自動車や各種産業機械等の動力伝達装置に使用される等速自在継手には、その内側継手部材としてトリポード部材を用いたトリポード型等速自在継手がある(特許文献1)。図30と図31に示すように、トリポード型等速自在継手は、外側継手部材1と、内側継手部材としてのトリポード部材2と、トルク伝達部材としてのローラ機構3とを備える。
外側継手部材1は一端にて開口したカップ状のマウス部4と、マウス部4の底壁から突設されるステム部5を有し、内周の円周方向三等分位置に軸方向に延びるトラック溝6が形成してある。各トラック溝6の円周方向で向き合った側壁にローラ案内面7、7が形成される。
トリポード部材2はボス部8と脚軸9とを備える。ボス部8にはシャフトとトルク伝達可能に結合するスプラインまたはセレーション孔10が形成してある。脚軸9はボス部8の円周方向三等分位置から半径方向に突出している。
ローラ機構3は、トリポード部材2の脚軸9に首振り揺動自在に嵌合されるものであって、内側ローラ11と、外側ローラ12と、内側ローラ11と外側ローラ12との間に介在される針状ころ13とを備える。なお、ローラ機構3をローラカセット3と呼ぶ場合がある。
内側ローラ11の円筒形外周面11a(図31参照)を内側軌道面とし、外側ローラ12の円筒形内周面12a(図31参照)を外側軌道面として、これらの内外軌道面間に針状ころ13が転動自在に介在する。針状ころ13は、できるだけ多くのころを入れた、保持器のない、いわゆる総ころ状態で組み込まれている。なお、外側ローラ12の内周面の軸方向両端部に環状溝が形成され、各環状溝には針状ころ13の抜け止め用のワッシャ17,18が装着されている。
内側ローラ(支持リング)11の内周面は、円弧状凸断面を有する。このことと、脚軸9の横断面形状が略楕円形状であり、脚軸9と内側ローラ11との間には所定のすきまが設けてあることから、内側ローラ11は脚軸9の軸方向での移動が可能であるばかりでなく、脚軸9に対して首振り揺動自在である。
また、外側継手部材1の開口部はブーツ15で密封されている。ここで、ブーツ15は、大径部15aと、小径部15bと、大径部15aと小径部15bとを連結する蛇腹部15cとからなる。このため、大径部15aが外側継手部材1の開口部外径面に形成されたブーツ装着部1aに外嵌され、大径部15aに装着されるブーツバンド16を締め付けることによって、大径部15aが外側継手部材1のブーツ装着部1aに固定される。
シャフト20には、周方向凹溝20b1を有するブーツ装着部20bが設けられている。そして、このブーツ装着部20bにブーツ15の小径部15bが外嵌され、小径部15bに装着されるブーツバンド16を締め付けることによって、小径部15bがシャフト20のブーツ装着部20bに固定される。
ところで、従来には、ローラ機構3(ローラカセット3)が傾いて振動・騒音の発生や動力損失を生じるのを防止することが可能なトリポード型等速自在継手が提案されている(特許文献2)。このトリポード型等速自在継手では、ローラ機構の外側ローラの外周面に、その軸方向中央部に円筒外径面を設け、外側継手部材のトラック溝のローラ案内面に、外側ローラの円筒外径面に対向する帯状平面と、この帯状平面の外径側に設けられる外側傾斜面と、この帯状平面の内径側に設けられる内側傾斜面とからなる断面台形状の案内溝が設けられている。そして、このローラ案内面の案内溝にローラ機構の外側ローラの外径部が嵌合するものである。
従来には、外輪(外側継手部材)の軌道溝とローラ機構の摺動抵抗を低減させることが可能なトリポード型等速自在継手が提案されている(特許文献3)。このトリポード型等速自在継手では、軌道溝の底部に、トルク伝達に伴って傾動するローラ機構と反トルク伝達側において接触する支持面を設けたものである。そして、この支持面およびこれに対向するローラ機構の端面のうち少なくとも一方の摩擦係数を、ローラ機構と接触してトルク伝達を行う伝達面の摩擦係数よりも小さくしている。
従来には、外輪(外側継手部材)とローラ機構の外側ローラとの滑り摩擦を抑制して、以て強制力を低減することが可能なトリポード型等速自在継手が提案されている(特許文献4)。このトリポード型等速自在継手では、外側ローラに、外輪(外側継手部材)のトラック溝(軌道溝)の天井面に対向する環状面を設け、トラック溝(軌道溝)の天井面には、ローラ機構が傾動したときに、環状面の外縁に接触する第1・第2接触部を設けたものである。
従来には、大きな誤差の場合にも、小さな乃至最小の回転遊びによって、確実な伝達と、摩擦の小さな外側ローラの案内を可能としたトリポード型等速自在継手が提案されている(特許文献5)この場合、外側ローラの凸曲面とトラック溝の凸曲面(又は平面)とが接触することになる。
特許文献1に記載のいわゆるダブルローラタイプの低振動トリポード型等速自在継手は、図31に示すように、トラック溝6に対しての転動面であるローラ外周面12bが球形状もしくは円環形状であり、外側ローラ12の転動面であるローラ案内面7はローラ外周面12bの形状に倣い接触率を持ったサーキュラコンタクトや接触率や接触角を持ったアンギュラコンタクト形状となっている。
そのため構造上、継手が角度をつけて回転する際に、ローラカセット3(ローラ機構)が外側継手部材の軸直角方向断面で傾く現象(左右傾き:ローラカセット軸心、つまり外側ローラ軸心Oa廻りに図31の矢印A、Bのように揺動すること)およびローラカセットが外側継手部材の軸平行方向断面で傾く現象(前後傾き:ローラカセット軸心、つまり外側ローラ軸心Oa廻りに図30の矢印C、Dのように揺動すること)が発生する。このローラカセット3の左右傾きおよび前後傾きが発生するとトラック溝6における接触部での転がり摺動抵抗が大きくなり、さらにトルク伝達箇所以外であるローラ幅面と外側継手部材1の内径面やローラ外周面とトラック非負荷側などが接触し、摺動抵抗が増加し、等速自在継手のNVH(Noise,Vibration,Harshness)性能として誘起力やスライド抵抗が大きくなるという課題がある。
なお、ローラ外周面12bを、円筒形状とすれば、左右傾きが生じにくいものとできるが、このように構成した場合、前後傾きが発生しやすくなって、転がり摺動抵抗が大きくなるなどの課題がある。
特許文献2に記載のトリポード型等速自在継手では、振動・騒音の発生や動力損失を生じるのを防止することが可能である。しかしながら、ローラ機構の外周の円筒面の径寸法、この円筒面の幅寸法、ローラ機構の内径寸法等の種々の寸法を精度よく構成する必要があり、生産性に劣ることになる。
特許文献3に記載のトリポード型等速自在継手では、外輪(外側継手部材)の軌道溝とローラ機構の摺動抵抗を低減させことが可能である。しかしながら、外側継手部材のトラック溝又はローラカセットに、プレート部材を付設する必要があり、部品点数が増え、組み立て性に劣る。さらには、各部材の摩擦係数を所望のものを選択する必要があって、設計性に劣ることになる。
特許文献4に記載のトリポード型等速自在継手では、外輪(外側継手部材)とローラ機構の外側ローラとの滑り摩擦を抑制して、以て強制力を低減することが可能である。しかしながら、環状面の外径を、ローラ端面径、外側ローラの軸方向の幅であるローラ幅、環状面と天井面との接触部の間隔等に基づいて設定する必要があり、生産性に劣ることになる。
特許文献5に記載のトリポード型等速自在継手では、確実な伝達と、摩擦の小さな外側ローラの案内を可能である。しかしながら、外側ローラの凸曲面とトラック溝の凸曲面(又は平面)とが接触することになるので、トラック溝に対して外側ローラは傾斜(傾動)可能となっている。このため、ローラカセットが左右傾きが生じたり、前後傾きが生じたりするおそれがあった。
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、自動車においては摺動抵抗が起因となる振動が減少し、直接的にNVH特性の向上につながり、しかも生産性に優れたトリポード型等速自在継手を提供するものである。
本発明の第1のトリポード型等速自在継手は、内周面に軸方向に延びる三本のトラック溝が形成され、各トラック溝の両側でそれぞれ軸方向に延びるローラ案内面を有する外側継手部材と、半径方向に突出した三本の脚軸を有するトリポード部材と、前記トリポード部材の脚軸にそれぞれ装着されて、脚軸に対して首振り揺動自在なローラ機構とを備え、このローラ機構の外側ローラが前記外側継手部材のトラック溝の前記ローラ案内面に沿って摺動するトリポード型等速自在継手において、前記ローラ機構の外側ローラの外周面は、外側ローラの軸心線と直交するとともに外側ローラの中心点を通る平面に関して非対称に配設される外方側面と内方側面とを有し、外方側面と内方側面とのいずれか一方を凸曲面とするとともに他方を円錐面とし、前記トラック溝のローラ案内面は、前記外方側面を案内する外方案内面と、前記内方側面を案内する内方案内面とを有し、前記外方案内面と前記内方案内面とのいずれかの案内面を、前記外側ローラ側の凸曲面と線接触をなす凹曲面とし、他方の案内面を前記外側ローラ側の円錐面と点接触をなす凸曲面としたものである。なお、ローラ機構をローラカセットと呼ぶ場合がある。
本発明の第1のトリポード型等速自在継手によれば、機構上トルク伝達面であるローラ(外側ローラ)とトラック溝との接触部である凸曲面と凹曲面とが線接触となる。この線接触と、テーパ面と凸曲面との接触で外側ローラ中心回りに回転する動きを抑えることで、ローラ機構の左右傾きを抑制することができる。さらに外側ローラの外周面とローラ案内面はアンギュラコンタクト接触し、このアンギュラコンタクト接触により前後傾きが抑制される。これらよって、ローラカセット(ローラ機構)はトラック溝に対し水平に保たれ、トルク伝達箇所以外でのローラ(外側ローラ)と外側継手部材との接触を防止し、作動角をとった場合においても、摺動抵抗が低い等速自在継手となる。
しかも、当接(接触)する外側ローラ側の凸曲面のアールとローラ案内面側の凹曲面のアールとの寸法に僅かな差が生じても、外側ローラ側の凸曲面とローラ案内面側の凹曲面とはトルク負荷時には弾性変形により線接触(いわゆるべた当たり)となり、接触面圧を低く抑えられる。
また、外側ローラの凸曲面がローラ案内面の凹曲面上を滑って左右傾きが発生しようとしても、案内面の凸曲面と外側ローラの円錐面(テーパ面)が接触することで、ローラカセットの左右傾きが生じない。このため、角度をとり回転する際にも、ローラカセットの前後、左右傾きが低減され、トラック溝の摺動抵抗が低減される。
本発明の第2のトリポード型等速自在継手は、内周面に軸方向に延びる三本のトラック溝が形成され、各トラック溝の両側でそれぞれ軸方向に延びるローラ案内面を有する外側継手部材と、半径方向に突出した三本の脚軸を有するトリポード部材と、前記トリポード部材の脚軸にそれぞれ装着されて、脚軸に対して首振り揺動自在なローラ機構とを備え、このローラ機構の外側ローラが前記外側継手部材のトラック溝の前記ローラ案内面に沿って摺動するトリポード型等速自在継手において、前記ローラ機構の外側ローラの外周面は、外側ローラの軸心線と直交するとともに外側ローラの中心点を通る平面に関して対称に配設される外方側面と内方側面とを有し、外方側面と内方側面とは円錐面であり、かつ、前記トラック溝のローラ案内面は、前記外方側面を案内する外方案内面と、前記内方側面を案内する内方案内面とを有し、前記外方案内面と内方案内面との接触が、トルク無負荷状態で、前記外方案内面と外方側面、及び前記内方案内面と内方側面が点接触となり、トルク負荷状態で、前記外方案内面と外方側面、及び前記内方案内面と内方側面とが線接触となる凸曲面とし、さらに、外側継手部材のトラック溝に、トルク無負荷時における遠心力によって前記外側ローラの外端面を受ける内鍔部を設けたものである。
本発明の第2のトリポード型等速自在継手によれば、トルクが入った際に、トルク伝達面である外側ローラとトラック溝の接触部が弾性変形により線接触となる。この線接触が左右傾きおよび前後傾きを抑制しローラカセットをトラック溝に対し水平に保つことができる。これにより、トルク伝達箇所以外での外側ローラと外側継手部材との接触を防止し、作動角をとった場合においても、摺動抵抗が低い等速自在継手を可能とする。
また、トルク無負荷時に遠心力によって外側ローラが外径側に押し付けられた場合、外側ローラが案内面より先に外側継手部材の内鍔部に接触する。このため、外側ローラが両ローラ案内面に同時に接触し、はさまれた状態(楔効果)による摺動抵抗が発生せず、トルク無負荷時においても高い低振動性能を実現できる。
本発明の第3のトリポード型等速自在継手は、内周面に軸方向に延びる三本のトラック溝が形成され、各トラック溝の両側でそれぞれ軸方向に延びるローラ案内面を有する外側継手部材と、半径方向に突出した三本の脚軸を有するトリポード部材と、前記トリポード部材の脚軸にそれぞれ装着されて、脚軸に対して首振り揺動自在なローラ機構とを備え、このローラ機構の外側ローラが前記外側継手部材のトラック溝の前記ローラ案内面に沿って摺動するトリポード型等速自在継手において、前記ローラ機構の外側ローラの外周面は、外側ローラの軸心線と直交するとともに外側ローラの中心点を通る平面に関して対称に配設される外方側面と内方側面とを有し、外方側面と内方側面とは円錐面であり、かつ、前記トラック溝のローラ案内面は、前記外方側面を案内する外方案内面と、前記内方側面を案内する内方案内面とを有し、前記外方案内面と前記内方案内面との接触が、いずれかの案内面を、トルク無負荷状態で、相手側とで線接触となるテーパ面とするとともに、他方の案内面を、トルク無負荷状態で、相手側とで点接触となる凸曲面とし、さらに、外側継手部材のトラック溝に、トルク無負荷時における遠心力によって前記外側ローラの外端面を受ける内鍔部を設けたものである。
本発明の第3のトリポード型等速自在継手によれば、機構上トルク伝達面である外側ローラとローラ案内面の接触部は、トルク無負荷状態で、外側ローラの軸心線と直交するとともに外側ローラの中心点を通る平面よりも外径側又は内径側において、線接触(直線接触)となる。この直線接触がローラカセットの左右傾きを抑制し、さらに、他方の外側ローラの外周面とローラ案内面はアンギュラコンタクト接触し、このアンギュラコンタクト接触により前後傾きが抑制される。これらによって、ローラカセット(ローラ機構)はトラック溝に対し水平に保たれ、トルク伝達箇所以外でのローラ(外側ローラ)と外側継手部材との接触を防止し、作動角をとった場合においても、摺動抵抗が低い等速自在継手となる。
トラック溝の外方案内面と内方案内面とのいずれかの案内面を、テーパトラックにすることで外側ローラと外側継手部材の僅かなテーパ角度差が生じても、他方の案内面の凸曲面でそれを吸収し一部において直線当りが確保され、狙いの機能(低振動性能に優れた機能)を持った等速自在継手(摺動抵抗が低い等速自在継手)を可能とする。
また、トルク無負荷時に遠心力によって外側ローラが外径側に押し付けられた場合、外側ローラが案内面より先に外側継手部材の内鍔部に接触する。このため、外側ローラが両ローラ案内面に同時接触し、はさまれた状態(楔効果)による摺動抵抗が発生せず、トルク無負荷時においても高い低振動性能を実現できる。
本発明の第4のトリポード型等速自在継手は、内周面に軸方向に延びる三本のトラック溝が形成され、各トラック溝の両側でそれぞれ軸方向に延びるローラ案内面を有する外側継手部材と、半径方向に突出した三本の脚軸を有するトリポード部材と、前記トリポード部材の脚軸にそれぞれ装着されて、脚軸に対して首振り揺動自在なローラ機構とを備え、このローラ機構の外側ローラが前記外側継手部材のトラック溝の前記ローラ案内面に沿って摺動するトリポード型等速自在継手において、前記ローラ機構の外側ローラの外周面は、外側ローラの軸心線と直交するとともに外側ローラの中心点を通る平面に関して非対称に配設される外方側面と内方側面とを有し、かつ、外方側面と内方側面との一方の側面を円錐面とするとともに、他方の側面を凸曲面とし、前記トラック溝のローラ案内面は、前記外方側面を案内する外方案内面と、前記内方側面を案内する内方案内面とを有し、前記外方案内面と前記内方案内面とのいずれかの案内面を、トルク無負荷状態で、外側ローラの凸曲面とで線接触となる凹曲面とするとともに、他方の案内面を、トルク無負荷状態で、外側ローラの円錐面と点接触となる凸曲面とし、さらに、外側継手部材のトラック溝に、トルク無負荷時における遠心力によって前記外側ローラの外端面を受ける内鍔部を設けたものである。
本発明の第4のトリポード型等速自在継手によれば、トルク無負荷状態で、機構上トルク伝達面である外側ローラとローラ案内面との接触部である凸曲面と凹曲面とが線接触となる。この線接触と、外テーパ面と凸曲面との接触で外側ローラ中心回りに回転する動きを抑えることで、ローラカセットの左右傾きを抑制することができる。さらに、ローラカセットが前後傾きしようとすると、内方側面と外方案内面の接触点がローラ幅方向内方寄りに移動し、ローラ中心が案内面から離れる事になる為、トルク負荷による接触力によりローラは案内面に押し付けられる作用により前後傾きが抑制される。これによって、ローラカセット(ローラ機構)はトラック溝に対して水平に保たれ、トルク伝達箇所以外でのローラ(外側ローラ)と外側継手部材との接触を防止し、作動角をとった場合においても、摺動抵抗が低い等速自在継手となる。
当接(接触)する外側ローラ側の凸曲面のアールとローラ案内面側の凹曲面のアールとの寸法に僅かな差が生じても、外側ローラ側の凸曲面とローラ案内面側の凹曲面とはトルク負荷時には弾性変形により線接触(いわゆるべた当たり)となり、接触面圧を低く抑えられる。しかも、外側ローラがトラック溝のアール上を滑って左右傾きしようとしても、反対側の凸アールと外側ローラのテーパ面が接触する事で、ローラカセットの左右傾きが生じない。よって、狙いの機能(低振動性能に優れた機構)を有する等速自在継手(摺動抵抗が低い等速自在継手)とすることが出来る。
また、トルク無負荷時に遠心力によって外側ローラが外径側に押し付けられた場合、外側ローラが案内面より先に外側継手部材の内鍔部に接触する。このため、外側ローラが両ローラ案内面に同時接触し、はさまれた状態(楔効果)による摺動抵抗が発生せず、トルク無負荷時においても高い低振動性能を実現できる。
前記第2から第3のトリポード型等速自在継手では、円錐面と、外側ローラの軸心線と直交するとともに外側ローラの中心点を通る平面とのなす角度(この角度をローラ外径円錐面の角度と呼ぶ)を、60°〜80°に設定することができる。
ローラ外径円錐面の角度が60°未満であれば、外側ローラは、トラック溝との接触でローラ中央寄りと幅面寄りで転がり周速差が大きくなり回転抵抗を増大させることになる。さらに接触荷重も大きくなることからその角度以上が望ましい。また、ローラ外径円錐面の角度80°より大きな場合(80°を越えた場合)、外側ローラの前後傾きの姿勢制御効果が小さくなることになる。これにより、非負荷側との接触が発生しやすくなり回転抵抗が発生することからその角度以下が望ましい。このため、ローラ外径円錐面の角度は、70°±5°が好適であると言える。
線接触部位の最大接触角を10°〜30°に設定することができる。最大接触角を10°未満であれば、トルク無負荷時に楔角(接触角)が小さく、その時の摺動抵抗が大きくなる。また、最大接触角が30°より大きい場合、トラック溝との接触でローラ中央寄りと幅面寄りで転がり周速差が大きくなり回転抵抗が増大し、低振動化効果が低減する。このため、接触角度は、20°±5°が好適であると言える。
トリポード部材の脚軸の外径面断面形状が凸曲面とされ、前記内側ローラの内径面が円筒面とされているものであっても、トリポード部材の脚軸の外径面断面形状が凸曲面とされ、前記内側ローラの内径面が脚軸の凸曲面に嵌合する凹曲面とされているものであってもよい。
本発明のトリポード型等速自在継手では、角度をとり回転する際に、ローラカセット(ローラ機構)の前後、左右傾きが低減され、トラック溝の摺動抵抗が低減される。自動車においては摺動抵抗が起因となる振動が減少し、直接的にNVH特性の向上につながる。
以下本発明の実施の形態を図1〜図29に基づいて説明する。本発明に係るトリポード型等速自在継手は、図1と図2に示すように、トリポード型等速自在継手は、外側継手部材31と、内側継手部材としてのトリポード部材32と、トルク伝達部材としてのローラ機構33とを備える。
外側継手部材31は一端にて開口したカップ状のマウス部34と、マウス部34の底壁から突設されるステム部35を有し、内周の円周方向三等分位置に軸方向に延びるトラック溝36が形成してある。マウス部34は、横断面で見ると、図2に示すように、大径部34aと小径部34bが交互に現れる非円筒形状である。すなわち、マウス部34は、大径部34aと小径部34bとを形成することによって、その内周面に、軸方向に延びる3本の前記トラック溝36が形成される。
各トラック溝36の円周方向で向き合った側壁にローラ案内面(ローラ摺接面)37、37が形成される。また、内径面においては、円周方向に交互に現れる小内径部45と大内径部46をローラ案内面37で接続した3弁の花冠状を呈している。すなわち、外側継手部材31は、円周方向に向き合ったローラ案内面37と両ローラ案内面37,37間に設けられた大内径部46からなるトラック溝36が内周の三箇所に形成されるものである。
トリポード部材32はボス部38と脚軸39とを備える。ボス部38にはその軸心孔40の内径面には雌スプライン40aが形成され、この軸心孔40にシャフト50の端部雄スプライン50aが嵌入される。このため、ボス部38の雌スプライン40aにシャフト50の雄スプライン50aが噛合することになる。脚軸39はボス部38の円周方向三等分位置から半径方向に突出している。なお、軸心孔40から突出したシャフト50の端部には、抜け止め用の止め輪51が装着されている。
ローラ機構33は、トリポード部材32の脚軸39に首振り揺動自在に嵌合されるものであって、内側ローラ41と、外側ローラ42と、内側ローラ41と外側ローラ42との間に介在される針状ころ43とを備える。なお、ローラ機構33をローラカセットと呼ぶ場合がある。
内側ローラ41の円筒形外周面41a(図2及び図3参照)を内側軌道面とし、外側ローラ42の円筒形内周面42a(図2及び図3参照)を外側軌道面として、これらの内外軌道面間に針状ころ43が転動自在に介在する。針状ころ43は、できるだけ多くのころを入れた、保持器のない、いわゆる総ころ状態で組み込まれている。なお、外側ローラ42の内周面の軸方向両端部に環状溝が形成され、各環状溝には針状ころ43の抜け止め用のワッシャ47,48が装着されている。
脚軸39の外周面は、縦断面で見ると脚軸39の軸線と平行なストレート形状であり、横断面で見ると、長軸が継手の軸線に直交する楕円形状である。脚軸39の断面形状は、トリポード部材32の軸方向で見た肉厚を減少させて略楕円状としてある。言い換えれば、脚軸39の断面形状は、トリポード部材32の軸方向で互いに向き合った面が相互方向に、つまり、仮想円筒面よりも小径側に退避している。
内側ローラ(支持リング)41の内周面は、円弧状凸断面を有する。このことと、脚軸39の横断面形状が上述のように略楕円形状であり、脚軸39と内側ローラ41との間には所定のすきまが設けてあることから、内側ローラ41は脚軸39の軸方向での移動が可能であるばかりでなく、脚軸39に対して首振り揺動自在である。
また、外側継手部材31の開口部はブーツ55で密封されている。ここで、ブーツ55は、大径部55aと、小径部55bと、大径部55aと小径部55bとを連結する蛇腹部55cとからなる。このため、大径部55aが外側継手部材31の開口部外径面に形成されたブーツ装着部31aに外嵌され、大径部55aに装着されるブーツバンド56を締め付けることによって、大径部55aが外側継手部材31のブーツ装着部31aに固定される。
シャフト50には、周方向凹溝50b1を有するブーツ装着部50bが設けられている。そして、このブーツ装着部50bにブーツ55の小径部55bが外嵌され、小径部55bに装着されるブーツバンド56を締め付けることによって、小径部55bがシャフト50のブーツ装着部50bに固定される。
ところで、ローラ機構33の外側ローラ42の外周面60は、図4に示すうように、外方側面60aと内方側面60bとを有する。この場合、外方側面60aが凸曲面とされるとともに、内方側面60bがテーパ面(円錐面)とされる。このため、外側ローラ42の軸心線L1(図1及び図3参照)と直交するとともに外側ローラ42の中心点Oa(図1及び図3参照)を通る平面Hに関して非対称に配設される。図1に示す状態では、シャフト50の軸心Lに対して、脚軸39の軸心Loが直交し、外側ローラ42の軸心線L1と脚軸39の軸心L1とが一致している。なお、内方側面60bがテーパ面(円錐面)のテーパ角θR(図4参照)としては、60°〜80°程度としている。
また、ローラ案内面37も、図4に示すように、外方案内面37aと内方案内面37bとを有し、外方案内面37aは外方側面60aの凸曲面と線接触をなす凹曲面とし、内方案内面37bは内方側面60bの円錐面と点接触をなす凸曲面としている。外側ローラ42の外方側面60aの曲率半径をRRとし、ローラ案内面37の外方案内面37aの曲率半径をRTとしたときに、RR≒RTとする。ここで、内方案内面37bの曲率半径Rとしては、RR(RT)と同程度である。なお、図4において、Sは外側ローラ42の外周面60とローラ案内面37との接触部を示している。
このように構成することによって、機構上トルク伝達面であるローラ(外側ローラ)42とローラ案内面37の接触部Sである凸曲面と凹曲面とが線接触となる。この線接触と、テーパ面と凸曲面との接触で外側ローラ中心回りに回転する動きを抑えることによって、ローラカセット33の左右傾きを抑制することができる。ここで、左右傾きとは、図31に示すように、相対向するローラ案内面7,7に対して外側ローラ12がその軸心Oaを中心として、矢印A、Bのように揺動することである。また、外側ローラ42の外方側面60aは円環面であるため、前後傾き(図31に示すように、外側ローラ12がその軸心Oaを中心として、矢印C、Dのように揺動すること)が抑制される。
従って、このトリポード型等速自在継手では、ローラカセット33はトラック溝36に対し水平に保たれ、トルク伝達箇所以外での外側ローラ42と外側継手部材31との接触を防止し、作動角をとった場合においても、摺動抵抗が低い等速自在継手となる。
曲率半径RRと曲率半径RTに僅かな差が生じても、トルク負荷時には弾性変形によりべた当たり(線接触)となる。このため、接触面圧を低く抑えられると共に、外側ローラ42がローラ案内面37の凹曲面上を滑って左右傾きが発生しようとしても、案内面37の凸曲面と外側ローラ42の円錐面(テーパ面)が接触することで、外側ローラ42の左右傾きが生じない。
このように、図1等に示すトリポード型等速自在継手では、ローラ機構(ローラカセット)33の左右傾きおよび前後傾きを有効に防止でき、外側ローラ42とトラック溝36との接触部S(図4参照)での転がり摺動抵抗が大きくならない。このため、摺動抵抗に起因する振動を減少させることができ、NVH特性の向上を図ることが可能なトリポード型等速自在継手を得ることができる。
また、ローラ案内面37の凹曲面と外側ローラ42と凸曲面との接触面の端(外径端)の接触角度θc(図4参照)を10°以上とするのが好ましい。このように設定することによって、楔作用を低減できる。つまり、外側ローラ42の転がり抵抗を小さくできる。このため、高い低振動性能を発揮することができる。この場合、線接触部位の最大接触角(外側ローラ42とトラック溝36のローラ案内面37の最大接触角)を10°〜30°に設定することができる。最大接触角が10°未満であれば、トルク無負荷時に楔角(接触角)が小さく、その時の摺動抵抗が大きくなる。また、最大接触角が30°より大きい場合、トラック溝36との接触でローラ中央寄りと幅面寄りで転がり周速差が大きくなり回転抵抗が増大し、低振動化効果が低減する。このため、接触角度は、20°±5°が好適であると言える。
このため、図3に示すように楔角θを、従来の図31に示すトリポード型等速自在継手の楔角θよりも大きくすることが可能となり、楔効果による外側ローラ42の噛み込み発生を有利に抑制することができる。
ところで、図1〜図4に示すトリポード型等速自在継手では、外方側面60aを凸曲面とするとともに、内方側面60bをテーパ面(円錐面)としていたが、図5に示すように、外方側面60aをテーパ面(円錐面)とするとともに、内方側面60bを凸曲面としてもよい。
このため、図5に示すトリポード型等速自在継手では、トラック溝36のローラ案内面37は、その外方案内面37aを、円錐面と点接触をなす凸曲面とし、内方案内面37bを、凸曲面と線接触をなす凹曲面としている。この場合も、線接触部位の最大接触角(外側ローラ42とトラック溝36のローラ案内面37の最大接触角)を10°〜30°に設定し、外側ローラ42の内方側面60bの曲率半径をRRとし、ローラ案内面37の内方案内面37bの曲率半径をRTとしたときに、RR≒RTとする。さらには、外方側面60aのテーパ面(円錐面)のテーパ角θRとしては、60°〜80°程度としている。
従って、図5に示すトリポード型等速自在継手においても、図1〜図4に示すトリポード型等速自在継手と同様の作用効果を奏することができる。なお、図5において、Sは外側ローラ42の外周面60とローラ案内面37との接触部を示している。
図6に示すトリポード型等速自在継手は、トリポード部材32の脚軸39の外径面39aが凸曲面とされ、内側ローラ41の内径面41bが円筒面とされている。すなわち、図6に示すトリポード型等速自在継手は、トリポード部材32の脚軸39の外径面39aが凸曲面のタイプにおいて、外側ローラ42を図1〜図4に示すタイプのものを使用し、これに合わせて外側継手部材31を図1〜図4に示すタイプのものを使用している。
このため、図6に示すトリポード型等速自在継手においても、図1〜図4に示すトリポード型等速自在継手と同様の作用効果を奏することができる。しかも、ローラ機構(ローラカセット)33が脚軸(トラニオン)39に対して旋回変向運動することが可能であり、ローラ機構33と脚軸(トラニオン)39とは脚軸39の軸線方向に相対移動可能となる。
また、図7に示すトリポード型等速自在継手では、内側ローラ41の内径面41bが、脚軸39の外径面39aの凸曲面に嵌合する凹曲面とされている。図7に示すトリポード型等速自在継手においても、図1〜図4に示すトリポード型等速自在継手と同様の作用効果を奏することができる。しかも、ローラ機構(ローラカセット)33が脚軸(トラニオン)39に対して安定して旋回変向運動することが可能である。図7に示す等速自在継手では、図6に示す等速自在継手と脚軸39の外径面39aと内側ローラ41の内径面41bとの嵌合状態が異なるだけで、その他は同じである。
次に、図8〜図11に示すトリポード型等速自在継手では、外側ローラ42の外方側面60aをテーパ面(円錐面)とするとともに、内方側面60bをテーパ面(円錐面)としている。この場合、外方側面60aと内方側面60bとは、外側ローラ42の軸心線と直交するとともに外側ローラ42の中心点Oaを通る平面Hに関して対称に配設されている。
また、トラック溝36のローラ案内面37を、外側ローラ42の外方側面60aと内方側面60bとに対応して、外方案内面37a及び内方案内面37bをそれぞれ凸曲面としている。
この場合、外方案内面37a及び内方案内面37bの曲率半径Rとしては、無負荷状態で、図10に示すように、外方案内面37aと外方側面60aとは点接触をなし、内方案内面37bと内方側面60bとは点接触をなす。また、トルク負荷時状態では、図11に示す状態では、接触部が弾性変形して、外方案内面37aと外方側面60aとは線接触をなすとともに、内方案内面37bと内方側面60bとは線接触をなすものである。
このため、この線接触が左右傾きおよび前後傾きを抑制しローラカセット33をトラック溝36に対し水平に保つことで、トルク伝達箇所以外での外側ローラ42と外側継手部材との接触を防止し、作動角をとった場合においても、摺動抵抗が低い等速自在継手を可能とする。
また、このトリポード型等速自在継手の外側継手部材31のトラック溝36に、トルク無負荷時における遠心力によって外側ローラ42の外端面を受ける内鍔部61を設けている。この場合、図13に示すように、外側継手部材31の内鍔部61と外側ローラ42の外端面との間の寸法をaとし、外側ローラ42の外周面60の外方側面60aと、ローラ案内面37の外方案内面37aとの間の隙間をbとしたときに、a<bに設定する。
これによって、トルク無負荷時に遠心力によって、外側ローラ42が外側継手部材31に押し付けられた場合、図12に示すように、外側ローラ42は、ローラカセット33の外側ローラ42の軸心線L1に直交するとともに外側ローラ42の軸心(中心)Oaを通る平面HはH´のように外径方向に移動し、内鍔部61が接触することになる。
しかしながら、a<bに設定しているので、ローラ案内面37に接触する前に内鍔部61が接触することになる。このため、外側ローラ42の外周面60とローラ案内面37との間に楔効果は発生せず、トルク無負荷時においても高い低振動性能を実現できる。
ところで、図8〜図11に示すトリポード型等速自在継手では、外側ローラ42の外方側面60aと内方側面60bは、外側ローラ42の軸心線と直交するとともに外側ローラ42の中心点を通る平面Hとなす角度θR(この角度をローラ外径円錐面の角度と呼ぶ場合がある)を60°〜80°とするのが好ましい。
ローラ外径円錐面の角度θRが60°未満であれば、外側ローラ42は、トラック溝36との接触でローラ中央寄りと幅面寄りで転がり周速差が大きくなり回転抵抗を増大させることになる。さらに接触荷重も大きくなることからその角度以上が望ましい。また、80°より大きな場合(80°を越えた場合)、外側ローラ42の前後傾きの姿勢制御効果が小さくなることになる。これにより、非負荷側との接触が発生しやすくなり回転抵抗が発生することからその角度以下が望ましい。このため、円錐面の角度は、70°±5°が好適であると言える。なお、図10、図11、及び図12において、Sは外側ローラ42の外周面60とローラ案内面37との接触部を示している。図12のS1は外側ローラ42の外端面と外側継手部材31の内鍔部61との接触部を示している。
また、図14と図15に示すトリポード型等速自在継手は、外側ローラ42の外方側面60aをテーパ面(円錐面)とするとともに、内方側面60bをテーパ面(円錐面)としているが、外側継手部材31のローラ案内面37の外方案内面37aを外方側面60aのテーパ面に対向するテーパ面とし、ローラ案内面37の内方案内面37bを凸曲面としている。このため、トルク無負荷状態で、外方側面60aのテーパ面(円錐面)と外方案内面37aのテーパ面とが線接触となり、内方側面60bのテーパ面(円錐面)と内方案内面37bとが点接触となる。
この場合も、図15に示すように、外方側面60aのテーパ面(円錐面)のなす角度θR、及び内方側面60bをテーパ面(円錐面)のなす角度θRをそれぞれ60°〜80°としている。また、外方案内面37aのテーパ面のなす角度θTも60°〜80°としている。すなわち、θR≒θTに設定される。
このため、図14と図15に示すように、機構上トルク伝達面である外側ローラ42とローラ案内面37の接触部は、トルク無負荷状態で、外側ローラ42の軸心線と直交するとともに外側ローラ42の中心点Oaを通る平面Hよりも外径側において、線接触(直線接触)となる。この直線接触が、ローラカセット(ローラ機構)33の左右傾きを抑制し、さらに、ローラカセット33が前後傾きしようとすると、内方側面60bと外方案内面37bの接触点がローラ幅方向内方寄りに移動し、ローラ中心が案内面から離れる事になる為、トルク負荷による接触力によりローラは案内面に押し付けられる作用により前後傾きが抑制される。これによって、ローラカセット(ローラ機構)33はトラック溝に対し水平に保たれ、トルク伝達箇所以外でのローラ(外側ローラ42)と外側継手部材との接触を防止し、作動角をとった場合においても、摺動抵抗が低い等速自在継手となる。
ローラ案内面37の外方案内面37aのみテーパトラックにすることで、外側ローラ42のテーパと外側継手部材31のテーパとの間に僅かなテーパ角度差が生じても、内方案内面37bでそれを吸収し、内径側で直線当りが確保され、狙いの機能(低振動性能に優れた機能)を持った等速自在継手(摺動抵抗が低い等速自在継手)を可能とする。
図16に示すトリポード型等速自在継手では、外側ローラ42の外方側面60aをテーパ面(円錐面)とするとともに、内方側面60bをテーパ面(円錐面)としているが、外側継手部材31のローラ案内面37の外方案内面37aを凸曲面とし、ローラ案内面37の内方案内面37bを、内方側面60bのテーパ面に対向するテーパ面としている。このため、トルク無負荷状態で、外方側面60aのテーパ面(円錐面)と外方案内面37aのテーパ面とが線接触となり、内方側面60bのテーパ面(円錐面)と内方案内面37bとが点接触となる。(すなわち、内方案内面37bの曲率半径Rは、このように点接触となる大きさである。)
この場合も、外方側面60aのテーパ面(円錐面)のなす角度θR、及び内方側面60bのテーパ面(円錐面)のなす角度θRをそれぞれ60°〜80°としている。また、内方案内面37bのテーパ面のなす角度θTも60°〜80°としている。すなわち、θR≒θTに設定される。
この図16に示すように構成されたトリポード型等速自在継手では、機構上トルク伝達面である外側ローラ42とローラ案内面37の接触部は、トルク無負荷状態で、外側ローラ42の軸心線と直交するとともに外側ローラ42の中心点Oa(図14参照)を通る平面Hよりも内径側において、線接触(直線接触)となる。このため、図16に示すように構成されたトリポード型等速自在継手でも、図15に示すトリポード型等速自在継手と同様の作用効果を奏する。なお、図15と図16において、Sは外側ローラ42の外周面60とローラ案内面37との接触部を示している。
図17に示すトリポード型等速自在継手では、外側ローラ42の外周面60の外方側面60aを凸曲面とし、内方側面60bを円錐面としている。また、外側継手部材31のローラ案内面37の外方案内面37aを、外方側面60aの凸曲面に嵌合状となる凹曲面とし、ローラ案内面37の内方案内面37bを凸曲面としている。
この場合も、内方側面60bのテーパ面(円錐面)のなす角度θRを60°〜80°としている。また、外側ローラ42の外方側面60aの曲率半径をRRとし、ローラ案内面37の外方案内面37aの曲率半径をRTとしたときに、RR≒RTとする。内方側面60bのテーパ面(円錐面)のなす角度θRをそれぞれ60°〜80°としている。また、内方案内面37bのテーパ面のなす角度θTも60°〜80°としている。すなわち、θR≒θTに設定される。線接触部位の最大接触角(外側ローラ42とトラック溝36のローラ案内面37の最大接触角)を10°〜30°に設定することができる。
トルク無負荷状態で、機構上トルク伝達面である外側ローラ42とローラ案内面37との接触部Sである凸曲面と凹曲面とが線接触となる。この線接触と、テーパ面と凸曲面との接触で外側ローラ中心回りに回転する動きを抑制でき、ローラカセット33の左右傾きを抑制することができる。さらにローラカセット33が前後傾きしようとすると、内方側面60bと外方案内面37bの接触点がローラ幅方向内方寄りに移動し、ローラ中心が案内面から離れる事になる為、トルク負荷による接触力によりローラは案内面に押し付けられる作用により前後傾きが抑制される。これによって、ローラカセット(ローラ機構)33はトラック溝36に対し水平に保たれ、トルク伝達箇所以外での外側ローラ42と外側継手部材31との接触を防止し、作動角をとった場合においても、摺動抵抗が低い等速自在継手となる。
しかも、図17に示すトリポード型等速自在継手では、曲率半径RRと曲率半径RTに僅かな差が生じても、トルク負荷時には弾性変形によりべた当たり(線接触)となり、接触面圧を低く抑えられると共に、外側ローラ42がトラック溝上を滑って左右傾きが発生しようとしても、内方案内面37bと外側ローラ42のテーパ面が接触することで、ローラカセット(ローラ機構)33の左右傾きが生じない。
図18に示すトリポード型等速自在継手では、外側ローラ42の外周面60の外方側面60aを円錐面とし、内方側面60bを凸曲面としている。また、外側継手部材31のローラ案内面37の外方案内面37aを、凸曲面とし、ローラ案内面37の内方案内面37bを内方側面60bの凸曲面に嵌合状となる凹曲面としている。
この場合も、外方側面60aのテーパ面(円錐面)のなす角度θRを60°〜80°としている。また、外側ローラ42の内方側面60bの曲率半径をRRとし、ローラ案内面37の内方案内面37bの曲率半径をRTとしたときに、RR≒RTとする。線接触部位の最大接触角(外側ローラ42とトラック溝36のローラ案内面37の最大接触角)を10°〜30°に設定することができる。
図18に示すトリポード型等速自在継手では、トルク無負荷状態で、外方側面60aのテーパ面(円錐面)と外方案内面37aの凸曲面とが点接触し、内方側面60bの凸曲面と内方案内面37bの凹曲面とが線接触する。
このため、この図18に示すトリポード型等速自在継手であっても、図17に示すリポード型等速自在継手と同様の作用効果を奏する。なお、図17と図18において、Sは外側ローラ42の外周面60とローラ案内面37との接触部を示している。
ところで、図15、図16、図17、及び図18に示すトリポード型等速自在継手も、それぞれ、図19〜図26に示すように、外側継手部材31のトラック溝36に、トルク無負荷時における遠心力によって外側ローラ42の外端面を受ける内鍔部61を設けている。図20、図22、図24、及び図26に示すように、外側継手部材31の内鍔部61と外側ローラ42の外端面との間の寸法をaとし、外側ローラ42の外周面60の外方側面60aと、ローラ案内面37の外方案内面37aとの間の隙間をbとしたときに、a<bに設定する。このため、外側ローラ42の外周面60とローラ案内面37との間に楔効果は発生せず、トルク無負荷時においても高い低振動性能を実現できる。
図19及び図20は、図14及び図15に示すトリポード型等速自在継手に対応し、図21及び図22は、図16に示すトリポード型等速自在継手に対応し、図23および図24は、図17に示すトリポード型等速自在継手に対応し、図25及び図26は、図18に示すトリポード型等速自在継手に対応している。なお、図19、図21、図23、及び図25において、Sは外側ローラ42の外周面60とローラ案内面37との接触部を示し、S1は外側ローラ42の外端面と外側継手部材31の内鍔部61との接触部を示している。
図27が、図10等に示す外側ローラ42の外端面を受ける内鍔部61を設けたトリポード型等速自在継手において、ローラ機構33の内側ローラ41を、図6に示すようなトリポード部材32の脚軸39の外径面39aが凸曲面とされ、内側ローラ41の内径面41bが円筒面とされている。
図28も、図14〜図16に示す等速自在継手のように、外側ローラ42の外周面60の外方側面60aをテーパ面(円錐面)とするとともに、内方側面60bをテーパ面(円錐面)とし、かつ、外側継手部材31のローラ案内面37の外方案内面37aを外方側面60aのテーパ面に対向するテーパ面とし、外側継手部材31のローラ案内面37の内方案内面37bを凸曲面としている。
図29も、図21〜図23に示す等速自在継手のように、外側ローラ42の外周面60の外方側面60aを凸曲面とし、内方側面60bを円錐面としている。また、ローラ案内面37の外方案内面37aを、外方側面60aの凸曲面に嵌合状となる凹曲面とし、ローラ案内面37の内方案内面37bを凸曲面としている。
このため、これらのトリポード型等速自在継手は、トリポード部材32の脚軸39の外径面39aが凸曲面とし、しかも、図27に示すものでは、図8等に示すトリポード型等速自在継手と同様の作用効果を奏し、図28に示すものでは、図14等に示すトリポード型等速自在継手と同様の作用効果を奏し、図29に示すものでは、図21等に示すトリポード型等速自在継手と同様の作用効果を奏する。
前記各トリポード型等速自在継手は、外側ローラ42の外周面60に、円錐面、凸曲面、及び/又は凹曲面を、設けたり、ローラ案内面に、テーパ面、凸曲面及び/又は凹曲面を設けたりすればよい。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、前記各実施形態では、ローラ機構33としては、内側ローラ41と外側ローラ42とを有するいわゆるダブルローラタイプである。また、図27〜図29に示すトリポード型等速自在継手において、内側ローラ41の内径面41bを凹曲面とした図7に示すタイプのトリポード型等速自在継手としてもよい。