発明において、「平面視」とは、対象となる部材又は部分を、化粧板1の厚さ方向Zから観察することを意味する。例えば、図3及び図4において、同図に向かって上方から下方を見降ろすことを意味する。また、「平面視」は、対象となる部材又は部分がその他の部材又は部分に隠れて実際には観察できない場合であっても観察できるものとして取り扱う仮想的な概念である。すなわち、「平面視」は、対象となる部材又は部分を、化粧板1の厚さ方向Zに対して垂直な仮想平面に投影することに相当する。
化粧板1の第1表面S1には、凹部7以外の凹部が形成されていてもよい。例えば、第2層4の第1表面S1側の表面S41に凹部が形成されていてもよい。
図3及び図4に示すように、化粧板1は、支持シート2の第2表面S2側の表面S22に設けられた補強層6をさらに備える。なお、本発明には、支持シート2の第2表面S2側の表面S22に補強層6が設けられていない実施形態も包含される。
支持シート
支持シート2は、第1層3及び第2層4を支持する。
図3及び図4に示すように、支持シート2は、基材シート21と、基材シート21の第1表面S1側の表面S211に設けられた装飾層22とを有する。
基材シート
基材シート21として使用されるシートは適宜選択することができるが、好ましくは、多孔質シートである。多孔質シートは、液体浸透性を有する限り特に限定されない。基材シート21が液体浸透性を有する場合、例えば、第2層4の形成原料として使用される樹脂組成物を基材シート21に含浸させることができる。多孔質シートとしては、例えば、繊維シート等が挙げられる。繊維シートとしては、例えば、紙、不織布、織布等が挙げられる。紙としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、紙にポリ塩化ビニル樹脂をゾルコート又はドライラミネートしたいわゆるビニル壁紙原反、上質紙、コート紙、パーチメント紙、和紙等が挙げられる。その他の繊維シートとしては、例えば、ガラス繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機繊維で構成されるシート;ポリエステル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂繊維で構成されるシート等が挙げられる。多孔質シートは、液体含浸性の観点から、好ましくは、チタン紙、薄葉紙、クラフト紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、和紙等であり、さらに好ましくは、チタン紙である。基材シート21の坪量は、最終製品の用途、使用方法等により適宜調整することができるが、例えば40〜150g/m2である。基材シート21の厚さは、最終製品の用途、使用方法等により適宜調整することができるが、例えば50〜170μmである。なお、本明細書において、「数値A〜数値B」と表現される数値範囲は、別段規定される場合を除き、数値Aを上限値とし、数値Bを下限値とする数値範囲(すなわち、数値A及び数値Bを含む数値範囲)を意味する。
基材シート21として使用可能な多孔質シート以外のシートとしては、例えば、熱可塑性樹脂シート等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン(高密度、中密度又は低密度)、ポリプロピレン(アイソタクチック型又はシンジオタクチック型)、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
基材シート21が多孔質シートである場合、多孔質シートの空隙には、硬化性樹脂の硬化物が充填されていることが好ましい。これにより、化粧板1の強度を向上させることができる。第2層4が硬化性樹脂の硬化物を含む場合、多孔質シートの空隙に充填された硬化性樹脂の硬化物は、第2層4に含まれる硬化性樹脂の硬化物と一体化されていることが好ましい。これにより、支持シート2と第2層4との接合強度を向上させることができる。例えば、第2層4を形成する際、第2層4の形成原料である硬化性樹脂組成物を多孔質シートに含浸させて硬化させることにより、多孔質シートの空隙に充填された硬化性樹脂の硬化物と、第2層4に含まれる硬化性樹脂の硬化物とを一体化することができる。
なお、本発明には、基材シート21として使用される多孔質シートの空隙に硬化性樹脂の硬化物が充填されていない実施形態、基材シート21として多孔質シートの空隙に硬化性樹脂の硬化物が充填されているが、多孔質シートの空隙に充填された硬化性樹脂の硬化物が、第2層4に含まれる硬化性樹脂の硬化物と一体化されていない実施形態等も包含される。
基材シート21は、着色されていてもよい。基材シート21の製造段階(例えば、基材シート21が紙であれば、抄造段階)において、形成原料に着色剤(顔料又は染料)を配合することにより、基材シート21を着色することができる。また、第2層4を形成する際、第2層4の形成原料として、着色剤を含む樹脂組成物を使用し、これを基材シート21に含浸させることにより、基材シート21を着色することができる。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の粒子からなる無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の粒子からなる有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。着色剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。着色剤の配合量は、所望の色合い等に応じて適宜調整することができる。
基材シート21は、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の添加剤を含んでもよい。
装飾層
図3及び図4に示すように、装飾層22は、基材シート21の第1表面S1側の表面S211に設けられている。装飾層22は、基材シート21の表面S211の全体に形成されていてもよいし、基材シート21の表面S211の一部に形成されていてもよい。装飾層22が基材シート21の表面S211の全体に形成される場合、支持シート2の表面S21は装飾層22の表面により形成される。装飾層22が基材シート21の表面S211の一部に形成される場合、支持シート2の表面S21は、基材シート21の表面S211の一部(装飾層22が設けられていない部分)及び装飾層22の表面により形成される。
なお、本発明には、装飾層22が基材シート21の表面S211に形成されていない実施形態も包含される。装飾層22が基材シート21の表面S211に形成されていない実施形態において、支持シート2の表面S21は、基材シート21の表面S211により形成される。
装飾層22は、化粧板1に装飾性(意匠性)を付与する。装飾層22は、例えば、着色層、絵柄層又はこれらの組み合わせである。
着色層は、化粧板1に所望の色を付与する。着色層は、例えば、基材シート21の表面S211の全体に形成された全面ベタ層である。着色層の色は、通常、不透明色であるが、基材シート21等の下地の色又は模様を活かす場合には、透明色であってもよい。また、基材シート21等の下地の色又は模様を活かす場合には、着色層を形成しなくてもよい。
絵柄層は、化粧板1に所望の模様を付与する。絵柄層は、例えば、基材シート21の表面S211の一部又は全体あるいは着色層の第1表面S1側の表面の一部又は全体に形成された印刷層である。模様層を構成する模様としては、例えば、年輪断面の春材領域及び秋材領域、導管部等から構成される木目模様、レザー(皮シボ)模様、大理石、花崗岩、砂岩等の石材表面の石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
本実施形態における装飾層22は、図1に示すように、化粧板1に木目模様を付与する。
装飾層22の厚さは、製品特性等に応じて適宜調整することができるが、例えば0.1〜20μmである。
第1層
第1層3は、特許文献5(国際公報第2016/148091号)に記載の離型層に相当する。
図3及び図4に示すように、第1層3は、支持シート2の表面S21の一部に、例えば所望の模様状で設けられている。第1層3は、隣接する第2層4よりも厚さが小さい部分を有しており、この部分に第3層5が形成されている。
支持シート2の表面S21のうち、第1層3が設けられる領域は、連続した1つの領域であってもよいし、不連続な複数の領域であってもよい。第1層3は、連続した1つの層で構成されていてもよいし、不連続な複数の層で構成されていてもよい。第1層3が連続した1つの層で構成される場合、第1層3の厚さは一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。第1層3が不連続な複数の層で構成される場合、各層の厚さは一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。第1層3が不連続な複数の層で構成される場合、ある層の厚さと別の層の厚さは同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1層3の厚さは特に限定されないが、好ましくは0.1〜100μm、さらに好ましくは1〜20μmである。
第1層3は、例えば、樹脂層である。樹脂層としては、例えば、硬化樹脂層、熱可塑性樹脂層等が挙げられる。第1層3は、異なる材料で構成された2種以上の層を含んでもよい。
硬化樹脂層は、硬化性樹脂組成物の硬化により形成された層であり、硬化性樹脂の硬化物を含む。硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が挙げられる。表面硬度(耐傷性)、凸形状保持性、生産性等の観点から、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂の少なくとも一部が電離放射線硬化性樹脂であることが好ましく、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂の全部が電離放射線硬化性樹脂であることがさらに好ましい。
第1層3は、支持シート2の表面S21に所定のパターンで形成されていることが好ましく、装飾層22が形成する絵柄模様のうち視覚的に凹部又は低光沢(艷消)としたい領域と位置同調したパターンで形成されていることがさらに好ましい。第1層3が形成するパターンとしては、例えば、装飾層22が木目模様の場合は木目板の導管部、春材領域等の凹部又は低光沢領域、石目模様の場合はトラバーチン大理石板の凹陥部、花崗岩板の劈開面の凹部等の石板表面凹凸、布目模様の場合は布表面テクスチャア、レザー模様の場合は皮シボの皺形状、タイル貼模様や煉瓦積模様の場合は目地凹部、其の他、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝、文字、記号、幾何学模様等のパターンが挙げられる。
第1層3は、シリコーン系離型剤を含んでもよい。第1層3に含まれるシリコーン系離型剤は、第1層3の形成原料に添加されるシリコーン系離型剤(シリコーンオイル)に由来する。第1層3の形成原料に添加されるシリコーン系離型剤は、反応性シリコーン系離型剤であってもよいし、非反応性シリコーン系離型剤であってもよい。第1層3の形成原料に添加されるシリコーン系離型剤が反応性シリコーン系離型剤である場合、シリコーン系離型剤は、第1層3のその他の成分(例えば、硬化性樹脂の硬化物等)と結合した状態で第1層3に含まれ得る。シリコーン系離型剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
第2層
図3及び図4に示すように、第2層4は、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部に、第1層3の一部又は全体を囲繞するように形成されている。「支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部」は、支持シート2の第1表面S1側の表面S21のうち、第1層3が形成されていない領域を意味する。支持シート2の第1表面S1側の表面S21のうち、第2層4が形成される領域は、表面S21の残部の全体であってもよいし、表面S21の残部の一部であってもよい。支持シート2の表面S21のうち、第2層4が形成される領域は、連続した1つの領域であってもよいし、不連続な複数の領域であってもよい。第2層4は、連続した1つの層で構成されていてもよいし、不連続な複数の層で構成されていてもよい。第2層4が連続した1つの層で構成される場合、第2層4の厚さは一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。第2層4が不連続な複数の層で構成される場合、各層の厚さは一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。第2層4が不連続な複数の層で構成される場合、ある層の厚さと別の層の厚さは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
支持シート2の第1表面S1側の表面S21のうち、第2層4が形成される領域の面積(Sa)と、第1層3が形成される面積(Sb)との比(Sa:Sb)は、好ましくは3:7〜9:1、さらに好ましくは5:5〜8:2である。面積比が上記範囲内であると、化粧板1によって表現される凹凸形状の意匠感がより鮮明となる。
図2〜図4に示すように、第2層4は、第3層5の第1表面S1側の表面S51を露出させる開口部40を有する。第2層4の開口部40は、平面視において、第1層3と位置同調している。本発明において、「位置同調」とは、平面視において、第2層4の開口部40の少なくとも一部が、第1層3の少なくとも一部と重なっていることを意味する。第2層4の開口部40は、平面視において第1層3と重ならない部分を有していてもよいが、第2層4の開口部40の全体が、第1層3の少なくとも一部と重なっていることが好ましい。第1層3は、平面視において第2層4の開口部40と重ならない部分を有していてもよい。
図2〜図4に示すように、第2層4の開口部40は、化粧板1の第1表面S1に凹部7を形成している。凹部7の底面は、第3層5の第1表面S1側の表面S51により形成されている。
凹部7の深さは、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは2〜30μmである。凹部7の深さが上述の範囲内であると、化粧板1が表現する凹凸形状の意匠感がより鮮明となる。
凹部7の深さは、化粧板1の第1表面S1のうち、第3層5が形成されていない領域(第2層4が形成されている領域)と、第3層5が形成されている領域(被覆層CLの第1層被覆部分CL1のうち第1表面S1側の部分CL11が剥離された領域)との高低差として測定される。測定は、株式会社小坂研究所製 三次元表面粗さ測定器SE−30Kを使用して、JIS B 0601:2013に規定された方法に従って実施される。表面の最大高さ粗さ(Rz)を高低差のパラメ−タ−として使用し、10箇所の平均値を「高低差」とする。
第2層4は、例えば、樹脂層である。樹脂層としては、例えば、硬化樹脂層、熱可塑性樹脂層等が挙げられる。第2層4は、異なる材料で構成された2種以上の層を含んでもよい。
硬化樹脂層は、硬化性樹脂組成物の硬化により形成された層であり、硬化性樹脂の硬化物を含む。硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が挙げられる。第1層3が、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化により形成された硬化樹脂層である場合、第2層4は、熱硬化性樹脂組成物の硬化により形成された硬化樹脂層であることが好ましい。
第2層4の厚さは、第1層3の厚さとの関係で適宜調整することができるが、好ましくは50〜500μm、さらに好ましくは50〜300μmである。
第2層4は、無機フィラーを含有する。無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、カオリン、クレー、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、焼成タルク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム等が挙げられる。無機フィラーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
第2層4は、有機フィラーを含有してもよい。有機フィラーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;フッ素系樹脂;スチレン系樹脂;エポキシ系樹脂;メラミン系樹脂;尿素系樹脂;アクリル系樹脂;フェノール系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂等が挙げられる。有機フィラーは、これらの樹脂の共重合体であってもよい。有機フィラーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
第2層4に含有される無機フィラーは、アルミナであることが好ましい。
第2層4に含有される無機フィラーの形状は特に限定されない。無機フィラーの形状としては、例えば、球状、粒状、針状、鱗片状(フレーク状)、不定形状等が挙げられる。
第2層4に含有される無機フィラーの平均粒径は、好ましくは3μm以上50μm以下、さらに好ましくは5μm以上30μm以下である。なお、平均粒径は、レーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。
第2層4中の無機フィラーの含有量は、第2層4に含有される樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。
第2層4は、無機フィラーの濃度勾配を有する。具体的には、第2層4のうち、第2層4の第1表面S1側の表面S41と、第1層3の第1表面S1側の表面S31との間に位置する部分41における無機フィラー濃度は、第1表面S1側から第2表面S2側に向けて減少している。
第2層4が所望の無機フィラーの濃度勾配を有することは、第2層4の部分41のうち、厚さ方向Zに隣接する任意の2領域の無機フィラー濃度を測定することにより確認される。測定の結果、第2表面S2側の領域の無機フィラー濃度が、第1表面S1側の領域の無機フィラー濃度よりも小さければ、第2層4が所望の無機フィラーの濃度勾配を有すると判断される。
第2層4中の無機フィラー濃度の具体的な測定方法は次の通りである。図3及び図4に示すように、化粧板1を厚さ方向Zに延在する平面で切断して形成される切断面において、第1層3の第1表面S1側の表面S31上の点のうち最も第1表面S1側に位置する点を通って、化粧板1の厚さ方向Zに垂直な方向に延在する第1仮想平面P1により、第2層4を、第1表面S1側に位置する部分41と、第2表面S2側に位置する部分42とに分割する。第2層4の部分41は、第2層4のうち、第2層4の第1表面S1側の表面S41と、第1層3の第1表面S1側の表面S31との間に位置する部分に相当する。同切断面において、第2層4の第1表面S1側の表面S41と、第1層3の第1表面S1側の表面S31との間を通って、化粧板1の厚さ方向Zに垂直な方向に延在する第2仮想平面P2により、第2層4の部分41を、第1表面S1側に位置する第1部分411と、第2表面S2側に位置する第2部分412とに分割する。なお、第2仮想平面P2は、第2層4の第1表面S1側の表面S41又は第1層3の第1表面S1側の表面S31のいずれとも交差しない仮想平面である。同切断面において、第1部分411及び第2部分412のうち、第2仮想平面P2を介して隣接する領域(第2仮想平面の近傍に位置する領域)を電子顕微鏡(例えば、SEM、TEM、STEM等)で観察し、電子顕微鏡像から、第1部分411及び第2部分412における単位面積当たりの無機フィラーの個数(個/cm2)を求める。無機フィラーの個数のカウントには、画像処理ソフトウェアを使用することができる。第2部分412における単位面積当たりの無機フィラーの個数が、第1部分411における単位面積当たりの無機フィラーの個数よりも少なければ、第2層4は所望の無機フィラーの濃度勾配を有すると判断することができる。なお、第2層4の部分42における無機フィラー濃度(単位面積当たりの無機フィラーの個数)は、通常、第2部分412における無機フィラー濃度(単位面積当たりの無機フィラーの個数)よりも小さい。
第2層4が有する無機フィラーの濃度勾配は、後述する化粧板1の製造方法の特徴を反映している。すなわち、第2層4の前駆層である被覆層CLは、無機フィラーの濃度勾配を有し、被覆層CLのうち、被覆層CLの第1表面S1側の表面SL1と、第1層3の第1表面S1側の表面S31との間に位置する部分L1における無機フィラー濃度は、第1表面S1側から第2表面S2側に向けて減少している。第2層4が有する無機フィラーの濃度勾配は、被覆層CLが有する無機フィラーの濃度勾配に起因する。
第2層4は、シリコーン系離型剤を含んでもよい。第2層4に含まれるシリコーン系離型剤は、第2層4の形成原料に添加されるシリコーン系離型剤(シリコーンオイル)に由来する。第2層4の形成原料に添加されるシリコーン系離型剤は、反応性シリコーン系離型剤であってもよいし、非反応性シリコーン系離型剤であってもよいが、好ましくは、非反応性シリコーン系離型剤である。第2層4の形成原料に添加されるシリコーン系離型剤が反応性シリコーン系離型剤である場合、シリコーン系離型剤は、第2層4のその他の成分(例えば、硬化性樹脂の硬化物等)と結合した状態で第2層4に含まれ得る。シリコーン系離型剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
第2層4の形成原料として熱硬化性樹脂組成物が使用され、熱硬化性樹脂組成物が未硬化状態にある水溶性熱硬化性樹脂組成物(例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、スルホンアミド樹脂、グリオキザール樹脂、グアナミン樹脂等)を含む場合、シリコーン系離型剤として、ポリエーテル変性シリコーンを使用することが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンは、水溶性、水分散性等の特性を有するので、シリコーン系離型剤がポリエーテル変性シリコーンであると、シリコーン系離型剤が水溶性熱硬化性樹脂組成物と混和しやすくなり、シリコーン系離型剤の局在化を防止しつつ、シリコーン系離型剤の離型性を効果的に発揮させることができる。第2層4は、ポリエーテル変性シリコーン以外の非反応性シリコーンを含んでいてもよい。ポリエーテル変性シリコーン以外の非反応性シリコーンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
第2層4の形成原料として熱硬化性樹脂組成物が使用され、熱硬化性樹脂組成物が未硬化状態にある水溶性熱硬化性樹脂組成物(例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、スルホンアミド樹脂、グリオキザール樹脂、グアナミン樹脂等)を含む場合、シリコーン系離型剤として、6以上16以下のHLB値を有するシリコーン系離型剤(特に、6以上16以下のHLB値を有するポリエーテル変性シリコーン)を使用することが好ましい。シリコーン系離型剤のHLB値は、さらに好ましくは10以上15以下、さらに一層好ましくは12以上14以下である。HLB値が高いほど、シリコーン系離型剤が水溶性熱可塑性樹脂と混和しやすくなり、シリコーン系離型剤の局在化を防止することができるが、HLB値が高すぎると、シリコーン系離型剤の離型性が低下するおそれがある。シリコーン系離型剤のHLB値が上記範囲であると、シリコーン系離型剤の局在化を防止しつつ、シリコーン系離型剤の離型性を効果的に発揮させることができる。なお、HLB(親水性親油性バランス:Hydrophile-Lypophile Balance)値は、界面活性剤の水及び油への親和性を示す値であり、グリフィン法により次式から求めることができる。
HLB=20×[(界面活性剤中に含まれる親水基の分子量)/(界面活性剤の分子量)]
熱硬化性樹脂組成物
第1層3及び/又は第2層4の形成原料としては、熱硬化性樹脂組成物を使用することができる。特に、第2層4の形成原料として、熱硬化性樹脂組成物を使用することが好ましい。熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。第2層4の形成原料として使用される熱硬化性樹脂組成物は、メラミン樹脂を含むことが好ましい。メラミン樹脂は、耐熱性及び耐汚染性があり、硬度が高い点で好ましい。
熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、熱硬化性樹脂の硬化反応に関与する成分、例えば、触媒、硬化剤(架橋剤、重合開始剤、重合促進剤等を含む)等を含んでもよい。例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の硬化剤としては、イソシアネート、有機スルホン酸塩等が挙げられ、エポキシ樹脂等の硬化剤としては、有機アミン等が挙げられ、不飽和ポリエステル樹脂のラジカル開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、アゾイソブチルニトリル等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物
第1層3及び/又は第2層4の形成原料としては、電離放射線硬化性樹脂組成物を使用することができる。特に、第1層3の形成原料として、電離放射線硬化性樹脂組成物を使用することが好ましい。電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線としては、例えば、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等が挙げられるが、好ましくは、紫外線、電子線等である。
電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合、エポキシ基等を分子中に有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー等の1種以上を使用することができる。特に、多官能モノマー及びオリゴマーの1種以上を使用することが好ましい。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂、シロキサン等のケイ素樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
重合性モノマーとしては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。特に、多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを併用してもよい。
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系等が挙げられる。また、重合性オリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーとしては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上である。電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、第1層3及び/又は第2層4を形成する際、形成原料として使用される硬化性樹脂組成物が、基材シート21へ浸み込みにくいので、第1層3及び/又は第2層4を形成しやすい。この効果は、基材シート21が多孔質シートである場合に大きい。
電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは80000以下、さらに好ましくは50000以下である。電離放射線硬化性樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、樹脂組成物の粘度を、塗布に適した粘度に調整しやすい。
なお、「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質に用いて測定される値である。
電離放射線硬化性樹脂は、重量平均分子量が500以上である多官能モノマー及びオリゴマーから選択される少なくとも1種であることが好ましい。このような多官能モノマー又はオリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、電離放射線硬化性樹脂の硬化反応に関与する成分、例えば、光重合開始剤(増感剤)を含んでもよい。例えば、紫外線の照射により電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させる場合、電離放射線硬化性樹脂組成物は光重合開始剤(増感剤)を含むことが好ましい。なお、電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するので、電子線の照射により電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させる場合、電離放射線硬化性樹脂組成物は光重合開始剤(増感剤)を含まなくてもよい。
電離放射線硬化性樹脂がラジカル重合性不飽和基を有する場合、光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種を使用することができる。また、電離放射線硬化性樹脂組成物がカチオン重合性官能基を有する場合、光重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種を使用することができる。
光重合開始剤の添加量は特に限定されないが、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して、通常0.1〜10質量部である。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、耐熱性及び架橋密度を向上させるために、多官能の重合性モノマーを含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物
第1層3及び/又は第2層4の形成原料としては、熱可塑性樹脂組成物を使用することができる。熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン(高密度、中密度又は低密度)、ポリプロピレン(アイソタクチック型又はシンジオタクチック型)、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等)、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
シリコーン系離型剤
シリコーン系離型剤は、第1層3及び/又は第2層4に含まれ得る。シリコーン系離型剤は、オルガノポリシロキサン構造を基本構造とし、側鎖及び/又は末端に有機基が導入された変性シリコーンである。有機機が導入される末端は、片方の末端であってもよいし、両方の末端であってもよい。
反応性シリコーン系離型剤は、側鎖及び/又は末端に有機基が導入された変性シリコーンのうち、導入する有機基の性質によって反応性を有するものをいう。反応性シリコーン系離型剤としては、例えば、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、異種官能基変性シリコーン等が挙げられる。より具体的には、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、メルカプト変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、カルビノール変性ポリジメチルシロキサン、フェノール変性ポリジメチルシロキサン、メタクリル変性ポリジメチルシロキサン、異種官能基変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。反応性シリコーン系離型剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
非反応性シリコーン系離型剤は、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイル基、アリル基等の反応性官能基を有しないシリコーンであれば特に制限されない。非反応性シリコーン系離型剤としては、例えば、ポリシロキサンからなるシリコーンのほか、ポリエーテル変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、フロロアルキル変性シリコーン、長鎖アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、高級脂肪酸アミド変性シリコーン、フェニル変性シリコーン等が挙げられる。より具体的には、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン、フロロアルキル変性ポリジメチルシロキサン、長鎖アルキル変性ポリジメチルシロキサン、高級脂肪酸エステル変性ポリジメチルシロキサン、高級脂肪酸アミド変性ポリジメチルシロキサン、フェニル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。非反応性シリコーン系離型剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリエーテル変性シリコーン
第2層4の形成原料として熱硬化性樹脂組成物が使用され、熱硬化性樹脂組成物が水溶性熱可塑性樹脂組成物(例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、スルホンアミド樹脂、グリオキザール樹脂、グアナミン樹脂等)を含む場合、第2層4に含まれるシリコーン系離型剤として、ポリエーテル変性シリコーンを使用することが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンは、主鎖がポリシロキサンであり、1個以上のポリオキシアルキレン基を置換基として有するものである。主鎖は環を形成していてもよい。
ポリエーテル変性シリコーンにおけるポリオキシアルキレン基の結合位置は、任意の適切な結合位置であり得る。例えば、ポリオキシアルキレン基は、主鎖の両末端に結合されていてもよいし、主鎖の片末端に結合されていてもよいし、側鎖に結合されていてもよい。ポリエーテル変性シリコーンは、ポリオキシアルキレン基が側鎖に結合された側鎖型ポリエーテル変性シリコーンであることが好ましい。
側鎖型ポリエーテル変性シリコーンは、例えば、一般式(1)で表される。
一般式(1)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を表し、R1は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R2は水素原子又は炭素数1〜15のアルキル基を表し、R3は−(C2H4O)a−(C3H6O)b−で表されるポリオキシアルキレン基であり、aは1〜50であり、bは0〜30であり、mは1〜7000であり、nは1〜50である。
一般式(1)中、Rは、好ましくはメチル基である。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、信越シリコーン(株)製の商品名「KF−6011」(HLB:14.5)、「KF−6011P」(HLB:14.5)、「KF−6012」(HLB:7.0)、「KF−6013」(HLB:10.0)、「KF−6015」(HLB:4.5)、「KF−6016」(HLB:4.5)、「KF−6017」(HLB:4.5)、「KF−6017P」(HLB:4.5)、「KF−6043」(HLB:14.5)、「KF−6004」(HLB:9.0)、「KF351A」(HLB:12)、「KF352A」(HLB:7)、「KF353」(HLB:10)、「KF354L」(HLB:16)、「KF355A」(HLB:12)、「KF615A」(HLB:10)、「KF945」(HLB:4)、「KF−640」(HLB:14)、「KF−642」(HLB:12)、「KF−643」(HLB:14)、「KF−644」(HLB:11)、「KF−6020」(HLB:4)、「KF−6204」(HLB:10)、「X22−4515」(HLB:5)等の側鎖型(直鎖タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル;信越シリコーン(株)製の商品名「KF−6028」(HLB:4.0)、「KF−6028P」(HLB:4.0)等の側鎖型(分岐鎖タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル;信越シリコーン(株)製の商品名「KF−6038」(HLB:3.0)等の側鎖型(分岐鎖タイプ、アルキル共変性タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。
第3層
図3及び図4に示すように、第3層5は、第1層3の第1表面S1側の表面S31に形成されている。図2〜図4に示すように、第3層5は、第1層3の第1表面S1側の表面S31を被覆し、第1層3の第1表面S1側の表面S31を保護する。これにより、第1層3(離型層)の露出による凹部7の耐磨耗性等の物性の低下を防止することができる。
図3及び図4に示すように、第3層5の第1表面S1側の表面S51は、粗面である。すなわち、第3層5の第1表面S1側の表面S51には、微小凹凸部が形成されている。粗面は、JIS B0601(2001年)に規定される10点平均粗さRzJISの値が1〜100μm程度であることが好ましい。
第3層5は、第1層3の第1表面S1側の表面S31の全体を被覆していることが好ましいが、第1層3の第1表面S1側の表面S31の一部を被覆していてもよい。第1層3の第1表面S1側の表面S31のうち、第3層5で被覆されていない部分は、凹部7の底面の一部を形成する。平面視において、第1層3の第1表面S1側の表面S31のうち、第3層5で被覆されている部分の面積は、第1層3の第1表面S1側の表面S31の面積の80%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることがさらに一層好ましい。
第3層5の前駆層及び第2層4の前駆層はともに被覆層CLである。すなわち、第3層5及び第2層4はともに被覆層CLから形成される。したがって、第2層4が樹脂層である場合、第2層も同一種類の樹脂で構成された樹脂層である。なお、図3及び図4では、第2層4と第3層5との境界が便宜上実線で示されているが、第3層5の端縁部の少なくとも一部は、実際には、第2層4と一体となっている。
第3層5は、第2層4に含有される無機フィラーと同一種類の無機フィラーを含有することが好ましい。これにより、第3層5の耐摩耗性が向上し、第3層5による第1層3の保護性能が向上する。なお、第3層5が、第2層に含有される無機フィラーと同一種類の無機フィラーを含有するか否かは、第3層5の前駆層である被覆層CL中の無機フィラーの濃度勾配に依存する。
第3層5の厚さは、第1層3の厚さ及び第2層4の厚さとの関係で適宜調整することができるが、好ましくは0.1〜5.0μm、さらに好ましくは1.0〜2.0μmである。
補強層
補強層6は、化粧板1を補強する層である。図3及び図4に示すように、補強層6は、支持シート2の第2表面S2側の表面S22に積層されている。補強層6は、例えば、多孔質シートと、多孔質シートの空隙に存在する熱硬化性樹脂の硬化物とを有する。補強層6は、例えば、熱硬化性樹脂含浸シートを加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させることにより形成することができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化性ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂含浸シートとしては、例えば、メラミン樹脂化粧板等のコア紙として汎用されているフェノール樹脂含浸紙等が挙げられる。
フェノール樹脂含浸紙は、一般に、坪量150〜250g/m2のクラフト紙にフェノール樹脂を含浸率45〜60%となるように含浸し、100〜140℃で乾燥させることにより製造された紙である。フェノール樹脂含浸紙には、市販品を使用することができる。フェノール樹脂含浸紙を積層する際には、必要に応じて、支持シート2の第2表面S2側の表面S22にコロナ放電処理を施したり、プライマー層を形成したりしてもよい。
化粧板1は、必要に応じて、補強層6の両面のうち一方又は両方に積層されたその他の補強層を有していてもよい。例えば、化粧板1がメラミン樹脂化粧板である場合、補強層6として使用されるコア紙の黒褐色の色調が化粧板表面から透視されることを隠蔽するために、チタン白顔料を混抄した所謂チタン紙からなるバリアー紙を、コア紙と支持シート2との間に積層することができる。また、熱圧成形の際に生じる化粧板1の反りを相殺するために、チタン紙からなるバランス紙等を、補強層6の裏面(表面S22とは反対側の面)に積層することができる。これらのその他の補強層は、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を含む未硬化状態の樹脂組成物を含浸した上で、その他の層(例えば、支持シート2)と共に熱圧成形することにより、その他の層と一体化することができる。
接着剤層
化粧板1は、必要に応じて、接着剤層を有していてもよい。接着剤層は、例えば、支持シート2と第1層3との間、及び/又は、支持シート2と第2層4との間に、これらの層の密着性を高めるため形成することができる。接着剤層は、透明性接着剤層であることが好ましい。「透明性」には、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも包含される。
接着剤は特に限定されず、化粧板の分野で公知の接着剤を適宜選択して使用することができる。接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。接着剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も使用可能である。
接着剤層の厚さは特に限定されないが、乾燥後の厚さは、例えば0.1〜30μm、好ましくは1〜20μmである。
プライマー層
化粧板1は、支持シート2の表面S22、補強層6の裏面(表面S22と反対側の面)等に、必要に応じて、プライマー層を有していてもよい。プライマー層を設けると、例えば、化粧板1と被着材とを積層して、化粧部材を製造する際に有用である。被着材としては、例えば、各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品、シート(或いはフィルム)等が挙げられる。具体的には、木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の板材や立体形状物品等として使用される木質部材;鉄、アルミニウム等の板材や鋼板、立体形状物品、あるいはシート等として使用される金属部材;ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、ALC(軽量気泡コンクリート)板等の非陶磁器窯業系材料等の板材や立体形状物品等として使用される窯業部材;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ゴム等の板材、立体形状物品、あるいはシート等として使用される樹脂部材等が挙げられる。また、これらの部材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
被着材は、用途に応じて適宜選択すればよく、壁、天井、床等の建築物の内外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具を用途とする場合は、木質部材、金属部材、樹脂部材、これらの組み合わせた部材が好ましい。被着材の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、通常0.1〜5mm、好ましくは0.1〜3mmである。
プライマー層は、公知のプライマー剤を、支持シート2の第2表面S2側の表面S22、補強層6の裏面(表面S22と反対側の面)等に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系樹脂)等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜調整することができる。
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1〜100g/m2、好ましくは0.1〜50g/m2である。プライマー層の厚さは特に限定されないが、通常0.01〜10μm、好ましくは0.1〜1μmである。
化粧板1は、鮮明な凹凸形状が賦形されており、グロスマット調の凹凸形状を含む凹凸形状の意匠感を表現することができるので、意匠性の高い化粧板である。化粧板1は、所定の成形加工等を施し、各種用途に用いることができる。例えば、化粧板1を木質基材、金屬基材、非金屬無機質基材、樹脂基材等の基材上に積層し、壁、天井、床等の建築物の内装、車輛、船舶等の乗物の内裝、家具又は弱電又はOA機器のキャビネット等に利用することができる。木質基材として、具体的には、杉、檜、欅、松、樫、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材から作られた突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、集成材、チップボード、又はチップボードが積層された複合基材等が挙げられる。金屬基材としては、鉄、銅、アルミニウム、チタニウム等の金屬単体、或いはこれら金屬の1種以上を含む合金からなる基材等が挙げられる。非金屬無機材料基材としては、珪酸カルシウム、石膏、セメント、陶磁器等の窯業系材料、或いは花崗岩、石灰岩等の石材からなる基材等が挙げられる。樹脂基材としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂等からなる基材等が挙げられる。
化粧板の製造方法
以下、図面に基づいて、化粧板1の製造方法の一実施形態について説明する。図5〜図7は、化粧板1の製造方法の一実施形態を説明するための説明図である。なお、図6は、図5の続きであり、図7は、図6の続きである。
本実施形態に係る化粧板1の製造方法は、
(1)支持シート2を準備する工程、
(2)支持シート2の第1表面S1側の表面S21の一部に第1層3を形成する工程、
(3)支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部及び第1層3の第1表面S1側の表面S31を被覆する被覆層CLを形成する工程、
(4)被覆層CLの第1層被覆部分CL1のうち第1表面S1側の部分CL11を剥離して、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部に第2層4を形成するとともに、第1層3の第1表面S1側の表面S31に第3層5を形成する工程
を含む。
以下、各工程について説明する。
工程(1)
工程(1)では、図5(a)に示すように、支持シート2を準備する。支持シート2は、化粧板1の第1表面S1側に位置する表面S21と、化粧板1の第2表面S2側に位置する表面S22とを有する。
図5(a)に示すように、支持シート2は、基材シート21と、基材シート21の第1表面S1側の表面S211に設けられた装飾層22とを有する。
支持シート2は、基材シート21の表面S211に装飾層22を形成することにより製造することができる。基材シート21の表面S211に装飾層22を形成する前に、基材シート21の表面S211に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の処理を施してもよい。これにより、装飾層22の密着性を高めることができる。
装飾層22は、例えば、着色層、絵柄層又はこれらの組み合わせである。
着色層は、例えば、基材シート21の表面S211の全面に形成されたベタ層である。ベタ層の形成方法としては、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等のコーティング法が挙げられる。
絵柄層は、例えば、印刷法により基材シート21の表面S211の一部又は全体或いは着色層の表面の一部又は全体に形成された印刷層である。絵柄層の形成に使用される印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。
装飾層22の形成に使用されるインキは、例えば、溶剤又は分散媒と、着色剤、バインダー樹脂等の成分との混合物である。インキは、その他の成分として、着色剤、体質顔料、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を含んでもよい。インキは、シートのVOC(揮発性有機化合物)を低減する観点から、水性組成物であってもよい。
インキに含まれる着色剤としては、例えば、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。着色剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキに含まれるバインダー樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
インキに含まれる溶剤又は分散媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。溶剤又は分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
装飾層22は、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法等の方法により形成してもよい。また、装飾層22がアルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属層(金属薄膜)である場合、蒸着法、スパッタリング法、エッチング法等の方法により装飾層22を形成することができる。
装飾層22の厚さは、製品特性に応じて適宜調整することができるが、インキ塗工時の厚さは、例えば1〜200μmであり、乾燥後の厚さは、例えば0.1〜20μmである。
工程(2)
工程(2)では、図5(b)に示すように、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の一部に第1層3を形成する。これにより、支持シート2と、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の一部に形成された第1層3とを備える中間体M1が形成される。
第1層3を形成するための樹脂組成物(塗工液)としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物等を使用することができる。熱硬化性樹脂組成物を使用する場合、例えば、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の一部に熱硬化性樹脂組成物を所定の模様状に印刷し、加熱して硬化させることにより、第1層3を形成することができる。電離放射線硬化性樹脂組成物を使用する場合、例えば、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の一部に電離放射線硬化性樹脂組成物を所定の模様状に印刷し、電離放射線を照射して硬化させることにより、第1層3を形成することができる。熱可塑性樹脂組成物を使用する場合、例えば、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の一部に熱可塑性樹脂組成物を所定の模様状に印刷して乾燥させることにより、第1層3を形成することができる。第1層3の形成に使用される印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。第1層3を形成するための樹脂組成物は印刷法以外の方法で支持シート2の第1表面S1側の表面S21の一部に塗布してもよく、樹脂組成物を塗布する方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアコート法等の塗布法が挙げられる。
第1層3を形成するための樹脂組成物がシリコーン系離型剤(シリコーンオイル)を含む場合、シリコーン系離型剤は、樹脂組成物の硬化時に、第1層3の表面に配向するので、第1層3に離型性が付与される。これにより、工程(4)において、被覆層CLの第1層被覆部分CL1のうち第1表面S1側の部分CL11を剥離する際、部分CL11の剥離性を向上させることができる。
第1層3を形成するための樹脂組成物(塗工液)としては、電離放射線硬化性樹脂を使用することが好ましい。この場合、第1層3は、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含む硬化樹脂層であり、工程(2)は、(2−1)電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を使用して、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の一部を被覆する電離放射線硬化性樹脂組成物層を形成する工程、及び、(2−2)電離放射線硬化性樹脂組成物層を硬化させて硬化樹脂層を第1層3として形成する工程を含む。
電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させるための電離放射線として紫外線を使用する場合には、紫外線源として、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源を使用することができる。紫外線の波長は、例えば、190〜380nmである。電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させるための電離放射線として電子線を使用する場合には、電子線源として、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線加速器を使用することができる。電子線のエネルギーは、好ましくは100〜1000keV、さらに好ましくは100〜300keVである。電子線の照射量は、好ましくは2〜15Mradである。
第1層3を形成するための塗工液は、体質顔料を含むことが好ましい。これにより、塗工液にチキソトロピー性を付与することができ、版を用いて塗工液を印刷する際に、塗工液の模様形状を維持させることができる。体質顔料としては、例えば、シリカ、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。これらのうち、材料設計の自由度が高く、意匠性、白さ及びインキとしての塗工安定性に優れた材料であるシリカが好ましく、特に微粉末のシリカが好ましい。
塗工液における体質顔料の含有量は、塗工液に含まれる樹脂100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15質量部、さらに好ましくは2〜15質量部であり、さらに一層好ましくは5〜15質量部である。体質顔料の含有量を上記範囲とすることにより、塗工液に十分なチキソトロピー性を付与することができるとともに、***形状及び微細凹凸面の発現を付与する効果が得られる。
塗工液は、無色であってもよいし、着色されていてもよい。着色する場合には、装飾層で使用する着色剤と同様のものを使用することができる。
塗工液は、粘度を調整する目的で溶媒を含んでもよい。溶媒としては、水;トルエン、キシレン等の炭化水素化合物;メタノール、エタノール、メチルグリコール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル化合物;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;テロラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。塗工液中の溶媒の量は、塗工液の粘度に応じて適宜設定することができる。
塗工液には、望まれる物性に応じて、公知の添加剤を適宜配合することができる。添加剤として、例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、熱ラジカル発生剤、アルミキレート剤等が挙げられる。
第1層3は、支持シート2の第1表面S1側の表面S21に所定のパターンで形成することが好ましい。第1層3のパターンは、化粧板1表面において凹部又は低光沢(艷消)領域となる領域に対応することが好ましい。第1層3のパターンとしては、例えば、木目板の導管部、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝、文字、記号、幾何学模様等が挙げられる。
第1層3の厚さは特に限定されず、塗工時の厚さは、例えば0.1〜100μm、乾燥後の厚さは、例えば1〜20μmである。
工程(3)
例えば、被覆層CLが、熱硬化性樹脂の硬化物を含む硬化樹脂層である場合、工程(3)は、(3−1)熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を使用して、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部及び第1層3の第1表面S1側の表面S31を被覆する熱硬化性樹脂組成物層を形成する工程、及び、(3−2)熱硬化性樹脂組成物層を硬化させて硬化樹脂層を被覆層CLとして形成する工程を含む。
例えば、基材シート21が多孔質シートであり、被覆層CLが、熱硬化性樹脂の硬化物を含む硬化樹脂層である場合、工程(3)は、(3−1)熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を使用して、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部及び第1層3の第1表面S1側の表面S31を被覆する熱硬化性樹脂組成物層を形成する工程、及び、(3−2)熱硬化性樹脂組成物層を硬化させて硬化樹脂層を被覆層CLとして形成する工程を含み、工程(3−1)において、多孔質シートに熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、工程(3−2)において、多孔質シートに含浸させた熱硬化性樹脂組成物を硬化させることができる。
工程(3)では、まず、図5(c)に示すように、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部(すなわち、支持シート2の表面S21のうち第1層3が形成されていない領域)及び第1層3の第1表面S1側の表面S31を、第2層4を形成するための樹脂組成物(塗工液)で被覆し、必要に応じて乾燥する。これにより、支持シート2と、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の一部に形成された第1層3と、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部及び第1層3の第1表面S1側の表面S31を被覆する樹脂組成物層PCとを備える中間体M2が形成される。
第2層4を形成するための樹脂組成物(塗工液)としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂組成物等を使用することができる。第1層3を形成するための樹脂組成物として電離放射線硬化性樹脂を使用する場合、第2層4を形成するための樹脂組成物として、熱硬化性樹脂組成物を使用することが好ましい。
塗工液は、粘度を調整する目的で溶媒を含んでもよい。溶媒としては、水;トルエン、キシレン等の炭化水素化合物;メタノール、エタノール、メチルグリコール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル化合物;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;テロラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。塗工液中の溶媒の量は、塗工液の粘度に応じて適宜設定することができる。
塗工液には、望まれる物性に応じて、公知の添加剤を適宜配合することができる。添加剤として、例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、熱ラジカル発生剤、アルミキレート剤等が挙げられる。
支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部及び第1層3の第1表面S1側の表面S31を樹脂組成物で被覆する際、樹脂組成物は、例えば、支持シート2の表面S21側から供給される。基材シート21として多孔質シートが使用される場合、供給された樹脂組成物のうち、一部は基材シート21に含浸し、多孔質シートに含浸されない残部は、支持シート2の表面S21の残部及び第1層3の表面S31を被覆する。なお、樹脂組成物は、第1層3には含浸されず、第1層3を被覆する。樹脂組成物の基材シート21への含浸を促進するために、支持シート2の表面S21側からの樹脂組成物の供給に加えて、支持シート2の表面S22側からの樹脂組成物の供給を行ってもよい。基材シート21として多孔質シートが使用される場合、支持シート2の表面S22側からの樹脂組成物の供給のみを行ってもよい。支持シート2の表面S22側からの樹脂組成物の供給のみが行われる場合も同様に、供給された樹脂組成物のうち、一部は、基材シート21に含浸し、多孔質シートに含浸されない残部は、支持シート2の表面S21の残部及び第1層3の表面S31を被覆する。樹脂組成物の供給方法としては、例えば、樹脂組成物への浸漬;キスコーター、コンマコーター等のコーターによる塗布;スプレー装置、シャワー装置等による吹き付け等が挙げられる。
なお、樹脂組成物は、第1層3の第1表面S1側の表面S31の全体を被覆していることが好ましいが、第1層3の第1表面S1側の表面S31の一部を被覆していてもよい。平面視において、第1層3の第1表面S1側の表面S31のうち、樹脂組成物で被覆されている部分の面積は、第1層3の第1表面S1側の表面S31の面積の90%以上であることが好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
樹脂組成物層PCの厚さは、第1層3の厚さとの関係で適宜調整することができるが、塗工時の厚さは、例えば2〜250μm、乾燥後の厚さは、例えば2〜50μmである。
多孔質シートの空隙に充填される樹脂組成物の充填率は、化粧板1に求められる性能、多孔質シートの空隙率等に応じて適宜調整することができる。樹脂組成物の充填率は、好ましくは30〜200%、さらに好ましくは50〜150%である。なお、樹脂組成物の充填率は、下記式により算出される。
充填率(%)=[(樹脂組成物を含浸させた後の多孔質シートの重量−樹脂組成物を含浸させる前の多孔質シートの重量)/樹脂組成物を含浸させる前の多孔質シートの重量]×100
樹脂組成物層PCを形成した後、硬化する前に、必要であれば、樹脂組成物層PCの表面の光沢を調整してもよい。例えば、樹脂組成物層PC上に光沢調整した賦型シートを積層した状態で硬化する方法、樹脂組成物層PC上にエンボス型板(テクスチャーを付けた鏡面板)を設置して硬化する方法等により、樹脂組成物層PCの表面の光沢を調整することができる。その後、工程(4)において、被覆層CLの第1層被覆部分CL1のうち第1表面S1側の部分CL11を剥離することにより、化粧板1の表面に賦型による細かな凹凸によって光沢を調整した部分と、被覆層CLの第1層被覆部分CL1のうち第1表面S1側の部分CL11を剥離することで得られる深いマット意匠部とを備えた立体的で深みのある意匠の化粧板1を得ることができる。
熱硬化性樹脂組成物を使用する場合、樹脂組成物層PCを加熱して硬化させることにより、硬化樹脂層が被覆層CLとして形成される。電離放射線硬化性樹脂組成物を使用する場合、樹脂組成物層PCに電離放射線を照射して硬化させることにより、硬化樹脂層が被覆層CLとして形成される。
第2層4を形成するための樹脂組成物がシリコーン系離型剤(シリコーンオイル)を含む場合、シリコーン系離型剤は、樹脂組成物の硬化時に、第2層4の表面に配向するので、第2層4に第1層3からの離型性が付与される。これにより、工程(4)において、被覆層CLの第1層被覆部分CL1のうち第1表面S1側の部分CL11を剥離する際、部分CL11の剥離性を向上させることができる。シリコーン系離型剤が非反応性シリコーンオイルであると、シリコーン系離型剤が第2層4の表面に配向しやすい。
第2層4の形成原料として熱硬化性樹脂組成物が使用され、熱硬化性樹脂組成物が未硬化状態にある水溶性熱硬化性樹脂組成物(例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、スルホンアミド樹脂、グリオキザール樹脂、グアナミン樹脂等)を含む場合、シリコーン系離型剤として、ポリエーテル変性シリコーンオイルを使用することが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンオイルは、水溶性、水分散性等の特性を有するので、シリコーン系離型剤がポリエーテル変性シリコーンオイルであると、シリコーン系離型剤が水溶性熱可塑性樹脂と混和しやすくなり、シリコーン系離型剤の局在化を防止しつつ、シリコーン系離型剤の離型性を効果的に発揮させることができる。また、未硬化状態にある水溶性熱硬化性樹脂組成物と混和したシリコーン系離型剤により、水溶性熱硬化性樹脂の硬化が阻害され、熱硬化性樹脂の硬化物の強度を低下させることが予想される。熱硬化性樹脂の硬化物の強度の低下は、工程(4)において、被覆層CLの第1層被覆部分CL1のうち第1表面S1側の部分CL11を剥離する際、部分CL11の剥離性の向上に寄与すると考えられる。熱硬化性樹脂組成物は、ポリエーテル変性シリコーンオイル以外の非反応性シリコーンオイルを含んでいてもよい。ポリエーテル変性シリコーンオイル以外の非反応性シリコーンは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
第2層4の形成原料として熱硬化性樹脂組成物が使用され、熱硬化性樹脂組成物が未硬化状態にある水溶性熱硬化性樹脂組成物(例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、スルホンアミド樹脂、グリオキザール樹脂、グアナミン樹脂等)を含む場合、シリコーン系離型剤として、6以上16以下のHLB値を有するシリコーン系離型剤(特に、6以上16以下のHLB値を有するポリエーテル変性シリコーンオイル)を使用することが好ましい。シリコーン系離型剤のHLB値は、さらに好ましくは10以上15以下、さらに一層好ましくは12以上14以下である。HLB値が高いほど、シリコーンオイル系離型剤が未硬化状態にある水溶性熱硬化性樹脂組成物と混和しやすくなり、シリコーン系離型剤の局在化を防止することができるが、HLB値が高すぎると、シリコーン系離型剤の離型性が低下するおそれがある。シリコーン系離型剤のHLB値が上記範囲であると、シリコーン系離型剤の局在化を防止しつつ、シリコーン系離型剤の離型性を効果的に発揮させることができる。また、未硬化状態にある水溶性熱硬化性樹脂組成物と混和したシリコーン系離型剤により、未硬化状態にある水溶性熱硬化性樹脂組成物の硬化が阻害され、熱硬化性樹脂の硬化物の強度を低下させることが予想される。熱硬化性樹脂の硬化物の強度の低下は、工程(4)において、被覆層CLの第1層被覆部分CL1のうち第1表面S1側の部分CL11を剥離する際、部分CL11の剥離性の向上に寄与すると考えられる。
シリコーン系離型剤(シリコーンオイル)の使用量は、第2層4を形成するための樹脂組成物に含まれる樹脂100質量に対して、通常0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜20質量部、さらに好ましくは3〜20質量部、さらに一層好ましくは3〜10質量部である。シリコーン系離型剤(シリコーンオイル)の使用量が上記範囲であると、工程(4)において、被覆層CLの第1層被覆部分CL1のうち第1表面S1側の部分CL11を剥離する際、部分CL11の剥離性を向上させることができる。
工程(3)では、図5(d)に示すように、樹脂組成物層PCの形成後、樹脂組成物層PC上に無機フィラーを含有する塗工液CSを塗布する。塗工液CSの塗布は、第2層4を形成するための樹脂組成物を乾燥する前に行ってもよいし、乾燥した後に行ってもよい。
樹脂組成物層PC上に塗工液CSを塗布すると、塗工液CS中の無機フィラーが樹脂組成物層PC中に浸透する。これにより、図5(e)に示すように、支持シート2と、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の一部に形成された第1層3と、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部及び第1層3の第1表面S1側の表面S31を被覆し、無機フィラーを含有する樹脂組成物層PCとを備える中間体M3が形成される。
塗工液CS中の無機フィラーが樹脂組成物層PC中に徐々に浸透することにより、中間体M3の樹脂組成物層PCには、無機フィラーの濃度勾配が生じている。樹脂組成物層PCのうち、樹脂組成物層PCの第1表面S1側の表面SC1と、第1層3の第1表面S1側の表面S31との間に位置する部分C1における無機フィラー濃度は、第1表面S1側から第2表面S2側に向けて減少している。
樹脂組成物層PCが所望の無機フィラーの濃度勾配を有することは、樹脂組成物層PCの部分C1のうち、厚さ方向Zに隣接する任意の2領域の無機フィラー濃度を測定することにより確認される。測定の結果、第2表面S2側の領域の無機フィラー濃度が、第1表面S1側の領域の無機フィラー濃度よりも小さければ、樹脂組成物層PCが所望の無機フィラーの濃度勾配を有すると判断される。
樹脂組成物層PC中の無機フィラー濃度の具体的な測定方法は次の通りである。図5(e)に示すように、中間体M3を厚さ方向Zに延在する平面で切断して形成される切断面において、第1層3の第1表面S1側の表面S31上の点のうち最も第1表面S1側に位置する点を通って、中間体M3の厚さ方向Zに垂直な方向に延在する第1仮想平面P1により、樹脂組成物層PCを、第1表面S1側に位置する部分C1と、第2表面S2側に位置する部分C2とに分割する。樹脂組成物層PCの部分C1は、樹脂組成物層PCのうち、樹脂組成物層PCの第1表面S1側の表面SC1と、第1層3の第1表面S1側の表面S31との間に位置する部分に相当する。同切断面において、樹脂組成物層PCの第1表面S1側の表面SC1と、第1層3の第1表面S1側の表面S31との間を通って、中間体M3の厚さ方向Zに垂直な方向に延在する第2仮想平面P2により、樹脂組成物層PCの部分C1を、第1表面S1側に位置する第1部分C11と、第2表面S2側に位置する第2部分C12とに分割する。なお、第2仮想平面P2は、樹脂組成物層PCの第1表面S1側の表面SC1又は第1層3の第1表面S1側の表面S31のいずれとも交差しない仮想平面である。同切断面において、第1部分C11及び第2部分C12のうち、第2仮想平面P2を介して隣接する領域(第2仮想平面の近傍に位置する領域)を電子顕微鏡(例えば、SEM、TEM、STEM等)で観察し、電子顕微鏡像から、第1部分C11及び第2部分C12における単位面積当たりの無機フィラーの個数(個/cm2)を求める。無機フィラーの個数のカウントには、画像処理ソフトウェアを使用することができる。第2部分C12における単位面積当たりの無機フィラーの個数が、第1部分C11における単位面積当たりの無機フィラーの個数よりも少なければ、樹脂組成物層PCは所望の無機フィラーの濃度勾配を有すると判断することができる。なお、樹脂組成物層PCの部分C2における無機フィラー濃度(単位面積当たりの無機フィラーの個数)は、通常、第2部分C12における無機フィラー濃度(単位面積当たりの無機フィラーの個数)よりも小さい。
塗工液CSとしては、例えば、無機フィラーを含有する熱硬化性樹脂組成物、無機フィラーを含有する電離放射線硬化性樹脂、無機フィラーを含有する熱可塑性樹脂組成物等を使用することができる。第2層4を形成するための樹脂組成物として、熱硬化性樹脂組成物を使用する場合、塗工液CSとして、無機フィラーを含有する熱硬化性樹脂組成物を使用することが好ましい。塗工液CSとして使用される熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂組成物の組成は、無機フィラーを含有する点を除き、第2層4を形成するための樹脂組成物(塗工液)と同様である。但し、塗工液CSは、通常、シリコーン系離型剤(シリコーンオイル)を含有しない。
塗工液CSに含有される無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、カオリン、クレー、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、焼成タルク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム等が挙げられる。塗工液CSに含有される無機フィラーは、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。塗工液CSは、有機フィラーを含有してもよい。有機フィラーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;フッ素系樹脂;スチレン系樹脂;エポキシ系樹脂;メラミン系樹脂;尿素系樹脂;アクリル系樹脂;フェノール系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂等が挙げられる。有機フィラーは、これらの樹脂の共重合体であってもよい。有機フィラーは、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
塗工液CSに含有される無機フィラーは、アルミナであることが好ましい。
塗工液CSに含有される無機フィラーの形状は特に限定されない。無機フィラーの形状としては、例えば、球状、粒状、針状、鱗片状(フレーク状)、不定形状等が挙げられる。
塗工液CSに含有される無機フィラーの平均粒径は、好ましくは3μm以上50μm以下、さらに好ましくは5μm以上30μm以下である。なお、平均粒径は、レーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。
塗工液CS中の無機フィラーの含有量は、塗工液CSに含有される樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部、さらに好ましくは10〜30質量部である。
樹脂組成物層PCの塗布面の単位面積当たりに塗布される塗工液CSの量(固形分基準)は、所望の無機フィラーの濃度勾配が生じるように調整される。
第2層4を形成するための樹脂組成物として、熱硬化性樹脂組成物を使用する場合、樹脂組成物層PCの硬化は以下のように行うことができる。
まず、図6(f)に示すように、樹脂組成物層PCに剥離用フィルムPFを積層するとともに、支持シート2の第2表面S2側の表面S22に補強シートPPを積層する。これにより、支持シート2と、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の一部に形成された第1層3と、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部及び第1層3の第1表面S1側の表面S31を被覆し、無機フィラーを含有する樹脂組成物層PCと、樹脂組成物層PCに積層された剥離用フィルムPFと、支持シート2の第2表面S2側の表面S22に積層された補強シートPPとを備える中間体M4が形成される。樹脂組成物層PCへの剥離用フィルムPFの積層は、支持シート2の第2表面S2側の表面S22への補強シートPPの積層の前、後、同時のいずれの時点で行ってもよい。
剥離用フィルムPFとしては、例えば、易接着性樹脂フィルムを使用することができる。易接着性樹脂フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂フィルム等が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂等のフィルムの単体、又は、これらのフィルムの積層体が挙げられる。
易接着性樹脂フィルムの表面には、易接着性樹脂の塗布によって易接着層が形成されていてもよい。易接着層の形成前に、易接着層の接着性を向上させるために、易接着性樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の処理を施してもよい。
易接着層(プライマー層、アンカー層と呼ばれることもある)に含まれる樹脂としては、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
剥離用フィルムPFとしては、剥離対象である樹脂皮膜(被覆層CLの第1層被覆部分CL1のうち第1表面S1側の部分CL11)との剥離重さが調整された剥離用フィルムを使用することが好ましい。例えば、メラミン樹脂の熱硬化皮膜の場合には、剥離重さを0.1〜10N/インチに調整することが好ましい。剥離重さが0.1未満ではメラミン樹脂の熱硬化皮膜を剥離することが難しく、剥離重さが10N/インチを超えると剥離用フィルムが破断したり、剥離対象である樹脂皮膜以外の樹脂被膜(被覆層CLのうち部分CL11以外の部分)も剥離されたりおそれがある。剥離重さが0.1〜10N/インチに調整された剥離用フィルムを使用することにより、剥離対象である樹脂皮膜(被覆層CLの第1層被覆部分CL1のうち第1表面S1側の部分CL11)を簡単に除去することができる。
剥離重さは、株式会社オリエンテック製テンシロン万能材料試験機RTC−1250Aを使用して測定される値であり、具体的な測定方法は次の通りである。後述する中間体M4において、剥離用フィルムPFに1インチの巾に切り込みを入れ、剥離用フィルムPFの一部を1インチの巾で剥がし、図8のように剥離用フィルムPFの一部を剥がした中間体M5の一端(下部)を試験機に固定する。180°剥がした剥離用フィルムPFを上部の方向(矢印方向)に100mm/分のスピードで剥離したときの重さを測定し、これを「剥離重さ」とする。
剥離重さが0.1〜10N/インチに調整された剥離用フィルムとしては、例えば、基材フィルムと、該基材フィルム上に形成された硬化樹脂層とを有するフィルムを使用することができる。このフィルムは、硬化樹脂層側の面が樹脂組成物層PCと接するように使用されることが好ましい。基材フィルムは特に限定されず、例えば、紙、不織布、熱可塑性樹脂シート等が挙げられる。基体フィルムは、熱可塑性樹脂シートが好ましく、耐熱性の観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂シートが特に好ましい。基材フィルムの厚さは特に限定されず、通常10〜200μmである。また、硬化樹脂層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化により形成された硬化樹脂層であることが好ましい。これにより、メラミン樹脂の熱硬化皮膜との剥離重さを0.1〜10N/インチに調整することが容易となる。電離放射線硬化性樹脂組成物については、上記の説明が適用される。電離放射線硬化性樹脂組成物は、剥離重さを調整する等の目的で、適宜、体質顔料等の成分を含んでいてもよい。硬化性樹脂層の厚さは、通常1〜30μmである。
補強シートPPとしては、例えば、熱硬化性樹脂含浸シートを使用することができる。熱硬化性樹脂含浸シートは、多孔質シートと、多孔質シートに含浸した熱硬化性樹脂とを有する。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化性ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂含浸シートは、例えば、化粧板のコア紙として汎用されているフェノール樹脂含浸紙等が挙げられる。フェノール樹脂含浸紙とは、一般に、コア紙として坪量150〜250g/m2のクラフト紙にフェノール樹脂を含浸率45〜60%となるように含浸し、100〜140℃で乾燥させることにより製造された紙である。フェノール樹脂含浸紙には、市販品を使用することができる。フェノール樹脂含浸紙を積層する際には、必要に応じて、支持シート2の第2表面S2側の表面S22にコロナ放電処理を施したり、プライマー層を形成したりしてもよい。
次いで、図6(g)に示すように、中間体M4を2枚の鏡面加工金属板MP1,MP2の間に挟み、加圧及び加熱し、樹脂組成物層PCを硬化させる。これにより、硬化樹脂層が被覆層CLとして形成される。基材シート21として多孔質シートが使用される場合、多孔質シートの空隙に含浸した樹脂組成物も、この段階で硬化する。補強シートPPとして熱硬化性樹脂含浸シートが使用される場合、熱硬化性樹脂含浸シートの熱硬化性樹脂も、この段階で硬化し、補強層6が形成される。剥離用フィルムPFは、この段階で被覆層CLと接着する。
加熱温度、加熱時間は、使用する熱硬化性樹脂の種類等により適宜調整することができる。例えば、イソシアネート硬化型不飽和ポリエステル樹脂又はウレタン硬化型ポリウレタン樹脂の場合は40〜60℃で1〜5日間であり、ポリシロキサン樹脂の場合は80〜150℃で1〜30分間であり、メラミン樹脂の場合は90〜160℃で30秒間〜30分間である。
鏡面加工金属板MP1,MP2によって加えられる圧力は、例えば5〜100kg/cm2である。
これにより、図6(h)に示すように、支持シート2と、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の一部に形成された第1層3と、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部及び第1層3の第1表面S1側の表面S31を被覆し、無機フィラーを含有する被覆層CLと、被覆層CL上に積層された剥離用フィルムPFと、支持シート2の第2表面S2側の表面S22に積層された補強層6とを備える中間体M5が形成される。
図6(h)に示すように、被覆層CLは、第1層3を被覆する部分CL1と、第1層3を被覆しない部分CL2とを有する。第1層3を被覆する部分CL1は、第1層3の表面上に、第1層3を被覆するように形成されている。第1層3を被覆しない部分CL2は、支持シート2の第1表面S1側の表面S21上に、第1層3を囲繞するように形成されている。
被覆層CLは、無機フィラーの濃度勾配を有する。被覆層CLが有する無機フィラーの濃度勾配は、樹脂組成物層PCが有する無機フィラーの濃度勾配に起因する。被覆層CLのうち、被覆層CLの第1表面S1側の表面SL1と、第1層3の第1表面S1側の表面S31との間に位置する部分L1における無機フィラー濃度は、第1表面S1側から第2表面S2側に向けて減少している。
被覆層CLが所望の無機フィラーの濃度勾配を有することは、被覆層CLの部分L1のうち、厚さ方向Zに隣接する任意の2領域の無機フィラー濃度を測定することにより確認される。測定の結果、第2表面S2側の領域の無機フィラー濃度が、第1表面S1側の領域の無機フィラー濃度よりも小さければ、被覆層CLが所望の無機フィラーの濃度勾配を有すると判断される。
被覆層CL中の無機フィラー濃度の具体的な測定方法は次の通りである。図6(h)に示すように、中間体M5を厚さ方向Zに延在する平面で切断して形成される切断面において、第1層3の第1表面S1側の表面S31上の点のうち最も第1表面S1側に位置する点を通って、中間体M5の厚さ方向Zに垂直な方向に延在する第1仮想平面P1により、被覆層CLを、第1表面S1側に位置する部分L1と、第2表面S2側に位置する部分L2とに分割する。被覆層CLの部分L1は、被覆層CLのうち、被覆層CLの第1表面S1側の表面SL1と、第1層3の第1表面S1側の表面S31との間に位置する部分に相当する。同切断面において、被覆層CLの第1表面S1側の表面SL1と、第1層3の第1表面S1側の表面S31との間を通って、中間体M5の厚さ方向Zに垂直な方向に延在する第2仮想平面P2により、被覆層CLの部分L1を、第1表面S1側に位置する第1部分L11と、第2表面S2側に位置する第2部分L12とに分割する。なお、第2仮想平面P2は、被覆層CLの第1表面S1側の表面SL1又は第1層3の第1表面S1側の表面S31のいずれとも交差しない仮想平面である。同切断面において、第1部分L11及び第2部分L12のうち、第2仮想平面P2を介して隣接する領域(第2仮想平面の近傍に位置する領域)を電子顕微鏡(例えば、SEM、TEM、STEM等)で観察し、電子顕微鏡像から、第1部分L11及び第2部分L12における単位面積当たりの無機フィラーの個数(個/cm2)を求める。無機フィラーの個数のカウントには、画像処理ソフトウェアを使用することができる。第2部分L12における単位面積当たりの無機フィラーの個数が、第1部分L11における単位面積当たりの無機フィラーの個数よりも少なければ、被覆層CLは所望の無機フィラーの濃度勾配を有すると判断することができる。なお、被覆層CLの部分L2における無機フィラー濃度(単位面積当たりの無機フィラーの個数)は、通常、第2部分L12における無機フィラー濃度(単位面積当たりの無機フィラーの個数)よりも小さい。
工程(4)
工程(4)では、図7(i)に示すように、被覆層CLの第1層被覆部分CL1のうち第1表面S1側の部分CL11を剥離して、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部に第2層4を形成するとともに、第1層3の第1表面S1側の表面S31に第3層5を形成する。被覆層CLのうち第1層3を被覆する部分CL1は、被覆層CLの残部CL2よりも剥離されやすい。また、被覆層CLのうち、被覆層CLの第1表面S1側の表面SL1と、第1層3の第1表面S1側の表面S31との間に位置する部分L1における無機フィラー濃度は、第1表面S1側から第2表面S2側に向けて減少しているため、第1表面S1側の部分L11の強度は、第2表面S2側の部分L12の強度よりも小さくなっており、第1表面S1側の部分L11は、第2表面S2側の部分L12から分断されやすい。このため、第1層3を被覆する部分CL1のうち、第1表面S1側の部分CL11は剥離用フィルムPFに接着したまま、剥離用フィルムPFとともに剥離される。一方、被覆層CLの残部CL2は、支持シート2の第1表面S1側の表面S21の残部に残り、第2層4が形成される。また、第1層3を被覆する部分CL1のうち、第2表面S2側の部分CL12は、第1層3の第1表面S1側の表面S31に残り、第3層5が形成される。第1層3を被覆する部分CL1のうち、第1表面S1側の部分CL11が除去されることにより、第2層4の開口部40が形成されるとともに、第3層5の第1表面S1側の表面S51が、第2層4の開口部40を通じて露出し、化粧板1の第1表面S1の凹部7が形成される。また、第1表面S1側の部分CL11が、第2表面S2側の部分CL12から分断されることにより、第3層5の第1表面S1側の表面S51は粗面となる。これにより、図7(j)に示すように、化粧板1が製造される。なお、なお、図7(j)では、第2層4と第3層5との境界が便宜上実線で示されているが、第3層5の端縁部の少なくとも一部は、実際には、第2層4と一体となっている。
第1層3及び/又は第2層4に含まれるシリコーン系離型剤は、第1層3及び/又は第2層4に離型性を付与するので、工程(4)において、第1層3を被覆する部分CL1のうち、第1表面S1側の部分CL11が剥離されやすい。第1層3及び第2層4の両者がシリコーン系離型剤を含む場合は、この効果が大きくなる。
第1層3を被覆する部分CL1のうち、第1表面S1側の部分CL11を剥離する方法は、剥離用フィルムを使用した方法に限定されない。例えば、被覆層CLの表面に、マスキングフィルム等の保護フィルム、セロハンテープ、ガムテープ等の粘着テープ、賦型シート等を貼り付け、その後に該フィルムを剥がすと同時に剥離させる方法;粘着テープ、粘着ゴムローラー、粘着ゴムシート等で剥離する方法;被覆層CLに、予め溶剤に溶解させた塩化ゴム系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂液を塗工し、乾燥した後、剥離する方法;被覆層CLに、ホットメルト接着剤を塗工した後、低温下で剥離する方法;被覆層CLに、樹脂板又は金属板を貼り付けた後、剥離する方法等が挙げられる。
粘着テープ、マスキングテープ、賦型シート等のシートを用いて、第1層3を被覆する部分CL1のうち、第1表面S1側の部分CL11を剥離する場合、剥離対象である樹脂皮膜(部分CL11)との剥離重さが調整されたシートを使用することが好ましい。例えば、メラミン樹脂の熱硬化皮膜の場合には、剥離重さを0.1〜10N/インチに調整することが好ましい。剥離重さが0.1未満ではメラミン樹脂の熱硬化皮膜を剥離することが難しく、剥離重さが10N/インチを超えるとシートがちぎれたり、剥離対象である樹脂皮膜以外の樹脂被膜(被覆層CLのうち部分CL11以外の部分)も剥離されたりおそれがある。剥離重さが0.1〜10N/インチに調整されたシートを使用することにより、剥離対象である樹脂皮膜(部分CL11)を簡単に除去することができる。
剥離重さを0.1〜10N/インチに調整した賦型シートの粘着テープ、マスキングテープ、賦型シート等のシートは、被覆層CLの前駆体である樹脂組成物層PC上に積層してもよい。
上記方法により製造される化粧板1は、表面に凹凸形状を有する。したがって、化粧板1は、凹凸形状に基づいて、凹凸形状の意匠感を表現することができる。特に、上記製造方法の結果物である化粧板において、化粧板1の第1表面S1のうち、凹部7の底面(第3層5の第1表面S1側の表面S51)により形成される領域は、粗面であり、入射光に対して拡散反射性を有する低光沢領域である。したがって、化粧板1の第1表面S1のうち、凹部7に隣接する領域(第2層4の第1表面S1側の表面S41により形成される領域)は相対的に鏡面となり、入射光に対して鏡面反射性を有する高光沢領域となる。これにより、化粧板1は、凹凸形状に基づいて、グロスマット調の意匠感を表現することができる。例えば、化粧板1は、凹部7がマット感を呈し、凸部がグロス感を呈するようなグロスマット調の凹凸形状を含む凹凸形状による外観を発現することができる。特に、凹凸形状を、平面視において装飾層22の絵柄模様と同調させることにより、化粧板1は、優れた凹凸形状の意匠感を表現することができる。例えば、装飾層22が木目模様を形成する場合、凹部7を、木目模様の導管部と、両者の平面視における位置が一致するように、位置同調させることにより、化粧板1は、本物の木目模様と同様のグロスマット調の意匠感(質感)を含む外観を表現することができる。凹凸の差(凹部7の深さ)を大きくすることにより、凹凸形状の意匠感をより鮮明とすることができる。
製造例1(本発明例)
(1)離型インキの製造
電離放射線硬化性モノマー(東亞合成株式会社製、アロニックスM400)60質量部、反応性シリコーン(信越化学株式会社製、X−22−164B)0.6質量部、及びメチルエチルケトン(丸善石油化学株式会社)40質量部を、プロセスホモジナイザーPH91(株式会社エスエムテー製)を用いて、回転数2000rpmで1時間撹拌して離型インキを製造した。
(2)剥離用フィルムの製造
50μm厚のPETフィルム(東洋紡株式会社製コスモシャイン(登録商標)A4100(50μm)の易接着面に、電離放射線硬化性モノマー(東亞合成株式会社製、アロニックス(登録商標)M350)100質量部、反応性シリコーン(信越化学株式会社製、X−22−164B)2質量部、シリカ(富士シリシア化学株式会社製、サイリシア450)8質量部、及び酢酸エチル50質量部を含む塗工インキを、5g/m2(乾燥時)塗工し、165kVの加速電圧にて5Mradの電子線照射を行い、硬化することで剥離用フィルムを製造した。
(3)中間体Aの製造
原紙として坪量100g/m2の白チタン紙(KJ特殊紙株式会社製、KW−1002P)を使用した。原紙上に印刷インキ(DICグラフィックス株式会社製、オーデSPTI)を使用して木目模様の印刷層を形成した後、上記(1)で製造した離型インキを使用して木目模様中の導管部(即ち、導管の切断面開口部によって形成される線条の溝部)に対応するパターンで印刷層を形成した。165kVの加速電圧にて5Mradの電子線照射を行い、離型層を形成し、中間体Aを製造した。離型層の厚さは0.2〜3μmであった。
(4)中間体Bの製造
メラミンホルムアルデヒド樹脂(日本カーバイド工業株式会社製ニカレジン)60質量部及び水40質量部からなる熱硬化性樹脂の液状未硬化組成物(以下「熱硬化性樹脂組成物」という)を中間体Aに含浸させ、中間体Aの離型層形成面の全体に熱硬化性樹脂層を形成した後、80℃で90秒間、乾燥し、中間体Bを製造した。熱硬化性樹脂組成物の含浸率は52%に調整した。なお、熱硬化性樹脂組成物の含浸率は、下記式により算出した。
含浸率(%)=[(中間体Bの重量−中間体Aの重量)/中間体Aの重量]×100
(5)中間体Cの製造
メラミンホルムアルデヒド樹脂(日本カーバイド工業株式会社製ニカレジン)60質量部及び水40質量部からなる熱硬化性樹脂組成物100質量部に、アルミナ(昭和電工株式会社製,丸み状アルミナAS−20,平均粒子径(d50)22μm)10質量部を配合して、アルミナ塗工液を調製した。中間体Bの熱硬化性樹脂層上に、アルミナ塗工液を1回塗布した後、80℃で90秒間、乾燥し、中間体Cを製造した。アルミナ塗工液の含浸率は9%に調整した。なお、アルミナ塗工液の含浸率は、下記式により算出した。
含浸率(%)=[(中間体Cの重量−中間体Bの重量)/中間体Bの重量]×100
なお、中間体Cにおける熱硬化性樹脂組成物及びアルミナ塗工液の合計含浸率は61%である。
(6)中間体Dの製造
中間体Cを、クラフト紙にフェノール樹脂からなる樹脂液を含浸した、坪量245g/m2のフェノール樹脂含浸コア紙(太田産業株式会社、太田コア)4枚の上に積層し、更に中間体D上に上記(2)で製造した剥離用フィルムを、剥離用フィルムの印刷面が中間体Dの熱硬化性樹脂層と接するように積層した。形成された積層体を2枚の鏡面板で挟み、熱プレス機を用いて圧力80barで、成型温度133℃で24分間の条件にて加熱成型し、熱硬化性樹脂層を熱硬化させることによりメラミン樹脂を含有する硬化樹脂層を形成した。硬化樹脂層のうち、離型層非形成面上に形成された部分の厚さは30μmであり、硬化樹脂層は、平面視において、離型層非形成面及び離型層表面をこれらの全体にわたって被覆していた。
(7)化粧板の製造
硬化樹脂層から剥離用フィルムを剥離し、製造例1(本発明例)の化粧板を製造した。
製造例2(本発明例)
中間体Bにおける熱硬化性樹脂組成物の含浸率を53%に変更した点、アルミナ塗工液中のアルミナの含有量を、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して20質量部に変更した点、及び、中間体Cにおけるアルミナ塗工液の含浸率を7%(中間体Cにおける熱硬化性樹脂組成物及びアルミナ塗工液の合計含浸率は60%)に変更した点を除き、製造例1と同様の操作を行い、製造例2の化粧板を製造した。
製造例3(本発明例)
中間体Bにおける熱硬化性樹脂組成物の含浸率を51%に変更した点、アルミナ塗工液中のアルミナの含有量を、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して30質量部に変更した点、及び、中間体Cにおけるアルミナ塗工液の含浸率を7%(中間体Cにおける熱硬化性樹脂組成物及びアルミナ塗工液の合計含浸率は58%)に変更した点を除き、製造例1と同様の操作を行い、製造例3の化粧板を製造した。
製造例4(本発明例)
中間体Bにおける熱硬化性樹脂組成物の含浸率を50%に変更した点、アルミナ塗工液中のアルミナの含有量を、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して40質量部に変更した点、及び、中間体Cにおけるアルミナ塗工液の含浸率を11%(中間体Cにおける熱硬化性樹脂組成物及びアルミナ塗工液の合計含浸率は61%)に変更した点を除き、製造例1と同様の操作を行い、製造例4の化粧板を製造した。
製造例5(本発明例)
中間体Bにおける熱硬化性樹脂組成物の含浸率を49%に変更した点、アルミナ塗工液中のアルミナの含有量を、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して10質量部に変更した点、アルミナ塗工液の塗布を2回行った点、中間体Cにおけるアルミナ塗工液の含浸率(2回の塗布の合計含浸率)を18%(中間体Cにおける熱硬化性樹脂組成物及びアルミナ塗工液の合計含浸率は67%)に変更した点を除き、製造例1と同様の操作を行い、製造例5の化粧板を製造した。
製造例6(本発明例)
中間体Bにおける熱硬化性樹脂組成物の含浸率を51%に変更した点、アルミナ塗工液中のアルミナの含有量を、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して40質量部に変更した点、アルミナ塗工液の塗布を2回行った点、中間体Cにおけるアルミナ塗工液の含浸率(2回の塗布の合計含浸率)を15%(中間体Cにおける熱硬化性樹脂組成物及びアルミナ塗工液の合計含浸率は66%)に変更した点を除き、製造例1と同様の操作を行い、製造例6の化粧板を製造した。
製造例7(本発明例)
熱硬化性樹脂組成物を中間体Aに含浸させた後、乾燥せずに、アルミナ塗工液を塗布した点、アルミナ塗工液中のアルミナの含有量を、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して10質量部に変更した点、中間体Cにおける熱硬化性樹脂組成物及びアルミナ塗工液の合計含浸率を57%に変更した点を除き、製造例1と同様の操作を行い、製造例7の化粧板を製造した。
製造例8(本発明例)
熱硬化性樹脂組成物を中間体Aに含浸させた後、乾燥せずに、アルミナ塗工液を塗布した点、アルミナ塗工液中のアルミナの含有量を、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して40質量部に変更した点、中間体Cにおける熱硬化性樹脂組成物及びアルミナ塗工液の合計含浸率を62%に変更した点を除き、製造例1と同様の操作を行い、製造例8の化粧板を製造した。
製造例9(比較例)
中間体Aに含浸させた熱硬化性樹脂組成物100質量部に、アルミナ(昭和電工株式会社製,丸み状アルミナAS−20,平均粒子径(d50)22μm)10質量部を配合した点を除き、製造例1と同様の操作を行い、製造例9の化粧板を製造した。
試験例
(1)製造例1〜8(本発明例)の化粧板
製造例1〜8の化粧板の評価結果は以下の通りである。
硬化樹脂層のうち離型層非形成面上に形成された部分は、離型層非形成面上に残存した。一方、硬化樹脂層のうち離型層上に形成された部分の一部は、剥離用フィルムとともに剥離されたが、残りの部分は離型層上に残存した。硬化樹脂層のうち離型層上に残存する部分の表面は、粗面となっていた。硬化樹脂層のうち離型層上に形成された部分の一部が剥離用フィルムとともに剥離された結果、硬化樹脂層には、硬化樹脂層のうち離型層上に残存する部分の表面(粗面)を露出させる開口部が形成され、この開口部により、化粧板の表面に凹部が形成された。凹部の深さは2〜5μmであった。凹部の深さは、硬化樹脂層のうち、離型層非形成面上に残存する部分の表面と、離型層上に残存する部分の表面との高低差として測定した。測定は、株式会社小坂研究所製 三次元表面粗さ測定器SE−30Kを使用して、JIS B 0601:2013に規定された方法に従って実施した。表面の最大高さ粗さ(Rz)を高低差のパラメ−タ−として使用し、10箇所の平均値を「高低差」とした。
製造例1〜8の化粧板の凹凸形成面を目視観察したところ、凹部の底面(硬化樹脂層のうち離型層上に残存する部分の表面)は粗面となっており、入射光に対して拡散反射性を有する低光沢領域となっていた。一方、凹部に隣接する領域(硬化樹脂層のうち離型層非形成面上に残存する部分の表面)は相対的に鏡面となっており、入射光に対して鏡面反射性を有する高光沢領域となっていた。これにより、実施例1〜8の化粧板は、グロスマット調の意匠感を表現することができた。特に、凹部は、木目模様中の導管部と、両者の平面視での位置が一致するように位置同調しており、凹部に隣接する領域は、木目模様中の導管部以外の領域と、両者の平面視での位置が一致するように位置同調していたので、木目模様中の導管部が相対的に凹部の外観を呈し、これにより、実施例1〜8の化粧板は、本物の木目模様と同様の表面凹凸形状の意匠感(質感)を表現することができた。
(2)製造例9(比較例)の化粧板
製造例9の化粧板の評価結果は以下の通りである。
硬化樹脂層のうち離型層非形成面上に形成された部分は、離型層非形成面上に残存した。一方、硬化樹脂層のうち離型層上に形成された部分のほとんど全てが、剥離用フィルムとともに剥離され、離型層上には残渣又は痕跡程度の微量な残留物が存在するだけであった。硬化樹脂層のうち離型層上に形成された部分のほとんど全てが剥離用フィルムとともに剥離された結果、硬化樹脂層には、硬化樹脂層のうち離型層の表面を露出させる開口部が形成され、この開口部により、化粧板の表面に凹部が形成された。凹部の深さは2〜5μmであった。
製造例9の化粧板の凹凸形成面を目視観察したところ、凹部の底面(離型層の表面)は粗面となっておらず、凹部に隣接する領域(硬化樹脂層のうち離型層非形成面上に残存する部分の表面)と同様、入射光に対して鏡面反射性を有する高光沢領域となっていた。このため、製造例9の化粧板は、グロスマット調の意匠感を表現することができなかった。