JP6866371B2 - 鉄錯体の製造方法及び鉄錯体を用いたエステル化合物の製造方法 - Google Patents

鉄錯体の製造方法及び鉄錯体を用いたエステル化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、2つの鉄原子が1つの酸素原子を介して結合した構造とシッフ塩基を含む配位子構造とをその分子内に有する鉄錯体を収率よく、簡便に製造する方法に関する。また、本発明は、鉄錯体を触媒として用いた、カルボン酸エステルとアルコール化合物とのエステル交換反応によるエステル化合物の製造方法に関し、さらに詳しくは、収率よく簡便に製造された高活性な鉄錯体触媒を用いた、カルボン酸エステルとアルコール化合物とのエステル交換反応によるエステル化合物の製造方法に関する。
従来から、シッフ塩基を含む配位子構造と鉄原子とをその分子内に有する鉄錯体が、樹脂の添加剤、医薬及び触媒として、工業的に用いられている。シッフ塩基を含む配位子構造と鉄原子とをその分子内に有する鉄錯体としては、シッフ塩基を含む配位子構造と1つの鉄原子とをその分子内に有する鉄錯体(以下、鉄単核錯体という)と2つの鉄原子が1つの酸素原子を介して結合した構造とシッフ塩基を含む配位子構造とをその分子内に有する鉄錯体(以下、鉄二核錯体という)が知られている。用途によっては、鉄単核錯体に比べ、鉄二核錯体の方が高性能である。例えば、エポキシ樹脂組成物の添加剤として鉄錯体を用いた場合、鉄単核錯体を含む組成物に比べ、鉄二核錯体を含む組成物の方が優れた難燃性と高い流動性を発揮する。また、磁性を応用した抗ガン剤などのドラッグ・デリバリシステムのキャリアとして鉄錯体を用いた場合、鉄単核錯体に比べ、鉄二核錯体は磁性が高く、キャリアとして好適であることが知られている。
これまで、鉄二核錯体を得るための各種製法が提案されている。例えば、特許文献1には、触媒として用いるための鉄二核錯体の製法として、サリチルアルデヒド、エチレンジアミン及び硫酸第一鉄7水和物を水に溶かし、加温することによって析出した黒褐色の反応生成物をピリジン/エタノール溶媒を用いて再結晶することにより〔Fe(C16H14N2O2)〕2Oが得られることが記載されている。
また、特許文献2には、エポキシ樹脂組成物の難燃性と流動性を向上させるための添加剤として用いるための鉄二核錯体の製造方法として、サリチルアルデヒド、エチレンジアミン、硫酸鉄を純水に溶かし、110℃で3時間放置した後、冷却しろ過することにより鉄二核錯体が得られることが記載されている。
また、特許文献3には、磁性を応用した抗ガン剤などのドラッグ・デリバリシステムのキャリアとして用いるための鉄二核錯体の製造方法として、サリチルアルデヒド誘導体とエチレンジアミンから合成した配位子とトリエチルアミンとをメタノールへ溶解し、塩化第二鉄のメタノール溶液を加えて得られた化合物を洗浄、再結晶することにより鉄二核錯体が得られることが記載されている。
また、従来から、シッフ塩基を含む配位子構造と鉄原子とをその分子内に有する鉄錯体を触媒として、カルボン酸エステルとアルコール化合物とのエステル交換反応を行うことが知られている。
例えば、上記特許文献1には、鉄触媒の存在下、メタクリル酸メチルと第1級水酸基又は第2級水酸基を有するアルコール化合物とのエステル交換反応を行い、第1級水酸基又は第2級水酸基を有するアルコール化合物のメタクリル酸エステル化合物が得られることが記載されている。
特開昭55−143935号公報 特開2002−226678号公報 特開2009−173631号公報
しかし、特許文献1及び2に記載の製法では、サリチルアルデヒド、エチレンジアミン及び鉄塩を混合する手順等の反応条件は、より詳細には検討されておらず、また、鉄二核錯体が得られたことを示す定量的な分析データ等の根拠も示されていない。また、特許文献1では、(メタ)アクリル酸アルキルと第3級水酸基を有するアルコール化合物とのエステル交換反応により、第3級水酸基を有するアルコール化合物のメタアクリル酸エステルを得る方法は具体的に検討されていない。
さらに、特許文献3に記載の製法では、配位子を合成・単離した後、鉄塩との反応を行い、さらに精製を行うため、工程が煩雑であり、製造コスト高が予想される。
本発明者らが、鋭意検討を行った結果、鉄錯体を従来の方法で合成した場合、生成物は、鉄単核錯体と鉄二核錯体の混合物として得られることがわかった。また、鉄錯体を触媒としたエステル交換反応において、特に第3級水酸基を有するアルコール化合物をエステル化する場合、鉄二核錯体比率の高い鉄錯体ほど触媒活性が高いことを見出し、本発明に至った。
本発明の1つの目的は、2つの鉄原子が1つの酸素原子を介して結合した構造とシッフ塩基を含む配位子構造とをその分子内に有する鉄二核錯体を収率よく、簡便に製造すべくなされたものであって、その目的とするところは、鉄二核錯体比率の高い鉄錯体を得るための安価な製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、通常エステル交換反応が困難な第3級水酸基を有するアルコール化合物を原料とした場合であっても、カルボン酸エステルとのエステル交換反応により高収率でエステル化合物が得られる、エステル化合物の製造方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、複数の水酸基を有するアルコール化合物であっても、そのすべての水酸基をエステル化したエステル化合物を高収率で製造する、エステル交換反応によるエステル化合物の製造方法を提供することである。
本発明は、水の存在下、鉄塩と下記一般式(1)で表される化合物とを混合して前駆体溶液を調製する工程(I−1)、及び
前記前駆体溶液と、下記一般式(2)又は(3)で表される化合物とを混合する工程(I−2)を含む、下記一般式(4)又は(5)で表される鉄錯体の製造方法である。
Figure 0006866371
Figure 0006866371
Figure 0006866371
Figure 0006866371
Figure 0006866371
式(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、1価の脂環基又は1価の芳香環基を表す。ただし、R1とR2、R2とR3、及びR4とR5の少なくとも1つが互いに結合して環を形成していてもよい。
本発明の鉄錯体の製造方法においては、前記工程(I−2)において、前駆体溶液と、前記一般式(2)又は(3)で表される化合物とを混合する際又は混合後のpHを7超にすることが好ましい。
本発明の鉄錯体の製造方法においては、前記鉄塩の価数が3価であることが好ましい。
本発明の鉄錯体の製造方法においては、前記工程(I−2)において、前駆体溶液と、前記一般式(2)又は(3)で表される化合物とを混合する際の温度が50℃以上であることが好ましい。
本発明の鉄錯体の製造方法における前記一般式(1)で表される化合物が、好ましくは、下記一般式(6)で表される化合物であり、より好ましくは、サリチルアルデヒドである。
Figure 0006866371
式(6)中、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルキルエーテル基、ハロゲン原子、1価の脂環基又は1価の芳香環基を表す。ただし、R8とR9、R9とR10、及びR10とR11の少なくとも1つが互いに結合して環を形成していてもよい。
本発明の鉄錯体の製造方法における前記一般式(2)で表される化合物が、好ましくは、下記一般式(7)で表される化合物であり、より好ましくは、エチレンジアミンである。
Figure 0006866371
(式(7)中、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、1価の脂環基又は1価の芳香環基を表す。ただし、R12とR13が互いに結合して環を形成していてもよい。)
また、本発明によれば、下記一般式(8)で表される鉄錯体を製造することができる。
Figure 0006866371
本発明の鉄錯体の製造方法では、工程(I−2)で得られた反応液をろ過することによって、鉄錯体を固形物として回収する工程(II)を含んでもよい。
本発明の鉄錯体の製造方法では工程(II)で得られた鉄錯体を乾燥する工程(III)を含んでもよい。
本発明によれば、鉄錯体触媒を製造することができる。
さらに本発明は、前記鉄錯体の製造方法により製造される鉄錯体触媒の存在下、カルボン酸エステルとアルコール化合物とのエステル交換反応を行う工程(IV)を含むエステル化合物の製造方法である。
本発明のエステル化合物の製造方法では、前記鉄錯体を触媒として用いることにより、第3級水酸基を有するアルコール化合物であっても、該アルコール化合物に含まれる全ての水酸基をエステル化したエステル化合物を高収率で製造することができる。
本発明のエステル化合物の製造方法では、前記エステル交換反応の反応系内の含水率が1000ppm以下であることが好ましい。
本発明のエステル化合物の製造方法では、前記アルコール化合物の水酸基に対し、鉄原子0.1〜20mol%に相当する量の前記鉄錯体を触媒として用いることが好ましい。
本発明の鉄錯体の製造方法によれば、2つの鉄原子が1つの酸素原子を介して結合した構造とシッフ塩基を含む配位子構造とをその分子内に有する鉄二核錯体を収率よく、簡便に製造することができる。
また、本発明のエステル化合物の製造方法によれば、収率よくかつ簡便に製造された、鉄錯体を触媒として用いることにより、通常エステル交換反応が困難な第3級水酸基を有するアルコール化合物を原料とした場合であっても、エステル化合物を高収率で製造することができる。また、前記鉄錯体を触媒として用いると、第3級水酸基などの複数の水酸基を有するアルコール化合物であっても、そのすべての水酸基をエステル化したエステル化合物を高収率で製造することができる。
試験例1で測定したマススペクトルの一例を示した図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書では、2つの鉄原子が1つの酸素原子を介して結合した構造とシッフ塩基を含む配位子構造とをその分子内に有する鉄錯体を「鉄二核錯体」と記載することがある。また、シッフ塩基を含む配位子構造と1つの鉄原子とをその分子内に有する鉄錯体を「鉄単核錯体」と記載することがある。
本発明で用いられる鉄塩は、特に限定されず、公知の塩を用いることができる。前記鉄塩としては、例えば、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、硝酸第一鉄等の第一鉄塩;及び、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩基性酢酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸鉄等の第二鉄塩などが挙げられる。これらは、その結晶形態において含まれる結晶水を含有していてもよい。また、鉄二核錯体の収率を高める観点からは、これらの中でも、3価の鉄である第二鉄塩(価数が3価の鉄塩)が好ましい。
本発明で用いられる一般式(1)で表される化合物としては、特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。
Figure 0006866371
前記式(1)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、1価の脂環基又は1価の芳香環基を表す。ただし、R1とR2、及びR2とR3の少なくとも1つが互いに結合して環を形成していてもよい。
1とR2、又はR2とR3が互いに結合して形成される環としては、脂環基、芳香環基などが挙げられる。脂環基において、その炭素環は飽和炭化水素のみからなるものであってもよく不飽和炭化水素を含むものであってもよい。また、脂環基、芳香環基の環に含まれる炭素原子の一部は窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子に置き換えられたものであってもよい(ただし、ヘテロ原子で連続して置換されることはない)。
1、R2、又はR3となる1価の脂環基又は1価の芳香環基、及び、R1とR2、又はR2とR3が互いに結合して形成される環は置換基を有していてもよい。これら置換基としては、例えば、ハロゲン基、水酸基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、ホルミル基、アシル基、及びスルホン酸基などが挙げられる。
なお、前記式(1)で表される化合物は、下記式(1')又は(1")で表される互変異性体であってもよい。
Figure 0006866371
前記式(1')及び(1")中のR1、R2、及びR3の定義等は、前記式(1)のR1、R2、及びR3の定義等と同様である。
前記一般式(1)で表される化合物の中でも、鉄錯体の収率を高める観点からは、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006866371
前記式(6)中、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルキルエーテル基、ハロゲン原子、1価の脂環基又は1価の芳香環基を表す。ただし、R8とR9、R9とR10、及びR10とR11の少なくとも1つが互いに結合して環を形成していてもよい。
8とR9、R9とR10、又はR10とR11が互いに結合して形成される環としては、脂環基、芳香環基などが挙げられる。脂環基において、その炭素環は飽和炭化水素のみからなるものであってもよく不飽和炭化水素を含むものであってもよい。また、脂環基、芳香環基の環に含まれる炭素原子の一部は窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子に置き換えられたものであってもよい(ただし、ヘテロ原子で連続して置換されることはない)。
8、R9、R10、又はR11となる1価の脂環基又は1価の芳香環基、及び、R8とR9、R9とR10、又はR10とR11が互いに結合して形成される環は、置換基を有していてもよい。これら置換基としては、例えば、ハロゲン基、水酸基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、ホルミル基、アシル基、及びスルホン酸基などが挙げられる。
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、サリチルアルデヒド、2−ヒドロキシ−3−メチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−5−メチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−3,4,5−トリメチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−3−イソプロピルベンズアルデヒド、3−ニトロサリチルアルデヒド、4−クロロサリチルアルデヒド、4−ブロモサリチルアルデヒド、4−ヨードサリチルアルデヒド、5−クロロサリチルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,3,4−トリヒドロキシベンズアルデヒド、2−ヒドロキシイソフタルアルデヒド、3−ホルミルサリチル酸、3−メトキシサリチルアルデヒド、3−メトキシ−5−ニトロサリチルアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、6−ニトロ−2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、1−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド、3−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド、4−クロル−2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2,8−ジヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフトアルデヒド、3−ヒドロキシ−4−ホルミルピリジン、ピリドキサール、4−ヒドロキシキノリン−3−カルボキシアルデヒド、7−ヒドロキシキノリン−8−カルボキシアルデヒド、o―ヒドロキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−3−メチルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−4−メチルアセトフェノン、2,3−ジヒドロキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシアセトフェノン、2,3,4−トリヒドロキシアセトフェノン、2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン、2−ヒドロキシプロピオフェノン、2,4−ジアセチルフェノール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシアセトフェノン、1−アセチル−2−ヒドロキシナフタレン、2−アセチル−1−ヒドロキシナフタレン、1−ヒドロキシ−2−プロピオニルナフタレン、1−ベンゾイル−2−ヒドロキシナフタリン、2−アセチル−4−クロロ−1−ヒドロキシナフタリン等のアシル基とヒドロキシ基とを環上の隣接する炭素に有する炭素環又はヘテロ環の芳香族化合物;
アセチルアセトン、2,4−ヘキサジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘプタンジオン、2,4−ノナンジオン、2−アセチルシクロヘキサノン、ベンゾイルアセトン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、1−(2−フリル)−1,3−ブタンジオン、1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオン、1−(2−ピリジル)−1,3−ブタンジオン、5,9,13,17−テトラメチル−2,4−オクタデカンジオン、2−(2−メチルカプロイル)−シクロペンタノン、2,4,6−ヘプタントリオン及びデヒドロ酢酸等の1,3−ジケトン骨格を有する化合物;3−ヒドロキシプロペナール、3−ヒドロキシ−2−メチルプロペナール、2,3−ジヒドロキシプロペナール、4−ヒドロキシ−3−ブテン−2−オン、4−ヒドロキシ−3−ペンテン−2−オン等のβ位にヒドロキシ基を有するα,β−不飽和カルボニル化合物;などが挙げられる。中でも、サリチルアルデヒド、2−ヒドロキシ−3−メチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−4−メチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−5−メチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−3,4,5−トリメチルベンズアルデヒド、2−ヒドロキシ−3−イソプロピルベンズアルデヒド、3−ニトロサリチルアルデヒド、4−クロロサリチルアルデヒド、4−ブロモサリチルアルデヒド、4−ヨードサリチルアルデヒド、5−クロロサリチルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,3,4−トリヒドロキシベンズアルデヒド、2−ヒドロキシイソフタルアルデヒド、3−ホルミルサリチル酸、3−メトキシサリチルアルデヒド、3−メトキシ−5−ニトロサリチルアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、6−ニトロ−2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、1−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド、3−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド、4−クロル−2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2,3−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2,8−ジヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフトアルデヒド等の前記一般式(6)で表される化合物が好ましい一態様であり、とりわけサリチルアルデヒドがより好ましい一態様である。
本発明で用いられる一般式(2)で表される化合物としては、特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。
Figure 0006866371
前記式(2)中、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、1価の脂環基又は1価の芳香環基を表す。ただし、R4とR5が互いに結合して環を形成していてもよい。
4とR5が互いに結合して形成される環としては、脂環基、芳香環基などが挙げられる。脂環基において、その炭素環は飽和炭化水素のみからなるものであってもよく不飽和炭化水素を含むものであってもよい。また、脂環基、芳香環基の環に含まれる炭素原子の一部は窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子に置き換えられたものであってもよい(ただし、ヘテロ原子で連続して置換されることはない)。
4、R5、R6、又はR7となる1価の脂環基又は1価の芳香環基、及び、R4とR5が互いに結合して形成される環は置換基を有していてもよい。これら置換基としては、例えば、ハロゲン基、水酸基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、ホルミル基、アシル基、及びスルホン酸基などが挙げられる。
前記一般式(2)で表される化合物の中でも、鉄二核錯体の収率を高める観点からは、下記一般式(7)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006866371
前記式(7)中、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、1価の脂環基又は1価の芳香環基を表す。ただし、R12とR13が互いに結合して環を形成していてもよい。
12とR13が互いに結合して形成される環としては、脂環基、芳香環基などが挙げられる。脂環基において、その炭素環は飽和炭化水素のみからなるものであってもよく不飽和炭化水素を含むものであってもよい。また、脂環基、芳香環基の環に含まれる炭素原子の一部は窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子に置き換えられたものであってもよい(ただし、ヘテロ原子で連続して置換されることはない)。
12又はR13となる1価の脂環基又は1価の芳香環基、及び、R12とR13が互いに結合して形成される環は置換基を有していてもよい。これら置換基としては、例えば、ハロゲン基、水酸基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、ホルミル基、アシル基、及びスルホン酸基などが挙げられる。
前記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、2,3−ジアミノブタン、1,1,2,2−テトラメチルエチレンジアミン、1,1,2−トリメチルエチレンジアミン、1−フェニルエチルジアミン等のエチレンジアミン誘導体などが挙げられる。中でも、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、2,3−ジアミノブタン、1−フェニルエチルジアミン等の前記一般式(7)で表される化合物が好ましい一態様であり、とりわけエチレンジアミンがより好ましい一態様である。
本発明で用いられる一般式(3)で表される化合物としては、特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。
Figure 0006866371
前記式(3)中のR4及びR5の定義等は、前記式(2)のR4及びR5の定義等と同様である。
前記一般式(3)で表される化合物としては、例えば、オルトフェニレンジアミン、4−メチルオルトフェニレンジアミン、4−ニトロオルトフェニレンジアミン、2,3−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノピリジン、2,3−ジアミノピラジン、3,4−ジアミノピラジン及び2,3−ジアミノフラン等の芳香環の隣接する炭素に2つのアミノ基を有するジアミンなどが挙げられる。
本発明の鉄錯体の製造方法によって製造される鉄二核錯体は、下記一般式(4)又は(5)で表される化合物である。かかる鉄錯体は、例えば本発明のエステル化合物の製造方法などにおいて触媒(鉄錯体触媒)として用いることができる。
Figure 0006866371
Figure 0006866371
式(4)、式(5)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、1価の脂環基又は1価の芳香環基を表す。ただし、R1とR2、R2とR3及びR4とR5の少なくとも1つが互いに結合して環を形成していてもよい。
1とR2、R2とR3、又はR4とR5が互いに結合して形成される環としては、脂環基、芳香環基などが挙げられる。脂環基において、その炭素環は飽和炭化水素のみからなるものであってもよく不飽和炭化水素を含むものであってもよい。また、脂環基、芳香環基の環に含まれる炭素原子の一部は窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子に置き換えられたものであってもよい(ただし、ヘテロ原子で連続して置換されることはない)。
1、R2、R3、R4、R5、R6、又はR7となる1価の脂環基又は1価の芳香環基、及び、R1とR2、R2とR3、又はR4とR5が互いに結合して形成される脂環基又は芳香環基は置換基を有していてもよい。これら置換基としては、例えば、ハロゲン基、水酸基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、ホルミル基、アシル基、及びスルホン酸基などが挙げられる。
なお、本発明の鉄錯体は上記置換基を通して、担体、低分子化合物などと結合していてもよい。これにより、樹脂の添加剤、医薬、及び、触媒など工業的に使用する際の利便性が向上する。また、本発明のエステル化合物の製造方法でその鉄錯体を触媒として用いる場合には、上記置換基を通して、担体などと結合していてもよい。これにより、触媒として使用する際の利便性が向上する。
本発明の鉄錯体の製造方法では、サリチルアルデヒド、エチレンジアミン、鉄塩を原料として、下記一般式(8)で表される鉄二核錯体を製造することができる。
Figure 0006866371
本発明の鉄錯体の製造方法では、鉄錯体を合成する工程(以下、単に「工程(I)」と略称する場合がある)において、予め、水の存在下、鉄塩と前記一般式(1)で表される化合物とを混合して前駆体溶液を調製する工程(I−1)を経た後、工程(I−1)で得られた前駆体溶液と前記一般式(2)又は(3)で表される化合物とを混合する工程(I−2)を経て、鉄錯体を生成させる。すなわち典型的には、工程(I−1)は、前記一般式(2)又は(3)で表される化合物の不存在下に行われる。このようにすることで鉄単核錯体に対する鉄二核錯体の割合を高めることができ、結果として、目的とする鉄二核錯体を収率よく製造することができる。他の方法、例えば(i)水の存在下、鉄塩、前記一般式(1)で表される化合物、及び前記一般式(2)又は(3)で表される化合物を一括で混合した場合;(ii)水の存在下、前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)又は(3)で表される化合物とを混合して得た溶液と鉄塩とを混合した場合;(iii)水の存在下、鉄塩と前記一般式(2)又は(3)で表される化合物とを混合して得た溶液と前記一般式(1)で表される化合物とを混合した場合;では、いずれも、配位子化合物の析出等によって、配位子化合物への鉄の配位が進まず、鉄二核錯体の収率が著しく低下する。
また、本発明者らの検討から、鉄二核錯体の形成(二核化)において、鉄原子−酸素原子−鉄原子の結合に含まれる酸素原子は、反応系に含まれる水に由来することが明らかになっている。したがって工程(I)の反応系内、特に工程(I−2)の反応系内には、水が存在している必要がある。水は、工程(I)の反応に用いる溶媒(例えば、水、又は水を含んだ有機溶媒)として供給することができる。また、水は、鉄塩に含まれ得る結晶水として供給されてもよい。
前記有機溶媒は、特に限定されず、公知の有機溶媒を用いることができる。中でも、鉄塩、前記一般式(1)で表される化合物、前記一般式(2)又は(3)で表される化合物、及び、水を溶解できることから、有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類が好ましい。
工程(I)の反応系内に存在する水、特に工程(I−2)の反応系内に存在する水の供給源としては、生成する鉄錯体が水に不溶であり、析出により反応を追い込むことが可能であること、及び、工程(II)での生成物の回収がしやすくなること、また、廃液処理の負荷低減などの観点から、工程(I)の反応に用いる水のみからなる溶媒であることが好ましい。
工程(I−2)において、工程(I−1)で得られた前駆体溶液と、前記一般式(2)又は(3)で表される化合物とを混合する際又は混合後のpHは7超(液性が塩基性)とすることが好ましく、9以上とすることがより好ましく、10以上とすることがさらに好ましい。pHが前記範囲であれば、鉄二核錯体の収率が高くなる。一方液性が中性から酸性である場合は、鉄二核錯体の収率が低下する傾向にある。pHは、塩基性化合物を加えることによって調整することができる。塩基性化合物としては、例えば、反応基質である前記一般式(2)又は(3)で表される化合物、トリエチルアミン、ピリジン、トリエタノールアミンなどの有機塩基化合物;水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニアなどの無機塩基化合物;等が挙げられる。
工程(I−2)において、工程(I−1)で得られた前駆体溶液と、前記一般式(2)又は(3)で表される化合物とを混合する際の温度は、50℃以上が好ましく、50℃から100℃であることがより好ましく、60℃から80℃であることが最も好ましい。温度が50℃未満の場合、反応がほとんど進行せず、鉄二核錯体の収率が低下する。温度が高温(例えば100℃を超える温度)となると、加熱にかかるコスト負担が大きくなる傾向にある。
工程(I−1)において、水の存在下、鉄塩と前記一般式(1)で表される化合物とを混合して前駆体溶液を調製する時間に特に制限はない。工程(I−2)において、前駆体溶液と前記一般式(2)又は(3)で表される化合物とを混合する際の時間は、鉄二核錯体を高収率で得る観点から、10分から4時間であることが好ましく、30分から3時間であることがより好ましい。工程(I−2)における前記時間が10分未満の場合、鉄二核錯体の収率が低下する傾向にある。また、その時間が4時間を超える場合、製造固定費負担が大きくなる傾向にある。
本発明の製造方法における出発原料の鉄塩と前記一般式(1)で表される化合物とのモル比は、経済性等を考慮して、適切に選択されるが、通常1:0.5〜1:10であり、好ましくは1:1〜1:4であり、より好ましくは1:2〜1:3である。一方、鉄塩と前記一般式(2)又は(3)で表される化合物とのモル比は、経済性等を考慮して適切に選択されるが、通常1:1〜1:10であり、好ましくは1:1〜1:5であり、より好ましくは1:2〜1:5である。
前記工程(I)を経て得られた鉄錯体を含む反応液は、さらに未反応の原料等をろ過することによって除去し、鉄錯体を固形物として回収する工程(II)に供してもよい。ろ過方法は、特に限定されず、公知の方法が用いられる。具体的には、加圧ろ過、吸引ろ過、遠心分離等が挙げられる。
さらに、前記工程(II)で得られた鉄錯体を乾燥する工程(III)に供してもよい。乾燥方法は、特に限定されず、公知の方法が用いられる。具体的には、真空乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。
本発明の鉄錯体の製造方法により鉄二核錯体を収率よく製造できるメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。通常、錯体は所望の配位子を製造した後、当該金属を含む塩を作用させることにより製造する。鉄サレン錯体の場合、原料となる水酸基を有する有機酸、ジアミン誘導体、および、鉄塩の全てを混合して製造する方法が一般的である。この場合、水酸基を有する有機酸とジアミン誘導体は速やかに脱水縮合して配位子を形成し、その後に鉄塩が配位子に作用することにより鉄サレン錯体が得られると考えられている。
配位子と金属が結合する部位の広さは配位子により立体的に制限されている。従って、鉄サレン錯体の場合、水酸基を有する有機酸とジアミン誘導体より成る配位子に結合する鉄塩に水和可能な水分子の数は、配位子の結合部位の広さにより制限されると考えられる。そこで、上記考えに基づき検討を行った結果、予め水酸基を有する有機酸と鉄塩とを混合することで前駆体を形成することができ、前駆体を形成する鉄塩の水和可能な水分子の数には立体的な制限が無くなったのではないかと推測される。
つまり、前駆体から鉄サレン錯体を製造する場合の鉄塩に水和している水分子の数は、通常の製造法で鉄サレン錯体を製造する場合の鉄塩に水和している水分子の数に比べ多くなると考えられる。本発明の目的物である鉄二核錯体の架橋位を構成する酸素分子が反応溶媒である水由来であることから、鉄塩に水和している水分子の数が多い本発明の方法では、鉄二核錯体の形成が促進されると推測している。
本発明の鉄錯体の製造方法によって製造される鉄錯体の用途に特に制限はなく、樹脂の添加剤、医薬、触媒等の各用途に用いることができ、特に触媒(鉄錯体触媒)に用いることが好ましい。
本発明のエステル化合物の製造方法において、エステル化合物は、上記工程(I)を含む工程を経て得られた前記一般式(4)又は(5)で表される鉄錯体(触媒)の存在下、カルボン酸エステルとアルコール化合物とのエステル交換反応を行う工程(IV)により製造される。前記鉄錯体を触媒としたエステル交換反応の方法に特に制限はなく、例えば、カルボン酸エステルとアルコール化合物と触媒とを混合し加熱することによって行う。また、副生するカルボン酸エステル由来のアルコールを留去することで反応を促進できる。なお、前記鉄錯体は、置換基を通じて担体に固定化されていてもよい。担体に固定化されることによって、反応液からの触媒の分離が容易になる。
上記エステル交換反応で用いられるカルボン酸エステルは、特に限定されず、公知の化合物を用いることができるが、反応によって副生するアルコールの留去のしやすさから、エステル基がメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、t−ブチル等の低級アルキル基を有する化合物が好ましい。カルボン酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸iso−プロピル、メタクリル酸n−ブチルなどが挙げられる。
上記エステル交換反応で用いられるアルコール化合物は、特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。特に、本発明で得られる鉄二核錯体は、触媒活性が高いことから、第3級水酸基を効率よくエステル化することができる。第3級水酸基を有するアルコール化合物としては、1価アルコールでも多価アルコールでもよい。1価アルコールとしては、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、2−メチル−3−ブテン−2−オールなどが挙げられる。多価アルコールとしては、イソプレングリコール、4−メチル−2,4−ペンタンジオール、5−メチル−3,5−ヘキサンジオール、6−メチル−4,6−ヘプタンジオール、7−メチル−5,7−オクタンジオール、4−メチル−1,4−ペンタンジオール、5−メチル−1,5−ヘキサンジオール、6−メチル−1,6−ヘプタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ヘキサンジオール、3−プロピル−1,3−ヘキサンジオール、3−エチル−1,3−ヘプタンジオール、3−メチル−1,3−ノナンジオール、4−メチル−1,4−ヘキサンジオール、5−メチル−1,5−ヘプタンジオール、6−メチル−1,6−オクタンジオールなどが挙げられる。
また、本発明で得られる鉄二核錯体は、触媒活性が高いことから、工程(IV)において、原料となるアルコール化合物に含まれる全ての水酸基が、原料のカルボン酸エステルに含まれるアシル基によりエステル化された化合物を効率よく製造することができる。アルコール化合物に含まれる全ての水酸基がエステル化された化合物としては、例えば、酢酸t−ブチル、t−ブチルメタクリレート、イソプレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。
上記工程(IV)のエステル交換反応においては、反応系内の含水率が低いほど、アルコール化合物、特に第3級水酸基を有するアルコール化合物のエステル化合物の生成速度が高まり、収率が上がる傾向にある。そのため、工程(IV)のエステル交換を行う反応系内(反応液中)の含水率は、1000ppm以下であることが好ましく、600ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましい。反応系内の含水率が1000ppmを超えると第3級水酸基に対するエステル交換活性が低下しやすくなり、反応時間が長時間に及ぶ場合があり、副反応を併発する場合、収率が低下する場合がある。
工程(IV)の反応系内の含水率を低く維持する方法については、反応系内の含水率を所望の低い範囲に維持できる限り特に制限されない。なお、前記鉄二核錯体を含むエステル交換触媒は、一般公知のエステル交換触媒であるチタンアルコラートとは異なり、水分により分解失活しないことから、反応系の脱水は、反応を行う前であっても、反応を開始した後であってもよい。反応系内の含水率を低く維持する方法としては、例えば、反応を行う前に、水と共沸する溶媒を用いて、使用原料に含まれる水分を共沸脱水により除去しておく方法;反応系へ水分と共沸する溶媒を添加し、水分を共沸留去しながら反応を行う方法;モレキュラーシーブ等の乾燥剤を用いて、使用原料に含まれる水分を吸着除去しておく方法;などが挙げられる。特に、上記工程(IV)のエステル交換反応においては、エステル交換反応に用いる鉄二核錯体を含む触媒を予め脱水する工程を、工程(IV)のエステル交換反応の前に加えることが好ましい。かかる脱水工程としては、具体的には、鉄二核錯体を含む触媒と前記アルコール化合物との共存下、共沸溶媒を用いて、前記触媒を脱水する方法が挙げられる。前記共沸溶媒としては、エステル交換反応などを阻害しない限り公知の溶媒を用いることができ、例えば、トルエン、キシレン、2−ブタノン、ジオキサン、ベンゼン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
また、全還流して反応を行う場合には、反応系内の含水率を低く維持する他の方法として、還流液をモレキュラーシーブ等の乾燥剤を充填した塔に通すことによって、水分を吸着除去する等の方法を用いることができる。
上記工程(IV)のエステル交換反応において、出発原料のアルコール化合物に含まれる水酸基とカルボン酸エステルに含まれるアシル基とのモル比は、経済性、沸点、共沸性等を考慮して、適切に選択されるが、アルコール化合物に含まれる水酸基のモル数:カルボン酸エステルに含まれるアシル基のモル数が、通常1:1〜1:50であり、好ましくは1:1〜1:20である。
本発明のエステル化合物の製造方法において、前記鉄二核錯体(鉄錯体触媒)の使用量は、前記アルコール化合物の水酸基(水酸基が複数含まれる場合には、その水酸基の総数)に対し、通常鉄原子0.1〜20mol%に相当する量であり、好ましくは、鉄原子0.5〜15mol%に相当する量、より好ましくは、鉄原子1〜10mol%に相当する量である。使用量が多くなり過ぎるとコスト高となり過ぎ、使用量が少な過ぎると反応時間が長くなり過ぎ生産性が低下する傾向にある。
上記工程(IV)のエステル交換反応における反応温度は、通常70〜150℃、好ましくは80〜120℃、より好ましくは90〜110℃である。反応温度が低いほど、反応時間が長くなり、生産性が低下する。また、反応温度が高すぎると副反応を併発する危険性が高まる。反応圧力は、常圧でよいが、生成したアルコールの除去を容易にするため、減圧にしてもよい。反応時間は、生産性の観点から、通常200時間以下、好ましくは150時間以下、より好ましくは100時間以下である。
上記工程(IV)のエステル交換反応においては、溶媒を用いてもよい。溶媒は、アルコール化合物、カルボン酸エステル化合物などと副反応を生じたり、エステル交換反応などを阻害したりするものを除き、公知の溶媒を用いることができ、水及び副生するアルコールとの共沸性及び反応温度などを考慮して適宜選択することができる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、2−ブタノン、ジオキサン、ベンゼン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
工程(IV)のエステル交換反応により得られた反応液は、さらに未反応の原料等を除去する蒸留工程に供してもよい。蒸留方法は、薄膜蒸留、充填塔を用いた蒸留等が挙げられる。
上記工程(IV)のエステル交換反応においては、重合反応の併発する可能性のある化合物などを用いる場合においては、重合を防止するため、重合禁止剤の添加及び/又は反応系内への酸素の導入を行うことが好ましい。重合禁止剤は、公知の物質を特に限定なく用いることができ、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエン、フェノチアジン、N,N'−ジナフチル−p−フェニレンジアミンなどを単独で、あるいは、組み合わせて使用することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例及び比較例における分析は、以下試験例1及び2に従って行った。
<試験例1>鉄二核錯体比率
以下の実施例または比較例で得られた粉末0.5g、および、塩化ナトリウム0.5gを乳鉢に採取し、すりつぶし、混合物を得た。混合物の一部をMALDIターゲットプレートに載せ、イオン交換水を少量加えた後、水分を蒸発させ、測定試料を作製した。MALDI−TOF−MS(Bruker製)を用いて、測定試料のマススペクトルを測定した。得られたマススペクトルの鉄単核錯体のピーク(m/z=322)と鉄二核錯体のピーク(m/z=683)の強度から、鉄二核錯体比率(%)=鉄二核錯体/(鉄単核錯体+鉄二核錯体)×100を求めた。
鉄錯体のマススペクトルを図1に示す。
<試験例2>エステル交換能
モレキュラーシーブ(4A)20gを充填した側管付充填塔、冷却器、温度計及び乾燥管を取り付けた50mL三口フラスコに、鉄錯体0.64g(以下の実施例または比較例で得られた粉末の質量として)、イソプレングリコール1.04g、メタクリル酸メチル40g、フェノチアジン0.08g、トリデカン0.2gを加えた後、常圧攪拌条件下で、フラスコの内温を100〜105℃になるようにフラスコを120℃に設定したオイルバスに浸漬し、モレキュラーシーブを通して、留出してくる留分を全還流させ反応系に戻しながら、7時間反応を行った。
反応液をサンプリングし、フィルター濾過した後、ガスクロマトグラフィーで分析し、トリデカンを内部標準として、イソプレングリコールジメタクリレートを定量した。原料であるイソプレングリコールを100モル%とした場合のイソプレングリコールジメタクリレートの収率(モル%)を求めることにより、エステル交換能を評価した。なお、カールフィッシャー水分測定法により、モレキュラーシーブを通して反応系に戻る留分の水分量を測定し、本試験系での反応液の含水率を求めたところ、0.1ppmであった。
(ガスクロマトグラフィーの条件)
装置:GC−2014(島津製作所製)
カラム:DB−1 0.25mmφ×30mm、膜厚0.25μm(アジレント社製)
インジェクション温度:280℃
カラム温度:50℃で5分保持、10℃/分で280℃まで昇温、その後、3分間保持。
FID検出器温度:280℃
キャリアガス:ヘリウム、カラム流速1.5mL/分
注入量:0.2μL
(カールフィッシャー水分測定の条件)
装置:CA−100(三菱化学社製)
陽極液:アクアミクロンAX(三菱化学社製)
陰極液:アクアミクロンCXU(三菱化学社製)
注入量: 0.2g
<実施例1>
冷却管、滴下ロート、温度計、メカニカルスターラーを取り付けた1L四口フラスコに、水750mLを入れ、硝酸第二鉄九水和物112g(0.28モル)を加えて溶解した。そこへ、サリチルアルデヒド68g(0.56モル)を滴下し、常温で30分間攪拌し、黒色の前駆体溶液を得た。続いて、得られた前駆体溶液にエチレンジアミン50g(0.83モル)を滴下した。滴下を終了した後、加熱し、内温70℃で2時間攪拌した。さらにエチレンジアミン11g(0.18モル)を加え、内温70℃で2時間攪拌し、黄褐色の懸濁液を得た。懸濁液のpHをpH試験紙で確認したところ、10であった。懸濁液を吸引ろ過し、ろ液のpHが7〜8となるまで水洗して得られた固形物を120℃で真空乾燥して、黄色の粉末87gを得た。この粉末を、試験例1及び2に従って評価した結果と収率を表1に示す。
<実施例2>
冷却管、滴下ロート、温度計、メカニカルスターラーを取り付けた200mL四口フラスコに、水120mLを入れ、硝酸第二鉄九水和物16.2g(0.040モル)を加えて溶解した。そこへ、サリチルアルデヒド9.8g(0.080モル)を滴下し、常温で30分間攪拌し、黒色の前駆体溶液を得た。続いて、得られた前駆体溶液にエチレンジアミン6.0g(0.10モル)を滴下した。滴下を終了した後、加熱し、内温60℃で2時間攪拌し、黄褐色の懸濁液を得た。懸濁液のpHをpH試験紙で確認したところ、7であった。懸濁液を吸引ろ過し、水洗して得られた固形物を120℃で真空乾燥して、黄色の粉末11.6gを得た。この粉末を、試験例1及び2に従って評価した結果と収率を表1に示す。
<実施例3>
冷却管、滴下ロート、温度計、メカニカルスターラーを取り付けた200mL四口フラスコに、水120mLを入れ、硫酸第一鉄七水和物11.1g(0.040モル)を加えて溶解した。そこへ、サリチルアルデヒド9.8g(0.080モル)を滴下し、常温で30分間攪拌し、黒色の前駆体溶液を得た。続いて、得られた前駆体溶液にエチレンジアミン4.8g(0.080モル)を滴下した。滴下を終了した後、加熱し、内温60℃で2時間攪拌した。さらにエチレンジアミン3.6g(0.060モル)を加え、内温70℃で2時間攪拌し、黄褐色の懸濁液を得た。懸濁液のpHをpH試験紙で確認したところ、10であった。懸濁液を吸引ろ過し、ろ液のpHが7〜8となるまで水洗して得られた固形物を120℃で真空乾燥して、黄色の粉末11.9gを得た。この粉末を、試験例1及び2に従って評価した結果と収率を表1に示す。
<実施例4>
冷却管、滴下ロート、温度計、メカニカルスターラーを取り付けた200mL四口フラスコに、水120mLを入れ、硫酸第一鉄七水和物11.1g(0.040モル)を加えて溶解した。そこへ、サリチルアルデヒド9.8g(0.080モル)を滴下し、常温で30分間攪拌し、黒色の前駆体溶液を得た。続いて、得られた前駆体溶液にエチレンジアミン4.8g(0.080モル)を滴下した。滴下を終了した後、加熱し、内温70℃で2時間攪拌し、黄褐色の懸濁液を得た。懸濁液のpHをpH試験紙で確認したところ、7であった。懸濁液を吸引ろ過し、水洗して得られた固形物を120℃で真空乾燥して、黄色の粉末11.5gを得た。この粉末を、試験例1及び2に従って評価した結果と収率を表1に示す。
<比較例1>
冷却管、滴下ロート、温度計、メカニカルスターラーを取り付けた200mL四口フラスコに、水120mLを入れ、常温で、硫酸第一鉄七水和物11.1g(0.040モル)、サリチルアルデヒド9.8g(0.080モル)、エチレンジアミン4.8g(0.080モル)を加えた後、加熱し、内温60℃で2時間攪拌し、赤茶色の懸濁液を得た。懸濁液のpHをpH試験紙で確認したところ、7であった。懸濁液を吸引ろ過し、水洗して得られた固形物を120℃で真空乾燥して、赤茶色の粉末8.6gを得た。この粉末を、試験例1及び2に従って評価した結果と収率を表1に示す。
<比較例2>
冷却管、滴下ロート、温度計、メカニカルスターラーを取り付けた200mL四口フラスコに、水120mLを入れ、常温で、硝酸第二鉄九水和物16.2g(0.040モル)、サリチルアルデヒド9.8g(0.080モル)、エチレンジアミン7.2g(0.12モル)を加えた後、加熱し、内温70℃で2時間攪拌し、茶色の懸濁液を得た。さらにエチレンジアミン1.8g(0.03モル)を加え、内温70℃で2時間攪拌し、茶色の懸濁液を得た。懸濁液のpHをpH試験紙で確認したところ、10であった。懸濁液を吸引ろ過し、ろ液のpHが7〜8となるまで水洗して得られた固形物を120℃で真空乾燥して、茶色の粉末8.8gを得た。この粉末を、試験例1及び2に従って評価した結果と収率を表1に示す。
<比較例3>
冷却管、滴下ロート、温度計、メカニカルスターラーを取り付けた200mL四口フラスコに、水120mLを入れ、常温で、サリチルアルデヒド9.8g(0.080モル)、エチレンジアミン7.2g(0.12モル)を加えた後、常温で1時間攪拌し、黄白色の懸濁液を得た。さらに硝酸第二鉄九水和物16.2g(0.040モル)を加え、内温70℃で2時間攪拌し、黒茶色の懸濁液を得た。さらにエチレンジアミン1.8g(0.03モル)を加え、内温70℃で2時間攪拌し、茶色の懸濁液を得た。懸濁液のpHをpH試験紙で確認したところ、10であった。懸濁液を吸引ろ過し、ろ液のpHが7〜8となるまで水洗して得られた固形物を120℃で真空乾燥して、赤茶色の粉末8.1gを得た。この粉末を、試験例1及び2に従って評価した結果と収率を表1に示す。
Figure 0006866371
実施例及び比較例の結果から、予め、鉄塩の水溶液とサリチルアルデヒドを混合した溶液を調製し、この溶液とエチレンジアミンを混合することによって、得られる鉄錯体の収率及び鉄二核錯体比率を高められることがわかった。また、鉄二核錯体比率が高まることにより、触媒のエステル交換能が向上し、第3級水酸基のエステル化合物が高収率で得られることがわかった。
実施例1と2、又は、実施例3と4の比較の結果から、反応系を塩基性にすることにより、鉄二核錯体比率を高められることがわかった。
さらに、実施例1と3、又は、実施例2と4の比較の結果から、3価の鉄塩を原料とすることにより、鉄二核錯体比率を高められることがわかった。
本発明の鉄錯体の製造方法は、2つの鉄原子が1つの酸素原子を介して結合した構造とシッフ塩基を含む配位子構造とをその分子内に有する鉄二核錯体を収率よく、簡便に製造することができる。そのため、本発明の鉄錯体の製造方法は、樹脂の添加剤、医薬、及び、触媒として利用価値の高い鉄二核錯体を工業スケールで大量に製造するために有用である。
また、本発明のエステル化合物の製造方法によれば、収率よく簡便に製造された、2つの鉄原子が1つの酸素原子を介して結合した構造とシッフ塩基を含む配位子構造とをその分子内に有する鉄二核錯体を触媒として用いることにより、エステル交換反応が困難な第3級水酸基を有するアルコール化合物を原料とした場合であっても高収率でエステル化合物を製造でき、また複数の水酸基を有する化合物であっても、全ての水酸基をエステル化したエステル化合物を高収率で製造することができる。
そのため、本発明のエステル化合物の製造方法は、従来、大量合成が困難であった第3級エステル化合物、多価アルコールのエステル化合物を工業スケールで製造するために有用である。

Claims (17)

  1. 水の存在下、鉄塩と下記一般式(1)で表される化合物とを混合して前駆体溶液を調製する工程(I−1)、及び
    前記前駆体溶液と、下記一般式(2)又は(3)で表される化合物とを混合する工程(I−2)を含む、下記一般式(4)又は(5)で表される鉄錯体の製造方法。
    Figure 0006866371
    Figure 0006866371
    Figure 0006866371
    Figure 0006866371
    Figure 0006866371
    (式(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、1価の脂環基又は1価の芳香環基を表す。ただし、R1とR2、R2とR3、及びR4とR5の少なくとも1つが互いに結合して環を形成していてもよい。)
  2. 前記工程(I−2)において、前駆体溶液と、前記一般式(2)又は(3)で表される化合物とを混合する際又は混合後のpHを7超にする、請求項1に記載の鉄錯体の製造方法。
  3. 前記鉄塩の価数が3価である、請求項1又は2に記載の鉄錯体の製造方法。
  4. 前記工程(I−2)において、前駆体溶液と、前記一般式(2)又は(3)で表される化合物とを混合する際の温度が50℃以上である、請求項1から3のいずれかに記載の鉄錯体の製造方法。
  5. 前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(6)で表される化合物である、請求項1から4のいずれかに記載の鉄錯体の製造方法。
    Figure 0006866371
    (式(6)中、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルキルエーテル基、ハロゲン原子、1価の脂環基又は1価の芳香環基を表す。ただし、R8とR9、R9とR10、及びR10とR11の少なくとも1つが互いに結合して環を形成していてもよい。)
  6. 前記一般式(2)で表される化合物が下記一般式(7)で表される化合物である、請求項1から5のいずれかに記載の鉄錯体の製造方法。
    Figure 0006866371
    (式(7)中、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、1価の脂環基又は1価の芳香環基を表す。ただし、R12とR13が互いに結合して環を形成していてもよい。)
  7. 前記一般式(1)で表される化合物がサリチルアルデヒドである、請求項1から6のいずれかに記載の鉄錯体の製造方法。
  8. 前記一般式(2)で表される化合物がエチレンジアミンである、請求項1から7のいずれかに記載の鉄錯体の製造方法。
  9. 前記一般式(4)で表される鉄錯体が下記一般式(8)で表される鉄錯体である、請求項1から8のいずれかに記載の鉄錯体の製造方法。
    Figure 0006866371
  10. 前記工程(I−2)で得られた反応液をろ過することによって、前記鉄錯体を固形物として回収する工程(II)を含む請求項1から9のいずれかに記載の鉄錯体の製造方法。
  11. 前記工程(II)で得られた鉄錯体を乾燥する工程(III)を含む請求項10に記載の鉄錯体の製造方法。
  12. 鉄錯体触媒の製造方法である、請求項1から11のいずれかに記載の鉄錯体の製造方法。
  13. 請求項12に記載の鉄錯体の製造方法により製造される鉄錯体の存在下、
    カルボン酸エステルとアルコール化合物とのエステル交換反応を行う工程(IV)を含むエステル化合物の製造方法。
  14. 前記工程(IV)において、エステル交換反応を行うアルコール化合物が第3級水酸基を有する化合物である、請求項13に記載のエステル化合物の製造方法。
  15. 前記工程(IV)において得られるエステル化合物が、アルコール化合物に含まれる全ての水酸基が、カルボン酸エステルに含まれるアシル基によりエステル化された化合物である請求項13又は14に記載のエステル化合物の製造方法。
  16. 前記工程(IV)のエステル交換反応を行う反応系内の含水率が1000ppm以下である、請求項13から15のいずれかに記載のエステル化合物の製造方法。
  17. 前記工程(IV)のエステル交換反応において、アルコール化合物の水酸基に対し、鉄原子0.1〜20mol%に相当する量の前記鉄錯体が用いられる請求項13から16のいずれかに記載のエステル化合物の製造方法。
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