以下、本発明の流量制御弁の実施の形態を、油圧ショベルの油圧回路に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1ないし図4は、第1の実施の形態を示している。図1において、建設機械の代表例である油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部側に俯仰の動作が可能に設けられ掘削作業等を行う多関節構造の作業装置4とを含んで構成されている。この場合、下部走行体2と上部旋回体3は、油圧ショベル1の車体を構成している。
作業機またはフロントとも呼ばれる作業装置4は、例えば、ブーム5、アーム6、作業具としてのバケット7と、これらを駆動する油圧アクチュエータ(液圧アクチュエータ)としてのブームシリンダ8、アームシリンダ9、バケットシリンダ(作業具シリンダ)10とを含んで構成されている。作業装置4は、油圧ポンプ11からの圧油の供給に基づいて、油圧シリンダであるシリンダ8,9,10が伸長または縮小することにより、俯仰の動作をする。なお、図1では、図面が複雑になることを避けるために、主としてブームシリンダ8とアームシリンダ9に関する油圧回路を示している。
油圧ショベル1の上部旋回体3に搭載されたメインの油圧ポンプ11は、タンク12と共に油圧源を構成している。油圧ポンプ11は、例えば、ディーゼルエンジン等の原動機(図示せず)により回転駆動される。油圧ポンプ11は、タンク12内の作動油を吸込んでポンプ管路13およびセンタバイパス管路14に向けて圧油を吐出(供給)する。ポンプ管路13およびセンタバイパス管路14に吐出した圧油は、ブーム用方向制御弁16を介してブームシリンダ8に供給され、アーム用方向制御弁18を介してアームシリンダ9に供給される。また、ブーム用方向制御弁16およびアーム用方向制御弁18とタンク12との間には、例えばブームシリンダ8およびアームシリンダ9からの戻り油をタンク12側に還流させるためのタンク管路15が設けられている。
ここで、ポンプ管路13の途中には、分岐管路13A,13Bが設けられている。一方の分岐管路13Aは、後述の流量制御弁33を介してアーム用方向制御弁18の高圧側ポート(即ち、図2中に示す後述の出口側流路27)に接続されている。他方の分岐管路13Bは、後述するブーム用方向制御弁16の高圧側ポートに接続されている。なお、ポンプ管路13とタンク管路15は、別の分岐管路、別の方向制御弁(いずれも図示せず)等を介してバケットシリンダ10等にも接続されている。
ブームシリンダ8用の方向制御弁であるブーム用方向制御弁16(以下、ブーム用制御弁16という)は、左,右の油圧パイロット部16A,16Bを有しており、常時は中立位置(イ)に保持される。ブーム用制御弁16は、左,右の油圧パイロット部16A,16Bに対して、例えば油圧パイロット式の操作弁であるブーム用レバー操作装置(図示せず)からパイロット圧が供給されることにより、中立位置(イ)から切換位置(ロ),(ハ)に切換えられる。
一対のアクチュエータ管路17A,17Bは、ブームシリンダ8とブーム用制御弁16との間に設けられている。一方のアクチュエータ17Aは、ブームシリンダ8のボトム側油室(図示せず)をブーム用制御弁16の一方の圧油流出入ポートに接続するものである。他方のアクチュエータ管路17Bは、ブームシリンダ8のロッド側油室(図示せず)をブーム用制御弁16の他方の圧油流出入ポートに接続するものである。
アームシリンダ9用の方向制御弁であるアーム用方向制御弁18(以下、アーム用制御弁18という)は、左,右の油圧パイロット部18A,18Bを有しており、常時は中立位置(イ)に保持される。アーム用制御弁18は、左,右の油圧パイロット部18A,18Bに対して、例えば油圧パイロット式の操作弁であるアーム用レバー操作装置(図示せず)からパイロット圧が供給されることにより、中立位置(イ)から切換位置(ロ),(ハ)に切換えられる。
一対のアクチュエータ管路19A,19Bは、アームシリンダ9とアーム用制御弁18との間に設けられている。一方のアクチュエータ管路19Aは、アームシリンダ9のボトム側油室(図示せず)をアーム用制御弁18の一方の圧油流出入ポート(即ち、図2中に示す流出入通路28A)に接続するものである。他方のアクチュエータ管路19Bは、アームシリンダ9のロッド側油室(図示せず)をアーム用制御弁18の他方の圧油流出入ポート(即ち、図2中に示す流出入通路28B)に接続するものである。
アーム用制御弁18が中立位置(イ)から切換位置(ロ)に切換えられたときには、油圧ポンプ11からの圧油が分岐管路13A、後述の流量制御弁33、アーム用制御弁18、アクチュエータ管路19Aを介してアームシリンダ9のボトム側油室に供給され、ロッド側油室内の圧油はアクチュエータ管路19B、アーム用制御弁18、タンク管路15を介してタンク12に排出される。これにより、アームシリンダ9は、ボトム側油室に供給された圧油により伸長し、アーム6を下向きに俯動する。
アーム用制御弁18が中立位置(イ)から切換位置(ハ)に切換えられたときには、油圧ポンプ11からの圧油が分岐管路13A、流量制御弁33、アーム用制御弁18、アクチュエータ管路19Bを介してアームシリンダ9のロッド側油室に供給され、ボトム側油室内の圧油はアクチュエータ管路19A、アーム用制御弁18、タンク管路15を介してタンク12に排出される。これにより、アームシリンダ9は、ロッド側油室に供給された圧油により縮小し、アーム6を上向きに仰動する。
リリーフ弁20は、設定圧可変式のリリーフ弁である。リリーフ弁20は、ポンプ管路13およびセンタバイパス管路14とタンク管路15との間に設けられている。リリーフ弁20は、例えば、ポンプ管路13内の圧力が設定圧以上に上昇すると開弁し、このときの過剰圧をタンク管路15側にリリーフするものである。リリーフ弁20は、圧力設定用ばね20Aおよびパイロット油室20B等を有しており、外部からパイロット油室20Bに供給されるパイロット圧に従って圧力設定用ばね20Aの設定圧力が変化する。これにより、リリーフ弁20は、そのリリーフ設定圧が低圧設定と高圧設定との間で2段階または3段以上の多段階に調整可能な構成となっている。
制御弁装置21は、アーム用制御弁18と後述の流量制御弁33とを含んで構成されている。図2に示すように、制御弁装置21は、アーム用制御弁18と流量制御弁33とに共通した弁ケーシング22を有している。この場合、弁ケーシング22は、アーム用制御弁18のスプール29および流量制御弁33の主弁43を収容するハウジング23と、流量制御弁33の主弁43およびパイロット弁55を収容するパイロットハウジング36とを含んで構成されている。これらハウジング23とパイロットハウジング36は、それぞれ別部品として別々に形成されている。そして、ハウジング23にパイロットハウジング36を取付けることにより、一つの(一体または共通)ケーシングとなる弁ケーシング22を構成している。
次に、制御弁装置21のアーム用制御弁18について説明する。なお、図2では、中立位置(イ)の状態のアーム用制御弁18を示している。
アーム用制御弁18は、油圧ポンプ11からアームシリンダ9に供給される圧油の方向を制御するスプール弁装置である。アーム用制御弁18は、ハウジング23と、スプール摺動穴24と、入口側流路25と、出口側流路27と、一対の流出入通路28A,28Bと、スプール29と、左,右の蓋体30A,30Bと、ストッパ31と、ばね32とを含んで構成されている。ハウジング23は、パイロットハウジング36と共に制御弁装置21の弁ケーシング22を構成している。ハウジング23には、スプール摺動穴24、入口側流路25、出口側流路27、一対の流出入通路28A,28Bが形成されている。
スプール摺動穴24は、ハウジング23の左,右方向(図2の左,右方向、後述のスプール29が摺動する軸方向)に貫通して直線上に延びている。スプール摺動穴24の周壁側には、第1の環状油溝24A,24B、第2の環状油溝24C,24D、および、第3の環状油溝24E,24Fが形成されている。第1の環状油溝24A,24Bは、スプール摺動穴24の軸方向の中央側に、互いに左,右方向に離間して設けられている。第2の環状油溝24C,24Dは、第1の環状油溝24A,24Bよりもスプール摺動穴24の軸方向外側の位置に、互いに左,右方向に離間して設けられている。第3の環状油溝24E,24Fは、第2の環状油溝24C,24Dよりもスプール摺動穴24の軸方向外側の位置に、互いに左,右方向に離間して設けられている。
第1の環状油溝24A,24Bは、全体として逆U字状に形成された出口側流路27により互いに連通している。第1の環状油溝24A,24Bは、スプール29が図2に示す中立位置から左,右方向に変位したときに、第2の環状油溝24C,24Dに対して連通,遮断される。第2の環状油溝24C,24Dは、左,右の流出入通路28A,28Bを介して一対のアクチュエータ管路19A,19Bに常時連通している。第3の環状油溝24E,24Fは、各タンク管路15を介してタンク12に常時連通している。第3の環状油溝24E,24Fは、スプール29が図2に示す中立位置から左,右方向に変位したときに、第2の環状油溝24C,24Dに対して連通,遮断される。
入口側流路25は、スプール摺動穴24から径方向に離間した位置に設けられている。この場合、入口側流路25は、スプール摺動穴24と直交する方向(図2の表,裏方向)に沿って延びている。入口側流路25は、ポンプ管路13(より具体的には、分岐管路13A)を介して油圧ポンプ11と接続されている。出口側流路27は、入口側流路25と連通穴26の位置で交差しており、全体として逆U字状に延びている。出口側流路27は、互いに離間して設けられた第1の環状油溝24A,24Bを連通している。
連通穴26は、出口側流路27を挟んで後述の弁体摺動穴34と対向する位置に配置されている。連通穴26は、入口側流路25を出口側流路27に対して交差するように連通させるものである。連通穴26は、後述の弁体摺動穴34およびパイロットハウジング36の凹部37と共に主弁室42を構成している。そして、出口側流路27と連通穴26との交差部位には、後述の主弁43が離着座する環状弁座としてのテーパ状の主弁座46が設けられている。
一対の流出入通路28A,28Bは、出口側流路27および弁体摺動穴34を挟むように、ハウジング23の左,右方向に離間して設けられている。一対の流出入通路28A,28Bは、アーム用制御弁18の圧油流出入ポートを構成するものである。即ち、一対の流出入通路28A,28Bは、アクチュエータ管路19A,19Bを介してアームシリンダ9(のロッド側油室、ボトム側油室)に接続されている。
スプール29は、ハウジング23のスプール摺動穴24内に挿嵌されている。スプール29は、外部から油圧パイロット部18A,18Bに供給されたパイロット圧に従ってスプール摺動穴24内を左,右方向に摺動変位する。これにより、図1に示すアーム用制御弁18は、中立位置(イ)から左,右の切換位置(ロ),(ハ)に切換わるものである。
図2に示すように、スプール29は、第2の環状油溝24C,24Dを第1の環状油溝24A,24Bと第3の環状油溝24E,24Fとのいずれか一方に選択的に連通,遮断させる切換ランド29A,29Bを有している。切換ランド29A,29Bには、圧油の流量を微調整するためのノッチ29A1,29B1がそれぞれ複数個、周方向に離間して形成されている。
ここで、スプール29が図2の左方向に摺動変位したときは、スプール29の切換ランド29Aが第1の環状油溝24Aを第2の環状油溝24Cに連通させる。これと共に、スプール29の切換ランド29Bは、第1の環状油溝24Bを第2の環状油溝24Dに対して遮断すると共に、第2の環状油溝24Dを第3の環状油溝24Fに連通させる。これにより、アーム用制御弁18は、図1に示す中立位置(イ)から右側の切換位置(ハ)に切換わる。
一方、スプール29が図2中の右方向に摺動変位したときは、スプール29の切換ランド29Bが第1の環状油溝24Bを第2の環状油溝24Dに連通させる。これと共に、スプール29の切換ランド29Aは、第1の環状油溝24Aを第2の環状油溝24Cに対して遮断すると共に、第2の環状油溝24Cを第3の環状油溝24Eに連通させる。これにより、アーム用制御弁18は、図1に示す中立位置(イ)から左側の切換位置(ロ)に切換わる。
左,右の蓋体30A,30Bは、スプール29と共にアーム用制御弁18を構成している。蓋体30A,30Bは、スプール摺動穴24の軸方向(左,右方向)両側に位置してハウジング23に取付けられている。蓋体30A,30Bは、スプール摺動穴24の両端側を閉塞するものである。左側の蓋体30Aは、右側の蓋体30Bよりも長尺に形成され、この左側の蓋体30A内には、センタリング用のばね32が設けられている。蓋体30A,30Bの内側には油圧パイロット部18A,18Bが設けられ、これらの油圧パイロット部18A,18Bには、操作弁(レバー操作装置)からパイロット圧が供給される。アーム用制御弁18のスプール29は、このときのパイロット圧に従ってスプール摺動穴24内を図2の左,右方向に摺動変位されるものである。
ストッパ31は、スプール29の左側にこのスプール29と一体的に設けられている。ストッパ31は、蓋体30A内に摺動変位可能に配置され、蓋体30A内を軸方向に延びる軸部31Aを有している。ストッパ31は、スプール29が図2の左方向に摺動変位したときに、スプール29のストロークエンドを規制するものである。
ばね32は、スプール29を中立位置に保持するためのセンタリング用のばねである。ばね32は、ストッパ31の軸部31Aの外周側に位置してスプール29の端面とストッパ31との間に予め初期荷重を与えた状態で配設されている。そして、ばね32は、油圧パイロット部18A,18Bからのパイロット圧がタンク圧レベルまで低下したときに、スプール29を中立位置に保持する。
次に、制御弁装置21の流量制御弁33について説明する。なお、図2および図3では、主弁43が最も開口した最大流量の状態の流量制御弁33を示している。
流量制御弁33は、アームシリンダ9に供給される圧油の流量の調整を行うポペット弁装置である。流量制御弁33は、ハウジング23と、パイロットハウジング36と、主弁室42と、主弁43と、主弁座46と、入口側流路25と、出口側流路27と、背圧室47と、フィードバック流路49と、パイロット流路50と、主弁絞り53と、フィードバック絞り54と、パイロット弁55と、パイロット絞り56と、チェック弁62とを含んで構成されている。
ハウジング23は、パイロットハウジング36と共に流量制御弁33のケーシングを構成している。ハウジング23には、入口側流路25、連通穴26、出口側流路27に加えて、弁体摺動穴34、分岐通路35が形成されている。
弁体摺動穴34は、連通穴26および出口側流路27を挟んで入口側流路25とは反対側に配置されており、段付穴として形成されている。弁体摺動穴34は、パイロットハウジング36と出口側流路27との間を、スプール摺動穴24と直交する方向(図2の上,下方向)に延びている。弁体摺動穴34は、連通穴26およびパイロットハウジング36の凹部37と共に、主弁室42を構成している。そして、主弁室42内には、主弁43が変位可能に挿嵌(嵌合)されている。
分岐通路35は、出口側流路27の途中から分岐した油路である。分岐通路35は、パイロットハウジング36側の第2の通路40と常時連通している。分岐通路35は、第2の通路40、および、パイロットハウジング36に設けられた別の通路である第1の通路39と共に、パイロット流路50を構成している。
パイロットハウジング36は、ハウジング23と共に流量制御弁33のケーシング(弁ケーシング22)を構成している。パイロットハウジング36は、ハウジング23の弁体摺動穴34を外側から閉塞するようにハウジング23の外側面に設けられている。パイロットハウジング36には、後述の主弁43および弁ばね48が収容される凹部37と、後述のパイロット弁55等が収容される弁収容穴38と、この弁収容穴38と凹部37との間を連通する第1の通路39と、ハウジング23の分岐通路35と弁収容穴38との間を斜めに傾斜して延びパイロット弁55により第1の通路39に対して連通,遮断される第2の通路40と、パイロット圧の給排ポート41とが設けられている。給排ポート41は、弁収容穴38の内面とパイロット弁55とにより画成されたパイロット室57に接続されている。
主弁室42は、ハウジング23およびパイロットハウジング36に設けられている。主弁室42は、ハウジング23の弁体摺動穴34および連通穴26とパイロットハウジング36の凹部37とにより構成され、内部に主弁43を収容している。これにより、主弁室42は、ハウジング23とパイロットハウジング36との両方にわたって設けられている。
主弁43は、主弁室42に摺動可能に設けられている。主弁43は、流量制御弁33の弁体となるもので、弁部44Dを有している。この場合、主弁43は、弁体摺動穴34内に挿嵌された段付の弁部材44と、弁部材44の軸方向一側に螺合して設けられ後述のチェック弁62を弁部材44との間で変位可能に保持する弁保持部材45とを含んで構成されている。弁保持部材45は、弁ばね48をパイロットハウジング36の凹部37(の底部)との間で縮装状態に支持するばね受部45Aと、有底筒状に形成され弁部材44(後述の段付穴部44Gの上部側)内に螺入した状態で内側にチェック弁62を変位可能に保持する保持筒部45Bとを含んで構成されている。この場合、保持筒部45Bの内側には、チェック弁62とばね63とが収納されている。
弁部材44は、弁体摺動穴34内に摺動可能に挿嵌された大径部44Aと、該大径部44Aの軸方向一側に設けられた小径筒部44Bと、大径部44Aの軸方向他側に小径な縮径部44Cを介して一体に形成され外周側がハウジング23の主弁座46に離着座する弁部44Dと、該弁部44Dの他側(先端側)から入口側流路25に向けて軸方向に突出した筒状突出部44Eとを含んで構成されている。この場合、弁部44Dは、シート部とも呼ばれ、主弁43(弁部材44)に設けられている。弁部44Dは、主弁座46に接触(着座)することで、入口側流路25と出口側流路27との間の作動流体の流れを遮断する。
また、弁部材44には、筒状突出部44Eの内周側から縮径部44C、大径部44A、小径筒部44B内へと軸方向一側(上側)に向けて延び途中部位にチェック弁62用の弁座44Fが形成された段付穴部44Gと、該段付穴部44Gの径方向に延びた径方向穴44Hと、後述のフィードバック絞り54とが設けられている。段付穴部44Gは、筒状突出部44Eの内周側を介して入口側流路25と連通している。径方向穴44Hは、後述の背圧室47とフィードバック絞り54を介して連通する。これにより、段付穴部44Gおよび径方向穴44Hは、フィードバック流路49を構成している。
また、弁部材44の筒状突出部44Eには、複数の径方向貫通孔からなる主弁絞り53が設けられている。これにより、入口側流路25から連通穴26を介して出口側流路27へと流れる圧油の流量(即ち、出口側流路27に対する連通穴26の開口面積)は、主弁絞り53により調整される。さらに、弁部材44の大径部44Aの外周側には、後述の固定絞り64が設けられている。
主弁座46は、主弁室42の一端側(入口側流路25側)に設けられている。即ち、主弁座46は、ハウジング23のうち出口側流路27と連通穴26との交差部位に設けられており、テーパ状の環状弁座として構成されている。主弁座46は、主弁43の弁部44Dが離着座することで作動流体を連通、遮断する。
入口側流路25は、ハウジング23に設けられており、油圧ポンプ11の吐出側と接続されている。入口側流路25は、油圧ポンプ11から供給される圧油(作動流体)に基づいて、主弁43に対して主弁座46から離れる方向(開弁方向)の圧力を与える。これと共に、入口側流路25は、主弁室42の外部(油圧ポンプ11側)から主弁室42の内部に作動流体を導入する。入口側流路25は、主弁座46に面している。
出口側流路27は、ハウジング23に設けられており、アーム用制御弁18のスプール摺動穴24に接続されている。出口側流路27は、主弁43が主弁座46から離れたときに主弁室42の内部(連通穴26側)から主弁室42の外部(アーム用制御弁18のスプール摺動穴24側、より詳しくは、アームシリンダ9側)に作動流体を導出する。これと共に、出口側流路27は、主弁43に対して主弁座46から離れる方向(開弁方向)の圧力を与える。出口側流路27も、主弁座46に面している。
背圧室47は、主弁室42の他端側(入口側流路25とは反対側)に設けられている。背圧室47は、主弁43に対して主弁座46に近付く方向(閉弁方向)の圧力を与えるものである。即ち、背圧室47は、主弁43の変位量(リフト量)を可変に制御する制御圧室であり、パイロットハウジング36の凹部37と主弁43との間に形成されている。そして、背圧室47は、パイロットハウジング36の第1の通路39に常時連通している。
弁ばね48は、背圧室47内に位置して主弁43(の弁保持部材45)とパイロットハウジング36の凹部37(の底部)との間に配設されている。弁ばね48は、コイルスプリング等を用いて構成され、主弁43(弁保持部材45)を常時閉弁方向に付勢している。主弁43は、背圧室47内に発生する背圧(制御圧)によっても閉弁方向に押圧される。
フィードバック流路49は、主弁43の内部に設けられている。即ち、フィードバック流路49は、主弁43(弁部材44)の段付穴部44Gと径方向穴44Hとにより構成されている。この場合、径方向穴44Hは、フィードバック絞り54を介して背圧室47と連通している。これにより、フィードバック流路49は、入口側流路25と背圧室47とを連通している。
パイロット流路50は、ハウジング23およびパイロットハウジング36に設けられている。即ち、パイロット流路50は、ハウジング23の分岐通路35と、パイロットハウジング36の第1の通路39および第2の通路40とにより構成されている。これにより、パイロット流路50は、背圧室47と出口側流路27とを連通している。この場合、第1の通路39は、パイロット絞り56の上流側の管路となるパイロット絞り上流管路51を構成しており、第2の通路40および分岐通路35は、パイロット絞り56の下流側の管路となるパイロット絞り下流管路52を構成している。
主弁絞り53は、主弁43に設けられている。即ち、主弁絞り53は、弁部材44の筒状突出部44Eに設けられた径方向貫通孔により構成されている。主弁絞り53は、主弁43の主弁座46から離れる方向の変位(図2,3の上,下方向の上側への変位)に伴って、入口側流路25と出口側流路27との間の開口量を増大させる。
フィードバック絞り54は、フィードバック流路49と背圧室47との間に設けられている。第1の実施の形態では、フィードバック絞り54は、主弁43(弁部材44の大径部44A)の外周面側に可変絞りとして設けられている。フィードバック絞り54は、主弁43の主弁座46から離れる方向(開弁方向)の変位に伴って、フィードバック流路49と背圧室47との間の開口量を増大させる。
パイロット弁55は、パイロットハウジング36に摺動可能に設けられている。即ち、パイロット弁55は、パイロットハウジング36の弁収容穴38内に摺動可能に挿嵌(嵌合)して設けられている。そして、パイロット弁55は、パイロット絞り56を有するスプール弁体として構成されている。パイロット弁55は、パイロット室57に作動流体を導入して加圧することで変位する。また、パイロット弁55の変位に伴って、後述のドレン室59の内部の作動流体は、図示しないドレンポートより排出される。
パイロット絞り56は、パイロット弁55に設けられている。即ち、パイロット絞り56は、パイロット弁55の外周面側に可変絞りとして設けられている。パイロット絞り56は、パイロット弁55の変位に伴って、パイロット流路50の開口量を減少させる。即ち、パイロット絞り56は、パイロット室57への圧油(パイロット圧)の供給に伴って、パイロット弁55が軸方向の一側(図2,3の左,右方向の右側に)に進む程、パイロット流路50の開口量を減少させる。この場合、パイロット絞り56は、例えば、軸方向の一側に進む程(パイロット室57から離れる程)、深さが深くなる切り欠きとして構成することができる。さらに、後述するように、第1の実施の形態のパイロット絞り56は、パイロット弁55の変位量が最大値(最も右側)に達する前にパイロット流路50の開口量がゼロになるように構成されている。
蓋体58は、弁収容穴38の軸方向の一側に位置してパイロットハウジング36に螺合により取付けられている。蓋体58は、弁収容穴38の一側を閉塞することにより、パイロット弁55の一側にドレン室(ばね室)59を画成している。そして、蓋体58とパイロット弁55との間には、縮装状態でスプリング60が設けられている。スプリング60は、ワッシャ61を介してパイロット弁55を開弁方向に付勢する。
パイロット弁55は、スプリング60により図1中に示す連通位置(a)に配置されるときに、パイロット流路50である第1,第2の通路39,40間をパイロット絞り56を介して連通させる。このとき、主弁43の背圧室47は、第1,第2の通路39,40およびハウジング23側の分岐通路35を介して出口側流路27と連通し、出口側流路27と等しい圧力に保たれる。これにより、主弁43は、全開位置まで開弁される。
一方、パイロット弁55は、外部指令用の遠隔操作弁(図示せず)から給排ポート41を介してパイロット室57に供給される外部指令圧としてのパイロット圧が予め決められた所定の圧力値以上まで上昇したときに、スプリング60に抗して摺動変位し、第1,第2の通路39,40間を遮断する。これにより、パイロット弁55は、図1中に示す連通位置(a)から遮断位置(b)にスプリング60に抗して切換わる。このとき、主弁43の背圧室47は、第2の通路40に対して遮断される。これにより、主弁43は、最小開口位置となる。
チェック弁62は、フィードバック流路49に設けられている。即ち、チェック弁62は、弁部材44と弁保持部材45との間に収容されている。チェック弁62は、弁保持部材45の保持筒部45B内に摺動可能に挿嵌され、常時は弁部材44の弁座44Fに着座するようにばね63により付勢されている。即ち、チェック弁用のばね63は、チェック弁62を閉弁方向に付勢する。チェック弁62は、入口側流路25から背圧室47への作動流体の流れを許容し、これとは逆の流れを阻止(遮断)する。即ち、チェック弁62は、弁部材44の筒状突出部44E側から入口側流路25内の圧力が作用すると、ばね63に抗して弁座44Fから離座するように開弁する。これにより、入口側流路25内の圧油は、弁部材44の段付穴部44Gおよび径方向穴44H、フィードバック絞り54を介して背圧室47に供給される。このように、チェック弁62は、主弁43内を入口側流路25から背圧室47に向けて圧油が流通するのを許し、逆向きの流れを阻止する。即ち、チェック弁62は、背圧室47内の油液が弁部材44の径方向穴44H等を介して段付穴部44G、入口側流路25に向け流通するのを阻止するものである。
このように構成される流量制御弁33は、流量制御機能とロードチェック機能とを有している。即ち、流量制御弁33は、パイロット絞り56の開口量に応じて主弁43の変位量(リフト量、即ち、開口面積)を制御することにより、入口側流路25から出口側流路27への流量(アーム用制御弁18を流通する圧油の流量)を可変に制御する流量制御機能を有している。これと共に、流量制御弁33は、出口側流路27の圧力に対して入口側流路25の圧力が低いときに、出口側流路27から入口側流路25への作動流体(油液)の流れを主弁43とチェック弁62とにより阻止するロードチェック機能を有している。
ここで、第1の実施の形態の流量制御弁33の特徴部分の説明に先立って、図8に示す第1の比較例による流量制御弁101について説明する。この図8の流量制御弁101は、第1の実施の形態による流量制御弁33と比較すると、主弁102およびパイロット弁103の構成が相違する。具体的には、第1の実施の形態の主弁43は、後述する固定絞り64が設けられている。これに対し、第1の比較例の主弁102は、固定絞り64が設けられていない。また、第1の比較例のパイロット弁103のパイロット絞り104は、第1の実施の形態のパイロット弁55のパイロット絞り56と同様に、可変絞りとして構成されている。しかし、第1の比較例のパイロット絞り104は、パイロット弁103の変位量が最大値に達しても(パイロット弁103が図8の最も右側まで変位しても)、パイロット流路50の開口量がゼロにならない点で、第1の実施の形態のパイロット絞り56と相違する。
このような第1の比較例による流量制御弁101も、第1の実施の形態による流量制御弁33と同様に、パイロット絞り104の開口量を可変に制御することで、主弁102の変位量が制御される。即ち、パイロット絞り104の開口量を可変に制御することで、主弁102に設けられたフィードバック絞り54の開口量がパイロット絞り104の開口量の変化に対応して変化し、主弁102の変位量が制御される。これにより、主弁102に設けられた主弁絞り102Bの開口量が可変に制御され、入口側流路25から出口側流路27への流量を所望の値に制御することができる。
ここで、入口側流路25から出口側流路27への流量を最小に制御する場合を考える。この場合には、パイロット弁103のパイロット室57の圧力を最大にして、パイロット弁103の変位量を最大にすることにより、パイロット絞り56の開口量(パイロット流路50の開口量)を最小にする。これにより、主弁102の変位量を最小にして、主弁絞り53の開口量を最小にすることができる。このとき、例えば、部品の製造ばらつきによって、「パイロット絞り104」と「パイロット弁103を摺動可能に嵌合するパイロットハウジング36」との間に軸方向の相対ばらつきが生じることに伴って、パイロット絞り104の最小開口量がばらつく可能性がある。そして、このパイロット絞り104の最小開口量のばらつきに伴って、主弁102の変位量がばらつくことにより、入口側流路25から出口側流路27への流量もばらつく可能性がある。
図9は、第1の比較例の流量制御弁101(図8)による「パイロット弁103の変位量」と「パイロット絞り104の開口量」と「主弁102の変位量」との関係の一例を示す特性線図である。図9中の実線は、製造ばらつき「なし」の特性を示しており、図9中の破線は、製造ばらつき「あり」の特性を示している。この図9から明らかなように、第1の比較例の流量制御弁101は、パイロット弁103のパイロット室57の圧力を最大にしてパイロット弁103の変位量を最大(即ち、パイロット絞り104開口量を最小)にしたときに、製造ばらつきに伴って主弁変位量がばらつき、入口側流路25から出口側流路27への流量がばらつく可能性がある。高精度に油圧アクチュエータ(アームシリンダ9)を駆動させるためには、高精度な流量制御が必要になるため、このような流量のばらつきは好ましくない。
これに対して、このような流量のばらつきを抑制するために、パイロット絞りを「可変絞り」と「固定絞り」とにより構成することが考えられる。図10は、第2の比較例による流量制御弁111を示している。図10に示す第2の比較例の流量制御弁111は、パイロット弁112のパイロット絞り113が、開口量を0(ゼロ)にできるように構成された可変絞り113Aと、パイロット弁112の変位量によらず開口量が一定である固定絞り113Bとにより構成されている。この点が、第1の比較例の流量制御弁101と相違する。
このような第2の比較例の流量制御弁111は、部品の製造ばらつきによって「パイロット絞り113」と「パイロット弁112を摺動可能に嵌合するパイロットハウジング36」との間に軸方向の相対ばらつきが生じたとしても、パイロット弁112の最大変位位置においてパイロット絞り113は、固定絞り113Bのみによって開口量が規制される。このため、パイロット弁112の最大変位位置での開口量がばらつくことを抑制でき、入口側流路25から出口側流路27への流量を高精度に最小に制御することができる。
図11は、第2の比較例の流量制御弁111(図10)による「パイロット弁112の変位量」と「パイロット絞り113の開口量」と「主弁102の変位量」との関係の一例を示す特性線図である。図11中の実線は、製造ばらつき「なし」の特性を示しており、図11中の破線は、製造ばらつき「あり」の特性を示している。この図11から明らかなように、第2の比較例の流量制御弁111は、パイロット弁112のパイロット室57の圧力を最大にしてパイロット弁112の変位量を最大(即ち、パイロット絞り113の開口量を最小)にしたときに、製造ばらつきに拘わらず主弁変位量を所望に規制することができる。これにより、入口側流路25から出口側流路27への流量がばらつくことを抑制することができる。
しかし、第2の比較例の流量制御弁111の場合、パイロット絞り113に2種類の絞り(可変絞り113A、固定絞り113B)が形成されている。このため、パイロット絞り113を通過する流量が多くなり、パイロット絞り113に作用する流体力(パイロット弁112の軸方向に加わる力)が大きくなる可能性がある。そして、この流体力の影響により、パイロット絞り113の開口量を高精度に可変に制御することが難しくなり、結果として、入口側流路25から出口側流路27への流量を高精度に可変に制御することが難しくなる可能性がある。さらに、パイロット絞り113に2種類の絞り113A,113Bを形成するために、パイロット弁112の外径を大きくする必要が生じる可能性がある。これにより、パイロットハウジングが大型化し、製造コストの増大、および、部品搭載性の低下を招くおそれもある。
次に、第1の比較例および第2の比較例による流量制御弁101,111のロードチェック機能について考える。流量制御弁101,111は、「弁部102Aが設けられた主弁102」と「主弁102の内部に設けられたチェック弁62」とを用いて、出口側流路27から入口側流路25への逆流を防止する。具体的には、出口側流路27に対して入口側流路25の圧力が低い場合、出口側流路27→パイロット絞り下流管路52→パイロット絞り104,113→パイロット絞り上流管路51→背圧室47→フィードバック絞り54→チェック弁62→入口側流路25に流れが生じるが、この流れは、チェック弁62によって遮断される。これにより、背圧室47と出口側流路27の圧力が等しくなり、主弁102には背圧室47の圧力による閉弁方向の力が作用して閉弁方向に変位する。この結果、主弁102の弁部102Aがハウジング23の主弁座46に着座することで、出口側流路27→主弁絞り102B→入口側流路25の流れが遮断される。
しかし、第1の比較例および第2の比較例による流量制御弁101,111の場合、出口側流路27から背圧室47に流れが生じるときに、パイロット絞り上流管路51およびパイロット絞り下流管路52が介在するため、出口側流路27から背圧室17への流路の長さが長くなる。このような流路長さが長くなることは、ロードチェック機能を発揮するまでのチェック弁62の応答性の遅れ、延いては、主弁102(主弁絞り102B)の応答性の遅れにつながる可能性がある。そして、この遅れが著しい場合に、逆流を生じさせるおそれがある。
そこで、第1の実施の形態では、「入口側流路25から出口側流路27への流量を高精度に可変に制御すること」と「チェック弁62の応答性を向上すること」とを両立できるように、次の構成を採用している。即ち、図2および図3に示すように、第1の実施の形態では、背圧室47と出口側流路27との間に固定絞り64を設けている。この場合、固定絞り64は、パイロット流路50(即ち、パイロット絞り上流管路51およびパイロット絞り下流管路52)を介さずに、背圧室47と出口側流路27とを連通するものである。これと共に、固定絞り64は、主弁43の変位量に拘わらず、背圧室47と出口側流路27との間の開口量を固定する(一定にする)ものである。
このために、第1の実施の形態では、主弁43の外周面(弁部材44の大径部44Aの外周面)に、主弁43の軸方向に延びる複数または単数の主弁側連通溝64Aが設けられている。主弁側連通溝64Aは、弁部材44の大径部44Aの軸方向の全体に亙って設けられている。固定絞り64は、主弁側連通溝64Aと主弁室42の壁面とにより構成されている。
さらに、第1の実施の形態では、パイロット絞り56は、可変絞りにより構成されている。この場合、パイロット絞り56は、パイロット弁55の変位に伴ってパイロット流路50の開口量が減少する。これと共に、パイロット絞り56は、パイロット弁55の変位量が最大値に達する前に、パイロット流路50の開口量がゼロになる。即ち、パイロット弁55は、図2,3の左側から右側に向けて進むことにより変位量が最大値に達する前に、パイロット絞り上流管路51とパイロット絞り下流管路52との間の接続を遮断する。パイロット弁55の変位量の最大値は、パイロット室57へのパイロット圧の供給に基づいてパイロット弁55が初期位置から最も変位した位置に対応する。また、「開口量がゼロ」は、開口量が完全にゼロの状態だけでなく、不可避的な隙間等により開口量が完全にゼロでないが実質的にゼロの状態を含むものである。即ち、「開口量がゼロ」は、主弁43の変位量を高精度に制御できる範囲で、完全にゼロではない状態も許容するものである。
第1の実施の形態による流量制御弁33を備えた制御弁装置21は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、油圧ポンプ11から吐出された圧油は、ポンプ管路13の分岐管路13Aからハウジング23の入口側流路25、流量制御弁33の主弁43と連通穴26との間(主弁絞り53)を流通して出口側流路27に流れる。そして、出口側流路27に流れた圧油は、アーム用制御弁18を中立位置(イ)から切換位置(ロ)または(ハ)に切換えることにより、一対のアクチュエータ管路19A,19Bを介してアームシリンダ9に給排される。
アームシリンダ9に供給される圧油の流量は、流量制御弁33の主弁43における開口面積と、アーム用制御弁18のスプール29(切換ランド29A,29B)による開口面積とによって決められる。また、ハウジング23の入口側流路25から出口側流路27に向けた圧油の流れを遮断する場合に、流量制御弁33の主弁43は、弁部44Dをハウジング23の主弁座46に着座させることにより、両流路25,27間を遮断する。
ここで、入口側流路25から出口側流路27への流量を可変に制御する場合、パイロット弁55のパイロット室57にパイロット圧が供給されることによりパイロット室57が加圧され、パイロット弁55が図3の右方に向けて変位する。これにより、パイロット弁55のパイロット絞り56の開口量が可変に制御される。そして、例えば、出口側流路27に対して入口側流路25の圧力が高い場合、入口側流路25から出口側流路27に流れが生じる。このとき、入口側流路25→チェック弁62→フィードバック絞り54→背圧室47に流れが生じると共に、背圧室47から出口側流路27に生じる流れは、2経路存在する。一方は、背圧室47→パイロット絞り上流管路51→パイロット絞り56→パイロット絞り下流管路52→出口側流路27である。他方は、背圧室47→固定絞り64→出口側流路27である。
背圧室47と出口側流路27との間の開口量であるパイロット絞り56と固定絞り64の開口量に対して、主弁43の開弁方向の変位量が大きい場合は、フィードバック絞り54の開口量が大きいため、背圧室47の圧力は入口側流路25の圧力に近付く。これにより、主弁43は、背圧室47の圧力による閉弁方向の力を受けて閉弁方向に変位する。この結果、主弁43の変位に伴って、フィードバック絞り54の開口量が減少するため、背圧室47の圧力は減圧され、主弁43に作用する背圧室47の圧力による閉弁方向の力が減少する。
この位置フィードバック作用の結果、主弁43は、「入口側流路25と出口側流路27の圧力による開弁方向の力」と「背圧室47の圧力と弁ばね48による閉弁方向の力」とが釣り合う位置にて停止する。これにより、可変に制御されるパイロット絞り56と固定絞り64の開口量に、フィードバック絞り54の開口量が対応するよう主弁43の変位量が制御される。そして、これに伴って、主弁絞り53の開口量が制御されることで、入口側流路25から出口側流路27への流量を可変に制御することができる。
一方、入口側流路25から出口側流路27への流量を最小に制御する場合、パイロット室57は最大圧力に加圧され、パイロット弁55が最大変位量まで変位し、パイロット絞り56の開口量が0(ゼロ)に制御される。そして、例えば、出口側流路27に対して入口側流路25の圧力が高い場合、入口側流路25から出口側流路27に流れが生じる。このとき、入口側流路25→チェック弁62→フィードバック絞り54→背圧室47に流れが生じると共に、背圧室47から出口側流路27に生じる流れは、1経路のみ存在する。即ち、背圧室47→固定絞り64→出口側流路27である。
上述した位置フィードバック作用により、固定絞り64の開口量にフィードバック絞り54の開口量が対応するよう主弁の変位量が最小に制御される。そして、これに伴って、主弁絞り53の開口量が最小に制御されることで、入口側流路25から出口側流路27への流量を最小に制御することができる。
また、ロードチェック機能に関して、出口側流路27に対して入口側流路25の圧力が低い場合、出口側流路27から入口側流路25に逆流が生じる傾向となる。このとき、出口側流路27→固定絞り64→背圧室47→フィードバック絞り54→チェック弁62→入口側流路25に流れが生じるが、この流れは、チェック弁62によって遮断される。これにより、背圧室47と出口側流路27の圧力が等しくなるため、主弁43には背圧室47の圧力による閉弁方向の力が生じて主弁43が閉弁方向に変位する。これにより、主弁43の弁部44Dが主弁座46に着座し、出口側流路27→主弁絞り53→入口側流路25の流れが遮断される。この結果、出口側流路27から入口側流路25への逆流が防止され、ロードチェック機能を果たすことができる。
このように、第1の実施の形態によれば、背圧室47と出口側流路27との間の開口量を可変絞り(パイロット弁55のパイロット絞り56)と固定絞り(主弁43の固定絞り64)とにより構成している。このため、入口側流路25から出口側流路27への流量を最小に制御する場合に、背圧室47と出口側流路27との間の最小開口量は、固定絞り64のみによって構成される。この結果、部品の製造ばらつきによってパイロット絞り56とパイロットハウジング36との間に軸方向の相対ばらつきが生じたとしても、最小開口量がばらつくことを抑制でき、入口側流路25から出口側流路27への流量を高精度に最小に制御することができる。
図4は、第1の実施の形態の流量制御弁33による「パイロット弁55の変位量」と「パイロット絞り56の開口量」と「主弁43の変位量」と「固定絞り64の開口量」の関係の一例を示す特性線図である。図4中の実線L1,L2,L3は、製造ばらつき「なし」の特性(L1:パイロット絞り56の開口量、L2:主弁43の変位量、L3:固定絞り64の開口量)を示しており、図4中の破線L1−1,L1−2,L2−1,L2−2は、製造ばらつき「あり」の特性(L1−1,L1−2:パイロット絞り56の開口量、L2−1,L2−2:主弁43の変位量)を示している。この図4から明らかなように、第1の実施の形態の流量制御弁33は、パイロット弁55のパイロット室57の圧力を最大にしてパイロット弁55の変位量を最大(即ち、パイロット絞り56の開口量をゼロ)にしたときに、製造ばらつきに拘わらず主弁変位量を所望(図4中のA部)に規制することができる。これにより、入口側流路25から出口側流路27への流量がばらつくことを抑制することができる。
これに加えて、第1の実施の形態では、主弁43の変位量を制御するために必要な背圧室47から出口側流路27への流量のうち、主弁43の変位量を固定(一定)に制御するための流量は、背圧室47と出口側流路27との間に設けられた固定絞り64を通過する。このため、パイロット絞り56を通過する流量は、主弁43の変位量を可変に制御するための流量のみでよく、流量が固定絞り64に分担された分、パイロット絞り56に作用する流体力を低減できる。この結果、パイロット絞り56の開口量を高精度に可変に制御することができ、入口側流路25から出口側流路27への流量を高精度に可変に制御できる。
さらに、パイロット絞り56には、可変絞りのみを形成するだけでよいため、可変絞りと固定絞りとの両方をパイロット弁に設ける構成と比較して、パイロット弁55の大きさを小さくすることもできる。これにより、パイロット弁55、延いては、パイロットハウジング36を小型化することができ、製造コストの低減および部品搭載性を向上できる。しかも、出口側流路27から背圧室47への流路となる固定絞り64を経由する流路は、パイロット絞り56を経由するパイロット流路50(パイロット絞り上流管路51、パイロット絞り下流管路52)よりも短く構成できる。このため、チェック弁62の応答性を向上することもでき、作動流体の逆流を防止することができる。
また、主弁43の外周部に固定絞り64を設けたことに伴って、主弁43に作用する流体力の変動幅を低減することもできる。即ち、主弁43の主弁絞り53を通過して出口側流路27に噴出する噴流によって出口側流路27の上流側が圧力の高い高圧部となると共に、この高圧部が固定絞り64を介して背圧室47の圧力を高めることにより、主弁43に作用する開弁方向の流体力を低減することができる。これにより、主弁43の最小変位位置から全開位置までの間で主弁43に加わる流体力の変動幅を低減することができる。
また、第1の実施の形態によれば、固定絞り64は、主弁43の外周面に設けられた主弁側連通溝64Aと主弁室42の壁面とにより構成されている。このため、主弁43の外周面に主弁側連通溝64Aを形成することで、主弁室42に固定絞りを容易に設けることができる。
なお、上述した第1の実施の形態では、固定絞り64を構成するために、主弁43に主弁側連通溝64Aを設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図5に示す第2の実施の形態のように、主弁室42の壁面に主弁室側連通溝72Aを設ける構成とてもよい。
即ち、第2の実施の形態では、主弁71は、第1の比較例および第2の比較例の主弁102と同様に、第1の実施の形態のような主弁側連通溝64Aが設けられていない。しかし、第2の実施の形態では、主弁室42の壁面(内周面)に、複数または単数の主弁室側連通溝72Aが設けられている。主弁室側連通溝72Aは、ハウジング23の弁体摺動穴34の軸方向に亙って設けられている。固定絞り72は、主弁室側連通溝72Aと主弁71の外周面とにより構成されている。このような第2の実施の形態によれば、主弁室42の壁面に主弁室側連通溝72Aを形成することで、主弁室42に固定絞り72を容易に設けることができる。
上述した第1の実施の形態では、パイロット絞り56を、パイロット弁55の変位に伴ってパイロット流路50の開口量を減少させ、かつ、パイロット弁55の変位量が最大値に達する前にパイロット流路50の開口量をゼロにする構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図6に示す第3の実施の形態のように、パイロット弁81のパイロット絞り82を、パイロット弁81の変位に伴ってパイロット流路50の開口量を増大させ、かつ、パイロット弁81の変位量が最小値に達する前にパイロット流路50の開口量をゼロにする構成としてもよい。
即ち、第3の実施の形態のパイロット絞り82は、第1の実施の形態のパイロット絞り56と同様に、パイロット弁81の外周面側に可変絞りとして設けられている。この場合、第3の実施の形態では、パイロット絞り82は、パイロット弁81の変位に伴って、パイロット流路50の開口量を増大させる。即ち、パイロット絞り82は、パイロット室57への圧油(パイロット圧)の供給に伴って、パイロット弁81が軸方向の一側(図6の左,右方向の右側に)に進む程、パイロット流路50の開口量を増大させる。この場合、パイロット絞り82は、例えば、軸方向の一側に進む程(パイロット室57から離れる程)、深さが浅くなる切り欠きとして構成することができる。なお、図6は、パイロット圧の供給に基づいて、パイロット弁81がスプリング60の弾性力に抗して軸方向の一側(右側)に進んだ状態を示している。
また、パイロット絞り82は、パイロット弁81の変位量が最小値に達する前に、パイロット流路50の開口量がゼロになる。即ち、パイロット弁81は、図8の右側から左側に向けて進むことにより変位量が最小値に達する前に、パイロット絞り上流管路51とパイロット絞り下流管路52との間の接続を遮断する。パイロット弁81の変位量の最小値は、パイロット室57にパイロット圧が供給されない状態での位置、即ち、スプリング60によって戻された初期位置に対応する。このような第3の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、入口側流路25から出口側流路27への流量を高精度に可変に制御でき、かつ、チェック弁62の応答性を向上することができる。
上述した第1の実施の形態では、ハウジング23とパイロットハウジング36とにより一つの(一体または共通)ケーシングを構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図7に示す第4の実施の形態のように、ハウジング23とパイロットハウジング36とを分離して配置すると共に、ハウジング23とパイロットハウジング36との間に接続管路91,91を設ける構成としてもよい。この場合、主弁室42は、ハウジング23に設けられる。即ち、主弁室42は、上述した第1の実施の形態のようにハウジング23とパイロットハウジング36とにわたって設ける構成を採用することができる他、第4の実施の形態のようにハウジング23に設ける構成を採用することができる。要するに、主弁室は、ハウジングとパイロットハウジングとのうちの少なくともハウジングに設けられるものである。
上述した各実施の形態では、アーム用制御弁18からアームシリンダ9に向けて給排される圧油の流量を調整する流量制御弁33を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ブーム用制御弁16からブームシリンダ8に給排する圧油の流量調整を行う場合の流量制御弁に適用してもよく、バケットシリンダまたはこれ以外の油圧アクチュエータに方向制御弁を通じて圧油を給排する場合の流量制御弁にも適用することができる。
上述した各実施の形態では、建設機械として、油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ホイールローダ、油圧クレーン、ブルドーザ等、各種の建設機械に広く適用することができる。また、流量制御弁33は、主弁43の変位量(リフト量)に応じて作動流体の流量を小流量から大流量へと可変に制御する構成のものであればよく、各種の産業機器、機械機器に用いる流量制御弁として広く適用することができる。さらに、各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。