JP6889701B2 - アルファ溶血素バリアント - Google Patents

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Description

[001]黄色ブドウ球菌(Staphylococcal aureus)アルファ溶血素バリアントおよびαHL変異バリアントに関する組成物および方法を開示する。アルファ溶血素(α−HL)バリアントは、例えば、ポリマー配列情報を調べるためのデバイスにおいてナノポアとして有用である。αHL変異バリアントは、機能的七量体αHL細孔を提供するようにサブユニットの化学量論比を操作するために有用である。本明細書において記載されるナノポア、方法およびシステムは、特徴が改善されたナノポアを用いる単一分子技術を使用して、一本鎖核酸、例えば、DNA、RNAなどの定量的検出を提供する。
[002]溶血素は、さまざまな生物によって産生されるタンパク質毒素のファミリーのメンバーである。一部の溶血素、例えば、アルファ溶血素は、膜中に細孔またはチャネルを形成することによって、細胞膜(例えば、宿主細胞膜)の統合性を破壊できる。細孔形成タンパク質によって膜中に形成される細孔またはチャネルを使用して、膜の一方の側からもう一方に特定のポリマー(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を輸送できる。
[003]アルファ溶血素(α−HL、a−HL、αHL、aHLまたはα−HL)は、宿主細胞の膜中に水性チャネルを形成する自己構築毒素である。α−HLは、ナノポアシーケンシングコミュニティの主成分となった。高い安定性、自己構築および一本鎖DNAを収容するのには十分に広いが二本鎖DNAを収容するには十分に広くない細孔直径を含む、多数の有利な特性を有する(Kasianowiczら、1996)。
[004]a−HL細孔におけるDNA検出に関するこれまでの研究は、DNAが細孔を通って転位置するときにイオン電流性質を解析すること(Kasianowiczら、1996、Akesonら、1999、Mellerら、2001)、転位置速度(100mVで約1nt/μs)およびイオン電流シグナル中の固有のノイズを考えると、極めて困難な課題に集中してきた。より高い特異性が、細孔の内部に恒久的につながれたプローブ分子の組込みによって、ナノポアを用いるセンサーにおいて達成された(Howorkaら、2001aおよびHoworkaら、2001b;Movileanuら、2000)。
[005]野生型a−HLは、著しい数の欠失エラー、すなわち、測定されない塩基をもたらす。したがって、特性の改善されたα−HLナノポアが望まれる。
[006]本発明は、例えば、親または野生型αHLのTTTに対して、通り抜ける時間(TTT)を増強する、例えば、対象の分子の捕獲のための時間を低減するアミノ酸変動を含む変異体ブドウ球菌アルファ溶血素(αHL)ポリペプチドを特徴とする。
[007]目下開示されるバリアントは、対象の分子、例えば、種々のタグ付きヌクレオチドまたは配列決定されるヌクレオチドの通り抜ける時間を低減する。
[008]α−溶血素(αHL)バリアントが本明細書において開示される。α−溶血素(αHL)バリアントは、親のα−HLポリペプチド、例えば、配列番号3に由来し、親のα−HLポリペプチドに対して1つまたは複数の変異を含む。一部の実施形態において、バリアントは、配列番号3(成熟a−HL)の位置12または17に対応する位置に置換を含む。一部の実施形態において、バリアントは、置換H144Aをさらに含む。一部の実施形態において、置換は、1以上の正電荷を含む。一部の実施形態において、バリアントは、残基T12および/またはN17のうち1つまたは複数に対応する位置に置換を含む。一部の実施形態において、バリアントは、T12K、T12R、N17K、N17Rおよびそれらの組合せから選択される置換を含む。一部の実施形態において、バリアントは、親のα−溶血素に対して、変更された通り抜ける時間(TTT)を有する。一部の実施形態において、TTTは、低減される。一部の実施形態において、バリアントは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(配列番号1および3)に由来するα−溶血素(αHL)中のT12RもしくはT12Kおよび/またはN17RもしくはN17Kからなる群から選択される残基に対応する位置に置換を含む。一部の実施形態において、置換は、T12Kである。一部の実施形態において、置換は、T12Rである。一部の実施形態において、置換は、N17Kである。一部の実施形態において、置換は、N17Rである。一部の実施形態において、親のα−溶血素(例えば、AAA26598)と比較して、変更された特徴を有するバリアントa−HLは、H144Aおよび
a.T12K/R、
b.N17K/R、
またはそれらの組合せ
から選択される少なくとも1つのさらなる変異を含む。
[009]一部の実施形態では、アミノ酸置換は、異種分子、例えば、PEGの付加を可能にする。一部の実施形態において、a−HLバリアントは、翻訳後修飾を有する。
[0010]一部の実施形態において、置換は、約5〜約8.5のpHで塩基性であるか、または正電荷を有する非天然アミノ酸である。
[0011]一態様においては、少なくとも1つの、本明細書において記載されるようなα−溶血素(αHL)バリアントを含む七量体細孔構築体(例えば、ナノポア構築体)を提供する。一実施形態においては、本発明は、変異体αHLポリペプチド(M)を含有するヘテロマーの細孔構築体、例えば、野生型(WT)ブドウ球菌のαHLポリペプチドおよび変異体αHLポリペプチドを含有し、変異体αHLポリペプチドのアミノ酸バリアント(本明細書において提供されるような)が、細孔構造の膜貫通チャネル中の位置を占める細孔構築体を提供する。例えば、WTおよびバリアントαHLポリペプチドの割合は、式WT7−n(式中、nは、1、2、3、4、5、6または7である)によって表され、好ましくは、ヘテロ七量体中のαHLポリペプチドの割合は、WT7−nであり、最も好ましくは、割合は、WTである。七量体の各サブユニットが変異αHLポリペプチドである(すなわち、n=7である)ホモマーの細孔もまた本発明に包含される。七量体細孔は、少なくとも2つの連結されたモノマーのコンカテマーサブユニットと組み合わせた、少なくとも2つの連結されたモノマーのコンカテマーサブユニットから構築できる。あるいは、七量体細孔は、少なくとも2つの連結されたモノマーのコンカテマーサブユニットおよび個々のモノマーの組合せから構築できる。したがって、コンカテマーまたはコンカテマーおよびモノマーの混合物の七量体中のWT対バリアントサブユニットの比は、コンカテマーの大きさおよび数に応じて変わる。
[0012]一部の例では、ポリメラーゼは、ナノポアと会合され(例えば、ナノポアと共有結合によって連結される)、ポリメラーゼは、ヌクレオチド組込み事象を実施し、すなわち、酵素活性を保持する。
[0013]一態様においては、本明細書において記載されるようなa−HLバリアントをコードする核酸を提供する。
[0014]一態様においては、本明細書において記載されるようなアルファ溶血素バリアントをコードする核酸を含むベクターを提供する。
[0015]一態様においては、本明細書において記載されるようなアルファ溶血素バリアントをコードする核酸を含むベクターを用いて形質転換された宿主細胞を提供する。
[0016]一態様においては、(a)本明細書において記載されるようなアルファ溶血素バリアントをコードする核酸を含む宿主細胞を、適した条件下、適した培養培地中で培養して、アルファ溶血素バリアントを作製するステップと、(b)上記の作製されたアルファ溶血素バリアントを得るステップとを含むアルファ溶血素バリアントを作製する方法を提供する。
[0017]一態様においては、標的分子を検出するための方法であって、(a)検出電極に隣接して、またはその近傍に配置された膜中に、本明細書において記載されるようなナノポアを含むチップを設置するステップと、(b)核酸分子を上記ナノポア中に通過させるステップであって、上記核酸分子が、リポーター分子と会合され、上記核酸分子が、アドレス領域およびプローブ領域を含み、上記リポーター分子が、上記プローブ領域で上記核酸分子と会合され、上記リポーター分子が、標的分子と連結されるステップと、(c)上記核酸分子が上記ナノポア中を通過させられる間に上記アドレス領域をシーケンシングして、上記アドレス領域の核酸配列を調べるステップと、(d)(c)において調べられた上記アドレス領域の核酸配列に基づいて、コンピュータプロセッサーを利用して上記標的分子を同定するステップとを含む方法を提供する。
[0018]一態様においては、少なくとも1つの前のおよび少なくとも1つの後のオリゴマー化サブユニットを含むヘテロオリゴマーα−溶血素(αHL)七量体を提供し、各オリゴマー化サブユニットは、第1のオリゴマー化ドメイン中に1つもしくは複数の変異および/または第2のオリゴマー化ドメイン中に1つもしくは複数の変異を有する、少なくとも1つのαHLモノマーおよび/または少なくとも1つのαHLモノマーのコンカテマーを含み、上記の第1のおよび/または第2のドメイン上の上記変異の少なくとも1つが、上記の少なくとも1つの前のおよび上記の少なくとも1つの後のオリゴマー化サブユニットの自己オリゴマー化を妨げる破壊変異である。
[0019]別の態様においては、本明細書において記載されるヘテロ−オリゴマーαHL七量体は、少なくとも1つの前のオリゴマー化サブユニット中の第1のオリゴマー化ドメイン上に少なくとも1つの同族および/もしくはレスキュー変異、ならびに/または少なくとも1つの後のオリゴマー化サブユニット中の第2のオリゴマー化ドメイン中に少なくとも1つの同族および/もしくはレスキュー変異をさらに含み得、少なくとも1つの同族および/またはレスキュー変異は、少なくとも1つの前のおよび少なくとも1つの後のオリゴマー化サブユニット間のサブユニット間接触を決定して、ヘテロ−オリゴマーαHL七量体中のオリゴマー化サブユニットの配列を特定する。サブユニットのオリゴマー化を可能にする前および後ろのサブユニットのオリゴマー化ドメインにおいて行うことができる同族変異の一例は、変異H35IおよびY101Hの対である。
[0020]一部の態様においては、αHLモノマーのコンカテマーである少なくとも1つの前のオリゴマー化サブユニットおよび少なくとも1つのαHLモノマーである少なくとも1つの後ろのサブユニットによって、αHL七量体を形成することができる。
[0021]他の態様においては、各々、αHLモノマーのコンカテマーである、少なくとも1つの前のオリゴマー化サブユニットおよび少なくとも1つの後のオリゴマー化サブユニットによって、αHL七量体を形成することができる。
[0022]さらに他の態様においては、αHL七量体は、αHLモノマーである、前および後のオリゴマー化サブユニットによって形成することができる。
[0023]さらに別の態様では、αHL七量体を、αHLモノマーのコンカテマーである少なくとも1つの前のオリゴマー化サブユニットおよびαHLモノマーである少なくとも1つの後のサブユニットによって形成することができる。
[0024]さらに別の態様では、αHL七量体を、αHLモノマーである少なくとも1つの前のオリゴマー化サブユニットおよびαHLモノマーのコンカテマーである少なくとも1つの後のサブユニットによって形成することができる。
[0025]一部の場合においては、αHL七量体のモノマーおよび/またはモノマーのコンカテマーは、配列番号3の1つまたは複数のポリペプチドを含む。
[0026]一態様においては、αHL七量体の第1のオリゴマー化ドメイン中の変異は、配列番号3のアミノ酸2〜28、35〜42および43〜61に対応する位置で行うことができる。第1のオリゴマー化ドメイン中で行うことができる変異の例として、配列番号3のH35D、H35E、H35I、H35L、D24A、V26D、K37SおよびD24A+V26D+K37Sに対応するアミノ酸置換が挙げられる。第2のオリゴマー化ドメイン中の変異は、配列番号3のアミノ酸95〜104、158〜164および228〜236に対応する位置で行うことができる。第2のオリゴマー化ドメイン中で行うことができる変異の例として、配列番号3のT233R、S99K、Y101D、Y101HおよびT233R+S99Kに対応するアミノ酸置換が挙げられる。
[0027]すべての態様においては、αHL七量体は、脂質二重層中に細孔を形成する能力を保持する。
[0028]一部の場合においては、αHL七量体は、前のおよび/または後のオリゴマー化サブユニットのうち1つまたは複数に付いているポリメラーゼをさらに含むことができる。
別の態様においては、第1のおよび/または第2のオリゴマー化ドメイン中の変異に加えて、αHL七量体は、配列番号3の位置12または17に対応する位置にアミノ酸置換を含むαHLポリペプチドをさらに含むことができ、置換は、1以上の正電荷を含む。位置12または17での置換は、T12K、T12R、N17K、N17Rおよびそれらの組合せから選択することができる。位置12または17に置換を有するαHLポリペプチドを含むαHL七量体は、親のα−溶血素に対して、変更された通り抜ける時間(TTT)を有し得る。例えば、TTTを、低減させることができる。
[0029]別の態様においては、本明細書において記載されるヘテロ−オリゴマーαHL七量体の少なくとも1つの前のおよび1つの後のオリゴマー化サブユニットをコードする複数のポリヌクレオチドを提供する。
[0030]別の態様においては、ヘテロ−オリゴマーαHL七量体のオリゴマー化サブユニットをコードする各ポリヌクレオチドのうち1種をコードする発現ベクターを用いて形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。
[0031]別の態様においては、αHL七量体の少なくとも1つの前のおよび少なくとも1つの後のオリゴマー化サブユニットを調製するための方法であって、ヘテロオリゴマーαHL七量体のオリゴマー化サブユニットをコードするポリヌクレオチドを用いてトランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞を培養するステップを含む方法を提供する。本方法は、宿主細胞培養物からαHL七量体の少なくとも1つの前のおよび少なくとも1つの後のオリゴマー化サブユニットを単離するステップをさらに含むことができる。
[0032]別の態様においては、本明細書において記載されるヘテロオリゴマーαHL七量体を含む七量体細孔構築体を提供する。
[0033]本発明のその他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかし、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、この詳細な説明から、本発明の範囲および趣旨内の種々の変法および改変は当業者に明らかとなるので単に例示として示されるということは理解されなければならない。
[0034]各々、2つの図面、例えば、図1Aおよび1Bを示す。各図のA図は、x軸に示される時間ビンと等しい「通り抜ける時間」を有していた捕獲事象の数のヒストグラムである。各図のB図は、対応する図Aの生データの一部である。[0035]図1Aおよび1Bは、野生型a−溶血素ナノポアの結果を示す図である。図1A(一番上のパネル)は、「通り抜ける時間」データを示す。このデータは、タグ付きヌクレオチドを捕獲していた多数の細孔から組み合わされ、細孔がポリメラーゼおよび鋳型DNA分子の両方を有していたことを示す。野生型αHLの平均および中央値、併せて標準偏差は、それぞれ、20.7ms、16.1msおよび1.5msであり、算出に使用された方形波の総数は、41910である。 [0036]図1B(下のパネル)は、一部の生データを示す図であり、5つの連続する方形波が示されている。実線間のデータ点は、開口チャネル(タグ付きヌクレオチドが細孔中を通らない)を表し、破線間のデータは、タグ付きヌクレオチドが細孔中を通った場合を表し、チャネルを通って移動するイオンを遮断している。電極は、正および負の100mVの間で循環され、本発明者らのシステムでは、負電圧がかけられる場合にはデータ点は、記録されない。したがって、すべてのデータ点は、正にかけられた電位から集められており、データ点がない時間(例えば、1716.9〜1717秒の間)は、電極が負電圧をかけられていた時である。この例では、「通り抜ける時間」測定は、観察可能な通されたレベルを有する方形波から算出され、前の方形波は、正電圧の最後に通されるレベルを有していた(タグが細孔中に通され、ポリメラーゼによって結合されることを示す)。 [0037]図2AおよびBは、T12K変異を含むa−溶血素ナノポアの結果を示す図である。図2A(一番上のパネル)は、タグ付きヌクレオチドを捕獲していた多数の細孔から組み合わされたデータであり、細孔がポリメラーゼおよび鋳型DNA分子の両方を有していたことを示す。T12K αHLの平均および中央値、併せて標準偏差は、それぞれ、19.7ms、14.5msおよび1.5msであり、算出に使用された方形波の総数は、4311である。 [0038]図2B(下のパネル)は、一部の生データを示す図であり、5つの連続する方形波が示されている。実線間のデータ点は、開口チャネル(タグ付きヌクレオチドが細孔中を通らない)を表し、破線間のデータは、タグ付きヌクレオチドが細孔中を通った場合を表し、チャネルを通って移動するイオンを遮断している。電極は、正および負の100mVの間で循環され、本発明者らのシステムでは、負電圧がかけられる場合にはデータ点は、記録されない。したがって、すべてのデータ点は、正にかけられた電位から集められており、データ点がない時間(例えば、1600.4〜1601.2秒の間)は、電極が負電圧をかけられていた時である。この例では、「通り抜ける時間」測定は、観察可能な通されたレベルを有する方形波から算出され、前の方形波は、正電圧の最後に通されるレベルを有していた(タグが細孔中に通され、ポリメラーゼによって結合されることを示す)。 [0039]図3AおよびBは、T12R変異を含むa−溶血素ナノポアの結果を示す図である。図3Aは、タグ付きヌクレオチドを捕獲していた多数の細孔から組み合わされたデータであり、細孔がポリメラーゼおよび鋳型DNA分子の両方を有していたことを示す。T12R αHLの平均および中央値、併せて標準偏差は、それぞれ、16.9ms、10.5msおよび1.5msであり、算出に使用された方形波の総数は、4138である。 [0040]図3B(下のパネル)は、一部の生データを示す図であり、5つの連続する方形波が示されている。実線間のデータ点は、開口チャネル(タグ付きヌクレオチドが細孔中を通らない)を表し、破線間のデータは、タグ付きヌクレオチドが細孔中を通った場合を表し、チャネルを通って移動するイオンを遮断している。電極は、正および負の100mVの間で循環され、本発明者らのシステムでは、負電圧がかけられる場合にはデータ点は、記録されない。したがって、すべてのデータ点は、正にかけられた電位から集められており、データ点がない時間(例えば、267.2〜268.2秒の間)は、電極が負電圧をかけられていた時である。この例では、「通り抜ける時間」測定は、観察可能な通されたレベルを有する方形波から算出され、前の方形波は、正電圧の最後に通されるレベルを有していた(タグが細孔中に通され、ポリメラーゼによって結合されることを示す)。 [0041]図4Aおよび4Bは、N17R変異を含むa−溶血素ナノポアの結果を示す図である。図4A(一番上のパネル)は、タグ付きヌクレオチドを捕獲していた多数の細孔から組み合わされたデータであり、細孔がポリメラーゼおよび鋳型DNA分子の両方を有していたことを示す。N17R αHLの平均および中央値、併せて標準偏差は、それぞれ、17.5ms、10.5msおよび1.7msであり、算出に使用された方形波の総数は、3877である。 [0042]図4B(下のパネル)は、一部の生データを示す図であり、5つの連続する方形波が示されている。実線間のデータ点は、開口チャネル(タグ付きヌクレオチドが細孔中を通らない)を表し、破線間のデータは、タグ付きヌクレオチドが細孔中を通った場合を表し、チャネルを通って移動するイオンを遮断している。電極は、正および負の100mVの間で循環され、本発明者らのシステムでは、負電圧がかけられる場合にはデータ点は、記録されない。したがって、すべてのデータ点は、正にかけられた電位から集められており、データ点がない時間(例えば、344〜344.9秒の間)は、電極が負電圧をかけられていた時である。この例では、「通り抜ける時間」測定は、観察可能な通されたレベルを有する方形波から算出され、前の方形波は、正電圧の最後に通されるレベルを有していた(タグが細孔中に通され、ポリメラーゼによって結合されることを示す)。 [0043]図5Aおよび5Bは、N17K変異を含むa−溶血素ナノポアの結果を示す図である。図5A(一番上のパネル)は、タグ付きヌクレオチドを捕獲していた多数の細孔からの組み合わされたデータを示し、細孔がポリメラーゼおよび鋳型DNA分子の両方を有していたことを示す。N17K αHLの平均および中央値、併せて標準偏差は、それぞれ、5.7ms、2.4msおよび0.7msであり、算出に使用された方形波の総数は、2424である。 [0044]図5B(下のパネル)は、一部の生データを示す図であり、5つの連続する方形波が示されている。実線の上のデータ点は、開口チャネル(タグ付きヌクレオチドが細孔中を通らない)を表し、破線間のデータは、タグ付きヌクレオチドが細孔中を通った場合を表し、チャネルを通って移動するイオンを遮断している。電極は、正および負の100mVの間で循環され、本発明者らのシステムでは、負電圧がかけられる場合にはデータ点は、記録されない。したがって、すべてのデータ点は、正にかけられた電位から集められており、データ点がない時間(例えば、79.5〜80.5秒の間)は、電極が負電圧をかけられていた時である。この例では、「通り抜ける時間」測定は、観察可能な通されたレベルを有する方形波から算出され、前の方形波は、正電圧の最後に通されるレベルを有していた(タグが細孔中に通され、ポリメラーゼによって結合されることを示す)。 [0045]図6Aは、サブユニットの第1の領域中に第1の(601)オリゴマー化ドメイン(□)およびサブユニットの第2の領域中に第2の(602)オリゴマー化ドメイン(★)を有するαHLサブユニット(600)の図を示す。示されるオリゴマー化サブユニットは、モノマーサブユニットである。 [0046]図6Bは、この例では、モノマーi、ii、iii、iv、v、viおよびviiである7種の異なるオリゴマー化サブユニットのヘテロオリゴマーαHL七量体の図を示す。前のサブユニット上の第1のオリゴマー化ドメイン(□)および後のサブユニット上の第2のオリゴマー化ドメイン(★)間の相互作用が表されている(← →)。 [0047]図6Cは、サブユニット間相互作用を可能にする変異(実線の両矢印線として示される)およびサブユニット間相互作用を阻害する変異(破線の両矢印線として示される)を含むサブユニットの図を示す。破壊変異1を有するサブユニット(BM1)は、野生型サブユニット(WT)と、または破壊変異2を有するサブユニット(BM2)と相互作用しない。レスキュー変異(RM)および同族変異(CM)を有するサブユニットは、破壊変異、例えば、破壊変異1を有するサブユニットと相互作用できる。レスキュー変異(RM)を有するサブユニットはまた、野生型(WT)であるサブユニットとも相互作用できる。 [0048]図6Dは、2つのモノマーのαHLコンカテマーサブユニットの図を示す。コンカテマーサブユニットの第1のオリゴマー化ドメイン(□)は、第1のサブユニット(本明細書においてviiと示される)上に存在し、コンカテマーサブユニットの第2のオリゴマー化ドメイン(★)は、第2のサブユニット上に存在する(本明細書においてiとして示される)。 [0049]図7A〜7Fは、リンカー(−−−)、例えば、(GS)(配列番号9)によってつなげられた2つの(7A)、3つの(7B、7C)および4つの(7D、7E、7F)αHLモノマーのコンカテマーの図を示す。成分1および2(C1、C2)は、精製成分、例えば、His(配列番号10)、FLAGエピトープまたは取付け成分、例えば、SpyTagであり得る。 [0050]図8Aは、示されるようにオリゴマー化ドメインに破壊変異を有するバリアントモノマーのオリゴマー化の喪失(N17K)を実証するSDS−PAGEゲルを示す。実施例6が参照される。図8Aは、配列番号11として「His6−GSGG」を開示する。 図8Bは、示されるようにオリゴマー化ドメインに破壊変異を有するバリアントモノマーのオリゴマー化の喪失(N17K)を実証するSDS−PAGEゲルを示す。実施例6が参照される。図8Bは、配列番号11として「His6−GSGG」を開示する。 [0051]図9は、示されるような破壊変異を有するαHLモノマーのゲルを示す図であり、野生型αHLモノマー(Hemo M)は、変異モノマーのオリゴマー化をできないことを実証する。実施例6が参照される。 [0052]図10A〜10Cは、2つのαHLモノマーのサブユニットコンカテマーのSEC精製のクロマトグラム(10A)および(GS)(配列番号9)によって連結され、His6−SpyTag(配列番号10として開示される「His6」)でN末端にタグが付けられた2つのモノマーのαHLコンカテマーのSDS−PAGEゲル(10B)およびシグナル配列pelBとともに表された図(10C)を示す図である。実施例7が参照される。 図10A〜10Cは、2つのαHLモノマーのサブユニットコンカテマーのSEC精製のクロマトグラム(10A)および(GS)(配列番号9)によって連結され、His6−SpyTag(配列番号10として開示される「His6」)でN末端にタグが付けられた2つのモノマーのαHLコンカテマーのSDS−PAGEゲル(10B)およびシグナル配列pelBとともに表された図(10C)を示す図である。実施例7が参照される。 図10A〜10Cは、2つのαHLモノマーのサブユニットコンカテマーのSEC精製のクロマトグラム(10A)および(GS)(配列番号9)によって連結され、His6−SpyTag(配列番号10として開示される「His6」)でN末端にタグが付けられた2つのモノマーのαHLコンカテマーのSDS−PAGEゲル(10B)およびシグナル配列pelBとともに表された図(10C)を示す図である。実施例7が参照される。 [0053]図11は、図11中に示される2種のモノマーのコンカテマーが、レーン5において高分子量バンドとして見られるようにオリゴマー化できることを実証するSDS−PAGEゲルの像を示す図である。実施例7が参照される。 [0054]図12は、3つおよび4つの連結されたモノマーのコンカテマー化されたサブユニットを発現させ、精製することができることを実証するSDS−PAGEゲルの像を示す図である。実施例8が参照される。 [0055]図13は、変異サブユニットのオリゴマー化を可能にする、同族変異H35IおよびY101Hを有するαHLサブユニットのオリゴマー化を実証するSDS−PAGEゲルの像を示す。実施例10が参照される。 [0056]図14は、H35G変異を有するモノマーの温度依存性オリゴマー化を実証するSDS−PAGEゲルの像を示す図である。実施例11が参照される。
[0057]本発明を、以下の定義および実施例を使用して単に参照によって、以下に詳細に説明する。本明細書において参照されるすべての特許および刊行物は、このような特許および刊行物内で開示されたすべての配列を含めて、参照により明確に組み込まれる。
[0058]本明細書において別段の定めがない限り、本明細書中で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY、第2版、John Wiley and Sons、New York(1994)、およびHale&Marham、THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY、Harper Perennial、NY(1991)により、本発明で使用する用語の多くの一般的な辞書が当業者に与えられる。本明細書において記載されるものと類似または等価である任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料を説明する。当技術分野の定義および用語について、実施者らは、Sambrookら、1989年、およびAusubel FMら、1993年を特に参照対象とする。方法、プロトコールおよび試薬は様々であり得るので、本発明は、記載する特定の方法、プロトコールおよび試薬に限定されないことを理解するべきである。
[0059]数の範囲は、範囲を定める数を含める。「約」という用語は、本明細書において使用する場合は、値のプラスまたはマイナス10パーセント(10%)を意味するよう使用する。例えば「約100」は、90〜110の間の任意の数を指す。
[0060]別段に示されていない限り、核酸は5’〜3’の方向でそれぞれ左から右に書き、アミノ酸配列はアミノからカルボキシの方向でそれぞれ左から右に書く。
[0061]本明細書において示している見出しは、本発明の様々な態様または実施形態を限定するものではなく、本発明は、明細書を全体として参照によって理解され得る。したがって、直下で定義する用語は、明細書を全体として参照によってより充分に定義される。
定義
[0062]アルファ溶血素:本明細書において使用する場合、「アルファ溶血素」、「α−溶血素」、「aHL」、「αHL」、「a−HL」および「α−HL」は、互換的に使用され、モノマー、モノマーのコンカテマーまたはモノマーおよびモノマーのコンカテマーの組合せから、七量体の水が満たされた膜貫通チャネルに自己構築するタンパク質を指す。
[0063]アミノ酸:本明細書において使用する場合、「アミノ酸」という用語は、広義には、ポリペプチド鎖に組み込まれ得る任意の化合物および/または物質を指す。一部の実施形態においては、アミノ酸は、一般構造HN−C(H)(R)−COOHを有する。一部の実施形態においては、アミノ酸は、天然由来のアミノ酸である。一部の実施形態においては、アミノ酸は合成アミノ酸であり、一部の実施形態においては、アミノ酸はD−アミノ酸であり、一部の実施形態においては、アミノ酸はL−アミノ酸である。「標準アミノ酸」は、天然由来のペプチドにおいて一般に見出される20種の標準的なL−アミノ酸のいずれかを指す。「非標準アミノ酸」は、合成により調製されるものであるか天然源から得られるものであるかにかかわらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。本明細書において使用する場合、「合成アミノ酸」または「非天然アミノ酸」は化学修飾アミノ酸を包含し、化学修飾アミノ酸としては、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)、および/または置換体が含まれるが、これらに限定されない。ペプチドのカルボキシ末端アミノ酸および/またはアミノ末端アミノ酸を含めたアミノ酸は、それらの活性に悪影響を及ぼすことなく、メチル化、アミド化、アセチル化、および/または、他の化学物質もしくは化学基での置換によって修飾することができる。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与することができる。「アミノ酸」という用語は、「アミノ酸残基」と互換的に使用され、遊離アミノ酸、および/またはペプチドのアミノ酸残基を指すことができる。その用語が遊離アミノ酸、またはペプチドの残基を指すかは、その用語が使用される文脈から明らかになる。本明細書においては、すべてのアミノ酸残基配列は、左右の方向が、アミノ末端からカルボキシ末端への従来の方向になっている式によって表されていることに留意するべきである。
[0064]塩基対(bp):本明細書において使用する場合、塩基対は、2本鎖DNA分子におけるアデニン(A)とチミン(T)、またはシトシン(C)とグアニン(G)との結び付きを指す。
[0065]相補的:本明細書において使用する場合、「相補的」という用語は、塩基対形成による2本のポリヌクレオチド鎖の領域間、または2つのヌクレオチド間の配列相補性の広範な概念を指す。アデニンヌクレオチドが、チミンまたはウラシルであるヌクレオチドと特異的な水素結合を形成(「塩基対形成」)することができることは公知である。同様に、シトシンヌクレオチドがグアニンヌクレオチドと塩基対形成することができることは公知である。
[0066]発現カセット:「発現カセット」または「発現ベクター」は、標的細胞中の個々の核酸の転写を可能にする一連の特定の核酸エレメントを用いて組換えによってまたは合成によって作製された核酸構築物である。組換え発現カセットを、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルスまたは核酸断片中に組み込むことができる。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、他の配列の中でも、転写されるべき核酸配列およびプロモーターを含む。
[0067]異種:「異種」核酸構築物または配列は、それが発現される細胞にとって天然ではない配列の部分を有する。異種とは、制御配列に関して、天然には、その発現を現在調節している同遺伝子を調節するように機能しない制御配列(すなわち、プロモーターまたはエンハンサー)を指す。一般に、異種核酸配列は、それらが存在する細胞またはゲノムの一部にとって内因性ではなく、感染、トランスフェクション、形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどによって細胞に加えられている。「異種」核酸構築物は、天然細胞において見出される制御配列/DNAコード配列組合せと同一であるか、または異なっている制御配列/DNAコード配列組合せを含有し得る。
[0068]宿主細胞:「宿主細胞」という用語は、ベクターを含有し、発現構築物の複製および/もしくは転写または転写および翻訳(発現)を支持する細胞を意味する。本発明において使用するための宿主細胞は、大腸菌(E.coli)もしくは枯草菌(Bacillus subtilus)などの原核細胞または酵母、植物、昆虫、両生類もしくは哺乳類細胞などの真核細胞であり得る。一般に、宿主細胞は、原核生物、例えば、大腸菌(E.coli)である。
[0069]単離された:「単離された」分子は、通常、例えば分子の自然環境で会合している少なくとも1種の他の分子から分離されている核酸分子である。単離された核酸分子としては、その核酸分子を通常発現する細胞に含有された核酸分子が挙げられるが、その核酸分子は、染色体外、またはその自然の染色***置とは異なる染色***置に存在する。
[0070]改変アルファ溶血素:本明細書において使用する場合、「改変アルファ溶血素」という用語は、別の(すなわち、親の)アルファ溶血素から生じ、親アルファ溶血素と比較して1つまたは複数のアミノ酸の変化(例えば、アミノ酸の置換、欠失および/または挿入)を含有するアルファ溶血素を指す。一部の実施形態において、本発明の改変アルファ溶血素は、天然由来のアルファ溶血素、または野生型アルファ溶血素から生じるか、またはそれから改変されている。一部の実施形態において、本発明の改変アルファ溶血素は、組換えアルファ溶血素または操作されたアルファ溶血素から生じるか、またはそれから改変されており、組換えアルファ溶血素または操作されたアルファ溶血素としては、キメラアルファ溶血素、融合アルファ溶血素、または別の改変アルファ溶血素が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、改変アルファ溶血素は、親アルファ溶血素と比較して変更された表現型を少なくとも1つ有する。
[0071]変異:本明細書において使用する場合、「変異」という用語は、親配列に導入された変更を指し、その変更としては、置換、挿入、欠失(切り詰めを含める)が挙げられるが、これらに限定されない。変異の結果としては、親配列によってコードされるタンパク質では見出されない新しい特性、特質、機能、表現型、または形質の創造が挙げられるが、これらに限定されない。
[0072]ナノポア:本明細書において使用する場合、「ナノポア」または「細孔」という用語は概して、膜に形成された、または他の方法で膜に与えられたチャネル、または通路を指す。膜は、脂質二重層などの有機膜であっても、ポリマー材料で形成された膜などの合成膜であってもよい。膜はポリマー材料としてもよい。ナノポアは、例えば相補型金属酸化膜半導体(CMOS)回路または電界効果トランジスター(FET)回路などの検出回路、または検出回路に連結された電極に隣接して、またはその近傍に配置してもよい。一部の例においては、ナノポアは、0.1ナノメートル(nm)〜約1000nmの桁の特徴的な幅または直径を有する。一部のナノポアはタンパク質である。アルファ溶血素、タンパク質ナノポアの例である。
[0073]核酸分子:「核酸分子」または「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、RNA、DNAおよびcDNA分子を含む。遺伝暗号の縮重の結果として、アルファ溶血素および/またはそのバリアントなどの、所与のタンパク質をコードする多数のヌクレオチド配列が生成され得るということは理解されよう。本発明は、バリアントアルファ溶血素をコードするあらゆるあり得るバリアントヌクレオチド配列を考慮し、それらのすべては、遺伝暗号の縮重を考えると可能性がある。
[0074]プロモーター:本明細書において使用する場合、用語「プロモーター」とは、下流の遺伝子の転写を指示するよう機能する核酸配列を指す。プロモーターは、一般に、標的遺伝子が発現されている宿主細胞にとって適当である。プロモーターは、その他の転写および翻訳調節核酸配列(「制御配列」とも呼ばれる)と一緒に、所与の遺伝子を発現するために必要である。一般に、転写および翻訳調節配列としては、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および停止配列、翻訳開始および停止配列並びにエンハンサーまたはアクチベーター配列が含まれるが、これらに限定されない。
[0075]精製された:本明細書において使用する場合、「精製された」は、分子が、含有されている試料の少なくとも95重量%、または少なくとも98重量%、または少なくとも99重量%または少なくとも99.5重量%の濃度で試料中に存在することを意味する。
[0076]精製すること:本明細書において使用する場合、「精製すること」という用語は、一般に、トランスジェニック核酸またはタンパク質を含有する細胞もしくはその抽出物を、生化学的精製および/またはカラムクロマトグラフィーに付すことを指す。
[0077]タグ:本明細書において使用する場合、「タグ」という用語は、原子もしくは分子、または、原子もしくは分子の集団としてもよい検出可能な部分を指す。タグは、性状、例えば、光学的、電気化学的、磁気的、または静電的(例えば、誘導的、容量的)性状を示すことができ、その性質は、ナノポアを利用して検出することができる。典型的には、ヌクレオチドがタグに付けられる場合には、「タグ付きヌクレオチド」と呼ばれる。タグは、例えば、リン酸部分を介してヌクレオチドに付けることができる。
[0078]通り抜ける時間:「通り抜ける時間」または「TTT」という用語は、ポリメラーゼ−タグ複合体が、ナノポアのバレル中にタグを通すのにかかる時間を意味する。
[0079]バリアント:本明細書において使用する場合、「バリアント」という用語は、親タンパク質と比較した場合に変化した特性、例えば、変化したイオンコンダクタンス、変化した通り抜ける時間などを示す改変タンパク質を指す。
[0080]バリアント溶血素:「バリアント溶血素遺伝子」または「バリアント溶血素」という用語は、それぞれ、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のアルファ溶血素遺伝子の核酸配列が、本明細書において記載される本発明と一致して、コード配列またはアミノ酸配列または発現されたタンパク質を除去、付加および/または操作することによって変更されていることを意味する。
[0081]ベクター:本明細書において使用する場合、「ベクター」という用語は、異なる宿主細胞間の移動用に設計された核酸構造物を指す。「発現ベクター」は、外来性細胞において異種DNA断片を組み込んで発現する能力を有するベクターを指す。多くの原核生物発現ベクターおよび真核生物発現ベクターが市販されている。適切な発現ベクターの選択は、当業者に知られている。
[0082]野生型:本明細書において使用する場合、「野生型」という用語は、天然由来の供給源から単離された際に、その遺伝子または遺伝子産物の配列および/または特性を有する遺伝子または遺伝子産物を指す。
[0083]相同性%:本明細書においては、「相同性%」という用語は、本明細書の「同一性%」という用語と互換的に使用し、本発明のポリペプチドのいずれか1つをコードする核酸配列、または本発明のポリペプチドのアミノ酸配列の間での、配列アライメントプログラムを使用して整列させた場合の核酸またはアミノ酸配列の同一性のレベルを指す。
[0084]例えば、本明細書において使用する場合、相同性80%は、定義済みのアルゴリズムによって決定される配列同一性80%と同じことを意味し、したがって所与の配列の相同体は、所与の配列の、ある長さにわたって80%超の配列同一性を有する。配列同一性の例示的なレベルとしては、所与の配列、例えば本明細書に記載する本発明のポリペプチドのいずれか1つのコード配列との80、85、90、95、98%以上の配列同一性が挙げられるが、これらに限定されない。
[0085]2つの配列間の同一性を決定するのに使用することができる例示的なコンピュータープログラムとしては、インターネット上で公開されている一連のBLASTプログラム、例えば、BLASTN、BLASTX、およびTBLASTX、BLASTP、およびTBLASTNが挙げられるが、これらに限定されない。Altschulら、1990年、およびAltschulら、1997年、も参照のこと。
[0086]配列検索は、GenBankのDNA配列および他の公開データベースの核酸配列と比較して所与の核酸配列を評価する場合には、典型的にはBLASTNプログラムを使用して行う。BLASTXプログラムは、GenBankのタンパク質配列および他の公開データベースのアミノ酸配列に対して、すべての読み枠で翻訳されている核酸配列を検索することに好ましい。BLASTNとBLASTXの両方は、11.0のオープンギャップペナルティー、および1.0のエクステンディッドギャップペナルティーのデフォルトパラメーターを使用し、BLOSUM−62マトリックスを利用して走らせる。(例えば、Altschul,S.F.ら、Nucleic Acids Res.25:3389〜3402、1997年を参照のこと。)
[0087]2つ以上の配列間での「同一性%」を決定するための、選択された配列の好ましいアライメントは、例えば、MacVectorバージョン13.0.7のCLUSTAL−Wプログラムを使用し、10.0のオープンギャップペナルティー、0.1のエクステンディッドギャップペナルティーを含むデフォルトパラメーター、およびBLOSUM30類似度マトリックスを用いて動作させて行う。
[0088]「オリゴマータンパク質」:本明細書において「オリゴマータンパク質」という用語は、複数の同一サブユニット、複数の個別のサブユニットまたは同一および個別のサブユニットの混合物から構成され得るタンパク質を指す。同一サブユニットを有するタンパクは、「ホモオリゴマー」と呼ばれる。2つ以上の個別のポリペプチドサブユニットを含有するタンパク質は、「ヘテロオリゴマー」と呼ばれる。
[0089]「ヘテロ七量体タンパク質」:「ヘテロ七量体タンパク質」という用語は、本明細書において、2つ以上の個別のサブユニットポリペプチドを含有するタンパク質を指し、各ポリペプチドは、7つのモノマーのタンパク質を形成する1以上のαHLモノマーを含む。
[0090]「オリゴマー化サブユニット」:「オリゴマー化サブユニット」または「サブユニット」という用語は、少なくとも1つのαHLモノマーの、または少なくとも1つの、リンカーによって互いに連結される2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは7つのモノマーのαHLコンカテマーのアミノ酸配列を含むポリペプチドを指し、単一ポリヌクレオチドによって各々コードされる。
[0091]「オリゴマー化ドメイン」:「オリゴマー化ドメイン」という用語は、本明細書において、別のサブユニットの領域中のアミノ酸と相互作用して、サブユニットのオリゴマー化を可能にする1つのサブユニットの領域中のアミノ酸を指す。各モノマーサブユニットまたは各モノマーのコンカテマーサブユニットは、第1および第2のオリゴマー化ドメインを有する。
[0092]「破壊変異」:「破壊変異」という用語は、本明細書において、野生型αHLサブユニットとのサブユニット間相互作用を可能にせず、それによってオリゴマー化を阻害する、αHLサブユニット中の変異を指す。
[0093]「レスキュー変異」:「レスキュー変異」という用語は、本明細書において破壊変異ではない変異を指し、第1のサブユニットのオリゴマー化ドメイン上に存在する場合は、第2のサブユニットのオリゴマー化ドメイン中の破壊変異と相互作用して、サブユニット間相互作用を可能にすることができ、それによって、サブユニットのオリゴマー化を可能にする。レスキュー変異はまた、野生型サブユニットとのオリゴマー化を可能にすることができる。「レスキュー変異」はまた、「補完性変異」とも呼ばれ得る。
[0094]「同族変異」:「同族変異」という用語は、第2のサブユニットのオリゴマー化ドメイン中の破壊変異と相互作用して、サブユニット間相互作用を可能にすることができ、それによって、サブユニットのオリゴマー化を可能にする第1のサブユニットのオリゴマー化ドメイン上の破壊変異を指す。
[0095]「自己レスキュー変異」:「自己レスキュー変異」という用語は、第1の温度(例えば、室温)で破壊変異である変異を指し、第2の温度(例えば、37℃)で同族変異に変換する。第1の温度は、第2の温度よりも高くても低くてもよいことを理解されたい。
[0096]「変異バリアント」:「変異バリアント」という用語は、本明細書において、αHLサブユニットのオリゴマー化ドメインの一方または両方中に、1つまたは複数の変異、例えば、置換を導入するようにさらに改変されているバリアントαHLサブユニット、例えば、モノマーを指す。
[0097]「オリゴマー化変異体」:「オリゴマー化変異体」という用語は、本明細書において、一方または両方のオリゴマー化ドメイン中に1つまたは複数の変異を有するαHLサブユニットを指す。
命名法
[0098]本明細書および特許請求の範囲において、アミノ酸残基の従来の1文字表記および3文字表記を使用する。
[0099]参照を容易にするため、本出願のバリアントは、以下の命名法を使用して記載する:
[00100]元のアミノ酸(1つまたは複数):位置(1つまたは複数):置換したアミノ酸(1つまたは複数)。この命名法によれば、例えば、位置17におけるトレオニンのアルギニンによる置換は、
Thr17ArgまたはT17R
として示す。
[00101]複数の変異はプラス記号によって分ける。すなわち、
Thr17Arg+Glu34SerまたはT17R+E34S
は、位置17および34における、アルギニンとセリンをそれぞれトレオニンとグルタミン酸に置換する変異を表す。
[00102]1つまたは複数の代替アミノ酸残基を所与の位置に挿入することができる場合は、T17R/K、またはT17RもしくはT17Kとして示す。
アルファ溶血素の部位特異的突然変異誘発
[00103]黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)アルファ溶血素野生型配列は、本明細書において示しており(配列番号1、核酸コード領域;配列番号3、タンパク質コード領域)、他の場所で入手可能である(National Center for BioinformaticsまたはGenBank受入番号M90536およびAAA26598)。
[00104]点変異は、QuikChange Lightning2キット(Stategene/Agilent)を使用して、製造業者の指示書に従って導入することができる。
[00105]プライマーは、営利会社、例えばIDT DNAに注文することができる。
ナノポア構築および挿入
[00106]本明細書において記載する方法は、ポリメラーゼがナノポアに付いたナノポアを使用することができる。一部の場合においては、(例えば、各ナノポアで1つのみの核酸分子がシーケンシングされるように)ナノポア1つ当たりただ1つのポリメラーゼを有することが望ましい。しかしながら、アルファ溶血素(αHL)を含めた多くのナノポアは、複数のサブユニット(例えば、αHLでは7サブユニット)を有する多量体タンパク質であり得る。サブユニットは、同じポリペプチドの同一複製物であり得る。本明細書においては、無改変サブユニット(例えば、a−HL)に対する改変サブユニット(例えば、a−HLバリアント)の規定された比を有する多量体タンパク質(例えば、ナノポア)を提供する。本明細書においては、無改変サブユニットに対する改変サブユニットの規定された比を有する多量体タンパク質(例えば、ナノポア)を作製する方法も提供する。
[00107]WO2014/074727の図27を参照すると、複数のサブユニットを有するタンパク質を構築する方法は、複数の第1のサブユニット2705を用意すること、および複数の第2のサブユニット2710を用意することを含み、第2のサブユニットは第1のサブユニットと比較すると改変されている。一部の場合においては、第1のサブユニットは野生型(例えば、天然源から精製したもの、または組換えで作製したもの)である。第2のサブユニットは、任意の好適な方法で改変することができる。一部の場合においては、第2のサブユニットは、(例えば、融合タンパク質として)付けられたタンパク質(例えば、ポリメラーゼ)を有する。
[00108]改変サブユニットは、化学反応性部分(例えば、連結の形成に好適なアジド基またはアルキン基)を含むことができる。一部の場合においては、本方法は、反応(例えば、Click化学付加環化)を行って、実在物(例えば、ポリメラーゼ)を化学反応性部分に付けることをさらに含む。
[00109]本方法は、第1のサブユニットを第2のサブユニット2715と第1の比で接触させて、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットを有する複数のタンパク質2720を形成させることをさらに含むことができる。例えば、ポリメラーゼを付けるのに好適な反応基を有する改変αHLサブユニット1部を、野生型αHLサブユニット6部と混合することができる(すなわち、第1の比は1:6である)。複数のタンパク質は、第2のサブユニットに対する第1のサブユニットの複数の比を有することができる。例えば、混合したサブユニットは、改変サブユニット:無改変サブユニットの化学量論比(例えば、1:6、2:5、3:4)の分布を有するいくつかのナノポアを形成させることができる。
[00110]一部の場合においては、タンパク質は、サブユニットを単純に混合することによって形成させる。例えばαHLナノポアの場合においては、界面活性剤(例えば、デオキシコール酸)は、αHL単量体が細孔構造をとることを引き起こすことができる。ナノポアは、脂質(例えば、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPhPC)または1,2−ジ−0−フィタニル−s/n−グリセロ−3−ホスホコリン(DoPhPC))、および中温(例えば、約100℃未満)を用いて形成させることもできる。一部の場合においては、DPhPCを緩衝溶液と混合すると、大きな多重膜ベシクル(LMV)が生じ、この溶液にαHLサブユニットを加えて、混合物を40℃で30分間インキュベートすると、細孔が形成する。
[00111]異なる2種類のサブユニット(例えば、天然野生型タンパク質と、単一点変異を含有することができる第2のαHL単量体)を使用する場合、得られるタンパク質は、(例えば野生型と変異体タンパク質の)混合化学量論比を有することができる。これらのタンパク質の化学量論比は、細孔形成反応において使用する2種のタンパク質の濃度比に依存した式に従うことができる。この式は以下のとおりである。
100P=100[n!/m!(n−m)!]・fmut ・fwt n〜m、式中
=m個の変異体サブユニットを有する細孔の確率
n=サブユニットの総数(例えば、αHLでは7個)
m=「変異体」サブユニットの数
mut=一緒に混合した変異体サブユニットの割合または比
wt=一緒に混合した野生型サブユニットの割合または比
[00112]本方法は、複数のタンパク質を分画して、第2のサブユニット2725に対する第1のサブユニットの第2の比を有するタンパク質を増やすことをさらに含むことができる。例えば、ただ1つの改変サブユニットを有するナノポアタンパク質を単離することができる(例えば、第2の比は1:6)。しかしながら、いずれの第2の比も好適である。第2の比の分布も分画することができ、例えば、1つまたは2つのいずれかの改変サブユニットを有するタンパク質を増やすことができる。WO2014/074727の図27に示されているように、タンパク質を形成するサブユニットの総数は、常に7個であるとは限らない(例えば、異なるナノポアを使用することができ、または6個のサブユニットを有するアルファ溶血素ナノポアが形成し得る)。一部の場合においては、1つのみの改変サブユニットを有するタンパク質を増やす。このような場合においては、第2の比は、第1のサブユニット(n−1)個当たり、第2のサブユニット1個であり、nはタンパク質を構成するサブユニットの数である。
[00113]第1の比は、第2の比と同じものとすることができるが、必要とされるものではない。一部の場合においては、変異単量体を有するタンパク質は、変異サブユニットを有しないタンパク質よりも低い効率で形成し得る。この場合は、第1の比は、第2の比よりも大きいものとすることができる(例えば、変異サブユニット1:無変異サブユニット6の第2の比がナノポアで所望される場合、好適な数の1:6タンパク質を形成させるには、1:6よりも大きい比でサブユニットを混合することが必要とされてもよい)。逆に、変異モノマーが、より効率的にオリゴマー化できる場合には、第1の比は、第2の比よりも小さいものとすることができる(例えば、変異モノマー1:無変異モノマー6の第2の比がナノポアで所望される場合、好適な数の1:6タンパク質を形成させるには、1:6よりも小さい比でサブユニットを混合することが必要とされてもよい)。
[00114]異なる第2のサブユニット比を有するタンパク質は、分離において、異なる挙動を示す(例えば、異なる保持時間を有する)ことができる。一部の場合においては、タンパク質は、イオン交換クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを使用して分画する。第1および第2のサブユニットは、改変を除いては同一とすることができるので、タンパク質における改変の数は、分離の根拠として役割を果たすことができる。一部の場合においては、第1または第2のサブユニットのいずれかは、分画を可能にするか、または分画の効率を改良するよう、(例えば、改変に加えて)精製タグを有する。一部の場合においては、ポリヒスチジンタグ(HisTag)、ストレプトアビジンタグ(StrepTag)、または他のペプチドタグを使用する。一部の例においては、第1および第2のサブユニットはそれぞれ異なるタグを含み、分画工程では、各タグに基づき分画される。HisTagの場合には、低いpHでタグに電荷を生じさせる(ヒスチジン残基は、側鎖のpKa未満で正に荷電する)。他のものと比較してαHL分子の1つにおいて電荷が有意に異なることにより、イオン交換クロマトグラフィーを使用して、0、1、2、3、4、5、6、または7個の「電荷タグ付き」αHLサブユニットを有するオリゴマーを分離することができる。原則的に、この電荷タグは、一定の電荷、例えば、均一電荷を運ぶ任意のアミノ酸が糸状に連なるものとすることができる。WO2014/074727の図28および図29では、HisTagに基づくナノポアの分画の例が示されている。図28では、280ナノメートルにおける紫外吸光度、260ナノメートルにおける紫外吸光度、および伝導率のプロットが示されている。ピークは、改変サブユニットと無改変サブユニットの様々な比を有するナノポアに一致する。WO2014/074727の図29では、HisTagとStrepTagの両方を使用した、αHLナノポアおよびその変異体の分画が示されている。
[00115]一部の場合においては、分画後に、実在物(例えば、ポリメラーゼ)をタンパク質に付ける。タンパク質はナノポアとすることができ、実在物はポリメラーゼとすることができる。一部の例においては、本方法は、第2の比のサブユニットを有するタンパク質を二重層に挿入することをさらに含む。
[00116]一部の状況においては、ナノポアは、複数のサブユニットを含むことができる。ポリメラーゼは、サブユニットの1つに付けることができ、サブユニットの少なくとも1つかつ全部未満が、第1の精製タグを含む。一部の例においては、ナノポアはアルファ溶血素またはそのバリアントである。一部の例においては、サブユニットのすべてが第1の精製タグまたは第2の精製タグを含む。第1の精製タグは、(例えば、ポリメラーゼが付いたサブユニットにおける)ポリヒスチジンタグとすることができる。
ナノポアに付けられたポリメラーゼ
[00117]一部の場合においては、ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)は、ナノポアに付けられ、かつ/または、ナノポアの近傍に配置される。ポリメラーゼは、ナノポアが膜に組み込まれる前または後に、ナノポアに付けることができる。一部の例においては、ナノポアおよびポリメラーゼは融合タンパク質(すなわち、単一のポリペプチド鎖)である。
[00118]ポリメラーゼは、任意の好適な方法でナノポアに付けることができる。一部の場合においては、ポリメラーゼは、ナノポア(例えば、溶血素)タンパク質単量体に付け、その後、(例えば、ポリメラーゼが付いていないナノポア(例えば、溶血素)単量体6つに対し、ポリメラーゼが付いた単量体1つの比で)全体のナノポア七量体を構築する。次いでナノポア七量体を膜に挿入することができる。
[00119]ポリメラーゼをナノポアに付ける別の方法は、溶血素単量体にリンカー分子を付けるか、または溶血素単量体を、取付け部位を有するよう変異させること、ならびに、その後、(例えば、リンカーおよび/または取付け部位を有しない溶血素単量体6つに対し、リンカーおよび/または取付け部位を有する単量体1つの比で)全体のナノポア七量体を構築することを含む。ポリメラーゼを、αHLモノマーのコンカテマーに付けることができる。例えば、図7A〜7Fは、2つ以上のαHLモノマーのコンカテマーは、酵素、例えば、ポリメラーゼを連結することができる取付け成分を含むことができることを示す。したがって、ポリメラーゼを、2つ以上のモノマーのコンカテマーに連結することができ、これを、他のコンカテマーおよび/またはモノマーとオリゴマー化して、ポリメラーゼ酵素を含むナノポア、例えば、七量体αHLナノポアを提供できる。第2のポリメラーゼはまた、モノマーと、またはモノマーのコンカテマーと連結することができる。次いでポリメラーゼを、(例えば、膜への挿入前に、大量で)取付け部位または取付けリンカーに付けることができる。ポリメラーゼは、(例えば、七量体の)ナノポアを膜に形成させた後で、取付け部位または取付けリンカーに付けることもできる。一部の場合においては、複数のナノポア−ポリメラーゼペアを、バイオチップの(例えば、ウェルおよび/または電極に配置した)複数の膜に挿入する。一部の例においては、ポリメラーゼのナノポア複合体への取付けは、各電極上のバイオチップにおいて行う。
[00120]ポリメラーゼは、任意の好適な化学作用(例えば、共有結合および/またはリンカー)を用いてナノポアに付けることができる。一部の場合においては、ポリメラーゼは、分子ステープル(molecular staple)を用いてナノポアに付ける。一部の例においては、分子ステープルは、3種のアミノ酸配列(リンカーA、B、およびCで示す)を含む。リンカーAは溶血素単量体から延びることができ、リンカーBはポリメラーゼから延びることができ、その場合にリンカーCは、リンカーAとリンカーBを(例えば、リンカーAとリンカーBの両方に巻き付くことによって)つなぐことができ、したがってポリメラーゼをナノポアとつなぐことができる。リンカーCは、リンカーAまたはリンカーBの一部分となるよう構築することもでき、したがってリンカー分子の数は減る。
[00121]一部の例においては、ポリメラーゼは、Solulink(商標)化学を用いてナノポアに連結する。Solulink(商標)は、HyNic(6−ヒドラジノ−ニコチン酸、芳香族ヒドラジン)と4FB(4−ホルミル安息香酸エステル、芳香族アルデヒド)の間の反応とすることができる。一部の例においては、ポリメラーゼは、Click化学(例えば、LifeTechnologiesから入手可能)を用いてナノポアに連結する。一部の場合においては、溶血素分子にジンクフィンガー変異を導入し、次に分子(例えば、DNA中間体分子)を使用してポリメラーゼを溶血素のジンクフィンガー部位に連結する。
αHLサブユニットの七量体細孔への化学量論比および配置
[00122]別の態様においては、ヘテロオリゴマーαHL七量体および七量体を調製するための方法を提供する。ヘテロオリゴマー七量体は、化学量論比を調節することおよびそのサブユニット成分の連続配置によって形成できる。連続配置は、サブユニットのオリゴマー化ドメイン中の変異の相互作用によって決定される。
[00123]七量体野生型αHL細孔は、7つの野生型モノマーサブユニットの自己構築によって形成される。各モノマーサブユニットは、第1および第2のオリゴマー化ドメインを含み、それによって、あるサブユニットの第1のオリゴマー化ドメインが、別のサブユニットの第2のオリゴマー化ドメインと相互作用して、モノマーサブユニットの七量体αHL細孔への自己構築を可能にする。第1のオリゴマー化ドメイン領域、すなわち、各モノマーサブユニットの部位1は、配列番号3のαHLのアミノ酸位置20〜28、35〜42および53〜61に対応するアミノ酸を含む。第2の相互作用領域、すなわち、各αHLモノマーの部位2は、配列番号3のαHLサブユニットのアミノ酸位置158〜164、95〜104、43〜48および228〜236に対応するアミノ酸を含む。図6Aは、モノマーサブユニットの、それぞれ、第1の(601)および第2の(602)オリゴマー化ドメインの位置決めを例示する。七量体αHL細孔にオリゴマー化されるときのi、ii、iii、iv、v、viおよびviiと番号付けされた7つのモノマーサブユニットのオリゴマー化ドメインの相互作用の位置決めを、図6Bに模式的に示す。
[00124]しかしながら、操作されたモノマーの構築は、望ましくない化学量論比を有するオリゴマーを生じさせ得る。例えば、操作されたサブユニットの構築は、4つの二量体サブユニットからなる八量体または3つの二量体サブユニットの六量体を生じさせ得る(Hammersteinら、2011)。したがって、αHLサブユニットの構築を制御して、αHL細孔の検出能を可能にする化学量論比である七量体形態を提供することは有利であろう。
[00125]一実施形態においては、αHLサブユニットの七量体細孔へのオリゴマー化は、変異を界面、すなわち、サブユニットの各々のオリゴマー化ドメインに導入して、サブユニット−サブユニット相互作用を破壊することによって得ることができる。上記の、図6Aおよび6Bに示されるように、各サブユニットに2つのオリゴマー化ドメインがあり、各サブユニットの第1のおよび/または第2のオリゴマー化ドメインに1つまたは複数の変異を導入して、サブユニット間接触を阻害し、それによって、望ましくないサブユニット化学量論比を有するαHL多量体へのサブユニットのオリゴマー化を防ぐことができる。サブユニット間相互作用を阻害する変異は、本明細書において、破壊変異と呼ばれる。各サブユニットの各オリゴマー化ドメインを、1つまたは複数の破壊変異を含むように改変することができる。一部の実施形態において、第1のオリゴマー化ドメイン中の1つまたは複数のアミノ酸を、1つまたは複数の破壊変異を提供するように変異させることができる。同様に、第2のオリゴマー化ドメイン中の1つまたは複数のアミノ酸を、1つまたは複数の破壊変異を提供するように変異させることができる。他の実施形態においては、各サブユニットの第1のおよび第2のオリゴマー化ドメイン中の1つまたは複数のアミノ酸を、1つまたは複数の破壊変異を提供するように変異させることができる。
[00126]オリゴマー化ドメインで行うことができる変異として、置換、欠失および挿入が挙げられる。これらのドメイン中のアミノ酸の好ましい変異は、アミノ酸置換である。
[00127]一部の実施形態において、配列番号3のαHLサブユニットの第1のオリゴマー化ドメインの位置20〜28、35〜42および53〜61に対応するアミノ酸のうち1個または複数を、αHLサブユニットの第1のオリゴマー化ドメイン中に1つまたは複数の破壊変異を導入するように変異させた。一部の実施形態において、第1のオリゴマー化ドメインでの破壊変異として、配列番号3のD24A、V26D、K37S、H35I、H35D、H35E、H35LおよびD24A+V26D+K37Sが挙げられる。
[00128]その他の実施形態においては、配列番号3のαHLサブユニットの位置158〜164、95〜104、43〜48および228〜236に対応するアミノ酸のうち1個または複数を、αHLサブユニットの第2のオリゴマー化ドメイン中に1つまたは複数の破壊変異を導入するように変異させた。一部の実施形態において、第2のオリゴマー化ドメインでの破壊変異として、配列番号3のT233R、S99K、Y101D、Y101HおよびT233R+S99Kが挙げられる。図8Aおよび8Bは、脂質の存在下で、第1のおよび/または第2のオリゴマー化ドメインに破壊変異を有する変異モノマーは、オリゴマータンパク質に再構成され得ないことを示す。
[00129]破壊変異を含むサブユニットの制御されたオリゴマー化を可能にするために、破壊変異の効果を復帰させ、オリゴマー化および七量体ナノポアの形成に必要である、必要なサブユニット間相互作用を可能にするように、レスキューおよび/または同族変異をサブユニットのオリゴマー化ドメインの一方または両方中に導入する。図6Cは、オリゴマー化を可能にする、または阻害する、αHLサブユニットのオリゴマー化ドメイン上の変異間の相互作用の種類を示す。破壊変異1および2(BM1、BM2)は、それらが存在するドメインによってサブユニットのオリゴマー化を阻害する。同様に、破壊変異、例えば、BM1は、野生型サブユニットを有するオリゴマー化を阻害する。オリゴマー化の阻害は、バツ印を付けた破線の矢印線によって示されている。破壊変異、例えば、BM1の破壊効果の回復が、同族変異(CM)および/またはレスキュー変異(RM)によって可能にされる。オリゴマー化の実施可能性は、実線の矢印線によって表されている。
[00130]同族変異(CM)は、第1のサブユニットのオリゴマー化ドメイン上に存在する場合には、それ自体破壊変異であるが、別のサブユニットのオリゴマー化ドメイン上の破壊変異(例えば、BM1)と相互作用して、2つのサブユニットのオリゴマー化する能力を回復させることができる。破壊変異および同族変異の対合によってまた、このプロセスにおいて、どの2つのサブユニットが相互作用できるかが特定される。一部の実施形態において、あるサブユニット、すなわち、前のサブユニットの第1のオリゴマー化ドメイン上の破壊変異は、同族変異が、破壊変異の効果を復帰させて、第1のおよび第2のドメインによるサブユニット間相互作用を可能にするので、第2のサブユニット、すなわち、後のサブユニット上の第2のオリゴマー化ドメイン上の同族変異によって、第2のサブユニット相互作用を可能にする。
[00131]レスキュー変異(RM)は、第1のサブユニットのオリゴマー化ドメイン上に存在する場合に破壊変異ではないが、別のサブユニットのオリゴマー化ドメイン上の破壊変異(例えば、BM1)と相互作用して、2つのサブユニットのオリゴマー化する能力を回復させることができる。破壊変異およびレスキュー変異の対合によってまた、このプロセスにおいて、どの2つのサブユニットが相互作用できるかが特定される。一部の実施形態において、あるサブユニット、すなわち、前のサブユニットの第1のオリゴマー化ドメイン上の破壊変異は、レスキュー変異が、破壊変異の効果を復帰させて、第1のおよび第2のドメインによるサブユニット間相互作用を可能にするので、第2のサブユニット、すなわち、後のサブユニット上の第2のオリゴマー化ドメイン上のレスキュー変異によって、第2のサブユニット相互作用を可能にする。
[00132]したがって、一部の実施形態において、配列番号3のαHLサブユニットの第1のオリゴマー化ドメインの位置20〜28、35〜42および53〜61に対応するアミノ酸のうち1個もしくは複数の少なくとも1つの変異は、破壊変異であり、ならびに/または配列番号3のαHLサブユニットの第2のオリゴマー化ドメインの位置158〜164、95〜104、43〜48および228〜236に対応するアミノ酸のうち1個もしくは複数の少なくとも1つの変異は、それぞれ、後のまたは前のサブユニットの対応する第2のおよび第1のオリゴマー化ドメインとのサブユニット間相互作用を可能にするレスキューおよび/または同族変異である。あるいは、配列番号3の第2のオリゴマー化ドメインの位置158〜164、95〜104、43〜48および228〜236に対応するアミノ酸のうち1個もしくは複数の少なくとも1つの変異は、破壊変異であり、ならびに/または配列番号3のαHLサブユニットの第1のオリゴマー化ドメインの位置20〜28、35〜42および53〜61に対応するアミノ酸のうち1個もしくは複数の少なくとも1つの変異は、同族および/またはレスキュー変異である。あるサブユニットのあるドメイン中の破壊変異は、別のサブユニットのドメインのレスキューおよび/または同族変異と相互作用して、サブユニットのオリゴマー化を可能にすることができるということは理解される。1つまたは複数の破壊変異は、サブユニットのオリゴマー化を、変異していないαHLサブユニットのオリゴマー化と比較した場合に、少なくとも約10%、20%、30% 40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上阻害する。あるサブユニット上の1つまたは複数のレスキューおよび/または同族変異は、別のサブユニット上の破壊変異とのサブユニット間相互作用を可能にし、変異していないαHLサブユニットのオリゴマー化と比較した場合に、またはレスキューおよび/もしくは同族変異を有さないサブユニットの、破壊変異を含むサブユニットとのオリゴマー化と比較した場合に、少なくとも約10%、20%、30% 40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の、サブユニットのオリゴマー化を得る。
[00133]別の実施形態では、前のサブユニット上の第1のオリゴマー化ドメイン中の破壊変異と、レスキュー変異および/または後のサブユニットの第2のドメイン中の同族変異の間にサブユニット間相互作用を確立することができる。したがって、前のサブユニットの第1のオリゴマー化ドメインの各々において少なくとも1つの破壊変異を行うことができ、後のサブユニットの第2のオリゴマー化ドメインの各々において少なくとも1つの破壊変異を行うことができる。一部の実施形態において、後のサブユニットの第2のオリゴマー化ドメイン中の破壊変異のうち少なくとも1つは、前のサブユニット上の破壊変異と対合した場合に、サブユニット間相互作用を可能にし、それによって、サブユニットのオリゴマー化を可能にする同族変異である。その他の実施形態においては、後のサブユニットの第2のオリゴマー化ドメイン中の変異は、前のサブユニットの第1のオリゴマー化ドメイン上の破壊変異と対合した場合に、サブユニット間相互作用を可能にし、それによって、サブユニットのオリゴマー化を可能にするレスキュー変異である。
[00134]一部の実施形態において、オリゴマー化サブユニットは、同族変異に自身を変換できる、少なくとも1つの破壊変異を含み得る、すなわち、破壊変異は、自己レスキュー変異であり得る。本出願者らは、30℃未満の温度でモノマーのオリゴマー化を阻害するが、30℃より高い温度でこのプロセスが実施される場合には、オリゴマー化を可能にする破壊変異が存在することを発見した。例えば、実施例11および図14に関して、配列番号3の破壊変異H35Gを有するモノマーは、25℃でオリゴマー化できない。しかしながら、同一モノマー、すなわち、同一H35G変異を有するモノマーの再構成の場合には、モノマーは、37℃でオリゴマー化できる。したがって、一部の実施形態において、七量体は、第1のおよび/または第2のオリゴマー化ドメイン中に、サブユニットのオリゴマー化を可能にする自己レスキュー変異である、少なくとも1つの破壊変異を含み得る。一部の実施形態において、破壊変異の自己レスキュー変異への変換は、30℃から50℃の間、35℃から45℃の間または37℃から43℃の間の温度で起こる。一部の実施形態において、破壊変異の自己レスキュー変異への変換は、約30℃、35℃、40℃、45℃または50℃のいずれかで起こる。破壊変異の、自己レスキュー変異への変性、変換がないことが、50℃より高い温度で起こり得ることは理解される。一部の実施形態において、自己レスキュー変異は、配列番号3中のH35Gに対応するアミノ酸置換である。
[00135]自己レスキュー変異は、高温で、細孔サブユニット、例えば、モノマーをオリゴマー化することが有利であるので、特に有用である。自己レスキュー変異を含むバリアントの低温でのタンパク質発現は、オリゴマー化の阻害/遮断のためにモノマー濃度の正確な決定を可能にする。対照的に、野生型モノマーは、オリゴマー化でき、モノマーおよびオリゴマーの混合物として存在し得る。WTオリゴマー化は、モノマー濃度の不正確な測定につながる。溶液中のモノマーの真の濃度についての知識は、所望の七量体細孔を創造するのに必要なサブユニットの種類の正しい比を得ることにおいて重大である。したがって、自己レスキュー変異は、低温では、破壊変異として挙動し、オリゴマー化を妨げ、それによって、モノマー濃度の正確な決定を可能にする。その後、同一破壊変異が自己レスキュー変異に変換し、所望のオリゴマー化を可能にするより高い温度で、所望の七量体細孔を得ることができる。
[00136]オリゴマー化サブユニットは、モノマーであり得る、またはそれらは、2つの連結したモノマーのコンカテマー(二量体コンカテマー)、3つの連結したモノマーのコンカテマー(三量体コンカテマー)、4つの連結したモノマーのコンカテマー(四量体コンカテマー)、5つの連結したモノマーのコンカテマー(ペンタコンカテマー)、6つの連結したモノマーのコンカテマー(ヘキサコンカテマー)および7つの連結したモノマーのコンカテマー(ヘプタコンカテマー)であり得る。コンカテマーサブユニットの第1のオリゴマー化ドメインは、コンカテマーの第1のモノマー(N末端)の第1のオリゴマー化ドメインであり、コンカテマーサブユニットの第2のオリゴマー化ドメインは、コンカテマーの最後の(C末端)モノマーの第2のオリゴマー化ドメインである。モノマーサブユニットは、前のモノマーのC末端を、後のモノマーのN末端とつなぐリンカーポリペプチドによって連結することができる。図6Dは、リンカー(−−−−−−−−)によってつながれている2つのαHLモノマーviiおよびiのコンカテマーであるオリゴマー化サブユニットを示す。このコンカテマーサブユニットでは、第1のオリゴマー化ドメイン(□)は、第1のサブユニットviiの第1のオリゴマー化ドメインであり、コンカテマーサブユニットの第2のオリゴマー化ドメイン(★)は、コンカテマー(i)中の第2のαHLモノマーの第2のオリゴマー化ドメインである。リンカーは、共有結合力によって、第1のおよび第2の領域を連結する任意の形態の分子であり得る。特に、リンカーは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50個またはそれ以上のアミノ酸のいずれかを含む、本発明に関連して機能する任意の長さのペプチドまたはポリペプチド、または本発明の目的のために働く任意の数もしくは範囲のアミノ酸であり得る。アミノ酸リンカーは、合成または天然に存在するアミノ酸残基を含み得る。当業者ならば、任意の数のリンカーの種類および長さを決定し、試験することができる。リンカーは、前のサブユニットのC末端と、後のサブユニットのN末端の間であり得る。一部の実施形態において、リンカーは、最大5個、最大10個、最大15個、最大20個、最大25個または最大30個のアミノ酸の可動性リンカーである。一部の実施形態において、リンカーは、約10個のアミノ酸のものである。その他の実施形態においては、リンカーは、約5個のアミノ酸のものである。
[00137]一部の実施形態において、コンカテマーポリペプチドのC末端およびN末端の一方または両方で取付け成分および/または精製成分を提供することができる。精製成分としては、His6(配列番号10)およびFLAGエピトープが含まれるが、これらに限定されない。取付け成分としては、SpyTag/SpyCatcherペプチド系(ZakeriらPNAS109:E690−E697 [2012])、天然化学的ライゲーション(Thapaら、Molocules 19:14461−14483 [2014])、ソルターゼ系(WuおよびGuo、J Carbohydr Chem 31:48−66 [2012];Heckら、Appl Microbiol Biotechnol 97:461−475 [2013]))、トランスグルタミナーゼ系(Dennlerら、Bioconjug Chem 25:569−578 [2014])、ホルミルグリシン連結(Rashidianら、Bioconjug Chem 24:1277−1294 [2013])または当技術分野で公知のその他の化学的ライゲーション技術が含まれるが、これらに限定されない。取付け成分は、酵素、例えば、ポリメラーゼを、αHLサブユニットに付けるために働くことができる。αHL細孔に付けることができる酵素として、ポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼおよび逆転写酵素が挙げられる。一部の実施形態において、ポリメラーゼを、2つの異なるαHLサブユニット上の取付け成分によってαHL七量体細孔内の2つの異なるαHLサブユニットに付けることができる。その他の実施形態においては、ポリメラーゼを、3種の異なるαHLサブユニット上の取付け成分によってαHL七量体細孔の3つの異なるαHLサブユニットに付けることができる。その他の実施形態においては、2種以上の酵素を、任意の数のαHLサブユニットに付けることができる。図7A〜7Fはまた、2つ、3つおよび4つのモノマーのコンカテマーサブユニットならびに取付けおよび/または精製成分の位置付けの例を示す。
[00138]第1のおよび第2のオリゴマー化ドメイン中に1つまたは複数の変異を含む変異モノマーまたはモノマーのコンカテマーは、ポリペプチドモノマーまたはモノマーコンカテマーの第1のおよび第2のオリゴマー化ドメイン以外の領域中に1つまたは複数の変異をさらに含み得る。例えば、配列番号3の位置12または17に対応する位置にアミノ酸置換を含み、αHLのTTTを、親のαHLのものに対して変化させるバリアントαHLモノマーポリペプチドを、サブユニットの、七量体αHL細孔を形成する能力を付与するように、第1のおよび第2のオリゴマー化ドメインに変異、例えば、アミノ酸置換を含むようにさらに変異させることができる。
[00139]さらなる実施形態は、モノマーの、およびモノマーのコンカテマーの変異αHLオリゴマー化サブユニットをコードする核酸に関する。これらの核酸は、一部の実施形態において、本明細書において別の場所に記載される、第1のオリゴマー化ドメインに、および/または第2のオリゴマー化ドメインに1つまたは複数の変異を有するオリゴマー化サブユニットをコードする。一部の実施形態においては、後期開始産物を避けるために、コンカテマーサブユニット中の前のモノマーのC末端に連結されるモノマーの出発ATGを除去する。
[00140]ポリヌクレオチドは、シグナル配列をさらに含むことができる。
[00141]一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、本明細書において別の場所に記載されるモノマーのコンカテマーにおいてモノマー単位をつなぐリンカーをコードする配列(1つまたは複数)をさらに含む。
[00142]その他の実施形態においては、ポリヌクレオチドは、精製および/または取付け成分をコードする配列(1つまたは複数)を含む。
[00143]一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、精製成分および/または取付け成分をコードする配列(1つまたは複数)を含む(図7A〜7F)。精製および/または取付け成分は、オリゴマー化サブユニットのN末端および/またはC末端に位置付けることができる。精製および/または取付け成分はまた、ポリペプチド内の任意の領域に、すなわち、C末端とN末端の間である領域に付けることができる。一部の実施形態において、精製および取付け成分を、オリゴマー化サブユニットのN末端またはC末端に位置付けることができる。一部の実施形態において、少なくとも1つの精製成分を、オリゴマー化サブユニットのN末端に位置付けることができ、取付け成分をC末端に位置付けることができる。その他の実施形態においては、少なくとも1種の精製成分を、オリゴマー化サブユニットのC末端に位置付けることができ、取付け成分をN末端に位置付けることができる。一部の実施形態において、少なくとも1種の取付け成分を、ポリペプチド内に位置付けることができ、精製成分を、C末端に位置付けることができる。一部の実施形態において、少なくとも1種の取付け成分を、ポリペプチド内に位置付けることができ、精製成分を、N末端に位置付けることができる。
[00144]本発明の一部の態様においては、核酸は、ポリペプチドを生成するように発現可能である。ポリペプチドは、原核細胞または真核細胞において発現させることができ、または無細胞系において発現させることができる。発現に好ましい細胞としては、細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞が含まれるが、これらに限定されない。
[00145]本発明の別の態様は、本発明のポリペプチドのすべてまたは一部をコードする核酸を含むベクターを含む。ベクターは、例えば、クローニングまたは発現ベクターであり得る。本発明のクローニングベクターは、本明細書において別の場所に記載される、または当業者に公知の任意の好適な組換え宿主細胞中に含めることができる。
[00146]ヘテロオリゴマーαHL七量体タンパク質を調製するための方法も提供する。変異αHLサブユニットをコードするポリヌクレオチドを、宿主細胞において発現させる。種々の変異αHLサブユニットをコードする種々のポリヌクレオチドを、種々の宿主細胞において個々に発現させる。任意選択で、発現されたサブユニットポリペプチドの各々を精製し、その後、混合して、ヘテロオリゴマーαHL七量体へのオリゴマー化を可能にする。一部の実施形態においては、本方法は、第1のオリゴマー化ドメイン中、および/または第2のオリゴマー化ドメイン中に1つまたは複数の破壊変異を有する第1の変異αHLサブユニットをコードする第1のポリヌクレオチドを提供することと、第1の変異αHLサブユニットをコードする第1のポリヌクレオチドをコードする発現ベクターを用いて形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を培養することと、第1のおよび/または第2のオリゴマー化ドメイン中に少なくとも1つのレスキューおよび/または同族変異を有する第2の変異αHLサブユニットをコードする第2のポリヌクレオチドを提供することと、第2のαHLサブユニットをコードする第2のポリヌクレオチドをコードする発現ベクターを用いて形質転換またはトランスフェクトされた第2の宿主細胞を培養することとを含み得、第1のおよび第2の変異αHLサブユニットは、オリゴマー化して、少なくとも1つのαHL二量体、少なくとも1つのαHL三量体、少なくとも1つのHL四量体、少なくとも1つのαHL五量体、少なくとも1つのαHL六量体または少なくとも1つのαHL七量体を形成する。本方法は、第1のおよび第2の変異αHLサブユニットを精製することをさらに含み得る。精製されたαHLサブユニットは、脂質の存在下でオリゴマー化され、七量体αHL細孔を形成することができる。七量体αHL細孔は、単一モノマーサブユニット、例えば、7つのαHLモノマーサブユニットのオリゴマー化によって、コンカテマーサブユニット、例えば、3つのαHLモノマーのコンカテマーおよび4つのαHLモノマーのコンカテマーのオリゴマー化によって、またはαHLモノマーサブユニットおよびαHLコンカテマーサブユニット、例えば、3つのαHLモノマーサブユニットおよび4つのαHLモノマーのコンカテマーサブユニットの混合物のオリゴマー化によって形成することができるということは理解される。ヌクレオチドは、αHL細孔に付けられたポリメラーゼによって新規ポリヌクレオチド鎖中に組み込まれるので、αHL細孔は、ヌクレオチドタグを同定する能力を保持する。
装置のセットアップ
[00147]ナノポアは、集積回路などの検出回路の検出電極に隣接して配置された膜に形成するか、または他の方法で埋め込んでもよい。集積回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)としてもよい。一部の例においては、集積回路は、電界効果トランジスターまたは相補型金属酸化膜半導体(CMOS)である。検出回路は、ナノポアを有するチップもしくは他のデバイスに位置するか、または、チップもしくはデバイスの外部に、例えばオフチップ配置などで位置することができる。半導体は任意の半導体とすることができ、IV族半導体(例えば、ケイ素)、およびIII−V族半導体(例えば、ヒ化ガリウム)が含まれるが、これらに限定されない。ヌクレオチドまたはタグを検出するための装置およびデバイスのセットアップについては、例えば、WO2013/123450を参照のこと。
[00148]細孔を用いたセンサー(例えば、バイオチップ)は、単一分子の電子照合に使用することができる。細孔を用いたセンサーは、検出電極に隣接して、またはその近傍に配置された膜に形成された本開示のナノポアを含むことができる。センサーは対電極を含むことができる。膜は、トランス側(すなわち、検出電極に面する側)およびシス側(すなわち、対電極に面する側)を含む。
[00149]この後の実験に関する開示においては、以下の略記が適用される:eq(当量);M(モル濃度);μM(マイクロモル濃度);N(規定);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);kg(キログラム);μg(マイクログラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏度);h(時間);min(分);sec(秒);msec(ミリ秒)。
[00150]本発明を以下の実施例においてさらに説明する。実施例は、いかなる方法でも、特許請求する本発明の範囲を限定することを意図するものではない。添付の図は、本発明の明細書および説明の一部をなす部分としてみなされることを意図している。引用されるすべての参考文献は、そこに記載されているすべてが参照によって本明細書に明確に組み込まれる。以下の実施例は、説明するために提供するものであり、特許請求する本発明を限定するために提供するものではない。
発現および回収
[00151]この実施例は、細菌宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)に由来するタンパク質の発現および回収を例示する。
[00152]野生型a−HLをコードするDNAを、商業的供給源から購入した。配列をシーケンシングによって検証した。
[00153]プラスミド構築.野生型またはバリアントα−溶血素のいずれかをコードする遺伝子を、pPR−IBA2プラスミド(IBA Life Sciences、Germany)中、T7プロモーターの制御下に挿入した。
[00154]形質転換.大腸菌(E.coli)BL21 DE3(Life Technologies製)細胞を、当技術分野で周知の技術を使用し、野生型またはバリアントα−溶血素をコードするDNAを含む発現ベクターを用いて形質転換した。手短には、細胞を氷上で解凍した(凍結された場合には)。次いで、所望のDNA(好適なベクター/プラスミド中の)を、コンピテント細胞中に直接添加し(コンピテント細胞のものの5%を超えてはならない)、チューブを軽くはじくことによって混合した。チューブを氷上に20分間置いた。次いで、細胞を混合せずに42℃の水浴中に45秒間入れ、続いて、チューブを氷上に2分間置いた。次いで、細胞を、0.9mlのSOC培地(室温に予め加温した)を含有する15mlの滅菌培養チューブに移し、シェーカー中、37℃で1時間培養した。最後に、細胞のアリコートを、適切な抗生物質を含有するLB寒天プレート上に広げ、プレートを37℃で終夜インキュベートした。
[00155]タンパク質発現.形質転換後、コロニーを選び取り、小容量(例えば、3ml)の、適切な抗生物質を含有する成長培地(例えば、LB培養液)中に播種し、37℃で終夜振盪した。
[00156]翌朝、1mlの終夜培養物を、発現プラスミドを選択するために、新規の100mlの、適切な抗生物質を含有する自己誘導培地、例えば、Magic Media(Life Technologies)に移した。培養物を振盪しながら25℃でおよそ16時間成長させたが、これは、発現プラスミドに左右された。4℃で20分間、3,000gでの遠心分離によって細胞を回収し、使用するまで−80℃で保存した。
[00157]精製.細胞を超音波処理によって溶解した。アルファ溶血素を、アフィニティーカラムクロマトグラフィーによって均一性に精製した。
T12および/またはN17バリアント
[00158]以下の実施例は、所望の残基での変異の導入を詳述する。
[00159]変異.QuikChange複数部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene、La Jolla、CA)を使用して部位特異的突然変異誘発を実施して、配列番号3のT12および/またはN17バリアントを調製した。
[00160]実施例1におけるように、バリアントを発現させ、精製した。
ナノポアの構築
[00161]この実施例は、6つのa−HLバリアントサブユニットおよび1つの野生型サブユニットを含むナノポアの構築を説明する。
[00162]野生型a−HLを、SpyTagおよびHisTagを用いて実施例1に記載したように発現させ、コバルト溶出バッファー(200mM NaCl、300mMイミダゾール、50mM Tris、pH8)を使用してコバルトアフィニティーカラムで精製した。所望のa−HLバリアントを、StrepTagを用いて実施例1に記載したように発現させ、StrepTactinアフィニティーカラムを使用して高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)で、溶出バッファー(50mM tris、5mMデスチオビオチン、200mM NaCl、pH8)を使用して精製した。5日内に使用する場合には、タンパク質を4℃で保存し、そうではない場合は8%トレハロースを添加し、タンパク質を−80℃で保存した。
[00163]およそ20mgの総タンパク質を使用して、野生型a−HLおよび所望のa−HLバリアント溶液を、1:6比で一緒に混合した。ジフィタノイルホスファチジルコリン(DPhPC)脂質を50mM Tris、200mM NaCl、pH8または150mM KCl、30mM HEPES、pH7.5中に、50mg/mlの最終濃度に可溶化し、a−HLモノマーの混合物に、5mg/mlの最終濃度に添加した。a−HLモノマーの混合物を、40℃で少なくとも10分間インキュベートした。脂質溶血素混合物をサイズ排除クロマトグラフィーカラムにアプライして、脂質をオリゴマー化タンパク質から分離した。
ポリメラーゼの取付け
[00164]この実施例は、ナノポアへのポリメラーゼの取付けを提供する。
[00165]ポリメラーゼは、任意の好適な手段によってナノポアに連結してもよい。例えば、PCT/US2013/068967(WO2014/074727として公開される;Genia Technologies)、PCT/US2005/009702(WO2006/028508として公開される)およびPCT/US2011/065640(WO2012/083249として公開される;Columbia Univ)を参照のこと。
[00166]ポリメラーゼ、例えば、phi29 DNAポリメラーゼを、リンカー分子を介してタンパク質ナノポア(例えば、アルファ溶血素)に連結させた。詳細には、生理的条件下で共有結合性イソペプチド連結を自発的に形成するSpyTagおよびSpyCatcherシステムを使用した。例えば、Liら、J Mol Biol.2014年1月23日;426(2):309〜17を参照のこと。
[00167]Sticky phi29 SpyCatcher HisTagを実施例1に従って発現させ、コバルトアフィニティーカラムを使用して精製した。SpyCatcherポリメラーゼおよびSpyTagオリゴマー化タンパク質を、3mM SrCl中で、4℃にて終夜インキュベートした。次に1:6−ポリメラーゼ−鋳型複合体を、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して精製した。
バリアントの活性
[00168]この実施例は、実施例3および4(ポリメラーゼが付けられたナノポア)によって提供されるようなナノポアの活性を示す。
[00169]野生型およびバリアントナノポアをアッセイして、1つまたは複数の位置の変異の効果を調べた。交流電圧、すなわち、方形波を使用して、ナノポアに付けられたDNAポリメラーゼによってタグ付き分子を捕獲するのにかかる時間を測定するためにアッセイを設計した。
[00170]二重層を、2014年10月23日に出願されたPCT/US14/61853に記載されたように形成し、細孔を挿入した。分子(および/または配列核酸)を検出するために使用したナノポアデバイス(またはセンサー)は、WO2013/123450に記載したようにセットアップした。
[00171]本発明者らのシーケンシング複合体中のDNAポリメラーゼによってタグ付きヌクレオチドを捕獲するのにかかる時間を測定するために、本発明者らは、交流正および負電圧(方形波)を使用して、これがかかる時間の量を調べるアッセイを考案した。本発明者らのシーケンシング複合体は、単一のDNAポリメラーゼに付けられるタンパク質ナノポア(αHL)からなる(実施例4を参照のこと)。タグ付きヌクレオチドは、負に帯電しており、したがって、かけられる電圧が事実上正である場合にナノポアに付けられ、ナノポアシーケンシング複合体にかけられる電圧が負である場合にはじかれる。したがって、本発明者らは、電圧を正と負電位の間で循環させることによってタグが細孔中を通り抜けるのにかかる時間を測定し、タグが通される場合(低減された電流束)に対して、どの程度の時間ナノポアの電流が遮られないか(開口チャネル)を決定することができる。
[00172]この「通り抜ける時間」アッセイを実施するために、GeniaシーケンシングチップとともにGeniaシーケンシングデバイスを使用する。PCT/US2013/026514において説明されるように電極を調整し、チップ上にリン脂質二重層を確立する。PCT/US2013/026514(WO2013/123450として刊行された)に記載されるプロトコールに従って、Geniaのシーケンシング複合体を二重層に挿入する。
[00173]20mM HEPES pH7.5、300mM KCl、3μMタグ付きヌクレオチド、3mM Ca2+からなるバッファーシステムを使用し、+/−100mVの印加電圧を用い、5Hzの負荷サイクルを用いて、この実施例に示される通り抜ける時間データを集めた。データを集めた後、方形波の正部分の最後まで持続したタグ付きヌクレオチドの捕獲(通されたレベル)を示した方形波について解析し、その後の方形波での別のタグ捕獲が続いた。第2の方形波が遮られない開口チャネル電流を報告した期間を調べることによって、通り抜ける時間を測定した。例として、10の連続方形波が、方形波の正部分の最後まで持続するタグ付きヌクレオチド捕獲を示した場合には、通り抜ける時間パラメータは、方形波2〜10から算出される(ポリメラーゼは、前の方形波においてポリメラーゼと結合したタグを有さなかったので、第1の方形波は、算出に組み入れない)。実験における細孔のすべてについてこれらの通り抜ける時間数を集め、それらから統計的パラメータを抽出した(例えば、平均、中央値、標準偏差など)。
[00174]結果を、図1A〜1B、2A〜2B、3A〜3B、4A〜4Bおよび5A〜5Bに示す。
オリゴマー化が不十分なサブユニット中の破壊変異
[00175]この実施例は、破壊変異が、αHLモノマーサブユニットの自己オリゴマー化を妨げる、または低減することを示す。
[00176]QuikChange複数部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene、La Jolla、CA)を使用して部位特異的突然変異誘発を実施して、実施例2に記載されるN17K変異を含むα−溶血素バリアントの第1の(部位1)および第2の(部位2)オリゴマー化ドメインの各々に単一アミノ酸変異を導入した。
[00177]N17Kバリアントの第1のまたは第2のオリゴマー化ドメイン中に、変異:H35D、D24A+V26D+K37S、H35E、H35L、H35I、T233R+S99K、Y101D、Y101H、H35NおよびT233R+S99K+D24A+V26D+K37Sのうち1つをさらに含む、溶血素バリアントN17KモノマーをコードするDNAポリヌクレオチドを、pPR−IBA2プラスミド中にクローニングし、実施例1に記載したように、大腸菌(E.coli)において発現させ、続いて、精製した。
[00178]精製された変異N17Kバリアントモノマーを、脂質の存在下で再構成して、モノマーが自己オリゴマー化することの阻害における変異の各々の能力を調べた。5mg/mLのDoPhPC脂質を1mg/mlの濃度のタンパク質に添加し、混合物を30℃で30分間インキュベートした。リポソームを5% β−OGを用いて可溶化した。再構成された変異バリアントをSDS−PAGEゲル電気泳動に付すことによって、各変異バリアントのモノマーおよびオリゴマーの有無を調べた。結果を、図8Aおよび8Bのゲルおよび図13に示されるゲルのレーン4〜7を示す。
[00179]破壊変異が野生型αHLモノマー(Hemo M)によってレスキューされ得るか否かを試験するために、Hemo Mを、変異D24A+V26D+K37SおよびT233R+S99Kを有するモノマーに1:1比で添加した。図9に示される結果は、これらの破壊変異は、野生型モノマーによってレスキューされ得ない、すなわち、野生型モノマー上の第1のまたは第2いずれかのオリゴマー化ドメイン上の変異していないアミノ酸は、示される変異を有するモノマーの相互作用をレスキューしないことを実証する。
[00180]さらに、変異D24A+V26D+K37S、T233R+S99K、H35E、H35D、H35NおよびH35Lを有する変異バリアントモノマー/オリゴマーの相対移動度(Rf)を調べた。
[00181]Rf値の結果を、以下の表1に示す。変異していないN17Kバリアントモノマーを、モノマーの66.3%が、オリゴマーとして存在した場合に、自己オリゴマー化する能力を保持すると決定した。
[00182]まとめると、データは、溶血素バリアントモノマーのオリゴマー化ドメインの一方または両方(部位1および2)で行われた破壊変異は、モノマーの自己オリゴマー化する能力を妨げる、または実質的に低減することを示す。
Figure 0006889701
オリゴマー化二量体コンカテマーの精製再構成
[00183]この実施例は、2つの野生型αHLモノマーのコンカテマーを含むサブユニットのオリゴマー化に起因するオリゴマーの形成を実証する。
[00184]シグナル配列、(pelB)、第1のαHLモノマー、(Hemo 1)、リンカー(GS)5(配列番号9)、第2のαHLモノマー(Hemo 2)および精製タグ−取付けタグ(His6−SpyTag)(配列番号10として開示される「His6」)を含むαHLタンパク質をコードするDNAポリヌクレオチドを、pPR−IBA2プラスミド中にクローニングし、実施例1に記載したように、大腸菌(E.coli)において発現させ、続いて、精製した。
[00185]精製コンカテマー二量体は、SECによって得られる単一ピークとして精製される(図10Aおよび10B)。
[00186]精製コンカテマーを、脂質の存在下で、タンパク質を、DoPhPC脂質とともに37℃で10分間インキュベートすることによって再構成した。実施例6に記載したように、リポソームを可溶化し、電気泳動に付した。
[00187]図11は、2つのモノマーのαHLコンカテマーが、自己オリゴマー化の能力を有することを示す。
[00188]例えば、実施例6においてモノマーについて記載されるもののように破壊変異を導入することは、二量体コンカテマーの自己オリゴマー化の能力を消失させ、その後に、αHLサブユニットの機能的七量体細孔への化学量論比および配置を管理するために使用できるということが予測される。
オリゴマー化三量体および四量体コンカテマーの発現および精製
[00189]この実施例は、3つまたは4つのαHLモノマーのコンカテマーの発現および精製を示す。
[00190]実施例7において二量体コンカテマーについて記載したように、αHLモノマーの三量体および四量体コンカテマーサブユニットを発現させ、精製した。三量体コンカテマーをコードするポリヌクレオチドは、以下のオリゴマー化サブユニットを発現する:
(pelB)、第1のαHLモノマー、(Hemo 1)、リンカー(GS)5(配列番号9)、第2のαHLモノマー(Hemo 2)、リンカー(GS)5(配列番号9)、第3のαHLモノマー(Hemo 3)およびStrepIITag。
[00191]四量体コンカテマーをコードするポリヌクレオチドは、以下のオリゴマー化サブユニットを発現する:
シグナル配列(pelB)、第1のαHLモノマー、(Hemo 1)、リンカー(GS)5(配列番号9)、第2のαHLモノマー(Hemo 2)、リンカー(GS)5(配列番号9)、第3のαHLモノマー(Hemo 3)、リンカー(GS)5(配列番号9)、第4のαHLモノマー(Hemo 4)およびHis−SpyTag。
[00192]コンカテマーを、実施例1において記載したように、大腸菌(E.coli)において発現させ、精製し、次いで、電気泳動に付した。
[00193]図12は、3つのおよび4つの連結したモノマーのコンカテマー化サブユニットを発現させ、精製することができることを示す。ゲルで見られる二量体およびモノマーは、精製の間に起こる分解の結果であり、分解は、N末端アフィニティータグを使用する精製ステップと組み合わせて、コンカテマーのN末端にアフィニティータグを導入することによって最小化することができる。
機能的ヘテロオリゴマーアルファ溶血素七量体ナノポア
[00194]サブユニットコンカテマーの機能的αHL細孔を形成する能力を調べるために、3つのモノマーの第1のαHLコンカテマーサブユニットを、脂質の存在下で、4つのモノマーの第2のαHLコンカテマーサブユニットと組み合わせて、七量体aHL細孔を提供する。
[00195]破壊変異、すなわち、アミノ酸置換を、三量体の、および四量体コンカテマーサブユニットの第1のおよび第2のオリゴマー化ドメインの各々に導入する。さらに、同族および/またはレスキュー変異を、三量体および四量体コンカテマーの第1のオリゴマー化ドメイン中のアミノ酸置換として導入する。実施例2に記載したように部位特異的突然変異誘発を使用して変異を作製する。ポリメラーゼを、実施例4に記載した方法を使用してコンカテマーサブユニットの各々に付ける。
[00196]ナノポアの活性を、実施例5に記載したように測定する。
[00197]2つのコンカテマーサブユニットのヘテロオリゴマーα−溶血素七量体は、脂質二重層中に七量体ナノポアを形成する能力を保持する。
同族変異は、サブユニットのオリゴマー化を可能にする
[00198]αHLサブユニットの第1のおよび第2のオリゴマー化ドメイン中の変異の能力を実証するために、アミノ酸置換H35IおよびY101Hを、バリアントN17K αHLモノマーの第1のおよび第2のオリゴマー化ドメイン中でそれぞれ行った。
[00199]変異バリアントモノマーを、実施例6に記載したように細菌において発現させ、精製した。
[00200]次いで、精製した変異N17Kバリアントモノマーを、脂質の存在下で再構成して、変異バリアントモノマーのオリゴマー化の阻害または可能にすることにおける、オリゴマー化ドメイン中の変異の能力を調べた。1mg/mlの濃度のモノマータンパク質に5mg/mL DoPhPC脂質を添加し、混合物を30℃で30分間インキュベートした。リポソームを5% β−OGを用いて可溶化した。再構成された変異バリアントをSDS−PAGEゲル電気泳動に付すことによって、変異バリアントのモノマーおよびオリゴマーの有無を調べた。結果を図13に示す。
[00201]レーン5は、変異H35Iは、変異バリアントモノマーのオリゴマー化を単独で阻害することを示す。同様に、レーン7は、変異Y101Hもまた単独でオリゴマー化を阻害することを示す、すなわち、H35IおよびY101Hは、破壊変異であると示された。しかしながら、両変異H35IおよびY101Hをバリアントモノマー上に行った場合(レーン9)、変異バリアントαHLモノマーの能力はレスキューされた、すなわち、H35IおよびY101Hは、対合されると、サブユニット間相互作用を許し、αHLモノマーのオリゴマー化を可能にする同族変異である。
[00202]これらのデータは、サブユニット相互作用およびαHLサブユニット、例えば、モノマーのオリゴマー化は、サブユニットの第1のおよび第2のオリゴマー化ドメインにおいて行われる変異の対合によって制御できることを示す。
破壊変異の温度依存性変換
[00203]破壊変異およびサブユニットのオリゴマー化を可能にする、対応するレスキューおよび/または同族変異を同定するために実験を実施した。本出願人は、予期せぬことに、高温でその自身の同族変異に変換できる破壊変異を発見した。
[00204]第1のオリゴマー化ドメイン中にH35G変異を有するαHLモノマーを、脂質中、25℃でおよび37℃で再構成した。再構成は、実施例10に記載したように実施した。
[00205]結果を図14に示す。レーン2は、脂質の存在下で、H35G変異を有するモノマーは、25℃でオリゴマー化しないことを示す。したがって、レーン2は、H35G変異は、サブユニット間相互作用および変異サブユニットのオリゴマー化を阻害する破壊変異であることを示す。しかしながら、レーン4に示されるように、同一の変異モノマーを脂質中、37℃で再構成した場合には、サブユニットのオリゴマー化が観察された。
[00206]これらのデータは、高温、例えば、25℃に対して37℃では、H35G破壊変異を有するサブユニットは、オリゴマー化できることを実証する。
[00207]したがって、サブユニットのオリゴマー化を可能にするために、破壊変異を、同族および/またはレスキュー変異と対合することに加えて、破壊変異をその自身の同族変異に変換し、オリゴマー化を可能にすることができる。
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[00208]本明細書によって本明細書において参照される各特許、特許出願、刊行物、文書、GENBANK配列、ウェブサイトおよびその他の公開された材料の全体は、すべての表、図面および図を含めて参照により組み込まれる。すべての特許および刊行物は、各々が具体的に、個別に、参照により組み込まれると示されるかのように同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。上記の特許、特許出願、刊行物および文書の引例は、上記のもののいずれかが、関連先行技術であるという承認ではなく、これらの刊行物または文書の内容または日付についての何らかの承認を構成しない。本明細書において言及されたすべての特許および刊行物は、本発明が属する技術分野の当業者の技術レベルを示す。

Claims (11)

  1. 少なくとも1つの第1のオリゴマー化サブユニットおよび少なくとも1つの第2のオリゴマー化サブユニットを含むヘテロオリゴマーα−溶血素(αHL)七量体であって、
    各オリゴマー化サブユニットは、第1のオリゴマー化ドメイン中に1以上の変異および第2のオリゴマー化ドメイン中に1以上の変異を有する、少なくとも1つのαHLモノマーおよび/または少なくとも1つのαHLモノマーのコンカテマーを含み、
    前記第1のオリゴマー化ドメインおよび/または第2のオリゴマー化ドメイン上の前記変異の少なくとも1つは、前記少なくとも1つの第1のオリゴマー化サブユニットおよび前記少なくとも1つの第2のオリゴマー化サブユニットの自己オリゴマー化を妨げる破壊変異であり、
    前記αHLモノマーおよび/またはαHLモノマーの前記コンカテマーが、1以上の配列番号3のポリペプチドを含み、
    少なくとも1つの配列番号3のポリペプチドが、配列番号3の位置12または17に置換をさらに含むバリアントであり、
    前記置換が1以上の正電荷を含み、T12K、T12R、N17KおよびN17Rからなる群から選択される少なくとも1つであり、
    前記七量体が厳密に7つのαHLモノマーを含み、各αHLモノマーが第1のオリゴマー化ドメインおよび第2のオリゴマー化ドメインを含み、
    1つのαHLモノマーの第1のオリゴマー化ドメインが他のαHLモノマーの第2のオリゴマー化ドメインに連結され、
    脂質二重層中に細孔を形成する能力を保持する、
    前記ヘテロオリゴマーα−溶血素(αHL)七量体。
  2. 前記少なくとも1つの第1のオリゴマー化サブユニット中の前記第1のオリゴマー化ドメイン上に少なくとも1つの同族および/もしくはレスキュー変異、ならびに/または前記少なくとも1つの第2のオリゴマー化サブユニット中の前記第2のオリゴマー化ドメイン中の少なくとも1つの同族および/またはレスキュー変異をさらに含み、
    前記少なくとも1つの同族および/またはレスキュー変異が、前記少なくとも1つの第1のオリゴマー化サブユニットおよび前記少なくとも1つの第2のオリゴマー化サブユニット間のサブユニット間接触を決定し、
    前記ヘテロオリゴマーαHL七量体中のオリゴマー化サブユニットの順序を特定する、
    請求項1に記載のヘテロオリゴマーαHL七量体。
  3. 前記αHL七量体が、αHLモノマーのコンカテマーである少なくとも1つの第1のオリゴマー化サブユニットによって形成され、少なくとも1つの第2のオリゴマー化サブユニットは、少なくとも1つのαHLモノマーである、請求項1または2に記載のヘテロオリゴマーαHL七量体。
  4. 各々がαHLモノマーのコンカテマーである、少なくとも1つの第1のオリゴマー化サブユニットおよび少なくとも1つの第2のオリゴマー化サブユニットによって形成される、請求項1または2に記載のヘテロオリゴマーαHL七量体。
  5. 前記少なくとも1つの第1のオリゴマー化サブユニットおよび前記少なくとも1つの第2のオリゴマー化サブユニットが、αHLモノマーの各々である、請求項1または2に記載のヘテロオリゴマーαHL七量体。
  6. 前記αHLモノマーおよび/または前記αHLモノマーのコンカテマーが、1以上の配列番号3のポリペプチドを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のヘテロオリゴマーαHL七量体。
  7. ポリメラーゼをさらに含み、
    前記ポリメラーゼが、前記少なくとも1つの第1のオリゴマー化サブユニットまたは第2のオリゴマー化サブユニットのうち1以上に付けられている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のヘテロオリゴマーαHL七量体。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のヘテロオリゴマーαHL七量体を含む七量体細孔構築体。
  9. 標的分子を検出するための方法であって、
    (a)検出電極に隣接して、またはその近傍に配置された膜中に、請求項8に記載の七量体細孔構築体を含むナノポアを含むチップを設置するステップと、
    (b)核酸分子を前記ナノポア中に通過させるステップであって、前記核酸分子が、リポーター分子と会合され、前記核酸分子が、アドレス領域およびプローブ領域を含み、前記リポーター分子が、前記プローブ領域で前記核酸分子と会合され、前記リポーター分子が、標的分子と連結されるステップと、
    (c)前記核酸分子が前記ナノポア中を通過させられる間に前記アドレス領域をシーケンシングして、前記アドレス領域の核酸配列を調べるステップと、
    (d)(c)において調べられた前記アドレス領域の核酸配列に基づいて、コンピュータプロセッサーを利用して前記標的分子を同定するステップと
    を含む、前記方法。
  10. 前記第1のオリゴマー化ドメイン中の前記少なくとも1つの同族変異が、配列番号3におけるH35Iであり、前記第2のオリゴマー化ドメイン中の前記少なくとも1つの同族変異が、配列番号3におけるY101Hである、請求項2に記載のヘテロオリゴマーαHL七量体。
  11. 前記1以上の変異が、配列番号3におけるH144の位置での置換を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のヘテロオリゴマーαHL七量体。
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