<第1実施形態>
図1は、DC/DCコンバータの第1実施形態を示す回路図である。本実施形態のDC/DCコンバータ1は、入力電圧Viから出力電圧Voを生成して不図示の負荷(CPU[central processing unit]など)に供給するPWM[pulse width modulation]駆動方式の降圧型スイッチング電源であり、スイッチ出力段10と、帰還電圧生成部20と、エラーアンプ30と、位相補償回路40と、オシレータ50と、PWMコンパレータ60と、ドライバ70と、を有する。
なお、DC/DCコンバータ1には、上記した回路要素のほか、その他の保護回路(減電圧保護回路、過電圧保護回路、過電流保護回路、温度保護回路など)を適宜組み込んでも構わない。
スイッチ出力段10は、入力電圧Viを降圧して所望の出力電圧Voを生成する降圧型であり、出力トランジスタ11(本図ではPMOSFET[P channel type metal oxide semiconductor field effect transistor])と、同期整流トランジスタ12(本図ではNMOSFET[N channel type MOSFET])と、コイル13と、キャパシタ14と、を含んでいる。
出力トランジスタ11のソースは、入力電圧Viの印加端に接続されている。出力トランジスタ11のドレインは、コイル13の第1端に接続されている。出力トランジスタ11のゲートは、ゲート信号G1の印加端に接続されている。出力トランジスタ11は、ゲート信号G1がハイレベルであるときにオフし、ゲート信号G1がローレベルであるときにオンする。
同期整流トランジスタ12のソースは、接地端(=接地電圧GNDの印加端)に接続されている。同期整流トランジスタ12のドレインは、コイル13の第1端に接続されている。同期整流トランジスタ12のゲートは、ゲート信号G2の印加端に接続されている。同期整流トランジスタ12は、ゲート信号G2がハイレベルであるときにオンし、ゲート信号G2がローレベルであるときにオフする。
なお、スイッチ出力段10に高電圧が印加される場合には、出力トランジスタ11や同期整流トランジスタ12として、それぞれ、パワーMOSFET、IGBT[insulated gate bipolar transistor]、SiCトランジスタなどの高耐圧素子を用いるとよい。
出力トランジスタ11と同期整流トランジスタ12は、ゲート信号G1及びG2に応じて相補的にオン/オフされる。このようなオン/オフ動作により、コイル13の第1端には、入力電圧Viと接地電圧GNDとの間でパルス駆動される矩形波状のスイッチ電圧Vswが生成される。なお、上記の「相補的」という文言は、出力トランジスタ11と同期整流トランジスタ12のオン/オフ状態が完全に逆転している場合だけでなく、両トランジスタの同時オフ期間(デッドタイム)が設けられている場合も含む。
コイル13とキャパシタ14は、スイッチ電圧Vswを整流及び平滑して出力電圧Voを生成するLCフィルタを形成する。なお、コイル13の第1端は、先に述べた通り、出力トランジスタ11及び同期整流トランジスタ12それぞれのドレイン(=スイッチ電圧Vswの印加端)に接続されている。コイル13の第2端とキャパシタ14の第1端は、いずれも出力電圧Voの印加端に接続されている。キャパシタ14の第2端は、接地端に接続されている。
帰還電圧生成部20は、出力電圧Voの印加端と接地端との間に直列接続された抵抗21及び22を含み、両抵抗間の接続ノードから出力電圧Voに応じた帰還電圧Vfb(出力電圧Voの分圧電圧)を出力する。なお、出力電圧Voがエラーアンプ30の入力ダイナミックレンジに収まっている場合には、帰還電圧生成部20を省略して出力電圧Voをエラーアンプ30に直接入力しても構わない。
エラーアンプ30は、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプ(いわゆるgmアンプ)であり、反転入力端(−)に印加される帰還電圧Vfbと非反転入力端(+)に印加される基準電圧Vrefとの差分に応じた誤差電流信号I30を生成する。誤差電流信号I30は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも低いときには正方向(=エラーアンプ30から位相補償回路40に向かう方向)に流れ、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも高いときには負方向(=位相補償回路40からエラーアンプ30に向かう方向)に流れる。なお、エラーアンプ30は、スリープ制御信号XSLPがハイレベル(=スリープモード解除時の論理レベル)であるときに動作状態となり、スリープ制御信号XSLPがローレベル(=スリープモード時の論理レベル)であるときに停止状態となる。
位相補償回路40は、エラーアンプ30とPWMコンパレータ60との間に接続されており、誤差電流信号I30の入力を受けて第1電圧VCを生成する。なお、位相補償回路40の構成及び動作については後述する。
オシレータ50は、所定のスイッチング周波数fsw(=1/T)でパルス駆動されるランプ波形(=三角波形、鋸波形、または、n次スロープ波形(例えばn=2)など)の第2電圧RAMPを生成する。また、オシレータ50では、第2電圧RAMPの振幅が入力電圧Viに応じた変動値(=k×Vi)とされている。従って、第2電圧RAMPの振幅は、入力電圧Viが高いほど大きくなり、入力電圧Viが低いほど小さくなるが、その技術的意義については後述する。なお、オシレータ50は、先出のエラーアンプ30と同じく、スリープ制御信号XSLPがハイレベルであるときに動作状態となり、スリープ制御信号XSLPがローレベルであるときに停止状態となる。
PWMコンパレータ60は、非反転入力端(+)に印加される第1電圧VCと反転入力端(−)に印加される第2電圧RAMPとを比較して比較信号CMPを生成する。比較信号CMPは、第1電圧VCが第2電圧RAMPよりも高いときにハイレベルとなり、第1電圧VCが第2電圧RAMPよりも低いときにローレベルとなる。なお、PWMコンパレータ60は、先出のエラーアンプ30やオシレータ50と同様、スリープ制御信号XSLPがハイレベルであるときに動作状態となり、スリープ制御信号XSLPがローレベルであるときに停止状態となる。
ドライバ70は、NANDゲート71とANDゲート72を含み、比較信号CMPに応じてゲート信号G1及びG2(=それぞれスイッチ出力段10の駆動信号に相当)を生成する。より具体的に述べると、NANDゲート71は、スリープ制御信号XSLPと比較信号CMPとの否定論理積演算信号をゲート信号G1として出力する。また、ANDゲート72は、スリープ制御信号XSLPと反転入力される比較信号CMPとの論理積演算信号をゲート信号G2として出力する。
従って、スリープ制御信号XSLPがハイレベルである場合、ゲート信号G1及びG2は、基本的に比較信号CMPの論理反転信号となる。より具体的に述べると、比較信号CMPがハイレベルであるときには、ゲート信号G1及びG2がいずれもローレベルとなるので、出力トランジスタ11がオンして同期整流トランジスタ12がオフする。逆に、比較信号CMPがローレベルであるときには、ゲート信号G1及びG2がいずれもハイレベルとなるので、出力トランジスタ11がオフして同期整流トランジスタ12がオンする。
一方、スリープ制御信号XSLPがローレベルである場合、ゲート信号G1は、比較信号CMPに依ることなくハイレベルとなり、ゲート信号G2は、比較信号CMPに依ることなくローレベルとなる。従って、出力トランジスタ11と同期整流トランジスタ12がいずれもオフする。
このように、本実施形態のDC/DCコンバータ1は、スリープ制御信号XSLPがローレベルであるときに、出力トランジスタ11と同期整流トランジスタ12をいずれもオフした上で、エラーアンプ30、オシレータ50、及び、PWMコンパレータ60などを停止することにより、消費電力の小さいスリープモードに移行する機能を備えている。
なお、スリープ制御信号XSLPは、軽負荷状態(または無負荷状態)となったときにローレベルとすることが望ましい。なお、上記の軽負荷状態を検出する手法としては、例えば、コイル電流ILの逆流検出(=スイッチ電圧Vswのゼロクロス検出)を行う手法が考えられる。
<位相補償回路>
引き続き、図1を参照しながら、位相補償回路40の構成及び動作について詳述する。本図の位相補償回路40は、位相補償抵抗部41と、位相補償容量部42と、スイッチ43〜45を含み、第1電圧VCの位相を補償して出力帰還ループの発振を防止する。
位相補償容量部42は、キャパシタC1及びC2を含む。キャパシタC1及びC2それぞれの第1端は、接地端に接続されている。なお、位相補償容量部42全体の容量値をCとし、キャパシタC1の容量値をC1とし、キャパシタC2の容量値をC2としたとき、C=C1+C2、C2/C1=k/(1−k)(ただし0<k<1)が満たされている。このように、本実施形態の位相補償容量部42では、位相補償用のキャパシタが2つに分割されているが、その技術的意義は後述する。
位相補償抵抗部41は、第1端がPWMコンパレータ60の非反転入力端(+)に接続され、第2端がキャパシタC1の第2端に接続された抵抗を含む。
スイッチ43は、スリープ制御信号XSLPに応じてPWMコンパレータ60の非反転入力端(+)とエラーアンプ30の出力端との間を導通/遮断する。具体的に述べると、スイッチ43は、スリープ制御信号XSLPがハイレベルであるときにオンしてPWMコンパレータ60の非反転入力端(+)とエラーアンプ30の出力端との間を導通し、スリープ制御信号XSLPがローレベルであるときにオフしてPWMコンパレータ60の非反転入力端(+)とエラーアンプ30の出力端との間を遮断する。
スイッチ44は、スリープ制御信号XSLPに応じてキャパシタC1の第2端と接地端との間を導通/遮断する。具体的に述べると、スイッチ44は、スリープ制御信号XSLPがローレベルであるときにオンしてキャパシタC1の第2端と接地端との間を導通し、スリープ制御信号XSLPがハイレベルであるときにオフしてキャパシタC1の第2端と接地端との間を遮断する。
スイッチ45は、スリープ制御信号XSLPに応じてキャパシタC2の第2端を出力電圧Vo(=第1バイアス電圧に相当)の印加端に接続するかキャパシタC1の第2端に接続するかを切り替える。具体的に述べると、スイッチ45は、スリープ制御信号XSLPがローレベルであるときにキャパシタC2の第2端を出力電圧Voの印加端に接続し、スリープ制御信号XSLPがハイレベルであるときにキャパシタC2の第2端をキャパシタC1の第2端に接続する。
このように、スイッチ44及び45は、スリープ制御信号XSLPに応じてキャパシタC1及びC2の接続先を切り替えることにより、スリープモード(XSLP=L)では、キャパシタC1及びC2を第1接続状態に切り替えてキャパシタC2の両端間を出力電圧Voで充電しておく一方、スリープモード解除時(XSLP=H)には、キャパシタC1及びC2を第2接続状態に切り替えて第1電圧VCを所望の初期値(=k×Vo)に設定するスイッチ群として機能する。
なお、上記の第1接続状態とは、スイッチ44がキャパシタC1の第2端と接地端との間を導通しており、スイッチ45がキャパシタC2の第2端を出力電圧Voの印加端に接続している状態を指す。一方、上記の第2接続状態とは、スイッチ44がキャパシタC1の第2端と接地端との間を遮断しており、スイッチ45がキャパシタC2の第2端をキャパシタC1の第2端に接続している状態を指す。
次に、第1実施形態におけるスリープモード解除時のデューティ初期値設定動作について、図2を参照しながら詳細に説明する。
図2は、第1実施形態におけるデューティ初期値設定動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、スリープ制御信号XSLP、第1電圧VC(実線)及び第2電圧RAMP(破線)、並びに、比較信号CMPが描写されている。
時刻t11以前には、スリープ制御信号XSLPがローレベルとされており、DC/DCコンバータ1が省電力のスリープモードに移行されている。このとき、位相補償回路40では、PWMコンパレータ60の非反転入力端(+)とエラーアンプ30の出力端との間が遮断されると共に、キャパシタC1の第2端と接地端との間が導通され、キャパシタC2の第2端が出力電圧Voの印加端に接続された状態となる。従って、キャパシタC1の両端間が放電された状態となり、キャパシタC2の両端間が出力電圧Voで充電された状態となる。また、スリープモードでは、第1電圧VCと第2電圧RAMPがいずれも0Vとなり、比較信号CMPがローレベルとなる。
時刻t11において、スリープ制御信号XSLPがハイレベルに立ち上げられると、DC/DCコンバータ1がウェイクアップモードに復帰する。このとき、位相補償回路40では、PWMコンパレータ60の非反転入力端(+)とエラーアンプ30の出力端との間が導通されると共に、キャパシタC1の第2端と接地端との間が遮断され、キャパシタC2の第2端がキャパシタC1の第2端に接続された状態となる。
すなわち、位相補償容量部42は、スリープモード解除に伴い、その両端間が放電されたキャパシタC1と、その両端間が出力電圧Voで充電されたキャパシタC2とを並列接続した状態となる。
その結果、第1電圧VCは、キャパシタC1及びC2相互間の電荷分配則に従い、エラーアンプ30の起動を待つことなく、VC=k×Vo(={C2/(C1+C2)}×Vo)まで速やかに引き上げられる。
また、時刻t11以降は、オシレータ50が動作状態となるので、スイッチング周波数fsw(=1/T)でパルス駆動されるランプ波形の第2電圧RAMPが生成される。なお、第2電圧RAMPの振幅は、先にも述べたように、入力電圧Viに応じた変動値(=k×Vi)とされている。
ここで、DC/DCコンバータ1のオンデューティDon(=Ton/T)は、第1電圧VCと第2電圧RAMPとの比較結果に応じて決まる。具体的には、第1電圧VC(=k×Vo)と第2電圧RAMP(=(k×Vi/T)×Ton)とが一致するタイミングから、スリープモード解除時のオンデューティDon(=デューティ初期値に相当)は、Vo/Viとなる。このデューティ初期値は、入力電圧Viを降圧して所望の出力電圧Voを生成する場合のデューティ理論値と一致している。従って、スリープモード解除時における出力電圧Voのオーバーシュートやアンダーシュートを防止することができる。
なお、位相補償回路40を用いてスリープモード解除時のデューティ初期値を設定する構成であれば、図15のDC/DCコンバータX1と異なり、スリープモードでバイアス部X80を動かしておく必要がないので、その消費電力を大幅に削減することができる。
また、キャパシタC2は、その充電完了後に電流を流さなくなるので、スリープモードにおける位相補償回路40の消費電力もゼロである。
さらに、本実施形態のDC/DCコンバータ1であれば、位相補償回路40のスイッチ43〜45を切り替えることにより、スリープモード解除時のデューティ初期値を設定することができるので、DC/DCコンバータ1の再起動時間(=復帰時間)を理想的にはゼロまで短縮することが可能となる。
<第2実施形態>
図3は、DC/DCコンバータの第2実施形態を示す回路図である。本実施形態のDC/DCコンバータ1は、第1実施形態(図1)をベースとしつつ、位相補償回路40の構成要素として、キャパシタC3とスイッチ46をさらに含む点に特徴を有する。そこで、第1実施形態と同様の構成要素については、図1と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
キャパシタC3は、キャパシタC1及びC2と同じく、位相補償容量部42の構成要素であり、その第1端が接地端に接続されている。なお、位相補償容量部42全体の容量値をCとし、キャパシタC1の容量値をC1とし、キャパシタC2の容量値をC2とし、キャパシタC3の容量値をC3としたときに、C=C1+C2+C3、C1:C2:C3={1−(k+k’)}:k:k’(ただし、0<k<1、かつ、0<k’<1)が満たされている。このように、本実施形態の位相補償容量部42では、位相補償用のキャパシタが3つに分割されているが、その技術的意義は後述する。
スイッチ46は、スイッチ44及び45と同じく、スリープ制御信号XSLPに応じてキャパシタC1〜C3の接続状態を切り替えるスイッチ群の構成要素であり、キャパシタC3の第2端を入力電圧Vi(=第1バイアス電圧とは異なる第2バイアス電圧に相当)の印加端に接続するかキャパシタC1の第2端に接続するかを切り替える。具体的に述べると、スイッチ46は、スリープ制御信号XSLPがローレベルであるときにキャパシタC3の第2端を入力電圧Viの印加端に接続し、スリープ制御信号XSLPがハイレベルであるときにキャパシタC3の第2端をキャパシタC1の第2端に接続する。
次に、第2実施形態におけるスリープモード解除時のデューティ初期値設定動作について、図4を参照しながら詳細に説明する。
図4は、第2実施形態におけるデューティ初期値設定動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、スリープ制御信号XSLP、第1電圧VC(実線)及び第2電圧RAMP(破線)、並びに、比較信号CMPが描写されている。
時刻t21以前には、スリープ制御信号XSLPがローレベルとされており、DC/DCコンバータ1が省電力のスリープモードに移行されている。このとき、位相補償回路40では、PWMコンパレータ60の非反転入力端(+)とエラーアンプ30の出力端との間が遮断されると共に、キャパシタC1の第2端と接地端との間が導通され、キャパシタC2の第2端が出力電圧Voの印加端に接続され、キャパシタC3の第2端が入力電圧Viの印加端に接続された状態となる。従って、キャパシタC1の両端間が放電された状態となり、キャパシタC2の両端間が出力電圧Voで充電された状態となり、キャパシタC3の両端間が入力電圧Viで充電された状態となる。また、スリープモードでは、第1電圧VCと第2電圧RAMPがいずれも0Vとなり、比較信号CMPがローレベルとなる。
時刻t21において、スリープ制御信号XSLPがハイレベルに立ち上げられると、DC/DCコンバータ1がウェイクアップモードに復帰する。このとき、位相補償回路40では、PWMコンパレータ60の非反転入力端(+)とエラーアンプ30の出力端の間が導通されると共に、キャパシタC1の第2端と接地端との間が遮断され、キャパシタC2及びC3それぞれの第2端がいずれもキャパシタC1の第2端に接続された状態となる。
すなわち、位相補償容量部42は、スリープモード解除に伴い、その両端間が放電されたキャパシタC1と、それぞれの両端間が出力電圧Vo及び入力電圧Viで充電されたキャパシタC2及びC3とを並列接続した状態となる。
その結果、第1電圧VCは、キャパシタC1〜C3相互間の電荷分配則に従い、エラーアンプ30の起動を待つことなく、VC=k×Vo+k’×Vi(=(C2×Vo+C3×Vi)/(C1+C2+C3)})まで速やかに引き上げられる。すなわち、本実施形態では、先の第1実施形態と比べて、スリープモード解除時における第1電圧VCの初期値がk’×Viだけ高めにオフセットされる。
また、時刻t21以降は、オシレータ50が動作状態となるので、スイッチング周波数fsw(=1/T)でパルス駆動されるランプ波形の第2電圧RAMPが生成される。なお、第2電圧RAMPの振幅は、先にも述べたように、入力電圧Viに応じた変動値(=k×Vi)とされている。
従って、スリープモード解除時のオンデューティDon(=デューティ初期値に相当)は、(Vo/Vi)+(k’/k)となる。すなわち、本実施形態におけるデューティ初期値は、入力電圧Viを降圧して所望の出力電圧Voを生成する場合のデューティ理論値(=Vo/Vi)よりも意図的に高められた値となる。
なお、第1電圧VCは、出力帰還ループの働きにより、VC=k×Voとなるまで低下する。すなわち、DC/DCコンバータ1のオンデューティDonは、時間の経過とともに、上記のデューティ理論値(=Vo/Vi)に収束していく。
このように、位相補償容量部42におけるキャパシタ分割数を3以上とし、各キャパシタをそれぞれ異なるバイアス電圧で充電しておくことにより、第1実施形態と同様の効果を享受した上で、第1電圧VCの初期値を任意に調整することができる。従って、例えばDC/DCコンバータ1の出力ループ特性を鑑みつつ、スリープモード解除時のデューティ初期値を最適化することができるので、出力電圧Voのオーバーシュートやアンダーシュートをより適切に防止することが可能となる。
特に、キャパシタC2及びC3を充電するためのバイアス電圧として、DC/DCコンバータ1に既存の出力電圧Voと入力電圧Viを用いることにより、別途のバイアス電圧を用意せずに済む。ただし、キャパシタの分割数を増やしたくなければ、先の第1実施形態(図1)において、キャパシタC2を出力電圧Voよりも高い任意のバイアス電圧(=Vo+α)で充電することにより、本実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
<第3実施形態>
図5は、DC/DCコンバータの第3実施形態を示す回路図である。本実施形態のDC/DCコンバータ1は、第1実施形態(図1)をベースとしつつ、スイッチ出力段10が降圧型から昇圧型に変更されている点に特徴を有する。そこで、第1実施形態と同様の構成要素については、図1と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第3実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
スイッチ出力段10は、入力電圧Viを昇圧して所望の出力電圧Voを生成する昇圧型であり、出力トランジスタ15(本図ではNMOSFET)と、同期整流トランジスタ16(本図ではPMOSFET)と、コイル17と、キャパシタ18と、を含んでいる。
コイル17の第1端は、入力電圧Viの入力端に接続されている。コイル17の第2端は、出力トランジスタ15のドレインと同期整流トランジスタ16のドレインに接続されている。出力トランジスタ15のソースは、接地端に接続されている。同期整流トランジスタ16のソースとキャパシタ18の第1端は、いずれも出力電圧Voの印加端に接続されている。キャパシタ18の第2端は、接地端に接続されている。
出力トランジスタ15のゲートは、ゲート信号G3の印加端に接続されている。出力トランジスタ15は、ゲート信号G3がハイレベルであるときにオンし、ゲート信号G4がローレベルであるときにオフする。同期整流トランジスタ16のゲートは、ゲート信号G4の印加端に接続されている。同期整流トランジスタ16は、ゲート信号G4がハイレベルであるときにオフし、ゲート信号G4がローレベルであるときにオンする。
出力トランジスタ15と同期整流トランジスタ16は、ゲート信号G3及びG4に応じて相補的にオン/オフされる。このようなオン/オフ動作により、コイル17の第2端には、入力電圧Viと接地電圧GNDとの間でパルス駆動される矩形波状のスイッチ電圧Vswが生成される。なお、上記の「相補的」という文言は、出力トランジスタ15と同期整流トランジスタ16のオン/オフ状態が完全に逆転している場合だけでなく、両トランジスタの同時オフ期間(デッドタイム)が設けられている場合も含む。
出力トランジスタ15がオンされて同期整流トランジスタ16がオフされると、コイル17には出力トランジスタ15を介して接地端に向けたコイル電流ILが流れ、その電気エネルギが蓄えられる。このとき、スイッチ電圧Vswは、出力トランジスタ15を介してほぼ接地電圧GNDまで低下する。なお、同期整流トランジスタ16がオフされているので、キャパシタ18から出力トランジスタ15に向けて電流が流れ込むことはない。
一方、出力トランジスタ15がオフされて同期整流トランジスタ16がオンされると、コイル17に生じた逆起電力により、そこに蓄積されていた電気エネルギが電流として放出される。このとき、同期整流トランジスタ16を介して流れるコイル電流ILは、出力電流として出力電圧Voの出力端から負荷に流れ込むとともに、キャパシタ18を介して接地端にも流れ込み、キャパシタ18が充電される。上記の動作が繰り返されることにより、負荷には、入力電圧Viを昇圧した出力電圧Voが供給される。
なお、スイッチ出力段10に高電圧が印加される場合には、出力トランジスタ15や同期整流トランジスタ16として、それぞれ、パワーMOSFET、IGBT、SiCトランジスタなどの高耐圧素子を用いるとよい。この点については、先の第1〜第3実施形態と同様である。
また、スイッチ出力段10が降圧型から昇圧型に変更されたことに伴い、位相補償回路40、オシレータ50、PWMコンパレータ60、及び、ドライバ70にも、それぞれ変更が加えられている。以下では、各部の変更点について説明する。
位相補償回路40では、キャパシタC2を充電するためのバイアス電圧が、出力電圧Voから入力電圧Viに変更されている。
オシレータ50では、第2電圧RAMPの振幅が、入力電圧Viに応じた変動値(=k×Vi)から、出力電圧Voに応じた変動値(=k×Vo)に変更されている。
PWMコンパレータ60は、その入力極性が第1〜第3実施形態のそれとは反転されている。すなわち、PWMコンパレータ60の反転入力端(−)には、第1電圧VCが入力されており、PWMコンパレータ60の非反転入力端(+)には、第2電圧RAMPが入力されている。従って、比較信号CMPの論理レベルは、第1〜第3実施形態のそれとは逆に、第1電圧VCが第2電圧RAMPよりも高いときにローレベルとなり、第1電圧VCが第2電圧RAMPよりも低いときにハイレベルとなる。
また、ドライバ70は、NANDゲート71とANDゲート72に代えて、ANDゲート73とORゲート74を含み、比較信号CMPに応じてゲート信号G3及びG4(=それぞれスイッチ出力段10の駆動信号に相当)を生成する。より具体的に述べると、ANDゲート73は、スリープ制御信号XSLPと比較信号CMPとの論理積演算信号をゲート信号G3として出力する。また、ORゲート74は、比較信号CMPと反転入力されるスリープ制御信号XSLPとの論理和演算信号をゲート信号G4として出力する。
従って、スリープ制御信号XSLPがハイレベルである場合、ゲート信号G3及びG4は、基本的に比較信号CMPと同一論理信号となる。より具体的に述べると、比較信号CMPがハイレベルであるときには、ゲート信号G3及びG4がいずれもハイレベルとなるので、出力トランジスタ15がオンして同期整流トランジスタ16がオフする。逆に、比較信号CMPがローレベルであるときには、ゲート信号G3及びG4がいずれもローレベルとなるので、出力トランジスタ15がオフして同期整流トランジスタ16がオンする。
一方、スリープ制御信号XSLPがローレベルである場合、ゲート信号G3は、比較信号CMPに依ることなくローレベルとなり、ゲート信号G4は、比較信号CMPに依ることなくハイレベルとなる。従って、出力トランジスタ15と同期整流トランジスタ16がいずれもオフする。
図6は、第3実施形態におけるデューティ初期値設定動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、スリープ制御信号XSLP、第1電圧VC(実線)及び第2電圧RAMP(破線)、並びに、比較信号CMPが描写されている。
時刻t31以前には、スリープ制御信号XSLPがローレベルとされており、DC/DCコンバータ1が省電力のスリープモードに移行されている。このとき、位相補償回路40では、PWMコンパレータ60の非反転入力端(+)とエラーアンプ30の出力端との間が遮断されると共に、キャパシタC1の第2端と接地端との間が導通され、キャパシタC2の第2端が出力電圧Voの印加端に接続された状態となる。従って、キャパシタC1の両端間が放電された状態となり、キャパシタC2の両端間が入力電圧Viで充電された状態となる。また、スリープモードでは、第1電圧VCと第2電圧RAMPがいずれも0Vとなり、比較信号CMPがローレベルとなる。これらの点については、キャパシタC2に印加されるバイアス電圧が出力電圧Voから入力電圧Viに変更されていること以外、何ら変わりはない。
時刻t31において、スリープ制御信号XSLPがハイレベルに立ち上げられると、DC/DCコンバータ1がウェイクアップモードに復帰する。このとき、位相補償回路40では、PWMコンパレータ60の非反転入力端(+)とエラーアンプ30の出力端との間が導通されると共に、キャパシタC1の第2端と接地端との間が遮断され、キャパシタC2の第2端がキャパシタC1の第2端に接続された状態となる。
すなわち、位相補償容量部42は、スリープモード解除に伴い、その両端間が放電されたキャパシタC1と、その両端間が入力電圧Viで充電されたキャパシタC2とを並列接続した状態となる。
その結果、第1電圧VCは、キャパシタC1及びC2相互間の電荷分配則に従い、エラーアンプ30の起動を待つことなく、VC=k×Vi(={C2/(C1+C2)}×Vi)まで速やかに引き上げられる。
また、時刻t31以降は、オシレータ50が動作状態となるので、スイッチング周波数fsw(=1/T)でパルス駆動されるランプ波形の第2電圧RAMPが生成される。なお、第2電圧RAMPの振幅は、先にも述べたように、出力電圧Voに応じた変動値(=k×Vo)とされている。
ここで、DC/DCコンバータ1のオンデューティDon(=Ton/T)は、第1電圧VCと第2電圧RAMPとの比較結果に応じて決まる。具体的には、第1電圧VC(=k×Vi)と第2電圧RAMP(=(k×Vo/T)×(T−Ton))とが一致するタイミングから、スリープモード解除時のオンデューティDon(=デューティ初期値に相当)は、1−(Vi/Vo)となる。このデューティ初期値は、入力電圧Viを昇圧して所望の出力電圧Voを生成する場合のデューティ理論値と一致している。従って、スイッチ出力段10を昇圧型とした場合であっても、スリープモード解除時における出力電圧Voのオーバーシュートやアンダーシュートを防止することができる。
もちろん、本実施形態を採用した場合であっても、第1実施形態と同様の効果、すなわち、消費電力の削減や再起動時間の短縮が可能であることは言うまでもない。
また、本実施形態では、第1実施形態(図1)をベースとしつつ、スイッチ出力段10を昇圧型に変更した例を挙げたが、第2実施形態(図3)をベースとすることもできる。その場合、例えば、キャパシタC2を充電するための第1バイアス電圧を入力電圧Viとし、キャパシタC3を充電するための第2バイアス電圧を出力電圧Voとすればよい。
なお、上記の第1〜第3実施形態では、スイッチ出力段10の出力形式として、降圧型(図1及び図3)と昇圧型(図5)を例に挙げたが、昇降圧型や反転型を採用しても構わない。また、スイッチ出力段10の整流方式についても、上記の同期整流方式に限らず、ダイオード整流方式(=同期整流トランジスタに代えて整流ダイオードを用いた方式)に変更することができる。また、DC/DCコンバータ1の出力帰還制御方式については、上記の電圧モード制御方式に限らず、電流モード制御方式としてもよい。
<第4実施形態>
図7は、DC/DCコンバータの第4実施形態を示す回路図である。本実施形態のDC/DCコンバータ1は、電流モード制御方式を採用した降圧型スイッチング電源であり、スイッチ出力段10と、帰還電圧生成部20と、エラーアンプ30(第1アンプに相当)と、第1位相補償回路40と、オシレータ50と、PWMコンパレータ60と、ドライバ70と、差動アンプ80(第2アンプに相当)と、第2位相補償回路90と、電流検出部100と、クランパ110と、を有する。
なお、上記構成要素の多くは、第1実施形態(図1)のそれと共通している。そこで、第1実施形態と同様の構成要素については、図1と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第4実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
スイッチ出力段10、帰還電圧生成部20、及び、エラーアンプ30については、第1実施形態(図1)のそれと全く同一である。
第1位相補償回路40は、第1実施形態(図1)の位相補償回路40に相当し、エラーアンプ30から第1誤差電流信号I30の入力を受けて誤差電圧COMPを生成する。ただし、本実施形態のDC/DCコンバータ1では、スリープモードへの移行機能が割愛されていることから、第1実施形態(図1)と異なり、位相補償容量部42のキャパシタは複数に分割されておらず、スイッチ43〜45も設けられていない。
オシレータ50とPWMコンパレータ60については、第1実施形態(図1)のそれと全く同一である。
ドライバ70は、スリープモードの割愛に伴い、NANDゲート71とANDゲート72に代えて、インバータ75及び76を含む構成に変更されている。なお、インバータ75及び76は、それぞれ、比較信号CMPの論理反転信号をゲート信号G1及びG2として出力する。従って、比較信号CMPがハイレベルであるときには、ゲート信号G1及びG2がいずれもローレベルとなるので、出力トランジスタ11がオンして同期整流トランジスタ12がオフする。逆に、比較信号CMPがローレベルであるときには、ゲート信号G1及びG2がいずれもハイレベルとなるので、出力トランジスタ11がオフして同期整流トランジスタ12がオンする。
差動アンプ80は、エラーアンプ30と同じく、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプ(いわゆるgmアンプ)であり、反転入力端(−)に印加される誤差電圧COMPと非反転入力端(+)に印加される電流センス電圧CSNSとの差分に応じた第2誤差電流信号I80を生成する。第2誤差電流信号I80は、誤差電圧COMPが電流センス電圧CSNSよりも低いときには正方向(=差動アンプ80から第2位相補償回路90に向かう方向)に流れ、誤差電圧COMPが電流センス電圧CSNSよりも高いときには負方向(=第2位相補償回路90から差動アンプ80に向かう方向)に流れる。
第2位相補償回路90は、差動アンプ80とPWMコンパレータ60との間に接続されており、第2誤差電流信号I80の入力を受けて第1電圧VCを生成する。なお、第2位相補償回路90の構成及び動作については後述する。
電流検出部100は、スイッチ出力段10に流れるコイル電流ILに応じた電流センス電圧CSNSを生成する。電流センス電圧CSNSは、例えば、コイル電流ILの平均値IL(ave)が大きいほど高くなり、逆に、コイル電流ILの平均値IL(ave)が小さいほど低くなる。
クランパ110は、誤差電圧COMPを所定の上限電圧値VLMT以下に制限する。これにより、差動アンプ80では、コイル電流ILに応じた電流センス電圧CSNSを上限電圧値VLMT以下に制限するように出力帰還制御が掛かるようになるので、コイル電流ILが上限電流値ILMT以下に制限される。
<第2位相補償回路>
引き続き、図7を参照しながら、第2位相補償回路90の構成及び動作について詳述する。本図の第2位相補償回路90は、位相補償抵抗部91と位相補償容量部92を含み、第1電圧VCの位相を補償して出力帰還ループの発振を防止する。
位相補償容量部92は、キャパシタC4及びC5を含む。キャパシタC4の第1端は、接地端に接続されている。一方、キャパシタC5の第1端は、出力電圧Voの印加端に接続されている。なお、位相補償容量部92全体の容量値をCとし、キャパシタC4の容量値をC4とし、キャパシタC5の容量値をC5としたとき、C=C4+C5、C5/C4=k/(1−k)(ただし0<k<1)が満たされている。このように、本実施形態の位相補償容量部92では、位相補償用のキャパシタが2つに分割されており、少なくとも一つの接地側ノード(本図ではキャパシタC5の第1端)には、DC/DCコンバータ1の出力電圧Voが監視対象電圧として印加されているが、その技術的意義は後述する。
位相補償抵抗部91は、第1端がPWMコンパレータ60の非反転入力端(+)に接続され、第2端がキャパシタC4及びC5それぞれの第2端に接続された抵抗を含む。
図8は、第4実施形態におけるラッシュ電流抑制動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順番に、出力電圧Vo、第1電圧VC(実線)及び第2電圧RAMP(破線)、比較信号CMP、並びに、コイル電流ILが描写されている。
時刻t43以前においては、スイッチ出力段10の短絡が生じていないので、出力電圧Voは、その目標値Vo1に維持されている。また、第1電圧VCは、出力帰還ループの働きにより、k×Vo1に維持されるので、DC/DCコンバータ1のオンデューティDon(=Ton/T)は、入力電圧Viを降圧して所望の出力電圧Vo(=Vo1)を生成する場合のデューティ理論値(=Vo1/Vi)と一致する。
一方、時刻t43において、スイッチ出力段10の短絡が生じ、出力電圧Voが目標値Vo1から異常値Vo2に急落した場合、第1電圧VCは、キャパシタC4及びC5相互間の電荷分配則に従い、出力帰還ループの応答を待つことなく、出力電圧Voと同じ挙動で急峻に低下する。
特に、本実施形態のDC/DCコンバータ1では、C5/C4=k/(1−k)(ただし0<k<1)が満たされているので、出力電圧VoがΔVだけ変動したときには、第1電圧VCがk×ΔVだけ変動する。また、第2電圧RAMPの振幅は、先にも述べたように、入力電圧Viに応じた変動値(=k×Vi)とされている。
このような設定を行っておけば、DC/DCコンバータ1のオンデューティDonは、スイッチ出力段10の短絡発生と同時に、出力電圧Voの異常値Vo2に応じたデューティ理論値(=Vo2/Vi)へシフトされることになる。その結果、スイッチ出力段10の短絡異常時に生じるラッシュ電流(=過大なコイル電流IL)を効果的に抑制することができるので、スイッチ出力段10を形成する素子の劣化を防ぐことが可能となる。
なお、第2位相補償回路90を用いて出力電圧Voの過渡変動に応じたデューティ追従制御を実現する構成であれば、差動アンプ80やクランパ110の応答速度を高めずに済む。従って、電圧ループ特性が変化しないので、発振リスクが増大することもない。
また、本実施形態のDC/DCコンバータ1であれば、第2電圧RAMPの振幅が入力電圧Viに依存して変動するので、入力電圧Viの急変時においても、DC/DCコンバータ1のオンデューティDonを適切な値に合わせ込み、ラッシュ電流を抑制することが可能となる。
<第5実施形態>
図9は、DC/DCコンバータの第5実施形態を示す回路図である。本実施形態のDC/DCコンバータ1は、第4実施形態(図7)をベースとしつつ、位相補償容量部92に含まれるキャパシタを複数に分割するのではなく、位相補償抵抗部91に含まれる抵抗を複数に分割した点に特徴を有する。そこで、第4実施形態と同様の構成要素については、図7と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第5実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
位相補償抵抗部91は、抵抗R1及びR2を含む。抵抗R1の第1端は、接地端に接続されている。抵抗R2の第1端は、出力電圧Voの印加端に接続されている。位相補償抵抗部91全体の抵抗値をRとし、抵抗R1の抵抗値をR1とし、抵抗R2の抵抗値をR2としたときに、R=R1//R2、R1/R2=k/(1−k)(ただし0<k<1)が満たされている。このように、本実施形態の位相補償抵抗部91では、位相補償用の抵抗が2つに分割されており、少なくとも一つの接地側ノード(本図では抵抗R2の第1端)には、DC/DCコンバータ1の出力電圧Voが監視対象電圧として印加されている。
位相補償容量部92は、第1端がPWMコンパレータ60の非反転入力端(+)に接続され、第2端が抵抗R1及びR2それぞれの第2端に接続されたキャパシタを含む。
本実施形態のDC/DCコンバータ1において、例えば、スイッチ出力段10の短絡が生じて出力電圧Voが急落した場合、第1電圧VCは、抵抗R1及びR2の分圧作用により、出力帰還ループの応答を待つことなく、出力電圧Voと同じ挙動で急峻に低下する。従って、先の第4実施形態(図7)と同様の効果を享受することができる。
特に、本実施形態であれば、位相補償容量部92のキャパシタに対して、出力電圧Voの分圧電圧が印加される。従って、出力電圧Voが比較的に高い場合であっても、キャパシタの耐圧を不要に高めずに済むので、半導体装置への集積化に好適であると言える。
<第6実施形態>
図10は、DC/DCコンバータの第6実施形態を示す回路図である。本実施形態のDC/DCコンバータ1は、第4実施形態(図7)をベースとしつつ、先出の第1実施形態(図1)に倣い、スリープモードへの移行機能を備えた点に特徴を有する。そこで、第4実施形態と同様の構成要素については、図7と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第5実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
スリープモードの導入に伴い、エラーアンプ30、オシレータ50、PWMコンパレータ60、ドライバ70、差動アンプ80、及び、第2位相補償回路90には、それぞれ変更が加えられている。以下では、各部の変更点について説明する。
エラーアンプ30、オシレータ50、PWMコンパレータ60、及び、差動アンプ80は、スリープ制御信号XSLPがハイレベル(=スリープモード解除時の論理レベル)であるときに動作状態となり、スリープ制御信号XSLPがローレベル(=スリープモード時の論理レベル)であるときに停止状態となる。
ドライバ70は、インバータ75及び76に代えて、NANDゲート71とANDゲート72を含み、比較信号CMPとスリープ制御信号XSLPに応じてゲート信号G1及びG2を生成する。なお、その回路構成や動作については、先の第1実施形態(図1)と同一なので、重複した説明は割愛する。
第2位相補償回路90は、位相補償抵抗部91と位相補償容量部92に加えて、スイッチ93〜95を含む。
スイッチ93は、スリープ制御信号XSLPに応じてPWMコンパレータ60の非反転入力端(+)と差動アンプ80の出力端との間を導通/遮断する。具体的に述べると、スイッチ93は、スリープ制御信号XSLPがハイレベルであるときにオンしてPWMコンパレータ60の非反転入力端(+)と差動アンプ80の出力端との間を導通し、スリープ制御信号XSLPがローレベルであるときにオフしてPWMコンパレータ60の非反転入力端(+)と差動アンプ80の出力端との間を遮断する。
スイッチ94は、スリープ制御信号XSLPに応じてキャパシタC4の第2端と接地端との間を導通/遮断する。具体的に述べると、スイッチ94は、スリープ制御信号XSLPがローレベルであるときにオンしてキャパシタC4の第2端と接地端との間を導通し、スリープ制御信号XSLPがハイレベルであるときにオフしてキャパシタC4の第2端と接地端との間を遮断する。
スイッチ95は、スリープ制御信号XSLPに応じてキャパシタC5の第2端を出力電圧Vo(監視対象電圧に相当)の印加端に接続するか接地端に接続するかを切り替える。具体的に述べると、スイッチ95は、スリープ制御信号XSLPがローレベルであるときにキャパシタC5の第2端を接地端に接続し、スリープ制御信号XSLPがハイレベルであるときにキャパシタC5の第2端を出力電圧Voの印加端に接続する。
上記構成から成る第2位相補償回路90では、スリープモード解除時(XSLP=H)において、PWMコンパレータ60の非反転入力端(+)と差動アンプ80の出力端との間が導通されると共に、キャパシタC4の第2端と接地端との間が遮断され、キャパシタC5の第2端が出力電圧Voの印加端に接続された状態となる。
すなわち、位相補償容量部92は、スリープモード解除に伴い、出力電圧Voの印加端と接地端との間にキャパシタC4及びC5を直列接続した状態となる。その結果、第1電圧VCは、キャパシタC4及びC5の容量分圧により、差動アンプ80の起動を待つことなく、VC=k×Vo(={C4/(C4+C5)}×Vo)まで速やかに引き上げられる。従って、先の第1実施形態(図1)と同様、第2位相補償回路90を用いてスリープモード解除時のデューティ初期値が設定される。
また、スリープモード解除後、位相補償容量部92の接続状態は、図7と完全に等価になる。従って、先の第4実施形態(図7)と同様、第2位相補償回路90を用いて出力電圧Voの過渡変動に応じたデューティ追従制御を実現することができるので、スイッチ出力段10の短絡異常時に生じるラッシュ電流を効果的に抑制することが可能となる。
このように、本実施形態のDC/DCコンバータ1であれば、第1実施形態(図1)と第4実施形態(図7)双方の効果を享受することが可能となる。
<第7実施形態>
図11は、DC/DCコンバータの第7実施形態を示す回路図である。本実施形態のDC/DCコンバータ1は、第6実施形態(図10)をベースとしつつ、位相補償容量部92に含まれるキャパシタを複数に分割するのではなく、位相補償抵抗部91に含まれる抵抗を複数に分割した点に特徴を有する。また、この変更に伴い、第2位相補償回路90には、スイッチ94及び95に代えて、スイッチ96〜98が設けられている。そこで、第6実施形態と同様の構成要素については、図10と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第7実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
位相補償抵抗部91は、抵抗R1及びR2を含む。抵抗R1の第1端は、接地端に接続されている。抵抗R2の第1端は、スイッチ97を介して出力電圧Voの印加端に接続されている。なお、位相補償抵抗部91全体の抵抗値をRとし、抵抗R1の抵抗値をR1とし、抵抗R2の抵抗値をR2としたときに、R=R1//R2、R1/R2=k/(1−k)(ただし0<k<1)が満たされている。この点については、先の第5実施形態(図9)と同様である。
位相補償容量部92は、第1端がPWMコンパレータ60の非反転入力端(+)に接続され、第2端が抵抗R1及びR2それぞれの第2端に接続されたキャパシタを含む。
スイッチ96は、スリープ制御信号XSLPに応じて抵抗R1の第2端と接地端との間を導通/遮断する。より具体的に述べると、スイッチ96は、スリープ制御信号XSLPがローレベルであるときにオンして抵抗R1の第2端と接地端との間を導通し、スリープ制御信号XSLPがハイレベルであるときにオフして抵抗R1の第2端と接地端との間を遮断する。
スイッチ97は、スリープ制御信号XSLPに応じて抵抗R2の第2端と出力電圧Vo(=監視対象電圧に相当)の印加端との間を導通/遮断する。より具体的に述べると、スイッチ97は、スリープ制御信号XSLPがローレベルであるときにオフして抵抗R2の第2端と出力電圧Voの印加端との間を遮断し、スリープ制御信号XSLPがハイレベルであるときにオンして抵抗R2の第2端と出力電圧Voの印加端との間を導通する。
スイッチ98は、スリープ制御信号XSLPに応じて位相補償容量部92の第1端と接地端との間を導通/遮断する。より具体的に述べると、スイッチ98は、スリープ制御信号XSLPがローレベルであるときにオンして位相補償容量部92の第1端と接地端との間を導通し、スリープ制御信号XSLPがハイレベルであるときにオフして位相補償容量部92の第1端と接地端との間を遮断する。
上記構成から成る第2位相補償回路90では、スリープモード解除時(XSLP=H)において、PWMコンパレータ60の非反転入力端(+)と差動アンプ80の出力端との間が導通されると共に、抵抗R1の第2端と接地端との間、及び、位相補償容量部92の第1端と接地端との間がいずれも遮断され、抵抗R2の第2端が出力電圧Voの印加端に接続された状態となる。
すなわち、位相補償抵抗部91は、スリープモード解除に伴い、出力電圧Voの印加端と接地端との間に抵抗R1及びR2を直列接続した状態となる。その結果、第1電圧VCは、抵抗R1及びR2の抵抗分圧により、差動アンプ80の起動を待つことなく、VC=k×Vo(={R1/(R1+R2)}×Vo)まで速やかに引き上げられる。従って、先の第1実施形態(図1)と同様、第2位相補償回路90を用いてスリープモード解除時のデューティ初期値が設定される。
また、スリープモード解除後、位相補償抵抗部91の接続状態は、図9と完全に等価になる。従って、先の第5実施形態(図9)と同様、第2位相補償回路90を用いて出力電圧Voの過渡変動に応じたデューティ追従制御を実現することができるので、スイッチ出力段10の短絡異常時に生じるラッシュ電流を効果的に抑制することが可能となる。
特に、本実施形態であれば、位相補償容量部92のキャパシタに対して、出力電圧Voの分圧電圧が印加される。従って、出力電圧Voが比較的に高い場合であっても、キャパシタの耐圧を不要に高めずに済むので、半導体装置への集積化に好適であると言える。
このように、本実施形態のDC/DCコンバータ1であれば、第1実施形態(図1)と第5実施形態(図9)双方の効果を享受することが可能となる。
<第8実施形態>
図12は、DC/DCコンバータの第8実施形態を示す回路図である。本実施形態のDC/DCコンバータ1は、第4実施形態(図7)をベースとしつつ、差動アンプ80に代えて演算器120に電流センス電圧CSNSを帰還入力する点に特徴を有する。また、この変更に伴い、第2位相補償回路90が割愛されており、その機能が位相補償回路40に移譲されている。そこで、第4実施形態と同様の構成要素については、図7と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第8実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
位相補償回路40は、位相補償抵抗部41と位相補償容量部42を含み、誤差電圧COMPの位相を補償して出力帰還ループの発振を防止する。
位相補償容量部42は、キャパシタC6及びC7を含む。キャパシタC6の第1端は、接地端に接続されている。一方、キャパシタC7の第1端は、出力電圧Voの印加端に接続されている。なお、位相補償容量部42全体の容量値をCとし、キャパシタC6の容量値をC6とし、キャパシタC7の容量値をC7としたとき、C=C6+C7、C7/C6=k/(1−k)(ただし0<k<1)が満たされている。このように、本実施形態の位相補償容量部42では、位相補償用のキャパシタが2つに分割されており、少なくとも一つの接地側ノード(本図ではキャパシタC7の第1端)には、DC/DCコンバータ1の出力電圧Voが監視対象電圧として印加されている。
位相補償抵抗部41は、第1端がエラーアンプ30の出力端に接続され、第2端がキャパシタC6及びC7それぞれの第2端に接続された抵抗を含む。
演算器120は、誤差電圧COMPと電流センス電圧CSNSとの演算処理(例えば、誤差電圧COMPから電流センス電圧CSNSを差し引く減算処理)を行うことにより、第1電圧VC(=COMP−CSNS)を生成する。
このように、演算器120を用いて電流モード制御方式を実現する場合においても、位相補償回路40を図7と等価の回路構成とすることにより、先の第4実施形態(図7)と同様の効果を享受することが可能である。また、位相補償回路40については、図9と等価の回路構成としてもよい。
<第9実施形態>
図13は、DC/DCコンバータの第9実施形態を示す回路図である。本実施形態のDC/DCコンバータ1は、第8実施形態(図12)をベースとしつつ、演算器120に代えて演算器130を用いた点に特徴を有する。そこで、第4実施形態と同様の構成要素については、図7と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第8実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
演算器130は、第2電圧RAMPと電流センス電圧CSNSとの演算処理(例えば、第2電圧RAMPと電流センス電圧CSNSとを足し合わせる加算処理)を行うことにより、第3電圧RAMP’(=RAMP+CSNS)を生成する。
PWMコンパレータ60は、上記の変更に伴い、非反転入力端(+)に入力される第1電圧VCと、反転入力端(−)に入力される第3電圧RAMP’とを比較して比較信号CMPを生成する。
このように、演算器130を用いて電流モード制御方式を実現する場合においても、位相補償回路40を図7と等価の回路構成とすることにより、先の第4実施形態(図7)と同様の効果を享受することが可能である。また、位相補償回路40については、図9と等価の回路構成としてもよい。
<第10実施形態>
図14は、DC/DCコンバータの第10実施形態を示す回路図である。本実施形態のDC/DCコンバータ1は、第4実施形態(図7)をベースとしつつ、スイッチ出力段10が降圧型から昇圧型に変更されている点に特徴を有する。そこで、第4実施形態と同様の構成要素については、図7と同一の符号を付すことにより重複した説明を割愛し、以下では、第10実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
スイッチ出力段10は、入力電圧Viを昇圧して所望の出力電圧Voを生成する昇圧型であり、出力トランジスタ15(本図ではNMOSFET)と、同期整流トランジスタ16(本図ではPMOSFET)と、コイル17と、キャパシタ18と、を含んでいる。なお、その回路構成や動作については、先の第3実施形態(図5)と同一なので、重複した説明は割愛する。
また、スイッチ出力段10が降圧型から昇圧型に変更されたことに伴い、オシレータ50、PWMコンパレータ60、ドライバ70、及び、第2位相補償回路90にも、それぞれ変更が加えられている。以下では、各部の変更点について説明する。
オシレータ50では、第2電圧RAMPの振幅が、入力電圧Viに応じた変動値(=k×Vi)から、出力電圧Voに応じた変動値(=k×Vo)に変更されている。
PWMコンパレータ60は、その入力極性が第4〜第9実施形態のそれとは反転されている。すなわち、PWMコンパレータ60の反転入力端(−)には、第1電圧VCが入力されており、PWMコンパレータ60の非反転入力端(+)には、第2電圧RAMPが入力されている。従って、比較信号CMPの論理レベルは、第4〜第9実施形態のそれとは逆に、第1電圧VCが第2電圧RAMPよりも高いときにローレベルとなり、第1電圧VCが第2電圧RAMPよりも低いときにハイレベルとなる。
ドライバ70は、インバータ75及び76に代えて、バッファ77及び78を含む。バッファ77及び78は、それぞれ、比較信号CMPと同一論理レベルのゲート信号G3及びG4を生成する。従って、比較信号CMPがハイレベルであるときには、ゲート信号G3及びG4がいずれもハイレベルとなるので、出力トランジスタ15がオンして同期整流トランジスタ16がオフする。逆に、比較信号CMPがローレベルであるときには、ゲート信号G3及びG4がいずれもローレベルとなるので、出力トランジスタ15がオフして同期整流トランジスタ16がオンする。
また、第2位相補償回路90では、キャパシタC5の第2端に印加される監視対象電圧が、出力電圧Voから入力電圧Viに変更されている。
本実施形態のDC/DCコンバータ1によれば、第2位相補償回路90を用いて入力電圧Viの過渡変動に応じたデューティ追従制御を実現することができる。従って、スイッチ出力段10を昇圧型とした場合であっても、ラッシュ電流の抑制効果を享受することが可能となる。
また、本実施形態のDC/DCコンバータ1であれば、第2電圧RAMPの振幅が出力電圧Voに依存して変動するので、出力電圧Voの急変時においても、DC/DCコンバータ1のオンデューティDonを適切な値に合わせ込み、ラッシュ電流を抑制することが可能となる。
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、バイポーラトランジスタとMOS電界効果トランジスタとの相互置換や、各種信号の論理レベル反転は任意である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。