JP6832579B2 - リン酸基含有重合性化合物を含む歯科用接着前処理材組成物 - Google Patents
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(A)一般式(1):
Xは、酸素原子、硫黄原子又は置換基を有していてもよい窒素原子を示す。
Yは、下記(Y1)又は(Y2)で表される基を示す。
n及びmは、1〜1000の整数を示す。
*は、結合部位を示す。]
で表されるリン酸基含有重合性化合物、
(B)無機フィラー、及び
(C)高粘度溶媒を含有する、歯科用接着前処理材組成物。
項2.
処理対象の濡れ性が向上する、項1に記載の歯科用接着前処理材組成物。
項3.
水の接触角が大きな材質の場合、該水の接触角を低減できる、項1又は2に記載の歯科用接着前処理材組成物。
項4.
上記(A)リン酸基含有重合性化合物が、水に可溶性である、項1〜3の何れか一項に記載の歯科用接着前処理材組成物。
項5.
さらに、(D)低粘度溶媒を含有する、項1〜4の何れか一項に記載の歯科用接着前処理材組成物。
項6.
さらに、(E)添加剤を含有する、項1〜5の何れか一項に記載の歯科用接着前処理材組成物。
項7.
上記(A)一般式(1)で表わされるリン酸基含有重合性化合物が、全組成物中、0.5〜40重量%である、項1〜6の何れか一項に記載の歯科用接着前処理材組成物。
項8.
エナメル質及び象牙質のエッチャント液である、項1〜7の何れか一項に記載の歯科用接着前処理材組成物。
項9.
(A)一般式(1):
Xは、酸素原子、硫黄原子又は置換基を有していてもよい窒素原子を示す。
Yは、下記(Y1)又は(Y2)で表される基を示す。
n及びmは、1〜1000の整数を示す。
*は、結合部位を示す。]
で表されるリン酸基含有重合性化合物、
(B)無機フィラー、及び
(C)高粘度溶媒を含有する歯科用組成物を、接着の前処理に使用する方法。
本発明の歯科用接着前処理材組成物(以下、「本発明の組成物」ということもある。)は、(A)一般式(1)で表されるリン酸基含有重合性化合物、(B)無機フィラー、及び(C)高粘度溶媒を含有している。
本発明の組成物は、一般式(1)で表されるリン酸基含有重合性化合物(以下、「(A)成分」ともいうこともある。)を含有する。
本明細書における「ハロゲン原子」としては、特に限定はなく、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
例えば、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物を反応させ、下記一般式(4)で表される化合物を得る工程(反応式1)
該一般式(4)で表される化合物とオキシ塩化リン(以下、「塩化ホスホリル」又は「POCl3」ともいう。)を反応させる工程;及び
加水分解工程を経ることにより、一般式(1)で表される化合物を製造することができる。
11−(メタ)アクリロイルオキシテトラエチレングリコールジハイドロジェンホスフェート(MTEGP)、
14−(メタ)アクリロイルオキシペンタエチレングリコールジハイドロジェンホスフェート(M5EGP)、
16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサエチレングリコールジハイドロジェンホスフェート(M6EGP)、
(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコール300ジハイドロジェンホスフェート(MPEG300P:ポリエチレングリコールユニットとして数平均分子量Mn=300である上記一般式(1)で示した構造を持つリン酸基含有重合性単量体を複数含有する混合物)、
(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコール400ジハイドロジェンホスフェート(MPEG400P:ポリエチレングリコールユニットとして数平均分子量Mn=400である上記一般式(1)で示した構造を持つリン酸重合性単量体を複数含有する混合物)、
(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコール600ジハイドロジェンホスフェート(MPEG600P:ポリエチレングリコールユニットとして数平均分子量Mn=600である上記一般式(1)で示した構造を持つリン酸重合性単量体を複数含有する混合物)、
(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコール800ジハイドロジェンホスフェート(MPEG800P:ポリエチレングリコールユニットとして数平均分子量Mn=800である上記一般式(1)で示した構造を持つリン酸重合性単量体を複数含有する混合物)、
(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコール1000ジハイドロジェンホスフェート(MPEG1000P:ポリエチレングリコールユニットとして数平均分子量Mn=1000である上記一般式(1)で示した構造を持つリン酸重合性単量体を複数含有する混合物)、
(メタ)アクリロイルオキシポリエチレングリコール2000ジハイドロジェンホスフェート(MPEG2000P:ポリエチレングリコールユニットとして数平均分子量Mn=2000である上記一般式(1)で示した構造を持つリン酸重合性単量体を複数含有する混合物)、
(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレングリコール400ジハイドロジェンホスフェート(MPPG400P:ポリプロピレングリコールユニットとして数平均分子量Mn=400である上記一般式(1)で示した構造を持つリン酸重合性単量体を複数含有する混合物)等が挙げられる。これらの中でも、歯質の良好な脱灰性、浸透性及び接着性を得る観点から、MTEGP、M5EGP、又はM6EGPが好ましく、特にMTEGPが好ましい。
本発明の組成物は、増粘剤として無機フィラー(以下、「(B)成分」、又は「無機フィラー(B)」ということもある。)を含有している。該無機フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物粒子、又はこれらからなる複合酸化物粒子、燐酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フッ化イットリウム、フッ化イッテルビウム等の球状もしくは不定形の無機フィラー等が挙げられる。
本発明の組成物は、高粘度溶媒(以下、「(C)成分」、又は「高粘度溶媒(C)」ということもある。)を含有している。
本発明の組成物は、さらに、低粘度溶媒(以下、「(D)成分」、又は「低粘度溶媒(D)」ということもある。)を含有することができる。該低粘度溶媒(D)とは、上記高粘度溶媒(C)よりも粘度が低い溶媒であれば特に限定はなく、例えば、20 mPa・s(20℃)未満の粘度である低粘度溶媒を用いることができる。
本発明の組成物は、上記(A)〜(D)成分以外にも、機能性を補うために、さらに、添加剤(E)(以下、「(E)成分」ともいう。)を含有することができる。
本発明の歯科用接着前処理材組成物は、処理対象の塗布面の濡れ性を向上させることができる。また、本発明の歯科用接着前処理材組成物は、水の接触角が大きな材質の場合、該水の接触角を低減できる。例えば、水との接触角が通常65〜75度の範囲の処理対象(被着物)表面を、本発明の歯科用接着前処理材組成物は60度未満とすることができ、その後適用する歯科用接着材と被着物表面の親和性向上に寄与することができる。
本発明の歯科用接着前処理材組成物は、適度な稠度を有しており、ペースト状であることから、幅広い場面において使用することができる。
[a1]MTEGP:
11−メタクリロイルオキシテトラエチレングリコールジハイドロジェンホスフェート(分子量342.28)
[a2]MPEG600P:
メタクリロイルオキシポリエチレングリコール600ジハイドロジェンホスフェート(分子量748.09)
[a3]MDP:
10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート342.00;
[比較成分]
リン酸(和光純薬社製)
[(B)成分]無機フィラー:
[b1]アエロジル(登録商標)OX50(一次平均粒子径:16 nm;日本アエロジル社製)
[(C)成分]高粘度溶媒:
[c1]グリセリン(粘度:1410 mPa・s(20℃);新日本理化社製)
[c2]PEG(分子量200,粘度:45〜65 mPa・s(20℃);和光純薬社製)
[比較成分]
ブタノール(粘度:3.0 mPa・s(20℃);シグマアルドリッチ社製)
[(D)成分]低粘度溶媒:
[d1]水(精製水、粘度:1.0 mPa・s;昭和製薬社製)
[d2]エタノール(粘度:1.2 mPa・s;日本アルコール社製)
[d3]アセトン(粘度:0.32 mPa・s;純正化学社製)
[(E)成分]添加剤:
[e1]青色1号(三栄源エフエフアイ社製)
参考例1:M−TEG-P
禁水条件下、室温にてオキシ塩化リン(1.00mol)のTHF(1.0L)溶液を−30℃に冷却した後、この溶液にテトラエチレングリコールモノメタクリレート(0.95 mol)、トリエチルアミン(0.99 mol)及びTHF(1.0 L)の混合溶液を滴下した。得られた溶液を0℃で1時間攪拌後、これに水を過剰量、トリエチルアミン(1.60mol)及びTHF(0.2 L)の混合溶液を滴下し、室温へ戻し一夜攪拌した。不溶物を吸引ろ過した後、ろ液を濃縮した。濃縮物に水(2.0 L)を加え、ジクロロメタン(1.5 L)で3回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水(1.0 L)、水(1.0 L)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム(300 g)上で3時間以上乾燥した。乾燥剤をろ別し、ろ液に重合禁止剤のMEHQ(100 mg)を添加し、濃縮した後、重合禁止剤のBHT(150 mg)を加えて、目的の(A)成分(淡黄色油状物114 g、収率41.7%、HPLCで確認した純度は95%以上)を得た。
1H NMR(CDCl3, Me4Si)σ 1.94(s, 3H),3.67(m, 12H),4.17(m, 2H),4.30(m, 2H),5.58(s, 1H),6.13(s, 1H),8.45(brs, 2H)。
31P NMR(CDCl3, Me4Si)σ 1.00。
オキシ塩化リンを153 g、テトラエチレングリコールモノメタクリレートを285 g、トリエチルアミンを合計263 g、及び水を46 g 用いることに代えた以外は参考例1に記載の方法に従って、M−PEG300-P(淡黄色油状物198 g、収率44%、HPLCで確認した純度は95%以上)を製造した。
[M−PEG300-P]
1H NMR(CDCl3, Me4Si)σ 1.94(s, 3H),3.60−3.74(m, 14H),4.29(t, 2H),5.57(s, 1H),6.13(s, 1H),8.40(brs, 2H)。
31P NMR(CDCl3, Me4Si)σ 1.00。
オキシ塩化リンを153 g、テトラエチレングリコールモノメタクリレートを570 g、トリエチルアミンを合計263 g、水を46 g 用いることに代えた以外は参考例1に記載の方法に従って、M−PEG600-P(淡黄色油状物288 g、収率38.4%、HPLCで確認した純度は95%以上)を製造した。
1H NMR(CDCl3, Me4Si)σ 1.95(s, 3H),3.49(brs, 2H),3.64−3.75(m, 42H),4.30(t, 2H),5.57(s, 1H),6.13(s, 1H)。
31P NMR(CDCl3, Me4Si)σ 1.04。
窒素雰囲気下、オキシ塩化リン55 gのジエチルエーテル溶液(100 ml)を−40℃に冷却した。この溶液にデカンジオールモノメタクリレート125 gとトリエチルアミン 37 gのジエチルエーテル溶液(100 ml)を同温でゆっくり滴下した。滴下終了後、反応溶液を−30℃に3時間保ち、その後0℃とした。次に、同温で水30 gを滴下後、トリエチルアミン 72.9 gのジエチルエーテル溶液を滴下した。滴下終了後、反応液を0℃に保ち、一晩静置した。析出したトリエチルアミン塩酸塩をガラスフィルターでろ過し、ろ液を塩化ナトリウム水溶液で3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ジエチルエーテルを減圧留去し、黄色液体が得られた。得られた黄色液体をn-ヘキサンで3回洗浄し、不純物を取り除いた。n-ヘキサンに不溶な粘稠性オイルからn-ヘキサンを減圧留去し、目的のMDP64.8 g (HPLCで確認した純度は59 %)が得られた。
1H NMR(CDCl3, Me4Si)σ 1.28(m,12H),1.64(m,4H),1.95(s,3H),3.96(m,2H),4.20(t,2H),5.54(s,1H),6.12(s,1H),6.20(brs,2H),
31P NMR(CDCl3, Me4Si)σ 0.61。
禁水条件下、室温にてオキシ塩化リン(1.00mol)のTHF(1.0L)溶液を−30℃に冷却した後、この溶液に2-ヒドロキシエチルモノチオメタクリレート(0.95 mol)、トリエチルアミン(0.99 mol)及びTHF(1.0 L)の混合溶液を滴下した。得られた溶液を0℃で1時間攪拌後、これに水を過剰量、トリエチルアミン(1.60mol)及びTHF(0.2 L)の混合溶液を滴下し、室温へ戻し一夜攪拌した。不溶物を吸引ろ過した後、ろ液を濃縮した。濃縮物に水(2.0 L)を加え、ジクロロメタン(1.5 L)で3回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水(1.0 L)、水(1.0 L)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム(300 g)上で3時間以上乾燥した。乾燥剤をろ別し、ろ液に重合禁止剤のMEHQ(100 mg)を添加し、濃縮した後、重合禁止剤のBHT(150 mg)を加えて、目的の(A)成分として淡黄色油状物(115.34g、51%)して得ることができる。
禁水条件下、室温にてオキシ塩化リン(0.50mol)のTHF(0.75L)溶液を−30℃に冷却した後、この溶液に2-ヒドロキシエチルアクリルアミド(0.45 mol)、トリエチルアミン(0.49 mol)及びTHF(0.75 L)の混合溶液を滴下した。得られた溶液を0℃で1時間攪拌後、これに水を過剰量、トリエチルアミン(0.80mol)及びTHF(0.15 L)の混合溶液を滴下し、室温へ戻し一夜攪拌した。不溶物を吸引ろ過した後、ろ液を濃縮した。濃縮物に水(0.30 L)を加え、クロロホルム(0.5 L)で3回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水(0.15 L)、水(0.30 L)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム(50 g)上で3時間以上乾燥した。乾燥剤をろ別し、ろ液に重合禁止剤のMEHQ(100 mg)を添加し、濃縮した後、重合禁止剤のBHT(30 mg)を加えて、目的の(A)成分として黄色油状物(26.01g、23%)して得ることができる。
実施例1
以下の表1に示す組成に従い、各成分を混合後、これらが均一になるまで攪拌して実施例1に係る歯科用接着前処理材組成物を製造した。なお、該組成物には、視認性を良くするために顔料として青色1号0.03重量%を加えた。
以下の表1〜5に記載の組成に基いて製造したこと以外は、実施例1と同様に、実施例2〜13及び比較例1〜4に係る各歯科用接着前処理材組成物を製造した。なお、表5の実施例12及び比較例3において、顔料である青色1号は加えていない。これらの歯科用接着前処理材組成物を以下のように評価した。
まず、屠殺後24時間以内に抜去した牛前歯を、流水下、P600の耐水研磨紙で研磨し、唇面と平行になるようにエナメル質平面及び象牙質平面を削り出した。次に、これらの面に圧縮空気を約10秒間吹き付けて乾燥させた後、これらの面に直径3 mmの円孔の開いた両面テープをそれぞれ固定し、接着面積を規定した。次に、直径5 mmの孔の開いた厚さ2.0 mmのシリコンゴム型を、該孔が上記両面テープの円孔と同一中心となる位置で両面テープ上に貼り付けて模擬窩洞を形成した。この模擬窩洞に実施例1〜17及び比較例1〜4に係る接着前処理材組成物を塗布し、エナメル質に対しては30秒間及び象牙質に対しては60秒間放置した後、約10秒間流水で洗浄し、歯科用接着材(製品名:グルーマセルフエッチ、製造販売元:ヘレウスクルツァー社)を塗布し、指定された方法に従い、塗布し放置後、圧縮空気にて所定時間乾燥させた。
規定された手順に従って円盤状に成型、焼結したジルコニア試験体(KZR−CADジルコニア;山本貴金属地金製)をP1000までの耐水研磨紙で、被接着面が一様になるまで流水下研磨を行った。超音波洗浄後に風乾し、実施例4、6,7,8,9と比較例1,2を塗布後に10秒間放置し、10秒間流水洗浄を行った。再度風乾した後、直径3 mmの円孔の開いた両面テープをそれぞれ固定し、接着面積を規定した。ここに歯科用レジンセメント(製品名:パナビアV5、製造販売元:クラレノリタケ)を可視光線照射器を用いて20秒間光照射して接着試験片を作製した。歯質の場合と同様に24時間、37℃の水中に浸漬させた後、引張り試験機(製品名:オートグラフ、製造販売元:島津製作所)を用いて、歯科用レジンセメントのJIS規格に則りクロスヘッドスピード0.75mm/minの条件で引張り試験を行った。
[(D)成分含有量の検討]
上記表1の結果から、本発明の歯科用接着前処理材組成物(実施例1〜5)は、エナメル質及び象牙質の何れに対しても同等に優れた脱灰能力を示し、接着力を補強することが明らかとなった。
上記表2の結果から、本発明の歯科用接着前処理材組成物(実施例4、6及び7)は、エナメル質及び象牙質の何れに対しても同等に優れた脱灰能力を示し、接着力を補強することが明らかとなった。一方、MTEGPを含まない組成物は、エナメル質に対しても象牙質に対しても、何れも接着強さが低下した。
また、本発明の歯科用接着前処理材組成物(実施例4、6及び7)は、ジルコニアに対して表面処理しても、エナメル質及び象牙質と同様に、材料の接着力が改善した。一方、MTEGPを含まない組成物は、ジルコニアに対しても接着強さが低下した。
上記表3の結果から、(A)成分が、上記の各種リン酸基含有重合性化合物である歯科用接着前処理材組成物(実施例4、8及び9)は、エナメル質及び象牙質の何れに対しても同等に優れた脱灰能力を示し、接着力を補強することが明らかとなった。
上記表4の結果から、(D)成分の溶媒として、水に代えて、エタノール、アセトン等の有機溶媒を用いた本発明の歯科用接着前処理材組成物(実施例10及び11)は、エナメル質及び象牙質の何れに対しても同等に優れた脱灰能力を示し、接着力を補強することが明らかとなった。
上記表5の結果から、(C)成分の高粘度溶媒として、グリセリンに代えて、PEGを用いた本発明の歯科用接着前処理材組成物(実施例12)は、エナメル質及び象牙質の何れに対しても同等に良好な脱灰能力を示し、接着力を補強することが明らかとなった。一方、(C)成分の増粘剤として、ブタノールを用いた歯科用接着前処理材組成物は、エナメル質に対して、ある程度の接着性を有していたものの、象牙質に対して、接着性が低下することが分かった。
また、本発明のうち、実施例7の歯科用接着前処理材組成物を用いて処理した後の歯表面をSEMで撮像し、その表面の状態を観察した。
本発明の歯科用接着前処理材組成物は、象牙質に対して既存のリン酸系エッチング材では不可能であった過度の脱灰が起こらずにスメア層及び/又はスメアプラグの選択的除去を達成していることが示され、この効果によりエナメル質にも象牙質にも同等に有効であった(図1参照)。
市販の人工唾液(製品名:サリベート、製造販売元:帝人ファーマ)に牛血清アルブミン(製造販売元:シグマアルドリッチ)を濃度2000 mg/lまで溶かし、一般的な唾液相等のタンパク質濃度となるよう調整して疑似人工唾液を作製した。ポリメタクリル酸(赤着色)の試験体の表面に、6〜8 mgの水滴を垂らし、その水滴と試験体がなす角度を接触角として測定した。また、疑似人工唾液を試験体表面全体に塗布し、エアブローした表面(疑似人工唾液汚染後)、さらに蒸留水にて洗浄しエアブローにて乾燥した表面(水洗後)、下記表6に示す組成の各歯科用接着前処理材組成物を塗布、水洗、乾燥した表面(実施例・比較例適用後)にて、同様の試験を行った。
表7の結果から、本発明の歯科用接着前処理材組成物(実施例4)は、水の接触角が、比較例1の組成物に比べて低減した。つまり、M-TEG-Pの有無で適用表面の濡れ性(接触角)に大きな違いを生じることが示され、適用表面の濡れ性がM-TEG-Pにより向上することを確認した。
一方、リン酸を加えた場合の比較例3の組成物は、濡れ性の効果は得られなかった。
1cmおきに線が書かれたプラスチックトレー上に(図3及び4)、下記表9に記載の組成の各試料0.25 g採取し、傾き30°の板上に1分間保持した。その結果、各試料が垂れた長さで稠度を判定した。
[判定]
○:垂れた試料の長さが5.0cm未満である。
×:垂れた試料の長さが5.0cm以上である。
表8の結果から、本発明の歯科用接着前処理材組成物(実施例1、4、6及び7)は、適度な稠度を有しており、ペースト状であることから、幅広い場面において使用できることがわかった。
一方、比較例1及び4の組成物は、稠度の結果が悪く、前処理剤として使用しづらいことがわかった。
Claims (9)
- (A)一般式(1):
Xは、酸素原子、硫黄原子又は置換基若しくは水素原子を有する窒素原子を示す。
Yは、下記(Y1)又は(Y2)で表される基を示す。
n及びmは、1〜1000の整数を示す。
*は、結合部位を示す。]
で表されるリン酸基含有重合性化合物、
(B)無機フィラー、及び
(C)20mPa・s(20℃)以上の粘度を有する溶媒を含有する、歯科用接着前処理材組成物。 - 処理対象の濡れ性が向上する、請求項1に記載の歯科用接着前処理材組成物。
- 水の接触角が大きな材質の場合、該水の接触角を低減できる、請求項1又は2に記載の歯科用接着前処理材組成物。
- 上記(A)リン酸基含有重合性化合物が、水に可溶性である、請求項1〜3の何れか一項に記載の歯科用接着前処理材組成物。
- さらに、(D)20mPa・s(20℃)未満の粘度を有する溶媒を含有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の歯科用接着前処理材組成物。
- さらに、(E)添加剤を含有する、請求項1〜5の何れか一項に記載の歯科用接着前処理材組成物。
- 上記(A)一般式(1)で表わされるリン酸基含有重合性化合物が、全組成物中、0.5〜40重量%である、請求項1〜6の何れか一項に記載の歯科用接着前処理材組成物。
- エナメル質及び象牙質のエッチャント液である、請求項1〜7の何れか一項に記載の歯科用接着前処理材組成物。
- (A)一般式(1):
Xは、酸素原子、硫黄原子又は置換基若しくは水素原子を有する窒素原子を示す。
Yは、下記(Y1)又は(Y2)で表される基を示す。
n及びmは、1〜1000の整数を示す。
*は、結合部位を示す。]
で表されるリン酸基含有重合性化合物、
(B)無機フィラー、及び
(C)20mPa・s(20℃)以上の粘度を有する溶媒を含有する歯科用組成物を、貴金属、非貴金属、セラミック及び有機−無機複合材料からなる群から選択される少なくとも1種の歯科用材料に対する接着の前処理に使用する方法。
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