JP6865951B2 - p型熱電半導体、その製造方法及びそれを用いた熱電発電素子 - Google Patents

p型熱電半導体、その製造方法及びそれを用いた熱電発電素子 Download PDF

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本発明は、p型熱電半導体、その製造方法、及びそれを用いた熱電発電素子に関し、特に熱動作安定性の高いp型熱電変半導体、その製造方法、及びそれを用いた熱電発電素子に関する。
世界の中で特に省エネルギーが進んだ我が国においてでも、廃熱回収においては、一次供給エネルギーの約3/4が熱エネルギーとして廃棄されているのが現状である。そのような状況の下、熱電発電素子は、熱エネルギーを回収して電気エネルギーに直接変換できる固体素子として注目されている。
熱電発電素子は、電気エネルギーへの直接変換素子であるため、可動部分がないことによるメンテナンスの容易さ、スケーラビリティ等のメリットがある。このため、熱電半導体について、盛んな材料研究が行われている。
熱電発電に用いるには、希少で高価で資源が特定地域に偏在している傾向のある希土類元素を含まないで素子を形成することが望ましい。
遷移金属硫化物は、非特許文献1及び2に示されるように、高い熱電性能(パワーファクターなど)を示す系として知られている。しかしながら、パワーファクターが高い一方で熱伝導率の比較的高い化合物も多く、より低い熱伝導率を持つ系が嘱望されている。また、熱により銅が拡散するなど熱による不安定性を有する化合物も多い。熱電素子の実稼働環境を考えると、熱動作安定性に優れた化合物を見出す必要があった。
こうした遷移金属硫化物において、その高いパワーファクターを活かしつつ、熱動作安定性(高温環境での熱電特性の安定性)が高い半導体を見出すことができれば、熱電半導体や熱電発電素子として広範囲な応用が可能となる。このため、その要求を満たす遷移金属硫化物熱電半導体の開発が強く望まれていた。
なお、銅(Cu)、クロム(Cr)及びイオウ(S)からなる三元系化合物であるCuCr材料に関して、非特許文献3のように、熱電特性が調べられているが、これは金属的な化合物で従来の金属的化合物と同様に熱電的性能が低いものであった。
特開2008−177356号公報
Chem. Int. Ed.,2015,vol.54,pp.12909−12913. Sci. Technol. Adv. Mater.,2012,vol.13,p.053003 Thermoelectric materials,2000,p.626 Condensed Matter,1980,vol.12b,p.409 J. Magn. Magn. Mater.,1997,vol.175,pp.299−303 J. Alloys Compd.,2004,vol.377,pp.53−58 Phys. Chem. Miner.,2003,vol.30,p.463
本発明の課題は、上述の従来の問題点を解消し、パワーファクターなどの熱電特性に優れるとともに、高い熱動作安定性を確保した熱電半導体を提供すること、さらにはそのような熱電半導体を利用した熱電発電素子を提供することである。
遷移金属硫化物の一つであるCuCr材料にアンチモン(Sb)を適量置換ドープしたCuCr2−xSbを熱電半導体材料として用いる。このことで、金属的なCuCrが、比較的高い電気伝導性でゼーベック係数が大きく、加えて熱伝導率の低い半導体に変わり、上記熱電半導体の課題は解決される。なお、CuCr2−xSbはp型の半導体である。
本発明の構成を下記に示す。
(構成1)
硫化物を含む四元系のp型熱電半導体であって、
該熱電半導体の組成が以下に示す組成を有することを特徴とするp型熱電半導体。
CuCr2−xSb
(ここで、xは0.2以上0.5以下)
(構成2)
構成1記載のp型熱電半導体において、前記xが0.22以上0.5以下であることを特徴とするp型熱電半導体。
(構成3)
構成1記載のp型熱電半導体において、前記xが0.22以上0.35以下であることを特徴とするp型熱電半導体。
本発明の構成を下記に示す。
(構成4)
前記熱電半導体の結晶構造が、Wyckoff Positionで16cのところにクロム又はアンチモンが配置されるスピネル構造であることを特徴とする構成1乃至3のいずれか1に記載のp型熱電半導体。
(構成5)
銅源、クロム源、アンチモン源及びイオウ源を混合した原料混合物を準備する工程と、
前記原料混合物を焼成する工程を有して、
以下の組成を有するp型熱電半導体を製造することを特徴とするp型熱電半導体の製造方法。
CuCr2−xSb
(ここで、xは0.2以上0.5以下)
(構成6)
構成5記載のp型熱電半導体の製造方法において、前記xが0.22以上0.5以下であることを特徴とするp型熱電半導体の製造方法。
(構成7)
構成5記載のp型熱電半導体の製造方法において、前記xが0.22以上0.35以下であることを特徴とするp型熱電半導体の製造方法。
(構成8)
前記銅源、クロム源、アンチモン源及びイオウ源の少なくとも一つは当該元素の単体であることを特徴とする構成5乃至7のいずれか1に記載のp型熱電半導体の製造方法。
(構成9)
前記銅源、クロム源、アンチモン源及びイオウ源は、銅硫化物、クロム硫化物、アンチモン硫化物、銅クロム合金、銅アンチモン化合物、及びクロムアンチモン化合物からなる群から選択された少なくとも一つを含むことを特徴とする、構5乃至8のいずれか1に記載のp型熱電半導体の製造方法。
(構成10)
前記焼成は、真空または不活性雰囲気中にて550℃以上850℃以下の温度で行うことを特徴とする構成5乃至9のいずれか1に記載のp型熱電半導体の製造方法。
(構成11)
前記焼成は、1時間以上行うことを特徴とする構成5乃至10のいずれか1に記載のp型熱電半導体の製造方法。
(構成12)
前記焼成後、粉砕して再度焼成を行う追加焼成を少なくとも1回行うことを特徴とする構成5乃至11のいずれか1に記載のp型熱電半導体の製造方法。
(構成13)
前記焼成または前記追加焼成の後、アニーリングを行うことを特徴とする構成12に記載のp型熱電半導体の製造方法。
(構成14)
前記アニーリングは、550℃以上750℃以下の温度で行うことを特徴とする構成13に記載のp型熱電半導体の製造方法。
(構成15)
前記アニーリングは、1時間以上100時間以下であることを特徴とする構成13又は14に記載のp型熱電半導体の製造方法。
(構成16)
p型半導体とn型半導体が一体化されてなる熱電発電素子であって、前記p型半導体として構成1乃至4のいずれか1に記載のp型熱電半導体を用いたことを特徴とする熱電発電素子。





本発明によれば、高い熱電性能と高い熱動作安定性を有するp型熱電半導体を提供することができる。また、高い熱電性能と高い熱動作安定性を有する熱電発電素子を提供することができる。
本発明の熱電半導体の構造を示す模式図。 実施例の熱電半導体粉末試料のX線回折パターン図。 実施例の熱電半導体の電気伝導度を示す特性図。 実施例の熱電半導体のゼーベック係数を示す特性図。 実施例の熱電半導体の熱電パワーファクターを示す特性図。 実施例の熱電半導体の熱伝導率を示す特性図。 実施例の物熱電半導体の無次元性能指数を示す特性図。 本発明の熱電発電素子の構成を示す断面模式図。
(熱電半導体)
最初に、本発明の熱電半導体について説明する。
本発明の熱電半導体は、銅(Cu)、クロム(Cr)、アンチモン(Sb)及びイオウ(S)からなる四元系硫化物半導体であり、下式に示す組成を有するp型半導体である。
CuCr2−xSb
(ここで、xは0.2以上0.5以下)
この熱電半導体は、CuCrからなるスピネル型化合物にSbを置換ドープしたものである。その構造は、リートベルト解析とX線回折などの測定結果から、図1に示す立法晶系の構造であると考えられる。すなわち、その構造は、Wyckoff Positionで16cのところにCr又はSbが配置されたスピネル構造である。なお、Sbは、このようにCrの場所に置換配置(置換ドープ)されることが望ましいが、数モル%程度ならSの部分に置換配置されることも許容される。
また、この熱電半導体は、単結晶であることが望ましいが、多結晶であることも許容される。
また、熱電動作、特性の安定性から、CuCr2−xSbは単一相であることが望ましい。xが0.2を下回ると、複数の相が現れて不安定になることがある。その場合は、熱電動作やその特性も不安定になりやすいので、xは0.2以上が求められる。xは0.22以上であると、特に高いパワーファクターPFと高い無次元性能指数ZTが得られるので、より好ましい。
一方で、xが0.5を超えると、絶縁体的性質が強くなって電気伝導度σや例えば400℃以上の中、高温下での熱伝導率κが低くなり、十分な熱電特性(パワーファクターPFや無次元性能指数ZT)が得にくくなる。このため、xは0.5以下が求められる。また、十分な半導体的性質を確保し、高いパワーファクターPFと高い無次元性能指数ZTを得る観点から、xは0.4以下であることがより好ましく、0.35以下であることがより一層好ましい(実施例1参照)。
本発明の材料の特色の一つは、CrとSbからなる混合原子サイト(Cr/Sb混合原子サイト)とS原子サイト間のボンド長が短く、Cr/Sb混合原子サイトとS原子サイトとが形成する原子面において、S原子が上下に波を打っているような配置をとることである。Cr/Sb混合原子サイトとS原子サイトとのボンド長LCr/Sb−Sは、CuCr2−xSbのxが0.22,0.3,0.5のとき、それぞれ2.4200nm,2.4199nm及び2.4339nmである。なお、これらの値はX線回折パターンを基に求めた。
一方、通常のSbとSを含む化合物においては、Sb−Sのボンド長は長く、例えば輝安鉱Sbにおいては、2.5〜3.6nmのSb−Sボンド長が報告されている(非特許文献7参照)。
非特許文献4において、CuCr化合物は、真空下で、445℃から550℃で分解することが報告されている。本発明者らが作製したCuCr2−xSb(xは0.2以上0.5以下)は、真空下で、少なくとも650℃の高温まで分解を示さず安定性に優れている。これは上記のCr/Sb混合原子サイトとS原子サイトの、大きなSb原子をドーピングしているのに関わらず実現している予想外のボンドの強固さに起因していると考えられる。Cu系の硫化物熱電材料でこうした高温安定性は珍しく、実応用環境下で有用である。
また、CuCr2−xSb(xは0.2以上0.5以下)は、単純な正方晶の構造でありながら、上記の結晶構造的な特徴に起因すると考えられる、遷移金属硫化物では特徴的に低い熱伝導率(室温〜650℃において2W/m・K以下、図7参照)を示すことを見出した。この新たに見出した構造起因の特徴により、以下の実施例1に示すように、大きなゼーベック係数α(図4参照)と高い電気伝導度σ(図3参照)を併せ持つことが可能になり、高い熱電性能(図5、図7参照)が得られるようなる。
Sb置換ドープのないCuCrに関しては、非特許文献3に記載があるように、熱電的性質が調べられているが、それは金属的な化合物で従来の金属的化合物と同様に熱電的性能が低いものであった。
また、Sb置換されたCuCrは、非特許文献5と6にあるが、これらはスピントロニクス応用を念頭に磁気的性質(磁気抵抗)に関して調べられたものであった。非特許文献5と6は、電気抵抗の測定はなされているが熱電特性の評価に必要な抵抗率は不明であり、温度も熱電素子としては適用しにくい室温以下の低温で、かつゼーベック係数や熱伝導率に関する記載も見当たらない。
本発明のCuCr2−xSbが高い熱動作安定性、比較的高い電気伝導性、大きなゼーベック係数及び低い熱伝導率という熱電素子の材料として好適な特性を兼ね備えるという結果は予想外のもので、これは詳細な結晶構造解析と実験に基づいて導き出されたものとなっている。
次に、本発明の熱電半導体の製造方法について説明する。
本発明のp型熱電変半導体の製造に当たっては、最初に、原料となる銅源、クロム源、ストロンチウム源及びイオウ源を準備する。これらの材料は、それぞれの単体元素、すなわちCu、Cr、Sb及びS元素そのものでもよいし、あるいは出発原料として銅硫化物、クロム硫化物、アンチモン硫化物、銅クロム合金、銅アンチモン化合物、及びクロムアンチモン化合物等を使用してもよい。また、これらの組み合わせでも構わない。なお、銅源、クロム源、ストロンチウム源及びイオウ源の少なくとも一つが当該元素の単体であると、原料の成分量管理がやりやすくなるため好ましい。
これらの原料の状態としては粉末状が好ましい。ナノ粒子など極めて粒径が細かい状態だと体積に対する表面積の比率が大幅に高くなって表面酸化物を取り込みやすくなるので好ましくない。また、粒径がmm単位に達するような大きさの粒状や塊状だと、これらの元素が十分に混ざり合って均質な結晶を製造するための時間が長くなるため、製造効率上好ましくない。
これらの原料は、真空中やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気で保管及び取り扱いがなされることが好ましい。表面酸化や吸着水をなるべく減らして、酸素や水が結晶に取り込まれにくくするためである。このため、これらの原料は真空封じ、あるいは不活性ガスで封じされたアンプルで保管され、また取り扱いをするときは不活性ガスを満たしたグローブボックス中で作業することが好ましい。
次に、これらの原料を、最終組成が所望のCuCr2−xSb(原料組成)となるように電子天秤などを用いて秤量し、その後、これらの原料を混合して混合物を作る。ここで、xは0.2以上0.5以下の範囲内の所定の値である。イオウ(S)は気体となって、結晶に取り込まれない分が発生するので、その分も見込んだ適量を秤量する。
この混合物を真空またはアルゴンなどの不活性ガスで封じし、その後焼成する。焼成温度は550℃以上850℃以下が好ましく、時間的には1時間以上焼成することが好ましい。さらに、例えば24時間というような長時間の焼成を行っても問題はないが、その場合は時間と消費電力の浪費となる。
なお、この焼成に先立ってこの混合物をプレス成型しておくことも好ましい。
また、焼成の方法としては炉があるが、炉に限らず、例えば放電プラズマ焼結やホットプレスなどにより行っても構わない。
1回以上の繰り返しの焼成(そこでは焼成後にボールミルなどを用いて粉砕するというサイクルを繰り返す)や550℃以上750℃以下のアニーリングは、Sbがより結晶に取り込まれて置換し、ドーピングを十分に行うことができるので、好ましい。このアニーリングは1時間以上100時間以下行われるのが好ましい。上述の範囲のアニーリングで、CuCr2−xSbからなる結晶の均質性が向上し、熱動作などが安定した熱電半導体が得られるようになる。
(熱電発電素子)
ここでは、熱発電素子について述べる。
熱電発電素子31は、例えば、図8に示すように、低温となる側の電極35と高温となる側の電極34の間に、これらの電極を介してn型熱電半導体32とp型熱電半導体33が電気的に直列配置された構造からなる素子である。
電極34が高温、電極35がそれに較べて低温となるような環境に熱電発電素子31を設置して端部の電極を電気回路等に接続すると、ゼーベック効果によって電圧が発生し、矢印で示すように、電極35→n型熱電半導体32→電極34→p型熱電半導体33と電流が流れる。つまり、n型熱電半導体32内の電子が高温の電極34から熱エネルギーを得て低温の電極35へ移動してそこで熱エネルギーを放出し、それに対してp型熱電半導体の正孔が高温の電極34から熱エネルギーを得て低温の電極35へ移動してそこで熱エネルギーを放出するという原理によって電流が流れる。
このp型熱電半導体33として、xを0.2以上0.5以下としたCuCr2−xSbからなる本発明のp型熱電半導体を用いる。n型熱電半導体としては、n型熱電半導体であれば特に制限はないが、例えば、カルコパイライト結晶構造を有するCuFeS系材料からなるn型熱電半導体を好んで挙げることができる。
その結果、熱動作の安定した熱回収が可能となり、利用可能な熱の範囲が大きく広がる。
以下では実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、この実施例はあくまで本発明の理解を助けるためにここに挙げたものであり、本発明をこれに限定するものでない。
(実施例1)
実施例1は、銅、クロム、アンチモン及びイオウからなる四元系p型熱電半導体を作製した例である。
その材料組成は、CuCr2−xSbであって、xを0.22、0.3及び0.5と変化させてp型熱電半導体を作製し、その熱電特性を評価した。
<熱電半導体の作製>
最初に、原料として、銅(Cu)(粉末、Aldrich(株)、99.5%)、
クロム(Cr)(粉末、フルウチ化学(株)、99.99%)、アンチモン(粉末、Aldrich(株)、99.5%)及びイオウ(S)(粉末、Aldrich(株)、99.5%)を準備した。なお、これらの原料は、不活性ガス(アルゴンガス)で封じ保存されているものである。
次に、Cu、Cr、Sb及びSを、不活性ガス(アルゴンガス)を充満させたグローブボックス中で、xを0.30とするときは、それぞれ0.4055g、0.5590g、0.2315g及び0.8610g電子天秤を用いて秤量した。ここで、Sは下記の焼成工程で気化して、その一部は熱電半導体材料に取り込まれないため、作製する熱電半導体材料の組成比より多い量を秤量した。
そして、これらの粉末を十分混合し、その混合物を、ハンドプレス機を用いてプレス成型(CIP)した。
その後、プレス成型された試料を石英管に入れて真空に引き、真空封じ(密閉)を行った後、この試料を焼成処理した。そこでは、室温から750℃まで8時間かけて一定の昇温レートで昇温させた後、750℃で15時間焼成した。その後は、室温まで8時間かけてゆっくり冷却した。このプロセスは相の合成には必須ではないが、この工程を加えることによって、より均一な試料が得られた。
得られた試料を、乳鉢を用いて粉砕し、上記の成型、加熱、反応プロセスを、750℃を650℃に変更してもう一度行った。ここで、各プロセスの時間の変更はない。
最後に、放電プラズマ焼結装置によって焼結を行い、成型された試料をアルゴン雰囲気中で650℃48時間のアニールを行って、CuCr1.70Sb0.30の試料を作製した。ここで、焼結には富士電波工機(株)製のDr.SINTERを用い、焼結条件は、圧力50MPa、温度600℃、5分とした。
また、原材料の比率を変えて同様の工程を行うことによって、CuCr2−xSb(x=0.22、x=0.30、x=0.35、x=0.50)の各試料を作製した。
<熱電半導体の特性>
アルゴン雰囲気中650℃で48時間アニールした作製条件から、このような高温に対して材料(結晶)の変化は起きにくい。また、真空中で行われる650℃までの熱伝導率測定で繰り返しの測定で熱電特性に変化が見られなかった。これらのことから、本材料からなる熱電半導体は、高温の動作環境でも安定した熱電変換が可能な高い熱動作安定性を有する熱電半導体であるといえる。
焼成後の試料を用いて、X線回折パターンの測定を行った。その結果を図2に示す。なお、このX線回折パターンの測定では、1回目の750℃15時間の焼成のみを行い、粉砕再焼成及び放電プラズマ焼結(SPS)による再成型は行っていない。
このX線回折パターンに基づき、リートベルト解析によって、ほぼ単相のスピネル構造(MgAl型構造)試料が得られていることを確認した。
図2中の下部以外の部分に、実測データYobsを示し、下部には実測から結晶構造を下記のように仮定した計算値Ycalcとの差Yobs−Ycalcを示す。計算値Ycalcは、試料がスクッテルタイトの結晶構造(スピネル構造)を有すると仮定し、さらに回折パターンになるべくフィッテングするようにして求めた。
図2から明らかなように実測と計算の差Yobs−Ycalcが非常に小さいことから、作製された試料の構造は、CuCrからなるスピネル型結晶のCrの一部をSbに置換したもの、すなわち、Wyckoff Positionで16cのところにクロム又はアンチモンが配置されるスピネル構造であるといえる。図1にその結晶構造を示す。
図3〜図7は、それぞれ実施例の熱電変半導体の電気伝導度σ、ゼーベック係数α、パワーファクターPF、熱伝導率κ及び熱電の無次元性能指数ZTの測定結果を示す。ここで、この測定試料は、焼成終了後に一度粉砕し、それを放電プラズマ焼結(SPS)により再度成型したものである。
図3からわかるように、Sbの置換ドーピングによって、特にx=0.22とx=0.30の試料において、2.5〜4.2×10S/mの比較的高い電気伝導性σが得られている。併せて、図4に示されるように、その測定温度領域で80〜160μV/Kの比較的高いゼーベック係数αが得られている。x=0は金属的であるが、Sbの置換ドーピングによって半導体に転換され、高いゼーベック係数αが発現された。
一方で、x=0.5の試料は、絶縁体の方向に向かっていて、図5や図7に示されるように、パワーファクターPFや無次元性能指数ZTで代表される熱電性能としてはx=0.22、x=0.30及びx=0.35に劣る。
また、図6に示されるように、熱伝導率κは、測定領域内の全温度域で遷移金属硫化物としては特徴的に低い2W/m・K以下の値となっており、Cr/Sbの置換ドーピングと結晶構造が作用していることが分かる。
なお、上述のように、試料をSPS焼結させたが、これは試料を緻密にし、また成型することが目的である。本発明においては、SPS焼結は必須のものではないが、これにより電気抵抗が下がり、熱電性能が向上する。
(実施例2)
実施例2は、熱電発電素子31を作製した例である(図8参照)。
作製した熱電発電素子31は、低温となる側の電極35に、半田によって熱電材料チップであるn型熱電半導体32が接合され、n型熱電半導体32の反対側の端部と高温となる側の電極34とが同じく半田によって接合されている。さらに同じ電極34と熱電材料チップであるp型熱電半導体33とが接合され、p型熱電半導体33の反対側の端部は別のn型熱電半導体32が接合された別の電極35に接合されている。このような構成にすることによって電気的に直列接続した熱電発電素子31とした。
このような構造を有する熱電発電素子中のp型熱電半導体33として、実施例1で作製したCuCr1.7Sb0.3材料を用いた。その結果、熱回収を従来以上に高い熱動作安定性の下で行うことが可能となった。
(比較例1)
比較例1は、CuCr2−xSb材料においてx=0.18とした場合で、その格子パラメータ(lattice parameter)を調べた。この試料の作製方法は、原材料の秤量を最終的にCuCr1.82Sb0.18となるように変えた以外は実施例1と同じである。その結果、x=0.18とした比較例1では、相分割が認められ、その格子パラメータは0.9847nmと0.9918nmとなった。なお、xを0.22,0.3,0.5としたときの格子パラメータはそれぞれ0.9922nm,0.9950nm及び1.0000nmで相分割は認められなかった。相分割は、熱電特性の不安定性の源となる。
以上、本発明によるp型熱電半導体及び熱電発電素子は、高い熱電変換効率と高い熱動作安定性を有する熱を直接電気に変換する素子であるため、廃熱回収など、産業上大いに利用されることが期待される。
31:熱電発電素子
32:n型熱電半導体
33:p型熱電半導体
34:電極
35:電極

Claims (15)

  1. 硫化物を含む四元系のp型熱電半導体であって、
    該熱電半導体の組成が以下に示す組成を有することを特徴とするp型熱電半導体。
    CuCr2−xSb
    (ここで、xは0.2以上0.5以下)
  2. 請求項1記載のp型熱電半導体において、前記xが0.22以上0.5以下であることを特徴とするp型熱電半導体。
  3. 請求項1記載のp型熱電半導体において、前記xが0.22以上0.35以下であることを特徴とするp型熱電半導体。
  4. 前記熱電半導体の結晶構造が、Wyckoff Positionで16cのところにクロム又はアンチモンが配置されるスピネル構造であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のp型熱電半導体。
  5. 銅源、クロム源、アンチモン源及びイオウ源を混合した原料混合物を準備する工程と、
    前記原料混合物を焼成する工程を有して、
    以下の組成を有するp型熱電半導体を製造することを特徴とするp型熱電半導体の製造方法。
    CuCr2−xSb
    (ここで、xは0.2以上0.5以下)
  6. 請求項5記載のp型熱電半導体の製造方法において、前記xが0.22以上0.5以下であることを特徴とするp型熱電半導体の製造方法。
  7. 請求項5記載のp型熱電半導体の製造方法において、前記xが0.22以上0.35以下であることを特徴とするp型熱電半導体の製造方法。
  8. 前記銅源、クロム源、アンチモン源及びイオウ源の少なくとも一つは当該元素の単体であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1に記載のp型熱電半導体の製造方法。
  9. 前記銅源、クロム源、アンチモン源及びイオウ源は、銅硫化物、クロム硫化物、アンチモン硫化物、銅クロム合金、銅アンチモン化合物、及びクロムアンチモン化合物からなる群から選択された少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項5乃至8のいずれか1に記載のp型熱電半導体の製造方法。
  10. 前記焼成は、真空または不活性雰囲気中にて550℃以上850℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1に記載のp型熱電半導体の製造方法。
  11. 前記焼成後、粉砕して再度焼成を行う追加焼成を少なくとも1回行うことを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1に記載のp型熱電半導体の製造方法。
  12. 前記焼成または前記追加焼成の後、アニーリングを行うことを特徴とする請求項11に記載のp型熱電半導体の製造方法。
  13. 前記アニーリングは、550℃以上750℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項12に記載のp型熱電半導体の製造方法。
  14. 前記アニーリングは、1時間以上100時間以下であることを特徴とする請求項12又は13に記載のp型熱電半導体の製造方法。
  15. p型半導体とn型半導体が一体化されてなる熱電発電素子であって、前記p型半導体として請求項1乃至4のいずれか1に記載のp型熱電半導体を用いたことを特徴とする熱電発電素子。
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