JP6795830B2 - 船尾ダクトを有した船尾形状及び船舶 - Google Patents
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Description
図13(a)は従来の船尾ダクトの側面断面図である。なお、黒塗矢印は推力を示す。船尾ダクト周りの流場は、図13(a)に示すように、ダクト下部の形状と流れ込む流れが適合しない場合があり、ダクト下部で剥離を生ずる。すなわち、ダクト上部の迎角とダクト下部の迎角とが同じであるため、ダクト下部の迎角の角度が大きすぎて流れが剥離する。この剥離が抵抗増加をもたらし、1−t(推力減少係数)の悪化をもたらしている。
この悪化を小さくする観点から、テーパー型船尾ダクトが提案された。図13(b)は従来のテーパー型船尾ダクトの側面断面図である。テーパー型船尾ダクトは、図13(b)に示すように、ダクト下部の弦長をダクト上部の弦長よりも短くし、剥離を少なくして抵抗増加の減少を図るものである。
また、特許文献2には、省エネルギー効果を得ることを目的として、半筒状のダクトの後端部の内面に内側に突出する凸部を形成し、その半円筒状のダクトをステーによって船体に接続したダクト装置が記載されている。
また、特許文献3には、抵抗増加の要因を軽減し、推進効率の低下を小さくすることを目的として、複数個のフィンを備えたリアクションフィンにおいて、上方のリアクションフィンの長さよりも下方のリアクションフィンの長さを短くするとともに、リング状の補強材を、半円形の上部補強材と幅広で深さの浅い形状の下部補強材とによって構成することが記載されている。
また、特許文献4には、省エネルギー効果の効率を高くすることを目的として、ダクトが、略半円錐台形状の外殻と、外殻を船尾部に固定する2枚の連結板とを備え、外殻がプロペラの上半分の部分と相対するように外殻を配置した船舶のダクト装置が記載されている。
また、特許文献1から特許文献4のいずれにおいても、プロペラ下部の流れを利用して船舶の推進効率を向上させることについては全く記載されていない。
請求項1に記載の本発明によれば、略3/4円とすることにより剥離現象を少なくしてダクトによる抵抗増加を減少させ、翼型を成した直線部で上昇流を利用してプロペラ下部の流れを前進方向の推力に変えることができる。また、ダクト本体の下部における剥離を低減し、更に有効に前進方向の推力を得ることができる。
請求項2に記載の本発明によれば、推力を更に向上させることができる。
請求項3に記載の本発明によれば、ダクト本体の上部の加速効果を高め、ダクト本体の下部における剥離を更に低減できる。
請求項4に記載の本発明によれば、流向に対するダクト本体の迎角が相対的に悪化して抵抗となるのを避け、従来の円環ダクトよりも高い推力減少係数を保ちながら下端の伴流利得を稼ぐことができる。
請求項5に記載の本発明によれば、更に高い推力減少係数を保ちながら下端の伴流利得を稼ぐことができる。
請求項6に記載の本発明によれば、プロペラとの干渉効果も高め推進効率を更に向上させることができる。
請求項7に記載の本発明によれば、翼型により発生する揚力の推進方向成分(スラスト成分)を利用して推力減少率を高め、推進効率を上げることができる。
請求項8に記載の本発明によれば、ダクト本体より下流での流れを遅くして有効伴流係数を小さくでき、かつダクト本体の前部側でのスラスト成分を増加させて推力を高めることができる。
請求項9に記載の本発明によれば、流向に対して適正な迎角となるようにダクトを設置しやすくなる。
請求項10に記載の本発明によれば、支持部によってダクト本体を船体に取り付けることができるので、ダクト本体を設置しやすく、特にプロペラに対して適正な位置に配置しやすい。また、翼型を成す支持部によっても前進方向の推力を得ることができる。
請求項11に記載の本発明によれば、プロペラに向かう流れを対向流化することによって、プロペラの推力を高めることができる。
請求項12に記載の本発明によれば、省エネ付加物によっても推力を得て、高い推進効率を達成して更に輸送効率を高めることができる。
請求項13に記載の本発明によれば、推力を得やすい取り付け位置となるため、省エネ付加物が効果を発揮しやすくなり、高い推進効率を達成することができる。
請求項14に記載の本発明によれば、従来よりも省エネ効果が高い船尾ダクトを有した船尾形状を備えた船舶を提供することができる。
図2は本実施形態による船尾ダクトを有した船尾形状の概略図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は正面図、図2(c)は側面図、図2(d)は上面図である。
図3は本実施形態による船尾ダクトの側面断面図である。図3において黒塗矢印は推力を示す。
図4は本実施形態による船尾ダクトを有した船尾形状の概略図である。
図5はプロペラ面の流場を計測した図であり、図5(a)は従来の船尾ダクトを適用した場合を示し、図5(b)は本実施形態による船尾ダクトを適用した場合を示している。
なお、略3/4円とは、ダクト本体31の中心角が225度以上315度以下であって各部における内半径rのばらつきが±10%以下のものをいう。また、船尾ダクト30の中心とプロペラ20の軸心とは、プロペラ20の半径の±10%以内のずれを許容するものとする。
ダクト本体31の後部の略3/4円の内半径rは、プロペラ20の半径の所定範囲に設定されている。本実施形態では、ダクト本体31の後部の略3/4円の内半径rを、プロペラ20の半径の40%以上80%以下の範囲としている。
なお、略3/4円の内半径rのプロペラ20の半径に対する所定範囲は、40%以上60%以下がより好ましい。
また、図3に示すように、船尾ダクト30の直線部32は、側面視した断面形状が、水平面に対して後部が上方に所定角度α(迎角)の範囲内で傾くとともに、内側に凸の翼型を成している。本実施形態では所定角度αを、2度以上10度以下の範囲としている。一方、ダクト本体31の上部は、側面視した断面形状が、水平面に対して後部が下方に所定角度αよりも大きく(本実施形態では12度)傾くとともに、内側に凸の翼型を成している。
プロペラ20に流れ込む流れは、プロペラ軸より下方では、プロペラ軸中心部を除けば比較的安定した上昇する流れである。本実施形態のように、ダクト本体31を略3/4円筒状とし、ダクト本体31の下部に直線部32を設け、直線部32の迎角をダクト本体31の上部の迎角よりも小さい角度に設定することで、ダクト本体31の上部の加速効果を高め、下部を翼型を成した直線部32として迎角を適切に設定することで剥離を低減し、上昇流を利用してプロペラ20の下部の流れ(プロペラ20の下部に相当するダクト本体31部の流れ)を前進方向の推力に変えることができる。
また、ダクト本体31の断面形状が内側に凸の翼型を成していることによって、翼型により発生する揚力の推進方向成分(スラスト成分)を利用して推力減少係数を高め、推進効率を上げることができる。
距離Hは、プロペラ20の半径の30%以上100%以下とすることが好ましく、プロペラ20の半径の35%以上70%以下とすることがより好ましい。
幅Wは、プロペラ20の半径の40%以上120%以下の範囲とすることが好ましく、プロペラ20の半径の50%以上100%以下の範囲とすることがより好ましい。
上底31Aに対する下底31Bの比は、7%以上30%以下の範囲とすることが好ましく、15%以上30%以下の範囲とすることがより好ましい。
なお、上底31Aと下底31Bとは平行でなくともよい。
距離Lは、プロペラ20の直径の1.0%以上50%以下の範囲に設定することが好ましく、10%以上20%以下の範囲に設定することがより好ましい。
支持部40は、プロペラ20の上部に位置する上部支持部41と、プロペラ20の下部に位置する下部支持部42とからなり、上部支持部41と下部支持部42とがプロペラ20に向かう流れが対向流となるように逆方向に捩られている。
本実施形態では、プロペラ20は後方から前方視した場合、時計方向に回転するため、上部支持部41は、後縁が左舷側に0度以上5度以下の角度(好ましくは1度以上3度以下)を有する左舷側に凸の翼断面形状である。また、下部支持部42は、後縁が右舷側に0度以上5度以下の角度(好ましくは1度以上3度以下)を有する右舷側に凸の翼断面形状である。
プロペラ20に向かう流れを対向流化することによって、プロペラ20の推力を高めることができる。
なお、支持部40の形状は、本実施形態以外にもダクト本体31を支持する強度と、対向流化を満足する様々な形状が採用可能である。
なお、省エネ付加物60としては、フィン形状の省エネ付加物60以外にも、各種の形状が採用可能である。
図6は、本実施形態による船尾ダクトの側面断面図である。
なお、所定角度βは、0.5度以上10度以下の範囲とすることが好ましく、1度以上5度以下の範囲とすることがより好ましい。
図7は本実施形態による船尾ダクトを有した船尾形状の概略図であり、図7(a)は斜視図、図7(b)は正面図、図7(c)は側面図、図7(d)は下面図である。
図8は、本実施形態による船尾ダクトを示す図であり、図8(a)は斜視図、図8(b)は正面図、図8(c)は側面図、図8(d)は下面図である。なお、図8においては、比較のために、第一実施形態で説明した直線部32の位置を併せて示している。
本実施形態において、ダクト本体31の後縁は、船体10の後方から前方視した場合(図7(b)参照)に、略3/4円の下方の中央に、略3/4円と接続した直線部132を有した馬蹄形状としている。すなわち、ダクト本体31の後縁は、略3/4円の下端に直線部32が接続される場合よりも下方に延伸されており、延伸された下端に直線部132が接続されている。
直線部132は、ダクト本体31の後縁の略3/4円の中心線Xから距離H下方に位置する。本実施形態では距離Hを、プロペラ20の半径の約55%としている。これにより、プロペラ20の下部における剥離を低減し、上昇流を利用してプロペラ20の下部の流れを前進方向の推力に変えることができる。
距離Hは、プロペラ20の半径の30%以上100%以下とすることが好ましく、プロペラ20の半径の35%以上70%以下とすることがより好ましい。あまり距離Hが大きいと、流速の速い領域に推力に寄与しない直線部132の端部や略3/4円の下部が臨むことになり、抵抗が増して好ましくない。
まず、第一実施形態の船尾ダクト30を適用した場合(実施例1、実施例2)と、船尾ダクト30無しの場合(比較例1)、及び従来のテーパー型船尾ダクトを適用した場合(比較例2)との比較結果を表1に示す。所定角度α(迎角)は、実施例1においては2度、実施例2においては4度とした。
なお、従来の船尾ダクトを適用した試験は行っていないが、船尾ダクトの省エネ効果は、有効伴流係数の減少から得られるものであり、実船馬力を推定する場合に、尺度影響のため模型船で得られた効果の半分程度に減少する。一方、本実施形態の船尾ダクト30を適用した場合は、尺度影響を受けない推力減少係数が増加する。すなわち、本実施形態の船尾ダクト30によれば、模型船で測定した省エネ効果と実船に適用した場合の省エネ効果との乖離が少ない。
図9は試験に用いた船尾ダクト30の斜視図であり、図9(a)は実施例5から実施例7の直線部132の幅Wの比較図、図9(b)は実施例5の直線部132を示す拡大図、図9(c)は実施例7の直線部132を示す拡大図である。
但し、あまり幅Wが長いと流速の速い領域に直線部132の両端部が臨むことになり、抵抗が増して好ましくない。
図10は試験に用いた船尾ダクト30の側面図であり、実施例8から実施例10の下底31Bの弦長Dを示している。図11は試験に用いた船尾ダクト30を有した船尾形状の圧力分布図であり、図11(a)は実施例8、図11(b)は実施例9、図11(c)は実施例10のものである。また、図12は図11の部分拡大図であり、図12(a)は実施例8、図12(b)は実施例9、図12(c)は実施例10のものである。
20 プロペラ
30 船尾ダクト
31 ダクト本体
31A 上底
31B 下底
32、132 直線部
40 支持部
41 上部支持部
42 下部支持部
50 舵
60 省エネ付加物
r ダクト本体の後部の略3/4円の内半径
L ダクト本体の後縁とプロペラの前縁との距離
W 直線部の幅
X 略3/4円の中心線
Claims (14)
- 船体の船尾に設けられたプロペラと、前記プロペラの前方に取り付けられた船尾ダクトとを備え、前記船尾ダクトのダクト本体が略3/4円筒状を成し、前記船体の後方から前方視した場合に前記ダクト本体の後縁が略3/4円の下部又は下方の中央に前記略3/4円と接続される直線部を有した形状であり、前記直線部の側面視した断面形状が水平面に対して後部が上方に2度以上10度以下の範囲で傾いた内側に凸の翼型を成し、かつ前記略3/4円の内半径を前記プロペラの半径の40%以上80%以下の範囲に設定するとともに、前記船尾ダクトの中心が前記プロペラの軸心と一致し、前記直線部が前記略3/4円の後方視した中心線から下方の前記プロペラの半径の30%以上100%以下の範囲に設けられていることを特徴とする船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記直線部の幅は前記プロペラの半径の40%以上120%以下の範囲に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記直線部の水平面に対する傾きよりも、前記ダクト本体の上部の水平面に対する傾きのほうが大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記ダクト本体が、前記ダクト本体を側方視した場合に、上底が下底よりも長い倒立した台形状を成していることを特徴とする請求項1から請求項3のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記上底に対する下底の比が7%以上30%以下の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記ダクト本体の前記後縁と前記プロペラの前縁との距離を、前記プロペラの直径の1.0%以上50%以下の範囲に設定したことを特徴とする請求項1から請求項5のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記ダクト本体の断面形状が内側に凸の翼型を成していることを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記略3/4円の内半径を、前記ダクト本体の後部よりも前部の方を大きく設定したことを特徴とする請求項1から請求項7のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記ダクト本体を側面視した中心線が水平面に対して前方が上方に0.5度以上10度以下の範囲で傾いていることを特徴とする請求項1から請求項8のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記ダクト本体を前記船尾に支持する翼型を成す支持部を有していることを特徴とする請求項1から請求項9のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記支持部が前記プロペラの前記軸心より上部に位置する上部支持部と、前記プロペラの前記軸心より下部に位置する下部支持部からなり、前記上部支持部と前記下部支持部が前記プロペラに向かう流れが対向流となるように逆方向に捩られていることを特徴とする請求項10に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記プロペラの後方に舵を備え、前記舵に前記船体を前方に推進する省エネ付加物を有したことを特徴とする請求項1から請求項11のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 前記省エネ付加物の前記舵への縦方向における取付け位置が、前記プロペラのボス位置と略同一レベルであることを特徴とする請求項12に記載の船尾ダクトを有した船尾形状。
- 請求項1から請求項13のうちの1項に記載の船尾ダクトを有した船尾形状を前記船体に備えたことを特徴とする船舶。
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