JP6783647B2 - 伸縮性配線基板 - Google Patents
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Description
しかしながら、上記した特許文献1及び特許文献2は、いずれも基板あるいは配線自身に伸縮性を持たせることによって断線等を防ぐものであり、伸縮性の異なる部材間に形成された伸縮性配線に張力が加わった場合の断線について考慮したものではない。
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、伸縮性の異なる二つの基材に亘って形成される伸縮性配線の断線を抑止することが可能な伸縮性配線基板を提供するものである。
図1は、本実施形態の伸縮性配線基板1の上面図である。図2は、図1に示した伸縮性配線基板1の一部を拡大して示した図である。各図面において、対応する構成要素には共通の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
なお、本明細書でいう「面」とは、幾何学的に完全な平面であることを要するものではなく、凹凸を有することを許容する。また、本明細書でいう「フィルム」とは、シートや膜状物等、一般的に厚みの薄い形状物を広く含む。即ち、シート、フィルムまたは膜状物等の称呼の違いにより個別の厚みの大小を規定するものではない。
また、本実施形態は、便宜上、以下の説明において図の下方側を下面側、上方側を上面側と呼称する場合がある。ただし、これは構成要素の相対的な位置関係を説明するために便宜的に規定するものであり、重力方向の上下とは必ずしも一致しない。
図1に示すように、伸縮性配線基板1は、伸縮性を有する第1シート部材である伸縮性基材20と、外部の機器と接続して用いられる外部端子13を備えると共に、伸縮性基材20の一方の主面に重ねられ、伸縮性基材20よりも低い伸縮性を有するフィルム基材10と、を備えている。また、伸縮性配線基板1は、伸縮性基材20とフィルム基材10とが平面視で重なっている重なり領域16と、伸縮性基材20がフィルム基材10と平面視で重なっていない伸縮性の非重なり領域26と、を有している。上面視において、本実施形態ではフィルム基材10の略全体が伸縮性基材20と重なっていて、重なり領域16はフィルム基材10と重なっているために符号10に(16)を付して示す。さらに、伸縮性配線基板1は、外部端子13と連続形成され、かつ、重なり領域16と非重なり領域26とに亘って形成された配線30を備えている。重なり領域16は、非重なり領域26の側に向かって張り出す張出領域17、19を有し、少なくとも一本の配線30が張出領域17、19と異なる領域に形成されている。
本実施形態では、伸縮性配線基板1の全体のX方向の長さ(伸縮性配線基板の長さ)をL、伸縮性配線基板1の重なり領域16の張出領域17、19を含む長さ(張出長さ)をA、非重なり領域26の張出間領域18を含まない長さをBとする。また、本実施形態では、伸縮性基材20のY方向の長さ(伸縮性基材の幅)をWとする。
配線30は、フィルム基材10の外部端子13と連続するように形成されていて、重なり領域16の縁部15と交差する。ここで、「交差する」とは、直交することばかりでなく、配線30が縁部15と斜めに交わることも含む。つまり、「交差する」の文言は、配線30が重なり領域16と被重なり領域26とに亘って形成されることを示すものである。
伸縮性配線基板1に引っ張り応力が加わった際の断線は、伸縮性基材20が生体等の対象に貼り付けられたり、貼り直されたりする際にかかる張力によって発生し、張力は図1に示したX方向に最も強く作用すると考えられる。また、張力は、X方向ばかりでなく、Y方向及びZ軸方向にも生じる。伸縮性配線基板1が±X方向に引っ張られると、伸縮性配線基板1はこの方向に伸張するばかりでなく、面直方向にも撓み変形するからである。さらに、このような張力は、伸縮性の異なる部材の界面において特に強く作用する。このため、本実施形態は、伸縮性配線基板1の配線30のうち、特に重なり領域16と非重なり領域26との境界付近の配線30の断線を抑止することに着目している。
以下、上記した構成の各々について、順に説明する。
フィルム基材10は、可撓性を有する部材であって、伸縮性基材20よりも大きなヤング率を有している。なお、本実施形態では、フィルム基材10は伸縮性基材20よりも伸縮性が低く、実質的に殆ど伸縮しない部材とする。フィルム基材10の材質は特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)またはフッ素樹脂等の、低摺動性、耐食性かつ高強度の合成樹脂を用いることができる。このほか、フィルム基材10には、セルロースナノファイバーペーパー等相応の耐久性を備えた紙素材を用いてもよい。
伸縮性配線基板1のX方向の端部を持って張力を加えた場合、張力は伸縮性の低い(剛性の高い)張出領域17及び張出領域19の縁部151、152に強く作用することになる。このことから、本実施形態は、張出領域17、張出領域19に張力を逃し、この間に配線30を配置している。このような構成によれば、張力の作用が相対的に小さい張出間領域18に配線30を配置することができ、伸縮性配線基板1に張力が加わった際の配線30の断線を抑止することができる。
また、本実施形態は、フィルム基材10に張出領域17及び張出領域19を設けたことにより、図中のY方向に張力の強度分布が生じる。このため、本実施形態は、伸縮性配線基板1にかかった張力の各方向の成分を均等に近づけて、配線30の断線に寄与する成分を小さくすることができる。
つまり、本実施形態では、縁部15が、張出領域17の縁部151、張出領域19の縁部152及び張出間領域18の縁部181を含んでいる。張出領域17の縁部15と張出間領域18の縁部との距離のうちの最大距離は、張出間領域18の縁部181と張出領域17の縁部151の非重なり領域26の側に向かう突端部分との距離d1である。また、張出領域17の縁部15と配線30との距離のうちの最小距離は、張出領域17の縁部15と、複数の配線30のうち最も張出領域17に近い位置にある配線30との距離d2である。同様に、張出領域19の縁部15と張出間領域18の縁部との距離のうちの最大距離は、張出間領域18の縁部181と張出領域19の縁部152の非重なり領域26の側に向かう突端部分との距離d3である。また、張出領域19の縁部15と配線30との距離のうちの最小距離は、張出領域19の縁部15と、複数の配線30のうち最も張出領域19に近い位置にある配線30との距離d4である。図2に示した例では、d1、d3を例えば5mm以上、25mm以下とすることができる。
上記条件は、張力が強く作用する張出領域17、張出領域19から配線30を充分離し、配線30に張出領域17、19界面に作用する張力の影響が及ばないようにして断線を防ぐ効果を奏する。
縁部15には、法線方向に張力が作用する。このため、曲線182、183を設けることにより、本実施形態は、張出領域17、張出領域19の縁部15にかかる張力の断線に係る成分を少なくすることができる。
伸縮性基材20は、フィルム基材10よりも高い伸縮性を有している。伸縮性基材20を構成する好ましい素材としては、ニトリルゴム、ラテックスゴム、ウレタン系エラストマー等のエラストマー材料を挙げることができるが、これに限定されない。特に、医療用に用いられるウレタン系エラストマーシートを用いることで、人体の皮膚に貼り付けた場合でも高い安全性を得ることができる。
なお、本明細書において伸び率とは、外力が付加されていない場合の寸法(伸び率0%寸法)に対し、力が加えられることで面内方向の一方向に伸びた割合を意味する。たとえば伸び率50%であれば伸び率0%寸法の1.5倍の伸び率であり、伸び率100%であれば伸び率0%寸法の2倍の伸び率である。
外部端子13は、複数の端子部によって構成されている。本実施形態では、端子部は複数の配線30と1対1に対応して直接接続されている。端子部と配線30との接合は、例えば、ラミネート接続や加圧プレスによって行われる。
配線30の厚み寸法及び幅寸法は、配線30の無負荷時の伸縮性基材20の伸張時の抵抗変化のほか、伸縮性配線基板1の全体の厚み寸法及び幅寸法の制約に基づいて決定することができる。伸縮性基材20の伸張時の寸法変化に追従させて良好な伸縮性を確保するという観点からは、配線30の幅寸法は、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましい。各配線30の厚み寸法は、25μm以下とすることができ、望ましくは10μm以上15μm以下である。
本実施形態では、配線30が主に張力がかかるX方向に延伸している。このため、伸縮性基材20が伸びて伸縮性基材20上の配線30に僅かな亀裂が入った場合、この亀裂が直ちに断線につながりやすい。このため、本実施形態では、X方向に延伸する配線30を断線抑止の保護対象とし、張出領域17、19の間に配置している。伸縮性配線基板1は、配線30以外の配線を備えるものであってもよく、この配線は、その用途等に応じて張出領域17、19と重なるように配置されるものであってもよい。
次に、上記した伸縮性配線基板1の製造プロセスを簡単に説明する。図3から図6は、伸縮性配線基板1の製造プロセスを説明するための図であって、図1中の矢線C−Cに沿う伸縮性配線基板1の断面図である。なお、図3から図6は、伸縮性配線基板1の製造プロセスを説明するための模式図であって、その寸法形状や縦横比を正確に表したものではない。
本実施形態では、先ず、図3(a)に示す伸縮性基材20を用意する。図3(a)に示した伸縮性基材20は、樹脂フィルムや紙製のセパレータ20a上に貼付されている。図3(a)に示した伸縮性基材20上には、伸縮性を有する配線30が形成される。本実施形態の配線30は、両端部に中央部に比べて厚い部分となる電極31、32が形成される。電極31は、後述するように外部端子13と接続される端子となり、電極32は、後述するように伸縮性配線基板1に電気信号を入力する電極と接続される。
配線30は、さらに樹脂バインダを含むことが好ましい。すなわち、本実施形態の配線30は、樹脂材料に導電性粒子が分散して配合された導電性材料で形成されている。配線30が樹脂バインダを含むことにより、伸縮性基材20の伸縮によって配線30が破断することが抑制される。樹脂バインダとしては、たとえばウレタン樹脂バインダ等の熱可塑性のエラストマー材料を挙げることができるが、これに限定されない。樹脂バインダとしては、塗膜化された状態における配線30の弾性率が伸縮性基材20の弾性率に比して同等か、またはより小さくなるように低ヤング率のものを選定することが望ましい。エラストマー材料は一種類で用いてもよく、または複数種類のエラストマー材料を混合して用いてもよい。
具体的な印刷法は特に限定されないが、たとえば、スクリーン印刷方法、インクジェット印刷方法、グラビア印刷方法、オフセット印刷方法等を例示することができる。このうち、微細解像性や厚膜安定性の観点から、スクリーン印刷が好適に用いられる。
また、印刷法で配線30を形成する場合、上述した導電性粒子及び樹脂バインダならびに有機溶剤を含む導電性ペーストを調製して印刷法に供するとよい。配線30に、銀等の金属粒子を主成分とする伸縮性の導電性ペーストを用いることによって、たとえば50%以上70%以下程度の伸び率を実現することができ、伸長特性に優れた配線の形成が可能となる。
図5(h)は、ラミネート処理後の伸縮性基材20と伸縮性カバー40とを示す図である。伸縮性カバー40は、ラミネート処理されたことによって軟化すると共に配線30に密着し、配線30と電極32との段差に沿って段差を生じている。図5(h)に示した伸縮性カバー40からセパレータ40aを剥離すると、図5(i)の状態の伸縮性基材20及び伸縮性カバー40が得られる。
ところで、配線30の断線は、例えば、フィルム基材10及び伸縮性基材20にかけて伸縮性配線基板1の伸縮を調整する伸縮シート(伸縮補材)をラミネート処理によって貼り合せることで抑止することができる。しかし、本実施形態の伸縮性配線基板1に使用される各シートは、樹脂フィルムや紙製のセパレータに貼付されているために一度にラミネート処理することができず、シート毎にラミネート処理することが必要になる。ラミネート処理は、伸縮性配線基板1の製造工程において比較的時間を有する処理であって、この処理が製造のスループットの低下を招く可能性がある。
しかし、本実施形態は、以上説明したように、伸縮シート(伸縮補材)のラミネート処理を行うことなく配線30の断線を抑止することができる。このような本実施形態は、配線30の断線抑止と伸縮性配線基板1の製造プロセスのスループット向上を両立することができるものといえる。ただし、さらなる張力の緩和が必要である場合、以上説明した本実施形態の伸縮性配線基板1に、さらに伸縮シート(伸縮補材)を貼付する工程を追加してもよい。
図7は、図6に示した伸縮性配線基板1に、伸縮シート46を設けた状態を示す図である。
たとえば、伸縮性配線基板1には、人体の表面に伸縮性配線基板1を貼り付けるための貼付層(図示せず)を設けてもよい。貼付層は、伸縮性配線基板1の用途により、伸縮性配線基板1の上面側に設けてもよく、または下面側に設けてもよい。貼付層はゲル剤や粘着剤により作成することができる。
(1)伸縮性を有する第1シート部材と、外部の機器と接続して用いられる外部端子を備えると共に、前記第1シート部材の一方の主面に重ねられ、前記第1シート部材よりも低い伸縮性を有する第2シート部材と、を備える伸縮性配線基板であって、前記伸縮性配線基板は、前記第1シート部材と前記第2シート部材とが平面視で重なっている重なり領域と、前記第1シート部材が前記第2シート部材と平面視で重なっていない伸縮性の非重なり領域と、前記外部端子と連続形成され、かつ前記重なり領域と前記非重なり領域とに亘って形成された配線と、を備え、前記重なり領域は前記非重なり領域の側に向かって張り出す張出領域を有し、少なくとも一本の前記配線が前記張出領域と異なる領域に形成されていることを特徴とする伸縮性配線基板。
(2)前記張出領域の縁部は、円弧に沿う曲線を含む、(1)の伸縮性配線基板。
(3)前記張出領域は、第1張出領域及び前記第1張出領域と離間して形成される第2張出領域を有し、前記少なくとも一本の前記配線は、前記第1張出領域と前記第2張出領域の間の張出間領域に配置される、(1)または(2)の伸縮性配線基板。
(4)前記第1張出領域及び前記第2張出領域の縁部は、前記張出間領域の両端に円弧に沿う曲線を含む、(3)の伸縮性配線基板。
(5)前記第1張出領域の縁部と前記張出間領域の縁部との最大距離は前記第1張出領域の縁部と前記配線との最小距離よりも大きい、または、前記第2張出領域の縁部と前記張出間領域の縁部との最大距離は前記第2張出領域の縁部と前記配線との最小距離よりも大きい、(3)または(4)の伸縮性配線基板。
10・・・フィルム基材
10a・・・易接着層
13・・・外部端子
15,151,152,181・・・縁部
16・・・重なり領域
17、19・・・張出領域
18・・・張出間領域
20・・・伸縮性基材
20a,40a・・・セパレータ
26・・・非重なり領域
30・・・配線
31、32・・・電極
40・・・伸縮性カバー
45・・・開口部
70・・・生体電極
182,183・・・曲線
Claims (2)
- 伸縮性を有するエラストマー材料の第1シート部材と、
外部の機器と接続して用いられる外部端子を備えると共に、前記第1シート部材の一方の主面に重ねられ、前記第1シート部材よりも低い伸縮性を有する第2シート部材と、を備える伸縮性配線基板であって、
前記伸縮性配線基板は、
前記第1シート部材と前記第2シート部材とが平面視で重なっている重なり領域と、
前記第1シート部材が前記第2シート部材と平面視で重なっていない伸縮性の非重なり領域と、
前記外部端子と連続形成され、かつ前記重なり領域と前記非重なり領域とに亘って形成された配線と、を備え、
前記重なり領域は前記非重なり領域の側に向かって張り出す張出領域を有し、少なくとも一本の前記配線が前記張出領域と異なる領域に形成されていて、
前記張出領域は、第1張出領域及び前記第1張出領域と離間して形成される第2張出領域を有し、前記少なくとも一本の前記配線は、前記第1張出領域と前記第2張出領域の間の張出間領域に配置され、
前記第1張出領域及び前記第2張出領域の縁部は、前記重なり領域の突端部に前記張出間領域の側に向かって形成される円弧に沿う曲線を含む、伸縮性配線基板。 - 前記第1張出領域の縁部と前記張出間領域の縁部との最大距離は前記第1張出領域の縁部と前記配線との最小距離よりも大きい、または、前記第2張出領域の縁部と前記張出間領域の縁部との最大距離は前記第2張出領域の縁部と前記配線との最小距離よりも大きい、請求項1に記載の伸縮性配線基板。
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