JP6875914B2 - 高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車部品をはじめとする各種の用途に使用可能な高強度鋼板に関する。
自動車用部品等に供される鋼板は、燃費改善を実現するために薄肉化が求められており、薄肉化及び部品強度確保を達成するために鋼板の高強度化が求められている。特許文献1は980〜1180MPaの引張強さを有し、かつ良好な深絞り性を示す高強度鋼板を開示している。
特開2009−203548号公報
しかし、自動車用部品をはじめとする多くの用途において、高い引張強度と優れた深絞り性を有するだけでなく、さらに優れた強度延性バランス、高い降伏比および優れた張り出し成形性を有することが求められている。
引張強度、強度延性バランス、降伏比、深絞り特性および張出し成形性それぞれについて、具体的には、以下のことが求められている。
引張強度については、980MPa以上であることが求められている。さらに引張強度については、溶接部においても十分な値を有することが求められている。具体的には、スポット溶接部の十字引張強度は6kN以上であることが求められている。
使用中に負荷できる応力を高くするためには、高い引張強度(TS)に加えて高い降伏強度(YS)を有する必要がある。また、衝突安全性等を確保する観点から、鋼板の降伏強度を高めることも必要である。このため、具体的には0.70以上の降伏比(YR=YS/TS)が求められている。
強度延性バランスについては、TSと全伸び(EL)との積(TS×EL)が21000MPa%以上であることが求められている。さらに部品成形時の成形性を確保するために、穴広げ率λが20%以上であること、および張出し成形性を示す限界張出し高さ(張出し高さ)が16mm以上であることも求められている。また、自動車用鋼板の基本性能としてスポット溶接部の継手強度も求められる。
しかし、特許文献1が開示する高強度鋼板では、これらの要求全てを満足することは困難であり、これらの要求全てを満足できる高強度鋼板が求められていた。
本発明はこのような要求に応えるためになされたものであって、引張強度(TS)、スポット溶接部の十字引張強度(SW十字引張)、降伏比(YR)、(TS)と全伸び(EL)との積(TS×EL)、穴広げ率(λ)および限界張出し高さが何れも高いレベルにある高強度鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の態様1は、
C :0.15質量%〜0.35質量%、
SiとAlの合計:0.5質量%〜3.0質量%、
Mn:1.0質量%〜4.0質量%、
P :0.05質量%以下、
S :0.01質量%以下、
を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
鋼組織が、
フェライト分率が5%以下であり、
焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率が60%以上であり、
残留オーステナイト量が10%以上であり、
MAの平均サイズが1.0μm以下であり、残留オーステナイト量と等しい量である炭素濃化領域におけるMnの濃度分布の半価幅が0.3質量%以上である高強度鋼板である。
本発明の態様2は、C量が0.30質量%以下である態様2に記載の高強度鋼板である。
本発明の態様3は、Al量が0.10質量%未満である態様1または2に記載の高強度鋼板である。
本発明の態様4は、さらに、Cu:0.50質量%以下、Ni:0.50質量%以下、Cr:0.50質量%以下、Mo:0.50質量%以下、B:0.01質量%以下、V:0.05質量%以下、Nb:0.05質量%以下、Ti:0.05質量%以下、Ca:0.05質量%以下、REM:0.01質量%以下、の1種または2種以上を含む態様1〜3のいずれか1つの態様記載の高強度鋼板である。
本発明の態様5は、上記態様1〜4のいずれか1つの態様に記載の成分組成を有する圧延材を用意することと、
前記圧延材をAc点と0.2×Ac点+0.8×Ac点との間の温度で5秒以上保持した後、Ac点以上の温度まで加熱し5〜600秒間保持してオーステナイト化することと、
前記オーステナイト化後、650℃から100℃〜300℃の間の冷却停止温度まで10℃/秒以上の冷却速度で冷却することと、
冷却停止温度から300〜500℃の範囲にある再加熱温度まで加熱することと、を含む高強度鋼板の製造方法である。
本発明の態様6は、前記冷却停止温度までの冷却が、650℃以上の温度である急冷開始温度まで平均冷却速度0.1℃/秒以上、10℃/秒未満で冷却することと、前記急冷開始温度から前記冷却停止温度まで平均冷却速度10℃/秒以上で冷却することを含む態様5に記載の製造方法である。
本発明によれば、引張強度(TS)、スポット溶接部の十字引張強度(SW十字引張)、降伏比(YR)、(TS)と全伸び(EL)との積(TS×EL)、穴広げ率(λ)および限界張出し高さが、何れも高いレベルにある高強度鋼板およびその製造方法を提供することができる。
図1は本発明に係る高強度鋼板の製造方法、とりわけ熱処理を説明するダイアグラムである。
本発明者らは鋭意検討した結果、所定の成分を有する鋼において、鋼組織(金属組織)を、フェライト分率:5%以下、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率:60%以上、残留γ量:10%以上、MAの平均サイズ:1.0μm以下とし、さらに、残留オーステナイトに相当する部分である炭素濃化領域におけるMnの濃度分布の半価幅を0.3質量%以上とすることで引張強度(TS)、降伏比(YR)、(TS)と全伸び(EL)との積(TS×EL)、穴広げ率、限界張出し高さおよびスポット溶接部の十字引張強度(SW十字引張)が何れも高いレベルにある高強度鋼板を得ることができることを見いだしたのである。
詳細は後述するが、本発明に係る高強度鋼板は、製造時の熱処理のオーステナイト化工程において、Ac点とAc点の中間の2相共存領域、より詳細にはAc点〜0.2×Ac点+0.8×Ac点の間の温度で所定時間保持した後、Ac点以上の温度で所定時間保持することにより形成されたMn濃化領域を有している。さらに、熱処理時に残留オーステナイトに対応した(残留オーステナイト量と同じ量の)炭素濃化領域を形成している。そして、この炭素濃化領域は、Mn濃化領域およびMnが濃化していない領域の両方を形成される。すなわち、炭素濃化領域(残留オーステナイト)の中には、より多くのMnを含むものとそうでないものが存在する。このため、炭素濃化領域全体(すなわち、残留オーステナイト全体に対応)でMn濃度の分布を測定すると、Mn濃度はある程度以上のばらつきを有する。具体的にはMnの濃度分布の半価幅が0.3質量%以上となる。
このように、残留オーステナイトが含有するMn量をばらつかせることは、多様な安定度を備えた残留オーステナイトを備えることができることを意味する。比較的小さな歪量で加工誘起変態を起こす安定度の低い残留オーステナイトと、大きな歪量で加工誘起変態を起こす安定度の高い残留オーステナイトが混在することとなり、加工誘起変態を様々な歪領域で起こすことが可能となる。この結果、n値を広い歪領域で高くでき、歪分散性を高めて高い張り出し加工性を実現できる。
以下に本発明の高強度鋼板およびその製造方法の詳細を示す。
1.組成
以下に本発明に係る高強度鋼板の組成について説明する。まず、基本となる元素、C、Si、Al、Mn、PおよびSについて説明し、さらに選択的に添加してよい元素について説明する。
なお、成分組成について単位の%表示は、すべて質量%を意味する。
(1)C:0.15〜0.35%
Cは所望の組織を得て、高い(TS×EL)等の特性を確保するために必須の元素であり、このような作用を有効に発揮させるためには0.15%以上添加する必要がある。ただし、0.35%超は溶接に適さず、十分な溶接強度を得ることができない。好ましくは0.18%以上、さらに好ましくは0.20%以上である。また、好ましくは0.30%以下である。C量が0.30%以下だとより容易に溶接することができる。
(2)SiとAlの合計:0.5〜3.0%
SiとAlは、それぞれ、セメンタイトの析出を抑制し、残留オーステナイトの形成を促進する働きを有する。このような作用を有効に発揮させるためにはSiとAlを合計で0.5%以上添加する必要がある。ただし、Siとアルミニウムの合計が3.0%を超えると粗大なMAを形成する。好ましくは0.7%以上、さらに好ましくは1.0%以上である。また、好ましくは2.0%以下である。
なお、Alについては、脱酸元素として機能する程度の添加量、すなわち0.10質量%未満であってよく、また、例えばセメンタイトの形成を抑制し、残留オーステナイト量を増加させる目的等ために0.7質量%以上のようなより多くの量を添加してもよい。
(3)Mn:1.0〜4.0%
マンガンはフェライトの形成を抑制する。また、MnはMn濃化領域を形成し、安定度の異なる残留オーステナイトを形成し、張り出し加工性を向上させるのに不可欠な元素である。このような作用を有効に発揮させるためには1.0%以上添加する必要がある。ただし、4.0%を超えると2相域加熱の温度範囲が狭く制御しにくいこと、および、温度が低くなりすぎるためにAc点〜0.2×Ac点+0.8×Ac点の間の温度で所定時間保持しても変態が進まずMn濃化領域が形成できなくなる場合がある。好ましくは1.5%以上、さらに好ましくは2.0%以上である。また、好ましくは3.5%以下である。
(4)P:0.05%以下
Pは不純物元素として不可避的に存在する。0.05%を超えたPが存在するとELおよびλが劣化する。このため、Pの含有量は0.05%以下(0%を含む)とする。好ましくは、0.03%(0%を含む)以下である。
(5)S:0.01%以下
Sは不純物元素として不可避的に存在する。0.01%を超えたSが存在するとMnS等の硫化物系介在物を形成し、割れの起点となってλを低下させる。このため、Sの含有量は0.01%以下(0%を含む)とする。好ましくは、0.005%(0%を含む)以下である。
(6)残部
好ましい1つの実施形態では、残部は、鉄および不可避不純物である。不可避不純物としては、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる微量元素(例えば、As、Sb、Snなど)の混入が許容される。なお、例えば、PおよびSのように、通常、含有量が少ないほど好ましく、従って不可避不純物であるが、その組成範囲について上記のように別途規定している元素がある。このため、本明細書において、残部を構成する「不可避不純物」という場合は、別途その組成範囲が規定されている元素を除いた概念である。
しかし、この実施形態に限定されるものではない。本発明の高強度鋼板の特性を維持できる限り、任意のその他の元素を更に含んでよい。そのように選択的に含有させることができるその他の元素を以下に例示する。
(7)その他の元素
Cu:0.50質量%以下、Ni:0.50質量%以下、Cr:0.50質量%以下、Mo:0.50質量%以下、B:0.01質量%以下、V:0.05質量%以下、Nb:0.05質量%以下、Ti:0.05質量%以下、Ca:0.05質量%以下、REM:0.01質量%以下、の1種または2種以上
Cu、Ni、Cr、MoおよびBは、焼き入れ性を高めることで、フェライトの形成を防止し、かつ、オーステナイトの安定化やベイナイトの微細化に寄与することで強度−延性バランスを向上する。
V、NbおよびTiは、母相を析出強化することで、延性を大きく劣化させずに強度を高めることで、強度−延性バランスを向上させる。
CaおよびREMは、MnSに代表される介在物を微細に分散させることで、強度−延性バランスおよび穴広げ性の改善に寄与する。ここで、本発明に用いられるREM(希土類元素)としては、Sc、Y、ランタノイド等が挙げられる。
ただし、これらの元素を過剰に含有させても、上記それぞれの効果が飽和してしまい経済的に無駄であるので、これらの元素は上記各上限値以下の量とするのが好ましい。
2.鋼組織
以下に本発明の高強度鋼板の鋼組織の詳細を説明する。
以下の鋼組織の説明では、そのような組織を有することにより各種の特性を向上できるメカニズムについて説明している場合がある。これらは本発明者らが現時点で得られている知見により考えたメカニズムであるが、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに留意されたい。
(1)フェライト分率:5%以下
フェライトは、一般的に加工性に優れるものの、強度が低いという問題を有する。その結果、フェライト量が多いと降伏比が低下する。このため、フェライト分率を5%以下(5体積%以下)とした。
フェライト分率は好ましくは3%以下である。
フェライト分率は光学顕微鏡で観察し、白い領域を点算法で測定することにより求めることができる。すなわち、このような方法により、フェライト分率を面積比(面積%)で求めることができる。そして、面積比で求めた値をそのまま体積比(体積%)の値として用いてよい。
(2)焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率:60%以上
焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率を60%以上(60体積%以上)とすることで高強度と高い穴広げ性を両立できる。焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率は好ましくは70%以上である。
焼戻しマルテンサイトおよび焼戻しベイナイト量(合計分率)は、ナイタール腐食を行った断面のSEM観察を行い、MA(すなわち、残留オーステナイトと焼入れたままのマルテンサイトの合計)の分率を測定し、鋼組織全体から上述のフェライト分率とMA分率を引くことにより求めることができる。
(3)残留オーステナイト量:10%以上
残留オーステナイトは、プレス加工等の加工中に加工誘起変態により、マルテサイトに変態するTRIP現象を生じ、大きな伸びを得ることができる。また、形成されるマルテンサイトは高い硬度を有する。このため、優れた強度−延性バランスを得ることができる。残留オーステナイト量を10%以上(10体積%以上)とすることでTS×ELが21000MPa%以上と優れた強度−延性バランスを実現できる。
残留オーステナイト量は好ましくは15%以上である。
本発明の高強度鋼板では、残留オーステナイトの多くは、MAの形態で存在する。MAとは、martensite-austenite constituentの略であり、マルテンサイトとオーステナイトの複合体(複合組織)である。
残留オーステナイト量は、X線回折によりフェライト(X線回折では焼戻しマルテンサイトおよび未焼戻しのマルテンサイトを含むとオーステナイトの回折強度比を求めて算出することにより得ることができる。X線源としてはCo−Kα線を用いることができる。
(4)MAの平均サイズ:1.0μm以下
MAは硬質相であり、変形時に母相/硬質相界面近傍がボイド形成サイトとして働く。MAサイズが粗大になるほど、母相/硬質相界面への歪集中が起こり、母相/硬質相界面近傍に形成されたボイドを起点とした破壊を生じ易くなる。
このため、MAサイズ、とりわけMA平均サイズを1.0μm以下と微細にし、破壊を抑制することで穴広げ率λを向上させることができる。
MAの平均サイズは好ましくは0.8μm以下である。
MAの平均サイズは、ナイタール腐食した断面をSEMにより3000倍以上で3視野以上観察し、写真中の任意の位置に合計200μm以上の直線を引き、その直線とMAが交わる切片長を測定し、それら切片長の平均値を算出することで求めることができる。
(5)残留オーステナイト量と等しい量である炭素濃化領域におけるMn濃度分布の半価幅が0.3質量%以上
上述のように残留オーステナイトの多くは、MAの形態で存在しており、光学顕微鏡またはSEMにより残留オーステナイトだけを識別するのは困難である。残留オーステナイは、炭素の固溶限がフェライト等と比べて大きいため、後述する熱処理を行うことで、残留オーステナイトに炭素が濃化する。従って、EPMAを用いて、炭素の元素マッピングを行い、炭素濃度の高い測定点から順に上述のX線回折により求めた残留オーステナイト量と等しい量の測定点を炭素濃化領域とし、この炭素濃化領域を残留オーステナイトと判断することができる。すなわち、例えば、残留オーステナイト量が15体積%であった場合、元素マッピングにより炭素量を測定した測定点について炭素濃度の高い方から15%を選ぶことでこれらの炭素濃度の高い測定点(炭素濃化領域)が残留オーステナイトであると判断できる。
よって「残留オーステナイト量と等しい量である炭素濃化領域」は、残留オーステナイトに相当する(対応する)領域を意味している。
そして、この残留オーステナイト量と等しい量である炭素濃化領域におけるMnの濃度分布、特にMn濃度分布の半価幅についても、EPMAを用いて測定することができる。炭素濃化領域であるとされた測定点のMn量の分布をグラフ化し、そこから半価幅を得ることができる。
このMn濃度分布の半価幅が大きいほど、残留オーステナイト中のMn濃度のばらつきが大きい(Mnの濃度分布の範囲が広い)ことを示している。本発明の高強度鋼板では、Mnの濃度分布の半価幅が0.3質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは0.6質量%以上であり、さらにより好ましくは0.75質量%以上である。
このように、残留オーステナイト(炭素濃化領域)が含有するMn量をばらつかせることで、安定度が低い残留オーステナイトから安定度が高い残留オーステナイトまで、幅広い安定度の残留オーステナイトを形成できる。安定度の低い残留オーステナイトは、小さい歪量で加工誘起変態を起こしマルテンサイトとなる。安定度の高い残留オーステナイトは、小さい歪量では加工誘起変態を起さず、大きな歪量が付与されてはじめて加工誘起変態を起こしてマルテンサイトとなる。従って、幅広い安定度を有する残留オーステナイトが存在すると、加工を開始してすぐの歪量が小さい時から、加工が進み歪量が大きい時に亘って、加工誘起変態が継続的に起こることとなる。この結果、n値を広い歪範囲に亘って高くでき、歪分散性を高めて高い張り出し加工性を実現できる。
(6)その他の鋼組織:
本明細書においては、前記したフェライト、焼戻しマルテンサイト、焼戻しベイナイトおよび残留オーステナイト以外の鋼組織は特に規定していない。しかしながら、フェライト等の鋼組織以外にも、パーライト、焼き戻されていないベイナイトおよび焼き戻されていないマルテンサイトなどが存在することがある。フェライト等の鋼組織が、前述した組織条件を満たしていれば、パーライト等が存在しても、本発明の効果は発揮される。
3.特性
上述のように本発明の高強度鋼板は、TS、YR、TS×EL、穴広げ率(λ)、スポット溶接部の十字引張強度(SW十字引張)および限界張出し高さが何れも高いレベルにある。本発明の高強度鋼板のこれらの特性について以下に詳述する。
(1)引張強度(TS)
980MPa以上のTSを有する。これにより十分な強度を確保できる。
(2)降伏比(YR)
0.70以上の降伏比を有する。これにより上述の高い引張強度と相まって高い降伏強度を実現でき、深絞り加工等の加工により得た最終製品を高い応力下で使用することができる。好ましくは、0.75以上の降伏比を有する。
(3)TSと全伸び(EL)との積(TS×EL)
TS×ELが21000MPa%以上である。21000MPa%以上のTS×ELを有することで、高い強度と高い延性とを同時に有する、高いレベルの強度延性バランスを得ることができる。好ましくは、TS×ELは23000MPa%以上である。
(4)張出し成形性(限界張出し高さ)
限界張出し高さは、張り出し成形性の評価に用いられている指標である。限界張出し高さは、荷重−ストローク線図において荷重が急激に減少する破断発生時のパンチストロークとする。
より詳細には、Φ120mmの試験片を用い、Φ53.6mmで肩半径8mmのダイとΦ50mmの球頭ポンチを用いて、ポンチと鋼板の間には潤滑用のポリシートをはさみ、ブランクホールド力1000kgfとして張出成形を行い、破断時の高さ(パンチストローク)を測定することにより限界張出し高さ求める。
本発明の高強度鋼板は、限界張出し高さが16mm以上であり、好ましくは17mm以上である。
(5)穴広げ率(λ)
穴広げ率λは、JIS Z 2256に従って求める。試験片に直径d(d=10mm)の打ち抜き穴を空け、先端角度が60°のポンチをこの打ち抜き穴に押し込み、発生した亀裂が試験片の板厚を貫通した時点の打ち抜き穴の直径dを測定し、下記の式より求める。
λ(%)={(d−d)/d}×100
本発明の高強度鋼板は、穴広げ率λが20%以上、好ましくは30%以上である。これによりプレス成形性等の優れた加工性を得ることができる。
(6)スポット溶接部十字引張強度(SW十字引張)
スポット溶接部の十字引張強度はJIS Z 3137に則って評価する。スポット溶接の条件は鋼板(後述の実施例では厚さ1.4mmの鋼板)を2枚重ねたものを用い、ドームラジアス型の電極で加圧力4kN、電流を6kAから12kAまで0.5kAピッチでスポット溶接を実施する。これにより、ちりが発生する最低電流を求める。そして。ちりが発生した最低電流よりも0.5kA低い電流でスポット溶接した継ぎ手の十字引張強度を測定する。
本発明の高強度鋼板は、スポット溶接部の十字引張強度(SW十字引張)が6kN以上、好ましくは8kN以上、より好ましくは10kN以上である。
4.製造方法
次に本発明に係る高強度鋼板の製造方法について説明する。
本発明者らは、所定の組成を有する圧延材に、以下に説明する熱処理(オーステンパー処理)を行うことにより、上述の所望の鋼組織を有し、その結果、上述の所望の特性を有する高強度鋼板を得ること見いだしたのである。
以下にその詳細を説明する。
図1は本発明に係る高強度鋼板の製造方法、とりわけ熱処理を説明するダイアグラムである。
熱処理を施す圧延材は、通常、熱間圧延後、冷間圧延を行って製造する。しかし、これに限定されるものでなく熱間圧延および冷間圧延のいずれか一方を行って製造してもよい。また、熱間圧延および冷間圧延の条件は特に限定されるものではない。
(1)オーステナイト化
オーステナイト化工程は、図1の[2]に示すように、Ac点とAc点の中間の2相共存領域、より詳細にはAc点と0.2×Ac点+0.8×Ac点との間の温度T(Ac≦T≦0.2×Ac点+0.8×Ac)で5秒以上保持した後、さらに図1の[3]、[4]に示すようにAc点以上の温度T(Ac≦T)まで加熱温度Tで5〜600秒保持してオーステナイト化する。
温度Tに加熱して5秒以上保持する。好ましくは、保持時間は900秒以下である。なお保持温度Tは、図1の[2]のように、Ac点と0.2×Ac点+0.8×Ac点との間の一定の温度で保持してもよく、例えば、Ac点と0.2×Ac点+0.8×Ac点との間で徐加熱するなど、Ac点と0.2×Ac点+0.8×Ac点との間で変動させてもよい。このように、フェライトとオーステナイトの2相共存領域内の比較的低い温度域で保持することにより、共存するフェライトとオーステナイトのうち、オーステナイト側により多くのMnが配分され、これによりMn濃化領域を得ることができる。そして、このMn濃化領域に形成され熱処理後も残留オーステナイトとして残ったオーステナイトのMn濃度が高いことから炭素濃化領域におけるMnの濃度のばらつき大きくすることが可能となり、高い張出し成形性を実現できる。
温度TがAc点より低いと、Mnが濃化したオーステナイトの量が少量となり、残留オーステナイト(炭素濃化領域)中のMn濃度のばらつきが小さくなり、十分な張出し成形性を得ることができない。
温度Tが0.2×Ac点+0.8×Ac点より高いと、オーステナイトのMn濃度が低くなり、残留オーステナイト(炭素濃化領域)中のMn濃度のばらつきが小さくなり、十分な張出し成形性を得ることができない。
温度Tでの保持時間が5秒より時間が短いと、Mnが拡散する時間が不足し、オーステナイトへのMn濃化が不十分となり、残留オーステナイト(炭素濃化領域)中のMnのばらつきが小さくなり、十分な張出し成形性を得ることができない。
温度Tでの保持時間は長い方が好ましいが、生産性の観点から900秒以下が好ましい。
好ましくは、温度Tは、0.9×Ac点+0.1×Ac点と0.3×Ac点+0.7×Ac点との間であり、温度Tでの保持時間は10秒以上、800秒以下である。より好ましくは、温度Tは、0.8×Ac点+0.2×Ac点と0.4×Ac点+0.6×Ac点との間であり、温度Tでの保持時間は30秒以上、600秒以下である。
なお、図1に[1]として示した、温度Tまでの加熱速度は、好ましくは5〜20℃/秒である。
次に図1の[3]および[4]で示すように、Ac点以上の温度T(Ac≦T)まで昇温し温度Tで保持してオーステナイト化する。温度Tでの保持時間5〜600秒である。
Ac点以上の温度Tに加熱することで、温度Tに加熱した際は,フェライトであった部分もオーステナイトとなる。この新たにオーステナイトに変態した部分は、Mnが濃化していない。このため、オーステナイト中には上述のMnの濃化領域とともにMnが濃化していない領域が存在することとなり、熱処理後の高強度鋼板において、残留オーステナイト(炭素濃化領域)におけるMn濃度のばらつきを大きくすることが可能となり、高い張出し成形性を実現できる。
温度TがAc点よりも低い、または温度Tでの保持時間が5秒より短いと、得られた高強度鋼板のフェライト分率が5%を超えて、YRが低下する。
温度Tが高すぎると、先に形成したMn濃化領域のMnが拡散し、Mn濃度のばらつきが小さくなり過ぎる虞がある。このため、温度TはAc点+50℃以下であることが好ましい。
温度Tでの保持時間が600秒より長いと、拡散によりMn濃化領域のMn濃度が低くなり、残留オーステナイト中のMn濃度のばらつきが小さくなり、張出し成形性が低下する。
好ましくは、温度Tは、Ac点+10℃以上であり、温度Tでの保持時間は10〜450秒である。より好ましくは、温度Tは、Ac点+20℃以上であり、温度Tでの保持時間は20〜300秒である。
図1の[3]に示す、温度Tから温度Tへの加熱は、0.1℃/秒以上、10℃/秒未満の加熱速度で行うことが好ましい。
なお、Ac点およびAc点については、測定により求めてもよいが、その組成を用いて一般的に知られている計算式により算出してよい。
例えば、下記の(1)式および2(式)を用いることにより、Ac点およびAc点を算出できる(例えば、「レスリー鉄鋼材料学」丸善,(1985)参照)。

Ac1点(℃)=723+29.1×[Si]−10.7×[Mn]+16.9×[Cr]−16.9×[Ni] (1)
Ac3点(℃)=910−203×[C]1/2+44.7×[Si]−30×[Mn]+700×[P]+400×[Al]+400×[Ti]+104×[V]−11×[Cr]+31.5×[Mo]−20×[Cu]−15.2×[Ni](2)
ここで、[ ]は、その中に記載された元素の質量%で示される含有量を示す。
(2)100℃以上、300℃未満の間の冷却停止温度まで冷却
上述のオーステナイト化の後、図1の[7]に示すように、100℃〜300℃の間の冷却停止温度Tまで冷却する。この冷却により、一部のオーステナイトを残したまま、マルテンサイト変態を起こさせる。冷却停止温度Tを100℃以上、300℃未満の温度範囲内で制御することで、マルテンサイトに変態せずに残存するオーステナイトの量を調整して、最終的な残留オーステナイト量を制御する。図1の[7]に示すように、冷却停止温度Tで保持してもよい。保持する場合の好ましい保持時間として、1〜600秒を挙げることができる。保持時間が長くなっても特性上の影響はほとんどないが、600秒を超える保持時間は生産性を低下させる。
温度Tから冷却停止温度Tへの冷却について、図1の[5]に示す、温度Tから650℃以上の温度である急冷開始温度Tまでの冷却は、平均冷却速度0.1以上、10℃/秒未満と比較的ゆっくりと冷却することが好ましい。
そして、図1の[6]に示す、急冷開始温度Tから冷却停止温度Tまでの冷却は、平均冷却速度10℃/秒以上で冷却する。冷却中のフェライトの形成を抑制できるからである
冷却停止温度Tが100℃より低いと、残留オーステナイト量が不足し、TSが高まるもののELが低下し、TS×ELが低下する。
冷却停止温度Tが300℃より高いと、粗大な未変態オーステナイトが増え、その後の冷却でも残存することで、最終的にMAサイズが粗大になり、穴広げ率低くなる。
冷却停止温度Tは、好ましくは120℃以上、280℃以下であり、より好ましくは、
140℃以上、260℃以下である。
また、急冷開始温度Tから冷却停止温度Tまでの平均冷却速度は、好ましくは15℃/s以上であり、より好ましくは20℃/s以上である。
(3)300〜500℃の温度範囲まで再加熱
図1の[8]に示すように、上述の冷却停止温度Tから300〜500℃の範囲にある再加熱温度Tまで加熱する。加熱速度は特に制限されない。再加熱温度Tに到達した後は、図1の[9]に示すようにその温度で保持することが好ましい。好ましい保持時間として50〜1200秒を挙げることができる。
この再加熱により、マルテンサイト中の炭素をはき出させて、周囲のオーステナイトへの炭素濃化を促進させ、炭素濃化領域を形成する。これにより、最終的に得られる残留オーステナイト量(炭素濃化領域)を増大させることができる。
再加熱温度Tが300℃より低いと、炭素の拡散が不足して十分な残留オーステナイト量が得られずTS×ELが低下する。また、保持を行わないまたは保持時間が50秒より短いと、同様に炭素の拡散が不足する虞がある。このため、再加熱温度で50秒以上の保持を行うのが好ましい。
再加熱温度Tが500℃より高いと炭素がセメンタイトとして析出し、十分な量の残留オーステナイトが得られなくなるため、TS×ELが低下する。また保持時間が1200秒より長いと、同様に、炭素がセメンタイトとして析出する虞がある。このため、保持時間は1200秒以下であることが好ましい。
好ましい再加熱温度Tは、320〜480℃であり、この場合、保持時間の上限は900秒以下であることが好ましい。更に好ましい再加熱温度は、340〜460℃であり、この場合、保持時間の上限は600秒以下であることが好ましい。
再加熱の後、図1の[10]に示すように、例えば室温のような200℃以下の温度まで冷却してよい。200℃以下までの好ましい平均冷却速度として50〜2℃/秒を挙げることができる。
以上の熱処理により本発明の高強度鋼板を得ることができる。
以上に説明した本発明の実施形態に係る高強度鋼板の製造方法に接した当業者であれば、試行錯誤により、上述した製造方法と異なる製造方法により本発明に係る高強度鋼板を得ることができる可能性がある。
1.サンプル作製
表1に記載した化学組成を有する鋳造材を真空溶製で製造した後、この鋳造材を熱間鍛造で板厚30mmの鋼板にし、熱間圧延を施した。なお、表1には、上述の(1)式および(2)式を用いて計算したAc点およびAc点も記載した。また、このようにして求めたAc点およびAc点より計算した、0.2×Ac点+0.8×Ac点の値も記載した。
熱間圧延の条件は本特許の最終組織・特性に本質的な影響を施さないが、1200℃に加熱した後、多段圧延で板厚2.5mmとした。この時、熱間圧延の終了温度は880℃とした。その後、600℃まで30℃/秒で冷却し、冷却を停止し、600℃に加熱した炉に挿入後、30分保持し、その後、炉冷し、熱延鋼板とした。
この熱延鋼板に酸洗を施して表面のスケールを除去した後、1.4mmまで冷間圧延を施した。この冷間圧延板に熱処理を行い、サンプルを得た。熱処理条件を表2に示した。なお、表2中の例えば、[2]のように[ ]を内に示した番号は、図1中に[ ]内に示した同じ番号のプロセスに対応する。
表2において、サンプルNo.1では、オーステナイト化を温度Tと温度Tの2段階に分けて行わずに、温度Tに相当するAc点以上の温度でのみ保持した。
サンプルNo.9は、100℃以上、300℃未満の間の冷却停止温度まで冷却する代わりに、再加熱温度まで冷却した後にその温度で保持したサンプル(図1で[7]〜[8]に相当する工程をスキップしたサンプル)である。
サンプル15および31〜36は、加熱温度Tと急冷開始温度Tを同じにしたサンプルである。すなわち、オーステナイト化後、冷却停止温度Tまで1段階で冷却したサンプルである。
なお,表1〜表4において、下線を伏した数値は、本発明の範囲から外れていることを示している。ただし、「−」については、本発明の範囲から外れていても下線を付していないことに留意されたい。
Figure 0006875914
Figure 0006875914
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2.鋼組織
それぞれのサンプルについて上述した方法により、フェライト分率、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率(表3には「焼戻しM/B」と記載)、残留オーステナイト量(残留γ量)、MAの平均サイズ、炭素濃化領域のMn濃度分布の半価幅を求めた。残留オーステナイト量の測定には、株式会社リガク製2次元微小部X線回折装置(RINT−RAPIDII)を用いた。得られた結果を表3に示す。
Figure 0006875914
Figure 0006875914
3.機械的特性
得られたサンプルについて、引張試験機を用いて、YS、TS、ELを測定し、YRおよびTS×ELを算出した。また、上述の方法により穴拡げ率λと、限界張出し高さと、スポット溶接部の十字引張強度(SW十字引張)を求めた。得られた結果を表4に示す。
Figure 0006875914
Figure 0006875914
4.まとめ
本発明の条件を満たす実施例サンプルである、サンプルNo.11〜13、15、17、18、21および28〜46は、いずれも引張強度(TS)が980MPa以上、降伏比(YR)が0.70以上、(TS)と全伸び(EL)との積(TS×EL)が21000MPa%以上、穴広げ率(λ)が20%以上、限界張出し高さが16mm以上およびSW十字引張が6kN以上を達成している。

一方、サンプルNo.1では、オーステナイト化を温度Tと温度Tの2段階に分けて行わずに、温度Tに相当するAc点以上の温度でのみ保持したことから、炭素濃化領域におけるMnの濃度分布の半価幅の値が小さく、限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.2は、保持温度Tが低いため、炭素濃化領域におけるMnの濃度分布の半価幅の値が小さく、限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.3は、保持温度Tが高いため、炭素濃化領域におけるMnの濃度分布の半価幅の値が小さく、限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.4および5は、加熱温度Tに加熱し保持後、Tと同じ温度を加熱温度Tとして選択したため、十分に高い温度でのオーステナイト化を行うことができなかった。このため、フェライト量が多く、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率が低く、炭素濃化領域におけるMnの濃度分布の半価幅の値が小さくなっている。この結果、降伏比と限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.6は、加熱温度Tが低く、フェライド量が多くなり、この結果、降伏比が低くなっている。
サンプルNo.7は、冷却停止温度Tが高いため、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率が0%となっており、かつMAの平均サイズが大きくなっている。この結果、降伏比と穴広げ率が低くなっている。
サンプルNo.8は、加熱温度Tでの保持時間が短いため、炭素濃化領域におけるMnの濃度分布の半価幅の値が小さく、この結果、限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.9は、加熱温度Tでの保持時間が長く、また冷却停止温度Tが高い。このため、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率が0%であり、MAの平均サイズが大きく、かつMnの濃度分布の半価幅の値が小さくなっている。この結果、穴広げ率と限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.10は、冷却停止温度Tが低く、残留オーステナイト量が少なく、この結果、TS×ELの値および限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.16は、急冷開始温度Tが低くいため、フェライド量が多く、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率が低い。この結果、降伏比が低くなっている。
サンプルNo.19は、再加熱温度Tが高く、残留オーステナイト量が少なくなっている。この結果、引張強さ、TS×ELの値および限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.20は、再加熱温度Tが低く、残留オーステナイト量が少なくなっている。この結果、TS×ELの値および限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.22は、C量が低く、残留オーステナイト量が少なく、この結果、TS×ELの値および限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.23は、Mn量が多く、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率が低く、かつMAの平均サイズが大きくなっている。この結果、穴広げ率が低くなっている。
サンプルNo.24は、Mn量が少なく、フェライト量が多く、且つ焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率が低くなっている。この結果、降伏比およびTS×ELの値が低くなっている。
サンプルNo.25は、Si+Al量が低く、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率および残留オーステナイト量が低く、MA平均のサイズが大きくなっている。この結果、TS×ELの値、穴広げ率および限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.26は、C量が多く、その結果SW十字引張強度が低くなっている。
サンプルNo.27は、Si+Al量が多く、MAの平均サイズが大きく、この結果、TS×ELの値、穴広げ率および限界張出し高さが低くなっている。

Claims (6)

  1. C :0.15質量%〜0.35質量%、
    SiとAlの合計:1.12質量%〜2.13質量%、
    Mn:1.59質量%〜2.51質量%、
    P :0.05質量%以下、
    S :0.01質量%以下、
    を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
    鋼組織が、フェライト、MA、焼戻しマルテンサイトおよび焼戻しベイナイトからなり、かつ
    フェライト分率が4.2%以下であり、
    焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率が60%以上であり、
    残留オーステナイト量が10%以上であり、
    MAの平均サイズが1.0μm以下であり、
    残留オーステナイト量と等しい量である炭素濃化領域におけるMnの濃度分布の半価幅が0.3質量%以上である高強度鋼板。
  2. C量が0.30質量%以下である請求項1に記載の高強度鋼板。
  3. Al量が0.10質量%未満である請求項1または2に記載の高強度鋼板。
  4. Cu :0.50質量%以下、
    Ni :0.50質量%以下、
    Cr :0.50質量%以下、
    Mo :0.50質量%以下、
    B :0.01質量%以下、
    V :0.05質量%以下、
    Nb :0.05質量%以下、
    Ti :0.05質量%以下、
    Ca :0.05質量%以下、
    REM:0.01質量%以下、
    の1種または2種以上を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度鋼板。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の高強度鋼板を製造する方法であって、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の成分組成を有する圧延材を用意することと、
    前記圧延材をAc点と0.2×Ac点+0.8×Ac点との間の温度で5秒以上保持した後、Ac点以上の温度まで加熱し5〜600秒間保持してオーステナイト化することと、
    前記オーステナイト化後、650℃から100℃〜300℃の間の冷却停止温度まで10℃/秒以上の冷却速度で冷却することと、
    冷却停止温度から300〜500℃の範囲にある再加熱温度まで加熱することと、
    を含む、高強度鋼板の製造方法。
  6. 前記冷却停止温度までの冷却が、650℃以上の温度である急冷開始温度まで平均冷却速度0.1℃/秒以上、10℃/秒未満で冷却することと、前記急冷開始温度から前記冷却停止温度まで平均冷却速度10℃/秒以上で冷却することを含む請求項5に記載の高強度鋼板の製造方法。
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