JP6779513B2 - インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法、インビボクローニング可能な細胞株の製造方法、細胞株、インビボクローニング方法、及びインビボクローニングを行うためのキット - Google Patents
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Description
出芽酵母では、細胞内で相同組換えの活性が非常に高いため、容易にシームレスクローニングを行うことができる(例えば、非特許文献1参照。)。
また、RecETシステムが構築された大腸菌株では、Racプロファージ領域のRecE、RecTレコンビナーゼが過剰発現しており、このRecE、RecTレコンビナーゼにより大腸菌細胞内で相同組換えの効率が高まり、シームレスクローニングを行うことができる(例えば、特許文献2、特許文献3、及び非特許文献2参照。)。
また、特許文献2、特許文献3、及び非特許文献2に記載の方法では、RecETシステムを有する大腸菌株を用いる必要があり、さらに、プラスミドDNA同士で相同組換えが起こり、ダイマー、又はマルチマーを形成されるという課題を有する。
さらに、非特許文献3に記載の方法では、大腸菌DH5α株を用いて直接目的のDNAをクローニングできることは報告されているが、そのメカニズムは明らかにされていない。また、非特許文献3に記載の方法では、クローニング効率が低く、よりクローニング効率の高い細胞株が求められていた。
[1]インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法であって、細胞株について、xthA遺伝子の有無を評価し、xthA遺伝子を有する細胞株を選択する第1の選択工程を備えることを特徴とする方法。
[2]さらに、前記第1の選択工程の後に、hsdR遺伝子の有無を評価し、hsdR遺伝子の全部又は一部の機能が失われた細胞株を選択する第2の選択工程を備える[1]に記載の方法。
[3]前記細胞株が大腸菌又は哺乳動物細胞に由来するものである[1]又は[2]に記載の方法。
[4]インビボクローニング可能な細胞株の製造方法であって、xthA遺伝子を細胞株の染色体に挿入し、xthA遺伝子を高発現させる挿入工程を備えることを特徴とする製造方法。
[5]さらに、前記細胞株がhsdR遺伝子を有する場合に、前記挿入工程の後、又は同時に、前記hsdR遺伝子の全部又は一部の機能が失わせる欠損工程を備える[4]に記載の製造方法。
[6]前記細胞株が大腸菌又は哺乳動物細胞に由来するものである[4]又は[5]に記載の製造方法。
[7]xthA遺伝子を有し、hsdR遺伝子の全部又は一部の機能が失われたことを特徴とする細胞株。
[8]前記細胞株が、大腸菌又は哺乳動物細胞に由来するものである[7]に記載の細胞株。
[9][1]〜[3]のいずれか一つに記載の方法、又は[4]〜[6]のいずれか一つに記載の製造方法を用いて、インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニング、又は製造した後、得られた細胞株に、発現ベクターと、5’末端領域及び3’末端領域に前記発現ベクター上の挿入を行う部位と相同な塩基配列を有する目的の二本鎖DNAとを導入する導入工程と、前記導入工程後、前記細胞株を培養し、前記目的の二本鎖DNAを相同組換えにより前記発現ベクターに挿入する挿入工程と、を備えることを特徴とするインビボクローニング方法。
[10]インビボクローニングを行うためのキットであって、[7]又は[8]に記載の細胞株を備えることを特徴とするキット。
<第一実施形態>
一実施形態において、本発明は、インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法であって、細胞株について、xthA遺伝子の有無を評価し、xthA遺伝子を有する細胞株を選択する第1の選択工程を備える方法を提供する。
なお、本明細書において、「インビボクローニング」とは、細胞内で目的のDNAをクローニングする技術を意味する。
本実施形態のスクリーニング方法について、以下に詳細を説明する。
まず、細胞株について、xthA遺伝子の有無を評価し、xthA遺伝子を有する細胞株を選択する。
図1は、xthA遺伝子を有する細胞内での相同組換えのメカニズムを模式的に示す図である。図1において、相同配列を有する部位3a及び3bのうち、相同配列を有する部位3bにおける相同組換えのメカニズムを示している。また、相同配列を有する部位3bにおける相同配列を配列Xとした場合、目的の二本鎖DNA1(以下、「dsDNA」と称する場合がある。)及びベクターにおいて、相同配列を有する部位3bは、配列Xを有する部位3b−1と、配列Xと相補的な配列を有する部位3b−2とからなる。
まず、発現した3’→5’エキソヌクレアーゼ4は、目的のdsDNA1及びベクター2が導入された細胞内において、目的のdsDNA1の3’末端から内側へ向かって配列Xを有する部位3b−1を分解し、配列Xと相補的な配列を有する部位3b−2を含む末端部に1本鎖領域を生成する。また、3’→5’エキソヌクレアーゼ4は、ベクター2の3’末端から内側へ向かって配列Xと相補的な配列を有する部位3b−2を分解し、配列Xを有する部位3b−1を含む末端部に1本鎖領域を生成する。その結果、目的のdsDNA1の配列Xと相補的な配列を有する部位3b−2を含む末端部と、ベクター2の配列Xを有する部位3b−1を含む末端部とがアニールする。次いで、細胞内に存在するDNAポリメラーゼ5によりニックが埋められ、DNAリガーゼ6により結合される。逆側の相同配列を有する部位3aを含む末端部でも同様のメカニズムで相同組換えが行われているため、その結果、目的の二本鎖DNAがベクターに挿入される。
よって、xthA遺伝子を有する細胞株を選択することで、高効率で相同組換えが行われ、目的の二本鎖DNAが挿入されたベクターを得ることができ、高効率でインビボクローニングを行うことができる。
又は、例えば、細胞株からDNAを抽出し、xthA遺伝子に対するプライマーセットを用いたリアルタイムPCR法により、反応液に予め蛍光プローブ又は蛍光色素を添加し、リアルタイムでxthA遺伝子の増幅をモニタリングしながら定量的に検出する方法を用いればよい。
次いで、さらに、前記第1の選択工程の後に、hsdR遺伝子の有無を評価し、hsdR遺伝子の全部又は一部の機能が失われた細胞株を選択する第2の選択工程を備えることが好ましい。
通常、外来DNAである目的の二本鎖DNA及びベクターは、特定の塩基配列を有する場合、いずれの鎖においても該配列はメチル化されていないため、上記制限−修飾システムにより切断される。
よって、hsdR遺伝子の機能が破壊又は欠損している細胞株を選択することで、外来DNAである目的の二本鎖DNA及びベクターが上記制限−修飾システムによる切断を受けないため、高効率で相同組換えが行われ、目的の二本鎖DNAが挿入されたベクターを得ることができ、高効率でインビボクローニングを行うことができる。
本明細書において、上述の用語「変更」、「削除」、「挿入」及び「置換」等の遺伝子改変手段は、限定した意味で使用されているものではない。また、いずれかの遺伝子改変手段に厳密に区別して使用する意図で用いる必要もなく、結果としていずれかの遺伝子改変手段によりhsdR遺伝子が改変されてhsdR遺伝子の発現が抑制され、その機能の全部又は一部が不能になっていることを意味するものとして使用される。しかしながら、上述の手段は、一般的には、後述のような意味として使用しているものと理解することができる。
ゲノムDNAの「削除」とは、標的遺伝子のゲノムDNAフラグメントの全部又は一部を欠失させることにより、標的遺伝子の発現産物の全部或いは一部が機能しない、又は存在しないようにすることを意味する。
ゲノムDNAの「置換」とは、標的遺伝子のゲノムDNAフラグメントの全部又は一部を標的遺伝子とは関連しない別個の配列により置換し、標的遺伝子の発現産物の全部或いは一部が機能しない、又は存在しないようにすることを意味する。
ゲノムDNAの「挿入」とは、標的遺伝子中に、それ以外の配列を有するDNAを挿入することにより、当該標的遺伝子以外のDNAを挿入した標的遺伝子の発現産物の全部或いは一部が機能しない、又は存在しないようにすることを意味する。
また、遺伝子の変更、削除、挿入又は置換等の遺伝子改変手段は、2つ以上の方法を組み合わせて、標的遺伝子に対して同時に使用されていてもよい。
他の実施形態において、本発明は、インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法であって、細胞株について、hsdR遺伝子の有無を評価し、hsdR遺伝子の全部又は一部の機能が失われた細胞株を選択する第1の選択工程を備える方法を提供する。
次いで、さらに、前記第1の選択工程の後に、xthA遺伝子の有無を評価し、xthA遺伝子を有する細胞株を選択する第2の選択工程を備えることが好ましい。
一実施形態において、本発明は、インビボクローニング可能な細胞株の製造方法であって、xthA遺伝子を細胞株の染色体に挿入し、xthA遺伝子を高発現させる挿入工程を備える製造方法を提供する。
本実施形態の製造方法について、以下に詳細を説明する。
まず、xthA遺伝子を細胞株の染色体に挿入し、xthA遺伝子を高発現させる。すでにxthA遺伝子を有する細胞株においても、さらにxthA遺伝子を挿入することにより、xthA遺伝子を高発現させることができる。
また、xthA遺伝子の染色体への挿入方法としては、相同組換え修復(HDR)を誘発する公知のゲノム編集技術を用いた方法であればよく、例えばCRISPR−Cas9システム、TALENシステム、Znフィンガーヌクレアーゼシステム等が挙げられ、これに限定されない。中でも、操作が簡便であり、高い選択性で目的部位に標的遺伝子を挿入できることから、公知のゲノム編集技術としては、CRISPR−Cas9システムを用いることが好ましい。
これらベクターとxthA遺伝子を含むドナーベクターとを共導入することにより、目的部位が切断され、それに引き続きドナーベクターを利用したHDRにより、xthA遺伝子が導入される。xthA遺伝子に薬剤選択マーカーを持たせておくことにより、薬剤選択によりxthA遺伝子導入が起きた細胞を効率よく選択できる。
前記ベクターとしては、発現ベクターであることが好ましい。発現ベクターとしては特に制限されず、例えば、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13、pUC57等の大腸菌由来のプラスミド;pUB110、pTP5、pC194等の枯草菌由来のプラスミド;pSH19、pSH15等の酵母由来プラスミド;λファージ等のバクテリオファージ;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス等のウイルス;及びこれらを改変したベクター等を用いることができる。
薬剤選択マーカー遺伝子は、xthA遺伝子の上流(5’側)又は下流(3’側)に、作動可能に連結されていればよい。薬剤選択マーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ヒスティディノール耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子等が挙げられ、これらに限定されない。薬剤選択マーカー遺伝子を挿入することにより、該薬物を含む培地を用いて細胞を培養することで、xthA遺伝子が導入された細胞を選択することができる。
本実施形態の挿入工程において、xthA遺伝子の転写を制御するプロモーター配列がxthA遺伝子に上流(5’側)に作動可能に連結されていることが好ましい。
なお、本明細書において、「作動可能に連結」とは、遺伝子発現制御配列(例えば、プロモーター又は一連の転写因子結合部位)と発現させたい遺伝子(本実施形態においては、xthA遺伝子)との間の機能的連結を意味する。ここで、「発現制御配列」とは、その発現させたい遺伝子(本実施形態においては、xthA遺伝子)の転写を指向するものを意味する。
本実施形態において、xthA遺伝子は、該xthA遺伝子の下流(3’側)に、mRNAの3’末端のポリアデニル化に必要なポリアデニル化シグナルが作動可能に連結されていてもよい。ポリアデニル化シグナルとしては、上記ウイルス性プロモーターで例示されたウイルス由来、各種ヒト又は非ヒト動物由来の各遺伝子に含まれるポリアデニル化シグナル、例えば、SV40の後期遺伝子又は初期遺伝子、ウサギβグロビン遺伝子、ウシ成長ホルモン遺伝子、ヒトA3アデノシン受容体遺伝子等のポリアデニル化シグナル等を挙げることができる。その他xthA遺伝子をさらに高発現させるために、各遺伝子のスプライシングシグナル、エンハンサー領域、イントロンの一部をプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間或いは翻訳領域の3’下流に連結してもよい。
xthA遺伝子を含むベクターの細胞株への導入方法としては、公知の遺伝子導入手法(例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法等)を用いることができる。
xthA遺伝子が挿入されたか否かの確認方法としては、公知の方法を用いればよく、例えば、薬剤選択マーカー遺伝子をxthA遺伝子と共に挿入することにより、薬剤を含む培地にて、細胞株を培養し、生育可能な細胞を選択する方法を用いればよい。
次いで、さらに、前記細胞株がhsdR遺伝子を有する場合に、前記挿入工程の後、又は同時に、前記hsdR遺伝子の全部又は一部の機能を失わせることが好ましい。
hsdR遺伝子のノックアウト、又はhsdR遺伝子へのノックインを誘発する公知のゲノム編集技術としては、例えば、CRISPR−Cas9システム、TALENシステム、Znフィンガーヌクレアーゼシステム等が挙げられ、これに限定されない。
また、hsdR遺伝子のノックダウンを誘発する公知のゲノム編集技術としては、例えば、RNAi誘導性核酸(例えば、siRNA、miRNA等)を用いる方法等が挙げられ、これに限定されない。
より具体的には、例えば、hsdR遺伝子、又は該hsdR遺伝子に相補的な配列を有する遺伝子に対するsiRNA(small interfering RNA)を設計及び合成し、これを、レトロウイルスベクターやアデノウイルスベクターに組み込んで細胞株に導入することによりRNAiを引き起こすことができる。
まず、標的遺伝子に対するsiRNAを設計する。siRNAは、hsdR遺伝子、又は該hsdR遺伝子に相補的な配列を有する遺伝子であれば特に限定されるものではなく、任意の領域を全て候補にすることが可能である。また、選択した領域から、AAで始まる配列であって長さが18塩基以上30塩基以下のもの、或いは、AAを5’側に加えたときの長さが18塩基以上30塩基以下、好ましくは19塩基以上23塩基以下の配列を選択する。その配列のGC含量は、例えば30%以上70%以下となるものを選択すればよく、50%前後が好ましい。また、そのGC分布に偏りがないものを選択するとよい。siRNAは、さらに、選択した配列の3’側にdT又はUの2残基のオーバーハングを加えるとよい。また、設計したsiRNAの塩基配列に対応するアミノ酸配列について、BLASTサーチをおこない、選択した配列に類似した配列を有するタンパク質が存在しないことを確認することが好ましい。
続いて、細胞株の細胞内に、設計したsiRNAを導入する。導入方法としては、公知の遺伝子導入手法(例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法等)等が挙げられる。
siRNAをコードするDNAは、さらに、siRNAをコードするDNAの5’末端又は3’末端に、上述のプロモーター、ポリアデニル化シグナル、NLS、蛍光タンパク質のマーカー遺伝子等が作動可能に連結されていてもよい。
一実施形態において、本発明は、xthA遺伝子を有し、hsdR遺伝子の全部又は一部の機能が失われた細胞株を提供する。
また、本実施形態の細胞株は、hsdR遺伝子の全部又は一部の機能が失われているため、上述の<<インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法>>において説明した通り、外来DNAである目的の二本鎖DNA及びベクターが、制限−修飾システムによる切断を受けず、高効率で相同組換えが行われ、目的の二本鎖DNAが挿入されたベクターを得ることができ、高効率でインビボクローニングを行うことができる。
一実施形態において、本発明は、上述のスクリーニング方法、又は上述の製造方法を用いて、インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニング、又は製造した後、得られた細胞株に、発現ベクターと、5’末端領域及び3’末端領域に前記発現ベクター上の挿入を行う部位と相同な塩基配列を有する目的の二本鎖DNAとを導入する導入工程と、前記導入工程後、前記細胞株を培養し、前記目的の二本鎖DNAを相同組換えにより前記発現ベクターに挿入する挿入工程と、を備えるインビボクローニング方法を提供する。
なお、本明細書において、「遺伝子産物」とは、目的の遺伝子から転写されるmRNA、及び該mRNAから翻訳されるタンパク質を意味する。
本実施形態のインビボクローニング方法において用いられる細胞株は、導入工程で用いられるのに適した細胞数となるように、予め培養しておけばよい。
本実施形態のインビボクローニング方法について、以下に詳細に説明する。
まず、上述のスクリーニング方法、又は上述の製造方法で得られた細胞株に、発現ベクターと、5’末端領域及び3’末端領域に前記発現ベクター上の挿入を行う部位と相同な塩基配列を有する目的の二本鎖DNAとを導入する。
発現ベクターは、タグ配列、プロモーター配列、転写終結配列、薬剤選択マーカー遺伝子、及びそれらの組み合わせを含んでいてもよい。ここで、タグの中には、蛍光タグ(GFPなど)、アフィニティータグ、デグロンタグ、局在タグ等が挙げられる。
タグ配列、プロモーター配列、転写終結配列、及び薬剤選択マーカー遺伝子としては、上述の<<インビボクローニング可能な細胞株の製造方法>>の[挿入工程]において例示されたものと同様のものが挙げられる。
また、目的の二本鎖DNAは、タグ配列、プロモーター配列、転写終結配列、及び薬剤選択マーカー遺伝子、及びそれらの組み合わせを含んでいてもよい。ここで、タグの中には、蛍光タグ(GFPなど)、アフィニティータグ、デグロンタグ、局在タグ等が挙げられる。
タグ配列、プロモーター配列、転写終結配列、及び薬剤選択マーカー遺伝子としては、上述の<<インビボクローニング可能な細胞株の製造方法>>の[挿入工程]において例示されたものと同様のものが挙げられる。
次いで、導入工程後の細胞株を培養し、目的の二本鎖DNAを相同組換えにより発現ベクターに挿入する。
培養温度としては、例えば25℃以上40℃以下であってもよく、例えば30℃以上39℃以下であってもよく、例えば35℃以上39℃以下であってもよい。
また、培養環境は、例えば約5%のCO2条件下であってもよい。
培養時間としては、細胞の種類、細胞数等により適宜選択することができ、例えば1日以上15日以下であってもよく、例えば1日以上10日以下であってもよく、例えば1日以上7日以下であってもよい。
さらに、挿入工程の後に、目的の二本鎖DNAが挿入されたベクターが形成されているか否かを確認する確認工程を有していてもよい。
確認工程において、目的の二本鎖DNAが挿入されたベクターが形成されているか否かを確認する方法としては、公知の方法を用いればよく、例えば、薬剤選択マーカー遺伝子を目的の二本鎖DNAと共に挿入することにより、薬剤を含む培地にて、細胞株を培養し、生育可能な細胞を選択する方法を用いればよい。
前記薬剤選択マーカー遺伝子としては、上述の<<インビボクローニング可能な細胞株の製造方法>>の[挿入工程]において例示されたものと同様のものが挙げられる。発現ベクターにおいても薬剤選択マーカー遺伝子を有する場合は、目的の二本鎖DNAと共に挿入される薬剤選択マーカー遺伝子と、発現ベクターが有する薬剤選択マーカー遺伝子とは異なる種類のものであることが好ましい。
一実施形態において、本発明は、インビボクローニングを行うためのキットであって、xthA遺伝子を有し、hsdR遺伝子の全部又は一部の機能が失われた細胞株を備えるキットを提供する。
本実施形態のキットに備えられた発現ベクターとしては、特別な限定はなく、上述の<<インビボクローニング可能な細胞株の製造方法>>の[挿入工程]において例示されたものと同様のものが挙げられる。
発現ベクターは、タグ配列、プロモーター配列、転写終結配列、薬剤選択マーカー遺伝子、及びそれらの組み合わせを含んでいてもよい。ここで、タグの中には、蛍光タグ(GFPなど)、アフィニティータグ、デグロンタグ、局在タグ等が挙げられる。
タグ配列、プロモーター配列、転写終結配列、及び薬剤選択マーカー遺伝子としては、上述の<<インビボクローニング可能な細胞株の製造方法>>の[挿入工程]において例示されたものと同様のものが挙げられる。
(1)インサートDNA及びベクターの作製
インサートDNAとして、pACYC184由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子を有し、かつ5’末端側及び3’ 末端側それぞれにベクターに対して相同な配列(20bp)を有するDNA(992bp)を用いた(インサートDNAの塩基配列を配列番号17に示した)。
また、ベクターとして、アンピシリン耐性遺伝子を有するpUC19ベクター(2.6kb)を用いた(pUC19ベクターの塩基配列を配列番号18に示した)。
まず、インサートDNA及びベクターを以下の表1に示すPCRでの増幅用プライマーの塩基配列を用いて、PCRを行い、反応液を得た。
PCR反応後のインサートDNAのPCR反応液1μLあたりのDNA量は100ng(0.15pmol)であり、ベクターDNAのPCR反応液1μLあたりのDNA量は80ng(0.05pmol)であった。このPCR反応液各1μLを、精製せずにそのまま形質転換に用いた。
次いで、BW25113株、MG1655株、及びW3110株を、LB培地3mLに植菌し、37℃で16時間培養し、形質転換に用いるために菌数を増やした。
次いで、Keio collection(参考文献:Baba et al., (2006) Molecular Systems Biology, doi:10.1038/msb4100050)のΔhsdR::kan株の染色体DNAを鋳型として、以下表2に示すプライマーを用いてΔhsdR::kan領域を増幅した。次いで、得られたPCR産物を用いて、λRedレコンビナーゼを利用した方法(参考文献:Datsenko and Wanner, “One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products”, PNAS, vol.97, no.12, p6640-6645, 2000.)により、大腸菌MG1655株及びW3110株に導入し、hsdR遺伝子をノックアウトした。次いで、LB培地3mLに各大腸菌株を植菌し、37℃で16時間培養し、形質転換に用いるために菌数を増やした。
次いで、(2)で培養したBW25113株、MG1655株、及びW3110株、並びに、(3)でhsdR遺伝子をノックアウトしたMG1655株、及びW3110株を含む培養液をそれぞれ1mLずつ、37℃に温めておいたLB培地60mLに植菌し、37℃で90分培養した(通常、OD600=0.4〜0.5程度の菌濃度であった)。
次いで、培養を止めて、培養液をそれぞれ氷中で冷やした。また、以降の操作は全て氷中の冷やした状態で行った。次いで、5,000g、4℃で5分間遠心し、上清を捨てた。次いで、各大腸菌株のペレットを氷冷したLB培地2mLずつに懸濁した。次いで、氷冷した以下の表2に示す組成の2×TSS溶液を1.6mLずつ加えて混ぜた。
また、hsdR遺伝子がノックアウトされたMG1655株及びW3110株は、野生型のMG1655株及びW3110株と比較して、コロニー数が有意に増加していた。これは、hsdR遺伝子をノックアウトすることで、hsdR遺伝子のコードする制限酵素によるインサートDNA及びベクターの切断が起こらず、インサートDNAがベクターに挿入され、クロラムフェニコール耐性遺伝子及びアンピシリン耐性遺伝子が発現したため、生育することができたためであると推察された。
(1)インサートDNA及びベクターの作製
実施例1の(1)と同様の方法を用いて、インサートDNA及びベクターを作製し、PCR反応液各1μLを、精製せずにそのまま形質転換に用いた。
次いで、BW25113株を、LB培地3mLに植菌し、37℃で16時間培養し、形質転換に用いるために菌数を増やした。
次いで、BW25113 ΔxthA::kan株、ΔrecE::kan株、ΔrecT::kan株は、Keio collection(参考文献:Baba et al., (2006) Molecular Systems Biology, doi:10.1038/msb4100050)を用いた。
BW25113 ΔrecET::kan株の作製は、まず以下表4に示すプライマーを用いて、プラスミド pKD4(参考文献:Datsenko and Wanner, “One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products”, PNAS, vol.97, no.12, p6640-6645, 2000.)のkan遺伝子領域を増幅した。次いで、得られたPCR産物を用いて、実施例1の(3)と同様の方法を用いて、BW25113株へ導入した。次いで、LB培地3mLに各大腸菌株を植菌し、37℃で16時間培養し、形質転換に用いるために菌数を増やした。
次いで、(2)で培養したBW25113株、MG1655株、及びW3110株、並びに、(3)でhsdR遺伝子をノックアウトしたMG1655株、及びW3110株の代わりに、(2)で培養したBW25113株、並びに、(3)でrecE遺伝子、recT遺伝子、recE遺伝子及びrecT遺伝子、又はxthA遺伝子をノックアウトしたBW25113株を用いた以外は実施例1の(4)と同様の方法を用いて、(1)で作製したインサートDNA及びベクターを各大腸菌株に導入し、形質転換を行い、クロラムフェニコール及びアンピシリンを含むLB寒天培地に塗り拡げた。次いで、大腸菌を植菌したLB寒天培地を37℃で16時間培養し、1枚のLB寒天培地プレートに出現したコロニー数を計測した。結果を図3及び4に示す。
図3において、「BW25113ΔrecE::kan」とは、recE遺伝子がノックアウトされたBW25113株を示し、「BW25113ΔrecT::kan」とは、recT遺伝子がノックアウトされたBW25113株を示し、「BW25113ΔrecET::kan」とは、recE遺伝子及びrecT遺伝子がノックアウトされたBW25113株を示す。
また、図4において、「BW25113ΔxthA::kan」とは、xthA遺伝子がノックアウトされたBW25113株を示す。
また、図4から、xthA遺伝子をノックアウトすることにより、インビボクローニングの活性が有意に下がることが明らかとなった。
このことから、図1に示すメカニズムにより、細胞内において、インサートDNA及びベクターの相同組換えが行われ、インビボクローニングを高効率で行うことができることが推察された。
Claims (6)
- インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニングするための方法であって、
細胞株について、xthA遺伝子の有無を評価し、xthA遺伝子を有する細胞株を選択する第1の選択工程を備えることを特徴とする方法。 - さらに、前記第1の選択工程の後に、hsdR遺伝子の有無を評価し、hsdR遺伝子
の全部又は一部の機能が失われた細胞株を選択する第2の選択工程を備える請求項1に記
載の方法。 - 前記細胞株が大腸菌又は哺乳動物細胞に由来するものである請求項1又は2に記載の方法。
- インビボクローニング可能な細胞株の製造方法であって、
細胞株について、xthA遺伝子の有無を評価し、xthA遺伝子を有する細胞株を選択する選択工程と、前記細胞株がhsdR遺伝子を有する場合に、前記選択工程の後、前記hsdR遺伝子の全部又は一部の機能を失わせる欠損工程を備えることを特徴とする製造方法。 - 前記細胞株が大腸菌又は哺乳動物細胞に由来するものである請求項4に記載の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法、又は請求項4又は5に記載の製造方法を用いて、インビボクローニング可能な細胞株をスクリーニング、又は製造した後、得られた細胞株に、発現ベクターと、5’末端領域及び3’末端領域に前記発現ベクター上の挿入を行う部位と相同な塩基配列を有する目的の二本鎖DNAとを導入する導入工程と、
前記導入工程後、前記細胞株を培養し、前記目的の二本鎖DNAを相同組換えにより前記発現ベクターに挿入する挿入工程と、
を備えることを特徴とするインビボクローニング方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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