JP6883816B2 - 筒状スピーカー構造、スピーカー装置、オーディオシステム、スピーカー装置製造方法、およびスピーカー装置改造方法 - Google Patents

筒状スピーカー構造、スピーカー装置、オーディオシステム、スピーカー装置製造方法、およびスピーカー装置改造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6883816B2
JP6883816B2 JP2016250295A JP2016250295A JP6883816B2 JP 6883816 B2 JP6883816 B2 JP 6883816B2 JP 2016250295 A JP2016250295 A JP 2016250295A JP 2016250295 A JP2016250295 A JP 2016250295A JP 6883816 B2 JP6883816 B2 JP 6883816B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sound
speaker
enclosure
thin plate
vibration
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016250295A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018107540A (ja
Inventor
幸浩 葛西
幸浩 葛西
Original Assignee
幸浩 葛西
幸浩 葛西
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 幸浩 葛西, 幸浩 葛西 filed Critical 幸浩 葛西
Priority to JP2016250295A priority Critical patent/JP6883816B2/ja
Publication of JP2018107540A publication Critical patent/JP2018107540A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6883816B2 publication Critical patent/JP6883816B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Details Of Audible-Bandwidth Transducers (AREA)
  • Obtaining Desirable Characteristics In Audible-Bandwidth Transducers (AREA)

Description

本発明は筒状スピーカー構造、スピーカー装置、オーディオシステム、スピーカー装置製造方法、およびスピーカー装置改造方法に係り、特に、微妙なニュアンスを含む微弱信号を良好に再生でき、高出力型高級機を用いることなく、優れたCD音源等の原音のHi−Fi(High Fidelity、高忠実性)再生性を得ることができ、安価かつ容易にリアリティの高いオーディオ環境を提供することのできるスピーカー構造等に関するものである。
<従来のスピーカーの技術的思想>
従来のスピーカーは、スピーカーユニットのボイスコイルが電気音声信号を受けてコーンを振動させ、コーンの特に前面の空気に疎密圧力を与えることにより、音を発生させるものである。この場合、コーン前面の疎密波とコーン背面に副次的に発生する疎密波が干渉し、特に指向性の低い低音の回り込みが発生して、前面に発生する音が打ち消される。この回り込みを解消するために、スピーカーユニットはエンクロージャーにセットされることが多い。
このような方式における最も理想的なスピーカーエンクロージャーの形態は、理論上、平板(一枚板)の「無振動」かつ「無限大平面」バッフルとなる。そして実際のスピーカーでは、スピーカーユニットの振動体であるコーンは、スピーカーユニットのフレーム、バッフル板、エンクロージャーにより支持される構成をとる。コーンの振動の反力は、振動として逆向きに発生しているが、これらの振動は「不要振動」とされ、音質悪化の要因とされている。
そのため、エンクロージャーの構成材として比重が重く堅牢なものを用いること、エンクロージャーを密閉して消音材を入れることなどにより、エンクロージャー内面の消音や、エンクロージャー自体の振動を防ぐことが重要視され、専ら行われている。密閉型の例外としては、バスレフ型、後面開放型があるが、いずれにしても、基本的に「不要振動を消す」、「前面の音が背面に発生する音に影響を受けないようにする」という考え方に変わりはない。
また、エンクロージャー、バッフル板の材によって音質が変化するということは、一部オーディオマニアには知られており、メーカーもこれに呼応した製品を上市している。しかしこの場合においても、不要振動を排除するという基本方針に変わりはない。
<先行技術>
スピーカー装置については従来、技術的な提案も多くなされている。たとえば後掲特許文献1には、バスレフ型スピーカーの低中音域の音質を向上させることを目的として、両端に開口部を有する筒状の筐体と、筐体の内寸よりも小さい寸法の柱状部材を備え、筐体の一方の開口部にはスピーカーユニットが取り付けられ、筐体の他方の開口部には、スピーカーユニット側に開口部のない柱状部材が、筐体との間に筒状の隙間を形成するように取り付けられることによって、筒状の隙間をダクトとして機能させ、他方の開口部をポートとして機能させる構成が開示されている。
また、後掲特許文献2には、必ずしも原音に忠実な再生ではなく鑑賞者の感性の幅に対応できるような独自の音を再生できるスピーカー装置として、外側筐体と内側筐体とを略同心円状に配置し、内側筐体内には吸音材を入れた構成を開示している。そしてこれによれば、内側筐体内の吸音材により内部空間の音を共鳴しない音にしたり、両筐体を金属製とすることによってその間での音を共鳴する音にしたり、内側空間から放出される共鳴しない音と外側空間から放出される共鳴する音との合成による独自音を放出したりすることができる、としている。
また、後掲特許文献3には、時間関係の乱れが少なく、楽音などの低周波の複雑な波形を忠実に再生することができ、しかも音場空間のサービスエリアが広いスピーカー装置として、円筒形状のスピーカー筺体の一方端面においては振動板の前面と背面を除きスピーカーユニットが実質的に覆うように固着され、他方底面においては開口部を有する構造を有し、かつマグネットの背面に支持棒を介して錘が固着された構成が開示されている。この錘は、支持棒を実質的に鉛直方向に保持するとともにマグネットを音響的、仮想的に接地するが、これによりマグネットから支持棒に伝達される振動が減衰抑圧される、としている。
また、後掲特許文献4には、筐体である筒状部材(パイプ)全体への広がり感のある音像が得られるスピーカー装置として、パイプの一端側および他端側は完全に開放された状態とし、音声信号に基づいて駆動されるスピーカーユニットをパイプの一端側に同軸的に配置し、かつパイプを、スピーカーユニットからの音波により加振可能な程度に軽くかつ薄く形成することとした構成が開示されている。これにより、スピーカーユニットからの音波がパイプの内部を通って、完全に開放された他端側から外部に放射される際、パイプの管壁がこの音波で加振されて振動し、このパイプの外面全体から音声信号に対応した音波が放射される、としている。
特開2013−81061号公報「バスレフ型無指向性スピーカー」 特開2016−116093号公報「スピーカ装置」 特開2001−224089号公報「スピーカ装置」 特開2007−208734号公報「スピーカ装置および音声出力方法」
<従来のスピーカーの課題>
さて、従来のスピーカーには次のような問題点がある。
(1)微弱信号に弱い
従来のスピーカーでは、主たる音がスピーカーコーンの正面からのみ発音される。そのため、スピーカーユニットは大口径、高出力、ワイドレンジ、フラットな特性が優れたものであるとされ、強力なコーンの動きを制御するためにダンパーやエッジが強化されてきた。その結果、リアリティや臨場感、聞きやすさなどの「良い音」の再現にとって重要な微弱信号を発音できない、良好に再生できないという問題点がある。また、音声信号は様々なスペクトラムの交流波であるが、ユニット背面の音を消すことにより、交流の一方の音エネルギーを消していることになる。そのため、強力な信号の音は再現できても、微妙なニュアンスを含む微弱信号は吸音材、重いユニットに伝わることにより、キャンセルされてしまうという問題点がある。
(2)高精細な再現性を得るには高出力型高級機が必要
これらのことから、原音(CD音源等)のHi−Fi(High Fidelity、高忠実性)再生性が、高出力型高級機で一定以上の音量で聞いた場合以外は低いものとならざるを得ないという問題点がある。つまり、高出力機器、マルチスピーカー、マルチアンプなどのハイエンドオーディオ機器を、オーディオルームなどの環境で一定以上の音量を聞くことができる一部のオーディオマニア以外は、リアリティの高いオーディオを楽しむことが難しい現状である。
(3)小音量でも高精細な再現性を得られる小型スピーカーが存在しない
SACD(Super Audio CD)、DSD(Direct Stream Digital)、サンプリング周波数、量子化ビット数が高いハイレゾ音源ダウンロードサービスなど、高精細音源やDAC(Digital to Analog Converter)、これらの高精細音源に対応するアンプが開発されている。しかし、肝腎のスピーカーにおける高精細化の取り組みが不足している。特に、小音量時でも再生周波数のバランスや高精細な再現性を得られるスピーカーが存在しない。
(4)安価、容易に高精細なオーディオを十分に楽しめる装置がない
このように、リアリティの高いオーディオを真のオープンエアで楽しむことが困難であるため、ヘッドフォン、ヘッドフォンアンプ市場は活況を呈しているが、耳だけによるリスニングは耳への負担が大きく、長時間楽しむことができない。すなわち、安価、容易に高精細なオーディオを、時間制限されることなく、かつ耳に過度の負担をかけることなく、十分に楽しめる装置がない。
(5)スピーカーコーンのみによる再生の不自然さ
そもそも、木質、金属、それらの組み合わせからなる楽器の、さらにオーケストラなどの重層化された演奏を、スピーカーコーンだけによって再現することは不自然であるが、その不自然さを少しでも解消するための試みは、未だ足りない状況である。
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、特に、微妙なニュアンスを含む微弱信号を良好に再生でき、高出力型高級機を用いることなく、優れたCD音源等の原音のHi−Fi再生性を得ることができ、安価かつ容易にリアリティの高いオーディオ環境を提供することのできる、スピーカー構造等を提供することである。
つまり本発明の課題は、大口径化、高出力化、大型化することなく、微弱信号をも良好に再生できて高精細な再現性を得ることができるスピーカー構造等を提供すること、また、小音量でも高精細な再現性を得られ、小型化可能なスピーカー構造等を提供すること、安価かつ容易に、時間制限されることなく、かつ耳に過度の負担をかけることなく高精細なオーディオを十分に楽しめるスピーカー構造等を提供すること、さらに、スピーカーコーンのみによる再生の不自然さを解消して、より自然な再生音を得られるスピーカー構造等を提供することである。
<課題解決の方針>
本願発明者は上記課題を掲げて研究した結果、以下のような解決方針を立てた。
(1)コーンで音として再現されなかった音を再現することにより、CD音源のHi−Fi再生を超えて、録音現場の再生(Hi−Fi+立体音像)を目指す。
(2)スピーカーユニットだけではなく、エンクロージャー(筐体)全体から発音する構造とする。
(3)スピーカーユニットから発生するすべての「振動エネルギー」をエンクロージャーに伝え、音に変換する。
(4)微細な倍音成分までを発音できる構造とする。
(5)楽器の音色はもとより、音の立ち上がり(アタック)、減衰(ディケイ)、持続(サスティーン)、消音(リリース)までをリアルに表現できるようにする。
(6)楽器に利用されているスプルース、竹などの素材を複合的に利用する。
(7)木材の場合は、その組み合わせ、木目の向きまでを考慮し、音をチューニングする。
(8)エンクロージャー内部の圧力(コーンの背面からの音)、内部反響を利用する。
(9)低音コントロール、ならびにスピーカー装置全体の音のチューニングとして、バスレフ方式を検討する。
(10)中高音、低音、内部反響コントロールとして、独自の内部構造とする。
(11)スピーカーユニットからの振動をスピーカー本体で振動させるため、強固な底板とする。
<課題解決手段>
すなわち、スピーカー構造を、エンクロージャー全体から発音する構造とし、そのための材質を検討することを基礎とし、その他多面的な検討を行った結果、上記課題を解決できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
〔1〕 開放端を有する筒状のエンクロージャーと、
該エンクロージャーと同軸的に開放端側に配置されていて音声信号に基づいて駆動されるスピーカーユニットと
該スピーカーユニット対向側端部に設けられたバスレフとを備え、
該バスレフのバスレフ穴により該対向側端部の一部も開放されており、
該エンクロージャーの側面部は非均質性の薄板体により形成されており、
該薄板体は二枚のシート状木質素材を用いて形成されており、
該シート状木質素材には補強用シートが貼着されていて該補強用シートを含めた該薄板体の厚さが0.5mm以上0.8mm以下であり、
該スピーカーユニットからの振動を前記エンクロージャーに伝える振動伝播手段(以下、「サウンドブリッジ」)として該スピーカーユニットを囲繞するバッフル板、およびアルミニウム製、銅製、鋼板製もしくはステンレス鋼製の付加サウンドブリッジが一または複数設けられており、
該エンクロージャー内には該スピーカーユニットからの音波を反射する塔状の反射部が該バスレフのバスレフポートに設けられており、
かかる構成により下記<SE1>〜<SE3>記載の各作用がなされ、
本筒状スピーカー構造において発生するすべての振動エネルギーが該エンクロージャーに伝えられて該エンクロージャー全体から発音がなされ、音波が該エンクロージャーの側面部を透過して外部に放射されることを特徴とする、筒状スピーカー構造。
<SE1> 反射を含むエンクロージャー内部音が該薄板体を透過する。
<SE2> 該スピーカーユニットの振動板による内部圧力の変化に基づき該薄板体が振動し、音が該薄板体を透過する。
<SE3> 該サウンドブリッジにより該薄板体が振動し、音が該薄板体を透過する。
〔2〕 前記シート状木質素材としてスプルース、竹またはその双方が用いられることを特徴とする、〔1〕に記載の筒状スピーカー構造。
〔3〕 前記薄板体として二枚のスプルース突板が用いられることを特徴とする、〔1〕に記載の筒状スピーカー構造。
〔4〕 前記薄板体を構成するスプルース突板はこれに貼着されている補強材も含めて厚さが0.3mm以下であり、したがって該薄板体全体の厚さが0.6mm以下であることを特徴とする、〔3〕に記載の筒状スピーカー構造。
〔5〕 内側に用いるスプルース突板は縦木目、外側に用いるスプルース突板は横木目とすることを特徴とする、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載の筒状スピーカー構造。
〔6〕 前記補強用シートが和紙であることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕のいずれかに記載の筒状スピーカー構造。
〔7〕 前記エンクロージャーは円筒状であることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕のいずれかに記載の筒状スピーカー構造。
〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕のいずれかに記載の筒状スピーカー構造を備えたスピーカー装置。
〕 〔〕に記載のスピーカー装置を製造する方法であって、エンクロージャーに一または複数のスタビライザーを貼着することを特徴とする、スピーカー装置製造方法。
10〕 〔〕に記載のスピーカー装置を改造する方法であって、エンクロージャーに一または複数のスタビライザーを貼着することを特徴とする、スピーカー装置改造方法。
11〕 〔〕に記載のスピーカー装置を含むオーディオシステム。
<本発明の効果>
本発明の筒状スピーカー構造、スピーカー装置、オーディオシステム、スピーカー装置製造方法、およびスピーカー装置改造方法は上述のように構成されるため、これらによれば、微妙なニュアンスを含む微弱信号を良好に再生することができ、高出力型高級機を用いることなく、優れたCD音源等の原音のHi−Fi再生性を得ることができ、安価かつ容易にリアリティの高いオーディオ環境を提供することができる。
つまり、大口径化、高出力化、大型化することなく、微弱信号をも良好に再生できて高精細な再現性を得ることができ、また、小音量でも高精細な再現性を得られ、しかも小型化することができ、安価かつ容易に、時間制限されることなく、かつ耳に過度の負担をかけることなく高精細なオーディオを十分に楽しめるスピーカー構造等を提供することができ、さらに、スピーカーコーンのみによる再生の不自然さを解消して、より自然な再生音を得ることができる。
本発明の筒状スピーカー構造によれば、スピーカーユニットだけではなく、発生するすべての「振動エネルギー」をエンクロージャーに伝え、エンクロージャー全体から発音がなされるため、微細な倍音成分も発音でき、また、音の立ち上がり(アタック)、減衰(ディケイ)、持続(サスティーン)、消音(リリース)までが再現性よく表現できる。さらに、エンクロージャーを構成する薄板体は非均質性のものであるため(例.スプルース、竹などのシート状木質素材)、コーンで音として再現されなかった振動をも高精細に再現することができ、CD音源のHi−Fi再生を超え、録音現場の再生(Hi−Fi+立体音像)に近似した再生音を得ることができる。
また、本発明のスピーカー装置製造方法、スピーカー装置改造方法によれば、一または複数のテープ状のスタビライザーを適宜仕様にてエンクロージャーに貼着するだけで、音質を自在に変化させることができる。したがって、製造方法としては、再生する音源の性格(音楽ジャンル、楽器・音声の種類、音量や音質の特性など)に対応したスピーカー装置の製造が可能であり、また、使用者における自由な音質設計の可能な仕様を有するスピーカー装置を提供することができる。
本発明筒状スピーカー構造の基本構成例を示す側断面図である。 図1に示す構成例の側面図である。 図1に示す構成例の平面図(上面図)である。 図1に示す構成例の底面図である。 本発明に係る薄板体の形成方法例を示す説明図である。 仮想グラウンド部を備えた本発明筒状スピーカー構造の構成例を示す側断面図である。 反射部を備えた本発明筒状スピーカー構造の構成例を示す側断面図である。 図7に示す構成例における作用を示す側断面視の説明図である。 本発明筒状スピーカー構造における反射部の設計例を示す側断面図である。 本発明筒状スピーカー構造における反射器の形状例を示す側断面視の説明図である。 反射部をフローティングマウントとした本発明筒状スピーカー構造の構成例を示す一部側断面視の説明図である。 本発明筒状スピーカー構造におけるサウンドブリッジ構成例を示す一部側断面視の説明図である。 図12の構成例に示す各サウンドブリッジの構成を示す説明図であり、バッフル板内面側から視た図である。 スタビライザーを備えた本発明筒状スピーカー構造の構成例を示す一部側断面視の説明図である。
<本発明の基本構成>
以下、図面により本発明を詳細に説明する。なお、各図は例であり、本発明が各図に示された形態・寸法・配置その他の仕様に厳密に限定されるものではない。たとえば図11等に示されるターミナル5T等の配置箇所は同一ではないが、いずれも、あくまでも本発明に係る構成例を示すものである。
図1は、本発明筒状スピーカー構造の基本構成例を示す側断面図である。また、
図2、3、4はそれぞれ、図1に示す構成例の側面図、平面図(上面図)、底面図である。これらに示すように本筒状スピーカー構造10は、少なくとも一端側2が開放された筒状のエンクロージャー1と、エンクロージャー1と同軸的に開放端2側に配置されていて音声信号に基づいて駆動されるスピーカーユニット4とを備え、エンクロージャー1の側面部は非均質性の薄板体5により形成されており、これにより、音波がエンクロージャー1の側面部を透過して外部に放射されるように構成されていることを、主たる構成とする。
なお、各図は本発明筒状スピーカー構造の基本構成例であり、本発明が図に示された構成に限定されるものではない。たとえば、バスレフ構造6(バスレフポート6P、バスレフ穴6H)は一または複数設けることが望ましいが、設けない構成であっても本発明の範囲内である。また、スパイク7についても同様である。もちろん上述の通り、図示した形状、プロポーション等によって本発明が限定されるものでもない。本発明が図示された構成に限定されるものではないことは、図5以降で後述する説明においても同様である。
かかる構成により本発明筒状スピーカー構造10では、開放端部2側に設けられたスピーカーユニット4が音声信号に基づいて駆動されると、コーンから発する音波はスピーカーユニット4の前方向に伝播するとともに、スピーカーユニット4後方のエンクロージャー1内部へも音波は伝播する。後者の音波は、エンクロージャー1の側面部を構成している非均質性の薄板体5を介して、これを透過して外部に放射される。このようにして、スピーカーユニット4から発した音は、その前方へと発音されるとともにエンクロージャー1の側面をなす薄板体5の全体からも発音される。
本発明におけるエンクロージャー1の「筒状」は、その断面形状に限定されない。したがって断面形状は、円、楕円、正三角形その他の三角形、正方形その他の四角形、その他の多角形、半円形、その他の図形を全て含む。なお、円筒状のエンクロージャーとすることは、本発明の作用効果を十分に得られる優れた例の一つであり、しかも全方位スピーカーを構成できるものであるため、以降の説明は円筒状のエンクロージャー1の例を主として行う。また、端部2、3の一方に向かって断面が拡径している場合も含む。そしてエンクロージャー1は、スピーカー構造10の筐体、振動体、共鳴管という三つの機能を果たすことになる。
上述の通り、スピーカーユニット4は、その正面から前方へ向かって音を出す音源としてばかりではなく、振動源、背面音源でもある。つまりスピーカーユニット4からの振動は下記のように伝播する。
振動:スピーカーユニット振動 ―> バッフル板 ―> エンクロージャー ―> 音に変換
背面音:スピーカーユニット背面音 ―> エンクロージャー内部音圧 ―> エンクロージャー(側面) ―> 音に変換
エンクロージャー(側面)1すなわち薄板体5は、パッシヴラジエーター(受動的音波放射器)として機能する。いわば、ギター、バイオリンなどの弦の振動がブリッジを介して表板を振動させ、音を発生させるメカニズムに近い原理である。
<薄板体による筒状エンクロージャーとすることの効果>
エンクロージャー1の側面を薄板体5により形成し、筒状(特に円筒状)とすることの効果を列挙する。
(1)エンクロージャーが円筒状である場合、薄板を円筒状に曲げることで張力が発生し、筐体の強度が確保できる。
(2)薄くて軽いという、最適な振動特性、透過特性の発音体となる。
(3)音の分解能が高い(各楽器の音が個別に聞こえる)。
(4)適度な内部反響が高い臨場感を生み出す。
(5)スピーカーユニットの直接音が上方に広がり、円筒エンクロージャー表面から360度水平に発音されるため、立体的な音像が形成される。
(6)薄板の円筒全てが発音体となるため発音面積が広く、振動音、透過音の発音効率が高い。
(7)ユニットからの音が直接届かないため耳に優しく、ニアフィールド(近距離)での長時間リスニングが可能である。
(8)薄板体として木板を使用した場合、年輪方向では圧縮、伸張強度があり、年輪直角方向では柔軟となる。
(9)板の厚さとともに、板を貼り合わせ、年輪の縦、横を組み合わせることにより、薄く、強度がある構造、ならびに音質をコントロール可能な振動体とすることができる。
(10)これまでのパッシヴラジエーター(駆動機能のない受動的コーンを、エンクロージャー内部圧力によって駆動させ、低音を増強させようとするもの)方式は、低音部分の増強を目的としているが、本発明では、高音から低音までの出力が可能である。
(11)エンクロージャーが円筒状である場合、円筒の側面からの音が円筒波として拡散するため、リスナーには圧力のある音が届き、円筒波の特徴から小音量でも遠くまで明瞭な音が到達する。
(12)バスレフを設ける構成の場合には、サイズを超えた豊かな低音が再生できる。
(13)木質の板が振動することにより紙などの軽量なコーンが振動する時よりも、音の振動を明確に体感することができる。つまり、より楽器らしい発音がなされる。
(14)エンクロージャー内の音が高効率で透過し、発音する。この透過が減衰となるため、定常波(定在波)が発生しにくく、音の濁りが少ない。
ところで、本発明においてエンクロージャー1のスピーカーユニット4対向側の端部3が開放された構成となるのは、バスレフ6を該端部に設けた場合のバスレフ穴6Hの場合のみである。つまり、本発明筒状スピーカー構造10は、スピーカーユニット4の設けられる端部2は当然ながら開放端部となるが、対向する端部3は原則的に開放端部となってはおらず、バスレフ6が設けられる構成においてのみ、バスレフ穴6Hが端部3における開放箇所を形成する。なお、筒、バッフルにもバスレフは設置可能である。
この点、スピーカーユニットの設けられる端部のみならず、これと対向する反対側の端部も完全に開放される構成であるところの上記特許文献4開示技術とは相違する。つまり、当該先行技術では、スピーカーユニットと反対側の開放端部はそもそも必要的に音の放射される端部として構成され、かつ、広がり感のある音像を得るためにポリカーボネイト製等による薄型のエンクロージャーを設けるものであるところ、本発明では、薄板体5によるエンクロージャー1側面部こそが必要的に音の放射される媒体なのであって、スピーカーユニット4対向端部3が開放端部であることは必要ではない。スピーカーユニット4対向側の端部3にバスレフ6を設ける際にのみバスレフ穴6Hとして解放端部があるだけであり、これは先行技術の開放端部とは技術的特徴を全く異にするものである。なお、バスレフに関する一般的な定義は次の通りである。
バスレフポート:外部に開いた穴
バスレフダクト:管
バスレフダクト長:管の長さ
バスレフダクト径:内径:管の内径、外径:ダクトの外径
<薄板体の構成>
本発明筒状スピーカー構造10において、非均質性の薄板体5は、一または複数のシート状木質素材を用いて形成されるものとすることができる。一枚または二枚のシート状木質素材を用いるものとすることもできるが、三枚以上であっても本発明の範囲内である。複数のシート状木質素材を用いる場合、これらは好適には、貼り合わされて用いられるものとすることができる。植物性素材としては、スプルース、竹を初めとして種々の樹種の突板を好適に用いることができるが、それに限定されない。突板だけではなく、削り出しによるシート状素材、その他のシート状素材でもよい。
いずれにしても、第一に、木質素材であるか否かに関わらず先行技術にあるようなポリカーボネイトの如き均質な素材ではなく、非均質性の素材を用いることが重要である。その点、植物性素材のうちでも木質素材、殊に木材の突板やスライス状とした素材は好適である。非均質性であること、すなわち共振に係る特性の幅が広いことにより、固有の周波数を有する各音波が振動しやすい箇所の幅が広がるため、本発明筒状スピーカー構造10では、多様な音質の各音をより自然に再生することが可能となる。
なお、薄板体5には、非均質性であるところのシート状木質素材などを用いて、全体として非均質性とすることが重要だが、最も基本的な本発明思想においては、非均質性とすることができる限り、その構成要素を必ずしも木質素材としなくてはならない訳ではない。「非均質性」の解釈としては、たとえば、薄板体5の透過率(F率)変更による音量、音質の調整を目的として、合成樹脂、金属等の均質性の素材を用いたとしても、全体として非均質性であればよい、とすることもできる。もっとも、シート状木質素材が、薄板体5の好適な構成要素であることには変わりがない。
また、シート状木質素材には補強用シートが貼着されているものとすることができる。たとえば突板の場合、その厚さは0.1mm〜数mm程度であり、強度、安定性、施工性を高めるためには補強用シートを用いることが有効である。補強用シートとしては、和紙その他の紙や、樹脂製シートを好適に用いることができる。
薄板体5としてシート状木質素材を用いる場合、特にスプルース、竹、またはその双方を、好適に用いることができる。スプルースについてより詳細に説明する。木の種類によって、密度、比重などの固有の性質が異なり、さらに同種の木材であっても、生育地の気象条件によって個々に差異があるが、スプルースは、ピアノ、ギター、バイオリンに適した材として使用されている木材である。スプルースは、音(振動)の伝播速度5,500m/sであり、鉄よりも早い。また、比重は0.45であり、鉄の7.9とは比較にならない軽さである。楽器に求められる木の特性には、振動伝播速度の速さ、比重の小ささ、柔軟性、弾力性、音色の良さがあるが、これらすべてにおいてスプルースは評価が高い木材である。本発明でも、シート状木質素材として最も好適に用いることができる。
本発明筒状スピーカー構造10の薄板体5に用いるシート状木質素材としては、上述のようにスプルースや竹を好適に用いることができるが、最も望ましくは、二枚のスプルース突板を用いて薄板体5を構成するものとすることができる。その場合、内側に用いるスプルース突板は縦木目、外側に用いるスプルース突板は横木目のものを用いるものとすることができる。このことを含め、薄板体についてより詳細に説明する。
薄板体5を構成する好適な材料である突板としては、木材として流通するほとんどの樹種の突板が存在する。突板の厚さは通常、0.1mmから数mm程度であり、薄いものは、強度を増すため、および施工しやすくするために、和紙、樹脂シートなどの補強用シートが貼られて用いられる場合もある。本発明では特に、スプルースと竹に注目したが、殊にスプルースはバイオリン、ギター、ピアノ響板に使用されている木材であり、音の伝達性、速度、出音ともに優れた材である。
一方、竹は強度が高いため、エンクロージャーの強度を高めるために有効である。なお、バイオリン裏板にはハードメイプルが使用されることが多いが、その目的は表板の支え、表板からの音の反射であると考えられる。そのため、後述する反射部にはハードメイプルの突板を使用することが望ましい。
<実験_薄板体形成用の突板の検討>
本発明完成に至る過程で行った実験のうち、特にスプルースと竹について検討した結果を述べる。下記二種類の突板を用いた実験結果である。
厚さ0.25mmのスプルース柾目突板に、厚さ0.05mmの和紙を貼り、厚さ0.3mmのシート状木質素材とした。以下、単に「スプルース」とする。
また、厚さ0.25mmの竹突板に、厚さ0.05mmの和紙を貼り、厚さ0.3mmのシート状木質素材とした。以下、単に「竹」とする。
これらのシートを用い、シート2枚を貼り合わせて薄板体を形成した。エンクロージャーの内側・外側に用いるシートの種類により、内外「スプルース」、内外「竹」、内「スプルース」外「竹」、内「竹」外「スプルース」の4パターンの薄板体を作製した。さらに、木目縦、横の組合せでも作製し、かかる薄板体をエンクロージャーとする筒状スピーカー構造を試作し、その発音特性を評価した。
その結果、次の傾向がわかった。
(1)竹について
竹を薄板体の内部として用いた場合、内部反響が強くなる。また、大きなボリュームの場合でも音が破綻しにくい。一方、竹を外部として用いた場合、放射される音のインパクトが強くなる。また、小さい音量では輪郭がしっかりした明瞭な音であるが、大きなボリュームの時にはエンクロージャー内部の反響が大きくなる場合がある。
(2)スプルースについて
スプルースを薄板体の内部として用いた場合、内部反響は適度である。なお、バッフル固定前の段階では、大ボリュームの時に低音が破綻する場合があるが、これは、エンクロージャー内部に、横方向にテープ状の突板を貼り回すことによって強度が補完され、低音の増加を図ることができ、問題ない。一方、スプルースを外部として用いた場合、柔らかく自然な音が放射される。もっとも、竹と比較してクリア感がやや減少する傾向があるが、中音量でも聞き疲れせず、長時間のリスニングやBGMの再生に適している。
(3)木目の縦横
竹、スプルース、いずれの樹種でも、木目を縦(エンクロージャーの軸方向)とした場合はスピード感、インパクトがある音になる。竹の縦では、特に特徴が強く出る。
(4)製品レベルの仕様例
以上の実験の結果、パラメーター:H260mm、W120mm、スピーカー:〜20W、口径6cm〜8cm とした場合のエンクロージャー仕様例は、たとえば次の通りとすることができる。
厚さ0.3mm(突板0.25mm+補強用の和紙0.05mm) のシート状木質素材を2枚貼り合わせて、厚さ0.6mm とする。なお、シート状木質素材は、一方が木目縦、他方が横とする。この仕様は、薄さによる振動伝達、透過音の繊細さ、製品として必要な強度保持、および美観のバランスが最適なものの一つである。また、内側にスプルース縦、外側にスプルース横 とする組合せは、優れた音響特性が得られる。なお、外側をスプルース横とすることで表面に「輝き」が発生するため、美観が向上する。
もっとも、本発明がかかる仕様に限定されるものではない。
<薄板体の形成方法例>
図5は、本発明に係る薄板体の形成方法例を示す説明図である。上方に示す各スプルース突板15a、15bを貼り合わせて下方に展開図として示す薄板体15とする。縦木目のスプルース突板15a(上左)、横木目のスプルース突板15b(上右)とも上述の通り和紙で補強したものを用いる。接着剤には木工用ボンドなど適宜のものを用いることができ、下記の手順で形成する。
(1)いずれの突板15a、15bも、最終的に形成する円筒の円周+1cmの寸法でカットする。
(2)2枚の突板15a、15bを丸め方向に1cmずらして接着する。
(3)貼り合わせてできたシート(薄板体)15を丸め、ずらした1cm幅の2辺がのりしろWa、Wbとなる。
(4)のりしろWa、Wb部分を貼り合わせて円筒を形成する。
継ぎ目を境に内外1cmののりしろWa、Wb部分は都合3枚重ねとなり、継ぎ目の内側と外側をのりしろWa、Wbがそれぞれカバーする。これにより、接合部分の強度が保たれ、そのままでも円筒が保持される。
<エンクロージャーを構成する薄板体の非均質性について>
本発明筒状スピーカー構造は上述の通り、エンクロージャーを構成する薄板体が非均質性であることを、重要な特徴とする。これについて、若干重複もするが、補足説明する。
本発明筒状スピーカー構造では、スピーカーユニットからの振動を薄板体エンクロージャーに伝えることによる発音、および、スピーカーユニット背面から生じる薄板体エンクロージャー内部音をエンクロージャーを透過させることによる発音がなされる。つまり、エンクロージャーが発音体となる。薄板体としては非均質性素材を用い、特に木材、竹などの木質素材が好適であり、とりわけスプルース材の薄板により最適な結果が得られる。
木材、竹などの木質素材は、年輪、木目、導管などの組織を有した非均質性の素材である。そのため、木材等の種類はもとより、年輪、木目の様相、厚さなどによっても振動伝播速度、透過特性、共振特性などの音響特性が異なる。したがって、それらの組み合わせは音響特性変数となり、本発明に係る発音体であるところのエンクロージャーにおいては、その部位によって音響特性がそれぞれに異なるものとなる。つまり、非均質性素材による薄板体エンクロージャーのスピーカー装置では、薄板体の各所の物性が微妙に異なる。
このような薄板体における異なる物性の分布により、本発明では、特定の周波数による定在波や共振ポイントが発生しにくいという、発音体、エンクロージャーとしての優れた特性が得られる。また、この薄板体における異なる物性が分布するという構造は、スピーカーユニットからの多様な音、振動を受け、分割振動しやすい構造でもあるため、本発明に係る非均質性の薄板体は多様な発音に適した素材、構造でもある。
薄板体としてはスプルースが最適であるが、スプルースは木材の中では軽く、音速(振動伝播速度)が大きく、内部損失率(振動吸収率)が低く、 スピーカーユニットの振動に素早く反応し、効率よく音を放射するという性質を持っている。一方、鉄などの金属類は、弾性率は高いが内部損失は低く、残響対策が必要であり、エンクロージャーの響きを利用する素材ではない。また、ゴムやプラスチックなどの合成樹脂類は、内部損失が高く弾性率が低いため、部材全体を振動させる上に微小振動に反応させにくく、特に高周波数帯域の振動を高感度で伝播させにくい特性となる。
このように、金属類、ゴム、プラスチック類などの均質性素材は、文字通り分子構造が均質であるため、その素材が備える固有振動数、共振周波数などの音響特性が鋭敏に出やすく、その特性がスピーカーの音の「クセ」として捉えられることとなる。以上のことから、本発明においては、ありとあらゆる楽器、音声を原音に忠実に、より自然に出音させるためのスピーカー素材として、非均質性の素材を選定したものである。
しかし、本発明では、均質性素材と非均質性素材を組み合わせて用いることも否定されない。求める音響特性のために、樹脂、金属等の均質性素材を非均質性素材である薄板に貼り合わせた場合であっても、薄板体全体としては非均一性素材なのであり、このような場合も本発明の範囲内である。なお、非均質性素材を薄板として使用した場合には、製品化において、強度、耐久性、品質の高度化、均一化の問題が発生し得るが、これらはいずれも、既に述べた木目を直交させて貼り合わせることや、後述するスタビライザー設置によって、問題なく解決することができる。
<薄板体の厚さについて>
薄板体の厚さについてはその仕様例等を上述したが、さらに説明する。
薄板体としてシート状木質素材を用いる場合の樹種や年輪の方向、突板等を二枚以上用いる場合の貼り合わせ方などにより、薄板体の厚さは主要なパラーメーターとなる。また、求める音質や音響特性などにおいても、薄板体の厚さは主要なパラメーターである。これらを考慮した上で、本発明に係る薄板体の厚さは、0.1mm以上5mm以下とすることが望ましいといえる。より望ましくは0.3mm以上1mm以下、さらに望ましくは、0.5mm以上0.8mm以下である。
0.1mm以上5mm以下とすることが望ましいとする根拠は、この範囲が、突板の最薄レベルから、紙(ボイド管)、木材など突板以外の素材とした場合において本発明が狙う薄板体の効果を望ましく得られる範囲だからである。たとえば中型ユニットとボイド管を利用した場合、5mm厚という相当の厚さであっても本発明の効果を得ることができる。なお、もちろん3mm厚であってもよい。
また、0.3mm以上1mm以下とすることがより望ましいとする根拠は、薄板体に突板を用いることとした場合、小型ユニットを用いる仕様では突板1枚での構成、大型化した仕様では突板3枚での構成とすることが望ましいからである。
また、0.5mm以上0.8mm以下とすることがさらに望ましいとするのは、本発明実施例における0.6mm厚さを基準として、樹種等による、さらに望ましい範囲の可能性を考慮したものである。
<仮想グラウンド>
図6は、仮想グラウンド部を備えた本発明筒状スピーカー構造の構成例を示す側断面図である。図示するように本構成例では、図1等で示した構成に加えて、薄板体25の振動効率を高めるための仮想グラウンド部2VGを備えていることを、特徴的な構成とする。仮想グラウンド部2VGは、図示するように仮想グラウンド化手段29を設けることによって形成することができる。仮想グラウンド化手段29としては、質量によってより大きな慣性を得、かつ硬度によってより大きな変形防止効果を得られる素材による物を、好適に用いることができる。たとえば、鉄等の金属を用いた板材等であり、またバスレフ構造26の重量も仮想グラウンド部2VGを構成する要素である。図では、バスレフ穴6H周囲に設置するドーナツ状体を用いた例を示すが、もちろんこれには限定されない。しかしバスレフ構造26を設ける場合には、図示するようにこれに仮想グラウンド化手段29を設けることが望ましい。なお、後掲図では仮想グラウンド化手段として鉄ウェイトを用いた例を示しているものがある。
かかる構成により、仮想グラウンド化手段29の上面から本筒状スピーカー構造210接地面GNDまでの間を仮想グラウンド2VGとすることができる。すなわち、仮想グラウンド2VGとしての固定化によって、この範囲は質量による慣性上の振動防止、硬度による変形防止が実現されるため、薄板体25によるエンクロージャー21は自身が受けた振動を仮想グラウンド2VGから先方へは伝播できなくなり、どうしても自身が振動せざるを得なくなる。これによって、シート(エンクロージャー)21の振動効率、音色が高まる。仮想グラウンド2VGはいわば、シート(エンクロージャー)21の振動効率をより高めるための「半絶縁」構造を形成するものである。
<反射部>
図7は、反射部を備えた本発明筒状スピーカー構造の構成例を示す側断面図である。また図8は、図7に示す構成例における作用を示す側断面視の説明図である。これらに示すように本発明筒状スピーカー構造310は、エンクロージャー31内に、スピーカーユニット34からの音波を反射するための反射部3Rが設けられていることを、特徴的な構成とする。なお図では、塔状の反射器(以下、「リフレクター」ともいう)3R1と傘状のノーズ部(以下、「反射器2」ともいう)3R2とからなる反射部3Rの例を示すが、本発明はこれに限定されない。ノーズ部3R2を設けない構成とすることもでき、また反射器3R1、ノーズ部3R2とも別な形状とすることもできる。
反射器3R1は、エンクロージャー31内における定在波(定常波)を反射によりシートを通じて反射させ、内部音の透過効率を高める作用を行う。一方ノーズ部3R2は、バスレフ36を設けた場合に、バスレフポートに中・高音が入り込むことを防止する作用を行う。反射部3Rの素材としては、音の反射率の高い素材であれば適宜に用いることができる。たとえば木材の場合はハードメイプル、金属の場合はアルミニウムを好適に用いることができる。また、HDF(高圧縮木繊維板、High Density Fiberboard)にそれらの素材を貼って形成することとしてもよい。また、反射部3Rの反射率を低める、エンクロージャー31の内部音の反響音を減少させるなどの場合は、MDF(中圧縮木繊維板、Middle Density Fiberboard)を使用することにより、反射率、内部音の制御を行うことができる。
本発明筒状スピーカー構造の発音原理は、次の3つである。
(1)エンクロージャー内部音の反射・透過 → 音の透過(下記図面)
(2)スピーカー振動板による内部圧力の変化 → シート振動→音の透過
(3)サウンドブリッジ機構によるシートの振動 → 音の透過
このうち、(1)について図8を用いて説明を加える。
スピーカー振動 → 内部の空気疎密波 → 音
により発生した音は、図中に表記するように、エンクロージャー31(シート)を介して外部に透過される。
<1> 直接透過(図中、3Rs1):内部音 → シート振動 → 音の透過(外部空気疎密波
<2> 反射透過(図中、3Rs2):内部音 → 反射器 → シート振動 → 音の透過(外部空気疎密波)
<3> 反射透過2(内部乱反射の防止 図中、3Rs3):内部反射音 → 反射器 → シート振動 → 音の透過(外部空気疎密波)
反射器がなければ、シートといえども乱反射は起きる。乱反射は過度なエコーを生じ、逐次発生する音の純粋性を阻害する。したがって、より高精細な再現性を得るためには反射部3Rを設けることが望ましい。
なお上記説明の通り、図7、8ではバスレフポート設置を想定した構成例を示すが、これは設けなくてもよい。バスレフポートの設置の有無に関わらず、反射部3Rによる反射、透過機能は変わらない。また、仮想グラウンド化手段39による仮想グラウンド化により、反射器3R1以下の部材とシートは、同一のスピーカー装置としての構造を構成、維持しつつ、「シートの構造」によってシートの振動を最大化し、発音するための「半絶縁」構造となる。
また、バッフル板38は、振動を伝える要素としての「サウンドブリッジ」の一つということができる。通常、サウンドブリッジという用語は、主に建築物の防音で使用され、稀に楽器でも使用される。しかし、この概念をスピーカーで使用している前例は認められない。サウンドブリッジについては、追って詳細に説明する。
図9は、本発明筒状スピーカー構造における反射部の設計例を示す一部側断面視の説明図である。反射部の基本機能は図7等で説明した通りだが、反射部4Rを設計してその性質を決定し、それによって音色をコントロールするものとすることができる。具体的には、高音―中音―低音バランス、サスティーン、バスレフ効果、バスレフ位相(スピーカー前面、薄板体から出る音の位相とバスレフの位相のコントロール(遅らせるか否か、遅らせる程度))などを、反射部4Rの設計によってコントロールすることができる。
図中に示した各パラメーターについて説明する。
P1:リフレクター4R1の構造基材の材質
MDF(中密度繊維板、medium density fiberboard)、HDF、木材(種類)、金属、樹脂など。材質により音色をコントロールできる。
P2:リフレクター4R1の表面材の材質
MDF、HDF、木材(種類)、金属、樹脂など。材質により音色をコントロールできる。ただし、P2は設けない場合もある。
P3:リフレクターの形状
これについては、後掲図10により説明する。
G1:リフレクター本体とノーズ部のギャップ
バスレフ46の機能の度合い(バスレフによる低音発生)と、薄板体への振動エネルギー伝達の度合いを調整することができる。G1により外部への音圧の逃げを調整することができる。
G2:ノーズ部の径
G1とともに、スピーカーユニットからの音の回析を防ぐことができる。G2が大きければユニットからの音は回析しにくくなり、その分バスレフポート46Pに逃げる音が少なくなり、薄板体を通じて音をより透過させることができる。
G3:反射器の最小径部の径
G2に比べてG3が小さいほど、バスレフポート46Pへの音の逃げが少なくなり、エンクロージャー41内部空気の流動性が低下する。すなわち、薄板体から音をより多く透過、発音させることができる。
G4:ノーズ部の頂角の角度
スピーカーユニット背面からの音を左右方向、下部方向に振り分けるため、その度合いを、G4およびノーズ部の大きさによってコントロールすることができる。
なお、ノーズ部4R2の設置は必須ではない。解放的な音を求める場合や、バスレフポート46Pから中音、高音を積極的に出す目的の場合には、ノーズ部4R2を設置しない方がよい。また、図中にはフローティングマウントの構成も示しているが(固定部4S、緩衝材4Fなど)、フローティングマウントについては、追って図11により改めて説明する。
<反射器の形成例>
図10は、本発明筒状スピーカー構造における反射器の形状例を示す側断面視の説明図であり、音の入射角に応じた反射をコントロールするバリエーション例である。左から順に、(a)強反射型、(b)弱反射型、(c)バランス型である。
(a)強反射型
反射器と薄板体の距離の短い部位(凸状部位)を一箇所以上設け、二段型または多段型の形態とすることにより、中高音域、低音域の分離性を高めつつ、それぞれの透過性を高めることができる。メリハリのある、エネルギッシュな音を発音できる。
(b)弱反射型
反射器を細身(スリム)にしてエンクロージャー内部空間を広く取れる形態とすることにより、スピーカーユニット背面音のエンクロージャー内音圧を緩やかにする。また、反射器による内部音の反射を弱める。これらにより、録音時のルームトーンを再現するような繊細な音、刺激の少ない心地よい音を発音することができる。
(c)バランス型
強反射型、弱反射型の中間的な形態であり、クセのないハイファイを得ることができる。信号に忠実な音の再生の際、有効である。
<フローティングマウント方式>
図11は、反射部をフローティングマウントとした本発明筒状スピーカー構造の構成例を示す一部側断面視の説明図である。図示するように本筒状スピーカー構造510は、反射部5Rがフローティングマウント方式で固定されていて、他の構成要素から独立していることを、特徴的な構成とする。図の例では、固定手段5Sを用いて反射器5R1を底板50に固定するに際し、反射器底板5R10と底板50の間にソフト緩衝材(層)等の緩衝手段5Fを介在させ、かつ、固定手段5Sと各固定先との間にも緩衝材等の緩衝手段5Eを介在させることによって、反射部5Rのフローティングマウント化を実現している。また、固定手段5Sと緩衝手段5F等の間の隙間は、シリコン樹脂等で埋める構成としている。
なお、図の例では、反射器底板5R10の上に鉄ウェイト等の仮想グラウンド化手段59を接着固定しており、固定手段5Sはそれを貫いて固定されている。固定手段5Sとしてはボルト等、緩衝手段5E、5Fとしては合成ゴム等を好適に用いることができるが、それには限定されない。また、図示するものはフローティングマウント方式の一例であり、本発明はかかる構成には限定されない。
反射器5R1は、スピーカーユニット54の背面から発する音のエンクロージャー51内部における音の乱反射を防止するとともに、エンクロージャー51内部の音を反射し、薄板体を透過させる機能を有するが、反射器5R1が底板50の振動を受けると、エンクロージャー51内部音と反射器5R1自体の振動が相互に影響し合い、エンクロージャー51内部、ならびに薄板体を透過する音が濁るという悪影響を及ぼす。しかし、フローティングマウント方式より固定することによって、反射器5R1はスピーカーユニット54ならびに他の筐体構成部品の振動の影響を受けにくくなる。すなわち、フローティングマウント化することによって、内部音の反射、透過、発音および内部反響の減少という反射部5Rの各機能を高めることができる。
<サウンドブリッジ>
本筒状スピーカー構造510は、スピーカーユニット54からの振動をエンクロージャー51に伝える振動伝播手段(サウンドブリッジ)が設けられた構成とすることができる。スピーカーユニット54を囲繞するバッフル板58をサウンドブリッジとしても機能させることができる。スピーカーユニット54と一体化しているバッフル板58はまた、エンクロージャー51とも接着等によって一体化しているため、結局エンクロージャー51は、バッフル板58というサウンドブリッジを介してスピーカーユニット54と一体化していることになる。したがって、薄板体であるエンクロージャー51は積極的に振動せしめられ、音がエンクロージャー51外部に良好に放射される。特に、中音、高音をエンクロージャー51に良好に伝えることができ、またバッフル板58自身、スピーカーユニットの重力により、ダイナミックに振動を伝えることができる。
また、サウンドブリッジ(バッフル板58)を通じて一体化されたエンクロージャー51に伝わったスピーカーユニット54からの振動は、エンクロージャー51の振動の反力を底板50、スパイク57から反射される。薄板体を用いたエンクロージャー51により、底板50以下は振動として半絶縁状態となるからである。これにより、エンクロージャー51の振動は増加されるとともに、エンクロージャー51外部への発音が明確化する。なお、本図では仮想グラウンド化手段59(鉄ウェイト)により仮想グラウンド部5VGが形成されていることも相まって半絶縁構造は一層確固たるものとなっており、エンクロージャー51の振動は最大限強められる構成である。
図12は、本発明筒状スピーカー構造におけるサウンドブリッジ構成例を示す一部側断面視の説明図である。また図13は、図12の構成例に示す各サウンドブリッジの構成を示す説明図であり、バッフル板内面側から視た図である。これらに示すように本筒状スピーカー構造610は、サウンドブリッジとしてスピーカーユニットを囲繞するバッフル板68の他に、一または複数の付加サウンドブリッジを設けるものとすることができる。付加サウンドブリッジは、サウンドブリッジはスピーカーユニットに直接、あるいはスピーカーユニット固定用ボルトなどを介し間接的に接することにより、スピーカーユニットの振動を受け、エンクロージャー61に伝える。 図では、付加サウンドブリッジとして傘状体6B2、および棒状体6B3の例を示している。これらの例ついて説明する。
(1)傘状体
スピーカーユニット64上からエンクロージャー61の全周に接するように、傘状体6B2を設ける。傘状体6B2は、たとえばアルミニウム製、銅製、鋼板製とすることができるが、その限りではない。また、形状その他の仕様も本例に限定されない。傘状体6B2は、バッフル板68のサウンドブリッジ機能を補助し、中音、高音をエンクロージャー61に伝える作用をし、特に、繊細な中音、高音を伝えることができる。また本構成によれば、エンクロージャー61の内周全てに接することから、均等に振動を伝えることができる。
(2)棒状体
傘状体に替えて、棒状体6B3を補助的サウンドブリッジ機能として設けることができる。本例では、スピーカーユニット64のスピーカーマグネット64M背面に、中心から放射状に伸長する8本の棒状体6B3からなる構成である。各棒状体6B3はエンクロージャー61に接するように設けられる。棒状体6B3は、たとえばステンレス鋼とすることができるが、その限りではない。また、形状その他の仕様も本例に限定されない。棒状体6B3は、バッフル板68のサウンドブリッジ機能を補助し、スピーカーユニット振動源に近いことから特に高い振動エネルギーを得られるため、低音、中音、高音に亘ってエンクロージャー61に伝える作用を高めることができる。
ところで、図において、6BV:各サウンドブリッジから筒に振動を伝える部分、6BVl:6BVから筒下端まで亘る領域である。サウンドブリッジによる振動は、媒質である薄板体を伝播する距離によって減衰する。6BVではスピーカーユニットの振動に近い振動で筒が振動するが、6BVl下端に進むに従い、高音部から減衰する。この減衰には二種類あり、一つは拡散(発音)による減衰、もう一つ薄板体の吸収による減衰(熱変換)であるが、高音が6BVl上部で減衰するということは、薄板体から混濁、変性の少ない音が出ていることが推測できる。
なお、図12および後掲図14に例示するように、付加的なサウンドブリッジは複数種類のものを、併せて複数個設ける構成であってもよい。図12等では、傘状体6B2と棒状体6B3が併用されている例を示している。また、図12に示した構成例における仮想グラウンド化手段69は、図11に示したそれとは設置位置が異なっている。仮想グラウンド化手段も、仮想グラウンド機能、サウンドブリッジ機能、製造方法などを勘案し、適宜に設計するものとすることができる。
<スタビライザー>
図14は、スタビライザーを備えた本発明筒状スピーカー構造の構成例を示す一部側断面視の説明図である。図示するように本筒状スピーカー構造710は、薄板体(エンクロージャー71)を分割振動させるために一または複数のスタビライザー7Z1等が設けられていることを、特徴的な構成とする。図では、二つのテープ状スタビライザー7Z1、7Z2が薄板体に貼着して設けられている例を示すが、スタビライザーの形状・仕様・設置個数は限定されない。もっとも、薄板体に貼着するという簡便な方法で設置することのできるテープ状の形態は、本発明用のスタビライザーとして好適な例である。
スタビライザーは振動をコントロールし、音質を調整するが、具体的には下記の各作用がある。
(1)分割振動
スタビライザー7Z1等を設置することによって、エンクロージャー71が分割振動しやすい構造となるため、エンクロージャー71(薄板体)のスピーカーユニット74側において高音、反対側において低音がそれぞれ発音しやすくなる。なお、図示するように二つのスタビライザー7Z1、7Z2によりエンクロージャー71を三領域に分割する場合は、中央部からは中音が発音しやすくなる。分割振動しやすい構造は、音声信号による振動の分解能を高めることができる。つまり、振動として残りやすい低音を、中音、高音に影響させないため、すっきりした中音、高音を出すことができる。
(2)制振
エンクロージャー71が過度な振動をすること、振動し続けること、特定の周波数に共振することを抑えることができる。これにより、スピーカーユニット74からの振動の変化にリニアに追従することができる。
(3)内圧に対する応力の補完
エンクロージャー71は、スピーカーの背面からの音圧(内圧)により膨張し、応力(ひずみ)が発生する。この応力(ひずみ)が音となるが、入力信号に対して過度な応力は原音の忠実な再生の妨げとなる。スタビライザー7Z1等を設置することによって、微弱な信号にたいしてのセンシティビティを確保しつつ、適度に応力の高い振動体とすることができる。
なお、高・中・低音域の発音領域について、さらに説明する。
高音は、各サウンドブリッジおよびスピーカー背面の音によりエンクロージャー71が振動し、音となる。高音および高音振動は低音振動と比較して減衰率が高く、直進性が高いため、エンクロージャー71上部で音として放射することが望ましい。一方、低音はスピーカーコーンによる空気の圧力波が主であるため、主にエンクロージャー内面の空気を通じ、底部まで到達するが、その圧力波は反射器7R1により行き場を失い、エンクロージャー71底部までを振動させることにより減衰する。
この圧力波による振動を底部で減衰し尽くさせて、エンクロージャー71上部に低音を伝えないようにするため、スタビライザー7Z1を設置する。また、低音の圧力波は動的エネルギーが高いため、高音量時、あるいは低音が豊かな音源を再生する場合でもタイトな低音として再生させるように、スタビライザー7Z1、7Z2は機能する。
スタビライザーを設けることによる効果、利点は次の通りである。
(1)輪郭がはっきりした低音を発音することができる。
(2)中高音のクリアさが向上する。
(3)スピーカーシステム全体としての音の発生パワーが向上する。つまり、エンクロージャーの内部圧力に対する応力が上がることにより、スタビライザー設置箇所以外の部分のひずみの増加、およびバスレフポートへの圧力が高まり、バスレフ機構の働きが高まる。
(4)耐高入力性が向上する。つまり、アンプのボリュームを上げても音が破綻しにくくなる。
(5)エンクロージャーの強度、耐久性が向上する。
スタビライザーの具体的な形態は限定されず、たとえば非可撓性の円環部材を用いることでもよい。しかしながら、薄板体に貼着するという簡便な方法で設置することのできるテープ状の形態は、本発明用のスタビライザーとして好適な例である。また、スタビライザーの材質としては、軽量かつ引っ張り強度が大きいものであれば適宜のものを用いることができる。軽量であることは、スタビライザー自体も振動するため、スタビライザーによって薄板体が振動することを過度に妨げないために要求される。また引っ張り強度が大きいことは、半径方向応力および周方向応力を補完できる強度を得る上で望ましい。
具体的には、たとえば竹や木の薄板、その他木質素材の薄板、アルミ薄板、炭素繊維などを材料として好適に用いることができる。木の薄板の場合、柾目をより好適に用いることができ、これはスタビライザー長手方向に縦の木目となるように用いれば、十分な強度も得られる。具体例を下記に記す。
テープ状スタビライザーの仕様と設置方法
・厚さ:木質の場合、0.3mm程度(材質によっては、さらに薄くても可)
・幅:10mm程度(材質によっては、さらに細くても可)
設置方法
・スタビライザーをエンクロージャーの内周に木工ボンドを用いて貼り付ける(1周+のりしろ分)。
なお、スタビライザーを横ではなく縦方向に設置したり、枚数、設置間隔、材質などのパラメーターにより、音質を自在に変化させることができる。
以上説明したいずれか載の筒状スピーカー構造を備えたスピーカー装置も、本発明の範囲内である。また、かかるスピーカー装置を含むオーディオシステム、かかるスピーカー装置を製造する場合にエンクロージャーに一または複数のスタビライザーを貼着して行うスピーカー装置製造方法、さらにエンクロージャーに一または複数のスタビライザーを貼着するスピーカー装置改造方法もまた、本発明の範囲内である。
<スピーカーの向き>
各図に示したように本発明では、上向きにスピーカーユニットが設置されているため、慣性と重力により初動の振動(最初の振幅)こそ上には動きにくいが、2度目の振幅以降はスピーカーの構造(ダンパー、エッジによる制動力)の影響を受けにくい。そして、信号終了後は、制動力と重力により、慣性を打ち消しやすい。これにより、下記のような効果を得ることができる。
(1)アタックが強くなる
(2)サスティーンが安定的になる。
(3)小音量時でも、音の微細な表現が可能となる。
(4)消音が瞬時にできる。
<補足_筒状スピーカー構造等発明完成までの道のり>
以下、改めて本発明の根本思想の確認を踏まえ、発明を完成するに至った過程について、補足的に説明する。
(1)本発明筒状スピーカー構造の根本思想
従来のスピーカーでは、不要振動を極力抑えるために、エンクロージャー、バッフル板に強固な資材を利用し、エンクロージャー自体の振動を防止しようとしてきた。また、スピーカーユニット裏面から出る音によるエンクロージャー内部音の混濁、共振が、信号によるコーンの振動に影響を与えることを防止することの必要性から、消音材による対策を採ってきた。一方本発明は、スピーカーユニットはもとより、エンクロージャーをも発音体とするものとした。スピーカーユニットから発生するすべての振動、波などのエネルギーを不要振動とは捉えず、できる限り音に変換しようとするものである。これは、従来の考え方とは相容れないものであり、それであってなおかつ、従来型のスピーカーでは出音できない音響特性を実現できたものである。
(2)物理法則に基づく本発明原理の構築
(2)−1 慣性の法則
動きやすく、止まりやすいものは、スピーカーの振動体として最適である。動きやすさは振動体の比重の軽さ、振動伝達速度であり、止まりやすさは柔軟性(損失特性)、振動エネルギーから音への変換率である。これら、相反する特性を併せ持つ素材としては木材、特にスプルースが優れている。また、木材の種類、サイズ、厚さ、接合方法の違いにより、出力される音質をコントロールできると考えられる。
また、スピーカーユニットを設置した場合、慣性と重力の影響により初動振動(最初の振幅)こそ上には動きにくくなる。しかし、2度目の振幅以降はスピーカーの構造(ダンパー、エッジによる制動力)の影響を受けにくくなり、信号終了後は制動力と重力により慣性を打ち消しやすくなる。これにより、小音量時の場合であっても、音の立ち上がり(アタック)、減衰(ディケイ)、持続(サスティーン)、消音(リリース)まで、音の微細な表現等に効果が得られるものと考えられる。
(2)−2 運動方程式
ある物体に外力Fが加わると、力の方向に加えた力に比例し、物体の質量mに反比例した加速度aが生じる。すなわち、下式の通りである。
外力F=質量m×加速度a
ここで、外力F:ボイスコイルへの電流によって生じる電磁気力、質量m=スピーカー揺動部分(ボイスコイル、コーン紙)の質量、加速度a=コーンの動きの加速度である。したがって、コーンは軽いと速く、重いと遅く運動する。また、外力Fすなわち信号のインパクトや電流が大きければ、コーンの加速度aはそれに比例して大きくなり、スピーカーユニットの振動も比例して大きくなる。この運動方程式は、本発明の振動体を薄板で構成すること、傘状サウンドブリッジの形態を考案することなどに応用した。
(2)−3 作用と反作用
発生した振動はスピーカーの筒に伝わり、底板で反力となり押し返す。底部が基盤としてしっかりしていると、筒部分が振動せざるを得なくなる。そのため、底部以下の材質、重さによっても、音質は変わることになる。材質が柔らかければ作用、反作用ともに力が逃げるため、最も柔らかい部分に力が吸収される。また、下向きの加速度には重力も加わるため、筒への下向きの作用はより強まると考えられる。
(2)−4 エネルギー保存の法則
独立した体系の内部においては、どんな物理的あるいは化学的な変化があっても、全体としてのエネルギーは不変である。スピーカー装置においては、スピーカーユニットに入力した電気は磁気エネルギーとなり、磁気エネルギーはボイスコイルによりコーンを振動させる振動エネルギーとなる。
この振動エネルギーは、
<1> コーンの振動(表裏)→ 空気振動(表裏)
<2> 裏の空気振動 → 筒の振動 → 筒の発音(一部はバスレフポートから空気振動へ)
<3> コーンの振動の反力 → バッフル板の振動 → 筒の振動 → 筒の発音
というように伝えられる。
(2)−5 質量法則、透過損失について
エンクロージャー内部音が薄板を透過して外部に発音する場合、透過損失が生じる。これを質量法則といい、透過損失は材料の質量(面密度)(kg/m)と周波数の積に比例する。すなわち、質量が大きいほど透過損失も大きくなる。従来のスピーカーが重厚な木材を用いて、エンクロージャー内部音を遮断しているのは、この法則による。本発明は、いかに透過損失が低い材質を用いてエンクロージャーを構成し、エンクロージャー内部音を透過させるか、を考えた。また、サウンドブリッジからの振動の伝播、ならびに発音において、特性のすぐれた材質という、音質的にはこれら二つの要素を満足させるものとして、薄板体を考案、設計した。
このように、本発明の構想段階、仮説構築、試作、評価、課題解決などの原理構築、実証には、これらの物理法則を応用した。
(3)優れたスピーカーの条件
楽器は、種類ごと、さらに個体ごとに音が異なる。したがって、一つの楽器の音を忠実に再生するためには、その楽器専用のスピーカーが設計されることが理想である。しかし、一つの楽器であっても、大会場でのライブの再現のように、演奏シチュエーションによる空気感、反響、観客の声などの環境までを再生するとなると、さらに条件が異なる。また、マイクの位置、種類、メーカー、エンジニアリング、録音機材によっても、音源の音質は変化する。ボーカルであっても、シャウトする声、ささやくような声、響く声、奇数倍音のある声、男声・女声の相違などの条件がある。
これらに鑑みると、優れたスピーカー、理想のスピーカーの条件とは、
<1> オーディオ再生の最終段として、ありとあらゆる音源を最適な再生の対象とすることができ、
<2> プレイヤーや楽器の実在感、演奏する音場の形成、プレイヤーの心情の再現に優れ、
<3> 長時間のリスニングにも心地よく、
<4> 大音量から極小音量再生でもバランスを崩さず、
<5> コンパクトかつコスト的にもメリットがあり、
<6> 愛着を持って所有することができ、
<7> 音と音楽を知り尽くした者によって製作された、
<8> 音楽による楽しみ、感動をユーザー個々人が最大化できるスピーカー
であるといえる。
(4)不要振動の活用
上述の通り従来、不要振動は、信号に忠実に音を再生するためにはネガティブなものとして考えられていた。不要振動には、次の2つがある。スピーカー内部に発生する音と、スピーカーユニットの振動がエンクロージャーに伝播する振動である。内部損失とは、スピーカーエンクロージャー内部における音の消えやすさであり、これが高いことはエンクロージャー内部での反響音が少ないということになる。従来は、厚く重い木材を使用し、不要振動を外部に漏らさず、さらにエンクロージャー内部での不要振動となる反響音を吸音材で損失させるという方法を取ってきた。
これにより、原理的には信号に忠実な音がスピーカー正面から発音されるはずであった。しかし、吸音材を入れすぎると音の「響き」が失われ、素っ気のない音となるという現象があった。そのため、メーカー、ユーザーともに、吸音材の量、質、設置場所を変えることで、チューニングが試みられてきた(バスレフの自作においては、「響き」を生かすために、吸音材を入れない方針をとるユーザーさえ存在する)。また、上述の通り、エンクロージャーに使用する木材の質も、スピーカーの音質に影響を与えることが知られている。
これらのことを総合すると、スピーカーにおいては、エンクロージャー自体の振動も音質に影響を与えていることが推測された。そうであれば、不要振動とされてきたエンクロージャー内部の音、スピーカーユニットの振動を積極的に音にすることによって、限りなくロスのないスピーカーを構成することができると考えられた。つまり、スピーカーの内部損失は、吸音材によって熱エネルギーに変換させ消音させるのではなく、内部振動を積極的に筒に伝え、音に変えるというエネルギー変換を行えばよいと考えた。
また、不要振動についての解決策は従来、バッフル板およびエンクロージャーの板を厚く、重くすることが主流であった。しかし、スピーカーユニットの振動エネルギーは相当に強いものであり、物量的、物質的に抑え込むことは容易ではなく、少なからず振動してしまう。そうであれば、ユニットの振動をエンクロージャーの全部または一部に伝えてこれを振動させ、積極的に発音させればよいことに思い至った。すなわち、ネガティブなものとして捉えられていたこれら2つの振動要素を利用し、音として開放することが、本スピーカーの原理的特徴である。
(5)本スピーカーの構成要素とその機能
以上の考察に基づき、スピーカーを構成することとした。その構成要素と機能は、下記の通りである。
<1> スピーカーユニット:主発音体(振動源)
<2> バッフル板:スピーカー取り付け板(振動伝達)
<3> 筒:エンクロージャー主要構成部(副発音体) 薄板による円筒を使用
<4> 底板:エンクロージャー主要構成部(反力基盤(振動源に対するグラウンドとして))
<5> スパイク:スピーカーの支持(反力基盤の支持)
<6> バスレフポート:バスレフポート(バスレフ兼内部反響コントロール)
(6)本スピーカーの音の特徴
試作したスピーカーには、次のような特徴が認められた。
(6)−1 ユニットからの振動が筒に伝わることにより、楽器等の強力なアタックが再現される。
(6)−2 スピーカーユニットだけでは再生できない多様な振動が胴(筒)で発生し、再生される。つまり、ユニットからの各振動に対して、筒のうちの振動しやすいところが振動し(自由振動)、音となる。
(6)−3 エンクロージャーを円筒構造とすることによる各種の特徴
<1> 反射器により適度にコントロールされた内部の残響音が実際の演奏音場のように響く(サスティーン効果)。
<2> 微弱振動にも反応するなどの高い音響効果を持つ薄板体であるが、同時にエンクロージャーとしても機能することが求められ、円筒に成形することによる強度向上効果によって、これらスピーカーユニットで音に変換しきれない微弱な振動を音にできる(センシティビティ)。
<3> 外部に円筒波として音が発散されるため、上部のスピーカー、下部のバスレフとともに立体音像(奥行き、高さ)を再現でき、なおかつ定位が明確になる。すなわち、相対的に出力の高いメインの楽器やボーカルが筒を強力に振動させ、バックの音が緩やかに出音される。円筒波の性質によるものと考えられる。
<4> 円筒波はユニットからの音波振動と比較して面状に拡散し、かつ振動体が木などによるシートであるため、振動の圧力が高く、実際の音場に近い聴感、体感が得られる。これら円筒波の特徴は、「面音源」の「音源表面では距離に関係なく一定の音場となり、距離減衰が生じない」という特性に依拠しているものと考える。同時に、ニアフィールドでのリスニングにおいても耳障りではないことも、この面音源の特性によるものと考える。
<5> 円筒による放射音は再生場全体に広がり、面あるいは点音源である一般のスピーカーと比較して、優れた音場形成能力がある。また、指向性については、音源の振動面面積と波長の関係で決定され、波長に対して振動面の面積が大きいほど、また、波長が短いほど鋭い指向性が得られる。特に、指向性の高い高音が、サウンドブリッジにより円筒により拡大された振動面に伝播し、振動、発音することが、一般の面や点音源スピーカーと違い、自然な音場形成を可能としている。
<6> シートによる円筒波(面からの音の放射)は、音が良く通る。特にピアノ、バイオリン、ギター、ドラム等で強く認められる。
<7> ニアフィールド(スピーカーに近い場所)でも耳触りのよい音場が感じられる。
<8> ボリュームによる音場の崩れ、破綻が起きにくく、音場が維持される。
(7)胴部分の部材、構造
本発明スピーカーの最重要ポイントといえるエンクロージャーの筒(胴)は、次のように検討を重ね、本発明の基礎を完成するに至った。
<1> 竹集成材突板を利用した。
<2> 竹の突板で強度を確保し、その表面にスプルース、米松などのギター・バイオリン製造材料を貼り、厚さ、サイズ(縦横、容量)の変化により、音の特徴を整えることを試験し、良好な結果を得た。
<3> その他の木材の薄板でも、同様の効果、あるいは準じた効果が認められたが、最も音が良いものは、スプルースの縦横2枚貼り合わせによるエンクロージャーであった。
<4> 同種または異種の突板を組み合わせることにより、音質コントロールが可能であることが確認された(立ち上がり、サスティーン、内部共鳴、周波数特性、耐入力)。
<5> 本スピーカーは基本的に正面がない(あらゆる方向が正面)ものではあるが、胴の一部に突板を縦に貼ったり、反射板を取り付けたりすることによって、それが設けられた方向を裏として、正面、裏面の方位を明確にすることもできた。
<6> また、ギターやバイオリンに使用されるブレイシングのように、テープ状の薄い板を筒の内部に設置することにより、音質の修正が可能であることも確認できた。
(8)推測_衝撃波発生の可能性
なぜ、本発明のスピーカーでは、従来になかった程のリアリティのある音が出せるのか。
本スピーカー試作開始時点では、従来レベルの音が得られることを想定していた。しかし、試作完成後実際に音を出すと、想像を超えた音色、生の楽器のような音の立ち上がり、微小信号の再現などが感じられた。この、従来方式のスピーカーとの音の差異の原因について考察すると、その原因の一つとして、衝撃波の発生が考えられる。
音の標準速度は340m/sである。しかし、スプルースの振動伝播速度は5,500m/sであり、音の速さの約16倍の速度である。音源(物体)が音速を超えると、その音源の周囲から衝撃波が発生する。このソニックブーム(衝撃波による大音響)の発生原理を援用すると、「音速を超えた振動を伝達する物体からは、衝撃波が発生する」ことが成り立つのではないか、と考えられる。たとえば、冬場の厚着した聴衆で満席のコンサートホールであっても、たった1台のソリストのバイオリンの響きは会場に響き渡る。これは一般的な「音」という概念では想像しにくい。その音が衝撃波的性質を持ったものであれば、「距離の2乗で減衰する」という放射エネルギー法則に納まらない、減衰しにくい衝撃波に近いものではないかと考える。
本スピーカーは、スピーカーユニットからの振動が、スプルースの振動伝播速度5,500m/sによって下方に伝わる(単純には下方ではあるが、薄くても厚さはあるため、水平方向の振動ベクトルも有する)。衝撃波の発生条件は、「音源(物質)が音速を超える」であるが、ユニットからの振動の音波は、これら水平方向の振動であれば、「音源(物質)が音速を超える」と同義となる可能性がある。(下方に伝わる振動でさえ、振動である以上、水平方向の振動を生む)。
実際に本スピーカーでは、従来方式のスピーカーよりも、距離による音のエネルギー損失が少ないことが実感できる。また、演奏時の家具等の振動は、従来方式に比べ、とても高いことが実感できる。そのため、筒部分からは衝撃波様の空気振動が発生している可能性が高いと考えられる。いずれにせよ、バイオリン、ドラム、その他多くの衝撃波を生み出す条件と同様の構造を有する楽器と、本スピーカーの振動伝播方式が近いため、アタックからサスティーン、減衰、さらには倍音までを、リアリティ高く再現できるものと考えている。
<結語>
本発明の筒状スピーカー構造、スピーカー装置、オーディオシステム、スピーカー装置製造方法、およびスピーカー装置改造方法によれば、微妙なニュアンスを含む微弱信号を良好に再生することができ、高出力型高級機を用いることなく、優れたCD音源等の原音のHi−Fi再生性を得ることができ、安価かつ容易にリアリティの高いオーディオ環境を提供することができる。したがって、オーディオ機器分野および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
0、20、40、50、60、70…底板
1、21、31、41、51、61、71…エンクロージャー
2、22…エンクロージャーの端部(開放端部)
3、23…エンクロージャーの端部(他方)
4、24、34、54、64、74…スピーカーユニット
5、15、25…薄板体
6、26、36、46、56、66、76…バスレフ(バスレフ構造)
6H、26H、36H、46H…バスレフ穴
6P…バスレフポート
7、27、37、47、57、67、77…スパイク
8、28、38、58、68、78…バッフル板
10、210、310、510、610、710…筒状スピーカー構造
15a、15b…突板
29、39、49、59、69、79…仮想グラウンド化手段
2VG、3VG、5VG、6VG、7VG…仮想グラウンド部
3R、4R、5R、6R、7R…反射部
3R1、4R1、5R1、6R1、7R1…反射器
3R2、4R2、5R2、6R2、7R2…ノーズ部(反射器2)
3Rm、4Rm、5Rm、6Rm、7Rm…支柱
3Rs1…内部音の直接透過
3Rs2…内部音の反射透過
3Rs3…内部音の反射透過2
4F、5E、5F、6E、6F、7F…緩衝手段
4S、5S、6S、7S…固定手段
5R10…反射器底板
5T、6T、7T…ターミナル
6B2、7B2…傘状体
6B3…棒状体
6BV…各サウンドブリッジから筒に振動を伝える部分
6BVl…6BVから筒下端まで亘る領域
64F…スピーカーフレーム
64M…スピーカーマグネット
64N…スピーカー取り付けナット
7Z1、7Z2…スタビライザー
GND…グラウンド
Wa、Wb…のりしろ

Claims (11)

  1. 開放端を有する筒状のエンクロージャーと、
    該エンクロージャーと同軸的に開放端側に配置されていて音声信号に基づいて駆動されるスピーカーユニットと
    該スピーカーユニット対向側端部に設けられたバスレフとを備え、
    該バスレフのバスレフ穴により該対向側端部の一部も開放されており、
    該エンクロージャーの側面部は非均質性の薄板体により形成されており、
    該薄板体は二枚のシート状木質素材を用いて形成されており、
    該シート状木質素材には補強用シートが貼着されていて該補強用シートを含めた該薄板体の厚さが0.5mm以上0.8mm以下であり、
    該スピーカーユニットからの振動を前記エンクロージャーに伝える振動伝播手段(以下、「サウンドブリッジ」)として該スピーカーユニットを囲繞するバッフル板、およびアルミニウム製、銅製、鋼板製もしくはステンレス鋼製の付加サウンドブリッジが一または複数設けられており、
    該エンクロージャー内には該スピーカーユニットからの音波を反射する塔状の反射部が該バスレフのバスレフポートに設けられており、
    かかる構成により下記<SE1>〜<SE3>記載の各作用がなされ、
    本筒状スピーカー構造において発生するすべての振動エネルギーが該エンクロージャーに伝えられて該エンクロージャー全体から発音がなされ、音波が該エンクロージャーの側面部を透過して外部に放射されることを特徴とする、筒状スピーカー構造。
    <SE1> 反射を含むエンクロージャー内部音が該薄板体を透過する。
    <SE2> 該スピーカーユニットの振動板による内部圧力の変化に基づき該薄板体が振動し、音が該薄板体を透過する。
    <SE3> 該サウンドブリッジにより該薄板体が振動し、音が該薄板体を透過する。
  2. 前記シート状木質素材としてスプルース、竹またはその双方が用いられることを特徴とする、請求項に記載の筒状スピーカー構造。
  3. 前記薄板体として二枚のスプルース突板が用いられることを特徴とする、請求項に記載の筒状スピーカー構造。
  4. 前記薄板体を構成するスプルース突板はこれに貼着されている補強材も含めて厚さが0.3mm以下であり、したがって該薄板体全体の厚さが0.6mm以下であることを特徴とする、請求項3に記載の筒状スピーカー構造。
  5. 内側に用いるスプルース突板は縦木目、外側に用いるスプルース突板は横木目とすることを特徴とする、請求項3、4のいずれかに記載の筒状スピーカー構造。
  6. 前記補強用シートが和紙であることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載の筒状スピーカー構造。
  7. 前記エンクロージャーは円筒状であることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6のいずれかに記載の筒状スピーカー構造。
  8. 請求項1、2、3、4、5、6、7のいずれかに記載の筒状スピーカー構造を備えたスピーカー装置。
  9. 請求項に記載のスピーカー装置を製造する方法であって、エンクロージャーに一または複数のスタビライザーを貼着することを特徴とする、スピーカー装置製造方法。
  10. 請求項に記載のスピーカー装置を改造する方法であって、エンクロージャーに一または複数のスタビライザーを貼着することを特徴とする、スピーカー装置改造方法。
  11. 請求項に記載のスピーカー装置を含むオーディオシステム。
JP2016250295A 2016-12-25 2016-12-25 筒状スピーカー構造、スピーカー装置、オーディオシステム、スピーカー装置製造方法、およびスピーカー装置改造方法 Active JP6883816B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016250295A JP6883816B2 (ja) 2016-12-25 2016-12-25 筒状スピーカー構造、スピーカー装置、オーディオシステム、スピーカー装置製造方法、およびスピーカー装置改造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016250295A JP6883816B2 (ja) 2016-12-25 2016-12-25 筒状スピーカー構造、スピーカー装置、オーディオシステム、スピーカー装置製造方法、およびスピーカー装置改造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018107540A JP2018107540A (ja) 2018-07-05
JP6883816B2 true JP6883816B2 (ja) 2021-06-09

Family

ID=62788146

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016250295A Active JP6883816B2 (ja) 2016-12-25 2016-12-25 筒状スピーカー構造、スピーカー装置、オーディオシステム、スピーカー装置製造方法、およびスピーカー装置改造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6883816B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TWI734382B (zh) * 2020-02-17 2021-07-21 大陸商東莞寶德電子有限公司 環狀輻射音箱結構

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3200937B2 (ja) * 1992-02-28 2001-08-20 ヤマハ株式会社 スピーカシステム
JPH0623394U (ja) * 1992-08-24 1994-03-25 ヤマハ株式会社 スピーカ
JP2946412B1 (ja) * 1998-03-12 1999-09-06 佐々木 米蔵 スピーカ装置
JP3484143B2 (ja) * 1999-12-02 2004-01-06 株式会社タイムドメイン スピーカ装置
JP2003250189A (ja) * 2002-02-25 2003-09-05 Yoshiaki Okada 音響ダクト装置
JP4870242B1 (ja) * 2011-10-04 2012-02-08 寛 梅田 バスレフ型無指向性スピーカー
JP2015073257A (ja) * 2013-10-02 2015-04-16 有限会社 エントリー 密閉型スピーカ装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018107540A (ja) 2018-07-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9538269B2 (en) Speaker device
US7678988B2 (en) Musical tone apparatus
US8066095B1 (en) Transverse waveguide
US9449596B2 (en) Sound generation system, sound recording system, sound generation method, sound recording method, sound adjusting method, sound adjusting program, sound field adjusting system, speaker stand, furniture, speaker cabinet, and speaker device
US9012758B2 (en) Acoustical transmission line chamber for stringed musical instrument
JP2007047273A (ja) 電子鍵盤楽器
US20150129351A1 (en) Dynamic Acoustic Waveguide
JP2012230406A (ja) 楽音装置並びに楽音装置の生産方法及び改造方法
US20190261087A1 (en) Speaker Cabinet to Effectively Amplify the Full and Natural Sound of an Acoustic Guitar
TW564655B (en) Flat panel sound radiator with enhanced audio performance
JP5122193B2 (ja) 楽音装置並びに楽音装置の生産方法及び改造方法
JP3929808B2 (ja) 放音装置
JP6883816B2 (ja) 筒状スピーカー構造、スピーカー装置、オーディオシステム、スピーカー装置製造方法、およびスピーカー装置改造方法
JP4735662B2 (ja) 電子鍵盤楽器
JP2008310055A (ja) 楽音装置並びに楽音装置の生産方法及び改造方法
JP4057047B2 (ja) スピーカー装置
JP2001078285A (ja) スピーカ装置
JP2012175473A (ja) スピーカ装置
JP2023108840A (ja) ダイヤモンド粒子被覆スピーカー振動板、スピーカー振動板の製法及びスピーカーシステム
JP4468075B2 (ja) スピーカ
JP4210718B2 (ja) 響胴放射型スピーカ
JP2008175866A (ja) 楽音装置及び楽音装置の生産方法
JP4851865B2 (ja) 楽音装置及び楽音制御方法
JP5028135B2 (ja) 楽音装置並びに楽音装置の生産方法及び加工方法
JP4528280B2 (ja) 楽音装置及び楽音制御方法。

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191209

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200713

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200730

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20200914

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201119

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20201120

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210420

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210427

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6883816

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250