本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<A.全体装置構成>
まず、本実施の形態に従う画像形成装置100の装置構成について説明する。以下に説明する画像形成装置100は、典型例として、複合機(MFP:Multi-Functional Peripheral)として実装されるカラー画像形成装置である。但し、本実施の形態に従う像担持体の膜厚を算出する機構および方法は、複合機以外にも、複写機、プリンターにも適用可能であり、また、モノクロ画像形成装置にも適用可能である。なお、カラー画像を形成する機構として、タンデム方式を例示するが、サイクル方式(典型的には、4サイクル方式)にも適用可能である。
図1は、本実施の形態に従う画像形成装置100の全体構成を示す模式図である。図1を参照して、画像形成装置100は、プリントエンジン110と、原稿読取部120と、給紙部130とを含む。
プリントエンジン110は、電子写真方式の画像形成プロセスを実行する。図1に示す構成においては、フルカラーの印刷出力が可能である。印刷出力された媒体Sは、下流工程へ排出される。
原稿読取部120は、原稿を読み取って、その読み取り結果をプリントエンジン110に対する入力画像として出力する。より具体的には、原稿読取部120は、イメージスキャナー122と、原稿給紙台124と、原稿自動送り装置126と、原稿排紙台128とを含む。
給紙部130は、媒体Sをプリントエンジン110へ順次供給する。具体的には、給紙部130は、保持している媒体Sを送出ローラー30によって順次送り出すとともに、この送り出される媒体Sを搬送経路32に沿ってプリントエンジン110へ搬送する。
プリントエンジン110では、給紙部130から供給された媒体Sが搬送経路34に沿って排出口まで搬送される。媒体Sが搬送経路34に沿って搬送される過程において、定着装置20がトナー像を媒体Sへ転写および定着させる。定着装置20は、加圧ローラー22および加熱ローラー24を含み、中間転写体6上に形成されたトナー像を媒体Sへ転写する。
プリントエンジン110は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のそれぞれのトナー像を形成するイメージングユニット10C,10M,10Y,10K(以下、「イメージングユニット10」と総称することもある。)を含む。
図1には、それぞれのイメージングユニット10が形成したトナー像を、中間転写体を介して被転写部材である媒体Sに転写する構成を例示する。画像形成装置100は、中間転写体として、中間転写体駆動ローラー14,15,16により張架された中間転写体6を含む。中間転写体6は、中間転写体駆動ローラー14,15,16の回転駆動により、所定方向に回動される。中間転写体6としては、図1に示す中間転写ベルトに代えて、中間転写ローラーを採用してもよい。なお、図1には、トナー像を中間転写体に一旦転写した後、定着装置20によって媒体Sへ転写する構成について例示するが、感光体ドラム1上のトナー像を媒体Sに直接転写するようにしてもよい。
イメージングユニット10C,10M,10Y,10Kは、プリントエンジン110内に張架されて回転駆動される中間転写体6に沿って、その順序に配置される。イメージングユニット10の各々は、感光体ドラム1および中間転写装置5を含む。感光体ドラム1および中間転写装置5は、中間転写体6を挟んで互いに対向配置される、感光体ドラム1の周囲には、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、クリーニング装置とが配置されている。
プリントエンジン110は、画像形成装置100の全体制御を司る制御部50を含む。制御部50としては、プロセッサがプログラムを実行することで実現されるが、これに代えて、その処理の全部または一部を専用のハードウェアを用いて実現してもよい。また、プロセッサがプログラムを実行する場合には、そのプログラムは、各種の記録媒体を介して不揮発性メモリーにインストールされ、あるいは、通信回線を介して図示しないサーバー装置等からダウンロードされてもよい。
<B.イメージングユニットおよび画像形成動作>
次に、本実施の形態に従う画像形成装置100のプリントエンジン110を構成するイメージングユニット10の構成、および、イメージングユニット10を用いた画像形成動作について説明する。
図2は、本実施の形態に従う画像形成装置100のイメージングユニット10の模式図である。図2を参照して、感光体ドラム1の周囲には、帯電装置2と、露光装置3と、現像部4と、クリーニングブレード8とが配置されている。
感光体ドラム1には、その表面にトナー像を担持する像担持体である感光層が形成されている。感光体ドラム1は、その表面にトナー像が形成されるように配置されるとともに、中間転写体6の回転方向に対応する方向に回転する。なお、像担持体としては、感光体ドラム1に代えて、感光体ベルトを採用してもよい。感光体ドラム1には、露光装置3により静電潜像が形成されるとともに、現像部4によって静電潜像が現像されてトナー像が形成される。
帯電装置2は、帯電電源および帯電ローラーなどを含み、感光体ドラム1の表面を所定電位に一様に帯電する。
露光装置3は、レーザー書き込み等により、指定された画像パターンに従って感光体ドラム1の表面を露光することで、その表面上に静電潜像を形成する。典型的には、露光装置3は、レーザー光を発生するレーザダイオードと、主走査方向に沿ってレーザー光を感光体ドラム1の表面を露光させるポリゴンミラーとを含む。
現像部4は、感光体ドラム1と現像領域を介して対向するように配置された現像ローラー41を有しており、現像ローラー41を用いて、感光体ドラム1上に形成された静電潜像をトナー像として現像する。現像ローラー41には、例えば、帯電装置2の帯電極性と同極性の直流電圧に対して交流電圧を重畳した現像バイアスが印加されており、この現像バイアスによって、露光装置3によって形成された静電潜像にトナーが付着する。
現像部4により感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、感光体ドラム1と中間転写装置5との間に形成される転写領域に運ばれる。中間転写装置5にはトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加されており、この転写バイアスによって、転写領域において、感光体ドラム1上のトナー像は中間転写体6へ転写される。このように、中間転写装置5は、トナー像を被転写媒体である中間転写体6に転写する。
転写領域において中間転写体6へ転写されずに感光体ドラム1上に残ったトナーは、クリーニングブレード8に搬送されて、クリーニングブレード8で除去される。クリーニングブレード8は、転写後に感光体ドラム1上に残留するトナーを回収する。さらに、クリーニングブレード8により表面のトナーが除去された感光体ドラム1は、再び帯電装置2により帯電され、次の静電潜像およびトナー像が形成される。このような一連の画像形成動作が繰返される。
クリーニングブレード8は、一般的には、弾性体からなる平板状のブレードであり、これが感光体ドラム1の表面に当接し感光体ドラム1上の残留トナーを回収する。
次に、像担持体である感光体ドラム1上に潤滑剤(滑材)を供給する滑材供給機構について説明する。本実施の形態に従う画像形成装置100では、現像部4が滑材供給機能を発揮する構成(トナー外添方式)を採用する。図1および図2に示す構成において、現像部4が供給するトナーに滑材を添加しておくことで、感光体ドラム1に滑材が供給される。すなわち、現像部4は、潤滑剤(滑材)とトナーを含む現像剤を像担持体である感光体ドラム1に供給するように構成されている。
一例として、本実施の形態に従う画像形成装置100の現像部4で使用される現像剤は、トナーおよび該トナーを帯電するためのキャリアを含む。トナーは、特に限定されず、一般に使用されている公知のトナーを使用することができる。トナーを構成するバインダー樹脂は、その中に、着色剤、荷電制御剤、離型剤などを包含する。
キャリアは、特に限定されず、一般に使用されている公知のキャリアを使用することができる。例えば、バインダー型キャリアまたはコート型キャリアなどを使用できる。
現像剤に含まれる潤滑性外添剤(滑材)としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪酸金属塩、シリコーンオイル、フッ素系樹脂などを用いることができる。これらの物質を単独または2種類以上を混合して用いることができる。特に、脂肪酸金属塩が好ましい。脂肪酸金属塩としては、直鎖状の炭化水素が好ましく、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が好ましく、ステアリン酸が一層好ましい。金属としては、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、セリウム、チタン、鉄などを用いることができる。これらの中で、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉄などが好ましく、特に、ステアリン酸亜鉛が最も好ましい。また、カルナウバワックスのような天然ワックスであってもよい。上記の中で、特に好ましいのは、ステアリン酸金属塩である。
図3は、現像部のローラー回転軸に平行な断面における断面図である。図2および図3を参照して、現像部4は、現像剤を用いて感光体ドラム1の静電潜像を現像するものである。この現像部4は、回転自在の現像ローラー(現像剤担持体)41と、現像ローラー41に沿って形成された第2搬送路43Pと、第2搬送路43Pと仕切り板44を隔てて平行に形成された第1搬送路42Pと、第1搬送路42Pおよび第2搬送路43Pに配置された第1スクリュー42および第2スクリュー43を備える。仕切り板44の長手方向両端部には開口部45,46が形成され、第1搬送路42Pと第2搬送路43Pとは長手方向両端部において連通している。なお、トナーホッパー61からの補給トナーは、第1スクリュー42による撹拌混合によって所定の帯電量まで帯電させる必要があるため、第1スクリュー42の現像剤搬送方向上流端に形成された補給口47から現像部4に供給される。
現像剤のトナーおよびキャリアの混合比は、所望のトナー帯電量が得られるように調整される。
現像ローラー41は、不図示の駆動機構によって回転しており、複数の磁極から構成される磁界発生手段が内部に設けられている。磁界発生手段によって、現像剤が汲み上げられ、ブラシ状に穂立ちさせて感光体ドラム1表面の静電潜像がトナーで現像される。
第1スクリュー42および第2スクリュー43は、軸部材42A,43Aの外周に螺旋状の羽根42B,43Bが設けられたものであって、不図示の駆動機構によって互いに逆方向に回転する。現像剤は、第2スクリュー43が回転することによって図3の右方向に撹拌されながら搬送され、第1スクリュー42が回転することによって図3の左方向に撹拌されながら搬送される。そして、仕切り板44の両端部に形成された開口部45,46を通って、一方の搬送路から他方の搬送路に現像剤は移動する。これにより、現像剤は、第1搬送路42Pと第2搬送路43Pとで構成される循環路内を循環し撹拌される。現像部4内を撹拌されながら循環することによってトナーは所定値まで帯電する。
このような構成の現像部4においてトナー補給制御は例えば次のようにして行なわれる。制御部50は、原稿読取部120または画像形成装置に接続されたPC等から送られてくる画像情報に基づいて、画像形成時のトナー消費量を算出する。たとえば、画像情報の印字率が高いと補給量が多く設定され、印字率が少ないと補給量は少なく設定される。制御部50は、現像部4における現像剤の搬送速度や画像形成速度などの動作情報、および算出したトナー消費量に基づいて、トナーホッパー61から現像部4へのトナーの補給量及び補給タイミングを決定し、トナー補給装置62の動作を制御する。トナー補給装置62は、たとえば、トナーホッパー61に設けられた搬送スクリューの回転・停止を行なうトナーホッパーモータである。必要によりモータの回転速度を制御することによってトナーホッパー61から現像部4へのトナーの補給量及び補給タイミングが調整される。
<C.新たな課題>
次に、本願発明者らが新たに見出した課題について説明する。
上述したようなトナー外添方式で潤滑剤(滑材)を供給すると、滑材は、トナーと付着した状態、あるいは、遊離した状態で現像部4内に存在している。画像部(トナー付着部/クロ部)においてトナーが像担持体である感光体ドラム1上に供給されることで、滑材も感光体ドラム1上に供給される。すなわち、トナー外添方式の場合、現像部4への滑材供給はトナー補給によりなされる。通常の画像形成装置においては、現像部4へのトナー補給量は、トナーの消費に見合った分補給され、現像部4内のトナー量を一定に保っている。
一方、トナーに外添された潤滑剤は、シリカなどの外添剤にくらべ粒径が1〜20μm程度大きいこともあり、またプラスの摩擦帯電極性のため、現像ローラー41の回転駆動により背景部に潤滑剤が供給される。すなわち、滑材は、印字バターンが無い背景部(トナー非付着部/シロ部)においても像担持体である感光体ドラム1上に供給される。したがって、現像ローラーの駆動時間に応じて現像部4内の滑材量に対して一定比率の量の滑材が、感光体へ供給される。
しかし、トナーは、印字パターンによって消費量が変動するので、極端に印字率が低い場合にはトナーは消費されない一方で滑材は消費されるので、現像部4の内部の現像剤中の滑材の比率が低減していく。
図4は、現像剤の補給量が多い場合の現像部における現像剤の循環の様子を示した図である。図4に示すように、印字率が高く現像剤の補給量が多い場合には、現像部4中にも滑材が多く補給されるので、矢印A1に示すように上流部よりも下流部の方が滑材量が減少したとしても、感光体ドラム1へは十分な量の滑材が供給される。
図5は、現像剤の補給量が少ない場合の現像部における現像剤の循環の様子を示した図である。図5に示すように、印字率が極端に低く現像剤の補給量が多い場合には、現像部4中には滑材はあまり補給されない。一方で、トナーは減少しないが印字の背景部には滑材が供給され続けるので、滑材量が不足する事態が生じ、特に矢印A2の下流部において感光体ドラム1に供給される滑材量が不足する。
図6は、現像剤の補給量が少ない場合に生じる感光体の減耗量の傾きを示すグラフである。図6に示すように、トナーに滑材を外添した現像剤では極端に印字率が低い場合において、トナー供給量が少ないにもかかわらず、通常の印字率よりも最薄部の膜厚が少なくなることがある。印字率が低い場合に感光体の削れが多くなる理由は、クリーニングブレード8と感光体ドラム1の摺擦の状態が通常の印字率の場合と比較して変化しているためであることが分かった。
具体的には、感光体ドラム1には現像剤を介して感光体ブレード間の潤滑剤の役割をする滑材が供給される。通常の印字状態では、現像剤の供給が多く、つまり滑材の供給量も多い。このような状態であると感光体とブレード間での摺擦にかかる力が少ない。一方現像剤の供給量が少ない場合では、滑材の供給量も少ない。このような状態が続くと、現像部4内の現像剤のトナーと滑材の比率が変化し、感光体ドラムへ1の滑材の供給量が不足する。すると感光体ドラム1とクリーニングブレード8間の摺擦にかかる力が大きく、その結果感光体ドラム1の減耗が促進される。
また、現像部4の内部で現像剤が循環している系において、循環の上流側では比較的滑材の量が多いが、下流に進むに従い滑材を消費していくために、図5の矢印A2に示すように、最下流部では滑材量が少なくなっている(上流部分との相対比較)。その結果、感光体ドラムへ1とクリーニングブレード8間において、上流部分の摺擦状態は滑材供給量が多いため負荷が少なく、感光体摩耗が少なくなる。一方、下流部分の摺擦状態は滑材供給量が少ないため負荷が大きく、感光体減耗が多くなる。よって、図6に示すように、現像循環下流部の方が上流部よりも感光体膜厚が薄くなる。
<D.構成例>
本実施の形態では、感光体ドラム1の偏った減耗量も考慮しつつ、感光体ドラム1の交換時期を適切に判断するために、最薄部分の膜厚を推定する。この推定は、図1の制御部50によって実行される。制御部50は、感光体の最薄部の膜厚状態を把握するために、平均的な膜厚状態を把握し、感光体ドラム1の回転軸に沿う方向での膜厚勾配状態を把握し、これらの状態を考慮して最薄部の膜厚を把握する。
制御部50は、帯電装置2の帯電ローラに流れる帯電電流Iacに基づいて静電容量(膜厚)を算出し、平均的な膜厚状態を把握する。また制御部50は、トナーからの滑材供給量に基づいて、現像ローラー41の回転軸方向に沿った膜厚勾配状態を把握する。
以下、制御部50について説明を行なう。図7は、制御部のハードウェア構成および周辺デバイスの構成を示すブロック図である。図7に示されるように、制御部50は、その主要な制御要素として、演算装置(以下CPU:Central Processing Unit)52と、RAM(Random Access Memory)54と、ROM(Read Only Memory)56と、インターフェイス(I/F)58とを含む。
CPU52は、ROM56に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、画像形成装置100の全体処理を実現する。なお、CPU52は、マイクロプロセッサ(Microprocessor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)およびその他の演算機能を有する回路のいずれであってもよい。
RAM54は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などであり、CPU52がプログラムを動作するために必要なデータや画像データを一時的に記憶する。したがって、RAM54は、いわゆるワーキングメモリとして機能する。
ROM56は、典型的には、フラッシュメモリなどであり、CPU52で実行されるプログラムや、画像形成装置100の動作に係る各種設定情報を記憶する。
インターフェイス58は、電流センサ70と、表示部80と、記憶装置90と、トナー補給装置62と電気的に接続され、各種装置との信号のやりとりを行なう。記憶装置90には、画像形成装置100の制御に関する制御プログラムと92と、データテーブル94とが格納される。なお、記憶装置90は、制御部50のROM56およびRAM54によって実現されても良い。
図8は、制御部が実行する膜厚推定処理を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、単位時間経過ごとに実行される。図8を参照して、まず、ステップS1において、制御部50は、印刷が実行されたか否かを判断する。印刷の実行の有無は、例えば、プリント枚数単位で判断されても良く、JOB単位で判断されても良い。ステップS1で印刷が実行されたと判断された場合(S1でYES)、制御部50はステップS2においてトナー補給量(現像剤補給量)を検出する。そして、ステップS3において、制御部50は、トナー補給量に応じた傾斜減耗量ΔXを算出する。
図9は、傾斜減耗量とトナー補給量との関係を示すグラフである。図9において、横軸は感光体ユニット駆動時間あたりのトナー補給量を示し、縦軸は、図6に示した減耗量の傾斜に起因する傾斜減耗量(減耗量の最大値)を示す。トナー補給量が多い場合には、高印字率であり、トナー補給量が少ない場合には低印字率である。そして、低印字率の場合には、トナーに比べて滑材が多く消費されるので、図5に示したように現像剤循環方向の下流において滑材が不足し、感光体ドラム1の感光体膜が多く削れてしまい、傾斜減耗量が大きくなる。
再び図8に戻って、ステップS3で傾斜減耗量ΔXが算出された後に、ステップS4において、制御部50は傾斜減耗量ΔXの積算を行なう。制御部50は、初期状態から単位時間の印刷を実行するごとに、傾斜減耗量ΔXを積算し、積算値ΣΔXを算出している。
そして、ステップS5において、制御部50は、感光体膜厚の平均値を算出する。
図10は、帯電電圧と帯電電流と感光体の膜厚との関係を示す図である。あらかじめ感光体の膜厚に応じた帯電装置2の帯電電圧Vpp(AC電圧のVpp)−Iac(AC電流)の関係性を取得しておき図7のデータテーブル94に格納しておき、電流センサで計測した電流Iacをデータテーブル94に照らして膜厚を推定する。制御部50は、帯電電圧のAC成分(帯電電圧Vpp)に対し流れる電流Iacを計測する。電流Iacを図10の関係を格納したデータテーブル94を参照して、計測結果から膜厚を推定する。ただし、この方法だけでは軸方向の平均的な膜厚しかわからず、品質に影響する最薄膜厚はわからない。したがって、ステップS6において、制御部50は、平均膜厚から傾斜減耗量の積算値に応じた量を減算し、最薄膜厚を算出する。
制御部50は、感光体ドラム1の帯電電流Iacと帯電電圧Vppとに基づいて算出された平均膜厚Xaveから、現像剤が筐体内に補給された量に基づいて算出された減耗量ΔXを差し引いて、感光体ドラムの表面の像担持体の膜厚が平均膜厚よりも薄くなった減耗部分の膜厚Xminを算出する。
より詳細には、制御部50は、感光体ドラム1が初期状態である時から、1回の印刷処理を行なう毎に現像剤が筐体48内に補給された量に対応する減耗量ΔXuを算出し、算出した減耗量ΔXuの積算値ΣΔXuを算出し、平均膜厚Xaveから積算値ΣΔXuを減算することによって減耗部分の膜厚を算出する。
図11は、感光体の初期膜厚と使用中の膜厚を現像剤循環方向に沿って位置を変えて測定したグラフである。図11には、図7に対して平均膜厚と最薄膜厚の差が追記されている。ステップS6では、図11に示された最薄膜厚Xminを得ることができる。なお、最薄部分の膜厚Xminは現像剤循環方向の下流側に位置する。
なお、ステップS1において印刷が実行されていない場合には、ステップS2〜ステップS6の処理はスキップされる。
さらに、以下のステップS11、S12の処理を実行しても良い。ステップS11、S12によって、制御部50は、ステップS6で算出された最薄膜厚Xminが予め定めた寿命膜厚しきい値よりも薄くなった場合に、交換を促す報知信号を出力する。たとえば、図7の表示部80に「ドラムを交換してください」などの表示を出すようにしても良い。
なお、ステップS2における補給トナー量を得るための情報としてはトナー補給装置の駆動時間やトナー像の情報を用いることができる。
図12は、傾斜減耗量をトナー補給装置の駆動時間に従って求めた例を示すグラフである。図12に示すように補給したトナー量の情報として、図3のトナー補給装置62のトナーホッパーモータの駆動時間を利用することができる。感光体ユニット駆動時間あたりのトナーホッパーモータ駆動時間に対する軸方向の減耗傾斜の関係をあらかじめ取得しておき、駆動時間から最薄部分の膜厚の減耗量を推定することができる。
図13は、傾斜減耗量をトナー像情報(平均印字率)に従って求めた例を示すグラフである。傾斜減耗量の試算情報として図13に示すような「トナー像情報(平均印字率)」を用いてもよい。
先に説明したように、制御部50は、送られてくる画像情報に基づいて、画像形成時のトナー消費量を算出する。たとえば、画像情報の印字率が高いと補給量が多く設定され、印字率が少ないと補給量は少なく設定される。したがって、補給量と印字率は相関関係があるので、制御部50は、印字率と傾斜減耗量との関係をデータテーブルとして予め記憶しておき、このデータテーブルから印字率に対応する傾斜減耗量を得ることができる。
なお、画像が文字でない場合も考慮すると、印字率が高いということは、画素が多いことであり、印字率が低いということは、画素が少ないことであるということができる。
トナー補給量と膜厚減耗量の傾斜の関係について測定データを示して説明する。図14は、印字率が低くトナー供給量が少ない場合の膜厚の分布を示すグラフである。図15は、印字率が高くトナー供給量が多い場合の膜厚の分布を示すグラフである。図14、図15において、横軸は、トナー循環方向の上流から下流に向かう軸上の測定位置を示し、縦軸は、感光体の膜厚を示す。
図14に示すように、トナー画像の印字率が低くトナー供給が少ない場合には、概ねトナー循環方向の上流位置から下流位置に向けて膜厚が減少する傾斜が急であり、傾斜減耗量ΔX(=Xave−Xmin)は大きい。これに対して、図15に示すように、トナー画像の印字率が高くトナー供給が多い場合には、トナー循環方向の上流位置から下流位置に向けて膜厚が減少する傾斜は図14に比較して緩やかになり、傾斜減耗量ΔX(=Xave−Xmin)は小さくなることが測定値でも示されている。
すなわち、トナー供給が多い場合と比較して、トナー供給が少ない場合の方が膜厚の減耗量の傾斜は大きくなる。このような関係を用いることにより、本実施の形態に係る画像形成装置は、感光体の最薄部の膜厚を従来に比べて正確に推定することができる。
<E.変形例1>
図8に示したフローチャートでは、感光体ドラム1の交換時期がきたら報知することについて示した。この処理に代えて、またはこの処理に加えて、交換時期が到来する前に交換時期を予測してユーザーに提示するようにしても良い。
図16は、予想寿命を算出する方法を説明するためのグラフである。寿命の予測方法としては以下のような方法を用いる。制御部50は、現時点の推定する最薄膜厚に対し、初期の膜厚との差分ΔX1を算出する。次に制御部50は、現時点のプリント枚数N1より、使用下限膜厚Xlimのプリント枚数に対する傾きΔX1/N1を試算する。さらに制御部50は、初期膜厚Xiniと傾きΔX1/N1と下限膜厚Xlimより、下限膜厚に至る時のプリント枚数Npを試算する。たとえば、Np=N1×(Xini−Xlim)/ΔX1とすることができる。
この試算された値Npが予想寿命枚数となる。制御部50は、現在のプリント枚数とこのプリント枚数Npとをユーザーに報知しても良いし、Npから現在のプリント枚数を引いた残りプリント可能枚数をユーザーに報知しても良い。また制御部50は、この予想寿命枚数に対し、これまでの平均プリント頻度より、今後どの程度の期間使えるかを算出しユーザーに知らせても良い。
<F.変形例2>
現像剤に外添された滑材の影響について説明してきたが、現像剤には滑材の他に感光体を研磨する研磨剤が外添されている場合がある。このような研磨剤としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム又はチタン酸マグネシウム等が用いられる。このような研磨剤は、潤滑剤とは異なり、トナーと一緒に印字部分に多く供給される。研磨剤の添加量が多い場合、トナーの平均印字面積率が高いと、印字面積率が低い箇所と比較して感光体の減耗が促進される。
印字面積率が平均的な場合、以下の第1例のように減耗の傾斜が発生する。図17は、研磨剤の影響を説明するための第1例の平均印字面積率を示すグラフである。図18は、研磨剤の影響を説明するための第1例の膜厚を示すグラフである。図17、図18に示すように、印字面積率が画像幅方向に沿って一様な分布である場合、研磨剤は感光体の膜厚に一律に作用するので、図11で示した滑材不足による減耗量の傾斜は、そのままの形で感光体の膜厚に現れる。
これに対し、印字面積率に偏りが生じている場合、例えば以下の第2例のように減耗の傾斜が少なくなることがある。図19は、研磨剤の影響を説明するための第2例の平均印字面積率を示すグラフである。図20は、研磨剤の影響を説明するための第2例の膜厚を示すグラフである。図19に示すように、第2例では循環上流側に印字が偏っている。このような場合、同じトナー供給量の場合でも、減耗量は、滑材による減耗傾斜に加えて、トナーの供給量による減耗分布が反映される。その結果、図20に示すように滑材の影響による減耗量の傾斜は緩和され、平均膜厚Xaveと最薄膜厚Xminとの差が縮小する。なお、印字面積率の偏りが図19に示した例とは逆に現像剤の循環方向下流側に進むに従って高くなるような場合には、減耗量の傾斜はさらに増加する。
変形例2では、最薄膜厚Xminを推定する際に、滑材量に基づいて算出した各位置の減耗量を研磨剤の量(印字面積率)に基づいて算出した減耗量で補正して、最薄膜厚Xminを求める。
図17、図19に示すような画像幅方向の平均印字面積率はトナー像の情報、つまり印字データの情報を利用して算出する。
具体的には、感光ドラムや現像ローラーの回転軸に平行な方向である画像幅方向の長さを複数の領域に等分して、等分した領域ごとに印字データの有無を積算し、プリント一枚あたりの印字面積率を算出する。このように算出した印字面積率を現在のプリント枚数に至るまで、等分した領域ごとに積算することによって、図17、図19に示すグラフができあがる。この印字率に所定の係数を掛けて、画像幅方向に一律な傾きを有すると仮定して算出した減耗量と足し合わせることによって、画像幅方向の減耗量の分布が得られる。得られた減耗量の最大値と、電流Iacから得られた平均膜厚とに基づいて、最薄膜厚Xminを求めればよい。
<G.変形例3>
制御部50で推定された膜厚、推定寿命等のデータを、画像形成装置100から外部に送信して利用することも考えられる。
図21は、画像形成装置とデータセンターとを含む管理システムの構成を示す図である。図21を参照して、制御部50は、環境データ、感光体膜厚データ、トナー補給データ、画像データ、ユーザーの仕様データ、寿命データを、通信装置95およびネットワーク200を経由して、遠隔地の機器メーカーのデータセンター300に送信する。各種データは、データセンター300に集められて、次機種の開発、内部プログラムの更新やサービスマンの訪問計画などに使われる。
次機種の開発のためのデータの用途は、例えば、複数のMFPからオフィス環境を把握すること、各環境における感光体の減耗推移のデータを得ること、地域別、季節別、業態別のMFPの使用状況の分析などである。これらの情報をもとに、メーカーは、ユーザーに対し適切な製品を開発することができる。
また、市場の多数の装置の情報を収集し解析することで、減耗傾斜の試算プログラムをより精度の良い方法で算出するものに更新する。更新された最新プログラムを各マシンに配信し、より精度の良い膜厚推定や寿命状態の推定を行なうことができる。
また、寿命データはサービスマンが効果的に巡回や部品を交換するのに利用される。寿命が近い製品から順番に点検に巡回することとし、寿命まで時間がある製品については電話で済ませる事も可能である。また、サービスマンの事務所においては交換部品の在庫管理にこのデータを活用でき、メーカーにおいては生産計画にこのデータを活用できる。
<H.付記>
本実施の形態の各局面に相当する部分を付記する。
本実施の形態に係る画像形成装置100は、像担持体の膜が表面に形成された感光体ドラム1と、感光体ドラム1の像担持体上に形成された静電潜像をトナー像として現像する現像部4と、感光体ドラム1の表面の像担持体の膜厚を算出する演算装置(CPU)52を含む制御部50とを備える。現像部4は、トナーと潤滑材とを含む現像剤を補給するための補給口47が設けられた筐体48と、現像ローラー41と、筐体48の内部に現像ローラー41と平行に配置され、現像剤を循環させるための第1スクリュー42と、筐体48の内部に現像ローラー41と第1スクリュー42との間に配置され、第1スクリュー42の送給方向と逆向きに現像剤を送給するための第2スクリュー43とを含む。制御部50は、現像剤が筐体48内に補給された量に基づいて、膜厚を算出する。
このように、滑材を含ませたトナーを現像剤として供給し、現像部4の内部の現像剤循環方法としてローラー軸方向に循環する系において、感光体の膜厚の最薄部の膜厚を推定するために、補給したトナー量の情報を適用することが本実施の形態の特徴である。
好ましくは、制御部50は、感光体ドラム1の帯電電流Iacと帯電電圧Vppとに基づいて算出された平均膜厚Xaveから、現像剤が筐体48内に補給された量に基づいて算出された減耗量ΔXを差し引いて、感光体ドラムの表面の像担持体の膜厚が平均膜厚よりも薄くなった減耗部分の膜厚Xminを算出する(図11)。
このように、膜厚推定にあたり、帯電電流-電圧特性を利用した平均膜厚試算方法を適用することも、本実施の形態の特徴の一つである。
より好ましくは、画像形成装置100は、補給口47から筐体48内に現像剤を補給するトナー補給装置62をさらに備える。トナー補給装置62は、例えば、トナーホッパーモータである。制御部50は、トナー補給装置62の駆動時間に基づいて減耗量ΔXを算出する(図12)。
このように、膜厚推定方法に対し、補給した滑材量(=トナー量)を考慮に入れるため、トナー補給の情報としてトナー補給駆動装置の駆動時間を適用することも、本実施の形態の特徴の一つである。
より好ましくは、制御部50は、静電潜像の画像情報に基づいて減耗量を算出する(図13)。
このように、膜厚推定方法に対し、補給した滑材量(=トナー量)を考慮に入れるため、トナー補給の情報としてトナー像のもととなる静電潜像の情報を適用することも、本実施の形態の特徴の一つである。
さらに好ましくは、図11、図12に示されるように、制御部50は、静電潜像の画像情報に含まれる画素数が多いほど、減耗量が小さくなるように演算を行なう。
このように、膜厚推定方法おいて、画素数が多く補給したトナーが多い場合は循環方向に対する膜厚の傾斜が小さく、補給したトナー量が少ない場合は循環方向に対する膜厚の傾斜が大きくなるように感光体膜厚を推定することも、本実施の形態の特徴の一つである。
さらに好ましくは、制御部50は、画像幅が区切られた複数の領域ごとの静電潜像の画像情報に含まれる画素数が多いほど、対応する領域の減耗量が大きくなるように演算を行ない、算出された各領域の減耗量に基づいて、減耗部分の膜厚を補正する。
このように、膜厚推定方法に対し、トナーに含まれる研磨剤による感光体の削れをさらに考慮に入れるために、トナー像の情報を適用することも、本実施の形態の特徴の一つである。
より好ましくは、制御部50は、感光体ドラム1が初期状態である時から、1回の印刷処理を行なう毎に現像剤が筐体48内に補給された量に対応する減耗量ΔXuを算出し、算出した減耗量ΔXuの積算値ΣΔXuを算出し、平均膜厚Xaveから積算値ΣΔXuを減算することによって減耗部分の膜厚を算出する。
より好ましくは、図8のS11,S12に示されるように、制御部50は、減耗部分の膜厚が予め定めた値よりも薄くなった場合に、交換を促す報知信号を出力する。
このように、推定した最薄膜厚があらかじめ規定した最薄膜厚よりも薄くなった場合にユニットの寿命に到達したと判断することも、本実施の形態の特徴の一つである。
より好ましくは、制御部50は、算出した膜厚と画像形成装置100の作動履歴情報とに基づいて、感光体ドラム1の交換時期を予測する。
例えば、推定した最薄膜厚と、これまでの印刷情報と、ユーザーの使用情報と、マシン内部の設定値に基づいて、以降の最薄膜厚の推移を予測し、あらかじめ規定した最薄膜厚(ユニットの寿命)に到達する時期を予測することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。