JP6878095B2 - 加熱方法及び炭素繊維の製造方法並びに炭素化装置及び炭素繊維の製造装置 - Google Patents

加熱方法及び炭素繊維の製造方法並びに炭素化装置及び炭素繊維の製造装置 Download PDF

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本発明は、マイクロ波を利用する加熱方法等に関する。
炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系繊維、レーヨン系繊維、セルロース系繊維及び、ピッチ系繊維等から製造された前駆体繊維を加熱して製造される。例えば、ポリアクリロニトリル系繊維から製造された前駆体繊維の加熱は、酸素を含む雰囲気中(耐炎化炉内)で加熱する耐炎化工程、耐炎化工程を経た繊維(以下、「耐炎繊維」という。)を不活性雰囲気中(炭素化炉)で加熱する炭素化工程を経て行われる。なお、上記加熱は、繊維が、耐炎化炉及び炭素化炉を通過(走行)することで行われる。また、ここでの繊維は、フィラメントが複数本集まった束状をしている。
前駆体繊維を炭素化するための加熱として、従来の電気ヒータ以外に、マイクロ波を利用した方法が提案されている(例えば特許文献1、2)。特許文献2に記載の方法は、一対の短側壁と一対の長側壁とを有する断面方形状の加熱管内を伝播するTEモードのマイクロ波により、前記加熱管内を走行する被加熱物を加熱し、前記被加熱物は、前記一対の短側壁を横切るように、供給されている。
なお、特許文献2の加熱は、被加熱物に対して電界が垂直となることで加熱される、所謂電界加熱である。
特許6063045号 特開2016−195021号
しかしながら、特許文献2の技術は、被加熱物が一対の短側壁を横切るため、被加熱物の加熱長が短くなる。このため、付与するエネルギを確保するために、被加熱物の走行速度を遅くしたり、加熱管を大きくして短側壁を長くしたりする必要があり、生産機への適用が困難である。
また、特許文献1の第80段落に記載のように、前駆体繊維を加熱する場合、蓄熱により反応が進んで前駆体繊維が切断するため、被加熱物に付与するエネルギ(電界)を走行途中で調整できる方が好ましいが、特許文献2の方法ではエネルギの調整が困難である。
なお、これらの課題は、糸状導電材料以外に、フィルム状材料や搬送手段により導波管内を搬送される被加熱物にも生じ得る課題である。
本発明は、上記した課題に鑑み、被加熱物の加熱を長くでき、走行途中で付与するマイクロ波のエネルギ強度の調整が可能な加熱方法や炭素繊維の製造方法等を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る加熱方法は、一対の短側壁と一対の長側壁とを有する断面方形状の加熱管内を伝播するTEモードのマイクロ波の電界により、前記加熱管内を当該加熱管の管軸に沿って走行する被加熱物を加熱する加熱方法において、マイクロ波の電界の強さは、前記被加熱物の走行方向に沿って、前記加熱管の断面における内部面積を変化させることで、調整されている。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る加熱方法は、一対の短側壁と一対の長側壁とを有する断面方形状の加熱管内を伝播するTEモードのマイクロ波の電界により、前記加熱管内を当該加熱管の管軸に沿って走行する被加熱物を加熱する加熱方法において、前記加熱管は、マイクロ波発生装置から発生されたマイクロ波を導入させるためのスリットを、前記走行方向に間隔を置いて複数個有し、マイクロ波の電界の強さは、前記スリットにおける前記走行方向の寸法を変化させることで、調整されている。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る炭素繊維の製造方法は、前駆体繊維を加熱して炭素繊維を製造する炭素繊維の製造方法において、前記前駆体を加熱する加熱方法は上記に記載の加熱方法を含む。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る炭素化装置は、断面方形状の加熱管内を当該管軸に沿って走行する前駆体繊維をTEモードのマイクロ波の電界により加熱して炭素化する炭素化装置において、前記前駆体繊維の走行方向に沿って前記マイクロ波の電界の強さを調整する調整手段を備える。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る炭素化装置は、前駆体繊維を加熱して炭素繊維を製造する炭素繊維の製造装置において、前記前駆体を加熱して炭素化する炭素化装置として、上記に記載の炭素化装置を含む。
本発明の一態様に係る加熱方法及び炭素繊維の製造方法並びに炭素化装置及び炭素繊維の製造装置は、加熱管の管軸に沿って走行する被加熱物を加熱するため被加熱物の加熱を長くでき、加熱管の断面における内部面積を変化させたり、スリットにおける前記走行方向の寸法を変化させたりすることで、走行途中で付与するマイクロ波のエネルギ強度の調整が可能となる。
(a)はマイクロ波が伝播する加熱管の断面における電界の強さ分布の概念図を示し、(b)は加熱管を伝播するマイクロ波の様子を示す。 (a)は加熱管における導波管側の長側壁に設けた導入孔を示す図であり、(b)は(a)の導入孔が設けられ加熱管内の電界の強さを示す図である。 マイクロ波の電界強さを調整する加熱管を説明する図であり、(a)は加熱管を伝播するマイクロ波の様子を示す図であり、(b)はマイクロ波の電界の強さの分布を示す図であり、(c)はマイクロ波の電界の強さを示す図である。 (a)は図3の(b)で示すA位置での加熱管の横断面における電界の分布を示す図であり、(b)は図3の(b)で示すB位置での加熱管の横断面における電界の分布を示す図であり、(c)は図3の(b)で示すC位置での加熱管の横断面における電界の分布を示す図である。 炭素繊維の製造工程を示す概略図である。 加熱装置の概略図である。 加熱管内を走行する耐炎繊維の表面の温度変化を示す図である。 (a)は階段状の高さ調整部材を示し、(b)はスロープ状の高さ調整部材を示す。 一対の短側壁の間隔を調整してマイクロ波の電界の強さを調整する例を示す図である。
<概要>
本発明の一態様に係る加熱方法は、一対の短側壁と一対の長側壁とを有する断面形状が方形状をする加熱管を有し、加熱管内を伝播するTEモードのマイクロ波を利用して管内を走行する被加熱物を加熱する。
ここでは、TEモードの例としてTE10について説明するが、他のTEモード、例えばTE20であってもよい。被加熱物は、方形状となる断面と直交する方向(加熱管の管軸方向である。)に走行する。なお、管軸方向は加熱管の管軸が延伸する方向である。
マイクロ波Aは、図1の(a)において紙面と直交する方向に伝播し、図1の(b)に示すように加熱管15の管軸方向にマイクロ波Aが伝播する。図1の(a)において、上下方向に延伸する側壁15a,15bを「短側壁」とし、左右方向に延伸する側壁15c,15dを「長側壁」とする。
被加熱物1bは、図1の(b)に示すように、加熱管15の管軸方向に走行するように、供給される。図1では、被加熱物1bの一例である前駆体繊維を示し、前駆体繊維が一対の長側壁15c,15dと平行に走行する。なお、加熱管15の管軸方向の上流側の端壁15eに被加熱物1bの入口が、下流側の端壁15fに被加熱物1bの出口がそれぞれ設けられている。
生産性を考慮して被加熱物1bが加熱管15に複数供給される場合がある。図1の(a)では2本である。複数の被加熱物1bの加熱斑、加熱効率や電界強度ムラを考慮すると、長側壁15c,15dの中点同士を結ぶ仮想線に対して線対称となる位置を通過するのが好ましい(図1の(a)参照)。なお、供給される被加熱物1bは誘電体であることが好ましい。
加熱管15内のマイクロ波Aは、加熱管15の一端に設けられているマイクロ波発振器から直接導入されてもよいし、マイクロ波発振器が一端に設けられている導波管から加熱管15内に導入されてもよいし、導波管の側壁の孔から洩れたマイクロ波が加熱管15内に導入されてもよい。
導波管から洩れたマイクロ波を利用する場合、導波管(102)は、例えば図6に示すように、加熱管15と併設され、対向する側壁に漏れ用の導入孔(106)を有するように構成される。
被加熱物1bによっては加熱管15の管軸方向でマイクロ波のエネルギ(電界)を調整したほうが好ましい場合がある。たとえば、「発明が解決しようとする課題」で説明したように、前駆体繊維が蓄熱により切断するような場合である。
以下、マイクロ波のエネルギの調整について説明する。
(1)導波管からの漏れたマイクロ波を利用する場合
主に図2を用いて説明する。
断面形状が方形状で、当該断面と直交する方向に長い加熱管15を使用し、導波管から洩れたマイクロ波を内部に導入孔106を介して導入する場合、加熱管15の導入孔106の大きさを変えることで、マイクロ波の電界の強さを調整できる。大きさの異なる導入孔106が、本発明における調整手段の一例に相当する。
例えば、電界の強さを強める場合は導入孔106を大きくすればよいし、電界の強さを弱める場合は導入孔106を小さくすればよい。
導入孔106は加熱管15内のマイクロ波Aの伝播方向に沿って間隔をおいて複数個(偶数個)設けられている。
導入孔106のピッチLは、マイクロ波Aの導波管の管内波長をλgとすると、
L = λg/2× n
の関係を満たす(ここでのnは整数である。)。
なお、導入孔106は1対で設けられる。つまり、導入孔106は、2個を1組として、複数組設けられる。
導入孔106は例えば矩形状のスリットにより構成される。なお、スリットの符号も「106」とする
スリット106における加熱管15の管軸方向と直交する方向の寸法である長さaは、加熱管15内のマイクロ波の空間波長をλとすると、その1/2より大きい寸法で固定される。なお、1/2では遮断周波数となる可能性がある。
スリット106における加熱管15の管軸方向の寸法である幅bは加熱管15内の管内波長λgより小さい寸法であればよい。
図2では、複数個のスリット106の長さaは同じであり、各組のスリット106の幅bは、管軸方向の上流端から途中まで同じ(例えば、スリット106Aである。)であり、それ以降下流側に移るにしたがって徐々に小さくなる(例えば、スリット106B,106Cである。)ように設けられている。これにより、同図の(b)に示すように、マイクロ波の電界の強さは、途中まで略一定であり、途中から下流側に進むにしたがって弱くなっている。
このように、管軸方向に間隔をおいて形成された複数組のスリット106において、各組で幅bを下流側に移るにしたがって小さくすることで、管軸方向を下流側に移るにしたがって電界の強さを弱めることができる。
(2)加熱管内を伝播するマイクロ波を利用する場合
主に図3及び図4を用いて説明する。
ここで説明するマイクロ波Aは、加熱管15の一端に設けられているマイクロ波発振器から直接導入されてもよいし、マイクロ波発振器が一端に設けられている導波管から導入されてもよいし、導波管の側壁の導入孔から洩れたマイクロ波が導入されてもよい。
マイクロ波Aの電界の強さの調整は、被加熱物1bの走行方向に沿って、加熱管15の断面における内部面積を変化させることで行われる。ここでの内部面積の変化は一対の短側壁15a,15bと平行な方向において対向する一対の長側壁15c,15dの間に存在する空間を形成する一対の対向面の間隔の変化により行われる。
例えば高さ調整部材151を一対の長側壁15c,15dのうち少なくとも一方の長側壁15cに配する場合、他方の長側壁15の内面と、高さ調整部材151における他方の長側壁と対向する面とが一対の対向面となり、高さ調整部材151の高さを変化させることで、一対の対向面の間隔を変化させている。
例えば一対の長側壁15の間隔が異なるように加熱管15が構成されている場合、長側壁15c,15dの内面が一対の対向面となる。
なお、間隔が異なる対向面が、本発明における調整手段の一例に相当する。
高さ調整部材151は、被加熱物1bの走行方向において加熱管15の管軸方向において下流側でマイクロ波の電界の強さを2段階で弱めるように、構成されている。
高さ調整部材151は、図3及び図4に示すように、第1の高さH1を有する第1高さ部151aと、第2の高さH2を有する第2高さ部151bとを加熱管15の管軸方向に沿って有している。なお、第1高さ部151aの長さをL1とし、第2高さ部151bの長さをL2とする。また、高さ調整部材151が存在していない長さをL3とする。高さ調整部材151の存在していない部分において、仮に部材があるとすると、その高さH3は0であり、第3高さ部(151c)といえる。
高さ部の各高さについては、
H1 > H2 > H3=0
の関係がある。
ここで、加熱管15内において、図3におけるA位置の電界の強さをE1、B位置の電界の強さをE2、C位置の電界の強さE3とすると、高さ調整部材151を設けることで、加熱管15の横断面における内部の空間面積が変化し、マイクロ波Aの電界の強さも変化する。なお、内部面積が小さくなると電界の強さは高くなる。
したがって、加熱管15の内部のマイクロ波Aの電界の強さは、図3の(c)に示すように、
E1 > E2 >E3
となる。
このように、被加熱物1bを加熱管15の管軸方向に沿って走行させることにより、十分にマイクロ波Aのエネルギを付与できる。また、被加熱物1bを加熱管15の管軸方向に沿って走行させることにより、1つの加熱管15を利用してマイクロ波Aの電界の強さを調整できる。
上記の高さ調整部材151を加熱管15内に設けると、図3の(b)に示すように、電界の強さの分布は、C位置での分布に対して、調整部材151が高くなるにしたがって、ピーク部分が平坦になる傾向がある。つまり、加熱管15の管軸方向に電界の分布が広がる。ピーク部分が平坦となることで、管軸方向に走行中の被加熱物1bに強いエネルギのマイクロ波Aを長時間与えることができる。
また、加熱管15の横断面における電界の分布は、図4に示すように、C位置での分布に対して、高さ調整部材151が高くなるにしたがって、ピーク部分が平坦になる傾向がある。これにより、加熱管15における横断面において幅方向(図中の左右方向である。)に分布が広がり、加熱管15内に挿入する被加熱物1bの本数を増やすことができる。
加熱管15の短側壁15a,15bの内面間の距離である幅をWとし、高さ調整部材151の幅をsとすると、
0.3×W ≦ s ≦ 0.6×W
の関係を満たす。この関係を満たすと、加熱管15内のインピーダンスを大きく変化させることなく、加熱管15内の電界の強さを調整することができる。なお、インピーダンスが大きく変化すると、マイクロ波の波長等が変わり、定在波が生じ難くなったり、高さ調整部材151で反射波が発生しやすくなったりする。
高さ調整部材151の第n高さ部の長さをLnとすると(図3ではn=2である。)、
Ln=(λg/4)×(2k−1)
が好ましい。なお、λgは管内波長であり、kは自然数である。
これにより、マイクロ波Aが高さ調整部材151の立設面で反射する反射波の影響を相殺することができる。
また、高さ調整部材151の高さが低くなる方向、すなわち、一対の対向面の間隔が大きくなる方向は、マイクロ波Aの進行方向と反対方向が好ましい。これにより反射波の影響を少なくするためである。なお、図3においてマイクロ波Aの進行波は加熱管15の下流側から上流側に向かい、図3中の矢印は被加熱物1bの走行方向を示している。
<実施形態>
1.全体
以下、マイクロ波加熱を利用した炭素繊維の製造方法について図5を用いて説明する。
炭素繊維は、前駆体繊維であるプリカーサを用いて製造される。1本のプリカーサは、複数本、例えば、24,000本のフィラメントが束になったものである。場合によっては、前駆体繊維束や炭素繊維束ということもある。
プリカーサ1aは、アクリロニトリルを90質量%以上含有する単量体を重合した紡糸溶液を湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法において紡糸した後、水洗・乾燥・延伸して得られる。なお、共重合する単量体としては、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸、アクリルアミド、イタコン酸、マレイン酸等が利用される。
通常、プリカーサ1aを製造する速さと、プリカーサ1aを炭素化して炭素繊維を製造する速さが異なる。このため、製造されたプリカーサ1aは、一旦、カートンに収容されたり、ボビンに巻き取られたりする。
炭素繊維は、図5に示すように、例えばボビン30から引き出され、下流側に向かって走行し、その途中で、各種の処理がなされて、ボビン39に巻き取られる。
炭素繊維は、図3に示すように、プリカーサ1aを耐炎化する耐炎化工程と、耐炎化された繊維(以下、「耐炎繊維」といいい、本発明の「前駆体繊維」の一例に相当する。)1bを延伸させながら炭素化する炭素化工程と、炭素化された繊維(以下、「炭素化後の繊維」ともいう。)1dの表面を改善する表面処理工程と、表面が改善された繊維1eに樹脂を付着させるサイジング工程と、樹脂が付着した繊維1fを乾燥させる乾燥工程とを経て製造される。
乾燥された繊維1gは、炭素繊維1gとしてボビン39に巻き取られる。なお、各工程を終えた繊維を、例えば耐炎繊維1bのように、区別しているが、単に「繊維」として説明する際の符号は、「1」を用いる。
ここで、プリカーサ1aを耐炎化する処理を耐炎化処理、耐炎繊維1bを炭素化する処理を炭素化処理、炭素化後の繊維1dの表面を改善する処理を表面処理、表面が改善された繊維1eに樹脂を付着させる処理をサイジング処理、樹脂が付着した繊維1fを乾燥させる処理を乾燥処理とそれぞれいう。以下、処理、工程について説明する。
(1)耐炎化工程(耐炎化処理)
耐炎化工程は、炉内が200[℃]〜350[℃]の酸化性雰囲気に設定された耐炎化炉3を利用して行う。具体的には、耐炎化は、空気雰囲気中の耐炎化炉3内をプリカーサ1aが複数回通過することで行われる。なお、酸化性雰囲気は、酸素、二酸化窒素等を含んでいてもよい。
耐炎化工程中のプリカーサ1aは、製造する炭素繊維に合わせて所定の張力で延伸される。耐炎化工程での延伸倍率は、例えば、0.7〜1.3の範囲内である。プリカーサ1aの延伸は、耐炎化炉3の入口の2個のローラ5,7や出口の3個のローラ9,11,13により行われる。
(2)炭素化工程(炭素化処理)
炭素化工程は、耐炎繊維1bを加熱することで熱分解反応を生じさせて炭素化を行う工程である。炭素化は、耐炎繊維1bが第1の炭素化炉15を通過し、さらに、第1の炭素化炉15を通過した繊維1cが第2の炭素化炉17を通過することで行われる。ここでの炭素化は、少なくとも第1炭素化炉15と第2炭素化炉17を通過することで行われる。
ここで、第1の炭素化炉15で行われる炭素化を「第1の炭素化」や「第1の炭素化処理」とし、この工程を第1の炭素化工程とし、さらに、第1の炭素化処理を終えた(第1の炭素化炉15を出た)繊維を「第1の炭素化処理後の繊維」とする。
同様に、第2の炭素化炉17で行われる炭素化を「第2の炭素化」や「第2の炭素化処理」とし、この工程を第2の炭素化工程とし、さらに、第2の炭素化処理を終えた(第2の炭素化炉17を出た)繊維を「第2の炭素化処理後の繊維」又は「炭素化後の繊維」という。
複数個の炭素化炉は、互いに独立した形態で設けられている。ここでは、第1の炭素化炉15と第2の炭素化炉17とは互いに独立して設けられ、第1炭素化炉15と第2炭素化炉17の間には繊維の張力を調整する調整手段を設けることができる。
第1の炭素化炉15の外であって入口側にはローラ19が、第1の炭素化炉15と第2の炭素化炉17との間にはローラ21が、第2の炭素化炉17の外側であって出口側にはローラ23がそれぞれ設けられている。
炭素工程における炭素化は、耐炎繊維1bを第1の炭素化炉15内でマイクロ波を利用して加熱して熱分解反応させる第1の炭素化工程と、マイクロ波で加熱した繊維1cを第2の炭素化炉17内で延伸しながらプラズマを利用して急速均一加熱して炭素化を進行させる第2の炭素化工程とを含んでいる。なお、第1炭素化炉は、本発明の炭素化装置の一例に相当する。
第1の炭素化工程は、断面形状が方形状をする加熱管の内部を伝播するマイクロ波を利用した加熱装置で行われる。なお、耐炎繊維1bは加熱管15の管軸方向に沿って加熱管15内を走行して加熱される。この際、加熱源となる電界エネルギは、マイクロ波が伝播する導波路から導入孔を介して加熱管15側に導入され、対となる導入孔間で電界が整合される。第1の炭素化工程に利用する加熱装置については、後で詳細に説明する。なお、第2の炭素化工程は、プラズマ以外の加熱手段で加熱してもよい。
(3)表面処理工程(表面処理)
表面処理工程は、炭素化後の繊維1dが表面処理装置25内を通過することで行われる。表面処理装置25の出口にはローラ26が設けられている。なお、表面処理することで、炭素繊維1gを利用して複合材料とした場合、炭素繊維1gとマトリックス樹脂との親和性や接着性が向上する。
表面処理は一般に炭素繊維の表面を酸化することにより行われる。表面処理として、例えば、液相中又は気相中の処理がある。液相中での処理は、酸化剤に炭素化後の繊維1dを浸漬することによる化学酸化や、炭素化後の繊維1dが浸漬する電解液中で通電することによる陽極電解酸化等が工業的に用いられる。
気相中での処理は、炭素化後の繊維1dを酸化性気体の中を通過させたり、放電等によって発生した活性種を吹き付けたりすることにより行うことができる。
(4)サイジング工程(サイジング処理)
サイジング工程は、繊維1eが樹脂液29内を通過することで行われる。樹脂液29は、樹脂浴27に貯留されている。なお、サイジング工程により、表面処理された繊維1eの収束性が高まる。
サイジング工程中の繊維1eは、樹脂浴27の内部や樹脂浴27の周辺に配された複数のローラ31,33等により走行方向を変更しながら樹脂液29内を通過する。樹脂液29は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を溶剤に溶解させた液やエマルション液が利用される。
(5)乾燥工程(乾燥処理)
乾燥工程は、繊維1fが乾燥炉35内を通過することで行われる。なお、乾燥した繊維1gは、乾燥炉35の下流側のローラ37を介してボビン39に巻き取られる(巻取工程である。)。
2.加熱装置(第1炭素化炉)
(1)概略
図6を用いて加熱装置を説明する。
加熱装置100は、断面が方形状の加熱管を有している。この加熱管は、図5における第1の炭素化炉15である。なお、加熱管の符号を「15」として以下説明する。
加熱管15は、一対の短側壁15a,15bと一対の長側壁15c,15dとを有する。マイクロ波AはTEモードである。ここでは、TE10モードである。耐炎繊維1bは加熱管15の内部を管軸に沿って走行する。加熱管15の管軸方向の両端の端壁15e,15fには耐炎繊維1b用の入口と出口とが設けられている(図6参照)。
加熱管15内へのマイクロ波Aの導入は導波管102により行われる。導波管102は、後述のマイクロ波発振器から発信されたマイクロ波BをTEモードで伝播させるため、断面形状が加熱管15と同様に、方形状としている。
導波管102は、当該導波管102の管軸が加熱管15の管軸と平行であって加熱管15の内部と導波管102の内部とが連通する状態で、設けられている。ここでは、加熱管15と導波管102とは一体化されており、加熱空間(加熱管15の内部空間である。)と導波空間(導波管102の内部空間である。)とが仕切り壁104により区画されている。ここでは、仕切り壁104は、加熱管15における導波管102側の長側壁(15c)である。
仕切り壁104は導入孔106を有している。ここでは、導入孔106は、加熱管15及び導波管102の各管軸と直交する方向に延伸するスリット状に設けられている。導波管102内のマイクロ波Bは導入孔(スリット)106から加熱管15側へと漏れる。
マイクロ波発振器108は、例えば、クライストロン及びマグネトロン等のマイクロ波電子管や、ダイオード等を利用したマイクロ波半導体素子等を利用することができる。マイクロ波発振器108の出力は、加熱管15の内部を走行する耐炎繊維1bの本数、速度、炭素度等により適宜選択できる。なお、マイクロ波発振器108から発信されるマイクロ波の周波数は、0.3[GHz]〜140[GHz]である。
マイクロ波発振器108は、接続導波管110を介して導波管102の一端102aに接続される。導波管102の他端102bには固定短絡板112が設けられている。固定短絡板112は、導波管102の一端102aから他端102bへと伝播してきたマイクロ波Bを一端102a側へと反射させるためのものであり、これにより、導波管102の内部に定在波を起こさせることができる。
導波管102内の定在波(B)は、仕切り壁104の導入孔106を介して加熱管15へと漏れ出し、加熱管15内を伝播する。
導入孔106は、仕切り壁104におけるマイクロ波Aの伝播方向に沿って間隔をおいて複数個(偶数個)設けられている。なお、通常の定常波の場合、導入孔106の大きさは同じである。
加熱管15の一端にも固定短絡板114が設けられ、他端側には接続導波管115を介して可変短絡板116が設けられている。
一端の固定短絡板114は、導入孔106から漏れて一端に向かって伝播するマイクロ波Aを他端15f側へと反射させる。これにより、マイクロ波Aを有効に利用できる。他端15fの可変短絡板116は、加熱管15の内部を伝播して他端15fに達したマイクロ波Aを一端側へと反射させ、図6の装置構成の場合にはスリースタブチューナ122との間で共振状態にさせるためのものである。これにより、図1や図6に示すように、加熱管15内に定在波を起こさせることができる。
マイクロ波発振器108と導波管102を結ぶ接続導波管110には、マイクロ波発振器108側から、アイソレータ118、方向性結合器120、スリースタブチューナ122が設けられている。アイソレータ118は、導波管102の他端102bで反射してきたマイクロ波Bによって、マイクロ波発振器108が破損するのを防止するものである。
方向性結合器120は、入射(導波管102の他端102bに向かうマイクロ波である。)電力や、反射(他端で反射してマイクロ発信器に向かうマイクロ波である。)電力を測定するものである。スリースタブチューナ122は、導波管102内のインピーダンス整合を調整するためのものである。この整合によりマイクロ波加熱を効率的に行うことが可能となる。
加熱管15は、管内を走行する耐炎繊維1bの温度を測定するための温度測定窓124を走行方向に沿って複数有している。なお、温度測定窓124には酸素の流入を防止するための蓋が設けられている。
加熱管15又は導波管102には、管内を不活性ガス雰囲気にするためのガス導入口128や、耐炎繊維1bの加熱の際に発生するガスを排気するための排気口126等が設けられている。不活性ガスは、例えば、窒素を利用できる他、アルゴン等を利用できる。
加熱管15は、他端15fにおいて接続導波管115を介して可変短絡板116に接続されている。接続導波管115には方向性結合器130が設けられている。この方向性結合器130は、加熱管15内を他端15fに向かって伝播し、耐炎繊維1bに吸収されなかったマイクロ波Aの電力と、可変短絡板116で反射され一端に向かって伝播するマイクロ波Aの電力とを測定する。
(2)マイクロ波の調整
耐炎繊維1bに一定の強度の電界を与えると、蓄熱して切断する場合がある。このため、加熱管15内において耐炎繊維1bの走行方向の途中から下流側に移るにしたがってマイクロ波Aの電界の強さを弱めている(調整している)。以下、電界の強さの調整方法及びその調整手段について説明する。
(2−1)導入孔
導入孔の一例としてスリット106を利用できる。通常、スリット106の大きさは同一である。しかしながら、スリット106の大きさを変化させることで、電界の強さを調整できる。
ここでは、スリット106の幅bを図2の(a)に示すように加熱管15の管軸方向の中間から下流側に進むにしたがって小さくしている。これにより、図2の(b)に示すように、加熱管15の管軸方向の中間から下流側に進むにしたがって電界の強さを小さくすることができる。
(2−2)内部空間の面積
加熱管15の内部空間に面する一対の対向面の間隔を調整することで内部空間の面積が変わり、電界の強さを調整できる。ここでは、加熱管15内に、図3の(a)に示すように、高さ調整部材151を配置している。高さ調整部材151と長側壁15dとの間隔は、加熱管15の管軸方向の中間から下流側に進むにしたがって大きくしている。これにより、図3の(c)に示すように、加熱管15の管軸方向の中間から下流側に進むにしたがって電界の強さを小さくすることができる。
3.実施例
以下、実施形態の一実施例について説明する。
加熱装置100は供給された耐炎繊維1bをマイクロ波Aにより加熱する。
使用する耐炎繊維1bは、密度が1.36[g/cm]である。加熱装置100の加熱管15への耐炎繊維1bの供給は2本であり、加熱管15の管軸方向に沿って耐炎繊維1bが供給される。耐炎繊維1bのフィラメント数は、24,000[本]である。
加熱装置100で利用するマイクロ波Aは、波長が0.705[m]〜0.00737[m]の範囲内に、周波数が425[MHz]〜40680[MHz]の範囲内にそれぞれある。
導波管102及び加熱管15の幅(一対の短側壁15a,15b間の寸法である。)は0.5[m]〜16[m]の範囲内にある。導波管102及び加熱管15の高さ(一対の長側壁15c,15d間の寸法である。)は、0.2[m]〜10[m]の範囲内にある。
マイクロ波Aの出力は、0.1[kW]〜1000[kW]の範囲内である。耐炎繊維1bの走行速度は、0.01[m/min]〜50[m/min]の範囲内である。加熱管15内は、窒素雰囲気下で、91000[Pa]〜122000[Pa]に保たれている。第1の炭素化工程では、耐炎繊維1bを、密度が例えば1.50[g/cm]〜1.60[g/cm]になるまで炭素化する。
なお、従来の電気ヒータを用いた加熱装置では、炉内の温度が500[℃]〜800[℃]で約7[分]〜10[分]程度加熱される。
4.加熱試験
加熱装置100を利用して加熱試験を行った。
(1)試験1
実施例1では、耐炎繊維1bの走行速度は0.3[m/min]である。この場合の加熱管15の内部の耐炎繊維1bの滞留時間は約8[分]である。マイクロ波Aの出力は、1.0[kW]である。
スリット106の幅bは、14[mm]、10[mm]、8[mm]、6[mm]であり、耐炎繊維1bの走行方向に37[mm]の間隔をおいて設けられている。なお、スリット106は、同じ幅のものが一対で隣接して設けられており、合計で8個ある。ここで、耐炎繊維1bの走行方向の上流側から「i」番目(ここでの「i」は、1から8までの自然数である。)に存在するスリットをi番目のスリットとし、この「i」をスリット番号とする。
加熱管15内を走行する耐炎繊維1bの表面の温度変化を図7の実線で示す。なお、耐炎繊維1bの表面温度の測定は放射温度計を利用している。
実施例1では、耐炎繊維1bの走行方向に沿ってスリット幅bを小さくすることで、耐炎繊維1bの走行方向に沿ってマイクロ波Aのエネルギ(電界の強さ)を弱くしている。
耐炎繊維1bはマイクロ波Aのエネルギにより温度が上昇し(加熱され)、炭素化されていく。この際の耐炎繊維1bの温度は、図7の実線で示すように、加熱管15に進入してから4番目のスリット位置をピークに、それ以降は緩やかに低下している。
このようにマイクロ波Aの電界の強さを耐炎繊維1bの炭素化の進行に沿って弱めているため、耐炎繊維1bに蓄熱する熱量が少なくなり、走行中の耐炎繊維1bに切断等のトラブルは生じなかった。
(2)実験2
実施例1で説明したスリット幅bのスリット106が設けられた加熱管15を利用して、内部に高さ調整部材151を配している。マイクロ波Aの出力は、0.75[W]である。
高さ調整部材151は加熱管15の一対の対向面の間隔(空間の高さ)を調整している。間隔(高さ)は、上流側から11[mm]、16[mm]、21[mm]である。なお、ここでの間隔(高さ)は、図3の(a)で示した高さ調整部材151の高さを長側壁15c,15d間の距離から引いたものである。
加熱管15内を走行する耐炎繊維1bの表面の温度変化を図7の一点鎖線で示す。
実施例2では、耐炎繊維1bの走行方向に沿って対向面の間隔(長側壁間の空間の高さ)を広げることで、耐炎繊維1bの走行方向に沿ってマイクロ波Aの電界エネルギを弱くしている(スリット106の効果も含めている。)。
加熱管15内の耐炎繊維1bの温度は、図7の一点鎖線で示すように、走行する(下流側に移動する。)にしたがって、徐々に温度が上昇している。これは、マイクロ波Aの出力が実施例1に比べて低いが、長側壁15c,15d間の空間の高さを狭めているため、マイクロ波Aのエネルギ(密度)が大きくなったためである。
その後、対向面の間隔(空間の高さ)を広げながら、マイクロ波Aのエネルギを弱めている。これにより、耐炎繊維1bの温度は緩やかに上昇し、耐炎繊維1bの暴走反応を抑制でき、走行中に耐炎繊維1bが切断するようなことはなかった。
(3)比較例
比較のため、スリット幅bを一定にした加熱管15を利用してマイクロ波Aにより加熱した。耐炎繊維1bの走行速度、本数、マイクロ波の出力は実施例1と同じである。なお、比較例におけるスリット幅bは10[mm]であり、加熱管の管軸方向に4組(8個)設けられている。なお、スリット106のピッチLは実施例1と同じである。
加熱管15内を走行する耐炎繊維1bの表面の温度変化を図7の破線で示す。
加熱管15内の耐炎繊維1bの温度は、図7の破線で示すように、加熱管15内に進入して5番目のスリット位置程度までは、実施例1及び実施例2の温度よりも低くなっている。これは、実施例1及び実施例2では加熱管15の上流側においてマイクロ波Aのエネルギを下流側に比べて高くしているが、比較例ではエネルギの調整を行っていないため、上流側のエネルギが低いためである。
比較例の耐炎繊維1bの温度は、加熱管15に進入して3番目のスリット位置ぐらいから温度勾配が高くなり、6番目のスリット位置ぐらいで実施例1及び実施例2よりも温度が高くなっている。これは、耐炎繊維1bの蓄熱により暴走反応が開始したためであり、走行中に耐炎繊維1bが切断することがあった。
(4)まとめ
上記のように、スリット幅bの変更による調整(実施例1)や一対の対向面の間隔(空間の高さ)の変更による調整(実施例2)は、マイクロ波Aのエネルギの強度を調整することができ、例えば、耐炎繊維1bの炭素化工程を安定して(切断なく)、行うことができる。
また、実施例2に示すように、低い出力のマイクロ波Aを利用しても、走行方向の上流側でエネルギを強めることで、高い出力のマイクロ波Aと同等のエネルギを与えることができる。
<変形例>
以上説明したが、本発明は実施形態に限られない。例えば、以下で説明する実施形態や変形等の何れかを適宜組み合わせてもよいし、複数の変形例を適宜組み合わせてもよい。
1.前駆体繊維
実施形態では、フィラメント数が24,000本の耐炎繊維について説明したが、フィラメント数が3,000本、6,000本、12,000本、36,000本等の他の本数の耐炎繊維にも適用できる。
実施形態では、炭素化工程を含んだ炭素繊維の製造方法について説明したが、例えば、さらに、黒鉛化処理を表面処理工程前に行ってもよい。つまり、実施形態では、汎用品(弾性率240[GPa]の炭素繊維の製造において、第1の炭素化に本発明の加熱方法等を用いたが、本加熱方法等は、高弾性品、中弾性高強度品等の高性能品の炭素繊維用の前駆体繊維に対する第1の炭素化にも利用できる。
2.マイクロ波による加熱
(1)温度
試験では、繊維の表面温度が400[℃]〜800[℃]に加熱されていたが、炭素化に合わせた温度に設定すればよい。温度調整は、例えば、マイクロ波の出力調整、前駆体繊維の走行速度の調整、加熱管の寸法、マイクロ波のTEモードの変更等で行うことができる。
(2)TEモード
実施形態では、マイクロ波のモードはTE10であったが、他のモードであってもよい。他のモードとしては、TE20モードやTE30モード等がある。つまり、マイクロ波のモードは、短側壁での電界の強さが0になる(低くなる)TEm0モード(「m」は自然数であり、「0」は、数字のゼロである。)であればよい。
なお、「m」が2以上になると、加熱管において、一対の短側壁の中心同士を結ぶ仮想面を挟んだ2つの領域(電界の強さが正と負の2つの領域である。)を、前駆体繊維の走行領域とすることができ、前駆体繊維の供給本数を、前駆体繊維の走行領域が1つのTE10モードに比べて、2倍にすることができる。ただし、マイクロ波の出力が同じ場合は、TE20モードの電界の強さはTE10モードの電界の強さの半分になる。
(3)進行波、定在波
実施形態のマイクロ波Aは主に定在波で説明しているが、進行波であってもよい。この場合、加熱管内に高さ調整部材を配する際に、反射波の影響を少なくなる向きに配するのが好ましい。
例えば、図3の(a)に示すような高さ調整部材151の場合、上流側からマイクロ波を導入させるのが好ましい。逆に、図3の(a)に示すような高さ調整部材(151)が加熱管15の中央に配されているような場合、高さ部の低い側(加熱管の下流側)から進行波を導入させるのが好ましい。
(4)電界・磁界
実施形態での加熱は、マイクロ波の電界成分を利用しているが、例えば、磁界成分を利用して被加熱物を加熱してもよいし、電界成分及び磁界成分の両成分を利用して被加熱物を加熱してもよい。
3.加熱管
実施形態の加熱管の横断面形状は方形状をしているが、他の形状であってもよい。他の形状の例としては、円形状、楕円形状がある。なお、これらの形状の場合、マイクロ波の伝搬モードは、例えばTM01等のTMモードとなる。
実施形態では、加熱管15内に高さ調整部材151を配しているが、例えば、高さ調整部材151を配した場合の内部空間を有するような形状の加熱管を用いてもよい。
4.高さ調整部材
実施形態の高さ調整部材は、図8の(a)に示すように、階段状をしている。しかしながら、高さ調整部材は、高さ調整部材と加熱管との対向面の間隔を調整できればよく、例えば、図8の(b)に示すようにスロープ状としてもよい。スロープを構成する上面(加熱管と対向する面)は、縦断面において直線状をしてもよいし、曲線状をしてもよい。
5.強度調整
実施形態の一例では高さ調整部材によりマイクロ波の電界の強さを調整している。しかしながら、例えば、断面方形状の加熱管の場合、図9に示すように、一対の短側壁の間隔を調整してもよい。
図9では、加熱管15Aの一対の短側壁15Aa,15Abの間隔が徐々に広がり、加熱管15Aの内部に調整部材151Aが配されている。調整部材151Aは第1高さ部151Aaと第2高さ部151Abとを有している。第1高さ部151Aaは第2高さ部151Abよりも高くなっている。調整部材151Aの幅は一対の短側壁15Aa,15Abに対応して徐々に広がっている。
この場合も、マイクロ波のエネルギ密度が変化して、加熱管内のマイクロ波のエネルギの強度を調整できる。
なお、加熱管の空間面積の調整は、実施形態では、高さ調整部材を利用しているが、上述のように、加熱管の形状を高さ調整部材に合わせた形状としてもよい。つまり、強度調整は、調整部材を用いてもよいし、加熱管自在に調整機能を持たせてもよい。
1 繊維
1a プリカーサ
1b 耐炎繊維
1c 第1の炭素化繊維
15 第1の炭素化炉(加熱管)
15a,15b 短側壁
15c,15d 長側壁
151 高さ調整部材

Claims (9)

  1. 一対の短側壁と一対の長側壁とを有する断面方形状の加熱管内を伝播するTEモードのマイクロ波の電界により、前記加熱管内を当該加熱管の管軸が延伸する管軸方向の一端の入口から他端の出口に向かって前記管軸に沿って走行する被加熱物を加熱する加熱方法において、
    前記マイクロ波の電界の強さは、前記被加熱物の走行方向に沿って、前記加熱管の断面における内部面積を変化させることで、調整され
    前記加熱管の断面における内部面積の変化は、前記一対の短側壁と平行な方向において対向する対向面の間隔の変化により行われ、
    前記間隔の変化は、一方の長側壁に高さ調整部材を配することで行われ、
    前記一対の短側壁の内面間の距離を「W」とし、前記高さ調整部材における前記一対の短側壁の対向する方向の寸法を「S」としたときに、
    0.3×W ≦ S ≦0.6×W
    の関係を満たす
    加熱方法。
  2. 一対の短側壁と一対の長側壁とを有する断面方形状の加熱管内を伝播するTEモードのマイクロ波の電界により、前記加熱管内を当該加熱管の管軸が延伸する管軸方向の一端の入口から他端の出口に向かって前記管軸に沿って走行する被加熱物を加熱する加熱方法において、
    前記マイクロ波の電界の強さは、前記被加熱物の走行方向に沿って、前記加熱管の断面における内部面積を変化させることで、調整され、
    前記加熱管の断面における内部面積の変化は、前記一対の短側壁と平行な方向において対向する対向面の間隔の変化により行われ、
    前記間隔の変化は、一方の長側壁に高さ調整部材を配することで行われ、
    前記マイクロ波の進行方向は、前記被加熱物の走行方向と反対であり、
    前記高さ調整部材は、n個(nは、2以上の自然数である)の異なる高さを有すると共に高さが前記他端の出口に向かうにしたがって段差状に低くなり、
    前記入口に最も近い位置にある高さを1番目とし、前記出口に最も近い位置にある高さをn番目としたときに、
    n番目の高さを有する部分の前記管軸方向の長さを「Ln」とし、前記加熱管の管内波長を「λg」とすると、
    Ln = (λg/4)×(2k−1)
    である(ただし、kは、自然数である)
    加熱方法。
  3. 一対の短側壁と一対の長側壁とを有する断面方形状の加熱管内を伝播するTEモードのマイクロ波の電界により、前記加熱管内を当該加熱管の管軸が延伸する管軸方向の一端の入口から他端の出口に向かって前記管軸に沿って走行する被加熱物を加熱する加熱方法において、
    前記マイクロ波の電界の強さは、前記被加熱物の走行方向に沿って、前記加熱管の断面における内部面積を変化させることで、調整され、
    前記加熱管の断面における内部面積の変化は、前記一対の短側壁と平行な方向において対向する対向面の間隔の変化により行われ、
    前記間隔の変化は、一方の長側壁に高さ調整部材を配することで行われ、
    前記一対の短側壁の内面間の距離を「W」とし、前記高さ調整部材における前記一対の短側壁の対向する方向の寸法を「S」としたときに、
    0.3×W ≦ S ≦0.6×W
    の関係を満たし、
    前記マイクロ波の進行方向は、前記被加熱物の走行方向と反対であり、
    前記高さ調整部材は、n個(nは、2以上の自然数である)の異なる高さを有すると共に高さが前記他端の出口に向かうにしたがって段差状に低くなり、
    前記入口に最も近い位置にある高さを1番目とし、前記出口に最も近い位置にある高さをn番目としたときに、
    n番目の高さを有する部分の前記管軸方向の長さを「Ln」とし、前記加熱管の管内波長を「λg」とすると、
    Ln = (λg/4)×(2k−1)
    である(ただし、kは、自然数である)
    加熱方法。
  4. 記加熱管は、マイクロ波発生装置から発生されたマイクロ波を導入させるためのスリットを、前記走行方向に間隔を置いて複数個有し、
    マイクロ波の電界の強さは、前記スリットにおける前記走行方向の寸法を変化させることで、調整されている
    請求項1〜3の何れか1項に記載の加熱方法。
  5. 前駆体繊維を加熱して炭素繊維を製造する炭素繊維の製造方法において、
    前記前駆体繊維を加熱する加熱方法は請求項1〜4の何れか1項に記載の加熱方法を含む
    炭素繊維の製造方法。
  6. 断面方形状の加熱管内を当該加熱管の管軸が延伸する管軸方向の一端の入口から他端の出口に向かって前記管軸に沿って走行する前駆体繊維をTEモードのマイクロ波の電界により加熱して炭素化する炭素化装置において、
    前記前駆体繊維の走行方向に沿って前記マイクロ波の電界の強度を調整する調整手段を備え
    前記マイクロ波の電界の強度は、前記前駆体繊維の走行方向に沿って、前記加熱管の断面における内部面積を変化させることで、調整され、
    前記加熱管の断面における内部面積の変化は、前記加熱管の一対の短側壁と平行な方向において対向する対向面の間隔の変化により行われ、
    前記調整手段は、前記間隔の変化を行うために、前記加熱管の一方の長側壁に配された高さ調整部材を備え、
    前記高さ調整部材は、前記一対の短側壁の内面間の距離を「W」とし、前記高さ調整部材における前記一対の短側壁の対向する方向の寸法を「S」としたときに、
    0.3×W ≦ S ≦0.6×W
    の関係を満たす
    炭素化装置。
  7. 断面方形状の加熱管内を当該加熱管の管軸が延伸する管軸方向の一端の入口から他端の出口に向かって前記管軸に沿って走行する前駆体繊維をTEモードのマイクロ波の電界により加熱して炭素化する炭素化装置において、
    前記前駆体繊維の走行方向に沿って前記マイクロ波の電界の強度を調整する調整手段を備え、
    前記マイクロ波の電界の強度は、前記前駆体繊維の走行方向に沿って、前記加熱管の断面における内部面積を変化させることで、調整され、
    前記加熱管の断面における内部面積の変化は、前記加熱管の一対の短側壁と平行な方向において対向する対向面の間隔の変化により行われ、
    前記調整手段は、前記間隔の変化を行うために、前記加熱管の一方の長側壁に配された高さ調整部材を備え、
    前記マイクロ波の進行方向は、前記前駆体繊維の走行方向と反対であり、
    前記高さ調整部材は、n個(nは、2以上の自然数である)の異なる高さを有すると共に高さが前記他端の出口に向かうにしたがって段差状に低くなり、
    前記入口に最も近い位置にある高さを1番目とし、前記出口に最も近い位置にある高さをn番目としたときに、
    n番目の高さを有する部分の前記管軸方向の長さを「Ln」とし、前記加熱管の管内波長を「λg」とすると、
    Ln = (λg/4)×(2k−1)
    である(ただし、kは、自然数である)
    炭素化装置。
  8. 断面方形状の加熱管内を当該加熱管の管軸が延伸する管軸方向の一端の入口から他端の出口に向かって前記管軸に沿って走行する前駆体繊維をTEモードのマイクロ波の電界により加熱して炭素化する炭素化装置において、
    前記前駆体繊維の走行方向に沿って前記マイクロ波の電界の強度を調整する調整手段を備え、
    前記マイクロ波の電界の強度は、前記前駆体繊維の走行方向に沿って、前記加熱管の断面における内部面積を変化させることで、調整され、
    前記加熱管の断面における内部面積の変化は、前記加熱管の一対の短側壁と平行な方向において対向する対向面の間隔の変化により行われ、
    前記調整手段は、前記間隔の変化を行うために、前記加熱管の一方の長側壁に配された高さ調整部材を備え、
    前記高さ調整部材は、前記一対の短側壁の内面間の距離を「W」とし、前記高さ調整部材における前記一対の短側壁の対向する方向の寸法を「S」としたときに、
    0.3×W ≦ S ≦0.6×W
    の関係を満たし、
    前記マイクロ波の進行方向は、前記前駆体繊維の走行方向と反対であり、
    前記高さ調整部材は、n個(nは、2以上の自然数である)の異なる高さを有すると共に高さが前記他端の出口に向かうにしたがって段差状に低くなり、
    前記入口に最も近い位置にある高さを1番目とし、前記出口に最も近い位置にある高さをn番目としたときに、
    n番目の高さを有する部分の前記管軸方向の長さを「Ln」とし、前記加熱管の管内波長を「λg」とすると、
    Ln = (λg/4)×(2k−1)
    である(ただし、kは、自然数である)
    炭素化装置。
  9. 前駆体繊維を加熱して炭素繊維を製造する炭素繊維の製造装置において、
    前記前駆体繊維を加熱して炭素化する炭素化装置として、請求項6〜8の何れか1項に記載の炭素化装置を含む
    炭素繊維の製造装置。
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