JP6809281B2 - 光偏向器及び光走査装置及び画像投影装置及び物体認識装置 - Google Patents
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Description
この光偏向器の一つとして、梁状弾性部材に薄膜化した圧電材料を重ね合わせた圧電アクチュエータ方式を採用した圧電型光偏向器が知られており、これは圧電体の伸縮が梁である支持体に伝達され、梁を上下に振動させることによって反射面を変位させている。また、互いに直交する第1軸と第2軸との2軸に対して個別の駆動用圧電体を設けることにより、2軸間において互いに異なる速度及び異なる駆動特性を持たせることができる。
今までの光偏向器では、高速性向上や走査角度の拡大に伴いトーションバー及び反射ミラー周辺における応力集中が増大し、反射膜の剥がれやトーションバーの破断リスクが高まるため、反射ミラーのサイズは性能向上に対してトレードオフの関係にあり、光偏向器の走査性能を向上させる場合には光走査時における画像輝度低下や照射ビーム品質が劣化し易くなるという問題点があった。
この技術では、ミラー反射面を有するミラー部を外部から支持する可動枠を両側から支持すると共に、ミラー部を所定の軸周りに揺動させる水平駆動梁を備え、可動枠の所定領域を肉抜きすることによりミラー部に加わる応力を緩和させている。
本発明は上述の問題点を解消し、反射膜の剥がれやトーションバーの破断を抑制しつつ、高品質の光走査性能を実現することが可能な光偏向器の提供を目的とする。
[光走査システム]
先ず、図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る駆動装置を適用した光走査装置としての光走査システムについて詳細に説明する。
図1は、光走査システムの一例を示す概略図である。図1に示すように光走査システム10は、駆動装置11の制御に従って光源装置12から照射された光を光偏向器13の有する反射部材14により偏向して、被走査面15を光走査するシステムである。
駆動装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を備えた電子回路ユニットである。光偏向器13は、例えば反射部材14を有し、反射部材14を変位可能なMEMS(Micro Electromechanical Systems)デバイスである。光源装置12は、例えばレーザを照射するレーザ装置である。なお被走査面15は、例えばスクリーンである。
駆動装置11は、取得した光走査情報に基づいて光源装置12及び光偏向器13の制御命令を生成し、制御命令に基づいて光源装置12及び光偏向器13に駆動信号を出力する。
これにより、例えば光走査情報の一例である画像情報に基づいた駆動装置11の制御によって、光偏向器13の反射部材14を所定の範囲で2軸方向に往復動させ、反射部材14に入射する光源装置12からの照射光を偏向して光走査することにより、被走査面15に任意の画像を投影することができる。
なお、光偏向器13の詳細及び本実施形態の駆動装置11による制御の詳細については後述する。
図2は、光走査システム10の一例のハードウェア構成図である。
図2に示すように、光走査システム10は駆動装置11、光源装置12及び光偏向器13を備え、それぞれが電気的に接続されている。
このうち駆動装置11は、CPU20、RAM21(Random Access Memory)、ROM22(Read Only Memory)、FPGA23、外部I/F24、光源装置ドライバ25、光偏向器ドライバ26を備えている。
CPU20は、ROM22等の記憶装置からプログラムやデータをRAM21上に読み出し、処理を実行して駆動装置11の全体制御や機能を実現する演算装置である。
ROM22は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の記憶装置であり、CPU20が光走査システム10の各機能を制御するために実行する処理用プログラムやデータを記憶している。
FPGA23は、CPU20の処理に従って光源装置ドライバ25及び光偏向器ドライバ26に適した制御信号を出力する回路である。
外部I/F24は、例えば外部装置やネットワーク等とのインタフェースである。外部装置には、例えばPC(Personal Computer)等の上位装置、USBメモリ、SDカード、CD、DVD、HDD、SSD等の記憶装置が含まれる。またネットワークは、例えば自動車のCAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット等である。外部I/F24は、外部装置との接続または通信を可能にする構成であればよく、外部装置毎に外部I/F24が用意されてもよい。
光偏向器ドライバ26は、入力された制御信号に従って光偏向器13に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
駆動装置11において、CPU20は外部I/F24を介して外部装置やネットワークから光走査情報を取得する。なお、CPU20が光走査情報を取得することができる構成であればよく、駆動装置11内のROM22やFPGA23に光走査情報を格納する構成としてもよいし、駆動装置11内に新たにSSD等の記憶装置を設けて、その記憶装置に光走査情報を格納する構成としてもよい。
本実施形態に係る駆動装置11は、CPU20の命令及び図2に示したハードウェア構成によって、次に説明する機能構成を実現することができる。
次に、図3を参照して光走査システム10の駆動装置11の機能構成について説明する。図3は、光走査システム10の駆動装置11の一例の機能ブロック図である。
図3に示すように、駆動装置11は機能として制御部30と駆動信号出力部31とを有する。
制御部30は、例えばCPU20、FPGA23等により実現され、外部装置から光走査情報を取得し、光走査情報を制御信号に変換して駆動信号出力部31に出力する。例えば制御部30は制御手段を構成し、外部装置等から画像データを光走査情報として取得し、所定の処理により画像データから制御信号を生成して駆動信号出力部31に出力する。
駆動信号は、光源装置12または光偏向器13の駆動を制御するための信号である。例えば光源装置12においては、光の照射タイミング及び照射強度を制御する駆動電圧である。また、例えば光偏向器13においては、光偏向器13の有する反射部材14を可動させるタイミング及び可動範囲を制御する駆動電圧である。なお駆動装置11は、光源装置12や受光装置等の外部装置から光の照射タイミングや受光タイミングを取得し、これらを光偏向器13の駆動に同期するようにしてもよい。
次に、図4を参照して光走査システム10が被走査面15を光走査する処理について説明する。図4は、光走査システム10に係る処理の一例のフローチャートである。
ステップS11において、制御部30は外部装置等から光走査情報を取得する。
ステップS12において、制御部30は取得した光走査情報から制御信号を生成し、制御信号を駆動信号出力部31に出力する。
ステップS13において、駆動信号出力部31は入力された制御信号に基づいて駆動信号を光源装置12及び光偏向器13に出力する。
ステップS14において、光源装置12は入力された駆動信号に基づいて光照射を行う。また光偏向器13は、入力された駆動信号に基づいて反射部材14の可動を行う。光源装置12及び光偏向器13の駆動により、任意の方向に光が偏向され光走査される。
また、上記光走査システム10では、一つの駆動装置11に光源装置12及び光偏向器13の制御部30の機能及び駆動信号出力部31の機能を設けているが、これらの機能は別体として存在していてもよく、例えば制御部30を有した駆動装置11とは別に駆動信号出力部31を有した駆動信号出力装置を設ける構成としてもよい。なお、上記光走査システム10のうち、反射部材14を有した光偏向器13と駆動装置11により光偏向を行う照射手段としての光偏向システムを構成してもよい。
次に、図5及び図6を参照して本実施形態の駆動装置11を適用した画像投影装置について詳細に説明する。
図5は、画像投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイ装置500を搭載した自動車400の実施形態に係る概略図である。また、図6はヘッドアップディスプレイ装置500の一例の概略図である。
図5に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、例えば、自動車400のウインドシールド(フロントガラス401等)の付近に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置500から発せられる投射光Lがフロントガラス401で反射され、ユーザである観察者(運転者402)に向かう。
これにより、運転者402は、ヘッドアップディスプレイ装置500によって投影された画像等を虚像として視認することができる。なお、ウインドシールドの内壁面にコンバイナを設置し、コンバイナによって反射する投射光によってユーザに虚像を視認させる構成にしてもよい。
そして、偏向されたレーザ光は、自由曲面ミラー509と中間スクリーン510と投射ミラー511とから構成される投射光学系を経て、スクリーンに投影される。
上記ヘッドアップディスプレイ装置500は、中間スクリーン510に表示される中間像を自動車400のフロントガラス401に投射することで、その中間像を運転者402に虚像として視認させる。
中間スクリーン510は、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイで構成されており、中間スクリーン510に入射してくる投射光Lをマイクロレンズ単位で拡大する。
光偏向器13は、反射部材14を2軸方向に往復移動させ、反射部材14に入射する投射光Lを二次元走査する。この光偏向器13の駆動制御は、レーザ光源501R,501G,501Bの発光タイミングに同期して行われる。
例えば、机等に置かれ表示スクリーン上に画像を投影するプロジェクタや、観測者の頭部等に装着される装着部材に搭載され装着部材が有する反射透過スクリーンに投影または眼球をスクリーンとして画像を投影するヘッドマウントディスプレイ装置等にも、同様に適用することができる。
また、画像投影装置は車両や装着部材だけでなく、例えば航空機、船舶、移動式ロボット等の移動体、あるいはその場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボット等の非移動体に搭載されてもよい。
次に、図7及び図8を参照して、本実施形態の駆動装置11を適用した光書込装置について詳細に説明する。
図7は、光書込装置600を組み込んだ画像形成装置の一例である。また図8は、光書込装置の一例の概略図である。
図7に示すように、光書込装置600はレーザ光によるプリンタ機能を有するレーザプリンタ650等に代表される画像形成装置の構成部材として使用される。画像形成装置において光書込装置600は、1本または複数本のレーザビームで被走査面15である感光体ドラムを光走査することにより、感光体ドラムに光書き込みを行う。
そして光偏向器13で偏向されたレーザ光は、その後、第1レンズ602a、第2レンズ602b、反射ミラー部602cからなる走査光学系602を経て被走査面15(例えば感光体ドラムや感光紙)に照射されて光書込みを行う。走査光学系602は、被走査面15にスポット状に光ビームを結像する。
また、光源装置12及び反射部材14を有する光偏向器13は、駆動装置11の制御に基づき駆動する。
また、走査光学系を異ならせて1軸方向だけでなく2軸方向に光走査可能にすることで、レーザ光をサーマルメディアに偏向して光走査し、加熱することで印字するレーザラベル装置等の画像形成装置の構成部材として使用することができる。
光書込装置600に適用される反射部材14を有した光偏向器13は、ポリゴンミラー等を用いた回転多面鏡に比べ駆動のための消費電力が小さく、光書込装置600の省電力化に有利である。
また、光偏向器13の振動時における風切り音は回転多面鏡に比べ小さいため、光書込装置600の静粛性の改善に有利である。光書込装置600は回転多面鏡に比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また光偏向器13の発熱量もわずかであるため小型化が容易であり、よって画像形成装置の小型化に有利である
次に、図9及び図10を参照して上記本実施形態の駆動装置を適用した物体認識装置について詳細に説明する。
図9は、物体認識装置の一例であるレーザレーダ装置を搭載した自動車の概略図である。また、図10はレーザレーダ装置の一例の概略図である。物体認識装置は対象方向の物体を認識する装置であり、例えばレーザレーダ装置である。
図10に示すように、光源装置12から出射されたレーザ光は、発散光をほぼ平行光とする光学系であるコリメートレンズ703と平面ミラー704とから構成される入射光学系を経て、反射部材14を有する光偏向器13で1軸もしくは2軸方向に走査される。
そして、投光光学系である投光レンズ705等を経て装置前方の被対象物702に照射される。光源装置12及び光偏向器13は、駆動装置11により駆動を制御される。被対象物702で反射された反射光は、光検出器709により光検出される。
すなわち、反射光は受光光学系である集光レンズ706等を経て撮像素子707により受光され、撮像素子707は検出信号を信号処理回路708に出力する。信号処理回路708は入力された検出信号に2値化やノイズ処理等の所定の処理を行い、結果を測距回路710に出力する。
反射部材14を有する光偏向器13は回転多面鏡に比べて破損しづらく小型であるため、耐久性の高い小型のレーダ装置を提供することができる。
このようなレーザレーダ装置は、例えば車両、航空機、船舶、ロボット等に取り付けられ、所定範囲を光走査して障害物の有無や障害物までの距離を認識することができる。
例えば、手や顔を光走査して得た距離情報から形状等の物体情報を算出し記録と参照することで対象物を認識する生体認証や、対象範囲への光走査により侵入物を認識するセキュリティセンサ、光走査により得た距離情報から形状等の物体情報を算出して認識し3次元データとして出力する3次元スキャナの構成部材等にも同様に適用することができる。
次に、図11を参照して本実施形態の駆動装置により制御される光偏向器のパッケージングについて説明する。
図11は、パッケージングされた光偏向器の一例の概略図である。
図11に示すように、光偏向器13は筐体部たるパッケージ部材802の内側に配置される取付部材801に取り付けられ、パッケージ部材802の一部を透過部材803で覆われて密閉されることでパッケージングされる。
さらに、パッケージ内は窒素等の不活性ガスが密封されている。これにより光偏向器13の酸化による劣化が抑制され、さらに温度等の環境の変化に対する耐久性が向上する。
次に、以上説明した光偏向システム、光走査システム、画像投射装置、光書込装置、物体認識装置に使用される光偏向器の詳細及び本実施形態の駆動装置による制御の詳細について説明する。
まず、図12を参照して、光偏向器について詳細に説明する。
図12は、主走査方向たるX方向と副走査方向たるY方向との2軸方向に光偏向可能な光偏向器の平面図である。図13は図12のP−P断面図、図14は図12のQ−Q断面図をそれぞれ示す。
以降の説明では、反射面を構成する反射部材14が後述するように第1軸O1周りに駆動したときに反射部材14によって反射された光束Lが移動する方向を主走査方向とし、反射部材14が第2軸O2周りに駆動したときの光束Lの移動する方向を副走査方向とする。なお、このような構成に限定されるものではなく、主走査方向と副走査方向とは構成に応じて適宜変えてもよい。
光偏向器13はまた、ミラー部101及び第1駆動部110a,110bを支持する支持枠としての第1支持部120を有している。
光偏向器13はまた、第1支持部120に接続されミラー部101及び第1支持部120をX軸に平行な第2軸O2周りに駆動する第2駆動部130a,130bと、第2駆動部130a,130bを支持する第2支持部140とを有している。
光偏向器13は、第1駆動部110a,110b及び第2駆動部130a,130b及び駆動装置に電気的に接続される電極接続部150を有している。
シリコン活性層163は、X軸方向またはY軸方向に対してZ軸方向への厚みが小さいため、シリコン活性層163で構成された部材は弾性を有する弾性部としての機能を備える。本実施形態においては、各図に示すように、第2駆動部130a,130bと第1駆動部110a,110bとは何れもシリコン活性層163を基材としており、弾性部としての機能を有している。
なお、SOI基板は必ず平面状である必要はなく曲率等を有していてもよい。また、エッチング処理等により一体的に成形でき部分的に弾性を持たせることができる基板であれば、光偏向器13の形成に用いられる部材はSOI基板に限られない。
第1駆動部110a,110bは、ミラー部基体102に一端が接続され第1軸O1方向にそれぞれ延びてミラー部101を変位可能に支持する2つのトーションバー111a,111bと、一端がトーションバー111a,111bに接続され他端が第1支持部120の内周部に接続される第1圧電駆動部112a,112bとを有している。
上部電極203及び下部電極201は、例えば金(Au)または白金(Pt)等を用いて構成される。圧電部202は、例えば圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用いて構成される。
第1支持部120は、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163を用いて構成され、ミラー部101を囲うように形成された矩形形状の支持体である。なお、下部電極との電気的接続を避けるため、シリコン活性層163の上に例えば酸化シリコン層からなる絶縁層を有する構成としてもよい。
第2駆動部130a,130bの一端は第1支持部120の外周部に接続され、他端は第2支持部140の内周部に接続されている。このとき、第2駆動部130aと第1支持部120との接続箇所及び第2駆動部130bと第1支持部120との接続箇所、さらに第2駆動部130aと第2支持部140との接続箇所及び第2駆動部130bと第2支持部140との接続箇所は、反射部材14の中心に対して点対称となることが望ましい。
なお、上部電極203と下部電極201とは、それぞれが電極接続部150と直接接続されていてもよいし、電極同士を接続する等により間接的に接続されていてもよい。
図15において、(a)は従来の光偏向器に用いられるミラー部101Aを、(b)は本発明の光偏向器13に用いられるミラー部101をそれぞれ示しており、各ミラー部101A,101は所定の軸方向に揺動可能な両持ちタイプの光偏向ミラーである。
ミラー部101A,101は、例えば、円板形状のミラー部基体102A,102と、ミラー部基体102A,102の+Z側の面上に設けられ反射面を形成する反射部材14A,14とから構成される。ミラー部基体102A,102は、例えば、シリコン活性層163を用いて構成される。
リブは、例えばシリコン支持層161及び酸化シリコン層162を用いて構成され、ミラー部101A,101の変位によって生じる反射部材14A,14の歪みを抑制することができる。
また、従来の光偏向器では反射部材14Aが円形であるのに対し、本発明の光偏向器13が有する反射部材14は、円形である本体部14cと、本体部14cから各テーパ領域103a,103b方向、すなわちミラー部101の変位可能な軸線である第1軸O1方向に突出形成された突出部14a,14bとを有している。
なお、ミラー部基体102はシリコン活性層163に代えてシリコン支持層161、酸化シリコン層162によって構成されていてもよい。また、シリコン活性層163はSOI基板をエッチング処理等により形成されてもよい。
層間膜42は例えば酸化シリコン等によって構成され、反射膜41は例えばアルミニウム、金、銀等を含む金属薄膜によって構成される。ミラー部基体102の外周縁と反射部材14の外周縁とは、エッチング処理等の製造工程上、0以上の距離である所定の幅43を有するようにそれぞれ形成される。
この構成により、エッチング幅を一定として加工精度を高めることができると共に、反射部材14がミラー部基体102の外側にはみ出してこのはみ出た部分からの膜剥がれによって反射部材14が破損することを防止することができる。
また、ミラー部101Aとトーションバー111aA,111bAとの接続部における第2軸O2方向への接線と、反射部材14Aの第1軸O1方向における端点での第2軸O2方向の接線とが等しい場合、反射部材14Aの第1軸O1方向端点を起点として反射膜及び層間膜が剥がれる虞がある。
また、反射部材14がテーパ領域103a,103bすなわち第1軸O1方向に突出形成された突出部14a,14bを有することにより、反射部材14の面積を拡大してシリコン活性層163との膜密着性を向上し、反射部材14の反射膜41及び層間膜42が剥がれることを防止している。
さらに、第1軸O1方向における反射部材14の端点を応力集中箇所から離すことにより、端点から反射膜41及び層間膜42が剥がれることを防止している。さらに反射部材14の面積が増加することにより照射された光の反射効率が向上し、同時に光が反射されないことによるビーム径歪みの発生を低減することができる。
また反射部材14は、本体部14cと各突出部14a,14bとの接続部において鋭角箇所が形成されないように曲線的に接続形成されている。この構成により、光偏向器13を共振振動させる際に生じるトーションバー111a,111bの破断及び反射部材14の反射膜41及び層間膜42が剥がれの発生を低減し、高品質な光走査を継続して実現することが可能な光偏向器13を提供することができる。
また、ミラー部101を第1軸O1周りまたは第2軸O2周りに変位可能であれば、各構成部の形状は実施形態の形状に限定されない。例えば、トーションバー111a,111bや第1圧電駆動部112a,112bが曲率を有した形状であってもよい。
このとき絶縁層の上に電極配線を設け、また上部電極203または下部電極201と電極配線とが接続される接続スポットに、開口部として部分的に絶縁層を除去または絶縁層を形成しないことにより、第1駆動部110a,110b、第2駆動部130a,130b及び電極配線の設計自由度を上げ、さらに電極同士の接触による短絡を抑制することができる。なお、絶縁層は絶縁性を有する部材であればよく、また反射防止部材としての機能を備えさせてもよい。
次に、可動装置である第1駆動部110a,110b及び第2駆動部130a,130bを駆動させる駆動装置11の制御の詳細について説明する。
第1駆動部110a,110b、第2駆動部130a,130bが有する圧電部202は、分極方向に正または負の電圧が印加されると印加電圧の電位に比例した変形(例えば伸縮)が生じ、いわゆる逆圧電効果を発揮する。第1駆動部110a,110b、第2駆動部130a,130bは、上記の逆圧電効果を利用してミラー部101を変位させる。
このとき、反射部材14に入射した光束が偏向される角度を振れ角とよぶ。圧電部202に電圧を印加していないときの振れ角をゼロとし、その角度よりも偏向角度が大きい場合を正の振れ角、小さい場合を負の振れ角とする。
第1駆動部110a,110bでは、第1圧電駆動部112a,112bが有する圧電部202に上部電極203及び下部電極201を介して駆動電圧が並列に印加されると、それぞれの圧電部202が変形する。この圧電部202の変形による作用により、第1圧電駆動部112a,112bが屈曲変形する。その結果、2つのトーションバー111a,111bの捩れを介してミラー部101に第1軸O1周りの駆動力が作用し、ミラー部101が第1軸O1周りに変位する。第1駆動部110a,110bに印加される駆動電圧は、駆動装置11によって制御される。
特に、例えば正弦波形電圧の周波数がトーションバー111a,111bの共振周波数と同程度である約20kHzに設定された場合、トーションバー111a,111bの捩れによる機械的共振が生じることを利用して、ミラー部101を約20kHzで共振振動させることができる。
図19は、光偏向器の第2駆動部130a、130bの駆動を模式的に表した模式図である。斜線で表されている領域がミラー部101等である。
第2駆動部130aが有する複数の第2圧電駆動部131a〜131fのうち、最もミラー部101に距離が近い第2圧電駆動部(131a)から数えて偶数番目の第2圧電駆動部、すなわち第2圧電駆動部131b,131d,131fを圧電駆動部群Aとする。
また、第2駆動部130bが有する複数の第2圧電駆動部132a〜132fのうち、最もミラー部101に距離が近い第2圧電駆動部(132a)から数えて奇数番目の第2圧電駆動部、すなわち第2圧電駆動部132a,132c,132eを同様に圧電駆動部群Aとする。圧電駆動部群Aは駆動電圧が並行に印加されると、図19(a)に示すようにそれぞれ同一方向に屈曲変形し、正の振れ角となるようにミラー部101が第2軸O2周りに可動する。
また、第2駆動部130bが有する複数の第2圧電駆動部132a〜132fのうち、最もミラー部に距離が近い第2圧電駆動部(132a)から数えて偶数番目の第2圧電駆動部、すなわち132b,132d,132fを同様に圧電駆動部群Bとする。圧電駆動部群Bは駆動電圧が並行に印加されると圧電駆動部群Bが同一方向に屈曲変形し、図19(c)に示すように、負の振れ角となるようにミラー部101が第2軸O2周りに可動する。
図12に示すように、第2駆動部130a,130bは第1支持部120の中心点を中心として第1支持部120に対してそれぞれ点対称となるように接続されている。そのため圧電駆動部群Aに駆動電圧を印加すると、第2駆動部130aでは第1支持部120との接続部に第1支持部120を+Z方向に動かす駆動力が生じ、第2駆動部130bでは第1支持部120との接続部に第1支持部120を−Z方向に動かす駆動力が生じ、可動量が累積されてミラー部101の第2軸O2周りの振れ角度を大きくすることができる。
図19(a)〜図19(c)を連続的に繰り返すように第2圧電駆動部131a〜131f,132a〜132fに駆動電圧を印加することにより、ミラー部101を第2軸O2周りに駆動させることができる。
第2駆動部に印加される駆動電圧は、駆動装置11によって制御される。
図20を参照して、圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧(以下、駆動電圧A)、圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧(以下、駆動電圧B)について説明する。また、駆動電圧A(第1駆動電圧)を印加する印加手段を第1印加手段、駆動電圧B(第2駆動電圧)を印加する印加手段を第2印加手段とする。
また、駆動電圧Aの波形は、電圧値が極小値から次の極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をTrA、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をTfAとしたとき、例えばTrA:TfA=9:1となる比率が予め設定されている。このとき一周期に対するTrAの比率を駆動電圧Aのシンメトリという。
また、駆動電圧Bの波形は、電圧値が極小値から次の極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をTrB、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をTfBとしたとき、例えばTfB:TrB=9:1となる比率が予め設定されている。このとき一周期に対するTfBの比率を駆動電圧Bのシンメトリという。
また図20(c)に示すように、例えば駆動電圧Aの波形の周期TAと駆動電圧Bの波形の周期TBとは、互いに同一となるように設定されている。
また本実施形態では、駆動電圧A,Bとしてノコギリ波状の波形の駆動電圧を用いているが、これに限らずノコギリ波状の波形の頂点を丸くした波形の駆動電圧や、ノコギリ波状の波形の直線領域を曲線とした波形の駆動電圧等、光偏向器13のデバイス特性に応じて波形を変えることも可能である。この場合のシンメトリは、一周期に対する立ち上がり時間の比率、または一周期に対する立ち下がり時間の比率となる。このとき、立ち上がり時間、立ち下がり時間のどちらを基準にするかは、任意に設定してもよい。
反射部材16は、図21(a)に示すように、円形である本体部16cと、本体部16cから各テーパ領域103a,103b方向、すなわちミラー部104の変位可能な軸線である第1軸O1方向に突出形成された突出部16a,16bとを有している。
また反射部材16は、図21(b)に示すように、反射部材14と同様、層間膜42の上面に反射膜41を積層させて構成されている。
この構成により、シリコン活性層163と反射膜41との密着度を向上することができ、反射部材14よりも剥がれにくい反射部材16を提供することができる。
なお、穴形状である分断穴44に代えて、図21(c)に示す溝形状の分断溝45を形成しても、同様の作用効果を得ることができる。
ミラー部基体50はその外形が楕円形状を呈しており、各トーションバー111a,111bとはそれぞれのテーパ領域103a,103bにおいて曲線的に接続されている。
反射部材17は、楕円形である本体部17cと、本体部17cから各テーパ領域103a,103b方向、すなわちミラー部105の変位可能な軸線である第1軸O1方向に突出形成された突出部17a,17bとを有している。
この構成により、軸線方向は回転モーメントの影響による膜剥がれの影響が小さいことから、膜剥がれを抑制しつつ反射領域を拡大することが可能なミラー部を提供することができる。
この構成により、ミラー部101に比して反射部材14の回転量を増大させることができる。なお、上記構成ではミラー部106の変位中心線をS0としたが、ミラー部106の変位中心線をS1としてもよい。
12 光源装置
13,19 光偏向器
14,16,17 反射部材
14a,14b,16a,16b,17a,17b 突出部
14c,16c,17c 本体部
43 所定の幅
101,104,105,106 ミラー部
103a,103b テーパ領域
111a,111b トーションバー
112a,112b 駆動梁(第1圧電駆動部)
120 支持枠(第1支持部)
500 画像投影装置(ヘッドアップディスプレイ装置)
501R,501G,501B レーザ光源
507 合成手段(光量調整部)
700 物体認識装置(レーザレーダ装置)
710 測距回路
Claims (10)
- 光を反射する反射部材を有し軸線周りに変位可能なミラー部と、
一端が前記ミラー部と接続し前記ミラー部を支持する一対のトーションバーと、
前記トーションバーの他端と接続し前記トーションバーを変位可能に支持する一対の駆動梁と、
前記各駆動梁が接続する支持枠とを有し、
前記反射部材は本体部と該本体部から前記軸線方向に突出形成された突出部とを有することを特徴とする光偏向器。 - 請求項1記載の光偏向器において、
前記反射部材はその外周縁が前記ミラー部の外周縁よりも所定の幅を持って内側に位置するように形成されていることを特徴とする光偏向器。 - 請求項1または2記載の光偏向器において、
前記ミラー部及び前記本体部は共に円形状であり、前記突出部は前記本体部に対して曲線的に接続することを特徴とする光偏向器。 - 請求項1または2記載の光偏向器において、
前記ミラー部及び前記本体部は共に前記軸線方向に長軸を有する楕円形状であり、前記突出部は前記本体部に対して曲線的に接続することを特徴とする光偏向器。 - 請求項1ないし4の何れか一つに記載の光偏向器において、
前記各トーションバーは前記ミラー部から遠ざかるに連れて幅が徐々に狭まるよう形成されたテーパ領域をそれぞれの一端に有し、前記突出部は前記テーパ領域上に形成されることを特徴とする光偏向器。 - 請求項5記載の光偏向器において、
前記本体部または前記突出部または前記テーパ領域は前記軸線に対して非対称な非対称部を有することを特徴とする光偏向器。 - 請求項1ないし6の何れか一つに記載の光偏向器を備えた光走査装置であって、
光を発する光源と、前記光源から発せられ前記光偏向器で偏向された前記光を所定の方向に照射する照射手段とを有することを特徴とする光走査装置。 - 請求項7記載の光走査装置を備えた画像投影装置であって、
前記光偏向器は前記光を偏向して投影することを特徴とする画像投影装置。 - 請求項8記載の画像投影装置において、
前記光源を複数有し、前記各光源から発せられた複数の光を合成する合成手段とを有し、前記光偏向器は前記合成手段により合成された前記各光を偏向して投影することを特徴とする画像投影装置。 - 請求項1ないし6の何れか一つに記載の光偏向器を備えた物体認識装置であって、
光を発する光源と、被対象物の有無及び被対象物との距離を算出する測距回路とを有す
ることを特徴とする物体認識装置。
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