JP6861190B2 - 鉄筋コンクリート構造物の補強方法 - Google Patents

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Description

本発明は、強化繊維を含むシート状の或いは板状の強化繊維含有材料(以下、「繊維シート」という。)を使用して、梁及び桁部材、更には、壁、柱、床版等のスラブ部材など、建築、土木建造物である鉄筋コンクリート構造物を補修補強(以後、単に「補強」という。)する鉄筋コンクリート構造物の補強方法に関するものである。
近年、既存或いは新設の鉄筋コンクリート構造物の補強方法として、鉄筋コンクリート構造物の表面に、繊維シートとしての炭素繊維シートやアラミド繊維シートなどの連続強化繊維シートを貼り付けたり、巻き付けたりする炭素繊維シート接着工法やアラミド繊維シート接着工法などの連続繊維シート接着工法、或いは、未硬化のマトリクス樹脂を連続繊維束に含浸させた繊維シートを接着後硬化させる工法、がある。
更には、現場樹脂含浸を省略するため工場生産した板厚1〜5mm、幅5〜10cm程度のFRP板をコンクリート表面に樹脂接着剤を用いて接着するFRP板接着補強工法も開発されている。
このような連続繊維補強方法を施した鉄筋コンクリート構造物は、繊維シートが鉄筋コンクリート構造物と一体に接着されることにより、鉄筋コンクリート構造物の曲げやせん断応力を緩和すると共に、鉄筋コンクリート構造物の全面に接着させた場合には、飛来塩分などが鉄筋コンクリート構造物内へと浸入するのを防ぐことも可能である。
しかし、既に内在塩分を含む鉄筋コンクリート構造物では連続繊維補強法を用いても内在塩分には変化が無い。また、コンクリート構造物の補強には、経済的設計法を用いることが一般的であり鉄筋コンクリート構造物全面に繊維シートを接着することは行われておらず、そのため、補強後において鉄筋コンクリート構造物にはコンクリートが露出する部位が生じる。従って、この部位から水や酸素などがコンクリート内部に浸入し、鉄筋の錆による爆裂を代表するコンクリートの損傷が発生することが想定される。
そこで、従来、鉄筋コンクリート構造物における鉄筋の腐食を抑制するために、特許文献1に開示されるようなシランモノマーを含む水性組成物(以下、「シラン系含浸材」という。)を鉄筋コンクリート構造物の表面に塗布することが行われている。更に説明すると、例えばアルキルアルコキシシランのようなシラン系含浸材は、反応組成物としてシランモノマーのみを含み、ポリシロキサン(シランポリマー)やほかの高分子組成物を含んでおらず、コンクリート内部まで深く浸透する特性を有している。浸透範囲は、一般に、コンクリート構造物表面から、10mm〜15mmとされる。深く浸透したシラン系含浸材は、鉄筋付近も含めて長期間コンクリート内部に残留し、シランモノマーの代表的な反応である水での触媒効果により鉄筋配置位置付近も含む部位から脱水を継続することができ、鉄筋周囲に水を存在させないという特徴を有している。更に、コンクリート構造物内部に残留するシラン系含浸材は、高分子化してシランポリマーとなり吸水防止作用をなし、コンクリート内部に水を浸入させないという性能を有することとなる。
特許第4778189号公報
上述のようにシラン系含浸材は、鉄筋コンクリート構造物における鉄筋に対する防錆効果の点では優れている。一方、本発明者らの研究実験の結果によると、防錆のために鉄筋腐食抑制機能を有するシラン系含浸材が塗布された鉄筋コンクリート構造物に対して連続繊維シートを樹脂接着剤にて接着して補強する連続繊維接着補強法を採用した場合には、次のような問題があることが分かった。つまり、鉄筋コンクリート構造物に塗布されたシラン系含浸材は高分子化してシランポリマーを形成するが、これに伴って水分を排出する。この水分により、繊維シートを接着剤にてコンクリート構造物に接着する際に接着剤が弾かれてしまい、良好な接着を得ることができないという問題がある。この問題は、シラン系含浸材を塗布した後、十分な養生期間を設けて生じた水分を除去し塗布面を完全に乾燥させ、その後、繊維シートを接着剤にてコンクリート構造物に接着させることによって解決することはできるが、作業時間の長期化をもたらし、作業効率の点で問題がある。
本発明者らは、上記問題点を解決するべく、多くの研究実験を行った結果、繊維シートを接着剤にて接着する前工程において、鉄筋コンクリート構造物表面に先ずシラン系含浸材を塗布し、その後、このシラン系含浸材が塗布された構造物表面にシランカップリング剤を含むプライマーを塗布することによって、シラン系含浸材が有する鉄筋防錆効果を達成し、且つ、シラン系含浸材からの排出水分の問題を解決して繊維シートのコンクリート構造物表面に対する接着性能を向上させ得ることが分かった。本発明は、斯かる本発明者らの新規な知見に基づきなされたものである。
つまり、本発明の目的は、鉄筋コンクリート構造物における鉄筋の腐食を抑制して、鉄筋の錆によるコンクリートの損傷を回避し、且つ、繊維シートの鉄筋コンクリート構造物表面に対する接着性能を向上させることのできる鉄筋コンクリート構造物の補強方法を提供することである。
上記目的は本発明に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法にて達成される。要約すれば、本発明は、強化繊維を含む繊維シートを接着して一体化する鉄筋コンクリート構造物の補強方法において、
(a)前記鉄筋コンクリート構造物の表面にシラン系含浸材を塗布する工程と、
(b)前記シラン系含浸材が塗布された前記鉄筋コンクリート構造物の表面に、シランカップリング剤を含むプライマーを塗布してプライマー層を形成する工程と、
(c)前記プライマー層が形成された前記鉄筋コンクリート構造物の表面に前記繊維シートを接着剤にて接着する工程と、
を有することを特徴とする鉄筋コンクリート構造物の補強方法である。
本発明の一実施態様によると、前記プライマーの前記シランカップリング剤の含有量は、0.1〜5.0重量%である。
本発明の他の実施態様によると、前記プライマーは、更に、粉状フィラーを0.1〜10重量%含む。
本発明の他の実施態様によると、前記シランカップリング剤は、主成分が下記一般式(I)で示され、
Y−Si−(OX) (I)
ここで、
Yは有機材料と反応結合する有機官能基であり、
OXは無機材料と反応する無機官能基である、
有機ケイ素化合物である。ここで、前記有機官能基はアミノ基、メルカプト基、ビニル基、又は、エポキシ基であり、
前記無機官能基はアルコキシ基とすることができる。
本発明の他の実施態様によると、前記シランカップリング剤は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、又は、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランである。
本発明の他の実施態様によると、前記シラン系含浸材は、成分Aとして一般式(II)
R−SiR (O) (II)
[式中、
Rは、3〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、
は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、
は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシ基を表すか、またはヒドロキシ基を表し、その際、基Rは、同じか、または異なっていてもよく、
xは、0、1または2であり、
yは、0.0〜1.5であり、
zは、0、1、2または3であり、かつ
(x+2y+z)=3である]のオルガノシランまたはオルガノシロキサンを少なくとも1種またはこれらの混合物、および成分Dとして、HO−CH−CH−N(CHまたはHO−CH−CH−N(Cまたはこれらの混合物を含有し、かつ成分Aと成分Dとは、1:1〜26.2:1のモル比で含有されている。
本発明の他の実施態様によると、前記シラン系含浸材は、成分Aとして、n−CSi(OCH、n−CSi(OC、i−CSi(OCH、i−CSi(OC、n−CSi(OCH、n−CSi(OC、i−CSi(OCH、i−CSi(OC、n−C11Si(OCH、n−C11Si(OC、i−C11Si(OCH、i−C11Si(OC、n−C13Si(OCH、n−C13Si(OC、i−C13Si(OCH、i−C13Si(OC、n−C17Si(OCH、n−C17Si(OC、i−C17Si(OCH、i−C17Si(OC、n−C1021Si(OCH、n−C1021Si(OC、i−C1021Si(OCH、i−C1021Si(OC、n−C1633Si(OCH、n−C1633Si(OC、i−C1633Si(OCH、i−C1633Si(OCまたは前記のアルキルアルコキシシラン1種以上からなる部分縮合物または前記のアルキルアルコキシシランからなる混合物、部分縮合物からなる混合物またはアルキルアルコキシシランと部分縮合物とからなる混合物を含有する。
本発明の他の実施態様によると、前記シラン系含浸材は、成分Cとしてジノニルナフタリンスルホン酸またはこれらのアルカリ土類金属塩またはこれらの混合物を含有する。
本発明の他の実施態様によると、前記シラン系含浸材は、成分Aに対して成分Cを0〜50質量%の量で含有する。好ましくは、前記シラン系含浸材は、成分Aに対して成分Cを0.01〜10質量%の量で含有する。更に好ましくは、前記シラン系含浸材は、成分Aに対して成分Cを0.5〜5質量%の量で含有する。
本発明の他の実施態様によると、前記シラン系含浸材は、付加的な成分として、ジイソトリデシルアジペート、鉱油、ベンジン炭化水素、アルコール、レオロジー助剤、増粘剤またはこれらの混合物を含有する。
本発明の他の実施態様によると、前記(b)工程にて使用する接着剤は、常温硬化型エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、MMA樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又は、光硬化型樹脂である。
本発明の他の実施態様によると、前記(b)工程にて使用する接着剤は、常温硬化型エポキシ樹脂とされ、このエポキシ樹脂接着剤は、主剤、硬化剤の2成分型により提供され、
(i)主剤:主成分としてエポキシ樹脂を含み、接着増強付与剤として、必要に応じてシランカップリング剤等を含むものを使用する。
(ii)硬化剤:主成分としてアミン類を含み、主剤のエポキシ樹脂:硬化剤の各々のアミン当量比は1:1である。
組成とされる。
本発明の他の実施態様によると、前記繊維シートは、一方向に引き揃えた連続した強化繊維を互いに線材固定材にて固定した繊維シートである。また、他の実施態様によると、前記繊維シートは、連続した強化繊維に樹脂が含浸され、前記樹脂が硬化された繊維シートである。
本発明の他の実施態様によると、前記繊維シートは、強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、線材を互いに線材固定材にて固定した繊維シートである。また、他の実施態様によると、前記繊維シートは、前記繊維強化プラスチック線材間に樹脂が含浸され、前記樹脂が硬化された繊維シートである。
本発明によれば、鉄筋コンクリート構造物における鉄筋の腐食を抑制して、鉄筋の錆に起因したコンクリートの損傷を回避し、且つ、繊維シートの鉄筋コンクリート構造物表面に対する接着性能を向上させることができる。
本発明の鉄筋コンクリート構造物の補強方法により補強されたコンクリート構造物の断面図である。 本発明の鉄筋コンクリート構造物の補強方法に使用し得る繊維シートの一実施例を示す図である。 本発明の鉄筋コンクリート構造物の補強方法に使用し得る繊維シートの他の実施例を示す図である。 本発明の鉄筋コンクリート構造物の補強方法に使用し得る繊維シートの他の実施例を示す斜視図である。 図5(a)、(b)は、本発明の鉄筋コンクリート構造物の補強方法に使用し得る繊維シートを構成する繊維強化プラスチック線材の断面図である。 図6(a)、(b)は、本発明の鉄筋コンクリート構造物の補強方法に使用し得る繊維シートの他の実施例を示す斜視図である。 図7(a)〜(e)は、本発明の鉄筋コンクリート構造物の補強方法の一実施例を説明する工程図である。 本発明にて使用するシラン系含浸材の鉄筋コンクリート構造物における鉄筋の防錆作用のメカニズムを説明する図である。 図9(a)〜(c)は、本発明のコンクリート構造物の補強方法を実証するためのせん断付着試験の構成を説明する図であり、図9(a)は正面断面図であり、図9(b)、(c)は、側面断面図である。 図10(1)〜(6)は、本発明のコンクリート構造物の補強方法を実証するためのせん断付着試験結果を示す供試体の剥離破壊状況を示す写真である。 図11(a)、(b)は、本発明のコンクリート構造物の補強方法を実証するための建研式接着試験を説明する図であり、図11(a)は接着試験装置の斜視図であり、図11(b)は、補強された実験供試体と鋼製アタッチメントの概略断面図である。
以下、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
図1を参照して本発明に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法の特徴構成を説明すると、本発明によれば、鉄筋コンクリート構造物100は、シラン系含浸材102が塗布含浸された構造物表面101に、プライマー103を塗布してプライマー層104を形成し、更にその上に強化繊維fを含む繊維シート1が樹脂接着剤105で接着されて一体化される。
更に言えば、本発明の鉄筋コンクリート構造物の補強方法は、強化繊維fを含む繊維シート1を接着して一体化する鉄筋コンクリート構造物の補強方法において、
(a)鉄筋コンクリート構造物100の表面101にシラン系含浸材102を塗布する工程と、
(b)シラン系含浸材102が塗布された鉄筋コンクリート構造物100の表面101に、シランカップリング剤を含むプライマー103を塗布してプライマー層104を形成する工程と、
(c)プライマー層104が形成された鉄筋コンクリート構造物100の表面101に繊維シート1を接着剤105にて接着する工程と、
を有している。
本発明に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法の一実施例について更に詳しく説明する前に、先ず、本発明にて使用する繊維シート1について説明する。
(繊維シート)
本発明においては種々の形態の繊維シート1を使用することができる。繊維シート1の実施例を具体的に具体例1〜3として説明するが、本発明で使用する繊維シート1の形態は、これら具体例に示すものに限定されるものではない。
具体例1
図2に、本発明にて使用することのできる繊維シート1の一実施例を示す。繊維シート1は、連続した強化繊維fを一方向に引き揃えてシート状に構成される樹脂未含浸の繊維シート1Aとされる。
即ち、繊維シート1Aは、一方向に引き揃えた連続した強化繊維fから成る強化繊維シートをメッシュ状の支持体シートなどとされる線材固定材3にて保持した構成とすることができる。例えば、強化繊維fとして炭素繊維を使用した場合には、例えば平均径7μmの単繊維(炭素繊維モノフィラメント)fを6000〜24000本収束した樹脂未含浸の単繊維束を複数本、一方向に平行に引き揃えて使用される。炭素繊維シート1Aの繊維目付は、通常、30〜1000g/mとされる。
線材固定材3としてのメッシュ状の支持体シートを構成する縦糸4及び横糸5の表面に低融点タイプの熱可塑性樹脂を予め含浸させておき、メッシュ状支持体シート3をシート状に配列した炭素繊維の片面或いは両面に積層して加熱加圧し、メッシュ状支持体シート3の縦糸4及び横糸5の部分を炭素繊維シートに溶着する。
メッシュ状支持体シート3は、2軸構成のほかに、ガラス繊維を3軸に配向して形成したり、或いは、ガラス繊維を一方向に配列された炭素繊維に対して直交する横糸5のみを配置した、所謂、1軸に配向して形成して前記シート状に引き揃えた炭素繊維に接着することもできる。
又、上記線材固定材3の糸条としては、例えばガラス繊維を芯部に有し、低融点の熱融着性ポリエステルをその周囲に配したような二重構造の複合繊維も又好ましく用いられる。
具体例2
また、繊維シート1は、図3に示すように、連続した複数の強化繊維fを一方向に引き揃えた強化繊維シート1、例えば、図2に示すような繊維シート1Aに樹脂Reを含浸し、前記樹脂が硬化された繊維シート(所謂、FRP板)1Bとすることもできる。勿論、この繊維シート1Bは、一方向或いは複数方向に繊維が配列した単層或いは複数層から成る板厚0.5〜10mm程度のFRP板とすることもできる。
上記具体例1、2で説明した繊維シート1A、1Bにおいて、強化繊維fとしては、炭素繊維に限定されるものではなく、ガラス繊維、バサルト繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;更には、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステル、高強度ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用することができる。
また、具体例2における繊維シート1Bの場合の樹脂Reとしては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を使用することができ、熱硬化性樹脂としては、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂などが好適に使用され、又、熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂、ナイロン、ビニロンなどが好適に使用可能である。又、繊維体積含有率(Vf)は、40〜75%、好ましくは、50〜70%とされる。
具体例3
更には、図4及び図5に示すように、繊維シート1としては、マトリクス樹脂Rfが含浸され硬化された細径の連続した繊維強化プラスチック線材2を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、各線材2を互いに線材固定材3にて固定した繊維シート1Cを使用することもできる。
繊維強化プラスチック線材2は、直径(d)が0.5〜3mmの略円形断面形状(図5(a))であるか、又は、幅(w)が1〜10mm、厚み(t)が0.1〜2mmとされる略矩形断面形状(図5(b))とし得る。勿論、必要に応じて、その他の種々の断面形状とすることができる。
上述のように、一方向に引き揃えスダレ状とされた繊維シート1Cにおいて、各線材2は、互いに空隙(g)=0.05〜3.0mmだけ近接離間して、線材固定材3にて固定される。また、このようにして形成された繊維シート1Cの長さ(L)及び幅(W)は、補強される構造物の寸法、形状に応じて適宜決定されるが、取扱い上の問題から、一般に、全幅(W)は、100〜1000mmとされる。又、長さ(L)は、1〜5m程度の短冊状のもの、或いは、100m以上のものを製造し得るが、使用時においては、適宜切断して使用される。
また、繊維シート1Cの長さ(L)を1〜5m程度として、幅Wをこれより長く1〜10m程度として製造することも可能である。
繊維シート1Cの場合においても、強化繊維fとしては、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維;ボロン繊維、チタン繊維、スチール繊維などの金属繊維;更には、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステル、高強度ポリエステルなどの有機繊維;が単独で、又は、複数種混入してハイブリッドにて使用することができる。また、繊維強化プラスチック線材2に含浸されるマトリクス樹脂Rfは、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を使用することができ、熱硬化性樹脂としては、常温硬化型或は熱硬化型のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、MMA樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂などが好適に使用され、又、熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂、ナイロン、ビニロンなどが好適に使用可能である。又、繊維体積含有率(Vf)は、40〜75%、好ましくは、50〜70%とされる。
又、各線材2を線材固定材3にて固定する方法としては、図4に示すように、例えば、線材固定材3として横糸を使用し、一方向にスダレ状に配列された複数本の線材2から成るシート形態とされる線材、即ち、連続した線材シートを、線材に対して直交して一定の間隔(P)にて打ち込み、編み付ける方法を採用し得る。横糸3の打ち込み間隔(P)は、特に制限されないが、作製された繊維シート1の取り扱い性を考慮して、通常10〜100mm間隔の範囲で選定される。
このとき、横糸3は、例えば直径2〜50μmのガラス繊維或いは有機繊維を複数本束ねた糸条とされる。又、有機繊維としては、ナイロン、ビニロン、ポリエステルなどが好適に使用される。
各線材2をスダレ状に固定する他の方法としては、図6(a)に示すように、線材固定材3としてメッシュ状支持体シートを使用することができる。
つまり、シート形態を成すスダレ状に引き揃えた複数本の線材2、即ち、線材シートの片側面、又は、両面を、例えば直径2〜50μmのガラス繊維或いは有機繊維にて作製した、上記具体例1で説明したと同様の構成とされるメッシュ状の支持体シート3により支持した構成とすることもできる。
更に、各線材2をスダレ状に固定する他の方法としては、図6(b)に示すように、線材固定材3として、例えば、粘着テープ又は接着テープなどとされる可撓性帯材を使用することができる。可撓性帯材3は、シート形態を成すスダレ状に引き揃えた各繊維強化プラスチック線材2の長手方向に対して垂直方向に、複数本の繊維強化プラスチック線材2の片側面、又は、両面を貼り付けて固定する。
つまり、可撓性帯材3として、幅(w1)2〜30mm程度の、塩化ビニルテープ、紙テープ、布テープ、不織布テープなどの粘着テープ又は接着テープが使用される。これらテープ3を、通常、10〜100mm間隔(P)で各繊維強化プラスチック線材2の長手方向に対して垂直方向に貼り付ける。
更に、可撓性帯材3としては、ナイロン、EVA樹脂などの熱可塑性樹脂を帯状に、線材2の長手方向に対して垂直方向に片側面、又は、両面に熱融着させることによっても達成される。
(補強方法)
次に、図7を参照して、本発明に係る鉄筋コンクリート構造物の補強方法の一実施例について更に詳しく説明する。本発明によれば、前述のようにして製造された繊維シート1を用いて、鉄筋コンクリート構造物の補強が行われる。
つまり、本発明のコンクリート構造物の補強方法によれば、例えば、繊維シート1として、上記具体例3で説明した、マトリクス樹脂Rが含浸され硬化された細径の連続した繊維強化プラスチック線材2を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、各線材2を互いに線材固定材3にて固定した繊維シート1Cを使用することができる。繊維シート1Cは、シラン系含浸材102が塗布、含浸されたコンクリート構造物100の表面101に、プライマー103を塗布して形成されたプライマー層104を介して接着剤105にて接着される。この時、例えば、上記具体例1で説明した繊維シート1Aを使用した場合には、繊維シート1Aのコンクリート構造物への接着と同時に、この接着剤による繊維シート1Aに対する樹脂(マトリクス樹脂)含浸をも行うことができる。
コンクリート構造物100の補強に際して、曲げモーメント及び軸力を主として受ける部材(構造物)に対しては、曲げモーメントにより生じる引張応力或いは圧縮応力の主応力方向に強化繊維の配向方向を概ね一致させて接着することで、繊維シート1が効果的に応力を負担し、効率的に構造物の耐荷力を向上させることが可能である。
また、直交する2方向に曲げモーメントが作用する場合、繊維シート1の強化繊維fの配向方向が曲げモーメントにより生じる主応力に概ね一致するように2層以上の繊維シート1を直交させて積層接着することで効率的に耐荷力の向上が図れる。
図7(a)〜(e)を参照して、本実施例におけるコンクリート構造物の補強方法について更に詳しく説明する。
(第1工程)
鉄筋コンクリート構造物100の被補強面、即ち、繊維シート1の被接着面101に対して下地処理を行う(図7(a))。下地処理ではディスクサンダー、サンドブラスト、スチールショットブラスト、ワイヤーブラシ、ウォータジェット、などの研削手段50を使用して、新設の鉄筋コンクリート構造物の場合は、レイタンス、油脂、汚れ等を除去し、また、既設の鉄筋コンクリート構造物の場合には、塗膜、油脂、汚れ等を除去すると共に欠損部や浮き部、過大なひび割れがある場合は、予め補修を行なう。
(第2工程)
このようにして下地処理した被補強面101にシラン系含浸材102を、ヘラ、コテ、ローラなどの適当な塗布手段を用いて吹き付け、刷毛塗り、ローラ塗布、ナイフ塗布などにて塗布する。(図7(b))。
ここで、本発明におけるシラン系含浸材102の鉄筋コンクリート構造物100における鉄筋の防錆作用のメカニズムについて、図8を参照して簡単に説明する。
図8を参照すると理解されるように、シラン系含浸材102は、シランモノマーである、例えばアルキルアルコキシシランなどを含む低分子組成物であり、コンクリート内部まで深く浸透する。シランモノマーは、例えば、分子量が178.3とされる場合、浸透の範囲は、コンクリート構造物100にてコンクリート配合W/C=40%で11.4mm、W/C=50%で13.7mm、W/C=60%で14.5mmであることが実験的に検証されている。
このシランモノマーは、コンクリート中の水分との反応(加水分解)によりアルキルシラントリオール(3価シラノール)となり、このシラノールは重縮合してシロキサン結合(Si−O)により高分子化し、撥水性、電気絶縁性を備えたポリシロキサン(シリコーン)を形成する。このシリコーンは、コンクリート中や鉄筋表面の水酸基(−OH)と反応して、鉄筋の不動態皮膜に替わる鉄筋の保護層を形成することとなる。つまり、このようにして形成された保護層は、内在する塩化物イオンで破壊されることが無く、また、pH低下による消失が無いという点で、特に中性化したコンクリートに対して有効である。
このように、深く浸透したシラン系含浸材102は、鉄筋付近も含めて長期間コンクリート内部に残留し、シランモノマーの代表的な反応である水での触媒効果により鉄筋配置位置付近も含む部位から脱水を継続することができ、鉄筋周囲に水を存在させない特徴を持つ。そして、シラン系含浸材102の高分子化したシランポリマーは、コンクリート内部に水を浸入させないといった性質を併せ持つ。
一方、上記にて理解されるように、シラン系含浸材102は、高分子化し、コンクリート中や鉄筋表面の水酸基(−OH)と反応して水分を排出する。本発明によれば、この時生じた水分は、後述するように、プライマー103中のシランカップリング剤の無機官能基が取り込み、シラノールを生成することとなり、無機材料と反応結合し、且つ、エポキシ樹脂等の接着剤との接着性を改良する。
本発明にて、上記シラン系含浸材102としては、上記特許文献1にて開示されているシラン系含浸材を広く使用し得る。次に、本発明にて使用することのできるシラン系含浸材について説明する。
シラン系含浸材
本発明にて使用し得るシラン系含浸材(以下、「薬剤」ということもある。)は、成分Aとして一般式(II)
R−SiR (O) (II)
[式中、
Rは、3〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、
は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、
は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシ基を表すか、またはヒドロキシ基を表し、その際、基Rは、同じか、または異なっていてもよく、
xは、0、1または2であり、
yは、0.0〜1.5であり、
zは、0、1、2または3であり、かつ
(x+2y+z)=3である]のオルガノシランまたはオルガノシロキサンを少なくとも1種またはこれらの混合物、および成分Dとして、HO−CH−CH−N(CHまたはHO−CH−CH−N(Cまたはこれらの混合物を含有し、かつ成分Aと成分Dとは、1:1〜26.2:1のモル比で含有されている。
本発明に使用し得る上記薬剤は、成分Aとして、n−CSi(OCH、n−CSi(OC、i−CSi(OCH、i−CSi(OC、n−CSi(OCH、n−CSi(OC、i−CSi(OCH、i−CSi(OC、n−C11Si(OCH、n−C11Si(OC、i−C11Si(OCH、i−C11Si(OC、n−C13Si(OCH、n−C13Si(OC、i−C13Si(OCH、i−C13Si(OC、n−C17Si(OCH、n−C17Si(OC、i−C17Si(OCH、i−C17Si(OC、n−C1021Si(OCH、n−C1021Si(OC、i−C1021Si(OCH、i−C1021Si(OC、n−C1633Si(OCH、n−C1633Si(OC、i−C1633Si(OCH、i−C1633Si(OCまたは前記のアルキルアルコキシシラン1種以上からなる部分縮合物または前記のアルキルアルコキシシランからなる混合物、部分縮合物からなる混合物またはアルキルアルコキシシランと部分縮合物とからなる混合物を含有することができる。
上記薬剤は、成分Cとしてジノニルナフタリンスルホン酸またはこれらのアルカリ土類金属塩またはこれらの混合物を含有することができる。
上記薬剤は、成分Aに対して成分Cを0〜50質量%の量で含有することができる。
上記薬剤は、成分Aに対して成分Cを0.01〜10質量%の量で含有することができる。
上記薬剤は、成分Aに対して成分Cを0.5〜5質量%の量で含有することができる。
上記薬剤は、付加的な成分として、ジイソトリデシルアジペート、鉱油、ベンジン炭化水素、アルコール、レオロジー助剤、増粘剤またはこれらの混合物を含有することができる。
本発明に使用することのできる上記薬剤について更に説明すると、本発明に使用することのできる、鉄筋の腐食から鉄筋コンクリートを保護する薬剤は、上述したように、成分Aとして一般式(II)
R−SiR (O)y (II)
[式中、
Rは、3〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、
は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、
は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシ基を表すか、またはヒドロキシ基を表し、その際、基Rは、同じか、または異なっていてもよく、
xは、0、1または2であり、
yは、0.0〜1.5であり、
zは、0、1、2または3であり、かつ
(x+2y+z)=3である]のオルガノシランまたはオルガノシロキサンを少なくとも1種またはこれらの混合物を含有する。
アルキルアルコキシシランもしくはアルキルアルコキシシロキサンをベースとする薬剤を適用すると、浸入している塩化物によってすでにコンクリートが損傷されている場合でさえ、鉄筋において測定される腐食電流の明らかな低減をもたらす。
さらに、特定のオルガノ官能性シランおよび/またはシロキサン、つまり前記のアルキルアルコキシシランもしくはアルキルアルコキシシロキサンは、場合により、アルキルアルコキシシランもしくはアルキルアルコキシシロキサン中で溶解性であってもよい、アミノ基を有する化合物、たとえば特定のアミノシランまたは特定のアミノアルコールと組み合わせて、および場合によりアルキルアルコキシシランもしくはアルキルアルコキシシロキサン中で可溶性のカルボン酸もしくはカルボン酸の塩、有利にはジノニルナフタリンスルホン酸またはアルカリ土類金属塩、特にジノニルナフタリンスルホン酸カルシウムまたはジノニルナフタリンスルホン酸マグネシウム、または相応する可溶性の無機塩と組み合わせて、鉄筋構造のセメント結合した建築材料の表面に作用させることにより、鉄筋における腐食電流を持続的に防止することができ、それも既存の、たとえば塩化物により開始された腐食さえ劇的に低減することができる。
この場合、特に低い塩化物含有率を有するアルキルアルコキシシランもしくはアルキルアルコキシシロキサンが有利である。有利には100質量ppmよりも低い塩化物含有率、特に有利には50質量ppmより低い塩化物含有率、殊に有利には10質量ppmより低い塩化物含有率を有する前記のシランもしくはシロキサンを使用する。特に実質的に塩化物不含のアルキルアルコキシシランもしくはアルキルアルコキシシロキサン、つまり塩化物3質量ppm未満を有するシラン生成物を使用すると優れた結果を達成することができる。
有利には、鉄筋において観察される腐食電流の低減は、相応する保護されていないコンクリートに対して50%以上、有利には80%以上、特に有利には90%以上である。
腐食電流の測定によって判明した高い腐食防止は、アルキルアルコキシシランおよび/またはアルキルアルコキシシロキサン、有利にはイソブチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシランまたは低粘性のプロピルエトキシシロキサンにより、場合によりアミノ基を有する化合物、たとえばアミノシラン、有利にはアミノプロピルトリエトキシシラン、または使用されるシラン系と混和可能であるアミノアルコール、有利にはジエチルアミノエタノールと混合して、および/または場合により長鎖のカルボン酸または該カルボン酸のカルシウム塩もしくはマグネシウム塩、有利にはジノニルナフタリンスルホン酸カルシウムと混合して、ならびに場合によりその他の成分、たとえば溶剤または加工助剤の添加下に達成される。
一般に上記薬剤は、上記成分を良好に混合もしくは一緒に攪拌することによって、たとえば前記のオルガノシランもしくはオルガノシロキサンならびに場合によりその他の作用物質もしくは作用物質組合せおよび場合により希釈剤または場合によりレオロジー調整剤を添加することによって、簡単かつ経済的な方法で製造することができる。混合工程では場合により生じるわずかな混濁を通常、濾別する。
上記薬剤または該薬剤中に含有されている少なくとも1種の作用物質は有利には低粘性であり、かつ浸透性が良好である。有利には上記薬剤または該薬剤中に含有されている少なくとも1種の作用物質、たとえば上記一般式(II)の化合物、または相応する作用物質組合せは、0.8〜20mPas、特に有利には1.0〜10mPasの粘度を有する。
適用特性を改善するために、上記薬剤を公知の方法により水性の低粘性もしくは高粘性のエマルションとして調製してもよく、その際、作用物質組成物、つまり油相の粘度は、この場合、通常は変化しない。この場合、できる限り均質な分散を保証するために、水性エマルションとしての作用物質の調製が有利である。
上記薬剤は作用物質成分以外に付加的な成分として溶剤、希釈剤もしくは溶解補助剤、たとえば鉱油、ベンジン炭化水素、アルコール、特にメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、さらにジイソトリデシルアジペート、水、乳化剤、レオロジー調整剤、場合によりまた増粘助剤、たとえば微粒子状の粘土、沈降シリカ、熱分解法シリカ、または相応するこれらの混合物を含有していてもよい。
従って、鉄筋の腐食から鉄筋コンクリートを保護するための上記薬剤の特徴は、上述のように、該薬剤が腐食防止成分Aとして下記一般式(II)
R−SiR (O) (II)
[式中、
Rは、3〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、
は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、
は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシ基を表すか、またはヒドロキシ基を表し、その際、基Rは、同じか、または異なっていてもよく、
xは、0、1または2であり、
yは、0.0〜1.5であり、
zは、0、1、2または3であり、かつ
(x+2y+z)=3である]
のオルガノシランもしくはオルガノシロキサンを少なくとも1種またはこれらの混合物を含有することである。
オルガノシランベースの有利な部分縮合物、つまり一般式(II)のオルガノシロキサンはたとえばDE10056344ならびにDE10056343から公知である。
本発明は、シラン系含浸材としては、鉄筋の腐食から鉄筋コンクリートを保護するために、上述の一般式(II)のオルガノシランまたはオルガノシロキサンを好適に使用することができる。また、上記薬剤は、優れた貯蔵安定性を有する。
上記薬剤の低粘性の形から高粘性の形、つまりペースト状の形まで、または付加的に乳化した形での適用は、有利には吹き付け、刷毛塗り、ロール塗布またはナイフ塗布により行うことができる。この場合、上記薬剤を50g/mより多い量で、有利には100g/mより多い、特に有利には200g/mより多い量で適切にコンクリート表面に塗布する。場合により、特に支持体の吸収性がごくわずかであることに基づいて所望の作用物質量を1回の作業工程で塗布することができない場合には、作業工程の間にたとえば2時間から約2日間の乾燥期間をおいて複数回塗布することもできる。
アルキルアルコキシシランもしくはシロキサンは通常、多孔質の無機建築材料を含浸(疎水化)するために使用される。この場合、この措置の目的は、水および水中に溶解している有害物質、たとえば塩化物を遮断することである。これに対して本発明の場合、意外かつ有利に、特殊なアルキルアルコキシシランもしくはアルキルアルコキシシロキサン含有の薬剤を使用することにより、セメント結合した無機建築材料中の鉄筋における、腐食電流に基づいて確認することができる腐食を明らかに低減することができる、特に存在する腐食を本発明による薬剤の使用により停止する、もしくは少なくとも効果的に緩和することができることが判明した。
さらに、本発明に使用し得る液状の防止剤系をコンクリート表面上に塗布することにより、存在する腐食が進行する場合でも、および亀裂により損傷したコンクリートの場合でも、鉄筋における腐食電流を明らかに低下させることができることが判明した。液状の防止剤調製物はコンクリート表面上に直接塗布することができる。塗布の方法として公知の方法、たとえばスプレー塗布、吹き付け塗り、流し塗り、ロール塗り、刷毛塗りなどが適切である。防止剤調製物は自体公知の方法によってエマルションとして調製し、かつ相応して塗布することもできる。上記の公知の方法によってこのようなエマルションをコンクリート表面に塗布することが適切であり、その際、ペースト状で粘度の高いエマルションをナイフ塗布することもできる。通常は、十分な保護作用を達成するために、十分な生成物量がコンクリート中に浸入することができるように注意しなくてはならない。十分な保護作用は一般に、測定可能な腐食電流が、保護されていない面に対して80%以上低下する場合に達成される。このような保護作用は通常、本発明による防止剤系により、その塗布量が有利には200g/m以上である場合に達成される。この場合一般に、塗布した材料が全てコンクリート中に浸入することを保証すべきである。その際、複数回塗布する、または粘度の高い本発明による生成物、たとえばペースト状のエマルション、もしくはレオロジー調整剤により増粘した防止剤を塗布することが推奨される。防止剤を増粘するためにたとえば微粒子状の固体、たとえば煙霧シリカ、熱分解法シリカもしくは特性の微粒子状の粘土鉱物、たとえばカオリンが適切である。高粘度の本発明による薬剤を使用する場合、1回の作業工程で垂直面でも、それほど大きなタレによる生成物損失なしに200g/mを塗布することができる。
ここで、本発明に使用し得るシラン系含浸材の調製及び適用について説明する。
アルキルアルコキシシランおよび相応するシロキサンを場合によりアミノ官能性化合物およびカルボン酸またはカルボン酸の塩と混合する。得られる混合物は単相である。場合により補助的に攪拌し、かつ加熱する。20℃からアルキルアルコキシシラン混合物もしくはアルキルアルコキシシロキサン混合物が沸騰を開始する(約180℃まで)温度範囲で1分ないし数時間までの混合時間が有利であることが判明した。その際、化学的な反応が進行しうる。例としてここで以下のものをあげる:
R−Si(OR+n(C)NCOH
→R−Si(OR3-n[(C)NCO]+nROH
R−Si(OR+nRCOOH
→R−Si(OR3-n(RCOO)OH
得られる単相の混合物は通常液状であり、かつ低粘性である(粘度は通常、<10mPas、たとえば<5mPas、特に<1.5mPas)。粘度を調整するために付加的に溶剤を使用することができる。適切な溶剤はたとえばアルコール、有利にはエタノール、メタノールまたはイソプロパノールまたはベンジン炭化水素、たとえば石油ベンジンまたは溶剤燈油である。液状の防止剤混合物はコンクリート表面上に直接塗布するか、または公知の方法により水中油型エマルションとして調製し、かつ水性エマルションの形でコンクリート表面上に塗布する。水性エマルションの場合、低粘性のエマルション以外に高粘性のエマルションもまた適用することができる。高粘性のエマルションが有利な場合もいくつかある。特に適用工程で高い生成物量を塗布すべき場合である。記載の方法にとって重要なことは、十分な作用物質量(溶剤ではなく、エマルション=水の場合、連続相ではない)がコンクリート中に浸入することである。これを達成するために、複数回の塗布が有利であることが証明された。つまり、防止剤調製物をコンクリート表面に複数回塗布することである。この場合、測定される乾燥時間に注意すべきである。次の塗布を開始する前に、表面は少なくとも外観が乾燥していなくてはならない。所望の生成物量が支持体(コンクリート)によって吸収されるまで、この実施法を繰り返す。通常のコンクリートの場合、実地で少なくとも150g/mの防止剤作用物質の総量を吸収するために、1〜6回の塗布が必要である。個々の塗布の数は、コンクリートの多孔度に依存する。コンクリートが緻密であるほど、個々の塗布が多数必要である。コンクリートのバインダー相の多孔度は、水/セメント比(w/c)により特徴付けられる。w/c比が低いほど、コンクリートのバインダー相は緻密である。200g/mを上回る作用物質の吸収量が特に有利であり、殊に有利には400g/mを上回る作用物質吸収量である。
上述のように、本発明によると、上記薬剤、即ち、シラン系含浸材102が鉄筋コンクリート構造物100の被補強面101に塗布される。
(第3工程)
上記第2工程にて鉄筋コンクリート構造物100の被補強面101にシラン系含浸材102を塗布した後、例えば、30〜60分経過することにより、シラン系含浸材102が構造物表面101から内部へと浸透すると共に、構造物表面が指触乾燥状態となる。好ましくは、更に、数時間、例えば4時間程度養生した後、この構造物表面101にプライマー103を、ヘラ、コテ、ローラなどの適当な塗布手段を用いて塗布し、プライマー層104を形成する(図7(c))。次に、本発明にて使用するプライマー103について説明する。
プライマー
本発明にて、プライマー103は、エポキシ樹脂プライマーなどの、主剤としてのエポキシ樹脂と、ジアミン類のような硬化剤とを含む2成分型のエポキシ樹脂系プライマーとされる。更に、本発明のプライマー103は、シランカップリング剤を含み、その含有量は、0.1〜5.0重量%、好ましくは、1.0〜3.0重量%とされる。シランカップリング剤の含有量が5.0重量%を超えると、カップリング剤の効果よりもエポキシ樹脂の硬度低下などに影響を及ぼすため不適である。また、カップリング剤は少量で効果が得られるもののカップリング剤の含有量が0.1重量%未満ではシラン系含浸材102が塗布されたことにより以後において揮発される水分の影響を受け、プライマー103はコンクリートに対する有効な接着性能を示さない。
更に、好ましくは、本発明のプライマー103は、フィラーを含むことができる。その含有量は、0.1〜10重量%、好ましくは、5.0〜8.0重量%とされる。フィラーの含有量が10重量%を超えると、作業性の低下や、プライマー103の液状樹脂成分だけがコンクリート表面に含浸し、フィラー分だけが分離し、エポキシ樹脂の性能に変化を及ぼすことから不適である。また、フィラーは少量でも効果が得られるもののフィラーの含有量が0.1重量%未満ではコンクリート表面との濡れ性能及び的確な膜厚を確保することが困難となる。次に、シランカップリング剤とフィラーとについて更に詳しく説明する。
・シランカップリング剤
本発明に使用するプライマー103に混合されるシランカップリング剤は、当業者には周知のものを使用することができる。つまり、シランカップリング剤は、主成分が下記一般式(I)で示され、
Y−Si−(OX) (I)
ここで、
Yは有機材料と反応結合する有機官能基であり、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、又は、エポキシ基とされ、
OXは無機材料と反応する無機官能基であり、アルコキシ基とされる、
有機ケイ素化合物である。また、必要に応じて、他の成分を含むこともできるが、シランカップリング剤は、純度100%品を使用することもできる。
本発明では、詳しくは後述するが、接着剤105として、通常、エポキシ樹脂が広く使用されることから、限定されるものではないが、プライマー103としては、エポキシ樹脂系プライマーが好ましく、従って、有機官能基(Y)として、エポキシ基を有するエポキシシラン系シランカップリングが好適に使用される。
つまり、プライマー103に混合されるシランカップリング剤は、好ましくは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、又は、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランとされる。
・フィラー
上記にて理解されるように、シラン系含浸材102は、高分子化し、コンクリート中或いは鉄筋表面の水酸基(−OH)と反応して水分を排出する。本発明によれば、この時生じた水分は、プライマー103中のシランカップリング剤の無機官能基が取り込み、シラノールを生成することとなり、無機材料と反応結合し、且つ、エポキシ樹脂等の接着剤との接着性を改良する。
また、好ましくは、上述したように、本発明にて、プライマー103は、フィラーを含むことによって、水分による弾きを防止することができる。そのため、本発明によれば、水性組成物であるシラン系含浸材を塗布したとしても、シラン系含浸材塗布後数時間経過後には、プライマー103の塗布が可能となり、引き続いて、繊維シート1の接着工程を実施することができ、従来必要とされた例えばシラン系含浸材塗布後24時間以上の養生時間といったものは必要としない。つまり、シランカップリング剤及びフィラーを含有したプライマー103を塗布することにより、繊維シートとコンクリート構造物表面との間の接着剤105による接着性能が低下することはない。このことは、後述する実験例で示すように、土木学会及びJISに規定する試験法により実験的に検証されている。
本発明のプライマー103に混合されるフィラーは、硅石粉、炭酸カルシウム粉末、酸化チタン粉末、セラミック粉末などとされる例えば平均粒子径10〜20μmの粉状フィラーとされる。
上記組成とされるプライマー103を使用しての本発明の補強方法よれば、鉄筋コンクリート構造体の鉄筋の腐食の抑制を可能とするシラン系含浸材の塗布を可能とし、且つ、次工程に使用される有機樹脂材料(接着剤)と、更に、施工面であるコンクリートなどの無機物とに作用して、繊維シート1のコンクリート構造物に対する強固な接合を実現し、接着性能を向上させる。
プライマー103の塗布量は、0.15〜0.30kg/mとされる。
尚、上述のようにしてコンクリート構造物の被接着面101に塗布されたプライマー103は、プライマー層104が完全に乾燥するのを待つ必要はなく、塗布後速やかに、例えば、プライマー103の塗布後2〜3時間経過した時点で、即ち、指触乾燥後直ちに、次工程にかかることができる。従来の、シラン系含浸材を塗布することによる鉄筋の防錆作業では、シラン系含浸材塗布後、乾燥するまで、少なくとも24時間の養生を必要としていたのに比較すると、本発明の補強方法による上記シラン系含浸材及びプライマー塗布工程後の次工程(繊維シート接着工程)までの時間短縮は、本発明の特長の一つでもあり、全補強作業工程を著しく短縮することができる。
なお、必要に応じて、下地表面(被補強面101)が不陸修正を必要とする場合には、プライマー層104の上に不陸修正材106を塗布することもできる。不陸修正材106は、例えば、パテ状エポキシ樹脂接着剤を、必ずしも被補強面全領域である必要はなく所要領域に所要の厚さ、例えば、0.5mm〜10mmにて塗布することによって形成することができる。
(第工程)
図7(d)、(e)に示すように、鉄筋コンクリート構造物の被補強面101にプライマー103を塗布することにより、被補強面101にプライマー層104が形成されると、このプライマー層104の上に接着剤105を塗布し、この面に、繊維シート1を押し付けて補強対象コンクリート構造物100の表面101に接着する。
接着剤105として、常温硬化型エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、MMA樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、光硬化型樹脂等が挙げられ、具体的には、常温硬化型エポキシ樹脂が好適に使用される。
本実施例で使用したエポキシ樹脂接着剤は、主剤、硬化剤の2成分型により提供され、その組成の一例を示せば、下記の通りとされる。
(i)主剤:主成分としてエポキシ樹脂を含み、接着増強付与剤として、必要に応じてシランカップリング剤を含むものを使用する。エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、特に、靭性付与のためのゴム変性エポキシ樹脂とすることができ、更に、反応性希釈剤及び搖変剤を用途に応じて添加しても良い。
(ii)硬化剤:主成分としてアミン類を含み、必要に応じて、硬化促進剤を含み、添加剤として着色剤を含むものを使用し、主剤のエピクロルヒドリン:硬化剤のアミン当量比は1:1である。アミン類は、例えば、メタキシレンジアミン及びイソホロンジアミンを含む脂肪族アミンとすることができる。
尚、接着剤105は、プライマー層104の上に塗布するものとして説明したが、勿論、繊維シート1に塗布することもでき、また、プライマー層104の表面及び繊維シート1接着面の両面上に塗布しても良い。
つまり、本実施例では、繊維シート1は、プライマー層104の表面に接着されると共に、本実施例で例えば繊維シート1C(図4に示す具体例3として説明した繊維シート)を使用した場合には、線材2、2間の間隙(g)に樹脂が充填され、また、場合によっては、例えば、具体例1に示す繊維シート1Aのような場合には、上述したように、この接着剤105が繊維シート1内の繊維f間に樹脂(マトリクス樹脂)として含浸される。
次に、本発明に係るコンクリート構造物の補強方法の作用効果を実証するために以下の実験を行った。
実験例1(せん断付着試験)
本実験例では、図9に示すように、繊維シート1を接着工法に従ってコンクリート実験供試体100Tに接着し、せん断付着試験を行った。
コンクリート構造物と繊維シート1とのせん断付着試験は、土木学会が規定するJSCE−543−2012「連続繊維シートとコンクリートとの付着強度試験」に準じてせん断付着強度、界面剥離破壊エネルギー(Gf)、有効付着長(Le)を求め、本発明の工法の適応に当たり妥当性を評価した。
(実験供試体)
実験供試体100Tの形状、寸法の概略を図9(a)、(b)、(c)に示す。実験供試体は、施工時のずれの生じにくい一体型(B型試験体)とし、載荷前ノッチ部100T1に打撃を与え、コンクリートを定着側(図9(a)、(b)にて左側)と、試験側(図9(a)、(b)にて右側)分離した。載荷は、インストロン型万能試験機(最大荷重100kN)を用いた。専用の治具で試験体両端のねじ部100T2を締めて固定し、引張荷重を与えることにより載荷し、評価した。
なお、本実験例では、ノッチ部100T1を中心として、実験供試体100Tの定着側の領域には、炭素繊維シートを巻付けて固定し、実験供試体100Tの試験側の領域における炭素繊維シート1と供試体100Tとの付着状態を観察した。
測定は、荷重、変異、ひずみとし、試験機のロードセル、ワイヤーストレンゲージの電位差をそれぞれ、データロガで同期に記録した。
試験に用いた材料の一覧を表1に示す。
Figure 0006861190
・繊維シート
本実験例では、繊維シート1としては、図2を参照して具体例1として説明した構成の、即ち、炭素繊維fが一方向に配列された炭素繊維シート1Aであった。本実験例で使用した繊維シート1は、強化繊維fとしては、平均径7μm、収束本数24000本のPAN系炭素繊維を使用した新日鉄住金マテリアルズ株式会社製の高強度型炭素繊維シート(商品名:トウシート FTS−C1−20)を使用した。繊維目付量は1.0kg/mであった。
・シラン系含浸材
シラン系含浸材102としては、主成分としてイソブチルトリエトキシシランとジエタノールアミンを含むエボニック デブサ ゲーエムベーハー製(ドイツ国)(商品名:「プロテクトシルCIT」)のシラン系含浸材を使用した。
このシラン系含浸材102は、イソブチルトリエトキシシラン980gと、ジエタノールアミン20gとを混合し、かつ40℃で30分間攪拌して調製されたものであり、生成物の粘度は1mPasであった。
・プライマー
本実験例では、プライマー103としては、エポキシ樹脂プライマーである新日鉄住金マテリアルズ株式会社製の湿潤面用エポキシ樹脂(商品名:FP−Si7)を使用した。このエポキシ樹脂プライマーは、主剤としてのエポキシ樹脂と、脂肪族アミンとされる硬化剤とを含む2成分型のエポキシ樹脂プライマーとされ、シランカップリング剤を3重量%、フィラーとして平均粒子径16μmの酸化チタン粉末を8重量%含有するものであった。
プライマー103に混合された上記シランカップリング剤は、主成分として2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを含む信越化学工業株式会社製(商品名:KBM−403)のシランカップリング剤を使用した。
(試験方法)
先ず、本実験例では、供試体100Tの被接着面101をディスクサンダーを使用して下地処理を行い被接着面101に付着している油膜、汚れ等を除去した。この供試体100Tの表面101に、シラン系含浸材102をローラ塗布にて0.528kg/m塗布した。
シラン系含浸材102の施工条件は、5℃環境にて4時間養生、及び、23℃環境にて15時間養生の2種類とした。それぞれ、養生時間経過後に、エポキシ樹脂プライマー103をローラー刷毛を用いて0.2kg/m塗布した(塗布厚Tは、略0.17mm)。
本実験例では、プライマー103塗布した後、プライマー層104が指触乾燥するのを待って、プライマー層104の上に、不陸修正材106をヘラを用いて塗布した。不陸修正材としては、新日鉄住金マテリアルズ株式会社製のエポキシ樹脂パテ材(商品名:FE−Z)を使用した。本実験例にて、エポキシ樹脂パテ材は、1.3kg/m(厚さ0.8mm)で塗布した。
不陸修正材106を塗布した後、不陸修正材が指触乾燥するのを待って、この不陸修正材層の上に含浸接着剤105としてエポキシ樹脂105を塗布量0.6kg/mにて塗付した。
本実験例にて、含浸接着剤としてのエポキシ樹脂105は、新日鉄住金マテリアルズ株式会社製のエポキシ樹脂(商品名:FR−E3P)を使用した。
次いで、炭素繊維シート1をエポキシ樹脂塗布面に軽く押し付けた後、炭素繊維シート1の上をプラスチックローラーに力を加えて押し付けながら移動させた。エポキシ樹脂は、繊維シート1から染み出した状態となっており、このエポキシ樹脂をローラで均一に均して、繊維シート1を完全にコンクリート供試体100Tに接着することができた。
炭素繊維シート1を供試体100Tに接着後、22日間常温(23℃)にて静置養生し、試験に供した。せん断付着試験の結果を下記表2に示す。全ての供試体100Tでコンクリートかぶり部が炭素繊維シートに付着した状況で試験を終了した。これらは正常な剥離破壊状況と判断される。供試体100Tの剥離破壊状況を図10(1)〜(6)に示す。
Figure 0006861190
上記実験により、本発明の補強方法にて提供される、予めシラン系含浸材102が塗布されたコンクリート構造物100Tに対し、湿潤接着型エポキシプライマー103を塗布して、エポキシ樹脂パテ剤(必要により塗布される不陸修正材)106、エポキシ樹脂含浸接着剤105にての一連の流れで炭素繊維などの強化繊維を有した繊維シート1を施し、耐震補強などに用いる補強構造が既往の設計式に適合することが確認された。
つまり、実験結果から、本発明に従った工法は、既往の設計法に用いるせん断付着強度特性値0.44N/mm以上を全ての供試体で上回り、有効なせん断付着特性値を有することが確認された。また、土木学会の規定する界面剥離破壊エネルギー0.5N/mmを全ての供試体で上回り、既往の設計法が使用可能であることが確認された。
なお、「有効付着長(Le)」とは、連続繊維シートが剥離するまでの最大荷重において繊維シートとコンクリートとの付着応力が有効に作用している区間の長さを言う。
試験結果から、本発明の工法によると、5℃環境、4時間養生といった環境下においても有効付着長は平均値が91mm程度が達成されており、23℃環境、15時間養生といった環境下の有効付着長(平均値)80mmを上回る性能を達成していることが分かる。
実験例3(建研式接着試験)
本実験例では、本発明に従って補強されたコンクリート構造物100と繊維シート1との接着性能の評価試験を、JIS A 6909に規定する建研式試験に準拠して行った。
コンクリート構造物実験供試体100Tの形状、寸法、及び、接着試験法の概略を図11(a)、(b)に示す。実験供試体100Tは、図11(a)に示すように、長さ(L0)が300mm、幅(W0)が300mm、高さ(H0)が60mmとされた。
この実験供試体100Tの一側表面に、上記表1に示される上記実験例1と同じ材料及び施工法にて、本発明に従って、シラン系含浸材102、プライマー103を塗布し、その後、不陸修正材(パテ材)106を介して接着剤105にて繊維シート1を接着した。
ただ、シラン系含浸材102は、実験供試体100Tに0.528kg/mにて塗布した後、20℃環境にて24時間養生、5℃環境にて0.5時間養生、及び、5℃にて4時間養生の3種類とした。
次いで、図11(c)に示すように、縦、横の寸法が(L1)40mm×(W1)40mmとされる鋼製アタッチメント(治具)120を接着剤121で繊維シート1に接着した。その後、鋼製アタッチメント120を上方へと引っ張り、供試体における諸材料及び回面における破壊状態を観察し、接着性能を評価した。結果を表3に示す。
Figure 0006861190
試験結果から、破壊形態はコンクリート破壊か、或いは、アタッチメント接着剤121の破壊とされた。つまり、何れの実験供試体においてもシアン系含浸材102が塗布、含浸されたた実験供試体表面101とプライマー層104との間での剥離はなく、本発明によれば、シアン系含浸材を予めコンクリート構造物に塗布し、含浸させたことによる付着強度低下はないことが分かった。
1 繊維シート
100 鉄筋コンクリート構造物
100T 実験供試体
101 被補強面
102 シアン系含浸材
103 プライマー
104 プライマー層
105 接着剤

Claims (19)

  1. 強化繊維を含む繊維シートを接着して一体化する鉄筋コンクリート構造物の補強方法において、
    (a)前記鉄筋コンクリート構造物の表面にシラン系含浸材を塗布する工程と、
    (b)前記シラン系含浸材が塗布された前記鉄筋コンクリート構造物の表面に、シランカップリング剤を含むプライマーを塗布してプライマー層を形成する工程と、
    (c)前記プライマー層が形成された前記鉄筋コンクリート構造物の表面に前記繊維シートを接着剤にて接着する工程と、
    を有することを特徴とする鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  2. 前記プライマーの前記シランカップリング剤の含有量は、0.1〜5.0重量%であることを特徴とする請求項1に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  3. 前記プライマーは、更に、粉状フィラーを0.1〜10重量%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  4. 前記シランカップリング剤は、主成分が下記一般式(I)で示され、
    Y−Si−(OX) (I)
    ここで、
    Yは有機材料と反応結合する有機官能基であり、
    OXは無機材料と反応する無機官能基である、
    有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  5. 前記有機官能基はアミノ基、メルカプト基、ビニル基、又は、エポキシ基であり、
    前記無機官能基はアルコキシ基である、
    ことを特徴とする請求項4に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  6. 前記シランカップリング剤は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、又は、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする請求項13のいずれかの項に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  7. 前記シラン系含浸材は、成分Aとして一般式(II)
    R−SiR (O) (II)
    [式中、
    Rは、3〜20個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、
    は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基を表し、
    は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシ基を表すか、またはヒドロキシ基を表し、その際、基Rは、同じか、または異なっていてもよく、
    xは、0、1または2であり、
    yは、0.0〜1.5であり、
    zは、0、1、2または3であり、かつ
    (x+2y+z)=3である]のオルガノシランまたはオルガノシロキサンを少なくとも1種またはこれらの混合物、および成分Dとして、HO−CH−CH−N(CHまたはHO−CH−CH−N(Cまたはこれらの混合物を含有し、かつ成分Aと成分Dとは、1:1〜26.2:1のモル比で含有されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  8. 前記シラン系含浸材は、成分Aとして、n−CSi(OCH、n−CSi(OC、i−CSi(OCH、i−CSi(OC、n−CSi(OCH、n−CSi(OC、i−CSi(OCH、i−CSi(OC、n−C11Si(OCH、n−C11Si(OC、i−C11Si(OCH、i−C11Si(OC、n−C13Si(OCH、n−C13Si(OC、i−C13Si(OCH、i−C13Si(OC、n−C17Si(OCH、n−C17Si(OC、i−C17Si(OCH、i−C17Si(OC、n−C1021Si(OCH、n−C1021Si(OC、i−C1021Si(OCH、i−C1021Si(OC、n−C1633Si(OCH、n−C1633Si(OC、i−C1633Si(OCH、i−C1633Si(OCまたは前記のアルキルアルコキシシラン1種以上からなる部分縮合物または前記のアルキルアルコキシシランからなる混合物、部分縮合物からなる混合物またはアルキルアルコキシシランと部分縮合物とからなる混合物を含有することを特徴とする請求項7に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  9. 前記シラン系含浸材は、成分Cとしてジノニルナフタリンスルホン酸またはこれらのアルカリ土類金属塩またはこれらの混合物を含有することを特徴とする請求項7又は8に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  10. 前記シラン系含浸材は、成分Aに対して成分Cを0〜50質量%の量で含有することを特徴とする請求項9に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  11. 前記シラン系含浸材は、成分Aに対して成分Cを0.01〜10質量%の量で含有することを特徴とする請求項10に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  12. 前記シラン系含浸材は、成分Aに対して成分Cを0.5〜5質量%の量で含有することを特徴とする請求項11に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  13. 前記シラン系含浸材は、付加的な成分として、ジイソトリデシルアジペート、鉱油、ベンジン炭化水素、アルコール、レオロジー助剤、増粘剤またはこれらの混合物を含有することを特徴とする請求項7〜12のいずれかの項に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  14. 前記(b)工程にて使用する接着剤は、常温硬化型エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、MMA樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又は、光硬化型樹脂であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかの項に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  15. 前記(b)工程にて使用する接着剤は、常温硬化型エポキシ樹脂とされ、このエポキシ樹脂接着剤は、主剤、硬化剤の2成分型により提供され、
    (i)主剤:主成分としてエポキシ樹脂を含み、接着増強付与剤として、必要に応じてシランカップリング剤等を含むものを使用する。
    (ii)硬化剤:主成分としてアミン類を含み、主剤のエポキシ樹脂:硬化剤の各々のアミン当量比は1:1である。
    組成とされることを特徴とする請求項1〜14のいずれかの項に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  16. 前記繊維シートは、一方向に引き揃えた連続した強化繊維を互いに線材固定材にて固定した繊維シートであることを特徴とする請求項1〜15のいずれかの項に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  17. 前記繊維シートは、連続した強化繊維に樹脂が含浸され、前記樹脂が硬化された繊維シートであることを特徴とする請求項16に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  18. 前記繊維シートは、強化繊維にマトリクス樹脂が含浸され、硬化された連続した繊維強化プラスチック線材を複数本、長手方向にスダレ状に引き揃え、線材を互いに線材固定材にて固定した繊維シートであることを特徴とする請求項1〜15のいずれかの項に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
  19. 前記繊維シートは、前記繊維強化プラスチック線材間に樹脂が含浸され、前記樹脂が硬化された繊維シートであることを特徴とする請求項18に記載の鉄筋コンクリート構造物の補強方法。
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