JP6829205B2 - 股関節及び大腿骨骨折手術に使用するための髄内固定装置及びシステム - Google Patents

Description

（関連出願の相互参照）
本出願は、２０１５年６月９日に米国特許商標局に提出された米国非仮特許出願第１４／７３５０６８号の利益を主張する。
（連邦後援の研究又は開発）
適用されず。
（マイクロフィッシュ補遺）
適用されず。

本明細書において開示する少なくともいくつかの実施形態は、概略的に、骨及び関節手術用の整形外科用インプラント装置及びシステムに関するものであり、より具体的には、股関節及び大腿骨の骨折を含む（但し、これに限定されない）いくつかのタイプの骨折用の髄内固定装置及びシステムに関する。

観血的整復固定（ＯＲＩＦ）は、骨折を修復するために使用される整形外科手術の１形式である。これは二部構成手術である。まず、破断した骨は整復される。即ち所定の場所へ戻される。次に、内部固定装置が、典型的には破断した骨を一緒に保持するためにスクリュー、プレート、ロッド、ピン又はネイルを用いて、骨の上または骨の中又はその両方に配置される。ダイナミックヒップスクリュー及びガンマネイルは、不安定な転子間及び転子下骨折（高齢の整形外科患者に一般的な骨折であるが、固定するのが困難であり、処理が難しい可能性がある）を治療するために現在入手できる２つの固定装置である。

１９８０年代に、おそらく最も一般的な固定方法は、ダイナミックヒップスクリューを使用した。典型的には、ダイナミックラグスクリュー（大腿骨頸部に挿入される）、サイドプレート及び複数の皮質スクリュー（近位又は遠位大腿骨幹部、又はその両方に固定される）を含む、ダイナミックヒップスクリューの３つの構成要素がある。この設計の裏に在る考えは、大腿骨頭部成分は１つの平面に沿って移動することが許容され（ダイナミックヒップスクリューは構成体に沿った大腿骨頭部成分の制御された動的滑動を許容する）、骨は動的応力に反応するので、生来の大腿骨は改造（remodeling）されて、骨折線の圧縮を介して骨折が適切に治癒できる、と言うことである。しかし、この技術の不利点は、プレートが股関節の支持線の外側に在るので、大腿骨の内側皮質の欠損は、不完全な整復、粉砕又は転移によるものか否かに関係なく、重量を受けるごとに内反応力が固定部に加えられ、それにより、大腿骨頭部からのスクリューの切離し又はネイル-プレート接合部又はプレートを骨に固定するスクリューの故障を生じる可能性があることを意味することである。

髄内装置Ｚｉｃｋｅｌネイルは、これらの問題のいくつかに対処したが、経験豊富な者にも技術的に挿入が困難であり、独自の問題も呈した。特に、問題は、大転子の土台の骨折の可能性が増大することであった。

ガンマネイル（Gamma Nail）も、半閉鎖式挿入のために開発された髄内固定設計である。ガンマネイルは、３つの主要成分を有する。即ち、大腿骨の上部幹部の髄腔を下へ通過する髄内ロッド（ネイル）、ロッドの近位部の孔を通過してそこから大腿骨頭部の中へ挿入されるラグスクリュー、及び主スクリューの回転を防止するセットスクリューである。ガンマネイル自体は、配置が多少困難であり、生体力学的実験の結果は、ラグスクリューの滑動能力はガンマネイルにおいて維持されるが、ダイナミックヒップスクリューの能力に比べると減少することを示唆した。これは、体格の大きい又は肥満体の患者においては特に問題になる可能性ある。このような患者の場合、転子にアクセスし、ラグスクリューを導入するための最適のアクセスポイントを見つけることが難しい可能性がある。更に、ラグスクリューによる偶発的骨折及び過貫入は、ガンマネイル設計に珍しくなく、骨折した骨の最適の圧迫レベルは、手術において必ずしも得られない。
他の髄内固定装置及びシステムは、ガンマネイルに従う。本出願にとって興味深いのは、例えば、国際公開特許第ＷＯ０２／０９８３３０Ａ２号（２００２年１２月１２日出願）ＨＯＦＦＭＡＮ Ｓ．Ｒ．Ｌ．において説明されるものである。ＨＯＦＦＭＡＮ Ｓ．Ｒ．Ｌ．は、髄内ネイルの近位ロックのための装置を開示する。この装置において、ラグスクリュー要素として作用する自己タッピング大腿骨頸部長手要素は、シースとして作用する「ベル」内に収容され、シースの一方の端はテーパー加工されている。この要素がベル内で回転するのを防止しながらラグスクリュー要素の並進を許容するように、自己タッピング大腿骨頸部長手要素の外面のスロットに係合するために、ピンが、ベルの内面から一体的に延びる。ピンを受け入れるためにベルを横切る口があるか否かは、説明がこれに言及しないので明らかではない。ラグスクリュー要素及びベルによって形成された構造体は、髄内ネイルを通過して挿入され、セットスクリューによって髄内ネイルに対してロックされる（ガンマネイル及び同様の装置及びシステムにおけるラグスクリューのように）。この設計は、ガンマネイル及び技術上既知の他の髄内ネイル装置及びシステムと同様、大腿骨頸部及び頭部へのラグスクリューの過貫入を防止するための機構を一切持たず、髄内ネイルに対してラグスクリュー及びベルの構造体が固定されることによって最適の圧迫を得ることは難題である可能性がある。

添付図面において図解する実施形態は、例であり、限定的ではなく、図面において、同様の参照符号は同様の要素を示す。

髄内ネイル、長手シース及びラグスクリューから成るダイナミックラグスクリュー構造体、及び固定手段としての外科用スクリューの斜視図である。 ラグスクリューが長手シースの中へ完全に挿入されているダイナミックラグスクリュー構造体の切取り図であり、ダイナミックラグスクリュー構造体を貫通して髄内ネイルを導入するためのダイナミックチャンネルを明らかにする。 大腿骨の斜視図であり、大腿骨頭部及び頸部は、ダイナミックラグスクリュー構造体を受け入れるためにリーマ加工され、ダイナミックラグスクリュー構造体の長手シースは挿入のための位置に在る。 その中へダイナミックラグスクリューの長手シースが挿入されている大腿骨の斜視図であり、ダイナミックラグスクリュー構造体のラグスクリューはシース内に挿入しその後大腿骨頸部及び頭部の中へ挿入するための位置に在る。 長手シースの上部口及び下部口をラグスクリューのスロットと整列させることによって作られたダイナミックチャンネルを介してダイナミックラグスクリュー構造体を貫通して髄内ネイルを配置するためにリーマ加工された大腿骨の斜視図である。 その中へ髄内ネイルがダイナミックラグスクリュー構造体を貫通して挿入されている大腿骨、及び大腿骨に対して所定の位置に髄内ネイルを固定するための固定手段として遠位に設置されるための位置に在る外科用スクリューの斜視図である。 大腿骨の斜視図であり、大腿骨の中へダイナミックラグスクリュー構造体を介して髄内ネイルが挿入されており、また大腿骨の中へ髄内ネイルの外側口を貫通して遠位に外科用スクリューが挿入されている。 ダイナミックラグスクリュー構造体を貫通して大腿骨の髄幹部の中へ挿入されている髄内ネイルの断面図であり、ラグスクリューの外リップが長手シースの内リップと係合し、かつ長手シースの外リムが大腿骨の外側皮質に係合することを明らかにする。

以下の説明および図面は、例示的なものであり、限定的なものとして解釈されるものではない。充分に理解できるように多数の具体的細部について説明する。但し、いくつかの実施例において、周知の又は従来の細部については、説明をあいまいにしないために説明しない。本明細書において「１つの実施形態」又は単に「実施形態」と言うとき、必ずしも同じ実施形態を指さず、このような言及は少なくとも１つの実施形態を意味する。

本明細書において「１つの実施形態」又は、単に「実施形態」と言うとき、その実施形態に関連して説明される特定の特徴部、構造体又は特徴が、開示の少なくとも１つの実施形態に含まれることを意味する。「１つの実施形態において」又は実質的に同様のフレーズが明細書において数か所に現れる場合、これは、必ずしも、全てが同じ実施形態を指すわけではなく、又別個の実施形態が相互に他の実施形態を排除するわけでもない。更に、いくつかの実施形態が提示するが他の実施形態が提示しないいくつかの特徴部について説明する場合がある。同様に、いくつかの実施形態についての要件であるが他の実施形態の要件ではない様々な要件について説明する。

図１に示すように、システムの実施形態は、髄内ネイル（髄内ロッド）１０１と、遠位端１１６及び近位端１１７において開放されかつ上部口１０９と下部口１１０とを持つ長手シース１０３を含むダイナミックラグスクリュー構造体１０２であって、更に長手シースの近位端の中へ挿入されるように構成された長手スロットを持つラグスクリュー１０４を含む、ダイナミックラグスクリュー構造体１０２と、を備え、更に、骨に対して適切な位置に髄内ネイル１０１を維持するように構成された外科用スクリュー、ボルト又は張り綱固定具（tightrope fixation）など技術上既知のいくつかの固定手段を持つことができる。限定的でなく例示として、１つの実施形態において、髄内ネイル１０１は、長骨に対して近位又は遠位又はその両方において髄内ネイルを貫通する１つ又はそれ以上の外側口１０５を持つことができ、各外側口１０５は、髄内ネイル１０１の中へ通過する又はこれを貫通するように構成された１本又はそれ以上の外科用スクリュー１０６を受け入れるように構成される。技術用既知のように、髄内ネイル１０１は、中実、半中実又は中空の芯を持つことができ、患者の大腿骨の前湾曲部に対処するために湾曲させることができ、所与の患者に適合するように可変的長さ並びに近位直径及び遠位直径を持つことができる。髄内ネイル１０１は、特に挿入を容易にするためにその遠位端１０７においてテーパー状とすることができ、その近位端１０８において技術上現在既知の案内装置またはこれに匹敵する器具を受け入れるように構成できる。

１つの実施形態において、ダイナミックラグスクリュー構造体１０２の長手シース１０３は、遠位端１１６及び近位端１１７において開放され、上部口１０９と下部口１１０とを持ち、前記上部口１０９と下部口１１０は、一緒に、髄内ネイル１０１を受け入れるように構成され、髄内ネイル１０１の少なくとも一部分が前記長手シース１０３を横切って貫通できるようにする。１つの実施形態において、長手シース１０３の遠位端（挿入端）１１６は、テーパー状とすることができ、その近位端１１７において外リム１１８を持ち、内リップ１１９を持つことができる。外リム１１８は、長手シース１０３を大腿骨の外側皮質を越えて挿入できないように構成できる。１つの実施形態において、長手シース１０３は、骨の中にリーマ加工された孔又はチャンネルを通過して骨の中へ押し込む又はタッピングできる。

１つの実施形態において、ラグスクリュー１０４は、その遠位端（挿入端）においてセルフタップ式ネジ山１１１を採用できる。１つの実施形態において、ラグスクリュー１０４は、その近位端においてドライブ１１２を持つことができる。このドライブ１１２は、ある形式の雌ネジ部１１３を含むか、又は自己保持スクリュードライバ又は技術上既知のこれに匹敵する器具を受け入れように構成されたその他の固定手段を含むことができる。１つの実施形態において、ラグスクリュー１０４は、髄内ネイル１０１を受け入れるように構成されて髄内ネイルの少なくとも一部分が前記ラグスクリュー１０４を貫通できるようにする、ラグスクリューの柄部分を貫通する長手スロット１１４を持つことができる。１つの実施形態において、ラグスクリュー１０４は、ラグスクリュー１０４が更に骨に貫入するのを防止するために、その近位端において、長手シース１０３の内リップ１１９に係合するように構成された外リップ１２０を持つことができる。

図２に示すように、１つの実施形態において、ラグスクリュー１０４は、長手シース１０３の近位端へ挿入でき、髄内ネイル１０１の少なくとも一部分は、前記長手シース１０３の上部口１０９及び下部口１１０の両方を挿入済みラグスクリュー１０４の柄部分１１５の長手スロット１１４と整列させることによって形成されたダイナミックチャンネル（ダイナミックチャンネルは、手術後前記髄内ネイル１０１に対して前記ラグスクリューを移動できるように構成される）を貫通して、大腿骨の髄幹部の中へ通過できる。このようなダイナミックラグスクリュー構造体１０２又はこれに匹敵する構造体は、髄内ネイル１０１に対して、したがってそれぞれ大腿骨幹部及び大腿骨頸部及び頭部に対して、３つの次元において即ち長手方向に、側方に、及び垂直に、ラグスクリュー１０４の位置を動的に調節できるように構成でき、手術後患者が関節で体重を支え始めるとき、骨折した骨を更に圧迫できるようにする。

１つの実施形態は、技術上現在知られている様々なタイプのステンレス鋼、チタン、チタン合金、生体分解性物質及びその他の適切な物質を単独で又は組み合わせて、構成できる。

必要な場合骨折治療台上で患者の近位大腿骨の骨折を整復し、骨折した近位大腿骨に蛍光透視鏡又は同様の案内装置またはシステムを配置した後、小さい（典型的には１インチ未満）の切開を骨折した近位大腿骨の外側に作り、骨折した近位大腿骨頭部において中央にかつ僅かに後方に、髄内ネイル１０１（例えば、Ｓｔｅｉｎｍａｎピン）を、リーマ加工して又は加工しないで、大腿骨頸部及び頭部へ患者の身体構造に適する深さまで挿入できる。髄内ネイル１０１は、その後、骨折した近位大腿骨幹部に対して髄内ネイル１０１が適切な角度を成すように、案内装置またはシステムの助けを借りて配置できる。その後、ラグスクリュー１０４が大腿骨頸部及び頭部へ挿入される所望の深さを測定できる。

図３及び図４に示すように、大腿骨３０３の頸部３０１及び頭部３０２は、２段階工程でリーマ加工できる。まず、骨折した近位大腿骨の外側皮質から骨折した近位大腿骨頭部の中央まで事前に測定されたラグスクリューのための所望の深さで、チャンネルを所望の角度でリーマ加工できる。次に、長手シース１０３を収容するためにほぼ同じ角度で、より広くより短いチャンネルをリーマ加工できる。次に、長手シースの外リムが骨折した近位大腿骨の外側皮質に到達するまで、長手シースを骨の中へ押し入れる又はタッピングできる。

図４及び５に示すように、次に、ラグスクリュー１０４（自己保持スクリュードライバ又はこれに匹敵する装置に取り付けておける）は、骨の中に埋め込まれた長手シース１０３の中へこれを貫通して挿入され、大腿骨の頸部及び頭部の中へかつ最初にリーマ加工されたより長くより狭いチャンネルの中へ挿入できる。図６に示すように、長手シース１０３の上部口１０９及び下部口１１０と、長手シースの中へ挿入されたラグスクリュー１０４のスロット１１４は、整列されて、その結果得られる髄内ネイル１０１を導入するためにダイナミックチャンネルは、大腿骨幹部の髄管と整列できる。蛍光透視鏡又はその他の案内装置又はシステムを使用して、転子を通過して大腿骨の構成体及び骨管の中へ配置できる。図６、７及び８に示すように、髄内ネイル１０１は、蛍光透視鏡又はその他の案内装置またはシステムを利用して、１本またはそれ以上の外科用スクリュー１０６で骨に固定できる。

以上の開示は、具体的な代表的実施形態を参照して説明される。したがって、明細書及び図面は、限定的ではなく例示として見なすべきである。

Claims (14)

1. 遠位端及び近位端において開放されかつ上部口と下部口とを持つ長手シースを含み、更に、ダイナミックチャンネルが前記上部口及び前記下部口が長手スロットと整列することによって形成されるように、前記長手シースの近位端へ挿入されるように構成された長手スロットを持つラグスクリューを含む、ダイナミックラグスクリュー構成体であって、前記ダイナミックチャンネルが、髄内ネイルの少なくとも一部分を受け入れて前記ダイナミックラグスクリュー構成体の前記ダイナミックチャンネルを横切って貫通させるように構成され、前記ダイナミックチャンネルが、更に、整形外科用固定装置の埋植後に前記髄内ネイルに対して前記ラグスクリューを移動できるように構成される、ダイナミックラグスクリュー構成体と、
   少なくともその一部分が、前記ダイナミックチャンネルを介して前記ダイナミックラグスクリュー構成体を横切って貫通するように構成される、前記髄内ネイルと、
   前記髄内ネイルを骨に対して適切な位置に維持するように構成された固定手段と、
   を備える、整形外科用固定装置。
2. 前記長手シースが、その遠位端においてテーパー状である、請求項１に記載の整形外科用固定装置。
3. 前記長手シースが、その近位端において外リムを有する、請求項１に記載の整形外科用固定装置。
4. 前記長手シースが、その近位端において内リップを有し、前記ラグスクリューが、前記ラグスクリューが前記長手シースの前記近位端へ挿入されたとき前記内リップに係合するように構成された外リップを有する、請求項１に記載の整形外科用固定装置。
5. 前記ラグスクリューが、自己保持スクリュードライバを受け入れるように構成された固定手段を持つドライブを有する、請求項１に記載の整形外科用固定装置。
6. 前記ラグスクリューが、その遠位端においてセルフタップ式ネジ山を有する、請求項１に記載の整形外科用固定装置。
7. 前記髄内ネイルが、前記髄内ネイルを横切って貫通する１つ又はそれ以上の外側口を有する、請求項１に記載の整形外科用固定装置。
8. 前記髄内ネイルが、その近位端において、案内装置を受け入れるように構成される、請求項１に記載の整形外科用固定装置。
9. 前記髄内ネイルが、その遠位端においてテーパー状である、請求項１に記載の整形外科用固定装置。
10. 前記髄内ネイルが中実である、請求項１に記載の整形外科用固定装置。
11. 前記シース、ラグスクリュー及び髄内ネイルがチタンで構成される、請求項１に記載の整形外科用固定装置。
12. 前記固定手段が１本又はそれ以上の外科用スクリューを備え、各スクリューが前記１つ又はそれ以上の外側口の１つ又はそれ以上を貫通するように構成される、請求項７に記載の整形外科用固定装置。
13. 前記１本又はそれ以上の外科用スクリューの少なくとも１本がセルフタップ式である、請求項１２に記載の整形外科用固定装置。
14. 前記少なくとも１本又はそれ以上の外科用スクリューの少なくとも１本がチタンで構成される、請求項１３に記載の整形外科用固定装置。

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