以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本実施の形態に係る物品移載装置100を概略的に示す斜視図である。物品移載装置100は、搬入部10、搬送路切替部20、整列部30、移載部40、物品挟持装置50、容器60、及び補助搬送路70を備える。図1は、搬送路切替部20によって物品Sの一部が整列部30まで届けられ、その他の物品Sが搬送路切替部20に向かって搬入部10の一部であるベルト体12上に載せられ、搬送されている状態を示す。なお、搬入部10及び整列部30は、ベルトコンベヤを備える。搬入部10及び整列部30の例えば長手方向には、ベルト体12,32上に載せられた物品Sの形状、大きさ、配置位置などを監視するカメラや撮像した画像をデジタル処理する画像処理装置、物品を所定の位置まで案内する案内部材等が取り付けられていることが少なくない。図1では従前よく知られたカメラ、画像処理装置、及び案内部材等を割愛して示している。
物品移載装置100は、搬入部10、搬送路切替部20、整列部30、物品挟持装置50、及び容器60において、挟持対象である物品Sに対し容器60に収容されるまでに所定の処理を施す。移載部40は、物品Sに直接的に接することはないが、物品Sのヘッダ部s1を挟持するための第1板部材52a,52b及び第2板部材54の挙動を制御する。物品Sの通常の流れは、搬送路切替部20から整列部30に向かっていくが、補助搬送路70を補助的に利用する流れも用意している。補助搬送路70は、物品Sに何らかの不具合が発生したとき、整列部30や物品挟持装置50等に何らかの不具合が発生したとき、または装置全体を点検(メンテナンス)するときに補助的に利用される。
補助搬送路70側に搬送されてきた物品Sの形状確認、品質確認等を行った後、その確認内容に応じて、物品Sを搬入部10側に戻すかまたは挟持対象から除外するなどの処置が施される。補助搬送路70を作動させるときは、搬送路切替部20を構成するスライダ片26を作動させ、係止部材22,24を整列部30の入り口を塞ぐように移動させることで搬送経路を容易に切り替えることができる。なお、係止部材22,24は、物品Sの動きを単に止めるだけではなく、整列部30の所定の位置と所定の関係を持った位置に停止させる機能を有する。
図1に示す物品Sは、ヘッダ部s1、底面部s2、正面部s3、背面部s4,及び側面部s5を有する収容袋を備え、底面部s2、正面部s3、背面部s4,及び側面部s5で囲まれた収容部に物品本体が収容されている。本実施の形態では、ヘッダ部s1を有する収納袋と、この収容袋に収容されている物品本体とを合わせて物品Sと称する。ヘッダ部s1は、収容部に連接し、物品本体が収容されない扁平状の薄片部である。ヘッダ部s1の形状は、図1に示すように例えば矩形である。ヘッダ部s1には物品Sの商品名、特長、キャッチフレーズ等が文字や絵柄等で表示される。なお、ヘッダ部という呼称は普遍的なものではなく、例えばヘッダ部と同義語としては「ヘッド部」、「タブ部」、「耳部」、「耳」なる語句が用いられることも少なくない。また、「カット野菜」等を収容する収容袋においては、ヘッダ部やタブ部という呼び方ではなく、「袋とじ部」、「シール部」と称することも少なくない。また、ヘッダ部は、「フック片」として物品掛けとして用いられることも少なくない。こうした「ヘッダ部」、「袋とじ部」、「フック片」の形状は矩形や半円形の扁平状ものが少なくないが、その多くは厚みが、0.3mm以下である。本明細書では、こうした扁平状の薄片部を説明の便宜上ヘッダ部s1と称して説明する。
本実施の形態では、物品Sとして、ヘッダ部s1を有する収容袋に収容されたサンドイッチを取り上げる。この場合、物品本体はサンドイッチである。サンドイッチの平面形状は例えば三角形である。サンドイッチのほかに、パン、おにぎり、カステラ等であってもよい。なお、サンドイッチ等の製造元、販売元、賞味期限、カロリー等の表示は底面部s2に貼着されるシールに表示されることが少なくないが、背面部s4に表示されていることも少なくない。
サンドイッチが店頭に置かれるときには、容器または棚に底面部s2が(シール貼着側)置かれ、ヘッダ部s1が上部を向くように陳列されている。サンドイッチのヘッダ部s1の厚みは例えば0.02mm〜0.1mmと比較的薄いので、店頭に陳列すると、ヘッダ部が折れ曲がるという、いわゆる首折れが生じることが懸念される。このためヘッダ部の厚みを例えば0.1mm以上を超える厚みに厚くするという試みも行われている。
物品Sは、例えば、ヘッダ部s1および背面部s4が搬入部10の一部であるベルト体12上に寝かされ、底面部s2を先頭、ヘッダ部s1を最後尾とし、正面部s3を上向きにして、搬入部10の上流からその下流に配置された搬送路切替部20まで搬送される。
図1に示す本実施形態の搬送形態は、店頭における物品の陳列状態とは異なる。図1に示すように物品Sを搬送するのは次の2つの知見に基づく。その第1は、ヘッダ部s1をベルト体12に寝かせた状態で搬送することで、ヘッダ部s1のいわゆる首折れの発生を排除することができるからである。ヘッダ部s1に首折れや変形が生じるとヘッダ部s1の挟持精度の低下が免れない。その第2は、物品Sを搬送路切替部20で係止させるときに搬送方向に生じる外力を5つの部位(s1〜s5)の中で最も強い底面部s2で受け止めることができるからである。物品Sの底面部s2に貼着されるシールは、物品S全体に与えられる外力、衝撃、振動を抑える緩衝材としても作用する。
搬入部10と整列部30とは、搬入部10の端部10eの近傍において例えばL字状に結合されている。端部10eは、搬入部10の最下流部にあたるが、整列部30においては最上流部となる。搬入部10及び整列部30は、それぞれ無端のベルト体12及びベルト体32が用意されている。
整列部30のベルト体32に整列された例えば4個の物品S(以下、物品S群ともいう)のうち少なくとも1個に何らかの不具合が生じた場合、物品挟持装置50による挟持動作を停止すると共に、不具合が生じた物品Sを含む物品S群を整列部30の最下流部30fまでベルト体32により搬送する。なお、整列部30に整列された物品S群の全体の姿勢や相互位置、及びヘッダ部s1の首だおれ等の有無は、物品挟持装置50側に用意するレーザセンサ66から投光されるレーザ光を光学窓64を介して物品Sに照射して検出することができる。物品Sに照射されたレーザ光の反射光はレーザセンサ66の受光部に戻る。その反射光を検出し、分析することで整列部30に整列された物品S同士の位置関係や、ヘッダ部s1の形状や向きを把握し、挟持対象とすべきか否かを判別する。挟持対象外と判定された物品Sが存在した場合には、それらはベルト体32に載せられて最下流部30fまで搬送される。最下流部30fまで搬送されてきた物品Sを再度検査し、仮に不具合が認められないと判定されたときには、物品Sを再度搬入部10に戻すなどの処理が行われる。
なお、物品Sを搬入部10及び整列部30で搬送及び整列させる方法として、物品が店頭で陳列されているようにヘッダ部s1を上側にし、底面部s2をベルト体12,32に載せて搬送し、整列させることも可能である。ヘッダ部s1を搬入部10,整列部30に寝かせるか、それとも搬入部10,整列部30の上方に向かせるかの選択は、搬入部10、搬送路切替部20,整列部30、移載部40、物品挟持装置50、及び容器60の配置関係、すなわち物品移載装置100全体の構造及び構成によって決定するとよい。
本実施の形態では、搬送路切替部20を搬入部10と整列部30との結合部、すなわち端部10eの近傍に配置し、さらに端部10eの近傍に補助搬送路70を配置している。搬送路切替部20は、搬入部10から搬送されてきた物品Sを整列部30に向かうように物品Sの進行方向を切り替える。代替的に、搬送路切替部20を採用せずに、例えば整列部30を搬入部10の延長線上に配置してもよい。
搬送路切替部20は、係止部材22,24、スライダ片26、及びスライダ軸28を備える。係止部材22,24はスライダ片26に固定されている。スライダ片26は端部10eと整列部30との間で往復運動を繰り返す。係止部材22,24は、スライダ片26の動きに応動する。係止部材22,24は、物品Sを係止させ、整列部30に向かって方向転換させるという共通の機能を有する。また、係止部材22は、物品Sを整列部30に整列させるときの物品S群と物品挟持装置50との相対的な位置関係を定める位置決め部としての機能も併せ持つ。係止部材24は、整列部30におけるヘッダ部s1の位置を定め、例えばヘッダ部s1の内側の端部が整列部30の側端部30eとほぼ同一線上に置くための位置決め部として機能も併せ持つ。物品挟持装置50にヘッダ部s1の所定の部位を挟持させるために、係止部材22,24により、物品Sの整列位置とヘッダ部s1の位置とが定められる。
係止部材22,24の位置は、言い換えると物品Sの大きさ、ヘッダ部s1の大きさ、整列部30で整列させる物品Sの数量等に基づき決定される。こうしてみると、係止部材22,24は、整列部30で物品Sを整列させるにあたり前もって所定の位置に並べるいわゆる予整列の機能を併せ持つ。
図1に示す係止部材22,24の位置は、搬送路切替部20が作動する前のいわゆる待機位置に相当する。この待機位置は端部10eの近傍に設定されている。係止部材22,24は、搬入部10から搬入されてくる物品Sを受け入れ一旦係止させる。物品Sの底面部s2が係止部材24に、物品Sの側面部s5の一方が係止部材22にそれぞれ当接したことが検知されると、スライダ片26は、スライダ軸28に沿って摺動し、係止部材22,24で係止させた物品Sを整列部30に向かって送り出す。なお、物品Sが係止部材22,24に当接したか否かは、光学センサ、接触センサ等の公知のセンサを用いて検知される。
整列部30は、前に述べたようにベルト体32が装着されたベルトコンベヤを備える。本実施の形態において、ベルト体32は、物品Sの整列精度をより高めるために設けられる。この理由は、整列部30に整列された複数の物品Sの位置(とりわけヘッダ部s1の位置)が必ずしも物品挟持装置50により挟持されるのに適切な位置に置かれるとは限らないからである。本実施の形態では、例えば4個の物品Sのヘッダ部s1を一括して挟持するので、物品挟持装置50と整列された物品S群との位置関係を検出し、その位置関係を示す位置情報に基づきベルト体32を断続的に所定の距離だけ動かし、物品挟持装置50とヘッダ部s1とが所定の位置関係となるように、ヘッダ部s1の位置が調整される。また、整列部30でベルトコンベヤを採用するのは、物品挟持装置50で挟持対象外と判定された物品S群を整列部30の最下流部30fまで送り届けるためである。
移載部40は、物品挟持装置50を駆動制御し、物品挟持装置50で挟持された物品S群を容器60に移載する。本実施の形態に係る移載部40には、物品挟持装置50の回動方向及び回動範囲の自由度を拡げるために、関節が例えば6つの軸を有する例えば天吊り型の垂直多軸ロボットが採用される。移載部40は、物品移載装置100全体が部屋に占める占有面積、物品移載装置100全体の構成、配置に鑑み、部屋の天井、或いは移載装置の天井部、床、側壁等のいずれかに取り付けるとよい。なお、移載部40は多軸ロボットである必要はなく、物品挟持装置50で挟持した物品S群を容器60に移し替えるいわゆる自動移載手段の機能を有していればよい。
物品挟持装置50は、ロボットの末端部にいわゆるエンドエフェクタとして装着される。物品挟持装置50は第1板部材52a,52bと、第1板部材52a,52bに対して対向配置される第2板部材54とを備える。第1板部材52a,52bと第2板部材54との間にてヘッダ部s1を挟持する際の挟持力は、挟持安定性と挟持される物品Sの品質とに関与する。本実施の形態において、一度に挟持する物品Sの個数は例えば4個である。一度に挟持する物品Sの個数は、1個の物品Sの重量、整列部30での整列精度、容器60の大きさ等を勘案して決定することになるが、特に、厚みが比較的薄い0.01mm〜0.3mmの扁平状のヘッダ部s1を厚み方向から挟持する第1板部材52a,52b及び第2板部材54の噛み合わせ強度と挟持安定性は、物品挟持装置50の挟持能力に大きく関わってくる。第1板部材52a,52b及び第2板部材54の構成については図7以降の説明で詳述する。
容器60は、物品挟持装置50で挟持した物品S群を収容するトレイや番重と称される収容箱である。図1には説明の便宜上及び作図の煩雑さを排除するために1個の容器60のみを示す。実際の物品移載装置100では複数の容器60が例えば整列部30の下部に用意されている。容器60に所定数の物品Sが収容されると、図示しない次の工程が行われる位置まで移動するとともに、次に収容対象となる別の容器60が整列部30の近傍まで運ばれてくる。
補助搬送路70は、前に述べたように物品Sまたは物品移載装置100の一部に不測の事態が発生することを予測して用意されている。また、補助搬送路70は、物品移載装置100のメンテナンスのときにも利用される。搬入部10から搬送されてくる物品Sの中には整列部30で処理すべきではないものが混入されていることが予測される。例えば、ヘッダ部s1が大きく変形していたり、或いは物品本体であるサンドイッチの具材がはみ出していたり、或いは本来のサンドイッチの大きさとは異なるものが混入していることなどである。また、サンドイッチそのものの形状、品質は正常ではあるが、整列部30、物品挟持装置50、移載部40の一部が本来の機能から逸脱し、何らかの対策を講じなければならない事態を想定しておく必要がある。こうした不測の事態が生じた場合には、物品Sを補助搬送路70側に搬送するようにしている。補助搬送路70側に搬送されてきた物品Sは、例えば目視確認結果に基づき、搬入部10に再度戻されるか、或いは整列部30への搬送を取りやめるなどの処理が施される。
図2は挟持対象の物品S群が整列した状態を示す斜視図である。物品移載装置100は、図1に示した状態からさらに物品Sに対する処理が進み、物品挟持装置50で一度に挟持する4個の物品Sが整列部30で整った状態を示す。図2において、図1と同じ箇所には同じ符号を付して説明する。
図2において、搬送路切替部20の係止部材22,24によって整列部30に最後の挟持対象となる4番目の物品Sが第1板部材52bの端部の近傍まで送り出されてくると、4番目の物品Sはその1つ前の3番目に到達していた物品Sを整列部30の下流側に押し出し、さらに押し出された3番目に到達していた物品Sは2番目に到達していた物品Sを整列部30の最下流部30fに向かって押し出し、さらに2番目に到達していた物品Sは最初に到達している物品Sを最下流部30fに向かって押し出す。こうして隣接する物品S同士が隣の物品Sを最下流部30fに向かって押し出す。最終である4番目の物品Sが整列部30に到達すると、物品挟持装置50の第1板部材52a,52b及び第2板部材54によって4つのヘッダ部s1を一括的に挟持する。図2は、第1板部材52a,52bと第2板部材54とが近接していなく、ヘッダ部s1が一括して挟持される直前の状態を示す。
スライダ片26に固着される係止部材22,24は、物品Sを整列部30で整列させると瞬時に端部10eすなわち待機位置まで戻り、搬入部10に置かれる物品Sを係止部材22,24で係止させる態勢に入る。
このため、整列部30で4個の物品Sの整列が進められると同時に、搬入部10において次の挟持対象となる物品Sの搬送を開始させてもよい。搬入部10により搬送される物品Sは、図1に示すように、底面部s2を先頭にし、ヘッダ部s1を最後尾にして、搬送路切替部20の待機位置(端部10e)まで搬送される。
図3は物品挟持装置50により物品S群のヘッダ部s1を一括して挟持した状態を示す斜視図である。図3において、図1及び図2と同じ箇所には同じ符号を付して説明する。
図3に示す物品移載装置100は、図2に示す状態から物品Sに対する処理がさらに進んだ状態を示している。すなわち、図3は、4個の物品Sが整列部30に整列され、さらに4片(4個)のヘッダ部s1を物品挟持装置50により一括して挟持し、整列部30の側端部30eから物品挟持装置50側に少し移動させ、さらに整列部30の上方に持ち上げようとしている状態を示している。
物品S群は、4片のヘッダ部s1が物品挟持装置50により一括して挟持された状態にて容器60に向かって移動される。このとき、ヘッダ部s1を挟持するのが第1板部材52a,52b及び第2板部材54である。
なお、第1板部材52a,52b及び第2板部材54には、ヘッダ部s1を確実に挟持するに必要な挟持力が要求される。扁平状のヘッダ部s1に直接的に当接する挟持部材が用意されている。こうした挟持部材については図7以降で詳述する。
物品S群の4片のヘッダ部s1を挟持するタイミングとほぼ同時に第2板部材54の下部に用意される受皿55が物品Sの背面部s4まで延出する。このとき、背面部s4は、受皿55に当接した状態であってもよく、受皿55から浮いた状態であってもよい。これにより、物品S群が物品挟持装置50から落下するという不慮の事態を排除することができる。
図4は移載部40により物品S群を容器60まで移載した状態を示す斜視図である。図4において、図1〜図3と同じ箇所には同じ符号を付して説明する。図4は、図3に示す状態から物品S群に対する処理がさらに進み、物品S群のヘッダ部s1を物品挟持装置50で一括して挟持し、容器60に収容する直前の状態を示している。図4は、物品S群、物品挟持装置50、及び容器60の位置関係を示すために、図1〜図3とは異なる角度から見た状態を示す。
図4に示す状態までは、物品S群、物品挟持装置50、及び移載部40の位置関係は、図3に示す状態とほぼ同じ姿勢が維持される。したがって、ヘッダ部s1は物品挟持装置50により挟持されたままである。図4に示す状態の直後に、第1板部材52a,52b及び第2板部材54による、ヘッダ部s1の挟持は解除され、さらに物品Sの背面部s4まで延出していた受皿55が元の位置まで戻される。物品Sは、そのヘッダ部s1が上向きの状態にて容器60に収容され、移載作業が終了する。なお、物品挟持装置50によって物品S群が容器60内に移載されている間は、次に挟持対象となる物品S群が搬入部10で搬送され、整列部30で整列される。
図5は物品挟持装置50の拡大斜視図である。図5は、物品挟持装置50の全体像を示すと共に、物品Sのヘッダ部s1の厚み方向を第1板部材52a,52b及び第2板部材54によって挟持し、物品S群を整列部30の側端部30eの近傍まで移動させた状態を示している。
物品挟持装置50は、第1板部材52a,52b、第2板部材54の他に、シリンダ58、光学窓64、及びレーザセンサ66を備える。
レーザセンサ66は光学窓64を介して物品S群に光を照射する。光学窓64を介して物品S群に照射された光の反射光はレーザセンサ66の受光部に到達する。レーザセンサ66は、受光部により受光した反射光を解析し、物品S群の位置状態やヘッダ部s1の挟持状態を検出する。こうした検出結果が許容されないと判定された場合、物品挟持装置50は、一度挟持状態を解除し、再度挟持する動作に入るか、または、整列部30の最下流部30f側に物品S群を搬送して挟持対象から除外するなどの処理が施される。
一対のシリンダ58,58は、第1板部材52aと第1板部材52bとを同期させて上下動させる。第1板部材52a及び第1板部材52bは、対向間隙56を隔てて並設されている。ヘッダ部s1を第1板部材52a,52b及び第2板部材54によって挟持するときには、シリンダ58はヘッダ部s1に向かって下降し、整列部30で物品Sが整列されている間は上方部で待機する。シリンダ58は、第1板部材52a,52bと第2板部材54とを係合させる駆動部としての機能を有する。第1板部材52a,52bが上下動するストローク長は例えば30mm〜40mmである。上下動するのは、第1板部材52a,52bであり、第2板部材54は上下方向には移動せずに所定の位置に固定されたままである。
フレーム枠62は、物品挟持装置50の筺体に用いる材料である。物品挟持装置50の軽量化と所定の強度を確保するために例えばアルミナを格子状にして構成している。
図6はレーザセンサ66の走査範囲を説明する説明図である。レーザセンサ66は、第1板部材52a,52bによる物品Sに対する挟持動作、物品S同士の位置関係、物品Sの脱落、収容されている物品本体の状態などを監視、検出するために用意される。レーザセンサ66は、物品S群の位置、各物品の位置関係等を検出する、いわゆる位置検出デバイス(PSD)として用意されている。
レーザセンサ66は、平面視において図6に示すような走査範囲θをカバーするようにレーザ光を照射する。すなわち、レーザセンサ66は、レーザ光の照射方向を連続的に変更することにより、走査範囲θをカバーすればよい。走査範囲θは、物品挟持装置50が挟持する物品S群の総数、各物品Sの幅等に応じて設定される。例えば、図6に示すように物品S群の総数が4個であるときは、整列順における2番目の物品S及び3番目の物品Sの側面部s5同士が当接する箇所に中心がくるように設定され、1番目の物品Sの上流側の端部、及び4番目の物品Sの下流側の端部を含むように、走査範囲θが設定される。また、例えば物品S群の総数が5個のときには、整列順における3番目の物品Sの一方の側面部s5からその他方の側面部s5までのほぼ中間の位置に中心がくるように設定され、1番目の物品Sの上流側の端部、及び5番目の物品Sの下流側の端部を含むように、走査範囲θが設定される。
図7は第1板部材52a,52b及び第2板部材54の構成を示す模式図である。図7Aは、第1板部材52a,52bの正面図と側面図とを示し、図7Bは第2板部材54の正面図と側面図とを示している。なお、第1板部材52a,52bの正面図は下側(裏側)から見た図であり、第2板部材54の正面図は上側(表側)から見た図である。第1板部材52a,52b及び第2板部材54は、それぞれ長手方向(x方向)と短手方向(y方向)とを有する略矩形状の板部材である。
第1板部材52a,52bは、例えばSUS(ステンレス鋼材)により形成される。第1板部材52a,52bは、短手方向(y方向)同士が対向するように配置される。第1板部材52a及び第1板部材52bの長手方向(x方向)を合わせた長さは例えば280mm〜360mmである。長手方向の長さは、1個の物品Sの一方の側面部s5から他方の側面部s5までの長さ(すなわち1つの物品Sの物品幅)と、一度に挟持すべき物品Sの個数とに基づき決定される。第1板部材52a及び第1板部材52bの短手方向(y方向)の長さは、例えば40mm〜80mmである。短手方向の長さは、ヘッダ部s1が矩形状であるときには、それらの横方向又は縦方向の長さ等を考慮して定められる。第1板部材52a及び第1板部材52bの短手方向が対向する距離(すなわち対向間隙56の幅)は、例えば3mm〜5mmである。
第1板部材52a及び第1板部材52bの長手方向(x方向)の寸法、及び短手方向(y方向)の寸法はそれぞれ略同一である。第1板部材52a及び第1板部材52bには、長手方向の一方の端部から他方の端部まで延びる第1挟持部520がそれぞれ装着されている。第1挟持部520は、取付部522と、取付部522に固着される凸部材524を有する。凸部材524は、凸部全体が円弧状に形成されている。本明細書ではこうした形状を「凸円弧状」と称する。凸部材524は、取付溝526に取り付けられる。取付溝526の深さを深くすればするほど、凸部材524を取付溝526に閉じ込めることができる。これによって両者間の固着強度は高められる。しかし、凸部材524と第2挟持部540(第2板部材54)との係合する表面積及び体積は減少するので両者の係合強度の信頼性に影響を与える。この点の詳細ついては、後述の図10で詳述する。
取付部522は、例えば、引っ張り強度が50MPa以上、曲げ弾性率(ヤング率)が2.4GPa以上のエンジニアリングプラスチック(エンプラ)又はスーパーエンジニアリングプラスチックにより形成される。取付部522は、結晶性エンプラと称される例えばポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET))などにより形成されてもよい。
また、取付部522は、エンプラの中でも特に成形加工がし易い非結晶性エンプラと称されるポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)等により形成されてもよい。取付部522は、エンプラではなく、機械的強度が高い例えば繊維強化プラスチックにより形成されてもよい。本実施の形態では、取付部522の材料として、エンプラの1つであるPOM(ポリアセタール)が用いられている。
凸部材524は、取付部522の材質とは異なり、ウレタン系樹脂、合成ゴム、天然ゴム等の可逆的に弾性変形可能な材料により形成される。凸部材524は、取付溝526を有する取付部522に固着される。凸部材524の断面形状は、略円環状または略円形状である。取付部522は、平面形状が略矩形状の第1板部材52a,52bの短手方向(y方向)の端部寄りの位置に設けられる。図7Aに示す凸部材524は、取付部522と同様に長手方向に延びる中空構造(チューブ構造)を採用している。
取付部522の短手方向(y方向)の幅w12は例えば12mmである。凸部材524の外径(直径)w1は4mm、内径w2は2.5mmである。したがって凸部材524の肉厚は0.75mmとなる。本実施の形態では、凸部材524の材料として、POMより変形及び伸縮し易い合成ゴムの一種であるポリウレタン(PUR)が用いられている。
なお、第1板部材52a,52bの端部であって、第1挟持部520の近傍には、ひさし部53が設けられている。ひさし部53は、挟持された物品Sのヘッダ部s1から遠ざかる方向に対して所定の傾斜を有し、物品Sの形状に沿うように形成されている。ひさし部53の機能については後述の図9において説明する。
第2板部材54の長手方向(x方向)の一方の端部から他方の端部には、凸部材524に係合する第2挟持部540が対向間隙56に位置する部位を除いて形成されている。
第2板部材54は、第1板部材52a,52bと同様に、例えばSUS(ステンレス鋼材)などにより形成される。第2挟持部540は、凸部材524に相当する部材は備えていない。第2挟持部540は、凹部材542を有し、凹部材542は矩形状の凹溝546を有する。第2挟持部540は、凸部材524より変性及び伸縮しにくい材料により形成される。凸部材524より変形及び伸縮しにくい材料は、例えば取付部522と同じエンプラや繊維強化プラスチック(FRP)などである。
凹部材542の短手方向(y方向)の幅w12aは例えば12mmであり、その凹溝546の溝幅w3aは例えば3mmである。溝幅w3aは、凸部材524の外径w1よりは1mm小さい。すなわち、w3<w1に設定している。また、溝幅w3a(3mm)は凸部材524の内径w2(2.5mm)より0.5mm大きい。このような大小関係を持たせることによる作用及び効果については後述の図8〜図10において説明する。
取付部522及び凸部材524にそれぞれ採用するPOM(ポリアセタール)及びPUR(ポリウレタン)の引張弾性率(ヤング率)は、それぞれ2700MPa〜3600MPa及び70MPa〜700MPaである。したがって、POMの引張弾性率は、PURのそれよりも1桁以上大きい。よって、PUR(ポリウレタン)は、POMよりも弾性変形し易く、復元可能な材料である。本発明の特徴の1つは、凸部材524及び凹溝546のヤング率が大きく異なることである。これによって、薄片部であるヘッダ部s1の厚み方向の一方の面と他方の面とをそれぞれ凸部材524と凹溝546で挟持するときの係合強度と係合の安定性とを高めることができる。
図8は物品挟持装置50が物品Sを挟持する前の状態を示す側面図である。すなわち、図8は物品挟持装置50が挟持動作に入る前の待機状態を示している。待機状態では、第1板部材52a,52bと第2板部材54とは最も距離が離れた状態に置かれている。第1板部材52a,52bはシリンダ58により駆動されて、接離(図8の例では上下動)するように構成されている。第2板部材54は固定されている。第1板部材52a,52bには第1挟持部520が装着され、第2板部材54には第2挟持部540が装着されている。
第1板部材52a,52bと第2板部材54との間の離隔距離の最大値は、第1挟持部520と第2挟持部540との係合精度等に基づき設定される。これらの他にヘッダ部s1の首だおれや変位量、挟持動作に許容される挟持時間なども考慮して決定される。本実施の形態で設定される離隔距離の最小値は数mm以下であり、最大値は30mm〜40mmである。第1挟持部520及び第2挟持部540を含む部位の構成については、図10の拡大図を用いて詳述する。
図8に示す物品Sのヘッダ部s1は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、塩化ビニリディン樹脂等を主成分とする材料により形成される。ヘッダ部s1の材質は、物品Sの本体を収容する収容袋の材質と同じである。例えばサンドイッチの包装袋には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)が多く使われている。本実施の形態におけるヘッダ部s1は、これらと同じ材料により形成される。
サンドイッチを収容する包装袋のヘッダ部の厚みts1は、0.02mm〜0.1mmであることが多い。しかし、サンドイッチの他にカット野菜や事務用品を収容する収容袋のヘッダ部(又は袋とじ部)は0.1mmを超えるものも少なくない。本実施の形態では、ヘッダ部が0.1mmを超えるものについては第1挟持部520及び第2挟持部540に少しの設計的変更を加えることにより、挟持精度を低下させずに物品Sを挟持できる。例えば、第1挟持部520を凸円弧状に形成し、第2挟持部540には凹溝546を形成しているが、こうした凹凸部の幅、高さ、深さ等を調整することによって、ヘッダ部の厚みが0.01mm〜0.3mmの範囲で支障なく挟持動作が行える。
図9は物品挟持装置50が物品Sを挟持した状態を示す側面図である。図9は物品挟持装置50により物品Sのヘッダ部s1を挟持したときの第1板部材52a,52b及び第2板部材54の位置関係を示している。図9は第1板部材52a,52bと第2板部材54とが最も近接した状態である。第1板部材52a,52bの上下動は、シリンダ58により駆動される。第2板部材54はシリンダ58で駆動されることはなく固定されている。図9において図8と同じ箇所には同じ符号を付す。
図9において、第1挟持部520と第2挟持部540とはヘッダ部s1を挟み込んだ状態にて係合している。第1挟持部520と第2挟持部540とが係合している部位については、図10の拡大図を用いて詳述する。
なお、図8の説明で簡単に述べたが、第1板部材52a,52bの端部であって、第1挟持部520の近傍に設けたひさし部53は、ヘッダ部s1から遠ざかる方向に物品Sの正面部s3の傾きに合わせて傾斜を持たせている。ひさし部53は、物品Sを第1挟持部520と第2挟持部540とで挟持して持ち上げるときに物品Sがひさし部53側に少し振れてしまう。ひさし部53は、この振れを受け止め、物品Sの揺れを最小限に抑える機能を有する。また、ひさし部53を設けることによって、第1板部材52a,52bの端部をヘッダ部s1から遠ざけることができる。これによって、第1板部材52a,52bの端部の厚みが極めて薄いヘッダ部s1に突き刺さったり、引っかいたり、或いはまくり上げてしまうという不具合を排除できる。
図10は物品挟持装置50の部分拡大図である。図10Aは、第1板部材52a,52bに装着される第1挟持部520を拡大した図である。第1挟持部520は、取付部522及び凸部材524を有する。取付部522は、凸部材524を第1板部材52a,52bに装着するときの中間部材となる。
第1板部材52a,52bには、前に述べたように、例えばステンレス鋼材(SUS)が用いられる。第1板部材52a,52bには、SUSではなく、繊維強化プラスチック(FRP)やエンプラが採用されてもよい。第1板部材52a,52bの厚みt1は例えば2mmである。
取付部522には、前に述べたように、例えばPOM(ポリアセタール)が採用される。POM(ポリアセタール)は機械的強度が強いエンプラの1種である。
取付部522は、第1板部材52a,52bの長手方向に幅w12の大きさが12mmに設定され形成されている。取付部522の厚みt2は第1板部材52a,52bの厚みt1と同じ2mmである。取付部522には取付溝526が形成され、取付溝526の全体に凸部材524の一部を接着剤527によって固着する。
略円環状の凸部材524の外径w1は例えば4.0mm、内径w2は例えば2.5mmである。ここで取付溝526の幅w3を例えば3mmとし、その深さt3を例えば1mmとした場合、隙間が最も小さい凸部材524の頂面部Qと取付溝526の底部Rとの間に0.5mm程度の隙間を持たせることができる。最も隙間の大きい部位は凸部材524の側部q1,q2と底部Rとの間の隙間であり、これらの大きさは略1mmとなる。すなわち、凸部材524が取付溝526と接する部位の全域に亘って隙間を形成することができる。この隙間全体に接着剤527を塗布して凸部材524を強固に取付溝526に固着することができる。
なお、固着強度及び固着安定性を高めるために、例えば幅w3を拡げてやると凸部材524と取付溝526との接触面積は増加するので固着強度は高まる。しかし、取付溝526側に取り込む凸部材524の表面積の割合を高くすればするほど、凸部材524が凹部材542に係合する表面積は減少し、挟持強度、挟持安定性に影響を及ぼす。このために本実施の形態では、凸部材524と取付溝526との固着強度、固着安定性(固着状態の経時変化)、及び挟持強度、挟持安定性(挟持状態の経時変化)に鑑み、外径w1、内径w2、幅w3、及び深さt3を上記の大きさに定めている。
取付溝526に凸円弧状の凸部材524を固着したとき、取付溝526から突出する凸部材524と取付部522とで形成される形状は、図10Aに示すように断面略逆Ω字状をなす。Ω字状の丸みの部位が占める割合が高いほど、すなわち、凸部材524の凸円弧状の部位が占める割合が高くなるにつれて、凸部材524が凹部材542と係合する割合は高まるので、挟持強度を高めることができ、挟持の信頼性を高めることができる。凸部材524には、取付部522とは異なり、弾性変形可能であり、復元可能なポリウレタン(PUR)、合成ゴム、天然ゴム等が用いられる。
ここで、凸部材524の外径w1を一定とし、内径w2を大きくしていくと、凸部材524の肉厚(外径w1−内径w2)は薄くなり、変形性及び伸縮性は増加する。その一方で、機械的強度は低下する。よって、凸部材524の肉厚が薄くなるにつれて、凸部材524によるヘッダ部s1への押圧力は減少し、挟持力が減少することが起こりうる。一方、内径w2を小さくしていくと、逆の作用、効果が起こりうる。
本願発明者らは、数度の試行を繰り返した結果、凸部材524の取付溝526から突出させる割合を取付溝526に閉じ込める割合よりも大きくした方が挟持強度を高めることができることを確認した。例えば、取付溝526から突出させる部位の割合を60%以上とし、取付溝526に閉じ込める部位の割合を40%以下とすればよい。好ましくは、取付溝526から突出させる割合は70%〜80%とし、取付溝526に閉じ込める部位の割合を30%〜20%とすればよい。本実施の形態では、こうした関係比を持たせることにより、凸部材524と取付溝526との固着強度を確保し、さらに、第1挟持部520と第2挟持部540との間の係合強度を所定以上に確保することが可能である。
なお、凸部材524の外径w1、内径w2の大きさは、物品Sの重量、ヘッダ部s1の厚みts1、挟持されるヘッダ部s1の面積、及び凸部材524の材質等によって決定するとよい。また、本実施の形態では、凸部材524を中空構造(チューブ構造)としたが、中空構造を持たないもの(すなわち断面形状が略円形状の構造)であってもよい。いずれにしても、凸部材524は、第2挟持部540に嵌め込まれ、シリンダ58によって押圧されたときにはつぶれて弾性変形し、押圧が解除されたときには元の状態に戻る、いわゆる可逆性(復元性)が要求される。また、凸部材524を中空構造としない場合には、凸部材524と取付溝526との固着強度や、凸部材524と第2挟持部540との係合強度も変わってくるので、取付溝526から突出させる割合を上記の割合より高め(例えば80%以上)に設定してもよい。
図10Bは、第1挟持部520と対向配置され、第2板部材54に装着される第2挟持部540を拡大した図である。ヘッダ部s1は挟持される前の第2挟持部540の凹溝546の開口側に載置されている。第2板部材54には、第1板部材52a,52bと同じステンレス鋼材(SUS)が用いられる。第2板部材54にはSUSではなく、繊維強化プラスチック(FRP)やエンプラが用いられてもよい。いずれにしても、第2挟持部540には、機械的強度が強く、さらに引っ張り弾性率が大きいエンプラまたは繊維強化プラスチック等を用いればよい。第2挟持部540は、第2板部材54に固着部529を介して固着されている。固着位置は、第1挟持部520の対向位置であればよい。第2挟持部540は、例えば矩形状の凹溝546を有する凹部材542により構成される。凹部材542及び凹溝546は、図7に示すように、対向間隙56を除いた第2挟持部540の長手方向とほぼ同じ長さで形成されている。凹部材542の幅w12aは、取付部522の幅w12と同じ12mmに選び、溝幅w3aは凸部材524の外径w1より小さくなるように選んでいる。
第2挟持部540を構成する凹部材542は、第1挟持部520に採用する取付部522と同様に例えばエンプラで構成される。凹部材542及び取付部522は略同一構造であり、略同じ平面形状及び断面形状を有する。よって、凹部材542を別途用意する必要はなく、取付部522の部材をそのまま転用することができる。このため、コストの廉価化を実現することができる。
第2板部材54の厚みt4は、例えば第1板部材52a,52bの厚みt1と同じ2mmである。凹部材542は固着部529を介し第2板部材54に固着されている。凹部材542の厚みt5は、例えば第2板部材54の厚みt4と同じであり、また第1板部材52a,52bに設ける取付部522の厚みt2と同じ2mmである。凹溝546の深さt6は、凹部材542の厚みt5の1/2程度であり、取付部522に設ける取付溝526の深さt3と同じ1mmである。凹溝546の溝幅w3aは、取付部の522溝幅w3と同じ3mmである。したがって、凸部材524が凹溝546に完全に嵌まり込むことはない。しかし、凸部材524は弾性変形しやすく、凹溝546はシリンダ(駆動部)58の押圧を受けても変形しないので、凸部材524は凹溝546の形状に添って変形する。こうした状態は図10C及び図10Dで説明される。
図10Cは、シリンダ58が第2挟持部540に向かって下降し、第1挟持部520が第2挟持部540に近接し、凸部材524の頂面部Pがヘッダ部s1の一方の面に当接している状態を示している。この状態は、ヘッダ部s1を第1挟持部520と第2挟持部540とによって挟持する直前状態である。図10Cは、取付部522と凹部材542との形状が同じあり、両者の各部のサイズも同じであることを示している。すなわち、厚みt2=t5、深さt3=t6、幅w3=w3aの関係に設定されている。換言すれば、取付部522及び凹部材542は同一の部材を共用することができることを示している。これによって、物品挟持装置50のコストを抑えることができる。
図10Dは、第1挟持部520と第2挟持部540とによって物品Sのヘッダ部s1が挟持されている状態を示している。すなわち、図10Dは、シリンダ58の駆動により、第1挟持部520が装着される第1板部材52a,52bと、第2板部材54とが最も近接した状態を示している。
シリンダ58の駆動により、第1板部材52a,52bが第2板部材54に向かって下降すると、変形及び伸縮し易く、かつ復元可能であり、断面形状が略円環状(中空状)をなす凸部材524は、ヤング率が比較的大きい、すなわち変形及び伸縮しにくい材料で形成される凹溝546に係合され、凹溝546の形状に沿ってつぶれて伸縮変形する。このとき凹溝546は、当初の形状を維持しており、変形及び伸縮することはない。仮に、凹溝546が凸部材524と同様に変形及び伸縮してしまうと、ヘッダ部s1を挟持することは期待できない。
凸部材524の頂面部P付近の部位(すなわち凹溝546に対向する凸部材524の部位)は、凹溝546の底部548まで入り込み、ヘッダ部s1の厚み方向の一方の面に当接する。このとき、ヘッダ部s1の厚み方向の他方の面は凹溝546の底部548に当接する。
一方、凸部材524の側面部(すなわち頂面部Pと直交する最大径を示す部位の近傍)は、凹溝546に入り込むことはなく、凹溝546の角部(側部q1,q2)及びその近傍領域を伸縮変形し押圧する状態を保持する。これによって係合強度が増長する。本実施の形態では、凸部材524の外径(直径)w1を凹溝546の溝幅w3よりも大きく設定し、さらに凸部材524は可逆的に弾性変形し易い材質を選び、凸部材524が係合する凹溝546は弾性変形しにくい材質を選ぶことによって、挟持力の向上を図ることができる。
シリンダ58の駆動により、第1板部材52a,52b(第1挟持部520)と、第2板部材54(第2挟持部540)とによるヘッダ部s1に対する挟持動作が解除されると、凸部材524は、図10Aに示す初期状態に復帰する。
図11は収容袋の他の例を示す模式図である。図11Aは、図1〜図10の説明に用いた平面形状が三角形の収容袋を示す。この収容袋は、ヘッダ部s1、底面部s2、正面部s3、背面部s4,及び側面部s5を有する。図11Bは、例えばカステラ等の直方体状の物品本体を収容する収容袋を示し、ヘッダ部s1の他に物品本体を収容する直方体状の本体収容部s20を有する。図11Cは、例えば事務用品等を収容とする収容袋であり、ヘッダ部s1、フック部s10、及び扁平状の本体収容部s20を有する。図11Dは、ヘッダ部s1、本体収容部s20を有し、底面部s2が楕円形状の収容袋を示す。この袋は例えば、カット野菜、事務用品、玩具、及び電子部品等に用いられる。図11に示す収容袋は、いずれも物品本体が収容される収容部と、この収容部に連接し、物品本体が収容されない扁平状の薄片部(ヘッダ部)とを有している。こうした収容袋と、収容袋に収容された物品本体とを含む物品が本発明に係る物品挟持方法、物品挟持装置、及び物品移載装置に供することができる。
以下、本実施の形態に対する変形例について説明する。例えば、図10に示す凸部材524の外径w1と凹溝546の溝幅w3aとの関係を変更し、両者を同じ大きさにしてもよい、このとき他の条件は変更しないこととする。この方法を採用する場合には、凸部材524の肉厚(外径w1−内径w2)を機械的強度が許せる範囲内で可能な限り薄くすることによって、図1〜図10を用いて説明した本実施の形態と近い効果が期待できる。他の変形例では、外径w1と溝幅w3aとの大小関係は本実施の形態と同じ(w1>w3a)に設定し、両者をともに同じ材質で構成してもよい。例えば、第1挟持部520と第2挟持部540とをともにウレタン系の樹脂で構成してもよい。この場合、第1挟持部520及び第2挟持部540のヤング率に差を持たせると共に、一方の部材に変形性及び伸縮性を持たせることにより、本実施の形態に近い効果を得ることができる。この関係は両者にエンプラを採用した場合も同じである。
以上説明したように、本実施の形態に係る物品挟持方法、物品挟持装置、物品移載装置は、物品本体を収容する収容袋のヘッダ部s1(薄片部)を一括して挟持するようにしたので、物品本体に変形や品質低下といった影響を及ぼさないという効果を奏する。なお、物品本体が収容されないヘッダ部s1といえども、それらを挟持したときに傷をつけることは好ましくない。前に述べたように、ヘッダ部s1には物品本体の商品名、特長、キャッチフレーズ等が文字や絵柄等で表示されるので、物品Sを構成する1つの要素でもある。本実施の形態では、物品Sに対して許容できる挟持力を確保できるとともに、ヘッダ部s1に損傷を与えるものではないことも確認することができた。
本実施の形態では、収容袋に収容されたサンドイッチを例にして説明した。しかし、サンドイッチに限らず、パン、おにぎり、カステラ、カット野菜などの食品が収容され、ヘッダ部を有する収容袋に収容された食品の挟持装置、又はこれらを他の容器に移載する移載装置に適用することができる。
また、食品に限らず、ヘッダ部またはフック片等の薄片部を有する収容袋に収容された玩具、事務用品、電気部品、電気部材、電子部品等に広く適用することができる。
本実施の形態に係る物品挟持方法、物品挟持装置、及び物品移載装置は、変形し易く傷が付きやすい物品、とりわけ食品を複数個挟持してトレイ等に収納するときに物品そのものに挟持する力を加えることがなく、かつ多くの物品を一括して挟持することができる。すなわち、物品の品質を損なわずにかつ迅速に物品を挟持することが可能である。
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。