本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1および図2を参照して、プリンタ1の概略構成について説明する。なお、図1の上方、下方、右下方、左上方、右上方、および左下方が、各々、プリンタ1の上方、下方、前方、後方、右方、および左方である。
図1に示すように、プリンタ1は、印刷媒体であるTシャツ等の布帛(図示外)に対して、液体のインクを吐出することで印刷を行うインクジェットプリンタである。プリンタ1は、紙等を印刷媒体としてもよい。本実施形態においては、プリンタ1は、互いに異なる5種のインク(ホワイト(W)、ブラック(K)、イエロー(Y)、シアン(C)、およびマゼンタ(M))を下方へ向けて吐出することで、印刷媒体にカラー画像の印刷を行うことができる。以下の説明では、5種のインクのうち、ホワイトのインクを白インクといい、ブラック、シアン、イエロー、およびマゼンタの4色のインクを総称する場合はカラーインクという。以下の説明では、プリンタ1が印刷媒体を搬送する搬送方向(前後方向、副走査方向)を第一方向ともいい、第一方向と直交する方向(左右方向、走査方向)を第二方向ともいう。
プリンタ1は、筐体2、プラテン駆動機構6、一対のガイドレール3,3、プラテン5、トレイ4、枠体10、クリアランスセンサ8、ガイドシャフト9、レール7、キャリッジ20、支持部21L,21R、ヘッドユニット100,200、駆動ベルト101、駆動モータ19、基板15、および二つのファン18,18を主に備える。
筐体2は、左右方向を長手方向とする略直方体状である。筐体2の右側手前の位置には、プリンタ1の操作を行うための操作部(図示せず)が設けられている。操作部は、ディスプレイおよび操作ボタンを備える。ディスプレイは、各種情報を表示する。操作ボタンは、ユーザがプリンタ1の各種動作に関する指示を入力する際に操作される。
プラテン駆動機構6は、一対のガイドレール3,3(図2参照)を備える。一対のガイドレール3,3は、プラテン5、およびトレイ4を前後方向に搬送可能に支持する。プラテン駆動機構6は、後端部に設けられたモータ(図示外)を駆動源として、プラテン5およびトレイ4を、一対のガイドレール3,3に沿って筐体2の前後方向に移動する。プラテン5は、筐体2の前後方向を長手方向とする平面視略長方形状の板状である。プラテン5は、後述する枠体10の下方に設けられている。プラテン5の上面には、例えばTシャツ等の布帛からなる印刷媒体が載置される。トレイ4は、平面視矩形状であり、プラテン5の下方に設けられている。トレイ4は、ユーザがTシャツ等をプラテン5に載置する際に、Tシャツのそで等を受けることで、当該そで等が筐体2内部に落ちないように保護する。
枠体10は、平面視略長方形状の枠状である。枠体10は、筐体2の上部に設置される。クリアランスセンサ8は、枠体10の前方の位置に、枠体10の左右方向に亘って設けられている。クリアランスセンサ8は、プリンタ1の印刷実行時にプラテン5が一対のガイドレール3,3に沿って筐体2内を前後方向に移動する際に、プラテン5に載置された布帛等の皺やゴミなどの障害物を検出する。
枠体10は、ガイドシャフト9と、レール7とを内側においてそれぞれ支持する。ガイドシャフト9は、枠体10内側において第二方向に延びる中心軸線を有する軸状部を備える軸部材である。レール7は、ガイドシャフト9に対向して配置され、第二方向に延びる棒状部材である。ガイドシャフト9とレール7とは、互いに前後方向に離間している。
キャリッジ20は、ガイドシャフト9に対して、ガイドシャフト9に沿って左右方向に搬送可能に支持されている。支持部21L,21Rは、キャリッジ20の第一方向の一端部である第一端部28に設けられている。支持部21L,21Rは、ガイドシャフト9を挿通して、ガイドシャフト9に沿ってキャリッジ20を摺動可能に支持する。言い換えると、支持部21L,21Rは、ガイドシャフト9に係合する筒状である。図示しないが、支持部21L,21Rそれぞれの内部にはベアリング機構が設けられている。このため、キャリッジ20は、ガイドシャフト9に沿って円滑に摺動される。ヘッドユニット100,200は、キャリッジ20に搭載される。ヘッドユニット100,200それぞれの底面には、インクを印刷媒体へ向けて吐出可能なヘッド部105,205が設けられている(図8参照)。
図示しないが、ヘッド部105,205の内部は、カラーインクのそれぞれに対応して、左右方向に沿って4つに区分されている。ヘッド部105,205の底面には、水平面と平行な平面状の吐出面が形成されている。吐出面には、カラーインクの何れかを第一方向へ向けて吐出可能な微細な吐出口が複数設けられる。複数の吐出口は、吐出面の前側から前後方向に沿って後方へ1列に、且つ左右方向に沿って複数列になって並んでいる。複数の吐出口は、ヘッド部105,205の内部に設けられる複数の吐出チャンネル(図示外)と対応している。複数の吐出チャンネルは、ヘッド部105,205の内部に設けられる複数の圧電素子(図示外)が駆動することで、それぞれに対応する吐出口から、インクを下方向へ向けて吐出可能である。即ち、ヘッド部105は、ブラックインクを吐出する複数の吐出口を有する吐出口群、シアンインクを吐出する複数の吐出口を有する吐出口群、イエローインクを吐出する複数の吐出口を有する吐出口群、およびマゼンダインクを吐出する複数の吐出口を有する吐出口群を有する。また、ヘッド部205は、白インクを吐出する。ヘッド部205は、ヘッド部105と同様に4つに区分されて構成されているが、全ての吐出口から白インクが吐出される。以下の説明では、ヘッドユニット100,200それぞれのヘッド部105,205がインクを吐出する方向である下方向を第三方向ともいい、第三方向とは反対の方向である上方向を第四方向ともいう。
駆動ベルト101は、枠体10内側において、左右方向に沿って架け渡される帯状である。駆動ベルト101は、可撓性を有する樹脂製である。駆動モータ19は、枠体10内側の前方右側に設けられる。駆動モータ19は、前後方向においてガイドシャフト9とレール7との間に設けられる。駆動モータ19は、正逆回転可能であり、駆動ベルト101を介して、キャリッジ20と連結されている。駆動モータ19が駆動ベルト101を駆動することにより、キャリッジ20が第二方向に往復移動される。キャリッジ20は、ヘッドユニット100,200それぞれのヘッド部105,205を第一方向と直交する方向である第二方向に往復移動する。
基板15は、キャリッジ20の第二方向における位置を検出する光学センサ(図示せず)を下側の面に備えた基板である。基板15は、キャリッジ20の第一端部28にビス留めによって固定されている。基板15は、キャリッジ20の第二方向における往復移動に随伴して第二方向に移動する。光学センサは、基板15と電気的に接続されている。枠体10の前方側の外側には、第二方向に帯状に延設され、キャリッジ20の第二方向における位置を示すパターンが形成されたエンコーダストリップ(図示せず)が配設されている。エンコーダストリップには、光を透過させる透光部と光を遮断する遮光部とが、長手方向に等ピッチで交互に配置されたパターンが記されている。光学センサによって検出されたパターンに基づく信号は、基板15に出力される。基板15に搭載された各種電子素子からなる制御部は、当該信号に基づいてキャリッジ20の第二方向における位置を取得する。基板15は、キャリッジ20の第二方向における位置情報を、プリンタ1の主制御を司るメイン基板(図示せず)に出力する。メイン基板は、基板15から出力された位置情報に基づいて、駆動モータ19の駆動およびヘッド部105,205内部の複数の圧電素子の駆動を制御する。
二つのファン18,18は、枠体10の後方の端部にそれぞれ設けられる。二つのファン18,18は、汎用のファンであってもよい。二つのファン18,18は、前方側から後方側に向けて空気を排出する。本実施形態では、枠体10内側にキャリッジ20が配置される。即ち、枠体10内側の領域において、プリンタ1による印刷媒体への印刷が行われる。また、プラテン5は、印刷媒体を筐体2内部において前後方向に搬送する。したがって、印刷時には、筐体2の内部である枠体10内側の印刷領域において、ヘッドユニット100,200それぞれのヘッド部105,205から吐出されたインクが微小液滴となったインク粒子によるミストが発生する場合がある。ミストが発生した場合、発生したミストが、筐体2の内側に拡散される可能性がある。二つのファン18,18は、枠体10内側の印刷領域で生じたミストを、枠体10内側の空気とともに、枠体10の内側の印刷領域および筐体2の内側から後方側に向けて排出できる。
図3を参照して、枠体10について詳細に説明する。枠体10は、前方側にガイドシャフト9を、後方側にレール7を内側においてそれぞれ支持する。キャリッジ20は、ガイドシャフト9とレール7との間を、前後方向に架設する。キャリッジ20の第一端部28とは反対側(後方側)の第二端部29に、左側押圧部22、右側押圧部23および規制部24が設けられている。左側押圧部22および右側押圧部23は、ガイドシャフト9と対向する側(前側)のレール7の前端部73を水平後方側に押圧する。規制部24は、レール7の第四方向側の端部である上端部71に当接して、キャリッジ20の第三方向側への移動を規制する。言い換えると、キャリッジ20の第二端部29は、左側押圧部22、右側押圧部23および規制部24においてレール7に接している。
印刷品質に影響を及ぼすため、キャリッジ20へのヘッド部105,205の組み付けは、非常に高い精度で位置決めされる必要がある。例えば、ヘッド部をキャリッジ20に組み付ける場合、一種類のインクを吐出するヘッド部ごとに、一つ一つを個別に位置決めして、キャリッジ20に組み付ける場合がある。狭い作業領域で、キャリッジ20に対して複数のヘッド部を一つ一つ組み付ける作業は煩雑である。従来のプリンタは、正確な組み付け作業のためのユーザの作業スペースを確保するため、ユーザの手前側にあたる前方側にレール7に対応する部品を配置し、ガイドシャフト9に対応する部品を後方側に配置している。本実施形態では、ヘッドユニット100,200それぞれのヘッド部105,205の内部が4つに区分されている。言い換えると、一つのヘッドユニットが4種類のインクを吐出することが可能である。このため、キャリッジ20へのヘッド部105,205の組み付け作業を、従来よりも比較的容易に行うことができる。したがって、プリンタ1は、ユーザの作業スペースを余分に広く確保する必要がなく、枠体10の前方側にガイドシャフト9を、後方側にレール7を配置している。
ヘッドユニット100,200は、キャリッジ20において、第一方向に配列される。ヘッドユニット100は、ヘッドユニット200よりも前方に位置する。ヘッドユニット100,200は、ガイドシャフト9に沿って、枠体10内側を左右方向に往復移動可能である。ヘッドユニット100はカラーインクを吐出可能であり、ヘッドユニット200は白インクを吐出可能である。
本実施形態では、白インクは、カラーインクが吐出される前に、印刷媒体の色が濃い場合など印刷における下地として、印刷が行われる領域全体もしくは一部に吐出される。即ち、白インクは前処理用のインクである。カラーインクは、印刷が行われる領域全体もしくは一部に白インクが吐出された後、その領域に模様等を印刷するために使用される。即ち、カラーインクは後処理用のインクである。言い換えると、ヘッドユニット200は前処理用のヘッドユニットであり、ヘッドユニット100は後処理用のヘッドユニットである。なお、白インクは模様等を印刷する後処理用のインクとしても使用される。このように、プリンタ1は、印刷媒体の色に関わらず、様々な印刷を行うことができる。
例えば、ヘッドユニット100,200が第二方向に配列される場合、印刷媒体に必要な前処理用の印刷を全て行った後に、改めて後処理用の印刷を行うことが通常である。この場合、印刷領域における前処理用の印刷が全て終了されてから、再びプラテンが印刷開始位置に移動されて、印刷領域に対して後処理用の印刷が行われる。そのため、ユーザは、生産効率の向上を図りづらい。本実施形態では、プリンタ1は、ヘッドユニット100,200を第一方向に配列して印刷を行う。この場合、ヘッドユニット100,200それぞれの左右方向における位置が同じである。このため、ヘッドユニット200が白インクを吐出した直後にヘッドユニット100がカラーインクを吐出することによって、プリンタ1は、前処理用の印刷と後処理用の印刷とを、ほぼ同時に行うことができる。即ち、ヘッドユニット100,200が第一方向に並んで配列される場合には、前処理用の印刷と後処理用の印刷とを、同一の工程で行うことができる。これにより、プリンタ1は、印刷精度を低下させることなく、生産効率を向上させることができる。
前処理用のインクおよび後処理用のインクに関して、印刷媒体の色および印刷画像によっては、必ずしも前処理用の白インクが吐出された後に、後処理用のカラーインクが吐出されなくてもよい。より具体的には、前処理用の白インクのみが吐出された領域、または後処理用のカラーインクのみが吐出された領域があってもよい。また、本実施形態では、前処理用のインクとして白インク、後処理用のインクとしてカラーインクが使用されているが、前処理用のインクと後処理用のインクの組み合わせおよびインクの種類等は適宜変更可能であり、本実施形態の場合に限定されない。
なお、本実施形態のプリンタ1は、少なくとも2個のヘッドユニット100,200を備えていればよい。ヘッドユニットの数は図3の例に限られず、キャリッジ20は、3個以上のヘッドユニットを第一方向に配列してもよい。また、ヘッドユニット100,200に備えられる吐出口群の態様は、上述した例に限定されない。例えば、ヘッドユニットに一種類の液体を吐出する吐出群が一つ備えられていてもよい。白インクを吐出する吐出口群と、カラーインクを吐出する吐出口群とが、同じヘッドユニットに備えられていてもよい。また、ヘッドユニットには、インクを吐出する吐出口群だけではなく、抜染用の処理剤、抜染用のインク等を吐出する吐出口群が備えられていてもよい。
キャリッジ20にヘッドユニット100,200が第一方向に並んで配列される場合、キャリッジ20の前後方向における長さが比較的長くなる。キャリッジ20がガイドシャフト9に沿って左右方向に搬送される場合、キャリッジ20に左右方向の加速度が加わる。キャリッジ20に加わった左右方向の加速度は、キャリッジ20に左右方向の荷重をかける。キャリッジ20にかかる荷重は、キャリッジ20を左右方向に撓ませ、キャリッジ20の中心から左右方向(水平方向)の傾きを引き起こす。キャリッジ20の第一端部28は、支持部21L,21Rによってガイドシャフト9に支持されるため、キャリッジ20に生じた左右方向の傾きの影響は、第一端部28側よりも第二端部29側に生じやすい。左右方向の傾きの影響が第一端部28側と第二端部29側とで異なる場合、第一端部28と第二端部29との左右方向における位置にずれが生じる可能性がある。この場合、キャリッジ20に加わる左右方向の加速度の影響で、ヘッドユニット100,200それぞれの左右方向における位置が、キャリッジ20によって最初に配置されていた位置からずれる可能性がある。ひいては、ヘッドユニット100,200から吐出されるインクが印刷媒体に対して着弾する位置が、想定していた着弾位置から左右方向にずれて、プリンタ1の印刷品質が低下する可能性がある。
本実施形態では、キャリッジ20は、カラーインク(後処理用のインク)を吐出するヘッドユニット100を、白インク(前処理用のインク)を吐出するヘッドユニット200に対して第一端部28側に配置する。キャリッジ20の第一端部28は、支持部21L,21Rによってガイドシャフト9に支持される。このため、第一端部28は、キャリッジ20に生じた左右方向の傾きの影響を、第二端部29よりも受けにくい。前処理用のインクよりも高い精度で吐出されることが要求される後処理用のインクを吐出するヘッドユニット100を、左右方向の傾きの影響をより受けにくい第一端部28側に配置することによって、プリンタ1は、印刷品質を確保することができる。
図4から図7を参照して、キャリッジ20の第二端部29の構成について詳細に説明する。図5に示すように、キャリッジ20は、第二端部29の第二方向の両端のそれぞれに、左側押圧部22と右側押圧部23とを備える。言い換えると、第二端部29の左側に左側押圧部22が、右側に右側押圧部23がそれぞれ配置されている。左側押圧部22は、第二端部29の左側において、レール7を後方に押圧する。右側押圧部23は、第二端部29の右側において、レール7を後方に押圧する。第二端部29側における左右方向の傾きを低減して印刷品質を担保するため、第二端部29に左側押圧部22、右側押圧部23が設けられている。
キャリッジ20は、第二端部29において左側押圧部22および右側押圧部23の間に配置される下側押圧部25、および下側押圧部25の第四方向側に対向配置される規制部24を備える。下側押圧部25は、レール7を上方に押圧する。キャリッジ20には、キャリッジ20自身の重量に加えて、ヘッドユニット100,200の重量による荷重が加わる。キャリッジ20の第一端部28は、支持部21L,21Rによってガイドシャフト9に支持されるため、第二端部29はガイドシャフト9を支点として第三方向(下方向)に搖動しやすくなる。第二端部29側の第三方向への搖動を防止し、印刷品質を担保するため、第二端部29に下側押圧部25および規制部24が設けられている。
図4および図6に示すように、右側押圧部23は、支軸232、アーム部233、当接部231、およびコイルばね234を主に備える。支軸232は、第二端部29の右端において第四方向に延びて立設する軸状である。支軸232は、アーム部233およびコイルばね234を固定する。アーム部233は、支軸232を中心として搖動可能に設けられる。アーム部233は、支軸232とは反対側の端部において当接部231を支持する。当接部231は円筒状であり、アーム部233の先端において、回転可能に支持される。当接部231は、レール7の前端部73に当接する(図3および図7参照)。コイルばね234は、支軸232に巻回される。コイルばね234の上側の端部は、アーム部233の長手方向中央の固定部235に固定される。コイルばね234の下側の端部は、第二端部29に設けられた固定部236に固定される。コイルばね234は、当接部231が前端部73に当接する方向へアーム部233を付勢する付勢部材である。
左側押圧部22は、支軸222、アーム部223、当接部221、およびコイルばね224を主に備える。支軸222は、第二端部29の左端において第四方向に立設する軸状である。支軸222は、アーム部223およびコイルばね224を固定する。アーム部223は、支軸222を中心として搖動可能に設けられる。アーム部223は、支軸222とは反対側の端部において当接部221を支持する。当接部221は円筒状であり、アーム部223の先端において、回転可能に支持される。当接部221は、レール7の前端部73に当接する(図3および図7参照)。コイルばね224は、支軸222に巻回される。コイルばね224の上側の端部は、アーム部223の長手方向中央の固定部225に固定される。コイルばね234の下側の端部は、第二端部29に設けられた固定部(図示せず)に固定される。コイルばね224は、当接部221が前端部73に当接する方向へアーム部223を付勢する付勢部材である。左側押圧部22は、右側押圧部23と同様の構成であるが、支軸222、アーム部223、当接部221、およびコイルばね224が、右側押圧部23の支軸232、アーム部233、当接部231、およびコイルばね234に対して左右対称に配置されている。
下側押圧部25は、支軸252、アーム部253、当接部251、およびコイルばね254を主に備える。支軸252は、キャリッジ20の第二端部29の後端において後方に立設する軸状である。支軸252は、アーム部253およびコイルばね254を固定する。アーム部253は、支軸252を中心として搖動可能に設けられる。アーム部253は、支軸252とは反対側の端部において当接部251を支持する。当接部251は円筒状であり、アーム部253の先端において、回転可能に支持される。当接部251は、レール7の上端部71の反対側の下端部72に当接する(図3および図7参照)。コイルばね254は、支軸252に巻回される。コイルばね254の上側の端部は、アーム部253の長手方向中央の固定部255に固定される。コイルばね254の下側の端部は、第二端部29に設けられた固定部256に固定される。コイルばね254は、当接部251が下端部72に当接する方向へアーム部253を付勢する付勢部材である。
規制部24は、固定部242および当接部241を主に備える。規制部24は、下側押圧部25の第四方向側に対向配置される。当接部241は円筒状であり、第二端部29において上方向に立設する固定部242において、回転可能に支持される。当接部241は、レール7の上端部71に上側から当接する(図3および図7参照)。
図4に示すように、左側押圧部22の当接部221が前端部73(図7参照)を後方に押圧する押圧力(矢印D)は、前端部73が当接部221を前方に押圧する反力を発生させる。当接部221が前端部73を後方に押圧する場合、アーム部223は、支軸222を中心として、当接部221を備えた側の端部を後方に向ける。当接部221が前端部73を後方に押圧すると、前端部73が当接部221を前方に押圧する反力が発生する。当接部221に発生した反力は、当接部221に接続するアーム部223に伝達する。アーム部223は支軸222を支点としてキャリッジ20の第二端部29に支持されている。このため、アーム部223に伝達した反力は、支軸222の位置において、キャリッジ20を前方へ押圧する方向に作用する(矢印E)。
右側押圧部23においても左側押圧部22と同様に、当接部231が前端部73を後方に押圧する押圧力(矢印F)は、前端部73が当接部231を前方に押圧する反力を発生させる。当接部231が前端部73を後方に押圧する場合、アーム部233は、支軸232を中心として、当接部231を備えた側の端部を後方に向ける。当接部231が前端部73を後方に押圧すると、前端部73が当接部231を前方に押圧する反力が発生する。当接部231に発生した反力は、当接部231に接続するアーム部233に伝達する。アーム部233は支軸232を支点としてキャリッジ20の第二端部29に支持されている。このため、アーム部233に伝達した反力は、支軸232の位置において、キャリッジ20を前方へ押圧する方向に作用する(矢印G)。
図4において、直線Bは、支持部21Lの左側の端部に沿って前後方向に延びる直線である。直線Cは、支持部21Rの右側の端部に沿って前後方向に延びる直線である。言い換えると、直線Bは、第二端部29側における支持部21Lに対向する位置を示す。直線Cは、第二端部29側における支持部21Rに対向する位置を示す。左側押圧部22の支軸222、および右側押圧部23の支軸232は、直線Bと直線Cとの内側に配置される。言い換えると、支軸222および支軸232は、第二端部29において二つの支持部21L,21Rに各々対向する位置の間に配置される。
当接部221,231が前端部73を後方に押圧する押圧力(矢印D,F)によって生じた反力は、キャリッジ20に伝達する。支軸222および支軸232が第二端部29において二つの支持部21L,21Rに各々対向する位置の間に配置される場合、キャリッジ20に伝達した反力は、直線Bと直線Cとの内側において、第一端部28を前方へ押圧する方向に作用する(矢印E,G)。第一端部28を前方へ押圧する方向に作用する力は、矢印E,G方向に沿って、第一端部28において支持部21L,21Rが設けられる位置に向けて伝達するので、左右方向にぶれることなく、前後方向に沿って支持部21L,21Rに伝達されやすい。即ち、支持部21L,21Rの設けられる前方に向けて伝達した反力によって、支持部21L,21Rは、左右方向に延びるガイドシャフト9に対して垂直方向に押圧されやすくなる。
例えば、支軸222および支軸232が、直線Bと直線Cとの外側に配置される場合、支持部21Lと支軸222、および支持部21Rと支軸232の左右方向における位置が一致しなくなる。この場合、支持部21L,21Rの設けられる位置に向けてキャリッジ20内を伝達する反力は、前後方向に沿った方向に対して左右方向にずれながら、支持部21L,21Rに伝達される。このため、支持部21L,21Rに作用する反力は、支持部21L,21Rを、ガイドシャフト9に対して垂直方向からずれた方向に押圧する可能性がある。この場合、左側押圧部22および右側押圧部23は第二端部29側の左右方向の傾きを十分に低減できず、ガイドシャフト9と支持部21L,21Rとの間に左右方向の傾きが残存する可能性がある。したがって、プリンタ1は、支軸222および支軸232を、直線Bと直線Cとの内側に配置する。これにより、プリンタ1は、ガイドシャフト9と支持部21L,21Rとの間に生ずる左右方向の傾きを効果的に低減して、印刷品質の低下を防止することができる。また、支軸222および支軸232を直線Bと直線Cとの内側に配置することによって、プリンタ1は、キャリッジ20の左右方向における大きさを小型化することができる。
図8および図9を参照して、キャリッジ20の第二端部29における右側押圧部23、規制部24、および下側押圧部25の配置関係について詳細に説明する。図8に示すように、直線Mは、ガイドシャフト9の中心を貫いて水平方向に延びる直線である。言い換えると、直線Mは、ガイドシャフト9の中心の上下方向における位置を示す。
ガイドシャフト9と支持部21L,21Rとの間には、設計上の公差が設けられている。このため、支持部21L,21Rにガイドシャフト9が挿通された状態において、キャリッジ20に微小ながたつきが生じる場合がある。第一端部28をガイドシャフト9に向けて押圧する方向に作用する前端部73からの反力は、支持部21L,21Rをガイドシャフト9に向けて押圧する。支持部21L,21Rがガイドシャフト9に向けて前方側に押圧されることによって、ガイドシャフト9の後方側と支持部21L,21Rとの間の微小な隙間が解消される。よって、プリンタ1は、キャリッジ20に生じる微小ながたつきを低減させることができる。また、支持部21L,21Rがガイドシャフト9に対して押圧されることによって、プリンタ1は、キャリッジ20の移動時に生じる左右方向の傾きも低減することができる。なお、前端部73を後方側に向けて押圧する左側押圧部22の当接部221においても、前端部73からの反力が同様に作用する。
図9に示すように、直線Mは、当接部231の第三方向側の端部である端部238と、第四方向側の端部である端部239との間に水平方向に延びる。言い換えると、ガイドシャフト9は、上下方向において、端部238と端部239との間に中心を配置する。この場合、支持部21L,21Rをガイドシャフト9に向けて押圧する方向に作用する前端部73からの反力は、ガイドシャフト9の中心に向けて、前後方向に沿って水平に伝わりやすくなる。つまり、前端部73からの反力が支持部21L,21Rをガイドシャフト9に向けて押圧する力は、上下方向においてガイドシャフト9と同じ高さで、効率よくガイドシャフト9の中心に作用する。この場合、支持部21L,21Rがガイドシャフト9の中心に向けて押し付けられて、キャリッジ20に生じる微小ながたつき、およびキャリッジ20の移動時に生じる左右方向の傾きが低減される。即ち、ガイドシャフト9の中心が端部238と端部239との間に配置することによって、プリンタ1は、キャリッジ20に生じる微小ながたつき、およびキャリッジ20の移動時に生じる左右方向の傾きを、より効果的に低減できる。右側押圧部23および左側押圧部22は、キャリッジ20を前後方向に確実に支持することができる。
図9に示すように、規制部24は、第二端部29において下側押圧部25の第四方向側に対向配置される。当接部241の第三方向側(下側)の端部249は、上端部71に上側から当接する。端部249は、直線Mよりも第四方向側(上側)に配置される。この場合、上端部71と下端部72との間に形成される前端部73が、直線Mと上下方向における同じ位置に配置されやすくなる。前端部73が、直線Mと上下方向における同じ位置に配置されると、前端部73を押圧する当接部231も、直線Mと上下方向における同じ位置に配置されやすくなる。よって、前端部73からの反力が支持部21L,21Rをガイドシャフト9に向けて押圧する力が、より確実にガイドシャフト9の中心に伝達される。
ここで、前述したように、キャリッジ20の第一端部28側は、支持部21L,21Rにおいてガイドシャフト9に係合する。キャリッジ20にはヘッドユニット100,200が配置されるため、キャリッジ20自身の重量による荷重に加えて、ヘッドユニット100,200の重量による荷重が、キャリッジ20に対して下方向に加わる。第一端部28は、支持部21L,21Rによってガイドシャフト9に支持される。このため、第二端部29は、ガイドシャフト9の中心を支点として下方向に搖動しやすくなる。
本実施形態では、端部249は、上側から上端部71に当接して、キャリッジ20の下方向の移動を規制する。言い換えると、当接部241は、端部249を直線Mよりも上側に位置決めする。下側押圧部25の当接部251は、上側の端部259を下端部72に当接する。即ち、レール7は、当接部241と当接部251とによって、上下方向に挟持される。当接部251は、アーム部253によって、下端部72に当接する方向へ付勢される。付勢された当接部251は、第二端部29において、キャリッジ20を下端部72に向けて押圧する。第二端部29の上下方向における位置は、当接部241の端部249によって位置決めされているため、当接部251は、キャリッジ20を下端部72に向けて上方向に確実に押圧することができる。当接部251が下端部72を上方向に押圧する力は、ガイドシャフト9の中心を支点とした第二端部29の下方向の搖動を打ち消す方向に作用する。即ち、プリンタ1は、規制部24および下側押圧部25によって、キャリッジ20を上下方向において確実に支持することができる。
以上説明したように、キャリッジ20の第二端部29に設けられた左側押圧部22および右側押圧部23は、当接部221,231が前端部73に当接する方向へアーム部223,233を付勢する。当接部221,231は、前端部73を後方へ押圧する。この場合、左側押圧部22および右側押圧部23による押圧力の反力が、キャリッジ20に加わる。キャリッジ20に加わった反力は、キャリッジ20をガイドシャフト9に向けて前方へ押圧する方向に作用する。したがって、プリンタ1は、キャリッジ20の左右方向における搬送時におけるキャリッジ20の傾き、およびガイドシャフト9に対するキャリッジ20のがたつきを低減することができる。即ち、プリンタ1は、キャリッジ20の傾き、キャリッジ20のがたつきによって、ヘッドユニット100,200のヘッド部105,205から吐出されるインクの印刷媒体に対する着弾位置がずれることによる印刷品質の低下を防止できる。
ガイドシャフト9は、端部238と端部239との間に中心を配置する。この場合、左側押圧部22および右側押圧部23が前端部73を押圧する押圧力の反力が、ガイドシャフト9の中心に向けて、前後方向に沿って水平に伝わりやすくなる。よって、左側押圧部22および右側押圧部23は、キャリッジ20を前後方向において確実に支持することができる。
キャリッジ20の第一端部28には、ガイドシャフト9にキャリッジ20を支持する二つの支持部21L,21Rが設けられている。このため、キャリッジ20の第一端部28側は、第二端部29側に比べて、キャリッジ20の傾き、およびキャリッジ20のがたつきによる影響を受けにくい。ヘッドユニット200が前処理用の白インクを吐出した後に、模様等を描くために後処理用のカラーインクを吐出するヘッドユニット100には、ヘッドユニット200よりも高い精度でインクを吐出することが要求される。キャリッジ20は、キャリッジ20の傾き、およびキャリッジ20のがたつきによる影響を受けにくい第一端部28側に、ヘッドユニット200を配置する。よって、プリンタ1は、印刷品質を確保することができる。
キャリッジ20の第一端部28は、ガイドシャフト9を挿通する支持部21L,21Rによって支持される。キャリッジ20には、キャリッジ20自身の重量に加えて、ヘッドユニット100,200の重量による荷重が加わる。このため、キャリッジ20の第二端部29は、ガイドシャフト9を支点として下方向へ搖動しやすくなる。下側押圧部25は、第二端部29において、キャリッジ20を下端部72に向けて押圧することができる。下側押圧部25がキャリッジ20を下端部72に向けて押圧する力は、第二端部29が下方向に向けて搖動する力を打ち消す方向に働く。また、規制部24は、上端部71に対して上側から当接する。このため、レール7は、当接部241と当接部251とによって、上下方向の双方から挟持される。したがって、プリンタ1は、規制部24および下側押圧部25を備えることによって、キャリッジ20を上下方向において確実に支持することができる。
規制部24の端部249は、ガイドシャフト9の中心よりも上側に配置される。この場合、上端部71と下端部72との間に形成される前端部73が、ガイドシャフト9の中心の上下方向における同じ位置に配置されやすくなる。このため、左側押圧部22および右側押圧部23は、ガイドシャフト9の中心に向けて、キャリッジ20を前方向に確実に押圧することができる。また、規制部24は、上側から上端部71に当接して、キャリッジ20の下方向への移動を規制する。このため、下側押圧部25は、キャリッジ20を下端部72に対して上方向に確実に押圧することができる。
本実施形態におけるヘッドユニット100,200が、本発明の「印刷ヘッドユニット」に相当する。キャリッジ20が、本発明の「キャリッジ」に相当する。ガイドシャフト9が、本発明の「ガイドシャフト」に相当する。支持部21L,21Rが、本発明の「支持部」に相当する。レール7が、本発明の「レール部材」に相当する。当接部221,231が、本発明の「第一当接部材」に相当する。支軸222,232が、本発明の「第一支軸」に相当する。アーム部223,233が、本発明の「第一アーム部材」に相当する。コイルばね224,234が、本発明の「第一付勢部材」に相当する。左側押圧部22および右側押圧部23が、本発明の「第一押圧部」に相当する。
ヘッドユニット200が、本発明の「前処理用ヘッドユニット」に相当する。ヘッドユニット100が、本発明の「後処理用ヘッドユニット」に相当する。下側押圧部25が、本発明の「第二押圧部」に相当する。当接部251が、本発明の「第二当接部材」に相当する。支軸252が、本発明の「第二支軸」に相当する。アーム部253が、本発明の「第二アーム部材」に相当する。コイルばね254が、本発明の「第二付勢部材」に相当する。規制部24が、本発明の「規制部」に相当する。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、ヘッドユニット100とヘッドユニット200は前後方向に並んで配列されていればよい。プリンタ1は2つのヘッドユニット100,200を前後方向に完全に直列させなくてもよい。例えば、プリンタ1は、ヘッドユニット100とヘッドユニット200との位置を、前処理用の印刷と後処理用の印刷とを同一の工程で行うことのできる範囲で、相互に左右方向にずらした所謂千鳥配列としてもよい。また、ヘッド部105,205の内部は、カラーインクのそれぞれに対応して、左右方向に沿って4つに区分されているが、区分の数は適宜変更されてもよい。
ヘッドユニット100,200に供給される液体は、上記に例示したインクの他、ゴールドおよびシルバー等の他の色のインクであってもよい。また、ヘッドユニット100,200に供給される液体は実施形態のインクに限られず、例えば、前処理用のインクに替えて、インクの定着をよくするための処理剤、後処理用の液体としてカラーインクを使用してもよい。例えば、抜染印刷において、前処理用のインクに替えて抜染用の処理剤、後処理用のインクに替えて抜染用のインクを使用してもよい。即ち、ヘッドユニット100,200によって吐出可能な液体は、ヘッドユニット100,200から吐出可能な粘度等の性質を有する液体であればよい。従って、液体はインクに限らず、例えば、脱色剤等の化学薬剤でもよい。また、他の例では、前処理用の液体と後処理用の液体とが同じ種類の液体であってもよい。
上記の実施形態では、下側押圧部25の個数は1つである。下側押圧部25の個数は、1つであることが好ましい。下側押圧部25が2個以上設けられた場合、2個以上の下側押圧部25のうち一部の個数の下側押圧部25が、下設計上の公差等の影響によって下端部72に当接しない可能性がある。この場合、2個以上の下側押圧部25間においてがたつきが生じ、第二端部29が水平に支持されにくくなる可能性がある。ただし、2個以上の下側押圧部25の全てが、一様に下端部72に当接できる場合には、下側押圧部25を2個以上設けてもよい。