以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る無線中継システムを含む通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図である。本実施形態の無線中継システムは、簡易な構成で、目標位置に移動した後、複数の通信オペレータの移動通信網について固定基地局とユーザ装置との間の無線通信の中継を速やかに開始することができる臨時無線中継システムである。
図1において、本実施形態に係る無線中継システムは、第1無線中継局(以下「親機」ともいう。)10及び第2無線中継局(以下、「子機」ともいう。)20を備える。第1無線中継局(親機)10及び第2無線中継局(子機)20は、無線信号の周波数が互いに異なる複数の通信オペレータ(通信事業者)A,B,Cの移動通信網80A,80B,80Cのコアネットワークそれぞれに接続されたマクロセル基地局などの複数の固定基地局30A,30B,30Cと、複数の通信オペレータA,B,Cそれぞれに対応するセル200A,200B,200Cに在圏するユーザ装置としての複数の移動局40A,40B,40Cとの間の無線通信を同時に中継する。親機10及び子機20は、GPS衛星からの受信信号などを利用して互いに時間同期されている。
なお、本実施形態では、通信オペレータ(固定基地局)の数が3の場合について説明するが、通信オペレータ(固定基地局)の数は4以上であってもよい。また、図1では、通信オペレータA,B,Cそれぞれに対応する移動局の数が1であるが、通信オペレータA,B,Cそれぞれに対応する移動局の数は2以上であってもよい。
移動通信網80A,80B,80Cにはそれぞれ遠隔制御装置81A,81B,81C(制御元)を設けてもよい。遠隔制御装置81A,81B,81Cは、例えば親機10及び子機20の情報を保持し、親機10及び子機20の少なくとも一方に制御情報を送信することができる。また、遠隔制御装置81A,81B,81Cは、情報の送信先として機能し、親機10及び子機20の少なくとも一方から情報を受信してもよい。なお、遠隔制御装置81A,81B,81Cは、親機10や子機20と通信可能な場所であれば、移動通信網80A,80B,80C以外に設けてもよい。また、遠隔制御装置81Dは、各通信オペレータの移動通信網80A,80B,80C以外の共通の通信網80D上に設置されてもよい。遠隔制御装置81A,81B,81C,81Dは、例えば、親機10と通信可能な、又は、親機10及び子機20に通信可能な、サーバ、PC若しくはタブレット端末であってもよい。
また、共通の通信網80Dには、子機20が搭載された飛行体としてのドローン70を遠隔的に操縦する遠隔制御装置たる遠隔ドローン操縦装置82が設けられている。遠隔ドローン操縦装置82は、共通の通信網80Dを介してドローン70と通信する通信装置、ドローン操縦者が操作するためのユーザインターフェース部、ユーザインターフェース部を介したドローン操縦者の操作に基づいてドローンを操縦するためのリアルタイム飛行ルートデータ又は全飛行ルートデータを生成するデータ生成部などを備えている。遠隔ドローン操縦装置82は、親機10を介して、又は、親機10及び子機20を介して、ドローン70と通信可能な、サーバ、PC若しくはタブレット端末であってもよい。
親機10は、通信オペレータA,B,Cごとに、固定基地局30A,30B,30Cとの間の中継対象周波数の無線信号と、子機20との間の無線中継周波数の無線信号とを中継する周波数変換型の無線中継装置である。
固定基地局30A,30B,30Cとの間の中継対象周波数は、通信オペレータAのF1A(下り信号)及びF1A’(上り信号)(以下、まとめて「F1A/F1A'」と表記する。)、通信オペレータBのF1B(下り信号)及びF1B'(上り信号)(以下、まとめて「F1B/F1B'」と表記する。)、並びに、通信オペレータCの1C(下り信号)及びF1C'(上り信号)(以下、まとめて「F1C/F1C'」と表記する。)である。
子機20との間の無線中継周波数は、常時中継用の無線中継周波数F2D(下り信号)及びF2D’(上り信号)(以下、まとめて「F2D/F2D'」と表記する。)、並びに、時分割中継用の無線中継周波数F2E(下り信号)及びF2E'(上り信号)(以下、まとめて「F2E/F2E'」と表記する。)である。
親機10は、車両である自動車50に搭載されることにより地上の目標位置に移動することができる。親機10が搭載される自動車50は、電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車など、親機10に長時間にわたって電力を供給可能なバッテリーや発電機などを備えているものであってもよい。また、図1の構成例では、親機10が自動車50に組み込まれた場合の例であるが、親機10が組み込まれる移動体は、道路を走行する自動車以外の車両、線路上を走行する鉄道車両、航空機、又は、河川上若しくは海上の船舶などであってもよい。また、親機10が組み込まれる移動体は、遠隔操縦可能な小型のヘリコプター(例えばドローン)など、自律制御により又は外部からの制御により所定の空域に滞在又は移動する飛行体であってもよい。この場合、自動車50は、ドローンなどの飛行体が離発着可能な離発着部を備えてもよい。
子機20は、通信オペレータA,B,Cごとに、親機10との間の共通の無線中継周波数(以下「中間周波数」ともいう。)F2D/F2D',F2E/F2E'の無線信号と、移動局40A,40Bとの間の中継対象周波数F1A/F1A',F1B/F1B',F1C/F1C'の無線信号とを中継する周波数変換型の無線中継装置である。子機20は、自律制御により又は外部からの制御により所定の空域に滞在又は移動するドローンなどのドローン70に搭載されることにより親機10よりも高い位置に位置することができる。この場合、親機10が搭載される自動車50は、ドローン70が離発着可能な離発着部を備えてもよい。
また、図2に示すように、子機20は、係留気球などの気球60に搭載してもよい。気球60は、固定基地局30A,30B,30Cのアンテナ31A,31B,31Cとの間に無線通信の電波の見通し伝搬の障害になる山や高層ビルディングなどの障害物が存在する、不感地、山岳エリア、海上エリアなどの弱電界エリアの上空に設置してもよい。気球60は、例えば地上から数十m〜数百mの位置に配置されるように、地上のアンカーベースから上空に延びた係留索(主係留索)で係留されて支持される。アンカーベースは、係留索(主係留索)の下端を固定して気球60を係留できるものであればよく、形状や大きさなどは特定のものに限定されない。気球60は、アンカーベースとして親機10が搭載される自動車50に係留してもよい。また、気球60を海上の上空に配置する場合、アンカーベースは海上のブイや船舶などに設けてもよい。
親機10及び子機20それぞれにおいて通信オペレータA,B,Cごとに変換する中継対象周波数F1A/F1A',F1B/F1B',F1C/F1C'及び通信オペレータA,B,C間で共通の無線中継周波数(中間周波数)F2D/F2D',F2E/F2E'は、親機10で送受信される無線信号どうしの回り込み干渉及び子機20で送受信される無線信号どうしの回り込み干渉が発生しないように互いに異なる周波数である。例えば、中継対象周波数F1A/F1A',F1B/F1B',F1C/F1C'が2.1GHz帯の周波数であり、中間周波数F2D/F2D',F2E/F2E'が3.3GHz帯の周波数であってもよい。なお、中間周波数F2D/F2D',F2E/F2E'それぞれに必要な帯域幅は、中継対象の複数の通信オペレータA,B,Cそれぞれがサービスリンクに使う帯域幅の最大値である。
図3は、実施形態に係る無線中継システムの主要部構成の一例を示すブロック図である。図3において、本実施形態に係る無線中継システムは、既存の携帯基地局(固定基地局)30A,30B,30Cと通信できる位置に設置する第1無線中継局(親機)10とドローンや係留気球に搭載する子機20で構成される。無線中継方式としては、携帯基地局30A,30B,30Cの電波を受信して、それを周波数変換して中継する「非再生・周波数変型リピート方式」を用いている。
親機10は、各通信オペレータA,B,Cの固定基地局向けの第1アンテナ(対基地局向けアンテナ)101A,101B,101Cと、通信オペレータAに対応する第1親機機能部11Aと、通信オペレータBに対応する第2親機機能部11Bと、通信オペレータCに対応する第3親機機能部11Cと、中継対象切替手段としての第1切替スイッチ12及び第2切替スイッチ13と、無線中継局向けの第2アンテナ(対子機向けアンテナ)102とを備えている。第1親機機能部11A、第2親機機能部11B及び第3親機機能部11Cはそれぞれ、周波数数変換器、増幅器(AMP)等で構成される。
子機20は、無線中継局向けの第1アンテナ(対親機向けアンテナ)201と、通信オペレータAに対応する第1子機機能部21Aと、通信オペレータBに対応する第2子機機能部21Bと、通信オペレータCに対応する第3子機機能部21Cと、中継対象切替手段としての第1切替スイッチ22及び第2切替スイッチ23と、移動局向けの第2アンテナ202とを備えている。第1子機機能部21A、第2子機機能部21B及び第3子機機能部21Cはそれぞれ、周波数変換器、増幅器(AMP)等で構成される。
親機10は、例えばダウンリンクにおいて、複数の通信オペレータA,B,Cの固定基地局向けの第1アンテナ101A,101B,101Cで受信した中継対象周波数F1A,F1B,F1Cの無線信号を、周波数変換器でF1A,F1B,F1Cとは異なる常時中継用の中間周波数(F2D)の信号又は時分割中継用の中間周波数(F2E)の信号に変換し、第2アンテナ102から子機20に向けて送信する。
子機20は、親機10から中間周波数(F2D,F2E)で送信された電波を第1アンテナ201で受信し、周波数変換器でサービスリンクの周波数(F1A,F1B,F1C)に周波数変換し、移動局40A,40B,40Cに向けて第2アンテナ202から出力する。通信オペレータAの移動局40AはF1A、通信オペレータBの移動局40BはF1B、通信オペレータCの移動局40CはF1Cの周波数で受信する。
親機10及び子機20それぞれにおいて周波数変換することより、親機10の第1アンテナ101A,101B,101Cと第2アンテナ102との間、子機20のアンテナ201,202間の同一周波数の回り込み干渉がなくなることから、親機10、子機20の送信電力を最大送信電力で送信できるため、無線中継距離、無線中継エリアを大きくできる。
また、本実施形態の無線中継システムは、各通信オペレータA,B,Cの移動通信網(固定ネットワーク)80A,80B,80C上に、各自の親機10及び子機20の無線中継のON/OFFを制御する無線中継ON/OFF制御データを親機10及び子機20に送信し、親機10及び子機20それぞれの無線中継を遠隔でON/OFF制御する遠隔制御装置81A,81B,81Cを備えている。
また、捜索機関は、飛行ルートを作成し、それを各通信オペレータ及びドローン運航業者に転送する通信装置を備えている。また、ドローン運航業者等は通信網80Dなどの固定ネットワーク上に、ドローンの飛行を遠隔で操縦制御する遠隔ドローン操縦装置82を備えている。
また、本実施形態の無線中継システムでは、親機10と子機20にそれぞれ無線中継制御装置としての親機制御装置14及び子機制御装置24と、各通信オペレータA,B,Cの制御用通信装置15,25(携帯通信モジュール15A,15B,15C,25A,25B,25C)を備えている。各通信オペレータA,B,Cは、移動通信網(固定ネットワーク)80A,80B,80C上にある遠隔制御装置81A,81B,81Cから親機10及び子機20にある制御用通信装置15,25(携帯通信モジュール15A,15B,15C,25A,25B,25C)及び親機制御装置14及び子機制御装置24を介して、各自の親機10又は子機20の無線通信をON/FF制御する。
また、ドローン運航業者は、遠隔ドローン操縦装置82から子機20にある常時中継対象の通信オペレータAの無線通信装置(携帯通信モジュール25A)とドローン内の通信装置71を介してドローン(飛行体)70の飛行制御装置(例えば、フライトコントローラ)72を制御して、飛行を実施する。
親機10の第1切替スイッチ12及び子機20の第1切替スイッチ22は、複数の通信オペレータA,B,Cのうちの少なくとも一つの特定の通信オペレータに対して、親機−子機間の常時中継用の中間周波数F2D/F2D'を常時割り当てるように信号経路を切り替えるスイッチである。この常時中継用の中間周波数F2D/F2D'の割り当てにより、上記特定の通信オペレータに対して親機−子機間の無線中継を連続的に行うことができる。なお、図3は、上記常時中継対象の特定の通信オペレータが通信オペレータAである例を示している。
また、親機10の第2切替スイッチ13及び子機20の第2切替スイッチ23は、複数の通信オペレータA,B,Cのうちの上記特定の通信オペレータ以外の残りの複数の通信オペレータに対して、親機−子機間の時分割中継用の中間周波数F2E/F2E'を時間軸上で複数の時間区分に分け、その複数の時間区分を上記残りの複数の通信オペレータの無線中継の通信に順次割り当てるように信号経路を切り替えるスイッチである。この時分割中継用の中間周波数F2E/F2E'の時分割的な割り当てにより、上記残りの複数の通信オペレータに対して親機−子機間の無線中継を時分割的に行うことができる。なお、図3は、上記時分割中継対象の複数の通信オペレータが通信オペレータB,Cである例を示している。
親機10の第1親機機能部11A、第2親機機能部11B及び第3親機機能部11Cはそれぞれ、第1切替スイッチ12に対する常時中継用の周波数変換器と、第2切替スイッチ13に対する時分割中継用の周波数変換器とを有する(後述の図4及び図5参照)。また、子機20の第1子機機能部21A、第2子機機能部21B及び第3子機機能部21Cはそれぞれ、第1切替スイッチ22に対する常時中継用の周波数変換器と、第2切替スイッチ23に対する時分割中継用の周波数変換器とを有する(後述の図6及び図7参照)。
親機10は、子機向けの第2アンテナ102を介して子機20との間で、常時中継用の中間周波数F2D/F2D'及び時分割中継用の中間周波数F2E/F2E'の無線信号を送受信する。子機20は、親機向けの第1アンテナ201を介して親機10との間で、常時中継用の中間周波数F2D/F2D'及び時分割中継用の中間周波数F2E/F2E'の無線信号を送受信する。
親機10及び子機20で中継される無線信号は、例えば、LTE又はLTE−Advancedの標準規格に準拠したOFMDA通信方式を用いて送受信してもよい。この場合は、無線信号の遅延が異なるマルチパスが発生しても良好な通信品質を維持できる。また、固定基地局から届く無線信号と子機20から届く無線信号とが、互いに遅延が異なるマルチパスと等価となり、複数のパスの無線信号を受信することで良好な通信品質を維持できる。
親機10の第1アンテナ101A,101B,101Cは、無指向性アンテナでもよいし、複数の通信オペレータA,B,Cの固定基地局30A,30B,30Cそれぞれの方向に指向性の向きを調整可能な複数の指向性アンテナであってもよい。また、親機10の第1アンテナ101は、通信オペレータA,B,Cの固定基地局30A,30B,30Cそれぞれを追尾するように向きを制御可能な指向性アンテナであってもよいし、固定基地局30A,30B,30Cそれぞれを追尾するようにビームを形成可能な複数素子からなるアダプティブアンテナ(例えば、アダプティブアレイアンテナ)であってもよい。
親機10の第2アンテナ102は、無指向性アンテナ、又は、子機20を追尾するように向きを制御可能な指向性アンテナであってもよいし、子機20を追尾するようにビームを形成可能な複数素子からなるアダプティブアンテナ(例えば、アダプティブアレイアンテナ)であってもよい。
子機20の第1アンテナ201は、無指向性アンテナ、又は、親機10を追尾するように向きを制御可能な指向性アンテナであってもよいし、親機10を追尾するようにビームを形成可能な複数素子からなるアダプティブアンテナ(例えば、アダプティブアレイアンテナ)であってもよい。
親機制御装置14は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより各部を制御することができる。親機制御装置14には、遠隔制御装置81A,81B,81C,81Dからの制御情報を受信したり遠隔制御装置81A,81B,81C,81Dに情報を送信したりするための制御用通信装置15が接続されている。制御用通信装置15は、通信オペレータAに対応する携帯通信モジュール15Aと、通信オペレータBに対応する携帯通信モジュール15Bと、通信オペレータCに対応する携帯通信モジュール15Cを備えている。
親機制御装置14は、制御用通信装置15が受信した遠隔制御装置81A,81B,81C,81Dから固定基地局30A,30B,30Cを介して送信されてきた制御情報に基づいて、各部を制御する。遠隔制御装置81A,81B,81C,81Dから送信される制御情報には、例えば、常時無線中継を行なう特定の通信オペレータの指定情報が含まれる。親機制御装置14は、この特定の通信オペレータの指定情報に基づいて、第2切替スイッチ13や各親機機能部11A,11B,11Cの常時中継用の周波数変換器を制御する。
また、上記制御情報には、常時中継対象及び時分割中継対象の通信オペレータの指定情報、中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報などを含んでもよい。親機制御装置14は、通信オペレータの指定情報や中継切替スケジュール情報などに基づいて、第1切替スイッチ12及び第2切替スイッチ13の切り替えタイミングや切り替え先などを制御したり、各親機機能部11A,11B,11Cの周波数変換器を制御したりする。
また、親機制御装置14は、親機10において手操作などでリアルタイムに入力設定された指示情報に基づいて、常時中継対象の特定の通信オペレータと時分割中継対象の複数の通信オペレータの設定を行なってもよい。親機10において手操作などで常時中継対象の特定の通信オペレータを設定できることで、親機10の設置場所の通信状態に応じて、最も通信状態のよい通信オペレータを、常時中継対象の特定の通信オペレータに設定することができる。また、親機10において手操作などでリアルタイムに入力設定された中継切替スケジュール情報に基づいて、時分割中継対象の複数の通信オペレータの時分割中継制御を行ってもよい。
また、親機制御装置14は、制御情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cの無線中継機能をON/OFFするように制御してもよい。また、親機制御装置14は、不要な電力を使用しないように、複数の通信オペレータA,B,Cのうち無線中継をしない通信オペレータの親機10及び子機20の無線通信に関わる回路の電源を全て切る制御を行ってもよい。ここで、遠隔制御装置と制御用通信装置15との間の通信は、例えば遠隔制御装置及び制御用通信装置15それぞれに割り当てられたIPアドレス(又は、電話番号若しくはMACアドレス)を用いて行ってよい。
また、親機制御装置14は、制御用通信装置15を介して、無線中継周波数(中間周波数)F1A/F1A',F1B/F1B',F1C/F1C'からなる固定基地局30A,30B,30Cとの間の無線信号の送信及び受信の少なくとも一方の状況及び無線中継局の位置情報を示す情報や、無線中継周波数F2D/F2D'及びF2E/F2E'からなる子機20との間の無線信号の送信及び受信の少なくとも一方の状況及び無線中継局の位置情報を示す無線中継情報を、移動体通信の通信オペレータA,B,Cの遠隔制御装置81A,81B,81C又は他の共通の遠隔制御装置81Dに送信するように制御してもよい。移動体通信のオペレータ側は、例えば、受信した無線中継情報に基づいて、親機10の無線中継機能をON/OFFすることにより、子機20への信号をON/OFFすることが可能であり、他の固定基地局のサービスエリアに干渉を及ぼすことが予測される場合はOFFとすることで干渉を及ぼさないように、又は、子機20への信号をOFFにすることでノイズが増加しないように、制御することができる。また、例えば、ドローンが中継場所に到着するまでの間、電波を送信する必要がない時などOFFにして、電波を送信しないように制御することが可能である。また、例えば、受信した無線中継情報に基づいて、最も通信状態のよい通信オペレータの無線中継を常時中継対象の特定の通信オペレータに設定することが可能である。
子機制御装置24は、予め組み込まれたプログラムを実行することにより各部を制御することができる。子機制御装置24には、無線中継により遠隔制御装置81A,81B,81C,81Dからの制御情報を受信したり遠隔制御装置81A,81B,81C,81Dに情報を無線中継により送信したりするための制御用通信装置25が接続されている。制御用通信装置25は、通信オペレータAに対応する携帯通信モジュール25Aと、通信オペレータBに対応する携帯通信モジュール25Bと、通信オペレータCに対応する携帯通信モジュール25Cを備えている。
また、制御用通信装置25は、無線中継により遠隔制御装置としての遠隔ドローン操縦装置82からのドローン制御情報を受信したり、遠隔制御対象であるドローン70から情報を受信したり、遠隔ドローン操縦装置82にドローン70の情報を無線中継により送信したり、ドローン70から受信したドローン制御情報を送信したりする。また、ドローン70にカメラが搭載されている場合は、そのカメラで撮像した撮像データを、制御用通信装置25を介した無線中継対象の移動通信により遠隔ドローン操縦装置82へ送信することができる。
ドローン制御情報には、飛行ルートデータや操縦者の操作情報などが含まれており、ドローン70は、ドローン内の通信装置71が制御用通信装置25から送信されたドローン制御情報を受信し、ドローン内の飛行制御装置(例えば、フライトコントローラ)72は、受信したドローン制御情報に基づいてドローンの飛行を制御する。
また、ドローン70からの情報には、ドローン70の位置情報や、姿勢情報などが含まれ、無線中継を介してそのドローン70からの情報を遠隔ドローン操縦装置82が受信し、遠隔ドローン操縦装置82は、そのドローン70からの情報に基づいて、飛行ルートデータや操作情報を含むドローン制御情報を生成し、制御用通信装置25を介した無線中継対象の移動通信によりドローン70へ送信することができる。
子機制御装置24は、制御用通信装置25が受信した遠隔制御装置81A,81B,81C,81Dから無線中継により送信されてきた制御情報に基づいて、各部を制御する。遠隔制御装置81A,81B,81C,81Dから送信される制御情報には、例えば、常時中継対象の特定の通信オペレータの指定情報が含まれる。子機制御装置24は、この特定の通信オペレータの指定情報に基づいて、各子機機能部21A,21B,21Cの第1切替スイッチ22や時分割中継用の周波数変換器を制御する。
また、上記制御情報には、常時中継対象及び時分割中継対象の通信オペレータの指定情報、中継切替指示情報及び中継切替スケジュール情報などを含んでもよい。子機制御装置24は、通信オペレータの指定情報、中継切替指示情報及び中継切替スケジュール情報に基づいて、第1切替スイッチ22及び第2切替スイッチ23の切り替えタイミングや切り替え先などを制御したり、各子機機能部21A,21B,21Cの周波数変換器を制御したりする。
また、子機制御装置24は、制御情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cの無線中継機能をON/OFFするように制御してもよい。また、子機制御装置24は、不要な電力を使用しないように、複数の通信オペレータA,B,Cのうち無線中継をしない通信オペレータの親機10及び子機20の無線通信に関わる回路の電源を全て切る制御を行ってもよい。ここで、遠隔制御装置と制御用通信装置15との間の通信は、例えば遠隔制御装置及び制御用通信装置15それぞれに割り当てられたIPアドレス(又は、電話番号若しくはMACアドレス)を用いて行ってよい。
また、子機制御装置24は、親機10において設定された制御情報を、無線中継システムを介して制御用通信装置25で受信し、その制御情報に基づいて、親機10との間の無線通信を制御してもよい。この場合、親機制御装置14が主制御装置(マスター)であり、子機制御装置24が副制御装置(スレーブ)であり、親機制御装置14が子機制御装置24を制御する。親機制御装置14からの制御情報(常時中継対象の通信オペレータの指定情報、時分割中継対象の複数の通信オペレータの指定情報、中継切替指示情報及び中継切替スケジュール情報など)により、親機10及び子機20の通信オペレータの切替を同時に行うことができる。
また、子機制御装置24は、制御用通信装置25を介して、無線中継周波数(中間周波数)F2D/F2D', F2E/F2E'からなる親機10との間の無線信号の送信及び受信の少なくとも一方の状況及び無線中継局の位置情報を示す無線中継情報や、中継対象周波数F1A/F1A',F1B/F1B', F1C/F1C'からなる移動局40A,40B,40Cとの間の無線信号の送信及び受信の少なくとも一方の状況及び無線中継局の位置情報を示す無線中継情報を、移動体通信の通信オペレータの遠隔制御装置81A,81B,81C又は他の共通の遠隔制御装置81Dに送信するように制御してもよい。
図4(a)及び図4(b)はそれぞれ、第1無線中継局(親機)10におけるダウンリンク及びアップリンクの常時中継用の周波数変換器の構成例を示すブロック図である。各親機機能部11A,11B,11Cは、下り信号の中継対象周波数F1A,F1B,F1Cを常時中継用の中間周波数F2Dへ変換するダウンリンク常時中継用の周波数変換器111(図4(a)参照)と、常時中継用の中間周波数F2D’を上り信号の中継対象周波数F1A’,F1B’,F1C’へ変換するアップリンク常時中継用の周波数変換器112(図4(b)参照)とを備えている。
図4(a)において、ダウンリンク常時中継用の周波数変換器111は、局部発振器1111と周波数混合器1112と出力フィルタ1113とを有する。出力フィルタ1113の通過帯域は、常時中継用の中間周波数F2Dが通過するように設定されている。局部発振器1111では、親機制御装置14からの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cのうちの常時中継対象の特定の通信オペレータに対応する局部発振周波数(F2D−F1A,F2D−F1B,又は,F2D−F1C)に切り替えられる。例えば、上記常時中継対象が通信オペレータAの場合、局部発振器1111の局部発振周波数がF2D−F1Aに切り替えられる。このように設定が切り替えられた局部発振周波数(F2D−F1A,F2D−F1B,又は,F2D−F1C)の信号とダウンリンクの中継対象周波数(F1A,F1B,F1C)の信号が周波数混合器1112で混合される。出力フィルタ1113から出力される信号の周波数は、常時中継用の中間周波数(F2D)になる。
また、図4(b)において、アップリンク常時中継用の周波数変換器112は、局部発振器1121と周波数混合器1122と出力フィルタ1123とを有する。出力フィルタ1123の通過帯域は、各通信オペレータA,B,Cのアップリンク信号の中継対象周波数F1A’,F1B’, F1C’が通過するように設定されている。局部発振器1121では、親機制御装置14からの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cのうちの常時中継対象の特定の通信オペレータに対応する局部発振周波数(F1A’−F2D’,F1B’−F2D’,又は,F1C’−F2D’)に切り替えられる。例えば、上記常時中継対象が通信オペレータAの場合、局部発振器1121の局部発振周波数がF1A’−F2D’に切り替えられる。このように設定が切り替えられた局部発振周波数(F1A’−F2D’,F1B’−F2D’,又は,F1C’−F2D’)の信号と中間周波数(F2D’)のアップリンク信号とが周波数混合器1122で混合される。出力フィルタ1123から出力される信号の周波数は、常時中継対象の通信オペレータの中継対象周波数(F1A’,F1B’,又は,F1C’)になる。
図5(a)及び図5(b)はそれぞれ、第1無線中継局(親機)10におけるダウンリンク及びアップリンクの時分割中継用の周波数変換器の構成例を示すブロック図である。各親機機能部11A,11B,11Cは、下り信号の中継対象周波数F1A,F1B,F1Cを下り信号の時分割中継用の中間周波数F2Eへ変換するダウンリンク時分割中継用の周波数変換器113(図5(a)参照)と、上り信号の時分割中継用の中間周波数F2E’を上り信号の中継対象周波数F1A’,F1B’,F1C’へ変換するアップリンク時分割中継用の周波数変換器114(図5(b)参照)とを備えている。
図5(a)において、ダウンリンク時分割中継用の周波数変換器113は、局部発振器1131と周波数混合器1132と出力フィルタ1133とを有する。出力フィルタ1133の通過帯域は、時分割中継用の中間周波数F2Eが通過するように設定されている。局部発振器1131では、親機制御装置14からの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cのうちの時分割中継対象の複数の通信オペレータそれぞれの中継時間に合わせて局部発振周波数(F2E−F1A,F2E−F1B,又は,F2E−F1C)が時分割的に切り替えられる。例えば、上記時分割中継対象の複数の通信オペレータが通信オペレータB,Cの場合は、通信オペレータBの無線通信を中継するときには局部発振周波数がF2E−F1Bに設定され、通信オペレータCの無線通信を中継するときには局部発振周波数がF2E−F1Cに設定されるように、局部発振周波数が時分割的に切替制御される。このように設定が時分割的に切り替えられた局部発振周波数(F2E−F1A,F2E−F1B,又は,F2E−F1C)の信号とダウンリンクの中継対象周波数(F1A,F1B,F1C)の信号とが周波数混合器1132で混合される。出力フィルタ1133から時分割的に出力される信号の周波数は、時分割中継用の中間周波数(F2E)になる。
また、図5(b)において、アップリンク時分割中継用の周波数変換器114は、局部発振器1141と周波数混合器1142と出力フィルタ1143とを備えている。出力フィルタ1143の通過帯域は、各通信オペレータA,B,Cのアップリンク信号の中継対象周波数F1A’,F1B’, F1C’が通過するように設定されている。局部発振器1141では、親機制御装置14からの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cのうちの時分割中継対象の複数の通信オペレータそれぞれの中継時間に合わせて局部発振周波数(F1A’−F2E’,F1B’−F2E’,又は,F1C’−F2E’)が時分割的に切り替えられる。例えば、上記時分割中継対象が通信オペレータB,Cの場合、通信オペレータBの無線通信を中継するときには局部発振器1141の局部発振周波数がF1B’−F2E’に切り替えられ、通信オペレータCの無線通信を中継するときには局部発振器1141の局部発振周波数がF1C’−F2E’に切り替えられる。このように設定が時分割的に切り替えられた局部発振周波数(F1A’−F2E’,F1B’−F2E’,又は,F1C’−F2E’)の信号と時分割中継対象の中間周波数(F2E’)のアップリンク中継信号とが周波数混合器1142で混合される。出力フィルタ1143から時分割的に出力される信号の周波数は、時分割中継対象の通信オペレータの中継対象周波数(F1A’,F1B’,又は,F1C’)になる。
図6(a)及び図6(b)はそれぞれ、第2無線中継局(子機)20におけるダウンリンク及びアップリンクの常時中継用の周波数変換器の構成例を示すブロック図である。各子機機能部21A,21B,21Cは、常時中継用の中間周波数F2Dを下り信号の中継対象周波数F1A,F1B,F1Cへ変換するダウンリンク常時中継用の周波数変換器211(図6(a)参照)と、上り信号の中継対象周波数F1A’,F1B’,F1C’を常時中継用の中間周波数F2D’へ変換するアップリンク常時中継用の周波数変換器212(図6(b)参照)とを備えている。
図6(a)において、ダウンリンク常時中継用の周波数変換器211は、局部発振器2111と周波数混合器2112と出力フィルタ2113とを有する。出力フィルタ2113の通過帯域は、各通信オペレータA,B,Cのダウンリンク信号の中継対象周波数F1A,F1B, F1Cが通過するように設定されている。局部発振器2111では、子機制御装置24からの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cのうちの常時中継対象の特定の通信オペレータに対応する局部発振周波数(F1A−F2D,F1B−F2D,又は,F1C−F2D)に切り替えられる。例えば、上記常時中継対象が通信オペレータAの場合、局部発振器2111の局部発振周波数がF1A−F2Dに切り替えられる。このように設定が切り替えられた局部発振周波数(F1A−F2D,F1B−F2D,又は,F1C−F2D)の信号とダウンリンクの常時中継用の中間周波数F2Dの信号が周波数混合器2112で混合される。出力フィルタ2113から出力される信号の周波数は、常時中継対象の通信オペレータの中継対象周波数(F1A,F1B,F1C)になる。
また、図6(b)において、アップリンク常時中継用の周波数変換器212は、局部発振器2121と周波数混合器2122と出力フィルタ2123とを有する。出力フィルタ2123の通過帯域は、常時中継用の中間周波数F2D’が通過するように設定されている。局部発振器2121では、子機制御装置24からの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cのうちの常時中継対象の特定の通信オペレータに対応する局部発振周波数(F2D’−F1A’,F2D’−F1B’,又は,F2D’−F1C’)に切り替えられる。例えば、上記常時中継対象が通信オペレータAの場合、局部発振器2121の局部発振周波数がF2D’−F1A’に切り替えられる。このように設定が切り替えられた局部発振周波数(F2D’−F1A’,F2D’−F1B’,又は,F2D’−F1C’)の信号とアップリンクの中継対象周波数(F1A’,F1B’,F1C’)の信号とが周波数混合器2122で混合される。出力フィルタ2123から出力される信号の周波数は、常時中継用の中間周波数F2D’になる。
図7(a)及び図7(b)はそれぞれ、第2無線中継局(子機)20におけるダウンリンク及びアップリンクの時分割中継用の周波数変換器の構成例を示すブロック図である。各子機機能部21A,21B,21Cは、下り信号の時分割中継用の中間周波数F2Eを下り信号の中継対象周波数F1A,F1B,F1Cへ変換するダウンリンク時分割中継用の周波数変換器213(図7(a)参照)と、上り信号の中継対象周波数F1A’,F1B’,F1C’を上り信号の時分割中継用の中間周波数F2E’へ変換するアップリンク時分割中継用の周波数変換器214(図7(b)参照)とを備えている。
図7(a)において、ダウンリンク時分割中継用の周波数変換器213は、局部発振器2131と周波数混合器2132と出力フィルタ2133とを有する。出力フィルタ2133の通過帯域は、各通信オペレータA,B,Cのダウンリンク信号の中継対象周波数F1A,F1B, F1Cが通過するように設定されている。局部発振器2131では、親機制御装置14からの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cのうちの時分割中継対象の複数の通信オペレータそれぞれの中継時間に合わせて局部発振周波数(F1A−F2E,F1B−F2E,又は,F1C−F2E)が時分割的に切り替えられる。例えば、上記時分割中継対象の複数の通信オペレータが通信オペレータB,Cの場合は、通信オペレータBの無線通信を中継するときには局部発振周波数がF1B−F2Eに設定され、通信オペレータCの無線通信を中継するときには局部発振周波数がF1C−F2Eに設定されるように、局部発振周波数が時分割的に切替制御される。このように設定が時分割的に切り替えられた局部発振周波数(F1A−F2E,F1B−F2E,又は,F1C−F2E)の信号と時分割中継対象の中間周波数(F2E)のダウンリンク中継信号とが周波数混合器2132で混合される。出力フィルタ2133から時分割的に出力される信号の周波数は、時分割中継対象の通信オペレータのダウンリンク中継対象周波数(F1A,F1B,又は,F1C)になる。
また、図7(b)において、アップリンク時分割中継用の周波数変換器214は、局部発振器2141と周波数混合器2142と出力フィルタ2143とを備えている。出力フィルタ2143の通過帯域は、時分割中継用の中間周波数F2E’が通過するように設定されている。局部発振器2141では、親機制御装置14からの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cのうちの時分割中継対象の複数の通信オペレータそれぞれの中継時間に合わせて局部発振周波数(F2E’−F1A’,F2E’−F1B’,又は,F2E’−F1C’)が時分割的に切り替えられる。例えば、上記時分割中継対象が通信オペレータB,Cの場合、通信オペレータBの無線通信を中継するときには局部発振器2141の局部発振周波数がF2E’−F1B’に切り替えられ、通信オペレータCの無線通信を中継するときには局部発振器2141の局部発振周波数がF2E’−F1C’に切り替えられる。このように設定が時分割的に切り替えられた局部発振周波数(F2E’−F1A’,F2E’−F1B’,又は,F2E’−F1C’)の信号とアップリンクの中継対象周波数(F1A’,F1B’,F1C’)の信号とが周波数混合器2142で混合される。出力フィルタ2143から時分割的に出力される信号の周波数は、時分割中継用の中間周波数(F2E’)になる。
図8は、本実施形態に係る無線中継システムにおける無線中継対象の通信オペレータA,B,Cの切替制御の一例を示すタイムチャートである。図8において、通信オペレータA,B,Cのうち常時中継対象の特定の通信オペレータ(図8の例では、通信オペレータA)については、親機−子機間の常時中継用の中間周波数F2D/F2D'を常時割り当てて親機−子機間の無線中継を連続的に行うように、親機制御装置14及び子機制御装置24は第1切替スイッチ12,22及び常時中継用の周波数変換器を制御する。
一方、図8において、通信オペレータA,B,Cのうち残りの複数の通信オペレータ(図8の例では、通信オペレータB,C)については、親機−子機間の時分割中継用の中間周波数F2E/F2E'を時分割的に割り当てて親機−子機間の無線中継を時分割的に行うように、親機制御装置14及び子機制御装置24は第2切替スイッチ13,23及び時分割中継用の周波数変換器を制御する。
例えば、親機制御装置14は、親機10を操作している操作者の手操作などで中継対象を、時分割中継対象の通信オペレータB、Cのうち通信オペレータBから通信オペレータCに切り替える切替1が指示されると、その切替1の中継切替指示情報を、制御用通信装置15を介して子機20に送信する。また、親機制御装置14は、切替1の中継切替指示情報に基づいて、所定のタイミングt1に、子機20との間の無線通信の中継対象オペレータを通信オペレータBから通信オペレータCに切り替えて中継するように、第2切替スイッチ13及び周波数変換器を制御する。子機制御装置24は、制御用通信装置25を介して親機10から受信した切替1の中継切替指示情報に基づいて、所定のタイミングt1に、親機10との間の無線通信の中継対象オペレータを通信オペレータBから通信オペレータCに切り替えて中継するように、第2切替スイッチ23及び周波数変換器を制御する。
同様に、切替2(通信オペレータCから通信オペレータB)及び切替3(通信オペレータBから通信オペレータCへの切替)、切替4(通信オペレータCから通信オペレータB)の指示があったときは、親機制御装置14及び子機制御装置24は、各切替2,3,4の中継切替指示情報に基づいて、所定のタイミングt2,t3,t4それぞれにおいて、通信オペレータを同時に切り替えて中継するように、第2切替スイッチ13,23及び周波数変換器を制御する。
以上のように、本例の制御例によれば、複数の通信オペレータA,B,Cのうち特定の通信オペレータAについて常時中継することにより、子機20における飛行制御などの遠隔制御対象が制御不能になる時間が生じるのを防止することができる。
更に、本例の制御例によれば、残りの複数の通信オペレータB,Cの親機10と子機20との間の無線中継を時分割無線中継とすることにより、通信オペレータB,Cの中間周波数を共通の中間周波数(F2E/F2E')にすることができ、親機10と子機20との間の無線中継の帯域幅の低減を図ることができる。特に、本例の制御例によれば、任意のタイミングで手操作などにより時分割中継対象の通信オペレータB,Cの切替指示があった場合に、その切替指示に応じて、親機10及び子機20による無線通信の時分割中継対象の通信オペレータB,Cをリアルタイムに切り替えることができる。
図9(a)、図9(b)及び図9(c)はそれぞれ、固定基地局30A,30B,30Cと第1無線中継局(親機)10との間、第1無線中継局(親機)10と第2無線中継局(子機)20との間、及び第2無線中継局(子機)20と移動局40A,40B,40Cとの間における周波数利用の様子を示す説明図である。
図9(a)及び図9(c)に示すように通信オペレータA,B,Cのダウンリンク及びアップリンクそれぞれに対して通信帯域BA,BB,BCの互いに異なる中継対象周波数F1A,F1A’,F1B,F1B’,F1C,F1C’が割り当てられ合計2×BA+2×BB+2×BCの帯域を利用している場合、図9(b)に示すように親機10と子機20との間の無線中継の中間周波数F2D,F2D’,F2E,F2E’で利用される帯域を、上記各通信オペレータへの割当周波数の帯域(2×BA+2×BB+2×BC)の2/3(=2×BA+2×BB,C)に削減することができる。
図10は比較例に係る無線中継システムの主要部構成の一例を示すブロック図である。比較例の無線中継システムは、中継対象の複数の通信オペレータA,B,Cのすべての無線中継について時分割中継方式を採用した例であり、通信オペレータA,B,Cの無線中継の切り替えは次のようにして行われる。
図10において、例えば通信オペレータAから通信オペレータBに無線中継の切り替えを行なう場合、まず、通信オペレータAの移動通信網80Aの遠隔制御装置81A又は他の共通の遠隔制御装置81Dから固定基地局30A及び無線中継システムを介して子機20の制御用通信装置25に切替制御信号を送信する。制御用通信装置25が切替制御信号を受信したら、子機制御装置24は、切替スイッチ22を制御し、通信オペレータAの子機機能部21Aから通信オペレータBの子機機能部21Bに切り替える。
次に、通信オペレータAの遠隔制御装置81A又は他の共通の遠隔制御装置81Dから固定基地局30Aを介して親機10の制御用通信装置15に切替制御信号を送信する。制御用通信装置15が切替制御信号を受信したら、親機制御装置14は、第1切替スイッチ12を制御し、通信オペレータAの親機機能部11Aから通信オペレータBの親機機能部11Bに切り替える。これにより、子機20の制御用通信装置25が、通信オペレータBの電波が受信可能となる。通信オペレータBの電波が受信可能となることで、制御用通信装置25の通信オペレータBの携帯通信モジュール25Bは、電波を受信できない所謂「圏外」から電波受信可能な所謂「圏内」に切り替わる。
制御用通信装置25の通信オペレータBの携帯通信モジュール25Bが圏外から圏内に切り替わったとき、携帯通信モジュールは、通信可能な状態にする一連の処理(例えば、周波数検出処理、周波数同期処理、位置登録処理など)を行なう必要がある。一般に上記一連の処理は、使用する携帯通信モジュールの特性にもよるが数秒から数十秒、場合によっては数分程度の時間を要する場合がある。この一連の処理が完了するまでは、携帯通信モジュール25Bは通信不能状態であり、その間、制御用通信装置25は、遠隔制御装置81B又は他の共通の遠隔制御装置81D及び遠隔ドローン操縦装置82からの制御信号を受信できず、遠隔制御対象である子機20やドローン70を遠隔制御できない。また、上記一連の処理が完了するまでドローン70にも制御信号が入力されない。その結果、制御信号を一定時間受信しない場合に初期位置に戻るようにドローン70を設定している場合、ドローンが初期位置に戻ってしまい、目標の場所までドローン70を飛行させることができない。また、ドローン70にカメラを搭載している場合は、上記一連の処理の間、カメラで撮像した映像が途絶えてしまう。
上記比較例の無線中継システムとは異なり、本実施形態の無線中継システムにおいては、図8に示したように、複数の通信オペレータのうち少なくとも一つの特定の通信オペレータ(例えば、通信オペレータA)については常時中継対象になっている。これにより、子機20において常時中継を行なう通信オペレータAに対応する制御用通信装置25の携帯通信モジュール25Aは、常に「圏内」となり、常に制御情報を受信できる通信可能な状態が維持される。よって、子機20を制御するための制御情報やドローンを制御するためのドローン制御情報は、常時中継対象の通信オペレータAの無線中継を介して制御用通信装置25に送信することで、常に子機20やドローン70などの遠隔制御対象を遠隔制御することができる。
図11(a)及び図11(b)はそれぞれ、比較例及び実施形態の無線中継システムにおける親機−子機間(アップリンク/ダウンリンク)の送信電力と総送信電力との関係を示す説明図である。本実施形態においては、特定の通信オペレータ(例えば、通信オペレータA)以外のその他の複数の通信オペレータ(例えば、通信オペレータB,C)について時分割無線中継を行なっている。中継対象の通信オペレータの数をN(N≧3)とした場合、親機−子機間(アップリンク/ダウンリンク)の総送信電力及び子機−移動局間(ダウンリンク)の総送信電力がそれぞれ一定とすると、通信オペレータごとに互いに異なる中間周波数を用いる場合に比べ、親機−子機間(アップリンク/ダウンリンク)の送信電力及び子機−移動局間(ダウンリンク)の送信電力をN/2倍に増大できる。
例えば、図11(a)の比較例のように親機−子機間(アップリンク/ダウンリンク)の無線中継において通信オペレータA,B,Cに対して互いに異なる複数の中間周波数(F2A/F2A',F2B/F2B',F2C/F2C')を用いる場合、親機−子機間(アップリンク/ダウンリンク)の総送信電力をPMとすると、通信オペレータA,B,Cそれぞれの親機−子機間(アップリンク/ダウンリンク)の送信電力PmはPM/3になる。
一方、図11(b)に示す本実施形態のように複数の通信オペレータB,Cの無線中継を時分割無線中継とすることで、通信オペレータA,B,Cそれぞれの親機−子機間(アップリンク/ダウンリンク)の送信電力Pmは上記比較例の3/2倍のPM/2になる。
図12(a)及び図12(b)はそれぞれ、比較例及び実施形態の無線中継システムにおける子機−移動局間(ダウンリンク)の送信電力と総送信電力との関係を示す説明図である。
図12(a)の比較例のように子機−移動局間(ダウンリンク)のサービスリンクで通信オペレータA,B,Cの無線通信を同時に行う場合、子機−移動局間(ダウンリンク)の総送信電力をPSとすると、通信オペレータA,B,Cそれぞれの子機−移動局間(ダウンリンク)の送信電力PsはPS/3になる。
一方、図12(b)の本実施形態のように子機−移動局間(ダウンリンク)のサービスリンクで通信オペレータB,Cの無線通信を切り替えて行う場合は、通信オペレータA,B,Cそれぞれの子機−移動局間(ダウンリンク)の送信電力Psは上記比較例の3/2倍のPS/2になる。
このように親機−子機間(アップリンク及びダウンリンク)の送信電力及び子機−移動局間(ダウンリンク)の送信電力を増大できるため、親機−子機間の中継距離及び子機−移動局間のサービスエリアを大きくすることができる。
図13は、実施形態に係る無線中継システムの主要部構成の他の例を示すブロック図である。なお、図13において、前述の図3と同様な構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
図13に示す無線中継システムは、常時無線中継を行なう特定の通信オペレータ(例えば、通信オペレータC)の親機10と子機20との間の無線通信の偏波と、時分割無線中継を行なうその他の複数の通信オペレータ(例えば、通信オペレータA,B)の親機10と子機20との間の無線通信の偏波とを互いに異ならせ、親機−子機間の常時中継と時分割中継とを同一周波数で多重送信するようにしたものである。
図13の例では、時分割中継を行なう親機10と子機20との間の無線通信の第1の偏波を垂直偏波(直線偏波)とし、常時無線中継を行なう親機10と子機20との間の無線通信の第2の偏波を水平偏波(直線偏波)とした。なお、第1の偏波および第2の偏波のいずれか一方を右旋円偏波とし、他方を左旋円偏波とすることにより、常時無線中継の偏波と時分割無線中継の偏波とを異ならせてもよい。
図13において、例えば、常時中継を行なう特定の通信オペレータ(図示の例では、通信オペレータA)の信号は、親機10のダウンリンク常時中継用の周波数変換器で共通の中間周波数F2Dに変換された後、第1切替スイッチ12を介して常時中継用アンテナ102Dから第1の偏波(垂直偏波)で送信される。そして、子機20の常時中継用アンテナ(垂直偏波アンテナ)201Dで受信された後、ダウンリンク常時中継用の周波数変換器で中継対象周波数(F1A,F1B,又は,F1C)に変換され、第2アンテナ202を介して移動局に送信される。
時分割無線中継を行なう他の通信オペレータ(図示の例では、通信オペレータB,C)の信号は、親機10のダウンリンク時分割中継用の周波数変換器で共通の中間周波数F2Eに変換された後、親機10の第2切替スイッチ13を介して時分割中継用アンテナ102Eから第2の偏波(水平偏波)で時分割的に送信される。そして、子機20の時分割中継用アンテナ(水平偏波アンテナ)201Eで受信された後、ダウンリンク時分割中継用の周波数変換器で中継対象周波数(F1A,F1B,又は,F1C)に変換され、第2アンテナ202を介して移動局に送信される。
図14(a)は、図13の第1無線中継局(親機)10の無線中継局向けの第2アンテナ(中継用アンテナ)102D,102Eについて説明する図である。図14(b)は、図13の第2無線中継局(子機)20の無線中継局向けの第1アンテナ(中継用アンテナ)201D,201Eについて説明する図である。
親機10の子機向けの第2アンテナは、第1の偏波としての垂直偏波を送受信する常時中継用の垂直偏波アンテナ102Dと、第2の偏波としての水平偏波を送受信する時分割中継用の水平偏波アンテナ102Eとを備えている。同様に、子機の親機向けの第1アンテナは、第1の偏波としての垂直偏波を送受信する常時中継用の垂直偏波アンテナ201Dと、第2の偏波としての水平偏波を送受信する時分割中継用の水平偏波アンテナ201Eとを備えている。
常時中継用の垂直偏波アンテナ102D,201Dと時分割中継用の水平偏波アンテナ102E,201Eとの交差偏波識別度は例えば20dB以上あれば、交差偏波干渉を無視できる。また、本実施形態の子機20は、ドローン70に搭載されて上空に滞在するため、親機−子機の間は見通し内となる。よって、常時中継と時分割中継とで偏波を互いに異ならせても、干渉することなく、良好に通信を行なうことができる。
図13及び図14の実施形態によれば、常時中継と時分割無線中継との間で偏波を異ならせることで互いの干渉を避けているので、常時中継用の中間周波数F2D/F2D'と時分割中継用の中間周波数F2E/F2E'とを共通の中間周波数F2/F2'とすることができる。更に、時分割中継用の第2の偏波(水平偏波)の電波を、複数の通信オペレータB,Cの無線中継に時分割的に用いている。これにより、複数の通信オペレータA,B,Cについて親機−子機間のアップリンク信号の周波数帯域及びダウンリンク信号の周波数帯域をそれぞれ一つの周波数帯域にでき、親機10と子機20との間の無線中継の帯域幅の低減をさらに図ることができる。
図15(a)及び図15(b)はそれぞれ、図13の第1無線中継局(親機)10におけるダウンリンク及びアップリンクの周波数変換器の構成例を示すブロック図である。なお、図13の無線中継システムでは、前述のように常時中継用の中間周波数F2D/F2D'と時分割中継用の中間周波数F2E/F2E'とを共通の中間周波数F2/F2'にすることができるので、第1切替スイッチ12に対する常時中継用の周波数変換器と、第2切替スイッチ13に対する時分割中継用の周波数変換器は互いに同一の構成になる。以下の説明では、常時中継用の周波数変換器についてのみ説明し、時分割中継用の周波数変換器については説明を省略する。
図15(a)において、ダウンリンク常時中継用の周波数変換器115は、局部発振器1151と周波数混合器1152と出力フィルタ1153とを有する。出力フィルタ1153の通過帯域は、共通の中間周波数F2が通過するように設定されている。局部発振器1151では、親機制御装置14からの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cのうちの常時中継対象の特定の通信オペレータに対応する局部発振周波数(F2−F1A,F2−F1B,又は,F2−F1C)に切り替えられる。例えば、上記常時中継対象が通信オペレータAの場合、局部発振器1111の局部発振周波数がF2−F1Aに切り替えられる。このように設定が切り替えられた局部発振周波数(F2−F1A,F2−F1B,又は,F2−F1C)の信号とダウンリンクの中継対象周波数(F1A,F1B,F1C)の信号が周波数混合器1152で混合される。出力フィルタ1153から出力される信号の周波数は、共通の中間周波数(F2)になる。
また、図15(b)において、アップリンク常時中継用の周波数変換器116は、局部発振器1161と周波数混合器1162と出力フィルタ1163とを有する。出力フィルタ1163の通過帯域は、各通信オペレータA,B,Cのアップリンク信号の中継対象周波数F1A’,F1B’, F1C’が通過するように設定されている。局部発振器1161では、親機制御装置14からの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cのうちの常時中継対象の特定の通信オペレータに対応する局部発振周波数(F1A’−F2’,F1B’−F2’,又は,F1C’−F2’)に切り替えられる。例えば、上記常時中継対象が通信オペレータAの場合、局部発振器1121の局部発振周波数がF1A’−F2’に切り替えられる。このように設定が切り替えられた局部発振周波数(F1A’−F2’,F1B’−F2’,又は,F1C’−F2’)の信号と中間周波数(F2’)のアップリンク信号とが周波数混合器1162で混合される。出力フィルタ1163から出力される信号の周波数は、常時中継対象の通信オペレータの中継対象周波数(F1A’,F1B’,又は,F1C’)になる。
図16(a)及び図16(b)はそれぞれ、図13の第2無線中継局(子機)20におけるダウンリンク及びアップリンクの周波数変換器の構成例を示すブロック図である。なお、図13の無線中継システムでは、前述のように常時中継用の中間周波数F2D/F2D'と時分割中継用の中間周波数F2E/F2E'とを共通の中間周波数F2/F2'にすることができるので、第1切替スイッチ22に対する常時中継用の周波数変換器と、第2切替スイッチ23に対する時分割中継用の周波数変換器は互いに同一の構成になる。以下の説明では、常時中継用の周波数変換器についてのみ説明し、時分割中継用の周波数変換器については説明を省略する。
図16(a)において、ダウンリンク常時中継用の周波数変換器215は、局部発振器2151と周波数混合器2152と出力フィルタ2153とを有する。出力フィルタ2153の通過帯域は、各通信オペレータA,B,Cのダウンリンク信号の中継対象周波数F1A,F1B, F1Cが通過するように設定されている。局部発振器2151では、子機制御装置24からの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cのうちの常時中継対象の特定の通信オペレータに対応する局部発振周波数(F1A−F2,F1B−F2,又は,F1C−F2)に切り替えられる。例えば、上記常時中継対象が通信オペレータAの場合、局部発振器2111の局部発振周波数がF1A−F2に切り替えられる。このように設定が切り替えられた局部発振周波数(F1A−F2,F1B−F2,又は,F1C−F2)の信号とダウンリンクの常時中継用の中間周波数F2の信号が周波数混合器2152で混合される。出力フィルタ2153から出力される信号の周波数は、常時中継対象の通信オペレータの中継対象周波数(F1A,F1B,F1C)になる。
また、図16(b)において、アップリンク常時中継用の周波数変換器216は、局部発振器2161と周波数混合器2162と出力フィルタ2163とを有する。出力フィルタ2163の通過帯域は、常時中継用の中間周波数F2’が通過するように設定されている。局部発振器2161では、子機制御装置24からの中継切替指示情報又は中継切替スケジュール情報に基づいて、通信オペレータA,B,Cのうちの常時中継対象の特定の通信オペレータに対応する局部発振周波数(F2’−F1A’,F2’−F1B’,又は,F2’−F1C’)に切り替えられる。例えば、上記常時中継対象が通信オペレータAの場合、局部発振器2121の局部発振周波数がF2’−F1A’に切り替えられる。このように設定が切り替えられた局部発振周波数(F2’−F1A’,F2’−F1B’,又は,F2’−F1C’)の信号とアップリンクの中継対象周波数(F1A’,F1B’,F1C’)の信号とが周波数混合器2162で混合される。出力フィルタ2163から出力される信号の周波数は、常時中継用の中間周波数F2’になる。
図17(a)、図17(b)及び図17(c)はそれぞれ、図13の固定基地局と第1無線中継局(親機)との間、第1無線中継局(親機)と第2無線中継局(子機)との間、及び第2無線中継局(子機)と移動局との間における周波数利用の様子を示す説明図である。
図13の無線中継システムでは、親機−子機間の時分割中継と常時中継との間で偏波を互いに異ならせることにより親機−子機間の時分割中継と常時中継との干渉を避けるとともに、常時中継用の中間周波数F2D/F2D'と時分割中継用の中間周波数F2E/F2E'とを共通の中間周波数F2/F2'としている。従って、図17(a)及び図17(c)に示すように通信オペレータA,B,Cのダウンリンク及びアップリンクそれぞれに対して通信帯域BA,BB,BCの互いに異なる中継対象周波数F1A,F1A’,F1B,F1B’,F1C,F1C’が割り当てられ合計2×BA+2×BB+2×Bcの帯域を利用している場合、図17(b)に示すように親機10と子機20との間の無線中継の中間周波数F2,F2’で利用される帯域を、上記各通信オペレータへの割当周波数の帯域(2×BA+2×BB+2×Bc)の1/3に削減することができる。
図18(a)及び図18(b)はそれぞれ、比較例及び図13の無線中継システムの実施形態における親機−子機間(アップリンク/ダウンリンク)の送信電力と総送信電力との関係を示す説明図である。
図13の無線中継システムの実施形態においても、複数の通信オペレータA,Bの無線中継を時分割中継とすることで、図18(b)に示すように、通信オペレータA,B,Cそれぞれの親機−子機間(アップリンク/ダウンリンク)の送信電力PmはPM/2となる。この送信電力Pmは、図18(a)に示す親機−子機間(アップリンク/ダウンリンク)の無線中継において通信オペレータA,B,Cに対して互いに異なる複数の中間周波数(F2A/F2A’,F2B/F2B’,F2C/F2C’)を用いる前述の比較例(図10参照)の送信電力Pm(=PM/3)の1.5倍(3/2倍)である。
図19(a)及び図19(b)はそれぞれ、比較例及び図13の無線中継システムにおける子機−移動局間(ダウンリンク)の送信電力と総送信電力との関係を示す説明図である。
図13の無線中継システムの実施形態においても、図19(b)に示すように、通信オペレータA,B,Cそれぞれの子機−移動局間(ダウンリンク)の送信電力Psを、総送信電力PSの(1/2)にすることができる。この送信電力Psは、図19(a)に示す子機−移動局間(ダウンリンク)のサービスリンクで通信オペレータA,B,Cの無線通信を同時に行う前述の比較例(図10参照)の送信電力Ps(=PS/3)の1.5倍(3/2倍)である。
よって、図13の無線中継システムの実施形態においても、親機−子機間(上下回線)の送信電力及び子機−移動局間(ダウンリンク)の送信電力を増大できるため、親機−子機間の中継距離及び子機−移動局間のサービスエリアを大きくすることができる。
なお、通信オペレータが2つの場合は、両方の通信オペレータの無線中継を、常時中継対象にしてもよい。この場合の親機−子機間の無線通信は、中間周波数を互いに異ならせてもよいし、偏波を互いに異ならせてもよい。
なお、本明細書で説明された処理工程並びに無線中継局、遠隔制御装置及び基地局における基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
ハードウェア実装については、実体(例えば、無線中継局、基地局装置、無線中継装置、ユーザ装置(移動局、通信端末)、遠隔制御装置、ドローン制御装置、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であれよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。