JP6859886B2 - 管端蓋及びそれを用いた鋼管の製造方法 - Google Patents

管端蓋及びそれを用いた鋼管の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、管端蓋及びそれを用いた鋼管の製造方法に関する。
鋼材の熱処理は機械部品や鉄鋼製品に所望の特性や性能を与えることを目的として古くから広く行われており、その本質は金属組織の調整である。なかでも「焼入れ」は熱処理の大半を占め、常温では通常フェライト・パーライト組織である被熱処理材をAc点(オーステナイト変態終了温度)以上の高温に加熱してオーステナイト化後、急冷してマルテンサイト組織を形成するものである。マルテンサイト組織は金属材料のすべての組織のなかでも最も高い強度を示し、あらゆる産業分野で利用されている非常に重要な組織形態である。
管状体の焼入れにおいて最も留意すべき点は、周方向の均一冷却である。周方向の冷却が不均一となった場合、冷却中の鋼管の曲がりが発生する。この曲がりは鋼管が長くなるほど大きくなり、ライン搬送時のトラブルや曲がり矯正工程の追加など好ましくない事態を招く。鋼管の焼入れでは、鋼管を移動搬送しつつ冷却帯を通過させながら外面水冷することが好適である。外面水冷の均一化は環状主管に冷却ノズルを均等に配置するなどの手段で比較的簡単に実現できるが、内面水冷は技術的に課題が多いことに加え、設備構成を複雑化させることがその理由である。
鋼管の外面のみから冷媒を吹き付けても、管端部から鋼管の内部に冷媒が浸入する場合がある。鋼管の内部に冷媒が浸入すると、鋼管の内面が不均一に冷却され、曲がりの原因になる。鋼管肉厚が大きい場合は曲がりの悪影響は小さいが、そうであっても、硬さのばらつきなど、諸所の問題の原因となる。また、鋼管の内面を伝って冷媒が加熱炉に流入し、加熱炉を損傷させる恐れもある。
特開昭58−27331号公報には、搬送される管状物体に冷媒を噴射して冷却する冷却装置において、冷却水遮断用挿入円筒を設け、冷媒が管後端から管内に浸入することを防止することが記載されている。特許第5252131号公報には、鋼管を外面から水冷して焼入れする焼入れ方法において、管端部を空冷することが記載されている。特開2012−172173号公報には、加熱された鋼管を長手方向に沿って搬送しながら、鋼管の外周面に焼入れ水を搬送方向に対して傾斜して噴射し、鋼管を焼入れする方法において、鋼管の搬送方向の後端に蓋を取付けることが記載されている。実開昭61−77192号公報には、複数の鋼管に対し、管端蓋を連続的に自動溶接する装置が記載されている。
特開昭58−27331号公報 特許第5252131号公報 特開2012−172173号公報 実開昭61−77192号公報
鋼管の内部への冷媒の浸入を抑制する手段としては、管端に蓋を取付けるのが簡便かつ確実である。蓋の取付けは、鋼管の管端に蓋を全周又はスポット溶接するのが一般的であるが、処理前の取り付け工程、及び処理後の蓋を含めた管端の切り落とし工程が必要になり、生産効率及び歩留まりが低下する。また、単なる挿入による取付けでは、熱処理中に蓋が脱落する場合がある。
本発明の目的は、取付けが容易で、熱処理中の脱落を防ぐことができる管端蓋を提供すること、及びこれを用いた鋼管の製造方法を提供することである。
本発明の一実施形態による管端蓋は、鋼管の管端に取付ける管端蓋であって、前記鋼管の内側に配置される内蓋と、前記鋼管の内側であって前記内蓋よりも前記鋼管の管端に近い位置に配置される断熱材と、前記鋼管の端面と前記内蓋とを接続して一定の距離に保持する接続部材とを備える。
本発明の一実施形態による鋼管の製造方法は、素管を準備する工程と、前記素管の管端の少なくとも一方に、前記管端蓋を取付ける工程と、前記管端蓋が取り付けられた素管を焼入れする工程とを備える。
本発明によれば、取付けが容易で、熱処理中の脱落を防ぐことができる管端蓋が得られる。この管端蓋を用いて鋼管を製造することで、鋼管の曲がりを抑制することができる。
図1は、本発明の第1の実施形態による管端蓋の構成を示す分解斜視図である。 図2は、第1の実施形態による管端蓋を鋼管に取付けた状態を示す断面図である。 図3は、本発明の一実施形態による鋼管の製造方法を示すフロー図である。 図4は、熱処理ラインの一例の機能的構成を示すブロック図である。 図5は、相変態を生じる一般的な鉄鋼材料の温度−伸び線図である。 図6は、本発明の第2の実施形態による管端蓋の構成を示す分解斜視図である。 図7は、第2の実施形態による管端蓋を鋼管に取付けた状態を示す断面図である。 図8は、本発明の第3の実施形態による管端蓋の構成を示す分解斜視図である。 図9は、第3の実施形態による管端蓋を鋼管に取付けた状態を示す断面図である。 図10は、鋼管の内面の熱伝達率と鋼管内面の残留引張応力との関係を示すグラフである。 図11は、鋼管の底部に冷媒が滞留している状態を示す図である。 図12は、底部に冷媒が滞留しているときの鋼管の応力分布である。 図13は、数値計算で使用したモデルである。 図14は、間隙量の時間変化を示すグラフである。 図15は、管端及び蓋の温度の時間変化を示すグラフである。 図16は、断熱材がない場合における、冷却開始から25秒後の状態を示す図である。 図17は、断熱材がある場合における、冷却開始から100秒後の状態を示す図である。 図18は、防水性能評価試験の概要を示す図である。 図19は、鋼管の搬送の状況を模式的に示す図である。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による管端蓋1の構成を示す分解斜視図である。図2は、管端蓋1を鋼管Pに取付けた状態を示す断面図である。管端蓋1は、鋼管Pの内側に配置される内蓋11と、鋼管Pの内側であって内蓋11よりも鋼管Pの管端に近い位置に配置される断熱材12と、鋼管Pの端面と内蓋11とを接続する接続部材であるステー13とを備えている。管端蓋1はさらに、鋼管Pの端面に隣接するように配置される外蓋14、外蓋14を固定するための連結ねじ15a等を備えている。
内蓋11は、鋼管Pの内側に配置できるように、鋼管Pの内径よりも外径が少し小さい円板形状を有している。内蓋11は、鋼管Pよりも線膨張係数αが大きい材質で形成されていることが好ましい。内蓋11の材質は、例えばステンレスである。内蓋11は、主に作業性の観点から、薄い方が好ましい。内蓋11の厚さは、好ましくは20mm以下であり、さらに好ましくは10mm以下である。
断熱材12も、内蓋11と同様に、鋼管Pの内側に配置できるように、鋼管Pの内径よりも外径が少し小さい円板形状を有している。断熱材12は、耐熱性があることが好ましく、例えば、アルミナ等のセラミックの成形体等を用いることができる。
本実施形態では、断熱材12は、内蓋11に固定されている。しかし、断熱材12は、例えばステー13に固定されていてもよいし、外蓋14に固定されていてもよい。断熱材12は、内蓋11よりも鋼管Pの管端に近い位置に配置されていればよい。
ステー13は、鋼管Pの端面と内蓋11とを接続する。ステー13によって、内蓋11が鋼管Pの軸方向に移動しないようにすることができる。ステー13の材質は特に限定されず、例えば炭素鋼であってもよいし、ステンレスであってもよい。
ステー13の各々は、より具体的には、内蓋11と概略垂直な方向に延びる第1部分13aと、第1部分13aの一端に連続し、内蓋11と概略平行な方向に延びる第2部分13bとを含んでいる。ステー13の各々は、第2部分13bが鋼管Pの端面に接することによって、鋼管Pの端面と内蓋11との間の距離を規制する。図1では鋼管の周方向に8つのステー13を配置しているが、ステー13の数は任意である。
本実施形態では、図2に示すように、ステー13の各々はねじ16によって内蓋11に固定されている。しかし、ステー13の固定方法は任意である。例えば、ステー13を断熱材12に固定することによって、ステー13と内蓋11とが連結されるようにしてもよい。なお、ステー13と鋼管Pとは、例えば、耐熱性の接着材等で固定してもよい。
本実施形態のステー13は接続部材の例示であり、接続部材の構成はこれに限定されない。接続部材は、鋼管Pの端面と内蓋11とを接続して一定の距離に保持するものであればよい。
外蓋14は、鋼管Pの開口を塞ぐように、鋼管Pの内径よりも外径が少し大きい円盤形状を有している。外蓋14は、熱変形をできるだけ抑制するため、線熱膨張係数αが小さい材量で形成されていることが好ましい。外蓋14の材質は例えば、炭素鋼である。外蓋14は、主に作業性の観点から、薄い方が好ましい。外蓋14の厚さは、好ましくは20mm以下であり、さらに好ましくは10mm以下である。
本実施形態では、外蓋14は、連結ねじ15aによって内蓋11と連結される。連結ねじ15aは、内蓋11aに溶接されている。外蓋14は、その中心に連結ねじ15aを通すための貫通孔14aを有している。貫通孔14aに連結ねじ15aを通し、ナット15bを締め付けることによって、外蓋14は、鋼管Pの端面にステー13を介して当接した状態で保持される。この構成によれば、外蓋14の脱着を簡便にできる。しかし、外蓋14の固定方法は任意である。例えば、内蓋11に連結ねじ15aの代わりに棒を溶接し、当該棒に外蓋14を溶接することで固定してもよい。
[鋼管の製造方法]
次に、この管端蓋1を用いた鋼管の製造方法を説明する。以下、鋼管の製造方法に関する説明では、熱処理の対象となる鋼管を「素管」と呼ぶ。また、「素管」と区別して、熱処理されて製造された鋼管という意味で「鋼管」の用語を用いる。
図3は、本発明の一実施形態による鋼管の製造方法を示すフロー図である。本実施形態による鋼管の製造方法は、素管を準備する工程(ステップS1)と、素管の管端の少なくとも一方に管端蓋1を取付ける工程(ステップS2)と、管端蓋1が取付けられた素管を焼入れする工程(ステップS3)とを備えている
熱処理の対象となる素管を準備する(ステップS1)。対象となる素管は限定されないが、本実施形態の製造方法は、炭素含有量が0.50〜0.60質量%である高炭素系材量の鋼管の製造に好適であり、特に高炭素系材量の油井管の製造に好適である。本実施形態の製造方法は、より具体的には、炭素含有量が0.50〜0.60質量%である低合金鋼及び高合金鋼の油井管の製造に特に好適である。
素管の管端の少なくとも一方に管端蓋1を取付ける(ステップS2)。管端蓋1は、素管の管端の両方に取付けることが好ましいが、冷媒を吹き付ける角度等によっては、前方及び後方の一方のみに取付けることでも、冷媒の浸入を抑制することができる。
管端蓋1が取付けられた素管を焼入れする(ステップS3)。具体的には、管端蓋1が取付けられた素管をAc点以上の温度まで加熱してオーステナイト変態させた後、マルテンサイト変態終了温度以下まで冷却してマルテンサイト変態させる。このとき、冷却速度が小さすぎると中間温度で等温変態が起こりマルテンサイト率の高い組織が得られなくなる。一方、冷却速度が大きすぎると曲がりや焼割れが生じる。そのため、冷却速度を適切に制御する必要がある。好ましくは、マルテンサイト変態開始温度まではできるたけ冷却速度を大きくし、マルテンサイト変態開始温度から冷却終了温度(マルテンサイト変態終了温度又は室温)まではできるだけ冷却速度を小さくする。
図4は、熱処理ラインの一例である熱処理ライン100の機能的構成を示すブロック図である。熱処理ライン100は、焼入れ装置20及び焼戻し装置30を備えている。焼入れ装置20は、加熱装置21、冷却装置22、及び浸漬槽23を備えている。各装置の間には、搬送ローラ40(搬送装置)が配置されている。
搬送ローラ40は、加熱装置21から冷却装置22へ、冷却装置22から浸漬槽23へ、浸漬槽23から焼戻し装置30へ、素管を順次搬送する。素管は、加熱装置21で加熱され、冷却装置22及び/又は浸漬槽23によって冷却される。素管はその後、焼戻し装置30によって再び加熱される。
熱処理ライン100の構成によれば、加熱装置21によって素管をAc点以上に加熱した後、冷却装置22及び/又は浸漬槽23によって素管を冷却することによって、素管を焼入れすることができる。さらに、焼戻し装置30によって素管を所定の温度に加熱することによって、素管を焼戻しすることができる。焼戻しされた素管は例えば、図示しない冷却装置によって冷却された後、探傷装置などに搬送される。
熱処理ライン100の構成によれば、素管に焼入れ焼戻しの熱処理を連続して実施することができる。ただし、焼入れ焼戻しは連続して実施されなくてもよい。この場合、熱処理ライン100は、焼戻し装置30を含んでいなくてもよい。
冷却装置22は、詳しい構成は図示しないが、複数の冷却リングを備えている。複数の冷却リングの各々は複数のノズルを備えており、複数のノズルの各々から、冷却リングの内側を通過する素管の外面に冷媒を吹き付けることができるように構成されている。冷媒の量は冷却リング毎に制御できるように構成されおり、冷却リング毎の冷媒量と素管の搬送速度とを調整することによって、素管を最適な速度で冷却することができる。
浸漬槽23には、冷媒が充填されており、素管を浸漬させることで内外面から急冷することができる。熱処理対象の素管が焼割れ感受性の低い低中炭素鋼(C含有量0.30%未満)の場合、冷却装置22を使用せず、浸漬槽23だけを使用して素管を冷却することもできる。この場合、処理速度を大きくすることができる。一方、熱処理対象の素管が焼割れ感受性の高い素管の場合でも、冷却装置22によって鋼管を十分に冷却しておけば、浸漬槽23に浸漬しても曲がりや焼割れが発生することはない。
すなわち、焼入れ装置20の構成によれば、対象となる素管の性質に応じて、冷却装置22による冷却と浸漬槽23による冷却とを選択的に実施することができる。一方、焼割れ感受性の高い素管だけを対象とする場合、熱処理ライン100は浸漬槽23を含んでいなくてもよい。
[管端蓋1の効果]
以下、管端蓋1の効果を説明する。図5は、相変態を生じる一般的な鉄鋼材料の温度−伸び線図である。この鋼は、図5に示すように、室温からAc点までは温度の上昇に伴い熱膨張するが、Ac点を超えるとオーステナイト変態によって収縮する(オーステナイト変態収縮)。その後、オーステナイトの線膨張係数で再び膨張して最高温度(Tmax)に到達する。冷却過程ではマルテンサイト変態が開始するまでオーステナイトの状態で過冷されるため、オーステナイトの線膨張係数で収縮し、マルテンサイト変態開始温度Ms(当該材量では300℃前後)に到達すると膨張を開始する(α変態膨張)。
鋼管の熱処理においても、加熱・冷却によって図5に示す膨張や収縮が発現する。そのため、単純な機械的手段では、熱処理の前後にわたって蓋を鋼管に固定しておくことは困難である。例えば、ねじの反力を利用して鋼管の内面に密着させる固定手段(突張り棒)によって蓋を固定した場合、室温では強固に固定できても、加熱・冷却によって緩みが生じる。特に、冷却過程のα変態膨張に突張り棒が追従できず、緩みが生じる。
本実施形態の管端蓋1(図2)は、鋼管Pの内側に配置される内蓋11と、鋼管Pの内側であって内蓋11よりも鋼管Pの管端に近い位置に配置される断熱材12とを備えている。この構成によれば、冷却過程において、断熱材12によって内蓋11の温度低下が鋼管Pの温度低下よりも遅くなる。そのため、内蓋11の収縮が鋼管Pの収縮よりも遅くなり、内蓋11が鋼管Pによって締め付けられる、いわゆる「焼きばめ」に類似した効果が得られる。鋼管Pがマルテンサイト変態開始温度に到達するとα変態膨張によって膨張するが、焼きばめられた状態の内蓋11は、その反力を弱めながらも鋼管Pの膨張に追従する。そのため、冷却終了温度(マルテンサイト変態終了温度又は室温)まで脱落することなく、冷媒の浸入を抑制することができる。
内蓋11の外径が鋼管Pの内径に対して小さすぎると、上記の効果が十分に得られない。内蓋11の外径の下限は、好ましくは鋼管Pの内径の99%であり、さらに好ましくは鋼管Pの内径の99.5%である。内蓋11の外径の上限は、好ましくは鋼管Pの内径の99.7%である。
内蓋11は、鋼管Pよりも線膨張係数αの大きい材質で形成されていることが好ましい。この場合、加熱過程においても、内蓋11の熱膨張が鋼管Pの熱膨張よりも大きくなるため、内蓋11を鋼管Pの内面に密着させておくことができる。
外蓋14は、内蓋11や断熱材12に冷媒が直接接触するのを抑制する。外蓋14は、冷媒と直接接触するため、大きく熱変形する場合がある。しかし、変形によって生じた隙間から冷媒が浸入しても、より内部への浸入は内蓋11によって抑制される。また、断熱材12が多孔質体や繊維であれば、少量の冷媒は吸収することができる。なお、冷媒を吹き付ける角度等によっては、管端蓋1は外蓋14を備えていなくてもよい。
本実施形態による鋼管の製造方法は、鋼管が角型鋼管の場合にも適用可能である。この場合、内蓋11、断熱材12、外蓋14の平面形状を矩形にすればよい。
以上、本発明の一次実施形態による管端蓋1、及び管端蓋1を用いた鋼管の製造方法を説明した。本実施形態によれば、取付けが容易で、熱処理中の脱落を防ぐことができる管端蓋が得られる。また、この管端蓋を用いて鋼管を製造することで、鋼管の曲がりを抑制することができる。
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態による管端蓋2の構成を示す分解斜視図である。図7は、管端蓋2を鋼管Pに取付けた状態を示す断面図である。管端蓋2は、管端蓋1の構成に加えて、鋼管Pの内側であって内蓋11よりも鋼管Pの管端に近い位置に配置され、内蓋11に連結された中蓋17をさらに備えている。
中蓋17は、鋼管Pの内側に配置できるように、鋼管Pの内径よりも外径が少し小さい円板形状を有している。中蓋17は、鋼管Pよりも線膨張係数αが大きい材質で形成されていることが好ましい。中蓋17の材質は、例えばステンレスである。中蓋17は、主に作業性の観点から、薄い方が好ましい。中蓋17の厚さは、好ましくは20mm以下であり、さらに好ましくは10mm以下である。
中蓋17は、その中心に連結ねじ15aを通すための貫通孔17aを有している。中蓋17は、内蓋に近い側の外径が管端に近い側の外径よりテーパ状に小さくなる形状としている。貫通孔17aに連結ねじ15aを通し、ナット15cを締め付けることによって、中蓋17は、内蓋11に近づく方向に移動する。
管端蓋2ではさらに、中蓋17を内蓋11側に移動させることにより、ステー13が鋼管Pの径方向外側に広がるように構成されている。本実施形態では、具体的には、1つのステー13の第1部分13aと、これに対向するステー13の第1部分13aとの間隔よりも、中蓋17の外径の方が大きくなるように構成されている。
この構成によれば、ナット15cを締め付けることによって、中蓋17が内蓋11に近づく方向に移動するとともに、ステー13が鋼管Pの径方向外側に広がり、ステー13と鋼管Pの内面との間に接触反力が生じる。これによって、鋼管Pと管端蓋2とをより強固に固定することができる。
中蓋17はまた、鋼管Pと外蓋14との隙間から浸入した冷媒がさらに内部へ浸入するのを防ぐ役割も果たす。
中蓋17は、鋼管Pよりも線膨張係数αの大きい材質で形成されていることが好ましい。この場合、加熱過程においても、中蓋17の熱膨張が鋼管Pの熱膨張よりも大きくなるため、ステー13と鋼管Pの内面との間に接触反力を生じさせておくことができる。
本実施形態では、中蓋17は、断熱材12と外蓋14との間に配置されている。しかし、中蓋17は、内蓋11と断熱材12との間に配置されていてもよい。すなわち、管端蓋2は、中蓋17を取付けた後、断熱材12を固定する構成であってもよい。
本実施形態においても、冷媒を吹き付ける角度等によっては、管端蓋2は外蓋14を備えていなくてもよい。また、本実施形態による鋼管の製造方法も、鋼管が角型鋼管の場合にも適用可能である。
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態による管端蓋3の構成を示す分解斜視図である。図9は、管端蓋3を鋼管Pに取付けた状態を示す断面図である。管端蓋3は、管端蓋2の構成に加えて、ステー13の各々に固定され、内蓋11に近づく方向に向かって厚さが大きくなるテーパ部材18をさらに備えている。
本実施形態のテーパ部材18は、より具体的には、断面が垂直三角形の三角柱の形状を有し、テーパを設けた面と反対側の面が、ステー13に溶接されている。テーパ部材18の具体的な形状は、図8及び図9に示すものに限定されない。テーパ部材は例えば、テーパを設けた面が曲面であってもよい。
本実施形態によれば、テーパ部材18によって、ステー13と鋼管Pの内面との間に生じる接触反力をより大きくすることができる。これによって、鋼管Pと管端蓋3とをより強固に固定することができる。
本実施形態においても、冷媒を吹き付ける角度等によっては、管端蓋3は外蓋14を備えていなくてもよい。また、本実施形態による鋼管の製造方法も、鋼管が角型鋼管の場合にも適用可能である。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、この実施例は本発明を限定するものではない。
[内面冷却の影響調査]
鋼管の内面冷却の影響を有限要素法(FEM)による数値解析によって調査した。図10は、鋼管の内面の熱伝達率(外面の熱伝達率hに対する比)と鋼管内面の残留引張応力との関係を示すグラフである。図10に示すとおり、内面の熱伝達率が外面の熱伝達率の50%となるとき、最も高い引張応力が発生する。内面の熱伝達率を外面と同等(100%)にすると応力は圧縮になるが、これは鋼管の内面を均一に冷却するという条件での結果である。
図11に示すように、実際には鋼管Pの底部に冷媒Cが滞留し、円周方向に不均一な熱応力が生じていると考えられる。そこで、鋼管横断面をモデル化し、冷媒が滞留している部分の熱伝達率を外面と同等、それ以外の部分を空冷とした条件で残留応力を計算した。結果を図12に示す。図12に示すように、冷媒有無の境界部分で高い引張応力が発生することが分かった。
[溶接蓋の検討]
次に、管端に蓋を溶接した場合の影響を、同じく数値解析によって調査した。数値解析では、鋼管外面付近の節点と、同位置にある蓋の節点とを結合拘束することによって溶接接合を模擬した。この場合の発生応力は369MPaであった。これに対し、結合拘束条件を解除すると、応力は344MPaまで低下した。このことから、溶接による拘束が応力を高める方向に作用することが分かった。さらに、溶接金属の材料特性をパラメータとして与えた場合、応力は422MPaまで上昇した。このことから、脆弱な溶接金属が割れの基点となることが示唆された。
[断熱材の効果の検討]
第1の実施形態の管端蓋1に準じた管端蓋(外面蓋14を除く)の構成を想定して、FEMによる数値解析を行い、冷却過程で鋼管と管端蓋との間に生じる間隙の大きさ等を計算した。図13に、数値計算で使用したモデルを示す。解析は鋼管、内蓋、断熱材から構成される二次元対象モデルを適用し、初期温度900℃から所定時間内の温度及び変形を計算した。条件は下記のとおりである。比較例として、断熱材を用いない場合の計算を実施した。
・鋼管材料 :0.5%C−1.0%Cr−0.7%Mo−0.015%Ti−0.002%B鋼
・鋼管寸法 :Φ426mm×t30mm×L2000mm
・蓋寸法 :Φ366mm×t10mm(鋼管と同材質)
・断熱材 :Φ366mm×t10mm(セラミック系耐熱性断熱材)
・初期温度 :900℃(加熱炉設定温度)
・水冷時間 :鋼管外面及び断熱材外面を水冷
・冷却熱伝達率:実測値から同定
図14は、間隙量の時間変化を示すグラフである。図15は、管端及び蓋の温度の時間変化を示すグラフである。断熱材がない場合、冷却開始と同時に間隙が発生し始め、冷却開始後25秒後に1.6mm開口する。このときの様子を温度分布とともに図16に示す。これは、肉厚の薄い内蓋が短時間で温度低下し、熱収縮するためである。
一方、断熱材がある場合、冷却開始後100秒まで間隙は生じない。このときの様子を温度分布とともに図17に示す。断熱材がある場合でも、鋼管がマルテンサイト変態によって膨張するため、100秒後以降では間隙が生じる。しかし、この時刻においては、焼割れの起点となり易い管端部の温度は180℃まで低下しており、マルテンサイト変態終了温度(当該材料では約200℃)以下となっているので焼割れは生じない。
この結果より、断熱材を用いることで、内蓋の脱落を防止できるとともに、内面に冷却水が浸入するのを防いで曲がりや焼割れを抑制できることが確認された。なお、ここでの検討では内蓋及び断熱材の厚さをともに10mmとしたが、これらの厚さや鋼管の寸法が異なれば、間隙を生じるタイミングや間隙量も変化する。最適な内蓋の厚さや断熱材の厚さは、数値計算によって求めることができる。
[防水性能評価試験]
第3の実施形態の管端蓋3に準じた構成の管端蓋を作製し、ラボ試験設備を用いて防水性能評価試験を実施した。対象鋼管として、Φ356mm×t21mm×L2000mmの炭素鋼管を使用した。
試験の概要を図18に示す。鋼管Pの先端側に管端蓋3を装着し、加熱炉Qで950℃まで加熱・均熱後、水冷リングR設置位置まで速やかに搬送して定位置に留め、蓋装着部を170秒間水冷した。水冷リングRからの冷媒供給量は50m/hrとした。管端蓋3を装着した鋼管Pの先端部で冷却水の浸入があれば鋼管Pの後端部から流出する。当試験において、冷却時間内での水漏れは発生せず、管端蓋3の防水機能が満足できるものであることを確認した。
[耐衝撃試験]
鋼管は、前工程から製造ラインを搬送され、加熱炉挿入口に到達する。図19は、鋼管の搬送の状況を模式的に示す図である。搬送の過程において、鋼管PはキッカーKによって持ち上げられた後、傾斜レールL上を転動し、ストッパーSで停止する。Φ356mm×t21mm×L12000mmの鋼管の管端に、管端蓋3を装着し、鋼管搬送時の耐衝撃性能を実搬送ラインで確認した。数回の衝撃テストの結果、管端蓋3が脱落することがないことを確認した。熱処理ラインで鋼管に最も大きな衝撃が加わるのはこの段階であり、これ以降の処理過程では衝撃は加わらない。
以上、本発明の実施の形態を説明した。上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
1,2,3 管端蓋
11 内蓋
12 断熱材
13 ステー(接続部材)
14 外蓋
15a 連結ねじ
15b,15c ナット
16 ねじ
17 中蓋
18 テーパ部材

Claims (6)

  1. 鋼管を焼入れする際に、前記鋼管の管端の少なくとも一方に取付ける管端蓋であって、
    前記鋼管の内側に配置される内蓋と、
    前記鋼管の内側であって前記内蓋よりも前記鋼管の管端に近い位置に配置される断熱材と、
    前記鋼管の端面と前記内蓋とを接続して一定の距離に保持する接続部材とを備え、
    前記内蓋の材質はステンレスであり、
    前記内蓋の外径の下限は、前記鋼管の内径の99%である、管端蓋。
  2. 請求項1に記載の管端蓋であって、
    前記鋼管の内側であって前記内蓋よりも前記鋼管の管端に近い位置に配置され、前記内蓋に連結された中蓋をさらに備え、
    前記中蓋を前記内蓋に近づく方向に移動させることにより、前記接続部材が前記鋼管の径方向外側に広がるように構成されている、管端蓋。
  3. 請求項2に記載の管端蓋であって、
    前記接続部材に固定され、前記内蓋に近づく方向に向かって厚さが大きくなるテーパ部材をさらに備える、管端蓋。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の管端蓋であって、
    前記鋼管の端面に隣接するように配置される外蓋をさらに備える、管端蓋。
  5. 素管を準備する工程と、
    前記素管の管端の少なくとも一方に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の管端蓋を取付ける工程と、
    前記管端蓋が取り付けられた素管を焼入れする工程とを備える、鋼管の製造方法。
  6. 請求項5に記載の鋼管の製造方法であって、
    前記内蓋の線膨張係数が、前記鋼管の線膨張係数よりも大きい、鋼管の製造方法。
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