以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図中のX軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する3軸を示している。X軸、Y軸、及びZ軸の各々に関して、矢印が指し示す方向には「+」を、その反対の方向には「−」を付して各方向を表す場合がある。たとえば、X軸の矢印が指し示す方向は「+X」、その反対の方向は「−X」と表記する場合がある。また、+Zの方向を「上」、−Zの方向を「下」と称する場合がある。以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。また、以下の各実施の形態で説明された構成を技術的に矛盾しない範囲で適宜組合わせることは出願当初から予定されている。
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る光走査装置100の概略構成を示す図である。図1を参照して、光走査装置100は、MEMSミラー1と、磁石2a,2bと、制御装置3とを備える。磁石2a,2bとしては、永久磁石を採用できる。詳細は後述するが、磁石2a,2bはMEMSミラー1を挟むように配置され、MEMSミラー1に対してY軸方向の磁界を印加するように構成される。MEMSは、「Micro Electro Mechanical Systems」の略称であり、半導体製造技術及びレーザー加工技術のような各種の微細加工技術を用いて、微小な電気要素と微小な機械要素とを1つの基板上に組み込んだシステム(又は、デバイス)を意味する。
制御装置3としては、プロセッサ、RAM(Random Access Memory)、及び記憶装置を備えるマイクロコンピュータを採用できる。プロセッサとしては、たとえばCPU(Central Processing Unit)を採用できる。制御装置3が備えるプロセッサの数は任意であり、1つでも複数でもよい。RAMは、プロセッサによって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。記憶装置は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態1では、記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することで、後述する図7及び図17に示す処理が実行される。ただし、制御装置3における各種処理は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。マイクロコンピュータに代えて、FPGA(Field−Programmable Gate Array)を採用してもよい。また、ソフトウェア及びハードウェアの機能分割によって、同様の制御機能を実現することも可能である。
図2は、MEMSミラー1の構成を示す斜視図である。図1とともに図2を参照して、MEMSミラー1は、光を走査するためのミラー部5と、ミラー部5を支えるヒンジ(たとえば、梁11,12)と、ミラー部5を回転させるミラーアクチュエータ(詳細は後述)とを備える。ミラー部5に入射した光は、ミラー部5(より特定的には、後述するミラー10)によって反射される。MEMSミラー1は、ミラー部5の回転によって光の反射角度を調整可能に構成されるとともに、所定の走査範囲において光を走査するように構成される。MEMSミラー1の動作は、制御装置3(図1)によって制御される。制御装置3は、ミラーアクチュエータによりヒンジにねじれを生じさせることによって、ミラー部5で反射される光の方向を制御するように構成される。
MEMSミラー1は、梁11,12と、支持部材4a,4bと、固定部材6a,6bと、基材7a,7bと、可動電極51,52と、固定電極61,62とを備える。基材7aは、ミラー部5を囲むように配置された矩形状の枠体である。基材7bは、ミラー部5の下方に位置する矩形状の板である。基材7aと基材7bとの間には隙間が設けられている。支持部材4a,4b及び固定部材6a,6bの各々は基材7a上に配置されている。ただし、基材7aと支持部材4a,4bとの間、基材7aと固定部材6a,6bとの間、及びミラー部5と基材7bとの間の各々には、絶縁層55が配置されている。
図3は、MEMSミラー1の上面構造を示す図である。図4は、図3中のIV−IV線に沿った断面構造を示す図である。図5は、図3中のV−V線に沿った断面構造を示す図である。図6は、図3中のVI−VI線に沿った断面構造を示す図である。
図3〜図6を参照して、ミラー部5は、基材50と、基材50上に設けられたミラー10とを備える。ミラー部5は、表面にミラー10を有する。ミラー10は、X軸まわりに回転可能に構成されるとともに、光を反射するように構成される。ミラー10は、たとえば矩形状の反射膜である。ミラー10はミラー部5の一部を構成するため、ミラー部5が回転すると、ミラー10も回転する。ミラー10がX軸まわりに回転することにより、ミラー10に入射した光の反射角度が変わる。
ミラー部5のX軸方向の両端に相当する第1端(−X側の端)及び第2端(+X側の端)には、それぞれ梁11及び梁12が接続されている。この実施の形態1では、梁11及び梁12の各々が、X軸方向に長尺の形状を有し、ミラー10の回転軸として機能する。より具体的には、梁11及び梁12の各々は、ねじり型弾性ヒンジとして機能する。図3中の軸X1は、X軸に平行な軸であり、ミラー10の回転軸の位置を示している。梁11及び梁12の各々は軸X1に沿って形成されている。梁11及び梁12の各々が軸X1まわりにねじれることによって、ミラー10の軸X1まわりの回転(以下、「X1回転」とも称する)が可能になる。この実施の形態1では、基材7aが図示しない筐体に固定されており、ミラー部5(ミラー10を含む)は基材7aに対して相対的に回転する。
MEMSミラー1は、軸X1に関して線対称な構造を有する。支持部材4aは、基材7aの−X側の辺に配置され、梁11を介してミラー部5の第1端と接続されている。梁11は、支持部材4a及び基材50と一体的に形成されてもよいし、支持部材4a及び基材50とは別に形成されて支持部材4a及び基材50の各々に接合されてもよい。支持部材4bは、基材7aの+X側の辺に配置され、梁12を介してミラー部5の第2端と接続されている。梁12は、支持部材4b及び基材50と一体的に形成されてもよいし、支持部材4b及び基材50とは別に形成されて支持部材4b及び基材50の各々に接合されてもよい。
支持部材4aと梁11との境界部には、ピエゾ抵抗素子91及び92が設けられている。ピエゾ抵抗素子91は、軸X1よりも+Y側に位置し、ピエゾ抵抗素子92は、軸X1よりも−Y側に位置する。支持部材4bと梁12との境界部には、ピエゾ抵抗素子93及び94が設けられている。ピエゾ抵抗素子93は、軸X1よりも+Y側に位置し、ピエゾ抵抗素子94は、軸X1よりも−Y側に位置する。ピエゾ抵抗素子91,92,93,94は、ミラー10、可動電極51,52、固定電極61,62、及び梁11,12の各々と電気的に絶縁されている。詳細は後述するが、この実施の形態1では、ブリッジ回路が形成されるようにピエゾ抵抗素子91,92,93,94が接続されている(図12参照)。制御装置3(図1)は、ブリッジ回路の中点電圧に基づいてミラー10の軸X1まわりの回転位置(以下、「X回転角度」とも称する)を取得するように構成される。未回転状態では、ミラー10のX回転角度は「0」である。
ミラー部5のY軸方向の両端に相当する第3端(+Y側の端)及び第4端(−Y側の端)には、それぞれ可動電極51及び可動電極52が設けられている。可動電極51及び52(後述する各櫛歯電極を含む)は、ミラー10、梁11,12、及び支持部材4a,4bの各々と電気的に接続されており、これらと電気的に等電位である。一方で、可動電極51及び52は、固定電極61,62、駆動配線53、及びピエゾ抵抗素子91,92,93,94の各々とは電気的に絶縁されている。可動電極51及び52の各々は、基材50の側面に設けられている。可動電極51及び52の各々は、基材50と一体的に形成されてもよいし、基材50とは別に形成されて基材50に接合されてもよい。可動電極51,52とミラー部5(ミラー10及び基材50を含む)とは一体的に姿勢を変えるため、ミラー10のX1回転と連動して可動電極51及び可動電極52も回転する。
固定部材6a、6bは、それぞれ基材7aの+Y側、−Y側の辺に配置されている。固定部材6a、6bは、直接的にはミラー部5と連結されていない。ミラー部5の回転力は、梁11及び12の各々の弾性変形によって吸収されるため、基材7aには伝達されない。このため、固定部材6a、6bは、ミラー10のX1回転とは連動しない。固定電極61は、固定部材6aの−Y側の側面に設けられている。固定電極61は、固定部材6aと一体的に形成されてもよいし、固定部材6aとは別に形成されて固定部材6aに接合されてもよい。固定電極62は、固定部材6bの+Y側の側面に設けられている。固定電極62は、固定部材6bと一体的に形成されてもよいし、固定部材6bとは別に形成されて固定部材6bに接合されてもよい。固定電極61,62は、固定部材6a、6bに支持されるため、ミラー10のX1回転とは連動しない。図3〜図6では、MEMSミラー1内の配線が省略されているが、固定電極61(後述する各櫛歯電極を含む)と固定電極62(後述する各櫛歯電極を含む)とは、互いに電気的に接続されており、電気的に等電位である。一方で、固定電極61及び62は、ミラー10、可動電極51,52、駆動配線53、及びピエゾ抵抗素子91,92,93,94の各々とは電気的に絶縁されている。
この実施の形態1では、可動電極51,52及び固定電極61,62の各々が、櫛歯状に形成されている。可動電極51が形成されたミラー部5の側面(+Y側の側面)と、固定電極61が形成された固定部材6aの側面(−Y側の側面)とは対向している。また、可動電極51と固定電極61との双方の櫛歯が互い違いに配置されることで、可動電極51の各櫛歯電極と固定電極61の各櫛歯電極とが対向している。可動電極52が形成されたミラー部5の側面(−Y側の側面)と、固定電極62が形成された固定部材6bの側面(+Y側の側面)とは対向している。また、可動電極52と固定電極62との双方の櫛歯が互い違いに配置されることで、可動電極52の各櫛歯電極と固定電極62の各櫛歯電極とが対向している。上記のような櫛歯電極構造を採用することで、可動電極51,52と固定電極61,62との間の静電容量を大きくすることができる。このため、小さな印加電圧で大きな静電力を電極間に発生させることができる。詳細は後述するが、この実施の形態1では、固定電極61,62が接地され、可動電極51,52に正電位が印加される。
駆動配線53は、支持部材4a、梁11、及び基材50の上に設けられている。ただし、支持部材4a、梁11、及び基材50の各々と駆動配線53との間には、絶縁膜54が配置されている。駆動配線53は、絶縁膜54によって、ミラー10、可動電極51,52、固定電極61,62、梁11,12、及びピエゾ抵抗素子91,92,93,94の各々と電気的に絶縁されている。電極パッド56、57は、それぞれ支持部材4aの+Y側、−Y側の端部に設けられ、駆動配線53の両端に位置する。駆動配線53は、電極パッド56と電極パッド57とをつなぐ配線である。駆動配線53は、支持部材4aから梁11を渡ってミラー部5に至り、ミラー部5の外縁部(ミラー10の周囲)を1周し、再び梁11を渡って支持部材4aに戻る。電極パッド56と電極パッド57との間に電圧を印加することによって駆動配線53に電流が流れる。
図2〜図6に示されるように、MEMSミラー1は、基材7aと、基材7a上に絶縁層55を介して設けられた支持部材4a(第1支持部材)及び支持部材4b(第2支持部材)と、基材7a上に絶縁層55を介して設けられた固定部材6a(第1固定部材)及び固定部材6b(第2固定部材)と、ミラー部5と、梁11(第1梁)及び梁12(第2梁)とを備える。ミラー部5のX軸方向(回転軸の方向)の両端に位置する第1端(−X側の端)及び第2端(+X側の端)はそれぞれ梁11及び12を介して支持部材4a及び4bにつながっている。可動電極51(第1可動電極)及び可動電極52(第2可動電極)はそれぞれ、ミラー部5のY軸方向(回転軸と直交する方向)の両端に位置する第3端(+Y側の端)及び第4端(−Y側の端)に設けられている。また、固定部材6aに支持される固定電極61(第1固定電極)と、固定部材6bに支持される固定電極62(第2固定電極)とはそれぞれ、可動電極51と可動電極52とに対向するように配置されている。梁11及び12の各々は、ミラー部5(ミラー10を含む)の回転軸として機能する。ミラー部5は、軸X1(回転軸)に関して線対称な構造を有する。また、可動電極51及び固定電極61と、可動電極52及び固定電極62とが、軸X1(回転軸)に関して線対称に形成されている。
図2〜図6に示したMEMSミラー1の構造は、たとえばSOI(Silicon On Insulator)基板を用いて作製できる。SOI基板は、シリコン基板と、表面シリコン層(たとえば、単結晶シリコン層)と、これらの間に形成された絶縁層(たとえば、酸化シリコン層又は窒化シリコン層)とを有する基板である。SOI基板を用いたMEMSミラー1では、絶縁層55がSOI基板の絶縁層に相当する。MEMSミラー1の製造には、半導体微細加工技術及びMEMSデバイス技術を適用できる。SOI基板のシリコン基板を加工することによって基材7a及び7bを形成できる。成膜、ドーピング(たとえば、イオン注入又は熱拡散)、パターニング(たとえば、リソグラフィによるパターニング)、及びエッチングといったプロセスを繰り返し行なうことによって、ミラー10、梁11,12、支持部材4a,4b、固定部材6a,6b、可動電極51,52、固定電極61,62、駆動配線53、電極パッド56,57、及びピエゾ抵抗素子91,92,93,94を形成できる。公知のMEMSデバイス技術により、ミラー部5の基材50と、梁11,12と、可動電極51,52と、支持部材4a,4bとを、容易に一体成形することができる。ミラー10は、たとえばAu膜のような金属膜で形成される。可動電極51,52及び固定電極61,62の各々は、たとえば不純物によって表面シリコン層に導電性を付与することにより形成することができる。可動電極51,52及び固定電極61,62の各々は、不純物としてB(ボロン)が添加された導電性シリコンで形成されてもよい。ただし、不純物の種類は適宜変更可能であり、B(ボロン)の代わりにP(リン)を使用してもよい。駆動配線53及び電極パッド56,57は、たとえばAl(アルミニウム)によって形成される。ただしこれに限られず、駆動配線53と電極パッド56,57との少なくとも一方が、Au(金)によって形成されてもよい。ピエゾ抵抗素子91,92,93,94は、たとえば、印加された応力に応じて抵抗値が変化するように、表面シリコン層に対して不純物としてB(ボロン)を拡散させることにより形成することができる。ただし、不純物の種類は適宜変更可能であり、B(ボロン)の代わりにP(リン)を使用してもよい。なお、公知の基板接合技術及び成膜技術を利用して、SOI基板を用いずに、図2〜図6に示したMEMSミラー1の構造を作製することも可能である。また、MEMSミラー1における各部の材料は、上述した材料に限られず、適宜変更可能である。ただし、ミラー10の材料としては、走査される光を反射しやすい材料が適している。ミラー10の材料は、走査される光の波長に合わせて決定されてもよい。電極材料としては、電圧の印加に耐え得る材料が適している。配線材料としては、電気抵抗の低い材料が適している。ピエゾ抵抗素子91,92,93,94は、ミラー10の姿勢検出に用いられるため、各ピエゾ抵抗素子の材料としては、ミラー10の回転に伴う応力変化に応じて電気抵抗が変化する材料が適している。
図2〜図6には、MEMSミラー1からの配線の引出しを示していないが、可動電極51,52、固定電極61,62、電極パッド56,57、及びピエゾ抵抗素子91,92,93,94の各々は、配線によって外部の回路(たとえば、電源回路又は検出回路)と電気的に接続されてもよい。電気的な接続は、ワイヤボンディングによって行なわれてもよい。この実施の形態1では、制御装置3(図1)が、可動電極51,52、固定電極61,62、及び電極パッド56,57の各々と電気的に接続されている。制御装置3は、電極パッド56と電極パッド57との間に電圧信号を印加可能に構成される。また、制御装置3は、可動電極51,52と固定電極61,62との間に電圧信号を印加可能に構成される。ピエゾ抵抗素子91,92,93,94は、MEMSミラー1の外に設けられた配線によって接続され、ブリッジ回路(後述する図12参照)を形成している。
図7は、図1に示した制御装置3によって実行される処理について説明するための図である。図7を参照して、制御装置3には、走査範囲及び駆動周波数のような走査条件が入力される。走査範囲は、MEMSミラー1によって光が走査される範囲である。駆動周波数は、ミラー10の駆動信号の周波数に相当する。駆動周波数に応じて、フレームレート(すなわち、単位時間あたりに処理されるフレーム数)が変化する傾向がある。駆動周波数は、たとえば所望のフレームレートが得られるように決定される。駆動周波数は、任意に設定可能であり、たとえば数十Hz程度であってもよい。
制御装置3は、ステップS1において、走査範囲において光を走査するために駆動配線53に流す電流信号(以下、「駆動電流信号」とも称する)を決定する。駆動電流信号は、波形信号であり、「ミラーアクチュエータを制御するための波形信号」の一例に相当する。駆動電流信号に含まれる基本波の周波数は、「駆動周波数」の一例に相当する。駆動配線53に電流が流れることによって、ミラー10が駆動され、ミラー10のX回転角度が変わる。駆動電流信号は、たとえばミラー10で反射された光が所望の方向に走査されるように決定される。制御装置3は、ステップS2において、ステップS1において決定された駆動電流信号を駆動配線53に流すための電圧信号(以下、「駆動電圧信号」とも称する)を生成する。駆動配線53に流れる電流は、駆動電圧信号によって制御される。
図8は、ミラー10が駆動される際の電流及び磁界(磁束密度)の向きの一例を示す図である。図8を参照して、この例では、磁石2a,2bによってY軸方向の磁界が印加されている。磁界の磁束密度Bの向きは、磁石2aから磁石2bへの向き(−Yの向き)である。駆動配線53には、電極パッド57から電極パッド56への電流が流れる。ミラー部5の+Y側(図3に示した可動電極51側)の縁R1では、駆動配線53のX軸に平行な部分(以下、「R1配線」と称する)を電流J1が−Xの向きに流れる。ミラー部5の−Y側(図3に示した可動電極52側)の縁R2では、駆動配線53のX軸に平行な部分(以下、「R2配線」と称する)を電流J2が+Xの向きに流れる。電流J1,J2のベクトルと磁束密度Bのベクトルとは直交する。
図9は、図8に示した電流及び磁界(磁束密度)によって生じるローレンツ力を示す図である。図9を参照して、ミラー部5の縁R1では、R1配線を流れる電流J1と磁束密度Bとによって+Zの向きのローレンツ力Fmag1が生じる。ミラー部5の縁R2では、R2配線を流れる電流J2と磁束密度Bとによって−Zの向きのローレンツ力Fmag2が生じる。
図10は、図9に示したローレンツ力によって生じるトルクを示す図である。図9とともに図10を参照して、図9に示したローレンツ力Fmag1,Fmag2によって、軸X1まわりのトルクTmagが生じる。このトルクTmagによりミラー部5を支持する梁11及び12がねじれ、ミラー部5(図3〜図6に示したミラー10を含む)が軸X1まわりに回転する。
図8〜図10を参照して、電極パッド57から駆動配線53を通じて電極パッド56に電流Jを流したときに生じるローレンツ力Fmagの大きさは、下記式(1)に示すように、磁束密度Bと、駆動配線53のX軸に平行な部分の長さL(図8参照)と、電流Jとの積に相当する。なお、電流J1と電流J2とは同じ大きさ(J)になり、R1配線及びR2配線は同じ長さ(L)を有するため、ローレンツ力Fmag1及びFmag2は同じ大きさ(Fmag)になる。
Fmag=B×J×L …(1)
軸X1まわりのトルクTmagの大きさは、下記式(2)に示すように、R1配線及びR2配線の2箇所で生じるローレンツ力Fmagと、軸X1(回転軸)からみた力の加わる点(すなわち、上記2箇所)までの距離Rmagとの積に相当する。なお、MEMSミラー1は、軸X1に関して線対称な構造を有するため、R1配線と軸X1との距離と、R2配線と軸X1との距離とは、同じ寸法(Rmag)になる。
Tmag=2×Fmag×Rmag …(2)
トルクTmagによってミラー部5がX軸まわりに回転すると、ミラー部5を支持する梁11及び12がねじれる。この際、梁11,12の復元力(すなわち、梁11,12が元の状態に戻ろうとする力)によって、トルクTmagとは逆向きのトルクTmecがミラー部5に加わる。トルクTmecは、下記式(3)に示すように、梁11,12のねじれ方向のばね定数Kmecと、ミラー部5(又は、ミラー10)のX回転角度θxとの積に相当する。
Tmec=−Kmec×θx …(3)
駆動配線53に前述の駆動電流信号が流れると、ミラー部5は、ローレンツ力によるトルクTmagと梁11,12の復元力によるトルクTmecとが釣り合うように姿勢を変える。制御装置3(図1)は、駆動電流信号によってミラー部5の姿勢(より特定的には、X回転角度)を制御することができる。ミラー部5が回転することで、ミラー部5に含まれるミラー10(図3〜図6)も回転する。
図11は、光走査装置100のMEMSミラー1に入射した光ビームの反射方向を示す図である。図1及び図2とともに図11を参照して、光走査装置100のMEMSミラー1に入射した光ビームは、ミラー10で反射された後、光走査装置100から出射される。ミラー10がX1回転すると、ミラー10の反射面は、基準面(すなわち、ミラー10が未回転状態であるときの反射面)からX回転角度θxだけ傾く。これにより、ミラー10で反射される光ビームの光軸は、基準方向(すなわち、ミラー10が未回転状態であるときの反射方向)から2θx(すなわち、X回転角度θxの2倍の角度)だけ傾くことになる。
上記のように、光走査装置100(図1)から出射される光の方向は、ミラー10のX回転角度θxに応じて変わる。制御装置3(図1)は、駆動電流信号によってミラー10のX回転角度θxを制御できる。制御装置3は、ミラーアクチュエータ(磁石2a,2b及び駆動配線53を含む)を駆動電流信号(すなわち、周期的な信号)で制御することにより、ミラー部5(ミラー10を含む)は、決まった姿勢を周期的に繰り返す。より具体的には、ミラー10は、軸X1まわりに順回転と逆回転とを繰り返すことによって揺動する。これにより、光走査装置100から出射される光の光軸は、決まった方向を周期的に繰り返すようになる。光走査装置100は、こうしたミラー制御により光を走査することができる。
ミラー部5(ミラー10を含む)の姿勢は、図3及び図6に示したピエゾ抵抗素子91,92,93,94によって検出される。図12は、ピエゾ抵抗素子91,92,93,94が構成する姿勢検出回路を示す図である。図3及び図6とともに図12を参照して、ピエゾ抵抗素子91,92,93,94は、配線によって接続され、図12に示すようなブリッジ回路(姿勢検出回路)を形成している。図3及び図6に示されるように、ピエゾ抵抗素子91,92,93,94は梁11,12の根元(支持部材4a,4b側)に配置されており、ミラー10のX回転角度θxが変化すると、ピエゾ抵抗素子91,92,93,94に応力が生じる。こうした応力変化に起因して、各ピエゾ抵抗素子の抵抗値が変化する。ミラー10のX1回転によって梁11,12がねじれるとき、ピエゾ抵抗素子91,94とピエゾ抵抗素子92,93とでは、印加される応力が逆向きであり、抵抗変化の方向(+/−)も逆になる。図12に示されるブリッジ回路に一定の電圧を加えた状態では、各ピエゾ抵抗素子の抵抗値に応じた電圧Vcがブリッジ回路の中点に出力される。各ピエゾ抵抗素子の抵抗値は梁11,12のねじれ角度(すなわち、ミラー10のX回転角度)に応じて変化するため、制御装置3(図1)は、ブリッジ回路の中点に出力される電圧Vcに基づいてミラー10のX回転角度を取得できる。
ところで、駆動電流信号によってミラー10が駆動されるときに、ミラー10の軸X1まわりの共振周波数(以下、「X1共振周波数」とも称する)が、駆動電流信号に含まれる高調波の周波数に近いと、リンギングが生じやすくなる。そこで、この実施の形態1に係る光走査装置100では、以下に説明する調整信号によってミラー10のX1共振周波数を制御することで、リンギングを抑制している。
再び図7を参照して、制御装置3は、ステップS3において、可動電極51,52と固定電極61,62との間(すなわち、櫛歯電極間)に印加する電圧信号(以下、「調整信号」とも称する)を決定する。この調整信号によって、ミラー10のX1共振周波数を制御することができる。詳細は後述するが、ステップS3においては、まず、X1共振周波数の目標値が決定され、ミラー10のX1共振周波数を目標値に近づけるように、調整信号が決定される。制御装置3は、ステップS4において、ステップS3において決定された調整信号を生成する。
図3〜図5に示されるように、可動電極51と固定電極61との双方の櫛歯が互い違いに配置されることで、可動電極51の各櫛歯電極と固定電極61の各櫛歯電極とは対向する。また、可動電極52と固定電極62との双方の櫛歯が互い違いに配置されることで、可動電極52の各櫛歯電極と固定電極62の各櫛歯電極とは対向する。対向する1組の櫛歯電極間の静電容量Cを、平行平板モデルで考えると、静電容量Cは、櫛歯電極の対向面積に比例し、櫛歯電極間のギャップに反比例する。このうち、櫛歯電極の対向面積は、ミラー10のX回転角度θxに応じて変化する。櫛歯電極間に電圧Veleが印加されると、ミラー10のX回転角度θxに対する静電容量の変化量(∂C/∂θx:静電容量の回転角度微分値)と、櫛歯電極間に発生する静電力Feleとは、下記式(4)に示すような関係を有する。なお、櫛歯電極間の電圧の正/負は任意に設定できるが、この実施の形態1では、固定電極61,62が負(接地)、可動電極51,52が正である。
Fele=(−1/2)×(∂C/∂θx)×(Vele)2 …(4)
上記のように、櫛歯電極間には、電圧Veleの2乗に比例する静電力Feleが発生する。静電力Feleは、ミラー10のX回転角度θxの絶対値を小さくする方向に働く。可動電極51及び固定電極61の各櫛歯電極が対向する部位(以下、「第1櫛歯対向部位」とも称する)と、可動電極52及び固定電極62の各櫛歯電極が対向する部位(以下、「第2櫛歯対向部位」とも称する)との、2箇所で静電力Feleが生じる。これらの静電力Feleによって、軸X1まわりのトルクTeleが生じる。トルクTeleの向きは、前述したトルクTmag(図10)とは逆向きであり、梁11,12の機械的な復元力によるトルクTmecと同じ向きである。トルクTeleは、ミラー10のX1回転に対する梁11,12の復元力を強めるように作用する。トルクTeleの大きさは、下記式(5)に示すように、2箇所で生じる静電力Feleと、軸X1(回転軸)からみた力の加わる点(すなわち、第1及び第2櫛歯対向部位)までの距離Releとの積に相当する。なお、MEMSミラー1は、軸X1に関して線対称な構造を有するため、第1櫛歯対向部位と軸X1との距離と、第2櫛歯対向部位と軸X1との距離とは、同じ寸法(Rele)になる。
Tele=2×Fele×Rele …(5)
静電力Feleの大きさは、基本的には、ミラー10のX回転角度θxに対して比例する。また、トルクTeleも、ミラー10のX回転角度θxに対して比例する。このため、静電力Fele、トルクTeleは、それぞれ下記式(6)、(7)によって表わすことができる。なお、式(6)中の「α」と式(7)中の「Kele」との各々は比例定数である。
Fele=−α×θx×(Vele)2 …(6)
Tele=−Kele×θx …(7)
式(5)〜(7)から分かるように、Keleは、下記式(8)によって表わすことができる。
Kele=2α×Rele×(Vele)2 …(8)
Keleは、等価的に、ミラー10のX1回転に関するばね定数として扱うことができる。Keleは、櫛歯電極間の電圧Veleの2乗に比例するため、前述した調整信号によってKele(ばね定数)を制御することができる。ミラー10がX1回転した状態で、櫛歯電極間に電圧(調整信号)が印加されると、ミラー10の姿勢を復元する方向(すなわち、X回転角度θxの絶対値を小さくする方向)にトルクTeleが生ずる。櫛歯電極間に電圧を印加することは、梁11,12の剛性を高めてミラー10のX1回転に対するばね定数を大きくすることと等価に扱うことができる。
櫛歯電極間に電圧(調整信号)が印加されない場合、ミラー10のX1共振周波数は、ミラー10を支持する構造の機械的な性質によって決まる。櫛歯電極間に電圧が印加されない場合のミラー10のX1共振周波数fmecは、下記式(9)に示すように、ミラー10のX軸まわりの慣性モーメントMと、ミラー10のX軸まわりのばね定数Kmecとによって表わすことができる。
fmec=(1/2)×π×√(Kmec/M) …(9)
他方、櫛歯電極間に電圧(調整信号)が印加された場合には、櫛歯電極間の静電力によってトルクTeleが発生し、トルクTeleによってミラー10のX軸まわりのばね定数は大きくなる。この際、ミラー10のX軸まわりのばね定数は、前述の式(8)で表わされるKeleだけ大きくなる。櫛歯電極間に電圧が印加される場合のミラー10のX1共振周波数feleは、下記式(10)によって表わすことができる。
fele=(1/2)×π×√((Kmec+Kele)/M) …(10)
式(9)及び(10)から分かるように、櫛歯電極間に電圧(調整信号)が印加されることによってミラー10のX1共振周波数は高くなる。
再び図7を参照して、制御装置3は、ステップS5において、ステップS2で生成された駆動電圧信号を駆動配線53の両端(電極パッド56,57)に印加するとともに、ステップS4で生成された調整信号を可動電極51,52と固定電極61,62との間(すなわち、櫛歯電極間)に印加する。駆動電圧信号が駆動配線53の両端に印加されると、駆動電流信号が駆動配線53に流れる。
図13は、ミラー10の駆動信号(すなわち、駆動配線53に流れる駆動電流信号)の一例を示す図である。図13において、横軸は時間、縦軸は電流値を示している。図13を参照して、この駆動信号は、鋸歯状波形の信号である。鋸歯状波形の上昇期間(たとえば、ミラー10が順回転する期間)を利用して、走査速度が一定になる期間を長くすることができる。駆動周波数(駆動信号の周波数)はfdであり、駆動周期(駆動信号の周期)は1/fdである。
図14は、ミラー10の駆動信号(すなわち、駆動配線53に流れる駆動電流信号)に含まれる周波数成分の一例を示す図である。図14において、横軸は周波数、縦軸は振幅を示している。図14を参照して、この駆動信号は、基本波の周波数fdと、複数の高調波の周波数nfdとを含む。高調波の周波数は、基本波の周波数(fd)のn倍の周波数(nfd)であり、nは2以上の整数である。たとえば、第2次高調波の周波数は、fdの2倍の周波数(2fd)である。第3次高調波の周波数は、fdの3倍の周波数(3fd)である。
図15は、リンギングが生じやすいミラー10のX1共振周波数の一例を示す図である。図15において、横軸は周波数、縦軸は振幅を示している。図15を参照して、この例では、ミラー10のX1共振周波数foが、第3次高調波の周波数(3fd)と一致する。ミラー10のX1共振周波数foが、ミラー10の駆動信号に含まれる高調波の周波数(nfd)と一致すると、共振現象によりミラー10の回転変位が増幅され、リンギングが生じやすくなる。図16は、リンギングが生じたときのミラー10のX回転角度θxの推移を示す図である。図16を参照して、リンギングが生じると、共振現象によって生じる波形(たとえば、周期1/3fdの波形)が、所望のX回転変位(θx)の波形に重畳されることになり、ミラー10のX回転角度θxは所望の角度からずれる。このため、リンギングが生じると、光の走査精度が損なわれる。
この実施の形態1に係る光走査装置100(図1)では、制御装置3が、前述した図7のステップS3〜S5の処理によって、ミラー10の駆動信号(駆動電流信号)に含まれる周波数成分からミラー10のX1共振周波数が離れるように、ミラー10のX1共振周波数を制御する。図17は、図7のS3において実行される調整信号の決定に係る処理の詳細を示すフローチャートである。
図1〜図6とともに図17を参照して、制御装置3は、ステップS10において、櫛歯電極間に電圧(調整信号)が印加されていない場合のミラー10のX1回転変位に対する周波数応答特性(以下、「X回転ミラー特性」とも称する)を取得する。
この実施の形態1では、予め求められて記憶装置(図示せず)に記憶されたX回転ミラー特性を、制御装置3がステップS10において上記記憶装置から読み出すことによって取得する。異なる環境(たとえば、温度)で測定された複数のX回転ミラー特性を記憶装置に用意し、ステップS10において、制御装置3が、現在の環境に対応するX回転ミラー特性を記憶装置から読み出すようにしてもよい。制御装置3は、定期的にX回転ミラー特性を測定して、測定されたデータで記憶装置内のデータを更新してもよい。たとえば、制御装置3は、光走査装置100(制御装置3を含む)が起動するたびにX回転ミラー特性を測定してもよい。X回転ミラー特性は、櫛歯電極間に電圧(調整信号)が印加されていない状態で、駆動配線53に流れる駆動電流信号を正弦波として周波数掃引することによって求めることができる。X回転ミラー特性を求める際に使用する駆動電流信号の振幅は、ハードスプリング効果及びソフトスプリング効果の影響を小さくするために、光走査時に使用する駆動電流信号の振幅に近い値にしてもよい。ただしこれに限られず、X回転ミラー特性を求める際に使用する駆動電流信号の振幅は、基本的には任意である。
駆動周波数を変えながらミラー10をX1回転させると、駆動周波数に応じてミラー10のX1回転変位(波形)が変化する。駆動周波数ごとにミラー10のX1回転変位(波形)を測定することで、以下に説明するX回転ミラー特性を取得することができる。図18は、X回転ミラー特性の第1の例を示す図である。図18を参照して、第1の例に係るX回転ミラー特性は、ミラー10のX1回転変位(波形)の周波数と振幅との関係を示す。図19は、X回転ミラー特性の第2の例を示す図である。図19を参照して、第2の例に係るX回転ミラー特性は、ミラー10のX1回転変位(波形)の周波数と位相との関係を示す。
再び図1〜図6とともに図17を参照して、ステップS11では、制御装置3が、上記ステップS10で取得したX回転ミラー特性に基づいて、ミラー10の機械的なX1共振周波数fmecを取得する。たとえば、図18に示したX回転ミラー特性では、駆動周波数がfmecになったときに、ミラー10のX1回転変位(波形)の振幅がピークを示す。また、図19に示したX回転ミラー特性では、駆動周波数がfmecになったときに、ミラー10のX1回転変位(波形)の位相が急激に変化する。制御装置3は、たとえば、図18に示したX回転ミラー特性と図19に示したX回転ミラー特性との少なくとも一方を用いて、ミラー10の機械的なX1共振周波数fmecを取得することができる。なお、ミラー10の機械的なX1共振周波数fmecは、予め求められて制御装置3の記憶装置に記憶されていてもよい。
ステップS12では、制御装置3が、図7のステップS1において決定された駆動電流信号を取得する。そして、制御装置3は、ステップS13において、上記駆動電流信号に含まれる周波数成分からミラー10のX1共振周波数が離れるように、X1共振周波数の目標値(以下、「目標X周波数」とも称する)を決定する。より具体的には、制御装置3は、駆動電流信号に含まれる基本波の周波数に相当する駆動周波数fdと、ミラー10の機械的なX1共振周波数fmecとに基づいて、下記式(11)を満たすNを求める。
(N−0.5)×fd<fmec≦(N+0.5)×fd …(11)
式(11)中の「N」は、駆動電流信号に含まれる周波数成分の次数(1以上の整数)を示す。制御装置3は、式(11)を用いて、駆動電流信号においてfmecに最も近い周波数成分の次数(N)を特定する。そして、制御装置3は、式(11)によって特定されたNを用いて、下記式(12)に従って目標X周波数を算出する。
目標X周波数=(N+0.5)×fd …(12)
続けて、制御装置3は、ステップS14において、前述した式(10)で示されるfeleを上記目標X周波数と一致させるように、Kele(静電力Feleによるばね定数)及びVele(櫛歯電極間に印加される電圧)を算出する。制御装置3は、前述の式(10)を用いて、fele(目標X周波数)からKeleを求めることができる。制御装置3は、前述の式(8)を用いて、KeleからVele(たとえば、直流電圧)を求めることができる。各式中の定数(α、Rele、M、及びKmec)は、予め求められて制御装置3の記憶装置に記憶されている。
上記のように決定されたVele(直流電圧信号)が、調整信号に相当する。図7のステップS5では、上記のように決定された調整信号によってミラー10のX1共振周波数が制御される。これにより、ミラー10のX1共振周波数が上記目標X周波数に制御される。
上記のように、この実施の形態1に係る光走査装置100の制御装置3は、図7及び図17に示される光走査装置の制御方法を実行する。この光走査装置の制御方法は、駆動電流信号(ミラーアクチュエータを制御するための波形信号)を決定すること(図7のステップS1)と、ミラー10のX1共振周波数と、このX1共振周波数に最も近い駆動電流信号の周波数成分との差が所定の目標値(たとえば、0.5fd)となるように目標X周波数(ミラー10の軸X1まわりの共振周波数の目標値)を決定すること(図17のステップS13)と、駆動電流信号を駆動配線53に流してミラー10をX1回転させるとともに、上記の調整信号によってミラー10に力を加えてミラー10のX1共振周波数を変化させることによりミラー10のX1共振周波数を目標X周波数に制御すること(図7のステップS5)とを含む。
以下、図20及び図21を用いて、上記共振周波数制御の動作例について説明する。図20は、櫛歯電極間に電圧が印加されていないときのミラー10のX1共振周波数の一例を示している。図20を参照して、ミラー10のX1共振周波数foが、第3次高調波の周波数(3fd)と略一致しているため、この状態ではリンギングが生じやすくなる。図21は、図17に示した一連の処理によって決定された調整信号(Vele)が櫛歯電極間に印加されたときのミラー10のX1共振周波数の一例を示している。図21を参照して、ミラー10のX1共振周波数foが第3次高調波の周波数(3fd)に近接する場合、図17のステップS13において、式(11)によって特定されるNは「3」であり、目標X周波数は「3.5fd」となる。このため、ミラー10のX1共振周波数foは、図21に示すように、3fdと4fdとの中間(3.5fdに相当する位置)に制御される。これにより、ミラー10のX1共振周波数foと第3次高調波の周波数(3fd)との差が「0.5fd」となる。制御装置3は、可動電極51,52と固定電極61,62との間(すなわち、櫛歯電極間)に電圧を印加することにより、ミラー10のX軸まわりの復元力を強めるような静電力Feleを発生させることができる。こうした静電力Feleによりミラー10のX1共振周波数は高くなる。制御装置3は、静電力Feleの大きさを調整することで、駆動電流信号に含まれる周波数成分からミラー10のX1共振周波数を遠ざけることができる。ミラー10のX1共振周波数が駆動電流信号の周波数成分から離れることで、リンギングが抑制される。
リンギングを抑制する方法として、ミラーの駆動信号(たとえば、駆動電流信号)に含まれる周波数成分がミラーの共振周波数と一致しないようにミラーの駆動信号を決定する方法も考えられる。しかし、こうした方法では、ミラーの駆動信号を決定する際の自由度が損なわれる。たとえば、ミラーの駆動周波数(駆動信号の周波数)が変わると、それに応じてフレームレートも変わる傾向がある。複数の光走査装置を用いて広範囲にわたって光を走査して画像を作成する場合には、それら光走査装置間でフレームレートがずれると、適切な画像が得られなくなる。フレームレートの違いを情報処理によって補間することも考えられるが、こうした情報処理を追加することは、処理負荷の増大を招く。
また、急峻な特性を有するフィルタ(たとえば、ノッチフィルタ)を用いてミラーの駆動信号に含まれる特定の周波数成分を除去することによりリンギングを抑制する方法も考えられる。しかし、フィルタの追加はコストの上昇を招く。また、こうした方法では、ミラーの特性に合ったフィルタを準備するための工程が必要になり、作業負担が大きくなる。
この実施の形態1に係る光走査装置100では、制御装置3が図7及び図17に示した処理を実行することにより、上記のようなフィルタを用いずにリンギングを抑制することができる。光走査装置100は、ミラー10を軸X1まわりに回転させるミラーアクチュエータ(たとえば、磁石2a,2b及び駆動配線53)に加えて、ミラー10に力を加えてミラー10の軸X1まわりの共振周波数を変化させる調整機構を備える。具体的には、可動電極51,52及び固定電極61,62が、「調整機構」として機能する。可動電極51,52及び固定電極61,62は、可動電極51,52と固定電極61,62との間に電圧が印加されることにより可動電極51,52と固定電極61,62との間に静電力を生じさせて、その静電力によりミラー10のX1共振周波数を変化させるように構成される。制御装置3は、波形信号(より特定的には、駆動配線53に流す駆動電流信号)によってミラーアクチュエータを制御するとともに、可動電極51,52と固定電極61,62との間に電圧信号(すなわち、調整機構を制御するための調整信号)を印加することにより、上記波形信号に含まれる周波数成分からミラー10のX1共振周波数が離れるようにミラー10のX1共振周波数を制御する。制御装置3は、上記波形信号(ミラー10の駆動信号)に応じて、ミラー10のX1共振周波数を変更する。このため、制御装置3は、ミラー10の駆動信号を変更することなく、リンギングを抑制することができる。上記光走査装置100によれば、ミラーの駆動信号を決定する際の自由度を確保しつつリンギングを抑制することが可能になる。
この実施の形態1では、ミラー10のX1共振周波数と、このX1共振周波数に最も近い駆動電流信号の周波数成分との差が所定の目標値(たとえば、0.5fd)となるように、制御装置3がミラー10のX1共振周波数を制御する。ミラー10のX1共振周波数は、駆動電流信号に含まれる基本波及び高調波の各周波数から離れる。これにより、ミラー10の動作が共振現象の影響を受けにくくなり、共振現象によるミラー10の不安定動作が抑制される。なお、上記目標値は、0.5fdに限られず、適宜変更可能である。目標値は、0.5fd未満であってもよく、たとえば0.3fd程度であってもよい。目標値は、固定値であってもよいし、状況に応じて可変であってもよい。
上記実施の形態1では、目標X周波数が決定された後、ミラー10のX1共振周波数を目標X周波数に近づけるようにVele(調整信号)が決定される(図17参照)。しかしこれに限られず、制御装置3は、櫛歯電極間に印加される電圧(Vele)を変えながら、駆動電流信号によって駆動されるミラー10のX1回転変位(θx)を検出し、ミラー10が安定動作するようなVeleを探索してもよい。こうした探索によって、リンギングが十分抑制されるVeleを見つけることができる。
制御装置3は、図17に示した処理に代えて、図22に示す処理を実行するように構成されてもよい。図22は、図17に示した処理の変形例を示すフローチャートである。図22に示す処理は、ステップS12とステップS13との間に、ステップS12Aが追加されたこと以外は、図17に示した処理と同じである。図22を参照して、ステップS12Aでは、ステップS11において取得されたミラー10の機械的なX1共振周波数fmecと、ステップS12において取得された駆動電流信号に含まれる各周波数成分との差が所定の基準値以上であるか否かを、制御装置3が判断する。ミラー10の機械的なX1共振周波数fmecと、fmecに最も近い駆動電流信号の周波数成分との差が基準値以上であれば(ステップS12AにおいてYES)ステップS13及びS14の処理は実行されず、それらの差が基準値未満である場合(ステップS12AにおいてNO)には、ステップS13及びS14の処理が実行される。ステップS12Aで使用される基準値は、許容最小間隔に相当し、リンギングを抑制するために十分な間隔に設定される。この基準値は、要求される走査精度、走査範囲、及びQ値(Quality factor)に基づいて決定されてもよい。基準値は0.3fd程度であってもよい。
ステップS12AにおいてYESと判断されることは、ミラー10のX1共振周波数が駆動電流信号の各周波数成分から十分離れていることを意味する。このため、ステップS12AにおいてYESと判断された場合には、櫛歯電極間に電圧が印加されない。一方、ステップS12AにおいてNOと判断された場合には、ステップS13及びS14の処理が実行されることで、櫛歯電極間にVele(電圧信号)が印加される。これにより、ミラー10のX1共振周波数と、このX1共振周波数に最も近い駆動電流信号の周波数成分との差が目標値(たとえば、0.5fd)となるように、ミラー10のX1共振周波数が制御される。
上記図22に示す処理によれば、ミラー10のX1共振周波数と、このX1共振周波数に最も近い駆動電流信号の周波数成分との差が基準値(たとえば、0.3fd)以上となるように、ミラー10のX1共振周波数が制御される。こうした処理によれば、ミラー10のX1共振周波数と駆動電流信号の各周波数成分との差が基準値を下回らなくなる。また、ミラー10のX1共振周波数が駆動電流信号の各周波数成分から十分離れている場合には、櫛歯電極間に電圧が印加されないため、櫛歯電極間に電圧を印加する頻度を少なくすることができる。
上記実施の形態1では、可動電極51,52と固定電極61,62との間には直流電圧が印加される。制御装置3は、この直流電圧の大きさに基づいて、ミラー10のX1共振周波数を制御するように構成される。しかしこれに限られず、可動電極51,52と固定電極61,62との間に印加される電圧信号は、矩形波電圧信号であってもよい。可動電極51,52と固定電極61,62とがスイッチを介して電源に接続され、スイッチがオンされると、電源電圧が電極間に印加されるようにしてもよい。こうしたスイッチのオン/オフを制御装置3が制御することによって、以下に説明する矩形波電圧信号が電極間に印加されてもよい。
図23は、可動電極51,52と固定電極61,62との間に印加される電圧信号の変形例を示す図である。図23を参照して、この矩形波電圧信号は、電極間に電源電圧Vonが印加されるオン期間Taと、電極間に電圧が印加されないオフ期間Tbとを、周期的に繰り返す信号である。オン期間Taとオフ期間Tbとによって周期Tが構成される。オン/オフの切替え周期がミラー10のX1共振周波数と比べて十分速ければ、櫛歯電極間の静電容量に電荷を供給し、ミラー10のX1回転に対する復元力を強めることができる。この場合、矩形波電圧信号のデューティ比(Ta/T)に電源電圧Vonを乗じた値(Von×Ta/T)が、前述の式(4)、(6)、及び(8)中の「Vele」の大きさに相当する。制御装置3は、上記矩形波電圧信号のデューティ比に基づいて、ミラー10のX1共振周波数を制御するように構成されてもよい。上記矩形波電圧信号によれば、電源電圧Vonが一定のままでも、デューティ比を変更することで、ミラー10のX1共振周波数を調整することができる。こうした矩形波電圧信号を採用した光走査装置では、電圧可変式の電源を搭載しなくてもよいため、装置の小型化及び簡略化を図ることができる。
上記実施の形態1では、可動電極51及び52の各々が、軸X1(回転軸)に直交する方向のミラー部5の両側面に設けられている(図3及び図4参照)。こうした構造では、軸X1(回転軸)と可動電極51,52との距離(Rele)が大きくなり、静電力Feleによって大きなトルクTeleを発生させやすくなる(前述の式(5)参照)。ただし、可動電極51,52及び固定電極61,62の各々の位置、形状、及び数は、図2〜図6に示した例に限られず、適宜変更可能である。
図24は、可動電極及び固定電極の第1変形例を示す図である。図24を参照して、この例では、可動電極及び固定電極の各々が図3及び図4に示したような櫛歯状の電極ではない。ミラー部の基材の側面を利用して可動電極が形成される。ミラー部5Aの四隅の側面(より特定的には、Y−Z面)が可動電極R11〜R14として機能する。可動電極R11、R12、R13、R14は、それぞれミラー部5Aの+Y/−X側、+Y/+X側、−Y/−X側、−Y/+X側に配置される。可動電極R11、R12、R13、R14に対してそれぞれX軸方向に対向するように固定電極611、612、621、622が設けられている。固定電極611,612,621,622の各々は、櫛歯状には形成されておらず、Y−Z面を主面とする平板形状を有する。固定電極611及び612の各々は固定部材6aに支持され、固定電極621及び622の各々は固定部材6bに支持される。可動電極R11〜R14と固定電極611,612,621,622とが対向することで、電極間に印加される電圧に応じた静電力が電極間に発生する。
図25は、可動電極及び固定電極の第2変形例を示す図である。図25を参照して、この例では、固定部材の側面を利用して固定電極が形成される。ミラー部5BのY軸方向の両側面(より特定的には、Z−X面)が可動電極R21及びR22として機能する。また、固定部材6cの−Y側の側面(より特定的には、Z−X面)が固定電極R31として機能し、固定部材6dの+Y側の側面(より特定的には、Z−X面)が固定電極R32として機能する。可動電極R21と固定電極R31とはY軸方向に対向し、これらの電極間には、印加される電圧に応じた静電力が発生する。可動電極R22と固定電極R32とはY軸方向に対向し、これらの電極間には、印加される電圧に応じた静電力が発生する。
図24及び図25のいずれに示した変形例においても、可動電極と固定電極との電極間距離を小さくすることで、電極間に大きな静電力を発生させやすくなる。また、可動電極と固定電極との対向面積を大きくすることによっても、電極間に大きな静電力を発生させやすくなる。半導体基板(たとえば、シリコン基板)を電極として機能させるために、半導体基板に添加する不純物の量(たとえば、ドーズ量)によって半導体基板の導電性を調整してもよい。
上記の実施の形態1では、固定電極61,62が接地され、可動電極51,52に正電位が印加される例を示したが、逆に、固定電極61,62に正電位が印加され、可動電極51,52が接地されるようにしてもよい。
上記実施の形態1に係る光走査装置100では、ミラー部5、可動電極51,52、及び固定電極61,62が、ミラー部5の回転軸に関して線対称な構造を有する。こうした対称構造により、外乱となる力が相殺されて、光走査装置100の動作を安定させることができる。しかし、光走査装置においてミラー部、可動電極、及び固定電極の構造に対称性を持たせることは必須ではない。また、ミラーの形状は、矩形状に限られず、たとえば円形状であってもよい。
上記実施の形態1に係る光走査装置100では、2本の梁11,12を採用している(図2〜図6参照)。しかし、梁の位置、形状、及び数は、図2〜図6に示した例に限られず、適宜変更可能である。
上記実施の形態1に係る光走査装置100では、磁石2a,2b及び駆動配線53を、ミラーアクチュエータとして採用している。磁石2a,2bは、ミラー部5の回転軸と直交する方向に磁界が印加されるように配置されている(図8参照)。また、駆動配線53は、ミラー部5の外縁部を1周するように配置されている(図8参照)。しかし、磁石及び駆動配線によってミラーの回転力を生じさせる形態は、図8に示した形態に限られず、別の形態であってもよい。たとえば、磁石による磁界の方向、磁石の配置、及び磁石の種類を変更してもよい。磁石は、永久磁石に限られず、電磁石であってもよい。また、駆動配線の位置、形状、及び周回数も、適宜変更可能である。駆動配線の周回数を2周以上にしてもよい。
ミラーアクチュエータは、電磁力を利用するものには限られない。たとえば、静電力を利用してミラーに回転力を生じさせるミラーアクチュエータも採用可能である。また、圧電膜の変形を利用してミラーに回転力を生じさせるミラーアクチュエータも採用可能である。
上記実施の形態1に係る光走査装置100では、ピエゾ抵抗素子91,92,93,94が梁11,12の根元(支持部材4a,4b側)に配置されている(図3参照)。しかし、各ピエゾ抵抗素子の位置は、図3に示した位置に限られず、ミラー部5(ミラー10を含む)の姿勢に応じた応力変化を検出可能な他の位置に配置されてもよい。また、ピエゾ抵抗素子の数も適宜変更可能である。
ミラー10の姿勢(回転角度)を検出する方式は、上記ピエゾ抵抗素子を用いた方式に限られず任意である。たとえば、MEMSミラー1の外に、ミラー10で反射された光ビームの光軸の方向を検出する光検出器を設けてもよい。制御装置3は、この光検出器により検出された光軸の方向に基づいてミラー10の姿勢(回転角度)を推定してもよい。
上記実施の形態1に係る光走査装置100では、可動電極51,52と固定電極61,62との間に電圧が印加されたときに発生する静電力を利用してミラー10に力を加えることにより、ミラー10の軸X1まわりの共振周波数を変化させる調整機構を採用している。しかしこれに限られず、調整機構は、静電力以外の方法でミラー10に力を加えてもよい。
図26は、図3に示した調整機構の変形例を示す図である。図27は、図26中のXXVII−XXVII線に沿った断面構造を示す図である。図26及び図27を参照して、この例では、図3に示した固定部材6a,6bの代わりに、梁80a〜80d及び圧電構造体8a〜8dを採用している。梁80a及び80bは、梁11の両脇に配置され、梁11と同様、ミラー部5及び支持部材4aの各々と接続されている。梁80c及び80dは、梁12の両脇に配置され、梁12と同様、ミラー部5及び支持部材4bの各々と接続されている。圧電構造体8a〜8dは、それぞれ梁80a〜80d上に配置されている。圧電構造体8a〜8dは、基本的には同じ構造を有する。また、梁80a〜80dも、基本的には同じ構造を有する。このため、以下では、区別して説明する場合を除いて、圧電構造体8a〜8dの各々を「圧電構造体8」と記載し、梁80a〜80dの各々を「梁80」と記載する。
図28は、圧電構造体8の詳細構造を示す図である。図28を参照して、圧電構造体8は梁80上に形成されている。梁80は、たとえばシリコンで形成されている。圧電構造体8は、梁80側から、絶縁層81、電極層82、圧電層83、電極層84の順に積層された積層構造を有する。絶縁層81は、たとえば酸化シリコン層又は窒化シリコン層で形成されている。電極層82及び84の各々は、たとえば金属膜で形成されている。圧電層83は、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で形成されている。電極層82と電極層84とは、互いに電気的に絶縁されており、これら電極層間に電圧を印加可能に構成される。電極層82と電極層84との間に電圧が印加されることによりZ軸方向の電界が圧電層83に印加される。この電界により、圧電層83はX軸方向に伸縮する力を発生する。たとえば、電極層82を負、電極層84を正とする電圧を電極層間に印加すると、圧電層83はX軸方向に収縮する力を発生する。こうした力は、ミラー10のX1回転に対する復元力を強めるように作用する。復元力の大きさは、電極層間の電圧に応じて変化する。このため、制御装置3(図1)は、電極層間の電圧に基づいてミラー10の軸X1まわりの共振周波数を調整できる。なお、図26に示す例では、圧電構造体8a〜8dがそれぞれ梁80a〜80d上に配置されているが、圧電構造体8の位置及び数は変更可能である。たとえば、圧電構造体8が梁11,12上に配置されてもよい。
上記実施の形態1に係る光走査装置100において採用される調整機構は、ミラー10の回転変位に伴って生じる機械的な復元力と同じ向きの力をミラー10に加えるように構成される。しかしこれに限られず、上記復元力と逆向きの力をミラー10に加える調整機構を採用してもよい。こうした調整機構によれば、ミラー10に力を加えることにより梁11,12をやわらかくしてミラー10のX1回転に対するばね定数を小さくすることが可能になる。
ミラーの駆動信号の波形は、鋸歯状波形に限られず、適宜変更可能である。ミラーの駆動信号の波形は、鋸歯状波形ではなく、三角波であってもよい。
上記の実施の形態1では、1つの制御装置3(単一のユニット)が、ミラーアクチュエータ及び調整機構の両方を制御するように構成されるが、ミラーアクチュエータを制御する制御装置と調整機構を制御する制御装置とは、別々のユニットであってもよい。
実施の形態2.
実施の形態1では、ミラー10の回転軸が1軸(X軸)であり、光走査装置100は1軸方向に光走査を行なうように構成されている。実施の形態2では、ミラー10の回転軸を2軸(X軸及びY軸)にして、2軸方向の光走査を可能にする。以下では、実施の形態1に係る光走査装置との相違点を中心に、実施の形態2に係る光走査装置について説明する。
実施の形態2に係る光走査装置は、図3に示したMEMSミラー1の代わりに、以下に説明するMEMSミラー1Aを備える。図29は、実施の形態2に係る光走査装置が備えるMEMSミラー1Aの上面構造を示す図である。図30は、図29中のXXX−XXX線に沿った断面構造を示す図である。
図29及び図30を参照して、MEMSミラー1Aは、ミラー部5と基材7aとの間に、中間フレーム20を備える。基材7cは、中間フレーム20の下方に位置する矩形状の枠体であり、ミラー部5の下方に位置する基材7bを囲むように配置されている。基材7bと基材7cとの間には隙間が設けられている。また、基材7aと基材7cとの間にも隙間が設けられている。
中間フレーム20は、基材7c上に絶縁層55を介して設けられた矩形状の枠体である。中間フレーム20の−X側の端は梁11Bを介して支持部材4aにつながっており、中間フレーム20の+X側の端は梁12Bを介して支持部材4bにつながっている。図29中の軸X2は、X軸に平行な軸であり、中間フレーム20の回転軸の位置を示している。梁11B及び梁12Bの各々は軸X2に沿って形成されている。中間フレーム20は、軸X2まわりに回転可能に構成される。梁11B及び梁12Bの各々が軸X2まわりにねじれることによって、中間フレーム20の軸X2まわりの回転(以下、「X2回転」とも称する)が可能になる。
中間フレーム20の+Y側の側面には櫛歯状の可動電極51Bが設けられており、中間フレーム20の−Y側の側面には櫛歯状の可動電極52Bが設けられている。可動電極51Bの各櫛歯電極は、固定部材6aに支持される固定電極61の各櫛歯電極と対向している。可動電極52Bの各櫛歯電極は、固定部材6bに支持される固定電極62の各櫛歯電極と対向している。
ミラー部5は、中間フレーム20の内側に配置されている。ミラー部5の+Y側の端は梁11Aを介して中間フレーム20につながっており、ミラー部5の−Y側の端は梁12Aを介して中間フレーム20につながっている。図29中の軸Y2は、Y軸に平行な軸であり、ミラー部5の回転軸の位置を示している。梁11A及び梁12Aの各々は軸Y2に沿って形成されている。ミラー部5は、軸Y2まわりに回転可能に構成される。梁11A及び梁12Aの各々が軸Y2まわりにねじれることによって、ミラー部5の軸Y2まわりの回転(以下、「Y2回転」とも称する)が可能になる。
支持部材4aと梁11Bとの境界部には、ピエゾ抵抗素子91B及び92Bが設けられている。支持部材4bと梁12Bとの境界部には、ピエゾ抵抗素子93B及び94Bが設けられている。ピエゾ抵抗素子91B,92B,93B,94Bは、中間フレーム20の軸X2まわりの回転位置(以下、「フレームX回転角度」とも称する)を検出するために使用される。検出方法は、実施の形態1と同様である。制御装置3(図1)は、ピエゾ抵抗素子91B,92B,93B,94Bの出力に基づいてフレームX回転角度を取得するように構成される。
中間フレーム20と梁11Aとの境界部には、ピエゾ抵抗素子91A及び92Aが設けられている。中間フレーム20と梁12Aとの境界部には、ピエゾ抵抗素子93A及び94Aが設けられている。ピエゾ抵抗素子91A,92A,93A,94Aは、ミラー部5の軸Y2まわりの回転位置(以下、「ミラーY回転角度」とも称する)を検出するために使用される。検出方法は、実施の形態1と同様である。制御装置3(図1)は、ピエゾ抵抗素子91A,92A,93A,94Aの出力に基づいてミラーY回転角度を取得するように構成される。
MEMSミラー1Aは、図29に示されるように、軸X2及び軸Y2の各々に関して線対称な構造を有する。軸X2まわりの回転に対しては中間フレーム20とミラー部5(ミラー10を含む)とが一体的に姿勢を変える。このため、上述した中間フレーム20のX2回転と連動してミラー部5も軸X2まわりに回転する。中間フレーム20のX2回転とミラー部5のY2回転とによって、ミラー10は軸X2まわり及び軸Y2まわりの両方に回転可能になる。ミラー10は基材7aに対して相対的に回転する。フレームX回転角度は、ミラー10の軸X2まわりの回転角度に相当し、ミラーY回転角度は、ミラー10の軸Y2まわりの回転角度に相当する。
駆動配線53Bは、支持部材4a、梁11B、及び中間フレーム20の上に設けられている。ただし、支持部材4a、梁11B、及び中間フレーム20の各々と駆動配線53Bとの間には、絶縁膜54が配置されている。電極パッド56B、57Bは、それぞれ支持部材4aの+Y側、−Y側の端部に設けられ、駆動配線53Bの両端に位置する。駆動配線53Bは、支持部材4aから梁11Bを渡って中間フレーム20に至り、中間フレーム20の外縁部を1周し、再び梁11Bを渡って支持部材4aに戻る。電極パッド56Bと電極パッド57Bとの間に電圧を印加することによって駆動配線53Bに電流が流れる。
駆動配線53Aは、支持部材4a、梁11B、中間フレーム20、及び基材50の上に設けられている。ただし、支持部材4a、梁11B、中間フレーム20、及び基材50の各々と駆動配線53Aとの間には、絶縁膜54が配置されている。電極パッド56A、57Aは、それぞれ支持部材4aの+Y側、−Y側の端部に設けられ、駆動配線53Aの両端に位置する。駆動配線53Aは、支持部材4aから梁11Bを渡って中間フレーム20に至り、中間フレーム20から梁12Aを渡ってミラー部5に至る。そして、駆動配線53Aは、ミラー部5の外縁部(ミラー10の周囲)を1周し、再び梁12A,11Bを渡って支持部材4aに戻る。電極パッド56Aと電極パッド57Aとの間に電圧を印加することによって駆動配線53Aに電流が流れる。
この実施の形態2では、磁石2a,2b(図1)の配置を、実施の形態1とは異なる配置に変更している。図31は、実施の形態2に係る光走査装置における磁石2a,2bの配置を説明するための図である。図31を参照して、磁石2a,2bは、MEMSミラー1Aに対してX軸方向の成分とY軸方向の成分との両方を含む磁界を印加するように配置されている。磁界の磁束密度Bの向きは、磁石2aから磁石2bへの向き(−Y/+Xの向き)である。
図29〜図31を参照して、この実施の形態2では、駆動配線53Aと駆動配線53Bとは、互いに電気的に接続されておらず、個別の駆動信号によって駆動配線53Aと駆動配線53Bとに別々に電流を流すことができる。MEMSミラー1Aには、図31に示されるような磁界が印加されているため、制御装置3(図1)は、駆動配線53Bに流す駆動電流信号(以下、「第1駆動電流信号」とも称する)と、駆動配線53Aに流す駆動電流信号(以下、「第2駆動電流信号」とも称する)とによって、ミラー10のX2回転及びY2回転を制御することができる。この実施の形態2では、駆動配線53B及び磁石2a,2bが、ミラー10を軸X2(第1回転軸)まわりに回転させる第1ミラーアクチュエータとして機能する。第1駆動電流信号は、「第1ミラーアクチュエータを制御するための第1波形信号」の一例に相当する。また、駆動配線53A及び磁石2a,2bが、ミラー10を軸Y2(第2回転軸)まわりに回転させる第2ミラーアクチュエータとして機能する。第2駆動電流信号は、「第2ミラーアクチュエータを制御するための第2波形信号」の一例に相当する。各ミラーアクチュエータの駆動原理は、基本的には、実施の形態1に係るミラーアクチュエータと同じである。
MEMSミラー1Aに入射した光ビームは、ミラー10で反射された後、光走査装置から出射される。制御装置3(図1)は、第1駆動電流信号及び第2駆動電流信号によってミラー10のX2回転及びY2回転を制御することにより、光ビームの出射方向を制御することができる。こうした制御により、2次元方向の光走査が可能になる。以下、X2回転による光走査を「X軸走査」、Y2回転による光走査を「Y軸走査」と称する。
第1駆動電流信号は、実施の形態1に係る駆動電流信号と同様、鋸歯状波形の電流信号である。制御装置3(図1)は、ミラー10の軸X2まわりの共振周波数(以下、「X2共振周波数」とも称する)を制御するための電圧信号(以下、「第1調整信号」とも称する)を、可動電極51B,52Bと固定電極61,62との間に印加する。制御装置3(図1)は、上記の第1調整信号によって、第1駆動電流信号に含まれる周波数成分からミラー10のX2共振周波数が離れるようにミラー10のX2共振周波数を制御する。制御装置3(図1)は、たとえば、ミラー10のX2共振周波数と、このX2共振周波数に最も近い第1駆動電流信号の周波数成分との差が目標値(又は、基準値以上)となるようにミラー10のX2共振周波数を制御する。なお、調整信号を用いた共振周波数の制御については、実施の形態1において既述であるため、詳細は割愛する。
一方、第2駆動電流信号は、ミラー10の軸Y2まわりの共振周波数(以下、「Y2共振周波数」とも称する)に近い周波数の正弦波電流信号である。こうした第2駆動電流信号を採用した場合には、ミラー10の動作が共振現象の影響を受けやすくなり、Y2回転変位の振幅を大きくすることができる。
上記のように、ミラー10のX2回転に関しては、制御装置3(図1)が、第1調整信号を用いて共振現象によるミラー10の不安定動作(たとえば、リンギング)を抑制する。これにより、安定したX軸走査が可能になる。一方、Y軸走査では、共振現象を積極的に利用することで、高速走査によって広範囲の走査が可能になる。
制御装置3(図1)は、2軸方向の走査を互いに同期させるために、Y軸走査の駆動周波数fdy(すなわち、第2駆動電流信号に含まれる基本波の周波数)に基づいて、X軸走査の駆動周波数fdx(すなわち、第1駆動電流信号に含まれる基本波の周波数)を決定してもよい。制御装置3は、たとえば下記式(13)に従ってX軸走査の駆動周波数(fdx)を決定してもよい。
fdx=(p/q)×fdy …(13)
式(13)中の「p」及び「q」の各々は、任意に設定可能である。たとえば予め実験又はシミュレーションによって求められた適切な自然数がp,qに設定される。
この実施の形態2に係る光走査装置は、ミラー10に力を加えてミラー10の軸X2まわりの共振周波数を変化させる第1調整機構を備える。具体的には、可動電極51B,52B及び固定電極61,62が、「第1調整機構」として機能する。制御装置3(図1)は、第1調整機構を制御することにより、第1駆動電流信号に含まれる周波数成分からミラー10のX2共振周波数が離れるようにミラー10のX2共振周波数を制御する。こうした制御によって、前述した実施の形態1に準ずる効果が奏される。
上記実施の形態2に係る光走査装置は、X軸走査に関する調整機構(第1調整機構)のみを備え、Y軸走査に関する調整機構は備えない。しかしこれに限られず、図29及び図30に示した構造に対して、Y軸走査に関する調整機構を追加してもよい。
図32は、図29に示したMEMSミラーの構造の変形例を示す図である。図33は、図32中のXXXIII−XXXIII線に沿った断面構造を示す図である。図32及び図33を参照して、MEMSミラー1Bにおいては、ミラー部5の−X側の側面に櫛歯状の可動電極51Aが設けられており、ミラー部5の+X側の側面に櫛歯状の可動電極52Aが設けられている。可動電極51A,52Aは、ミラー10、梁11A,12A、中間フレーム20、梁11B,12B、及び支持部材4a,4bの各々と電気的に接続されており、これらと電気的に等電位である。また、可動電極51Aの各櫛歯電極と対向するように櫛歯状の固定電極61Aが設けられており、可動電極52Aの各櫛歯電極と対向するように櫛歯状の固定電極62Aが設けられている。固定電極61A,62Aは、中間フレーム20とともに、基材7c上に絶縁層55を介して設けられている。固定電極61A,62Aと中間フレーム20との間には隙間が設けられており、固定電極61A,62Aと中間フレーム20とは、絶縁層55によって電気的に絶縁されている。ただし、固定電極61Aと固定電極62Aとは、図示しない配線によって互いに電気的に接続されており、電気的に等電位である。ミラー部5のY2回転による力は、梁11A及び12Aの各々の弾性変形によって吸収されるため、中間フレーム20及び固定電極61A,62Aの各々はミラー10のY2回転とは連動しない。
この変形例では、第1駆動電流信号及び第2駆動電流信号の各々が、鋸歯状波形の電流信号である。MEMSミラー1Bは、前述の第1調整機構に加えて、ミラー10に力を加えてミラー10の軸Y2まわりの共振周波数を変化させる第2調整機構を備える。具体的には、可動電極51A,52A及び固定電極61A,62Aが、「第2調整機構」として機能する。制御装置3(図1)は、以下に説明するように第1調整機構及び第2調整機構を制御する。
制御装置3は、可動電極51B,52Bと固定電極61,62との間に前述の第1調整信号を印加することにより、第1駆動電流信号に含まれる周波数成分からミラー10のX2共振周波数が離れるようにミラー10のX2共振周波数を制御する。また、制御装置3は、ミラー10のY2共振周波数を制御するための電圧信号(以下、「第2調整信号」とも称する)を、可動電極51A,52Aと固定電極61A,62Aとの間に印加することにより、第2駆動電流信号に含まれる周波数成分からミラー10のY2共振周波数が離れるようにミラー10のY2共振周波数を制御する。なお、調整信号を用いた共振周波数の制御については、実施の形態1において既述であるため、詳細は割愛する。
上記のような制御により、X軸走査及びY軸走査の両方に関して、共振現象によるミラー10の不安定動作(たとえば、リンギング)を抑制することが可能になる。これにより、安定したX軸走査及びY軸走査が可能になる。
実施の形態3.
上述した光走査装置によって測距装置を構成してもよい。実施の形態3に係る測距装置が備える光走査装置(後述する光走査装置200)は、上記実施の形態2に係る光走査装置(図29〜図31参照)である。
図34は、実施の形態3に係る測距装置を示す図である。図34を参照して、測距装置300は、筐体305を有し、筐体305内に、光ビームを出射する光源301と、光ビームを偏向する光走査装置200と、光検出器303とを備える。そして、測距装置300は、光走査装置200により偏向された光ビームを物体に照射し、物体で反射された光の少なくとも一部を光検出器303によって検出するように構成される。測距装置300は、情報処理装置3Aをさらに備える。情報処理装置3Aは、光源301から出射される光ビームに関する情報と、光検出器303による検出結果とを用いて、距離画像を形成するように構成される。距離画像は、物体との距離を画素ごとに示す画像である。情報処理装置3Aは、図示しない表示装置に距離画像を表示させてもよい。測距方式は、TOF(Time Of Flight)方式であってもよい。測距装置300は、装置周辺の距離画像を取得することができる。
情報処理装置3Aは、光走査装置200を制御するように構成されてもよい。情報処理装置3Aは、実施の形態2に係る制御装置3(図1)と同様の機能を有してもよい。情報処理装置3Aとしては、プロセッサ、RAM、及び記憶装置を備えるマイクロコンピュータを採用できる。上記の記憶装置には、プログラムと、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)とが記憶されていてもよい。画像処理回路が情報処理装置3Aに搭載されていてもよい。
光源301は、光走査装置200のMEMSミラーに光ビームを照射するように構成される。光源301としては、たとえばレーザ光源を採用できる。光源301が出射する光ビームの波長は任意であり、可視域であってもよいし、赤外域であってもよい。この実施の形態3では、波長870nm〜1500nmのレーザ光を出射するレーザ光源を、光源301として採用する。図34には、1つの光源301のみを示しているが、測距装置300が備える光源の数は任意であり、測距装置300は複数の光源を備えてもよい。
筐体305には、光源301から出射される光ビームと、物体で反射された光ビームとが透過する窓306が設けられている。筐体305内において、光源301と光走査装置200のMEMSミラーとの間には、ビームスプリッタ302が設けられている。
光源301から出射された光ビームは、線L1で示すように、ビームスプリッタ302を通過し、光走査装置200により偏向される。光走査装置200においては、駆動信号によって駆動されるミラー(反射膜)で光ビームが反射される。そして、反射された光ビームは、窓306を透過し、筐体305外の物体(より特定的には、光走査装置200の走査範囲内にある物体)に照射される。
筐体305外の上記物体で反射された光ビームは、窓306を通じて筐体305内に入射する。光検出器303は、こうした光ビームを検出可能な位置に配置される。光検出器303としては、たとえばアバランシェフォトダイオード(APD)を採用できる。物体で反射された光は、線L2で示すように、窓306から取り込まれ、光走査装置200のMEMSミラーでビームスプリッタ302の方へ反射され、さらにビームスプリッタ302の反射面で光検出器303の方へ反射される。このように、物体で反射された光は、窓306、光走査装置200、及びビームスプリッタ302を経て、光検出器303に入射する。
情報処理装置3Aは、出射光に関する情報を光源301から取得し、入射光に関する情報を光検出器303から取得する。情報処理装置3Aは、出射光と入射光とを比較することで、上記物体までの距離を測定することができる。たとえば、パルス状の光ビームを物体に照射すると、物体からもパルス状の反射光が得られる。情報処理装置3Aは、出射光のパルスと反射光のパルスとの時間差により物体までの距離を算出できる。光走査装置200は2次元的に光ビームを走査するため、情報処理装置3Aは、上記の距離情報と、光ビームの走査方向に関する情報とに基づいて、装置周辺の2次元的な距離画像を取得することができる。
測距装置300は、LiDAR(Light Detection and Ranging)として機能してもよい。測距装置300は、車両に搭載されてもよい。測距装置300は、コネクテッドカーに搭載され、運転支援制御又は自動運転制御における障害物検知に用いられてもよい。
以上説明した実施の形態3に係る測距装置300では、前述した実施の形態2に係る光走査装置が、光走査装置200として採用されている。このため、実施の形態3によっても、前述した実施の形態2に準ずる効果が奏される。実施の形態3に係る測距装置300では、光走査装置200からの出射光のリンギングが抑制されるため、物体の位置及び形を正確に検出しやすくなり、ひずみの少ない距離画像が得られる。
実施の形態3に係る測距装置300では、物体からの反射光(線L2)が出射光(線L1)と同じ光学系を経由して光検出器303に導かれているが、筐体305内の光学系及び光の経路は適宜変更可能である。図35は、図34に示した測距装置の変形例を示す図である。図35を参照して、測距装置300Aの筐体305には、光源301から出射される光ビーム(線L1)が透過する窓306Aと、物体で反射された光ビーム(線L2)が透過する窓306Bとが、別々に設けられている。また、測距装置300Aにおいては、ビームスプリッタが割愛されている。光源301から出射された光ビームは、線L1で示すように、光走査装置200により偏向され、窓306Aを透過し、筐体305外の物体に照射される。物体で反射された光は、線L2で示すように、窓306Bから取り込まれ、光検出器303に入射する。こうした測距装置300Aにおいても、情報処理装置3Aは、出射光と反射光とを比較することで物体までの距離を算出できる。情報処理装置3Aは、装置周辺の距離画像を取得できる。
上記実施の形態3に係る測距装置300では、光走査装置200として、実施の形態2に係る光走査装置を採用したが、実施の形態2に係る光走査装置の代わりに、実施の形態1に係る光走査装置を採用してもよい。上述した実施の形態1及びその変形例に係る光走査装置と、実施の形態2及びその変形例に係る光走査装置とから任意に選ばれた光走査装置を、測距装置の光走査装置として適用してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。