JP6894111B2 - 粘性・弾性測定装置及び粘性・弾性測定方法 - Google Patents

粘性・弾性測定装置及び粘性・弾性測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、物質の力学物性である粘性・弾性を測定するための粘性・弾性測定装置及び粘性・弾性測定方法に関する。
従来より、対象とする物質の力学物性を検出するため、粘性(以下の記載において、粘度と示すこともある)や弾性の測定が行われている(例えば、特許文献1参照)。
粘性・弾性測定は、医薬品、食品、塗料、インク、化粧品、化学製品、紙、粘着剤、繊維、プラスチック、ビール、洗剤、コンクリート混和剤、シリコン等の製造過程で、品質管理、性能評価、原料管理、研究開発に必要不可欠な測定技術である。
従来から知られている粘性測定法においては、測定対象試料に接した回転プローブ(回転子)に対し、駆動するためのトルクを非接触に印加し、その回転プローブの回転速度から対象試料の粘性を非接触に測定する装置がある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
特許文献1は、回転子として、導電性の小球を試料内に沈め、所定のトルクを非接触で印加し、小球の回転速度から、試料の粘性を非接触に測定している。
特許文献2は、浮力及び表面張力のいずれか、または双方を用いて、円盤状の回転子を試料表面に浮かべ、所定のトルクを非接触で印加し、その回転子の回転速度から、試料の粘性を非接触に測定している。
特許文献3は、回転子の下部の回転中心の先端が凸形状に形成されており、その先端が試料を収容する容器の内部底部と接触し、回転子の上部に回転軸が設けられており、この回転軸を回転自在な機構により保持し、回転軸の方向を固定している。そして、回転子に対して所定のトルクを非接触で印加し、その回転子の回転速度から、試料の粘性を非接触に測定している。
特開2009−264982号公報 特開2012−242137号公報 特開2016−031352号公報
しかしながら、上述した特許文献1は、小球の周囲の試料の流動速度が非ニュートン性の液体については既知ではなく、粘性を与えるずり速度を一意に決定できず、純水などの低い粘性の測定精度が得られない。
特許文献2は、粘性を測定する際に、回転子と容器の底部との距離(浮上高さ)を正確に測定する必要があるが、容器に収容される試料の量により変化するため、測定毎に上記距離を測定するためには、精度の高い測定器が必要となる。また、浮上高さは、試料の蒸発や、温度の変化に伴う試料の比重の変化、あるいは回転子と試料とのぬれ性の変化により変動する。このため、周囲環境により、試料の粘性の測定精度が変化してしまう場合がある。
特許文献3は、回転子の上部に設けられた回転軸と、この回転軸を保持する機構との間の摩擦により、純粋などの粘性の低い試料に対する測定精度が低下してしまう。精度を上げる場合、毎秒一回転以上の高速の回転を与える必要があり、低ずり速度域における粘性計測の精度を向上することができない。また、回転軸とこの回転軸を保持する機構との間に、容器内において蒸発した試料が結露すると、その結露した試料の表面張力により、回転子の回転速度が影響を受け、測定精度が低下する場合がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、検出対象の物質を入れる試料容器を安価なものとして使い捨てを可能とし、かつ低粘度から高粘度までの広い領域にわたる試料物質の粘性を、従来に比較して簡易にかつ高い精度により測定することができる粘性・弾性測定装置及び粘性・弾性測定方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明の粘性・弾性測定装置は、一部あるいは全体が導電性を有する材料で構成され、その下部における回転中心に突状の突起を有する回転子と、粘性を検出する対象の検出対象物質が入れられ、該検出対象物質に接触して前記突起が自身の内面底部に接触した状態で前記回転子が配置された試料容器と、前記回転子に時間変動する磁場を印加し、前記回転子内に誘導電流を誘起し、該誘導電流と該回転子に印加される磁場とのローレンツ相互作用により、該回転子に回転トルクを与えて回転させる回転制御部と、前記回転子の回転速度を検出する回転検出部と、前記回転子の回転速度数により、該回転子に接する前記検出対象物質の粘性及び弾性を検出する粘性弾性検出部とを有し、前記回転子が回転対称であり、当該回転子の回転対称軸が回転軸であり、前記回転子の前記検出対象物質に没した部分に対応して生じる浮力による浮心位置と、前記回転子の重心位置との各々が前記回転軸の上にあり、かつ前記重心位置が前記浮心位置に対して鉛直下方にあり、前記回転子が円形の底板の上部に対して、平面視において当該底板の外周と柱の外周とが重なるように円柱の形状の浮き部を備えており、当該浮き部が前記底板に比較して大きな浮力を有しており、前記浮心位置が前記回転子の前記検出対象物質に没した前記浮き部に対応して生じることを特徴とする。
本発明の粘性・弾性測定装置は、前記回転子の半径が以下の(14)式により決定されることを特徴とする
発明の粘性・弾性測定装置は、前記浮き部は前記円柱の内部が空洞であり、円筒の形状であることを特徴とする。
本発明の粘性・弾性測定装置は、前記重心位置と浮心位置との距離が、前記回転子の回転における回転軸を鉛直方向に保持する復元力を有する距離以上に設定されていることを特徴とする。
本発明の粘性・弾性測定装置は、粘性が既知である複数の物質内における前記回転子に加わる回転トルクと、当該回転子の回転数との関係を予め測定した標準データを記憶する記憶部をさらに有し、前記粘性検出部が検出した検出対象物質の回転トルクと回転数との関係と、前記標準データを比較することにより、前記検出対象物質の粘性・弾性を求めることを特徴とする。
本発明の粘性・弾性測定装置は、前記回転子の面にマークが付されており、前記回転検出部が前記マークの回転を検出することにより、前記回転子の回転数を検出することを特徴とする。
本発明の粘性・弾性測定装置は、前記回転子の前記回転子に対してレーザを照射し、その反射光あるいは干渉パターンの変化を光学的に測定することにより、前記回転子の回転数を検出することを特徴とする。
本発明の粘性・弾性測定装置は、前記回転子の直径方向に対し、当該回転子が前記回転軸からの距離に比例して薄くなるように形成されていることを特徴とする。
本発明の粘性・弾性測定装置は、前記回転子底板の直径方向に対し、当該回転子底板が前記回転軸からの距離に比例して薄くなるように形成されていることを特徴とする。
本発明の粘性・弾性測定方法は、試料容器に粘性及び弾性を検出する対象の検出対象物質を収容し、一部あるいは全体が導電性を有する材料で構成され、その下部における回転中心に突状の突起を有する回転子を、前記検出対象物質に接触して前記突起が自身の内面底部に接触した状態で配置する過程と、前記回転子に時間変動する磁場を印加し、前記回転子の前記回転子内に誘導電流を誘起し、該誘導電流と該回転子に印加される磁場とのローレンツ相互作用により、該回転子に回転トルクを与えて回転させる過程と、前記回転子の回転数を検出する過程と、前記回転数により、前記回転子に接する検出対象物質の粘性・弾性を検出する粘性検出過程とを含み、前記回転子が回転対称であり、当該回転子の回転対称軸が回転軸であり、前記回転子の前記検出対象物質に没した部分に対応して生じる浮力による浮心位置と、前記回転子の重心位置との各々が前記回転軸の上にあり、かつ前記重心位置が前記浮心位置に対して鉛直下方にあり、前記回転子が円形の底板の上部に対して、平面視において当該底板の外周と柱の外周とが重なるように円柱の形状の浮き部を備えており、当該浮き部が前記底板に比較して大きな浮力を有しており、前記浮心位置が前記回転子の前記検出対象物質に没した前記浮き部に対応して生じることを特徴とする。
以上説明したように、本発明によれば、検出対象の物質を入れる試料容器を安価なものとして使い捨てを可能とし、かつ低粘度から高粘度までの広い領域にわたる試料物質の粘性を、従来に比較して簡易にかつ高い精度により測定することができる粘性・弾性測定装置及び粘性・弾性測定方法を提供することができる。
本発明の一実施形態による粘性・弾性測定装置の構成例を示す概略構成図である。 図1に示す粘性・弾性測定装置における試料容器及び回転子の構成例を示す図である。 試料容器2に収容された試料100における回転子1の配置を説明するために試料容器2を側面から見た概念図である。 試料容器2に収容された試料100における回転子1の他の配置を説明するために試料容器2を側面から見た概念図である。 磁石固定台7における回転磁界発生するために設けられた磁石の固定状態を示す平面図である。 複数の異なる粘性ηを有する標準試料における、モーター4の回転数ΩMと対応する標準試料での回転子1の回転数ΩD各々との関係を示す図である。 図6に示す関係図から求められた各試料(試料A及び試料B)のずり速度依存性を示す図である。 ヨーク10と、このヨーク10から突出したティース10a、10b、10c及び10dとが基準2次元平面上に配置された電磁石を示す図である。 回転子1における回転子底板の形状の他の構成例を表す模式図である。 モーター4の回転速度ΩM(すなわち、回転トルク)と、回転子1が停止する回転角度θとの関係を示す図である。 弾性と、回転速度及び回転角度の比との関係を示す図である。
以下、本発明の一実施形態による粘性・弾性測定装置を図面を参照して説明する。図1及び図2は本発明の一実施形態による粘性・弾性測定装置の構成例を示す概略構成図である。図1は、粘性・弾性測定装置の全体構成を示している。図2は、図1に示す粘性・弾性測定装置における試料容器及び回転子の構成例を示す図である。
この図1において、本実施形態における粘性・弾性測定装置は、回転子1、試料容器2、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3、第4磁石3_4、モーター4、回転検出センサ5、試料台6、磁石固定台7、粘性測定部8を備えている。
図2に示すように、回転子1は、回転子底板1Aと浮き部1Bとで形成されている。回転子底板1Aは、円盤形状の部材、例えば金属材料で形成されており、その一部または全部(全体)が導体(例えば、金属材料)にて構成されている。回転子底板1Aは、例えば一部分のみがアルミニウムなどの導電体を用いており、他の部分はプラスチックやビニールなどの素材で構成することができる。すなわち、回転子底板1Aは、プラスチック製の円板の上面に市販のアルミ箔などを貼着させて作成しても良い。これにより、市販のプラスチックの円板と市販のアルム箔とから容易に安価な回転子底板1Aを形成することができる。
浮き部1Bは、回転子底板1Aと同軸の円筒(直円柱)形状の浮体であり、上面からの平面視において、外周が回転子底板1Aの外周と重なっている。すなわち、浮き部1Bの中心軸に対して垂直が断面と、回転子底板1Aとは平面視で重なっている。また、浮き部1Bは、回転子底板1Aに比較して大きな浮力を有する構成として形成されている。これにより、回転子1は、回転子底板1Aの中心軸(浮き部1Bの中心軸)に対し、回転対称な形状をしており、中心軸を中心に回転するため、回転軸11が回転子底板1Aの面に対して鉛直(垂直)方向を向いている。
また、回転子底板1A及び浮き部1Bのいずれか一方には、回転検出を行う(後述)ため、そのいずれかの表面(本実施形態においては回転子底板1A)に撮像素子などで検出可能な大きさのマークが設けられている。
試料容器2は、試料容器本体21と試料容器蓋22とから構成されている。また、試料容器2は、力学的物性としての粘性(すなわち、粘性係数)ηを測定する対象の検出対象物(以下、試料と称す)を収容する。試料容器本体21及び試料容器蓋22の各々は、例えば、ガラスあるいはプラスチックなどの材料で製造されている。試料容器本体21は、例えば小型のシャーレなどの円筒形状の試料容器である。この試料容器本体21の内径は、回転子1における回転子底板1A(及び浮き部1B)の直径よりわずかに大きければよい。
試料容器蓋22は、試料容器本体21に収容する試料100の蒸発や異物の混入などを防止するため、外部環境(外気など)から完全に試料100を遮断するために用いるものであり、必要が無い場合には備える必要はない。この試料容器2において、回転子1は、回転子底板1A及びが浮き部1B検出対象物である試料100に接するように、すなわち、一部または全部がこの検出対象物に没するように配置されている。試料容器2は、試料容器本体21及び試料容器蓋22の双方ともに、ガラスあるいはプラスチックを素材とした市販のシャーレなどを使用することができる。このため、試料容器2には、ディスポーザルな市販の試料容器を試料容器とすることができ、安価に準備することができる。
上述したように、本実施形態は、回転子1及び試料容器2が安価とすることができる。このため、生体材料などが試料100となった場合、その廃棄に特段の注意を要する物質を測定対象としても、回転子1及び試料容器2を容易に廃棄することができる。
この結果、焼却及び減菌などの後処理の問題と同様に、他の医療器具の廃棄と同様に容易に行うことができる。
図3は、試料容器2に収容された試料100における回転子1の配置を説明するために試料容器2を側面から見た概念図である。図3において、浮き部1Bは、回転子底板1Aの上面に配置され、上部が開放された外周面のみの筒形状をしており、内部200が空間となっている。この内部200の空間により、回転子1に対して、試料100の比重に対応した浮力が発生する。この浮き部1Bの外周面は、樹脂製などの板を筒状にしたもの、あるいは樹脂製のパイプを中心軸に対して垂直に切断して、切断されたパイプの外周壁による円筒などを用いることができる。また、浮き部1Bは、内部空間が密閉された円筒、あるいは内部200が他の部材で満たされた円筒、または内部空間がない円柱を用いても良い。また、内部空間がない円柱を浮き部1Bとして用いた場合、浮き部1Bの底面の一部あるいは全部を金属などで形成し、浮き部1B自体を回転子1として用いても良い。この場合においても、以下に説明する浮心と重心との関係は満足させる必要がある。
浮き部1Bの側壁の上面にマーク30が配置されている。このマーク30は、回転子底板1Aの上面における撮像装置により読取り可能な位置に配置されていても良い。このマーク30位置の変化をセンサあるいは撮像装置などにより光学的に読取り、回転子1の回転数を求めて、回転子1の回転速度を算出する。本実施形態において、回転子底板1Aは、金属の円板で形成されている。
また、回転子底板1Aの下面には、試料容器本体21の内面底部に接触させる金属製の突状の突起部1Cが設けられている。この突起部1Cは、試料容器本体21の内面底部に設けられた溝部21C底面に接触している。溝部21Cに対して突起部1Cが挿入された状態で、回転子1が回転する。このため、回転子底板1Aの下面と試料容器本体21の内部の底面との間隔が、精度良く一定に保たれ、試料100中における回転子底板1Aのずり速度を安定して保つことができ、試料100の粘性測定の精度が向上する。
本実施形態において、回転子1の重量の約60%は回転子底板1Aを構成する部材の質量であり、回転子1の重量の残りの約40%は浮き部1Bを構成する部材の質量である。また、回転子1の重量が約1.3g(グラム)の場合、この回転子1に加わる重力の大きさは1.3グラム重である。ここで、回転子1内部の空洞部分の体積は約0.8cmであり、試料の比重が1.0g/cmである場合、回転子1に加わる浮力は最大で0.8グラム重である。このため、回転子1は、試料容器2に収容された試料100において、全体が完全に浮くことは無く、所定の体積分の部分が図3(a)及び図3(b)の各々に示すように沈んだ状態となる。
図3(a)は、回転子1が試料容器2に収容された試料100において、安定状態で自立している状態を示している。試料中で自立している回転子1において、浮心202の位置が重心201の位置に比較して、より突起部1Cから遠い位置となるように、浮き部1Bにより、回転子1に印加される浮力を調整している。浮心202にかかる浮力(回転子1の比重と試料との比重に基づく浮力)のベクトル202Bは、試料100の液面に対して垂直な上部方向に、この液面から離れる方向を向いている。一方、重心201にかかる重力(回転子1の質量)によるベクトル201は、試料100の液面に対して垂直な下部方向に、この液面から離れる方向を向いている。上記ベクトル201B及びベクトル202Bの各々が、試料100の液面に対して垂直な同一直線150上にある場合、すなわち重心201を通る試料100の液面に垂直な直線150上において当該直線150と平行にある場合、試料100に対して安定状態で自立している。すなわち、本実施形態においては、回転子1における浮心202の位置が重心201の位置に比較して、より突起部1Cから遠い位置となるよう構成しているため、回転子1の回転軸を鉛直方向に保持することで、回転子1が試料100中で自立する。
図3(b)は、回転子1が試料容器2に収容された試料100において、何らかの揺動(何らかの力が印加)により傾いた状態を示している。図3(b)においては、回転子1に対して何らかの力が印加され、試料100の液面に垂直な直線150方向と、回転子底板1Aの上面に垂直な直線160の方向とが角度θ異なっている。このとき、上記ベクトル201B及びベクトル202Bの各々が、試料100の液面に対して垂直な同一直線150上に存在していない。すなわち、ベクトル201B及びベクトル202Bの各々が、試料100の液面に対して垂直な同一直線150上に無い。回転子1の水中に没した部分が排除した試料100の体積分の試料100の重力に等しい浮力を得るため、図に示すように傾いて、より試料100に沈んだ部分の体積の大きい方に浮心202の位置が移動する。すなわち、本実施形態においては、浮心202の位置が重心201の位置に比較して、より突起部1Cから遠い位置となるよう構成しているため、回転子1の回転軸を鉛直方向に復元させる復元力を、回転子1自身が有している。
上述した場合、ベクトル201B及びベクトル202Bの各々が試料100の液面に対して垂直な同一直線150上に戻り、回転子1が安定状態となるように、回転モーメント(トルク)が回転子1にかかる。この回転モーメントは、回転子1を中心軸に対して回転させるトルクが印加され、回転子1が回転している状態においても同様に、回転子1に対して印加される。これにより、回転軸11が直線150と同一の直線上に位置する状態となり、試料100の液面と回転子底板1Aの上面とが平行となり、精度の高い試料100の粘性を求めるための回転子1の回転速度を求めることができる。そして、試料容器2に収容された試料100内に配置された回転子1の回転に伴い、回転子底板12と試料100との間に挟まれた試料100において、所定のずり速度を有するずり流動が生じ、このずり流動に基づくずり応力により回転子1の回転に対してて粘性トルクが生じる(後述)。
図4は、試料容器2に収容された試料100における回転子1の他の配置を説明するために試料容器2を側面から見た概念図である。図4において、浮き部1Bは、回転子底板1Aの上面に配置され、上部が蓋1Dにより密閉された外周面のみの筒形状をしており、内部300が空間となっている。蓋1Dは樹脂の厚さの薄い円板である。この内部300の空間により、回転子1に対して、試料100の比重に対応した浮力が発生する。この浮き部1Bの外周面は、樹脂製などの板を筒状にしたもの、あるいは樹脂製のパイプを中心軸に対して垂直に切断して、切断されたパイプの外周壁による円筒などを用いることができる。
また、浮き部1Bは、内部300が他の部材で満たされた円筒、または内部空間がない円柱を用いても良い。この場合には、浮き部1Bに対して蓋1Dを設ける必要はない。
図4のように回転子1を完全に試料100内に沈ませた状態で粘性測定を行なう場合、試料100が上記蓋1Dの下面全面と試料容器蓋21下面全面とに接触するように、すなわち、試料容器2の内部に試料100を充填させる。試料容器2において、試料100が試料容器本体21と試料容器蓋22と挟まれた空間に充填される。これにより、試料容器2に収容された試料100内に配置された回転子1の回転に伴い、回転子底板12及び蓋1Dと試料100との間に挟まれた試料100にずり流動が生じ、回転子1の回転に対してて粘性トルクが生じる(後述)。
このとき、試料100の粘性の測定精度を上げるためには、回転子底板1Aの下面及び試料容器本体21の内部底面の対向する距離と、蓋1Dの上面及び試料容器蓋21の下面の対向する距離とを同様とする。
本実施形態において、回転子1の重量の約60%は回転子底板1Aを構成する部材の質量であり、回転子1の重量の残りの約40%は浮き部1Bを構成する部材の質量である。また、回転子1の重量が約1.3g(グラム)の場合、この回転子1に加わる重力の大きさは1.3グラム重である。ここで、回転子1内部の空洞部分の体積は約0.8cmであり、試料の比重が1.0g/cmである場合、回転子1に加わる浮力は最大で0.8グラム重である。このため、回転子1は、試料容器2に収容された試料100において、完全に浮くことは無く、図4(a)及び図4(b)の各々に示すように試料200の中において、全てが完全に沈んだ状態となる。
図4(a)は、回転子1が試料容器2に収容された試料100において、安定状態で沈んでいる状態を示している。試料中で自立している回転子1において、浮心202の位置が重心201の位置に比較して、より突起部1Cに近い位置となるように、浮き部1Bにより、回転子1に印加される浮力を調整している。浮心202にかかる浮力(回転子1の比重と試料との比重に基づく浮力)のベクトル202Bは、試料100の液面に対して垂直な上部方向に、この液面から離れる方向を向いている。一方、重心201にかかる重力(回転子1の質量)によるベクトル201は、試料100の液面に対して垂直な下部方向に、この液面から離れる方向を向いている。上記ベクトル201B及びベクトル202Bの各々が、試料100の液面に対して垂直な同一直線150上にある場合、すなわち重心201を通る試料100の液面に垂直な直線150上において当該直線150と平行にある場合、試料100内において対して安定状態で浮いている。
図4(b)は、回転子1が試料容器2に収容された試料100において、不安定状態で浮いている状態を示している。図4(b)においては、回転子1に対して何らかの力が印加され、試料100の液面に垂直な直線150方向と、回転子底板1Aの上面に垂直な直線160の方向とが角度θ異なっている。このとき、図3(b)の場合と同様に、上記ベクトル201B及びベクトル202Bの各々が、試料100の液面に対して垂直な同一直線150上に存在していない。
すなわち、ベクトル201B及びベクトル202Bの各々が試料100の液面に対して垂直な同一直線150上に戻り、回転子1が安定状態となるように、回転モーメント(トルク)が回転子1にかかる。この回転モーメントは、回転子1を中心軸に対して回転させるトルクが印加され、回転子1が回転している状態においても同様に、回転子1に対して印加される。これにより、回転軸11が直線150と同一の直線上に位置する状態となり、試料100の液面と回転子底板1Aの上面とが平行となり、精度の高い試料100の粘性を求めるための回転子1の回転速度を求めることができる。
図1において、試料台6の上面に、試料100が充填された試料容器2が設けられている。この試料台6の下部には、モーター4のモーター軸4aが接続された磁石固定台7が試料台6と平行に設けられている。モーター4のモーター軸4aを回転させることにより、磁石固定台7が回転することになる。この磁石固定台7の上面には、第1磁石3_1(第3磁石3_3)、第2磁石3_2(第4磁石3_4)が設けられている。
磁石固定台7は、回転磁場を発生させる磁石を固定する平板状の板部材である。例えば、磁石固定台7の上面には、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石3_4の各々が固定して設けられている。この磁石固定台7は、回転子底板1Aと平行となるように配置されている。第1磁石3_1及び第2磁石3_3の各々は、磁石固定台7の上面側にS極が接し、N極が回転子底板1Aと対向するように設けられている。第2磁石3_2及び第4磁石3_4の各々は、磁石固定台7の上面側にN極が接し、S極が回転子底板1Aと対向するように設けられている。
したがって、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石の各々は、隣接する磁石と互いに異なる極性の磁極が試料容器2の下面と対向する配置となっている。また、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石の各々は、それぞれ直方体であり、上面の高さが同様となるように、上面が互いに平行に配置されている。
図5は、磁石固定台7における回転磁界発生するために設けられた磁石の固定状態を示す平面図である。図5(a)は、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石の各々の配置を示している。第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石3_4の各々は、磁石固定台7の回転軸に対して交互に対称に配置されている。一方、図5(b)は、第5磁石3_5及び第6磁石3_6の各々の配置を示している。
本実施形態においては、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石を用いているが、回転磁界を生成できれば、磁石はいくつでも構わない。すなわち、図示はしないが、複数個(N個、N=2n、nはn≧1の整数)の小型の磁石を試料容器2における回転子1の回転子底板1Aの回転方向に沿って、磁石の上面の磁極がN極とS極とが交互になるように配置しても良い。また、磁石固定台7は、永久磁石の上面が水平面となるように、試料容器2に充填された試料100の液面と対向するように、試料容器2の上部に配置する構成としても良い。
図1に戻り、試料台6は、試料100が充填された試料容器2を固定する平板状の板部材であり、上面が磁石固定台7の上面と平行となるように配置されている。
これにより、回転子1は、試料容器2内部の試料100中において、回転子底板1Aと、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石の各々が回転した際における、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石それぞれの上面が形成する平面と平行となる。
上述した試料台6、磁石固定台7、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石の各々の配置から、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石それぞれにより、試料容器2における回転子1に対して垂直方向の磁場(垂直となる磁場成分でも良い)を発生させることができる。
モーター4は、磁石固定台7を、磁石固定台7の表面に垂直なモーター軸4a方向で回転させる駆動機構であり、モーター軸4aが磁石固定台7の上面に対して垂直となるように固定されている。
また、平面視において、回転子1の回転子底板1Aが試料容器2の内壁に接触せず、かつ試料100に接して回転する位置に、回転子1の回転軸11が配設されるように、試料容器2とモーター4とが配置されている。
すなわち、平面視において、試料容器2の底面の中心と、モーター4のモーター軸4aの軸方向とが重なる位置に、試料容器2とモーター4とが配置されている。
また、試料容器2内に充填された試料100中における回転子1の回転子底板1Aに対して回転磁場を与え、回転軸11を回転中心として回転させる際、磁石固定台7をモーター4により回転させる。これにより、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石の各々が回転し、回転子底板1Aに対して回転磁界が与えられる。このとき、回転子底板1Aに対する回転磁場の印加状態により、回転子1の回転軸11が試料容器2の底面の中心からずれる場合がある。
ここで、平面視において、回転子1の回転子底板1Aの面積に比較し、試料容器2の内部の底部の面積を大きく作製する。これにより、回転子1の回転軸11が試料容器2の底面の中心からずれても、試料容器2の内部の側壁に接触することはない。しかしながら、試料容器2を大きく作製するため、粘性ηの測定に必要な試料容器2内に充填する試料100の量が多くなる。
このため、図3及び図4の各々に示したように、本実施形態においては、試料容器本体21の内部底面の一部に滑らかな溝部(凹部)21Cを設けている。この溝部21Cを設けることにより、回転子1の回転時において、回転子1の回転子底板1Aの突起部1C(回転軸11の下部部分である凸部)が溝部21Cに中心を一致して接触するように、重力により配設される。溝部21Cに対して回転子底板1Aの突起部1Cが挿入された状態で、回転子1が回転する。このため、回転子底板1Aの下面と試料容器本体21の内部の底面との間隔が、精度良く一定に保たれ、試料100中における回転子底板1Aのずり速度を安定して保つことができ、試料100の粘性測定の精度が向上する。
図6は、複数の異なる粘性ηを有する標準試料における、モーター4の回転数ΩMと対応する標準試料での回転子1の回転数ΩD各々との関係を示す図である。図6において、横軸は回転数ΩMと回転数ΩDとの回転差ΩMD(回転数ΩM−回転数ΩD)を示し、縦軸は回転子1の回転数ΩDを示している。ここで使用した各標準試料の粘性ηは、例えば、それぞれ異なり、試料Aが0.5(mPa・s)、試料Bが1.0(mPa・s)である。そして、この図6から粘性ηの異なる標準試料毎の回転差ΩMDと回転数ΩDとの関係、すなわち傾きΩD/ΩMDの対応を示す曲線を最低二乗法などにより求める。この傾きΩMD/ΩDは、各標準試料の粘性ηと比例するものである。
図1に戻り、回転検出センサ5は、試料容器2の試料100中の回転子1の検出可能な位置に設けられたマークが検出できる位置として、試料容器2の上部方向の位置に配置され、この回転子1に付加されたマーク(図3及び図4の各々の浮き部1Bの側壁の上面に設けられたマーク30)の回転における位置を光学的に検出する。すなわち、回転検出センサ5は、光照射部からレーザ光を出射し、回転子1のマーク30からの反射光を受光部で入射し、入射光の強度に対応した検出電気信号を出力する。
また、回転検出センサ5の代わりに、レンズとCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子を顕微鏡に付加した撮像装置を設け、回転子1に付加されたマークの、この回転子1の回転における移動状態を拡大して撮像した撮像画像を出力し、画像処理から回転数(すなわち、回転子1のマークの周回数、マーク(図3及び図4の各々の浮き部1Bの側壁の上面に設けられたマーク30)が一回転した場合に周回数は1)を検出するようにしても良い。また、回転子1において、回転子底板1Aの上面における、上記検出可能な位置に上記マークを付加(配置)し、上述した回転子1の回転数を上記撮像装置により計測するようにしても良い。
また、回転子1の回転子底板1Aの内面、あるいは浮き部1Bの側壁の外周面、または突起部1Cに対して、レーザを照射し、回転による反射及び干渉パターンの変化を光学的に測定し、回転子1の回転数を検出する構成としても良い。
また、回転子1における回転子底板1Aまたは浮き部1Bの一部を誘電体で置き換え、測定電極間に回転子底板1Aまたは浮き部1Bが挟まれる電極対を、図1などの磁石固定台7の回転の邪魔にならない位置に配置し、コンデンサを構成する。そして、回転検出センサ5は、回転を検出するためのマークとしての誘電体(例えば、図3及び図4の各々の浮き部1Bの側壁の上面に設けられたマーク30)が、配置した電極間を通過する際、検出電気信号を出力する。すなわち、回転検出部81は、マークとしての誘電体が電極間を通過する際、電極で構成したコンデンサの容量変化を検出し、所定の期間(たとえば、1秒)におけるこの容量変化の回数を検出し、回転子110の回転数を検出するように構成しても良い。
ここで、モーター4で磁石固定台7を回転させることにより、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石3_4の各々が回転し、時間的に変動する磁場として回転磁場が磁石固定台7の上面に空間に形成される。
この回転磁場により、回転子1の回転子底板1Aに対してトルクを与えて、試料容器2における試料100中において回転子1を回転させ等速回転運動をさせる。そして、回転子1の試料100内における回転速度から試料100の粘性ηを計測する方法について、以下に説明する。
粘性測定部8は、回転検出部81、粘性検出部82、回転磁場制御部83、標準データ記憶部84及び装置制御部85を有している。
回転検出部81は、回転検出センサ5から供給される検出電気信号により、回転子1の回転検出を行い、単位時間(例えば、1秒)当たりの検出回数を、単位時間当たりの回転数(rpm:revolutions per minute)として、回転数ΩDを求めて出力する。また、回転検出部81は、回転子1の回転数の検出において、回転検出センサ5の検出電気信号を用いるのではなく、撮像装置の撮像画像を用いる場合、撮像装置が撮像して出力する撮像画像から、回転子1に付加したマークを画像処理により検出し、単位時間当たりの回転数ΩDを求めるようにしても良い。また、コンデンサの構成を用いた場合、回転検出部81は、検出電気信号により電極対で構成したコンデンサの容量変化を検出し、所定の期間(たとえば、1秒)におけるこの容量変化の回数を検出し、回転子1の回転数ΩDを検出するように構成しても良い。
粘性検出部82は、上述した標準試料の場合と同様に、試料100における傾きΩD/ΩMD(=ΩM−ΩD)を求め、この傾きの逆数ΩMD/ΩDを求める。このとき、粘性検出部82は、回転磁場制御部83(後述)に対して、異なる複数の回転速度ΩMでモーター4を回転させる制御を行い、回転数を変更する毎に制御信号を回転検出部81へ出力する。回転検出部81は、粘性検出部82から制御信号が供給される毎に、回転速度ΩMにおいて試料容器2に入れた試料100中の回転子1の回転速度ΩDを回転検出センサ5から入力する。そして、回転検出部81は、検出した回転速度ΩDを、制御信号に対応して粘性検出部82へ出力する。
そして、粘性検出部82は、標準データ記憶部84(後述)に記憶されている粘性検出テーブルから、試料100の逆数ΩMD/ΩDに対応する粘性η(mPa・s)を読み出し、これを試料100の粘性η(mPa・s)として出力する。ここで、標準データ記憶部84に実験式が記憶されている場合、粘性検出部82は、標準データ記憶部84から上記実験式を読み出し、この実験式に対して傾きの逆数ΩMD/ΩDを代入し、試料100の粘性η(mPa・s)を算出して求める構成としても良い。
回転磁場制御部83は、設定された回転数でモーター4が回転するように、モーター4に対する回転制御を行う。これにより、モーター軸4aを介して磁石固定台7が回転することになり、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石3_4の各々により発生する磁場が回転し、回転子1を試料100中において等速回転させる回転磁場を発生させる。
標準データ記憶部84は、図6の関係図から求めた粘性η(mPa・s)と、傾きの逆数ΩMD/ΩDとの対応を示す粘性検出テーブルが記憶されている。
この粘性検出テーブルは、以下の様に作成されている。図6において説明したように、本実施形態の粘性測定装置において、粘度が予め判っている標準試料を試料容器2に入れ(充填し)、標準試料中に回転子1を入れ、予め設定した複数の回転数ΩMによりモーター4を回転させた場合に、各モーター4の回転数ΩMに対応した回転子1の回転数ΩDを、上述した回転検出部81により測定する。この標準試料に対する回転数ΩDの測定を、複数の異なる粘性ηを有する標準試料(予め粘性ηの判っている試料)に対して行う。
また、粘性検出テーブルではなく、粘性η(mPa・s)と、傾きの逆数ΩMD/ΩDとの対応を示す実験式が記憶されていても良い。
装置制御部85は、粘性測定部8内の各部の動作の制御を行う。
図7は、図6に示す関係図から求められた各試料(試料A及び試料B)のずり速度依存性を示す図である。図7において、横軸はずり速度(Shere rate、1/s)を示し、縦軸は試料の粘性(viscosity、mPa・s)を示している。
この図において、各試料の粘性がずり速度に依存した関係にあることが示されているが、粘性の変化は試料の慣性の影響によるものであり、標準とする粘性を示す標準試料である粘度標準試料を用いて補正することができる。
純粋の粘性(粘度)が室温において、0.9(mPa・s)である。このことから、純粋よりも低い粘性を有する試料Aなどに対しても、本実施形態により粘性の差を高い精度で検出できることが判る。
次に、回転子1の回転子底板1Aに対して回転トルクを与える方法について説明する。図1において、第1磁石3_1のN極及び第4磁石3_4と、第2磁石3_2及び第4磁石3_3のS極とにより、ある基準面(回転子底板1Aを含む平面)に対して垂直な磁場が発生する。この基準面を、x軸及びy軸からなる基準2次元平面とし、この2次元平面において回転する回転子1の回転子底板1Aの回転軸11の軸方向をz軸とする。
以降、基準2次元平面あるいはその近傍の点(x,y,z)における磁場のz軸成分をBz(x,y)として示す。
すでに述べたように、磁場は、基準2次元平面に対して垂直であるため、z軸に依存しないと仮定しているが、z軸に依存しても以下の説明に支障はない。また、基準2次元平面に対して垂直な磁場の成分があれば、他に基準2次元平面に対して垂直でない磁場の成分が存在しても、回転子1の回転子底板1Aに対して回転トルクを与えることに支障とならない。
以下の説明において、回転子底板1Aを金属で形成し、この回転子底板1Aに加わる回転トルクを計算する。また、便宜的に最初は直交座標を採用し、回転子底板1Aの鉛直上方を+z方向とし、回転子底板1Aをx−y平面に起き、回転子底板1Aの中心(回転軸11と回転子底板1Aとの交点)を原点とする。さらに、磁石固定台7が回転することにより、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石3_4の生成する回転磁界を以下の(1)式により表す。
Figure 0006894111
上記(1)式において、rは回転軸からの距離を示し、Bはz軸方向の磁界を示し、B(r)は回転半径方向の磁界を示し、ωは回転角速度を示し、tは時間を示し、nは磁石の組の数を示し、θは磁石固定台7の回転角度を示している。図1に示す本実施形態の場合、試料台6に対向する磁極がN極及びS極との磁石の組が2組であるため、nは2である。
また、時間変動する磁場Bによって生じる(誘起される)電場Eは以下の(2)式で与えられる。磁場B及び電場Eはベクトルである。
Figure 0006894111
この(2)式において、磁場Bはz方向成分のみの磁場Bを有すると仮定するが、z軸方向以外の成分があっても以下の議論は成り立つ。
回転子1における導電性のディスク状の回転子底板1A内を流れる電流ベクトルi(誘導される誘導電流の電流ベクトル)はi=σEであり、ここで、σは導電率である。i及びEはベクトルである。電流ベクトルiに対して発散は「0」なので、div i=0である。したがって、電場Eについて、以下の(3)式を満たす渦ポテンシャル(vortex potential)φが存在する。
Figure 0006894111
上記(3)式において、Eは2次元座標系におけるx軸方向の電場を示し、Eは2次元座標系におけるy軸方向の電場を示している。
上記(3)式を(2)式に代入し、以下の(4)式を得る。
Figure 0006894111
(2)式と(4)式とにより、以下の(5)式が得られる。
Figure 0006894111
(5)式を磁場の具体的な表式で表現すると、以下の(6)式として表される。
Figure 0006894111
上記(6)式において、B(r)は回転半径方向の磁界を示し、ωは回転角速度を示し、tは時間を示し、nは磁石の組の数を示し、θは磁石固定台7の回転角度を示し、φは渦ポテンシャルを示している。
上記(6)式から以下の(7)式が得られる。
Figure 0006894111
上記(7)式において、J(kr)は第1種ベッセル関数を示し、kは式(7)の積分を実行する際の積分変数を示し、rは回転半径を示し、ωは回転角速度を示し、tは時間を示し、θは磁石固定台7の回転角度を示している。
また、上記(7)式において、係数A(k)はB(r)のHankel変換係数であり、以下の(8)式で表される。
Figure 0006894111
以下の説明は、3次元座標系から円筒座標系に移行する。(3)式で得られる電場Ex及び電場Eyの各々から、半径方向における電場Er及び動径方向における電場Eθをそれぞれ求めると、以下の(9)式のように表せる。(9)式において、θは磁石固定台7の回転角度を示し、rは回転半径を示している。
Figure 0006894111
上記(9)式において、電場(上記誘導電流に基づく電場)と磁場とのローレンツ相互作用を考えると、ローレンツ力の半径方向の成分の全積分は対称性により自明に0となる。
また、動径方向の成分は、Fθ=σEで与えられる。この動径方向の成分は、(7)式及び(9)式により、以下の(10)式で表される。(10)式において、ωは回転角速度を示し、θは磁石固定台7の回転角度を示し、nは磁石の組の数を示し、係数A(k)はB(r)のHankel変換係数を示し、J(kr)は第1種ベッセル関数を示し、kは式(7)の積分を実行する際の積分変数を示し、rは回転半径を示している。
Figure 0006894111
上記(10)式において、簡単のために磁場の動径方向の分布がBessel関数で近似できるものとする。すなわち、B(r)=B(kr)のとき、回転磁場が回転子底板1Aに与えるトルクTは、以下の(11)式で求めることができる。ここで、Bは磁場の強度を示している。(11)式において、nは磁石の組の数を示し、ωは回転角速度を示し、Bは式(7)の積分を実行する際の積分変数を示し、J(kr)は第1種ベッセル関数を示している。
Figure 0006894111
上述したように、回転する磁場により回転子1の回転子底板1AにトルクTが働くことが判った。実際の粘性・弾性測定装置においては、回転子底板1Aに対して働くトルクTにより、回転子1が試料100中を回転するため、上記における回転磁場の回転数ΩMは、磁場の回転数ΩMと回転子1の回転子底板1Aの回転数との差である回転数差ΩM−ΩDで置き換える。
この結果、回転子1の回転子底板1Aの導電体に発生する渦電流が回転トルク(トルクT)を受けることにより、回転子1の回転子底板1Aに対して回転トルクTが印加されることになる。回転子1の回転子底板1Aに対して回転トルクが印加された結果、回転子1は、試料100中において回転トルクTの印加される方向に回転することになる。
また、回転子底板1Aの回転に伴い試料100の粘性ηに対応したずり流動による粘性抵抗トルクが、回転子底板1A及び浮き部1Bに対して印加される。この粘性抵抗トルクのため、回転子1の回転数ΩDは、粘性抵抗トルクに比例した分、磁場の回転数ΩMには達しない。
したがって、回転子1の回転子底板1Aに印加される回転トルクTの大きさは、回転磁場の回転数ΩM(モーター4の回転数と同様)と、回転子1の回転数ΩDとの差に比例することになる。すなわち、回転子1の回転数ΩDが一定となった場合、この一定となった回転数ΩDは、試料100の粘性ηに反比例の関係を有している。
上述したように、回転子1の回転子底板1Aに印加される回転トルクTと、試料100中において回転する回転子1の回転数ΩDと、回転子1の半径(すなわち、回転子底板1Aの半径)rと、回転子底板1Aと試料容器本体21の内面の底との間の厚み(距離)、および浮き部1Bの蓋1Dと試料容器蓋22との間の厚み(距離)とにより、試料100の粘性ηを求められることが判る。
ここで、試料100の粘性ηの測定において、回転子1の回転子底板1Aに印加される回転トルクTは、予め粘性ηの判っている標準試料を用いて、すでに説明した図6に示したように、回転磁界の回転数ΩMと回転子1の回転数ΩDとの回転数差ΩMDの関数として求めておく。
また、試料100を回転子底板1Aから下部の空間にのみ充填する場合、すなわち試料100が試料容器本体21の内面の底と回転子底板1Aの下面との間のみに充填される場合、試料100が回転子底板1Aの下面のみと接する。このため、図6に示す粘性検出テーブルを作成する際、同様の条件にて標準試料の測定を行う必要がある。
また、予め粘性ηを測定する試料100の密度が判っていれば、この試料100の密度に対応して、共通サイズの試料容器2に試料100を挿入した場合、均一の深さとなる適当な試料100の量を、秤により秤量する。この処理により、密度の異なる試料100毎に、試料容器2に測定時に入れる試料100の深さを均一にすることができる。
ここで、本実施形態の粘性・弾性測定装置における粘性測定の精度について述べる。本実施形態の粘性・弾性測定装置では、時間変動する磁場(回転数ΩMの回転磁界)により回転子1の回転子底板1Aに対して、遠隔に既知のトルクTを印加し、その回転数ΩDを検出することで対象物質である試料100の粘性ηを測定する。
回転子1の回転子底板1Aに印加するトルクTについては、与えられる磁場の大きさから上記(11)式により求めてもよい。また、既知の粘性ηを持つ標準試料を用いた測定をあらかじめ行って決定してもよい。ここから求まるトルクTの大きさの決定精度は、原理的には任意に向上させることができ、実際には0.1%以上の精度で決定することが可能である。
一方、回転子1の回転数ΩDを決定する要因には、検出対象の試料100の粘性η以外にも、回転子1の回転子底板1Aの突起部1Cと、試料容器本体21の内部の溝部21C底面との接触部における機械的な摩擦による回転トルクTが挙げられる。この回転トルクTは、以下の(12)式により示される程度であることが、理論的な計算及び実験的にも検証されている。
Figure 0006894111
上記(12)式において、Mは回転子1の重量を示し、ρは試料100の比重を示し、Vは回転子1の試料100に没する部分の体積を示し、gは重力加速度を示し、μは回転子底板1Aの突起部1Cと試料容器本体21の内部の溝部21C底面との動摩擦係数を示し、Rcは回転子1の回転軸11の下部11eと試料容器本体21の底面21sとの接触部分の接触半径を示している。
また、回転子1における半径Rの円板型の回転子底板1Aにより、厚み(深さ)がdの試料100に対し、上面(回転子底板1Aの下面と接する面)での回転角度ω、下面(試料容器本体21の内部底面と接する面)での回転角速度0となるひずみを加えるのに必要なトルクTVISは、以下の(13)式により計算される。
Figure 0006894111
上記(13)式において、Rは回転子1の回転半径を示し、ηは検出対象物質である試料100の粘性を示し、μは回転子1の回転子底板1Aの突起部1Cと試料容器本体21の内部の溝部21C底面との動摩擦係数を示し、dは回転子1の回転子底板1Aと試料容器本体21の内部底面とが対向する領域に挟まれた試料100の厚みを示している。
また、(13)式における係数αは、要求される粘性・弾性の測定精度とする。例えば、要求される測定精度αが1%のとき、α=0.01である。(12)式から得られる回転トルクTが、(13)式から得られるトルクTVISのα倍よりも小さければ、すなわち、以下の(14)式が成り立てば要求される測定精度αを得ることができる。試料100の粘性によるトルクTVISは、回転子1と試料容器本体21の底面21sとの接触による機械的摩擦のトルクTを1/α倍以上の大きさで優越し、これによって精度αでの粘性計測が可能になる。また、回転子1を安定して試料100において回転させるため、回転子1を試料100中に沈ませ、回転子1の回転子底板1Aの突起部1Cと、試料容器本体21の内部の溝部21C底面との接触させる必要がある。このため、(14)式における回転子1に印加される重力と浮力との関係は、M−ρV>0となる。
Figure 0006894111
この測定精度αは従来の手法においては10%程度であるが、より望ましくは1%程度が必要である。さらに、従来の手法では困難な精度である0.1%程度が得られることが望まれている。
上述したように、本実施形態によれば、検出対象の物質である試料100の量を、従来の測定に比較して少なくすることができる。
また、本実施形態によれば、回転磁界を生成する第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石3_4の各々を、試料容器2を配設する試料台6の下部方向に配置することができ、粘性・弾性測定装置を従来に比較して小型化することが可能である。
また、回転磁場を生成する磁石は、図1においては、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石3_4の2つの組み合わせを用いている。この場合、平面視において、2個のN極と2個のS極とが互い違いに配設された2組の組み合わせで、回転磁場を発生している。これに対して、(11)式によれば、回転子1の回転子底板1Aにトルクを与える磁石の組の数は1組以上の任意でよく、たとえば平面視して正方形の磁石2個を、S極とN極が互い違いになるように配置しても構わない。
また、上述した磁石固定台7を回転させ、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石3_4により回転磁場を生成するのではなく、電磁石を用いて回転磁界を生成する構成としても良い。
図8は、ヨーク10と、このヨーク10から突出したティース10a、10b、10c及び10dとが基準2次元平面上に配置された電磁石を示す図である。ティース10aと10cとには各々異なる巻方向に巻線CL1が巻かれ、同様に、ティース10bと10dとには各々異なる巻方向に巻線CL2が巻かれて、電磁石を構成している。
図1におけるモーター4で磁石固定台7を回転させ、永久磁石である第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石3_4の放射する磁場から回転磁場を生成する替わりに、上述した図8に示す電磁石の構成を用いて回転磁場を生成しても良い。
すなわち、巻線CL1及び巻線CL2に電流を流し、基準2次元平面に対して垂直な磁場を生成し、流す電流の向きを周期的に変化させ、基準2次元平面に対して垂直な磁場を回転させて回転磁場を形成しても良い。すなわち、円周上に配列された電磁石各々が隣接する他の電磁石と異なる極性となるように、それぞれの電磁石を駆動する。この電磁石を駆動させる際、時間的に各電磁石の極性を変化させることで、回転磁場を生成するように構成しても良い。
この場合、回転磁場制御部83が図7の電磁石における巻線CL1及びCL2に対して電流を流し、この流す電流の向きを周期的に変えて、回転磁場を生成させる処理を行う。
この回転磁場により、すでに磁石を用いた場合と同様に、回転子1の回転子底板1Aに対してトルクを印加し、回転軸11を回転中心として回転子底板1Aの回転運動を、試料100内で行わせて、試料100の粘性ηを求める。
また、回転磁場制御部83は、回転子1の回転子底板1Aに対し、印加する回転磁場の回転周期、および回転方向を任意に変化させるようにしても良い。
例えば、回転磁場の回転方向と、回転速度とを周期的に掃引することにより、回転子1に対して、周期的に変化する回転トルクを与えることができる。
図9は、回転子1における回転子底板の形状の他の構成例を表す模式図である。この図9の形態によれば、試料容器本体21及び試料容器蓋22の各々については、すでに述べた形態と同様であるが、回転子1を構成する回転子底板1A’の断面が三角形の形状になっている。すなわち、回転子底板1A’の断面は、中心部から半径方向において外周部に向かうにつれ、回転子底板1A’の下面と試料容器本体21の内部底面との対向する距離が大きくなるように、厚さが徐々に薄くなるように形成されている。
これにより、回転子底板1A’の下面と、試料容器本体201の内部底面との間に挟まれる試料100の厚みは、回転子1の回転軸11からの距離に比例して増加する。これにより、試料容器本体21に収容されている試料100内のいたるところで、一様なずり速度の変形を実現することができる。したがって、この回転子底面1A’の形態は、ずり速度によって粘性の値が変化する非ニュートン流体の粘性及び弾性の測定に有効である。
次に、本実施形態による粘性・弾性測定装置を用いた弾性の測定について説明する。図1及び図3(あるいは図4)の構成の粘性・弾性測定装置により説明する。
本実施形態によれば、液体のように粘性を求めるのではなく、ゲルやゴムなどのように弾性率を有する物質、あるいは粘性の緩和により弾性率が生じる高分子溶液のような物質に対し、一定トルクを与えた際の静止位置からの変位により、粘性率及び弾性率を同時に測定することが可能である。
ここで、弾性率は、いわばバネ定数であり、試料100の回転変形に比例した復元力に対応している。
したがって、粘性に加えて弾性がある場合、弾性率による復元力は、歪の程度に比例して大きくなる。このため、回転子1は、回転開始してから、試料のバネ定数に比例した弾性力と、回転磁場による回転トルクが釣り合った回転角度θで回転を停止することになる。磁石固定台7が反時計回りに回転することにより、すでに述べたように、反時計回りの回転トルクが試料100中の回転子1に印加される。
そして、回転子1に対して印加される回転トルクと弾性による反発力が釣り合う回転角度θの位置で、浮き回転子1の回転が停止する。
ここで、回転検出部81は、モーター4が回転しておらず、磁石固定台7が停止状態における回転子1の回転翼のマーク30の位置と、所定の回転数ΩMでモーター4が回転した後、回転が停止した際のマーク30の位置との各々の撮像画像から回転角度θを求める。この角度θから弾性を求めることができる。
図10は、モーター4の回転速度ΩM(すなわち、回転トルク)と、回転子1が停止する回転角度θとの関係を示す図である。図10おいて、横軸がモーター4の回転数ΩMを示し、縦軸が回転子1の停止する回転角度θを示している。
すなわち、図1及び図3に示す粘性・弾性測定装置の場合、磁石固定台7がモーター4により回転することにより、この磁石固定台7に配置されている第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石3_4の各々の磁石が、モーター4の回転速度に対応した回転磁場を生成する。
そして、回転磁場制御部83は、予め設定されたステップに従い、モーター4の回転速度を変化させ、回転速度毎の回転角度θを求めて、回転数ΩMと回転角度θとの関係を求めて図10に示すグラフを作成する。ここで、予め弾性が判っている複数の標準試料に対して、粘性と同様に、弾性が未知の試料100の弾性測定に用いる標準データ作成するため、上述した処理を行う。粘性の標準データの作成時と同様に、標準試料を試料容器2に入れて、上述した回転角度θの測定を行う。
図11は、弾性と、回転速度及び回転角度の比との関係を示す図である。図11において横軸が弾性(弾性率:Pa)を示し、縦軸が回転速度ΩMと回転角度θとの比例係数を示している。ここで、粘性と回転角度θとは逆比例する。
この図11は、図10における各標準試料の傾き(回転速度ΩMと回転角度θとの比)と、対応する標準試料の粘性とを対応付けて作成した、弾性測定に用いる弾性の標準データである。
実際の未知の弾性の試料100の測定において、この測定対象の試料100を試料容器2に入れ、標準試料の場合と同様に、回転磁場制御部83がモーター4を予め設定した回転速度で回転させる。
そして、回転検出部81は、回転速度毎の回転角度θを求めて、粘性検出部82に対して出力する。
粘性検出部82は、回転検出部81から供給される回転速度ΩMと回転角度θとの比例係数を求め、この比例係数に対応する弾性のデータを、標準データ記憶部84の標準データから読み出し、読み出したデータを試料100の弾性として出力する。
また、回転子1の回転子底板1Aに加える回転トルクを時間的に変化させることにより、弾性と粘性とを同時に測定することも可能である。この場合、回転磁場を生成する磁石を、図7に示す電磁石で構成する。
例えば、電磁石に対して励磁電流を印加し、回転子1の回転子底板1Aに対して所定の回転トルクを印加した後、この励磁電流の印加を停止し、停止した後の回転子1の回転状態を観察する。
このとき、回転子1は、自身が接している試料100の弾性に応じて回転振動を起こすことになる。ここで、弾性に対して回転振動の周期及び振動時間が比例し、粘性に対して回転振動の振幅の減衰率が比例している。
したがって、予め粘性及び弾性の判っている複数の標準試料毎に、その回転振動の振幅の減衰率と、周期及び振動時間とを、回転子1の回転子底板1Aに対して回転磁界を印加することにより測定し、標準データを作成して標準データ記憶部84に予め記憶させておく。
次に、実際の未知の粘性及び弾性を有する測定対象の物質を測定する際、粘性検出部82は、測定対象の物質である試料100の振幅の減衰率と、周期及び振動時間とを回転子1により測定し、この測定した振幅の減衰率に対応する粘性と、周期及び振動時間とに対応する弾性とを、それぞれ標準データ記憶部84の標準データから読み出す。
そして、粘性検出部82は、標準データから読み取った粘性及び弾性を、測定対象の試料100の粘性及び弾性として出力する。
上述したように、本実施形態によれば、試料100の粘性及び弾性を一括して同時に測定することが可能となる。
また、回転子1の回転子底板1Aに印加する回転磁場の回転方向と、回転トルク(モーター4の回転数ΩM)とを周期的に掃引することにより、回転子1の回転子底板1Aには周期的な回転トルクを印加することができる。
そして、この回転方向と回転トルクとを掃引する周期を変化させつつ、回転子1の回転振動の振幅と位相とを、回転子1のマーク30を撮像した撮像画像から観察することにより、粘性と弾性とを独立して測定であることが可能となる。
すなわち、この回転振動の観察は、すでに述べた、磁場を消去した後の減衰振動を、周波数スペクトルとして検出するものであり、磁場を消去した後の粘性及び弾性の測定と原理的に同様である。
次に、図1に示す粘性・弾性測定装置(力学物性測定装置)における具体的な応用例について説明する。
試料容器本体21は、内径が40mmであり、内部の側壁の高さ10mmのガラス製シャーレを用いた。そして、試料容器本体21に測定対象の物質である試料100を5mL入れた後、試料容器本体21を試料容器蓋22により封止した。ここで、例えば、試料100の温度は20℃とした。
予め粘性の判っている標準試料としては、図6に示すように、0.5(mPa・s)、1.0(mPa・s)の2種類を用いた。
そして、この標準試料の表面で回転子1の回転子底板1Aに回転トルクを印加して、回転子1を回転させた。この場合、回転子底板1Aの下面が試料100と接している。ここで、回転子底板1Aは、直径20mm、厚さ1mmのアルミニウム板の円板であり、この円板の回転中心における底面に対して突起部1Cとして直径2mmのアルミ球を取り付けた。浮き部1Bには、外形20mm、内径16mm、長さ(側壁としての高さ)4mmのガラス管用いた。
次に、回転磁場制御部83は、モーター4を駆動して、磁石固定台7を回転させる。
この結果、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石3_4が生成する回転子1の回転子底板1Aに垂直な磁場を、第1磁石3_1、第2磁石3_2、第3磁石3_3及び第4磁石3_4を回転させることにより、回転子1の回転子底板1Aに対して回転磁場を印加する。この回転磁場により、回転子1の回転子底板1Aは、回転トルクが印加され、印加された回転磁界の回転方向と同一方向に回転を行う。
そして、回転検出部81は、例えば、回転検出センサ(撮像素子)が撮像する、回転子1の回転子底板1Aのマーク30の回転する動画像を撮像画像として自身内部の記憶部に記憶し、画像処理によりマーク30の回転周期を求め、このマークの回転周期から回転子1の回転数を求める。
モーター4の回転数ΩMを変える毎に、対応する回転子1の回転数ΩDを求め、図6に示すように、粘性の異なる標準試料毎に、回転子1の回転数ΩDと、回転数ΩM及びΩMの差分との対応関係を求める。
図6において、各標準試料の回転子1の回転数ΩDと、回転数ΩM及びΩMの差分との関係を示す関係は、直線となっている。このため、図6は、回転子1の回転数と、回転子1に印加される回転トルクの関係のみから粘性を求めることが可能であることを示している。
この結果、標準データを用いることにより粘性を正確に測定できることが分かる。
なお、本発明における図1の粘性・弾性測定装置の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより試料の粘性を求める処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
1…回転子
1A…回転子底板1A
1B…浮き部
1C…突起部
2…試料容器
4…モーター
5…回転検出センサ
6…試料台
7…磁石固定台
8…粘性測定部
11…回転軸
21…試料容器本体
21C…溝部
22…試料容器蓋
30…マーク
3_1…第1電磁石
3_2…第2電磁石
3_3…第3電磁石
3_4…第4電磁石
81…回転検出部
82…粘性検出部
83…回転磁場制御部
84…標準データ記憶部
85…装置制御部

Claims (10)

  1. 一部あるいは全体が導電性を有する材料で構成され、その下部における回転中心に突状の突起を有する回転子と、
    粘性を検出する対象の検出対象物質が入れられ、該検出対象物質に接触して前記突起が自身の内面底部に接触した状態で前記回転子が配置された試料容器と、
    前記回転子に時間変動する磁場を印加し、前記回転子内に誘導電流を誘起し、該誘導電流と該回転子に印加される磁場とのローレンツ相互作用により、該回転子に回転トルクを与えて回転させる回転制御部と、
    前記回転子の回転速度を検出する回転検出部と、
    前記回転子の回転速度数により、該回転子に接する前記検出対象物質の粘性及び弾性を検出する粘性弾性検出部と
    を有し、
    前記回転子が回転対称であり、当該回転子の回転対称軸が回転軸であり、前記回転子の前記検出対象物質に没した部分に対応して生じる浮力による浮心位置と、前記回転子の重心位置との各々が前記回転軸の上にあり、かつ前記重心位置が前記浮心位置に対して鉛直下方にあり、前記回転子が円形の底板の上部に対して、平面視において当該底板の外周と柱の外周とが重なるように円柱の形状の浮き部を備えており、当該浮き部が前記底板に比較して大きな浮力を有しており、前記浮心位置が前記回転子の前記検出対象物質に没した前記浮き部に対応して生じる
    ことを特徴とする粘性・弾性測定装置。
  2. 前記回転子の半径が以下の式により決定されることを特徴とする請求項1に記載の粘性・弾性測定装置。
    Figure 0006894111
  3. 前記浮き部は前記円柱の内部が空洞であり、円筒の形状である
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粘性・弾性測定装置。
  4. 前記重心位置と浮心位置との距離が、前記回転子の回転における回転軸を鉛直方向に保持する復元力を有する距離以上に設定されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の粘性・弾性測定装置。
  5. 粘性が既知である複数の物質内における前記回転子に加わる回転トルクと、当該回転子の回転数との関係を予め測定した標準データを記憶する記憶部をさらに有し、
    前記粘性弾性検出部が検出した検出対象物質の回転トルクと回転数との関係と、前記標準データを比較することにより、前記検出対象物質の粘性・弾性を求める
    ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の粘性・弾性測定装置。
  6. 前記回転子の面にマークが付されており、
    前記回転検出部が前記マークの回転を検出することにより、前記回転子の回転数を検出する
    ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の粘性・弾性測定装置。
  7. 前記回転子の前記回転子に対してレーザを照射し、その反射光あるいは干渉パターンの変化を光学的に測定することにより、前記回転子の回転数を検出する
    ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の粘性・弾性測定装置。
  8. 前記回転子と接する前記試料容器の内面の底部が滑らかな平面あるいは滑らかな曲面の凹形状に形成されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の粘性・弾性測定装置。
  9. 前記回転子の直径方向に対し、当該回転子が回転における回転軸からの距離に比例して薄くなるように形成されている
    ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の粘性・弾性測定装置。
  10. 試料容器に粘性及び弾性を検出する対象の検出対象物質を収容し、一部あるいは全体が導電性を有する材料で構成され、その下部における回転中心に突状の突起を有する回転子を、前記検出対象物質に接触して前記突起が自身の内面底部に接触した状態で配置する過程と、
    前記回転子に時間変動する磁場を印加し、前記回転子の前記回転子内に誘導電流を誘起し、該誘導電流と該回転子に印加される磁場とのローレンツ相互作用により、該回転子に回転トルクを与えて回転させる過程と、
    前記回転子の回転数を検出する過程と、
    前記回転数により、前記回転子に接する検出対象物質の粘性・弾性を検出する粘性検出過程と
    を含み
    前記回転子が回転対称であり、当該回転子の回転対称軸が回転軸であり、前記回転子の前記検出対象物質に没した部分に対応して生じる浮力による浮心位置と、前記回転子の重心位置との各々が前記回転軸の上にあり、かつ前記重心位置が前記浮心位置に対して鉛直下方にあり、前記回転子が円形の底板の上部に対して、平面視において当該底板の外周と柱の外周とが重なるように円柱の形状の浮き部を備えており、当該浮き部が前記底板に比較して大きな浮力を有しており、前記浮心位置が前記回転子の前記検出対象物質に没した前記浮き部に対応して生じる
    ことを特徴とする粘性・弾性測定方法。
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