JP6818237B2 - 二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
上記電極体を構成する正負極の電極は、それぞれ、厚さ数μm程度の金属箔の表面に合材層を付与することによって形成されており、金属箔が露出した露出部が一方の端部に設けられている。そして、二次電池の電極体は、セパレータを介して正極と負極とを積層(あるいは捲回)させることによって作製される。このようにして作製された電極体の幅方向の中央部には、合材層が積層された発電領域が形成される。また、幅方向の一方の端部には正極の露出部(正極露出部)が重ねられた正極接続領域が形成され、他方の端部には負極の露出部(負極露出部)が重ねられた負極接続領域が形成される。そして、一般的な二次電池では、正極接続領域と負極接続領域の各々に集電板が接合され、当該集電板を介して電極体と電極端子とが電気的に接続される。
例えば、各々の接続領域と集電板とを確実に溶接するにはレーザーの出力を高くする必要があるが、高出力のレーザーを金属部材に照射するとスパッタと呼ばれる高温の溶融金属が発生することがあり、当該スパッタが飛散して電極体の発電領域に侵入すると、内部短絡が生じる恐れがある。
また、レーザーの出力を高くし過ぎると、接合対象の部材(金属箔や集電板)を貫通してレーザーが発電領域に到達することがある。このような場合、発電領域を構成する合材層が熱によって破損して電池性能が大きく低下する恐れがある。
また、特許文献1に記載の方法では、レーザーによる溶接を行っているため、レーザーが発電領域に到達して合材層を損傷させることを完全に防止することが困難である。例えば、特許文献1の技術では、接続領域を構成する複数の金属箔の隙間にレーザーが入り込んで発電領域に到達する可能性がある。
かかる製造方法によって得られる二次電池の正極は、アルミニウム製の正極金属箔の表面に正極合材層が付与されたシート状の正極であって幅方向の一方の端部に正極金属箔が露出した正極露出部が形成されている。また、かかる二次電池の電極体の幅方向の一方の端部には、正極露出部が重ねられた正極接続領域が形成されている。
そして、ここで開示される製造方法は、電極体の正極接続領域を集電板で挟み込むと共に、昇華温度が250℃〜500℃の熱分解樹脂を正極接続領域と集電板の少なくとも一方に付与する樹脂付与工程と、熱分解樹脂にレーザーを照射し、熱分解樹脂が昇華し始めた際に集電板と正極接続領域とを加圧して圧接する圧接工程とを備えている。
上記した「圧接」とは、接合対象の部材を密着させた状態で加熱し、塑性変形が大きくなる温度(塑性変形温度)まで昇温させたタイミングで加圧することによって、接合対象の部材を塑性変形させながら融合する接合方法である。
かかる圧接における加熱温度は、塑性変形が大きくなる程度の温度で十分であるため、レーザー溶接で要求されるような高出力のレーザーを接合対象に照射する必要がない。このため、スパッタの発生や接合対象の貫通などが生じることを確実に防止できる。さらに、かかる圧接では、塑性変形によって正極金属箔と集電板とを接合させるため、溶融した正極金属箔が凝固収縮によって破断することを好適に防止できる。
その結果、所望の温度まで加熱されると昇華する熱分解樹脂を、正極金属箔(および/又は集電板)に付与し、当該熱分解樹脂が昇華したタイミングで加圧を開始することに思い至った。具体的には、正極金属箔の塑性変形温度よりも高く、かつ、正極金属箔の融点よりも低い温度で昇華する熱分解樹脂を正極金属箔(および/又は集電板)に付与し、当該熱分解樹脂が昇華し始めた際に加圧を開始すれば、正極接続領域や集電板を溶融させることなく、好適に塑性変形させることができると考えた。
これによって、レーザー溶接を用いずに、集電板と正極接続領域の各々を圧接によって接合させることができるため、スパッタによる短絡、発電領域の損傷、金属箔の破断などの種々の問題の発生を確実に防止することができる。したがって、ここで開示される製造方法によれば、高品質の二次電池を効率良く製造することができる。
先ず、本実施形態に係る製造方法によって得られる二次電池について説明する。図1は本実施形態に係る製造方法によって得られる二次電池を模式的に示す斜視図である。また、図2は図1に示す二次電池の電極体を構成する各部材を模式的に示す説明図であり、図3は図1に示す二次電池の電極体の構成を模式的に示す斜視図である。また、図4は図1に示す二次電池の内部構造を示す側面図である。なお、本明細書の各図における符号Xは「電池の幅方向」を示し、Yは「電池の厚み方向」を示し、Zは「電池の高さ方向」を示している。
図1で示される二次電池100は、扁平な角型のケース50を備えている。かかるケース50は、上面が開口した扁平な角型のケース本体52と、当該ケース本体52上面の開口部を塞ぐ板状の蓋体54とから構成されている。ケース本体52および蓋体54は、軽量で熱伝導性の良い金属材料を主体に構成されていることが好ましく、かかる金属材料としてはアルミニウムなどが挙げられる。
また、この二次電池100では、ケース50の上面をなす蓋体54に、電極端子60、62が設けられている。かかる電極端子60、62は、ケース50の外部で突出するように形成されており、他の電池や車両のモーターなどの外部機器と接続される。
電極体は、電解液(図示省略)と共に、ケース50の内部に収容されている。図2および図3に示されるように、本実施形態では、シート状の正極10と負極20とをセパレータ40を介して複数枚積み重ねた積層電極体が電極体80として用いられている。
正極10は、正極金属箔12の表面(両面)に、正極合材層14を付与することによって形成されている。そして、正極10の幅方向Xの一方の端部には、正極合材層14が付与されずに正極金属箔12が露出した正極露出部16が形成されている。また、本実施形態においては、アルミニウム製の正極金属箔12が用いられており、かかる正極金属箔12の厚みは5μm〜20μmである。正極合材層14には、主成分として正極活物質(リチウム遷移金属複合酸化物など)が含まれていると共に、導電剤や結着剤などの添加物が含まれている。なお、正極合材層14に含まれる各材料は、一般的なリチウムイオン二次電池で用いられるものと同様のものを制限なく使用可能であり、本発明を特徴づけるものではないため、ここでは詳細な説明を省略する。
一方、負極20は、負極金属箔22の表面(両面)に、負極合材層24を付与することによって形成されている。そして、負極20の幅方向Xの一方の端部には、負極合材層24が付与されずに負極金属箔22が露出した負極露出部26が形成されている。負極金属箔22には、例えば、厚みが5μm〜20μmの銅箔などを用いることができる。また、負極合材層24には、主成分として負極活物質(グラファイトなど)が含まれていると共に結着剤などの添加物が含まれている。なお、正極合材層14と同様に、負極合材層24についても、一般的なリチウムイオン二次電池で用いられるものと同様のものを制限なく使用することができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
セパレータ40は、正極10と負極20との間に介在するように配置されている。かかるセパレータ40の具体例としては、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成された単層構造のシート材や、複数種類の樹脂シートを積層させた積層構造のシート材などが挙げられる。
上記したように、電極体80は、セパレータ40を介して、正極10と負極20とを複数積み重ねることによって形成されている。図2および図3に示すように、かかる電極体80の幅方向Xの中央部には、正極合材層14と負極合材層24とが対向するように積層され、主な充放電の場となる発電領域80aが形成されている。また、電極体80の幅方向Xの一方の端部には、正極10の正極露出部16(正極金属箔12)が複数重ねられた正極接続領域80bが形成されている。そして、電極体80の他方の端部には、負極20の負極露出部26(負極金属箔22)が複数重ねられた負極接続領域80cが形成されている。
上述した電極体80は、集電板を介して電極端子60と電気的に接続される。具体的には、図4に示すように、電極体80は、正極接続領域80bにおいて集電板30と接合されており、当該集電板30が電極端子60に接合されている。
集電板30は、高さ方向Zに延びる挟持部材32を複数備えた櫛状の部材であり、各々の挟持部材32の間にスリットが形成されている。当該集電板30の複数のスリットの各々には、正極接続領域80bを構成する正極露出部16(正極金属箔12)の上端部が挿入されており、当該正極露出部16の上端部が挟持部材32に挟み込まれている。そして、本実施形態では、正極接続領域80bを構成する正極露出部16が、集電板30の挟持部材32と圧接されている。
また、集電板30は、アルミニウムで構成されていると好ましい。このように、正極金属箔12と同種の金属材料で集電板30を構成することによって、正極接続領域80bを構成する正極金属箔12と集電板30とをより容易に圧接することができる。
なお、具体的な説明は省略するが、この二次電池100では、正極側と同様の接続構造が負極側にも設けられている。すなわち、この二次電池100の電極体80の負極接続領域80c(図3参照)は、集電板(図示省略)と接合されており、当該集電板を介して電極端子62(図1参照)に接続される。
次に、上述した二次電池100を製造する本実施形態に係る二次電池の製造方法について図5A〜図5Eを参照しながら説明する。図5A〜図5Eは本実施形態に係る二次電池の製造方法を説明する断面図である。なお、図5A〜図5Eの各図は、図4のV−Vの方向から見た断面の集電板30近傍の領域において、本実施形態に係る製造方法の各工程を説明する図である。
本実施形態に係る製造方法では、先ず、図3に示すような電極体80を準備する。本工程では、予め作製した電極体80を用意してもよいし、公知な方法に従って電極体80を新たに作製してもよい。電極体80を新たに作製する場合には、図2に示すように、セパレータ40を介して正極合材層14と負極合材層24とが対向するように正極10と負極20を積み重ねる。このとき、幅方向Xの一方の端部において正極露出部16がはみ出し、他方の端部において負極露出部26がはみ出すように正極10と負極20を積み重ねる。これによって、図3に示すように、幅方向Xの中央部に発電領域80aが形成され、一方の端部に正極接続領域80b、他方の端部に負極接続領域80cが形成された電極体(積層電極体)80を作製することができる。
次に、本実施形態に係る製造方法では、樹脂付与工程を実施する。図5Bに示すように、本工程では、先ず、電極体80の正極接続領域80bを集電板30で挟み込む。具体的には、図4に示すような複数の挟持部材32を備えた集電板30を用い、各々の挟持部材32の間のスリットに、正極接続領域80bを構成する正極露出部16(正極金属箔12)の上端部を挿入する。
ここで、本明細書における「熱分解樹脂P」とは、昇華温度が、正極金属箔12を構成するアルミニウムの塑性変形温度よりも高い温度であり、かつ、当該アルミニウムの融点よりも低い温度であるポリマー材料を指す。
より具体的には、本実施形態における「熱分解樹脂P」には、昇華温度が250℃〜500℃のポリマー材料(例えば、アクリル樹脂など)が用いられる。図6に示すように、JIS規格のA1100で示されるアルミニウム材料では、250℃を境に「伸び」が大きく上昇すると共に、「引張強さ」と「耐力」が大きく低下する(換言すると、250℃を境に塑性変形し易くなる)。このため、昇華温度が250℃以上の熱分解樹脂Pを用いることによって、後述の圧接工程において接合対象の各部材が好適に塑性変形するようなタイミングで圧接を開始することができる。
一方、図7に示すように、アルミニウムを融点(660.3℃)近くまで加熱した場合と、500℃程度に加熱した場合とではアルミニウムの「変位量」に大きな差がなくなる。そして、このような高い温度で昇華するようなポリマー材料を使用すると、当該ポリマー材料が昇華した際に正極金属箔12や集電板30が溶融してしまい、凝固収縮による正極金属箔12の破断が発生する可能性が高くなる。このことを考慮し、熱分解樹脂Pには昇華温度が500℃以下の樹脂が用いられる。
図5Dに示すように、本工程では、先ず、熱分解樹脂PにレーザーLを照射する。このときのレーザーLとしては、CO2レーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザーなどが好ましく用いられる。なお、レーザーLの出力が低すぎると、熱分解樹脂Pを昇華させるまでの時間が長くなるため製造効率が低下する恐れがある。一方で、出力が高すぎると、熱分解樹脂Pが瞬時に昇華して正極金属箔12や集電板30に高出力レーザーが直接照射される恐れがある。このことを考慮すると、レーザーLの出力は0.5kW〜3.0kWの範囲内に設定すると好ましい。また、熱分解樹脂Pの加熱効率を考慮すると、レーザースポットの直径φは0.02mm〜1mmであると好ましい。
さらに、本実施形態に係る製造方法では、集電板30や正極接続領域80bにレーザーLを直接照射せず、熱分解樹脂Pを介して接合対象の部材を加熱している。このため、正極金属箔12の隙間にレーザーLが入り込んで発電領域80aを損傷させることを確実に防止することができる。
また、本実施形態に係る製造方法では、正極金属箔12と集電板30とを溶融させずに接合しているため、溶融界面において正極金属箔12が凝固収縮して破断することを確実に防止できる。
さらに、本実施形態に係る製造方法では、昇華温度が250℃〜500℃の熱分解樹脂Pを付与し、当該熱分解樹脂Pが昇華したときに加圧を開始している。これによって、集電板30や正極接続領域80bが適切な温度まで昇温しているか否か容易に把握し、適切なタイミングで加圧を開始することができるため、電極体80と集電板30とをより確実に圧接することができる。
以上、ここで開示される二次電池の製造方法の一実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
例えば、図5Bおよび図5Cに示すように、上述した実施形態の樹脂付与工程では、電極体80の正極接続領域80bを集電板30の挟持部材32で挟み込んだ後に熱分解樹脂Pを付与している。しかし、かかる樹脂付与工程における順序は特に限定されず、電極体80の正極接続領域80bに熱分解樹脂Pを付与した後に、当該正極接続領域80bを集電板30で挟み込んでもよい。この場合でも、圧接工程において電極体80と集電板30とを好適に塑性変形させて圧接することができる。
B≦A/tanθ (1)
12 正極金属箔
14 正極合材層
16 正極露出部
20 負極
22 負極金属箔
24 負極合材層
26 負極露出部
30、30a 集電板
32、32a 挟持部材
40 セパレータ
50 ケース
52 ケース本体
54 蓋体
60、62 電極端子
80 電極体(積層電極体)
80a 発電領域
80b 正極接続領域
80c 負極接続領域
100 二次電池
A 挟持部材の厚み
B スリットの幅
L レーザー
N 圧力
P 熱分解樹脂
X (電池の)幅方向
Y (電池の)厚み方向
Z (電池の)高さ方向
φ レーザースポットの直径
θ 傾斜角度
Claims (1)
- シート状の正極と負極とが重ねられた電極体と、外部機器と接続される電極端子と、前記電極体と前記電極端子とを接続する集電板とを備えた二次電池を製造する方法であって、
前記正極は、アルミニウム製の正極金属箔の表面に正極合材層が付与されたシート状の正極であって幅方向の一方の端部に前記正極金属箔が露出した正極露出部が形成され、
前記電極体の幅方向の一方の端部に、前記正極露出部が重ねられた正極接続領域が形成されており、
前記電極体の前記正極接続領域を前記集電板で挟み込むと共に、昇華温度が250℃〜500℃の熱分解樹脂を前記正極接続領域と前記集電板の少なくとも一方に付与する樹脂付与工程と、
前記熱分解樹脂にレーザーを照射し、前記熱分解樹脂が昇華し始めた際に前記集電板と前記正極接続領域とを加圧して圧接する圧接工程と
を備えている、二次電池の製造方法。
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